説明

検証機能を有するステッカー、真偽判定媒体、スレッド体並びに真偽判定用紙

【課題】通常の状態では内在する色変化情報が確認できないが、所定の検証具を介して観察することにより初めてその内在情報が検証できるようにした、特に偽造防止対策用のデバイスとして好適に用いることが可能な、検証機能を有するステッカーと、この検証機能を有するステッカーが貼着されてなる真偽判定媒体と、検証機能を有するスレッド体並びに検証機能を有するスレッド体が漉き込まれてなる真偽判定用紙の提供を目的とする。
【解決手段】検証機能を有するステッカーを、複屈折性透明層の背面側の少なくとも一部の領域に金属反射層が設けられ、さらにその上には所望の媒体上に貼着させるための貼着層が積層されてなるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の検証具を介して観察することにより内在化されている色変化情報が検証できるようにした、検証機能を有するステッカーと、この検証機能を有するステッカーが貼着されてなる真偽判定媒体と、検証機能を有するスレッド体並びに検証機能を有するスレッド体が漉き込まれてなる真偽判定用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カードやパスポートなどの認証媒体、商品券や株券などの有価証券類などにおいては、その一部に偽造が困難なデバイスや情報を添付したり印刷しておき、その存在もしくはその内容を目視もしくは検証器を用いて確認することにより真偽の判定が行われていた。
【0003】
また、近年では、贋造品の流通が問題となり、これらの流通を防ぐため、真正品に有価証券類などで使用されている偽造防止技術と同等の技術を適用することが増えている。
【0004】
偽造防止技術は、一般のユーザが偽造防止に関連する技術として認知でき、各ユーザーが真偽の判定をできるようにしたいわゆるオバート技術と、特定のユーザのみが偽造防止に関連する技術として認識でき、特定のユーザーのみが真偽判定を行えるようにしたいわゆるコバート技術とに分けられる。
【0005】
オバート技術の代表としては、ホログラムなどの回折構造形成体や、Optically Variable Ink(略称OVI)などの多層干渉膜などがその具体例として挙げることができる。また、コバート技術の代表としては、蛍光印刷、万線潜像などを挙げることができる。これらはともに重要な地位を占め、通常は、これらの組み合わせにより偽造防止対策技術として採用されることが多い。
【0006】
また、近年の液晶ディスプレーの需要拡大に伴い、高度な偏光技術が種々開発されているが、これらの偏光技術が偽造防止用デバイスにもコバート技術としていろいろな形態で応用されはじめている。例えば、ネマチック液晶の複屈折性を用いた潜像媒体や、複屈折性を有するプラスチックフィルムに物理的な刺激を与え、部分的に複屈折性を無くして、偏光素子を用いたときに所期の情報が読めるようにした技術(例えば、特許文献1参照。)などである。
【特許文献1】特開平8−43804号公報
【特許文献2】特開平9−68926号公報
【特許文献3】特開平9−68927号公報
【特許文献4】特開2000−221898号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、これら従来の方法では、潜像をパターン化するために液晶の配向方向を部分的に変えたり(例えば、特許文献2、3参照。)、エンボスにより延伸フィルムの膜厚を部分的に変えたり(例えば、特許文献4参照。)、さらには物理的な刺激により複屈折性を
破壊する必要があり、安定した媒体を量産することが難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以上のような状況に鑑みなされたものであって、通常の状態では内在する色変化情報が確認できないが、所定の検証具を介して観察することにより初めてその内在情報が検証できるようにした、特に偽造防止対策用のデバイスとして好適に用いることが可能な、検証機能を有するステッカーと、この検証機能を有するステッカーが貼着されてなる真偽判定媒体と、検証機能を有するスレッド体並びに検証機能を有するスレッド体が漉き込まれてなる真偽判定用紙の提供を目的とするものである。
【0009】
以上の課題を解決するためになされ、請求項1に記載の発明は、少なくとも1層の複屈折性透明層を有していると共に、その背面側の少なくとも一部の領域には金属反射層が設けられ、さらにその上には所望の媒体上に貼着させるための貼着層が積層されていることを特徴とする検証機能を有するステッカーである。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1記載の検証機能を有するステッカーにおいて、前記複屈折性透明層の表面側の一部の領域には金属反射層が設けられていることを特徴とする。
