説明

植物ステロール含有組成物

【課題】 本発明は、従来技術に鑑みてなされたものであり、植物ステロールを水に容易に均一分散させ、かつ長期間保存しても結晶や沈殿を生じることがない高い安定性を有する植物ステロール含有組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 植物ステロールと、水酸基価が1200以下であり、かつ全ての水酸基のうち1級水酸基が50%以上であるポリグリセリンと脂肪酸とがエステル化されたポリグリセリン脂肪酸エステルを必須成分として含有することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水に容易に均一分散し、かつ長期間保存しても結晶や沈殿を生じることがない高い安定性を有する植物ステロール含有組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物ステロールは植物に含まれるステロールの総称であり、穀物、野菜、果実問わずさまざまな植物の細胞膜中に含まれている。植物ステロールは血漿コレステロール低下作用をもつことが古くから知られており、その臨床効果について数多くの報告がなされている。また近年、前立腺肥大治療についての機能および臨床効果が科学的に立証されるなど、機能性食品素材として大いに注目されている素材である。しかしながら、植物ステロールは非常に高融点(130〜170℃)であり水に不溶、油にも僅かしか溶けないため、食品用途での利用において汎用性が極めて低い物質である。よって、従来植物ステロール含有食品は、油に懸濁させて使用する食用油脂、ドレッシング、マーガリンなどの油脂食品に限られており、特に飲料のような水系食品へ応用するには大きな制限を受けるという欠点があった。
【0003】
そこで、これらの問題を解決する方法として、食品への分散性を高める技術が提案されている。例えば、植物ステロールと、非ステロール乳化剤を水中油型の懸濁液とする製法(例えば、特許文献1参照。)等が提案されている。しかしながら、食品成分中での分散安定性はドレッシング、マヨネーズ等の油脂食品でしか得られておらず実際のところ水系飲料への安定分散化については不十分である。また、植物ステロール、乳化剤、食用油脂、水を必須とする、系全体における乳化剤のHLB値が12以上である植物ステロール含有水溶性組成物およびその製造方法(例えば、特許文献2参照。)、植物ステロールと乳化剤とのみから実質的になる混合物を加熱溶解し、水性飲料と高速混合して植物ステロール分散体を得る方法(例えば、特許文献3参照。)等が提案されている。前者は組成中のステロール含量が数%と少なく、血漿コレステロール低下効果を望む場合の1日推奨量400〜800mgを摂取することは飲食品の味を損ねるなどの点から極めて難しい。また、植物ステロールの油脂への溶解を必須条件としているため、コレステロール関連疾患の治療、予防を目的としている者の「余分な油脂摂取を控えたい」というニーズを考えると十分に満足できるものではない。また、後者の方法では、安定な水、および飲料への分散液とするためには特殊な高圧ホモジナイザー処理を必要としており、飲料調製時に一般的に用いられるホモジナイザー、ホモミキサー等では実質的に安定化は不可能であるため、工業的に汎用性は低い。さらに、これらの方法を用いても水系への一時的な溶解性が向上するだけであり、長期的に安定な乳化、可溶化状態を保ち、生理効果が期待できる植物ステロール量を含む組成物として十分に満足しうるものは存在しなかった。
【0004】
【特許文献1】特開平11−146757号公報(第2−13頁)
【特許文献2】特開2002−291442号公報(第2−10頁)
【特許文献3】特許第3535147号公報(第2−17頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、植物ステロールを水に容易に均一分散させ、かつ長期間保存しても結晶や沈殿を生じることがない高い安定性を有する植物ステロール含有組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、優れた植物ステロールの結晶抑制効果、乳化、可溶化効果をもった特殊なポリグリセリン脂肪酸エステルを用いることによって、飲食品、または化粧品に添加する際に必要とされる耐酸性、耐塩性、耐熱性が共にすぐれ、長期保存においても安定な乳化、または可溶化状態を保ち、かつ生理効果が期待できるだけの植物ステロール量を含む植物ステロール含有組成物が得られることを見出した。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、これらの知見に基づき完成されたものであって、その要旨は、植物ステロールと水酸基価が1200以下であり、かつ全ての水酸基のうち1級水酸基が50%以上であるポリグリセリンと脂肪酸とがエステル化されたポリグリセリン脂肪酸エステルを必須成分として含有してなる植物ステロール含有組成物を提供するものである。
【0008】
また本発明は、上記組成物に多価アルコールを含む植物ステロール含有組成物を提供するものであり、また該組成物が多価アルコール中油型(O/D型)乳化である植物ステロール組成物を提供するものである。
【0009】
さらに本発明は、上記組成物を含有する飲食品、または化粧品を提供するものである。以下に本発明を詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
ステロールとは動植物に広く分布するステロイドアルコールの総称である。ステロイドとは、ステロイド核すなわちペルヒドロ−1,2−シクロペンタノフェナントレン骨格を有する化合物である。
【0011】
植物ステロールとは、あらゆる植物の細胞膜中に存在し、二重結合を持つシトステロールを始め、スチグマステロール、カンペステロール、ブラシカステロール、フコステロールや二重結合を持たないスタノール等の混合物であり、その総称がフィトステロールである。本発明に使用される植物ステロールは特に限定するものではなく、例えば、大豆、米、小麦、ゴマなどの穀物、大根、キャベツ、リンゴ、レタスなどの果物や野菜、その他ヒマワリ、菜種、ヤシ、棉実、樹木の皮などからの抽出品、精製品などが挙げられる。また、抽出される植物原料の種類は特に限定するものではないが、中でも植物油の脱臭工程により産出されるスカム等より分離して得られる植物ステロールや、パルプの製造の際に副産物として得られるステロールが工業的な供給面からも好適である。
