板状ヒータ、加熱装置、画像形成装置
【課題】板状ヒータにおける温度立ち上がりの高速化を実現するとともに、非通紙部での昇温の抑制を図る。
【解決手段】長尺平板状のセラミック基板11上の長手方向に、Ag/Pd合金等の抵抗体ペーストを高温で焼成し、所定の抵抗値を有する厚膜からなる帯状の発熱抵抗体12を形成する。セラミック基板11上の両端に電極15,16を形成する。電極15,16のセラミック基板11の短手方向の位置から発熱抵抗体12に非接触状態で一体的に電極15には導体パターン15a,15bを、電極16には導体パターン16a,16bをそれぞれ形成する。導体パターン15a,16aと発熱抵抗体12との間にはPTC発熱体171,172を、導体パターン15b,16bと発熱抵抗体12との間にはNTC発熱体181,182をそれぞれ形成する。
【解決手段】長尺平板状のセラミック基板11上の長手方向に、Ag/Pd合金等の抵抗体ペーストを高温で焼成し、所定の抵抗値を有する厚膜からなる帯状の発熱抵抗体12を形成する。セラミック基板11上の両端に電極15,16を形成する。電極15,16のセラミック基板11の短手方向の位置から発熱抵抗体12に非接触状態で一体的に電極15には導体パターン15a,15bを、電極16には導体パターン16a,16bをそれぞれ形成する。導体パターン15a,16aと発熱抵抗体12との間にはPTC発熱体171,172を、導体パターン15b,16bと発熱抵抗体12との間にはNTC発熱体181,182をそれぞれ形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、情報機器、家電製品や製造設備などの小型機器類に用いられる薄型の板状ヒータおよびこの板状ヒータが実装されたプリンタ、複写機、ファクシミリやリライタブルカードリーダライタなどの加熱装置ならびにこの加熱装置を用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の板状ヒータは、非通紙部昇温が起こるヒータ箇所にNTC特性を持つ発熱体を用い、通紙部の発熱体と直列接続させた構成であり、非通紙部の温度が高くなった場合に非通紙部における昇温を抑制させている。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開2007−232819公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した特許文献1の技術は、小サイズ紙を連続通紙した場合に、非通紙部が通紙部よりも温度が高くなり非通紙部昇温の問題が生じることから、通紙速度を落として通紙を行わなければならない。そのために、ヒータ端部にNTC特性の抵抗体を直列に形成することで、非通紙部の昇温を抑制することができるが、ヒータ面全体が均一に発熱するまでの温度立ち上がりが遅いという、問題がある。
【0004】
この発明の目的は、温度立ち上がりの高速化を実現できるとともに、非通紙部での昇温を抑制することのできる板状ヒータ、この板状ヒータが実装された加熱装置、この加熱装置が搭載された画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するために、この発明の板状ヒータは、耐熱・絶縁性材料で形成された長尺平板状のセラミック基板と、前記セラミック基板上の長手方向に厚膜形成された発熱抵抗体と、前記発熱抵抗体の両端に電力を供給する第1および第2の電極と、前記第1および第2の電極の前記セラミック基板の長手方向の両側の沿って前記発熱抵抗体に非接触状態でそれぞれ延出した第1および第2の導体パターンと、前記第1の導体パターンと前記発熱抵抗体を接続したPTC発熱体と、前記第2の導体パターンと前記発熱抵抗体を接続したNTC発熱体と、少なくとも前記電極を残して前記セラミック基板上に施したオーバーコート層と、を具備したことを特徴とする。
【0006】
この発明の加熱装置は、加熱ローラと、前記加熱ローラに対向配置された発熱抵抗体が圧接された請求項1〜8のいずれかに記載の板状ヒータと、前記板状ヒータと前記加圧ローラとの間を移動可能に設けられた定着フィルムとを具備したことを特徴とする。
【0007】
さらに、この発明の画像形成装置は、媒体に形成された静電潜像にトナーを付着し、該トナーを用紙に転写させて所定の画像を形成する形成手段と、画像が形成された用紙を加圧ローラにより定着フィルムを介して前記板状ヒータに圧接しながら通過させ、前記トナーを定着するようにした請求項9記載の加熱装置とを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、非通紙部分の発熱体としてPTC発熱体とNTC発熱体を用いた並列パターンを配置したことで、温度立ち上がりの高速化が実現できるとともに、非通紙部昇温の抑制を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1、図2は、この発明の板状ヒータに関する第1の実施形態について説明するための、図1(a)は正面図、図1(b)は図1(a)の背面図、図2は図1のI−I’断面図である。
【0011】
図1、図2において、11は、耐熱、電気絶縁性材料例えば酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素などの電気絶縁性を有する高剛性の基材で高い熱伝導性の短冊状のセラミック基板である。セラミック基板11は、例えば厚みが1mm、幅10mm、長さ280mm程度の寸法である。
【0012】
12は、セラミック基板11の表面側の長手方向に固着して形成された銀(Ag)・パラジウム(Pd)を主成分としPdの比率を高くした抵抗温度係数が0ppm/℃の材料の抵抗体ペーストを高温で焼成し、所定の抵抗値を有する厚膜からなる帯状の発熱抵抗体である。発熱抵抗体12は、例えば厚みが10μm、幅が2.5mm、長さが226mm程度の寸法である。
【0013】
発熱抵抗体12の両端には、少なくとも発熱抵抗体12の幅の長さを有するの導体層13,14を積層して形成する。
【0014】
15,16は、セラミック基板11の長手方向の両端面に形成した給電用の電極である。電極15には、一体的に発熱抵抗体12と平行に非接触状態で延在させて形成した導体パターン15a,15bがそれぞれ形成される。電極16には、一体的に発熱抵抗体12と平行に非接触状態で延在させて形成した導体パターン16a,16bがそれぞれ形成される。なお、導体パターン15a,15bは第1の導体パターンに相当し、導体パターン16a,16bは第2の導体パターンに相当する。
【0015】
導体パターン15aと導体層13とは、Ag/Pdを主成分あるいは酸化ルテニウムといった材料で、例えば抵抗温度係数が500ppm/℃の正の温度係数を有するPTC(Positive Temperature Coefficient)発熱体171のベタパターンを形成して電気的に接続する。同様に導体パターン16aと導体層14にはAg/Pdを主成分あるいは酸化ルテニウムといった材料で、例えば抵抗温度係数が500ppm/℃の正の温度係数を有するPTC発熱体172のベタパターンを形成して電気的に接続する。
