説明

柾目模様を有する化粧板の製造方法

【課題】 柾目模様を有する樹脂含浸化粧材と同等の優れた意匠性及び強度を有する化粧板を、安定して生産性よく製造することができる化粧板の製造方法を提供する。
【解決手段】 化粧基板1の表面の、早材部と晩材部が明瞭でない植林木等の天然木材2の表面に回転鋸6、6’・・を用いて凹条溝4、4’・・を形成した後、凹条溝4、4’・・及び凹条溝4、4’・・以外の天然木材2の表面5にブラスト研磨材13を衝突させて均一にブラスト処理する。次に浸透性樹脂8を塗布、含浸させ、さらにその表面に着色樹脂9を少なくとも凹条溝4、4’・・内に充填されるように塗布した後、活性エネルギー線を照射し硬化させる。次いでこの表面を面均一に研削し、透明性樹脂塗料を塗布して透明性樹脂塗膜10を表面に形成することにより、意匠性に優れた柾目模様を有する化粧板を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、意匠性に優れた柾目模様を有する化粧板を、生産性良く製造することができる柾目模様を有する化粧板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば特許文献1に示すようにファイバーボードからなる基板の表面に天然木である突板を貼着させ、この突板表面に染料着色を行なった後、この表面をブラッシング処理してやわらかい夏目(早材部)を切削し、着色された冬目(晩材部)を浮き上がらせるようにした化粧板が知られている。また、特許文献2に示すように天然木である針葉樹化粧単板や、人工木である人工木目化粧単板に合成樹脂液を含浸注入後、この化粧単板の片面にクッション性シート状物を載置して平坦な熱盤間で加熱加圧し、軟材部(早材部)を圧縮して形成した浮造り調の化粧板が知られている。更に特許文献3に示すようにサンドブラストによってやわらかい夏目(早材部)を切削することにより飾り板を製造する技術も知られている。
【0003】
このような方法で得られる化粧板は、天然木の有する木目が色や立体感で強調されてその装飾意匠性を一層強調させることができるという利点がある。
【0004】
一方近年、良質な木目を有する天然木は枯渇化してきており、地球環境上、成長が早く再生産に適した植林木や、木目の装飾性が低い未利用木材の活用の必要性が高まってきている。しかしながら、このような植林木や未利用木材には、早材と晩材の硬さの差や色調の差が不明瞭であり、柾目の木目が不規則に乱れて意匠性の低いものが多いという問題を有していた。
【0005】
このため、このような植林木や未利用木材に対し、前記特許文献1、特許文献2、特許文献3に記載の方法を適用して木目柄の化粧板を製造しようとしても、前記ブラッシングや熱盤プレス、或いはサンドブラスト等の手法では、形成できる柾目模様が不明瞭となって、得られる化粧板の意匠性が低くなるという問題を有していた。
【0006】
また、上記ブラッシング、熱盤プレス、サンドブラスト等の処理は、いずれも天然木本来の早材部と晩材部の硬さの差を利用して木目模様を強調させるものであるため、均質で装飾性の良い柾目模様を有する化粧板を得ようとすると、装飾性の良い柾目模様を有する高価な天然木を厳選して確保する必要があり、また、厳選によって歩留まりが極めて悪くなるという問題を有していた。更に、上記熱盤プレスなどの処理はいずれも生産スピードが遅く生産性を悪くするという問題を有していた。
【特許文献1】特開昭58−84709号
【特許文献2】特開昭58−71104号
【特許文献3】特開昭53−69803号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、化粧板の製造方法に工夫を加えることにより、柾目模様を有する意匠性に優れた化粧板で、床等のハードな環境でも使用できる化粧板を生産性よく製造することができ、また、植林木や未利用木材であっても適用することができる柾目模様を有する化粧板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願請求項1の発明にかかる柾目模様を有する化粧板の製造方法は、天然木材で形成された表面を有する化粧基板の表面に、その一側部から他側部に至る多数の凹条溝を切削により設ける凹条溝切削工程と、上記凹条溝を設けた化粧基板の表面全面をブラスト処理して粒子で叩くブラスト処理工程と、上記ブラスト処理した化粧基板の表面全面に浸透性樹脂を塗布、含浸させる浸透性樹脂含浸工程と、上記浸透性樹脂を塗布、含浸させた化粧基板表面の少なくとも凹条溝内に着色樹脂を塗布、充填させる着色樹脂塗布充填工程と、上記着色樹脂を塗布、充填させた化粧基板の表面全面を研削する研削工程と、上記研削した化粧基板の表面に透明性樹脂塗料を塗布する透明性樹脂塗料塗布工程とを備えてなり、凹条溝内に充填した着色樹脂を柾目模様として現出させるようにしたことを特徴とする。
【0009】