【0012】
植物ステロールは植物の細胞膜中に遊離型あるいは脂肪酸や糖などと結合した形で含まれている。本発明に使用される植物ステロールはそれぞれ分離単独品である必要はなく、精製品でも混合品でもエステル型でも良いが、本発明品の組成物中の植物ステロール含量を上げる目的において遊離型の使用が好ましい。
【0013】
本発明の植物ステロール含有組成物に使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルは、水酸基価が1200以下であり、かつ全ての水酸基のうち1級水酸基が50%以上であるポリグリセリンと脂肪酸とがエステル化されていることに一つの大きな特徴を有する。
【0014】
以上のような特徴を有することにより、本発明の植物ステロール含有組成物に使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルは植物ステロールの水分散性の付与に優れ、かつ結晶化を抑制する界面活性剤として使用することができるものである。すなわち従来のポリグリセリン脂肪酸エステル、および食品用界面活性剤では性能が不十分であり代替できるものではない。
【0015】
ポリグリセリン脂肪酸エステルにおけるポリグリセリンとは、グリセリンを脱水縮合するなどして得られるグリセリン骨格を基本単位として分子内に水酸基とエーテル結合を有している物質をいう。
【0016】
ポリグリセリン脂肪酸エステルにおけるポリグリセリンは、分子中の全ての水酸基のうち1級水酸基が50%以上であるポリグリセリンであり、得られるポリグリセリン脂肪酸エステルの可溶化性能および乳化安定性をさらに向上する観点から、1級水酸基が好ましくは55%以上のポリグリセリン、より好ましくは60%以上のポリグリセリンである。さらに上限値は、特に規定するものではないが、その効果を最大限に発揮させるためには90%以下であることが望ましい。本願のポリグリセリンにおける全水酸基のうち1級水酸基の占める割合はポリグリセリンの縮合度に応じて変化するため、また一般的に流通しているポリグリセリンの種類がテトラ、ペンタ、ヘキサ、デカであることを考慮してその上限値を例示するならば、テトラグリセリンでは70%以下、好ましくは65%以下、ペンタグリセリンでは75%以下、好ましくは70%以下、ヘキサグリセリンでは80%以下、好ましくは75%以下、デカグリセリンでは85%以下、好ましくは80%以下といった数値を示すことができる。さらに、ポリグリセリンの水酸基価は、1200以下であり、用途に応じてポリグリセリン脂肪酸エステルの親水性(HLB)を調整できる観点から、1100以下がより好ましく、1000以下がさらに好ましい。また、作業性および脂肪酸とのエステル化の容易性の観点から、水酸基価は770以上が好ましい。
【0017】
全ての水酸基のうちの1級水酸基の割合は、炭素原子に対する核磁気共鳴スペクトル(NMR)を測定する方法を用いて測定される。また、水酸基価は当該分野で公知の方法により測定することができる。
【0018】
なお、炭素原子に対する核磁気共鳴スペクトル(NMR)は、以下のようにして測定することができる。ポリグリセリン500mgを重水2.8mlに溶解し、ろ過後ゲートつきデカップリングにより13C−NMR(125MHz)スペクトルを得る。ゲートデカップルド測定手法によりピーク強度は炭素数に比例する。1級水酸基と2級水酸基の存在を示す13C化学シフトはそれぞれメチレン炭素(CHOH)が63ppm付近、メチン炭素(CHOH)が71ppm付近であり、2種それぞれのシグナル強度の分析により、1級水酸基と2級水酸基の存在比を算出する。但し、2級水酸基を示すメチン炭素(CHOH)は、1級水酸基を示すメチレン炭素に結合するメチン炭素にさらに隣接するメチレン炭素ピークと重なり、それ自体の積分値を得られないため、メチン炭素(CHOH)と隣り合うメチレン炭素(CH)の74ppm付近のシグナル強度により積分値を算出する。
【0019】
植物ステロール含有組成物に使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルのポリグリセリン調製方法は限定されるものではないが、例えば合成法の工夫または市販のポリグリセリンから分画精製により得ることができる。
【0020】
例えば合成したポリグリセリンまたは市販のポリグリセリンに、1級水酸基に選択的に結合反応する試薬、すなわち1級水酸基の保護基となる試薬を反応させる。そうするとポリグリセリン1分子中に1級水酸基の数が多いものほど保護基の数が多くなるので、結果としてそのポリグリセリンの極性が低下する。一方、2級水酸基を多く含むポリグリセリンには保護基が導入されにくいので、該ポリグリセリンはもとの高い極性を維持したままとなる。この極性の差を利用して両者を分別することが可能となる。分別した後のポリグリセリンは保護基の脱離処理を行い、1級水酸基を多く含むポリグリセリンを得ることができる。
【0021】
この場合、1級水酸基に選択的に反応する試薬としては、例えば、クロロトリフェニルメチル、イソブテン、1−トリチルピリジニウムテトラフルオロボレートなどが挙げられる。1,2−ジオール以外に2級水酸基を有さないポリグリセリンについては、ポリグリセリンとアセトナイドを形成する化合物(例えば、メチルイソプロペニルエーテル、2,2−ジメトキシプロパン、2,2−ジエトキシプロパン、アセトンなど)を使用することもできる。なかでも、1級水酸基の導入および脱離のしやすさから、クロロトリフェニルメタンが好ましい。
【0022】
ポリグリセリンと該試薬との反応比は、所望されるポリグリセリン中の1級水酸基の数にあわせて適宜調整されるが、確実に反応を進行させるため該試薬を過剰量使用することが好ましい。例えば、該試薬は、ポリグリセリン1モルに対して、好ましくは2〜10モル、より好ましくは3〜7モル使用される。
【0023】
ポリグリセリンと該試薬との反応は、反応の進行および保護の確実性の観点から、好ましくは5〜30℃、より好ましくは10〜25℃で行われる。
【0024】
反応終了後、通常の化学反応と同様に後処理を行えばよい。ピリジンなどの有機溶剤は減圧下蒸留により除去することができる。
【0025】
