説明

植物チミジンキナーゼおよびその使用方法

本発明は新規の植物チミジンキナーゼと遺伝子治療におけるその使用方法に関する。更に詳しくは、本発明は、トマト、マツ、コメまたはシロイヌナズナに由来する新規のチミジンキナーゼを提供する。さらなる実施態様において、本発明は、植物チミジンキナーゼをコードする新規のポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドを含むベクター構築物、ポリヌクレオチドまたはベクターを担持する宿主細胞、細胞のプロドラッグへの感作方法、温血動物における病原性物質の阻害方法、植物の生体制御方法、モノホスフェート化物の合成方法、および本発明のチミジンキナーゼを含む薬学的調合物を提供する。好ましい実施形態において、本発明は、異常細胞増殖を治療するための、植物チミジンキナーゼ及びヌクレオシドアナログAZTの独自の組み合わせを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の植物チミジンキナーゼおよび遺伝子治療におけるその使用方法に関する。更に詳しくは、本発明は、トマト、マツ、米またはシロイヌナズナに由来するチミジンキナーゼを提供する。
【0002】
本発明のさらなる実施態様において、本発明は、植物チミジンキナーゼをコードする新規のポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含むベクター構築物、前記ポリヌクレオチドまたはベクターを保持する宿主細胞、細胞のプロドラッグへの感作方法、温血動物における病原物質の阻害方法、植物の生体制御のための方法、モノホスフェート塩の合成方法、および本発明の植物チミジンキナーゼを含む医薬組成物を提供する。
【0003】
本発明の好ましい実施形態において、本発明は、異常細胞増殖を治療するための、植物チミジンキナーゼと、ヌクレオシドアナログAZTとの独自の組み合わせを提供する。
【背景技術】
【0004】
DNAは、デノボおよびサルベージ経路とによって提供される、4種類のデオキシリボヌクレオシドトリホスフェートから構成さる。デノボ経路のキーとなる酵素はリボヌクレオチドレダクターゼであり、該酵素は、ヌクレオシドジホスフェートの2’−OH基の還元を触媒する。また、キーとなるサルベージ酵素はデオキシリボヌクレオシドキナーゼであり、該酵素は、デオキシリボヌクレオシドを、対応するデオキシリボヌクレオシドモノホスフェートにリン酸化する。
【0005】
様々な生物から得られるデオキシリボヌクレオシドキナーゼは、基質特異性、遺伝子発現の調節および細胞局在性に違いがある。哺乳動物細胞においては、重複する特異性を有した4つの酵素、チミジンキナーゼ1(TK1)および2(TK2)、デオキシシチジンキナーゼ(dCK)ならびにデオキシグアノシンキナーゼ(dGK)が存在し、これらの酵素は、プリンおよびピリミジンデオキシリボヌクレオシドをリン酸化する。TK1およびTK2は、ピリミジン特異的であり、デオキシウリジン(dUrd)およびチミジン(dThd)をリン酸化し、TK2はデオキシシチジン(dCyd)もリン酸化する。dCKは、dCyd、デオキシアデノシン(dAdo)およびデオキシグアノシン(dGuo)をリン酸化するが、dThdはリン酸化しない。dGKはdGuoおよびdAdoをリン酸化する。TK1およびdCKは細胞基質内酵素であり、TK2およびdGKはミトコンドリア内に局在するが、最近の報告ではTK2は細胞質にも局在することが示されている。
【0006】
粘液腫ウィルス由来のチミジンキナーゼに対する相同性に基づいて、チミジンキナーゼをコードするコメ由来の遺伝子が提案されている[非特許文献1]。しかしながら、部分配列しか単離されておらず、その配列は活性なタンパク質の発現には十分でない。
【0007】
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)から得た2つのゲノムDNA断片が、GenBankTM(アクセッション番号:AAF13097およびBAB09824)における推定チミジンキナーゼとされている。しかしながら、現時点において、植物キナーゼのキャラクタリゼーション、特性、局在性、用途または生物学的機能に向けての実験的研究はまだ達成されていない。
【0008】
AZT(3’−アジド−3’−デオキシチミジン、ジドブジン、レトロビル(Retrovir(登録商標))は、HIV感染の治療において用いられるヌクレオシドアナログである。ヒト細胞におけるその活性化の律速段階は、AZT−ジホスフェートへのAZT−モノホスフェート(AZTMP)の活性化である。
【0009】
内在性チミジンモノホスフェートキナーゼ活性を有するヒトI型単純ヘルペスウィルスチミジンキナーゼ(HSV1−TK)を、HIV感染の遺伝子治療処置に用いることが示唆されている。HSV1−TKは系統発生学的には、ヒトTK2には関連するがヒトTK1には関連しない。ジドブジンの抗ウィルス活性を改善するためにHSV1−TKを使用することも示唆されており、HSV1−TKをAZTと組み合わせて用いることで、形質転換された大腸菌を殺傷できることが示されている。しかしながら、AZTMPのリン酸化は、ヒトにおけるAZT活性化の律速段階であるとされているために、ヒト癌において、または他のヒト異常細胞増殖関連疾患において使用するための、AZTとチミジンキナーゼとの効果的な組み合わせを得るための実験は一切行われていない。
【非特許文献1】Hemayet Ullah, Dominique Robertson, and Roger C. Fites: A Gene for Thymidine Kinase in Plants (Accession No. AF066050; Plant gene register PGR99-048) Plant Physiol. 1999 119 1567
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ヌクレオシドアナログを毒性物質に変換するために有用な、またヌクレオシドアナログをモノホスフェート塩に、またヌクレオシドアナログモノホスフェート塩を対応するジホスフェート塩に変換するのに有用な新規の植物チミジンキナーゼを提供することを目的とする。単離植物チミジンキナーゼ遺伝子は、遺伝子を含有し(かつ少なくとも1つのヌクレオシドアナログに暴露された)細胞を選択的に殺すための遺伝子治療において用いることができ、本発明によって提供される単離チミジンキナーゼは、産業上重要なヌクレオシド及び(又は)ヌクレオシドアナログのリン酸化工程のために用いることができる。単離チミジンキナーゼは、酵素を細胞に注入し、細胞を少なくとも1つのヌクレオシドアナログにあてることにより細胞を殺すために用いることもできる。ヌクレオシドアナログ及び(又は)そのモノホスフェートという場合、このヌクレオシドアナログは好ましくはデオキシヌクレオシドアナログ、より好ましくはデオキシリボヌクレオシドアナログ、より好ましくはAZTであるとする。
【0011】
より詳細には、本発明は、異常細胞増殖を治療するためのチミジンキナーゼとヌクレオシドアナログAZTとの独自の組み合わせを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、第1の実施態様において、本発明は、マツ(Pinus taeda), コメ(Oryza sativa)又はトマト(Lycopersicum esculentum)に由来する植物チミジンキナーゼ酵素をコードする単離ポリヌクレオチドを提供する。これらの直物チミジンキナーゼは、AZTをリン酸化するのに特に有効であり、特にAZTMPなどのヌクレオシドアナログモノホスフェートに対する、予想されていなかった高い内在性モノホスフェートキナーゼ活性を有することがわかった。
【0013】
別の実施態様において、本発明は植物由来のチミジンキナーゼ酵素をコードする単離ポリヌクレオチドを提供し、該チミジンキナーゼ酵素は、ヒトI型単純ヘルペスウィルスチミジンキナーゼ(HSV1−TK)と比べた場合、そして真核細胞に形質導入するとすぐに、少なくとも1つのヌクレオシドアナログのIC50を少なくとも4倍減少させる。これまで、植物チミジンキナーゼに対してそれほど低いIC50が報告された例はない。好ましくは、このヌクレオシドアナログはAZTである。
【0014】
第3の実施態様において、本発明は植物由来のチミジンキナーゼ酵素をコードするポリヌクレオチドを提供し、前記チミジンキナーゼ酵素は、少なくとも1つのヌクレオシドアナログモノホスフェートを、チミジンモノホスフェートよりも高度にリン酸化することができる。好ましくは、アナログモノホスフェートはAZTモノホスフェートである。より好ましくは、前記キナーゼは本質的にチミジンモノホスフェートをリン酸化することができない。内在性モノホスフェートキナーゼ活性は、これまで植物チミジンキナーゼに対しては報告されていない。この活性を有する場合、キナーゼは癌治療などの医療用途や自滅系に対する良好な候補になる。したがって、チミジンモノホスフェートに対するよりも、AZTモノホスフェートに対して高い基質特異性を有することにより、AZTモノホスフェートは、より高速でジホスフェートに変換される。
【0015】
第4の実施態様において、本発明は、植物に由来するチミジンキナーゼ酵素をコードするポリヌクレオチドを提供し、前記チミジンキナーゼ酵素の[kcat/K(Thd)]/[kcat/K(AZT)]比は2より小さい。このような低い比を有するチミジンキナーゼは、公知のチミジンキナーゼよりも、Thdに比しAZTのリン酸化に相対的により効率的である。
【0016】
第5の実施態様において、本発明は植物に由来するチミジンキナーゼ酵素をコードするヌクレオチドを提供し、前記チミジンキナーゼ酵素は、発現し、そしてヒトI型単純ヘルペスウィルスチミジンキナーゼ(HSV1−TK)と比べた場合、[kcat/K(Thd)]/[kcat/K(少なくとも1つのヌクレオシドアナログ)]の比率が少なくとも5倍減少し、該アナログは任意のヌクレオシドアナログである。このような植物由来のチミジンキナーゼは、癌もしくは他の哺乳動物の異常細胞増殖関連疾患の治療において、または自滅系において、同様の目的に対する従来技術の最の信頼度の高い酵素であるヒトI型単純ヘルペスウィルスチミジンキナーゼの場合に比べて、より効率的である。
【0017】
第6の実施態様において、本発明は植物に由来するチミジンキナーゼ酵素変種をコードする単離された変異及び(又は)切断ポリヌクレオチドを提供し、前記チミジンキナーゼ酵素変種は、ヒトI型単純ヘルペスウィルスチミジンキナーゼ(HSV1−TK)に比べて、真核または細菌細胞内に形質導入された際に、少なくとも1つのヌクレオシドアナログのIC50を少なくとも4倍減少させる。変異及び(又は)切断チミジンキナーゼは、ヌクレオシドアナログに対する基質特異性及び(又は)安定性が改善されている。
【0018】
第7の実施態様において、本発明は本発明のポリヌクレオチドによって発現されるチミジンキナーゼ酵素、または本発明の変異(及び(又は)切断)ポリヌクレオチドによって発現されるチミジンキナーゼ酵素変種を提供する。
【0019】
第8の実施態様において、本発明は、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana), マツ (Pinus taeda),トマト (Lycopersicum esculentum) 又はコメ (Oryza sativa)に由来する植物チミジンキナーゼ酵素を提供する。
【0020】
第9の実施態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドと、該ポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモータとを含むベクター構築物を提供する。
【0021】
第10の実施態様において、本発明は、本発明のベクターを含む感染性ビリオンを産生することのできるパッケージング細胞株を提供する。
【0022】
第11の実施態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドまたは本発明の発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0023】
第12の実施態様において、本発明は、本発明の植物チミジンキナーゼ酵素、本発明のポリヌクレオチドまたは本発明のパッケージング細胞株と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む薬学的調合物を提供する。
【0024】
第13の実施態様において、本発明は、細胞をプロドラッグに対して感作させる方法を提供し、該方法は、(i)細胞に、前記プロドラッグの(細胞毒)薬物への変換を促進する植物チミジンキナーゼ酵素をコードするポリヌクレオチド配列を用いてトランスフェクションまたは形質導入するか、あるいは何らかの方法で細胞内に植物チミジンキナーゼを運搬(deliver)する工程と、(ii)プロドラッグを前記細胞内に運搬する工程とを含み、前記細胞はプロドラッグよりも(細胞毒)薬物により感受性が高い。
【0025】
第14の実施態様において、本発明は、温血動物における病原性物質を阻害する方法を提供し、該方法は、当該動物に本発明のポリヌクレオチドまたは本発明のベクターを投与することを含む。
【0026】
第15の実施態様において、本発明は、ヌクレオシドまたはヌクレオシドアナログのリン酸化のための、本発明の植物チミジンキナーゼ酵素の用途に関する。
【0027】
第16の実施態様において、本発明は、ヌクレオシドまたはヌクレオシドアナログのリン酸化方法を提供し、該方法は、(i)前記ヌクレオシドまたはヌクレオシドアナログに、本発明の植物チミジンキナーゼ酵素を作用させる工程と、(ii)リン酸化されたヌクレオシドまたはヌクレオシドアナログを回収する工程とを含む。
【0028】
第17の実施態様において、本発明は、植物の成長を制御または改変する方法に関し、前記植物は、本発明の植物チミンキナーゼ酵素をコードするポリヌクレオチドを含む植物細胞を含み、前記方法は、植物または植物細胞をヌクレオシドまたはヌクレオシドアナログに曝露する工程を含む。
【0029】
さらなる実施態様において、本発明は、ヌクレオシドアナログ、本発明による植物由来チミジンキナーゼもしくは前記植物由来チミジンキナーゼをコードする遺伝子、または前記植物由来チミジンキナーゼをコードする遺伝子を含むベクターを、癌治療において、同時、分割または連続投与のための組み合わせとして含んだ製品を提供する。
【0030】
さらなる実施態様において、本発明は、本発明のチミジンキナーゼ、前記チミジンキナーゼをコードする遺伝子、および前記チミジンキナーゼを発現するベクターおよび宿主細胞の、医療用途に関する。さらに、本発明は前記酵素、遺伝子、ベクターおよび細胞の、ヒトにおける異常細胞増殖関連疾患の治療のための医薬品の調製のための用途、好ましくは前記疾患が癌である場合の用途に関する。
