説明

案内装置、案内方法、及び案内プログラム

【課題】運転者が確実に見つけることが可能な案内対象について案内を出力することができる、案内装置を提供すること。
【解決手段】案内装置1は、車両の現在位置を検出する現在位置検出処理部10と、車両の車速を検出する車速センサ11と、案内対象についての案内出力に要する時間を特定する案内出力時間情報を格納する案内対象DB14bと、車両の現在位置に基づき、車両の走行経路において案内が必要な案内点の周辺に存在する案内対象の候補を抽出する案内対象候補抽出部13aと、案内対象の候補について案内を行うために必要な案内距離を車両が進行した場合における運転者の認識可能範囲を推定する認識可能範囲推定部13bと、案内対象の候補のうち、認識可能範囲内に存在する案内対象を抽出する案内対象抽出部13cと、抽出された案内対象について案内を出力するための制御を行う案内制御部13dとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、案内装置、案内方法、及び案内プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の走行経路を案内するためのカーナビゲーション装置において、交差点や分岐等の案内が必要な地点に車両が接近した場合に、進行方向や目印となる建物等を音声によって案内することが行われている。
【0003】
特に、実際に運転者が視認できる特徴物を利用して案内を行うことを目的として、画像情報を利用した車両用音声案内装置が提案されている。この車両用音声案内装置は、分岐点の手前において、車載カメラの撮像結果から音声案内に用いる信号機等の特徴物を認識し、当該特徴物の情報を含む音声案内を音声合成部により出力させる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−177699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の如き従来の装置では、特徴物の情報を含む音声案内の出力に要する時間を何ら考慮していなかったため、音声案内の出力が完了し、運転者が特徴物を確認しようとした際に、その特徴物が運転者の認識可能範囲外に出てしまっている可能性があった。この場合、運転者は音声案内された特徴物を見つけることができず、不安を感じたり走行経路を誤る可能性があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、運転者が確実に見つけることが可能な案内対象について案内を出力することができる、案内装置、案内方法、及び案内プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の案内装置は、車両の現在位置を検出する現在位置検出処理手段と、前記車両の車速を検出する車速検出手段と、案内対象についての案内出力に要する時間を特定する案内出力時間情報を格納する案内対象情報格納手段と、前記現在位置検出処理手段により検出された前記車両の現在位置に基づき、前記車両の走行経路において案内が必要な案内点を特定し、当該特定した案内点の周辺に存在する前記案内対象の候補を抽出する案内対象候補抽出手段と、前記車速検出手段により検出された当該車両の車速、及び前記案内対象候補抽出手段により抽出された案内対象の候補に対応する前記案内出力時間情報に基づき、当該案内対象の候補について案内を行うために必要な案内距離を特定し、当該特定した案内距離を前記車両が進行した場合における運転者の認識可能範囲を推定する認識可能範囲推定手段と、前記案内対象の候補のうち、前記認識可能範囲推定手段により推定された認識可能範囲内に存在する前記案内対象を抽出する案内対象抽出手段と、前記案内対象抽出手段により抽出された案内対象について案内を出力するための制御を行う案内制御手段と、を備える。
【0008】
また、請求項2に記載の案内装置は、請求項1に記載の案内装置において、前記車両の進行方向を撮影するカメラを備え、前記認識可能範囲推定手段は、前記カメラにより撮影された画像から前記案内距離に対応する領域を除外した画像を前記認識可能範囲として推定する。
【0009】
また、請求項3に記載の案内装置は、請求項1又は2に記載の案内装置において、前記認識可能範囲推定手段は、前記運転者が前記案内対象を確認するために必要な時間に基づき、前記認識可能範囲を推定する。