得られた反応物から目的のポリグリセリンを分別する方法は、保護基が導入されたポリグリセリンの化学的および物理的差を利用して達成することができる。例えば、沸点の差を利用して蒸留、減圧蒸留、分子蒸留などの方法で目的のポリグリセリンを分別することができ、あるいは水または有機溶剤への溶解度の差を利用して目的のポリグリセリンを分画することもできる。例えば、反応物を水に分散させ、水と混和しない有機溶剤(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、石油エーテル、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、エーテル、酢酸エチルなど)で抽出することにより目的のポリグリセリンを分画することができる。この分画方法を使用する場合、水の代わりに水含有エタノール、食塩水、硫酸ナトリウム溶液などの無機塩の溶液を使用することもできる。水と酢酸エチルを用いて目的のポリグリセリンを分画することが好ましい。
【0026】
溶剤抽出した後に溶剤を除去することにより、極性の低いポリグリセリン誘導体、すなわち1分子中に保護基が多く導入されたポリグリセリンが得られる。この誘導体からの保護基の脱離は、一般の有機合成で行われている方法で行うことができる。例えば、メタノール中でp−トルエンスルホン酸を作用させる方法、酢酸水溶液中で加熱撹拌する方法などにより保護基の脱離が達成される。1例として、トリフェニルメチル基をポリグリセリンに導入した場合、得られた反応物に対して2〜3倍量の酢酸水溶液を加えて、55〜60℃で10時間撹拌することにより、保護基を脱離することができる。
さらに、当該ポリグリセリンは、グリシドールやエピクロルヒドリンといったグリセリン誘導体を縮合させて1級水酸基を多く含むポリグリセリンを調製しておき、これを市販のポリグリセリンと混合して、本発明の目的に合うよう1級水酸基と2級水酸基の比率を調整してもよい。
【0027】
水酸基価が1200以下のポリグリセリンを調製することは、ポリグリセリン反応工程を例えば以下のように調整することで可能である。例えば、グリセリン重合法を用いて調製する場合、重合反応時間の経過と共に水酸基価が低下するため、反応中のポリグリセリンの水酸基価低下過程を確認することで、水酸基価が1200以下のポリグリセリンを容易に得ることができる。
【0028】
本発明に使用される脂肪酸としては、天然の動植物より抽出した油脂を加水分解し、分離してあるいは分離せずに精製して得られるカルボン酸を官能基として含む物質であれば特に限定するものではない。あるいは石油などを原料にして化学的に合成して得られる脂肪酸であってもよい。あるいはまた、これら脂肪酸を水素添加などして還元したものや、水酸基を含む脂肪酸を縮重合して得られる縮合脂肪酸や、不飽和結合を有する脂肪酸を加熱重合して得られる重合脂肪酸であってもよい。これら脂肪酸の選択に当たっては所望の効果を勘案して適宜決めればよい。本発明に使用される脂肪酸の具体例としては、炭素数6〜22の飽和あるいは不飽和の脂肪酸、すなわちカプロン酸、カプリル酸、オクチル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトオレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘニン酸、エルカ酸の他、分子中に水酸基を有するリシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸およびこれらの縮合物などが挙げられるが、なかでも植物ステロールの安定化を考慮するとラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、縮合リシノール酸が好ましい。さらに好ましくはミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸が望ましい。
【0029】
ポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化は、当該分野で公知の方法に従って行われる。例えばアルカリ触媒下、酸触媒下、あるいは無触媒下にて、常圧あるいは減圧下エステル化することができる。また、ポリグリセリンと脂肪酸の混合量を変更することにより種々の性質をもつポリグリセリン脂肪酸エステルを調製することができる。例えば、親水性の界面活性剤に使用するためのポリグリセリン脂肪酸エステルを得る場合、ポリグリセリンの水酸基価と脂肪酸の分子量から計算により等モルになるように重量を計算してポリグリセリンと脂肪酸を仕込めばよく、親油性の界面活性剤に使用するためのポリグリセリン脂肪酸エステルを得る場合、脂肪酸のモル数を増加させればよい。得られたポリグリセリン脂肪酸エステルは使用される製品の使用上の要求によってさらに精製してもよい。精製の方法は公知のいかなる方法でもよく特に限定するものではない。たとえば、活性炭や活性白土などにて吸着処理したり、水蒸気、窒素などをキャリアーガスとして用いて減圧下脱臭処理を行ったり、あるいは酸やアルカリを用いて洗浄を行ったり、分子蒸留を行ったりして精製してもよい。
【0030】
本発明の植物ステロール含有組成物に使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルは単独で用いる他に乳化安定性を向上する観点から、他の界面活性剤を併用してもよい。例えば混合される界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、モノグリセリド誘導体、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン誘導体、ポリグリセリン脂肪酸エステル(ただし、本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルを除く)などの非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、レシチン、酵素分解レシチン、サポニン、キラヤ抽出物といった天然物由来の界面活性剤などが挙げられる。これらは1種または2種以上併用してよく、中でもグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリドの1種または2種以上を組み合わせて使用するのが好ましい。さらに植物ステロールの飲料使用時の安定化を考慮するならば、グリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸がステアリン酸、イソステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ミリスチン酸が好ましく、また有機酸モノグリセリドの有機酸部分がクエン酸、コハク酸、ジアセチル酒石酸であることが望ましい。
