説明

板状内蔵アンテナ、並びにそれを用いた高周波モジュールおよび無線端末

【課題】小型、薄型構造で、高感度かつ安定動作をする内蔵アンテナを実現する。
【解決手段】板状内蔵アンテナは、板状グラウンドとメアンダ形状を形成する帯状導体が凹凸状の遅波構造を介して結合されている。メアンダ形状導体によるインダクタンスと凹凸構造によるキャパシタンスからなる共振回路で、波長に比べて短い放射導体全長が生成する給電部リアクタンスを相殺して給電部の電力整合を取る構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状内蔵アンテナ、並びにそれを用いた高周波モジュールおよび無線端末に係り、特に、電磁波を用いて通信、遠隔情報取得、遠隔物検知、および放送などの機能を、情報処理機能をあらかじめ有する携帯情報機器に付与するための、高周波モジュールを実現するキーデバイスである板状内蔵アンテナ、並びにそれを用いた同高周波モジュール自身および無線端末に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯情報機器に付加する装置の寸法はこれら携帯情報機器の寸法より大幅に小さいことが要求される。特許文献1には、導体板にスロットを形成し、このスロットを境界にして第1、第2の放射導体を形成し、これらの放射導体に導体縁を利用してスロット内で給電するようにした板状多重アンテナが開示されている。
【0003】
特許文献2には、グラウンドと、グラウンドのエッジと平行な方向に延びる直線状アームと、その先に繋がれたメアンダ状アームとを一体化した無線LAN用のアンテナが開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、切片状の第1周波用エレメントと第2からなる(メアンダ形状の)周波用エレメントからなるアンテナエレメントと、グラウンド板とを一体化した平面アンテナが開示されている。
【0005】
一方、特許文献4には、給電点近傍に複数の切り欠き(凹凸)部分を設けて特性調整をするアンテナが開示されている。
【0006】
さらに、特許文献5には、接地面に、複数のスロットによる凹凸が繰り返す部分を有するアンテナが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−48119号公報
【特許文献2】特開2009−153076号公報
【特許文献3】特開2005−136784号公報
【特許文献4】特開平5−129824号公報
【特許文献5】特開2006−325178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電磁波を用いることにより、非接触で遠隔の通信・放送が可能となる。また、これら機能を用いて、遠隔対象物の情報取得、および該遠隔対象物の有無を検知する技術が広く知られている。一方、近年の半導体技術およびデジタル技術の進歩により、社会生活に浸透しているほとんどの電子機器はマイコンあるいはマイクロプロセッサを具備しており、簡単な回路制御から複雑な信号処理までを実行可能なポテンシャルを有するようになっている。特に、最先端のデジタル技術が投入され開発がおこなわれてきた、携帯電話およびパーソナルコンピュータのマイクロプロセッサの処理能力は群を抜いており、デジタル信号処理に関わるほとんどの動作を、付加装置なく実現できる。最近登場したゲーム機を含め、これら携帯情報機器は、単純な構成の付加装置を加えることで、本来これらの機器が有していない新しい機能を実現することができ、無線機能をこのような情報端末機器に付与するための多くの付加装置が開発中あるいは既に開発されている。無線機能をこのような情報端末機器に付与するための装置の主たる構成要素は、高周波回路とアンテナである。前者は、半導体集積回路技術の進歩によって、一つあるいは数個の半導体チップと数個のアナログチップ部品をプリント基板上に設置することにより、小型・薄型形状で実現可能である。後者は、無線の通信・放送の伝送路となる自由空間との効率良い電磁波エネルギのやり取りを実現するために、用いる電磁波の波長の数分の一の寸法が必要となり、該付加装置の小型・薄型形状での実現の課題となっている。自由空間を効率良く電磁波が伝搬する周波数帯は地球上の該電磁波の伝播特性により300MHz〜3GHzに制限されており、波長では、1m〜10cmとなる。これらの数分の一の波長は、近年の、携帯電話、ノートパソコン、携帯ゲーム機の寸法と同程度であるから、これら携帯情報機器に付加する装置の寸法はこれら携帯情報機器の寸法より大幅に小さいことが要求され、アンテナの動作は、一般に非効率、不安定となる。アンテナの動作は、その寸法が使用する電磁波の半波長である場合、最も高効率、高安定である。これは、波動の性質により正弦波の半分の形状が保たれるためと解釈される。半波長より小さな寸法で高効率、高安定のアンテナを実現するために多くの技術が提案されている。
【0009】
半波長より小さな寸法のアンテナは、上述の正弦波の半分の形状を実現するように電磁界のエネルギがアンテナ以外の部分に電気経路を通じて広がり、たとえば、アンテナが回路基板に電気的に接合していると電磁波のエネルギは回路基板にも広がり、回路基板の置かれた環境、たとえば人体、什器等の影響を強く受け、安定な動作の妨げとなる。アンテナの動作を安定させるためには、アンテナを他の導体構造より電気的に孤立させ、且つアンテナ構造の内部にグラウンド部を内在させることが有効で、この技術に関しては、特許文献1に詳細な説明が述べられている。本技術はアンテナの動作安定性に大きな効果を示すものの、アンテナのグラウンド部とそれ以外の電磁波の放射に強く寄与する部分である放射部の寸法が同程度必要となり、アンテナ寸法の小型化には十分な効果が得られていない。
【0010】
アンテナの高効率化に関しては、電磁波が正弦波の半分の形状に広がるように構造を実現する技術が複数提案されている。電磁波のエネルギは、静電界、誘導界、放射界の三種類の姿態で空間に広がるが、このうち遠方まで効率良くエネルギを伝達することができるのは放射界であり、放射界は導体上を流れる電流によって形成される。従って、電流が正弦波の半分の形状に広がるような構造を実現すれば、アンテナの高効率動作は実現される。
【0011】
