極薄ポリマー接着層
インプリント・リソグラフィーのインプリント用スタックは、基板および該基板に接着したポリマー接着層を含む。ポリマー接着層は、少なくとも約2nmの伸びきり骨格長さを有するポリマー成分を含む。このポリマー成分の骨格は、基板の表面に、本質的に、平面状配置で整列し得るので、ポリマー接着層の厚さは、約2nm未満である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許法第119条(e)(1)の下で、2007年12月4日に出願された米国特許仮出願第60/992179号の利益を主張し、この仮出願は、ここに於いて、参照によって本明細書に組み込まれる。本出願はまた、米国特許法第120条の下で、2005年7月22日に出願された、米国特許出願第11/187406号および米国特許出願第11/187407号、ならびに2007年4月12日に出願された米国特許出願第11/734542号の一部継続出願であり、ここに於いて、これらの特許出願の全ては参照によって本明細書に組み込まれる。米国特許出願第11/734542号は、米国特許出願第11/187406号および米国特許出願第11/187407号の一部継続出願である。
【0002】
(連邦政府による資金提供を受けた研究または開発に関する記載)
合衆国政府は、米国立標準技術研究所(NIST)ATP Awardによって助成された70NANB4H3012の条項によって規定される通り、本発明におけるペイド−アップ・ライセンス(paid−up license)、および、妥当な期間、他の者に使用を許可するように、特許所有者に要求する、限定された状況における権利を有する。
【0003】
(技術分野)
発明の分野は、広く、ナノ構造作製に関する。より詳細には、本発明は、極薄(ultra−thin)ポリマー接着層を対象とする。
【背景技術】
【0004】
ナノ構造作製は、100ナノメートルの程度またはこれより小さいフィーチャを有する非常に小さい構造体の作製を含む。ナノ構造作製がかなり大きな影響を有している1つの用途は、集積回路の加工におけるものである。半導体加工産業は、基板上に形成される、単位面積当たりの回路数を増やすと同時に、より大きな製造歩留まりを求めて懸命に努力し続けており、それゆえに、ナノ構造作製は益々重要になっている。ナノ構造作製は、より大きなプロセス制御を可能にし、同時に、形作られる構造の最小フィーチャ寸法を継続的に減少させることを許す。ナノ構造作製が用いられている他の開発分野には、バイオテクノロジー、光学技術、機械システムなどが含まれる。
【0005】
今日用いられている代表的なナノ構造作製技術は、一般に、インプリント・リソグラフィーと呼ばれている。代表的なインプリント・リソグラフィー法は、非常に多くの出版物に、例えば、米国特許出願公開第2004/0065976号、米国特許出願公開第2004/0065252号、および米国特許第6936194号に詳細に記載されており、これらは全て、ここに於いて、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0006】
前記米国特許出願公開および特許のそれぞれにおいて開示されているインプリント・リソグラフィー技術は、形成可能(formable)(重合性)層にレリーフ・パターンを形成すること、およびレリーフ・パターンに対応するパターンを下にある基板に転写することを含む。基板は、パターン形成プロセスを容易にする望ましい位置を取るように、移動ステージに連結され得る。パターン形成プロセスは、基板から間隔を置いて配置されたテンプレートと、テンプレートと基板の間に付けられる形成可能液体とを用いる。形成可能液体は、形成可能液体に接するテンプレートの表面形状に相補的なパターンを有する堅い層を形成するように、固化する。固化の後、テンプレートは、テンプレートと基板が距離を置くように、堅い層から引き離される。次いで、基板および固化した層は、固化した層におけるパターンに対応するレリーフ像を基板に転写させるためのさらなるプロセスに従う。
【発明の概要】
【0007】
一態様において、インプリント・リソグラフィーのインプリント用スタックは、基板および該基板に接着したポリマー接着層を含む。別の態様において、接着層は、重合性組成物をインプリント・リソグラフィー基板上にスピンコートすること、および重合性組成物を固化させて、インプリント・リソグラフィー基板に接着したポリマー接着層を形成することによって、インプリント・リソグラフィー基板上に形成される。さらに別の態様において、重合性組成物は、インプリント・リソグラフィー基板上にスピンコートされる。この重合性組成物は、少なくとも約2nmの伸びきり骨格(extended backbone)を有するポリマー成分を含む。ポリマー成分の骨格は、インプリント・リソグラフィー基板の表面に沿って、本質的に、平面状配置(planar configuration)で整列する。重合性組成物は、固化して、ポリマー接着層を形成する。ポリマー接着層の厚さは約2nm未満である。
【0008】
ある実施では、ポリマー接着層の厚さは約1nmである。ポリマー接着層は、少なくとも約2nmの伸びきり骨格長さを有するポリマー成分を含む組成物から形成され得る。ある場合には、ポリマー成分は、芳香族基を含む化合物から合成される。ある場合には、ポリマー成分は、クレゾールエポキシノボラックから合成される。いくつかの実施形態において、ポリマー成分は、基板に結合することできるカルボキシル官能基、およびインプリント・レジストと結合することができるさらなる官能基を含む。ポリマー接着層は、インプリント・スタック上でインプリント・レジストが固化する間に、インプリント・レジストと結合することが可能であり得る。
【0009】
本発明がより詳細に理解され得るように、本発明の実施形態の説明が、添付図に示されている実施形態を参照して行われる。しかし、添付図は、本発明の典型的な実施形態のみを例示しており、それゆえに、範囲の限定であると見なされるべきではないことに注意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】先行技術によるリソグラフィー・システムの単純化された説明図である。
【図2】テンプレート、および本発明による基板上に配置されたインプリント用材料の単純化された正面図である。
【図3】インプリント用材料が層上でパターン化され固化されたものとして示された、図2に示されているテンプレートおよび基板の単純化された正面図である。
【図4】固化したインプリント用材料とテンプレートとの間の接着阻害層(weak boundary)ラメラの生成を例示する、インプリント用材料に接触するテンプレートの横断面図を示す。
【図5】界面活性剤の豊富な部分および界面活性剤の欠乏した部分への液滴の分岐を示す、図2に示されているインプリント材料の液滴の詳細図である。
【図6】界面活性剤の豊富な部分および界面活性剤の欠乏した部分への層の分岐を示す、スピン−オン技術を用いて付着されたインプリント用材料の層の詳細図である。
【図7】図5または6のいずれかに示されるように付着され、プライマー層を含む基板上に形成された、固化したインプリント用材料に接触するテンプレートの横断面図である。
【図8】プライマー層を形成するために用いられ得る組成物の成分の化学構造を示す図である。
【図9】プライマー層を形成するために用いられ得る組成物の成分の化学構造を示す図である。
【図10】プライマー層を形成するために用いられ得る組成物の成分の化学構造を示す図である。
【図11】プライマー層を形成するために用いられ得る組成物の成分の化学構造を示す図である。
【図12A】ポリマー接着層の厚さ測定の測定箇所を示す図である。
【図12B】ポリマー接着層の厚さ測定の測定箇所を示す図である。
【図13】ポリマー接着層によりコートされたシリコン・ウェハの横断面の走査電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1および2を参照すると、本発明に従って、モールド36がシステム10で用いられ、本質的に平滑なまたは平坦な輪郭を有する表面を定め得る(示されていない)。代わりに、モールド36は、間隔を置いて離れた複数の凹部38および凸部40によって画定されるフィーチャを含み得る。複数のフィーチャは、基板42の上に形作られるパターンの基を成す元のパターンを定める。基板42は、露出したウェハ、または、1つもしくは複数の層(それらの1つがプライマー層45として示されている)がその上に配置されたウェハを含み得る。その目的のために、狭められるのは、モールド36と基板42の間の間隔「d」である。この様にして、モールド36のフィーチャは、基板42の相補的形成可能部分(例えば、本質的に平坦な輪郭を呈する表面44の一部に配置されたインプリント用材料)にインプリントされ得る。インプリント用材料は、知られているどのような技術(例えば、スピンコート法、ディップコート法など)を用いて配置されてもよいことが理解されるべきである。しかし、この例では、インプリント用材料は、基板42上で、間隔を置いて分離した複数の液滴46として配置されている。インプリント用材料は、それに元のパターンを記録し、記録されたパターンを画定するために、選択的に重合され、架橋され得る組成物から成る。
【0012】
具体的には、インプリント用材料に記録されるパターンは、一つには、モールド36との相互作用、例えば、電気的相互作用、磁気的相互作用、熱的相互作用、機械的相互作用などによって生成される。この例では、表面44上にインプリント用材料の連続した形成物(contiguous formation)50を生じるように、モールド36が、インプリント用材料と機械的な接触状態になり、液滴36を押し広げる。一実施形態において、間隔「d」は、インプリント用材料の副部分(sub−portion)52が凹部38に入り、それを満たせるように狭められる。凹部38を満たし易くするために、モールド36と液滴46との間の接触の前に、モールド36と液滴46との間の雰囲気は、ヘリウムにより飽和している、または完全に排気されている、または部分的に排気されたヘリウム雰囲気である。
【0013】
インプリント用材料は、インプリント用材料の連続した形成物により表面44を覆うと同時に、凹部38を満たし得る。この実施形態では、凸部40と重なり合うインプリント用材料の副部分54は、所望の、通常は最低限度の、間隔「d」に達した後、残存する。この動作は、厚さt1を有する副部分52、および厚さt2を有する副部分54を有する形成物50をもたらす。厚さ「t1」および「t2」は、用途に応じて、望まれるどのような厚さであってもよい。その後、形成物50は、それを、インプリント用材料に応じて、適切な硬化作用因子、例えば、化学線エネルギー(例えば、広帯域紫外エネルギー)、熱エネルギーなどに曝すことによって固化される。これは、インプリント用材料に、重合および架橋を引き起こす。この全プロセスは、雰囲気温度および圧力で、または所望の温度および圧力を有する環境制御チャンバにおいて実施され得る。この様にして、形成物50は固化されて、モールド36の表面58の形状に相補的な形状を有するその面56をもたらす。
【0014】
