板状体研磨装置及び研磨システム
【課題】特に大きなサイズの基板を研磨する際、スラリー流量を減らすことなく、中央付近の研磨量を確保し背厚を低減して正常な研磨を行うとともに、スラリーの循環を良くすることで、研磨した基板の成分が基板の被研磨面に再付着することを抑制する。
【解決手段】一辺の長さが1000mm以上の板状体を保持する板状体保持手段と、前記板状体保持手段に保持された前記板状体に対向して設置された研磨パッドと、を有し、前記研磨パッドは、前記板状体の対向面に形成され、前記研磨パッドと前記板状体との当接部にスラリーを供給する複数のスラリー供給孔と、前記板状体の対向面の中央部のみに形成され、前記当接部に供給された前記スラリーを吸引するスラリー吸引孔と、が形成されていることを特徴とする。
【解決手段】一辺の長さが1000mm以上の板状体を保持する板状体保持手段と、前記板状体保持手段に保持された前記板状体に対向して設置された研磨パッドと、を有し、前記研磨パッドは、前記板状体の対向面に形成され、前記研磨パッドと前記板状体との当接部にスラリーを供給する複数のスラリー供給孔と、前記板状体の対向面の中央部のみに形成され、前記当接部に供給された前記スラリーを吸引するスラリー吸引孔と、が形成されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状体研磨装置及び研磨システムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等に使用されるFPD(Flat Panel Display)用のガラス基板は、フロート法と称されるガラス製法により溶融ガラスを板状に成形し、これを特許文献1等に開示された連続式の研磨装置によって、表面の微小な凹凸やうねりを研磨除去することにより、FPD用のガラス基板として要求される平坦度を満足した薄板に製造される。
【0003】
特許文献1のような研磨装置は、研磨材を分散剤で分散させたスラリーを用いてガラス基板の表面(以下、被研磨面という)を研磨している。スラリーは、研磨パッドの中央部に設けられたスラリー供給孔から、研磨パッドの研磨面とガラス基板の被研磨面との間に供給される。研磨パッドの研磨面とガラス基板の被研磨面との間に供給されたスラリーの量が研磨面で不均一になると、研磨されたガラス基板の被研磨面の平坦度が悪化する。したがって、供給されたスラリーは、研磨面に均一に行き渡る必要がある。
【0004】
本出願人は、供給されたスラリーをガラス基板の被研磨面に均一に行き渡らせるため、研磨面の中央にスラリー供給孔を備え、研磨面が中心から外側に向かって形成された複数の溝により放射状に分割されている研磨パッドを特願2010−111116号において提案している。
【0005】
また、例えば特許文献2に記載された研磨装置は、その研磨パッドが、基板と対向する面に平面度の高い研磨面を有し、研磨面には前後方向に略等間隔で溝が多数形成され、研磨加工の際に研磨剤の拡散を促進させており、さらに研磨パッドの内部には上下貫通して基板と対向する研磨剤供給孔及び研磨剤排出孔が研磨面の略全面に交互に並んで複数形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−122351号公報
【特許文献2】特開2009−125873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のように、研磨パッドの中央部に供給されたスラリーを、研磨パッドの研磨面に形成した溝によって研磨パッドの外側まで流して排出する方法では、スラリーの流量を増やすには限界があり、スラリーの流量を制御して中央付近の研磨量を確保することが困難であった。
【0008】
例えば特許文献1のような研磨装置では、上述したように研磨材を分散剤で分散させたスラリーを用いてガラス基板の被研磨面を研磨している。このとき一辺1000mm以上のガラス基板を研磨する場合、ガラス基板の被研磨面全面にスラリーを行き渡らせるために、スラリー供給量を多くする必要がある。しかし、研磨パッドの研磨面に形成された溝によってガラス基板の中央部から周縁部に供給されるスラリー量以上に、研磨パッドの供給孔から供給されるスラリー量が多くなる。すなわち、図10に示すように、キャリアの膜体310に貼着されたガラス基板Gの被研磨面を、研磨パッド320の中央に設けられたスラリー供給孔330からスラリーSを供給しながら研磨パッド320で研磨していると、ガラス基板Gの中央部ZにスラリーSが溜まってしまう。その結果、ガラス基板Gの中央部Zが研磨パッド320から離れ、ガラス基板Gの中央部Zは研磨され難くなり、研磨不足が生じてしまうという問題がある。
【0009】
また、上記特許文献2に記載のものでは、研磨時、スラリーは研磨パッドの全面で吸引されガラス基板外に排出されるが、さらにスラリー吸引孔を設けると、ガラス基板の被研磨面の周縁部に供給されるスラリー量が少なくなり、研磨傷などが発生しやすくなる。また、スラリーを吸引する吸引ポンプの容量も限られているため、吸引ポンプを増やす必要がある。すると、スラリーの供給及び吸引の配管経路が複雑になり、コスト及びメンテナンスが増加する。また、スラリー供給及び吸引の制御が面倒になり、特に研磨対象物であるガラス基板が大きくなればなるほど、その調整が複雑になるという問題がある。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、特に大きなサイズの基板を研磨する際、スラリー流量を減らすことなく、背厚を低減しながら基板中央付近の研磨量を確保し正常な研磨を行うとともに、スラリーの循環を良くすることで、研磨した基板の成分が基板の被研磨面に再付着することを抑制することのできる板状体研磨装置及び研磨システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の板状体研磨装置は、一辺の長さが1000mm以上の板状体を保持する板状体保持手段と、前記板状体保持手段に保持された前記板状体に対向して設置された研磨パッドと、を有し、前記研磨パッドは、前記板状体の対向面に形成され、前記研磨パッドと前記板状体との当接部にスラリーを供給する複数のスラリー供給孔と、前記板状体の対向面の中央部のみに形成され、前記当接部に供給された前記スラリーを吸引するスラリー吸引孔と、が形成されていることを特徴とする。
【0012】
これにより、例えば1000mm角以上の大きなサイズの板状の基板を研磨する場合においても、研磨パッドの中央部のみからスラリーを吸引することにより、スラリー流量を減らすことなく中央付近の研磨代を確保し正常な研磨を行うことができる。
【0013】
また、一つの実施態様として、前記スラリー吸引孔が形成される前記研磨パッドの前記板状体の対向面の中央部とは、研磨パッドの中心からその径の25%以内の範囲であることが好ましい。
【0014】
このように、研磨パッドの中央部からのみスラリーを吸引することにより、スラリー流量を減らすことなく中央付近の研磨代を確保し正常な研磨を行うことができる。
【0015】
また、一つの実施態様として、前記研磨パッドの前記板状体の対向面に、任意の方向に直線状に複数の溝が形成され、前記方向に直交する方向に沿って中央部に形成された溝の幅が前記揺動方向に沿って中央部の外側に形成された溝の幅よりも広く形成されたことが好ましい。
【0016】
また、一つの実施態様として、さらに、前記研磨パッドを前記板状体保持手段に対して相対的に水平方向に揺動させる手段と、前記研磨パッドを自転及び公転させる手段を備え、前記研磨パッドの前記板状体の対向面に、前記揺動方向に直線状に複数の溝が形成され、前記揺動方向に直交する方向に沿って中央部に形成された溝の幅が前記揺動方向に沿って中央部の外側に形成された溝の幅よりも広く形成されたことが好ましい。
【0017】
これにより、研磨パッド中央部のスラリーをよく排出することができ、中央付近の研磨代を確保することができる。
【0018】
また、一つの実施態様として、前記揺動方向に沿った中央部とは、中心から前記研磨パッドの径の25%以内の範囲であることが好ましい。
【0019】
これにより、研磨パッド中央部のスラリーをよく排出することができ、中央付近の研磨代を確保することができる。
【0020】
また、同様に前記目的を達成するために、本発明の研磨システムは、一辺の長さが1000mm以上の板状体を保持する板状体保持手段と、前記板状体保持手段に保持された前記板状体に対向して設置された研磨パッドと、を有し、前記研磨パッドには、前記板状体の対向面に形成され前記研磨パッドと前記板状体との当接部にスラリーを供給する複数のスラリー供給孔と、前記板状体の対向面の中央部のみに形成され前記当接部に供給された前記スラリーを吸引するスラリー吸引孔とが形成されており、研磨剤として砥粒を含むスラリーを貯留するスラリータンクと、前記スラリータンクから、前記スラリー供給孔を介して、前記研磨パッドと前記板状体との当接部に前記スラリーを供給するスラリー供給手段と、前記スラリー吸引孔を介して、前記当接部に供給された前記スラリーを吸引し、該吸引したスラリーを前記スラリータンクに戻すスラリー回収手段と、前記スラリー供給手段に設けられた前記スラリーの濃度を検出する濃度計と、前記濃度計の検出結果に基づいて、前記スラリーの濃度が予め設定された下限値を下回った場合に、前記スラリータンクに研磨材及び所定の添加剤を加えるように制御するとともに、前記スラリーの濃度が予め設定された上限値を超えた場合に、前記濃度計の洗浄を行うように制御する制御部と、を有することを特徴とする。
【0021】
これにより、スラリーを循環させるとともに濃度計によりスラリーの濃度を検出し、濃度値が所定の下限値より低い場合にスラリーに酸化セリウムや添加剤を追加したり、濃度値が所定の上限値を超えた場合に濃度計の洗浄を行うようにした場合には、研磨レートを一定に維持し研磨代を確保するとともに、スラリー循環量を増やしたことにより研磨したガラス成分の研磨面への再付着を抑制することができる。
