説明

梅酢の再利用方法

【課題】梅酢に含まれる塩分を、特別な設備で人工処理するような手段を用いず、低コストで自然的に脱塩処理することができる新規な梅酢再利用方法を提供する。
【解決手段】梅酢中の固形物等を除去する前処理101をした後、梅酢1に対し聖徳石浸出液2を混合102し、得られた金属イオン含有梅酢3を常温ろ過103して、濃縮度約40%の金属イオン含有濃縮梅酢4と、純度95%で残部が梅酢成分である水5に分離した。この金属イオン含有濃縮梅酢4をカメに入れ常温で3日間静置104したところ、カメ底部に塩分6が沈殿し、塩分の大半が除去された金属イオン含有梅酢液7が得られた。この金属イオン含有梅酢液7を噴霧乾燥機で乾燥105して粉末8にしたところ、この粉末8は梅の香り、風味を残すと共に適度の酸味を残した味覚を持ち、且つ梅酢エキスと各種ミネラルを含んだ健康食品原料として好適に提供することができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梅干しの製造過程で副生される梅酢を用いて、健康食品、健康飲料、医薬品、化粧品などの原料を得る梅酢の再利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
梅干の製造過程においては大量の梅酢が副生され、その大部分が川や海に投棄されている。しかし、近年における河川・海洋汚染の深刻化に伴い梅酢の河川・海洋投棄が法的に全面禁止になり、その処理対策が求められている。
一方、梅酢には梅からの抽出成分が多く含まれているので、これを健康飲料や健康食品の原料として再利用することが考えられるが、梅干の製造過程において大量に添加される塩分も多く含むので、そのままでの再利用は困難であった。
【0003】
このような問題点を解消するために、例えば特許文献1、2、3などには、含有塩分を電気透析により脱塩して梅酢を再利用する方法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特公昭57−24103号公報
【特許文献2】特開平10−310503号公報
【特許文献3】特許第3339548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これら従来の方法は、梅酢に含まれる塩分を電気的処理により除去するものであり、そのために特別な設備とランニングコストが必要とされ、結果としてコスト高になるという問題があった。
本発明はこのような従来事情に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、梅酢に含まれる塩分を、特別な設備により人工的に処理するような手段を用いることなく、低コストで自然的に脱塩処理することができる新規な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記事情に鑑み本願発明者等が鋭意研究した結果、本願出願人による先に取得の特許2859827号、特許3519991号で用いた聖徳石浸出液を利用することが、上記課題の解決に極めて有用であることを知見し、本発明は完成するに至った。
すなわち、本発明に係る梅酢の再利用方法は、梅干しの製造過程で副生された梅酢100重量%に対し、金属イオンを含有する聖徳石浸出液を5〜15重量%混合し、これにより得られた金属イオン含有梅酢を逆浸透膜で常温ろ過して、濃縮度35〜45%の金属イオン含有濃縮梅酢と、純度90%以上で残部が梅酢成分である水とに分離し、その後、前記金属イオン含有濃縮梅酢を容器内にて静置して、該金属イオン含有濃縮梅酢に含まれる塩分を自然沈殿させ、金属イオン含有梅酢液と塩分に分離し、該金属イオン含有梅酢液を健康飲料の原液として、若しくは、該金属イオン含有梅酢液を乾燥して得られた粉末を健康食品原料として用いることを特徴とする。
【0007】
このような方法によれば、聖徳石浸出液を含有した濃縮梅酢を容器内にて静置すれば、濃縮梅酢に含有された塩分が容器内に自然沈殿し、金属イオン含有梅酢液と塩分に自然分離させることができる。
【0008】
濃縮梅酢に含有された塩分が自然沈殿する理由は、濃縮梅酢中に含まれる塩分と、聖徳石浸出液に含まれる金属イオンとが反応し、塩の結晶として析出すると推測される。
【0009】
梅酢に対する聖徳石浸出液の混合割合が5%未満だと、前記塩分の分離沈殿が不確実になったり、該分離沈殿に相当の時間を要するので好ましくない。また同聖徳石浸出液の混合割合が15%を超えても、15%以下の場合に比べ、前記塩分の分離沈殿効果にほとんど差異が見られず、無駄が生じる。
【0010】