【0016】
導体パターン15aと導体層13にはPTC発熱体171の一部分が、導体パターン15bと導体層14にはPTC発熱体172の一部分がそれぞれ重畳された状態で接合させる。
【0017】
また、導体パターン15bと導体層13とは、半導体セラミックスやグラファイトを主成分とする、例えば抵抗温度係数−5000ppm/℃の負の温度係数を有するNTC(Negative Temperature Coefficient)発熱体181のベタパターンを形成して電気的に接続する。導体パターン16bと導体層14とは、半導体セラミックスやグラファイトを主成分とする材料で、例えば抵抗温度係数−5000ppm/℃の負の温度係数を有するNTC発熱体182のベタパターンを形成して電気的に接続する。
【0018】
導体パターン15bと導体層13にはNTC発熱体181の一部分が、導体パターン16bと導体層14にはNTC発熱体182の一部分がそれぞれ重畳された状態で接合させる。
【0019】
19は、電極15,16を残した発熱抵抗体12、導体パターン15a,15b,16a,16b、PTC発熱体171,172、NTC発熱体181,182上に、例えば厚膜印刷でガラス層あるいはポリイミド層で形成され、電気的、機械的、化学的な保護を行うオーバーコート層である。
【0020】
オーバーコート層19は、被加熱体である用紙を加熱させながら摺動させる機能を有している。オーバーコート層19のPTC発熱体181,182が形成された側は、被加熱体が流れる上流側とし、NTC発熱体181,182が形成された側は、加熱体が流れる下流側とする。
【0021】
なお、オーバーコート層19上の発熱抵抗体12が形成されたX領域は、通紙部とし、PTC発熱体171,172、NTC発熱体181,182が形成されたYの領域は、非通紙部とする。
【0022】
次に、図3〜図5を参照し、図1の動作について説明する。図3は図1に電源を追加した板状ヒータの等価回路図、図4は図1の温度変化に伴い変化する通紙部と非通紙部の抵抗値について説明するための説明図、図5は板状ヒータの長手方向の発熱量分布について説明するための説明図である。
【0023】
図3において、31は交流電源である。R12は発熱抵抗体12の抵抗を示し、R171はPTC発熱体171の抵抗を、R172はPTC発熱体172の抵抗をそれぞれ示している。また、R181はNTC発熱体181の抵抗を示し、R182はNTC発熱体182の抵抗をそれぞれ示している。
【0024】
ここで、非通紙部YであるPTC発熱体171とNTC発熱体181の合成抵抗それに発熱体172とNTC発熱体182の合成抵抗をRsとした場合について考える。
【0025】
まず、電源31から電極15,16に電力が供給された直後の通紙部Xと非通紙部Yの抵抗値について考える。通電された直後のPTC発熱体171,172の抵抗値Rp(R171,R172)は小さく、NTC発熱体181,182の抵抗値Rn(R181,R182)は大きい。これらを合成した場合の抵抗値Rsは、発熱抵抗体12の抵抗値R12よりやや大きい程度となる。これにより、板状ヒータ長手方向全体の温度分布は、図5のAに示す特性となる。
【0026】
次に、通紙の定常時においては、PTC発熱体171,172の抵抗値Rp、NTC発熱体181,182の抵抗値Rnそれに発熱抵抗体12の抵抗値R12がほぼ同じような値となる。これにより、板状ヒータの長手方向全体の温度分布は、図5のBに示す特性となる。
【0027】
非通紙部Xの領域の昇温時においては、PTC発熱体171,172の抵抗値Rpは大きく、NTC発熱体181,182の抵抗値Rnは小さい。これらを合成した場合の抵抗値Rsは、発熱抵抗体12の抵抗値R12よりやや小さい程度となる。これにより、板状ヒータ長手方向全体の温度分布は、図5のAに示す特性となる。これにより、板状ヒータ長手方向全体の温度分布は、図5のCに示す特性となる。
【0028】
このように、非通紙部Yの昇温時は、通紙部Xよりも非通紙部Yの抵抗値が小さくなり、非通紙部Yでの発熱量は抑えることができることから、非通紙部Yの昇温抑制を図ることができる。
【0029】
この実施形態では、非通紙部分の発熱体としてPTC発熱体とNTC発熱体を用いた並列パターンを配置したことで、温度立ち上がりの高速化を実現できるとともに、非通紙部昇温の抑制を図ることができる。
【0030】
図6は、この発明の板状ヒータに関する第2の実施形態について説明するための構成図である。図6は、図1のPTC発熱体171とNTC発熱体181側のみを拡大した状態で示した拡大構成図である。なお、図1と同一構成部分には同符号を付しここでの説明は省略する。
【0031】
この実施形態は、PTC発熱体171(712)の幅をWp、長さをLpとした場合のアスペクト比(Wp/Lp)に対してNTC発熱体181(182)の幅をWn、長さLnとした場合のアスペクト比(Wn/Ln)の関係を、(Wp/Lp)=(Wn/Ln)としたものである。換言すれば、PTC発熱体171の抵抗温度係数PTCとNTC発熱体181の抵抗温度係数NTCの絶対値を、NTC<PTCの関係としたものである。
【0032】
このように、非通紙部でのNTC発熱体とPTC発熱体のアスペクト比を等しくすることで、温度調整時に非通紙部昇温時に端部の過剰な熱を下流側に逃がすことができるため、非通紙部の昇温抑制効果を高めることが可能である。
【0033】
図7〜図9は、この発明の板状ヒータに関する第3の実施形態について説明するための、図7(a)は正面図、図7(b)は図7(a)の背面図、図8は図7のII−II’断面図、図9はこの実施形態の動作について説明するための説明図である。上記した実施形態と同一の構成部分には同符号を符号を付して説明する。
【0034】
図7において、セラミック基板11の表面には発熱抵抗体12が形成され、発熱抵抗体12の両端は、それぞれ電極15,16が形成される。発熱抵抗体12の両端の短手方向には、それぞれ同じ負の温度係数を有するNTC発熱体71,72のベタパターンが形成される。NTC発熱体71,72の一部は、発熱抵抗体12に重ね合わせた状態で形成される。
【0035】
発熱抵抗体12、NTC発熱体71,72は、厚膜印刷方法を用いてガラスペーストを印刷で覆い、これを焼成してオーバーコート層19が形成される。
【0036】
ここで、発熱抵抗体12を100mΩ/□、TCR(Temperature Coefficient of Resistance)=0ppm/℃とし、NTC発熱体71,72をそれぞれ1000mΩ/□、TCR=3000ppm/℃とし、発熱抵抗体12とNTC発熱体71,72の長手方向の幅を同じとして考える。
