説明

検出システム、それが適用された電子黒板装置、その制御方法及び、コンピュータプログラム

【課題】光のみを利用して、各被検出体の位置の検出及び、各被検出体の識別を実現する検出システムを提供する。
【解決手段】検出システムは、赤外線と可視光とを互いが一定の範囲内に収まるようにスクリーン6に対して出力し、かつ、可視光として互いに異なるRGB値のものを出力する少なくとも2つのペン4と、赤外線カットフィルタ9Aが設けられ可視光を検出するカラーカメラ9と、可視光カットフィルタ10Aが設けられ赤外線を検出するIRカメラ10と、を備えている。そして、検出システム1は、IRカメラ10の撮影結果に基づいて、各ペン4が出力する赤外線とスクリーン6との接点に形成される各光点の座標を算出し、かつ、カラーカメラ10の撮影結果に基づいて、算出した各光点の座標を中心として所定の範囲内の各可視光のRGBを算出して各可視光がいずれのペン4のものかそれぞれ識別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検出体を検出するための検出システム、それが適用された電子黒板装置、その制御方法及び、コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検出体を検出するための検出システムは様々な分野で利用されている。例えば、このような検出システムが利用される分野の一つとして、検出システムにて検出された専用ペンの位置を利用して、電子的な文字等が表示面に描かれる電子黒板装置に関するものが存在する。そして、主として表示面側に特徴を有する検出システムとして、タッチパネルを利用するもの(例えば、特許文献1参照)、表示面に設けられた多数のセンサを利用するもの(例えば、特許文献2参照)、光の反射を利用したもの(例えば、特許文献3〜5参照)、表示面の周縁部に設けられた2つのカメラを利用するもの(例えば、特許文献6参照)が知られている。一方、主として専用ペン側に特徴を有する検出システムとして、ペンから超音波及び赤外線を出力して、これらの到達時期の差を利用してペンの位置を検出するもの(例えば、特許文献7参照)、専用ペンが発生させる振動を利用するもの(例えば、特許文献8参照)、ペンから出力される光の輝点を利用するもの(例えば、特許文献9参照)も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−83277号公報
【特許文献2】特開平5−330289号公報
【特許文献3】特開2000−105671号公報
【特許文献4】特開2003−99195号公報
【特許文献5】特開2004−338168号公報
【特許文献6】特開2000−132340号公報
【特許文献7】特開2007−58425号公報
【特許文献8】特開2002−79792号公報
【特許文献9】特開2005−135081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように電子黒板装置に関する分野では、各種の検出システムが利用されている。また、これら従来技術の背景には、いずれも電子黒板装置の厚みを可能な限り薄くしたいというコンセプトが存在する。つまり、通常の黒板やホワイトボードと同じスペースで使用することができ、できるならば、壁掛け式で使用できればなお良いというコンセプトが重要視されている。このようなコンセプトを実現するため、特許文献1〜8の各電子黒板装置では、表示面或いは専用ペンに特殊な装置として構成されている。このため、いずれの文献の電子黒板装置も表示面を含む表示装置の製造コスト或いは、本来消耗品として扱いたい専用ペンのコストの増加を招いている。そして、電子黒板装置は、その需要とは逆に、広く普及し、誰もが自由に利用可能なものではなく、学校の一部や企業の特別な会議室のみで利用されているのが現状と言える。これは、上記のような特殊な装置を必要とすることによる製造コストの増加等に起因すると考えられる。
【0005】
一方、特許文献9のペンは、比較的簡易なものであるが、複数のペンが存在する場合に各ペンを識別可能なものではない。これに対して、特許文献2及び、特許文献8の電子黒板装置は、複数のペンのそれぞれを識別可能なように構成されているが、色別の周波数を出力する装置やID情報を出力する装置といった具合に各ペンを識別するために特殊な装置が付加されている。このため、特許文献1〜9の電子黒板措置は、いずれも複数のペンの識別に光を利用するものではない。
【0006】
そこで、本発明は、光のみを利用して、各被検出体の位置の検出及び、各被検出体の識別を実現する検出システム、それが適用された電子黒板装置、その制御方法及び、コンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の検出システムは、異なる2つの波長の光を互いが一定の範囲内に収まるように対象物(6)に対して出力し、かつ、前記2つの波長の光のうちの一方の波長の光を互いに識別可能に出力する少なくとも2つの被検出体(4)と、前記被検出体が出力する光のうちの一方の波長の光を検出する一方波長検出手段(9)と、前記被検出体が出力する光のうちの他方の波長の光を検出する他方波長検出手段(10)と、前記他方波長検出手段が検出した検出結果に基づいて、各被検出体が出力する前記他方の波長の光と前記対象物との接点に形成される各光点の座標を算出する座標算出手段(11)と、前記一方波長検出手段が検出した検出結果に基づいて、前記座標算出手段が算出した各光点の座標を中心として前記一定の範囲を含む所定の範囲内の各一方の波長の光をいずれの被検出体のものかそれぞれ識別する一方波長識別手段(11)と、を備えている。
【0008】
本発明によれば、他方の波長の光を利用して対象物に形成される光点の位置が検出され、一方の波長の光を利用して各被検出体が識別される。これにより、光のみを利用して、各被検出体の位置の検出及び、各被検出体の識別を実現することができる。また、被検出体や光点が形成される対象物として、比較的簡易な構成のものを利用することができるので、製造コストの抑制を促進することができる。
【0009】
一方の波長の光として、どのような波長の光が利用されてもよい。例えば、本発明の検出システムの一態様において、前記少なくとも2つの被検出体は、前記一方の波長の光として可視光を出力するとともに、各被検出体間で互いに異なるRGB値の可視光を出力することにより各一方の波長の光を互いに識別可能にしてもよい。
【0010】
一方の波長の光として、可視光が利用される態様において、各被検出体が出力する可視光のそれぞれのRBG値を記憶するRGB値記憶手段(11)を更に備え、前記一方波長識別手段は、各光点の前記所定の範囲内に含まれる各可視光のRGB値を算出し、算出した各RGB値を前記RGB値記憶手段に記憶された各RGB値と比較することにより各光点の前記所定の範囲内に含まれる各可視光をいずれの被検出体のものか識別してもよい。この場合、各被検出体の識別にRGB値を利用することができる。