すなわち、本願では凹条溝切削工程で切削した多数の凹条溝内部に着色樹脂を充填してこれを柾目模様として現出するようにしているので、用いる天然木材の木目を厳選する必要がなく木目の良くない未利用木材であっても天然木材として用いることができる。また、前記ブラッシング処理や平盤プレス処理、或いはサンドブラスト処理では、早材部と晩材部とに明瞭な硬さや色に差のある天然木材を用いるのが好適であるが、このような差が不明瞭で軽質な植林木であっても天然木材として良好に適用でき且つ生産性よく製造することができる。
【0010】
また、ブラスト処理工程において、上記凹条溝を設けた化粧基板の表面を粒子で叩くので、切削によって形成した単調な凹条溝の開口角部に自然な丸みを与えることができ、単調な凹条溝に自然な風合いを与えてその意匠性を向上させることができる。更に、このようなブラスト処理によって化粧基板表面に小さな傷を与えて、次工程における浸透性樹脂の化粧基板表面への含浸を生産性良く行なえるようにし、含浸した浸透性樹脂によって表面強化されて、床材等のハードな用途にも好適に用いることのできる柾目模様を有する化粧板に形成することができる。
【0011】
また、次の研削工程と透明性樹脂塗料塗布工程により、優れた表面保護性を付与することができる。尚、この研削工程においては、その研削量を加減することによって、表面色や凹条溝の形状に意匠的な変化を与えることができる。
【0012】
請求項2の発明にかかる柾目模様を有する化粧板の製造方法は、請求項1に記載の柾目模様を有する化粧板の製造方法において、上記浸透性樹脂及び上記着色樹脂として、活性エネルギー線硬化特性及び湿気硬化特性を有する樹脂を用い、着色樹脂塗布充填工程と研削工程の間に、上記塗布した浸透性樹脂及び着色樹脂に活性エルルギー線を照射して硬化させる活性エネルギー線照射工程を備えるようにしたことを特徴とする。
【0013】
このように、浸透性樹脂および着色樹脂の両方に活性エネルギー線硬化特性と湿気硬化特性とを有する樹脂を用い、着色樹脂塗布充填工程の後に活性エネルギー線を照射するようにしたので、化粧基板の表面内部に浸透した浸透性樹脂や少なくとも凹条溝内に充填した着色樹脂の硬化を樹脂の発泡等の不具合を生じることなく同時に促進させることができる。そして、また、活性エネルギー線の到達し難い部分の浸透性樹脂や着色樹脂が十分な硬化状態でない状態で残存したとしても、湿気硬化作用によって数日内に十分硬化させることができ、効果不良が発生するのを良好に防止することができる。
【0014】
尚、ここにおいて、浸透性樹脂を塗布、含浸した後で且つ着色樹脂を塗布する前に、活性エネルギー線を照射することもできる。この場合には、化粧基板表面全面に塗布、含浸した浸透性樹脂の硬化を一層促進させることができるとともに、凹条溝の底に含浸した浸透性樹脂と着色樹脂との間に密着不良が生じるのを防ぐこともできる。
【0015】
請求項3の発明にかかる柾目模様を有する化粧板の製造方法は、請求項1または2に記載の柾目模様を有する化粧板の製造方法において、着色樹脂塗布充填工程で、上記浸透性樹脂を塗布、含浸させた化粧基板の凹条溝内を含む表面全面に着色樹脂を塗布するようにし、研削工程で化粧基板の表面全面に着色樹脂が残存するように研削することを特徴とする。
【0016】
これにより、自然な形状に形成された凹条溝にのみ着色樹脂を精度良く塗布、充填させるという複雑で難しいプロセスで製造する場合に較べて、用いる着色樹脂量は多くなるという欠点はあるが、生産性を大幅に向上させることができる。また、得られる柾目模様を有する化粧板は、凹条溝が濃色で且つそれ以外の表面がそれより少し淡色のコントラストの差が小さい、自然な風合いの柾目模様を有する化粧板に形成することができる。
【0017】
請求項4の発明にかかる柾目模様を有する化粧板の製造方法は、請求項1または2に記載の柾目模様を有する化粧板の製造方法において、着色樹脂塗布充填工程で、浸透性樹脂を塗布、含浸させた化粧基板の凹条溝内を含む表面全面に着色樹脂を塗布するようにし、研削工程で上記凹条溝内以外の表面に塗布した着色樹脂を除去するように研削することを特徴とする。
【0018】
これにより、凹条溝と凹条溝以外の色のコントラストが明瞭で、柾目模様が強調された装飾性の良い柾目模様を有する化粧板を得ることができる。
【0019】
請求項5の発明にかかる柾目模様を有する化粧板の製造方法は、請求項1から4のいずれか1に記載の柾目模様を有する化粧板の製造方法において、凹条溝切削工程で切削する多数の凹条溝の溝幅を0.8mm〜3.0mmの範囲の複数種とすることを特徴とする。
【0020】
これによって、複数の異なる溝幅の凹条溝を設けることができ、より意匠性の高い自然感のある柾目模様を現出させることができる。尚、凹条溝の溝幅が0.8mm未満になると柾目模様が目立たなくなって意匠性が低くなるとともに鋸刃等による切削では刃が薄くなって安定的な切削加工が困難になるので好ましくなく、また、上記溝幅が3.0mmを超えると、現出する柾目が不自然に幅広になりすぎて意匠性が低くなるとともに、切削抵抗が大きくなって生産性も悪くなるため、好ましくない。また、2.0mmを超えるような幅の加工を行う場合は、切削抵抗が大きくなるため、1.0mm程度の幅の刃物を複数枚組み合わせて用いることが好ましい。
【0021】
