説明

構内無線呼出システム

【課題】本発明は、呼出操作された携帯端末の位置ないしエリアを表示できる構内無線呼出システムにおいて、無線電波方式と音波方式とを融合し、より簡易な方法で、呼出操作された携帯端末の位置ないしエリアを表示できる構内無線呼出システムを提供することを課題とする。
【解決手段】
本発明の構内無線呼出システムは、基地局と携帯端末との間のやりとりを、電波と音波という、屋内における伝播特性が相違する2種類の通信手段を組み合わせて行なうことにより、より高精度の位置検知を行なうことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は構内無線呼出システムに係り、特に、呼出操作された携帯端末の位置ないしエリアを表示できる構内無線呼出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、呼出操作された携帯端末の現在位置を表示できる構内ページングシステムが記載されている。
【0003】
すなわち、施設内において分散配置される複数の無線基地局は、それぞれ、電界強度計測機能を有し、各基地局で計測された受信電界強度を元に複雑な計算処理を行ない、携帯端末の位置を推定できるようになっている。
【0004】
しかしながら、客先からは、このような高度なシステムより、より簡易で安価な構内無線呼出システムの提供が求められている。
【0005】
そこで、一般的には、複数の基地局を、互いの、電波受信可能範囲、すなわち電波ゾーンができるだけ重ならないように配列し、同時には、1つの基地局でのみ受信できるように、電波受信感度、電波受信方向などを現場あわせで細かく調節し、受信した基地局またはそのカバーエリアをそのまま携帯端末の発信位置として表示するシンプルなシステムが採用されることが多い。
【0006】
しかし、このような、電波を使った構内無線呼出システムは現場合わせの調節に頼らざるを得ないし、また、どんなに丹念に調節したとしても、一の携帯端末から送信された呼出電波が、複数の基地局で同時受信される不具合は発生する。
【0007】
もっとも、この種の多重受信の不具合は、同時受信した基地局が同一フロアで隣接している場合には、推定エリアが見通し範囲で広がるだけであり、実用的な問題は小さい。そのため、問題視されることは少ない。
【0008】
問題は、構内無線呼出システムのサービスエリアが複数階にまたがっている場合に発生する。すなわち、複数フロアが吹き抜けの階段空間で繋がっている場合には、異なる階にある複数の基地局で同時受信してしまうという不具合が発生する。
【0009】
この不具合を防止するには、携帯端末の送信出力または基地局の受信感度を極限まで小さくする必要がある。受信感度を低下させると、今度は、サービスエリア内において、受信不能ポイントが増大する。
【0010】
特許文献2には、上記のような無線システムの欠点を除去するものとして、伝播経路が無線に比較して短い音波を使用した緊急通報用音波送受信装置が記載されている。
【0011】
このような、音波送受信方式の位置検知システムは、周囲騒音の影響を受けやすいため、高度な耐騒音技術が必要であり、実用化されているのは、水中における超音波探知システム等に限定されている。
【0012】
【特許文献1】・・・・特開平8−307917号公報
【特許文献2】・・・・特開平7−46656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、電波方式と音波方式とを融合し、より簡易な方法で、呼出操作された携帯端末の位置ないしエリアをより高精度で表示できる構内無線呼出システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の構内無線呼出システムは、基地局と携帯端末との間のやりとりを、電波と音波という、屋内における伝播特性が相違する2種類の通信手段を組み合わせて行なうことにより、より高精度の位置検知を行なうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上記のように構成されているので、電波による確実な情報伝送と、音波による高精度の位置検知とを同時に達成可能であり、現場の要望に適した、より実用的なシステムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明の実施例を示すシステム構成図である。
【0017】
図において、1は、病院のナースセンターや福祉施設の管理センター等に設置される管理親機であり、警報スピーカ2、表示手段3、操作部4を備えている。