【0011】
各被検出体として、少なくとも2つの波長の光を出力し、各被検出体を識別可能なように一方の波長の光を出力するものであれば、どのようなものが利用されてもよい。例えば、本発明の検出システムの一態様において、前記2つの被検出体の少なくとも一方は、前記対象物との接触に伴って所定の時間だけ前記一方の波長の光を出力するように構成されていてもよい。この場合、各被検出体の識別に利用後に一方の波長の光が不要に出力されることを抑制することができる。
【0012】
被検出体が各光を出力する対象物として、どのようなものが利用されてもよい。例えば、本発明の検出システムの一態様において、画像を表示面に表示する表示装置を更に備え、前記対象物として前記表示装置の表示面が利用されてもよい。また、この態様において、前記表示装置は、画像を出力するプロジェクタ(8)と、前記プロジェクタが出力する画像が投影され、前記表示面として機能するスクリーン(6)と、を備えていてもよい。この場合、対象物として簡素な構成のスクリーンを利用することができる。
【0013】
対象物として表示装置の表示面を利用する態様において、前記座標算出手段が算出した各光点の座標に基づいて、前記表示面に表示される画像のうちの各光点の前記所定の範囲に対応する各部分から前記一方の波長の光の成分を削除する一部削除手段(11)を更に備えていてもよい。画像の種類又は、一方の波長の光の波長によっては、表示面に表示される画像に一方の波長の光が含まれている場合がある。このような場合、一方波長検出手段の検出結果が、画像のものなのか、被検出体が出力したものなのかの判断が難しくなってしまう場合がある。例えば、一方の波長の光として可視光が利用される場合、通常、画像には可視光が含まれている為、画像に含まれる可視光であるか、被検出体が出力した可視光であるかの判断が難しくなってしまう。しかし、この態様によれば、画像に含まれる一方の波長の光の成分が、一方の波長の光を識別するための所定の範囲から排除される。これにより、各被検出体が出力した一方の波長の光をより的確に識別することができる。また、画像が削除されるのは、所定の範囲に限定されている。仮に、画像全体から一方の波長の光が削除される態様であれば、例えば、一方の波長として可視光が利用される場合には、画面全体から可視光が削除されてしまう。このような場合、対象物中の光点の発生及び消滅に伴って、頻繁に表示面が点滅するような現象が生じてしまい使用者への視覚的負担が強くなってしまう。しかし、この態様によれば、画像から一方の波長の光が削除されるのは、所定の範囲に限定されているので、使用者の負担を軽減することができる。更に、一方の波長の光の出力が所定の時間に限定されている態様においては、一方の波長の光の削除時間を所定の時間に抑えることができるので、使用者の負担をより軽減することができる。
【0014】
他方の波長の光として、どのようなものが利用されてもよい。例えば、本発明の検出システムの一態様において、前記被検出体は、前記他方の波長の光として赤外線を出力してもよい。
【0015】
一方波長検出手段及び、他方波長検出手段として、被検出体が出力する各光を検出出来る限り、どのようなものが利用されてもよい。例えば、本発明の検出システムの一態様において、前記一方波長検出手段として前記他方の波長の光をカットするフィルタ(9A)が設けられたカメラ(9)が利用され、前記他方波長検出手段として前記一方の波長の光をカットするフィルタ(10A)が設けられたカメラ(10)が利用されてもよい。
【0016】
本発明の検出システムの一態様において、前記被検出体として、軸線(Ax)を有するペン状に形成され、先端側の前記軸線上に前記対象物と接触可能に突出する突出部(4A)が設けられ、前記突出部には不透明部材が、前記突出部の周囲には透明部材が、それぞれ使用されているものが利用され、前記被検出体の内部には、前記軸線方向に前記透明部材を通して前記他方の波長の光が出力されるように、前記軸線上に前記他方の波長の光を出力する他方光出力手段(4K)が設けられていてもよい。この場合、対象物と接触する突出部には不透明部材が利用されているので、接触による摩耗や対象物の損傷等を抑制することができる。一方で、突出部の周囲に透明部材が使用されているので、透明部材を通して内部からの光の出力が可能である。そして、被対象物の内部の軸線上に他方光出力手段が配置されているので、他方の波長の光を透明部材から軸線方向に出力することができる。これにより、光点の座標を被検出体の軸線の延長線上に近い位置とすることができる。
【0017】
本発明の電子黒板装置は、上述した検出システムが適用され、前記被検出体として文字等を描くためのペン(4)が利用されているものである。これにより、光のみを利用して、各ペンの位置の検出及び、各ペンの識別が可能な電子黒板装置を実現することができる。
【0018】
本発明の検出システムの制御方法は、異なる2つの波長の光を互いが一定の範囲内に収まるように対象物(6)に対して出力し、かつ、前記2つの波長の光のうちの一方の波長の光を互いに識別可能に出力する少なくとも2つの被検出体(4)と、前記被検出体が出力する光のうちの一方の波長の光を検出する一方波長検出手段(9)と、前記被検出体が出力する光のうちの他方の波長の光を検出する他方波長検出手段(10)と、を備えた検出システムに組み込まれるコンピュータ(11)に、前記他方波長検出手段が検出した検出結果に基づいて、各被検出体が出力する前記他方の波長の光と前記対象物との接点に形成される各光点の座標を算出する座標算出工程と、前記一方波長検出手段が検出した検出結果に基づいて、前記座標算出工程にて算出された各光点の座標を中心として前記一定の範囲を含む所定の範囲内の各一方の波長の光をいずれの被検出体のものかそれぞれ識別する一方波長識別工程と、を実行させるものである。
【0019】
本発明の検出システム用のコンピュータプログラムは、異なる2つの波長の光を互いが一定の範囲内に収まるように対象物(6)に対して出力し、かつ、前記2つの波長の光のうちの一方の波長の光を互いに識別可能に出力する少なくとも2つの被検出体(4)と、前記被検出体が出力する光のうちの一方の波長の光を検出する一方波長検出手段(9)と、前記被検出体が出力する光のうちの他方の波長の光を検出する他方波長検出手段(10)と、を備えた検出システムに組み込まれるコンピュータ(11)を、前記他方波長検出手段が検出した検出結果に基づいて、各被検出体が出力する前記他方の波長の光と前記対象物との接点に形成される各光点の座標を算出する座標算出手段及び、前記一方波長検出手段が検出した検出結果に基づいて、前記座標算出手段が算出した各光点の座標を中心として前記一定の範囲を含む所定の範囲内の各一方の波長の光をいずれの被検出体のものかそれぞれ識別する一方波長識別手段として機能させるように構成されたものである。本発明の制御方法或いは、コンピュータプログラムを実行することにより、本発明の検出システムを実現することができる。