【0011】
さらにまた、請求項3に記載の発明は、請求項1または2記載の検証機能を有するステッカーにおいて、複数の複屈折性透明層を有していると共に、これらの複屈折性透明層は積層されていて複屈折性透明積層体を構成していることを特徴とする。
【0012】
さらにまた、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の検証機能を有するステッカーにおいて、前記複屈折性透明積層体の複屈折性透明層の層間部分の一部の領域には金属反射層が設けられていることを特徴とする。
【0013】
さらにまた、請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の検証機能を有するステッカーにおいて、前記複屈折性透明層が延伸樹脂フィルムからなることを特徴とする。
【0014】
さらにまた、請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の検証機能を有するステッカーにおいて、前記複屈折性透明層が一軸延伸樹脂フィルムからなることを特徴とする。
【0015】
さらにまた、請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の検証機能を有するステッカーにおいて、前記複屈折性透明層がセロハンフィルムからなることを特徴とする。
【0016】
さらにまた、請求項8に記載の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の検証機能を有するステッカーにおいて、前記複屈折性透明層がポリカーボネートフィルムからなることを特徴とする。
【0017】
さらにまた、請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれかに記載の検証機能を有するステッカーが一部に貼着されていることを特徴とする真偽判定媒体である。
【0018】
さらにまた、請求項10に記載の発明は、少なくとも1層のスレッド状複屈折性透明層を有していると共に、その背面側の少なくとも一部の領域には金属反射層が設けられていることを特徴とする検証機能を有するスレッド体である。
【0019】
さらにまた、請求項11に記載の発明は、請求項10記載の検証機能を有するスレッド体において、前記複屈折性透明層の表面側の一部の領域には金属反射層が設けられていることを特徴とする。
【0020】
さらにまた、請求項12に記載の発明は、請求項10または11に記載の検証機能を有するスレッド体において、スレッド状複屈折性透明層の背面側には金属反射層の形成部分を含む全域に貼着層が積層されていることを特徴とする。
【0021】
さらにまた、請求項13に記載の発明は、請求項10〜12のいずれかに記載の検証機能を有するスレッド体において、複数の複屈折性透明層を有していると共に、これらの複屈折性透明層は積層されていて複屈折性透明積層体を構成していることを特徴とする。
【0022】
さらにまた、請求項14に記載の発明は、請求項10〜13のいずれかに記載の検証機能を有するスレッド体において、前記複屈折性透明積層体の複屈折性透明層の層間部分の一部の領域には金属反射層が設けられていることを特徴とする。
【0023】
さらにまた、請求項15に記載の発明は、請求項10〜14のいずれかに記載の検証機能を有するスレッド体において、前記複屈折性透明層が延伸樹脂フィルムからなることを特徴とする。
【0024】
さらにまた、請求項16に記載の発明は、請求項10〜15のいずれかに記載の検証機能を有するスレッド体において、前記複屈折性透明層が一軸延伸樹脂フィルムからなることを特徴とする。
【0025】
さらにまた、請求項17に記載の発明は、請求項10〜16のいずれかに記載の検証機能を有するスレッド体において、前記複屈折性透明層がセロハンフィルムからなることを特徴とする。
【0026】
さらにまた、請求項18に記載の発明は、請求項10〜16のいずれかに記載の検証機能を有するスレッド体において、前記複屈折性透明層がポリカーボネートフィルムからなることを特徴とする。
【0027】