請求項6の発明にかかる柾目模様を有する化粧板の製造方法では、請求項1から5のいずれか1に記載の柾目模様を有する化粧板の製造方法において、凹条溝切削工程で用いる、天然木材で形成された表面を有する化粧基板が、木質基材とその表面に形成されたバリア層と該バリア層の表面に貼着された厚さ0.2mmから1.0mmの木質単板とで形成されており、凹条溝がバリア層に至らない深さとなるように切削されていることを特徴とする。
【0022】
これによって、浸透性樹脂の含浸がバリア層によって阻止されることになり、浸透性樹脂の含浸量を均一且つ一定量にすることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように本願発明によれば、木目の不明瞭な植林木や未利用木材であっても、それを利用して柾目模様の優れた意匠性を有する化粧板を、生産性良く製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態にかかる化粧板の製造方法を、図1に基づいて詳細に説明する。
【0025】
(基材)
化粧基板1を構成する基材3は、木材、合板、集成材、MDF(中比重木質繊維板)、パーティクルボード等の木質基材、または石膏ボード、火山性ガラス質複層板等の無機質基材、或いはこれらを複合させた複合基材等から選択して用いることができる。
【0026】
(天然木材)
上記基材3の表面に天然木材2である木質単板を貼着して化粧基板1を形成することができる。このような天然木材2として、早材部と晩材部の硬さや色に大差がなく、その差が不明瞭な植林木や、木目の外観が良くない未利用木材を好適に用いることもできる。具体的には、アスペン、ポプラ、コットンウッド、アオギリ科のアユース、ゴマノハグサ科のキリ、カエデ科ソフトメープル類のレッドメープル、シルバーメープル、ボックスエルダー、ビッグリーフメープル等の散孔材的外観を持つ樹種を選択するのが望ましい。またその厚みは、0.2mm〜3.0mm程度のものを使用でき、通常、0.20mm〜1.0mm程度、好ましくは0.25mm〜0.6mm程度の厚さのものが、浸透性樹脂の使用量や後述の樹脂硬化工程への負荷を減らし生産性を高めるために最も好適である。
【0027】
まず、図1(a)に示すように、上記天然木材2を基材3の表面に貼着し、化粧基板1に形成する。
【0028】
(凹条溝切削工程)
次に、図1(b)に示すように、得られた化粧基板1の表面である天然木材2の表面2aに、多数の回転鋸6、6’・・で、一端から他端に亘り長手方向に連通する略平行な多数の凹条溝4、4’・・を設ける。このような多数の凹条溝4、4’・・を形成する工程は一度の工程で行うこともでき、また複数の工程で行うこともできる。また、上記多数の凹条溝4、4’・・は同じ溝幅でも構わないが、回転鋸6、6’・・の刃の厚さを変えることによって、異なる幅の凹条溝4、4’・・に形成しておくのが意匠的に好ましい。また、図1では、凹条溝4、4’・・の断面形状が略コの字状のものを示したが、これに限定されず、断面略V字状や略U字状のものに形成することもでき、さらにはこれら種々の断面形状の凹条溝4、4’を組み合わせて用いることもできる。このように凹条溝4、4’・・の断面形状に変化を与えることによって、凹条溝4、4’・・内に充填された着色樹脂9によって、現出する柾目模様に深みと自然感を与えることができ、意匠性の良い柾目模様を有する化粧板Aに形成することができる。
【0029】
尚、上記第1の実施形態では、凹条溝4、4’の切削具として回転鋸6、6’によるものを示した。このような回転鋸6、6’による凹条溝4、4’の切削は、生産性が非常によいので好ましい。さらに複雑な形状の凹条溝4、4’を形成する場合は、ルーターなどの切削具を用いることもできる。
【0030】
また、上記凹条溝4、4’の溝幅は、0.8mm〜3.0mm程度の範囲にあることが、現出させる柾目模様の意匠上、および回転鋸6、6’によって良好に凹条溝4、4’・・を切削する上で望ましいことは前記の通りである。
【0031】
(ブラスト処理工程)
次に、図1(c)に示すように、凹条溝4、4’・・及び化粧基板1の凹条溝4、4’・・以外の表面5を含む天然木材2の表面全面に微細な粒子であるブラスト用研磨材13を衝突させ、ブラスト処理する。このようなブラスト処理に用いる研磨材としては、ガラスビーズ、ガラスパウダー、ケイ素質等の無機質粒子、アルミナ等の金属粒子、胡桃や桃の種等を粉砕した硬質有機粒子、あるいはドライアイスを細かく粉砕したドライアイス粒子等を用いることができる。
【0032】
ここにおいて用いるブラスト用研磨材13の粒径は、90μm以上で且つ150μm以下に調整されたものを用いるのが望ましい。例えば無機質粒子を用いる場合は、ふるい法では、3段から5段程度でふるい分けを行う。そして、例えば1段目のふるいの目開き径を約180μm、2段目のふるいの目開き径を約150μm、3段目のふるいの目開きの径を90μmに設定しておくと、90μm乃至150μmの粒径のものが約70%以上含まれるブラスト用研磨材13に調整することができる。残りの約30%未満は、扁平形状や鋭利な形状のもの、又は90μm以下でふるいきれなかったものが含まれている。
【0033】