【0037】
このとき、図7(a)における領域Eに発熱抵抗体12の抵抗R12とNTC発熱体71の抵抗R71は図9の等価回路に示すような並列接続となる。これにより、室温での構成抵抗値は、91mΩ/□となる。これは、抵抗R12とNTC発熱体72の抵抗R72の関係について同じである。
【0038】
図7に示すヒータ長Dの定着物を通紙した場合、発熱抵抗体12の端部の温度は、200℃程度まで高くなるとする。このときの端部の合成抵抗値は、62mΩ/□となり、約30%程度まで発熱量が低下する。このように、端部の発熱量を抑えることが可能となる。
【0039】
この実施形態では、発熱抵抗体12の端部にNTC発熱体71,72を形成しただけの簡単な構成により、非通紙部における温度上昇を抑えることが可能となる。
【0040】
図10、図11は、この発明の板状ヒータに関する第4の実施形態について説明するための、図10(a)は正面図、図10(b)は図10(a)の背面図、図11は図10のIII−III’断面図である。
【0041】
図10において、セラミック基板11には、長手方向に沿って、銀(Ag)・パラジウム(Pd)の合金をはじめとする銀系材料や、ルテニウム系、炭素系などの抵抗体ペーストを高温で焼成し、所定の抵抗値を有する厚膜からなる帯状の発熱抵抗体121,122を平行に形成している。
【0042】
発熱抵抗体121の一端は、セラミック基板11上に銀系の導体ペーストを焼成して形成された良導電体膜の給電用の電極151と接続し、発熱抵抗体122の一端は、セラミック基板11上に銀系の導体ペーストを焼成した良導電体膜の給電用の電極161と接続する。発熱抵抗体121,122のそれぞれ他端は、セラミック基板11上に銀系の導体ペーストを焼成して形成した接続導体156により共通接続する。
【0043】
発熱抵抗体121の両端の短手方向には、それぞれ同じ負の温度係数を有するNTC発熱体711、712のベタパターンが、発熱抵抗体122の両端の短手方向には、それぞれ同じ負の温度係数を有するNTC発熱体721、722のベタパターンがそれぞれ形成される。NTC発熱体711,712,721,722の一部は、発熱抵抗体12に重ね合わせた状態で形成される。
【0044】
発熱抵抗体12、NTC発熱体711,712,721,722上には、厚膜印刷方法を用いてガラスペーストを印刷で覆い、これを焼成したオーバーコート層19が形成される。
【0045】
ここで、発熱抵抗体121,122を100mΩ/□、TCR=0ppm/℃とし、NTC発熱体711,712,721,722をそれぞれ1000mΩ/□、TCR=3000ppm/℃とし、発熱抵抗体121,122とNTC発熱体711,712,721,722の長手方向の幅を同じとして考える。
【0046】
このとき、図10(a)の領域Eにおける発熱抵抗体121,122の抵抗R12とNTC発熱体711の抵抗値は、図9の等価回路と同じような並列接続となる。これにより、室温での構成抵抗値は、91mΩ/□となる。
【0047】
このことは、抵抗R12とNTC発熱体712の抵抗値、抵抗R12とNTC発熱体721の抵抗値それに抵抗R12とNTC発熱体722の抵抗値の関係についても同じである。
【0048】
従って、この場合は、発熱抵抗体121,122による上流から下流にかけての幅の広い発熱部を有しながら、電力供給時の非通紙部に当たる抵抗R12とNTC発熱体711の抵抗値の合成抵抗値、抵抗R12とNTC発熱体712の抵抗値の合成抵抗値は下がり温度上昇を抑えことができる。また、抵抗R12とNTC発熱体721の抵抗値の合成抵抗値、抵抗R12とNTC発熱体722の抵抗値の合成抵抗値は下がり温度上昇を抑えことができる。
【0049】
上記したこの発明の板状ヒータの第3および第4の実施形態のNTC発熱体は、発熱抵抗体の一部と重ね合わせた状態でセラミック基板上に形成したが、発熱抵抗体上に形成しても構わない。この場合は、セラミック基板の短手方向の幅が狭いものでも形成が可能となる。
【0050】
図12、図13は、この発明の加熱装置に関する一実施形態について説明するための、図12は、上記した板状ヒータ100をヒータ支持体101に取り付けたヒータユニットを加熱装置200に実装した場合の模式図、図13は図12の断面図である。図中100については、図1、図2で説明した板状ヒータであり、同一部分には同一の符号を付してその説明は省略する。
【0051】
図5において、201は、ポリイミド樹脂等の耐熱性のフィルムをロール状にして循環自在に巻装された円筒状の定着フィルムである。この定着フィルム201は、支持体202の底部に板状ヒータ100を固着させ、板状ヒータ100にコネクタ203,204をリード線205,206介して電力を供給させ、加熱した板状ヒータ100に形成されたオーバーコート層19に圧接加熱しながら移動させる。
【0052】
207は、その表面に耐熱性弾性材料である、たとえばシリコーンゴム層208が嵌合してある加圧ローラであり、加圧ローラ207の回転軸209と対向して板状ヒータ100が、定着フィルム201と並置して図示しない基台内に取り付けられている。加圧ローラ207は、定着フィルム201と相互に圧接させることで、発熱抵抗体12と加圧ローラ207とで形成される図6に示すようなニップ部Nを形成するとともに、作動時にはそれぞれを矢印d1,d2の方向に回転させる。
【0053】
このとき、オーバーコート層19上に配置された定着フィルム201面とシリコーンゴム層208との間で、トナー像To1がまず定着フィルム201を介して板状ヒータ100により加熱溶融され、少なくともその表面部は融点を大きく上回り完全に軟化して溶融する。この後、加圧ローラ207の用紙排出側では複写用紙Pが板状ヒータ100から離れ、トナー像To2は自然放熱して再び冷却固化し、定着フィルム201も複写用紙Pから離反される。
【0054】
この実施形態では、非通紙部分のPTC発熱体とNTC発熱体を用いた並列パターンが配置された板状ヒータを用いたことで、温度立ち上がりの高速化をさせることができるとともに、非通紙部昇温の抑制に寄与することができる。
【0055】
次に、図14を参照して、この発明の加熱装置200が搭載された複写機を例に挙げた場合のこの発明の画像形成装置について説明する。図中、加熱装置200の部分は、図13、図14で説明したもの同じであり、同一部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0056】
図14において、301は複写機300の筐体、302は筐体301の上面に設けられたガラス等の透明部材からなる原稿載置台で、矢印Z方向に往復動作させて原稿P1を走査する。
【0057】
筐体301内の上方向には光照射用のランプと反射鏡とからなる照明装置302が設けられており、この照明装置302により照射された原稿P1からの反射光源が短焦点小径結像素子アレイ303によって感光ドラム304上スリット露光される。なお、この感光ドラム304は矢印方向に回転する。