【0018】
5は、本発明の構内無線呼出システムの管理エリア内で、適切な間隔を置いて配列設置される基地局であり、その配置間隔は、予定される電波ゾーン、音波ゾーン考慮して決定され、それぞれ、アンテナ6およびマイク7を備えている。
【0019】
8は入居者や入院患者によって携帯されるペンダント形の携帯端末であり、呼出ボタン9を備え、これを操作することにより、電波および音波からなる呼出信号が発射される。
【0020】
携帯端末8から送信される呼出信号は、携帯端末8が位置する電波ゾーン、音波ゾーンに対応する特定の基地局5で受信され、通信線10を介して管理親機1に送信される。
【0021】
管理親機1は、前記基地局5から送信される呼出信号を受信、解析して、警報スピーカ2から警報音を出力する。同時に呼び出した携帯端末8の位置および識別記号を表示手段3に表示する。
【0022】
図2は、表示手段3の表示例を示したものであり、4階建ての建物の立面図がレイアウト表示され、分割された各領域にゾーン名が表示されている。
たとえば、4階のフロアは、4分割されたゾーン41〜ゾーン44で構成されている。
【0023】
なお、前記した基地局5は、基本的には、各ゾーンの中央部に配置される。
【0024】
ところで、図2で着色乃至網掛けされたゾーン42、ゾーン43について説明すると、ゾーン43では呼出した携帯端末8の電波のみが検知され、ゾーン42では、音波と電波の双方が検知された状態を示している。音波が検知されたゾーン42には、検知した携帯端末8の識別ID「AAA」が表示されている。
【0025】
図3は、電波ゾーンと音波ゾーンの説明図である。
【0026】
図3(A)に示すように、電波ゾーン#1〜電波ゾーン#5は、No.1〜No.5の各基地局5を中心として、その受信感度で定まる領域であり、当該構内無線呼出システムのサービスエリア内において、デッドポイントが発生しないよう、隣接する電波ゾーン相互は互いに重なり合うように配置されている。
【0027】
音波ゾーン#1〜音波ゾーン#5は、各基地局5の音波感度で定まる領域であり、呼出システムのサービスエリア内で不感部分が発生しないよう、相互に重なり合うように配置される。
【0028】
この音波ゾーンは、電波ゾーンに対し狭い領域を有し、その重畳部分はできるだけ狭くなるように設定される。すなわち、音波ゾーンは、位置検知精度の向上のため、可能な限り狭い範囲に設定する。
【0029】
なお、携帯端末8が電波ゾーン内にあれば、音波ゾーン外にあったとしても、携帯端末8の識別信号などをやり取りする電波通信に支障をあたえることはない。
【0030】
次に、携帯端末8がA〜Dの各ポイントに位置する場合の検知状態について説明する。
【0031】
Aポイントは、No.1の基地局5の電波ゾーン#1および音波ゾーン#1内にあり、Aポイントにおいて、携帯端末8から呼出信号が発射されると、携帯端末8の位置は、音波ゾーン#1に特定される。
【0032】
Bポイントの場合も同様である。
すなわち、Bポイントは、電波ソーン#1、電波ゾーン#2、および音波ゾーン#1に属し、携帯端末8の位置としては、音波ゾーン#1に特定される。
【0033】
Cポイントは、電波ゾーン#1、#2、音波ゾーン#1、#2に属し、携帯端末8の位置としては、音波ゾーン#1〜#2に特定される。
【0034】
Dポイントは、電波ゾーン#1、#2、#3、音波ゾーン#2に属し、携帯端末8の位置としては、音波ゾーン#2に特定される。
【0035】
図3(B)は、上記の位置関係を一覧にしたものである。
【0036】
図4は、本発明の構内無線呼出システムのブロック回路図である。
【0037】
携帯端末8は、呼出ボタン9、携帯端末8の識別符号を発生するID発生部11、搬送波をID信号で変調する変調部12、電波送信部13、アンテナ14、所定の音信号を発生する音データ発生部15、音波送信部16、スピーカ17が設けられている。
【0038】
基地局5には、アンテナ6に連なる電波受信部18、電波受信部18の感度を調節する電波感度設定手段19、電波信号から情報を復元する復調部20、復調信号を判別する電波信号判別部21が設けられている。
【0039】
基地局5には、前記の電波処理系統とは別に、音波処理系統があり、マイク7に連なる音波受信部22、音波受信部の感度を調節する音波感度設定手段23、音波データから呼出音情報を復元する濾波器24が設けられている。
【0040】