【0010】
また、請求項4に記載の案内装置は、請求項1から3のいずれか一項に記載の案内装置において、前記案内対象の優先度を特定する優先度特定手段を備え、前記案内制御手段は、前記案内対象抽出手段により複数の前記案内対象が抽出された場合、当該複数の案内対象の内、前記優先度特定手段により特定された前記優先度が最も高い案内対象について案内を出力するための制御を行う。
【0011】
また、請求項5に記載の案内方法は、車両の現在位置を検出する現在位置検出処理ステップと、前記車両の車速を検出する車速検出ステップと、案内対象についての案内出力に要する時間を特定する案内出力時間情報を記憶手段に格納する案内対象情報格納ステップと、前記現在位置検出処理ステップで検出された前記車両の現在位置に基づき、前記車両の走行経路において案内が必要な案内点を特定し、当該特定した案内点の周辺に存在する前記案内対象の候補を抽出する案内対象候補抽出ステップと、前記車速検出ステップで検出された当該車両の車速、及び前記案内対象候補抽出ステップで抽出された案内対象の候補に対応する前記案内出力時間情報に基づき、前記案内対象の候補について案内を行うために必要な案内距離を特定し、当該特定した案内距離を前記車両が進行した場合における運転者の認識可能範囲を推定する認識可能範囲推定ステップと、前記案内対象の候補のうち、前記認識可能範囲推定ステップで推定された認識可能範囲内に存在する前記案内対象を抽出する案内対象抽出ステップと、前記案内対象抽出ステップで抽出された案内対象について案内を出力するための制御を行う案内制御ステップと、を含む。
【0012】
また、請求項6に記載の案内プログラムは、請求項5に記載の方法をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の案内装置、請求項5に記載の案内方法、及び請求項6に記載の案内プログラムによれば、認識可能範囲推定手段が、案内対象の候補について案内を行うために必要な案内距離を車両が進行した場合における運転者の認識可能範囲を推定し、案内対象抽出手段が、案内対象の候補のうち、認識可能範囲推定手段により推定された認識可能範囲内に存在する案内対象を抽出し、案内制御手段が、案内対象抽出手段により抽出された案内対象について案内を出力するための制御を行うので、案内対象についての案内が完了した後に、運転者が確実に見つけることが可能な案内対象について案内を出力することができ、運転者に不安を感じさせることなく適切な走行経路を案内することができる。
【0014】
また、請求項2に記載の案内装置によれば、認識可能範囲推定手段は、カメラにより撮影された画像から案内距離に対応する領域を除外した画像を認識可能範囲として推定するので、実際に運転者が案内対象の候補を視認可能か否かに基づき、その案内対象の候補について案内を出力するか否かを決定することができる。
【0015】
また、請求項3に記載の案内装置によれば、認識可能範囲推定手段は、運転者が案内対象を確認するために必要な時間に基づき、認識可能範囲を推定するので、運転者が一層確実に見つけることが可能な案内対象について案内を出力することができ、運転者に不安を感じさせることなく適切な走行経路を案内することができる。
【0016】
また、請求項4に記載の案内装置によれば、案内制御手段は、案内対象抽出手段により複数の案内対象が抽出された場合、当該複数の案内対象の内、優先度特定手段により特定された優先度が最も高い案内対象について案内を出力するための制御を行うので、運転者が確実に見つけることが可能な案内対象であって、走行経路の案内に最も適した案内対象について案内を出力することができ、運転者に不安を感じさせることなく適切な走行経路を案内することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態に係る案内装置を例示するブロック図である。
【図2】案内処理のフローチャートである。
【図3】図2に続く案内処理のフローチャートである。
【図4】フロントカメラにより撮影された画像と認識可能範囲とを例示した図である。
【図5】十字路を左折する走行経路が設定されている場合における、案内対象の位置に応じた優先度を例示した図である。
【図6】案内対象の位置と認識可能範囲とを例示した図である。