【0058】
また、305は帯電器で、例えば酸化亜鉛感光層あるいは有機半導体感光層が被覆された感光ドラム304上に一様に帯電を行う。この帯電器305により帯電された感光ドラム304には、結像素子アレイ303によって画像露光が行われた静電画像が形成される。この静電画像は、現像器306による加熱で軟化溶融する樹脂等からなるトナーを用いて顕像化される。
【0059】
カセット307内に収納されている複写用紙Pは、給送ローラ308と感光ドラム304上の画像と同期するタイミングをとって上下方向で圧接して回転される対の搬送ローラ309によって、感光ドラム304上に送り込まれる。そして、転写放電器310によって感光ドラム304上に形成されているトナー像は複写用紙P上に転写される。
【0060】
その後、感光ドラム304上から離れた用紙Pは、搬送ガイド311によって加熱装置200に導かれて加熱定着処理された後に、トレイ312内に排出される。なお、トナー像が転写された後、感光ドラム304上の残留トナーはクリーナ313を用いて除去される。
【0061】
加熱装置200は、複写用紙Pの移動方向と直交する方向に、この複写機300が複写できる最大判用紙の幅(長さ)に合わせた有効長、すなわち最大判用紙の幅(長さ)より長い発熱抵抗体を備えた板状ヒータ100が、加圧ローラ207の外周に取り付けられたシリコーンゴム層208に加圧された状態で設けられている。
【0062】
そして、板状ヒータ100と加圧ローラ207との間を送られる用紙P上の未定着トナー像T1は、発熱抵抗体12の熱を受け溶融して複写用紙P面上に文字、英数字、記号、図面等の複写像を現出させる。
【0063】
この実施形態では、温度立ち上がりの高速化を実現できるとともに、非通紙部での昇温を抑制する板状ヒータを備えた加熱装置を用いたことより、立ち上がりが早く十分な熱対策を図ることが可能となる。
【0064】
板状ヒータの用途としては、複写機等の画像形成装置の定着用に用いたが、これに限らず、家庭用の電気製品、業務用や実験用の精密機器や化学反応用の機器等に装着して加熱や保温の熱源としても使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】この発明の板状ヒータに関する第1の実施形態について説明するための、(a)は正面図、(b)は(a)の背面図。
【図2】図1のI−I’断面図。
【図3】図1に電源を追加した状態の板状ヒータの等価回路図。
【図4】図1の温度変化に伴い変化する通紙部と非通紙部の抵抗値について説明するための説明図。
【図5】板状ヒータの長手方向の発熱量分布について説明するための説明図。
【図6】この発明の板状ヒータに関する第2の実施形態について説明するための一部を切欠して示す構成図。
【図7】この発明の板状ヒータに関する第3の実施形態について説明するための、(a)は正面図、(b)は(a)の背面図。
【図8】図7のII−II’断面図。
【図9】図7の動作について説明するための説明図。
【図10】この発明の板状ヒータに関する第4の実施形態について説明するための、(a)は正面図、(b)は(a)の背面図。
【図11】図10のIII−III’断面図。
【図12】この発明の加熱装置に関する一実施形態について説明するための斜視図。
【図13】図11の断面図。
【図14】この発明の画像形成装置に関する一実施形態について説明するための説明図。
【符号の説明】
【0066】
11 セラミック基板
12,121,122 発熱抵抗体
13,14 導体層
15,16,151,161 電極
15a,15b,16a,16b 導体パターン
156 接続導体
171,172 PTC発熱体
181,182,71,72,711,712,721,722 NTC発熱体
19 オーバーコート層
X 通紙部
Y 非通紙部
201 定着フィルム
202 支持体
207 加圧ローラ
208 シリコーンゴム層
209 回転軸
100 板状ヒータ
200 加熱装置
300 複写機
【技術分野】
【0001】
この発明は、情報機器、家電製品や製造設備などの小型機器類に用いられる薄型の板状ヒータおよびこの板状ヒータが実装されたプリンタ、複写機、ファクシミリやリライタブルカードリーダライタなどの加熱装置ならびにこの加熱装置を用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の板状ヒータは、非通紙部昇温が起こるヒータ箇所にNTC特性を持つ発熱体を用い、通紙部の発熱体と直列接続させた構成であり、非通紙部の温度が高くなった場合に非通紙部における昇温を抑制させている。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開2007−232819公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した特許文献1の技術は、小サイズ紙を連続通紙した場合に、非通紙部が通紙部よりも温度が高くなり非通紙部昇温の問題が生じることから、通紙速度を落として通紙を行わなければならない。そのために、ヒータ端部にNTC特性の抵抗体を直列に形成することで、非通紙部の昇温を抑制することができるが、ヒータ面全体が均一に発熱するまでの温度立ち上がりが遅いという、問題がある。
【0004】
この発明の目的は、温度立ち上がりの高速化を実現できるとともに、非通紙部での昇温を抑制することのできる板状ヒータ、この板状ヒータが実装された加熱装置、この加熱装置が搭載された画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するために、この発明の板状ヒータは、耐熱・絶縁性材料で形成された長尺平板状のセラミック基板と、前記セラミック基板上の長手方向に厚膜形成された発熱抵抗体と、前記発熱抵抗体の両端に電力を供給する第1および第2の電極と、前記第1および第2の電極の前記セラミック基板の長手方向の両側の沿って前記発熱抵抗体に非接触状態でそれぞれ延出した第1および第2の導体パターンと、前記第1の導体パターンと前記発熱抵抗体を接続したPTC発熱体と、前記第2の導体パターンと前記発熱抵抗体を接続したNTC発熱体と、少なくとも前記電極を残して前記セラミック基板上に施したオーバーコート層と、を具備したことを特徴とする。
【0006】
この発明の加熱装置は、加熱ローラと、前記加熱ローラに対向配置された発熱抵抗体が圧接された請求項1〜8のいずれかに記載の板状ヒータと、前記板状ヒータと前記加圧ローラとの間を移動可能に設けられた定着フィルムとを具備したことを特徴とする。
【0007】