【0031】
本発明の植物ステロール含有組成物において、該組成物が飲食品中に均一かつ長期的に安定に分散することは勿論であるが、さらに多価アルコールを用いることによってハンドリング性、製剤安定性、水分散時の安定性が向上する。この場合の多価アルコールとしては特に限定するものではないが、1分子中に水酸基を2個以上有する化合物の総称であり、プロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、ソルビタン、キシロース、アラビノース、マンノース、乳糖、砂糖、カップリングシュガー、ブドウ糖、酵素水飴、酸糖化水飴、麦芽糖水飴、麦芽糖、異性化糖、果糖、還元麦芽糖水飴、還元澱粉糖水飴、蜂蜜、果糖ブドウ糖液糖、およびこれらの溶液が例示でき、これらは単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。なかでも製剤の調製のしやすさ、安定性からプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリンが好適に使用でき、さらにプロピレングリコール、グリセリンが食品に使用できるという観点からも望ましい。
【0032】
さらに、本発明品の植物ステロール含有組成物を多価アルコール中油型(O/D型)の乳化物とすることによって、水に容易に分散でき、また経時的に結晶や沈殿などを生じない組成物とすることができる。そのため、飲料などの水系食品、また乳液などの化粧品の商品価値を落とすことなく、植物ステロールを高濃度で安定配合することができる。
【0033】
本発明中の多価アルコール中油型(O/D型)乳化は、界面活性剤の多価アルコール溶液中に油成分を分散させたものであり、多大な機械力を要さず微細な乳化が可能である。O/D型乳化は本発明においてはステロールの微細な乳化とともに結晶化抑制に有効であり、安定性が格段に向上することが見出されたため、本組成物の調製に推奨されるものである。
【0034】
本発明の植物ステロール含有組成物の調製法としては本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルを多価アルコールに溶解し、植物ステロールを乳化する上記O/ D型乳化が推奨される。植物ステロールとの混合方法は特に限定するものではなく、攪拌、乳化装置を用い乳化することにより得られる。例えばプロペラ型、アンカー型、パドル型の攪拌機、より強力なせん断力を付与できるローター・ステーター型乳化機、磨砕機能を備えたミル型乳化機、高圧化でキャビテーションを発生させる高圧ノズル型乳化機、高圧下で液同士を衝突させ、衝撃力、乱流によるせん断力およびキャビテーションにより乳化させる高圧衝突型乳化機、超音波でキャビテーションを発生させる超音波乳化機、細孔を通して均一乳化を行う膜乳化機、エレメント内で液の分散集合を繰り返して均一混合するスタティックミキサーといったものが例示できる。これらは単独で使用できるほか、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
本発明の植物ステロールの配合方法としては特に限定するものではないが、植物ステロールをモノグリセリン脂肪酸エステルとあらかじめ高温溶解させる事で、植物ステロールの融点、結晶状態が変化し、常温においてもペースト状の流動性を持たせることができるため、製剤の安定性が向上する。また、飲食品、または化粧品に用いた場合にも分散性、保存安定性が向上するため好ましい。モノグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸は限定するものではないが、好ましくはミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸あるいはその混合物が望ましい。
【0036】
植物ステロールとモノグリセリン脂肪酸エステルの混合比率は特に限定するものではないが、好ましくは植物ステロール99:1〜1:99の範囲、さらに好ましくは90:10〜20:80の範囲が望ましい。
【0037】
植物ステロールとモノグリセリン脂肪酸エステルの混合温度は特に限定するものではないが両物質を均一に混合するという観点から、好ましくは80〜180℃、より好ましくは110〜150℃、さらに好ましくは120〜140℃で行なわれることが望ましい。
【0038】
本発明の植物ステロール含有組成物の組成については特に限定するものではなく、使用する植物ステロールの精製度、添加する飲食品、または化粧品の設計に合わせて任意に調製すればよいが、植物ステロールの下限としては、生理作用上の効果及び、飲食品に応用した際の風味への影響の点より、好ましくは0.1%以上であり、さらに好ましくは1%以上であり、最も好ましくは15%以上である。また上限としては、乳化の安定性の点より、好ましくは80%以下であり、さらに好ましくは60%以下である。ポリグリセリン脂肪酸エステルは0.01%から60%が好ましく、さらに好ましくは1%から40%が望ましい。多価アルコールは1%から99%が好ましく、さらに好ましくは10%から80%が望ましい。
【0039】
本発明の植物ステロール含有組成物の製品価値を向上させるため、他の添加物素材を加えてもよい。例えば香料や色素の他、ビタミン類、多価不飽和脂肪酸等の機能性油脂類、抗酸化剤、ミネラル等が挙げられる。
【0040】
本発明の植物ステロール含有組成物は、そのまま経口的に摂取することにより、植物ステロールの生体への補給剤として使用することができる。例えば、植物ステロール摂取を目的とした液剤、錠剤、粉末製剤、カプセル剤等がある。よって、本発明の一態様として、本発明の組成物を含んでなる飲食品が提供される。
【0041】
本発明の組成物を含有してなる飲食品とは特にヒトを対象とするものであるが、家畜や家庭用ペット等の飼料又はペットフードを排除するものではない。以下においては、ヒトを対象とした飲食品について説明するが、本発明の飲食品には、前記飼料も包含するものとする。