【0022】
また、一つの実施態様として、前記所定の添加剤は、前記研磨材の凝集を防止する分散剤であることが好ましい。
【0023】
これにより、酸化セリウムの凝集を防止し、研磨レートを維持することができる。
【0024】
また、一つの実施形態として、前記スラリー吸引孔が形成される前記研磨パッドの前記板状体の対向面の中央部とは、研磨パッドの中心からその径の25%以内の範囲であることが好ましい。
【0025】
これにより、研磨パッド中央部のスラリーをよく排出することができ、中央付近の研磨代を確保することができる。
【0026】
また、一つの実施態様として、前記濃度計の洗浄は、前記スラリーの濃度が予め設定された上限値を超えた場合に加えて、またはそれに代えて、30分〜40分毎に行うことが好ましい。
【0027】
これにより、濃度計が詰まって異常な値が検出されることなく、常に正しく濃度値の検出を行うことができる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明によれば、例えば1000mm角以上の大きなサイズの板状の基板を研磨する場合においても、スラリー流量を減らすことなく中央付近の研磨代を確保し正常な研磨を行うことができる。また、スラリーを循環させるとともに濃度計によりスラリーの濃度を検出し、濃度値が所定の下限値より低い場合にスラリーに酸化セリウムや添加剤を追加したり、濃度値が所定の上限値を超えた場合に濃度計の洗浄を行うようにした場合には、研磨レートを一定に維持し研磨代を確保するとともに、スラリー循環量を増やしたことにより研磨したガラス成分の研磨面への再付着を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の研磨システムに用いられる板状体研磨装置の一実施形態としての研磨装置の全体構造を示す平面図
【図2】膜枠及び膜枠を取り付けるキャリアの組み立て斜視図
【図3】研磨ステージ及び研磨ヘッドの実施の形態を示す側面図
【図4】図1に示す研磨装置の研磨パッドの平面図
【図5】研磨パッド表面のスラリー吸引孔1の形成範囲を示す平面図
【図6A】研磨パッドの研磨面の中央部の溝の断面図
【図6B】研磨パッドの研磨面の外側の溝の断面図
【図7】スラリー循環システムを示す概略図
【図8】濃度計による濃度検出値の時間変化を示すグラフ
【図9A】スラリー吸引したときのガラス基板の被研磨面の位置別の研磨量を示す平面図
【図9B】スラリー吸引しなかったときのガラス基板の被研磨面の位置別の研磨量を示す平面図
【図10】従来の研磨装置におけるスラリー供給の問題を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る板状体研磨装置及び研磨システムについて詳細に説明する。
【0031】
図1は、本発明の研磨システムに用いられる板状体研磨装置の一実施形態としての研磨装置の全体構造を示す平面図である。
【0032】
図1に示す研磨装置10は、例えば、縦1000mm×横1000mmあるいはそれ以上の大きなサイズのガラス基板Gで、厚みが0.7mm以下(例えば厚み0.2mm〜0.7mm)の大型のガラス基板Gの被研磨面を液晶ディスプレイ用ガラス基板に必要な平坦度に研磨する研磨装置である。
【0033】
研磨装置10は、研磨前のガラス基板Gを搬入するガラス基板搬入用コンベア12、ガラス基板Gを膜枠(板状体貼着部材)14に貼着するガラス基板貼着ステージ16、第1の研磨ステージ18、第2の研磨ステージ20、研磨完了したガラス基板Gを膜枠14から取り外すガラス基板取り外しステージ22、ガラス基板搬出用コンベア24、膜枠洗浄ステージ26、膜枠乾燥ステージ28、及び膜枠返送コンベア30を主として備えている。
【0034】
以下、説明を簡略するために、ガラス基板貼着ステージ16、第1の研磨ステージ18、第2の研磨ステージ20、ガラス基板取り外しステージ22、膜枠洗浄ステージ26、及び膜枠乾燥ステージ28については、単にステージ16、18、20、22、26、28と記載する。
【0035】
研磨装置10には、ステージ16からステージ18に膜枠14を搬送する搬送装置150、ステージ18からステージ20に膜枠14を搬送する搬送装置152、及びステージ20からステージ22に膜枠14を搬送する搬送装置154が設けられている。これらの搬送装置150、152、154は、同一構成であって研磨装置10を統括制御する制御部200によってその動作が制御されており、図1上で左右方向に同期して往復移動される。
【0036】
ガラス基板搬入用コンベア12によって搬入された研磨前のガラス基板Gは、ロボット32のアーム33に設けられた吸着パッド34に吸着保持される。そして、アーム33の回転動作によってガラス基板搬入用コンベア12からコンベア36に移動され、コンベア36によってステージ16に搬送される。
【0037】
ステージ16において、研磨前のガラス基板Gが膜枠14に貼着される。
【0038】
図2に、膜枠14及び膜枠14を取り付けるキャリア52の組み立て斜視図を示す。
【0039】
図2に示すように、膜枠14は、ガラス基板Gを貼着可能な矩形状の膜体38を、同じく矩形状の上枠40と下枠42との間で張設した後、上枠40と下枠42とを不図示のボルトによって締結することによって構成される。
【0040】
なお、膜枠14や膜体38は、矩形状に限定されるものではなく、円形形状でもよい。
【0041】
研磨前のガラス基板Gを膜枠14に貼着する方法について説明すると、膜枠14はステージ16において、不図示の昇降装置に保持されており、膜枠14の下方にガラス基板Gが位置したところで、膜枠14が昇降装置により下降移動され、図2に示す膜枠14に張設された可撓性及び自己吸着性のある膜体38がガラス基板Gの被研磨面に押し付けられる。この押圧力によってガラス基板Gの被研磨面が膜体38に貼着される。その後、膜枠14が図1の搬送装置150に保持されて、ステージ18に搬送され、ステージ18において研磨ヘッド(後述)のキャリア(板状体保持部)52に取り付けられる。なお、以下に述べる膜枠14は、膜体38が張設された全体を指して称する。
【0042】
また図2に示すように、キャリア52の上部外周部には、吊上フレーム78が不図示のボルトによって固定されている。吊上フレーム78のフランジ部には、貫通孔80、80、・・・が所定の等間隔で開口され、貫通孔80、80、・・・に摺動フレーム82(slide-contact frame)の上面に突設された摺動フレーム吊具84が下方から貫通される。また、摺動フレーム吊具84は、吊上ばね88に貫通されるとともに、不図示のスクリュウジャッキに連結されている。
【0043】
そして、スクリュウジャッキを動作させ、摺動フレーム吊具84を吊上ばね88の付勢力に抗して上方に引き上げることによって、摺動フレーム82がキャリア52に対して引き上げられる。これにより、摺動フレーム82に着脱自在に取り付けられた膜枠14が引き上げられて、膜体38に所定の張力が付与されるようになっている。
【0044】
また、キャリア52にはスピンドル56が連結されている。
【0045】
図3は、研磨ステージ及び研磨ヘッドの実施の形態を示す側面図である。
【0046】
次に、図3に示した研磨ヘッド50について説明する。なお、ステージ18の研磨ヘッド50及びステージ20の研磨ヘッド50は同一構造なので、同一の符号を付して説明する。
【0047】
図3に示すように、研磨ヘッド50は、本体ケーシング51を備えており、本体ケーシング51には不図示の公転駆動機構部が内蔵されている。公転駆動機構部は、プラネタリーギア機構部とモータとによって構成され、モータで駆動されるプラネタリーギア機構部の出力軸が、鉛直方向に垂下されたスピンドル56に連結されている。上述したように、スピンドル56にはキャリア52が連結されている。これにより、プラネタリーギア機構部が駆動されると、キャリア52及び膜枠14は所定の公転中心を中心に公転される。
【0048】
さらに、図3に示す本体ケーシング51は、スライダ158を介して昇降機構156に連結されている。昇降機構156によって本体ケーシング51がスライダ158に対して昇降されることにより、キャリア 52がステージ18の円形の研磨パッド58、及びステージ20の円形の研磨パッド60に対し進退移動されるとともに、膜枠14に貼着されたガラス基板Gの研磨面が研磨パッド58、60に所定の研磨圧力で押圧される。
【0049】
なお、研磨装置10からスライダ158を取り外し、本体ケーシング51が昇降機構156に直接連結されてもよい。
【0050】
研磨パッド58は、研磨定盤62の上面に貼り付けられる。研磨定盤62は、研磨テーブル64に軸受(不図示)を介して回転自在に支持されており、その回転中心は研磨パッド58の中心軸と同軸上に設定されている。そして不図示のモータを駆動することにより、研磨パッド58がその中心軸を中心に回動(自転)される。また、研磨パッド58側は回転しなくてもよい場合があり、必ずしもモータを必要としない。次に記載するように研磨パッド58側を揺動させてもよい。
【0051】
研磨テーブル64は、平行に配置された一対のガイドレール69、69にスライド移動自在に支持されている。研磨テーブル64をガイドレール69、69に沿って往復動作させる駆動部(不図示)を備えることにより、研磨パッド58が必要時において水平方向に揺動される。研磨パッド58の揺動方向は、図1の搬送装置150による搬送方向に対して直交する方向でもよく、この搬送方向に平行な方向でもよい。すなわち、研磨パッド58を水平方向に揺動させる方向であればよい。
【0052】