さらに、この発明の画像形成装置は、媒体に形成された静電潜像にトナーを付着し、該トナーを用紙に転写させて所定の画像を形成する形成手段と、画像が形成された用紙を加圧ローラにより定着フィルムを介して前記板状ヒータに圧接しながら通過させ、前記トナーを定着するようにした請求項9記載の加熱装置とを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、非通紙部分の発熱体としてPTC発熱体とNTC発熱体を用いた並列パターンを配置したことで、温度立ち上がりの高速化が実現できるとともに、非通紙部昇温の抑制を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1、図2は、この発明の板状ヒータに関する第1の実施形態について説明するための、図1(a)は正面図、図1(b)は図1(a)の背面図、図2は図1のI−I’断面図である。
【0011】
図1、図2において、11は、耐熱、電気絶縁性材料例えば酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素などの電気絶縁性を有する高剛性の基材で高い熱伝導性の短冊状のセラミック基板である。セラミック基板11は、例えば厚みが1mm、幅10mm、長さ280mm程度の寸法である。
【0012】
12は、セラミック基板11の表面側の長手方向に固着して形成された銀(Ag)・パラジウム(Pd)を主成分としPdの比率を高くした抵抗温度係数が0ppm/℃の材料の抵抗体ペーストを高温で焼成し、所定の抵抗値を有する厚膜からなる帯状の発熱抵抗体である。発熱抵抗体12は、例えば厚みが10μm、幅が2.5mm、長さが226mm程度の寸法である。
【0013】
発熱抵抗体12の両端には、少なくとも発熱抵抗体12の幅の長さを有するの導体層13,14を積層して形成する。
【0014】
15,16は、セラミック基板11の長手方向の両端面に形成した給電用の電極である。電極15には、一体的に発熱抵抗体12と平行に非接触状態で延在させて形成した導体パターン15a,15bがそれぞれ形成される。電極16には、一体的に発熱抵抗体12と平行に非接触状態で延在させて形成した導体パターン16a,16bがそれぞれ形成される。なお、導体パターン15a,15bは第1の導体パターンに相当し、導体パターン16a,16bは第2の導体パターンに相当する。
【0015】
導体パターン15aと導体層13とは、Ag/Pdを主成分あるいは酸化ルテニウムといった材料で、例えば抵抗温度係数が500ppm/℃の正の温度係数を有するPTC(Positive Temperature Coefficient)発熱体171のベタパターンを形成して電気的に接続する。同様に導体パターン16aと導体層14にはAg/Pdを主成分あるいは酸化ルテニウムといった材料で、例えば抵抗温度係数が500ppm/℃の正の温度係数を有するPTC発熱体172のベタパターンを形成して電気的に接続する。
【0016】
導体パターン15aと導体層13にはPTC発熱体171の一部分が、導体パターン15bと導体層14にはPTC発熱体172の一部分がそれぞれ重畳された状態で接合させる。
【0017】
また、導体パターン15bと導体層13とは、半導体セラミックスやグラファイトを主成分とする、例えば抵抗温度係数−5000ppm/℃の負の温度係数を有するNTC(Negative Temperature Coefficient)発熱体181のベタパターンを形成して電気的に接続する。導体パターン16bと導体層14とは、半導体セラミックスやグラファイトを主成分とする材料で、例えば抵抗温度係数−5000ppm/℃の負の温度係数を有するNTC発熱体182のベタパターンを形成して電気的に接続する。
【0018】
導体パターン15bと導体層13にはNTC発熱体181の一部分が、導体パターン16bと導体層14にはNTC発熱体182の一部分がそれぞれ重畳された状態で接合させる。
【0019】
19は、電極15,16を残した発熱抵抗体12、導体パターン15a,15b,16a,16b、PTC発熱体171,172、NTC発熱体181,182上に、例えば厚膜印刷でガラス層あるいはポリイミド層で形成され、電気的、機械的、化学的な保護を行うオーバーコート層である。
【0020】
オーバーコート層19は、被加熱体である用紙を加熱させながら摺動させる機能を有している。オーバーコート層19のPTC発熱体181,182が形成された側は、被加熱体が流れる上流側とし、NTC発熱体181,182が形成された側は、加熱体が流れる下流側とする。
【0021】
なお、オーバーコート層19上の発熱抵抗体12が形成されたX領域は、通紙部とし、PTC発熱体171,172、NTC発熱体181,182が形成されたYの領域は、非通紙部とする。
【0022】
次に、図3〜図5を参照し、図1の動作について説明する。図3は図1に電源を追加した板状ヒータの等価回路図、図4は図1の温度変化に伴い変化する通紙部と非通紙部の抵抗値について説明するための説明図、図5は板状ヒータの長手方向の発熱量分布について説明するための説明図である。
【0023】
図3において、31は交流電源である。R12は発熱抵抗体12の抵抗を示し、R171はPTC発熱体171の抵抗を、R172はPTC発熱体172の抵抗をそれぞれ示している。また、R181はNTC発熱体181の抵抗を示し、R182はNTC発熱体182の抵抗をそれぞれ示している。
【0024】
ここで、非通紙部YであるPTC発熱体171とNTC発熱体181の合成抵抗それに発熱体172とNTC発熱体182の合成抵抗をRsとした場合について考える。
【0025】
まず、電源31から電極15,16に電力が供給された直後の通紙部Xと非通紙部Yの抵抗値について考える。通電された直後のPTC発熱体171,172の抵抗値Rp(R171,R172)は小さく、NTC発熱体181,182の抵抗値Rn(R181,R182)は大きい。これらを合成した場合の抵抗値Rsは、発熱抵抗体12の抵抗値R12よりやや大きい程度となる。これにより、板状ヒータ長手方向全体の温度分布は、図5のAに示す特性となる。
【0026】
次に、通紙の定常時においては、PTC発熱体171,172の抵抗値Rp、NTC発熱体181,182の抵抗値Rnそれに発熱抵抗体12の抵抗値R12がほぼ同じような値となる。これにより、板状ヒータの長手方向全体の温度分布は、図5のBに示す特性となる。
【0027】
非通紙部Xの領域の昇温時においては、PTC発熱体171,172の抵抗値Rpは大きく、NTC発熱体181,182の抵抗値Rnは小さい。これらを合成した場合の抵抗値Rsは、発熱抵抗体12の抵抗値R12よりやや小さい程度となる。これにより、板状ヒータ長手方向全体の温度分布は、図5のAに示す特性となる。これにより、板状ヒータ長手方向全体の温度分布は、図5のCに示す特性となる。
【0028】
このように、非通紙部Yの昇温時は、通紙部Xよりも非通紙部Yの抵抗値が小さくなり、非通紙部Yでの発熱量は抑えることができることから、非通紙部Yの昇温抑制を図ることができる。