【0031】
本発明の他の目的は、以下の詳細な説明および実施例から当業者には明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
(植物チミジンキナーゼ)
第1の実施態様において、本発明は、チミジンキナーゼ(TK)酵素活性を有する新規のタンパク質を提供し、前記タンパク質は植物に由来する。より詳細には、新規の植物チミジンキナーゼ酵素は、種子植物(Spermatophyta),特にマツ (Pinus taeda), トマト (Lycopersicum esculentum), コメ (Oryza sativa), 及び(又は) シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)に由来する。
【0033】
また、驚くべきことに、シロイヌナズナからは、本明細書中ではAT−TK1aおよびAT−TK1bと呼ぶ2つの異なるチミジンキナーゼ酵素を単離できることが分かった。
【0034】
本発明において、「チミジンキナーゼ」は、実施例3、表5に記載したようなアッセイを用いて、チミジンをリン酸化することができるが、プリンヌクレオシドはリン酸化できない酵素のことをいう。チミジンキナーゼは、デオキシシチジンをリン酸化するものであってもなくてもよい。
【0035】
本発明のチミジンキナーゼ酵素は、ヌクレオシドアナログ、特にATZを活性化することにより異常細胞増殖の治療に特に有用である。
【0036】
トマト、マツ、およびコメのチミジンキナーゼのClustal W(1.82)マルチプルアミノ酸配列アライメントに基づいて、下記の表1に示すように、3つのモチーフと、いくつかの保存された残基、保存性の高い残基、保存性の低い残基を同定した。表1において、アライメントは、コメTK1のアミノ酸残基番号65から開始する。これは、最初の64残基に、他のチミジンキナーゼとのアライメントが見られないためである。
【0037】
表1
CLUSTAL W(1.82)マルチプルアミノ酸配列アライメント
【0038】
【表1】

【0039】
−モチーフを示す(モチーフI、モチーフIIおよびモチーフIII)
保存された残基を示す。
:保存性の高い残基を示す。
.保存性の低い残基を示す。
【0040】
したがって、好ましい実施形態において、本発明の植物チミジンキナーゼ酵素は、以下の3つのモチーフの1つまたはそれ以上を含む。
Val Ile Gly Ile Asp Glu Ala Gln Phe Phe (モチーフ I)
Val Ala Gly Leu Asp Gly (モチーフII)
Tyr Met Pro Val Cys Arg (モチーフIII)
別の好ましい実施形態において、本発明の植物チミジンキナーゼ酵素は、下記のLid領域を含む。
【0041】
Val A1 Lys Leu A2 A3 Arg Cys Glu A4(Lid領域)。式中、A1はThrおよびValから選択され、A2はThrおよびLysから選択され、A3はAlaおよびSerから選択され、A4はLeuおよびValから選択される。
【0042】
より好ましい実施形態において、本発明の植物チミジンキナーゼ酵素は、表1で同定したすべての保存残基を含む。
【0043】
ポリペプチドの同一性
より好ましい別の実施形態において、本発明の植物チミジンキナーゼ酵素は、SEQ ID NO:2として、SEQ ID NO:4として、SEQ ID NO:5として、SEQ ID NO:7として、SEQ ID NO:9として、SEQ ID NO:11として、もしくはSEQ ID NO:13として表されるアミノ酸配列、またはSEQ IDの全長にわたって判定した場合に、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%の同一性、最も好ましくは少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0044】
本発明において、「同一性」とは、アミノ酸配列の相同性の程度の尺度のことをいう。同一性を明らかにするために、最も高度な相同性(一致)が得られるように対象配列のアライニングを行う。これら一般的な原理に基づいて、2つのアミノ酸配列の「同一性百分率」を、国立バイオテクノロジー情報センター(the National Center for Biotechnology Information (NCBI))のウェブサイトより入手可能なBLASTPアルゴリズム[Tatiana A. Tatusova, Thomas L. Madden: Blast 2 sequences - a new tool for comparing protein and nucleotide sequences; FEMS Microbiol. Lett.1999 174 247-250]を用いて、またそこに示唆されているデフォルト設定(すなわち、Matrix = Blosum62; Open gap = 11; Extension gap = 1; Penalties gab x_dropoff = 50; Expect = 10; Word size = 3; Filter on)を用いて決定する。BLASTアルゴリズムは、2つのアライニングした配列間の重複する範囲内における配列同一性%を求める。本発明の目的のために、配列同一性の百分率は、少なくとも50アミノ酸、より好ましくは少なくとも75アミノ酸、より好ましくは少なくとも100アミノ酸が重複する範囲において算出され、前記範囲はデフォルト設定下においてBLASTPによって計算される。
【0045】
このBLASTP比較の結果を表2に示す。
【0046】
表2
異なる植物を起源とするチミジンキナーゼのタンパク質配列のBLASTP比較
【0047】
【表2】

【0048】
同一性(%)/陽性(%)/比較した断片の長さ
マツ(Pinus taeda)チミジンキナーゼ
トマト(Lycopersicum esculentum)チミジンキナーゼ
コメ(Oryza sativa)チミジンキナーゼ
シロイヌナズナ (Arabidopsis thaliana)チミジンキナーゼ(a)および(b)
好ましい実施形態において、本発明の植物チミジンキナーゼ酵素は、マツに由来し、SEQ ID NO:2に示した配列に対して、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%の配列同一性を少なくとも有する。
【0049】
他の好ましい実施形態において、本発明の植物チミジンキナーゼ酵素はトマトに由来し、SEQ ID NO:4または5のいずれかに示した配列に対して、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%の配列同一性を少なくとも有する。
【0050】
第3の好ましい実施形態において、本発明の植物チミジンキナーゼ酵素はコメに由来し、SEQ ID NO:7の配列に対して、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%の配列同一性を少なくとも有する。
【0051】
第4の好ましい実施形態において、本発明の植物チミジンキナーゼ酵素はシロイヌナズナに由来し、SEQ ID NO:9または11の配列に対して、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%の配列同一性を少なくとも有する。
【0052】
第5の好ましい実施形態においても、本発明の植物チミジンキナーゼ酵素はシロイヌナズナに由来し、SEQ ID NO:13の配列に対して、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%の配列同一性を少なくとも有する。
【0053】
変種ポリペプチド
最も好ましい実施形態において、本発明の植物チミジンキナーゼ酵素は、SEQ ID NO:2として、SEQ ID NO:4として、SEQ ID NO:5として、SEQ ID NO:7として、SEQ ID NO:9として、SEQ ID NO:11として、あるいはSEQ ID NO:13として示されるアミノ酸配列またはその機能的アナログを含む。
【0054】
本発明において、「機能的アナログ」という用語は、チミジンキナーゼ活性を有するとともに、1種以上のアミノ酸位置において、SEQ ID NO:2として、SEQ ID NO:4として、SEQ ID NO:5として、SEQ ID NO:7として、SEQ ID NO:9として、SEQ ID NO:11として、またはSEQ ID NO:13として示される配列とは異なるアミノ酸配列を有するポリペプチド(またはタンパク質)を意味する。このような類似ポリペプチドとしては、保存性置換、スプライス変種、アイソフォーム、他の種のホモログ、および多形を含むポリペプチドが含まれる。
【0055】
本明細書中での定義として、「保存性置換」という用語は、あるアミノ酸残基を、別の生物学的に類似した残基に置換することをいう。保存性置換の例としては、
(i)アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、メチオニン、フェニルアラニンまたはトリプトファンなどの1つの非極性または疎水性残基による別のものの置換、特に、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリンまたはプロリンによる別のものの置換。
【0056】
(ii)セリン、スレオニン、チロシン、アスパラギン、グルタミンまたはシステインなどの1つの中性の(非荷電)極性残基による別のものの置換、特に、リジンからアルギニンへの置換、アスパラギン酸からグルタミンへの置換、またはアスパラギンからグルタミンへの置換。
【0057】
(iii)リジン、アルギニンまたはヒスチジンなどの正に荷電した残基による別のものの置換。あるいは、
(iv)アスパラギン酸やグルタミン酸などの負に荷電した残基による別のものの置換。
【0058】
保存性置換という用語は、置換ポリペプチドに対して産生された抗体が非置換ポリペプチドとも免疫反応する場合には、親アミノ酸残基の代わりに置換アミノ酸を使用することも含む。
【0059】
この一次アミノ酸配列の改変により、改変前の相手方ポリペプチドと比べて、実質的に同等の活性を有し、親タンパク質の機能的アナログと考えられるタンパク質が得られる。このような改変は、例えば、部位特異的変異による意図的なものであってもよいし、あるいは、偶発的に発生するものであってもよく、スプライス変種、アイソフォーム、他の種からのホモログ、および多形が含まれる。このような機能的アナログも、本発明に従って考慮される。
【0060】
C末端欠失
他の実施形態において、本発明は親(野生型)酵素と比べた場合に、C末端が欠失した植物チミジンキナーゼ酵素を提供する。このような切断された酵素は、例えば部位特異的変異や、実施例に記載したような従来の技術によって得ることができる。
【0061】
本発明によれば、C末端欠失によって、野生型酵素に比べて、酵素の特性が改善、特に安定性の向上及び(又は)基質特異性の改善が見られることが分かっている。
【0062】
より好ましい実施形態において、本発明は、1〜60のアミノ酸残基、好ましくは1〜50のアミノ酸残基、より好ましくは1〜40のアミノ酸残基、より好ましくは1〜30のアミノ酸残基、さらに好ましくは1〜26のアミノ酸残基、最も好ましくは1〜24のアミノ酸残基のオーダー(order)でC末端欠失を有する、チミジンキナーゼ酵素を提供する。
【0063】
より好ましい実施形態において、本発明の植物チミジンキナーゼ酵素は、26アミノ酸残基のC末端欠失を有するトマト由来のチミジンキナーゼ酵素である。最も好ましい実施形態において、本発明の植物チミジンキナーゼ酵素は、SEQ ID NO:5のアミノ酸配列を有するチミジンキナーゼ酵素である。
【0064】
さらに好ましい実施形態において、本発明の植物チミジンキナーゼ酵素は、24アミノ酸残基のC末端欠失を有するシロイヌナズナ由来のチミジンキナーゼ酵素である。最も好ましい実施形態において、本発明の植物チミジンキナーゼ酵素は、SEQ ID NO:11のアミノ酸配列を有するチミジンキナーゼ酵素である。
【0065】
N末端欠失
N末端欠失、特に、AT−TK1b(SEQ ID NO:13)の、N末端22アミノ酸残基の欠失およびN末端45アミノ酸の欠失、またはN末端63アミノ酸の欠失についても考える。これらのアミノ酸は、推定オルガネラシグナルペプチドを構成する。実施例4(表8)で証明されたように、これらのN末端アミノ酸の欠失は、AZTに対するLD100を減少させる。
【0066】
植物チミジンキナーゼをコードするポリヌクレオチド
他の実施態様において、本発明はマツ、トマト、コメまたはシロイヌナズナに由来する植物チミジンキナーゼ酵素、好ましくは上述の植物チミジンキナーゼ酵素をコードする単離ポリヌクレオチドを提供する。
【0067】
ハイブリダイゼーションプロトコール
好ましい実施形態において、本発明の単離ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:1として、SEQ ID NO:3として、SEQ ID NO:6として、SEQ ID NO:8として、SEQ ID NO:10として、SEQ ID NO:12表されるポリヌクレオチド配列、またはそれらの相補鎖とハイブリダイズすることができる。
【0068】
ハイブリダイゼーションは、少なくとも低いストリンジェンシー条件下、好ましくは中程度または高ストリンジェンシー条件において行うべきである。
【0069】
低、中程度または高いストリンジェンシー条件下でそれぞれ、ヌクレオチドプローブとホモログDNAまたはRNA配列との間でのハイブリダイゼーションを判定するための適切な実験条件には、ハイブリダイズさせるDNA断片またはRNAを含むフィルタを、5×SSC[塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム;Sambrook等; Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Lab., Cold Spring Harbor, NY 1989を参照のこと]中に10分間、前含浸させ、5×SSC溶液、5×デンハルト溶液[Sambrookら;Op cit.を参照]、0.5%SDSおよび100μg/mlの変性させた超音波破砕サケ精子DNA[Sambrookら;Opcit.を参照]の中でフィルタをプレハイブリダイゼーションさせ、次いで、10ng/mLの濃度のランダムプライム[Feinberg A P & Vogelstein B; Anal. Biochem. 1983 132 6-13]、32P-dCTP標識したプローブ(比活性>1×10cpm/μg)を含む上記と同じ溶液中で12時間、約45℃ハイブリダイゼーションさせることを含む。
【0070】