なお、研磨定盤62には、研磨パッド58の裏側にスラリーを供給するための多数のホース(不図示)が連結されている。これらのホースを絡めさせないために、研磨パッド58は所定の基準位置から所定の角度範囲で旋回するようにその回転が規制されている。前記ホースから研磨パッド58の裏側に供給されたスラリーは、研磨パッド58の内部を貫通するスラリー供給孔を通過して研磨パッド58の研磨面に供給される。
【0053】
また、研磨パッド58の旋回角度の範囲、旋回速度等の旋回動作、単位時間当たりの公転回転数等の公転動作は、図1の制御部200によって独立して制御される。
【0054】
なお、研磨パッド60の各部構成については、上述した研磨パッド58の構成と同一なので、ここではその説明を省略する。
【0055】
また、図3の如くステージ18のスライダ158には、直動ガイド70、70が取り付けられている。直動ガイド70、70はガイドレール72、72に嵌合されている。このガイドレール72、72は、図1の破線の如くステージ18のスピンドル56やキャリア52をメンテナンスするメンテナンスステージ74に向けて配設されている。
【0056】
また、図3の如くステージ20のスライダ158にも同様に、直動ガイド70、70が取り付けられ、直動ガイド70、70はガイドレール160、160に嵌合されている。このガイドレール160、160は、図1の破線の如くステージ20のスピンドル56やキャリア52をメンテナンスするメンテナンスステージ76に向けて配設されている。
【0057】
なお、研磨装置10からスライダ158を取り外し、直動ガイド70、70が昇降装置156に直接取り付けられてもよい。
【0058】
また、キャリア52には図3では不図示の空気室が設けられ、図3上の破線で示された空気供給路102に連通している。空気供給路102は、研磨ヘッド50に取り付けられた不図示のロータリージョイントを介して研磨ヘッド50の外部に延設され、バルブ104を介して空気ポンプ106に接続されている。これにより、バルブ104を開放すると、空気ポンプ106からの圧縮空気が空気供給路102を介してキャリア52に設けられた空気室に供給される。この空気室に供給された圧縮空気の圧力が膜体38を介してガラス基板Gに伝達され、この圧力によってガラス基板Gの被研磨面が図3の研磨パッド58、60に押し付けられて研磨される。
【0059】
ガラス基板Gの研磨は、図3の如く搬送装置150によって、ガラス基板Gが貼付された膜枠14をステージ16からステージ18に搬送し、ステージ18においてガラス基板Gの被研磨面を研磨後、搬送装置152によってガラス基板Gが貼付された膜枠14をステージ18からステージ20に順次搬送し、ステージ20でガラス基板 Gの被研磨面を研磨することにより2段階で実施される。
【0060】
本実施形態は、研磨パッドの研磨面の中央部のスラリー供給孔付近にスラリーを吸引するスラリー吸引孔を設け、スラリー吸引孔からスラリーを吸引して戻すことによりスラリーを循環させ、研磨パッドの研磨面の中央部に発生する背圧を低減して所望の研磨量を確保し正常な研磨を行う。
【0061】
図4は、図1に示す研磨装置10の研磨パッド58(前述したように研磨パッド60も同一構成なので以下研磨パッド58として説明する)の平面図である。
【0062】
図4には、研磨パッド58の研磨面に形成されたスラリー供給孔122及びスラリー吸引孔124とスラリーを流すための溝126とが表示されている。
【0063】
図4に示すように、研磨パッド58の研磨面には、白丸で示すスラリー供給孔122と、黒丸で示すスラリー吸引孔124とが設けられている。図4に示すスラリー供給孔122及びスラリー吸引孔124の個数や配置及び溝126の本数は一例にすぎずこれに限定されるものではなく、実際にはより多数の溝126等が形成されている。
【0064】
このように、研磨パッド58とガラス基板G(図4では不図示)との間にスラリーを供給するスラリー供給孔122は、研磨パッド58の略全面に多数(例えば数十個)設けられている。
【0065】
一方、スラリーを吸引するスラリー吸引孔124は、研磨パッド58の中央部にのみ形成されており、特に中央部からスラリーを吸引する。
【0066】
図5は、研磨パッド58の研磨面のスラリー吸引孔の形成範囲を示す平面図である。
【0067】
図5に破線の円で示すように、研磨パッド58の研磨面上にスラリー吸引孔124が形成される範囲は、研磨パッド58の中心から半径Cで描かれる円の内側の領域Fが好ましい。ここで半径Cは、研磨パッド58の研磨面の直径Hの25%以下である。半径Cが、直径Hの25%以内の場合、ガラス基板Gの被研磨面の中央部の研磨不足を解消でき、直径Hの25%超の場合、ガラス基板Gの研磨面の周縁部にスラリーが行き渡り難くなる。
【0068】
また、図4に示すように、研磨パッド58の研磨面には、スラリー供給孔から研磨パッド58の研磨面の中央部に供給されたスラリーを、研磨パッド58の中央部から研磨パッド58の外側に流し、研磨パッド58の研磨面全体にスラリーを行き渡らせるための溝126が形成されている(いわゆる、「目切り」がされている。)。
【0069】
このスラリーを流す溝126は、直線的な揺動動作を行う研磨ヘッド50(図3参照)の揺動方向と略平行な、研磨パッド58の研磨面の一つの直径Hに沿って直径Hの全体Dに亙って、直径Hに略垂直な直線状に形成されている。すなわち、溝126は、研磨ヘッド50の揺動方向に対して直交する方向に形成される。
【0070】
また、図4に示すように、直径Hに沿って、直径Hの中央部Eとその外側とでは、溝126の幅が異なっている。すなわち、直径Hの中央部Eにおいては、中央部Eの外側よりも幅が広く形成され、直径Hに沿って直径Hの全体Dに対し中央部Eの外側では中央部Eにおける幅よりも狭く形成されている。なお、ここで溝126の幅とは、図6Aに符号W1で示すとともに図6Bに符号W2で示すように、溝126を形成する凸条の角と角の間の距離をいうものとする。
【0071】
このように、溝126の幅を形成したのは、研磨パッド58の中央部Eに溜まるスラリーを中央部Eに形成された溝126を通って溝126の両方の端部から溝126の外側に排出し易くすることによって、中央部にスラリーが滞留しないようにするためである。なお、中央部E及び中央部Eの外側それぞれの溝126の深さは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0072】
図6Aは、図4に示す研磨パッド58の研磨面の直径Hに沿った中央部Eの溝の断面図であり、図6Bは、研磨パッド58の研磨面の直径Hに沿った中央部Eの外側の溝の断面図である。研磨パッド58の中央部Eにおいては、溝126の側方断面形状は凹状であり、その幅W1は3mmである。また、研磨パッド58の研磨面の直径Hに沿った中央部Eの外側においては、溝126の側方断面形状は凹状であり、その幅W2は1.5mmである。ただし、幅W1、W2は前記値に限定されず、好ましくは1.5〜3.0mmである。なお、溝126の間隔L1、L2はいずれも3mmであるがこれに限定されず、好ましくは3.0〜9.0mmである。溝126の深さT1、T2はいずれも2.0mmであるがこれに限定されず、深さT1、T2が同じであればよい。
【0073】
したがって、研磨パッド58の研磨面には、図4に示すように、スラリー供給孔122及びスラリー吸引孔124と、スラリーを流す溝126の両方が形成されている。
【0074】
本実施形態では、研磨パッド58とガラス基板Gとの当接部にスラリーを供給するとともにスラリーを吸引してスラリーをスラリータンク(後述)に戻し、戻したスラリーを再度研磨パッド58とガラス基板Gとの当接部に供給して、スラリーを循環させている。
【0075】
図7に、このスラリー循環システムの概略図を示す。
【0076】
図7に示すように、研磨パッド58の研磨面14aの対向面側にはロータリージョイント128が設置されており、これを介して、研磨パッド58の研磨面58a全体に形成されたスラリー供給孔122からスラリーが供給されるとともに、研磨パッド58の研磨面58aの中央部に形成されたスラリー吸引孔124からスラリーが吸引される。
【0077】
スラリーを供給する場合は、スラリータンク130からポンプ132によってスラリーがスラリー供給管路123に取り込まれ、ロータリージョイント128を介してスラリー供給孔122から研磨パッド58の研磨面58aとガラス基板G(図7では不図示)との当接部にスラリーが供給される。
【0078】
また、スラリーを吸引する場合には、ポンプ134によって、研磨パッド58の研磨面58aの中央部にのみ形成されたスラリー吸引孔124からスラリーが吸引される。吸引されたスラリーは、ロータリージョイント128を介してスラリー回収管路125に取り込まれ、パンチングメタルフィルタ136を介してスラリータンク130に戻される。パンチングメタルフィルタ136によって、吸引されたスラリーに含まれるガラス基板Gのカレットが除去される。スラリータンク130に戻ったスラリーは、再びポンプ132によって吸引されて研磨パッド58の研磨面58aに供給される。このようにして、スラリーの循環が行われる。
【0079】
また、ロータリージョイント128とポンプ132との間のスラリー供給管路123には、流量計138が設置されており、供給されるスラリーの流量を常に監視している。
【0080】
また、スラリー供給管路123から分岐させた管路123aには濃度計140が設置されており、例えば毎分10リット程度の流量を分岐させた管路123aに流してスラリーの濃度を監視している。濃度計140を通過したスラリーは再びスラリータンク130に戻される。なお、スラリー濃度とは、スラリー中に占める研磨材の質量割合(質量%)である。
【0081】
流量計138及び濃度計140の検出結果は制御部142に入力される。
【0082】
制御部142は、流量計138の検出結果に応じて、ポンプ132、134を制御して、研磨中におけるスラリーの供給量を制御する。
【0083】