【0029】
この実施形態では、非通紙部分の発熱体としてPTC発熱体とNTC発熱体を用いた並列パターンを配置したことで、温度立ち上がりの高速化を実現できるとともに、非通紙部昇温の抑制を図ることができる。
【0030】
図6は、この発明の板状ヒータに関する第2の実施形態について説明するための構成図である。図6は、図1のPTC発熱体171とNTC発熱体181側のみを拡大した状態で示した拡大構成図である。なお、図1と同一構成部分には同符号を付しここでの説明は省略する。
【0031】
この実施形態は、PTC発熱体171(712)の幅をWp、長さをLpとした場合のアスペクト比(Wp/Lp)に対してNTC発熱体181(182)の幅をWn、長さLnとした場合のアスペクト比(Wn/Ln)の関係を、(Wp/Lp)=(Wn/Ln)としたものである。換言すれば、PTC発熱体171の抵抗温度係数PTCとNTC発熱体181の抵抗温度係数NTCの絶対値を、NTC<PTCの関係としたものである。
【0032】
このように、非通紙部でのNTC発熱体とPTC発熱体のアスペクト比を等しくすることで、温度調整時に非通紙部昇温時に端部の過剰な熱を下流側に逃がすことができるため、非通紙部の昇温抑制効果を高めることが可能である。
【0033】
図7〜図9は、この発明の板状ヒータに関する第3の実施形態について説明するための、図7(a)は正面図、図7(b)は図7(a)の背面図、図8は図7のII−II’断面図、図9はこの実施形態の動作について説明するための説明図である。上記した実施形態と同一の構成部分には同符号を符号を付して説明する。
【0034】
図7において、セラミック基板11の表面には発熱抵抗体12が形成され、発熱抵抗体12の両端は、それぞれ電極15,16が形成される。発熱抵抗体12の両端の短手方向には、それぞれ同じ負の温度係数を有するNTC発熱体71,72のベタパターンが形成される。NTC発熱体71,72の一部は、発熱抵抗体12に重ね合わせた状態で形成される。
【0035】
発熱抵抗体12、NTC発熱体71,72は、厚膜印刷方法を用いてガラスペーストを印刷で覆い、これを焼成してオーバーコート層19が形成される。
【0036】
ここで、発熱抵抗体12を100mΩ/□、TCR(Temperature Coefficient of Resistance)=0ppm/℃とし、NTC発熱体71,72をそれぞれ1000mΩ/□、TCR=3000ppm/℃とし、発熱抵抗体12とNTC発熱体71,72の長手方向の幅を同じとして考える。
【0037】
このとき、図7(a)における領域Eに発熱抵抗体12の抵抗R12とNTC発熱体71の抵抗R71は図9の等価回路に示すような並列接続となる。これにより、室温での構成抵抗値は、91mΩ/□となる。これは、抵抗R12とNTC発熱体72の抵抗R72の関係について同じである。
【0038】
図7に示すヒータ長Dの定着物を通紙した場合、発熱抵抗体12の端部の温度は、200℃程度まで高くなるとする。このときの端部の合成抵抗値は、62mΩ/□となり、約30%程度まで発熱量が低下する。このように、端部の発熱量を抑えることが可能となる。
【0039】
この実施形態では、発熱抵抗体12の端部にNTC発熱体71,72を形成しただけの簡単な構成により、非通紙部における温度上昇を抑えることが可能となる。
【0040】
図10、図11は、この発明の板状ヒータに関する第4の実施形態について説明するための、図10(a)は正面図、図10(b)は図10(a)の背面図、図11は図10のIII−III’断面図である。
【0041】
図10において、セラミック基板11には、長手方向に沿って、銀(Ag)・パラジウム(Pd)の合金をはじめとする銀系材料や、ルテニウム系、炭素系などの抵抗体ペーストを高温で焼成し、所定の抵抗値を有する厚膜からなる帯状の発熱抵抗体121,122を平行に形成している。
【0042】
発熱抵抗体121の一端は、セラミック基板11上に銀系の導体ペーストを焼成して形成された良導電体膜の給電用の電極151と接続し、発熱抵抗体122の一端は、セラミック基板11上に銀系の導体ペーストを焼成した良導電体膜の給電用の電極161と接続する。発熱抵抗体121,122のそれぞれ他端は、セラミック基板11上に銀系の導体ペーストを焼成して形成した接続導体156により共通接続する。
【0043】
発熱抵抗体121の両端の短手方向には、それぞれ同じ負の温度係数を有するNTC発熱体711、712のベタパターンが、発熱抵抗体122の両端の短手方向には、それぞれ同じ負の温度係数を有するNTC発熱体721、722のベタパターンがそれぞれ形成される。NTC発熱体711,712,721,722の一部は、発熱抵抗体12に重ね合わせた状態で形成される。
【0044】
発熱抵抗体12、NTC発熱体711,712,721,722上には、厚膜印刷方法を用いてガラスペーストを印刷で覆い、これを焼成したオーバーコート層19が形成される。
【0045】
ここで、発熱抵抗体121,122を100mΩ/□、TCR=0ppm/℃とし、NTC発熱体711,712,721,722をそれぞれ1000mΩ/□、TCR=3000ppm/℃とし、発熱抵抗体121,122とNTC発熱体711,712,721,722の長手方向の幅を同じとして考える。
【0046】
このとき、図10(a)の領域Eにおける発熱抵抗体121,122の抵抗R12とNTC発熱体711の抵抗値は、図9の等価回路と同じような並列接続となる。これにより、室温での構成抵抗値は、91mΩ/□となる。
【0047】
このことは、抵抗R12とNTC発熱体712の抵抗値、抵抗R12とNTC発熱体721の抵抗値それに抵抗R12とNTC発熱体722の抵抗値の関係についても同じである。
【0048】
従って、この場合は、発熱抵抗体121,122による上流から下流にかけての幅の広い発熱部を有しながら、電力供給時の非通紙部に当たる抵抗R12とNTC発熱体711の抵抗値の合成抵抗値、抵抗R12とNTC発熱体712の抵抗値の合成抵抗値は下がり温度上昇を抑えことができる。また、抵抗R12とNTC発熱体721の抵抗値の合成抵抗値、抵抗R12とNTC発熱体722の抵抗値の合成抵抗値は下がり温度上昇を抑えことができる。
【0049】
上記したこの発明の板状ヒータの第3および第4の実施形態のNTC発熱体は、発熱抵抗体の一部と重ね合わせた状態でセラミック基板上に形成したが、発熱抵抗体上に形成しても構わない。この場合は、セラミック基板の短手方向の幅が狭いものでも形成が可能となる。
【0050】
図12、図13は、この発明の加熱装置に関する一実施形態について説明するための、図12は、上記した板状ヒータ100をヒータ支持体101に取り付けたヒータユニットを加熱装置200に実装した場合の模式図、図13は図12の断面図である。図中100については、図1、図2で説明した板状ヒータであり、同一部分には同一の符号を付してその説明は省略する。
