説明

架橋性組成物、それから得られる熱可塑性エラストマーおよびその使用

【課題】架橋性組成物、それから得られる熱可塑性エラストマーおよびその使用を提供する。
【解決手段】架橋開始剤、およびさらに共架橋剤を含む、ポリアミドおよびα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体をベースとする架橋性組成物、ならびに架橋開始剤を含み、そして組成物中のポリアミドの量が30質量%未満である、ポリアミドおよびα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体をベースとする架橋性組成物。本発明はさらに、本発明の架橋性組成物の調製に、熱可塑性エラストマーの製造のための本発明の架橋性組成物の使用に、熱可塑性エラストマーを生成させるための本発明の組成物の架橋方法に、ならびに熱可塑性エラストマーそれ自体に、および成形品の製造のためのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋開始剤およびさらに共架橋剤を含み、ポリアミドとα-オレフィン−ビニル酢酸共重合体とをベースとする架橋性組成物、並びに、架橋開始剤を含み、ポリアミドおよびα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体をベースとする架橋性組成物に関するものであり、組成物中のポリアミドの量が30質量%未満である架橋性組成物に関する。本発明はさらに、本発明の架橋性組成物の調製に、熱可塑性エラストマーの製造のための本発明の架橋性組成物の使用に、本発明の組成物を架橋して熱可塑性エラストマーを得るための方法に、さらにはその熱可塑性エラストマー自体に、および成形品の製造のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックス技術では、3つの重要な種類の材料、すなわち熱可塑性樹脂、エラストマー、および熱硬化性樹脂の間が伝統的に区別されている。ここ数年、さらなる種類の材料、熱可塑性エラストマーが新たな用途を継続的に見いだしてきている。熱可塑性エラストマーは、熱可塑性樹脂の加工特性とエラストマーの使用特性とを兼ね備えている。当業者は、様々な種類のこれらの熱可塑性エラストマーを承知している。2つの主要な種類、すなわちブロック共重合体(また、マルチブロック共重合体)とエラストマーアロイとの間を区別することができる。
【0003】
ブロック共重合体はハード相およびソフト弾性相からなる。ソフト相は大部分がマトリックスを形成するが、ハード相は、架橋/強化フィラーのように振る舞う分散相を提供する。架橋領域は、ハードセグメント間の物理的結合によって形成される。それらの使用温度内で、ハードセグメントの転移温度が使用温度より著しく上であり、ソフトセグメントの転移温度が使用温度より著しく下であり、そして混合物中のその割合も互いに正しい比を有する限り、ブロック共重合体は架橋エラストマーのように振舞う。
【0004】
エラストマーアロイは、熱可塑性樹脂部分とエラストマー部分とを含むポリマーブレンドである。それらは、出発成分の激しい混合によって製造され、架橋剤をここに加えることができる。ソフト相が(ある程度)架橋されている場合、用いられる用語は、熱可塑性樹脂加硫物(TPE−V)である。ソフト相が架橋されていない場合、用いられる用語はTPE−Oである。
【0005】
本発明は、TPE−Vタイプの熱可塑性エラストマーに関する。本明細書に使用される熱可塑性樹脂は少なくとも1種のポリアミドを含む。
【0006】
熱可塑性樹脂として少なくとも1種のポリアミドを有するTPE−Vは、先行技術において公知である。一例として、欧州特許出願公開EP1801162A1はポリアミド−EVA混合物に関するものであり、この混合物は、各場合に成形組成物を基準として、熱可塑性マトリックスとしての30〜80質量%のポリアミド、および、この熱可塑性マトリックスに加えて、10〜69質量%のエチレン共重合体を含む架橋分散エラストマー相、およびまたエチレン共重合体によって提供される主ポリマー鎖へのα,β−エチレン系不飽和モノ−および/またはジカルボン酸またはそれらの誘導体のグラフト化を用いて得られる化合物から選択された1〜10質量%の相溶化剤、を有する。欧州特許出願公開EP1801162A1によれば、この発明は、成形組成物の耐衝撃性、破壊応力、弾性率および破断点引張歪みへのいかなる不利な影響もなしに、特に油での膨潤に関して、良好な物理的特性を有する熱可塑性成形組成物を提供することである。欧州特許出願公開EP1801162A1によれば、これは、1〜10質量%の特定の相溶化剤を使用することによって達成される。欧州特許出願公開EP1801162A1は、高い、すなわち30〜80質量%、好ましくは40〜60質量%、特に好ましくは45〜55質量%ポリアミド含有率を有する新規な熱可塑性成形組成物が提供されることを明らかにしている。エラストマー材料にとって決定的に重要である可逆的な弾性特性、例えば引張歪み後の回復、または圧縮永久歪み、についての記載は全くない。
【0007】
米国特許第4,197,379号明細書は、ゴムおよびポリアミドからなる弾塑性組成物に関する。この組成物は、50質量%以下の熱可塑性の結晶性ポリアミド、および80質量%以下のゴム、好ましくはニトリルゴム、を有する。米国特許第4,197,379号明細書によれば、提供される熱可塑性エラストマーは、低分子量のフェノール系可塑剤を本質的に含まないことが必須である。米国特許第4,197,379号明細書は、エラストマー成分としてのα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体の使用について言及していない。
【0008】
米国特許第5,270,377号明細書は、特定の、ある程度架橋したグラフト化ポリオレフィンエラストマーと混合されたポリアミドに関する。米国特許第5,270,377号明細書によれば、この発明は、エラストマー成分が主成分である場合に、良好な耐油性、機械的強度、および耐熱性を有し、かつ、ポリアミド成分が主成分である場合に優れた耐衝撃性、剛性および引張強度を有する組成物を提供することである。米国特許第5,270,377号明細書は、エラストマー成分としてα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体の使用について言及していない。
【0009】
独国特許第44 25 944号明細書は、熱可塑性樹脂がとりわけポリアミドであることができる5〜60質量%の熱可塑性樹脂相、および40〜95質量%の架橋エチレン−ビニルエステル共重合体または架橋したグラフト化エチレン−ビニルエステルグラフト共重合体、を有する熱可塑性エラストマー組成物に関する。独国特許第44 25 944号明細書によれば、この熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性樹脂を、あらかじめ架橋したエチレン−ビニルエステルポリマーと混合することによって調製される。エラストマー成分のダイナミック架橋は、熱可塑性樹脂成分との混合中に全く起こらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1 801 162 A1号明細書
【特許文献2】米国特許第4,197,379号明細書
【特許文献3】米国特許第5,270,377号明細書
【特許文献4】独国特許第44 25 944号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
先行技術で公知の熱可塑性エラストマーを踏まえて、ゴムのような特性を特徴とする熱可塑性エラストマーを提供することが本発明の目的である。これはこの意図が、非常に良好な回復性、良好な引張永久歪み、良好な圧縮永久歪み、非常に良好な耐熱性値および耐溶剤性値、ならびに低い範囲の硬度(ショア(Shore)硬度A)を有する、熱可塑性エラストマー、および熱可塑性エラストマーの製造のための組成物を提供することであることを意味する。この熱可塑性エラストマーは、押出、射出成形、およびまたブロー成形などの、任意の所望の加工技術によって加工できることを意図されている。
【0012】