さらにまた、請求項19に記載の発明は、請求項10〜18のいずれかに記載の検証機能を有するスレッド体がその表面の一部が露出するように紙基材中に漉き込まれていることを特徴とする真偽判定用紙である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、所定の検証具を重ね合わせて観察するだけで、通常の状態では確認できないでいたステッカー、真偽判定媒体、スレッド体並びに真偽判定用紙内の内在情報が色相の変化を伴って鮮明かつ簡便に検証できるようになる。また、色相の変化や隠れていた像の現出は、本発明の一部を構成する複屈折性透明層の層厚やその構成材料を違えたり、さらには複屈折性透明層の積層数や金属反射層との組合せや形成パターンなどを違えることにより、種々のものに変化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の検証機能を有するステッカーの概略の断面構成とこの検証機能を有するステッカーに内在する色変化情報の検証原理を示す説明図である。また、図2は、本発明の他の検証機能を有するステッカーの概略の断面構成とこの検証機能を有するステッカーに内在する色変化情報の検証原理を示す説明図である。そして、図3は図2に示すような検証機能を有するステッカーを一部に貼着して
なる真偽判定媒体の概略の構成とその色変化情報を所定の検証具を用いて検証しているときの検証原理を示す説明図である。
【0030】
図1に示す検証機能を有するステッカーは、複屈折性透明層(101)を有していると共に、その背面側の全面には金属反射層(102)が設けられ、さらにその上には所望の媒体上に貼着させるための貼着層(109)が積層されている。また、図2に示す検証機能を有するステッカーは、複屈折性透明層(201)と複屈折性透明層(204)の二層が積層されて複屈折性透明積層体を構成していて、その複屈折性透明積層体の背面側の全面には金属反射層(202)が設けられ、さらにその上には所望の媒体上に貼着させるための貼着層(212)積層され、かつ、複屈折性透明層(201)と複屈折性透明層(204)との層間の一部には金属反射層(203)が、最表層の一部の領域には金属反射層(205)がそれぞれ設けられている。
【0031】
そして、図3には、図2に示すステッカーと同様の構成のステッカー、すなわち複屈折性透明層(301)と複屈折性透明層(304)の二層が積層されて複屈折性透明積層体を構成していて、その複屈折性透明積層体の背面側の全面には金属反射層(302)と貼着層(303)とが順次積層されていると共に、複屈折性透明層(301)と複屈折性透明層(304)との層間には金属反射層(303)が、最表層の一部の領域には金属反射層(305)がそれぞれ設けられてなる検証機能を有するステッカーが、シート状基材の一部に貼着されてなる真偽判定媒体が示してある。
【0032】
一方、図4と図5には、本発明の検証機能を有するスレッド体(402)とこのスレッド体(402)が紙基材(401)中に漉き込まれてなる真偽判定用紙の概略の構成がそれぞれ示してある。
【0033】
本発明の検証機能を有するスレッド体は、スレッド状の複屈折性透明層を有すると共に、その背面側には金属反射層がを少なくとも形成されてなるものであるが、図5にその断面の構成を示すスレッド体(402)においては、2層の複屈折性透明層(502)と複屈折性透明層(503)を有すると共に、これらの複屈折性透明層(502)と複屈折性透明層(503)は積層されていて複屈折性透明積層体を構成しており、かつ、金属反射層(504)の全域には貼着層(505)がさらに積層されている。
【0034】
また、本発明の真偽判定用用紙は、図4と図5に示すように、上述したような構成の検証機能を有するスレッド体(402)がその表面の一部が複数の個所で露出するように紙基材401に漉き込まれてなるものである。
【0035】
上記した各検証機能を有する検証用媒体の一部を構成する複屈折性透明層(101、201、204、301、304、502、503)は、複屈折性を示す透明な物質からなる薄膜層であって、例えば延伸加工により作製されたプラスチックフィルムなどによって構成することができる。延伸加工により作製されたプラスチックフィルムは、それを構成する分子が延伸方向に並ぶため、複屈折性を呈するようになる。
【0036】
複屈折とは、屈折率が光軸方向によって異なる物質に光を入射した時、異常光線e(屈折率:ne)と常光線o(屈折率:no)の間で位相差を生じる現象である。
【0037】
この異常光線と常光線の屈折率の差は、複屈折率Δnと呼ばれる。複屈折率Δnは、複屈折物質を通過する光の波長λによって変化する。これを複屈折の波長分散と呼び、次の式で表される。
【0038】

Δn(λ)=ne−no

また、位相差値δは、複屈折物質を通過する光路長dに比例し、次の式で表される。

δ(λ)=Δn(λ)d

この位相差値δは、複屈折の光軸が平行の場合、層が複数に分かれていても積算され、直角方向の場合には打ち消し合う方向に働く。
【0039】
ここで、位相差値δの複屈折性透明層の背面側に金属反射層を形成したシートの複屈折光軸に対して、偏光板の光軸の角度をαずらして重ねた時の光の反射率は、

R(λ,δ,α)=1−sin2(2απ/180)・sin2(2πδ(λ)/λ)

で表される。
【0040】