その方法の一つは、特許文献2や特許文献3に開示されたメアンダ形状の採用である。特許文献2の発明では、直線状アームの先を折り曲げてそこにメアンダ状アームを接続することにより、アンテナが所望の周波数帯域で整合が取れるように調整できる。特許文献3の発明では、メアンダ形状のエレメント部への給電線であるストリップラインが、インピーダンス整合の役割も果たしている。しかし、メアンダ状のアンテナ長さが半波長より短くなると、給電点におけるリアクタンス成分が急激に増加するため、給電点との良好なインピーダンス整合を実現することができない。この点に関し、特許文献2、3では、十分な配慮がなされていない。
【0012】
他の方法としては、電流の進む経路を蛇行させ同経路の長さを小寸法中で大きくとることである。この技術に関しては、特許文献4および特許文献5に詳細な記述がある。前者は、平板導体に切り込みを入れて電流を蛇行させることにより小寸法に正弦波の半分の長さを実現する手法であるが、使用する電磁波の周波数とアンテナに許されている寸法に大きな隔たりがある場合は適用が困難である。後者は、波長の数分の一(四分の一)の帯状導体による電流路と、全長の数分の一(約五分の一)のスロットによるスロット構造を給電点で結合する(給電点の両側に形成する)ことにより、波長の二分の一に当たる正弦波の半分の形状への電磁波を形成する電流の広がりを得ようとするものであるが、全体として寸法をλの1/2より小さく縮小することはできない。
【0013】
本発明の課題は、電磁波エネルギの外部空間とのやり取りを高効率および安定的に実現するアンテナを、該電磁波の波長に比べて小さな寸法で実現することであり、さらに、そのようなアンテナを用いた小型、薄型に高周波モジュールを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の代表的なものを示すと次のとおりである。すなわち、本発明の板状内蔵アンテナは、メアンダ形状の帯状導体と、前記帯状導体との間に平行な隙間を有し、一端が前記帯状導体に接続された板状グラウンドと、前記板状グラウンドと前記帯状導体との接続部に設定された給電点とを備えてなり、
前記帯状導体は、該帯状導体と前記給電点とを結合するインピーダンス整合部と、アンテナ部とを備えており、前記インピーダンス整合部は、凹凸状構造を含み、該凹凸状構造は、前記隙間に面する前記帯状導体の縁の一部分または前記板状グラウンドの縁の一部分の、いずれか一方または双方にまたがって形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、使用電磁波の波長λの1/2より小さい寸法で高効率に電磁波のやり取りを安定的に可能とするアンテナが実現できる。また、アンテナは板状なので、薄型構造のアンテナを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施例になる板状内蔵アンテナの全体構造を示す斜視図。
【図2A】第1の実施例の板状内蔵アンテナの平面図。
【図2B】通信に使用される電磁波の波長と、リアクタンスとの関係を示す図。
【図2C】第1の実施例になるアンテナ部の、インダクタンスLと放射抵抗Rによるメアンダ線路の等価回路を示す図。
【図2D】メアンダ形状の帯状導体上を流れる電流と平板グラウンド部上のイメージ電流を示す図。
【図3A】第1の実施例になるアンテナ部の遅波構造として、アスペクト1の凹凸構造、およびこの遅波構造によって生成されるキャパシタンスC、インダクタンスLの関係を示す図。
【図3B】比較例として、平板グラウンド部の上縁に台形の凸構造、凹構造が交互に配置された遅波構造、およびこの遅波構造によって生成されるキャパシタンスC、インダクタンスLの関係を示す図。
【図3C】比較例として、平板グラウンド部の上縁に逆台形の凸構造、凹構造が交互に配置され遅波構造、およびこの遅波構造によって生成されるキャパシタンスC、インダクタンスLの関係を示す図。
【図4】本発明の一実施例になる板状内蔵アンテナの構造図。
【図5】本発明の一実施例になる板状内蔵アンテナの構造図。
【図6A】本発明の一実施例になる板状内蔵アンテナの構造図。
【図6B】本発明の一実施例になる板状内蔵アンテナの構造図。
【図6C】本発明の一実施例になる板状内蔵アンテナの構造図。
【図6D】本発明の一実施例になる板状内蔵アンテナの構造図。
【図7A】本発明の一実施例になる板状内蔵アンテナの構造図。
【図7B】本発明の一実施例になる板状内蔵アンテナの構造図。
【図7C】本発明の一実施例になる板状内蔵アンテナの構造図。
【図8A】本発明の一実施例になる板状内蔵アンテナと高周波回路が搭載された回路基板を一体実装する構造図。
【図8B】本発明の一実施例になる板状内蔵アンテナと高周波回路が搭載された回路基板を一体実装する構造図。
【図9A】本発明の一実施例になる板状内蔵アンテナと高周波回路が搭載された回路基板を一体実装する構造図。
【図9B】本発明の一実施例になる板状内蔵アンテナと高周波回路が搭載された回路基板を一体実装する構造図。
【図10A】本発明の一実施例になる板状内蔵アンテナと高周波回路が搭載された回路基板を一体実装する構造図。
【図10B】本発明の一実施例になる板状内蔵アンテナと高周波回路が搭載された回路基板を一体実装する構造図。
【図11A】本発明の一実施例になる板状内蔵アンテナを用いた高周波モジュールの構造図。
【図11B】本発明の一実施例になる板状内蔵アンテナを用いた高周波モジュールの構造図。
【図12A】本発明の一実施例になる板状内蔵アンテナを用いた高周波モジュールの構造図。
【図12B】本発明の一実施例になる板状内蔵アンテナを用いた高周波モジュールの構造図。
【図13】本発明の一実施例になる板状内蔵アンテナを用いた高周波モジュールの構造図。
【図14】本発明の一実施例になる板状内蔵アンテナを用いた高周波モジュールの構造図。
【図15】本発明の一実施例になる板状内蔵アンテナを用いた高周波モジュールの構造図。
【図16A】本発明の一実施例になる板状内蔵アンテナを用いた高周波モジュールの携帯情報端末への適用例。
【図16B】本発明の一実施例になる板状内蔵アンテナを用いた高周波モジュールの携帯情報端末への適用例。
