説明

極薄成形品の成形金型および成形方法

【課題】極薄成形品を成形する際に、キャビティの他端部まで溶融樹脂を良好に充填でき、極薄成形品を良好な状態で成形することができる極薄成形品の成形金型および成形方法を提供する。
【解決手段】固定金型13と可動金型12の間にキャビティ14が配設され、該キャビティ14の端部にゲートP3が設けられた極薄成形品Pの成形金型11において、ゲート隣接部P4から最遠方の他端部P5までの流動長寸法Lに対する板厚寸法Tが0.2%〜0.5%の極薄成形品Pを成形可能なキャビティ14が設けられ、前記キャビティ14またはランナP2を形成するブロック18,22,39,42の表面側には該ブロック18,22,39,42の母材よりも熱伝導率が低い断熱層51,57が形成され、断熱層51,57の表面側には該断熱層51,57よりも熱伝導率が高い保熱層52,58が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形に用いられる極薄成形品の成形金型および成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機により導光板等の薄板成形品を成形する成形金型としては、特許文献1に記載のものが知られている。しかし近年の導光板は、一例として対角寸法3.5インチのもので板厚0.25mm、対角寸法8インチのもので板厚0.6mm、対角寸法14インチのもので板厚1.0mmといった具合に、より一層極薄化が進行しており、従来の特許文献1のような成形金型ではキャビティの他端部(流動端部)まで充填できなかったり板厚が不均一となる場合があった。それに対して射出速度を例えば1000mm/sec以上に超高速化することによりキャビティの他端部まで溶融樹脂を充填できる場合もあるが、内部応力不良やバリの発生、また射出装置の大型化によるコストアップ等の問題があった。
【0003】
一方、導光板等の転写性を向上させるための成形金型として特許文献2に記載された成形金型が知られている。特許文献2は、導光板等の成形金型に関し、キャビティ形成面に20W/m・K以下の熱伝導率の断熱層を設けること、更にその表面に金属層を形成すること等が記載されている。しかし特許文献2は、圧縮成形を行う成形金型ではないため、キャビティ間隔が一定であって、極薄成形品の成形の際には溶融樹脂の充填が困難であるという問題があった。また特許文献2は、使用する樹脂材料、射出成形機や成形金型の成形条件、成形金型の断熱層や金属層の厚み等が開示されていないので、実際に当業者が実施できる程度に開示がされているとは言えず、対応する効果も不明なものであった。
【0004】
更にはディスク基板の成形用金型のキャビティ形成面に金属溶射層を設けることは、特許文献3に記載されている。しかしディスク基板は、DVDの場合でも板厚が0.6mmあり、ゲート隣接部から最遠方の他端部までの溶融樹脂の流動長も52.5mm前後と比較的短いため、更に薄い極薄成形品の成形には直ちに転用できないものであった。そしてまたディスク基板の成形と極薄成形品の成形とでは射出速度等の成形条件も異なるが、特許文献3には極薄成形品を良好に射出充填するための成形条件についての開示がされていないので、極薄成形品の成形の際に参考となるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−307882号公報(0017、図2)
【特許文献2】特開2006−44246号公報(請求項2、図2)
【特許文献3】特開2008−183765号公報(請求項1、図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では上記の問題を鑑みて、極薄成形品を成形する際に、キャビティの他端部まで溶融樹脂を良好に充填でき、極薄成形品を良好な状態で成形することができる極薄成形品の成形金型および成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の極薄成形品の成形金型は、固定金型と可動金型の間にキャビティが配設され、該キャビティの端部にゲートが設けられた極薄成形品の成形金型において、ゲート隣接部から最遠方の他端部までの流動長寸法に対する板厚寸法が0.2%〜0.5%の極薄成形品を成形可能なキャビティが設けられ、前記キャビティまたはランナを形成するブロックの表面側には該ブロックの母材よりも熱伝導率が低い断熱層が形成され、前記断熱層の表面側には該断熱層よりも熱伝導率が高い保熱層が形成されていることを特徴とする。
【0008】
また本発明の極薄成形品の成形方法は、請求項1に記載の成形金型を用いた極薄成形品の成形方法において、射出時に少なくともキャビティの厚さを極薄成形品の板厚よりも広げた状態で溶融樹脂の射出を行い、射出中または射出後にキャビティ内の溶融樹脂を圧縮することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の極薄成形品の成形金型および極薄成形品の成形方法は、固定金型と可動金型の間にキャビティが配設され、該キャビティの端部にゲートが設けられた極薄成形品の成形金型において、ゲート隣接部から最遠方の他端部までの流動長寸法に対する板厚寸法が0.2%〜0.5%の極薄成形品を成形可能なキャビティが設けられ、前記キャビティまたはランナを形成するブロックの表面側には該ブロックの母材よりも熱伝導率が低い断熱層が形成され、前記断熱層の表面側には該断熱層よりも熱伝導率が高い保熱層が形成されているので、特に溶融樹脂の流動性に優れ、極薄成形品を良好な状態で成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施例1の極薄成形品の成形金型の水平断面図であって射出開始前の状態を示す図である。