【0020】
なお、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0021】
以上、説明したように、本発明によれば、他方の波長の光を利用して対象物に形成される光点の位置が検出され、一方の波長の光を利用して各被検出体が識別される。これにより、光のみを利用して、各被検出体の位置の検出及び、各被検出体の識別を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一形態に係る検出システムが適用された電子黒板装置の要部の斜視図。
【図2A】ペンの拡大図。
【図2B】図2AのB−B線に関する断面図。
【図2C】ペン内部の制御系の概略を示すブロック図。
【図3】図1のIII−III線に関する断面図。
【図4】電子黒板装置の制御系の概略図。
【図5】光点データベースの内容の一例を示す図。
【図6】カラーテーブルの内容の一例を示す図。
【図7】検出処理ルーチンのフローチャートの一例を示す図。
【図8】IRカメラ画像処理ルーチンのフローチャートの一例を示す図。
【図9】色認識用描画処理ルーチンのフローチャートの一例を示す図。
【図10】カラーカメラ画像処理ルーチンのフローチャートの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の一形態に係る検出システムが適用された電子黒板装置について説明する。図1は、電子黒板装置1の要部の斜視図である。図1に示すように、電子黒板装置1は、装置本体2と、装置本体2の右側に配置されたコイン検出装置3と、を備えている。コイン検出装置3の前面には、電子黒板装置1の利用の対価として支払われるコインを投入するためのコイン投入口3Aが設けられている。また、コイン投入口3Aの下方には、被検出体としての複数のペン4が置かれるホルダー部3Bが設けられている。なお、コイン検出装置3には、選択或いは決定をするためのボタン、電源スイッチ、ボリューム操作スイッチといった通常の電子黒板装置が備えている各種の入力装置及び出力装置が設けられていてもよい。
【0024】
図2Aは、ペン4の拡大図である。図2Aに示すように、ペン4の先端には、ペン4の軸線Ax上に突出部4Aが設けられている。突出部4Aはスクリーン6と接触した状態で使用されるので、突出部4Aには、摩耗が防止され、また、スクリーン6が傷つかないように耐摩耗性の高い部材が使用されている。この突出部4Aの具体的な材料としては、例えばポリアセタール、テフロン(登録商標)、ナイロン等が利用され、高い耐摩耗性材料を求めると結果的に不透明な材料が選択されることになる。また、ペン4の後端側には、電池カバー部4Bが設けられている。電池カバー部4Bはペン4から着脱可能なように構成されており、ペン4は電池カバー部4Bが取り外されることにより、内部に電池を収納可能なように構成されている。
【0025】
図2Bは、図2AのB−B線に関する断面図である。また、図2Bでは、電池5が収納された状態を示している。このため、図2Bに示すように、ペン4の内部には、後端側に電池5が収容されている。ペン4の内部の先端は、透明な導光レンズ4Gにより塞がれている。導光レンズ4Gの中央には、突出部4Aが挿入される空間が軸線Axと同軸的に設けられている。導光レンズ4Gとして、例えば、透明なアクリル材が利用される。
【0026】
突出部4Aは、導光レンズ4Gの中央の空間を通じて、軸線Axに沿って、前後方向、つまり先端から後端に向かう方向(或いはその逆方向)に移動可能に取り付けられている。突出部4Aの後端には突出部4Aと同様に軸線Axに沿って前後方向に移動可能な連動部材4Hが取り付けられており、連動部材4Hには先端方向に付勢するバネ4Iが取り付けられている。また、突出部4Aには後端の周囲に鍔4Atが、導光レンズ4Gの中央の空間の径には段差が、それぞれ設けられ、導光レンズ4Gの段差に鍔4Atが引っ掛かり、突出部4Aは前方への移動が制限されるように構成されている。このため、突出部4Aは、連動部材4Hを介したバネ4Iの付勢及び、前方への移動の制限により、通常時は先端から突出するように位置している。これらにより、突出部4Aがスクリーン6等に押しつけられた場合には、突出部4Aは、後方への圧力により軸線Axに沿って連動部材4Hを介してバネ4Iを圧縮しつつ後端方向に移動し、圧力が解放された場合には連動部材4Hを介したバネ4Iの付勢により再び通常の先端から突出するような位置に戻るように構成されている。また、連動部材4Hは、突出部4Aが後方に押された場合には、突出部4Aと一体的に後方に移動するように取り付けられている。電池5の前方であって、突出部4Aの後方には昇圧回路を有するLED基板4Dが設けられている。
【0027】
LED基板4Dには、他方光出力手段としての赤外線LED4Kと、可視光LED(カラーLED)4Mとが設けられている。赤外線LED4Kは軸線Axと同軸上に位置するように配置され、可視光LED4Mは赤外線LED4Kに近い側方に配置されている。また、可視光LED4Mは、RGB値の成分がペン4毎に異なるものとなるようなものが各ペン4に設けられている。図2Cは、ペン4内部の制御系の概略を示すブロック図である。図2Cに示すように、LED基板4Dには、スイッチSW及び、各LED4K、4Mに接続され、スイッチSWの状態により各LED4K、4Mの出力を制御するCPU4Sが設けられている。CPU4Sは、検出器KS及び、フューズFZを介して、電池5に接続されている。そして、CPU4Sは、スイッチSWからの状態信号を受けてLED4K、4Mに発光制御の為の制御信号を出力している。検出器KSは、フューズFZを介して電池5に接続されており、電池5の電力残量を検出する。また、電池5には、フューズFZを介して、DC−DCコンバータCOも接続されている。DC−DCコンバータCOは、可視光LED4M等に接続され、それぞれを動作させるための電力を供給している。
【0028】
スイッチSWは、突出部4Aを介して連動部材4Hが後方に移動した押圧状態のときには連動部材4Hと連動して動作する不図示の動作部材に押されてON状態に、連動部材4Hが押圧状態にないときには連動部材4Hと連動して動作する動作部材から解放されてOFF状態に、それぞれ切り替えられるように配置されている。そして、CPU4Sは、スイッチSWがON状態の場合には、赤外線LED4Kが他方の波長の光としての赤外線を、可視光LED4Mが一方の波長の光としての可視光を、それぞれ出力するように各LED4K、4Mを制御する。この際、CPU4Sは、スイッチSWがON状態の場合には、継続して赤外線LED4Kが赤外線を出力する一方で、可視光LED4MはON状態から所定時間だけ可視光を出力するように各LED4K、4Mを制御する。なお、所定時間には後述の識別処理等に要する時間に応じたものが利用されればよく、例えば、1秒程度、或いは処理速度等によっては1秒以下の60分の3フレーム/秒が利用されてもよい。