【図17】本発明の一実施例になる板状内蔵アンテナを用いた高周波モジュールの携帯情報端末への適用例。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の代表的な実施形態によれば、一体の板状構造において、板状グラウンドとメアンダ形状を形成する帯状導体を実現し、且つ、該板状グラウンドの一部分と該帯状導体の一部分で生成される凹凸状の遅波構造を介して、該メアンダ形状の帯状導体と該板状グラウンドを給電点の両側に結合するアンテナ構造を採用する。本構造はアンテナ構造の内部にグラウンド部を有するのでアンテナ動作が安定となる。アンテナの寸法が数分の一波長より小さくなると、給電点におけるリアクタンス成分が急激に増加する。このリアクタンス成分は高周波回路とアンテナ間の給電点での高周波エネルギの伝達効率を著しく減少させる。給電点を出発点とする電流経路が二分の一波長の半分、即ち四分の一波長に近づけば正弦波の形状から明らかなようにこのリアクタンス成分は小さくなる。該電流経路が四分の一波長に満たない構造では、高周波回路とアンテナ間の給電点での電磁波エネルギ伝達効率を低下させるリアクタンス成分を何らかの方法で相殺することで、アンテナ動作の高効率化が実現できる。本発明のアンテナでは給電点からみると、帯状導体のメアンダ構造と該板状グラウンドの一部分と該帯状導体の一部分で生成される凹凸状の遅波構造が直列に結合している。前者は一定の導体間隔で導体線路が進行しているのでこれによりインダクタンス成分が生成される。後者は、帯状導体グラウンドの間隔が狭められているのでこれによりキャパシタンス成分が生成される。これらの直列結合により実現された共振回路が、各々のインダクタンス値とキャパシタンス値では得られない大きな値のリアクタンス値を実現し、寸法が数分の一波長より小さいアンテナが給電点に生成するアンテナ効率を低減させる不要なリアクタンス成分を相殺させることができる。
【0018】
本発明では、LC共振回路をアンテナ構造内部に含むので、アンテナが良好な特性を示す周波数帯域は狭くなる。この問題を解決するために、該メアンダ構造に対して、無給電素子を付加することが有効で、該メアンダ線路に対して非接触で対向させて帯状導体線路あるいはメアンダ形状帯状導体線路を併置することで実現可能である。先述した原理を用いて、非接触に併置するメアンダ形状帯状導体線路の一部分に凹凸形状からなる遅波構造を組み込むことで、LC共振現象を用いて実際の寸法で得られるインダクタンス値およびキャパシタンス値より大きなリアクタンス値を実現して該メアンダ形状帯状導体線路の長さを短くすることも可能である。
【0019】
本発明によれば使用電磁波の波長の数分の一より小さい寸法で高効率に電磁波のやり取りを安定的に可能とするアンテナが実現できる。また、本発明のアンテナは板状構造であるので、薄型構造でアンテナを実現する効果がある。本アンテナのグラウンド部は主にアンテナの安定動作に寄与しているので、電磁波の放射効率に対しての寄与は小さい。一方、メアンダ形状の帯状導体部および凹凸形状の遅波構造部は電磁波の放射に主に寄与する。このため、本アンテナを用いて、該グラウンド部近傍に高周波回路を搭載した回路基板を設置し、該メアンダ形状の帯状導体部および凹凸形状の遅波構造部と該回路基板との間に十分な空間を設け、該アンテナと該高周波回路を電気的に結合することにより、該高周波回路が取り扱う高周波エネルギを外部自由空間に対して効率良くやり取り可能な、高周波モジュールを小型、薄型形状で実現することができる。
以下、図を参照しつつ、本発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は本発明の第1の実施例からなる板状内蔵アンテナの構造を示す斜視図である。本実施例の板状内蔵型のアンテナ9は、導体製の平板状グラウンド部1と、帯状導体2とを具備する。帯状導体2は、メアンダ状、すなわち、グラウンド部の上部エッジと平行な方向に長く延びる領域と、上部エッジとに垂直方向に延びる折り返し領域とを複数有する構造になっている。帯状導体2は、主にインピーダンス整合の機能を有するインピーダンス整合部と、主にアンテナとして機能するアンテナ部とを有する。インピーダンス整合部の一部として、帯状導体2と対向するグラウンド部1の一部分に、凹凸状構造(遅波構造)3が設けられている。平板状グラウンド部1と帯状導体2は同一平面上に、換言すると平板状に一体的に形成されている。さらに、グラウンド部1と帯状導体2のインピーダンス整合部との間に、高周波回路との接続点となる給電点4が設定されている。すなわち、インピーダンス整合部の一端が給電部となり、給電点4と接続されている。給電点4からみると、帯状導体のメアンダ構造と、板状グラウンドの一部分と帯状導体の一部分で生成される凹凸状の遅波構造とが直列に結合している。
【0021】
帯状導体2の全体の長さ(L-ant)は、λ/2よりも短い。本発明では、アンテナ部をメアンダ状とすることで必要なアンテナ長さを確保すると共に、それに伴うリアクタンス成分の増加の対策として、所定の容量成分を与える凹凸状構造3を含むインピーダンス整合部を設け、インピーダンス整合を容易にした点に特徴がある。
【0022】
図2Aは、第1の実施例の板状内蔵アンテナの平面図である。アンテナ9は、全体として縦H0、幅Wの長さの外形が矩形の領域に、グラウンド部1と帯状導体2とが形成されている。帯状導体2の高さHAは、グラウンド部1の高さと同等以下、換言すると、アンテナ9全体の縦の長さH0の1/2以下である。アンテナ9の幅Wは、無線の通信・放送(以下、特に区別しない場合は、単に通信)に使用されるUHF波やマイクロ波等の電磁波の波長に応じて決定される。前記の通り、メアンダ形状の帯状導体2は、主にインピーダンス整合の機能を有するインピーダンス整合部2Aと、主にアンテナとして機能するアンテナ部2Bとを有する。なお、図2Aにおける、インピーダンス整合部2Aとアンテナ部2Bの区分はあくまでも機能的なものであり、帯状導体2において両者が重なり合う領域が存在することは言うまでも無い。なお、アンテナ部2Bの長さは、λ/4よりも短い。
【0023】