【図2】図2は、実施例1の極薄成形品の成形金型の水平断面図であって圧縮完了後の状態を示す図である。
【図3】図3は、図1の要部の水平断面図である。
【図4】図4は、実施例1の極薄成形品の成形金型で成形される極薄導光板の斜視図である。
【図5】図5は、アクリルを使用した際の極薄成形品の成形金型におけるランナ形成面の温度推移を示す図である。
【図6】図6は、アクリルを使用した際の極薄成形品の成形金型におけるキャビティ形成面の温度推移を示す図である。
【図7】図7は、ポリカーボネートを使用した際の極薄成形品の成形金型におけるキャビティ形成面の温度推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
射出成形機(射出圧縮成形およびその一分野の射出プレス成形を可能な射出圧縮成形機を含む)に取付けられる極薄成形品の成形金型は、固定金型と可動金型の間に、端部にゲートが設けられたキャビティが形成されるようになっている。そして前記成形金型のキャビティは、ゲート隣接部から最遠方の他端部(流動端)までの流動長寸法に対する板厚寸法が0.2%〜0.5%の極薄成形品(極薄樹脂板)が成形可能となっている。キャビティを形成するキャビティ形成ブロックまたはランナ形成ブロックの表面側(母材の表面または母材と別部材を介した表面)には、前記ブロックの母材よりも熱伝導率が低い断熱層として、厚さは0.1mm〜1.0mmの金属溶射層が溶射により形成されている。そして金属溶射層の表面側(金属溶射層の表面または金属溶射層と別部材を介した表面)には断熱層よりも熱伝導率が高い保熱層として、厚さ0.01mm〜0.50mmの金属層がメッキ等の方法によって形成されている。
【0012】
そして少なくともキャビティは、厚みが変更可能となっており、射出時にキャビティの厚さを極薄成形品の板厚よりも広げた状態で溶融樹脂の射出を行う。この際の射出速度は、300mm/sec〜900mm/secと比較的高速であることがより望ましい。使用される樹脂は、光学極薄成形品においては、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート樹脂(PC)、シクロオレフィンポリマ等のオレフィン系樹脂またはそれらの混合物である。中でもアクリル樹脂(特に導光板グレード)は、流動性に優れ、光学性能も充足されるので極薄導光板の成形に用いられる。アクリル樹脂を使用した際、成形金型のキャビティ形成面を冷却する冷却媒体の温度は、40℃〜100℃に設定される。
【実施例1】
【0013】
図1ないし図4に示される極薄成形品の成形金型である極薄導光板の成形金型11について説明する。極薄導光板の成形金型11は、第1の金型である可動金型12と第2の金型である固定金型13とからなり、型合わせされた両金型12,13の間には容積および厚さが可変のキャビティ14が形成されるようになっている。キャビティ14では、図4に示されるゲート隣接部P4から最遠方の他端部P5までの流動長寸法Lに対する板厚寸法Tが0.2%〜0.5%の極薄成形品を成形可能となっている。なお前記において極薄導光板Pの板厚寸法Tは、極薄導光板Pの主面(転写面)の板厚であってパターンが形成されている場合は平均板厚とする。またゲート隣接部P4とは幅のあるゲートの場合、最遠方の他端部P5に最も近い部分とする。そして前記極薄導光板Pの寸法は、成形完了して一定時間経過して収縮等が完了した時点で測定される。ただし成形金型11の型締完了時のキャビティ厚さ(溶融樹脂が射出充填されていない状態でどこまでキャビティ14を薄くできるか)については前記板厚寸法Tよりも薄いものも含まれる。
【0014】
成形金型11の可動金型12は、本体部15(母型)、キャビティ形成ブロック22を含むコアブロック16、可動枠ブロック17、ランナ形成ブロック18、およびゲートカッタ19、突出ピン20等からなっている。なおゲートカッタ19、突出ピン20は必須ではなく必要に応じて設けられる。コアブロック16は、本体部15に固定されており、可動枠ブロック17は、本体部15に対してバネを介して取付けられている。従ってコアブロック16と可動枠ブロック17が型開閉方向に相対的に位置変更可能となっている。そして可動枠ブロック17も成形される極薄導光板Pに応じて交換可能としてもよく、入光面形成ブロック17aを独立して設け、交換可能としてもよい。また実施例1ではコアブロック16は、本体部15側のスペーサブロック21と前面側のキャビティ形成ブロック22(ブロック)からなっている。成形金型11のキャビティ形成ブロック22を含む主要部の母材は、マルテンサイト系のステンレス鋼であるSUS420J2(13Cr−0.3C)が使用され、その熱伝導率は、21W/(m・k)、熱膨張率は、11×10−6/℃程度である。