【0029】
一方で、CPU4Sは、スイッチSWがOFF状態の場合には、可視光LED4Mは可視光を出力せずに、赤外線LED4Kが一定の間隔毎に赤外線を出力するように、各LED4K、4Mを制御する。この一定の間隔の一例として、例えば、赤外線が4分に1回出力されるようなものが利用されてよい。このように、CPU4Sは、スイッチSWを介して、連動部材4Hの押圧状態に応じて各LED4K、4Mの出力を制御するように構成されている。また、連動部材4Hは突出部4Aが後方に押されるのに伴って一体的に後方に移動するように取り付けられている。つまり、ペン4は、各LED4K、4Mの出力状態が、スクリーン6等との接触に伴う突出部4Aの移動によって切り替えられるように構成されている。
【0030】
各LED4K、4Mから出力された光は、前方の突出部4Aの周囲に位置する透明な導光レンズ4Gを通過して、ペン4の先端から外部に出力される。赤外線LED4Kは軸線Axと同軸的に配置され、突出部4Aも軸線Axと同軸的に配置されている。このため、外部に出力される赤外線は、出力範囲の中心の位置が突出部4Aの中心の位置と略一致するように出力される。一方、可視光LED4Mの位置は軸線Axと一致していないが、赤外線LED4Kの近くであるため、可視光LED4Mから出力される可視光の出力範囲は、赤外線の出力範囲の中心位置から一定の範囲内に収まるように出力される。
【0031】
図1に戻り、装置本体部2の前面には、表示面としてのスクリーン6と、スクリーン6の上部に配置され、音声を出力するスピーカ7とが、それぞれ設けられている。スクリーン6には、ペン4によって文字等が描かれる。ペン4によって描かれた文字等は、装置本体2の内部から画像として投影されることにより、スクリーン6上に表示される。スクリーン6は、透明アクリル板の裏面にプロジェクションシートが貼付される、或いは、塗装が施される等により、内部から投影される画像が鮮明に表示されるように構成されている。
【0032】
図3は、図1のIII−III線に関する断面図である。図3に示すように、装置本体2の内部には、プロジェクタ8と、一方波長検出手段としてのカラーカメラ9と、他方波長検出手段としてのIRカメラ10とが設けられている。プロジェクタ8は、装置本体2の内部の上方に配置されている。プロジェクタ8が画像を出力する出力方向の先には球面ミラー16が、球面ミラー16が画像を反射する反射方向の先には平面ミラー17が、平面ミラー17が画像を反射する反射方向の先にはスクリーン6が、それぞれ取り付けられている。図3では、プロジェクタ8の出力方向及び範囲を示す投射ラインTL、球面ミラー16の反射方向及び範囲を示す反射ラインHL、平面ミラー17の反射方向及び範囲を示す反射ラインRL、をいずれも二点鎖線で示している。
【0033】
図3に示すように、プロジェクタ8は、装置本体2の内部の上方に取り付けられた支持台15によって、画像の出力方向が球面ミラー16を向くように上方向に傾けられて下方から支持されている。球面ミラー16は下端が平面ミラー17の反射ラインRLと交差することを避けて上方の一部が装置本体2の内部から突出するように傾斜をつけて配置されている。装置本体2の上部の球面ミラー16の一部が突出した部分には、球面ミラー16を覆うように、突出カバー部19が設けられている。また、球面ミラー16は、反射方向にプロジェクタ8から出力された画像をやや拡大しつつ反射するように構成されている。このため、球面ミラー16に出力された画像は、拡大されて平面ミラー17に反射される。そして、平面ミラー17は球面ミラー16から反射された画像をスクリーン6の全体に反射できるように底面から一定の高さを有する基台20の上に傾斜をつけて配置されている。これらの各ミラー16、17により、プロジェクタ8が出力した画像がスクリーン6の全面に投影される。
【0034】
各カメラ9、10は、平面ミラー17の上端の上方の互いに近い位置に配置されている。具体的には、平面ミラー17の上方にIRカメラ10が、IRカメラの上方の近い位置にカラーカメラ9が、それぞれ配置されている。図3では、カラーカメラ9の撮影範囲を破線CHで、IRカメラ10の撮影範囲を一点鎖線ISで、それぞれ示している。図3で示すように、各カメラ9、10は、スクリーン6の全面が各撮影範囲CH、ISに収まるような位置に配置されている。カラーカメラ9には、赤外線カットフィルタ9Aが設けられている。これにより、カラーカメラ9は、赤外線をカットした画像を撮影可能(例えば、840mm以下の可視光だけを撮影できるように)に構成されている。一方、IRカメラ10には、可視光カットフィルタ10Aが設けられている。これにより、IRカメラ10は、可視光をカットした画像を撮影可能(例えば、920mm以上の赤外線だけを撮影できるように)に構成されている。更に、装置本体2の内部には、プロジェクタ8、各カメラ9、10といった各種機器が接続され、それらを制御する制御ユニットが設けられている。
【0035】
図4は、電子黒板装置1の制御系の概略図である。図4に示すように、装置本体2の内部の制御ユニット11には、コイン検出装置3、各カメラ9、10、プロジェクタ8及び、スピーカ7が接続されている。その他にも制御ユニット11には、各種の周辺装置が接続され得るが、それらの図示は省略する。
【0036】
制御ユニット11は、マイクロプロセッサとその動作に必要な主記憶装置(RAM、ROM)等の周辺装置とを組み合わせたコンピュータユニットとして構成されている。制御ユニット11には、制御部21と、記憶部22とが設けられている。制御部21は、各カメラ9、11が撮影した撮影結果及び、記憶部22に記憶されている各種データを適宜読み込むことにより、プロジェクタ8を通じてスクリーン6に投影すべき画像を生成するために必要な各種の演算及び、スピーカ7を通じて再生すべき音声再生信号の生成等を実行する論理的装置として構成されている。記憶部22は、電源の供給がなくても記憶を保持可能なように構成されている。記憶部22として、例えば、ハードディスク(磁気ディスク)、DVDROM、CDROM等の光学式記憶媒体、あるいはEEPROM等の不揮発性半導体メモリ装置といった外部記憶装置が利用されてもよい。記憶部22には、制御部21で利用されるデータとして光点データベース25、及び、カラーテーブル26が記憶されている。なお、記憶部22には、その他にも制御部21が各種処理を実行するために必要な各種のデータを記憶しているが、図示は省略した。