ここで、インピーダンス整合部2Aの構成について説明を加える。平板グラウンド部1の上縁1Eと帯状導体2の下縁2Eは、間隙5を介してアンテナ9の幅方向に平行に延びており、給電点4に近い側において平板グラウンド部1の上縁1Eに凹凸状構造3が形成されている。すなわち、平板グラウンド部1の上縁1Eに同じサイズの矩形の凸部形状と凹部形状、換言すると凸構造301と凹構造302とが規則的に、ないしは交互に繰り返し、配置されている。一方、帯状導体2の下縁2Eは平坦な面が連続している。矩形の凸構造301、凹構造302の幅をA、高さをBとすると、アスペクト比は、A:B=1、若しくは1に近い値となっている。導体線路2の平面構造と平板グラウンド部1の凹凸状構造3との隙間5や凹凸状構造3相互の隙間は、所定の容量Cを形成するための隙間である。また、メアンダ線路側にはインダクタンスLが生成される。その結果、インダクタンスLと、容量Cとによって実現されるリアクタンス共振回路によるリアクタンスの値が、インピーダンス整合に最適の値になるように調整される。インピーダンス整合の最適化により、アンテナへの入出力電力を最大に伝送する高効率の装置を提供することが可能になる。
【0024】
なお、凹凸構造3の高さA、幅Bの各サイズは、波長λに比べて十分に小さくする必要がある。電磁界は、容量性の静電界、誘導性の誘導界、および放射界とからなる。これらは、距離と共に、各々、三乗、二乗、一乗で減衰する。これらは、波源からおよそ波長の1/6 (=波長の1/2π)の距離で同一の振幅となる。これより遠いと、放射界が優勢となり、これより近いと静電界が優勢となる。従って、主に容量に関係する静電界が主体となる距離は、静電界に対する誘導界の振幅が10%以下の領域を考えればおよそ波長の1/60 (=波長の1/20π)以下となる。そのため、遅波構造を形成する凹凸構造3のA、Bのサイズは、数十/波長程度以下あるいは、1/50波長程度以下とするのが望ましい。
【0025】
また、相対向する凹凸構造3と帯状導体2の間の間隔Dは、凹凸構造3に対する容量を決定するパラメータである。このため、帯状導体2が形成するインダクタンスの量を打消すために、帯状導体2の全長が長い場合は間隔Dが狭く、帯状導体2の全長が短い場合は間隔Dを広くすることが望ましい。
【0026】
さらに、帯状導体2を構成するメアンダ構造について考えたときに、メアンダ構造が、正方形の平面構造を単位とする帯状の導体列が所定の隙間を介して繰り返されるものとしたとき、各平面構造の1辺の長さと、導体列間の隙間Gとの関係は、次のようになる。一般に導体長さを大きくしてメアンダの導体面積が広くなるとアンテナの周波数帯域は広くなる。また、隙間Gを狭くすれば、メアンダ長を長くとることができ、狭い領域内で長いメタンダ長を実現することができる。従って、アンテナ9に割り当て可能な領域が狭く限定されており、その中でアンテナと給電点との間で良好な整合条件を実現し、且つ少しでも広い周波数帯域でその整合条件を満足させるためには、両者の見合いで、上記1辺の長さと導体列間の隙間Gが等しいことが好ましい。
【0027】
次に、図2Bに、通信に使用される電磁波の波長と、リアクタンスとの関係を示す。リアクタンスは、(L-ant)/波長 に対して、−cotの関係にある。本発明のモノポールタイプのアンテナ9は、主たる用途が携帯情報機器であり、これらの機器の寸法による制限があるために、帯状導体2の放射導体長さL-antは通信に使用される電磁波の半波長より短い。アンテナの寸法L-antが半波長より短くなると、給電点におけるリアクタンス成分が急激に増加する。そのため通常の構造では給電点4との良好なインピーダンス整合を実現することができない。
【0028】
本実施例では、板状グラウンド部1とメアンダ形状を形成する帯状導体と2が、板状グラウンドの一部分で生成される凹凸状の遅波構造のインピーダンス整合部2Aを介して結合され、この板状グラウンドとインピーダンス整合部2Aの間に給電点を設定している。このような構造とすることにより、アンテナ部2Bの長さをλ/4よりも短くしても、インピーダンス整合部2Aの働きにより給電点における良好なインピーダンス整合を実現し、高効率、高安定のアンテナを実現し、アンテナ9の外形寸法を小さくすることができる。
【0029】
図2Cは、アンテナ部2BのインダクタンスLと放射抵抗Rによるメアンダ線路の等価回路を表現している。
【0030】
図2Dは、メアンダ形状の帯状導体2上を流れる電流と平板グラウンド部1上のイメージ電流を示している。インピーダンス整合部2Aを流れる電流2Aiに対して、その直下に逆向きの大きなイメージ電流2A‘iが流れ、その下方の離れた位置にアンテナ部2Bを流れる電流2Biに対して逆向きの小さなイメージ電流2B’iが流れる。本構造によれば、給電点4から遅波構造メアンダ形状と一連に続く電気経路が使用電磁波の周波数の数分の一に満たない場合に生じる給電点4からみたリアクタンスが、メアンダ状に形成された帯状導体2が生成するインダクタンスと凹凸構造3によって生成されるキャパシタンスによって実現されるリアクタンス共振回路によって実現されるリアクタンスによって相殺される。すなわち、イメージ電流2A‘iはインピーダンス整合部2Aを流れる電流2Aiと逆向であり、このイメージ電流に伴うリアクタンスが共振回路のリアクタンスを相殺するように作用するので、リアクタンス整合に好適である。一方、小さなイメージ電流2B’iに伴うリアクタンスはアンテナアンテナ部2Bのリアクタンスを相殺する作用が弱く、電磁放射に好適である。このように、給電点4との良好なインピーダンス整合を実現することができるため、小型、薄型のアンテナ構造で該平板アンテナ9と結合する高周波回路との電磁波エネルギのやり取りを高効率で実現でき、本アンテナを用いた無線モジュールの感度向上と寸法小型化に効果がある。
【0031】
なお、凹凸構造3は概略正方形であること、換言すると、アスペクト比A:Bが1もしくはそれに近いことが望ましい。この点に関して、図3A〜図3Cを用いて説明する。
【0032】
図3Aは、凹凸構造3が高さA、幅Bの矩形の組み合わせからなる凹凸構造の場合の、凹凸構造を流れる電流、および凹凸構造によって生成されるキャパシタンスCの関係を示している。この例では、平板グラウンド部1の上縁に矩形の凸構造301、凹構造302が交互に配置され、メアンダ線路側は高さの等しい平坦な平面構造303となっている。アスペクト比は、A:B=1とする。このような凹凸構造では、平板グラウンド部1において電流が適度に凸構造301回り込み、導体線路と凹凸構造及び凸構造間に適度な容量C1,C2が形成される。また、メアンダ線路側にはインダクタンスL1が生成される。その結果、インダクタンスL1と、容量C1,C2とによって実現されるリアクタンス共振回路のリアクタンスの値が、インピーダンス整合に最適の値にすることが容易となる。