また、制御部142は、濃度計140の検出結果に応じて、スラリーの濃度が下がっている場合には、電磁弁144を開いて研磨材収納容器146から研磨材(砥粒)をスラリータンク130に注入するとともに、電磁弁148を開いて分散剤収納容器149から分散剤をスラリータンク130に注入する。
【0084】
これは、研磨材は凝集する傾向があり、長時間研磨し続けていると、研磨材が凝集沈澱してスラリーの濃度が低くなり、それによって研磨レートが次第に悪くなって行くので、スラリーに対する添加剤として分散剤を添加して、研磨材の凝集を防止し、研磨レートを維持しようとするものである。
【0085】
研磨材としては、例えば、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄、二酸化ケイ素が挙げられ、これらの研磨材は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0086】
分散剤としては、例えば、アクリル酸/マレイン酸共重合体Na塩(ポリティA−550、ライオン(株)製)が考えられ、この他に、メタノール、クエン酸Naなどを添加してもよい。
【0087】
なお、研磨材の凝集を防止するため、スラリーに対して1〜2.5Vの微小電圧を印加してもよい。
【0088】
これらの分散剤の添加及び微小電圧の印加によって、研磨材の凝集を防止して、研磨レートの低下防止さらには研磨レートの向上を図ることが可能となる。
【0089】
濃度計140の検出結果によるスラリーの濃度管理について図8を用いて説明する。
【0090】
図8は、濃度計140による濃度検出値の時間変化を示すグラフである。縦軸はスラリー濃度、横軸は時間を示している。縦軸の上限値及び下限値は、所望のスラリー濃度の範囲の上限値及び下限値である。
【0091】
研磨初期において、スラリーのスラリー濃度は所望の範囲内で推移しているが、一定時間を過ぎるとスラリー濃度が低下する。そこで、制御部142において予め設定されたスラリー濃度の下限値を下回った時点tLで、上述したように、制御部142は、電磁弁144及び148を開いて、所定量の研磨材及び分散剤をスラリータンク130内のスラリーに加える。
【0092】
また、濃度計140内部においてスラリーが詰まったとき、スラリー濃度が上昇する。このときも、制御部142において予め設定されたスラリー濃度の上限値を超えた時点tUで、濃度計140が詰まったと制御部140が判断して、濃度計140のフラッシング(洗浄)を行う。
【0093】
濃度計140には管路123aの他に、フラッシング用の管路(不図示)が接続されているが、通常作業中においては、フラッシング用の管路の開閉弁は閉じており、管路123aの開閉弁が開いている。フラッシングをするときは、濃度計140への接続を管路123aからフラッシング用の管路に切り替えるため、フラッシング用の管路の開閉弁を開け、管路123aの開閉弁を閉じる。その後、フラッシング用の管路から送られた水と圧縮空気との混合物を濃度計140の入口から入れて、前記混合物で濃度計140の内部に詰まったスラリーを除去する。除去されたスラリーは、濃度計140の出口から排出される。フラッシング終了後、フラッシング用の管路から管路123aに接続を切り替えるため、それぞれの管路の開閉弁を元に戻す。
【0094】
フラッシングは、このように濃度計140が検出した濃度値が上限値を超えたときに行ってもよいが、30分〜40分毎に1回行うように、定期的に行ってもよい。これにより、濃度計が詰まって異常な値が検出されることなく、常に正しく濃度値の検出を行うことができる。
【0095】
図8A、図8Bに、本実施形態による効果を示す。図8A、図8Bは、ガラス基板Gの被研磨面の位置別の研磨量を示した図であり、ガラス基板Gの被研磨面の周縁部の研磨量を100として規格化している。図8Aはスラリー吸引をした場合であり、図8Bはスラリー吸引をしない場合を示している。
【0096】
図8Bに示すように、スラリー吸引をしない場合には、ガラス基板Gの被研磨面の中央部は研磨量が80であり、被研磨面の周縁部の研磨量より大幅に低くなっている。これに対して、図8Aに示すように、スラリー吸引をした場合には、ガラス基板Gの中央部における研磨量は90であり、スラリー吸引しない場合に対して改善されていることがわかる。
【0097】
以上説明したように、本実施形態においては、少なくとも1000mm角以上の大きなサイズのガラス基板を研磨する際、研磨中のスラリーを研磨パッドの中央部から強制的に吸引することで中央部に滞留するスラリーを少なくしてスラリーの背圧を抑制し、中央部における研磨量を確保することができる。
【0098】
また、研磨パッド面内に形成された孔からスラリーを吸引し、吸引したスラリーを再び研磨パッドの研磨面に供給して循環させて、スラリーの循環量を増やしている。また、このように研磨中のスラリーを吸引してスラリーの循環量を増やしたことで、研磨したガラス成分がスラリー中に滞留するのを低減することができる。またこれにより、研磨したガラス成分が研磨面に再付着するのを抑制することができる。
【0099】
また、吸引によりスラリーの循環量を増やすことで、スラリーの温度上昇を抑制し、ガラス基板への汚れ付着を抑制することができる。さらに、スラリーの温度上昇を抑制することにより、研磨パッドの軟化による選択研磨性の劣化を抑制することができる。
【0100】
以上、本発明に係る板状体研磨装置及び研磨システムについて詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0101】
10…(板状体)研磨装置、12…ガラス基板搬入用コンベア、14…膜枠(板状体貼着部材)、16…ガラス基板貼着ステージ、18…第1の研磨ステージ、20…第2の研磨ステージ、22…ガラス基板取り外しステージ、24…ガラス基板搬出用コンベア、26…膜枠洗浄ステージ、28…膜枠乾燥ステージ、30…膜枠返送コンベア、32…ロボット、33…アーム、34…吸着パッド、36…コンベア、38…膜体、51…本体ケーシング、52…キャリア(板状体保持部)、56…スピンドル、58、60…研磨パッド、62…研磨定盤、64…研磨テーブル、122…スラリー供給孔、124…スラリー吸引孔、126…溝、128…ロータリージョイント、130…スラリータンク、132、134…ポンプ、136…パンチングメタルフィルタ、138…流量計、140…濃度計、142…制御部、144、148…電磁弁、146…研磨材収納容器、149…分散剤収納容器、150…搬送装置、200…制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状体研磨装置及び研磨システムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等に使用されるFPD(Flat Panel Display)用のガラス基板は、フロート法と称されるガラス製法により溶融ガラスを板状に成形し、これを特許文献1等に開示された連続式の研磨装置によって、表面の微小な凹凸やうねりを研磨除去することにより、FPD用のガラス基板として要求される平坦度を満足した薄板に製造される。
【0003】
特許文献1のような研磨装置は、研磨材を分散剤で分散させたスラリーを用いてガラス基板の表面(以下、被研磨面という)を研磨している。スラリーは、研磨パッドの中央部に設けられたスラリー供給孔から、研磨パッドの研磨面とガラス基板の被研磨面との間に供給される。研磨パッドの研磨面とガラス基板の被研磨面との間に供給されたスラリーの量が研磨面で不均一になると、研磨されたガラス基板の被研磨面の平坦度が悪化する。したがって、供給されたスラリーは、研磨面に均一に行き渡る必要がある。
【0004】
本出願人は、供給されたスラリーをガラス基板の被研磨面に均一に行き渡らせるため、研磨面の中央にスラリー供給孔を備え、研磨面が中心から外側に向かって形成された複数の溝により放射状に分割されている研磨パッドを特願2010−111116号において提案している。
【0005】
また、例えば特許文献2に記載された研磨装置は、その研磨パッドが、基板と対向する面に平面度の高い研磨面を有し、研磨面には前後方向に略等間隔で溝が多数形成され、研磨加工の際に研磨剤の拡散を促進させており、さらに研磨パッドの内部には上下貫通して基板と対向する研磨剤供給孔及び研磨剤排出孔が研磨面の略全面に交互に並んで複数形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−122351号公報
【特許文献2】特開2009−125873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のように、研磨パッドの中央部に供給されたスラリーを、研磨パッドの研磨面に形成した溝によって研磨パッドの外側まで流して排出する方法では、スラリーの流量を増やすには限界があり、スラリーの流量を制御して中央付近の研磨量を確保することが困難であった。
【0008】
例えば特許文献1のような研磨装置では、上述したように研磨材を分散剤で分散させたスラリーを用いてガラス基板の被研磨面を研磨している。このとき一辺1000mm以上のガラス基板を研磨する場合、ガラス基板の被研磨面全面にスラリーを行き渡らせるために、スラリー供給量を多くする必要がある。しかし、研磨パッドの研磨面に形成された溝によってガラス基板の中央部から周縁部に供給されるスラリー量以上に、研磨パッドの供給孔から供給されるスラリー量が多くなる。すなわち、図10に示すように、キャリアの膜体310に貼着されたガラス基板Gの被研磨面を、研磨パッド320の中央に設けられたスラリー供給孔330からスラリーSを供給しながら研磨パッド320で研磨していると、ガラス基板Gの中央部ZにスラリーSが溜まってしまう。その結果、ガラス基板Gの中央部Zが研磨パッド320から離れ、ガラス基板Gの中央部Zは研磨され難くなり、研磨不足が生じてしまうという問題がある。