今まで公知の熱可塑性エラストマーのどれも、耐溶剤性および耐熱性と一緒に、低い硬度、良好な弾性特性、および速い回復を含む特性の組み合わせを達成することができない。今まで公知の熱可塑性エラストマーは、良好な弾性特性または良好な耐熱性値を達成することができるが、不満足な耐溶剤性値(特に長期耐溶剤性値)をもつか、あるいは良好な耐溶剤性を達成できるが、不満足な耐熱性値を有するかのどちらかである。高い耐熱性値および良好な耐溶剤性値を有する熱可塑性エラストマー、例えば、TPE−A(ポリエーテルアミド)、TPE−E(ポリエーテルエステル)およびTPE−U(TPU、ポリウレタン)などは、(高い)ショアD硬度範囲での、高価格セグメントでの用途向けのみに利用可能であり、中程度の弾性特性を有する。熱可塑性エラストマー(熱可塑性樹脂加硫物)、すなわちTPE−Vにおける今まで公知のいかなる材料も、上述の要件特性に適合することができていない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本目的は、
a)成分Aとして、5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%、特に好ましくは10〜30未満の質量%の少なくとも1種のポリアミド、
b)成分Bとして、20〜95質量%、好ましくは40〜89.5質量%、特に好ましくは55超〜85質量%の少なくとも1種のα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体、
c)成分Cとして、0〜30質量%、好ましくは0.5〜20質量%、特に好ましくは5〜15質量%のフィラー材、可塑剤、添加剤、および/または追加物、
を含み、成分A、B、およびCの全体が100質量%であり、さらに
d)成分Dとして、上記α-オレフィン−酢酸ビニル共重合体の100質量部当たり0.2〜10質量部(phr)、好ましくは1〜6phr、特に好ましくは1.5〜6phrの少なくとも1種のフリーラジカル架橋開始剤、および
e)成分Eとして、上記α-オレフィン−酢酸ビニル共重合体の100質量部当たり0.2〜10質量部(phr)、好ましくは1〜6phrの少なくとも1種の共架橋剤
を含む実施形態1による架橋性組成物の提供によって達成される。
【0014】
実施形態2による本発明の代替の架橋性組成物は、
a)成分Aとして、10〜30未満の質量%、好ましくは10〜25質量%の少なくとも1種のポリアミド、
b)成分Bとして、50超〜90質量%、好ましくは60〜89.5質量%の少なくとも1種のα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体、
c)成分Cとして、0〜20質量%、好ましくは0.5〜15質量%のフィラー材、可塑剤、添加剤、および/または追加物、
を含み、成分A、B、およびCの全体が100質量%であり、さらに、
d)成分Dとして、上記α-オレフィン−酢酸ビニル共重合体の100質量部当たり0.2〜10質量部(phr)、好ましくは1〜6phr、特に好ましくは1.5〜6phrの少なくとも1種のフリーラジカル架橋開始剤、および
e)成分Eとして、上記α-オレフィン−酢酸ビニル共重合体の100質量部当たり0〜10質量部(phr)、好ましくは1〜6phrの少なくとも1種の共架橋剤
を含む。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の組成物は、優れた耐熱性および優れた耐溶剤性のみならず、広範囲の硬度と共に、特に非常に良好な弾性特性をも特徴とする熱可塑性エラストマーの製造に好適である。
【0016】
本発明の特に好適な組成物は、一例として、100%引張歪み(tensile strain)に対して室温で40%未満の引張永久歪み(tensile set)、50%引張歪みに対して100℃で80%未満の引張永久歪み;エンジンオイル中での24時間保管時に10%未満の膨潤、および50〜90の硬度の範囲(ショア硬度A)を有する(下記の実施例は好適な試験方法について述べる)。
【0017】
前者の組成物(実施形態1)の場合には、これは特に、これらにおける、成分Dとして用いられるフリーラジカル架橋開始剤のみならず(この場合、高い架橋温度に適したフリーラジカル架橋開始剤の使用が好ましい)、成分Eとしての少なくとも1種の共架橋剤の使用にもよって達成される。その結果は、共架橋剤を全く含まない組成物と比較した場合に、本組成物から製造された熱可塑性エラストマーの弾性特性、特に圧縮永久歪みの顕著な向上である。
【0018】
後者の組成物(実施形態2)の場合には、これらが少なくとも1種のポリアミド(成分A)との関係で高い割合のα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体(成分B)を含むことが必須である。これらの組成物はそれ故−前者の組成物がそうであるように−非常に良好な耐熱性および非常に良好な耐溶剤性、およびまた、特に同時に優れた可逆的な弾性特性を、低い範囲の硬度(ショアA硬度)と共に特徴とする。
【0019】
本発明の組成物から製造される熱可塑性エラストマーは、押出、もしくは射出成形を用いて、またはブロー成形を用いて加工することができる。
【0020】
[成分A:少なくとも1種のポリアミド]
第一の実施形態では、本発明の架橋性組成物中の少なくとも1種のポリアミドの使用量は、成分A、B(少なくとも1種のα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体)、およびC(フィラー材、可塑剤、添加剤、および/または追加物)の全体を基準として、5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%、特に好ましくは10〜30未満の質量%である。本発明による第二の実施形態では、本発明の架橋性組成物は、成分Aとして、成分A、B、およびCの全体を基準として、10〜30未満の質量%、好ましくは10〜25質量%の少なくとも1種のポリアミドを含む。
【0021】
成分Aとして好適なポリアミドは、ポリマーの主鎖中に、アミド結合(−C(=O)−NH−)によって結合したモノマー単位を有する単独重合体または共重合体である。C〜C12ラクタム、または4〜18個の炭素原子、好ましくは6〜12個の炭素原子を有するω−アミノカルボン酸をベースとするポリアミドの使用、あるいは、4〜18個の炭素原子を有する脂肪族ジアミンおよび7〜22個の炭素原子を有する脂環式ジアミンからなる群からの少なくとも1種のジアミンと、4〜44個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸および8〜24個の炭素原子を有する脂環式ジカルボン酸および8〜20個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸からなる群から選択された少なくとも1種のジカルボン酸との重縮合により得られる重縮合物の使用が好ましい。
【0022】
好適なω−アミノカルボン酸またはラクタムは、ε−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、ε−カプロラクタム、エタノラクタム、およびラウロラクタム、ならびにまたそれらの混合物である。ジカルボン酸と結合させることができる好適なジアミンの例は、2,2,4−もしくは2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,3−もしくは1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノシクロヘキシル)メタン、m−もしくはp−キシリレンジアミン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、2−メチル−1,8−ジアミノオクタン、1,10−ジアミノデカン、および1,12−ジアミノドデカンである。好適なジカルボン酸は、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、およびナフタレンカルボン酸である。
【0023】
本発明の目的のためには、用語ポリアミドには、ポリアミド単位に沿ったさらなる成分として、ポリエステルセグメント、ポリエーテルセグメント、ポリシロキサンセグメント、ポリカーボネートセグメント、ポリアクリレートセグメント、ポリメタクリレートセグメント、および/またはポリオレフィンセグメントを含むポリアミドブロック共重合体も含まれる。本発明によるポリアミド中のポリアミド単位の割合は、一般に少なくとも20質量%である。ポリアミドブロック共重合体の例は、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド、およびまたポリエステルアミドである。
【0024】