【0033】
次に、図3Bの比較例では、平板グラウンド部1の上縁に台形の凸構造311、凹構造312が交互に配置され、メアンダ線路側は矩形の平面構造303になっている。このような遅波構造では、平板グラウンド部1において電流が凸構造311により多く回り込むが、隣り合う凸構造311間に形成される容量C12が大幅に減少する。その結果、インダクタンスLと、容量C10,C12とによって実現されるリアクタンス共振回路のリアクタンスの値を、インピーダンス整合に最適の値にするのが困難になる。
【0034】
図3Cの比較例では、平板グラウンド部1の上縁に逆台形の凸構造322、凹構造322が交互に配置され、メアンダ線路側は矩形の平面構造303となっている。このような遅波構造では、逆台形の凸構造322のため平板グラウンド部1において電流の回り込みが大幅に減少し、導体線路と遅波構造間に形成される容量C20が大幅に減少する。その結果、インダクタンスLと、容量C20,C22とによって実現されるリアクタンス共振回路のリアクタンスの値を、インピーダンス整合に最適の値にするのが困難になる。
【0035】
以上述べたように、本発明の実施例によれば使用電磁波の波長の1/2より小さい寸法で、高効率に外部空間との電磁波のやり取りを安定的に可能とするアンテナが実現できる。また、電磁波の波長に比べて小さな寸法のアンテナを提供することができる。また、本発明のアンテナは板状構造であるので、薄型構造でアンテナを実現する効果がある。
【実施例2】
【0036】
本発明において、インピーダンス整合部2Aを構成する凹凸状構造3を設ける位置は平板グラウンド部1の上縁1Eに限定されるものではない。凹凸状構造3を平板グラウンド部1の上縁1Eと帯状導体2の下縁2Eの双方にまたがって設けても良く、あるいは帯状導体2の下縁2Eに凹凸状構造3を形成し、平板グラウンド部1の上縁1Eを平坦な面としても良い。
【0037】
図4は、本発明の実施例2として、板状内蔵アンテナの他の構造を示す図であり、グラウンド部1の一部分と帯状導体2の該グラウンド部と対向する一部分とで形成された凹凸状構造(遅波構造)3を具備する。
【0038】
該凹凸状構造(遅波構造)3は該帯状導体2の伸長方向に対向部が発生するように形成される。
【0039】
本実施例によれば、凹凸構造3によって生成されるキャパシタンスCの値は凹凸状構造に発生した対向部により増加でき、高周波回路からアンテナへの電力伝達を妨げる要因となる給電部におけるリアクタンスを相殺する自由度が向上する。
【実施例3】
【0040】
図5は、本発明の実施例3として、板状内蔵アンテナの他の構造を示す図であり、実施例1、2と異なる点は、メアンダ状に形成された帯状導体2の遅波構造3と連結する一端とは別の一端の近傍で、帯状導体2と対向して設置される無給電帯状導体6を具備する点である。
【0041】
本実施例によれば、帯状導体2と遅波回路3で形成されるLC共振回路に、該無給電帯状導体6と該無給電帯状導体6と該帯状導体2の対向する部分で形成される容量Cからなる副次共振回路を付加できるので、複共振現象を利用して本実施例のアンテナの給電点4におけるインピーダンス整合の整合周波数帯域を拡大する効果があり、本アンテナが良好な感度を示す周波数範囲を拡大することができる。
【実施例4】
【0042】
図6A〜図6Dは、本発明の実施例4として、板状内蔵アンテナの他の構造を示す図である。各図は、図1乃至3のいずれかの実施例のアンテナ9の、帯状導体2、遅波構造3、および無給電帯状導体が存在する放射導体領域7A〜7Dと、グラウンド部1との三次元的相対位置を示す。図6A〜図6Dには4種類の該相対位置が示されており、平板構造のグラウンド部1に折り曲げ板構造を示す該放射導体領域7A〜7Dが結合している。放射導体領域7A〜7Dは、グラウンド部1と同一平面上の共通領域を持っている。共通領域が存在することで、実施例1で述べたイメージ電流に伴うリアクタンスが共振回路のリアクタンスを相殺する効果を得ることができる。
【0043】
本実施例のアンテナに高周波回路が搭載された回路基板(図示略)を実装する場合、この回路基板を平板状のグラウンド部1の上面に配置することにより、電磁界の放射に関与する放射導体領域7A〜7Dと回路基板とを空間的に隔離できる。これにより、該回路基板上に設置された高周波回路が発生する電磁波エネルギを効率良く外部空間に放射することができ、また外部空間より電磁波エネルギを効率良く該高周波回路に取り込むことが可能となる。
【実施例5】
【0044】
図7A〜図7Cは、本発明の実施例5として板状内蔵アンテナの他の構造を示す図である。図7A〜図7Cには3種類の該相対位置が示されており、実施例4と異なる点は、放射導体領域7E〜7Gがグラウンド部1と同一平面上の共通領域を持たないことである。本実施例によれば、グラウンド部1の上面に高周波回路が搭載された回路基板を実装した小型、薄型モジュール(図示略)を配置した際に、底面の存在する外部環境に対するモジュールの無線感度変化を抑制することができるので、該モジュールの配置自由度を向上させることができる。
【実施例6】
【0045】
図8A,図8Bは、本発明の実施例6として、既に述べた板状内蔵アンテナと高周波回路とが搭載された回路基板を一体実装したる構造を示す図である。図6A〜図6Dのいずれかの形状を有する板状内蔵アンテナのグラウンド部1の上面に、高周波回路12が搭載された回路基板10が設置され、この高周波回路12とグラウンド部1とは回路基板10を挟んで反対方向の位置関係になっている。
【0046】
図8Aの実施例では、高周波回路12はその搭載面が板状内蔵アンテナの放射導体領域7と対向する領域を持たないように配置される。実施例によれば、板状内蔵アンテナから放射される電磁波のエネルギが高周波回路12に与える干渉を抑制することができるので、高感度の小型、薄型の高周波モジュールを実現できる。
【0047】