図1、2および3を参照すると、用いられる独特のパターン形成法に照らして、基板42に効率よくパターン形成するのに、インプリント用材料の特性が重要である。例えば、厚さt1の全てが本質的に均一で、厚さt2の全てが本質的に均一であるように、モールド36のフィーチャを迅速に、また一様に満たすことを容易にする、ある種の特性を、インプリント用材料が有することが望まれる。その目的のために、インプリント用材料の粘度が、用いられる付着方法に基づいて、前記特性を実現するように定められることが望ましい。前記のように、インプリント用材料は、様々な技術を用いて、基板42に付着され得る。インプリント用材料が、間隔を置いて分離した複数の液滴46として付着されるとすると、インプリント用材料を生成する組成物が、例えば、0.5から20センチポイズ(cP)の範囲の、比較的低い粘度を有することが望まれると思われる。インプリント用材料が、押し広げられ、同時に、パターン形成され、そのパターンは、次に、放射への暴露によって形成物50へと固化されることを考えると、組成物が基板42および/またはモールド36の表面を濡らし、重合後のピットまたは穴の続いて起こる生成を防ぐことが望まれると思われる。インプリント用材料がスピンコート法を用いて付着されるとすると、例えば、10cPを超え、典型的には、数百から数千cPの粘度(粘度測定は、溶媒を含まない状態で行われるとする)を有する、より高い粘度の材料を用いることが望まれると思われる。
【0015】
前記特性(液相特性と呼ばれる)に加えて、組成物は、インプリント用材料に特定の固化相特性をもたせることが望ましい。例えば、形成物50の固化の後、インプリント用材料によって、選択的な接着および離型特性が示されることが望ましい。具体的には、インプリント用材料を生成する組成物が、基板42への選択的な接着、およびモールド36の選択的な離型を有する形成物50をもたらすと有益である。この様にすると、記録されたパターンからのモールド36の引き離しにより生じる、特に、形成物50の引き剥がし、引き伸ばしまたは他の構造上の劣化に起因する、記録されたパターンにおける歪みの確率が低下する。
【0016】
前記特性をもたせるための、インプリント用材料を生成する組成物の構成成分は、異なり得る。これは、基板42がかなりの数の異なる材料から形作られていることから生じる。結果的に、表面44の化学組成は、基板を形作る材料に応じて変わる。例えば、基板42は、シリコン、プラスチック、ガリウム・ヒ素、テルル化水銀、およびこれらの複合物から成り得る。前記のように、基板42は、プライマー層45として示されている1つまたは複数の層(この上に形成物50が生成される)、例えば、誘電体層、金属層、半導体層、平坦化層などを含み得る。その目的のために、プライマー層45が、何らかの適切な技術、例えば化学蒸着、スピンコート法などを用いて、ウェハ47の上に付着され得る。さらに、プライマー層45は、どのような適切な材料(例えば、シリコン、ゲルマニウムなど)から成っていてもよい。さらに、モールド36は、いくつかの材料、例えば、溶融シリカ、石英、酸化インジウムスズ、ダイヤモンド−ライク・カーボン、MoSi、ゾル−ゲルなどから成り得る。
【0017】
形成物50を生成する組成物が、いくつかの異なる種類の主材料(bulk material)から製造され得ることが見出されている。例えば、ほんの少数を挙げれば、組成物は、ビニルエーテル、メタクリラート、エポキシ、チオール−エンおよびアクリラートから製造され得る。
【0018】
形成物50を生成する代表的な主材料は、次の通りである。
主インプリント用材料
イソボルニルアクリラート
n−ヘキシルアクリラート
エチレングリコールジアクリラート
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン
【0019】
アクリラート成分であるイソボルニルアクリラート(IBOA)は、次の構造:
【0020】
【化1】
を有し、主材料の約47重量%を占めるが、20%から80%の範囲(境界値を含む)で存在し得る。結果的に、形成物50の機械的性質は、主としてIBOAに起因する。IBOAの代表的な供給元は、Sartomer Company,Inc.(Exton,ペンシルベニア州)であり、SR 506の製品名で入手可能である。
【0021】
成分のn−ヘキシルアクリラート(n−HA)は、次の構造:
【0022】
【化2】
を有し、主材料の約25重量%を占めるが、0%から50%の範囲(境界値を含む)で存在し得る。形成物50に柔軟性もまた付与しながら、n−HAは、主材料が、液相として、約10cP未満の粘度を有するように、主材料の粘度を下げるために用いられる。n−HA成分の代表的な供給元は、Aldrich Chenmical Company(ミルウォーキー、ウィスコンシン州)である。
【0023】
架橋成分であるエチレングリコールジアクリラートは、次の構造:
【0024】
【化3】
を有し、主材料の約25重量%を占めるが、10%から50%の範囲(境界値を含む)で存在し得る。EGDAはまた、モデュラスおよびスチフネスの増加にも寄与し、さらには、主材料の重合の間のn−HAとIBOAの架橋を容易にする。
【0025】
開始剤成分である、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンは、DAROCUR(登録商標)1173の商用名で、Ciba Specialty Chemicals(Tarrytown、ニューヨーク州)から入手可能であり、次の構造:
【0026】
【化4】
を有し、主材料の約3重量%を占めるが、1%から5%の範囲(境界値を含む)で存在し得る。開始剤が反応する化学線エネルギーは、中圧水銀ランプが発生する広帯域紫外エネルギーである。この様に、開始剤は、主材料の成分の架橋および重合を容易にする。
【0027】
ここに於いて、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第7307118号は、モールド36(表面58)と形成物50との間に、図3および4に示される、接着阻害層(ラメラ60)の生成を記載する。ラメラ60は、インプリント用材料の固化の後、残存する。結果的に、モールド36と形成物50との間の接着力は最低限である。その目的のために、有益であると分かったのは、上で検討された「主インプリント用材料」のような、いくつかの組成物の1つを、表面エネルギーの低い基を含む成分(界面活性剤成分と呼ばれる)と共に含む、インプリント用材料のための組成物を用いることであった。
【0028】
図5を参照すると、インプリント用材料の付着後、界面活性剤成分が、ある時間の後、空気・液体の界面に上昇して、材料の濃度が分岐したインプリント用材料の液滴146が生成する。第1部分(界面活性剤−成分−豊富(SCR)副部分136と呼ばれる)では、液滴146は、第2部分(界面活性剤−成分−欠乏(SCD)副部分137と呼ばれる)より高い濃度の界面活性剤成分を含む。SCD副部分137は、表面44とSCR副部分136の間に位置する。SCR副部分136は、インプリント用材料が一旦固化すると、モールド36とインプリント用材料との間の接着力を弱める。詳細には、界面活性剤成分は、性質が反対の複数の末端を有する。インプリント用材料が液相である、すなわち重合性である時、性質が反対の複数の末端の1つは、インプリント用材料に含まれる主材料に親和性を有する。残っている末端はフッ素成分を有する。
【0029】
図4および5を参照すると、主材料への親和性の結果として、界面活性剤成分は、インプリント用材料と周囲の雰囲気とによって定まる空気−液体界面から、フッ素成分が突き出るように配向する。
【0030】
インプリント用材料の固化に際して、インプリント用材料の第1部分は、ラメラ60を生成し、インプリント用材料の第2部分は固化する、すなわち、形成物50として示されるポリマー材料となる。ラメラ60は、形成物50とモールド36の間に位置する。ラメラ60は、SCR副部分136におけるフッ素成分の存在および位置により生じる。ラメラ60は、モールド36と形成物50との間に、強い接着力が生じることを防ぐ。詳細には、形成物50は、対向する第1および第2の面62および64を有する。面62は、モールド36に、第1接着力で接着する。面64は、基板42に、第2接着力で接着する。ラメラ60は、第2接着力より小さい第1接着力を生じる。結果的に、モールド36は、形成物50から容易に取り除かれ、歪み、および/または形成物50からモールド36を引き離すのに必要とされる力は、最低限になる。形成物50は、面62がパターン化されて示されているが、面62は、平坦でないとしても、平滑であり得ることが理解されるべきである。
【0031】
さらに、望まれる場合、形成物50と基板42の間に配置されるように、ラメラ60を生成させることが可能である。これは、例えば、インプリント用材料をモールド36に付け、次いで、モールド36上のインプリント用材料を、基板42に接触させることによって実現され得る。この様に、形成物50は、ラメラ60と本体(例えば、重合性材料がその上に配置されるモールド36または基板42)の間に配置されると言うことができる。インプリント用材料がスピンコート法を用いて付着されたとしても、類似の分岐した材料濃度が、SCR副部分236および2つ目のSCD副部分237についての図6に示されるように、発生することが理解されるべきである。分岐に要する時間は、組成物中の分子の大きさ、および組成物の粘度を含めて、いくつかの要因に依存する。20cP未満の粘度を有する組成物の前記分岐を実現するには、ほんの数秒のみが必要とされる。しかし、数百cPの粘度を有する材料は、数秒から数分を必要とし得る。
【0032】
しかし、ラメラ60は一様でないということもあり得ることが見出された。ラメラ60のある部分は他より薄く、ある極端な場合には、ラメラ60は、極めて小さいパーセンテージのテンプレート表面に存在せず、その結果、テンプレート36が形成物50と接触しているということがあり得る。ラメラ60の薄い部分およびラメラ60のないことの結果として、形成物50の歪みおよび/または基板42からの剥離が起こり得る。詳細には、モールド36の引き離しに際して、形成物50は、引き離し力FSを受ける。引き離し力FSは、モールド36への引張り力FP、および、ラメラによって低下した、形成物50とモールド36との間の接着力(例えば、ファン・デル・ワールス力)に起因する。ラメラ60の存在のせいで、引き離し力FSは、通常、形成物50と基板42との間の接着力FAの大きさより小さい大きさを有する。しかし、ラメラ60の減少、または不在により、局所引き離し力FSは、局所接着力FAの大きさに近づき得る。局所力によって意味されるものは、ラメラ層60の所定の部分に存在する力であり、これは、この例では、ラメラ層60薄い部分またはラメラ層60が本質的に存在しない箇所の近傍の局所力である。これは、形成物50の歪みおよび/または基板42からの剥離につながる。
【0033】
図7を参照すると、プライマー層45の存在の下では、2つの境界66および68の存在のせいで、より複雑な状況が存在する。第1界面66には、プライマー層45と形成物50との間に、第1接着力F1が存在する。第2界面68には、プライマー層45とウェハ47との間に、第2接着力F2が存在する。引き離し力FSが、接着力F1およびF2のいずれよりも小さい大きさを有することが望まれる。しかし、前記のように、ラメラ60の厚さの変動、または不在のせいで、引き離し力FSは、接着力F1およびF2の一方または両方の大きさに似る、または近づき得る。これは、プライマー層45からの形成物50の、ウェハ47からのプライマー層45の、または両方の剥離を引き起こし得る。
【0034】
本発明は、第1および第2界面の第1(F1)および第2(F2)接着力がそれぞれ、ラメラ層の変動を考慮に入れた引き離し力FSより大きい確率を増す材料により、プライマー層45を形成することによって、前記剥離の問題を、回避しないとしても、小さくする。その目的のために、プライマー層45は、境界66で(すなわち、プライマー層と形成層50の間に)、さらには、すなわち、境界66、プライマー層45およびウェハ47の間に、強い結合を生じる組成物から形成される。この例では、第1界面でのプライマー層45と形成物50の間の接着は、共有結合の結果である、すなわち、プライマー層45を形作る組成物と、形成物50を形作る組成物との間に共有結合が存在する。プライマー層45とウェハ47との間の接着は、様々な作用(mechanism)のいずれか1つを通じて達成され得る。これらの作用は、プライマー層45を形作る組成物と、ウェハ47を形作る材料との間に生じる共有結合を含み得る。共有結合の代わりに、またはそれに加えて、イオン結合が、プライマー層45を形作る組成物と、ウェハ47を形作る材料との間に生じ得る。共有結合、および/またはイオン結合あるいは両方の代わりに、またはそれらに加えて、プライマー層45を形作る組成物と、ウェハ47を形作る材料との間の接着は、面同士のファン・デル・ワールス力によって達成され得る。