特に好ましいポリアミドは、ポリカプロラクタム(ナイロン−6)、ポリラウロラクタム(ナイロン−12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン−6,6)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ナイロン−6,9)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン−6,10)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン−6,IP)、ポリアミノウンデカン酸(ナイロン−11)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン−4,6)、およびまた、カプロラクタムとヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との共重合体(ナイロン−6,66)、ならびにポリパラフェニレンテレフタルアミドなどのアラミドからなる群から選択されたものである。
【0025】
好ましいポリアミドは、120〜320℃の範囲の、好ましくは180〜300℃の範囲の、特に好ましくは200〜280℃の範囲の軟化点または融点を有する。特に高温で使用することができる熱可塑性エラストマーを得るために、成分Aとして使用されるポリアミドは高い融点および/または高い軟化点を有するものを含むことが好ましい。本ポリアミドはさらに好ましく、結晶性または半結晶性である。
【0026】
本発明の架橋性組成物中の成分Aは、1種のポリアミドまたは2種以上の異なるポリアミドからなる混合物を含むことができる。
【0027】
本発明の架橋性組成物中の成分Aとして好適なポリアミドは、当業者に公知の方法に従って製造することができるか、または商業的に入手可能である。成分Aの定義は、実施形態1による架橋性組成物にのみならず、実施形態2による架橋性組成物にも適用される。
【0028】
[成分B(α-オレフィン−酢酸ビニル共重合体)]
実施形態1による本発明の架橋性組成物中のα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体(成分B)の使用量は、成分A、B、およびCの全体を基準として、20〜95質量%、好ましくは40〜89.5質量%、特に好ましくは55超〜85質量%である。実施形態2による本発明の組成物中の成分Bの使用量は、成分A、B、およびCの全体を基準として、50超〜90質量%、好ましくは60〜89.5質量%である。
【0029】
成分Bとして使用されるα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体は一般に、20〜98質量%の酢酸ビニル含有率を有することができる。
【0030】
本発明に従って好ましく使用されるα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体は、α-オレフィン−酢酸ビニル共重合体の総質量を基準として、40質量%以上の高い酢酸ビニル含有率、好ましくは各場合にα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体の総質量を基準として50質量%以上の酢酸ビニル含有率を特徴とする。本発明に従って使用されるα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有率は40質量%以上〜98質量%、好ましくは50質量%以上〜98質量%であること、およびα-オレフィン含有率は2質量%〜60質量%以下、好ましくは2質量%〜50質量%以下であることが通例であり、ここで、酢酸ビニルとα-オレフィンとの総量は100質量%である。
【0031】
本発明に従って使用されるα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体は、α-オレフィンおよび酢酸ビニルをベースとするモノマー単位のみならず、例えばビニルエステルおよび/または(メタ)アクリレートをベースとする、1つ以上のさらなるコモノマー単位(例えばターポリマー)をも含むことができる。さらなるコモノマー単位の割合は(実際にさらなるコモノマー単位がα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体中に存在する場合)α-オレフィン−酢酸ビニル共重合体の総質量を基準として10質量%以下であり、その結果α-オレフィンをベースとするモノマー単位の割合はそれに対応して低下する。一例として、酢酸ビニル、α-オレフィン、およびさらなるコモノマーの総量が100質量%である場合に、40質量%以上〜98質量%の酢酸ビニル、2質量%〜60質量%以下のα-オレフィン、および0〜10質量%の少なくとも1つのさらなるコモノマーからなるα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体を使用することが可能である。
【0032】
本発明に従って使用されるα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体に使用することができるα-オレフィンは、公知のα-オレフィンのいずれであってもよい。α-オレフィンが、エテン、プロペン、ブテン、特にn−ブテンおよびイソブテン、ペンテン、ヘキセン、特に1−ヘキセン、ヘプテン、特に1−ヘプタン、およびオクテン、特に1−オクテンから選択されることが好ましい。本発明に従って使用されるα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体中のα-オレフィンとして述べたα-オレフィンの高級同族体を使用することもまた可能である。α-オレフィンはさらに、置換基、特にC〜Cアルキル基を有することができる。しかしながら、α-オレフィンはさらなる置換基を全く持たないことが好ましい。本発明に従って使用されるα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体に2種以上の異なるα-オレフィンの混合物を使用することもさらに可能である。しかしながら、異なるα-オレフィンの混合物を使用しないことが好ましい。好ましいα-オレフィンはエテンおよびプロペンであり、本発明に従って使用されるα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体中のα-オレフィンとしてエテンを使用することが本発明では特に好ましい。本発明の架橋性組成物に好ましく使用されるα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体は、したがって、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む。
【0033】
特に好ましいエチレン−酢酸ビニル共重合体は、40質量%以上〜98質量%、好ましくは50質量%以上〜98質量%の酢酸ビニル含有率、および、2質量%〜60質量%以下、好ましくは2質量%〜50質量%以下のエチレン含有率を有し、酢酸ビニルおよびエチレンの全体は100質量%である。
【0034】
本発明に従って使用されるα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体、好ましくはエチレン−酢酸ビニル共重合体は、100〜700バールの圧力で、好ましくは100〜400バールの圧力で溶液重合法によって好ましくは製造される。この溶液重合法は、一般にフリーラジカル開始剤を使用して、50〜150℃の温度で好ましくは実施される。
【0035】
本発明に従って好ましくは使用され且つ高い酢酸ビニル含有率を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体は通常EVM共重合体と称され、ここで、この名称における「M」は、EVMの飽和のメチレン主鎖をさす。
【0036】
本発明に従って使用されるα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体の好適な製造方法は、一例として欧州特許出願公開第0 341 499A号明細書、欧州特許出願公開第0 510 478A号明細書、および独国特許出願公開第38 25 450号明細書に述べられている。
【0037】