【0037】
図5は、光点データベース25の内容の一例を示す図である。図5に示すように、光点データベース25は、行及び、列を含むマトリクス状に形成されている。光点データベース25には、“光点”、 “光点の座標”、“光点の半径”、“ステータス”及び、“ID情報”の各項目が含まれている。そして、これらの各項目が行を形成するように、左から光点31、光点の座標32、光点の半径33、ステータス34、ID情報35の順に配置されている。各項目31〜35は、光点31をキーとして、光点31毎に、管理されている。
【0038】
光点31の管理には、“1”、“2”といった数字が使用される。また、光点の座標32の管理には、X軸、Y軸の座標を示す数字が使用される。X軸、Y軸は適宜に設定されてよい。ここでは一例として、使用者からみてスクリーン6の左下角をX軸、Y軸ともにゼロの座標とし、X軸としてゼロの座標から横方向(使用者から見て右方方向がプラス)を、Y軸としてゼロの座標から縦方向(上方向がプラス)を、それぞれ使用している(図1参照)。そして、このゼロの座標からの距離をmm単位で示す数字が、光点の座標32の管理に使用される。また、光点の半径33の管理には、スクリーン6上の各光点の半径をmm単位で示す数字が使用される。
【0039】
ID情報35の管理には、各ペン4に割り当てられた各色を示す数字が使用される。この数字は後述のカラーテーブル26にて管理されている。ステータス34の管理には、“未使用”、“色認識準備中”、“色認識中”、“ID確定”、“ID未登録”、にそれぞれ対応する文字が使用される。ここで、各文字の示す状態は次のとおりである。
【0040】
未使用 :光点の情報を管理していない状態。
色認識準備中:色認識を行う前の黒丸を表示するのを待っている状態。
色認識中 :色認識を行うための処理を実行している状態。
ID確定 :色認識を行って光点の色のIDが確定した状態。
ID未登録 :色認識を行ったがIDが見つからなかった状態。
【0041】
図5の例では、5つの光点が管理されている。このため、光点31の列には、“1”〜“5”の5つの数字が示されている。そして、光点31の“1”に対応する光点の座標32が“400,300”、つまり使用者側のスクリーン6の左下角から右横に400mm、縦上方に300mmの位置であること、その光点の半径33が“10”、つまり10mmであること、その光点のステータス34が“ID確定”、つまり光点の色のIDが確定した状態であること、その光点のID情報35が“3”、つまり光点“1”の形成に使用されているペン4に割り当てられた色を示すIDが“3”であることが、それぞれ管理されている。また、この例では、光点31の“3”のステータス34として、“未使用”が示されている。これは、“3”に該当する光点がスクリーン6上からなくなったことを意味する。また、ステータス34が“未使用”となっている行はスクリーン6上に新たな光点が検出された際に再利用される。ステータス34の更新に関する処理は後述する。
【0042】
一方、図6は、カラーテーブル26の内容の一例を示す図である。図6に示すように、カラーテーブル26も、行及び、列を含むマトリクス状に形成されている。カラーテーブル26には、“ペンNO”、 “RGB値”、及び、“色ID”の各項目が含まれている。そして、これらの各項目が行を形成するように、左からペンNO41、RGB値42、色ID43の順に配置されている。各項目41〜43は、ペンNO41をキーとして、ペンNO41毎に、管理されている。
【0043】
ペンNO41の管理には、“1”、“2”といったペン4の数に対応する数字が使用される。RGB値42の管理には、各ペン4の可視光LED4Mが出力する可視光のRGB値に対応する数字が使用される。また、色ID43の管理には、各ペンの色のIDとしてRGB値42毎にユニークに割り当てられた数字が使用される。また、この色ID43の管理に使用される数字は、光点データベース25のID情報35の管理に使用される数字と対応している。
【0044】
図6の例では、3つのペン4に関するカラーテーブル26が示されている。このため、ペンNO41の列には、“1”〜“3”の数字が示されている。そして、この例では、ある一のペン4に対応するペンNO41の“1”のRGB値42が“0,0,225”であること、このRGB値42に対応する色ID43が“1”であることが、それぞれ管理されている。
【0045】
次に、制御部21が実行する処理を説明する。コイン検出装置3に所定の対価が支払われる等、所定の条件が満たされると制御部21は電子黒板装置1が使用可能となるような各種処理を実行する。これらの処理には、プロジェクタ8を通じて、スクリーン6に各種画像を投影するための処理、各ペン4を利用してスクリーン6に描かれた文字や図形等をスクリーン6に投影するための処理といった処理が含まれる。制御部21は、各ペン4にて描かれた文字等のスクリーン6への投影等に必要な処理として、図7に示す検出処理ルーチン、図8に示すIRカメラ画像処理ルーチン、図9に示す色認識用描画処理ルーチン、及び、図10に示すカラーカメラ画像処理ルーチンのそれぞれを所定の周期で繰り返し実行する。
【0046】
図7は、制御部21が実行する検出処理ルーチンのフローチャートの一例を示す図である。図7のルーチンが開始されると、制御部21は、まずステップS1にて、IRカメラ10からIRカメラ10が撮影した画像(可視光フィルタ10Aにより可視光がカットされたもの)を取得する。続くステップS2にて、制御部21は、ステップS1にて取得した画像に基づいて、IRカメラ画像処理を実行する。図8は、制御部21が実行するIRカメラ画像処理ルーチンのフローチャートの一例を示す図である。
【0047】
図8のルーチンが開始されると、制御部21は、まずステップS11にて、IRカメラ10から取得した画像中に光点が存在するか否かを判断する。この判断は、一例として、予め用意された光点の判定基準となる判定用輝度値IrThresを利用し、この判定用輝度値IrThresに基づいて、判定用輝度値IrThresの輝度値を超える点を光点と認識することにより実現される。ステップS11にて、否定的判断をした場合、つまりIRカメラ10が撮影した画像中に判定用輝度値IrThresを超える輝度の点が存在しない場合には、以降のステップをスキップして、今回のルーチンを終了する。一方、ステップS11にて、肯定的判断をした場合、つまりIRカメラ10が撮影した画像中に判定用輝度値IrThresを超える輝度の輝点が存在する場合には、ステップS12に進む。
【0048】