次にこのフィルタを、少なくとも55℃(低ストリンジェンシー条件)において、より好ましくは少なくとも60℃(中程度のストリンジェンシー条件)において、さらに好ましくは少なくとも65℃(中程度/高ストリンジェンシー条件)、さらに好ましくは少なくとも70℃(高ストリンジェンシー条件)において、さらに好ましくは少なくとも75℃(超高ストリンジェンシー条件)において、2×SSC,0.5%SDS中で30分間、二度洗浄する。
【0071】
相補核酸またはシグナル核酸は、ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドの存在を検出するための技術上周知の従来の方法によって、標識してもよい。最も一般的な検出方法は、例えば3H, 125I, 35S, 14C 又は 32Pで標識したプローブをオートラジオグラフィーとともに使用することであり、前記プローブはX線フィルムを用いて検出することができる。他の標識としては、標識された抗体に結合するリガンド、フルオロフォア、化学発光物質、酵素、または抗体があげられ、これらは、標識されたリガンドに対する特異的結合対メンバーとして機能しうる。
【0072】
DNA配列の同一性
他の好ましい実施形態において、本発明の単離ポリヌクレオチドは、SEQ ID NOの全長にわたって判定した場合に、SEQ ID NO:1として、SEQ ID NO:3として、SEQ ID NO:6として、SEQ ID NO:8として、SEQ ID NO:10またはSEQ ID NO:12として表されるポリヌクレオチド配列に対して、少なくとも73%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%の同一性を有する。本発明のために、配列同一性の百分率は、BLASTNが少なくとも100ヌクレオチドの重複範囲を与えた場合に算出され、該範囲はデフォルト設定において決定される。より好ましくは、重複範囲は少なくとも150ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも225ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも300ヌクレオチドである。
【0073】
本発明において「同一性」とは、ヌクレオチド配列の相同性の程度の尺度のことをいう。同一性を明らかにするために、最も高度な相同性(一致)が得られるように対象配列のアライニングを行う。これら一般的な原理に基づいて、2つのアミノ酸配列または2つの核酸の「同一性百分率」を、国立バイオテクノロジー情報センター(the National Center for Biotechnology Information (NCBI))のウェブサイトより入手可能なBLASTNアルゴリズム[Tatiana A. Tatusova, Thomas L. Madden: Blast 2 sequences - a new tool for comparing protein and nucleotide sequences; FEMS Microbiol. Lett. 1999 174247-250]を用いて、またそこに示唆されているデフォルト設定(すなわち、Reward for a match = 1; Penalty for a match = -2; Strand option = both strands; Open gap = 5; Extension gap = 2; Penalties bap x_dropoff = 50; Expect = 10; Word size = 11; Filter on)を用いて決定する。BLASTNアルゴリズムは、2つのアライニングしたヌクレオチド配列間の重複する範囲内における配列同一性%を求める。本発明の目的のために、配列同一性の百分率は、少なくとも100ヌクレオチドの重複領域において算出され、該範囲はデフォルト設定下でBLASTNによって決定される。より好ましくは、重複範囲は少なくとも300ヌクレオチドである。
【0074】
このBLASTN比較の結果を表3に示す。
【0075】
表3
異なる植物起源のチミジンキナーゼのヌクレオチド配列のBLASDTN比較
【0076】
【表3】

【0077】
同一性(%)/比較した断片の長さ
N末端とC末端断片に分割
◇有意な類似性見られず
マツ(Pinus taeda)チミジンキナーゼ
トマト(Lycopersicum esculentum)チミジンキナーゼ
コメ(Oryza sativa)チミジンキナーゼ
シロイヌナズナチミジンキナーゼ(a)および(b)
類似DNA配列
その最も好ましい実施形態において、本発明の単離ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:1として、SEQ ID NO:3として、SEQ ID NO:6として、SEQ ID NO:8として、SEQ ID NO:10として、またはSEQ ID NO:12として表されるポリヌクレオチド配列、またはその機能的アナログを含む。
【0078】
本発明において、「機能的アナログ」という用語は、保存的に改変されたポリヌクレオチド、および機能的に等価なポリヌクレオチドをコードするポリヌクレオチドをカバーする。
【0079】
本発明において、「保存的に改変されたポリヌクレオチド」という用語は、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸のことをいうが、あるいは核酸がアミノ酸をコードしない場合には本質的に同一の配列のことをいう。
【0080】
遺伝コードの縮退のために、多数の機能的に同一の核酸が任意の所与のタンパク質をコードしている。例えば、コドンGCA,GCC,GCGおよびGCUのすべてが、アミノ酸アラニンをコードしている。したがって、アラニンがコドンによって特定されるあらゆる位置において、このコドンは、コードされるポリペプチドを変えることなく、上述の対応するコドンのいずれに変えることができる。このような核酸の変異は「サイレント変異」であり、サイレント変異は、保存的改変変異の一種である。本明細書中のポリペプチドをコードするすべての核酸配列は、核酸のあらゆる可能なサイレント変異のこともさしている。当業者であれば、核酸内の各コドン(通常はメチオニンに対する唯一のコドンであるAUGを除く)は、機能的の同等の分子を産生するように改変することができることを認識するであろう。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、記載した各配列に含意される。
【0081】
発現ベクター
第3の実施態様において、本発明は、本発明の単離ポリヌクレオチドと、該ポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモータとを含む組換え発現ベクターを提供する。
【0082】
本発明の発現ベクターは、好ましくは真核生物における発現を行うのに適したものである。
【0083】
より好ましい実施形態において、本発明の発現ベクターはウィルスベクター、特にI型単純ヘルペスウィルスベクター、アデノウィルスベクター、アデノウィルス関連ウィルスベクター、レンチウィルスベクター、レトロウィルスベクターまたはワクシニアウィルスベクターである。
【0084】
パッケージング細胞株
第4の実施態様において、本発明は、感染性ビリオンを産生することのできるパッケージング細胞株を提供し、該細胞株は本発明のベクターを含む。
【0085】
パッケージング細胞とは、組換えウィルスベクターには欠失しているが感染性組換えウィルスの産生に必要な要素を含んだ細胞のことをいう。パッケージング細胞株の調製方法は従来技術において知られている。
【0086】
宿主細胞
第5の実施態様において、本発明は、本発明の単離ポリヌクレオチド、または本発明の発現ベクターを含む単離宿主細胞を提供する。
【0087】
好ましい実施形態において、本発明の宿主細胞は、細菌細胞、好ましくは真核細胞、特に哺乳動物細胞、ヒト細胞、卵母細胞または酵母細胞である。
【0088】
より好ましい実施形態において、本発明の宿主細胞はヒト細胞、イヌ細胞、サル細胞、ラット細胞、ブタ細胞またはマウス細胞である。
【0089】
薬学的調合物
第6の実施態様において、本発明は、治療上有効な量の本発明の植物チミジンキナーゼ酵素または本発明の宿主細胞と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む新規の薬学的調合物に関する。
【0090】
治療に使用するために、本発明の植物チミジンキナーゼ酵素は、任意の都合のよい形態で投与できる。好ましい実施形態において、本発明の植物チミジンキナーゼ酵素を、1種以上の佐剤、賦形剤、担体及び(又は)希釈剤とともに薬学的調合物に組み込むが、薬学的調合物は技術上周知の従来の方法を用いて当業者によって調製される。
【0091】
このような薬学的調合物は、本発明の植物チミジンキナーゼ酵素または植物チミジンキナーゼに対する抗体を含むことができる。組成物は、単独で投与してもよいし、1種以上の他の物質、薬剤またはホルモンと組み合わせて投与できる。
【0092】
本発明の薬学的調合物は、任意の適切な経路によって投与することができるが、そのような経路としては、限定はされないが、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、脊髄内、くも膜下、心室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、経腸、局所、舌下または直腸投与、口腔内、腟内、眼窩内、脳内、頭蓋内、髄腔内、心室内、大槽内、嚢内、肺内、経粘膜または吸入を介するものが挙げられる。
【0093】
調合物及び投与方法に関する更に詳しい説明は、Remington’s Pharmaceutical Sciences (Maack Publishing Co., Easton, PA)の最新版中に見出される。
【0094】
当然、投薬量は、治療される個人の年齢、体重及び病態、並びに投与経路、投与形態及び療法、及び所望の結果に対して慎重に調整されねばならず、更にその正確な投与量は医師の裁量にまかせてよい。
【0095】
さらなる実施形態において、本発明の植物チミジンキナーゼは、下記治療方法において説明する細胞株およびベクターを用いて、遺伝子運搬によって投与できる。
【0096】
したがって、他の好ましい実施形態において、本発明は、本発明のポリヌクレオチド、または本発明のベクター、または本発明のパッケージング細胞、または本発明の宿主細胞と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む薬学的調合物を提供する。
【0097】
上記のような治療用細胞株を作成するためには、本発明のポリヌクレオチドを、例えばプラスミド、ウィルスまたは他の発現媒体などの発現ベクター中に挿入し、発現制御配列に適合するような条件下でコード配列の発現が達成されるように、ライゲーションによって発現制御配列に機能的に連結できる。
【0098】
適切な発現制御配列としては、プロモータ、エンハンサー、転写終結因子、開始コドン、イントロンに対するスプライシングシグナル、および停止コドンが挙げられ、これらのすべては、mRNAの適切な翻訳を行わせるように、本発明のポリヌクレオチドの適切なリーディングフレーム内に保持される。発現制御配列は、リーダー配列や融合パートナー配列などの追加の要素を含むこともできる。
【0099】
治療方法
ポリヌクレオチドおよびタンパク質、ポリペプチド、ペプチド断片またはそれらから製造される誘導体、ならびにそのようなタンパク質、ペプチドまたは誘導体に対する抗体に関する本発明は、ヒトを含む動物生体の疾患または疾病を治療または緩和するために用いることができ、前記疾患または疾病は、細胞毒物質の活性に応答する。
【0100】
疾患、疾病または病状は、特に癌またはウィルス感染でありうる。
【0101】
癌細胞は、急激に増殖する細胞であり、隣接する組織を浸潤して転移する能力を有し、したがって必要不可欠な体の部分の機能を侵害して、重篤な病気や死に至らしめる。通常の治療は外科手術、放射線および化学療法、ならびに最近では新奇の治療、遺伝子治療も行われるようになってきた。遺伝子特異的酵素プロドラッグ治療(GDEPT)において、遺伝子を癌細胞に運搬して、ここで発現させる。その後、対応する酵素は投与されたプロドラッグを活性系の変換して、細胞の増殖の進行を止める。GDEPT系の一つは、デオキシリボヌクレオシドキナーゼおよび様々なプロドラッグ、ヌクレオシドアナログに基づいている。
【0102】
本発明のポリヌクレオチドは、特に「自殺遺伝子」、すなわち薬物感受性遺伝子として使用できる。標的細胞へ自殺遺伝子を導入することにより、細胞は、正常細胞に対しての比較的非毒性の化合物または組成物に対して感受性になる。
【0103】
したがって、第7の実施態様において、本発明は標的細胞をプロドラッグに対して感作させる方法を提供し、該方法は、
(i)細胞に、前記プロドラッグの(細胞毒)薬物への変換を促進する植物チミジンキナーゼ酵素をコードするポリヌクレオチド配列を用いてトランスフェクションまたは形質導入するか、何らかの方法で細胞内に植物チミジンキナーゼを運搬する工程と、(ii)前記プロドラッグを前記標的細胞内に運搬する工程とを含み、前記標的細胞は前記プロドラッグよりも前記(細胞毒)薬物により感受性が高い。
【0104】
標的細胞は、任意の関心のある細胞であってよく、特にヒト細胞、イヌ細胞、サル細胞、ラット細胞、ネコ細胞、ブタ細胞またはマウス細胞であってよい。好ましくは標的細胞はヒト細胞である。
【0105】
その最も広義の実施態様において、任意の植物チミジンキナーゼ酵素を用いることができる。しかしながら、好ましい実施形態において、植物チミジンキナーゼ酵素をコードするポリヌクレオチド配列は、本発明のポリヌクレオチド配列である。
【0106】
より好ましい実施形態において、プロドラッグはヌクレオシドアナログである。
【0107】