【0035】
これは、多官能反応性化合物、すなわち、2つ以上の官能基を含み、一般的に、次のように表される化合物を含む組成物からプライマー層45を形作ることによって実現される。
【0036】
【化5】
式中、R、R’、R’’およびR’’’は連結基であり、x、y、zは、それらに関連する基の平均繰返し数である。これらの繰返し単位は、ランダムに分布していることもあり得る。基XおよびX’は、官能基を表し、通常、官能基Xは官能基X’とは異なると理解されている。官能基XおよびX’の1つ、例えばX’は、基板42を形作る材料との交差反応(cross−reaction)を実現して、基板と共有結合を、基板とイオン結合を、また/またはファン・デル・ワールス力を生じることによって、基板に接着するように選択される。
【0037】
官能基XおよびX’の残りの1つ、例えばXは、形成物50を形作る材料との交差反応を実現して、それらの間に供給結合を生じるように選択される。X基の官能基は、形成物50の重合の間に、交差反応が起こるように定められる。結果的に、官能基Xの選択は、形成物50を形作る材料の特性に応じて決まり、官能基Xは、形成物50を形作る組成物の官能基と反応することが望まれる。例えば、形成物50がアクリラートモノマーから形作られるとすると、Xは、アクリル、ビニルエーテル、および/またはアルコキシ官能基、および/または形成物50のアクリル官能基と共重合し得る官能基から成り得る。結果的に、X官能基は、紫外化学線エネルギーに感応して、交差反応する。
【0038】
官能基X’はまた、プライマー層45の架橋および重合反応にも参加し得る。通常、X’官能基は、X官能基が感応して交差反応する化学線エネルギーとは異なる化学線エネルギーに感応して重合および架橋を促進する。この例におけるX’官能基は、熱エネルギーへの暴露に感応して、プライマー層45の分子の架橋を促進する。通常、官能基X’は、以下の3つの機構を通じて基板42との交差反応を促進するように選択される:1)基板42を形作る材料との直接反応;2)基板42と反応する架橋剤の架橋性官能基による、架橋剤分子との反応;および3)形成物50と基板42との間を連結するのに十分な長さの分子鎖が成長し得るような、プライマー層45の重合および架橋。
【0039】
図7および8を参照すると、「主材料」から形成されている形成物50の存在の下で、プライマー層45を形成するために用いられ得る例示的な多官能反応性化合物は、β−CEAの製品名で、UCB Chemicals(Smyrna、ジョージア州)から入手可能な、β−カルボキシエチルアクリラートを含む。β−CEAは、次の構造を有する脂肪族化合物である。
【0040】
【化6】
X’官能基70はカルボキシル官能基を供給する。X官能基72は、アクリラート官能基を供給する。官能基70および72は、骨格構成部分74の反対側の末端につながっている。
【0041】
図7および9を参照すると、「主材料」から形成されている形成物50の存在の下で、プライマー層45を形成するために用いられ得る別の多官能反応性化合物は、EBECRYL(登録商標)3605の製品名で、UCB Chemicals(Smyrna、ジョージア州)から入手可能な、次の構造を有する芳香族ビス−フェニル化合物を含む。
【0042】
【化7】
X’官能基76は、エポキシ官能基を供給する。X官能基78は、アクリラート官能基を供給する。官能基76および78は、骨格構成部分80の反対側の末端につながっている。
【0043】
図7および10を参照すると、「主材料」から形成されている形成物50の存在の下で、プライマー層45を形成するために用いられ得る別の多官能反応性化合物は、ISORAD(登録商標)501の製品名で、Schenectady International,Inc.(Schenectady、ニューヨーク州)から入手可能な、芳香族化合物を含む。X’官能基82は、カルボキシル官能基を供給する。X官能基84は、アクリラート官能基を供給する。官能基82および84は、骨格構成部分86の反対側の末端につながっている。
【0044】
合成手順に応じて、ISORAD(登録商標)501は、下に示される構造AまたはB、あるいは類似の構造を有し得る。
【0045】
【化8】
【0046】
【化9】
構造AおよびBにおいて、xおよびyは、繰返し単位の数を示す整数である。繰返し単位の分布はランダムであり得る。
【0047】
構造AおよびBは、下に示されるクレゾールエポキシノボラック(x+y=nであり、nは、8から11の範囲(境界値を含む)の繰返し数である)から製造され得る。それゆえに、構造AおよびBの分子量は、約2,000から約4,000ダルトンの範囲にある。
【0048】
【化10】
【0049】
構造AおよびBの高い分子量は、接着層の機械的強度の増加に寄与する。一般に受け入れられている約0.14nmの炭素−炭素結合距離を用いると、構造AおよびBのポリマー骨格は、線状に引き伸ばされた場合、約2nmから約4nmの範囲にある。
【0050】
図7および11を参照すると、形成物50との交差反応に加えて、官能基Xは、形成物50を生成する組成物の固化の間、その重合を促進する機能を果たすラジカルを生成し得る。結果的に、官能基Xは、化学線エネルギー、例えば、広帯域紫外エネルギーへの暴露による、形成物50の重合を促進すると想定される。これらの性質を伴う例示的な多官能反応性化合物は、IRGACURE(登録商標)2959の商用名で、Ciba Specialty Chemicals(Tarrytown、ニューヨーク州)から入手可能で、次の構造を有する光開始剤である。
【0051】
【化11】
X’官能基90は、ヒドロキシル官能基を供給する。X官能基92は、開始剤型の官能基を供給する。具体的には、広帯域紫外エネルギーへの暴露に感応して、官能基Xは、アルファ−開裂を受けて、ベンゾイル型のラジカルを生成する。このラジカルは、形成物50を形作る組成物の重合を促進する。官能基90および92は、骨格構成部分94の反対側の末端につながっている。
【0052】
界面66および68の接着強度を求めるために、前記の多官能反応性化合物のいずれかを含むいくつかの組成物をつくった。多官能反応性化合物を含む例示的組成物は、次の通りである。
組成物1
β−CEA
DUV30J−16
ここで、DUV30J−16は、組成物1の約100グラムを成し、β−CEAは約0.219グラムを成す。DUV30J−16は、Brewer Science(Rolla、ミズーリ州)から入手可能なボトム反射防止コーティング(BARC)であり、93%の溶媒、および7%の非溶媒反応性成分を含む。DUV30J−16は、フェノール樹脂を含み、その架橋剤は、カルボン酸官能基と反応できる。DUV30J−16は、形成物50とは共有結合を生じないと考えられる。
【0053】
別の組成物では、β−CEAを、架橋剤、触媒およびISORAD(登録商標)501に置き換えた。架橋剤および触媒のいずれも、Cytec Industries,Inc.(West Patterson、ニュージャージー州)によって販売されている。架橋剤は、CYMEL(登録商標)303ULFの製品名で販売されている。CYMEL(登録商標)303ULFの成分は、ヘキサメトキシメチル−メラミン(HMMM)である。HMMMのメトキシ官能基は、多くの縮合反応に参加し得る。触媒は、CYCAT(登録商標)4040の製品名で販売されており、次の組成物が得られる。
組成物2
DUV30J−16
ISORAD(登録商標)501
CYMEL(登録商標)303ULF
CYCAT(登録商標)4040
組成物2の約100グラムは、DUV30J−16から成り、組成物2の0.611グラムは、ISORAD(登録商標)501から成り、組成物2の0.175グラムは、CYMEL(登録商標)303ULFから成り、また組成物2の0.008グラムは、CYCAT(登録商標)4040から成る。
【0054】
多官能性反応性コンパウンドとして用いられ得る別の組成物は、DUV30J−16を除く。この組成物は次の通りである。
組成物3
ISORAD(登録商標)501
CYMEL(登録商標)303ULF
CYCAT(登録商標)4040
PM Acetate
組成物3は、約77グラムのISORAD(登録商標)501、22グラムのCYMEL(登録商標)303ULF、および1グラムのCYCAT(登録商標)4040を含む。ISORAD(登録商標)501、CYMEL(登録商標)303ULF、およびCYCAT(登録商標)4040は一緒にする。次いで、ISORAD(登録商標)501、CYMEL(登録商標)303ULF、およびCYCAT(登録商標)4040の組合せを、約1900グラムのPM Acetateに添加する。PM Acetateは、Eastman Chemical Company(Kingsport、テネシー州)によって販売されている、2−(1−メトキシ)プロピルアセタートからなる溶媒の製品名である。
【0055】
「組成物4」は、「組成物3」に似て、約85.2グラムのISORAD(登録商標)501、13.8グラムのCYMEL(登録商標)303ULF、および1グラムのCYCAT(登録商標)4040を含む。ISORAD(登録商標)501、CYMEL(登録商標)303ULF、およびCYCAT(登録商標)4040は一緒にする。次いで、ISORAD(登録商標)501、CYMEL(登録商標)303ULF、およびCYCAT(登録商標)4040の組合せを、約1900グラムのPM Acetateに添加する。
【0056】
「組成物5」は、「組成物3」に似て、約81グラムのISORAD(登録商標)501、18グラムのCYMEL(登録商標)303ULF、および1グラムのCYCAT(登録商標)4040を含む。ISORAD(登録商標)501、CYMEL(登録商標)303ULF、およびCYCAT(登録商標)4040は一緒にする。次いで、ISORAD(登録商標)501、CYMEL(登録商標)303ULF、およびCYCAT(登録商標)4040の組合せを、約1900グラムのPM Acetateに添加する。
【0057】
プライマー層45に関して上に記載した5つの組成物(「組成物1〜5」)の各々を、スピンコート法を用いて基板42に付着させる(この時、均一な厚さを有する平坦な層でないとしても、本質的に滑らかな層を得るために、基板は、500と4,000回転/分の間の速度で回転させる)。この後、これらの組成物を180℃(セルシウス)の熱化学線エネルギーに約2分間曝す。
【0058】
前記5つの組成物(「組成物1〜5」)を「インプリント用材料」と共に用いて、境界66および68の接着力の強さに関する比較用データを得て、これを、「インプリント用材料」から生成される形成物50と共有結合を生じるとは知られていない、完全にDUV30J−16だけから生成されるプライマー層45についての基準測定値と比較した。その目的のために、「主インプリント用材料」から生成される形成物50、および「組成物1〜5」から生成されるプライマー層45を、2枚のガラス・スライド(示していない)の間に付着させ、固化した。各ガラス・スライド(示していない)は、厚さ約1mmで、横方向寸法75×25mmである。
【0059】