本発明に従って好ましいことに使用され、そして高い酢酸ビニル含有率を有し、そして特に100〜700バールの圧力で溶液重合法によって製造されるα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体は、低い程度の分岐および低粘度を特徴とする。本発明に従って使用されるα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体はさらに、それらの単位(α-オレフィンおよび酢酸ビニル)の一様なランダム分布を有する。
【0038】
本発明に従って使用されるα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体、好ましくはエチレン−酢酸ビニル共重合体の、21.1Nの荷重を用いて190℃でISO 1133に準拠して測定されるMFI値(g/10分)は、一般に1〜40、好ましくは1〜10、特に好ましくは2〜6である。
【0039】
100℃でのDIN 53 523 ML1+4に準拠したムーニー(Mooney)粘度は、一般に3〜50、好ましくは4〜35ムーニー単位である。
【0040】
本発明による架橋性組成物は、エチレン−酢酸ビニル共重合体を使用することが特に好ましく、ここで、これらは一例としてランクセス・ドイチュランド社(Lanxess Deutschland GmbH)から商標レバプレン(Levapren)(登録商標)またはレバメルト(Levamelt)(登録商標)で商業的に入手可能である。
【0041】
その使用が特に好ましいα-オレフィン共重合体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体レバメルト(登録商標)400、レバメルト(登録商標)450、レバメルト(登録商標)452、レバメルト(登録商標)456、レバメルト(登録商標)500、レバメルト(登録商標)600、レバメルト(登録商標)700、レバメルト(登録商標)800、およびレバメルト(登録商標)900(これらはそれぞれ、60±1.5質量%の酢酸ビニル、70±1.5質量%の酢酸ビニル、80±2質量%の酢酸ビニル、または90±2質量%の酢酸ビニルを有する)、ならびに相当するレバプレン(登録商標)銘柄である。
【0042】
本発明の架橋性組成物に使用される成分Bは1種のα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体を含むことができるが、2種以上のα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体からなる混合物を使用することも同様に可能である。
【0043】
成分Bに関する上の記述はまた、実施形態1による架橋性組成物にも、および実施形態2による架橋性組成物にも適用される。
【0044】
[成分C(フィラー材、可塑剤、添加剤、および/または追加物)]
実施形態1による本発明の架橋性組成物は、成分Cとして、成分A、B、およびCの全体を基準として、0〜40質量%、好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは5〜20質量%の、フィラー材、可塑剤、添加剤および/または追加物を含むことができる。実施形態2による架橋性組成物は、成分Cとして、成分A、B、およびCの全体を基準として、0〜30質量%、好ましくは0.5〜20質量%の、フィラー材、可塑剤、添加剤および/または追加物を含むことができる。
【0045】
原則として、当業者は、好適なフィラー材、可塑剤、添加剤、および/または追加物を承知している。好適なフィラー材、可塑剤、添加剤、および追加物の例は以下に述べる。
【0046】
[フィラー材(フィラー)]
好適なフィラー材の例は、カーボンブラック、チョーク(炭酸カルシウム)、カオリン、ケイ藻土、タルク(ケイ酸マグネシウム)、酸化アルミニウム水和物、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸亜鉛、焼成カオリン(例えば、ポレスター(Polestar)(登録商標)200P)、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、シラン化カオリン、シラン化ケイ酸塩、被覆チョーク、処理カオリン、ヒュームドシリカ、疎水性化ヒュームドシリカ(例えばエアロシル(Aerosil)(登録商標)972)、合成非晶質沈降性シリカ、工業用カーボンブラック、グラファイト、ナノフィラー、例えば、カーボン・ナノフィブリル、薄板状ナノ粒子、またはナノスケール二酸化ケイ素水和物および鉱物など、である。
【0047】
[可塑剤]
好適な可塑剤の例は、エステル可塑剤、例えば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソデシルなどのフタル酸エステル;ジオクチルアジピン酸エステル、セバシン酸ジオクチルなどの脂肪族エステル;トリクレジルホスフェート、ジフェニルクレジルエステル、トリオクチルホスフェートなどのリン酸エステル;ポリフタル酸エステル、ポリアジピン酸エステル、ポリエステルエーテル(例えばADK サイザー(Cizer)RZ−700、ADK サイザーRZ−750)ならびにトリメリット酸エステル(例えばビソフレックス(BISOFLEX)(登録商標)T810T)である。
【0048】
[添加剤および追加物]
好適な添加剤および追加物の例は、加工助剤、金属石鹸、脂肪酸および脂肪酸誘導体、ファクチス(factice(加硫油):例えば乾性油を硫黄または塩化硫黄で処理することによって得られるゴム状物質;ゴム増量剤として役立つ)、エージング安定剤、UV安定剤またはオゾン安定剤、例えばオゾン安定剤ワックス、酸化防止剤、例えばポリカルボジイミド(例えばレノグラン(Rhenogran)(登録商標)PCD−50)、置換フェノール、置換ビスフェノール、ジヒドロキノリン類、ジフェニルアミンル類、フェニルナフチルアミン類、パラフェニレンジアミン類、ベンゾイミダゾール類、パラフィンワックス、微晶質ワックス、顔料および染料、例えば、二酸化チタン、リトポン、酸化亜鉛、酸化鉄、群青、酸化クロム、硫化アンチモンなど;他の安定剤、例えば熱安定剤、耐候安定剤;酸化安定剤、例えばp−ジクミルジフェニルアミン(例えばナウガード(Naugard)(登録商標)445)、スチレン化ジフェニルアミン(例えばバルカノックス(Vulcanox)(登録商標)DAA)、メチルメルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩(例えばバルカノックス(登録商標)ZMB2)、重合した1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン(例えばバルカノックス(登録商標)HS)、チオジエチレンビス(3,5−ジ−tert-ブチル−4−ヒドロキシ)ヒドロシンナメート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert-ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](例えばイルガノックス(Irganox)(登録商標)1035)、滑剤、離型剤、難燃剤、接着促進剤、マーキング物質、鉱物、ならびに結晶化促進剤および結晶化抑制剤である。
【0049】
[成分D(フリーラジカル架橋開始剤)]
本発明の架橋性組成物はさらに(実施形態1によるばかりでなく、実施形態2によっても)成分Dとして、α-オレフィン−酢酸ビニル共重合体(成分B)の100質量部当たり0.2〜10質量部(phr)、好ましくは1〜6phr、特に好ましくは1.5〜6phrの少なくとも1つのフリーラジカル架橋開始剤を含む。
【0050】
本発明の組成物から得られる熱可塑性エラストマーの所望のエラストマー特性をもたらすフリーラジカル架橋のためには、高い程度の架橋を達成するために、高用量のフリーラジカル架橋開始剤が特に好ましい。低い程度の架橋、したがって、少量のフリーラジカル架橋開始剤を使用しておよび/またはいかなる共架橋剤の使用もなしに熱可塑性樹脂成形組成物の油膨潤を達成することが可能である一方で、特に良好なエラストマー特性を持った本発明の熱可塑性エラストマーは、比較的多量の少なくとも1種のフリーラジカル架橋開始剤のおよび/または共架橋剤と一緒の少なくとも1種のフリーラジカル架橋剤の存在下に得られる。
【0051】