本アンテナのグラウンド部は主にアンテナの安定動作に寄与しているので、電磁波の放射効率に対しての寄与は小さい。一方、メアンダ形状の帯状導体部および凹凸形状の遅波構造部は電磁波の放射に主に寄与する。このため、本アンテナを用いて、該グラウンド部近傍に高周波回路を搭載した回路基板を設置し、該メアンダ形状の帯状導体部および凹凸形状の遅波構造部と該回路基板との間に十分な空間を設け、該アンテナと該高周波回路を電気的に結合することにより、該高周波回路が取り扱う高周波エネルギを外部自由空間に対して効率良くやり取り可能な、高周波モジュールを小型、薄型形状で実現することができる。
【0048】
図8Bの実施例では、高周波回路12は放射導体領域7と低背部品領域52において対向面を持つが、この低背部品領域52には高周波回路12を構成する部品のうち部品高さが低いものを選んで実装が施される。これにより、低背部品領域52に存在する部品と、放射導体領域7に存在する導体の空間距離を比較的長くとれるので、平板内蔵アンテナから放射される高周波エネルギの高周波回路に対する干渉を低減でき、板状内蔵アンテナと高周波回路が搭載された回路基板からなる高周波モジュールの感度劣化を抑制する効果がある。
【実施例7】
【0049】
図9A,図19Bは、本発明の実施例7として、既に述べた板状内蔵アンテナと高周波回路とが搭載された回路基板を一体実装する構造を示す図である。図7A〜図7Cのいずれかに示す形状を有する板状内蔵アンテナのグラウンド部1の上面に、高周波回路12が搭載された回路基板10が設置され、この高周波回路12とグラウンド部1は回路基板10を挟んで反対方向の位置関係になっている。
【0050】
図9Aの実施例では、回路12はその搭載面が板状内蔵アンテナの放射導体領域7と対向する領域を持たないように配置される。本実施例によれば、板状内蔵アンテナから放射される電磁波のエネルギが該高周波回路12に与える干渉を抑制することができるので、高感度の小型、薄型の高周波モジュールを実現できる。
【0051】
図9Bの実施例では、高周波回路12は放射導体領域7と低背部品領域52において対向面を持つが、低背部品領域52には高周波回路12を構成する部品のうち部品高が低いものを選んで実装が施される。これにより、低背部品領域52に存在する部品と、放射導体領域7に存在する導体の空間距離を比較的長くとれるので、平板内蔵アンテナから放射される高周波エネルギの高周波回路に対する干渉を低減でき、板状内蔵アンテナと高周波回路が搭載された回路基板からなる高周波モジュールの感度劣化を抑制する効果がある。
【実施例8】
【0052】
図10A,図10Bは、本発明の実施例8として、既に述べた板状内蔵アンテナと高周波回路とが搭載された回路基板を一体実装する構造を示す図である。図6A〜図6Dのいずれかに示す形状を有する板状内蔵アンテナにおいて、放射導体領域7からのみなる平板内蔵アンテナ放射素子17と回路基板10の内層あるいは高周波回路12が搭載されない裏面に形成された回路基板グラウンド11によって、板状内蔵アンテナが実現される。
【0053】
図10Aの実施例では、回路12はその搭載面が板状内蔵アンテナの放射導体領域7と対向する領域を持たないように配置される。本実施例によれば、板状内蔵アンテナから放射される電磁波のエネルギが高周波回路12に与える干渉を抑制することができるので、高感度の小型、薄型の高周波モジュールを実現できる。
【0054】
図10Bの実施例では、高周波回路12は放射導体領域7と低背部品領域52において対向面を持つが、低背部品領域52には高周波回路12を構成する部品のうち部品高が低い物を選んで実装が施される。これにより、低背部品領域52に存在する部品と、放射導体領域7に存在する導体の空間距離を比較的長くとれるので、平板内蔵アンテナから放射される高周波エネルギの高周波回路に対する干渉を低減でき、板状内蔵アンテナと高周波回路が搭載された回路基板からなる高周波モジュールの感度劣化を抑制する効果がある。
【実施例9】
【0055】
図11は、本発明の実施例9として、既に述べた板状内蔵アンテナを用いた高周波モジュールの一例を示す図である。放射導体領域7とグラウンド部1で構成される板状内蔵アンテナの給電部4に同軸ケーブル20の一端が結合され、該同軸ケーブル20の他端には第一のコネクタ21が結合されている。回路基板10の表面には高周波回路12搭載され、該高周波回路12の入出力部に第二のコネクタ22が搭載される。板状内蔵アンテナと高周波回路12は第一のコネクタ21と第二のコネクタ22によって電気的に結合される。本図には陽に示されていないが第二のコネクタ22と高周波回路12は回路基板10の表層あるいは内層に形成された導体線路において電気的に結合されていることは言うまでもない。本実施例によれば、板状内蔵アンテナと回路基板からなる高周波モジュールの組み立て工程を勘合工程のみで実現できるので、該モジュールの製造コスト低減に効果がある。
【実施例10】
【0056】
図12は、本発明の実施例10として、既に述べた板状内蔵アンテナを用いた高周波モジュールの他の例を示す図である。放射導体領域7からのみなる平板内蔵アンテナ放射素子17と回路基板10の内層あるいは高周波回路12が搭載されない裏面に形成された回路基板グラウンド11が、回路基板10内に形成されたスルーホール14を介して半田ポール15によって電気的に結合され、該平板内蔵アンテナ放射素子17の給電点4と高周波回路12の入出力部に結合した給電導体線路13が半田ボール15によって電気的に結合される。本実施例によれば、板状内蔵アンテナと回路基板からなる高周波モジュールの組み立てを、表面実装工程によって実現できるので、自動実装機を用いた大量生産により、該モジュールの製造コストを低減できる。
【実施例11】
【0057】