ステップS12にて、制御部21は、画像中に存在する各光点の情報、具体的には各光点の中心の座標及び、半径を算出する。この算出は、一例として、IRカメラ10が撮影した画像中の各輝点に隣接する点の輝度値の最大値、最小値をX軸、Y軸(光点データベース25中の光点の座標32で利用されるX軸、Y軸と共通のもの)方向について求め、求めた最大値、最小値に基づいて各光点の中心座標、及び、半径を算出することにより実現される。
【0049】
続くステップS13にて、制御部21は、ステップS12で算出した各光点の情報に基づいて、画像中の各光点のうち一の光点が光点データベース25に存在するか否かを判断する。この判断は、例えば、ステップS12で算出した光点の座標と光点データベース25中の各光点の座標32とを比較することにより実現される。具体的には、画像中の光点の座標が光点データベース25中のいずれかの光点の座標32から一定距離内のものであれば、画像中の光点は、光点データベース25中の一定距離内に位置する光点31と同一の光点(ペン4)が移動したものとして、光点データベース25中に存在していると判断する。一方、画像中の光点が光点データベース25中のいずれの光点の座標32からも一定距離内にない場合には、光点データベース25に存在しない新たな光点と判断する。そして、ステップS13にて、制御部21は、光点が光点データベース25に存在しないと判断した場合にはステップS17に進む。
【0050】
ステップS17にて、制御部21は、画像中の光点が光点データベース25に存在しない光点であるとして、この光点の情報を光点データベース25に新規に登録する。この際、光点データベース25中でステータス34が“未使用”の行(或いは、新規な行)が登録に利用され、ステータス25は“色認識準備中”として登録される。ステップS17の処理が終了すると、制御部21はステップS15に進む。
【0051】
一方、ステップS13にて、光点が光点データベース25に存在すると判断した場合には制御部21はステップS14に進む。ステップS14にて、制御部21は、ステップS12で算出した光点の情報を利用して、光点データベース25の光点の座標32の情報を更新する。具体的には、制御部21は、画像中の光点の座標(ステップS12で算出されたもの)に当該座標から一定距離内にある光点データベース25中の光点の座標32の情報を更新して、ステップS15に進む。
【0052】
ステップS15にて、制御部21は、画像中に存在する光点のうち光点データベース25中に存在するか否かの判断が終了した一の光点の他に判断が終了していない他の光点があるか否か判断する。この判断が肯定的判断の場合には、ステップS13以降の処理が終了していない他の光点について光点データベース25との存在判断をすべくステップS13に戻って、他の光点について以降で同様の処理を実行する。一方、ステップS15にて、否定的判断をした場合には、画像中に存在するすべての光点についてステップS13、S14、S17の処理が終了したものとして、制御部21は、ステップS16に進む。ステップS16にて、制御部21は、光点データベース25のステータス34の情報を更新する。具合的には、制御部21は、今回のルーチンで光点データベース25中の光点の座標32が更新されなかった各光点31のステータス34が“未使用”となるように、光点データベース25を更新する。ステップS16の処理が完了すると、制御部21は、今回のルーチンを終了する。これにより、スクリーン6上の各光点について、新たな光点の認識、移動した光点の新たな座標、及び、スクリーン6上から消滅した(ペン4がスクリーン6から離れた)光点が判別される。
【0053】
図7のルーチンに戻り、制御部21は、ステップS2の処理を終えると、ステップS3に進む。ステップS3にて、制御部21は、色認識用描画処理ルーチンを実行する。図9は、制御部21が実行する色認識用描画処理ルーチンのフローチャートの一例を示す図である。
【0054】
図9のルーチンが開始されると、まずステップS21にて、制御部21は、所定の光点の座標に黒丸が表示されるような画像をプロジェクタ8に出力する。具体的には、制御部21は、光点データベース25中でステータス34が“色認識準備中”若しくは、“色認識中”となっている画像中の光点を所定の光点として判別し、画像中のこれらの各光点の座標に黒丸が表示されるような画像をプロジェクタ8に出力する。黒丸の表示は、一例として、プロジェクタ8が出力している画像から対象の光点の座標を中心とした所定の範囲(ペン4からの可視光が収まるペン4の軸線Axから一定範囲を含むもの)のカラー画像を削除する処理により実現される。このため、黒丸の表示範囲は所定の範囲に限定される。
【0055】
続くステップS22にて、制御部21は、光点データベース25中のステータス34の情報を更新する。具体的には、ステップS22にて、制御部21は、光点データベース25中のステータス34が“色認識準備中”のものを“色認識中”に更新して、今回のルーチンを終了する。これにより、IRカメラ10により撮影された画像中の光点、つまりペン4が出力する赤外線とスクリーン6との接点の座標から所定の範囲内に関しては、プロジェクタ8から出力される画像から可視光が削除され、ペン4から出力される可視光の判別が比較的容易な環境が形成される。
【0056】
図7のルーチンに戻り、制御部21は、ステップS3の処理を終えると、ステップ4に進む。ステップS4にて、制御部21は、カラーカメラ9が撮影した画像(赤外線フィルタ9Aにより赤外線がカットされたもの)をカラーカメラ9から取得する。続くステップS5にて、制御部21は、カラーカメラ画像処理を実行する。図10は、制御部21が実行するカラーカメラ画像処理ルーチンのフローチャートの一例を示す図である。
【0057】
図10のルーチンが開始されると、制御部21は、まずステップS31にて、光点データベース25中にステータス34が所定のステータスとなっている光点31があるか否か判断する。具体的には、所定のステータスとして、制御部21は、ステータス34が“色認識中”となっているものが存在するか否か判断する。この判断が否定的判断の場合、つまり、光点データベース25中にステータス34が“色認識中”となっているものが存在しない場合には、制御部21は、以降のステップをスキップして、今回のルーチンを終了する。
【0058】
一方、ステップS31にて、肯定的判断をした場合、つまり光点データベース25中にステータス34が“色認識中”となっているものが存在する場合には、制御部21は、ステップ32に進む。ステップ32にて、制御部21は、カラーカメラ9が撮影した画像中の各光点の色IDを識別する。この識別は、一例として、次のように実行される。
【0059】
まず制御部21は、光点データベース25のステータス34が“色認識中”となっている各光点31に対応する画像(赤外線フィルタ9Aにより赤外線がカットされたもの)中の各光点の座標を中心に所定の範囲内のRGB値を算出する。この算出の際に、より色彩をはっきりさせるために、画像中の光点の座標におけるRGB値の最小値を算出し、この最小値を減算等に利用してもよい。