【0015】
そして図3に特に示されるように、キャビティ形成ブロック22の前面部分は、0.4mmの深さに切削され、底部に溶射接合面23が形成されている。なお溶射接合面23はショットブラスト等の加工をしてもよく、後述する金属溶射層51との接着性が良好になるように他部材をコーティングしてもよい。そして前記溶射接合面23に、断熱層として厚さ0.3mmの金属溶射層51が最初に形成されている。なお本発明において「金属溶射層」とは、「金属(副材料としてセラミックを一定以下含有するものを除外しない)を高温のガス炎やプラズマ環境下に投入して、溶融もしくは半溶融状態の微粒子とし、基体表面に吹き付けることにより形成される皮膜」と定義して使用する。
【0016】
実施例1において金属溶射層51として使用される金属材料は、metco700(材料型番)のニクロム合金であり、Ni20 10W 9Mo 4Cu 1C 1B 1Feからなり、粒子径は125〜16μmのものである。metco700(材料型番)については、熱伝導性が13W/(m・k)程度であり、熱膨張率13.2×10−6/℃程度、硬度HV446〜471である(いずれも常温付近)。しかし溶射材料としては、AMRRY625((材料型番)Ni 21.5Cr 8.5Mo 3Fe 0.5Co)、diamalloy1005((材料型番)Ni 21.5Cr 8.5Mo 3Fe 0.5Co)、diamalloy4004NS((材料型番)Ni 14Cr 9.5Co 5Ti 4Mo 4W 3Al)、diamalloy1006((材料型番)Ni 19Cr 18Fe 3Mo 1Co 1Ti)、AMRRY964((材料型番)Ni 31Cr 11Al 0.6Y)などが用いられる。またNi、Cu、Fe、Al、Mn、C、Siからなる合金であるモネルや、NiにMo、Crを添加したハステロイや、Ni、Cr、Fe、Cu、Moからなる合金であるインコネルやナイモニックなども同様に溶射材料に用いられる。更にはまた、80Ni 20Cr、或いは85Ni 15Crなどのニクロム合金を溶射材料に使用してもよく、それらNi、Crの比率は適宜選択される。また前記材料型番のように、Ni、Crに加え、W、Mo、Co、Ti、Al、B、Si、CTa、Hf、Nb、Zr、Y等を適宜に加えたニクロム合金であってもよく、更に上記以外の組成を含むものを除外しない。これらニクロム合金自体の熱伝導率は、12〜17W/(m・k)程度であり、熱膨張率は9.5〜14×10−6/℃程度である。また溶射材料はCrを含まないかCrが微量でありニクロムの範疇に入らないニッケル基合金であってもよい。これらニクロム合金またはニッケル基合金は、溶射材料として他のセラミック材料や後述するチタン合金等と比較しても廉価である点でも望ましいものである。
【0017】
更に金属溶射材料としては、ニクロム合金以外に、チタン合金、ジルコニウム合金、クロム合金などを用いても良い。またステンレスであってもキャビティ形成ブロック22を形成するステンレス鋼(SUS420J2)の熱伝導率よりも熱伝導率の低いステンレスを金属溶射材料としてもよい。さらには本発明においてはサーメット材の溶射を除外するものではないが、金属との接合性に優れ、かつ熱膨張率がステンレス鋼と大きく相違しないものが望ましく、耐衝撃性が劣るものは除かれる。したがって炭化物、窒化物、酸化物からなるセラミック材料の比率が一定以下(40wt%より少なく、望ましくは30wt%以下)であることが望ましい。ただし金属材料のみからなる溶射材料と比較すると、セラミック材料を含むものは、金属との接合性(親和性)に劣る上に高額なのでステンレス鋼よりも熱伝導率が低い金属からなる溶射材料がより望ましいと言える。
【0018】
金属溶射層51を構成する金属材料(バルク材)の熱伝導率は、キャビティ形成ブロック22を形成するステンレス鋼(SUS420J2)の熱伝導率である21W/(m・k)と比較して熱伝導率が低いものが主に使用され、その結果、金属溶射層51全体の熱伝導率も母材よりも低くなっている。しかし本発明ではキャビティ形成ブロック22の冷却媒体通路55を流れる冷却媒体により溶融樹脂を冷却する際には良好な熱伝導性が必要とされるから、あまりに熱伝導率が低すぎるもの(例えば4W/(m・k)より低いもの)を使用すると、金属溶射層51の厚さにもよるが断熱性と熱伝導性の両立ができない場合がある。また例示した金属材料を使用すると金属溶射層51の厚さを一定以上厚く(例えば150μm以上)することができ、耐久性の点でも望ましい。
【0019】
気孔を有する金属溶射層51全体の熱伝導率については、「溶射技術マニュアル」編著者:馬込正勝に次のような記載がなされている。
すなわち熱伝導率kは、次の実験式で表わすことができる。
k≒kc(1−βP)
Kc=バルク材の熱伝導率
P=空孔率(気孔率)(%)
β=物質と材料の微細組織による因子を示す。
また同著によれば、銅、アルミニウムにおける鋳造材と溶線式フレーム溶射皮膜を比較したところ、同一金属でも溶射皮膜では熱伝導率が50%以下となる実例(表)が示されている。