【0051】
図5において、201は、ポリイミド樹脂等の耐熱性のフィルムをロール状にして循環自在に巻装された円筒状の定着フィルムである。この定着フィルム201は、支持体202の底部に板状ヒータ100を固着させ、板状ヒータ100にコネクタ203,204をリード線205,206介して電力を供給させ、加熱した板状ヒータ100に形成されたオーバーコート層19に圧接加熱しながら移動させる。
【0052】
207は、その表面に耐熱性弾性材料である、たとえばシリコーンゴム層208が嵌合してある加圧ローラであり、加圧ローラ207の回転軸209と対向して板状ヒータ100が、定着フィルム201と並置して図示しない基台内に取り付けられている。加圧ローラ207は、定着フィルム201と相互に圧接させることで、発熱抵抗体12と加圧ローラ207とで形成される図6に示すようなニップ部Nを形成するとともに、作動時にはそれぞれを矢印d1,d2の方向に回転させる。
【0053】
このとき、オーバーコート層19上に配置された定着フィルム201面とシリコーンゴム層208との間で、トナー像To1がまず定着フィルム201を介して板状ヒータ100により加熱溶融され、少なくともその表面部は融点を大きく上回り完全に軟化して溶融する。この後、加圧ローラ207の用紙排出側では複写用紙Pが板状ヒータ100から離れ、トナー像To2は自然放熱して再び冷却固化し、定着フィルム201も複写用紙Pから離反される。
【0054】
この実施形態では、非通紙部分のPTC発熱体とNTC発熱体を用いた並列パターンが配置された板状ヒータを用いたことで、温度立ち上がりの高速化をさせることができるとともに、非通紙部昇温の抑制に寄与することができる。
【0055】
次に、図14を参照して、この発明の加熱装置200が搭載された複写機を例に挙げた場合のこの発明の画像形成装置について説明する。図中、加熱装置200の部分は、図13、図14で説明したもの同じであり、同一部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0056】
図14において、301は複写機300の筐体、302は筐体301の上面に設けられたガラス等の透明部材からなる原稿載置台で、矢印Z方向に往復動作させて原稿P1を走査する。
【0057】
筐体301内の上方向には光照射用のランプと反射鏡とからなる照明装置302が設けられており、この照明装置302により照射された原稿P1からの反射光源が短焦点小径結像素子アレイ303によって感光ドラム304上スリット露光される。なお、この感光ドラム304は矢印方向に回転する。
【0058】
また、305は帯電器で、例えば酸化亜鉛感光層あるいは有機半導体感光層が被覆された感光ドラム304上に一様に帯電を行う。この帯電器305により帯電された感光ドラム304には、結像素子アレイ303によって画像露光が行われた静電画像が形成される。この静電画像は、現像器306による加熱で軟化溶融する樹脂等からなるトナーを用いて顕像化される。
【0059】
カセット307内に収納されている複写用紙Pは、給送ローラ308と感光ドラム304上の画像と同期するタイミングをとって上下方向で圧接して回転される対の搬送ローラ309によって、感光ドラム304上に送り込まれる。そして、転写放電器310によって感光ドラム304上に形成されているトナー像は複写用紙P上に転写される。
【0060】
その後、感光ドラム304上から離れた用紙Pは、搬送ガイド311によって加熱装置200に導かれて加熱定着処理された後に、トレイ312内に排出される。なお、トナー像が転写された後、感光ドラム304上の残留トナーはクリーナ313を用いて除去される。
【0061】
加熱装置200は、複写用紙Pの移動方向と直交する方向に、この複写機300が複写できる最大判用紙の幅(長さ)に合わせた有効長、すなわち最大判用紙の幅(長さ)より長い発熱抵抗体を備えた板状ヒータ100が、加圧ローラ207の外周に取り付けられたシリコーンゴム層208に加圧された状態で設けられている。
【0062】
そして、板状ヒータ100と加圧ローラ207との間を送られる用紙P上の未定着トナー像T1は、発熱抵抗体12の熱を受け溶融して複写用紙P面上に文字、英数字、記号、図面等の複写像を現出させる。
【0063】
この実施形態では、温度立ち上がりの高速化を実現できるとともに、非通紙部での昇温を抑制する板状ヒータを備えた加熱装置を用いたことより、立ち上がりが早く十分な熱対策を図ることが可能となる。
【0064】
板状ヒータの用途としては、複写機等の画像形成装置の定着用に用いたが、これに限らず、家庭用の電気製品、業務用や実験用の精密機器や化学反応用の機器等に装着して加熱や保温の熱源としても使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】この発明の板状ヒータに関する第1の実施形態について説明するための、(a)は正面図、(b)は(a)の背面図。
【図2】図1のI−I’断面図。
【図3】図1に電源を追加した状態の板状ヒータの等価回路図。
【図4】図1の温度変化に伴い変化する通紙部と非通紙部の抵抗値について説明するための説明図。
【図5】板状ヒータの長手方向の発熱量分布について説明するための説明図。
【図6】この発明の板状ヒータに関する第2の実施形態について説明するための一部を切欠して示す構成図。
【図7】この発明の板状ヒータに関する第3の実施形態について説明するための、(a)は正面図、(b)は(a)の背面図。
【図8】図7のII−II’断面図。
【図9】図7の動作について説明するための説明図。
【図10】この発明の板状ヒータに関する第4の実施形態について説明するための、(a)は正面図、(b)は(a)の背面図。
【図11】図10のIII−III’断面図。
【図12】この発明の加熱装置に関する一実施形態について説明するための斜視図。
【図13】図11の断面図。
【図14】この発明の画像形成装置に関する一実施形態について説明するための説明図。
【符号の説明】
【0066】
11 セラミック基板
12,121,122 発熱抵抗体
13,14 導体層
15,16,151,161 電極
15a,15b,16a,16b 導体パターン
156 接続導体
171,172 PTC発熱体
181,182,71,72,711,712,721,722 NTC発熱体
19 オーバーコート層
X 通紙部
Y 非通紙部
201 定着フィルム
202 支持体
207 加圧ローラ
208 シリコーンゴム層
209 回転軸
100 板状ヒータ
200 加熱装置
300 複写機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱・絶縁性材料で形成された長尺平板状のセラミック基板と、
前記セラミック基板上の長手方向に厚膜形成された発熱抵抗体と、