このようにして得られたブラスト用研磨材13は、化粧基板1の上方の任意位置に配置した複数本のノズル7から、自然落下させたり、空気の圧力を加えて噴射させることにより化粧基板1表面の天然木材2の表面に衝突させてブラスト処理する。
【0034】
このようなブラスト処理によって、化粧基板1の天然木材2の表面に微細な傷15が形成され、これによって後述する浸透性樹脂8の天然木材2への含浸性を高めることができる。また、ブラスト用研磨材13の衝突によって凹条溝4、4’・・の開口角部が優先的に除去され、この開口角部を断面略R形状にすることができる。さらに、本実施形態1のように天然木材2として早材部と晩材部の硬度や色に明瞭な差のない植林木を木質単板として用いた場合でも、ブラスト処理によって早材部のやわらかい部分と晩材部の少し硬い部分とで天然木材2の表面に微妙な凹凸差を発生させることもできるので、自然感に富んだ意匠性を現出させることができる。
【0035】
(浸透性樹脂塗布工程)
次に、図1(d)に示すように、浸透性樹脂8を上記ブラスト処理した化粧基板1の凹条溝4、4’を含む表面全面に塗布して含浸させる。このような浸透性樹脂8の塗布手段として、例えばスポンジロールコーターやナチュラルリバースコーター、フローコーター等(図示せず)を用いることができる。そして前記したようにブラスト処理により微細な傷が形成されているので、浸透性樹脂8を天然木材2の内部まで良好に含浸させることができる。
【0036】
ここにおいて浸透性樹脂8としては、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレートなどのオリゴマーやポリマーを単独又は混合させたものに、反応性モノマーを適宜加えたものを主成分とし、これに活性エネルギー線が紫外線の場合は光重合開始剤を添加し、さらにポリイソシアネートを1質量%〜15質量%程度添加したものを用いることができる。
【0037】
用いるモノマーのうち、単官能モノマーの例としては、ラウリルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレート、ジシクロペンタジエンアクリレート、2−ヒドロキシルプロピルアクリレート、フェノキシ(ジ)エチレングリコールアクリレート、イソボロニルアクリレート、β−カルボキシエチルアクリレート、アクリロイルモルフォリン、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、ベンジルアクリレート等が挙げられる。
【0038】
また、2官能モノマーの例としては、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0039】
そして、3官能モノマーの例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート等が挙げられる。
【0040】
また、4官能以上のモノマーの例としては、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ポロポキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0041】
また、得られる浸透性樹脂8には、湿気反応型の硬化剤が添加され、湿気硬化特性が付与されている。湿気硬化型の硬化剤の具体例としては、イソシアネート系化合物が好適に使用される。これらのイソシアネート系化合物は、空気中又は木材中の水分と反応し、活性エネルギー線の届きにくい深部の浸透性樹脂8の硬化を促進させる。
【0042】
このようなイソシアネート系化合物の具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネートなどのイソシアネートモノマーやこれら化合物のビウレット体、イソシアヌレート体、トリメチロールプロパンのアダクト体のようなポリイソシアネート誘導体、又はこれらイソシアネートモノマーやポリイソシアネート誘導体のブロック体などが挙げられる。さらには、このようなイソシアネート系化合物として、無黄変型又は難黄変型のものを用いることが望ましい。そして、これらのイソシアネート系化合物は単独で又はこれらを複数種混合して用いることもできる。
【0043】
活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、浸透性樹脂8に光重合開始剤が添加される。このような光重合開始剤の具体例としては、一般的に用いられるラジカル反応型のアセトフェノン系、ベンゾフェノン系、ベンジル系、ベンゾイン系などのカルボニル化合物、テトラアルキルチウラムモノサルファイド、チオキサンソンなどのイオウ化合物を単独、又はこれらを複数種混合して用いることができる。
【0044】
具体的には、光重合開始剤として、ビスアシルフォスフィンオキサイドを0.1質量%以上1.5質量%以下含むものか、モノアシルフォスフィンオキサイドを0.5質量%以上5.0質量%以下含むものであることが望ましい。さらには、これら二つを混合して用いてもよい。ビスアシルフォスフィンオキサイド及びモノアシルフォスフィンオキサイドは、紫外線波長領域が350nm〜400nm近辺である長波長領域に吸収極大をもつ。従って、紫外線を発光する光として、350nm〜400nmの長波長領域に発光スペクトルをもつ発光方式を用いることにより、さらに浸透性樹脂8を効率的に硬化させることができる。具体的には、メタルハライドランプ、無電極方式のDバルブ、Vバルブ、Qバルブ、Mバルブ、パルスUV方式等を使用する。