当業者は、好適なフリーラジカル架橋開始剤を承知している。好適な架橋開始剤の例は、有機過酸化物、例えば、アルキルおよびアリールペルオキシド、アルキルパーエステル、アリールパーエステル、ジアシルペルオキシド;多価過酸化物、例えば、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサ−3−イン(例えばトリゴノックス(Trigonox)(登録商標)145−E85、トリゴノックス(登録商標)145−45B)、ジ−tert-ブチルペルオキシド(例えばトリゴノックス(登録商標)B)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン(例えばトリゴノックス(登録商標)101)、tert-ブチルクミルペルオキシド(例えばトリゴノックス(登録商標)T)、ジ(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン(例えばパーカドックス(Perkadox)(登録商標)14−40)、ジクミルペルオキシド(例えばパーカドックス(登録商標)BC40)、過酸化ベンゾイル、2,2’−ビス(tert-ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン(例えばブルカップ(Vulcup)(登録商標)40AE)、2,3,5−トリメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサンおよび(2,5−ビス(tert-ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、3,3,5,7,7−ペンタメチル−1,2,4−トリオキセパン(例えばトリゴノックス(登録商標)311)、である。
【0052】
フリーラジカル架橋開始剤の、特に架橋過酸化物の重要な一つの特性は、フリーラジカルの発生であり、この特性は一般に半減期[t 1/2]によって記述される。半減期は、所定の温度で、存在するフリーラジカル架橋開始剤の濃度が最初の濃度の50%となる時間である。
【0053】
半減期は加硫曲線によって決定される。半減期は温度が上がるにつれて短くなる。成分Aの融点または軟化点より上での半減期が充分に長く、ポリマー溶融物への均一な組み込みの可能性を保持する過酸化物を使用することが好ましい。発生したフリーラジカルの全てが架橋反応のために消費されるためには、対応する混合アセンブリでの滞留時間より半減期が短い過酸化物を使用することが好ましい。
【0054】
成分Aとして本発明に従って使用されるポリアミドの高い融点または高い軟化点のおかげで、本発明の組成物から得られる熱可塑性エラストマーを製造するためのエラストマー相の架橋は、適切にホットメルトで行われる。これは(好ましい一実施形態では)充分に長い半減期をもつフリーラジカル架橋開始剤、好ましくは過酸化物、の使用を必要とする。低温で短い半減期をもつフリーラジカル架橋開始剤、好ましくは過酸化物、は、ポリマー溶融物との最初の接触時に分解し、均一に組み込まれず、エラストマー相の不十分なまたは不均一な架橋を与える。それ故、175℃以上、特に好ましくは180℃以上、非常に特に好ましくは185℃以上、特に好ましいことには190℃以上、より特に好ましくは200℃以上で充分に長い半減期を有する、フリーラジカル架橋開始剤、好ましくは過酸化物を使用することが本発明によれば特に好ましい。本発明の架橋性組成物に、例えば商品名トリゴノックス(登録商標)311で商業的に入手できる、3,3,5,7,7−ペンタメチル−1,2,4−トリオキセパンを使用することが特に好ましい。
【0055】
[成分E(共架橋剤)]
本発明の実施形態1による本発明の組成物での共架橋剤の使用量は、α-オレフィン−酢酸ビニル共重合体の100質量部当たり0.2〜10質量部(phr)、好ましくは1〜6phrである。実施形態2による本発明の架橋性組成物に使用される共架橋剤の量は、α-オレフィン−酢酸ビニル共重合体の100質量部当たり0〜10質量部(phr)、好ましくは1〜6phrである。
【0056】
驚くべきことに、本発明の架橋性組成物から製造される熱可塑性エラストマーの弾性特性、特に圧縮永久歪みは、上述の弾性特性の低下ならびに耐熱性および耐溶剤性値の低下なしに、架橋性組成物内への共架橋剤の添加によって向上し得ることが見いだされた。圧縮永久歪みは、特に、工業的に関係のある範囲内で、本発明の架橋性組成物内への共架橋剤の添加によって実質的に向上させることができる。先行技術は、本発明による架橋性組成物における共架橋剤の使用が、弾性特性の、特に圧縮永久歪みの向上を達成し得ることを全く示唆していない。共架橋剤の添加はさらに、得られる製品の特性プロファイルのいかなる低下もなしに、架橋剤の通常使用量と比較して架橋剤の量を減らすことができる。
【0057】
好適な共架橋剤の例は、例えば、デュポン(DuPont)社からDIAK7として商業的に入手できるトリアリルイソシアヌレート(TAIC)、例えば、HVA−2(登録商標)(デュポン・ダウ(DuPont Dow)社)として商業的に入手できるN,N’−m−フェニレンジマレイミド、トリアリルシアヌレート(TAC)、例えばリコン・レジンズ(Ricon Resins)社からリコン(Ricon)(登録商標)D153として得られる液体ポリブタジエン、トリメチロールプロパン−N,N’−m−フェニレンマレイミド、N−メチル−N,N’−m−フェニレンジマレイミド、ジビニルベンゼン、多官能性メタクリレートモノマー、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、およびアリルメタクリレート、ならびに多官能性ビニルモノマー、例えば、酪酸ビニルおよびステアリン酸ビニル、からなる群から選択されたものである。
【0058】
その使用が好ましい共架橋剤は、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、N,N’−m−フェニレンジマレイミド、トリアリルシアヌレート(TAC)、および液体ポリブタジエンからなる群から選択されたものである。トリアリルイソシアヌレート(TAIC)を共架橋剤として使用することが特に好ましい。
【0059】
本発明の架橋性組成物に1種の共架橋剤、または2種以上の共架橋剤を一緒に使用することが可能である(実施形態1および実施形態2の両方)。
【0060】
[成分F(相溶化剤)]
実施形態1および実施形態2の両方で、本発明の架橋性組成物は、上述の成分A〜Eと一緒に、成分Fとして少なくとも1種の相溶化剤を含むこともでき、A〜Eのうちの幾つかは任意成分である。相溶化剤は一般に、ポリアミド(成分A)へのα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体(成分B)のカップリングを向上させる。当業者は基本的には好適な相溶化剤を承知している。一例として、官能化ポリオレフィンおよびポリオレフィン共重合体はそれぞれ好適な相溶化剤である。官能化ポリオレフィンまたはポリオレフィン共重合体の好適な官能基は、カルボキシ基、カルボニル基、ハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシ基、またはオキサゾリン基である。ポリオレフィンまたはポリオレフィン共重合体はカルボキシ基で官能化されていることが好ましい。カルボキシ基で官能化された好適なポリオレフィンの製造方法は、一例として独国特許第41 23 963号明細書およびそれに述べられた参考文献に開示されている。
【0061】
本発明の実施形態1および2による組成物中の相溶化剤は、カルボキシ基、カルボニル基、ハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシ基、またはオキサゾリン基で、好ましくはカルボキシ基で官能化された、主ポリマー鎖としてのα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体をベースとする共重合体であることが好ましい。本発明の組成物は、α-オレフィン−酢酸ビニル共重合体によって提供される主鎖へのα,β−エチレン系不飽和モノ−および/またはジカルボン酸またはそれらの誘導体のグラフト化により得られる相溶化剤を特に好ましくは用いる。特に好ましい相溶化剤の好適な製造方法は当業者に公知であり、一例として欧州特許出願公開第1 801 162 A1号明細書に述べられている。本発明の組成物は、α-オレフィン−酢酸ビニル共重合体、特にエチレン−酢酸ビニル共重合体、特に好ましくは一般に60質量%以上の高い酢酸ビニル含有率を有するEVMがグラフト化された場合に、特に良好な油膨潤挙動を有する。
【0062】
実施形態1および2による本発明の架橋性組成物中の上述の相溶化剤の使用量は、それがそもそも実際に存在する場合には、成分A、BおよびCの全体を基準として、0〜50質量%、好ましくは3〜40質量%、特に好ましくは5〜30質量%である。
【0063】