本発明においても前記金属溶射層51には、後述するように一部例外を除き0.5〜10%の空孔率を有するような金属溶射層を形成する場合が想定されているから、実際の気孔を有する金属溶射層51全体では、金属材料(バルク材)の50%程度の熱伝導率となっていることが想定される。従って本実施形態に使用されるニクロム合金の熱伝導率が13W/(m・k)であっても、気孔を有する金属溶射層自体の熱伝導率は、13W/(m・k)以下、例えば5〜13W/(m・k)となっていることが想定される。
【0020】
また断熱層である金属溶射層51の熱膨張率は、主としてキャビティ形成ブロック22を構成する金属と熱膨張率と大きく相違しないことが金属溶射層51の母材からの剥離を防止する上で望ましい。具体的には、主としてキャビティ形成ブロック22を構成するステンレス鋼(SUS420J2)の熱膨張率は、11.5×10−6/℃であり、他にキャビティ形成ブロック22として使用されるステンレス鋼の熱膨張率も11×10−6/℃〜17×10−6/℃程度であるから、金属溶射層51の熱膨張率も9.5×10−6/℃〜18×10−6/℃程度であることが望ましい。
【0021】
金属溶射層51の硬度は、主としてキャビティ形成ブロック22を構成するステンレス鋼(SUS420J2)の硬度(500〜520HV)よりは若干劣っても400HV以上であれば十分であり、ニッケル基合金の金属溶射層51の硬度は通常450HV前後である。従って本発明の金属溶射層51は、従来技術の断熱層と比較して、衝撃を含む成形時に発生する物理的な力に対して耐久性が高いと言える。
【0022】
ニクロム合金(metco700)の溶射方法は、プラズマ溶射によって行われる。本実施形態では、噴射点温度1300℃、噴射装置内温度(粒子温度)2000℃、ワーク温度150℃でmetco700の溶射がキャビティ形成ブロック22が切削された溶射接合面23に対して行われる。そしてプラズマ溶射により溶射された金属溶射層の空孔率は、0.5〜8%である。しかし本発明では金属溶射層51により断熱層を形成するので空孔率が高い方が望ましく、空孔率が2%以上とすることがより望ましい。そして空孔の大きさおよび粒子径は前記材料径にほぼ一致し125〜16μmのものがほとんどとなっている。ただし溶射距離の変更等の溶射状態の変更により空孔率を変化させることもできる。また金属溶射層51の形成としては粉末式フレーム溶射、アーク溶射といった空孔率が高くなる溶射方法を用いて空孔率5〜10%の金属溶射層を形成することができる。また前記metco700よりも更に熱伝導率が低い溶射材料を使用する際は、前記プラズマ溶射や高速フレーム溶射により空孔率を0〜2%程度としてもよい。また空孔を有する金属溶射層を形成後、空孔部分に他の断熱性の高い部材を含浸させるようにしてもよい。
【0023】
プラズマ溶射による金属溶射層51の形成作業は、キャビティ形成ブロック22の溶射接合面23に対して当初、0.5〜0.8mm程度の厚みにニクロム合金の金属溶射層51の形成を行う。そして前記金属溶射層51を研磨により薄くしていって0.3mmの金属溶射層51を形成する。当初は最終的に必要とされる金属溶射層51の厚みよりも厚く溶射し、その後研磨を行う理由は、溶射を行ったままの表面は、凹凸が目立つので、研磨加工によって表面51aを鏡面状態にするためである。なお金属溶射層51の厚みは、一例として0.1mm〜1.0mm(より一層望ましくは0.2mm〜0.5mm)が適切な厚みである。なお従来のジルコニアやTinのみにより断熱層を形成した場合には、表面の研磨加工を行うことが極めて難しかったが本発明ではそのような問題はなくなり、また再溶射による再加工も容易となった。
【0024】
なおキャビティ形成ブロック22の表面側(母材の表面または母材と別部材を介した表面)に形成される金属溶射層51からなる断熱層は、2層以上に形成されたものでもよい。その場合、空孔率大きい金属溶射層の表面51a側に空孔率が小さい異なる溶射を形成することにより、表面51a側の穴が目立たなくなる。また金属材料は、同じ金属材料で2層以上の金属溶射層を形成してもよく、異なる金属材料で2層以上の金属溶射層を形成してもよい。また金属溶射層51は、セラミック等の溶射層を用いたものを除外しない。
【0025】
そして断熱層である金属溶射層51の表面51a側には、保熱層として厚さ0.1mmの金属層52が形成されている。実施例1において金属層52として使用される金属材料は、ニッケルリンであり、熱伝導率はリンの含有量によっても相違するが90〜120W/(m・k)程度である。なお保熱層は、断熱層の熱伝導率よりも保熱層の熱伝導率の方が高ければ目的を一応達成するので、ステンレス鋼等でもよいが、より好ましくは前記ニッケルリン、ニッケル合金等のニッケル基や、硬質クロム等の熱伝導率の70〜120W/(m・k)程度の金属(各種合金を含む)が用いられる。
【0026】