【0045】
さらに、上述のように活性エネルギー線が紫外線の場合は、浸透性樹脂8に、増感剤、光安定剤、紫外線吸収剤、貯蔵安定剤等の反応助剤を適宜添加してもよい。また、染料、顔料等を加えて着色を行なうこともできる。尚、活性エネルギー線として電子線を用いる場合には、浸透性樹脂8に上記光重合開始剤を添加する必要はない。
【0046】
更に、このような浸透性樹脂8には、一般的に使用される錫化合物、亜鉛化合物、アミン化合物などの触媒を添加することができる。
【0047】
また、浸透性樹脂8は、低粘度で且つ浸透性の高い樹脂であることが望ましい。具体的には、天然木材2の表面に塗布されたときの粘度が100Pa・s以下であることが望ましい。このように、浸透性樹脂8を低粘度にすることで、浸透性を高めることができる。なお、浸透性樹脂8は、上述したモノマーにより希釈したり加温したりすることで、上記の粘度となるように調整する。また、例えば予め化粧基板1の表面温度が50℃〜70℃となるように加熱し、この表面温度より10℃〜20℃低い温度に調整した浸透性樹脂8を塗布することで、この浸透性樹脂8の含浸性をさらに向上させることができる。
【0048】
このように、浸透性樹脂8として活性エネルギー線で硬化するものを用いた場合には、その活性エネルギー線を照射することによって化粧基板1に含浸した樹脂を迅速確実に硬化させることができるので、生産性を高めることができ好ましい。また、浸透性樹脂8が活性エネルギー線で硬化する作用と湿気で硬化する作用とを併せ持つ場合は、活性エネルギー線の照射で硬化が不十分な部分が生じたとしても、短期間のうちに湿気硬化作用で十分に硬化させることができる。
【0049】
(着色樹脂塗布充填工程)
次に、図1(e)に示すように、着色樹脂9を、浸透性樹脂8を塗布、含浸させた化粧基板1の凹条溝4、4’・・を含む表面全面に塗布し、凹条溝4、4’・・内に着色樹脂9を充填させる。この着色樹脂9の塗布は、スポンジロールコーター、ナチュラルリバースコーター、ゴムロールコーター、ナイフコーター等を使用して行なうことができる。ここにおいて着色樹脂9を凹条溝4、4’・・内にのみ塗布して凹条溝4,4’・・内にのみ着色樹脂9を充填させる場合には、ノズルを用いることができる。
【0050】
このような着色樹脂9は、上記浸透性樹脂8のように浸透性を付与する必要はないが、上記浸透性樹脂8と同じものを用いることができ、これに着色顔料や染料等の着色剤を必須として添加したものを用いることができる。そして着色樹脂9の場合も、浸透性樹脂8と同様に活性エネルギー線硬化特性と湿気硬化特性とを兼ね備えているものを用いると、活性エネルギー線の照射により、着色樹脂9を迅速に硬化させることができるだけでなく、活性エネルギー線が十分届かなかった部分があったとしても、湿気硬化作用で短期間のうちに十分に硬化させることができる。ここにおいて、着色樹脂9に添加する上記着色剤の添加量は通常0.1質量%〜1.0質量%程度であるが、活性エネルギー線として電子線を用いる場合は、着色剤の硬化阻害の影響が小さいので、5質量%程度まで増加させることができる。
【0051】
(活性エネルギー線照射工程)
次に、浸透性樹脂8及び着色樹脂9を塗布した化粧基板1の表面に、紫外線又は電子線からなる活性エネルギー線を照射する。このような活性エネルギー線の照射は、本実施形態1のように着色樹脂9を塗布した後の1回だけ行なってもよく、また、浸透性樹脂8を塗布した後と着色樹脂9を塗布した後の2回行っても良い。尚、この活性エネルギー線照射工程は、活性エネルギー線を照射しても硬化が促進されないような浸透性樹脂8及び着色樹脂9を用いる場合は不要であることはいうまでもない。
【0052】
また、凹条溝4、4’・・が0.4mmよりも深い場合には、上記着色樹脂塗布充填工程と上記活性エネルギー線照射工程とを2回以上繰り返すことで凹条溝4、4’内の着色樹脂9の充填、硬化を良好に行なうことができ、また充填された着色樹脂9が発泡する等の不具合を生じるのを防止できる。
また、上記のように凹条溝4、4’の深さが深い場合には、活性エネルギー線として電子線を用いると、少ない回数で着色樹脂や浸透性樹脂を硬化させることができる。この場合、50〜300keV程度の低エネルギー型電子線照射装置が一般的に使用される。紫外線より強力な活性エネルギー線であるため、1.0mm程度の深さの凹条溝4、4’を設けた場合も、充填された着色樹脂9を一回の照射処理で十分に硬化させることができる。さらに、この場合、表面の天然木材2中に含浸させた浸透性樹脂8も同時に十分硬化させることができるため、製造直後に密着不良を起こして剥離するという心配もないという利点がある。
【0053】
(研削工程)