即ちこれは、α=45°の時、反射して戻ってくる光量が最も下がり、検証具のあるなしで色相の変化が現れることを示している。また、波長により反射率が変わることも示しており、δとλにより、色相が変わることを意味している。
【0041】
例えば、図1に示すように、光源(107)から発せられた光の赤色成分(104)、緑色成分(105)、青色成分(106)のそれぞれは検証具(直線偏光板)(103)を通って偏光光となり、さらに複屈折性透明層(101)を通過して金属反射層(102)の部分で反射され、再び複屈折性透明層(101)に戻ってくる。この時、偏光状態が波長により異なるため、検証具(直線偏光板)(103)を透過できる緑色成分(105)と透過できない赤色成分(104)と青色成分(106)に分かれる。そして、結果として観測者(108)のところには緑色成分(105)の光だけが到達することになる。要するに、観察者(108)は検証具を介して検証機能を有するステッカーを観察したとき、それを緑の色相で認識できるようになる。
【0042】
前記したように、複屈折性透明層としては、延伸加工により作製されたプラスチックフィルムを用いることができるのであるが、この延伸加工とは、プラスチックのガラス転移点以上融点以下の範囲にある所定の温度で引き伸ばしてプラスチックフィルムを作製する加工方法であり、一軸延伸加工や二軸延伸加工などがある。プラスチックは、一般に延伸をかけることにより、複屈折性を有するようになると同時に、均一で強靭なフィルムとなり、取り扱いが容易になる。一軸延伸や二軸延伸のプラスチックフィルムを形成するプラスチックとしては、セロハン、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)ナイロンなどが挙げられる。
【0043】
二軸延伸プラスチックフィルムは幅方向で延伸の具合が異なるため、全幅で均一な複屈折性を確保することが難しく、これらを全て複屈折性透明層の構成材料として利用することが難しい。フィルムの幅方向で均一な複屈折性を求めるのであれば、一軸延伸プラスチックフィルムにより複屈折性透明層を構成することが望ましい。
【0044】
さらに、一軸延伸プラスチックフィルムの複屈折率は、後述する金属反射層を形成する際の加工適性や物理的強度などを考慮すると、Δn=0.001〜0.05、より望ましくはΔn=0.003〜0.02の範囲にあればよい。複屈折率Δnがこの値より大きい場合には、必要な位相差値を得るために必要とされるフィルムの厚さが薄くなってしまい、加工適性を損なうと共に加工時に生じる僅かな歪により、位相値が設計値からずれる可
能性が高まるので好ましくない。また、小さい場合には、位相差値を得るために必要とされるフィルムの厚さが厚くなってしまい、加工しずらくなるので好ましくない。延伸具合にもよるが、この条件にあてはまるものとして、セロハンにおいては複屈折率Δnが約0.008程度のもの、また、ポリカーボネートにおいては複屈折率Δnが約0.003程度のものである。
【0045】
このような構成の複屈折性透明層(101)の背面側に金属反射層(102)と貼着層(109)を設け、積層構成になる検証機能を有するステッカーを作製し、それに対して検証具(103)(直線偏光板)を重ねて観察すると、観察者は所定の色相で認識できるようになる。認識される色相は、複屈折性透明層の層厚に応じて種々に変化をさせることができ、この色相の変化をもって対象ステッカーの検証、例えば真偽の判定などを行うことができる。
【0046】
因みに、複屈折性を有するセロハンフィルム(複屈折性透明層)の背面側全面に金属反射層を形成してなる検証機能を有するステッカーの複屈折光軸に対して、偏光板(検証具)をその光軸の角度を45°ずらすようにして重ねた時のセロファンフィルムの厚さおよび光路長と色相の関係を表1に記す。
【0047】
【表1】

さらに、このような構成の検証機能を有するステッカーの表面側の所定の領域にパターン状の金属反射層を設けることにより、表面側に形成したパターン状の金属反射層と、背面側に形成した金属反射層と、その間にある複屈折性透明層との組合せにより潜像を内在させることができる。
【0048】
つまり、表面側に形成した金属反射層と、背面側に形成した金属反射層とは、単に目視しただけでは複屈折性透明層が透明である為に区別しずらい。しかし、検証具である直線偏光板を介して両者を観測した場合には、表面側に形成した金属反射層の領域は常に白く見えるものの、背面側に形成した金属反射層の領域は色相が変化して見える為に、両者の間にはコントラストがつくことから、単に目視した際には視認困難であった潜像を可視化することが出来る。また、この潜像の可視化がこのように可能であるか/否かを確認した結果を利用して、真偽判定にも応用することもできる。
【0049】