【0060】
次に制御部21は、算出された各光点の所定の範囲のRGB値とカラーテーブル26とを画素毎に比較して、所定の範囲に含まれる各RGB値がカラーテーブル26中のいずれの色ID43に一番近いかを判別し、対応するカラーテーブル26中の色ID43を特定する。但し、一番近いRGB値でも算出されたRGB値との差が一定値以内でないものは色ID43が特定できないものとして判別する。そして、制御部21は、所定の範囲の各画素全ての判別結果に基づいて、一番多く特定された色ID43をこの所定の範囲に対応する光点の色ID43と識別する。一方で、一番多く特定された色ID43であっても、全画素数に占める特定された画像の数の割合が一定割合以下の場合には、色ID43が識別できなかった光点として扱う。このようにして、制御部21は、各光点の色ID43の識別を実行する。
【0061】
ステップS32に続いて、制御部21は、ステップ33にて、光点データベース25の内容を更新する。具体的には、ステップS33にて、制御部21は、ステップS32の結果、色ID43が識別できた光点については光点データベース25のステータス34を“ID確定”に、ID情報35をステップS32で識別した色ID43の数字に、それぞれ更新する。一方、制御部21は、ステップS32の結果、色ID43が識別できなかったものとして扱われた光点については光点データベース25のステータス34を“ID未登録”に、ID情報35を”0”に、それぞれ更新する。そして、制御部21は、ステップS33の処理が完了すると、今回のルーチンを終了する。これにより、スクリーン6上に存在する各光点の色ID43が識別され、その結果が光点データベース25のステータス34に反映される。また、一定の範囲を含むような所定の範囲内のRGB値が利用されるため、各カメラ9、10間の設置誤差やペン4内部の各LED4K、4Mの位置の差(光の出力方向の差)等を吸収することができる。
【0062】
図7のルーチンに戻り、制御部21は、ステップS5の処理を終えると、ステップS6に進む。ステップS6にて、制御部21は、IRカメラ10で撮影された画像中の各光点の座標位置に点を描画した画像を作成する。続くステップS7にて、制御部21は、ステップS6で作成した画像をプロジェクタ8に出力して、今回のルーチンを終了する。これにより、ペン4毎にスクリーン6上の位置が検出され、各ペン4の座標の位置に点が描画される。
【0063】
以上に説明したように、この電子黒板装置1によれば、各ペン4から出力される赤外線と、可視光カットフィルタ10Aを有するIRカメラ10とにより、スクリーン6上の光点の位置、つまり各ペン4の位置の座標が検出される。そして、スクリーン6の投影されている画像の一部として、検出された各ペン4の座標の所定範囲内だけに黒丸が表示され、赤外線カットフィルタ9Aを有するカラーカメラにより所定範囲内の可視光が検出される。これにより、赤外線及び、可視光という異なる波長の光だけで、スクリーン6上の各ペン4の位置の検出及び、各ペン4の識別を実現することができるので、各ペン4に異なる色を振り分け、これらのペン4を通じて、スクリーン6に各種の色の文字等を表示させることもできる。また、スクリーン6やペン4に特殊な装置を利用する必要がない。従って、スクリーン6として安価なものが利用可能であり、かつ、消耗品として紛失や交換頻度の高いペン4についても製造コストを抑えることができる。また、黒丸の表示範囲を所定の範囲に限定することができるので、画面全体が暗転又は点滅することを防止することができる。これにより、使用者の負担を抑制することができる。
【0064】
以上の形態では、制御ユニット11が制御部21を通じて図8のルーチンを実行することにより座標算出手段として、図9のルーチンを実行することにより一部削除手段として、図9及び図10のルーチンを実行することにより一方波長識別手段として、それぞれ機能する。また、制御ユニット11が記憶部22を通じてカラーテーブル26を記憶することによりRGB値記憶手段として機能する。また、スクリーン6と、プロジェクタ8との組み合わせが本発明の表示装置として機能する。
【0065】
本発明は上述した形態に限らず、適宜の形態にて実施することができる。上述の形態では、被検出体が出力する異なる波長の光として、赤外線と、可視光とが利用されているが、このような形態に限定されるものではない。例えば、異なる波長の光として、可視光を利用せずに、赤外線領域の波長のみが利用されてもよい。この場合、他方の波長として各被検出体で共通の波長の赤外線を、一方の波長として被検出体毎に異なる波長の赤外線が利用されることにより、位置の検出及び、各被検出体の識別が可能である。
【0066】
また、上述の形態では、識別可能に出力される一方の波長の光として、RGB値の異なる可視光が利用されているが、このような形態に限定されるものでもない。例えば、上記のように、一方の波長としても互いに波長が異なるものが利用されることにより各被検出体を識別可能なように構成されていてもよい。また、例えば、各LEDを点滅させ、その周波数で各被検出体を識別するように構成されていてもよい。
【0067】
上述の形態では、各フィルタ9A、10Aが設けられた各カメラ9、10が利用されているが、このような形態に限定されるものではない。例えば、各カメラとは別に、各波長の光をカットするフィルタが設けられていてもよい。また、一方波長検出手段及び、他方波長検出手段は、カメラに限定されるものでもない。各波長の光を検出可能な限り、一方波長検出手段及び、他方波長検出手段として、受光素子、撮像素子等、各種のものが利用されてよい。
【0068】
上述の形態では、文字等を表示して電子黒板として機能する表示装置として、プロジェクタ8と、スクリーン6と、を備えたものが利用されているが、表示装置はこのような形態に限定されるものではない。例えば、文字等を表示する表示装置として、液晶モニタ等が利用されてもよい。
【0069】
上述の形態では、電子黒板装置1は、コイン検出装置3を備えているが、コイン検出装置3は省略されてもよい。この場合、コイン等の対価に関係なく、自由に利用可能な電子黒板装置として構成されていればよい。また、上述の形態では、一形態として、本発明に係る検出システムが電子黒板装置に適用されているが、このような形態に限定されるものではない。例えば、本発明に係る検出システムは、被検出体を入力装置とし、対象物としてのスクリーン等に表示された敵キャラクタ等への攻撃指示等を、対象物への光の出力で行うゲーム等、各種ゲームに利用されてもよい。また、スクリーン等の対象物に映しだされたコンピュータの操作画面に対する指示を被検出体を通じて行うようなものとして利用されてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 電子黒板装置