保熱層である金属層52の形成方法は、溶射以外の方法により、気孔がほとんど無いように形成され、一般的には無電解メッキ等のメッキ処理により形成される。またニッケルリンメッキ層等の金属層52の厚みは、0.01mm〜0.50mmであることがより望ましい。また金属層52の形成方法は、メッキ以外の方法であっても前記厚みに気孔の無い金属層を形成できるものであれば構わない。なお断熱層である金属溶射層51の表面51a側に保熱層である金属層52を形成する目的は次の通りである。第1の目的としては溶融樹脂が接触した際にキャビティ形成ブロック22のキャビティ形成面53a等の表面温度を急激に上昇させ、一定時間保持可能とするためである。次に第2の目的としては、金属溶射層51は、研磨されるが、その表面に微細な気孔が残っているので、前記ニッケルリンメッキ層等の金属層52を形成することにより表面を平滑にすることができるためである。この際一般的には金属層52の表面も研磨される。次に第3の目的としては、キャビティ形成面53aの表面保護のためにも行われる。例えば硬質クロム層(熱伝導率93.7W/(m・k)、熱膨張率17×10−6/℃)を金属層52として用いた場合などは特に表面保護に有利である。次に第4の目的としては、後述する固定金型13側で示されるようにキャビティ形成面58aにパターン59を刻設する際の母材層として金属メッキ層が形成される。パターン59を刻設する場合は、比較的硬度の低い、ニッケルリンメッキ層等が好適に用いられる。この金属層58等にパターン59を形成する方法は、転写を行う際にスタンパを取付ける必要がなく、また輝度分布等に問題があった場合にメッキ層を研磨するか再度形成した後に、パターンを再び刻設できるという点で優れている。
【0027】
また実施例1では、保熱層の更に上層に耐磨耗性を高め平滑性を得る目的から厚さ0.001mm〜0.01mmのWc−co(熱伝導率60W/(m・k))のコーティング層53が積層形成されている。そしてコーティング層53の表面がキャビティ形成面53aとなっている。またコーティング層53については、DLC、Tinなど他の材料のコーティング層でもよい。また蒸着によってDLCやTin等のコーティング層を形成した場合は、熱伝導率1〜2W/(m・k)程度であるが、厚さが0.001mm程度であるので、溶融樹脂により保熱層が昇温される程度についてはそれほど影響が無く、特にDLCを用いた場合は表面平滑性が得られる。なおコーティング層については必須ではなく、保熱層である金属層52がキャビティ14の表面であってもよい。
【0028】
また実施例1では成形金型11にスタンパは配設されていないが、スタンパが配設されるものでもよい。その場合板厚が0.3mm程度でニッケル等の熱伝導率が比較的高いスタンパを保熱層としてもよく、保熱層である金属層52の上に更にスタンパを配設してもよい。
【0029】
また図3に示されるようにキャビティ形成ブロック22の表面側において、ニクロム合金の金属溶射層51からなる断熱層や、ニッケルリンメッキ層の金属層52からなる保熱層が形成されるのは、キャビティ形成ブロック22のキャビティ側のほぼ全面であるが、可動枠ブロック17に隣接する周囲の0.5mm程度の幅の部分には形成されない。これはキャビティ形成ブロック22の端部(略全周)は、可動枠ブロック17と対向して相対的に移動されるので摺動により、前記金属溶射層51や前記金属層52が剥離する可能性があるからである。そしてキャビティ形成ブロック22における可動枠ブロック17と対向する側面部分には、Wc−coコーティング層54等が形成され、摺動性を高めている。なおWc−coコーティング層54は、キャビティ表面のコーティング層53と側面部分が同時に一体に連続するように形成されている。
【0030】
またキャビティ形成ブロック22の内部には、冷却媒体が流される冷却媒体流路55が配設されている。なおキャビティ形成ブロック22は、成形される極薄導光板Pに応じて変更可能である。またキャビティ形成ブロック22の背面に金属メッキ層を形成したりシム等の薄板を挟んでキャビティ14の厚みを調節するようにしてもよい。更にまた成形金型11内に個別に設けた油圧シリンダ等によりコアブロックを個別に制御して位置決めまたは前進させるようにしてもよい。
【0031】
本体部15の中央部には、可動金型12側のランナ形成面56を形成するランナ形成ブロック18(ブロック)が一体に固定されている。そしてランナ形成ブロック18の中心には、突出ピン20が進退可能に設けられ、可動盤26内に突出ピン20の駆動機構である油圧シリンダ27が設けられている。またランナ形成ブロック18内部またはその周囲のブロックの内部にはランナP2やスプルP1を冷却するための冷却媒体が送られる冷却媒体流路28が形成されている。ランナ形成ブロック18のランナ形成面56には前記キャビティ形成ブロック22と同様に該ランナ形成ブロック18の母材よりも熱伝導率が低い断熱層が形成され、断熱層の表面側には該断熱層よりも熱伝導率が高い保熱層が形成されているが、詳細についてはキャビティ形成ブロック22と同じであるので省略する。なおランナ形成ブロック18については可動枠ブロック17と同様に、コアブロック16に対してバネにより相対的に位置変更可能としてもよい。
【0032】
そして前記コアブロック16とランナ形成ブロック18の間のクリアランスには、ゲートカッタ19がそれぞれ油圧シリンダ33により進退自在に設けられている。実施例1のゲートは極薄導光板P用のキャビティ14への溶融樹脂の充填に適したフィルムゲートである。そしてゲートカッタ19の端部に隣接する部分が図4に示される極薄導光板Pのゲート隣接部P4に対応している。