【図7】案内対象の位置と認識可能範囲とを例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る案内装置、案内方法、及び案内プログラムの実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。ただし、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0019】
(構成)
最初に、実施の形態に係る案内装置の構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る案内装置を例示するブロック図である。案内装置1は車両に搭載されており、図1に示すように、現在位置検出処理部10、車速センサ11、フロントカメラ12、制御部13、及びデータ記録部14を備えている。また、案内装置1には、ディスプレイ2、及びスピーカ3が接続されている。
【0020】
(構成−案内装置−現在位置検出処理部)
現在位置検出処理部10は、案内装置1が搭載された車両の現在位置を検出する現在位置検出手段である。具体的には、現在位置検出処理部10は、GPS、地磁気センサ、距離センサ、又はジャイロセンサ(いずれも図示省略)の少なくとも一つを有し、現在の自車両の位置(座標)及び方位等を公知の方法にて検出する。
【0021】
(構成−案内装置−車速センサ)
車速センサ11は、車両の車速を検出する車速検出手段であり、例えば車軸の回転数に比例する車速パルス信号等を制御部13に出力する。この車速センサ11としては、公知の車速センサを用いることができる。
【0022】
(構成−案内装置−フロントカメラ)
フロントカメラ12は、車両の進行方向を撮影するカメラである。このフロントカメラ12は、例えば車両の前部バンパー近傍、ルームミラーの背面、フロントガラス付近の車室内天井等に1台又は複数台設置され、車両の進行方向を撮影する。フロントカメラ12が撮影した画像データは、制御部13に入力される。なお、フロントカメラ12の具体的な構成は任意で、例えばCMOSイメージセンサやCCDイメージセンサ等の公知の撮像素子、及び魚眼レンズやプリズム等の公知の光学系部品を用いて構成されている。
【0023】
(構成−案内装置−制御部)
制御部13は、案内装置1を制御する制御手段であり、具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成されるコンピュータである。特に、本実施の形態に係る案内プログラムは、任意の記録媒体又はネットワークを介して案内装置1にインストールされることで、制御部13の各部を実質的に構成する。
【0024】
この制御部13は、機能概念的に、案内対象候補抽出部13a、認識可能範囲推定部13b、案内対象抽出部13c、案内制御部13d、及び優先度特定部13eを備えている。案内対象候補抽出部13aは、車両の走行経路において案内が必要な案内点の周辺に存在する案内対象の候補を抽出する案内対象候補抽出手段である。認識可能範囲推定部13bは、運転者の認識可能範囲を推定する認識可能範囲推定手段である。案内対象抽出部13cは、認識可能範囲内に存在する案内対象を抽出する案内対象抽出手段である。案内制御部13dは、案内対象抽出部13cにより抽出された案内対象について案内を出力するための制御を行う案内制御手段である。優先度特定部13eは、案内対象の優先度を特定する優先度特定手段である。これらの制御部13の各部によって実行される処理の詳細については後述する。
【0025】
(構成−案内装置−データ記録部)
データ記録部14は、案内装置1の動作に必要なプログラム及び各種のデータを記録する記録手段であり、例えば、外部記憶装置としてのハードディスク(図示省略)の如き磁気的記録媒体を用いて構成されている。ただし、ハードディスクに代えてあるいはハードディスクと共に、フラッシュメモリの如き半導体型記憶媒体、又はDVDやブルーレイディスクの如き光学的記録媒体を含む、その他の任意の記録媒体を用いることができる。
【0026】
このデータ記録部14は、地図情報データベース14a(以下、データベースをDBと略記する)、及び案内対象DB14bを備えている。
【0027】
地図情報DB14aは、地図情報を格納する地図情報格納手段である。「地図情報」は、例えばリンクデータ(リンク番号、接続ノード番号、道路座標、道路種別、道路幅、車線数、走行規制等)、ノードデータ(ノード番号、座標)、地物データ(信号機、道路標識、ガードレール、建物等)、施設データ(各施設の位置、各施設の種別等)、地形データ、地図をディスプレイ2に表示するための地図表示データ等を含んで構成されている。