次に、上記活性エネルギー線照射工程で浸透性樹脂8や着色樹脂9を硬化させた化粧基板1の表面を研削する。この研削工程において、凹条溝4、4’・・内に充填された着色樹脂9が残存するように研削する。本実施形態では、化粧基板1の表面である天然木材2の表面全面に着色樹脂9を塗布した場合を示しており、研削後は、図1(e)に示すように、凹条溝4、4’・・と凹条溝4、4’・・以外の化粧基板1の表面5に着色樹脂9が残存するように研削した例を示している。この場合には、着色樹脂によって凹条溝4、4’・・が濃色で凹条溝4、4’・・以外の化粧基板1の表面5がそれより淡色の、両者のコントラストが比較的少ない、自然感に優れた柾目模様を有する化粧板Aに形成することができる。
【0054】
尚、この研削工程において、上記化粧基板1の凹条溝4、4’・・以外の表面に塗布した着色樹脂9を除去し、凹条溝4、4’・・に充填した着色樹脂9だけを残存させるように研削することもできる。この場合には、凹条溝4、4’・・以外の表面と凹条溝4、4’・・の表面とにコントラストがついて柾目模様が強調された化粧板Aに形成することができる。
【0055】
(透明性樹脂塗料塗布工程)
次に、図1(f)に示すように、面均一に研削された化粧基板1表面の天然木材2の表面に、透明性樹脂塗料を塗布しこれを硬化させて、透明性樹脂塗膜10を形成する。本実施形態においては浸透性樹脂8を含浸させているので、一般的な強化塗装のような厚膜塗装を行わなくても、例えば床材としての使用に耐えるに十分な表面強度を持つ化粧板Aを得ることができる。ただし、更に意匠性を向上させるために、150μm〜250μmの厚膜塗装を行うこともでき、また、その透明性樹脂塗膜10の最下層に顔料等の着色剤からなる着色層を設けておくこともできる。
【0056】
(第1の実施形態の効果)
このように、本第1の実施形態では、凹条溝4、4’・・を回転鋸6、6’・・によって切削しているので生産スピードが速く、また、この凹条溝4、4’・・に着色樹脂8を充填しているので、化粧基板1として早生植林木等の早材部と晩材部との硬さや色の差が少ない天然木材2を表面に有するものを用いた場合にも、この着色樹脂充填凹条溝4、4’・・を装飾性の良い柾目模様として現出させることができる。また、ブラスト処理を行なうことにより、凹条溝の開口角部に自然な丸みを与えて意匠性を付与することができ、また、浸透性樹脂8の含浸を良くして化粧基板1の表面を生産性よく良好に強化することができる。
【0057】
さらに、浸透性樹脂8及び着色樹脂9として、活性エネルギー線硬化特性と湿気硬化特性を兼ね備えたものを用いているので、硬化不良や樹脂発泡等の不具合を生じることなく、連続的なラインで生産性よく柾目模様を有する化粧板Aを製造することができる。
【0058】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る製造方法について、図2に基づいて説明する。なお、図1と同じ構成要素については同じ符号を付し、第1の実施形態と同じ部分については、その説明は省略する。
【0059】
第2の実施形態においては、まず、図2(a)に示すように、表面にバリア層11を有する基材3を使用し、このバリア層11の表面に天然木材2として木質単板を貼着して化粧基板1としている。このようなバリア層11は、基材3への過度な浸透性樹脂8の含浸を防いで均質な含浸層を形成すること、及び床材等のハードな条件にも適用できるように表面の強度を向上させること等を目的として、基材3と化粧基板1の間に設けることができる。
【0060】
このようなバリア層11として、ホットメルト樹脂を塗布して硬化させたホットメルト樹脂塗布層、樹脂板、樹脂含浸紙等を挙げることができる。その他の構成及び効果は第1の実施形態と同じである。
【実施例】
【0061】
(実施例1)
厚さ10mm、長さ1850mm、幅130mmの合板からなる矩形基材の表面に、天然木材として0.6mm厚のアユース単板をビニルウレタン系接着剤を用いて接着し、化粧基板に形成した。
【0062】
次にこの化粧基板の表面に、回転鋸により、長手方向に連通する深さ0.5mmの凹条溝を、下記に示す3段階の凹条溝切削工程によって形成した。
【0063】
すなわち、第1の凹条溝切削工程では、4.0mm幅の回転刃1枚と3.0mm幅の回転刃4枚とを備えた回転鋸装置により略平行な5本の凹条溝を切削し、次に、第2の凹条溝切削工程では、第1の凹条溝切削工程で形成した凹条溝と重ならない位置に、2.5mm幅の回転刃2枚と2.0mm幅の回転刃3枚とを備えた回転鋸装置により略平行な5本の凹条溝を切削し、次に、第3の凹条溝切削工程では、第1および第2の凹条溝切削工程で形成した凹条溝と重ならない位置に1.0mm幅の回転刃7枚を備えた回転鋸装置により略平行な7本の凹条溝を切削して、断面コ字状で深さ0.5mm、幅1.0mm〜4.0mmの略平行な17本の凹条溝を形成した。
【0064】
次に、上記凹条溝を形成した化粧基板の凹条溝を含む表面全面にブラスト処理を行った。このブラスト処理には、サンドブラスト用研磨材(フジガラスビーズ #150:(株)不二製作所製)を使用した。このブラスト処理によって化粧基板の表面全面は叩かれ、上記17本の凹条溝の開口角部に自然な丸みを帯びさせるとともに、次の浸透性樹脂が含浸し易い表面性状に形成した。