本発明において、本発明に従って使用するのに好ましいヌクレオシドアナログは、アシクロビル(9−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−メチル−グアノシン)、ブシクロビル(9−(3,4−ジヒドロキシブチル)グアニン)、ファムシクロビル(2−[2−(2−アミノ−9H−プリン−9−イル)エチル]−1,3−プロパンジオールジアセテート)、ガンシクロビル(9−[2−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)エトキシル−メチル]−グアノシン)、ペンシクロビル、バルシクロビル、トリフルオロチミジン、AZT(3’−アジド−3’−デオキシチミジン)、AIU(5’−イオド−5’−アミノ−2’,5’−ジデオキシウリジン)、ara−A(アデノシン−アラビノシド;ビバラビン)、ara−C(シチジン−アラビノシド)、ara−G(9−β−D−アラビノフラノシルグアニン)、ara−T、1−β−D−アラビノフラノシルチミン、5−エチル−2’−デオキシウリジン、5−イオド−5’−アミノ−2,5’−ジデオキシウリジン、1−[2−デオキシ−2−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル]−5−イオドウラシル、イドクスウリジン(5−イオド−2’デオキシウリジン)、フルダラビン(2−フルオロアデニン9−ベータ−D−アラビノフラノシド)、ゲムシタビン、3’−デオキシアデノシン(3−dA)、2’,3’−ジデオキシイノシン(ddI)、2’,3’−ジデオキシシチジン(ddC)、2’,3’−ジデオキシチミジン(ddT)、2’,3’−ジデオキシアデノシン(ddA)、2’,3’−ジデオキシグアノシン(ddG)、2−クロロ−2’−デオキシアデノシン(2CdA)、5−フルオロデオキシウリジン、BVaraU((E)−5−(2−ブロモビニル)−1−β−D−アラビノフラノシルウラシル)、BVDU(5−ブロモビニル−デオキシウリジン)、FIAU(1−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)−5−イオドウラシル)、3TC(2’−デオキシ−3’−チアシチジン)、dFdCゲムシタビン(2’,2’−ジフルオロデオキシシチジン)、dFdG(2’,2’−ジフルオロデオキシグアノシン)、5−フルオロデオキシウリジン(FdUrd)、d4T(2’,3’ジデヒドロ−3’−デオキシチミジン)、ara−M(6−メトキシプリンアラビノヌクレオシド)、IudR(5−ヨード−2’デオキシウリジン)、CaFdA(2’−クロロ−2’−ara−フルオロ−デオキシアデノシン)、ara−U(1−β−D−アラビノフラノシルウラシル)、FBVAU(E)−5−(2’−ブロモビニル)−1−(2−デオキシ−2−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)ウラシル、FMAU1−(2−デオキシ−2−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)−5−メチルウラシル、FLT3’−フルオロ−2'−デオキシチミジン、5−Br−dUrd5−ブロモデオキシウリジン、5−Cl−dUrd5−クロロデオキシウリジンまたはdFdU2’,2’−ジフルオロデオキシウリジンからなる群より選択される。
【0108】
より好ましい実施形態において、本発明に従って用いるヌクレオシドアナログは、AZT(3’−アジド−3’−デオキシチミジン)である。
【0109】
本発明のチミジンキナーゼ酵素は、たとえば注射、移植または服用される薬学的調合物を介して、チミジンキナーゼ酵素に反応する病理学的過程を治療するように、直接的に使用できる。
【0110】
本発明のポリヌクレオチドは、その相補配列も含めて、本発明のチミジンキナーゼ酵素の発現のために用いることができる。このことは、本発明のタンパク質、ペプチドまたは誘導体を発現する細胞株によって、あるいは本発明のそのようなタンパク質、ペプチドまたは誘導体をコードするウィルスベクターによって、あるいはそのようなタンパク質、ペプチドまたは誘導体を発現する宿主細胞によって達成することができるこ。これらの細胞、ベクターおよび組成物は、細胞毒物質に応答する疾患過程に影響するように標的部位の治療に投与することができる。
【0111】
適切な発現ベクターは、単純ヘルペス、アデノウィルス、レンチウィルス、レトロウィルス、またはワクシニアウィルスに由来するウィルスベクターであってもよいし、あるいは様々な細菌によって生産されるプラスミドに由来するものであってもよく、また、全器官または標的とする器官、組織もしくは細胞集団へのヌクレオチド配列の生体内運搬のために用いることができる。他の方法としては、限定はされないが、リポソームトランスフェクション、エレクトロポレーション、核の信号または他の局在化信号を含んだ担体ペプチドによるトランスフェクション、および持続放出系を介しての遺伝子運搬が挙げられる。特異的細胞は、癌細胞に特異的なマーカーなどの細胞表面マーカーによって標的とすることができる。タンパク質およびベクターのいずれの構築物も、細胞表面マーカーを用いて細胞に対して標的化することができる。分割細胞は、分裂中の細胞にのみ感染するレトロウィルスベクターの形質導入により標的化することができる。
【0112】
本発明のさらに別の実施態様において、本発明のヌクレオチドに相補的な「アンチセンス」ヌクレオチド配列またはその一部を、チミジンキナーゼ酵素発現を阻害または強化するために用いることができる。
【0113】
別の好ましい実施形態において、本発明は、温血動物における病原性物質を阻害するための方法を提供し、該方法は、前記動物に、本発明のポリヌクレオチドまたは本発明の発現ベクターを投与する工程を含む。
【0114】
より好ましい実施形態において、ポリヌクレオチド配列または発現ベクターは、生体内投与される。
【0115】
別の好ましい実施形態において、病原性物質はウィルス、細菌または寄生虫、またはさらに腫瘍細胞である。
【0116】
別の好ましい実施形態において、病原性物質は自己反応性免疫細胞である。
【0117】
さらにより好ましい実施形態において、本方法は、ヌクレオシドアナログを前記温血動物に投与する工程をさらに含む。
【0118】
好ましくは、ヌクレオシドアナログは、上述のものから選択される。
【0119】
最も好ましい実施形態において、本発明に従って用いるヌクレオシドアナログは、AZT(3’−アジド−3’−デオキシチミジン)である。
【0120】
自殺系
本発明のチミジンキナーゼをコードする遺伝子の最も重要な用途の一つとして、細胞および遺伝子に基づく治療における自殺系としての用途がある。哺乳動物に対するあらゆるタイプの細胞および遺伝子治療において、移植細胞または遺伝子治療によって形質導入された細胞を不可逆的に殺すことのできる系が必要とされる。
【0121】
基本的に二つのタイプの細胞に基づいた治療があるが、これらのいずれも、本発明によるチミジンキナーゼに基づいた内蔵型自殺系を有することから利点を受ける。置換細胞治療においては、裸の細胞を対象に移植して、体内での自身の機能を完遂することができなくなった細胞または死細胞を置換する。一旦これらの細胞が移植され、対象の体に完全に一体化されると、外科的手段によってそれらを容易に除去することはできない。本発明のチミジンキナーゼが構造的または誘導的に発現される内蔵型自殺系を有することにより、細胞はAZTなどの治療上有効な量のヌクレオシドアナログを個体に投与することによって殺すことができる。移植された細胞が制御不能に増殖し始めた場合に、ヌクレオシドアナログを投与することができる。また、単にもうこれ以上細胞を置換する必要がなくなったという理由から、あるいは別の経路でそれ以上の治療を行うという理由から、治療を終わりたい場合もある。
【0122】
他のタイプの細胞に基づく治療としては、治療用細胞を体内に移植して、一定の場所において、例えば成長因子を分泌させることが挙げられる。このような治療用細胞はカプセル化されている場合が多く、また比較的簡単に体から除去することができるが、この場合も、外科手術を用いずに選択的に細胞を殺すことができるという理由から、自殺系を組み込むことが好ましい。
【0123】
生体内遺伝子治療において、同じ考察が置換細胞治療の場合にも当てはまる。自殺遺伝子の組み込みは、治療用遺伝子と、本発明によるチミジンキナーゼの両方を含むウィルスベクターの構築によって達成することができる。好ましくは、治療用遺伝子およびチミジンキナーゼを、随意でそれらをIRES構築物で分離することにより、同一のプロモータの制御下に挿入する。
【0124】
移植された細胞が移植前に条件付きで不死化されている場合には、腫瘍遺伝子が移植後に転写を開始させ、移植された細胞が腫瘍形成性になるという危険がある。この状況を抑制する手段が、本発明によって得られる。誘導可能なプロモータの制御下(例えば、Tetオン−オフ系、Mx1プロモータなど)での腫瘍遺伝子による形質導入によって細胞を不死化させるときは必ず、チミジンキナーゼを同じプロモータの制御下にある(あるいはIRES構築物を用いて)ベクター構築物内に挿入する。これにより、腫瘍遺伝子が転写されるたびに、チミジンキナーゼも転写されて、形質導入された腫瘍形成性細胞をAZTなどのヌクレオシドアナログを投与することにより、選択的に殺すことができるようになる。
【0125】
ヌクレオシドのリン酸化方法
本発明のチミジンキナーゼ酵素には、治療およびバイオテクノロジー用途を含む様々な利用性が考えられる。
【0126】
第8の実施態様において、本発明は、本発明の植物チミジンキナーゼ酵素を、ヌクレオシドまたはヌクレオシドアナログをリン酸化するために用いることに関する。
【0127】
好ましい実施形態において、本発明は、ヌクレオシドまたはヌクレオシドアナログをリン酸化するための方法を提供し、該方法は、
i)前記ヌクレオシドまたはヌクレオシドアナログに、本発明の植物チミジンキナーゼ酵素を作用させる工程と、
ii)リン酸化されたヌクレオシドまたはヌクレオシドアナログを回収する工程とを含む。
【0128】
特に、本発明のチミジンキナーゼは、ジデオキシグアノシンをリン酸化するために用いることができる。
【0129】
遺伝的に改変した植物
本発明のチミジンキナーゼ酵素は、植物の成長を改変または制御するための方法における利用性も見いだされている。したがって、さらなる実施態様において、本発明は、植物の成長を改変または制御するための方法に関し、前記植物は、本発明の植物チミンキナーゼ酵素をコードするポリヌクレオチドを含む植物細胞を含み、前記方法は、植物または植物細胞をヌクレオシドまたはヌクレオシドアナログ、好ましくはAZTに曝露する工程を含む。植物チミジンキナーゼの未知の特性、特に本発明に記載したような特性の発見によって、本発明者らは、ヌクレオシドアナログを除草剤として使用することを企図している。植物チミジンキナーゼは、ヌクレオシドアナログを非常に高速で毒性物質に変換するため、ヌクレオシドアナログは、これらのチミジンキナーゼを天然または異種遺伝子として有する植物に対する除草剤として使用することができる。本発明のチミジンキナーゼを、これらの特性を有するチミジンキナーゼを持たない植物に導入することにより、この植物をヌクレオシドアナログ、特にAZTに対して感受性にする。
【0130】
本発明の植物チミジンキナーゼ酵素をコードするポリヌクレオチドは、好ましくは異種ポリヌクレオチドであり、本発明の方法に供する植物は好ましくは遺伝子組換え植物である。
【0131】
したがって、さらなる実施態様において、本発明は、本発明の植物チミジンキナーゼ酵素をコードする発現可能な異種核酸を含む遺伝子組換え植物を提供し、前記異種核酸は、遺伝子組換え植物または該遺伝子組換え植物の原種に導入される。
【0132】
遺伝子組換え植物は、例えば本発明の発現ベクターを植物細胞に導入するなどの遺伝的に改変された植物を生成するための既知の技術によって得ることができる。
【0133】
任意の植物チミジンキナーゼをノックアウトするか、及び(又は)機能的に他のチミジンキナーゼに置換することもできるが、前記他のキナーゼは特定のヌクレオシドアナログ(例えば、作物中の)を変換することができない。次に、ヌクレオシドアナログは、この遺伝学的に改変された植物の周囲の雑草を殺すために用いることができる。
【0134】
本発明によって得られるどの形質転換植物も、従来の繁殖計画、または同一の特性を持つより多くの形質転換植物を産生するための体外繁殖において用いることができ、及び(又は)、同一種または関連種の他の変種に同じ特性を導入するために用いることができる。このような植物も本発明の一部である。形質転換された植物から得られる種子は同じ遺伝的特徴を含むので、これも本発明の一部を構成する。
【0135】
図面の簡単な説明
本発明を添付の図面によって更に説明する:
図1は、それぞれAT−TK1a(■)、AT−TK1b(●)およびHSV1−TK(▼)のdTMPキナーゼ活性(CPM)の経時変化(0〜120分)を示す。
【0136】
図2は、それぞれAT−TK1a(□)、AT−TK1b(○)およびHSV1−TK(▽)のAZTモノホスフェートキナーゼ活性(CPM)(0〜120分)を示す。
【実施例】
【0137】
以下の実施例によって本発明を詳述するが、これらの実施例は請求の範囲に記載された本発明の範囲を何ら限定することを意図していない。
【0138】
本発明は、添付の図面を参照してさらに説明する。
【0139】
例1
植物キナーゼを発現するレトロウィルスベクターの構築
植物キナーゼのcDNAをモロニーマウス白血病(MLV)ウィルスに基づくレトロウィルスベクター中にクローニングして、TK1キナーゼを含む複製欠失組換えレトロウィルスを作成した。
【0140】
DNA断片を、両側に計画的な制限酵素部位をもつプライマーを用いて、Pfuポリメラーゼ(Stratagene)によって増幅した。
【0141】
AT−TK1aに基づいたシロイヌナズナ構築物をBamHI/XhoIで切断し、トマトPCR断片をBglII/XhoIで切断し、ポリリンカーの上流にCMVプロモータを挿入することにより、プラスミドベクターpLCXSNのBglII−XhoI部位にクローニングした。プラスミドベクターpLCXSNは、pLXSN(Clontech,cat# K1060−B)に由来するレトロウィルス転移ベクターである。
【0142】
AtTK1(PZG53),AtTK1ΔC24(PZG56),TomTK1(PZG69)およびTomTK1ΔC26(PZG59)の4つの構築物が得られた。pLCXSN単独とHSV1−TKを含むベクター(BamHI/XhoI部位にクローニング)を対照として用いた。
【0143】
プラスミドをQiagenプラスミドキット(QIAGEN)を用いて精製し、構築されたプラスミドのDNA配列をDNA配列決定により確認した。
【0144】
以下のプライマー配列を用いた。
5’ ccg ctc gag atg gcg act ctc aaa gct tcc ttt ttg 3’ (AT TK1-for; SEQ ID NO: 14);
5’ cgc gga tcc tta gat tgt agc agc aac aca gga ttc 3’ (AT TK1-rev; SEQ ID NO: 15);
5’ cgc gga tcc tta aac aat atg att agt gat gta atg ctt g 3’ (AT TK1 DC; SEQ ID NO: 16);
5’ gga aga tct tta gac aga ttg tcc att aac ata gtg ctg 3’ (T TK1 DC; SEQ ID NO: 17);
5’ gga aga tct tta tgg atc aac tag tgg tga ttc taa g 3’ (T TK1-rev; SEQ ID NO: 18); and
5’ ccg ctc gag atg gct ttt tca tca tct gct aga aac 3’ (T TK1-for; SEQ ID NO: 19).