さらに、複屈折性透明層をλ/4位相差を有するフィルム(セロハンの場合は、厚さが約21μm)で形成し、検証具として円偏光板を用いた場合には、異方性のない円偏光による検証となるため、検証に際して光軸を合わせることなく、表面側の金属反射層は黒、背面側の金属反射層は白となって観察者が認識できるようになる。
【0050】
また、複屈折性透明層を多層で積層し、複屈折性透明層の背面側、層間、表面側のそれぞれに金属反射層を設けることにより、複数の個所における色相の変化と所定の色相パターの現出を可能とする。
【0051】
例えば、図2に示すように、一方の面に貼着層212が設けられた金属反射層(202)の他方の面の上に、厚さが21μmのセロハンフィルムからなる複屈折性透明層(201)と、層間の金属反射層(203)と、厚さが35μmのセロハンフィルムからなる複屈折性透明層(204)と、表面側の金属反射層(205)とをこの順序で積層してなる検証機能を有するステッカーにおいては、検証具である直線偏光板(206)を重ねた時、光源(210)より発せられた光(207、208、209)のうち、背面側の金属反射層(202)で反射された光(207)は、総計の厚さが56μmのセロハンフィルムの部分を通過した場合と同じように赤色を呈する。また、層間の金属反射層(203)で反射した光(208)は、厚さが35μmのセロハンフィルムの部分を通過するので青色
を呈し、また表面側(205)の反射層で反射した光(209)は、複屈折性透明層を通過していないため、白を呈するようになり、種々の色相の変化と一部の領域に設けた金属反射層の形状に由来する所定の色相パターの現出を可能とする。
【0052】
また、色変化情報の検証に際して呈する色相を調節するため、検証具として直線偏光板に複屈折性透明層を積層してなるものを使用することができる。図3は、このような検証具の構成とこの検証具を用いて検証して証券類やくじなどの真偽判定を必要とする媒体の色変化情報を検証するときの検証原理を示している。
【0053】
ここに示す検証具は、例えば、直線偏光板(307)に厚さが39μmのセロハンフィルムからなる複屈折性透明層(306)を積層してなるものであり、これを検証機能を有するステッカーが所定の部材(509)上に貼着されてなる真偽判定用媒体の上に重ねて観察すると、光源(311)より発せられた光(308、309、310)のうち、背面側の金属反射層(302)で反射された光(308)は、厚さが70μmのセロハンフィルムを通過した場合と同じように青色を呈する。また、層間の金属反射層(303)で反射した光(309)は、厚さが56μmのセロハンフィルムを通過した場合と同様に赤色を呈し、表面側(305)の反射層で反射した光(310)は、厚さが39μmのセロハンフィルムを透過するため、緑色を呈する。
【0054】
上記した各金属反射層に用いることができる金属としては、例えばアルミニウム、錫、クロム、ニッケル、銅、金、インコネル、ステンレス、ジュラルミンなどが挙げられる。
【0055】
これらの金属からなる金属反射層は、直接複屈折性透明層となるプラスチックフィルム上に蒸着もしくはスパッタリングなどにより形成したり、金属反射層を有する転写箔を利用した転写により形成したり、さらにはメタリックインキによる印刷、あるいは金属箔や金属層を有するフィルムのラミネートなどにより形成すればよい。また、前記した金属反射層(203、205、303、305)のようなパターン化された金属反射層を形成する場合は、基材上の全面に金属反射層を形成した後、パターン化に係る加工を施してもよいし、パターン化した金属反射を転写もしくはラミネートするようにしてもよい。
【0056】
これらの金属反射層をパターン化する方法としては、水洗シーライト加工、エッチング加工、レーザ加工などの方法も挙げられる。
【0057】
水洗シーライト加工は、基材上にネガパターンを水洗インキで予め印刷しておき、次にこの上から全面に渡って金属反射層を形成した後、水洗インキを水で洗い流すと同時に金属反射層の一部を取り除くことによりポジ状の金属反射パターン(金属反射層)を形成する方法である。
【0058】
また、エッチング加工は、まず金属反射層を形成し、その上にマスキング剤からなるポジパターンを印刷により形成し、その後マスキングされていない部分を腐食液を用いて取り除くことにより、パターン状の金属反射層を形成する方法である。
【0059】
また、レーザ加工は、基材上に金属反射層を形成した後、金属反射層の特定部分的に強いレーザ光を当てて除去することによりパターン状の金属反射層を形成する方法である。用いるレーザとしては、高出力のNd:YAG、CO2ガスレーザが一般的である。
【0060】
一方、ステッカーや後述するスレッド体の一部を構成する貼着層(109、212、313、505)は、他の媒体上に貼着したり、他の媒体中にしっかりと固着させるために設ける層である。この貼着層は、粘着剤や接着剤などにより形成される薄膜であって、前記した複屈折性透明層や金属反射層を変質させたり冒すものでなければ、一般的に用いら