図13は、本発明の実施例11として、既に述べた板状内蔵アンテナを用いた高周波モジュールの一例を示す図である。放射導体領域7とグラウンド部1で構成される板状内蔵アンテナの給電部4に同軸ケーブル20の一端が結合され、該同軸ケーブル20の他端には第一のコネクタ21が結合されている。回路基板10の表面には集積回路62とチップ部品18で構成される高周波回路が搭載され、該高周波回路の入出力部に第二のコネクタ22が搭載される。板状内蔵アンテナと高周波回路は第一のコネクタ21と第二のコネクタ22によって電気的に結合される。本図には陽に示されていないが第二のコネクタ22と高周波回路12は回路基板10の表層あるいは内層に形成された導体線路において電気的に結合されていることは言うまでもない。回路基板10にはインフェース19が同基板の側面に構成され、該インタフェース19を露呈させた状態で、該板状内蔵アンテナと該高周波回路を、上ケース31と下ケース32で挟み込んでモジュールを形成する。本図には陽に示されていないがインフェース19と高周波回路12は回路基板10の表層あるいは内層に形成された導体線路において電気的に結合されていることは言うまでもない。本実施例によれば、板状内蔵アンテナと回路基板からなる高周波モジュールの組み立て工程を勘合工程のみで実現できるので、該モジュールの製造コスト低減に効果があるとともに、板状内蔵アンテナと回路基板を外部空間から遮蔽できるので、高周波モジュールを外部からの物理的・化学的劣化要因より保護することができ、該高周波モジュールの信頼性向上、製品寿命向上に効果がある。
【実施例12】
【0058】
図14は、本発明の実施例12として、既に述べた板状内蔵アンテナを用いた高周波モジュールの一実施例を示す図である。放射導体領域7からのみなる平板内蔵アンテナ放射素子17と回路基板10の内層あるいは高周波回路が搭載されない裏面に形成された回路基板グラウンド11が、回路基板10内に形成されたスルーホール14を介して半田ボール15によって電気的に結合される。回路基板10の表面には集積回路62とチップ部品18で構成される高周波回路が搭載され、該平板内蔵アンテナ放射素子17の給電点4と高周波回路の入出力部に結合した給電導体線路13が半田ボール15によって電気的に結合される。回路基板11にはインフェース19が同基板の側面に構成され、該インタフェース19を露呈させた状態で、該板状内蔵アンテナと該高周波回路を、上ケース31と下ケース32で挟み込んでモジュールを形成する。本図には陽に示されていないがインフェース19と高周波回路は回路基板10の表層あるいは内層に形成された導体線路において電気的に結合されていることは言うまでもない。本実施例によれば、板状内蔵アンテナと回路基板からなる高周波モジュールの組み立て工程を勘合工程のみで実現できるので、該モジュールの製造コスト低減に効果があるとともに、板状内蔵アンテナと回路基板を外部空間から遮蔽できるので、高周波モジュールを外部からの物理的・化学的劣化要因より保護することができ、該高周波モジュールの信頼性向上、製品寿命向上に効果がある。
【実施例13】
【0059】
図15は、本発明の実施例13として、既に述べた板状内蔵アンテナを用いた高周波モジュールの一実施例を示す図であり、図14の実施例と異なる点は、該板状内蔵アンテナと該高周波回路がカバー33によって覆われ、該カバー33と該回路基板10の高周波回路が搭載されていない面が、該高周波モジュールの外面となることである。本実施例によれば、板状内蔵アンテナと回路基板状に搭載される部品のみを外部空間から遮蔽するので、図14の実施例と比べて、該高周波モジュールの体積を縮小することができる。
【実施例14】
【0060】
図16は、発明の実施例14として、既に述べた板状内蔵アンテナを用いた高周波モジュールの携帯情報端末への適用例を示す一実施例を示す図である。図13乃図15の実施例の高周波モジュールのケースおよびカバーを取り除いた部分を、インタフェース19を介して、無線電話機70の多層回路基板41に設けられた内部コネクタ42と結合させている。現行の携帯電話では、国際規格のインタフェース仕様にてこのようなコネクタを常備している場合がほとんどである。高周波モジュールによって外部空間より得られた信号は、無線電話70が具備するマイクロプロセッサによって信号処理されて種々の機能を発生させる。本実施例によれば、携帯電話機に電磁波を用いる新たな機能を、携帯電話自体の外寸法を増加させることなく、即ち該携帯電話のユーザーに体積増加を感じさせることなく付加させることができる。すなわち、携帯利便性を損なわない、小型・薄型の形状を有する内蔵アンテナを具備する携帯情報機器を提供することができる。
【実施例15】
【0061】
図17は、本発明の実施例15として、既に述べた板状内蔵アンテナを用いた高周波モジュールの携帯情報端末への適用例を示す他の一実施例を示す図である。図13乃至図15の実施例の上ケース、下ケースおよびカバーなどのケース30で覆われた高周波モジュールを、インタフェース19を介して、ノートブックPC80の外部スロット51を用いて、ノートブック回路基板に設けられた内部コネクタ52と結合させている。本図には陽に示されていないが該内部コネクタ52はPC80の内部回路が形成されるマザーボード上に設置されることは言うまでもない。高周波モジュールによって外部空間より得られた信号は、ノートブックPC80が具備するマイクロプロセッサユニットによって信号処理されて種々の機能を発生させる。本実施例によれば、ノートブックPCに電磁波を用いる新たな機能を付加させることができる。
【符号の説明】
【0062】
1…グラウンド部、2…帯状導体、3…遅波構造、4…給電点、5…隙間、6…無給電帯状導体、7…放射導体領域、9…板状アンテナ、10…回路基板、11…回路基板グラウンド、12…高周波回路、13…給電導体線路、14…スルーホール、15…半田ポール、17…放射素子、18…チップ部品、19…インタフェース、20…同軸ケーブル、21…第一のコネクタ、22…第二のコネクタ、30…ケース、31…上ケース、32…下ケース、33…カバー、41…多層回路基板、42…内部コネクタ、52…低背部品領域、62…集積回路、70…携帯電話、80…ノートブックPC。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メアンダ形状の帯状導体と、
前記帯状導体との間に平行な隙間を有し、一端が前記帯状導体に接続された板状グラウンドと、
前記板状グラウンドと前記帯状導体との接続部に設定された給電点と
を備えてなり、
前記帯状導体は、該帯状導体と前記給電点とを結合するインピーダンス整合部と、アンテナ部とを備えており、
前記インピーダンス整合部は、凹凸状構造を含み、
該凹凸状構造は、前記隙間に面する前記帯状導体の縁の一部分または前記板状グラウンドの縁の一部分の、いずれか一方または双方にまたがって形成されている
ことを特徴とする板状内蔵アンテナ。
【請求項2】
請求項1において、
前記板状グラウンドと前記帯状導体とが一体の板状構造をなしており、