[本発明の架橋性組成物の調製、および熱可塑性エラストマー(TPE−V)を与えるための架橋]
本発明の架橋性組成物は、成分A、B、C、D、E、およびFを、それらが組成物中に存在する範囲で混合することによって調製することができる。ここでの混合プロセスはゴム技術で公知の混合システムを用いることができ、例は内部ミキサー、例えば噛合式もしくは接線式ロータジオメトリをもつ内部ミキサーか、または連続混合システム、例えば、混合押出機、例えば2〜4つのスクリューを有する混合押出機である。
【0064】
本発明の方法を実施する際には、成分Aがダメージを受けることなくプラスチックス状態に変換されるように十分に混合温度が高いことを確実にすることが重要である。これは、選択した温度が、成分Aの最も高い融点または軟化点より上である場合に確実にされる。成分A、B、C、D、E、およびFを、それらが組成物中に存在する範囲で、一般に150〜350℃、好ましくは150〜280℃の範囲の温度で混合することが特に好ましい。
【0065】
様々な変形が、個々の成分の混合について原則として可能である。
【0066】
第1変形では、成分AおよびB、ならびに、適切な場合には、成分CおよびFは、それらが本発明の組成物中に存在する範囲で、初期装入物(イニシャルチャージ)として使用され、成分Aの最も高い融点または最も高い軟化点より上の温度で均質に混合される。混合プロセスを継続しながら且つ上述の混合温度を保持しながら、成分DおよびEが(成分Eが本発明の組成物中に存在する範囲で)次に添加される。
【0067】
本発明の方法の第2実施形態では、成分Bは初期装入物として使用され、成分Aの融点または軟化点の直ぐ下までの温度に加熱される。成分Aが次に添加され、温度が成分Aの最も高い融点または軟化点より上の温度に上げられ、そして成分AおよびBが、適切な場合成分CおよびF(これらの成分が存在する場合には)と、一緒に均質に混合された後にはじめて、成分Dおよび、適切な場合には、E(成分Eが存在する場合)が、混合プロセスを継続しながら且つ成分Aの最も高い融点または軟化点より上の混合温度を保持しながら、添加される。
【0068】
第3変形では、成分Aは初期装入物として使用され、成分Aの最も高い融点または最も高い軟化点より上の温度に加熱され、次に成分Bが添加され、そして成分AおよびBは、適切な場合には、成分CおよびF(これらが存在する場合)と、一緒に均質に混合される。成分Dおよび適切な場合にはE(成分Eが存在する場合)が、混合プロセスを継続しながら且つ成分Aの最も高い融点または軟化点より上の混合温度を保持しながら、次に添加される。
【0069】
第4変形では、成分A、B、C、D、E、および適切な場合にはFの全ては、成分が組成物中に存在する範囲で、熱可塑性ポリマーの最も高い融点または最も高い軟化点より上の温度で初期装入物として同時に使用することができ、次に均質に混合することができる。
【0070】
熱可塑性樹脂成分A中でのエラストマー成分Bの特に良好な分配は、本方法が第5の特に好ましい変形によって実施される場合に達成される。この変形では、成分Bがまず成分Dおよび適切な場合にはE(成分Eが存在する範囲で)と、成分Aの最も高い融点または最も高い軟化点より下の温度で混合される。成分Aの最も高い融点または最も高い軟化点より下の温度は、使用される成分Aに左右される。成分Aの最も高い融点または最も高い軟化点より下の温度は30〜180℃であることが好ましく、特に好ましくは50〜150℃である。得られた混合物は、次に、成分Aと成分CおよびF(成分CおよびFが本発明の組成物中に存在する範囲で)との混合物(ここでこれらは、成分Aの最も高い融点または最も高い軟化点より上の温度に加熱されている)に添加される。
【0071】
成分の全てが次に、成分Aの最も高い融点または最も高い軟化点より上の温度で均質に混合される。
【0072】
本方法の上述の変形、特に本方法の変形5は、エラストマー相の架橋前に成分Aおよび成分Bの分配の細かさおよび均一性を最大にする。架橋プロセス前のエラストマー粒子の典型的な粒度(粒径)は5μm未満である。
【0073】
上および以下で述べる、成分Aの最も高い融点または最も高い軟化点より上の温度は、使用される成分Aに左右される。成分Aの最も高い融点または最も高い軟化点より上の温度は、好ましくは150℃〜350℃、特に好ましくは200℃〜300℃である。
【0074】
成分DおよびEの、添加時間および温度、形態、ならびに量の選択は、さらに、エラストマー相中の成分Dおよび適切な場合にはEの良好な分配と、エラストマー相および熱可塑性樹脂相が上記の状態で存在することと、エラストマー相の架橋がその後で初めて起こることを確実にするべきであり、それによって、相反転が起こり、またはエラストマーと熱可塑性樹脂相の共連続相構造が生じ、および/またはエラストマーが5μm未満の粒子で熱可塑性樹脂相中に分散形態で存在する。
【0075】
本発明の架橋性組成物は、バランスのとれた特性をもつ、特に非常に良好な耐熱性値および耐溶剤性値をもつ、かつ同時に、広い硬度範囲をもった非常に良好な弾性特性をもつ熱可塑性エラストマーの提供のために優れた好適性を有する。
【0076】
本発明は、したがって、本発明の組成物または本発明の方法に従って調製された組成物の架橋を含む、熱可塑性エラストマーの製造方法を提供する。この目的を達成するために、本発明の架橋性組成物は、使用される成分Aの最も高い融点または最も高い軟化点より上の温度で、継続混合手順にかけられる。成分Aの融点または軟化点より上の好ましい温度は上に述べてきた。
【0077】
本発明によれば、ダイナミック架橋が行われる。分散エラストマー相の架橋は、したがって、成分A〜F(これらが混合物中に存在する範囲で)の混合時に行われる。これは、以下の場合に始まる。すなわち、本発明の架橋性組成物を製造するための本発明の方法、特に方法の変形1〜5による方法が、成分Dおよび適切な場合にはEの存在下に、特に好ましくは方法の変形5の間に、成分Aの融点または軟化点より上の温度で継続される場合である。
【0078】
本発明の架橋性組成物を製造するための成分A、B、C、D、E、およびF(これらの成分が組成物中に存在する範囲で)のための混合手順において、混合アセンブリの電力消費が一定値をとる、本プロセス中のあるポイントに達する。架橋性組成物を製造するための混合手順はこの時点で終わり、架橋性組成物が存在する。必要な場合には、混合手順はここで終了することができ、架橋性組成物は、急冷することによって、すなわち温度を下げることによって得ることができ、かつ(所望する場合は)単離することができる。混合手順が、直ちに又は上記の通り中断後のどちらかで継続される場合、架橋プロセスは成分Dおよび適切な場合はEによって起こり、これは混合アセンブリの電力消費の増加で認識可能である。エラストマー成分Bのダイナミック架橋は本明細書に含まれる。
【0079】
相反転または共連続相の形成後に、得られた架橋生成物、すなわち熱可塑性エラストマーは、通常は、熱可塑性ポリマーの融点または軟化点より低い温度に冷却される。
【0080】
本発明はまた、本発明の架橋性組成物の架橋によって得られる熱可塑性エラストマーを提供する。本発明のエラストマーの製造に好適な架橋プロセス、およびまた好適な架橋性組成物は、上に述べてきた。
【0081】
本発明はさらに、第1実施形態において
a)成分Aとして、5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%、特に好ましくは10〜30未満の質量%の少なくとも1種のポリアミド、
b)成分B’として、少なくとも1種の共架橋剤と組み合わせた少なくとも1種のフリーラジカル架橋開始剤によって架橋された20〜95質量%、好ましくは40〜89.5質量%、特に好ましくは55超〜85質量%の少なくとも1種のα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体、
c)成分Cとして、0〜30質量%、好ましくは0.5〜20質量%、特に好ましくは5〜15質量%の、フィラー材、可塑剤、添加剤、および/または追加物
を含み、成分A、BおよびCの全体が100質量%である、
熱可塑性エラストマーを提供する。
【0082】
第2実施形態で、本発明は、
a)成分Aとして、10〜30未満の質量%、好ましくは10〜25質量%の少なくとも1種のポリアミド、
b)成分B’’として、適切な場合には少なくとも1種の共架橋剤と組み合わせた少なくとも1種のフリーラジカル架橋開始剤によって架橋された50超〜90質量%、好ましくは60〜89.5質量%の少なくとも1種のα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体、