れている粘着剤や接着剤などにより形成すればよい。例えば、粘着剤として、ブチルゴム系、天然ゴム系、シリコン系、ポリイソブチル、アクリル系などが挙げられる。これらの中には、アルキルメタクリレート、ビニルエステル、アクリロニトリル、スチレン、ビニルモノマーなどの凝集成分や、不飽和カルボン酸、ヒドロキシル基含有モノマー、アクリロニトリルなどに代表される改質成分や、重合開始剤、可塑剤、硬化剤、硬化促進剤、酸化防止剤などの添加剤を必要に応じて添加してもよい。
【0061】
続いて、本発明の検証機能を有するスレッド体について説明する。このスレッド体は、前述したように、スレッド状の複屈折性透明層を有していると共に、その背面側の少なくとも一部の領域に金属反射層が設けられてなるものである。このような構成に係るスレッド体には、必要に応じて、図5に示すように貼着層(505)を設け、後述するような真偽判定用紙中に漉き込む際に、紙基材との密着力を上げるようにしたものであってもよい。
【0062】
このようなスレッド体は、複屈折性透明層、金属反射層、さらには貼着層を所定の構成で積層させてなるシート状の積層体を作製した後、断裁機などを用いてスレッド状に断裁して得られる。
【0063】
一方、本発明の真偽判定用紙は、上述した構成のスレッド体がその表面の一部が露出するように紙基材中に漉き込まれてなるものである。
【0064】
紙基材の中にスレッド体を漉き込むにはいろいろな方法がある。その一つの方法としては、既に形成された2枚の紙基材の間にスレッド体を挿入して貼り合わせ、所定の部分においてスレッド体が露出するように一体的に貼り合わせる方法がある。また、円網あるいは短網または円網と長網などとの組み合わせにより、部分的にスレッド体が露出できる部分を予め設けた湿紙を作製した後、各湿紙を抄き合わせる工程中でスレッド体を湿紙間に見当を合わせて挿入し、一体化する方法もある。
【0065】
本発明の真偽判定用紙に用いる紙基材は、針葉樹や広葉樹、イネ、エスパルト、バガス、麻、亜麻、ケナフ、カンナビスなどから得られる植物繊維や、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニルなどからなる合成繊維を原料として作製される。
【0066】
植物繊維を原料として抄紙をする場合は、例えば、原料濃度0.1〜5%、好ましくは0.3〜0.6%程度の水希薄原料中で繊維を叩解し、混抄させた後、その水希薄原料を、スダレ、網目状のワイヤー体などの上に流し込み、しかる後に搾水、加温を行うことにより水分を蒸発させて作られる。この時原料であるセルロースの水酸基間の水素結合で繊維間の強度が得られる。
【0067】
また抄造の際、印刷適正を付与するため、てん料としてクレイ、タルク、炭酸カルシウム、二酸化チタンなどを添加したり、サイズ剤としてロジン、アルキル・ケテン・ダイマー、無水ステアリン酸、アルケニル無水こはく酸、ワックスなどを添加してもよい。また、紙力増強剤として変性デンプン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、尿素、ホルムアルデヒド、メラミン、ホルムアルデヒド、ポリエチレンイミンなどを添加してもよい。
【0068】
このような抄紙の際、スレッド体を漉き込む場合には、針金あるいは薄板(金属その他)を切り抜いて作った型をワイヤーパート上に固定したものを漉き網として使い、この部分にスレッド体をその金属光沢側が位置するように当接させた後、スレッド体が隠れるように漉き込みを行えばよい。
【0069】
図4は、このようにして作製された本発明に係る真偽判定用紙の平面状態の構成を示している。また、図5はその断面状態の構成を示す図で、Aはスレッド体(402)が表面に露出している部分の断面状態を、Bはスレッド体(402)が紙基材中に漉き込まれている部分の断面状態をそれぞれ示している。
【0070】
従来、反射性薄膜層を有する箔やOVD箔は金券などの用紙の上に貼り付けた構成のものであるため、電子複写物の上に使用済の箔またはシールを切ったり、溶剤等で上手に剥がしたものを貼り付けたり、さらには極めて似た箔を作って貼り付けると、本物と見分けがつき難かった。しかし、本発明の真偽判定用紙においては、紙基材に検証機能を有するスレッド体が漉き込まれていて、表面側から偏光板もしくは偏光板を一部に具備してなる検証具を重ね合わせて観察することにより、内在していた色変化情報の検証が色相の変化やパターンの現出を伴ってできるようになり、真偽の判定などを簡便かつ確実に行うことができることができる。
【0071】
以下本発明の実施例について述べる。
【実施例1】
【0072】