2 装置本体
4 ペン(被検出体)
4A 突出部
4G 導光レンズ
4K 赤外線LED(他方光出力手段)
4M 可視光LED
6 スクリーン(対象物)
8 プロジェクタ
9 カラーカメラ(一方波長検出手段)
9A 赤外線カットフィルタ
10 IRカメラ(他方波長検出手段)
10A 可視光カットフィルタ
11 制御ユニット(座標算出手段、一部削除手段、一方波長識別手段、RGB値記憶手段、コンピュータ)
Ax 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる2つの波長の光を互いが一定の範囲内に収まるように対象物に対して出力し、かつ、前記2つの波長の光のうちの一方の波長の光を互いに識別可能に出力する少なくとも2つの被検出体と、
前記被検出体が出力する光のうちの一方の波長の光を検出する一方波長検出手段と、
前記被検出体が出力する光のうちの他方の波長の光を検出する他方波長検出手段と、
前記他方波長検出手段が検出した検出結果に基づいて、各被検出体が出力する前記他方の波長の光と前記対象物との接点に形成される各光点の座標を算出する座標算出手段と、
前記一方波長検出手段が検出した検出結果に基づいて、前記座標算出手段が算出した各光点の座標を中心として前記一定の範囲を含む所定の範囲内の各一方の波長の光をいずれの被検出体のものかそれぞれ識別する一方波長識別手段と、を備えることを特徴とする検出システム。
【請求項2】
前記少なくとも2つの被検出体は、前記一方の波長の光として可視光を出力するとともに、各被検出体間で互いに異なるRGB値の可視光を出力することにより各一方の波長の光を互いに識別可能にする請求項1に記載の検出システム。
【請求項3】
各被検出体が出力する可視光のそれぞれのRBG値を記憶するRGB値記憶手段を更に備え、
前記一方波長識別手段は、各光点の前記所定の範囲内に含まれる各可視光のRGB値を算出し、算出した各RGB値を前記RGB値記憶手段に記憶された各RGB値と比較することにより各光点の前記所定の範囲内に含まれる各可視光をいずれの被検出体のものか識別する請求項2に記載の検出システム。
【請求項4】
前記2つの被検出体の少なくとも一方は、前記対象物との接触に伴って所定の時間だけ前記一方の波長の光を出力するように構成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の検出システム。
【請求項5】
画像を表示面に表示する表示装置を更に備え、
前記対象物として前記表示装置の表示面が利用される請求項1〜4のいずれか一項に記載の検出システム。
【請求項6】
前記表示装置は、画像を出力するプロジェクタと、前記プロジェクタが出力する画像が投影され、前記表示面として機能するスクリーンと、を備えている請求項5に記載の検出システム。
【請求項7】
前記座標算出手段が算出した各光点の座標に基づいて、前記表示面に表示される画像のうちの各光点の前記所定の範囲に対応する各部分から前記一方の波長の光の成分を削除する一部削除手段を更に備えている請求項5又は6に記載の検出システム。
【請求項8】
前記被検出体は、前記他方の波長の光として赤外線を出力する請求項1〜7のいずれか一項に記載の検出システム。
【請求項9】
前記一方波長検出手段として前記他方の波長の光をカットするフィルタが設けられたカメラが利用され、
前記他方波長検出手段として前記一方の波長の光をカットするフィルタが設けられたカメラが利用されている請求項1〜8のいずれか一項に記載の検出システム。
【請求項10】
前記被検出体として、軸線を有するペン状に形成され、先端側の前記軸線上に前記対象物と接触可能に突出する突出部が設けられ、前記突出部には不透明部材が、前記突出部の周囲には透明部材が、それぞれ使用されているものが利用され、
前記被検出体の内部には、前記軸線方向に前記透明部材を通して前記他方の波長の光が出力されるように、前記軸線上に前記他方の波長の光を出力する他方光出力手段が設けられている請求項1〜9のいずれか一項に記載の検出システム。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の検出システムが適用され、
前記被検出体として文字等を描くためのペンが利用されている電子黒板装置。
【請求項12】
異なる2つの波長の光を互いが一定の範囲内に収まるように対象物に対して出力し、かつ、前記2つの波長の光のうちの一方の波長の光を互いに識別可能に出力する少なくとも2つの被検出体と、前記被検出体が出力する光のうちの一方の波長の光を検出する一方波長検出手段と、前記被検出体が出力する光のうちの他方の波長の光を検出する他方波長検出手段と、を備えた検出システムに組み込まれるコンピュータに、
前記他方波長検出手段が検出した検出結果に基づいて、各被検出体が出力する前記他方の波長の光と前記対象物との接点に形成される各光点の座標を算出する座標算出工程と、
前記一方波長検出手段が検出した検出結果に基づいて、前記座標算出工程にて算出された各光点の座標を中心として前記一定の範囲を含む所定の範囲内の各一方の波長の光をいずれの被検出体のものかそれぞれ識別する一方波長識別工程と、を実行させる検出システムの制御方法。
【請求項13】
異なる2つの波長の光を互いが一定の範囲内に収まるように対象物に対して出力し、かつ、前記2つの波長の光のうちの一方の波長の光を互いに識別可能に出力する少なくとも2つの被検出体と、前記被検出体が出力する光のうちの一方の波長の光を検出する一方波長検出手段と、前記被検出体が出力する光のうちの他方の波長の光を検出する他方波長検出手段と、を備えた検出システムに組み込まれるコンピュータを、
前記他方波長検出手段が検出した検出結果に基づいて、各被検出体が出力する前記他方の波長の光と前記対象物との接点に形成される各光点の座標を算出する座標算出手段及び、前記一方波長検出手段が検出した検出結果に基づいて、前記座標算出手段が算出した各光点の座標を中心として前記一定の範囲を含む所定の範囲内の各一方の波長の光をいずれの被検出体のものかそれぞれ識別する一方波長識別手段として機能させるように構成された検出システム用のコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−98766(P2012−98766A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243169(P2010−243169)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(506113602)株式会社コナミデジタルエンタテインメント (1,441)
【Fターム(参考)】