比較のために、ヒトI型単純ヘルペスウィルスチミジンキナーゼ(HSV1−TK)に対する発現プラスミドも構築した。ヒトHSV1に由来するチミジンキナーゼを、プライマー
5’ tat agg atc cgc cac cat ggc ttc gta ccc cgg c 3’ (HSV1-TK - for; SEQ ID NO: 20); 及び
5’ tat act cga gga ggt cga ctc agt tag cc 3’ (HSV1-TK - rev; SEQ ID NO: 21);
を用いて、また鋳型としてKarreman [Karreman C; Gene1998 218 57-62]によって記載されたプラスミドpCMV-pacTKを用いて増幅した。
【0145】
293Tパッケージング細胞(ATTC CRL−11268)を、OPTIMEM 1培地(Life Technologies,Inc.)中、37℃で培養した。構築されたpLCXSNプラスミドベクターを、業者によって提供されるプロトコールに従って、LipofectAMINE PLUS(Life Technology Inc.)を用いてパッケージング細胞中にトランスフェクトした。トランスフェクションから48時間後に、トランスフェクト細胞からの培地を回収し、0.45mmフィルタでろ過し、超遠心分離(50,000×g,4℃で90分)によりペレット状にし、TEN緩衝液(100mM NaCl,10mMトリス(pH7.5),1mM EDTA)中に溶解した。
【0146】
MOIが5の癌細胞株を形質導入するために、ウィルス含有緩衝液を引き続き用いた。
【0147】
細胞培養およびレトロウィルス形質導入
グリア芽腫U−87MG(ATCC HTB−14)およびグリア芽腫U−118MG(ATCC HTB−15)細胞を、American Type Culture Collectionより購入した。すべての細胞を、最小必須培地、E−MEM M(Bio Whittaker Cat.No.12−611)中で、10%(v/v)オーストラリア原産のウシ胎仔血清(Bio Whittaker Cat.No.14−701)および1mL/Lのゲンタマイシン(Bio Whittaker Cat.No.17−518L)とともに培養した。細胞を5%COの気相を有した加湿したインキュベータ中、37℃で培養した。
【0148】
細胞株に対して、5μg/mLのポリブレンと混合したレトロウィルス含有培地による形質導入を行い、48時間インキュベートした後、200μg/mLのゲネチシン(Life Technologies Inc.)の存在下で3週間連続培養した。
【0149】
細胞増殖アッセイ
細胞を1ウェルあたり1500〜2500個となるように、ポリ−L−リジンでコートした96ウェルプレート上にプレーティングした。24時間後、AZT(3’−アジド−3’−デオキシチミジン;Sigmaより市販)を添加したところ、ヌクレオシドアナログを含有する培地は変化しなかった。
【0150】
細胞生存率を、薬物曝露の5時間後にXTTアッセイ(Roche)によってアッセイした。
【0151】
各実験は4回繰り返して行った。検討した化合物のIC50値は、SigmaPlot(登録商標)(Dyrberg Trading,Karlslund,デンマーク)を用い、これら実験の平均値として算出し、以下の式に従って計算した。
【0152】
=Max/(1+([I]/IC50))
(式中、dは、XTTアッセイによって判定される阻害剤濃度における細胞増殖を示し;
Maxは、XTTアッセイによって判定される最大細胞増殖であり;
[I]は、阻害剤濃度を表し、
IC50(50%増殖阻害濃度)は、細胞増殖を50%阻害する用量を表す。)
AZTに対する感受性が向上した植物キナーゼの発現
非形質導入細胞の感受性と、レトロウィルスベクター単独またはAZTに対する植物キナーゼを含むベクターのいずれかで形質導入された細胞の感受性を判定した。
【0153】
細胞毒性(IC50)を薬物曝露から5日目に判定した。この測定結果を表4に示す。
【0154】
表4
グリア芽腫細胞株のAZT(mM)に対する感受性(IC50
50%の致死率をもたらす濃度を各構築物および親細胞株について示す。感受性増加率は親細胞株と比較したものである。
【0155】
【表4】

【0156】
親細胞株とpLCXSNベクター単独を形質導入した細胞の間での感受性の差異は、1倍未満であった。植物キナーゼを発現したいずれのグリア芽腫細胞株も、AZTに対する感受性の増加を示した。最も大きい増加は、トマトTK1を発現しているU−87MG細胞株に対して認められ、非形質導入細胞と比べてIC50がほぼ240倍低下した。
【0157】
例2
チミジンキナーゼのクローニング
本実施例では、本発明のトマト、マツ、コメおよびシロイヌナズナチミジンキナーゼをコードする遺伝子の同定の仕方、ならびに、様々なチミジンキナーゼを発現するためのベクターの構築の仕方について説明する。
【0158】
ヒトTK1への相同性に基づいて、トマトから得た2つの配列ACCN BE463259およびACCN BG129197(Clemson University Genomics Institute,米国より入手可能)、マツから得た配列ACCN AW755132(Dr.Ross Whetten,North Carolina State University,米国より入手可能)、およびコメから得た仮想TK1(ACCN AF066050)との相同性を有するEST,ACCN D24903(MAFF DNA Bank、日本の茨城県つくば市観音台2丁目1−2、305−8602より入手可能)を、NCBIウェブサイトより入手可能な局所ホモロジー検索ツール(tBLASTn)を用い、標準設定(すなわちFilter on,Expect=10,Word size=3,Matrix=Blosum62,Gap costs=Existence11 Extension1)を用いて同定した。
【0159】
プラスミド由来のプライマーから開始してインサートの配列を決定した。次に、新しく得られた配列データを基にしてプライマーを設計した。ACCN AU068889から得た配列情報と組み合わせたD249−3におけるインサートの配列から、AF066050において報告されているものよりも64アミノ酸長長いタンパク質に対するORFが推定された。
【0160】
トマトチミジンキナーゼ
トマトチミジンキナーゼのORFを下記のプライマー、5’ CGC GGA TCC ATG GCT TTT TCA TCA TCT GCT AGA AAC CCA GTT GAC CTG AG 3’ (1MS TOTK1-B; SEQ ID NO: 22)および
5’ CCG GAA TTC TTA TGG ATC AAC TAG TGG TGA TTC TAA G 3’ (2MS TOTK1-E; SEQ ID NO: 23)を用いて、また鋳型としてACCN BG129197を含有するプラスミドを用いてPCRにより増幅した。
【0161】
次に、このPCR断片をEcoRI/BamHIにより切断し、これもEcoRI/BamHIで切断しておいたpGEX−2Tベクター(Amersham−Pharmacia)にライゲーションした。得られたプラスミドをpGEX−2T−TOM−TK1と名付けた。
(シロイヌナズナチミジンキナーゼ(AT−TK1a))
シロイヌナズナ由来のTK1aのORF(アクセッション番号:AAF13097)を下記のプライマーを用いてcDNAライブラリー(Stragene)より増幅した; 5' CGC GGA TCC ATG GCG ACT CTC AAA GCT TCC TTT TTG ATC AAA ACC C 3' (1msAtTK1-B; SEQ ID NO: 24); 及び
5' CCG GAA TTC TTA GAT TGT AGC AGC AAC ACA GGA TTC AGC 3' (2msAtTK1-E; SEQ ID NO: 25)。
【0162】
次に、PCR断片をEcoRI/BamHIにより切断し、これもEcoRI/BamHIで切断しておいたpGEX−2Tベクター(Amersham−Pharmacia)にライゲーションした。得られたプラスミドをpGEX−2T−AT−TK1aと名付けた。
(シロイヌナズナチミジンキナーゼ(AT−TK1b))
シロイヌナズナ由来のTK1aのORF(アクセッション番号:BAB09824)を以下のような戦略を用いてcDNAライブラリー(Stragene)より増幅した。この場合、AT−TK1bのいくつかのN末端欠失変異体も得られた。
【0163】
全長ORF(ACCN BAB09824)を、下記のプライマーを用いてcDNAライブラリー(Stratagene)より増幅した。
5’ ATG AGA ACA TTA ATC TCA CCA TCT C 3’ (1mtAtTK1L; SEQ ID NO: 26); 及び 5’ CTA AAG TGA ACT TGC TAC AAC ACT ATG 3’ (2mtAtTK1L; SEQ ID NO: 27)。
【0164】
この全長PCR産物を、下記のプライマーを用いてBamHI/EcoRI突出部を有した断片を増幅するために用いた。
5’ CGC GGA TCC atg aga aca tta atc tca cca tct c 3’ (1mtAtTK1L-B; SEQ ID NO: 28); 及び
5’ CCG GAA TTC CTA AAG TGA ACT TGC TAC AAC AC 3’ (2mtAtTK1-E; SEQ ID NO: 29)。
【0165】
次にPCR断片を、EcoRI/BamHIによって切断し、同様にEcoRI/BamHIで切断しておいたpGEX−2Tベクター中にライゲーションした。得られたプラスミドをpGEX−2T−AT−TK1b(P661)と名付けた。
【0166】
同様にしてN末端欠失を作成し、pGEX−2T中にライゲーションした。下記のプライマーを用いて22アミノ酸のN末端欠失を得た。
5’ CGC GGA TCC tcc acc gct ctt cgc ttc tcc 3’(1mtAtTK1I-B; SEQ ID NO: 30); 及び
2mtAtTK1-E (SEQ ID NO: 29)。
【0167】
得られたプラスミドをpGEX−2T−AT−ΔN22TK1b(P662)と名付けた。
【0168】
下記のプライマーを用いて、45アミノ酸のN末端欠失を得た。
5’ CGC GGA TCC tcc acc aga aag cta caa acg 3’(1mtAtTK1-B; SEQ ID NO: 31); 及び2mtAtTK1-E (SEQ ID NO: 29)。
【0169】
得られたプラスミドをpGEX−2T−AT−ΔN45TK1b(P663)と名付けた。
【0170】
下記のプライマーを用いて、63アミノ酸のN末端欠失を得た。
5’ CGC GGA TCCcag ccg ctc tcc tcc tca tc 3’ (1mtATTK1S-B; SEQ ID NO: 32); and
2mtAtTK1-E (SEQ ID NO: 29)。
【0171】
得られたプラスミドをpGEX−2T−AT−ΔN63TK1b(P664)と名付けた。
【0172】
コメチミジンキナーゼ
コメ由来のチミジンキナーゼをプライマー
5' CGG GAT CCG GCG GCG GCG GCG GAC AAG TCT CG 3' (1osTK1s-B; SEQ ID NO: 33); 及び
5' CGG AAT TCT TAC TTG AAA GCA TGG ATA ACC TTG G 3' (2osTK1-E; SEQ ID NO: 34)を用いて、また鋳型としてD24903を用いて増幅した。
【0173】
次に、PCR断片をEcoRI/BamHIで切断し、同様にEcoRI/BamHIで切断しておいたpGEX−2Tベクター(Amersham−Pharmaciaより入手可能)中にライゲートした。得られたプラスミドをpGEX−2T−Rice−TK1と名付けた。
【0174】
HSV1チミジンキナーゼ(対照に使用)
HSV1由来のチミジンキナーゼはプライマー
5' CGC GGA TCC ATG GCT TCG TAC CCC GGC CAT C 3' (HSV1-for A; SEQ ID NO: 35); 及び
5' CCG GAA TTC TTA GTT AGC CTC CCC CAT CTC CCG 3' (HSV1-rev; SEQ ID NO: 36)を用いて、また鋳型としてKarreman [Karreman C; Gene1998 218 57-62]に記載のプラスミドpCMV-pacTKを用いて増幅した。
【0175】
次に、PCR断片をEcoRI/BamHIで切断し、同じくEcoRI/BamHIで切断しておいたpGEX−2Tベクター(Amersham−Pharmacia)中にライゲーションした。
【0176】
得られたプラスミドをpGEX−2T−HSV1−TKと名付けた。
【0177】
例3
組換え型チミジンキナーゼの発現と精製
本実施例では、チミジンキナーゼを発現させるための、実施例2で得られたプラスミドによるKY895の形質転換の仕方について説明する。
【0178】
KY895細胞は、例えばSambrook等. [Sambrook et al.; Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Lab., Cold Spring Harbor, NY 1989]に記載されるような標準的な技術を用いて、実施例2の発現プラスミドによって形質転換した。
【0179】
形質転換されたKY895を、OD600nmが0.5〜0.6になるまで、37℃にてLB/アンピシリン(100μg/mL)培地中で培養し、IPTGを100μMとなるように加えることにより、タンパク質発現を誘導した。細胞を25℃で4時間さらに培養してから、遠心分離により採取した。細胞ペレットを、プロテアーゼ阻害剤カクテル(EDTA非含有Complete(商標)、Roche Dignosticsより)の存在下、結合緩衝液A(20mM NaPO(pH7.3);150mM NaCl;10%グリセロール;および0.1%トリトンX−100)中で超音波破砕した。
【0180】
抽出物が4つの天然デオキシリボヌクレオシドをリン酸化することができるかどうかは、デオキシリボヌクレオシドの濃度を100μMに固定して調べた。各抽出物における最も高い比活性は、100%に設定した。括弧内は、100%に相当する比活性を、mU/mgの単位で示したものである。
【0181】
これらの評価の結果を表5に示す。
【0182】
表5
25℃にて0.1mM IPTGで4時間誘導したKY895細胞の抽出物中のデオキシリボヌクレオシドキナーゼ活性