前記凹凸状構造は、前記板状グラウンドの縁の一部分に形成された凹凸構造と、該凹凸構造に対向する前記帯状導体の平坦な面とを有しており、
前記給電点から見て、前記帯状導体のメアンダ構造と前記凹凸構造とが直列に結合されている
ことを特徴とする板状内蔵アンテナ。
【請求項3】
請求項1において、
前記板状グラウンドと前記帯状導体とが一体の板状構造をなしており、
前記凹凸状構造は、該板状グラウンドの一部分と該帯状導体の一部分に各々形成された凹凸構造を有しており、
前記給電点から見て、前記帯状導体のメアンダ構造と、前記凹凸構造とが直列に結合されている
ことを特徴とする板状内蔵アンテナ。
【請求項4】
請求項1において、
前記凹凸状構造は、同じサイズの矩形の凸部形状と凹部形状が規則的に配置された構成であり、
前記矩形の凸構造、凹構造の各幅をA、高さをBとすると、アスペクト比A:Bは、1若しくは1に近い値である
ことを特徴とする板状内蔵アンテナ。
【請求項5】
請求項4において、
通信に使用される電磁波の波長をλとしたとき、
前記凹凸状構造の幅及び高さA、Bは、各々、λの1/50以下である
ことを特徴とする板状内蔵アンテナ。
【請求項6】
請求項1において、
通信に使用される電磁波の波長をλとしたとき、
前記帯状導体の長さは、λ/2よりも短く、前記アンテナ部の長さはλ/4よりも短い
ことを特徴とする板状内蔵アンテナ。
【請求項7】
請求項1において、
前記帯状導体の前記縁とは反対側の縁との間に隙間を介して配置され、該帯状導体と電気的に結合せず、電磁結合する無給電帯状導体を有する
ことを特徴とする板状内蔵アンテナ。
【請求項8】
請求項7において、
前記無給電帯状導体がメアンダ形状である
ことを特徴とする板状内蔵アンテナ。
【請求項9】
請求項1において、
前記板状グラウンドと前記帯状導体とが一体の板状構造をなしており、
該一体の板状構造の全体が平板である
ことを特徴とする板状内蔵アンテナ。
【請求項10】
請求項1において、
前記板状グラウンドと前記帯状導体とが一体の板状構造をなしており、
前記一体の板状構造の一部が折り曲げられて板構造の放射導体領域が形成されており、
該放射導体領域は、前記板状グラウンドと同一平面上の共通領域を持っている
ことを特徴とする板状内蔵アンテナ。
【請求項11】
請求項10において、
前記板状グラウンドが平板構造であり、
該平板構造に引き続く折り曲げ部に、前記凹凸状構造および前記帯状導体のメアンダ形状のメアンダ構造が形成されている
ことを特徴とする板状内蔵アンテナ。
【請求項12】
請求項10において、
前記板状グラウンドおよび前記凹凸状構造が平板構造で形成されており、
該平板構造に引き続く折り曲げ部に、前記メアンダ構造が形成されている
ことを特徴とする板状内蔵アンテナ。
【請求項13】
板状内蔵アンテナと、高周波回路を実装した板状回路基板とを備えた高周波モジュールであって、
前記板状内蔵アンテナは、
メアンダ形状の帯状導体と、
前記帯状導体との間に平行な隙間を有し、一端が前記帯状導体に接続された板状グラウンドと、
前記板状グラウンドと前記帯状導体との接続部に設定された給電点と
を備えてなり、
前記帯状導体は、該帯状導体と前記給電点とを結合するインピーダンス整合部と、アンテナ部とを備えており、
前記インピーダンス整合部は、凹凸状構造を含み、
該凹凸状構造は、前記隙間に面する前記帯状導体の縁の一部分または前記板状グラウンドの縁の一部分の、いずれか一方または双方にまたがって形成されている
ことを特徴とする高周波モジュール。
【請求項14】
請求項13において、
前記板状回路基板が前記板状内蔵アンテナの前記板状グラウンドの上面に設置されている
ことを特徴とする高周波モジュール。
【請求項15】
請求項14において、
前記高周波回路が設置される前記板状回路基板上の面と前記板状内蔵アンテナの前記板状グラウンドが対向する面とが、異なる
ことを特徴とする高周波モジュール。
【請求項16】
請求項13において、
前記板状回路基板が多層基板であり、該多層基板の内層あるいは表層にグラウンド層が形成され、前記板状内蔵アンテナのグラウンド部が前記回路基板の内層グラウンド部である
ことを特徴とする高周波モジュール。
【請求項17】
請求項16において、
前記板状回路基板と前記板状内蔵アンテナの電気的結合が、該板状回路基板上に設けられた電気接点と該板状内蔵アンテナの導体部との溶融固定によって実現される
ことを特徴とする高周波モジュール。
【請求項18】
請求項13において、
前記板状回路基板上に設置される前記高周波回路が、前記板状内蔵アンテナの凹凸状構造および前記メアンダ形状と自由空間を介して直接対向しないように設置される
ことを特徴とする高周波モジュール。
【請求項19】
請求項13において、
前記板状回路基板と前記板状内蔵アンテナとが、上ケースおよび下ケースによって挟まれ、機械的に固定される
ことを特徴とする高周波モジュール。
【請求項20】
高周波モジュールを内部に実装する無線端末であって、
前記高周波モジュールは、板状内蔵アンテナと、高周波回路を実装した板状回路基板とを備えて成り、
前記板状内蔵アンテナは、
メアンダ形状の帯状導体と、
前記帯状導体との間に平行な隙間を有し、一端が前記帯状導体に接続された板状グラウンドと、
前記板状グラウンドと前記帯状導体との接続部に設定された給電点と
を備えてなり、
前記帯状導体は、該帯状導体と前記給電点とを結合するインピーダンス整合部と、アンテナ部とを備えており、
前記インピーダンス整合部は、凹凸状構造を含み、
該凹凸状構造は、前記隙間に面する前記帯状導体の縁の一部分または前記板状グラウンドの縁の一部分の、いずれか一方または双方にまたがって形成されている
ことを特徴とする無線端末。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−211491(P2011−211491A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77429(P2010−77429)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、総務省、ユビキタス・プラットフォーム技術の研究開発 委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】