プライマー層45および形成物50の付着の前に、ガラス・スライド(示していない)を清浄にする。具体的には、各ガラス・スライド(示していない)を、ピラニア溶液(H2SO4:H2O2=2.5:1(容積))に曝す。次に、ガラス・スライド(示していない)を、脱イオン水によりリンスし、イソプロピルアルコールを噴霧し、乾燥のために流体の流れ(例えば、窒素ガスの流れ)に曝す。その後、ガラス・スライド(示していない)を、120℃で2時間、ベーキングする。
【0060】
プライマー層45は、3000rpmまでの回転速度でスピン−オン法を用い、2枚のガラス・スライド(示していない)のそれぞれの上に付着させる。プライマー層45は、180℃のホット・プレート上で2分間、ガラス・スライド(示していない)上に置かれたままにする。別の言い方をすると、「組成物1〜5」のそれぞれ、さらに基準組成物は、熱エネルギーに曝すことによって、固化する、すなわち、重合し、架橋する。形成物は、前記のドロップ・ディスペンス法を用いて形作る。具体的には、「主インプリント用材料」を、2枚のガラス・スライドの一方の上のプライマー層上に複数の液滴として配置する。次いで、「主インプリント用材料」は、2枚のガラス・スライド(示していない)上のプライマー層を互いに向き合わせ、「主インプリント用材料」に接触させることによって、2つのプライマー層の間に挟み込む。通常、2枚のガラス・スライド(示していない)の一方の長手軸は、残りのガラス・スライド(示していない)の長手軸に直交している。「主インプリント用材料」は、2枚のガラス・スライド(示していない)を、化学線エネルギー、例えば広帯域紫外波長に、中圧水銀UVランプを用い、20mW/cm2の強度で40秒間、曝すことによって、固化する、すなわち、重合し、架橋する。
【0061】
接着の強さを測定するために、「Measurement of Adhesive Force Between Mold and Photocurable Resin in Imprint Technology」、Japanese Journal of Applied Physics、41巻(2002年)、4194〜4197頁に記載のものに似た、接着試験および技法に、4点曲げ試験装置(示していない)を採用した。最大の力/荷重を接着の数値と見なした。上部および下部の2つの点のビーム(beam)間隔は60mmである。荷重は、0.5mm/分の速度で加えた。この試験を用い、プライマー層45を基準組成物により形成した時には、剥離が6.1ポンドの力で起こることを確認した。「組成物1」によりプライマー層45を形成すると、剥離が起こる前に、約6.5ポンドの引き離し力に達した。「組成物2」によりプライマー層45を形成すると、剥離が起こる前に、約9.1ポンドの引き離し力に達した。「組成物3、4または5」のそれぞれによりプライマー層45を形成した時には、剥離が起こる前に、2枚のガラス・スライド(示していない)の一方または両方が折れた(割れた)。結果的に、11ポンドまでの力を、剥離を認めることなく、測定した。結果的に、もしラメラ層60が望ましくなく薄い部分を有する、または全く存在しないとしても、「組成物3、4および5」は、それが剥離を効果的に防ぐという点で優れた使用上の特性を有するプライマー層45をもたらすことが認められる。
【0062】
「組成物6」(「組成物5」に似た低固形分組成物)は、0.81グラムのISORAD(登録商標)501、0.18グラムのCYMEL(登録商標)303ULF、0.01グラムのCYCAT(登録商標)4040、および1999グラムのPM Acetateを含む。一例において、「組成物6」は、ウェハ上にキャストし、膜を生成するようにスピンさせることができる。スピン処理の間に、溶媒は蒸発し、薄い固体の膜が表面に生成する。組成物中に溶けた固体のパーセンテージおよびスピンコートの速度は、基板またはウェハ上に所望の膜厚を実現するように調整できる。スピンコートの後、接着層は、例えば、150℃のホット・プレート上での約1分間の接触ベーキングによって、硬化させることができる。
【0063】
図12Aおよび12Bは、8インチのシリコン・ウェハに1000rpmのスピン速度で前記のようにして付けられた「組成物6」でのポリマー接着層の厚さの測定箇所1200を示す。試料の固体膜の厚さ測定は、Metrosol,Inc.(オースチン、テキサス州)から入手可能な光計測システムを用いる分光反射測定法によって実施した。図12Aに示す59の測定箇所により、層の平均の厚さは1.09nmであり、最大の測定厚さは1.22nm、最小測定厚さは0.94nm、また標準偏差は0.05nmであることを確定した。図12Bに示す49の測定箇所により、層の平均の厚さは、VUV−7000型を用い、1.01nmであり、最大の測定厚さは1.07nm、最小測定厚さは0.95nm、また標準偏差は0.03nmであることを確定した。
【0064】
図13は、シリコン・ウェハ1302上の酸化ケイ素表面とアクリラート・インプリント・レジスト1304との間に、「組成物6」から形成されたポリマー接着層1300の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。ポリマー接着層1300は、約1nmの厚さである。試験は、1nmの厚さのポリマー接着層は、ずっと大きな(例えば、約6nmを超える)厚さを有する、類似の組成物のポリマー接着層の接着強度に似た接着強度を実現することを示した。すなわち、ポリマー接着層1300は、テンプレートの引き離しの間に加わる引張り荷重の下で、凝集破壊を示さない。
【0065】
驚くべきことに、約2nmを超える(例えば、約2nmから約4nmの範囲の)伸びきり骨格長さを有するポリマー成分を含むポリマー接着層組成物のスピンコートが、約2nm未満(例えば、約1nm)の厚さを有するポリマー接着層を形成することが示された。これらのポリマー成分は、ポリマー成分の骨格が、基板の表面に「立っている」(または、より垂直になっている)よりはむしろ、基板の表面に「横になっている」(または、より平行になっている)ように、スピンコートをしている間に整列したと考えられる。この様に基板の表面に対して整列したポリマー成分は、基板の表面で平面状配置にあり、ポリマー成分の長い方の寸法が、大部分は、基板の表面に沿って伸びており、基板上に極めて薄い層を形成していると考えられる。この極めて薄いポリマー接着層は、ずっと大きな厚さの接着層に付随すると一般に考えられる接着強度を実際に示し、ナノ−インプリント・リソグラフィーのためのインプリント・スタックの全体としての厚さの減少を許す。
【0066】
上に説明された、本発明の実施形態は例示である。多くの変更および修正が、本発明の範囲内に留まりながら、上に記された開示になされ得る。例えば、溶媒PM Acetateは、主に、組成物3、4および5の他の構成成分を溶かすために用いられている。結果的に、多くの普通の光−レジスト溶媒(例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、メチルアミルケトンなど)が、PM Acetateの代わりに用いられ得る。さらに、「組成物3、4および5」の固形含有物、すなわち、ISORAD(登録商標)501、CYMEL(登録商標)303ULFおよびCYCAT(登録商標)4040は、組成物の0.1重量%から70重量%の間を、より好ましくは、0.5重量%から10重量%の間を占め、残りの量は溶媒から成り得る。「組成物3、4および5」のそれぞれの固形成分は、50重量%から99重量%のISORAD(登録商標)501、1重量%から50重量%のCYMEL(登録商標)303ULF、および0重量%から10重量%のCYCAT(登録商標)4040から成り得る。したがって、本発明の範囲は、上の説明によって限定されるべきでなく、むしろ添付の特許請求の範囲と、それらの最大限の範囲の等価物とを考慮して決められるべきである。
【符号の説明】
【0067】
36 モールド; 45 プライマー層; 50 形成物; 47 ウェハ;
66、68 境界。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許法第119条(e)(1)の下で、2007年12月4日に出願された米国特許仮出願第60/992179号の利益を主張し、この仮出願は、ここに於いて、参照によって本明細書に組み込まれる。本出願はまた、米国特許法第120条の下で、2005年7月22日に出願された、米国特許出願第11/187406号および米国特許出願第11/187407号、ならびに2007年4月12日に出願された米国特許出願第11/734542号の一部継続出願であり、ここに於いて、これらの特許出願の全ては参照によって本明細書に組み込まれる。米国特許出願第11/734542号は、米国特許出願第11/187406号および米国特許出願第11/187407号の一部継続出願である。
【0002】
(連邦政府による資金提供を受けた研究または開発に関する記載)
合衆国政府は、米国立標準技術研究所(NIST)ATP Awardによって助成された70NANB4H3012の条項によって規定される通り、本発明におけるペイド−アップ・ライセンス(paid−up license)、および、妥当な期間、他の者に使用を許可するように、特許所有者に要求する、限定された状況における権利を有する。
【0003】
(技術分野)
発明の分野は、広く、ナノ構造作製に関する。より詳細には、本発明は、極薄(ultra−thin)ポリマー接着層を対象とする。
【背景技術】
【0004】
ナノ構造作製は、100ナノメートルの程度またはこれより小さいフィーチャを有する非常に小さい構造体の作製を含む。ナノ構造作製がかなり大きな影響を有している1つの用途は、集積回路の加工におけるものである。半導体加工産業は、基板上に形成される、単位面積当たりの回路数を増やすと同時に、より大きな製造歩留まりを求めて懸命に努力し続けており、それゆえに、ナノ構造作製は益々重要になっている。ナノ構造作製は、より大きなプロセス制御を可能にし、同時に、形作られる構造の最小フィーチャ寸法を継続的に減少させることを許す。ナノ構造作製が用いられている他の開発分野には、バイオテクノロジー、光学技術、機械システムなどが含まれる。
【0005】
今日用いられている代表的なナノ構造作製技術は、一般に、インプリント・リソグラフィーと呼ばれている。代表的なインプリント・リソグラフィー法は、非常に多くの出版物に、例えば、米国特許出願公開第2004/0065976号、米国特許出願公開第2004/0065252号、および米国特許第6936194号に詳細に記載されており、これらは全て、ここに於いて、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0006】
前記米国特許出願公開および特許のそれぞれにおいて開示されているインプリント・リソグラフィー技術は、形成可能(formable)(重合性)層にレリーフ・パターンを形成すること、およびレリーフ・パターンに対応するパターンを下にある基板に転写することを含む。基板は、パターン形成プロセスを容易にする望ましい位置を取るように、移動ステージに連結され得る。パターン形成プロセスは、基板から間隔を置いて配置されたテンプレートと、テンプレートと基板の間に付けられる形成可能液体とを用いる。形成可能液体は、形成可能液体に接するテンプレートの表面形状に相補的なパターンを有する堅い層を形成するように、固化する。固化の後、テンプレートは、テンプレートと基板が距離を置くように、堅い層から引き離される。次いで、基板および固化した層は、固化した層におけるパターンに対応するレリーフ像を基板に転写させるためのさらなるプロセスに従う。
【発明の概要】
【0007】