【0033】
次に実施例1の成形金型11の固定金型13について説明する。図1、図2に示されるように、固定盤34に取付けられる固定金型13は、本体部35(母型)、コアブロック36、当接ブロック37、メスカッタ38、ランナ形成ブロック39、スプルブッシュ40等からなる。そして本体部35に、前記コアブロック36、当接ブロック37、およびランナ形成ブロック39等が固定されている。コアブロック36は、スペーサブロック41とキャビティ形成面58aを構成するキャビティ形成ブロック42(ブロック)からなっている。キャビティ形成ブロック42の母材であるステンレス鋼の表面側(母材の表面または母材と別部材を介した表面)には、可動金型12と同様に、キャビティ形成ブロック42の母材よりも熱伝導率が低い金属溶射層57からなる断熱層が形成され、断熱層の表面側(金属溶射層57の表面または金属溶射層57と別部材を介した表面)には該断熱層よりも熱伝導率が高い金属層58からなる保熱層が形成されている。これらの詳細についてはキャビティ形成ブロック22とほぼ同じであるので省略する。ただし実施例1では、固定金型13の金属層58のキャビティ形成面58aには極薄導光板Pに転写を行うパターン59が刻設されている。なおパターン59は必須でなく、少なくとも一方の金型に形成されたものでもよい。また断熱層と保熱層の組合わせは、パターンが刻設される側の金型のみに設けてもよい。
【0034】
また固定金型13のランナ形成ブロック39(ブロック)のランナ形成面60についても表面側(母材の表面または母材と別部材を介した表面)に該ランナ形成ブロック39の母材よりも熱伝導率が低い金属溶射層からなる断熱層が形成され、断熱層の表面側には該断熱層よりも熱伝導率が高い金属層からなる保熱層が形成されている。また場合によってはスプルブッシュ40の内面にも同様に断熱層と保熱層を形成してもよい。またランナ形成ブロック39内部のランナ形成面60の近傍には、ランナP2およびスプルP1を冷却するための冷却媒体が送られる冷却媒体流路29が形成されている。
【0035】
なお実施例1では、コアブロック16に対して相対的に位置変更可能な可動枠ブロック17が、固定金型13の当接ブロック37と当接する平当金型と呼ばれるタイプの成形金型11について説明したが、一方の金型の凸部が他方の金型の凹部内に嵌合され、その間に容積可変のキャビティが形成されるインロー金型と呼ばれるタイプについても本発明を適用することができる。また本発明は少なくともキャビティ14の厚みが変更される圧縮成形金型が望ましいがそれに限定されない。
【0036】
実施例1の極薄導光板の成形金型11が取付けられる射出成形機24は、射出圧縮成形(その一分野の射出プレス成形を含む)が可能な射出圧縮成形機であって、固定盤34と可動盤26からなる型締装置25と射出装置44等から構成されている。そして型締装置25は、可動盤26の位置が高精度に制御可能となっている。また射出装置44は、高速射出が可能となっている。
【0037】
次に極薄導光板の成形金型11が取付けられた射出成形機24による極薄成形品である極薄導光板Pの成形方法(射出成形方法)について、図5、図6を中心に説明する。実施例1では対角寸法8インチ、板厚0.6mmの均等板厚の極薄導光板Pをアクリル樹脂(PMMA)を使用して成形を行う。なお本発明は、図4に示されるように、例えば対角寸法3.5インチ(キャビティ14の流動長寸法L=7.5cm)では板厚0.15mm〜0.375mm、対角寸法8インチ(キャビティの流動長寸法L=17.5cm)では板厚0.35mm〜0.875mm、対角寸法14インチ(キャビティの流動長寸法L=29.7cm)では板厚0.594mm〜1.485mmというように、ゲート隣接部P4から他端部P5までの流動長寸法Lに対する板厚寸法Tが0.2%〜0.5%の極薄成形品である極薄導光板Pを成形するものである。なお極薄導光板Pの流動長寸法Lは、極薄導光板Pの形状、ゲート幅、およびゲート位置等により異なる。
【0038】
一般的にアクリル樹脂(導光板専用グレード)で成形される極薄導光板Pは、流動長寸法Lが長い中型〜大型のものが多い。そしてアクリル樹脂は、光学特性に優れているが、内部応力により割れやすいという性質を持っている。従って900mm/secよりも高い射出速度は、極薄導光板Pの内部応力を悪化されるため好ましくない。そして射出成形機24の加熱筒前部の温度は、250℃(より一層好ましくは230℃〜320℃)とし、固定金型13と可動金型12のキャビティ形成面53a,58aを冷却する冷却媒体の温度は、それぞれ60℃(一例としてより好ましくは40℃〜100℃)とし、スプルP1およびランナP2を冷却する冷却媒体の温度もそれぞれ60℃(より一層好ましくは40℃〜100℃)に設定する。
【0039】