【0065】
次に、紫外線硬化特性を有する浸透性樹脂を、エポキシアクリレート40質量部、トリプロピレングリコールジアクリレート30質量部、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート30質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート20質量部、ポリオール10質量部、染料0.5質量部、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン3質量部を配合して調整した。
【0066】
そして、上記ブラスト処理後の化粧基板を80℃に設定した通風ドライヤーの中で60秒間養生し、ドライヤーから取り出してその表面温度を40℃に調整した後、上記で調整した浸透性樹脂をフローコーターにより80g/m2塗布した。これを常温(25℃)条件下で60秒間放置することにより、塗布した浸透性樹脂を、化粧基板表面のアユース単板に含浸させた。
【0067】
次に、紫外線硬化特性を有する着色樹脂を、エポキシアクリレート60質量部、トリプロピレングリコールジアクリレート40質量部、アクリロイルモルフォリン5質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート5質量部、染料0.7質量部、ビスアシルフォスフィンオキサイド0.7質量部、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン3質量部を配合して調整した。
【0068】
そして、上記浸透性樹脂を含浸させた化粧基板の表面全面に、上記着色樹脂をゴム製ロールコーターを用いて2回塗布し、さらに鉄製リバースコーターを用いて凹条溝以外の表面の余剰樹脂を掻き取って凹条溝に着色樹脂を充填させた。そして、この化粧基板の表面に紫外線を照射して、化粧基板表面に含浸させた浸透性樹脂と凹条溝内及び凹条溝以外の表面に塗布した着色樹脂を硬化させた。
【0069】
次に、このようにして得られた化粧基板の表面を、凹条溝内に充填された着色樹脂の表面を少し削る程度、すなわち凹条溝以外の表面に付着している着色樹脂を完全に削り取る程度にまでワイドベルトサンダーで研削し、この研削した化粧板の表面全面に着色剤を塗布し、更にその表面に透明性樹脂塗料を塗布して硬化させ、意匠性の良い柾目模様を有する化粧板を得た。
【0070】
(実施例2)
化粧基板として、基材の表面にメラミン樹脂含浸紙を接着し、0.15mm厚のバリア層を形成した表面に天然木材として、厚さ0.3mmのアユース単板をビニルウレタン系接着剤により接着したものを用いた。
【0071】
次に上記化粧基板の表面に回転鋸により、長手方向に連通する深さ0.3mmの略V字状の凹条溝を、下記に示す3段階の凹条溝切削工程によって形成した。
【0072】
すなわち、第1の凹条溝切削工程では、4.0mm幅の回転刃1枚と3.0mm幅の回転刃4枚とを備えた回転鋸装置により略平行な5本の断面略V字状の凹条溝を切削し、次に、第2の凹条溝切削工程では、第1の凹条溝切削工程で形成した凹条溝と重ならない位置に、2.5mm幅の回転刃2枚と2.0mm幅の回転刃3枚を備えた回転鋸装置により略平行な5本の略V字状の凹条溝を切削し、次に、第3の凹条溝切削工程では、第1および第2の凹条溝切削工程で形成した凹条溝と重ならない位置に1.0mm幅の回転刃7枚を備えた回転鋸装置により略平行な7本の断面V字状の凹条溝を切削して、断面V字状で深さ0.3mm、開口幅1.0mm〜4.0mmの略平行な17本の断面V字状の凹条溝を形成した。
【0073】
次に、上記凹条溝を形成した化粧基板の凹条溝を含む表面全面に前記実施例1と同様にしてブラスト処理を行い、実施例1と同様に上記17本の凹条溝の開口角部に自然な丸みを帯びさせるとともに、次の浸透性樹脂が含浸し易い表面性状に形成した。
【0074】
次に、紫外線硬化特性を有する浸透性樹脂を、ウレタンアクリレート25質量部、エポキシアクリレート35質量部、トリプロピレングリコールジアクリレート25質量部、アクリロイルモルフォリン15質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート20質量部、染料0.5質量部、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン3質量部を配合して調整した。
【0075】
そして、上記ブラスト処理後の化粧基板を80℃に設定した通風ドライヤーの中で60秒間養生し、ドライヤーから取り出してその表面温度を40℃に調整した後、上記で調整した浸透性樹脂をフローコーターにより70g/m2塗布した。これを常温(25℃)条件下で60秒間放置することにより、塗布した浸透性樹脂を、化粧基板表面のアユース単板に含浸させた。浸透性樹脂は、バリア層から下の基材内部には含浸していなかった。
【0076】
次に、この浸透性樹脂を含浸させた化粧基板の表面に紫外線を照射して、含浸した浸透性樹脂を硬化させた。
【0077】