一態様において、インプリント・リソグラフィーのインプリント用スタックは、基板および該基板に接着したポリマー接着層を含む。別の態様において、接着層は、重合性組成物をインプリント・リソグラフィー基板上にスピンコートすること、および重合性組成物を固化させて、インプリント・リソグラフィー基板に接着したポリマー接着層を形成することによって、インプリント・リソグラフィー基板上に形成される。さらに別の態様において、重合性組成物は、インプリント・リソグラフィー基板上にスピンコートされる。この重合性組成物は、少なくとも約2nmの伸びきり骨格(extended backbone)を有するポリマー成分を含む。ポリマー成分の骨格は、インプリント・リソグラフィー基板の表面に沿って、本質的に、平面状配置(planar configuration)で整列する。重合性組成物は、固化して、ポリマー接着層を形成する。ポリマー接着層の厚さは約2nm未満である。
【0008】
ある実施では、ポリマー接着層の厚さは約1nmである。ポリマー接着層は、少なくとも約2nmの伸びきり骨格長さを有するポリマー成分を含む組成物から形成され得る。ある場合には、ポリマー成分は、芳香族基を含む化合物から合成される。ある場合には、ポリマー成分は、クレゾールエポキシノボラックから合成される。いくつかの実施形態において、ポリマー成分は、基板に結合することできるカルボキシル官能基、およびインプリント・レジストと結合することができるさらなる官能基を含む。ポリマー接着層は、インプリント・スタック上でインプリント・レジストが固化する間に、インプリント・レジストと結合することが可能であり得る。
【0009】
本発明がより詳細に理解され得るように、本発明の実施形態の説明が、添付図に示されている実施形態を参照して行われる。しかし、添付図は、本発明の典型的な実施形態のみを例示しており、それゆえに、範囲の限定であると見なされるべきではないことに注意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】先行技術によるリソグラフィー・システムの単純化された説明図である。
【図2】テンプレート、および本発明による基板上に配置されたインプリント用材料の単純化された正面図である。
【図3】インプリント用材料が層上でパターン化され固化されたものとして示された、図2に示されているテンプレートおよび基板の単純化された正面図である。
【図4】固化したインプリント用材料とテンプレートとの間の接着阻害層(weak boundary)ラメラの生成を例示する、インプリント用材料に接触するテンプレートの横断面図を示す。
【図5】界面活性剤の豊富な部分および界面活性剤の欠乏した部分への液滴の分岐を示す、図2に示されているインプリント材料の液滴の詳細図である。
【図6】界面活性剤の豊富な部分および界面活性剤の欠乏した部分への層の分岐を示す、スピン−オン技術を用いて付着されたインプリント用材料の層の詳細図である。
【図7】図5または6のいずれかに示されるように付着され、プライマー層を含む基板上に形成された、固化したインプリント用材料に接触するテンプレートの横断面図である。
【図8】プライマー層を形成するために用いられ得る組成物の成分の化学構造を示す図である。
【図9】プライマー層を形成するために用いられ得る組成物の成分の化学構造を示す図である。
【図10】プライマー層を形成するために用いられ得る組成物の成分の化学構造を示す図である。
【図11】プライマー層を形成するために用いられ得る組成物の成分の化学構造を示す図である。
【図12A】ポリマー接着層の厚さ測定の測定箇所を示す図である。
【図12B】ポリマー接着層の厚さ測定の測定箇所を示す図である。
【図13】ポリマー接着層によりコートされたシリコン・ウェハの横断面の走査電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1および2を参照すると、本発明に従って、モールド36がシステム10で用いられ、本質的に平滑なまたは平坦な輪郭を有する表面を定め得る(示されていない)。代わりに、モールド36は、間隔を置いて離れた複数の凹部38および凸部40によって画定されるフィーチャを含み得る。複数のフィーチャは、基板42の上に形作られるパターンの基を成す元のパターンを定める。基板42は、露出したウェハ、または、1つもしくは複数の層(それらの1つがプライマー層45として示されている)がその上に配置されたウェハを含み得る。その目的のために、狭められるのは、モールド36と基板42の間の間隔「d」である。この様にして、モールド36のフィーチャは、基板42の相補的形成可能部分(例えば、本質的に平坦な輪郭を呈する表面44の一部に配置されたインプリント用材料)にインプリントされ得る。インプリント用材料は、知られているどのような技術(例えば、スピンコート法、ディップコート法など)を用いて配置されてもよいことが理解されるべきである。しかし、この例では、インプリント用材料は、基板42上で、間隔を置いて分離した複数の液滴46として配置されている。インプリント用材料は、それに元のパターンを記録し、記録されたパターンを画定するために、選択的に重合され、架橋され得る組成物から成る。
【0012】
具体的には、インプリント用材料に記録されるパターンは、一つには、モールド36との相互作用、例えば、電気的相互作用、磁気的相互作用、熱的相互作用、機械的相互作用などによって生成される。この例では、表面44上にインプリント用材料の連続した形成物(contiguous formation)50を生じるように、モールド36が、インプリント用材料と機械的な接触状態になり、液滴36を押し広げる。一実施形態において、間隔「d」は、インプリント用材料の副部分(sub−portion)52が凹部38に入り、それを満たせるように狭められる。凹部38を満たし易くするために、モールド36と液滴46との間の接触の前に、モールド36と液滴46との間の雰囲気は、ヘリウムにより飽和している、または完全に排気されている、または部分的に排気されたヘリウム雰囲気である。
【0013】
インプリント用材料は、インプリント用材料の連続した形成物により表面44を覆うと同時に、凹部38を満たし得る。この実施形態では、凸部40と重なり合うインプリント用材料の副部分54は、所望の、通常は最低限度の、間隔「d」に達した後、残存する。この動作は、厚さt1を有する副部分52、および厚さt2を有する副部分54を有する形成物50をもたらす。厚さ「t1」および「t2」は、用途に応じて、望まれるどのような厚さであってもよい。その後、形成物50は、それを、インプリント用材料に応じて、適切な硬化作用因子、例えば、化学線エネルギー(例えば、広帯域紫外エネルギー)、熱エネルギーなどに曝すことによって固化される。これは、インプリント用材料に、重合および架橋を引き起こす。この全プロセスは、雰囲気温度および圧力で、または所望の温度および圧力を有する環境制御チャンバにおいて実施され得る。この様にして、形成物50は固化されて、モールド36の表面58の形状に相補的な形状を有するその面56をもたらす。
【0014】
図1、2および3を参照すると、用いられる独特のパターン形成法に照らして、基板42に効率よくパターン形成するのに、インプリント用材料の特性が重要である。例えば、厚さt1の全てが本質的に均一で、厚さt2の全てが本質的に均一であるように、モールド36のフィーチャを迅速に、また一様に満たすことを容易にする、ある種の特性を、インプリント用材料が有することが望まれる。その目的のために、インプリント用材料の粘度が、用いられる付着方法に基づいて、前記特性を実現するように定められることが望ましい。前記のように、インプリント用材料は、様々な技術を用いて、基板42に付着され得る。インプリント用材料が、間隔を置いて分離した複数の液滴46として付着されるとすると、インプリント用材料を生成する組成物が、例えば、0.5から20センチポイズ(cP)の範囲の、比較的低い粘度を有することが望まれると思われる。インプリント用材料が、押し広げられ、同時に、パターン形成され、そのパターンは、次に、放射への暴露によって形成物50へと固化されることを考えると、組成物が基板42および/またはモールド36の表面を濡らし、重合後のピットまたは穴の続いて起こる生成を防ぐことが望まれると思われる。インプリント用材料がスピンコート法を用いて付着されるとすると、例えば、10cPを超え、典型的には、数百から数千cPの粘度(粘度測定は、溶媒を含まない状態で行われるとする)を有する、より高い粘度の材料を用いることが望まれると思われる。
【0015】
前記特性(液相特性と呼ばれる)に加えて、組成物は、インプリント用材料に特定の固化相特性をもたせることが望ましい。例えば、形成物50の固化の後、インプリント用材料によって、選択的な接着および離型特性が示されることが望ましい。具体的には、インプリント用材料を生成する組成物が、基板42への選択的な接着、およびモールド36の選択的な離型を有する形成物50をもたらすと有益である。この様にすると、記録されたパターンからのモールド36の引き離しにより生じる、特に、形成物50の引き剥がし、引き伸ばしまたは他の構造上の劣化に起因する、記録されたパターンにおける歪みの確率が低下する。
【0016】
前記特性をもたせるための、インプリント用材料を生成する組成物の構成成分は、異なり得る。これは、基板42がかなりの数の異なる材料から形作られていることから生じる。結果的に、表面44の化学組成は、基板を形作る材料に応じて変わる。例えば、基板42は、シリコン、プラスチック、ガリウム・ヒ素、テルル化水銀、およびこれらの複合物から成り得る。前記のように、基板42は、プライマー層45として示されている1つまたは複数の層(この上に形成物50が生成される)、例えば、誘電体層、金属層、半導体層、平坦化層などを含み得る。その目的のために、プライマー層45が、何らかの適切な技術、例えば化学蒸着、スピンコート法などを用いて、ウェハ47の上に付着され得る。さらに、プライマー層45は、どのような適切な材料(例えば、シリコン、ゲルマニウムなど)から成っていてもよい。さらに、モールド36は、いくつかの材料、例えば、溶融シリカ、石英、酸化インジウムスズ、ダイヤモンド−ライク・カーボン、MoSi、ゾル−ゲルなどから成り得る。
【0017】
形成物50を生成する組成物が、いくつかの異なる種類の主材料(bulk material)から製造され得ることが見出されている。例えば、ほんの少数を挙げれば、組成物は、ビニルエーテル、メタクリラート、エポキシ、チオール−エンおよびアクリラートから製造され得る。
【0018】
形成物50を生成する代表的な主材料は、次の通りである。
主インプリント用材料
イソボルニルアクリラート
n−ヘキシルアクリラート
エチレングリコールジアクリラート
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン
【0019】
アクリラート成分であるイソボルニルアクリラート(IBOA)は、次の構造:
【0020】
【化1】
を有し、主材料の約47重量%を占めるが、20%から80%の範囲(境界値を含む)で存在し得る。結果的に、形成物50の機械的性質は、主としてIBOAに起因する。IBOAの代表的な供給元は、Sartomer Company,Inc.(Exton,ペンシルベニア州)であり、SR 506の製品名で入手可能である。
【0021】
成分のn−ヘキシルアクリラート(n−HA)は、次の構造:
【0022】
【化2】
を有し、主材料の約25重量%を占めるが、0%から50%の範囲(境界値を含む)で存在し得る。形成物50に柔軟性もまた付与しながら、n−HAは、主材料が、液相として、約10cP未満の粘度を有するように、主材料の粘度を下げるために用いられる。n−HA成分の代表的な供給元は、Aldrich Chenmical Company(ミルウォーキー、ウィスコンシン州)である。
【0023】
架橋成分であるエチレングリコールジアクリラートは、次の構造:
【0024】
【化3】
を有し、主材料の約25重量%を占めるが、10%から50%の範囲(境界値を含む)で存在し得る。EGDAはまた、モデュラスおよびスチフネスの増加にも寄与し、さらには、主材料の重合の間のn−HAとIBOAの架橋を容易にする。
【0025】
開始剤成分である、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンは、DAROCUR(登録商標)1173の商用名で、Ciba Specialty Chemicals(Tarrytown、ニューヨーク州)から入手可能であり、次の構造:
【0026】
【化4】
を有し、主材料の約3重量%を占めるが、1%から5%の範囲(境界値を含む)で存在し得る。開始剤が反応する化学線エネルギーは、中圧水銀ランプが発生する広帯域紫外エネルギーである。この様に、開始剤は、主材料の成分の架橋および重合を容易にする。
【0027】
ここに於いて、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第7307118号は、モールド36(表面58)と形成物50との間に、図3および4に示される、接着阻害層(ラメラ60)の生成を記載する。ラメラ60は、インプリント用材料の固化の後、残存する。結果的に、モールド36と形成物50との間の接着力は最低限である。その目的のために、有益であると分かったのは、上で検討された「主インプリント用材料」のような、いくつかの組成物の1つを、表面エネルギーの低い基を含む成分(界面活性剤成分と呼ばれる)と共に含む、インプリント用材料のための組成物を用いることであった。
【0028】
図5を参照すると、インプリント用材料の付着後、界面活性剤成分が、ある時間の後、空気・液体の界面に上昇して、材料の濃度が分岐したインプリント用材料の液滴146が生成する。第1部分(界面活性剤−成分−豊富(SCR)副部分136と呼ばれる)では、液滴146は、第2部分(界面活性剤−成分−欠乏(SCD)副部分137と呼ばれる)より高い濃度の界面活性剤成分を含む。SCD副部分137は、表面44とSCR副部分136の間に位置する。SCR副部分136は、インプリント用材料が一旦固化すると、モールド36とインプリント用材料との間の接着力を弱める。詳細には、界面活性剤成分は、性質が反対の複数の末端を有する。インプリント用材料が液相である、すなわち重合性である時、性質が反対の複数の末端の1つは、インプリント用材料に含まれる主材料に親和性を有する。残っている末端はフッ素成分を有する。
【0029】
図4および5を参照すると、主材料への親和性の結果として、界面活性剤成分は、インプリント用材料と周囲の雰囲気とによって定まる空気−液体界面から、フッ素成分が突き出るように配向する。
【0030】
インプリント用材料の固化に際して、インプリント用材料の第1部分は、ラメラ60を生成し、インプリント用材料の第2部分は固化する、すなわち、形成物50として示されるポリマー材料となる。ラメラ60は、形成物50とモールド36の間に位置する。ラメラ60は、SCR副部分136におけるフッ素成分の存在および位置により生じる。ラメラ60は、モールド36と形成物50との間に、強い接着力が生じることを防ぐ。詳細には、形成物50は、対向する第1および第2の面62および64を有する。面62は、モールド36に、第1接着力で接着する。面64は、基板42に、第2接着力で接着する。ラメラ60は、第2接着力より小さい第1接着力を生じる。結果的に、モールド36は、形成物50から容易に取り除かれ、歪み、および/または形成物50からモールド36を引き離すのに必要とされる力は、最低限になる。形成物50は、面62がパターン化されて示されているが、面62は、平坦でないとしても、平滑であり得ることが理解されるべきである。
【0031】
さらに、望まれる場合、形成物50と基板42の間に配置されるように、ラメラ60を生成させることが可能である。これは、例えば、インプリント用材料をモールド36に付け、次いで、モールド36上のインプリント用材料を、基板42に接触させることによって実現され得る。この様に、形成物50は、ラメラ60と本体(例えば、重合性材料がその上に配置されるモールド36または基板42)の間に配置されると言うことができる。インプリント用材料がスピンコート法を用いて付着されたとしても、類似の分岐した材料濃度が、SCR副部分236および2つ目のSCD副部分237についての図6に示されるように、発生することが理解されるべきである。分岐に要する時間は、組成物中の分子の大きさ、および組成物の粘度を含めて、いくつかの要因に依存する。20cP未満の粘度を有する組成物の前記分岐を実現するには、ほんの数秒のみが必要とされる。しかし、数百cPの粘度を有する材料は、数秒から数分を必要とし得る。
【0032】
しかし、ラメラ60は一様でないということもあり得ることが見出された。ラメラ60のある部分は他より薄く、ある極端な場合には、ラメラ60は、極めて小さいパーセンテージのテンプレート表面に存在せず、その結果、テンプレート36が形成物50と接触しているということがあり得る。ラメラ60の薄い部分およびラメラ60のないことの結果として、形成物50の歪みおよび/または基板42からの剥離が起こり得る。詳細には、モールド36の引き離しに際して、形成物50は、引き離し力FSを受ける。引き離し力FSは、モールド36への引張り力FP、および、ラメラによって低下した、形成物50とモールド36との間の接着力(例えば、ファン・デル・ワールス力)に起因する。ラメラ60の存在のせいで、引き離し力FSは、通常、形成物50と基板42との間の接着力FAの大きさより小さい大きさを有する。しかし、ラメラ60の減少、または不在により、局所引き離し力FSは、局所接着力FAの大きさに近づき得る。局所力によって意味されるものは、ラメラ層60の所定の部分に存在する力であり、これは、この例では、ラメラ層60薄い部分またはラメラ層60が本質的に存在しない箇所の近傍の局所力である。これは、形成物50の歪みおよび/または基板42からの剥離につながる。
【0033】
図7を参照すると、プライマー層45の存在の下では、2つの境界66および68の存在のせいで、より複雑な状況が存在する。第1界面66には、プライマー層45と形成物50との間に、第1接着力F1が存在する。第2界面68には、プライマー層45とウェハ47との間に、第2接着力F2が存在する。引き離し力FSが、接着力F1およびF2のいずれよりも小さい大きさを有することが望まれる。しかし、前記のように、ラメラ60の厚さの変動、または不在のせいで、引き離し力FSは、接着力F1およびF2の一方または両方の大きさに似る、または近づき得る。これは、プライマー層45からの形成物50の、ウェハ47からのプライマー層45の、または両方の剥離を引き起こし得る。
【0034】
本発明は、第1および第2界面の第1(F1)および第2(F2)接着力がそれぞれ、ラメラ層の変動を考慮に入れた引き離し力FSより大きい確率を増す材料により、プライマー層45を形成することによって、前記剥離の問題を、回避しないとしても、小さくする。その目的のために、プライマー層45は、境界66で(すなわち、プライマー層と形成層50の間に)、さらには、すなわち、境界66、プライマー層45およびウェハ47の間に、強い結合を生じる組成物から形成される。この例では、第1界面でのプライマー層45と形成物50の間の接着は、共有結合の結果である、すなわち、プライマー層45を形作る組成物と、形成物50を形作る組成物との間に共有結合が存在する。プライマー層45とウェハ47との間の接着は、様々な作用(mechanism)のいずれか1つを通じて達成され得る。これらの作用は、プライマー層45を形作る組成物と、ウェハ47を形作る材料との間に生じる共有結合を含み得る。共有結合の代わりに、またはそれに加えて、イオン結合が、プライマー層45を形作る組成物と、ウェハ47を形作る材料との間に生じ得る。共有結合、および/またはイオン結合あるいは両方の代わりに、またはそれらに加えて、プライマー層45を形作る組成物と、ウェハ47を形作る材料との間の接着は、面同士のファン・デル・ワールス力によって達成され得る。
【0035】
これは、多官能反応性化合物、すなわち、2つ以上の官能基を含み、一般的に、次のように表される化合物を含む組成物からプライマー層45を形作ることによって実現される。
【0036】
【化5】
式中、R、R’、R’’およびR’’’は連結基であり、x、y、zは、それらに関連する基の平均繰返し数である。これらの繰返し単位は、ランダムに分布していることもあり得る。基XおよびX’は、官能基を表し、通常、官能基Xは官能基X’とは異なると理解されている。官能基XおよびX’の1つ、例えばX’は、基板42を形作る材料との交差反応(cross−reaction)を実現して、基板と共有結合を、基板とイオン結合を、また/またはファン・デル・ワールス力を生じることによって、基板に接着するように選択される。
【0037】
官能基XおよびX’の残りの1つ、例えばXは、形成物50を形作る材料との交差反応を実現して、それらの間に供給結合を生じるように選択される。X基の官能基は、形成物50の重合の間に、交差反応が起こるように定められる。結果的に、官能基Xの選択は、形成物50を形作る材料の特性に応じて決まり、官能基Xは、形成物50を形作る組成物の官能基と反応することが望まれる。例えば、形成物50がアクリラートモノマーから形作られるとすると、Xは、アクリル、ビニルエーテル、および/またはアルコキシ官能基、および/または形成物50のアクリル官能基と共重合し得る官能基から成り得る。結果的に、X官能基は、紫外化学線エネルギーに感応して、交差反応する。
【0038】
官能基X’はまた、プライマー層45の架橋および重合反応にも参加し得る。通常、X’官能基は、X官能基が感応して交差反応する化学線エネルギーとは異なる化学線エネルギーに感応して重合および架橋を促進する。この例におけるX’官能基は、熱エネルギーへの暴露に感応して、プライマー層45の分子の架橋を促進する。通常、官能基X’は、以下の3つの機構を通じて基板42との交差反応を促進するように選択される:1)基板42を形作る材料との直接反応;2)基板42と反応する架橋剤の架橋性官能基による、架橋剤分子との反応;および3)形成物50と基板42との間を連結するのに十分な長さの分子鎖が成長し得るような、プライマー層45の重合および架橋。
【0039】
図7および8を参照すると、「主材料」から形成されている形成物50の存在の下で、プライマー層45を形成するために用いられ得る例示的な多官能反応性化合物は、β−CEAの製品名で、UCB Chemicals(Smyrna、ジョージア州)から入手可能な、β−カルボキシエチルアクリラートを含む。β−CEAは、次の構造を有する脂肪族化合物である。
【0040】
【化6】
X’官能基70はカルボキシル官能基を供給する。X官能基72は、アクリラート官能基を供給する。官能基70および72は、骨格構成部分74の反対側の末端につながっている。
【0041】
図7および9を参照すると、「主材料」から形成されている形成物50の存在の下で、プライマー層45を形成するために用いられ得る別の多官能反応性化合物は、EBECRYL(登録商標)3605の製品名で、UCB Chemicals(Smyrna、ジョージア州)から入手可能な、次の構造を有する芳香族ビス−フェニル化合物を含む。
【0042】
【化7】
X’官能基76は、エポキシ官能基を供給する。X官能基78は、アクリラート官能基を供給する。官能基76および78は、骨格構成部分80の反対側の末端につながっている。
【0043】