【0183】
【表5】

【0184】
n.d.は、「検出されなかった」ことを表す。
【0185】
表中のデータは、すべての酵素がチミジンキナーゼであることを示す。
【0186】
抽出物を10,000×gで30分間遠心分離にかけ、濾過し、カラムに流した。その後、2本の1mLグルタチオン−セファロースカラム(Pharmaciaより入手可能)を組み合わせ、結合緩衝液A中で平衡化した。試料のローディング後、カラムを40mLの結合緩衝液Aで洗浄した。次に、カラムを5mLの(A)中10mM ATP/MgClで洗浄し、室温で1時間、続いて4℃で30分間インキュベートした。ATP/MgClを、10mLの結合緩衝液Aで洗浄することにより除去した。
【0187】
GST−タグタンパク質を、製造者(Pharmacia)のプロトコールに従ってトロンビン開裂により、GST結合カラム上のTKから開裂させる。
【0188】
精製されたTKの速度定数を、Munch-Petersen 等. [Munch-Petersen B, Knecht W, Lenz C, Sondergaard L, Piskur J: Functional expression of a multisubstrate deoxyribonucleoside kinase from Drosophila melanogaster and its C-terminal deletion mutants; J. Biol. Chem.2000 275 6673-6679] に記載されているようにして求めた。
【0189】
速度データは、Knecht等 [Knecht W, Bergjohann U, Gonski S, Kirschbaum B & Loffler M: Functional expression of a fragment of human dihydroorotate dehydrogenase by means of the baculovirus expression vector system and kinetic investigation of the purified recombinant enzyme; Eur. J. Biochem. 1996 240292-301]によって記載されているように、ミカエリス−メンテンの等式v=Vmax×[S]/(K+[S])またはヒルの等式v=Vmax×[S]/(K0.5+[S])を用いて非線形回帰分析によって評価した。Kはミカエリス常数であり、K0.5は、v=0.5Vmaxとなる基質濃度[S]の値であり、hはヒル定数[Cornish-Bowden A: Fundamentals of enzyme kinetics; Portland Press Ltd., London, 1995, pp. 33; and Liebecg C: IUBMB Biochemical nomenclature and related documents; Portland Press Ltd., London, 1992]である。
【0190】
表6
組換え型(r)植物キナーゼについてのThdに対する速度と基質濃度の関係
【0191】
【表6】

【0192】
Le Breton C: In-vitro study of novel deoxyribonucleoside kinases for gene therapy; B. Sc. Report, 2002, University of Paris VII / Technical University of Denmarkからのデータ
**Kokoris M S and Black M E: Characterization of Herpes Simplex Virus type 1 thymidine kinase mutants engineered for improved ganciclovir or acyclovir activity; Protein Science 2002 112267-2272からのデータ
表7
組換え型植物キナーゼについてのAZTに対する速度と基質濃度の関係
【0193】
【表7】

【0194】
表6および7は、植物TKが、Thdよりもより効率的に(kcat/K)AZTをリン酸化することを実証しており、AZTよりもはるかに効率的にThdをリン酸化するrHSV1−TKとは対照的である。トマト、シロイヌナズナおよびHSV1−TKに対する[kcat/K(Thd)]/[kcat/K(AZT)]比は以下の通りである。
rTOM-TK1 1.07
rAT-DN45TK1b 0.06
rAT-TK1a 0.08
rHSV1-TK 72.7
例4
ヌクレオシドアナログプレート上での形質転換大腸菌KY895の成長
本実施例では、実施例2に従って得られたプラスミドにより形質転換された宿主細胞が、ヌクレオシドアナログAZT(3’−アジド−3’−デオキシチミジン)の存在下において、どのようにしてプレート上で成長できるかについて説明する。
【0195】
実験は、Knecht 等 [Knecht, W., Munch-Petersen, B. & Piskur, J.: Identification of residues involved in the specificity and regulation of the highly efficient multisubstrate deoxyribonucleoside kinase from Drosophila melanogaster; J. Mol. Biol. 2000 301 827-837]に記載されているようにして行った。
【0196】
表8
AZT存在下におけるKY895細胞の増殖
【0197】
【表8】

【0198】
pGEX−2Tは、ベクターでありAmersham−Pharmaciaより市販されている;
pGEX−2T−Dm−dNKは、ショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)由来の多基質デオキシリボヌクレオシドキナーゼをコードする遺伝子を含むベクターであり、Munch-Petersen 等 [Munch-Petersen B, Knecht W, Lenz C, Sondergaard L, Piskur J: Functional expression of a multisubstrate deoxyribonucleoside kinase from Drosophila melanogaster and its C-terminal deletion mutants; J. Biol. Chem. 2000 275 6673-6679]Knecht等に記載されている;
pGEX−2T−Bm−dNKは、カイコ(Bombyx mori)由来のデオキシリボヌクレオシドキナーゼをコードする遺伝子を含むベクターであり、Knecht 等 [Knecht W, Ebert Petersen G, Munch-Petersen B, Piskur J: Deoxyribonucleoside kinases belonging to the thymidine kinase 2 (TK2) -like group vary significantly in substrate specificity, kinetics and feed-back regulation ; J. Mol. Biol. 2002 315529-540]によって記載されている;
pGEX−2T−hu TK1は、ヒトチミジンキナーゼ(TK1)をコードする遺伝子を含むベクターであり、Berenstein 等 [Berenstein D, Christensen J F, Kristensen T, Hofbauer R, Munch-Petersen B: Valine, not methionine, is amino acid 106 in human cytosolic thymidine kinase (TK1). Impact on oligomerization, stability, and kinetic properties; J. Biol. Chem. 2000 275(41) 32187-32192]に記載されている。
【0199】
表8は、トマトに由来するチミジンキナーゼが、ヌクレオシドアナログAZTとの組み合わせて判定すると最も強力であることを示している。この酵素は、単純ヘルペス由来のものよりも約30倍の活性を有する。
【0200】
例5
TK選択プレート上でのTK活性の試験
本実施例では、実施例2に記載したプラスミドで形質転換したKY895細胞を用いたチミジンキナーゼ活性の測定について説明する。
【0201】
チミジンキナーゼ活性に対する試験は、Knecht等 [Knecht, W., Munch-Petersen, B. & Piskur, J.: Identification of residues involved in the specificity and regulation of the highly efficient multisubstrate deoxyribonucleoside kinase from Drosophila melanogaster; J. Mol. Biol. 2000 301 827-837]に記載されたように行った。
【0202】
pGEX−2Tは、対照に用いたAmersham-Pharmaciaより市販されているベクターである。
【0203】
Munch-Petersen等 [Munch-Petersen B, Knecht W, Lenz C, Sondergaard L, Piskur J: Functional expression of a multisubstrate deoxyribonucleoside kinase from Drosophila melanogaster and its C-terminal deletion mutants; J. Biol. Chem. 2000 275 6673-6679]に従って、ミバエ科ショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)から得た多基質デオキシリボヌクレオシドキナーゼ(pGEX-2T-Dm-dNK)を正の対照として用いた。
【0204】
表9
TK選択プレート上の増殖
【0205】
【表9】

【0206】
+増殖あり
−増殖なし
n.d.検出されず
本実施例は、すべての酵素がチミジンをリン酸化できることを実証している。
【0207】
例6
ヌクレオシドモノホスフェートからヌクレオシドジホスフェートへのリン酸化
モノホスフェートキナーゼ活性は、本質的にMunch-Petersen 等.; J. Biol. Chem. 1998 273 7 3926-3931に記載されているように、チミジンキナーゼによって触媒される反応の生成物を測定することにより調べた。
【0208】
簡単に説明すると、チミジンを30nmol/分の速度でチミジンモノホスフェートに変換することを触媒する量の酵素(30mU)を、50mMトリス−HCl(pH8.0)(22℃);2.5mM MgCl;2.5mM ATP;10mMジチオスレイトール;0.5mM CHAPS;3mg/mLウシ血清アルブミン;および100μM 3H−標識基質(1.8Ci/mmol)の混合液100μL中でインキュベートした。
【0209】
5μLの反応混合液の時間試料を、5μLの5mMチミジン,TMP,TDPおよびTTPと混合した。この混合液5μLをポリエチレンイミン−セルロースプレート上にプレーティングし、これを0.5M LiCl中で上昇するように展開させた。ヌクレオシドおよびヌクレオチドを有したスポットをUV光の下で同定し、排除した。
【0210】
スポット内の放射活性は、0.1M HCl中の0.2M KClによって抽出し、液体シンチレーション計数により判定したところ、1pmol放射活性ヌクレオシド/チドは850cpmであった。
【0211】
組換え型チミジンキナーゼを実施例3に記載したように発現させ、精製した。
【0212】
本実験の結果を図1および図2に示す。示した時間(それぞれ15、30、60、90および120分)に得られたcpmは、2.5μLの反応混合液から得られるTDPスポットにおいて判定した。
【0213】
予想通り、HSV1−TKはいずれの基質もリン酸化するが、AZT−モノホスフェート基質のリン酸化の程度は、チミジン基質に比べて10倍低かった。しかしながら、驚くべきことに、植物TK1酵素は、TMPをリン酸化することができないにもかかわらず、AZPモノホスフェートをリン酸化することができる。この新しい特性は、どのチミジンキナーゼについてもこれまでに報告されていない。
【図面の簡単な説明】
【0214】
【図1】図1は、それぞれAT−TK1a(■)、AT−TK1b(●)およびHSV1−TK(▼)のdTMPキナーゼ活性(CPM)の経時変化(0〜120分)を示す。
【図2】図2は、それぞれAT−TK1a(□)、AT−TK1b(○)およびHSV1−TK(▽)のAZTモノホスフェートキナーゼ活性(CPM)(0〜120分)を示す。
【配列表】






















【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物由来の植物チミジンキナーゼ酵素をコードする単離ポリヌクレオチドであって、該単離ポリヌクレオチドが、
i)マツ(Pinus taeda)、コメ(Oryza sativa)またはトマト(Lycopersicum esculentum)に由来するチミジンキナーゼ酵素をコードする単離ポリヌクレオチド、
ii)ヒトI型単純ヘルペスウィルスチミジンキナーゼ(HSV1−TK)と比べた場合、そして真核細胞に形質導入するとすぐに、少なくとも1つのヌクレオシドアナログのIC50を少なくとも4倍減少させる、植物由来のチミジンキナーゼ酵素をコードする単離ポリヌクレオチド、
iii)少なくとも1つのヌクレオシドアナログモノホスフェートを、チミジンモノホスフェートよりも高度にリン酸化することのできる、植物由来のチミジンキナーゼ酵素をコードする単離ポリヌクレオチド、
iv)[kcat/K(Thd)]/[kcat/K(少なくともヌクレオシドアナログ)]の比率が2より小さい、植物由来のチミジンキナーゼ酵素をコードする単離ポリヌクレオチド、
v)発現し、そしてヒトI型単純ヘルペスウィルスチミジンキナーゼ(HSV1−TK)と比べた場合、[kcat/K(Thd)]/[kcat/K(少なくとも1つのヌクレオシドアナログ)]の比率が少なくとも5倍減少し、その際該アナログが任意のヌクレオシドアナログである、植物に由来するチミジンキナーゼ酵素をコードする単離ポリヌクレオチド、及び