聖徳石浸出液を含有した濃縮梅酢を容器内にて静置する時間は、用いる梅酢の成分、塩分含有量、聖徳石浸出液に含まれる各種金属イオンの割合、静置環境(温度、湿度など)などにも左右されるが、2〜4日程度常温静置することが好ましい。静置時間が2日未満では塩分の分離沈殿が不十分になる場合がある。5日以上静置しても、4日以内の場合に比べ、前記塩分の分離沈殿効果にほとんど差異が見られず、無駄が生じる。
【0011】
聖徳石浸出液は、自然界に存在する鉱物としての聖徳石を溶媒としての水中に浸すことで得られるもので、少なくとも、聖徳石に含まれるナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、銅イオン、アルミニウムイオン、鉄イオンが溶媒中に浸出し、それら金属イオン類を微量含有するものである。
【0012】
本発明において、塩分が分離除去された金属イオン含有梅酢液を粉末にするための乾燥方法としては、加熱による蒸発乾燥、真空蒸発乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥などの各種手法を用いることができるが、乾燥にかかるコストなどを考慮すれば、噴霧乾燥が好ましい。
【0013】
また、上記した本発明の方法において、上記金属イオン含有梅酢を逆浸透膜で常温ろ過して得られた、純度90%以上で残部が梅酢成分である水は、梅酢成分としてのクエン酸、サイアミン(ビタミンB)、リボフラビン(ビタミンB)、アスコルビン酸(ビタミンC)、ナイアシンを含んでおり、健康飲料又は医薬品、化粧品などの原料として用いることができる。
【0014】
また、上記した本発明の方法において、上記金属イオン含有濃縮梅酢を容器内にて静置することで自然沈殿する塩分は、前記梅酢成分と前記金属イオン類を微量含有した食塩であり、食卓塩又は健康食品原料として用いることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明は、梅干の製造過程で副生された梅酢に所定量の聖徳石浸出液を混合し、聖徳石浸出液に含まれる金属イオンを利用して、梅酢に含まれる塩分を自然分離させるので、従来の梅酢再利用法のように、電気的透析設備や電解設備などの特別な機器を用いることなく、低コストで脱塩処理を行うことが出来る。
また、本発明で得られる金属イオン含有梅酢液、塩分、純度90%以上で残部が梅酢成分である水は、梅酢に含有されるクエン酸、サイアミン(ビタミンB)、リボフラビン(ビタミンB)、アスコルビン酸(ビタミンC)、ナイアシンなどの各種成分に加え、聖徳石浸出液に含有される各種金属イオン類を含有するので、健康飲料原料、健康食品原料、化粧品の原料などとして好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
本例で用いた生梅酢は、塩分濃度が約15〜20%程度になるよう生梅を塩漬けし、数ヵ月後に塩漬けの梅(梅干)を得る際に副生されたものである。この生梅酢の成分分析結果を表1に示す。
【0017】
【表1】

【0018】
このように生梅酢は、塩分濃度が15〜22%と高く、有機酸濃度も3〜5%、pH 1.9〜2.4 で、このまま飲料、食品、医薬品、化粧品などの原料として使用するには塩辛く、酸味がきつすぎる。
【0019】
本例の梅酢再利用法においては、この梅酢に、自然界に存在する鉱物としての聖徳石を溶媒としての水中に浸すことで得られる聖徳石浸出液を、梅酢100重量%に対し10重量%混合した。
【0020】
本例では、北海道虻田群豊浦町にて湧き出る聖徳石浸出液を用いた。この聖徳石浸出液1kg中に含まれる金属イオン類などの分量を以下に示す。
水素イオン 4.012mg
カリウムイオン 1.72mg
ナトリウムイオン 21.0mg
カルシウムイオン 38.55mg
マグネシウムイオン 8.303mg
亜鉛イオン 0.18mg
鉄イオン 210.8mg
銅イオン 0.38mg
マンガンイオン 0.272mg
アルミニウムイオン 181.6mg
鉛イオン なし
【0021】
図1に示すように、まず、前述の梅酢をろ過器に通して、梅酢中に含有された梅の実のかすやその他の固形物を除去する前処理101をした後、処理後の梅酢1(1000ml)に対し上記聖徳石浸出液2(100ml)を混合102し、これにより得られた金属イオン含有梅酢3を、逆浸透法により常温ろ過103して、濃縮度約40%の金属イオン含有濃縮梅酢4(440ml)と、純度95%で残部が梅酢成分である水5(660ml)に分離した。
【0022】