c)成分Cとして、0〜20質量%、好ましくは0.5〜15質量%の、フィラー材、可塑剤、添加剤および/または追加物
を含み、成分A、BおよびCの全体が100質量%である、
熱可塑性エラストマーを提供する。
【0083】
本発明による熱可塑性エラストマーの特徴は、エラストマー成分Bが熱可塑性樹脂成分A中に細かく分散された形態で存在することである。本発明による熱可塑性エラストマーは、低い硬度範囲(ショア硬度A)における非常に良好な弾性特性と同時に、非常に良好な耐熱性および非常に良好な耐溶剤性を特徴とする。それらはまた、優れた物理的および動的特性、例えば、自動車構成で特に要求される温度である、150℃より著しく上の高温で優れた圧縮永久歪みを有する。いったん熱可塑性樹脂相が溶融した場合は、全システムは熱可塑的に加工できるようになり、したがって、熱可塑性エラストマーのための必要な前提条件に適合する。
【0084】
したがって、本発明はさらに、熱可塑性エラストマーの製造のための実施形態1または2による本発明の組成物の使用を提供し、さらに、成形品、好ましくは駆動ベルト、ガスケット、スリーブ、ホース、膜、ダンパー、異形材、もしくはケーブル・シース、ホットメルト接着剤、もしくはフォイルの製造のための、またはプラスチックス−ゴム共押出のための、または共射出成形のための、実施形態1または2による本発明の熱可塑性エラストマーの使用も提供する。
【0085】
本発明はさらに、本発明の熱可塑性エラストマーを含む成形品、ケーブル・シース、ホットメルト接着剤、またはフォイルを提供する。
【0086】
本発明の架橋性組成物の好適な成分、および本発明の熱可塑性エラストマーの好適な成分は、本発明の架橋性組成物の製造のための好適な製造方法、および本発明の熱可塑性エラストマーの製造のための製造方法とまた同様に、上に述べてきた。
【0087】
得られた成形品は、優れた物理的特性、幅広い硬度範囲で、特に低い硬度範囲で特に優れた弾性値を特徴とし、さらに、高温への耐性および耐溶剤性、特に耐油性も特徴とする。これらの特性は、例えば自動車用途および他の工業用途向けの、特にホース、駆動ベルト、膜、ガスケット、ベローズ、ケーブル・シース、ホットメルト接着剤、フォイル、およびスリーブにとって極めて重要である。成形品は、例えば、一段階法で簡単なやり方で製造することができる。
【0088】
下の実施例は、本発明の追加の説明を提供する。
【実施例】
【0089】
[熱可塑性エラストマーの製造についての一般プロセスの詳述]
1.5L混合容量のワーナー・アンド・プフライデラー(Werner and Pfleiderer)製の内部ミキサーを180℃のチャンバー温度に予熱する。ゴム(エチレン−酢酸ビニル共重合体)と(共架橋剤が使用される範囲で)共架橋剤を含めた添加剤の全てとを、ただし架橋システム、過酸化物を除いて、初期装入物として使用し、内部ミキサーにて100rpmの回転速度で1分間混合する。下の実施例に従って使用される210℃〜220℃の融点の熱可塑性樹脂を、ここで内部ミキサーに装入する。130〜150rpmの回転速度で、内部混合プロセスにおける温度は、2分の間に230℃〜250℃の温度に上がる。この温度は熱可塑性樹脂の融点の温度より上である。熱可塑性樹脂を完全に溶融させる。ゴムおよび熱可塑性樹脂成分を、この温度で3分間さらに混合することによって溶融物中に均質に混合する。2つの成分の5μmより小さい所望の粒度(粒径)の均一な分散系、および共連続相モルホロジーは、混合プロセスのこのセクションで達成される。いったんこの3分間が終わってしまったら、架橋システムを添加する。高い架橋温度をもつ好適な過酸化物であれば、これは、直接か、あるいは予めコンパウンディングした材料中のいずれかで、内部ミキサーへの添加前にロール上で少量のゴム中に過酸化物を予備混合することによって起こる。このゴム相のダイナミック架橋は、150rpmの回転速度で230℃〜250℃の温度における3分の混合時間中に内部ミキサー中で起こる。内部ミキサーの内容物を排出し、まだ熱い間にできるだけ速くロールでロールミルにかけて圧延シートが得られる。次に、試験シートをこれから切り取り、220℃であるTPEの融点より上の、250℃の温度で10分間プレスする。試験シートの厚さは、その後の試験に応じて、2mmまたは6mmである。その後の試験の全てはこれらのシートで実施する。引張歪みおよび引張応力は2mmシートで試験し、圧縮永久歪みは6mmシートで試験する。
【0090】
下の表は、実施例に使用される成分:熱可塑性樹脂、ゴム、添加剤および共架橋剤、を特定している。使用量は、特に別に言及しない限り、質量部で下の表に記す。
【0091】
表1は、本発明の3つの熱可塑性エラストマー(例1、例3、および例4)と、比較例(例2(比較))として本発明のものではない熱可塑性エラストマーの物理的特性を照らし合わせている。
【0092】
【表1】

【0093】
例1と比較例2(比較)との比較は、比較例による熱可塑性エラストマーよりも本発明の熱可塑性エラストマーで圧縮永久歪みが実質的に低いが、その他の応力および硬度の物理的特性の(実質的な)低下が全くないことを示している。
【0094】
本発明の例3および4の比較は、その他の応力および硬度の物理的特性のいかなる(実質的な)低下もなく、共架橋剤(TAIC)の添加によって、圧縮永久歪みが実質的に低下し得ることを示す。
【0095】
上述の例で述べた添加剤は、本熱可塑性エラストマーで必須であるわけではなく、それらの加工性を向上させるのに役立つ。それらは、上の表1に述べた物理的特性に対して、いかなる実質的な影響も及ぼさない。
【0096】
表2は、様々な相溶化剤を用いた本発明の2つの熱可塑性エラストマーの物理的特性を照らし合わせている(実施例5および6)。
【0097】
【表2】

【0098】
例5および6の比較は、エンジンオイル中での本発明の熱可塑性エラストマーの膨潤が、高い酢酸ビニル含有率、例5では60質量%を有するEVM(エチレン−酢酸ビニル共重合体)をベースとする相溶化剤を使用するときに、実質的により小さいことを示している。28質量%の酢酸ビニルの酢酸ビニル含有率を有するEVAをベースとする相溶化剤を用いた例6による熱可塑性エラストマーは、同様に良好な特性を示すが、エンジンオイル中での膨潤は中程度であり、例5のものよりも高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)成分Aとして、5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%、特に好ましくは10〜30未満の質量%の少なくとも1種のポリアミド、
b)成分Bとして、20〜95質量%、好ましくは40〜89.5質量%、特に好ましくは55超〜85質量%の少なくとも1種のα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体、
c)成分Cとして、0〜30質量%、好ましくは0.5〜20質量%、特に好ましくは5〜15質量%の、フィラー材、可塑剤、添加剤、および/または追加物、
を含み、成分A、BおよびCの全体が100質量%であり、さらに、
d)成分Dとして、前記α-オレフィン−酢酸ビニル共重合体の100質量部当たり0.2〜10質量部(phr)、好ましくは1〜6phr、特に好ましくは1.5〜6phrの少なくとも1種のフリーラジカル架橋開始剤、および
e)成分Eとして、前記α-オレフィン−酢酸ビニル共重合体の100質量部当たり0.2〜10質量部(phr)、好ましくは1〜6phrの少なくとも1種の共架橋剤
を含む架橋性組成物。
【請求項2】
a)成分Aとして、10〜30未満の質量%、好ましくは10〜25質量%の少なくとも1種のポリアミド、
b)成分Bとして、50超〜90質量%、好ましくは60〜89.5質量%の少なくとも1種のα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体、
c)成分Cとして、0〜20質量%、好ましくは0.5〜15質量%の、フィラー材、可塑剤、添加剤および/または追加物、
を含み、成分A、BおよびCの全体が100質量%であり、さらに、
d)成分Dとして、前記α-オレフィン−酢酸ビニル共重合体の100質量部当たり0.2〜10質量部(phr)、好ましくは1〜6phr、特に好ましくは1.5〜6phrの少なくとも1種のフリーラジカル架橋開始剤、および
e)成分Eとして、前記α-オレフィン−酢酸ビニル共重合体の100質量部当たり0〜10質量部(phr)、好ましくは1〜6phrの少なくとも1種の共架橋剤