【0028】
案内対象DB14bは、案内対象についての案内出力に要する時間を特定する案内出力時間情報を格納する案内対象情報格納手段である。この案内対象DB14bには、例えば、案内対象となり得る地物や施設(例えば交差点や分岐の近傍に位置している地物や施設)毎に、当該地物や施設の名称を音声出力するために必要な時間を特定する案内出力時間情報(例えば、案内対象となり得る施設「Sスーパー」を音声出力するために必要な時間として「4秒」等)が格納されている。
【0029】
(構成−ディスプレイ)
ディスプレイ2は、案内装置1の制御に基づいて各種情報を表示する表示手段である。なお、このディスプレイ2の具体的な構成は任意であり、公知の液晶ディスプレイや有機ELディスプレイの如きフラットパネルディスプレイを使用することができる。
【0030】
(構成−スピーカ)
スピーカ3は、案内装置1の制御に基づいて各種の音声を出力する出力手段である。スピーカ3より出力される音声の具体的な態様は任意であり、必要に応じて生成された合成音声や、予め録音された音声を出力することができる。
【0031】
(処理)
次に、このように構成された案内装置1によって実行される案内処理について説明する。図2及び図3は案内処理のフローチャートである(以下の各処理の説明ではステップを「S」と略記する)。この案内処理は、例えば、案内装置1に電源が投入された後、所定の周期にて繰り返し起動される。なお、案内処理を実行する前提として、公知のナビゲーション装置により車両の走行経路が設定されているものとする。
【0032】
図2に示すように、案内処理が開始されると、案内対象候補抽出部13aは、現在位置検出処理部10により検出された車両の現在位置に基づき、車両の走行経路において案内が必要な案内点を特定し、車両が当該案内点まで所定距離の位置に到達するまで待機する(SA1、No)。車両の走行経路において案内が必要な案内点とは、例えば走行経路において右左折が必要となる交差点や分岐等、車両を適切な方向に誘導するために案内が必要となる地点である。また、「所定距離」としては、例えば案内処理を実行して案内点に関する案内を出力するために適切な距離が用いられる(例えば100m)。
【0033】
車両が案内点まで所定距離の位置に到達した場合(SA1、Yes)、案内対象候補抽出部13aは、SA1で特定した案内点の周辺に存在する案内対象の候補を抽出する(SA2)。例えば案内対象候補抽出部13aは、地図情報DB14aを参照し、案内点から所定距離(例えば30m)の範囲内に位置する地物や施設を案内対象候補として抽出する。
【0034】
続いて、案内制御部13dは、SA2において案内対象候補抽出部13aにより抽出された案内対象候補があるか否かを判定する(SA3)。その結果、案内対象候補抽出部13aにより抽出された案内対象候補がない場合(SA3、No)、すなわち、案内点の周辺に案内対象となり得る地物や施設が存在しない場合、案内制御部13dは、案内対象についての案内を出力することができないものとし、車両の現在位置から案内点までの距離についての案内をスピーカ3やディスプレイ2から出力させる(SA4)。例えば案内制御部13dは、「あと30mで左折です」等の案内をスピーカ3やディスプレイ2から出力させる。その後、制御部13は案内処理を終了する。
【0035】
一方、案内対象候補抽出部13aにより抽出された案内対象候補がある場合(SA3、Yes)、認識可能範囲推定部13bは、車速センサ11を介して車両の車速を検出する(SA5)。
【0036】
続いて、認識可能範囲推定部13bは、SA2で案内対象候補抽出部13aにより抽出された案内対象の候補に対応する案内出力時間情報を、案内対象DB14bから取得する(SA6)。すなわち、認識可能範囲推定部13bは案内対象DB14bを参照し、SA2で案内対象候補抽出部13aにより抽出された案内対象候補である地物や施設の名称を音声出力するために必要な時間を特定する案内出力時間情報を取得する。
【0037】