さらに、前記金属イオン含有濃縮梅酢4を陶器製のカメに入れ、常温で3日間静置104したところ、このカメ底部に塩分6(165mg)が沈殿し、塩分の大半が除去された金属イオン含有梅酢液7(275ml)が得られた。
【0023】
この金属イオン含有梅酢液7は、梅酢1に含有されたクエン酸、サイアミン(ビタミンB)、リボフラビン(ビタミンB)、アスコルビン酸(ビタミンC)、ナイアシンなどの成分に加え、聖徳石浸出液2に含有されたカリウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、鉄イオン、銅イオン、マンガンイオン、アルミニウムイオンを含んでいた。
【0024】
この金属イオン含有梅酢液7を水で所望の倍率に薄めたところ、梅の香り、風味を残すと共に適度の酸味を残した味覚を持ち、且つ梅酢エキスと各種ミネラルを含んだ健康飲料として好適に提供することができた。
また、この金属イオン含有梅酢液7を噴霧乾燥機で乾燥105して粉末8にしたところ、この粉末8は梅の香り、風味を残すと共に適度の酸味を残した味覚を持ち、且つ梅酢エキスと各種ミネラルを含んだ健康食品原料として好適に提供することができた。
【0025】
また、前記ろ過103により得られた純度95%で残部が梅酢成分である水5は、梅酢1に含有されたクエン酸、サイアミン(ビタミンB)、リボフラビン(ビタミンB)、アスコルビン酸(ビタミンC)、ナイアシンなどの成分を微量ながら含んでおり、梅の香り、風味を残すと共に適度の酸味を残した味覚を持ち、且つ梅酢エキスを含んだ健康飲料や化粧水の原料等として好適に提供することができた。
【0026】
また、前記金属イオン含有梅酢液7と分離された塩分6は、梅酢1に含有されたクエン酸、サイアミン(ビタミンB)、リボフラビン(ビタミンB)、アスコルビン酸(ビタミンC)、ナイアシンなどの成分を微量ながら含んでおり、食卓塩や健康食品原料等として好適に提供することができた。
【0027】
以上、本発明に係る梅酢の再利用法を、実施の一例に基づき詳細に説明したが、本発明にこの実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇であれば、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る梅酢再利用法の手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0029】
1:梅酢
2:聖徳石浸出液
3:金属イオン含有梅酢
4:金属イオン含有濃縮梅酢
5:水
6:塩分
7:金属イオン含有梅酢液
8:金属イオン含有梅酢エキス粉末
101:前処理工程
102:聖徳石浸出液混合工程
103:ろ過工程
104:静置工程
105:乾燥工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
梅干しの製造過程で副生された梅酢100重量%に対し、金属イオンを含有する聖徳石浸出液を5〜15重量%混合し、
これにより得られた金属イオン含有梅酢を逆浸透膜で常温ろ過して、濃縮度35〜45%の金属イオン含有濃縮梅酢と、純度90%以上で残部が梅酢成分である水とに分離し、
その後、前記金属イオン含有濃縮梅酢を容器内にて静置して、該金属イオン含有濃縮梅酢に含まれる塩分を自然沈殿させ、金属イオン含有梅酢液と塩分に分離し、
該金属イオン含有梅酢液を健康飲料の原液として、若しくは、該金属イオン含有梅酢液を乾燥して得られた粉末を健康食品原料として用いることを特徴とする梅酢の再利用方法。
【請求項2】
前記純度90%以上で残部が梅酢成分である水を、健康飲料又は医薬品、化粧品の原料として用いることを特徴とする請求項1記載の梅酢の再利用方法。
【請求項3】
前記塩分を、食卓塩又は健康食品原料として用いることを特徴とする請求項1又は2記載の梅酢の再利用方法。
【請求項4】
前記聖徳石浸出液が、少なくとも、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、銅イオン、アルミニウムイオン、鉄イオンを含有することを特徴とする請求項1又は2又は3記載の梅酢の再利用方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−42610(P2006−42610A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−223871(P2004−223871)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(595065105)フジケミカル株式会社 (3)
【Fターム(参考)】