次に、実施例1と同様にして、紫外線硬化特性を有する着色樹脂を調整し、この着色樹脂を上記浸透性樹脂を含浸硬化させた化粧基板の表面に、実施例1と同様にしてゴム製ロールコーターを用いて2回塗布し、凹条溝に着色樹脂を充填させるとともに、凹条溝以外の部分に着色樹脂が塗布された化粧基板を得た。そして、この化粧基板の表面に紫外線を照射して、化粧基板表面に含浸させた浸透性樹脂と凹条溝内及び凹条溝以外の表面に塗布した着色樹脂を硬化させた。
【0078】
次に、このようにして得られた化粧基板の表面を、凹条溝以外の部分の着色樹脂が表面に残存するようにワイドベルトサンダーで研削し、この研削した化粧基板の表面全面に着色剤を塗布し、更にその表面に透明性樹脂塗料を塗布して硬化させ、凹条溝の柾目とそれ以外の表面とにコントラストが小さく自然感のある柾目模様を有する化粧板を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、柾目模様を有する意匠性に優れたWPC等の床用に適した化粧板を、安定且つ生産性よく製造するのに特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る化粧板Aの製造工程を示す図
【図2】本発明の第2の実施形態に係る化粧板Bの製造工程を示す図
【符号の説明】
【0081】
A、B 化粧板
1 化粧基板
2 天然木材
2a 天然木材表面
3 基材
4、4’ 凹条溝
5 凹条溝以外の化粧基板1の表面
6、6’ 回転鋸
7 ノズル
8 浸透性樹脂
9 着色樹脂
10 透明性樹脂塗膜
11 バリア層
13 ブラスト用研磨材
15 微細な傷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然木材で形成された表面を有する化粧基板の表面に、その一側部から他側部に至る多数の凹条溝を切削により設ける凹条溝切削工程と、上記凹条溝を設けた化粧基板の表面全面をブラスト処理して粒子で叩くブラスト処理工程と、上記ブラスト処理した化粧基板の表面全面に浸透性樹脂を塗布、含浸させる浸透性樹脂含浸工程と、上記浸透性樹脂を塗布、含浸させた化粧基板表面の少なくとも凹条溝内に着色樹脂を塗布、充填させる着色樹脂塗布充填工程と、上記着色樹脂を塗布、充填させた化粧基板の表面全面を研削する研削工程と、上記研削した化粧基板の表面に透明性樹脂塗料を塗布する透明性樹脂塗料塗布工程とを備えてなり、凹条溝内に充填した着色樹脂を柾目模様として現出させるようにしたことを特徴とする柾目模様を有する化粧板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の柾目模様を有する化粧板の製造方法において、上記浸透性樹脂及び上記着色樹脂として、活性エネルギー線硬化特性及び湿気硬化特性を有する樹脂を用い、着色樹脂塗布充填工程と研削工程の間に、上記塗布した浸透性樹脂及び着色樹脂に活性エルルギー線を照射して硬化させる活性エネルギー線照射工程を備えるようにしたことを特徴とする柾目模様を有する化粧板の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の柾目模様を有する化粧板の製造方法において、着色樹脂塗布充填工程で、上記浸透性樹脂を塗布、浸透させた化粧基板の凹条溝内を含む表面全面に着色樹脂を塗布するようにし、研削工程で化粧基板の表面全面に着色樹脂が残存するように研削することを特徴とする柾目模様を有する化粧板の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の柾目模様を有する化粧板の製造方法において、着色樹脂塗布充填工程で、上記浸透性樹脂を塗布、含浸させた化粧基板の凹条溝内を含む表面全面に着色樹脂を塗布するようにし、研削工程で上記凹条溝部以外の表面に塗布した着色樹脂を除去するように研削することを特徴とする柾目模様を有する化粧板の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1に記載の柾目模様を有する化粧板の製造方法において、凹条溝切削工程で切削する多数の凹条溝の溝幅を0.8mm〜3.0mmの範囲の複数種とすることを特徴とする柾目模様を有する化粧板の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1に記載の柾目模様を有する化粧板の製造方法において、天然木材で形成された表面を有する化粧基板が、木質基材とその表面に形成されたバリア層と該バリア層の表面に貼着された厚さ0.2mmから1.0mmの木質単板とで形成されており、且つ、凹条溝がバリア層に至らない深さとなるように切削されていることを特徴とする柾目模様を有する化粧板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−221688(P2008−221688A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−64736(P2007−64736)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】