【0042】
飲食品としては、特に限定するものではなく、本発明の植物ステロール含有組成物を含有してなる飲食品であればよい。かかる飲食品としては、例えば、即席麺、カップ麺、レトルト・調理食品、調理缶詰、電子レンジ食品、即席スープ・シチュー、即席みそ汁・吸い物、スープ缶詰、フリーズドライ食品といった即席食品、炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料水、果肉飲料、果粒入り果実食品、野菜系飲料、豆乳・豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料といった嗜好飲料類、パン、マカロニ・スパゲッティ、麺類、ケーキミックス、から揚げ粉・パン粉、ギョーザ・春巻の皮といった小麦粉食品、キャラメル・キャンディー、チューイングガム、チョコレート、クッキー・ビスケット、ケーキ・パイ、スナック・クラッカー、和菓子・米菓子・豆菓子、デザート菓子といった菓子類、しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類、甘味料、魚醤、ニョクマムといった基礎調味料、風味調味料、調理ミックス、カレーの素、たれ類、ドレッシング、麺つゆ、スパイスといった複合調味料、バター、マーガリン、マヨネーズといった油脂食品、牛乳・加工乳、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料、チーズ、アイスクリーム、調製粉乳、クリームといった乳・乳製品、素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品といった冷凍食品、水産缶詰・ペースト類、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、水産乾物類、佃煮といった水産加工品、畜産缶詰・ペースト類、畜肉ハム・ソーセージ、畜産珍味類といった畜産加工品、農産缶詰、果実缶詰、ジャム・マーマレード類、漬物、煮豆、農産乾物類、シリアルといった農産加工品、ベビーフード、離乳食、ふりかけ、お茶漬けのり、サプリメントなどを例示できる。
【0043】
本発明の一態様として、本発明の植物ステロール含有組成物を含んでなる化粧品が提供される。化粧品としては特に限定されるものではなく、化粧水、乳液、シャンプー、リンス、毛髪用化粧品、ファンデーション、口紅、保湿クリームなどを例示できる。
【0044】
飲食品、または化粧品中の本発明の植物ステロール含有組成物の含有量としては、特に限定するものではない。植物ステロールの摂取に充分な量の組成物が含有されていればよく、該組成物を適用しようとする飲食品、または化粧品の組成、該製品の摂取対象個体に応じて適宜決定すればよい。該組成物の含有量としては、例えば、飲食品中、植物ステロール換算で、好ましくは0.001%〜50%、より好ましくは0.01%〜20%、さらに好ましくは0.1%〜10%である。この範囲未満では期待される効果は得られにくく、この範囲を超える濃度の添加では飲食品の性状に影響を及ぼす可能性がある。
【0045】
本発明の飲食品、または化粧品は、例えば、既成の飲食品、または化粧品に対して本発明の植物ステロール含有組成物を添加することができる。また、それらの飲食品、または化粧品を調製する際に、本発明の組成物を使用原料に予め添加するか、若しくは調製工程中に共に配合することにより、調製することができる。本発明の所望の効果を発現しうる飲食品、または化粧品が得られるのであれば、該製品への本発明の組成物の添加時期や添加方法については特に限定されるものではない。
【0046】
本発明の植物ステロール含有組成物を含有してなる飲食品、または化粧品は植物ステロールを多量に含有するが、植物ステロールが安定に乳化若しくは可溶化されているので、植物ステロールの析出による白濁、結晶および沈殿等やステロール由来のざらつき、油っぽさがない。このように、本発明の植物ステロール含有組成物によれば、商品の外観、食感、使用感を悪化させることなく、植物ステロールを飲食品、または化粧品に強化することができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明がかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0048】
調製例1 ポリグリセリンの調製
試料: グレートオイルDE−1 (太陽化学社製:デカグリセリン)
グレートオイルDE−2 (太陽化学社製:デカグリセリン)
グレートオイルDI−1 (太陽化学社製:ジグリセリン)
試薬: ピリジン(和光純薬社製)、クロロフェニルメチル(和光純薬社製)
酢酸エチル(和光純薬社製)
器具: 温度計、ジムロート、3つ口フラスコ、攪拌装置、減圧装置、還流装置、
分液ロート
方法;
温度計、ジムロートおよび攪拌装置を付けた3つ口フラスコに、ポリグリセリン(グレートオイルDE−1)およびピリジンを加えた。ここへ1級水酸基に選択的に反応する試薬であるクロロトリフェニルメチルを加えて100℃で1時間攪拌後室温に戻し、24時間攪拌した。さらに反応液を減圧下でピリジンの大部分を除去した。得られた反応物に水を加え、分液ロートに移して酢酸エチルで3回抽出した。酢酸エチル層を合わせて濃縮し、得られた残渣および酢酸を温度計、ジムロートおよび攪拌装置を付けた3つ口フラスコに加えて8時間加熱還流し、トリメチルフェニル基を脱離させた。上記工程を繰り返し、精製したポリグリセリンを混合し、一定量のポリグリセリンBを得た。また、グレートオイルDE−2、グレートオイルDI−1についてもそれぞれ同様の操作を行い、ポリグリセリンC、Dを得た。得られたポリグリセリンの水酸基価、1級水酸基、2級水酸基は表1の通りであった。
【0049】
水酸基価は、第7版食品添加物公定書「油脂類試験法」または基準油脂分析試験法に準じて算出した。
【0050】
調製例2
調製例1の水層部分を濃縮して得られた残渣および酢酸を温度計、ジムロートおよび攪拌装置を付けた3つ口フラスコに加えて8時間加熱還流し、トリメチルフェニル基を脱離させた。上記工程を繰り返し、精製したポリグリセリンを混合し、一定量のポリグリセリンEを得た。得られたポリグリセリンの水酸基価、1級水酸基、2級水酸基の割合は表1の通りであった。
【0051】
【表1】