次に、認識可能範囲推定部13bは、SA2で案内対象候補抽出部13aにより抽出された案内対象の候補について案内を行うために必要な案内距離を特定する(SA7)。具体的には、認識可能範囲推定部13bは、SA5で車速センサ11を介して検出した車両の車速と、SA6で当該認識可能範囲推定部13bが案内対象DB14bから取得した案内出力時間情報に基づき特定される時間との積を、案内対象の候補について案内を行うために必要な案内距離として算出する。これにより、案内対象候補である地物や施設の名称を音声出力する間に車両が進行する距離が、案内距離として算出される。
【0038】
続いて、認識可能範囲推定部13bは、SA7で認識可能範囲推定部13bが特定した案内距離を車両が進行した場合における、運転者の認識可能範囲を推定する(SA8)。この際、認識可能範囲推定部13bは、運転者が案内対象を確認するために必要な時間も考慮して認識可能範囲を推定する。ここで「運転者が案内対象を確認するために必要な時間」としては、例えば予めデータ記録部14に記録された固定値(例えば1秒)を用いる。あるいは、公知の視線検出カメラにより運転者の視線を検出し、当該検出した視線に基づき、運転者が案内対象を確認するために必要な時間を学習し、当該学習結果に基づく学習値を用いるようにしてもよい。あるいは、SA2で案内対象候補抽出部13aにより抽出された案内対象の候補の位置(例えば、案内対象の候補が車両の進行方向の右側又は左側の何れにあるのか)や、案内対象の候補と車両との間の障害物(例えば中央分離帯に設置された柵や植栽等)の有無等に応じて異なる値を、運転者が案内対象を確認するために必要な時間として用いてもよい。すなわち例えば、案内対象の候補の位置が進行方向の右側である場合には、自車両と当該案内対象の候補との間に対向車両が存在するために案内対象の確認に時間を要する可能性があるため、案内対象の候補の位置が進行方向の左側である場合と比較して運転者が案内対象を確認するために必要な時間を長く設定する。また例えば、案内対象の候補と車両との間に中央分離帯に設置された柵が存在する場合、その柵越しに案内対象を確認するには時間を要する可能性があるため、案内対象の候補と車両との間に障害物がない場合と比較して運転者が案内対象を確認するために必要な時間を長く設定する。また、「認識可能範囲」とは、運転者が案内対象を視認することが可能な範囲を意味する。例えば、認識可能範囲推定部13bは、フロントカメラ12により撮影された画像から、SA7で認識可能範囲推定部13bが特定した案内距離に対応する幅の周縁領域を除外した画像を、認識可能範囲として推定する。
【0039】
図4は、フロントカメラ12により撮影された画像と認識可能範囲とを例示した図である。図4において、最も外側の枠Aは、フロントカメラ12により撮影された画像の内、現在の車両の位置において運転者が認識可能な範囲を表している。また、枠Aより内側にある枠Bと枠Aとの間の領域は、案内対象候補である地物や施設の名称を音声出力する間に、SA7で認識可能範囲推定部13bが特定した案内距離を車両が進行することにより、運転者の視界の範囲外となり、当該運転者には認識不可能となる領域を表している。さらに、枠Bより内側にある枠Cと枠Bとの間の領域は、案内対象(図4では「Sスーパー」)についての案内がスピーカ3から音声出力された場合に、当該案内を聞いた運転者が当該案内対象を確認する間に車両が進行することにより、運転者の視界の範囲外となり、当該運転者には認識不可能となる領域を表している。なお、運転者が案内対象を確認する間に車両が走行する距離は、SA5で車速センサ11を介して検出した車両の車速と、運転者が案内対象を確認するために必要な時間(例えば1秒)との積として、認識可能範囲推定部13bにより算出される。
【0040】
例えば、車両が進行する距離と、当該距離を車両が進行した場合にフロントカメラ12により撮影された画像において運転者には認識不可能となる領域との対応関係を、予めデータ記録部14に記録しておく。認識可能範囲推定部13bは、データ記録部14を参照し、SA7で認識可能範囲推定部13bが特定した案内距離と、運転者が案内対象を確認する間に車両が走行する距離との合計距離に対応する枠Cを特定する。そして、認識可能範囲推定部13bは、フロントカメラ12により撮影された画像から枠Cと枠Aとの間の領域を除外した画像(すなわち、枠Cの内側の画像)を、認識可能範囲として推定する。なお、図4の例では、案内対象「Sスーパー」は認識可能範囲内に位置している。
【0041】
図2に戻り、認識可能範囲推定部13bは、SA2で案内対象候補抽出部13aにより抽出された全ての案内対象候補についてSA8で認識可能範囲を推定するまで(SA9、No)、SA6からSA9の処理を繰り返す。