【0009】
また、上記特許文献2に記載のものでは、研磨時、スラリーは研磨パッドの全面で吸引されガラス基板外に排出されるが、さらにスラリー吸引孔を設けると、ガラス基板の被研磨面の周縁部に供給されるスラリー量が少なくなり、研磨傷などが発生しやすくなる。また、スラリーを吸引する吸引ポンプの容量も限られているため、吸引ポンプを増やす必要がある。すると、スラリーの供給及び吸引の配管経路が複雑になり、コスト及びメンテナンスが増加する。また、スラリー供給及び吸引の制御が面倒になり、特に研磨対象物であるガラス基板が大きくなればなるほど、その調整が複雑になるという問題がある。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、特に大きなサイズの基板を研磨する際、スラリー流量を減らすことなく、背厚を低減しながら基板中央付近の研磨量を確保し正常な研磨を行うとともに、スラリーの循環を良くすることで、研磨した基板の成分が基板の被研磨面に再付着することを抑制することのできる板状体研磨装置及び研磨システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の板状体研磨装置は、一辺の長さが1000mm以上の板状体を保持する板状体保持手段と、前記板状体保持手段に保持された前記板状体に対向して設置された研磨パッドと、を有し、前記研磨パッドは、前記板状体の対向面に形成され、前記研磨パッドと前記板状体との当接部にスラリーを供給する複数のスラリー供給孔と、前記板状体の対向面の中央部のみに形成され、前記当接部に供給された前記スラリーを吸引するスラリー吸引孔と、が形成されていることを特徴とする。
【0012】
これにより、例えば1000mm角以上の大きなサイズの板状の基板を研磨する場合においても、研磨パッドの中央部のみからスラリーを吸引することにより、スラリー流量を減らすことなく中央付近の研磨代を確保し正常な研磨を行うことができる。
【0013】
また、一つの実施態様として、前記スラリー吸引孔が形成される前記研磨パッドの前記板状体の対向面の中央部とは、研磨パッドの中心からその径の25%以内の範囲であることが好ましい。
【0014】
このように、研磨パッドの中央部からのみスラリーを吸引することにより、スラリー流量を減らすことなく中央付近の研磨代を確保し正常な研磨を行うことができる。
【0015】
また、一つの実施態様として、前記研磨パッドの前記板状体の対向面に、任意の方向に直線状に複数の溝が形成され、前記方向に直交する方向に沿って中央部に形成された溝の幅が前記揺動方向に沿って中央部の外側に形成された溝の幅よりも広く形成されたことが好ましい。
【0016】
また、一つの実施態様として、さらに、前記研磨パッドを前記板状体保持手段に対して相対的に水平方向に揺動させる手段と、前記研磨パッドを自転及び公転させる手段を備え、前記研磨パッドの前記板状体の対向面に、前記揺動方向に直線状に複数の溝が形成され、前記揺動方向に直交する方向に沿って中央部に形成された溝の幅が前記揺動方向に沿って中央部の外側に形成された溝の幅よりも広く形成されたことが好ましい。
【0017】
これにより、研磨パッド中央部のスラリーをよく排出することができ、中央付近の研磨代を確保することができる。
【0018】
また、一つの実施態様として、前記揺動方向に沿った中央部とは、中心から前記研磨パッドの径の25%以内の範囲であることが好ましい。
【0019】
これにより、研磨パッド中央部のスラリーをよく排出することができ、中央付近の研磨代を確保することができる。
【0020】
また、同様に前記目的を達成するために、本発明の研磨システムは、一辺の長さが1000mm以上の板状体を保持する板状体保持手段と、前記板状体保持手段に保持された前記板状体に対向して設置された研磨パッドと、を有し、前記研磨パッドには、前記板状体の対向面に形成され前記研磨パッドと前記板状体との当接部にスラリーを供給する複数のスラリー供給孔と、前記板状体の対向面の中央部のみに形成され前記当接部に供給された前記スラリーを吸引するスラリー吸引孔とが形成されており、研磨剤として砥粒を含むスラリーを貯留するスラリータンクと、前記スラリータンクから、前記スラリー供給孔を介して、前記研磨パッドと前記板状体との当接部に前記スラリーを供給するスラリー供給手段と、前記スラリー吸引孔を介して、前記当接部に供給された前記スラリーを吸引し、該吸引したスラリーを前記スラリータンクに戻すスラリー回収手段と、前記スラリー供給手段に設けられた前記スラリーの濃度を検出する濃度計と、前記濃度計の検出結果に基づいて、前記スラリーの濃度が予め設定された下限値を下回った場合に、前記スラリータンクに研磨材及び所定の添加剤を加えるように制御するとともに、前記スラリーの濃度が予め設定された上限値を超えた場合に、前記濃度計の洗浄を行うように制御する制御部と、を有することを特徴とする。
【0021】
これにより、スラリーを循環させるとともに濃度計によりスラリーの濃度を検出し、濃度値が所定の下限値より低い場合にスラリーに酸化セリウムや添加剤を追加したり、濃度値が所定の上限値を超えた場合に濃度計の洗浄を行うようにした場合には、研磨レートを一定に維持し研磨代を確保するとともに、スラリー循環量を増やしたことにより研磨したガラス成分の研磨面への再付着を抑制することができる。
【0022】
また、一つの実施態様として、前記所定の添加剤は、前記研磨材の凝集を防止する分散剤であることが好ましい。
【0023】
これにより、酸化セリウムの凝集を防止し、研磨レートを維持することができる。
【0024】
また、一つの実施形態として、前記スラリー吸引孔が形成される前記研磨パッドの前記板状体の対向面の中央部とは、研磨パッドの中心からその径の25%以内の範囲であることが好ましい。
【0025】
これにより、研磨パッド中央部のスラリーをよく排出することができ、中央付近の研磨代を確保することができる。
【0026】
また、一つの実施態様として、前記濃度計の洗浄は、前記スラリーの濃度が予め設定された上限値を超えた場合に加えて、またはそれに代えて、30分〜40分毎に行うことが好ましい。
【0027】
これにより、濃度計が詰まって異常な値が検出されることなく、常に正しく濃度値の検出を行うことができる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明によれば、例えば1000mm角以上の大きなサイズの板状の基板を研磨する場合においても、スラリー流量を減らすことなく中央付近の研磨代を確保し正常な研磨を行うことができる。また、スラリーを循環させるとともに濃度計によりスラリーの濃度を検出し、濃度値が所定の下限値より低い場合にスラリーに酸化セリウムや添加剤を追加したり、濃度値が所定の上限値を超えた場合に濃度計の洗浄を行うようにした場合には、研磨レートを一定に維持し研磨代を確保するとともに、スラリー循環量を増やしたことにより研磨したガラス成分の研磨面への再付着を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の研磨システムに用いられる板状体研磨装置の一実施形態としての研磨装置の全体構造を示す平面図
【図2】膜枠及び膜枠を取り付けるキャリアの組み立て斜視図
【図3】研磨ステージ及び研磨ヘッドの実施の形態を示す側面図
【図4】図1に示す研磨装置の研磨パッドの平面図
【図5】研磨パッド表面のスラリー吸引孔1の形成範囲を示す平面図
【図6A】研磨パッドの研磨面の中央部の溝の断面図
【図6B】研磨パッドの研磨面の外側の溝の断面図
【図7】スラリー循環システムを示す概略図
【図8】濃度計による濃度検出値の時間変化を示すグラフ
【図9A】スラリー吸引したときのガラス基板の被研磨面の位置別の研磨量を示す平面図
【図9B】スラリー吸引しなかったときのガラス基板の被研磨面の位置別の研磨量を示す平面図
【図10】従来の研磨装置におけるスラリー供給の問題を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る板状体研磨装置及び研磨システムについて詳細に説明する。
【0031】
図1は、本発明の研磨システムに用いられる板状体研磨装置の一実施形態としての研磨装置の全体構造を示す平面図である。
【0032】
図1に示す研磨装置10は、例えば、縦1000mm×横1000mmあるいはそれ以上の大きなサイズのガラス基板Gで、厚みが0.7mm以下(例えば厚み0.2mm〜0.7mm)の大型のガラス基板Gの被研磨面を液晶ディスプレイ用ガラス基板に必要な平坦度に研磨する研磨装置である。
【0033】
研磨装置10は、研磨前のガラス基板Gを搬入するガラス基板搬入用コンベア12、ガラス基板Gを膜枠(板状体貼着部材)14に貼着するガラス基板貼着ステージ16、第1の研磨ステージ18、第2の研磨ステージ20、研磨完了したガラス基板Gを膜枠14から取り外すガラス基板取り外しステージ22、ガラス基板搬出用コンベア24、膜枠洗浄ステージ26、膜枠乾燥ステージ28、及び膜枠返送コンベア30を主として備えている。
【0034】
以下、説明を簡略するために、ガラス基板貼着ステージ16、第1の研磨ステージ18、第2の研磨ステージ20、ガラス基板取り外しステージ22、膜枠洗浄ステージ26、及び膜枠乾燥ステージ28については、単にステージ16、18、20、22、26、28と記載する。
【0035】
研磨装置10には、ステージ16からステージ18に膜枠14を搬送する搬送装置150、ステージ18からステージ20に膜枠14を搬送する搬送装置152、及びステージ20からステージ22に膜枠14を搬送する搬送装置154が設けられている。これらの搬送装置150、152、154は、同一構成であって研磨装置10を統括制御する制御部200によってその動作が制御されており、図1上で左右方向に同期して往復移動される。