【0052】
調製例3 ポリグリセリン脂肪酸エステルの調製
試料: 表1記載のポリグリセリン、ステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸
試薬: 水酸化ナトリウム(和光純薬社製)、リン酸(和光純薬社製)
器具: 4つ口フラスコ、窒素ガス注入付減圧装置、攪拌装置
方法;
表1記載のポリグリセリン、脂肪酸および水酸化ナトリウムを4つ口フラスコに入れ、窒素気流下で生成水を除去しながら250℃で反応し、反応後リン酸を加えてポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。調製したポリグリセリン脂肪酸エステルについては表2の通りである。
【0053】
【表2】

【0054】
酸価は、第7版食品添加物公定書「油脂類試験法」または基準油脂分析試験法に準じて算出した。
【0055】
実施例1 植物ステロール乳化製剤の調製(1)
処方1の配合比率に従い、表2に記載した調製品1〜12のポリグリセリン脂肪酸エステルを用いて、以下の方法にて植物ステロール乳化製剤を調製した。すなわちグリセリン(日本油脂(株)製)に別途加熱融解させたポリグリセリン脂肪酸エステルを加え80℃以上に加温、これをホモミキサー(特殊機化工業(株)製)を用いて混合状態を確認しながら5,000rpmで攪拌した。ここへ120〜130℃で別途融解した植物ステロール(商品名「フィトステロール−FK」タマ生化学(株)製:フィトステロール90%以上)を加えホモミキサーにて6,000rpmで乳化、本発明品1〜6、比較品1〜6の植物ステロール乳化製剤を得た。
【0056】
また別に、処方2の配合比率に従い、表2に記載した調製品3のポリグリセリン脂肪酸エステルを用いて、以下の方法にて植物ステロール乳化製剤を調製した。すなわちグリセリンに別途加熱融解させたポリグリセリン脂肪酸エステルを加え80℃以上に加温、これをホモミキサーを用いて混合状態を確認しながら5,000rpmで攪拌した。ここへ別途植物ステロールとモノグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株)製、モノミリスチン酸グリセリンエステル)とを120〜130℃にて溶解・混合したものを加えホモミキサーにて6,000rpmで乳化、本発明品7の植物ステロール乳化製剤を得た。
【0057】
処方1及び処方2の植物ステロール製剤の成分組成割合については表3の通りである。
【0058】
【表3】