図7および10を参照すると、「主材料」から形成されている形成物50の存在の下で、プライマー層45を形成するために用いられ得る別の多官能反応性化合物は、ISORAD(登録商標)501の製品名で、Schenectady International,Inc.(Schenectady、ニューヨーク州)から入手可能な、芳香族化合物を含む。X’官能基82は、カルボキシル官能基を供給する。X官能基84は、アクリラート官能基を供給する。官能基82および84は、骨格構成部分86の反対側の末端につながっている。
【0044】
合成手順に応じて、ISORAD(登録商標)501は、下に示される構造AまたはB、あるいは類似の構造を有し得る。
【0045】
【化8】
【0046】
【化9】
構造AおよびBにおいて、xおよびyは、繰返し単位の数を示す整数である。繰返し単位の分布はランダムであり得る。
【0047】
構造AおよびBは、下に示されるクレゾールエポキシノボラック(x+y=nであり、nは、8から11の範囲(境界値を含む)の繰返し数である)から製造され得る。それゆえに、構造AおよびBの分子量は、約2,000から約4,000ダルトンの範囲にある。
【0048】
【化10】
【0049】
構造AおよびBの高い分子量は、接着層の機械的強度の増加に寄与する。一般に受け入れられている約0.14nmの炭素−炭素結合距離を用いると、構造AおよびBのポリマー骨格は、線状に引き伸ばされた場合、約2nmから約4nmの範囲にある。
【0050】
図7および11を参照すると、形成物50との交差反応に加えて、官能基Xは、形成物50を生成する組成物の固化の間、その重合を促進する機能を果たすラジカルを生成し得る。結果的に、官能基Xは、化学線エネルギー、例えば、広帯域紫外エネルギーへの暴露による、形成物50の重合を促進すると想定される。これらの性質を伴う例示的な多官能反応性化合物は、IRGACURE(登録商標)2959の商用名で、Ciba Specialty Chemicals(Tarrytown、ニューヨーク州)から入手可能で、次の構造を有する光開始剤である。
【0051】
【化11】
X’官能基90は、ヒドロキシル官能基を供給する。X官能基92は、開始剤型の官能基を供給する。具体的には、広帯域紫外エネルギーへの暴露に感応して、官能基Xは、アルファ−開裂を受けて、ベンゾイル型のラジカルを生成する。このラジカルは、形成物50を形作る組成物の重合を促進する。官能基90および92は、骨格構成部分94の反対側の末端につながっている。
【0052】
界面66および68の接着強度を求めるために、前記の多官能反応性化合物のいずれかを含むいくつかの組成物をつくった。多官能反応性化合物を含む例示的組成物は、次の通りである。
組成物1
β−CEA
DUV30J−16
ここで、DUV30J−16は、組成物1の約100グラムを成し、β−CEAは約0.219グラムを成す。DUV30J−16は、Brewer Science(Rolla、ミズーリ州)から入手可能なボトム反射防止コーティング(BARC)であり、93%の溶媒、および7%の非溶媒反応性成分を含む。DUV30J−16は、フェノール樹脂を含み、その架橋剤は、カルボン酸官能基と反応できる。DUV30J−16は、形成物50とは共有結合を生じないと考えられる。
【0053】
別の組成物では、β−CEAを、架橋剤、触媒およびISORAD(登録商標)501に置き換えた。架橋剤および触媒のいずれも、Cytec Industries,Inc.(West Patterson、ニュージャージー州)によって販売されている。架橋剤は、CYMEL(登録商標)303ULFの製品名で販売されている。CYMEL(登録商標)303ULFの成分は、ヘキサメトキシメチル−メラミン(HMMM)である。HMMMのメトキシ官能基は、多くの縮合反応に参加し得る。触媒は、CYCAT(登録商標)4040の製品名で販売されており、次の組成物が得られる。
組成物2
DUV30J−16
ISORAD(登録商標)501
CYMEL(登録商標)303ULF
CYCAT(登録商標)4040
組成物2の約100グラムは、DUV30J−16から成り、組成物2の0.611グラムは、ISORAD(登録商標)501から成り、組成物2の0.175グラムは、CYMEL(登録商標)303ULFから成り、また組成物2の0.008グラムは、CYCAT(登録商標)4040から成る。
【0054】
多官能性反応性コンパウンドとして用いられ得る別の組成物は、DUV30J−16を除く。この組成物は次の通りである。
組成物3
ISORAD(登録商標)501
CYMEL(登録商標)303ULF
CYCAT(登録商標)4040
PM Acetate
組成物3は、約77グラムのISORAD(登録商標)501、22グラムのCYMEL(登録商標)303ULF、および1グラムのCYCAT(登録商標)4040を含む。ISORAD(登録商標)501、CYMEL(登録商標)303ULF、およびCYCAT(登録商標)4040は一緒にする。次いで、ISORAD(登録商標)501、CYMEL(登録商標)303ULF、およびCYCAT(登録商標)4040の組合せを、約1900グラムのPM Acetateに添加する。PM Acetateは、Eastman Chemical Company(Kingsport、テネシー州)によって販売されている、2−(1−メトキシ)プロピルアセタートからなる溶媒の製品名である。
【0055】
「組成物4」は、「組成物3」に似て、約85.2グラムのISORAD(登録商標)501、13.8グラムのCYMEL(登録商標)303ULF、および1グラムのCYCAT(登録商標)4040を含む。ISORAD(登録商標)501、CYMEL(登録商標)303ULF、およびCYCAT(登録商標)4040は一緒にする。次いで、ISORAD(登録商標)501、CYMEL(登録商標)303ULF、およびCYCAT(登録商標)4040の組合せを、約1900グラムのPM Acetateに添加する。
【0056】
「組成物5」は、「組成物3」に似て、約81グラムのISORAD(登録商標)501、18グラムのCYMEL(登録商標)303ULF、および1グラムのCYCAT(登録商標)4040を含む。ISORAD(登録商標)501、CYMEL(登録商標)303ULF、およびCYCAT(登録商標)4040は一緒にする。次いで、ISORAD(登録商標)501、CYMEL(登録商標)303ULF、およびCYCAT(登録商標)4040の組合せを、約1900グラムのPM Acetateに添加する。
【0057】
プライマー層45に関して上に記載した5つの組成物(「組成物1〜5」)の各々を、スピンコート法を用いて基板42に付着させる(この時、均一な厚さを有する平坦な層でないとしても、本質的に滑らかな層を得るために、基板は、500と4,000回転/分の間の速度で回転させる)。この後、これらの組成物を180℃(セルシウス)の熱化学線エネルギーに約2分間曝す。
【0058】
前記5つの組成物(「組成物1〜5」)を「インプリント用材料」と共に用いて、境界66および68の接着力の強さに関する比較用データを得て、これを、「インプリント用材料」から生成される形成物50と共有結合を生じるとは知られていない、完全にDUV30J−16だけから生成されるプライマー層45についての基準測定値と比較した。その目的のために、「主インプリント用材料」から生成される形成物50、および「組成物1〜5」から生成されるプライマー層45を、2枚のガラス・スライド(示していない)の間に付着させ、固化した。各ガラス・スライド(示していない)は、厚さ約1mmで、横方向寸法75×25mmである。
【0059】
プライマー層45および形成物50の付着の前に、ガラス・スライド(示していない)を清浄にする。具体的には、各ガラス・スライド(示していない)を、ピラニア溶液(H2SO4:H2O2=2.5:1(容積))に曝す。次に、ガラス・スライド(示していない)を、脱イオン水によりリンスし、イソプロピルアルコールを噴霧し、乾燥のために流体の流れ(例えば、窒素ガスの流れ)に曝す。その後、ガラス・スライド(示していない)を、120℃で2時間、ベーキングする。
【0060】
プライマー層45は、3000rpmまでの回転速度でスピン−オン法を用い、2枚のガラス・スライド(示していない)のそれぞれの上に付着させる。プライマー層45は、180℃のホット・プレート上で2分間、ガラス・スライド(示していない)上に置かれたままにする。別の言い方をすると、「組成物1〜5」のそれぞれ、さらに基準組成物は、熱エネルギーに曝すことによって、固化する、すなわち、重合し、架橋する。形成物は、前記のドロップ・ディスペンス法を用いて形作る。具体的には、「主インプリント用材料」を、2枚のガラス・スライドの一方の上のプライマー層上に複数の液滴として配置する。次いで、「主インプリント用材料」は、2枚のガラス・スライド(示していない)上のプライマー層を互いに向き合わせ、「主インプリント用材料」に接触させることによって、2つのプライマー層の間に挟み込む。通常、2枚のガラス・スライド(示していない)の一方の長手軸は、残りのガラス・スライド(示していない)の長手軸に直交している。「主インプリント用材料」は、2枚のガラス・スライド(示していない)を、化学線エネルギー、例えば広帯域紫外波長に、中圧水銀UVランプを用い、20mW/cm2の強度で40秒間、曝すことによって、固化する、すなわち、重合し、架橋する。
【0061】
接着の強さを測定するために、「Measurement of Adhesive Force Between Mold and Photocurable Resin in Imprint Technology」、Japanese Journal of Applied Physics、41巻(2002年)、4194〜4197頁に記載のものに似た、接着試験および技法に、4点曲げ試験装置(示していない)を採用した。最大の力/荷重を接着の数値と見なした。上部および下部の2つの点のビーム(beam)間隔は60mmである。荷重は、0.5mm/分の速度で加えた。この試験を用い、プライマー層45を基準組成物により形成した時には、剥離が6.1ポンドの力で起こることを確認した。「組成物1」によりプライマー層45を形成すると、剥離が起こる前に、約6.5ポンドの引き離し力に達した。「組成物2」によりプライマー層45を形成すると、剥離が起こる前に、約9.1ポンドの引き離し力に達した。「組成物3、4または5」のそれぞれによりプライマー層45を形成した時には、剥離が起こる前に、2枚のガラス・スライド(示していない)の一方または両方が折れた(割れた)。結果的に、11ポンドまでの力を、剥離を認めることなく、測定した。結果的に、もしラメラ層60が望ましくなく薄い部分を有する、または全く存在しないとしても、「組成物3、4および5」は、それが剥離を効果的に防ぐという点で優れた使用上の特性を有するプライマー層45をもたらすことが認められる。
【0062】
「組成物6」(「組成物5」に似た低固形分組成物)は、0.81グラムのISORAD(登録商標)501、0.18グラムのCYMEL(登録商標)303ULF、0.01グラムのCYCAT(登録商標)4040、および1999グラムのPM Acetateを含む。一例において、「組成物6」は、ウェハ上にキャストし、膜を生成するようにスピンさせることができる。スピン処理の間に、溶媒は蒸発し、薄い固体の膜が表面に生成する。組成物中に溶けた固体のパーセンテージおよびスピンコートの速度は、基板またはウェハ上に所望の膜厚を実現するように調整できる。スピンコートの後、接着層は、例えば、150℃のホット・プレート上での約1分間の接触ベーキングによって、硬化させることができる。
【0063】