【0036】
ガラス基板搬入用コンベア12によって搬入された研磨前のガラス基板Gは、ロボット32のアーム33に設けられた吸着パッド34に吸着保持される。そして、アーム33の回転動作によってガラス基板搬入用コンベア12からコンベア36に移動され、コンベア36によってステージ16に搬送される。
【0037】
ステージ16において、研磨前のガラス基板Gが膜枠14に貼着される。
【0038】
図2に、膜枠14及び膜枠14を取り付けるキャリア52の組み立て斜視図を示す。
【0039】
図2に示すように、膜枠14は、ガラス基板Gを貼着可能な矩形状の膜体38を、同じく矩形状の上枠40と下枠42との間で張設した後、上枠40と下枠42とを不図示のボルトによって締結することによって構成される。
【0040】
なお、膜枠14や膜体38は、矩形状に限定されるものではなく、円形形状でもよい。
【0041】
研磨前のガラス基板Gを膜枠14に貼着する方法について説明すると、膜枠14はステージ16において、不図示の昇降装置に保持されており、膜枠14の下方にガラス基板Gが位置したところで、膜枠14が昇降装置により下降移動され、図2に示す膜枠14に張設された可撓性及び自己吸着性のある膜体38がガラス基板Gの被研磨面に押し付けられる。この押圧力によってガラス基板Gの被研磨面が膜体38に貼着される。その後、膜枠14が図1の搬送装置150に保持されて、ステージ18に搬送され、ステージ18において研磨ヘッド(後述)のキャリア(板状体保持部)52に取り付けられる。なお、以下に述べる膜枠14は、膜体38が張設された全体を指して称する。
【0042】
また図2に示すように、キャリア52の上部外周部には、吊上フレーム78が不図示のボルトによって固定されている。吊上フレーム78のフランジ部には、貫通孔80、80、・・・が所定の等間隔で開口され、貫通孔80、80、・・・に摺動フレーム82(slide-contact frame)の上面に突設された摺動フレーム吊具84が下方から貫通される。また、摺動フレーム吊具84は、吊上ばね88に貫通されるとともに、不図示のスクリュウジャッキに連結されている。
【0043】
そして、スクリュウジャッキを動作させ、摺動フレーム吊具84を吊上ばね88の付勢力に抗して上方に引き上げることによって、摺動フレーム82がキャリア52に対して引き上げられる。これにより、摺動フレーム82に着脱自在に取り付けられた膜枠14が引き上げられて、膜体38に所定の張力が付与されるようになっている。
【0044】
また、キャリア52にはスピンドル56が連結されている。
【0045】
図3は、研磨ステージ及び研磨ヘッドの実施の形態を示す側面図である。
【0046】
次に、図3に示した研磨ヘッド50について説明する。なお、ステージ18の研磨ヘッド50及びステージ20の研磨ヘッド50は同一構造なので、同一の符号を付して説明する。
【0047】
図3に示すように、研磨ヘッド50は、本体ケーシング51を備えており、本体ケーシング51には不図示の公転駆動機構部が内蔵されている。公転駆動機構部は、プラネタリーギア機構部とモータとによって構成され、モータで駆動されるプラネタリーギア機構部の出力軸が、鉛直方向に垂下されたスピンドル56に連結されている。上述したように、スピンドル56にはキャリア52が連結されている。これにより、プラネタリーギア機構部が駆動されると、キャリア52及び膜枠14は所定の公転中心を中心に公転される。
【0048】
さらに、図3に示す本体ケーシング51は、スライダ158を介して昇降機構156に連結されている。昇降機構156によって本体ケーシング51がスライダ158に対して昇降されることにより、キャリア 52がステージ18の円形の研磨パッド58、及びステージ20の円形の研磨パッド60に対し進退移動されるとともに、膜枠14に貼着されたガラス基板Gの研磨面が研磨パッド58、60に所定の研磨圧力で押圧される。
【0049】
なお、研磨装置10からスライダ158を取り外し、本体ケーシング51が昇降機構156に直接連結されてもよい。
【0050】
研磨パッド58は、研磨定盤62の上面に貼り付けられる。研磨定盤62は、研磨テーブル64に軸受(不図示)を介して回転自在に支持されており、その回転中心は研磨パッド58の中心軸と同軸上に設定されている。そして不図示のモータを駆動することにより、研磨パッド58がその中心軸を中心に回動(自転)される。また、研磨パッド58側は回転しなくてもよい場合があり、必ずしもモータを必要としない。次に記載するように研磨パッド58側を揺動させてもよい。
【0051】
研磨テーブル64は、平行に配置された一対のガイドレール69、69にスライド移動自在に支持されている。研磨テーブル64をガイドレール69、69に沿って往復動作させる駆動部(不図示)を備えることにより、研磨パッド58が必要時において水平方向に揺動される。研磨パッド58の揺動方向は、図1の搬送装置150による搬送方向に対して直交する方向でもよく、この搬送方向に平行な方向でもよい。すなわち、研磨パッド58を水平方向に揺動させる方向であればよい。
【0052】
なお、研磨定盤62には、研磨パッド58の裏側にスラリーを供給するための多数のホース(不図示)が連結されている。これらのホースを絡めさせないために、研磨パッド58は所定の基準位置から所定の角度範囲で旋回するようにその回転が規制されている。前記ホースから研磨パッド58の裏側に供給されたスラリーは、研磨パッド58の内部を貫通するスラリー供給孔を通過して研磨パッド58の研磨面に供給される。
【0053】
また、研磨パッド58の旋回角度の範囲、旋回速度等の旋回動作、単位時間当たりの公転回転数等の公転動作は、図1の制御部200によって独立して制御される。
【0054】
なお、研磨パッド60の各部構成については、上述した研磨パッド58の構成と同一なので、ここではその説明を省略する。
【0055】
また、図3の如くステージ18のスライダ158には、直動ガイド70、70が取り付けられている。直動ガイド70、70はガイドレール72、72に嵌合されている。このガイドレール72、72は、図1の破線の如くステージ18のスピンドル56やキャリア52をメンテナンスするメンテナンスステージ74に向けて配設されている。
【0056】
また、図3の如くステージ20のスライダ158にも同様に、直動ガイド70、70が取り付けられ、直動ガイド70、70はガイドレール160、160に嵌合されている。このガイドレール160、160は、図1の破線の如くステージ20のスピンドル56やキャリア52をメンテナンスするメンテナンスステージ76に向けて配設されている。
【0057】
なお、研磨装置10からスライダ158を取り外し、直動ガイド70、70が昇降装置156に直接取り付けられてもよい。
【0058】
また、キャリア52には図3では不図示の空気室が設けられ、図3上の破線で示された空気供給路102に連通している。空気供給路102は、研磨ヘッド50に取り付けられた不図示のロータリージョイントを介して研磨ヘッド50の外部に延設され、バルブ104を介して空気ポンプ106に接続されている。これにより、バルブ104を開放すると、空気ポンプ106からの圧縮空気が空気供給路102を介してキャリア52に設けられた空気室に供給される。この空気室に供給された圧縮空気の圧力が膜体38を介してガラス基板Gに伝達され、この圧力によってガラス基板Gの被研磨面が図3の研磨パッド58、60に押し付けられて研磨される。
【0059】
ガラス基板Gの研磨は、図3の如く搬送装置150によって、ガラス基板Gが貼付された膜枠14をステージ16からステージ18に搬送し、ステージ18においてガラス基板Gの被研磨面を研磨後、搬送装置152によってガラス基板Gが貼付された膜枠14をステージ18からステージ20に順次搬送し、ステージ20でガラス基板 Gの被研磨面を研磨することにより2段階で実施される。
【0060】
本実施形態は、研磨パッドの研磨面の中央部のスラリー供給孔付近にスラリーを吸引するスラリー吸引孔を設け、スラリー吸引孔からスラリーを吸引して戻すことによりスラリーを循環させ、研磨パッドの研磨面の中央部に発生する背圧を低減して所望の研磨量を確保し正常な研磨を行う。
【0061】
図4は、図1に示す研磨装置10の研磨パッド58(前述したように研磨パッド60も同一構成なので以下研磨パッド58として説明する)の平面図である。
【0062】
図4には、研磨パッド58の研磨面に形成されたスラリー供給孔122及びスラリー吸引孔124とスラリーを流すための溝126とが表示されている。
【0063】
図4に示すように、研磨パッド58の研磨面には、白丸で示すスラリー供給孔122と、黒丸で示すスラリー吸引孔124とが設けられている。図4に示すスラリー供給孔122及びスラリー吸引孔124の個数や配置及び溝126の本数は一例にすぎずこれに限定されるものではなく、実際にはより多数の溝126等が形成されている。
【0064】
このように、研磨パッド58とガラス基板G(図4では不図示)との間にスラリーを供給するスラリー供給孔122は、研磨パッド58の略全面に多数(例えば数十個)設けられている。
【0065】
一方、スラリーを吸引するスラリー吸引孔124は、研磨パッド58の中央部にのみ形成されており、特に中央部からスラリーを吸引する。
【0066】
図5は、研磨パッド58の研磨面のスラリー吸引孔の形成範囲を示す平面図である。
【0067】
図5に破線の円で示すように、研磨パッド58の研磨面上にスラリー吸引孔124が形成される範囲は、研磨パッド58の中心から半径Cで描かれる円の内側の領域Fが好ましい。ここで半径Cは、研磨パッド58の研磨面の直径Hの25%以下である。半径Cが、直径Hの25%以内の場合、ガラス基板Gの被研磨面の中央部の研磨不足を解消でき、直径Hの25%超の場合、ガラス基板Gの研磨面の周縁部にスラリーが行き渡り難くなる。
【0068】