【0059】
乳化安定性について25℃にて保存し、結晶が発生するまでの経過日数を確認した。
【0060】
植物ステロール乳化製剤の乳化安定性結果については表4の通りである。
【0061】
【表4】

【0062】
試験例1 酸糖液の調製
水87g、果糖ブドウ糖液糖10.8g、クエン酸0.18g、クエン酸三ナトリウム0.04gを攪拌しながら、実施例1の植物ステロール乳化製剤2.0gを混合し、93℃達温にて加熱殺菌後、無色透明のペットボトルにホットパック充填し、冷却して植物ステロールを含有する半透明〜乳白色の酸糖液を得た。
【0063】
分散安定性について37℃で14日間保存し、目視確認した。
【0064】
酸糖液中の分散安定性結果については表5の通りである。
【0065】
【表5】

【0066】
<分散安定性>
◎:半透明溶液であり、沈殿、凝集を認めない(100mlビーカー越しに文字が確認可能)
○:白濁溶液であり、沈殿、凝集を認めない
△:白濁溶液であり、細かい凝集物を認める
×:沈殿を認める
尚、◎および○を合格品とする。
【0067】
実施例2 植物ステロール乳化製剤の調製(2)
処方3の配合比率に従い、表2に記載のポリグリセリン脂肪酸エステルを用いて、以下の方法にて植物ステロール乳化製剤を調製した。すなわちプロピレングリコールに別途加熱融解させたポリグリセリン脂肪酸エステルを加え80℃以上に加温、これを羽根攪拌機(東京理化機械(株)製)を用いて混合状態を確認しながら500rpmで攪拌した。ここへ別途植物ステロール(商品名「フィトステロール−FK」タマ生化学(株)製:フィトステロール90%以上)とモノグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株)製、モノステアリン酸グリセリンエステル)とを120〜130℃にて溶解・混合したものを加え、羽根攪拌機を用いて600rpmで乳化、本発明品8〜11、比較品7〜10の植物ステロール製剤を得た。
【0068】
また別に、ポリグリセリン脂肪酸エステルの代わりにショ糖脂肪酸エステル(商品名「リョートーシュガーエステルS−1170」三菱化学フーズ(株)製)を用いた他は同様に処理し、比較品11の植物ステロール製剤を得た。
【0069】
また別に、ポリグリセリン脂肪酸エステルの代わりにソルビタン糖脂肪酸エステル(商品名「サンソフトNo.61S」太陽化学(株)製)を用いた他は同様に処理し、比較品12の植物ステロール製剤を得た。
【0070】
処方3の植物ステロール製剤の成分組成割合については表6の通りである。
【0071】
【表6】

【0072】
乳化安定性について37℃にて30日後、冷蔵にて5日間保存して確認した。
【0073】
植物ステロール乳化製剤の乳化安定性結果については表7の通りである。
【0074】
【表7】

【0075】
<乳化安定性>
◎:調製直後と差なし
○:表面にわずかに結晶析出
△:結晶析出(乳化製剤の約1〜10%)
×:結晶析出(乳化製剤の約10%を超える)
××:結晶析出(乳化製剤の約50%を超える)
尚、◎および○を合格品とする。
【0076】
試験例2 コーヒー飲料の調製
コーヒー豆(L値:18)250gに約10重量倍の沸騰水を加えてBx.2.5のコーヒー抽出液2500gを得た。この抽出液とグラニュー糖、牛乳、重曹およびコーヒー用乳化安定剤製剤(商品名「サンソフトスーパーV−302」太陽化学(株)製)を以下の処方4に示す割合にしたがってコーヒー飲料を調製した。このコーヒー飲料に実施例2にて得られた本発明品、比較品の植物ステロール乳化製剤を1.0%添加した後、ホモジナイザー(150kg/cm)にて均質化し、190ml缶に充填した。これを121℃にて30分殺菌し、缶入りコーヒー飲料を得た。
【0077】
処方4のコーヒー飲料の調製割合については表8の通りである。
【0078】
【表8】

【0079】
分散安定性について55℃で8週間保存後、ビーカーに移し目視確認を行った。
【0080】
コーヒー飲料中の分散安定性結果については表9の通りである。
【0081】
【表9】