射出成形機24の型締装置25が駆動され型閉がなされると、型締完了前のキャビティ14のキャビティ間隔が僅かに開いた位置(容積が僅かに拡大された位置)に可動盤26および可動金型12が一旦停止される。(または一旦型締完了位置まで可動金型12を前進させてから停止位置へ後退させる。)その際の型締力は比較的低い値であって可動盤26等が型締方向および型開方向の両方に移動しないように型締装置25の型締シリンダに油を封じ込める。またはサーボモータを用いた型締装置の場合はサーボロック状態とする。そして次に射出成形機24の射出装置44のスクリュが前進され、スプルP1、ランナP2、ゲートP3を介してそれぞれのキャビティ14に向けて溶融樹脂を射出する。この際の射出速度は、500mm/sec(望ましくは300〜900mm/sec、より望ましくは300〜700mm/sec)とする。
【0040】
この際、図5に示されるようにランナ形成面56,60の保熱層の温度は、断熱層の断熱効果により、冷却媒体温度である60℃程度から溶融樹脂温度(ただし加熱筒内部よりも温度は低下)近くまで急速に昇温される。このランナ形成面56,60の昇温カーブは、従来の断熱層と保熱層の無い成形金型よりも急激なカーブで昇温される。そのためランナ形成面56,60の表面にスキン層が形成されるのが遅れ、溶融樹脂の流動性が確保される。また射出充填終了後に熱容量の大きい母型側から断熱層を介して保熱層側に冷却熱が伝達されると、保熱層は熱伝導率が高いことから急速にランナP2が冷却される。極薄導光板Pの成形においては、成形品よりもランナP2またはスプルP1の部分の方が板厚が厚いので、ランナP2またはスプルP1が急速に冷却されることは成形サイクル時間の短縮に寄与する。
【0041】
そしてまた実施例1の射出プレス成形では、射出開始前にランナ形成ブロック18およびキャビティ形成ブロック22は後退した位置であるので、ランナP2およびゲートP3の断面積が広がった状態でキャビティ14内に射出充填を行うことができる。(射出圧縮成形の場合は、射出圧によりランナおよびゲートが広がるので類似した効果が得られる。)そして射出により溶融樹脂の一部がキャビティ14内に流入したタイミングをスクリュの前進位置により検出して型締装置25の再駆動(昇圧)を行う。そして可動金型12のコアブロック16を固定金型13のコアブロック36に向けて前進させ、キャビティ14内の溶融樹脂を圧縮し、溶融樹脂をキャビティ14のゲートP3から他端部(流動端部)まで延展する。
【0042】
この際、射出工程の間はスクリュ前進によりゲートP3等を介してキャビティ14内に向けて溶融樹脂が供給される。しかし射出工程が完了し保圧工程に移行し射出装置44側からの圧力が急速に低下された際には、まだ型締装置25による溶融樹脂の圧縮は継続されているので、今度はキャビティ14からゲートP3を介して溶融樹脂がランナP2側に逆流する。なお逆流開始時は、射出速度、射出圧力、保圧時の圧力、保圧切換のタイミング、型締速度、型締力、および型締開始のタイミング等、キャビティ容積等により一定ではないが、保圧切換時を中心にしてその直前から型締装置25の昇圧完了までの間である。このように溶融樹脂を逆流させることにより、極薄導光板Pのゲート側の板厚の方が最遠方の他端部P5側よりも厚くなるのを防止することができる。
【0043】
この際、図6に示されるようにキャビティ形成ブロック22,42の保熱層である金属層52,58の温度は、断熱層である金属溶射層51,57の断熱効果により、冷却媒体温度である60℃程度から流動する溶融樹脂温度近くまで急速に昇温される。このキャビティ形成面53a,58aの昇温カーブは、従来の断熱層と保熱層の無い成形金型よりも急激なカーブで昇温される。そのためキャビティ形成面53a,58aの表面にスキン層が形成されるのが遅れ溶融樹脂の流動性が確保されるとともに、型締装置25による圧縮も加わってパターン59による極薄導光板Pへの転写も良好になる。また射出充填終了後に断熱層を介して熱容量の大きい母型側から保熱層側に冷却熱が伝達されると、保熱層は熱伝導率が高いことから急速に冷却され、キャビティ14内の溶融樹脂の冷却を促進する。または当初のキャビティ形成面53a,58aの温度を従来と同じ80℃に近づけた温度にしておけば、成形サイクル時間の短縮は見込めないが、キャビティ14内での溶融樹脂の流動性を更に高めることができる。
【0044】
そして射出開始時または型締開始時から所定時間が経過したことがタイマで検出されるとゲートカッタ19の駆動機構が作動しゲートが切断される。この際にゲートカッタ19の前進により逆流中の溶融樹脂を遮断することにより、上記のように一層極薄導光板Pの板厚精度の向上が図りやすい。そしてキャビティ14内で溶融樹脂の冷却が完了すると板厚精度が良好な極薄導光板Pが取出され、後工程へ送られる。
【実施例2】
【0045】
図7に示される実施例2は、実施例1と同様の成形金型11および射出成形機24によりポリカーボネート樹脂(PC)を用いて射出成形を行った際のキャビティ形成面53aまたは58aの温度等を示している。一般的にポリカーボネート樹脂(導光板専用グレード)で成形される極薄導光板Pは、携帯電話用等の小型のものが多い。そして射出成形機24の加熱筒前部の温度は、330℃〜395℃とし、キャビティ形成面53a,58aを冷却する冷却媒体の温度は、90℃〜130℃(実施例2では115℃)に設定する。そして前記同様に射出速度を300〜900mm/secとしてポリカーボネート樹脂の射出を行う。
【0046】