【0042】
認識可能範囲推定部13bが、SA2で案内対象候補抽出部13aにより抽出された全ての案内対象候補についてSA8で認識可能範囲を推定した場合(SA9、Yes)、案内対象抽出部13cは、SA2で案内対象候補抽出部13aにより抽出された案内対象の候補のうち、SA8で認識可能範囲推定部13bにより推定された認識可能範囲内に存在する案内対象を抽出する(SA10)。
【0043】
続いて、案内制御部13dは、SA10において案内対象抽出部13cにより抽出された案内対象があるか否かを判定する(SA11)。その結果、案内対象抽出部13cにより抽出された案内対象がない場合(SA11、No)、すなわち、認識可能範囲推定部13bにより推定された認識可能範囲内に存在する案内対象が存在しない場合、案内制御部13dは、案内対象についての案内を出力しても、運転者は音声案内された案内対象を見つけることができない可能性があるものとし、車両の現在位置から案内点までの距離についての案内をスピーカ3やディスプレイ2から出力させる(SA4)。その後、制御部13は案内処理を終了する。
【0044】
一方、案内対象抽出部13cにより抽出された案内対象がある場合(SA11、Yes)、図3に進み、案内制御部13dは、案内対象抽出部13cにより抽出された案内対象が複数か否かを判定する(SA12)。
【0045】
その結果、案内対象抽出部13cにより抽出された案内対象が複数である場合(SA12、Yes)、案内制御部13dは、優先度特定部13eにより当該複数の各案内対象の優先度を特定させ、優先度特定部13eにより特定された優先度が最も高い案内対象を選択する(SA13)。例えば、十字路や三叉路等の案内点の種別と右折や左折等の案内内容との組み合わせ毎に、案内対象の位置に応じた優先度を、予めデータ記録部14に記録しておく。優先度特定部13eは、データ記録部14を参照することにより、案内点の種別と当該案内点についての案内内容との組み合わせと、案内対象抽出部13cにより抽出された各案内対象の位置とに対応する優先度を特定する。図5は、十字路を左折する走行経路が設定されている場合における、案内対象の位置に応じた優先度を例示した図である。この図5の例では、十字路の周辺に存在する案内対象の優先度は、車両の現在位置から見て十字路左手前が最も高く(優先度「1」)、以下、十字路左奥(優先度「2」)、十字路右奥(優先度「3」)、十字路右手前(優先度「4」)の順に低くなっている。なお、案内対象の位置に応じた優先度は、図5の例に限られず、任意に設定することができる。
【0046】
図3に戻り、SA13の処理の後、案内制御部13dは、SA13で案内制御部13dが選択した案内対象についての案内をスピーカ3やディスプレイ2から出力させる(SA14)。また、SA12の判定の結果、案内対象抽出部13cにより抽出された案内対象が複数ではない(案内対象抽出部13cにより抽出された案内対象が1つである)場合(SA12、No)、当該案内対象についての案内をスピーカ3やディスプレイ2から出力させる(SA14)。その後、制御部13は案内処理を終了する。
【0047】
図6及び図7は、案内対象の位置と認識可能範囲とを例示した図である。図6の例では、十字路左奥に位置する案内対象「コンビニQ」についての案内の音声出力が完了し(図6における「T=t1Q」の時点)、さらに運転者による当該案内対象「コンビニQ」の確認が完了すると予測される時点(図6における「T=t2Q」の時点)で、案内対象「コンビニQ」は運転者の認識可能範囲(図6における点線に挟まれる範囲)内に存在している。一方、十字路右手前に位置する案内対象「Sスーパー」についての案内の音声出力が完了し(図6における「T=t1S」の時点)、さらに運転者による当該案内対象「Sスーパー」の確認が完了すると予測される時点(図6における「T=t2S」の時点)で、案内対象「Sスーパー」は運転者の認識可能範囲(図6における一点鎖線に挟まれる範囲)内に存在していない。この場合、図2のSA10において、案内対象抽出部13cは認識可能範囲内に存在する案内対象「コンビニQ」を抽出し、図3のSA14において、案内制御部13dは当該案内対象「コンビニQ」についての案内(例えば「コンビニQの角を左折です」等)をスピーカ3やディスプレイ2から出力させる。
【0048】