厚さがそれぞれ35μm、39μm、56μmの複屈折性を有するセロハンフィルムを用意し、それぞれのセロハンフィルムの背面側全面に真空蒸着法を用いて厚さが50nmのアルミニウムからなる金属反射層を形成し、さらにその上に、下記組成の粘着剤からなる薄膜をグラビア印刷法により成膜し、しかる後に110℃で乾燥させ、厚さが2.0μmの貼着層を形成し、本発明の実施例1に係る検証機能を有するステッカーを得た。
【0073】
そして、検証具である直線偏光板をそれらの色変化情報内在シートに重ねて観察すると、それぞれが青色、緑色、赤色を呈し、各ステッカーに内在する色変化情報が検証できた。
<粘着剤の組成>
アクリル系粘着剤 …30部
メチルエチルケトン …50部
トルエン …50部
【実施例2】
【0074】
厚さが21μmのセロハンフィルムの表面側の一部にホットスタンピングにより銀箔パターンを箔押した。また、背面側の全面には真空蒸着法を用いて厚さが50nmのアルミニウムからなる金属反射層を形成し、さらにその上に、実施例1と同様な方法で、厚さが2.0μmの貼着層を形成し、本発明の実施例2に係る検証機能を有するステッカーを得た。
【0075】
得られたステッカーは、通常の目視では銀色に観察されたが、検証具である円偏光板を重ねて観察すると、銀箔パターンの部分が黒色を呈し、その他の部分は白(銀)色を呈し、銀箔パターンの形状に対応した黒色パターンが現れ、内在する色変化情報が検証できた。
【実施例3】
【0076】
下記フィルム1の表面側に塩酢ビよりなる接着剤をグラビアコータで膜厚が1μmとなるようにコーティングしてから、フィルム1の金属反射層の上に、下記フィルム2を絵柄の部分が上となるようにドライラミネートで位置合わせしをながら貼り合せ、実施例3に係る本発明の検証機能を有するステッカーを作製した。
【0077】
得られたステッカーは、通常の目視では銀色に観察されたが、下記する構成の検証具を重ねて観察すると、フィルム2上のメタリックインキで印刷した絵柄が緑色を呈し、フィルム1にメタリックインキで印刷した絵柄は赤色を呈し、それ以外の部分が青色を呈し、青色のパターンが現出し、内在する色変化情報が検証できた。
<フィルム1>
厚さが24μmのセロハンフィルムの表面側にメタリックインキにより絵柄を印刷し、背面側には膜厚が50nmのアルムニウムからなる金属反射層を真空蒸着法で設けたフィルム。
<フィルム2>
厚さが17μmのセロハンフィルムの表面側にメタリックインキで絵柄を印刷して作製したフィルム。
<検証具>
直線偏光板に厚さが39μmのセロハンフィルムを積層してなる専用検証具。
【実施例4】
【0078】
厚さが35μm、39μmの複屈折性を有するセロハンフィルムの背面に真空蒸着法により厚さが50nmのアルミニウムからなる金属反射層を形成した。続いて、金属反射層の上に、アクリル系接着剤(東洋モートン(株)製:ADCOTE−S35)を塗布し、乾燥させ、厚さが4μmの貼着層を形成した。その後、得られた積層シートをマイクロスリッターを用いて1.5mm幅でスリットしスリット体を得た。得られたスリット体はボビンに巻き取った。
【0079】
次に、針葉樹パルプを叩解し、混抄させた水希薄原料を手漉き装置に供給し、前記工程で得られたスレッド体をワイヤーで抄いて、実施例4に係る本発明の真偽判定用紙(105g/m2 )を作成した。得られた真偽判定用紙の上に上記した構成の検証具を重ね合わせて観察したところ、35μmの厚さのセロハンフィルムを有するものは、露出しているスレッド体の部分が青色に認識され、39μmの厚さのセロハンフィルムを有するものは、露出しているスレッド体の部分が緑色に認識され、それぞれに内在する色変化情報を検証することができた。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の検証機能を有するステッカーの概略の断面構成とこのステッカーに内在する色変化情報の検証原理を示す説明図である。
【図2】本発明の他の検証機能を有するステッカーの概略の断面構成とこのステッカーに内在する色変化情報の検証原理を示す説明図である。
【図3】図2に示すような構成のステッカーを一部が貼着されてなる真偽判定媒体の色変化情報を所定の検証具を用いて検証しているときの検証原理を示す説明図である。
【図4】本発明の真偽判定用紙の平面状態を示す構成説明図である。
【図5】図4に示す真偽判定用紙のa−a′線とb−b′線における断面部分の構成説明図である。
【符号の説明】
【0081】
101 複屈折性透明層
102 背面側の金属反射層
103 検証器(直線偏光板)
104 105 106 光
107 光源
108 観測者
109 貼着層
201 複屈折性透明層
202 背面側の金属反射層
203 層間の金属反射層
204 複屈折性透明層
205 表面側の金属反射層
206 検証器(直線偏光板)
207 208 209 光
210 光源
211 観測者
212 貼着層
301 複屈折性透明層