を含む架橋性組成物。
【請求項3】
使用される前記ポリアミドが、C〜C12ラクタム、もしくは4〜18個の炭素原子、好ましくは6〜12個の炭素原子を有するω−アミノカルボン酸をベースとするポリアミド、または4〜18個の炭素原子を有する脂肪族ジアミンからなる群および7〜22個の炭素原子を有する脂環式ジアミンからなる群からの少なくとも1種のジアミンと、4〜44個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸からなる群、8〜24個の炭素原子を有する脂環式ジカルボン酸からなる群、および8〜20個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸からなる群から選択された少なくとも1つのジカルボン酸との重縮合によって得られる重縮合物をベースとするポリアミドを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリアミドが、ポリカプロラクタム、ポリラウロラクタム、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンアゼラミド、ポリヘキサメチレンセバカミド、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド、ポリアミノウンデカン酸、ポリテトラメチレンアジパミド、カプロラクタムとヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との共重合体、およびポリパラフェニレンテレフタルアミドなどのアラミドからなる群から選択されることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記α-オレフィン−酢酸ビニル共重合体が、40質量%以上、好ましくは50質量%以上の酢酸ビニル含有率を有するα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記α-オレフィン−酢酸ビニル共重合体がエチレン−酢酸ビニル共重合体であることを特徴とする請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
使用される前記フリーラジカル架橋開始剤が過酸化物、好ましくは、175℃以上、特に好ましくは180℃以上、非常に特に好ましくは185℃以上、非常に特に好ましいことには190℃以上、より特に好ましくは200℃以上の架橋温度を有する過酸化物を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記共架橋剤が、トリアリルイソシアヌレート、N,N’−m−フェニレンジマレイミド、トリアリルシアヌレート、液体ポリブタジエン、トリメチロールプロパン−N,N’−m−フェニレンマレイミド、N−メチル−N,N’−m−フェニレンジマレイミド、ジビニルベンゼン、多官能性メタクリレートモノマー、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、およびアリルメタクリレート、ならびに多官能性ビニルモノマー、例えば、酪酸ビニルおよびステアリン酸ビニル、からなる群から選択され、好ましくは共架橋剤としてトリアリルイソシアヌレートが使用されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
成分Fとして少なくとも1種の相溶化剤をさらに含み、前記相溶化剤が、好ましくは、カルボキシ基、カルボニル基、ハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシ基、もしくはオキサゾリン基、好ましくはカルボキシ基で官能化された、主ポリマー鎖としてα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体をベースとする共重合体であり、前記相溶化剤が、特に好ましくは、α-オレフィン−酢酸ビニル共重合体によってもたらされる主鎖へのα,β−エチレン系不飽和モノ−および/またはジカルボン酸またはそれらの誘導体のグラフト化により得られることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
使用される前記相溶化剤Fが、少なくとも1種のフェノール樹脂と少なくとも1種のCl含有ルイス酸、好ましくはZnClとの組み合わせからなる少なくとも1種の相溶化剤を含むことを特徴とする請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
成分A、B、C、D、E、およびFを、それらが組成物中に存在する範囲で混合することによる請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物の調製方法。
【請求項12】
成分Bがまず、成分Aの最も高い融点または最も高い軟化点より下の温度で成分Dおよび適切な場合はEと混合され、そして得られた混合物が次に、適切な場合は、成分Cおよびさらに適切な場合は成分Fを含み、かつ、成分Aの最も高い融点または最も高い軟化点より上の温度に加熱された成分Aの混合物と混ぜ合わされることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
成分Aの最も高い融点または最も高い軟化点より上の温度で、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物、または請求項11もしくは12に従って調製された組成物を架橋することを含む、熱可塑性エラストマーの製造方法。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物の架橋によって得られる熱可塑性エラストマー。
【請求項15】
a)成分Aとして、5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%、特に好ましくは10〜30未満質量%の少なくとも1種のポリアミド、
b)成分B’として、少なくとも1種の共架橋剤と組み合わせた少なくとも1種のフリーラジカル架橋開始剤によって架橋された20〜95質量%、好ましくは40〜89.5質量%、特に好ましくは55超〜85質量%の少なくとも1種のα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体、
c)成分Cとして、0〜30質量%、好ましくは0.5〜20質量%、特に好ましくは5〜15質量%の、フィラー材、可塑剤、添加剤および/または追加物
を含み、成分A、BおよびCの全体が100質量%である、
熱可塑性エラストマー。
【請求項16】
a)成分Aとして、10〜30未満の質量%、好ましくは10〜25質量%の少なくとも1種のポリアミド、
b)成分B’’として、適切な場合には少なくとも1種の共架橋剤と組み合わせた、少なくとも1種のフリーラジカル架橋開始剤によって架橋された50超〜90質量%、好ましくは60〜89.5質量%の少なくとも1種のα-オレフィン−酢酸ビニル共重合体、
c)成分Cとして、0〜20質量%、好ましくは0.5〜15質量%の、フィラー材、可塑剤、添加剤および/または追加物
を含み、成分A、BおよびCの全体が100質量%である、
熱可塑性エラストマー。
【請求項17】
熱可塑性エラストマーの製造のための、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項18】
成形品、好ましくは駆動ベルト、ガスケット、スリーブ、ホース、膜、ダンパー、異形材、またはケーブル・シース、ホットメルト接着剤、もしくはフォイルの製造のための、またはプラスチックス−ゴム共押出のための、または共射出成形のための、請求項14〜16のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマーの使用。
【請求項19】
請求項14〜16のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマーを含む、成形品、ケーブル・シース、ホットメルト接着剤、またはフォイル。

【公開番号】特開2009−209369(P2009−209369A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−49266(P2009−49266)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】