一方、図7の例では、十字路左奥に位置する案内対象「コンビニQ」についての案内の音声出力が完了し(図7における「T=t1Q」の時点)、さらに運転者による当該案内対象「コンビニQ」の確認が完了すると予測される時点(図7における「T=t2Q」の時点)で、案内対象「コンビニQ」は運転者の認識可能範囲(図7における点線に挟まれる範囲)内に存在している。また、十字路右手前に位置する案内対象「Sスーパー」についての案内の音声出力が完了し(図7における「T=t1S」の時点)、さらに運転者による当該案内対象「Sスーパー」の確認が完了すると予測される時点(図7における「T=t2S」の時点)で、案内対象「Sスーパー」は運転者の認識可能範囲(図7における一点鎖線に挟まれる範囲)内に存在している。この場合、図2のSA10において、案内対象抽出部13cは認識可能範囲内に存在する案内対象「コンビニQ」及び「Sスーパー」を抽出する。さらに、図5の例によれば、案内対象「コンビニQ」及び「Sスーパー」の内、最も優先度が高いのは案内対象「コンビニQ」であるので、図3のSA13において案内制御部13dは、案内対象「コンビニQ」を選択し、SA14において、案内制御部13dは当該案内対象「コンビニQ」についての案内をスピーカ3やディスプレイ2から出力させる。
【0049】
(効果)
このように本実施の形態によれば、認識可能範囲推定部13bが、案内対象の候補について案内を行うために必要な案内距離を車両が進行した場合における運転者の認識可能範囲を推定し、案内対象抽出部13cが、案内対象の候補のうち、認識可能範囲推定部13bにより推定された認識可能範囲内に存在する案内対象を抽出し、案内制御部13dが、案内対象抽出部13cにより抽出された案内対象について案内を出力するための制御を行うので、案内対象についての案内が完了した後に、運転者が確実に見つけることが可能な案内対象について案内を出力することができ、運転者に不安を感じさせることなく適切な走行経路を案内することができる。
【0050】
特に、認識可能範囲推定部13bは、フロントカメラ12により撮影された画像から案内距離に対応する領域を除外した画像を認識可能範囲として推定するので、実際に運転者が案内対象の候補を視認可能か否かに基づき、その案内対象の候補について案内を出力するか否かを決定することができる。
【0051】
また、認識可能範囲推定部13bは、運転者が案内対象を確認するために必要な時間に基づき、認識可能範囲を推定するので、運転者が一層確実に見つけることが可能な案内対象について案内を出力することができ、運転者に不安を感じさせることなく適切な走行経路を案内することができる。
【0052】
また、案内制御部13dは、案内対象抽出部13cにより複数の案内対象が抽出された場合、当該複数の案内対象の内、優先度特定部13eにより特定された優先度が最も高い案内対象について案内を出力するための制御を行うので、運転者が確実に見つけることが可能な案内対象であって、走行経路の案内に最も適した案内対象について案内を出力することができ、運転者に不安を感じさせることなく適切な走行経路を案内することができる。
【0053】
〔実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0054】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、上述の内容に限定されるものではなく、発明の実施環境や構成の細部に応じて異なる可能性があり、上述した課題の一部のみを解決したり、上述した効果の一部のみを奏することがある。
【0055】
(案内対象DBについて)
上述の実施の形態では、案内対象となり得る地物や施設毎に、当該地物や施設の名称を音声出力するために必要な時間を特定する案内出力時間情報が案内対象DB14bに格納されていると説明したが、図2のSA6において、案内対象の名称等に基づき、認識可能範囲推定部13bが各案内対象の案内出力時間を算出するようにしてもよい。
【0056】
(案内処理について)
上述の実施の形態では、認識可能範囲推定部13bは、フロントカメラ12により撮影された画像から、認識可能範囲推定部13bが特定した案内距離に対応する領域を除外した画像を、認識可能範囲として推定すると説明したが、他の方法により認識可能範囲を推定してもよい。例えば、走行経路の案内に用いる地図において、車両の進行方向を中心とする所定角度の範囲内を認識可能範囲として推定してもよい。この場合、案内対象抽出部13cは、地図情報に含まれる案内対象の位置情報に基づき、認識可能範囲内に存在する案内対象を抽出する。