vi)ヒトI型単純ヘルペスウィルスチミジンキナーゼ(HSV1−TK)と比べた場合、そして真核細胞に形質導入するとすぐに、少なくとも1つのヌクレオシドアナログのIC50を少なくとも4倍減少させる、植物由来のチミジンキナーゼ酵素変種をコードする単離された変異及び(又は)切断ポリヌクレオチドより成る群から選ばれる、上記単離ポリペプチド。
【請求項2】
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)由来のチミジンキナーゼ酵素をコードする、請求項1記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
少なくとも1つのヌクレオシドアナログモノホスフェートが、AZTモノホスフェートであること、及び(又は)少なくとも1つのヌクレオシドアナログがAZTである、請求項1記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
少なくとも中程度のストリンジェンシー条件下において、SEQ ID NO:1として、SEQ ID NO:3として、SEQ ID NO:6として表されるポリヌクレオチド配列またはその相補鎖とハイブリダイズできる、請求項1記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項5】
SEQ ID NOの全長にわたって判定した場合に、SEQ ID NO:1として、SEQ ID NO:3として、またはSEQ ID NO:6として表されるポリヌクレオチド配列に対して、少なくとも73%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%の同一性を有する、請求項4記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項6】
SEQ ID NO:1として、SEQ ID NO:3として、SEQ ID NO:6として表されるポリヌクレオチド配列またはその機能的アナログを含む、請求項1〜5のいずれか1つに記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項7】
単離植物チミジンキナーゼ酵素であって、
i)請求項1〜6のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドによってコードされる単離チミジンキナーゼ、
ii)マツ(Pinus taeda)、トマト(Lycopersicum esculentum)またはコメ(Oryza sativa)に由来する、単離植物チミジンキナーゼ酵素、
iii)真核細胞内のヒトI型単純ヘルペスウィルスチミジンキナーゼ(HSV1−TK)と比べた場合、少なくとも1つのヌクレオシドアナログのIC50を少なくとも4倍減少させる、単離植物チミジンキナーゼ酵素、
iv)少なくとも1つのヌクレオシドアナログモノホスフェートを、チミジンモノホスフェートよりも高度にリン酸化することのできる、植物由来の単離チミジンキナーゼ酵素、
v)[kcat/K(Thd)]/[kcat/K(少なくとも1つのヌクレオシドアナログ)]の比率が2より小さい、植物由来の単離チミジンキナーゼ酵素、
vi)発現し、そしてヒトI型単純ヘルペスウィルスチミジンキナーゼ(HSV1−TK)と比べた場合、[kcat/K(Thd)]/[kcat/K(少なくとも1つのヌクレオシドアナログ)]の比率が少なくとも5倍減少し、該アナログが任意のヌクレオシドアナログである、植物由来の単離チミジンキナーゼ酵素、及び
vii)ヒトI型単純ヘルペスウィルスチミジンキナーゼ(HSV1−TK)と比べた場合、そして真核細胞に形質導入するとすぐに、少なくとも1つのヌクレオシドアナログのIC50を少なくとも4倍減少させる、植物由来の単離された変異及び(又は)切断チミジンキナーゼ酵素変種、
より成る群から選ばれる、上記単離植物チミジンキナーゼ酵素。
【請求項8】
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)に由来する、請求項7記載の単離チミジンキナーゼ。
【請求項9】
少なくとも1つのヌクレオシドアナログモノホスフェートがAZTモノホスフェートであり、及び(又は)少なくとも1つのヌクレオシドアナログがAZTである、請求項7記載の植物チミジンキナーゼ。
【請求項10】
下記の3つのモチーフ/領域の1種以上を含む、請求項7〜9のいずれか1つに記載の植物チミジンキナーゼ:
Val Ile Gly Ile Asp Glu Ala Gln Phe Phe(モチーフI)
Val Ala Gly Leu Asp Gly(モチーフII)
Tyr Met Pro Val Cys Arg(モチーフIII)
Val A1 Lys Leu A2 A3 Arg Cys Glu A4(Lid領域)(式中、A1はThrおよびValから選択され、A2はThrおよびLysから選択され、A3はAlaおよびSerから選択され、A4はLeuおよびValから選択される)。
【請求項11】
表1中で同定される保存性残基のすべてを含む、請求項7〜10のいずれか1つに記載の植物チミジンキナーゼ。
【請求項12】
SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:11、もしくはSEQ ID NO:13のアミノ酸配列、またはその全長にわたって判定した場合に、これらの配列のいずれかと少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項7〜11のいずれか1つに記載の植物チミジンキナーゼ。
【請求項13】
SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:11もしくはSEQ ID NO:13のアミノ酸配列またはその機能的アナログを含む、請求項7〜12のいずれか1つに記載の植物チミジンキナーゼ。
【請求項14】
1〜60のアミノ酸残基、好ましくは1〜50のアミノ酸残基、より好ましくは1〜40のアミノ酸残基、より好ましくは1〜30のアミノ酸残基、さらに好ましくは1〜26のアミノ酸残基、最も好ましくは1〜24のアミノ酸残基のオーダーでC末端欠失を有する、請求項7〜13のいずれか1つに記載の植物チミジンキナーゼ。
【請求項15】
26アミノ酸残基のC末端欠失を有する(SEQ ID NO:5のアミノ酸配列を有する)トマト由来のチミジンキナーゼ酵素である、請求項14記載の植物チミジンキナーゼ。
【請求項16】
24アミノ酸残基のC末端欠失を有する(SEQ ID NO:11のアミノ酸配列を有する)シロイヌナズナ由来のチミジンキナーゼ酵素である、請求項14記載の植物チミジンキナーゼ。
【請求項17】
マツに由来し、SEQ ID NO:2として表わされるアミノ酸配列と、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%の同一性を示す、請求項7〜16のいずれか1つに記載の植物チミジンキナーゼ。
【請求項18】
トマトに由来し、SEQ ID NO:4として表わされるアミノ酸配列と、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%の同一性を示す、請求項7〜16のいずれか1つに記載の植物チミジンキナーゼ。
【請求項19】
コメに由来し、SEQ ID NO:7として表わされるアミノ酸配列と、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%の同一性を示す、請求項7〜16のいずれか1つに記載の植物チミジンキナーゼ。
【請求項20】
シロイヌナズナに由来し、SEQ ID NO:9として表わされるアミノ酸配列と、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%の同一性を示す、請求項7〜16のいずれか1つに記載の植物チミジンキナーゼ。
【請求項21】
シロイヌナズナに由来し、SEQ ID NO:11として表わされるアミノ酸配列と、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%の同一性を示す、請求項7〜16のいずれか1つに記載の植物チミジンキナーゼ。
【請求項22】
シロイヌナズナに由来し、SEQ ID NO:13として表わされるアミノ酸配列と、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%の同一性を示す、請求項7〜16のいずれか1つに記載の植物チミジンキナーゼ。
【請求項23】
ヒトI型単純ヘルペスウィルスチミジンキナーゼ(HSV1−TK)由来のチミジンキナーゼの作用と比べた場合に、少なくとも1つのヌクレオシドアナログの致死量(LD100)を少なくとも3倍減少させる、請求項7〜22のいずれか1つに記載の植物チミジンキナーゼ。
【請求項24】
請求項1〜6のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド及び、該ポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモータを含む、ベクター構築物。
【請求項25】
ウィルスベクター、特に単純ヘルペスウィルスベクター、アデノウィルスベクター、アデノウィルス関連ウィルスベクター、レンチウィルスベクター、レトロウィルスベクターまたはワクシニアウィルスベクターである、請求項24記載のベクター構築物。
【請求項26】
請求項24又は25記載のベクターを含む感染性ビリオンを産生することのできる、パッケージング細胞株。
【請求項27】
請求項1〜6のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、または請求項24又は25記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項28】
ヒト細胞、イヌ細胞、サル細胞、ラット細胞またはマウス細胞である、請求項27記載の宿主細胞。
【請求項29】
請求項7〜23のいずれか1つに記載の植物チミジンキナーゼ酵素及び薬学的に許容し得る担体または希釈剤を含む、薬学的調合物。
【請求項30】
請求項1〜6のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドまたは請求項24又は25記載のベクター及び薬学的に許容し得る担体または希釈剤を含む、薬学的調合物。
【請求項31】
請求項26記載のパッケージング細胞株または請求項27又は28記載の宿主細胞及び薬学的に許容し得る担体または希釈剤を含む、薬学的調合物。
【請求項32】
細胞をプロドラッグに対して感作させる方法であって、当該方法が、
(i)該細胞を、該プロドラッグの(細胞毒)薬物への変換を促進する植物チミジンキナーゼ酵素をコードするポリヌクレオチド配列を用いてトランスフェクションまたは形質導入する工程及び
(ii)該プロドラッグを該細胞に運搬する工程を含み、
その際、該細胞が該プロドラッグに対するよりも該(細胞毒)薬物に対して高い感受性を有することを特徴とする、上記方法。
【請求項33】
植物チミジンキナーゼ酵素をコードするポリヌクレオチド配列が、請求項1〜6のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド配列である、請求項32記載の方法。
【請求項34】
プロドラッグがヌクレオシドアナログである、請求項32又は33記載の方法。
【請求項35】
ヌクレオシドアナログがAZT(3’-アジド-3’-デオキシチミジン)である、請求項34記載の方法。
【請求項36】
温血動物において病原性物質を阻害する方法であって、該動物に請求項1〜6のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、または請求項24〜25のいずれか1つに記載のベクターを投与することを含む、上記方法。
【請求項37】
該ポリヌクレオチド配列または該ベクターが生体内に投与される、請求項36記載の方法。
【請求項38】
該病原性物質がウィルス、細菌または寄生虫である、請求項36又は37記載の方法。
【請求項39】
該病原性物質が腫瘍細胞である、請求項36又は37記載の方法。
【請求項40】
該病原性物質が自己反応性免疫細胞である、請求項36又は37記載の方法。
【請求項41】
該温血動物にヌクレオシドアナログを投与する工程をさらに含む、請求項36〜40のいずれか1つに記載の方法。
【請求項42】
該ヌクレオシドアナログがAZT(3’-アジド-3’-デオキシチミジン)である、請求項41記載の方法。
【請求項43】
ヌクレオシドまたはヌクレオシドアナログのリン酸化のために、請求項7〜23のいずれか1つに記載の植物チミジンキナーゼ酵素を使用する方法。
【請求項44】
ヌクレオシドまたはヌクレオシドアナログをリン酸化する方法であって、
i)ヌクレオシドまたはヌクレオシドアナログに、請求項7〜23のいずれか1つに記載の植物チミジンキナーゼ酵素を作用させる工程及び、
ii)リン酸化されたヌクレオシドまたはヌクレオシドアナログを回収する工程を含む、
上記方法。
【請求項45】
請求項7〜23のいずれか1つに記載の植物チミジンキナーゼ酵素をコードするポリヌクレオチドを含む植物細胞を含む植物の成長を制御または改変する方法であって、当該方法が該植物または植物細胞をヌクレオシドまたはヌクレオシドアナログに曝露する工程を含む、上記方法。
【請求項46】
ヌクレオシドアナログと請求項7〜23のいずれか1つに記載のチミジンキナーゼ、または前記植物由来のチミジンキナーゼをコードする遺伝子、または前記植物由来チミジンキナーゼをコードする前記遺伝子を含むベクターを、癌治療において、同時、分割または連続投与のための組み合わせとして含む、製品。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的に許容し得る担体又は希釈剤及び単離ポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチド及びプロモータを含むベクター、該ベクターを含む感染性ビリオンを産生することができるパッケージング細胞株、又は該ベクターを含む宿主細胞、植物由来の植物チミジンキナーゼ酵素をコードする該単離ポリヌクレオチドを含む薬学的調合物であって、該単離ポリヌクレオチドが、
i)シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana), マツ (Pinus taeda), コメ (Oryza sativa) 又はトマト (Lycopersicum esculentum)に由来するチミジンキナーゼ酵素をコードする単離ポリヌクレオチド、