また、図4に示すように、研磨パッド58の研磨面には、スラリー供給孔から研磨パッド58の研磨面の中央部に供給されたスラリーを、研磨パッド58の中央部から研磨パッド58の外側に流し、研磨パッド58の研磨面全体にスラリーを行き渡らせるための溝126が形成されている(いわゆる、「目切り」がされている。)。
【0069】
このスラリーを流す溝126は、直線的な揺動動作を行う研磨ヘッド50(図3参照)の揺動方向と略平行な、研磨パッド58の研磨面の一つの直径Hに沿って直径Hの全体Dに亙って、直径Hに略垂直な直線状に形成されている。すなわち、溝126は、研磨ヘッド50の揺動方向に対して直交する方向に形成される。
【0070】
また、図4に示すように、直径Hに沿って、直径Hの中央部Eとその外側とでは、溝126の幅が異なっている。すなわち、直径Hの中央部Eにおいては、中央部Eの外側よりも幅が広く形成され、直径Hに沿って直径Hの全体Dに対し中央部Eの外側では中央部Eにおける幅よりも狭く形成されている。なお、ここで溝126の幅とは、図6Aに符号W1で示すとともに図6Bに符号W2で示すように、溝126を形成する凸条の角と角の間の距離をいうものとする。
【0071】
このように、溝126の幅を形成したのは、研磨パッド58の中央部Eに溜まるスラリーを中央部Eに形成された溝126を通って溝126の両方の端部から溝126の外側に排出し易くすることによって、中央部にスラリーが滞留しないようにするためである。なお、中央部E及び中央部Eの外側それぞれの溝126の深さは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0072】
図6Aは、図4に示す研磨パッド58の研磨面の直径Hに沿った中央部Eの溝の断面図であり、図6Bは、研磨パッド58の研磨面の直径Hに沿った中央部Eの外側の溝の断面図である。研磨パッド58の中央部Eにおいては、溝126の側方断面形状は凹状であり、その幅W1は3mmである。また、研磨パッド58の研磨面の直径Hに沿った中央部Eの外側においては、溝126の側方断面形状は凹状であり、その幅W2は1.5mmである。ただし、幅W1、W2は前記値に限定されず、好ましくは1.5〜3.0mmである。なお、溝126の間隔L1、L2はいずれも3mmであるがこれに限定されず、好ましくは3.0〜9.0mmである。溝126の深さT1、T2はいずれも2.0mmであるがこれに限定されず、深さT1、T2が同じであればよい。
【0073】
したがって、研磨パッド58の研磨面には、図4に示すように、スラリー供給孔122及びスラリー吸引孔124と、スラリーを流す溝126の両方が形成されている。
【0074】
本実施形態では、研磨パッド58とガラス基板Gとの当接部にスラリーを供給するとともにスラリーを吸引してスラリーをスラリータンク(後述)に戻し、戻したスラリーを再度研磨パッド58とガラス基板Gとの当接部に供給して、スラリーを循環させている。
【0075】
図7に、このスラリー循環システムの概略図を示す。
【0076】
図7に示すように、研磨パッド58の研磨面14aの対向面側にはロータリージョイント128が設置されており、これを介して、研磨パッド58の研磨面58a全体に形成されたスラリー供給孔122からスラリーが供給されるとともに、研磨パッド58の研磨面58aの中央部に形成されたスラリー吸引孔124からスラリーが吸引される。
【0077】
スラリーを供給する場合は、スラリータンク130からポンプ132によってスラリーがスラリー供給管路123に取り込まれ、ロータリージョイント128を介してスラリー供給孔122から研磨パッド58の研磨面58aとガラス基板G(図7では不図示)との当接部にスラリーが供給される。
【0078】
また、スラリーを吸引する場合には、ポンプ134によって、研磨パッド58の研磨面58aの中央部にのみ形成されたスラリー吸引孔124からスラリーが吸引される。吸引されたスラリーは、ロータリージョイント128を介してスラリー回収管路125に取り込まれ、パンチングメタルフィルタ136を介してスラリータンク130に戻される。パンチングメタルフィルタ136によって、吸引されたスラリーに含まれるガラス基板Gのカレットが除去される。スラリータンク130に戻ったスラリーは、再びポンプ132によって吸引されて研磨パッド58の研磨面58aに供給される。このようにして、スラリーの循環が行われる。
【0079】
また、ロータリージョイント128とポンプ132との間のスラリー供給管路123には、流量計138が設置されており、供給されるスラリーの流量を常に監視している。
【0080】
また、スラリー供給管路123から分岐させた管路123aには濃度計140が設置されており、例えば毎分10リット程度の流量を分岐させた管路123aに流してスラリーの濃度を監視している。濃度計140を通過したスラリーは再びスラリータンク130に戻される。なお、スラリー濃度とは、スラリー中に占める研磨材の質量割合(質量%)である。
【0081】
流量計138及び濃度計140の検出結果は制御部142に入力される。
【0082】
制御部142は、流量計138の検出結果に応じて、ポンプ132、134を制御して、研磨中におけるスラリーの供給量を制御する。
【0083】
また、制御部142は、濃度計140の検出結果に応じて、スラリーの濃度が下がっている場合には、電磁弁144を開いて研磨材収納容器146から研磨材(砥粒)をスラリータンク130に注入するとともに、電磁弁148を開いて分散剤収納容器149から分散剤をスラリータンク130に注入する。
【0084】
これは、研磨材は凝集する傾向があり、長時間研磨し続けていると、研磨材が凝集沈澱してスラリーの濃度が低くなり、それによって研磨レートが次第に悪くなって行くので、スラリーに対する添加剤として分散剤を添加して、研磨材の凝集を防止し、研磨レートを維持しようとするものである。
【0085】
研磨材としては、例えば、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄、二酸化ケイ素が挙げられ、これらの研磨材は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0086】
分散剤としては、例えば、アクリル酸/マレイン酸共重合体Na塩(ポリティA−550、ライオン(株)製)が考えられ、この他に、メタノール、クエン酸Naなどを添加してもよい。
【0087】
なお、研磨材の凝集を防止するため、スラリーに対して1〜2.5Vの微小電圧を印加してもよい。
【0088】
これらの分散剤の添加及び微小電圧の印加によって、研磨材の凝集を防止して、研磨レートの低下防止さらには研磨レートの向上を図ることが可能となる。
【0089】
濃度計140の検出結果によるスラリーの濃度管理について図8を用いて説明する。
【0090】
図8は、濃度計140による濃度検出値の時間変化を示すグラフである。縦軸はスラリー濃度、横軸は時間を示している。縦軸の上限値及び下限値は、所望のスラリー濃度の範囲の上限値及び下限値である。
【0091】
研磨初期において、スラリーのスラリー濃度は所望の範囲内で推移しているが、一定時間を過ぎるとスラリー濃度が低下する。そこで、制御部142において予め設定されたスラリー濃度の下限値を下回った時点tLで、上述したように、制御部142は、電磁弁144及び148を開いて、所定量の研磨材及び分散剤をスラリータンク130内のスラリーに加える。
【0092】
また、濃度計140内部においてスラリーが詰まったとき、スラリー濃度が上昇する。このときも、制御部142において予め設定されたスラリー濃度の上限値を超えた時点tUで、濃度計140が詰まったと制御部140が判断して、濃度計140のフラッシング(洗浄)を行う。
【0093】
濃度計140には管路123aの他に、フラッシング用の管路(不図示)が接続されているが、通常作業中においては、フラッシング用の管路の開閉弁は閉じており、管路123aの開閉弁が開いている。フラッシングをするときは、濃度計140への接続を管路123aからフラッシング用の管路に切り替えるため、フラッシング用の管路の開閉弁を開け、管路123aの開閉弁を閉じる。その後、フラッシング用の管路から送られた水と圧縮空気との混合物を濃度計140の入口から入れて、前記混合物で濃度計140の内部に詰まったスラリーを除去する。除去されたスラリーは、濃度計140の出口から排出される。フラッシング終了後、フラッシング用の管路から管路123aに接続を切り替えるため、それぞれの管路の開閉弁を元に戻す。
【0094】
フラッシングは、このように濃度計140が検出した濃度値が上限値を超えたときに行ってもよいが、30分〜40分毎に1回行うように、定期的に行ってもよい。これにより、濃度計が詰まって異常な値が検出されることなく、常に正しく濃度値の検出を行うことができる。
【0095】
図8A、図8Bに、本実施形態による効果を示す。図8A、図8Bは、ガラス基板Gの被研磨面の位置別の研磨量を示した図であり、ガラス基板Gの被研磨面の周縁部の研磨量を100として規格化している。図8Aはスラリー吸引をした場合であり、図8Bはスラリー吸引をしない場合を示している。
【0096】
図8Bに示すように、スラリー吸引をしない場合には、ガラス基板Gの被研磨面の中央部は研磨量が80であり、被研磨面の周縁部の研磨量より大幅に低くなっている。これに対して、図8Aに示すように、スラリー吸引をした場合には、ガラス基板Gの中央部における研磨量は90であり、スラリー吸引しない場合に対して改善されていることがわかる。
【0097】
以上説明したように、本実施形態においては、少なくとも1000mm角以上の大きなサイズのガラス基板を研磨する際、研磨中のスラリーを研磨パッドの中央部から強制的に吸引することで中央部に滞留するスラリーを少なくしてスラリーの背圧を抑制し、中央部における研磨量を確保することができる。
【0098】