そして射出された溶融樹脂により、キャビティ形成面58aを直接構成する金属層58、またはキャビティ形成面53aの裏面側の金属層52の温度は、射出中に急速に昇温され、従来の断熱層と保熱層の無い成形金型よりも高温になる。そのためキャビティ14内の溶融樹脂の流動性および転写性が確保される。また射出充填終了後に断熱層である金属溶射層51,57を介して熱容量の大きい母型側から保熱層である金属層52,58側に冷却熱が伝達されると、前記金属層52,58は熱伝導率が高いことから急速に冷却され、成形サイクル時間の短縮に寄与する。または当初温度を135℃に近づけておくことにより、成形サイクル時間の短縮はされないが溶融樹脂の流動性を更に高めることができる。実施例2についてもキャビティ14と同様にスプルP1やランナP2も断熱層と保熱層を設けて保熱層を急速に昇温させることもできる。
【実施例3】
【0047】
実施例3の成形金型については図示を省略するが、上下に型開閉され、パーティング面にスプルブッシュが形成されている。そしてスプルブッシュ、ランナ形成面、キャビティ形成面に断熱層と保熱層が形成されている。その場合、スプルブッシュは、両方の金型に跨っており分割されるので、断熱層と保熱層の形成作業が容易となる。またスプルブッシュ内でスプル切断がされた場合も断熱層等にダメージを与えずに取出しがしやすい。更には平面または平面に近いパーティング面上にスプルブッシュ、ランナ、キャビティを連続して形成することができるので、射出した溶融樹脂の流動損失が少ない。キャビティを複数形成する場合は、ランナをY字形に配設する(射出側がY字の下側)ことにより流動損失を更に小さくすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、極薄導光板以外にも光拡散板、レンズ、樹脂ガラスや車輌用樹脂窓材、SDカードケース、電池ケース等の種類を問わない極薄成形品を成形する成形金型全般に用いられる。また極薄成形品は、均等圧な板厚のものに限定されず、一部に厚肉部を有するもの、曲面を有するもの、および箱状のもの等でも記載された流動長寸法と板厚の比に該当するものであればよい。更に極薄成形品を成形する材料は、実施例に記載された樹脂に限定されず各種樹脂材料であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
11 導光板の成形金型(極薄成形品の成形金型)
12 可動金型
13 固定金型
14 キャビティ
18,39 ランナ形成ブロック(ブロック)
22,42 キャビティ形成ブロック(ブロック)
24 導光板の射出成形機(極薄成形品の射出成形機)
25 型締装置
51,57 金属溶射層(断熱層)
52,58 金属層(保熱層)
53a,58a キャビティ形成面
L 流動長寸法
P 極薄導光板
P2 ランナ
T 板厚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型と可動金型の間にキャビティが配設され、該キャビティの端部にゲートが設けられた極薄成形品の成形金型において、
ゲート隣接部から最遠方の他端部までの流動長寸法に対する板厚寸法が0.2%〜0.5%の極薄成形品を成形可能なキャビティが設けられ、
前記キャビティまたはランナを形成するブロックの表面側には該ブロックの母材よりも熱伝導率が低い断熱層が形成され、
前記断熱層の表面側には該断熱層よりも熱伝導率が高い保熱層が形成されていることを特徴とする極薄成形品の成形金型。
【請求項2】
前記断熱層は、厚さは0.1mm〜1.0mmの金属溶射層であり、前記保熱層は、溶射以外の方法により形成された厚さ0.01mm〜0.50mmの金属層であることを特徴とする請求項1に記載の極薄成形品の成形金型。
【請求項3】
少なくともキャビティは厚みが変更可能であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の極薄成形品の成形金型。
【請求項4】
請求項1に記載の成形金型を用いた極薄成形品の成形方法において、
射出時に少なくともキャビティの厚さを極薄成形品の板厚よりも広げた状態で溶融樹脂の射出を行い、射出中または射出後にキャビティ内の溶融樹脂を圧縮することを特徴とする極薄成形品の成形方法。
【請求項5】
射出時の射出速度は、300mm/sec〜900mm/secとすることを特徴とする請求項4に記載の極薄成形品の成形方法。
【請求項6】
極薄成形品の成形材料はアクリルであって、キャビティ形成ブロックを冷却する媒体の温度は40℃〜100℃とすることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の極薄成形品の成形方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−173280(P2010−173280A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21065(P2009−21065)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(000155159)株式会社名機製作所 (255)
【Fターム(参考)】