302 背面側の金属反射層
303 層間の金属反射層
304 複屈折性金属層
305 表面側の金属反射層
306 複屈折性透明層
307 直線偏光板
308 309 310 光
311 光源
312 観測者
313 貼着層
401 紙基材
402 スレッド体
502 複屈折透明層
503 複屈折透明層
504 金属反射層
505 貼着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層の複屈折性透明層を有していると共に、その背面側の少なくとも一部の領域には金属反射層が設けられ、さらにその上には所望の媒体上に貼着させるための貼着層が積層されていることを特徴とする検証機能を有するステッカー。
【請求項2】
前記複屈折性透明層の表面側の一部の領域には金属反射層が設けられていることを特徴とする請求項1記載の検証機能を有するステッカー。
【請求項3】
複数の複屈折性透明層を有していると共に、これらの複屈折性透明層は積層されていて複屈折性透明積層体を構成していることを特徴とする請求項1または2記載の検証機能を有するステッカー。
【請求項4】
前記複屈折性透明積層体の複屈折性透明層の層間部分の一部の領域には金属反射層が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の検証機能を有するステッカー。
【請求項5】
前記複屈折性透明層が延伸樹脂フィルムからなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の検証機能を有するステッカー。
【請求項6】
前記複屈折性透明層が一軸延伸樹脂フィルムからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の検証機能を有するステッカー。
【請求項7】
前記複屈折性透明層がセロハンフィルムからなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の検証機能を有するステッカー。
【請求項8】
前記複屈折性透明層がポリカーボネートフィルムからなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の検証機能を有するステッカー。
【請求項9】
前記請求項1〜8のいずれかに記載の検証機能を有するステッカーが一部に貼着されていることを特徴とする真偽判定媒体。
【請求項10】
少なくとも1層のスレッド状複屈折性透明層を有していると共に、その背面側の少なくとも一部の領域には金属反射層が設けられていることを特徴とする検証機能を有するスレッド体。
【請求項11】
前記複屈折性透明層の表面側の一部の領域には金属反射層が設けられていることを特徴とする請求項10記載の検証機能を有するスレッド体。
【請求項12】
スレッド状複屈折性透明層の背面側には金属反射層の形成部分を含む全域に貼着層が積層されていることを特徴とする請求項10または11に記載の検証機能を有するスレッド体。
【請求項13】
複数の複屈折性透明層を有していると共に、これらの複屈折性透明層は積層されていて複屈折性透明積層体を構成していることを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載の検証機能を有するスレッド体。
【請求項14】
前記複屈折性透明積層体の複屈折性透明層の層間部分の一部の領域には金属反射層が設けられていることを特徴とする請求項10〜13のいずれかに記載の検証機能を有するスレッド体。
【請求項15】
前記複屈折性透明層が延伸樹脂フィルムからなることを特徴とする請求項10〜14のいずれかに記載の検証機能を有するスレッド体。
【請求項16】
前記複屈折性透明層が一軸延伸樹脂フィルムからなることを特徴とする請求項10〜15のいずれかに記載の検証機能を有するステッカー。
【請求項17】
前記複屈折性透明層がセロハンフィルムからなることを特徴とする請求項10〜16のいずれかに記載の検証機能を有するスレッド体。
【請求項18】
前記複屈折性透明層がポリカーボネートフィルムからなることを特徴とする請求項10〜16のいずれかに記載の検証機能を有するスレッド体。
【請求項19】
請求項10〜18のいずれかに記載の検証機能を有するスレッド体がその表面の一部が露出するように紙基材中に漉き込まれていることを特徴とする真偽判定用紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−101991(P2007−101991A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−293349(P2005−293349)
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】