【0082】
<分散安定性>
◎:均一に分散しており、沈殿、凝集、油浮きを認めない。
○:均一に分散しているが、わずかに油浮きを認める。
△:沈殿、油浮きを認める
×:白色の凝集物があり、沈殿、油浮きを認める
尚、◎および○を合格品とする。
【0083】
試験例3 酸乳飲料の調製
水88.5g、グラニュー糖7.2g、ペクチン0.3gを加熱溶解し、20〜30℃に冷却したものに脱脂加糖煉乳4.0gを混合した。その溶液を撹拌しながらクエン酸50%水溶液にてpH3.8に調整し、実施例2にて得られた本発明品、比較品の植物ステロール乳化製剤1.5%を混合した。この飲料をホモジナイザー(150kg/cm)にて均質化し、93℃達温にて加熱殺菌後、350mlペットボトルに充填、冷却し、酸乳飲料を得た。
分散安定性について37℃で2ヶ月間保存し、目視確認した。
<分散安定性>
◎:均一に分散しており、沈殿、凝集、油浮きを認めない。
○:均一分散しているが、わずかに沈殿を認める。
△:分散しているが、沈殿、凝集を認める。
×:不均一であり沈殿、凝集、油浮きを認める。
尚、◎および○を合格品とする。
【0084】
また、37℃で2ヶ月間保存した酸乳飲料について、風味の変化、ざらつきの程度を、よく訓練された10名のパネラーにより官能評価を行った。比較の基準として5℃の冷蔵庫に保存しておいた試料を使用し、これに対する差異を数値で示した。
なお、表10中の評価の点数は、下記の基準で採点した各パネルの平均点である。
<官能評価>
冷蔵保存試料と同等(変化なし) :5点
冷蔵保存試料と比べわずかに変化している :4点
冷蔵保存試料と比べ少し変化しており、ざらつきを感じる :3点
冷蔵保存試料と比べかなり変化しており、ざらつきを感じる :2点
冷蔵保存試料と比べ著しく変化しており、かなりざらつきを感じる:1点
【0085】
酸乳飲料中の分散安定性および、官能評価結果については表10の通りである。
【0086】
【表10】

【0087】
試験例4 乳液(エモリエントクリーム)の調製
処方5に示す割合にしたがって乳液を調製した。精製水にプロピレングリコール、グリセリン、トリエタノールアミンを加え加熱混合し、水相部とした。また、他の成分を70℃にて混合し、この油相部を水相部に加えて予備乳化を行った。ここに実施例2にて得られた本発明品、比較品の植物ステロール乳化製剤を5.0%添加した後、ホモミキサーで均一に乳化し、乳化後30℃まで冷却して乳液を得た。
【0088】
処方5の乳液(エモリエントクリーム)の調製割合については表11の通りである。
【0089】
【表11】

【0090】
分散安定性について50℃で1ヶ月保存し、目視確認した。
【0091】
乳液の分散安定性結果については表12の通りである。
【0092】
【表12】

【0093】
<分散安定性>
◎:均一に分散しており、沈殿、凝集、油浮きを認めない。
○:均一分散しているが、わずかに沈殿を認める。
△:分散しているが、沈殿、凝集、油浮きを認める。
×:不均一であり沈殿、凝集、油浮きを認める。
尚、◎および○を合格品とする。
【0094】
本発明の実施態様ならびに目的生成物を挙げれば以下のとおりである。
(1)植物ステロールと、水酸基価が1200以下であり、かつ全ての水酸基のうち1級水酸基が50%以上であるポリグリセリンと脂肪酸とがエステル化されたポリグリセリン脂肪酸エステルを必須成分として含有してなる植物ステロール含有組成物。
(2)ポリグリセリンの1級水酸基が55%以上である前記(1)記載の植物ステロール含有組成物。
(3)ポリグリセリンの1級水酸基が60%以上である前記(1)記載の植物ステロール含有組成物。
(4)組成物が多価アルコール中油型(O/D型)の乳化物である前記(1)〜 (3)いずれか記載の植物ステロール組成物。
(5)多価アルコールがグリセリンである(1)〜(4)いずれか記載の植物ステロール組成物。
(6)多価アルコールがプロピレングリコールである(1)〜(4)いずれか記載の植物ステロール組成物。
(7)植物ステロールとモノグリセリン脂肪酸エステルとをあらかじめ高温溶解させた前記(1)〜(6)記載の植物ステロール組成物。
(8)植物ステロールの配合量が15%以上である前記(1)〜(7)記載の植物ステロール組成物。
(9)前記(1)〜(8)いずれか記載の植物ステロール含有組成物を含む飲食品。
(10)前記(1)〜(8)いずれか記載の植物ステロール含有組成物を含む化粧品。
【産業上の利用可能性】
【0095】
上記試験例で示されたように、特定のポリグリセリン脂肪酸エステルにて調製された本発明の植物ステロール含有組成物は従来安定に分散することが不可能であった植物ステロールを結晶化、沈殿等を生じずに飲食品、または化粧品に添加することが可能であることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物ステロールと、水酸基価が1200以下であり、かつ全ての水酸基のうち1級水酸基が50%以上であるポリグリセリンと脂肪酸とがエステル化されたポリグリセリン脂肪酸エステルを必須成分として含有してなる植物ステロール含有組成物。
【請求項2】
組成物が多価アルコール中油型(O/D型)の乳化物である請求項1記載の植物ステロール組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の植物ステロール含有組成物を含む飲食品。
【請求項4】
請求項1または請求項2記載の植物ステロール含有組成物を含む化粧品。

【公開番号】特開2007−111010(P2007−111010A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−308241(P2005−308241)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【出願人】(000204181)太陽化学株式会社 (244)
【Fターム(参考)】