前記発熱抵抗体の両端に電力を供給する第1および第2の電極と、
前記第1および第2の電極の前記セラミック基板の長手方向の両側の沿って前記発熱抵抗体に非接触状態でそれぞれ延出した第1および第2の導体パターンと、
前記第1の導体パターンと前記発熱抵抗体を接続したPTC発熱体と、
前記第2の導体パターンと前記発熱抵抗体を接続したNTC発熱体と、
少なくとも前記電極を残して前記セラミック基板上に施したオーバーコート層と、を具備したことを特徴とする板状ヒータ。
【請求項2】
前記PTC発熱体の抵抗温度係数PTCと前記NTC発熱体の抵抗温度係数NTCの絶対値を、PTC<NTCの関係としたことを特徴とする請求項1記載の板状ヒータ。
【請求項3】
前記PTC<NTCの関係とし、前記NTC発熱体のアスペクト比を、前記PTC発熱体と等しくしたことを特徴とする請求項2記載の板状ヒータ。
【請求項4】
前記発熱抵抗体と前記PTC発熱体および前記NTC発熱体は、前記発熱抵抗体に積層される導電層を介して接続したことを特徴とする請求項1〜3記載の板状ヒータ。
【請求項5】
耐熱・絶縁性材料で形成された長尺平板状のセラミック基板と、
前記セラミック基板上の長手方向に厚膜形成された発熱抵抗体と、
前記発熱抵抗体の両端に電力を供給する第1および第2の電極と、
前記発熱抵抗体の両端部の幅方向にそれぞれ接続したNTC発熱体と、
少なくとも前記電極を残して前記セラミック基板上に施したオーバーコート層と、を具備したことを特徴とする板状ヒータ。
【請求項6】
前記NTC発熱体は、前記発熱抵抗体両端部に重畳させた状態で形成したことを特徴とする請求項5記載の板状ヒータ。
【請求項7】
耐熱・絶縁性材料で形成された長尺平板状のセラミック基板と、
前記セラミック基板上の長手方向に非接触状態で平行に厚膜形成された第1および第2の発熱抵抗体と、
前記第1および第2の発熱抵抗体の一端に接続された電力を供給する第1および第2の電極と、
前記第1および第2の発熱抵抗体の他端を共通接続し、該第1および第2の発熱抵抗体を直列接続する接続導体と、
前記第1および第2の発熱抵抗体の両端部の幅方向にそれぞれ接続したNTC発熱体と、
少なくとも前記電極を残して前記セラミック基板上に施したオーバーコート層と、を具備したことを特徴とする板状ヒータ。
【請求項8】
前記NTC発熱体は、前記発熱抵抗体両端部に重畳させた状態で形成したことを特徴とする請求7記載の板状ヒータ。
【請求項9】
加熱ローラと、
前記加熱ローラに対向配置された発熱抵抗体が圧接された請求項1〜8のいずれかに記載の板状ヒータと、
前記板状ヒータと前記加圧ローラとの間を移動可能に設けられた定着フィルムとを具備したことを特徴とする加熱装置。
【請求項10】
媒体に形成された静電潜像にトナーを付着し、該トナーを用紙に転写させて所定の画像を形成する形成手段と、
画像が形成された用紙を加圧ローラにより定着フィルムを介して前記板状ヒータに圧接しながら通過させ、前記トナーを定着するようにした請求項9記載の加熱装置とを具備したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
耐熱・絶縁性材料で形成された長尺平板状のセラミック基板と、
前記セラミック基板上の長手方向に厚膜形成された発熱抵抗体と、
前記発熱抵抗体の両端に電力を供給する第1および第2の電極と、
前記第1および第2の電極の前記セラミック基板の長手方向の両側の沿って前記発熱抵抗体に非接触状態でそれぞれ延出した第1および第2の導体パターンと、
前記第1の導体パターンと前記発熱抵抗体を接続したPTC発熱体と、
前記第2の導体パターンと前記発熱抵抗体を接続したNTC発熱体と、
少なくとも前記電極を残して前記セラミック基板上に施したオーバーコート層と、を具備したことを特徴とする板状ヒータ。
【請求項2】
前記PTC発熱体の抵抗温度係数PTCと前記NTC発熱体の抵抗温度係数NTCの絶対値を、PTC<NTCの関係としたことを特徴とする請求項1記載の板状ヒータ。
【請求項3】
前記PTC<NTCの関係とし、前記NTC発熱体のアスペクト比を、前記PTC発熱体と等しくしたことを特徴とする請求項2記載の板状ヒータ。
【請求項4】
前記発熱抵抗体と前記PTC発熱体および前記NTC発熱体は、前記発熱抵抗体に積層される導電層を介して接続したことを特徴とする請求項1〜3記載の板状ヒータ。
【請求項5】
耐熱・絶縁性材料で形成された長尺平板状のセラミック基板と、
前記セラミック基板上の長手方向に厚膜形成された発熱抵抗体と、
前記発熱抵抗体の両端に電力を供給する第1および第2の電極と、
前記発熱抵抗体の両端部の幅方向にそれぞれ接続したNTC発熱体と、
少なくとも前記電極を残して前記セラミック基板上に施したオーバーコート層と、を具備したことを特徴とする板状ヒータ。
【請求項6】
前記NTC発熱体は、前記発熱抵抗体両端部に重畳させた状態で形成したことを特徴とする請求項5記載の板状ヒータ。
【請求項7】
耐熱・絶縁性材料で形成された長尺平板状のセラミック基板と、
前記セラミック基板上の長手方向に非接触状態で平行に厚膜形成された第1および第2の発熱抵抗体と、
前記第1および第2の発熱抵抗体の一端に接続された電力を供給する第1および第2の電極と、
前記第1および第2の発熱抵抗体の他端を共通接続し、該第1および第2の発熱抵抗体を直列接続する接続導体と、
前記第1および第2の発熱抵抗体の両端部の幅方向にそれぞれ接続したNTC発熱体と、
少なくとも前記電極を残して前記セラミック基板上に施したオーバーコート層と、を具備したことを特徴とする板状ヒータ。
【請求項8】
前記NTC発熱体は、前記発熱抵抗体両端部に重畳させた状態で形成したことを特徴とする請求7記載の板状ヒータ。
【請求項9】
加熱ローラと、
前記加熱ローラに対向配置された発熱抵抗体が圧接された請求項1〜8のいずれかに記載の板状ヒータと、
前記板状ヒータと前記加圧ローラとの間を移動可能に設けられた定着フィルムとを具備したことを特徴とする加熱装置。
【請求項10】
媒体に形成された静電潜像にトナーを付着し、該トナーを用紙に転写させて所定の画像を形成する形成手段と、
画像が形成された用紙を加圧ローラにより定着フィルムを介して前記板状ヒータに圧接しながら通過させ、前記トナーを定着するようにした請求項9記載の加熱装置とを具備したことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−19965(P2010−19965A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−178843(P2008−178843)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】
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