また、研磨パッド面内に形成された孔からスラリーを吸引し、吸引したスラリーを再び研磨パッドの研磨面に供給して循環させて、スラリーの循環量を増やしている。また、このように研磨中のスラリーを吸引してスラリーの循環量を増やしたことで、研磨したガラス成分がスラリー中に滞留するのを低減することができる。またこれにより、研磨したガラス成分が研磨面に再付着するのを抑制することができる。
【0099】
また、吸引によりスラリーの循環量を増やすことで、スラリーの温度上昇を抑制し、ガラス基板への汚れ付着を抑制することができる。さらに、スラリーの温度上昇を抑制することにより、研磨パッドの軟化による選択研磨性の劣化を抑制することができる。
【0100】
以上、本発明に係る板状体研磨装置及び研磨システムについて詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0101】
10…(板状体)研磨装置、12…ガラス基板搬入用コンベア、14…膜枠(板状体貼着部材)、16…ガラス基板貼着ステージ、18…第1の研磨ステージ、20…第2の研磨ステージ、22…ガラス基板取り外しステージ、24…ガラス基板搬出用コンベア、26…膜枠洗浄ステージ、28…膜枠乾燥ステージ、30…膜枠返送コンベア、32…ロボット、33…アーム、34…吸着パッド、36…コンベア、38…膜体、51…本体ケーシング、52…キャリア(板状体保持部)、56…スピンドル、58、60…研磨パッド、62…研磨定盤、64…研磨テーブル、122…スラリー供給孔、124…スラリー吸引孔、126…溝、128…ロータリージョイント、130…スラリータンク、132、134…ポンプ、136…パンチングメタルフィルタ、138…流量計、140…濃度計、142…制御部、144、148…電磁弁、146…研磨材収納容器、149…分散剤収納容器、150…搬送装置、200…制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一辺の長さが1000mm以上の板状体を保持する板状体保持手段と、
前記板状体保持手段に保持された前記板状体に対向して設置された研磨パッドと、を有し、
前記研磨パッドは、
前記板状体の対向面に形成され、前記研磨パッドと前記板状体との当接部にスラリーを供給する複数のスラリー供給孔と、
前記板状体の対向面の中央部のみに形成され、前記当接部に供給された前記スラリーを吸引するスラリー吸引孔と、
が形成されていることを特徴とする板状体研磨装置。
【請求項2】
前記スラリー吸引孔が形成される前記研磨パッドの前記板状体の対向面の中央部とは、研磨パッドの中心からその径の25%以内の範囲である請求項1に記載の板状体研磨装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の板状体研磨装置であって、
前記研磨パッドの前記板状体の対向面に、任意の方向に直線状に複数の溝が形成され、前記方向に直交する方向に沿って中央部に形成された溝の幅が前記揺動方向に沿って中央部の外側に形成された溝の幅よりも広く形成された板状体研磨装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の板状体研磨装置であって、さらに、前記研磨パッドを前記板状体保持手段に対して相対的に水平方向に揺動させる手段と、前記研磨パッドを自転及び公転させる手段を備え、
前記研磨パッドの前記板状体の対向面に、前記揺動方向に直線状に複数の溝が形成され、前記揺動方向に直交する方向に沿って中央部に形成された溝の幅が前記揺動方向に沿って中央部の外側に形成された溝の幅よりも広く形成された板状体研磨装置。
【請求項5】
前記揺動方向に沿った中央部とは、中心から前記研磨パッドの径の25%以内の範囲である請求項3または4に記載の板状体研磨装置。
【請求項6】
一辺の長さが1000mm以上の板状体を保持する板状体保持手段と、
前記板状体保持手段に保持された前記板状体に対向して設置された研磨パッドと、を有し、
前記研磨パッドには、前記板状体の対向面に形成され前記研磨パッドと前記板状体との当接部にスラリーを供給する複数のスラリー供給孔と、前記板状体の対向面の中央部のみに形成され前記当接部に供給された前記スラリーを吸引するスラリー吸引孔とが形成されており、
研磨剤として砥粒を含むスラリーを貯留するスラリータンクと、
前記スラリータンクから、前記スラリー供給孔を介して、前記研磨パッドと前記板状体との当接部に前記スラリーを供給するスラリー供給手段と、
前記スラリー吸引孔を介して、前記当接部に供給された前記スラリーを吸引し、該吸引したスラリーを前記スラリータンクに戻すスラリー回収手段と、
前記スラリー供給手段に設けられた前記スラリーの濃度を検出する濃度計と、
前記濃度計の検出結果に基づいて、前記スラリーの濃度が予め設定された下限値を下回った場合に、前記スラリータンクに研磨材及び所定の添加剤を加えるように制御するとともに、前記スラリーの濃度が予め設定された上限値を超えた場合に、前記濃度計の洗浄を行うように制御する制御部と、
を有することを特徴とする研磨システム。
【請求項7】
前記所定の添加剤は、前記研磨材の凝集を防止する分散剤である請求項6に記載の研磨システム。
【請求項8】
前記スラリー吸引孔が形成される前記研磨パッドの前記板状体の対向面の中央部とは、研磨パッドの中心からその径の25%以内の範囲である請求項6または7に記載の研磨システム。
【請求項9】
前記濃度計の洗浄は、前記スラリーの濃度が予め設定された上限値を超えた場合に加えて、またはそれに代えて、30分〜40分毎に行う請求項6〜8のいずれか一項に記載の研磨システム。
【請求項1】
一辺の長さが1000mm以上の板状体を保持する板状体保持手段と、
前記板状体保持手段に保持された前記板状体に対向して設置された研磨パッドと、を有し、
前記研磨パッドは、
前記板状体の対向面に形成され、前記研磨パッドと前記板状体との当接部にスラリーを供給する複数のスラリー供給孔と、
前記板状体の対向面の中央部のみに形成され、前記当接部に供給された前記スラリーを吸引するスラリー吸引孔と、
が形成されていることを特徴とする板状体研磨装置。
【請求項2】
前記スラリー吸引孔が形成される前記研磨パッドの前記板状体の対向面の中央部とは、研磨パッドの中心からその径の25%以内の範囲である請求項1に記載の板状体研磨装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の板状体研磨装置であって、
前記研磨パッドの前記板状体の対向面に、任意の方向に直線状に複数の溝が形成され、前記方向に直交する方向に沿って中央部に形成された溝の幅が前記揺動方向に沿って中央部の外側に形成された溝の幅よりも広く形成された板状体研磨装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の板状体研磨装置であって、さらに、前記研磨パッドを前記板状体保持手段に対して相対的に水平方向に揺動させる手段と、前記研磨パッドを自転及び公転させる手段を備え、
前記研磨パッドの前記板状体の対向面に、前記揺動方向に直線状に複数の溝が形成され、前記揺動方向に直交する方向に沿って中央部に形成された溝の幅が前記揺動方向に沿って中央部の外側に形成された溝の幅よりも広く形成された板状体研磨装置。
【請求項5】
前記揺動方向に沿った中央部とは、中心から前記研磨パッドの径の25%以内の範囲である請求項3または4に記載の板状体研磨装置。
【請求項6】
一辺の長さが1000mm以上の板状体を保持する板状体保持手段と、
前記板状体保持手段に保持された前記板状体に対向して設置された研磨パッドと、を有し、
前記研磨パッドには、前記板状体の対向面に形成され前記研磨パッドと前記板状体との当接部にスラリーを供給する複数のスラリー供給孔と、前記板状体の対向面の中央部のみに形成され前記当接部に供給された前記スラリーを吸引するスラリー吸引孔とが形成されており、
研磨剤として砥粒を含むスラリーを貯留するスラリータンクと、
前記スラリータンクから、前記スラリー供給孔を介して、前記研磨パッドと前記板状体との当接部に前記スラリーを供給するスラリー供給手段と、
前記スラリー吸引孔を介して、前記当接部に供給された前記スラリーを吸引し、該吸引したスラリーを前記スラリータンクに戻すスラリー回収手段と、
前記スラリー供給手段に設けられた前記スラリーの濃度を検出する濃度計と、
前記濃度計の検出結果に基づいて、前記スラリーの濃度が予め設定された下限値を下回った場合に、前記スラリータンクに研磨材及び所定の添加剤を加えるように制御するとともに、前記スラリーの濃度が予め設定された上限値を超えた場合に、前記濃度計の洗浄を行うように制御する制御部と、
を有することを特徴とする研磨システム。
【請求項7】
前記所定の添加剤は、前記研磨材の凝集を防止する分散剤である請求項6に記載の研磨システム。
【請求項8】
前記スラリー吸引孔が形成される前記研磨パッドの前記板状体の対向面の中央部とは、研磨パッドの中心からその径の25%以内の範囲である請求項6または7に記載の研磨システム。
【請求項9】
前記濃度計の洗浄は、前記スラリーの濃度が予め設定された上限値を超えた場合に加えて、またはそれに代えて、30分〜40分毎に行う請求項6〜8のいずれか一項に記載の研磨システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【公開番号】特開2013−39639(P2013−39639A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178443(P2011−178443)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】
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