図12Aおよび12Bは、8インチのシリコン・ウェハに1000rpmのスピン速度で前記のようにして付けられた「組成物6」でのポリマー接着層の厚さの測定箇所1200を示す。試料の固体膜の厚さ測定は、Metrosol,Inc.(オースチン、テキサス州)から入手可能な光計測システムを用いる分光反射測定法によって実施した。図12Aに示す59の測定箇所により、層の平均の厚さは1.09nmであり、最大の測定厚さは1.22nm、最小測定厚さは0.94nm、また標準偏差は0.05nmであることを確定した。図12Bに示す49の測定箇所により、層の平均の厚さは、VUV−7000型を用い、1.01nmであり、最大の測定厚さは1.07nm、最小測定厚さは0.95nm、また標準偏差は0.03nmであることを確定した。
【0064】
図13は、シリコン・ウェハ1302上の酸化ケイ素表面とアクリラート・インプリント・レジスト1304との間に、「組成物6」から形成されたポリマー接着層1300の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。ポリマー接着層1300は、約1nmの厚さである。試験は、1nmの厚さのポリマー接着層は、ずっと大きな(例えば、約6nmを超える)厚さを有する、類似の組成物のポリマー接着層の接着強度に似た接着強度を実現することを示した。すなわち、ポリマー接着層1300は、テンプレートの引き離しの間に加わる引張り荷重の下で、凝集破壊を示さない。
【0065】
驚くべきことに、約2nmを超える(例えば、約2nmから約4nmの範囲の)伸びきり骨格長さを有するポリマー成分を含むポリマー接着層組成物のスピンコートが、約2nm未満(例えば、約1nm)の厚さを有するポリマー接着層を形成することが示された。これらのポリマー成分は、ポリマー成分の骨格が、基板の表面に「立っている」(または、より垂直になっている)よりはむしろ、基板の表面に「横になっている」(または、より平行になっている)ように、スピンコートをしている間に整列したと考えられる。この様に基板の表面に対して整列したポリマー成分は、基板の表面で平面状配置にあり、ポリマー成分の長い方の寸法が、大部分は、基板の表面に沿って伸びており、基板上に極めて薄い層を形成していると考えられる。この極めて薄いポリマー接着層は、ずっと大きな厚さの接着層に付随すると一般に考えられる接着強度を実際に示し、ナノ−インプリント・リソグラフィーのためのインプリント・スタックの全体としての厚さの減少を許す。
【0066】
上に説明された、本発明の実施形態は例示である。多くの変更および修正が、本発明の範囲内に留まりながら、上に記された開示になされ得る。例えば、溶媒PM Acetateは、主に、組成物3、4および5の他の構成成分を溶かすために用いられている。結果的に、多くの普通の光−レジスト溶媒(例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、メチルアミルケトンなど)が、PM Acetateの代わりに用いられ得る。さらに、「組成物3、4および5」の固形含有物、すなわち、ISORAD(登録商標)501、CYMEL(登録商標)303ULFおよびCYCAT(登録商標)4040は、組成物の0.1重量%から70重量%の間を、より好ましくは、0.5重量%から10重量%の間を占め、残りの量は溶媒から成り得る。「組成物3、4および5」のそれぞれの固形成分は、50重量%から99重量%のISORAD(登録商標)501、1重量%から50重量%のCYMEL(登録商標)303ULF、および0重量%から10重量%のCYCAT(登録商標)4040から成り得る。したがって、本発明の範囲は、上の説明によって限定されるべきでなく、むしろ添付の特許請求の範囲と、それらの最大限の範囲の等価物とを考慮して決められるべきである。
【符号の説明】
【0067】
36 モールド; 45 プライマー層; 50 形成物; 47 ウェハ;
66、68 境界。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板; および
該基板に接着したポリマー接着層
を含み、該ポリマー接着層の厚さが約2nm未満である、インプリント・リソグラフィーのインプリント用スタック。
【請求項2】
ポリマー接着層の厚さが約1nmである、請求項1に記載のインプリント用スタック。
【請求項3】
ポリマー接着層が、少なくとも約2nmの伸びきり骨格長さを有するポリマー成分を含む組成物から形成される、請求項1に記載のインプリント用スタック。
【請求項4】
ポリマー成分が、芳香族基を含む化合物から合成される、請求項3に記載のインプリント用スタック。
【請求項5】
ポリマー成分がクレゾールエポキシノボラックから合成される、請求項3に記載のインプリント用スタック。
【請求項6】
ポリマー成分が、基板に結合することができるカルボキシル官能基、およびインプリント・レジストと結合することができるさらなる官能基を含む、請求項3に記載のインプリント用スタック。
【請求項7】
ポリマー接着層が、インプリント用スタック上でのインプリント・レジストの固化の間に、インプリント・レジストと結合することができる、請求項1に記載のインプリント用スタック。
【請求項8】
インプリント・リソグラフィー基板上に重合性組成物をスピンコートすること;
重合性組成物を固化させて、インプリント・リソグラフィー基板に接着したポリマー接着層を形成すること
を含み、ポリマー接着層の厚さが約2nm未満である、インプリント・リソグラフィー基板上に接着層を形成する方法。
【請求項9】
ポリマー接着剤層の厚さが約1nmである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ポリマー接着層が、少なくとも約2nmの伸びきり骨格長さを有するポリマー成分を含む組成物から形成される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
重合性組成物が、芳香族基を含む化合物から合成される成分を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
重合性組成物が、クレゾールエポキシノボラックを含む化合物から合成される成分を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
重合性組成物がポリマー成分を含み、該ポリマー成分が、基板に結合することができるカルボキシル官能基、およびインプリント・レジストと結合することができるさらなる官能基を含む、請求項8に記載のインプリント用スタック。
【請求項14】
ポリマー接着層にインプリント・レジストを付けること、および該インプリントを固化させることをさらに含み、インプリント・レジストを固化させることが、インプリント・レジストをポリマー接着層に結合させることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも約2nmの伸びきり骨格長さを有するポリマー成分を含む重合性組成物をインプリント・リソグラフィー基板上にスピンコートすること;
インプリント・リソグラフィー基板の表面に、ポリマー成分の骨格を平面状配置に実質的に整列させること;
重合性組成物を固化させて、インプリント・リソグラフィー基板に接着したポリマー接着層を形成すること
を含み、ポリマー接着層の厚さが約2nm未満である、インプリント・リソグラフィーの方法。
【請求項1】
基板; および
該基板に接着したポリマー接着層
を含み、該ポリマー接着層の厚さが約2nm未満である、インプリント・リソグラフィーのインプリント用スタック。
【請求項2】
ポリマー接着層の厚さが約1nmである、請求項1に記載のインプリント用スタック。
【請求項3】
ポリマー接着層が、少なくとも約2nmの伸びきり骨格長さを有するポリマー成分を含む組成物から形成される、請求項1に記載のインプリント用スタック。
【請求項4】
ポリマー成分が、芳香族基を含む化合物から合成される、請求項3に記載のインプリント用スタック。
【請求項5】
ポリマー成分がクレゾールエポキシノボラックから合成される、請求項3に記載のインプリント用スタック。
【請求項6】
ポリマー成分が、基板に結合することができるカルボキシル官能基、およびインプリント・レジストと結合することができるさらなる官能基を含む、請求項3に記載のインプリント用スタック。
【請求項7】
ポリマー接着層が、インプリント用スタック上でのインプリント・レジストの固化の間に、インプリント・レジストと結合することができる、請求項1に記載のインプリント用スタック。
【請求項8】
インプリント・リソグラフィー基板上に重合性組成物をスピンコートすること;
重合性組成物を固化させて、インプリント・リソグラフィー基板に接着したポリマー接着層を形成すること
を含み、ポリマー接着層の厚さが約2nm未満である、インプリント・リソグラフィー基板上に接着層を形成する方法。
【請求項9】
ポリマー接着剤層の厚さが約1nmである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ポリマー接着層が、少なくとも約2nmの伸びきり骨格長さを有するポリマー成分を含む組成物から形成される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
重合性組成物が、芳香族基を含む化合物から合成される成分を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
重合性組成物が、クレゾールエポキシノボラックを含む化合物から合成される成分を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
重合性組成物がポリマー成分を含み、該ポリマー成分が、基板に結合することができるカルボキシル官能基、およびインプリント・レジストと結合することができるさらなる官能基を含む、請求項8に記載のインプリント用スタック。
【請求項14】
ポリマー接着層にインプリント・レジストを付けること、および該インプリントを固化させることをさらに含み、インプリント・レジストを固化させることが、インプリント・レジストをポリマー接着層に結合させることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも約2nmの伸びきり骨格長さを有するポリマー成分を含む重合性組成物をインプリント・リソグラフィー基板上にスピンコートすること;
インプリント・リソグラフィー基板の表面に、ポリマー成分の骨格を平面状配置に実質的に整列させること;
重合性組成物を固化させて、インプリント・リソグラフィー基板に接着したポリマー接着層を形成すること
を含み、ポリマー接着層の厚さが約2nm未満である、インプリント・リソグラフィーの方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【公表番号】特表2011−508680(P2011−508680A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536928(P2010−536928)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/013352
【国際公開番号】WO2009/085090
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(503193362)モレキュラー・インプリンツ・インコーポレーテッド (94)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/013352
【国際公開番号】WO2009/085090
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(503193362)モレキュラー・インプリンツ・インコーポレーテッド (94)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]