【符号の説明】
【0057】
1 案内装置
2 ディスプレイ
3 スピーカ
10 現在位置検出処理部
11 車速センサ
12 フロントカメラ
13 制御部
13a 案内対象候補抽出部
13b 認識可能範囲推定部
13c 案内対象抽出部
13d 案内制御部
13e 優先度特定部
14 データ記録部
14a 地図情報DB
14b 案内対象DB

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の現在位置を検出する現在位置検出処理手段と、
前記車両の車速を検出する車速検出手段と、
案内対象についての案内出力に要する時間を特定する案内出力時間情報を格納する案内対象情報格納手段と、
前記現在位置検出処理手段により検出された前記車両の現在位置に基づき、前記車両の走行経路において案内が必要な案内点を特定し、当該特定した案内点の周辺に存在する前記案内対象の候補を抽出する案内対象候補抽出手段と、
前記車速検出手段により検出された当該車両の車速、及び前記案内対象候補抽出手段により抽出された案内対象の候補に対応する前記案内出力時間情報に基づき、当該案内対象の候補について案内を行うために必要な案内距離を特定し、当該特定した案内距離を前記車両が進行した場合における運転者の認識可能範囲を推定する認識可能範囲推定手段と、
前記案内対象の候補のうち、前記認識可能範囲推定手段により推定された認識可能範囲内に存在する前記案内対象を抽出する案内対象抽出手段と、
前記案内対象抽出手段により抽出された案内対象について案内を出力するための制御を行う案内制御手段と、
を備える案内装置。
【請求項2】
前記車両の進行方向を撮影するカメラを備え、
前記認識可能範囲推定手段は、前記カメラにより撮影された画像から前記案内距離に対応する領域を除外した画像を前記認識可能範囲として推定する、
請求項1に記載の案内装置。
【請求項3】
前記認識可能範囲推定手段は、前記運転者が前記案内対象を確認するために必要な時間に基づき、前記認識可能範囲を推定する、
請求項1又は2に記載の案内装置。
【請求項4】
前記案内対象の優先度を特定する優先度特定手段を備え、
前記案内制御手段は、前記案内対象抽出手段により複数の前記案内対象が抽出された場合、当該複数の案内対象の内、前記優先度特定手段により特定された前記優先度が最も高い案内対象について案内を出力するための制御を行う、
請求項1から3のいずれか一項に記載の案内装置。
【請求項5】
車両の現在位置を検出する現在位置検出処理ステップと、
前記車両の車速を検出する車速検出ステップと、
案内対象についての案内出力に要する時間を特定する案内出力時間情報を記憶手段に格納する案内対象情報格納ステップと、
前記現在位置検出処理ステップで検出された前記車両の現在位置に基づき、前記車両の走行経路において案内が必要な案内点を特定し、当該特定した案内点の周辺に存在する前記案内対象の候補を抽出する案内対象候補抽出ステップと、
前記車速検出ステップで検出された当該車両の車速、及び前記案内対象候補抽出ステップで抽出された案内対象の候補に対応する前記案内出力時間情報に基づき、前記案内対象の候補について案内を行うために必要な案内距離を特定し、当該特定した案内距離を前記車両が進行した場合における運転者の認識可能範囲を推定する認識可能範囲推定ステップと、
前記案内対象の候補のうち、前記認識可能範囲推定ステップで推定された認識可能範囲内に存在する前記案内対象を抽出する案内対象抽出ステップと、
前記案内対象抽出ステップで抽出された案内対象について案内を出力するための制御を行う案内制御ステップと、
を含む案内方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法をコンピュータに実行させる案内プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−117911(P2012−117911A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267809(P2010−267809)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】