ii)ヒトI型単純ヘルペスウィルスチミジンキナーゼ(HSV1-TK)と比べた場合、そして真核細胞に形質導入するとすぐに、少なくとも1つのヌクレオシドアナログのIC50を少なくとも4倍減少させる、植物由来のチミジンキナーゼ酵素をコードする単離ポリヌクレオチド、
iii)少なくとも1つのヌクレオシドアナログモノホスフェートを、チミジンモノホスフェートよりも高度にリン酸化することのできる、植物由来のチミジンキナーゼ酵素をコードする単離ポリヌクレオチド、
iv)[kcat/Km (Thd)] / [kcat/Km(少なくともヌクレオシドアナログ)]の比率が2より小さい、植物由来のチミジンキナーゼ酵素をコードする単離ポリヌクレオチド、
v)発現し、そしてヒトI型単純ヘルペスウィルスチミジンキナーゼ(HSV1-TK)と比べた場合、[kcat/Km(Thd)] / [kcat/Km(少なくとも1つのヌクレオシドアナログ)]の比率が少なくとも5倍減少し、その際該アナログが任意のヌクレオシドアナログである、植物に由来するチミジンキナーゼ酵素をコードする単離ポリヌクレオチド、及び
vi)ヒトI型単純ヘルペスウィルスチミジンキナーゼ(HSV1-TK)と比べた場合、そして真核細胞に形質導入するとすぐに、少なくとも1つのヌクレオシドアナログのIC50を少なくとも4倍減少させる、植物由来のチミジンキナーゼ酵素変種をコードする単離された変異及び(又は)切断ポリヌクレオチドより成る群から選ばれる、上記薬学的調合物
【請求項2】
少なくとも1つのヌクレオシドアナログモノホスフェートが、AZTモノホスフェートであること、及び(又は)少なくとも1つのヌクレオシドアナログがAZT である、請求項1記載の薬学的調合物。
【請求項3】
該ポリヌクレオチドが、少なくとも中程度のストリンジェンシー条件下において、SEQ ID NO:1として、SEQ ID NO:3として、SEQ ID NO:6として、SEQ ID NO:8として、SEQ ID NO:10として、SEQ ID NO:12として表されるポリヌクレオチド配列またはその相補鎖とハイブリダイズできる、請求項1記載の薬学的調合物
【請求項4】
該ポリヌクレオチドが,SEQ ID NOの前兆にわたって判定した場合に,SEQ ID NO:1として、SEQ ID NO:3として、またはSEQ ID NO:6として、SEQ ID NO:8として、SEQ ID NO:10として、SEQ ID NO:12として表されるポリヌクレオチド配列に対して、少なくとも73%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%の同一性を有する、請求項3記載の薬学的調合物。
【請求項5】
該ポリヌクレオチドが、SEQ ID NO:1として、SEQ ID NO:3として、SEQ ID NO:6として、SEQ ID NO:8として、SEQ ID NO:10として、SEQ ID NO:12として表されるポリヌクレオチド配列またはその機能的アナログを含む、請求項1〜4のいずれか1つに記載の薬学的調合物
【請求項6】
薬学的に許容し得る担体又は希釈剤、及び
i)請求項1〜5のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドによってコードされる単離チミジンキナーゼ、
ii)シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana), マツ (Pinus taeda),トマト (Lycopersicum esculentum) 又はコメ (Oryza sativa)に由来する、単離植物チミジンキナーゼ酵素、
iii)真核細胞内のヒトI型単純ヘルペスウィルスチミジンキナーゼ(HSV1-TK)と比べた場合、少なくとも1つのヌクレオシドアナログのIC50を少なくとも4倍減少させる、単離植物チミジンキナーゼ酵素、
iv)少なくとも1つのヌクレオシドアナログモノホスフェートを、チミジンモノホスフェートよりも高度にリン酸化することのできる、植物由来の単離チミジンキナーゼ酵素、
v)[kcat/Km (Thd)] / [kcat/Km(少なくとも1つのヌクレオシドアナログ)]の比率が2より小さい、植物由来の単離チミジンキナーゼ酵素、
vi)発現し、そしてヒトI型単純ヘルペスウィルスチミジンキナーゼ(HSV1-TK)と比べた場合、[kcat/Km(Thd)] / [kcat/Km(少なくとも1つのヌクレオシドアナログ)]の比率が少なくとも5倍減少し、該アナログが任意のヌクレオシドアナログである、植物由来の単離チミジンキナーゼ酵素、及び
vii)ヒトI型単純ヘルペスウィルスチミジンキナーゼ(HSV1-TK)と比べた場合、そして真核細胞に形質導入するとすぐに、少なくとも1つのヌクレオシドアナログのIC50を少なくとも4倍減少させる、植物由来の単離された変異及び(又は)切断チミジンキナーゼ酵素変種、
より成る群から選ばれる単離植物チミジンキナーゼ酵素を含む、薬学的調合物。
【請求項7】
少なくとも1つのヌクレオシドアナログモノホスフェートがAZT モノホスフェートであり、及び(又は)少なくとも1つのヌクレオシドアナログがAZT である、請求項6記載の薬学的調合物
【請求項8】
該チミジンキナーゼが、下記の3つのモチーフ/領域の1種以上を含む、請求項6又は7記載の薬学的調合物
Val Ile Gly Ile Asp Glu Ala Gln Phe Phe (モチーフ I)
Val Ala Gly Leu Asp Gly (モチーフ II)
Tyr Met Pro Val Cys Arg (モチーフ III)
Val A1 Lys Leu A2 A3 Arg Cys Glu A4 (Lid 領域)
(式中、A1はThr及び Valから選択され、A2はThr及び Lysから選択され、A3はAla 及びSerから選択され、A4はLeu 及び Valから選択される)。
【請求項9】
該チミジンキナーゼが、表1中で同定される保存性残基のすべてを含む、請求項6〜8のいずれか1つに記載の薬学的調合物
【請求項10】
該チミジンキナーゼが、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:11、もしくはSEQ ID NO:13のアミノ酸配列、またはその全長にわたって判定した場合に、これらの配列のいずれかと少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項6〜9のいずれか1つに記載の薬学的調合物
【請求項11】
該チミジンキナーゼが、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:11もしくはSEQ ID NO:13のアミノ酸配列またはその機能的アナログを含む、請求項6〜10のいずれか1つに記載の薬学的調合物
【請求項12】
該チミジンキナーゼが、1〜60のアミノ酸残基、好ましくは1〜50のアミノ酸残基、より好ましくは1〜40のアミノ酸残基、より好ましくは1〜30のアミノ酸残基、さらに好ましくは1〜26のアミノ酸残基、最も好ましくは1〜24のアミノ酸残基のオーダーでC末端欠失を有する、請求項6〜11のいずれか1つに記載の薬学的調合物
【請求項13】
該チミジンキナーゼ酵素が、26アミノ酸残基のC末端欠失を有する(SEQ ID NO:5のアミノ酸配列を有する)トマト由来のチミジンキナーゼ酵素である、請求項12記載の薬学的調合物
【請求項14】
該チミジンキナーゼ酵素が、24アミノ酸残基のC末端欠失を有する(SEQ ID NO:11のアミノ酸配列を有する)シロイヌナズナ由来のチミジンキナーゼ酵素である、請求項12記載の薬学的調合物
【請求項15】
該チミジンキナーゼが、マツに由来し、SEQ ID NO:2として表わされるアミノ酸配列と、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%の同一性を示す、請求項6〜12のいずれか1つに記載の薬学的調合物
【請求項16】
該チミジンキナーゼが、トマトに由来し、SEQ ID NO:4として表わされるアミノ酸配列と、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%の同一性を示す、請求項6〜12のいずれか1つに記載の薬学的調合物
【請求項17】
該チミジンキナーゼが、コメに由来し、SEQ ID NO:7として表わされるアミノ酸配列と、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%の同一性を示す、請求項6〜12のいずれか1つに記載の薬学的調合物
【請求項18】
該チミジンキナーゼが、シロイヌナズナに由来し、SEQ ID NO:9として表わされるアミノ酸配列と、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%の同一性を示す、請求項6〜12のいずれか1つに記載の薬学的調合物
【請求項19】
該チミジンキナーゼが、シロイヌナズナに由来し、SEQ ID NO:11として表わされるアミノ酸配列と、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%の同一性を示す、請求項6〜12のいずれか1つに記載の薬学的調合物
【請求項20】
該チミジンキナーゼが、シロイヌナズナに由来し、SEQ ID NO:13として表わされるアミノ酸配列と、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%の同一性を示す、請求項6〜12のいずれか1つに記載の薬学的調合物
【請求項21】
該チミジンキナーゼが、ヒトI型単純ヘルペスウィルスチミジンキナーゼ(HSV1-TK)由来のチミジンキナーゼの作用と比べた場合に、少なくとも1つのヌクレオシドアナログの致死量(LD100)を少なくとも3倍減少させる、請求項6〜20のいずれか1つに記載の薬学的調合物
【請求項22】
細胞をプロドラッグに対して感作させる方法であって、当該方法が、
(i)該細胞を、該プロドラッグの(細胞毒)薬物への変換を促進する植物チミジンキナーゼ酵素をコードするポリヌクレオチド配列を用いてトランスフェクションまたは形質導入する工程及び
(ii)該プロドラッグを該細胞に運搬する工程を含み、
その際、該細胞が該プロドラッグに対するよりも該(細胞毒)薬物に対して高い感受性を有することを特徴とする、上記方法。
【請求項23】
植物チミジンキナーゼ酵素をコードするポリヌクレオチド配列が、請求項1〜5のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド配列である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
プロドラッグがヌクレオシドアナログである、請求項22又は23記載の方法。
【請求項25】
ヌクレオシドアナログがAZT(3’-アジド-3’-デオキシチミジン)である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
温血動物において病原性物質を阻害する方法であって,該動物に請求項1〜5のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドまたはベクターを投与することを含む、上記方法。
【請求項27】
該ポリヌクレオチド配列または該ベクターが生体内に投与される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
該病原性物質がウィルス、細菌または寄生虫である、請求項26又は27記載の方法。
【請求項29】
該病原性物質が腫瘍細胞である、請求項26又は27記載の方法。
【請求項30】
該病原性物質が自己反応性免疫細胞である、請求項26又は27記載の方法。
【請求項31】
該温血動物にヌクレオシドアナログを投与する工程をさらに含む、請求項26〜30のいずれか1つに記載の方法。
【請求項32】
該ヌクレオシドアナログがAZT(3’-アジド-3’-デオキシチミジン)である、請求項31記載の方法。
【請求項33】
ヌクレオシドアナログモノホスフェートのリン酸化のために、請求項6〜21のいずれか1つに記載の植物チミジンキナーゼ酵素を使用する方法。
【請求項34】
ヌクレオシドアナログモノホスフェートをリン酸化する方法であって、
i)ヌクレオシドアナログモノホスフェートに、請求項6〜21のいずれか1つに記載の植物チミジンキナーゼ酵素を作用させる工程及び、
ii)ヌクレオシドアナログジホスフェートを回収する工程を含む、
上記方法。
【請求項35】
請求項6〜21のいずれか1つに記載の植物チミジンキナーゼ酵素をコードするポリヌクレオチドを含む植物細胞を含む植物の成長を制御または改変する方法であって、当該方法が該植物または植物細胞をヌクレオシドまたはヌクレオシドアナログに曝露する工程を含む、上記方法。
【請求項36】
ヌクレオシドアナログと請求項6〜21のいずれか1つに記載のチミジンキナーゼ、または該植物由来のチミジンキナーゼをコードする遺伝子、または該植物由来チミジンキナーゼをコードする該遺伝子を含むベクターを、癌治療において、同時、分割または連続投与のための組み合わせとして含む、製品。
【請求項37】
SEQ ID NO:2に表わされる配列と、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%の配列同一性を示す、植物由来の単離植物チミジンキナーゼ酵素。
【請求項38】
配列SEQ ID NO:4又は5のいずれかと、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%の配列同一性を示す、植物由来の単離植物チミジンキナーゼ酵素。
【請求項39】
配列SEQ ID NO:9又は11と、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%の配列同一性を示す、植物由来の単離植物チミジンキナーゼ酵素。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−504403(P2006−504403A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−508286(P2004−508286)
【出願日】平成15年5月21日(2003.5.21)
【国際出願番号】PCT/DK2003/000337
【国際公開番号】WO2003/100045
【国際公開日】平成15年12月4日(2003.12.4)
【出願人】(504430949)
【出願人】(504431692)
【出願人】(502408023)
【Fターム(参考)】