さらに、基地局5には、電波信号判別部21および濾波器24に接続されたデータ処理部26が設けられており、このデータ処理部26で処理されたデータは、送受信インターフェース27、通信線10を介して管理親機1に送信されるようになっている。
【0041】
管理親機1には、基地局5とデータを送受信するための送受信インターフェース28と、受信データを判別して所要のデータを出力するデータ処理部29と、データ処理部29から出力される信号で駆動される表示手段3および警報音手段30と、動作プログラム、回線データ、基地局データ、携帯端末データなどを記憶できる記憶手段31、操作スイツチなどで構成される入力手段32とを設けてある。
警報音手段30の出力には警報スピーカ2が接続されている。
【0042】
次に図4を参照して呼出動作を説明する。
【0043】
まず、携帯端末8の呼出ボタン9を押す。そうすると、ID発生部11が起動し、2進シリアル信号を発生する。このシリアル信号は変調部12で搬送波に載せられ、電波送信部13を介してアンテナ14から呼出電波として送信される。
【0044】
また、呼出ボタン9が押されると、音データ発生部15から所定の音データが出力される。
ここで、所定の音データとしては、たとえば、所定周波数の継続音や断続音などが使用できる。
なお、音周波数は、音声帯域でもよいし、超音波帯域でもよい。
【0045】
音データ発生部15から出力された音データは音波送信部16、スピーカ17を介して外部に放出される。
【0046】
基地局5では、携帯端末8から送信される電波信号および音波信号を、それぞれ、アンテナ6を含む電波受信部18、およびマイク7を含む音波受信部22で受信するが、各受信部18、22の受信可能レベルは、電波感度設定手段19および音波感度設定手段23で予め設定されているものとする。
【0047】
なお、電波感度設定手段19、音波感度設定手段23の各設定は、受信電波または受信音波の信号増幅レベル乃至受信感度を可変して受信可能レベルを設定するためのもので、相互に独立して設定できるものとする。
【0048】
その際、電波感度設定手段19による設定は、サービスエリア内でデッドポイントが発生しないよう、余裕のある広めの電波ゾーンとなるように設定する。
【0049】
他方、音波感度設定手段23による設定は、音波ゾーンの重複が少なくなるように設定する。
【0050】
次に、電波受信部18を経由した電波信号は復調部20で復調され、正常信号であれば、電波信号判別部21を介してデータ処理部26に送信される。
【0051】
また、音波受信部22を経由した音波信号は濾波器24介して所要の信号が取出されデータ処理部26に送信される。
【0052】
データ処理部26では、得られた電波情報および音波情報を送信信号に変換し、送受信インターフェース27、通信線10を介して管理親機1に送信する。
【0053】
管理親機1のデータ処理部29では、送受信インターフェース28を介して受信した信号から、携帯端末識別番号、基地局番号、電波情報、音波情報等を取出し、その情報内容に応じて、警報音手段30を作動させ、警報スピーカ2から警報音を出力する。
【0054】
同時に、表示手段3のレイアウト画面における該当ゾーンの表示色を変え、携帯端末の識別番号を表示させる。
【0055】
なお、記憶手段31に携帯端末の識別番号と所有者名の対応表が記憶されていれば、携帯端末の識別番号に変えて、携帯端末の所有者名を表示させることもできる。
【0056】
なお、実施例において、音波の受信レベルを計測できるようにすれば、基地局毎の受信音波レベルの比較が可能となり、仮に、特定の携帯端末から送信された1つの音波を複数の基地局で受信した場合には、当該携帯端末に最も近い基地局のゾーンを選択的に特定できる。
【0057】
さらに、音波受信レベルと離隔距離の対応表を備えることにより、各基地局から携帯端末までの離隔距離を推定することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施例を示すシステム構成図。
【図2】本発明の実施例を示す表示手段の表示例。
【図3】本発明の実施例を示す電波ゾーンと音波ゾーンの説明図。
【図4】本発明の実施例を示すブロック回路図。
【符号の説明】
【0059】
1 管理親機
2 警報スピーカ
3 表示手段
4 操作部
5 基地局
6 アンテナ
7 マイク
8 携帯端末
9 呼出ボタン
10 通信線
11 ID発生部
12 変調部
13 電波送信部
14 アンテナ
15 音データ発生部
16 音波送信部
17 スピーカ
18 電波受信部
19 電波感度設定手段
20 復調部
21 電波信号判別部
22 音波受信部
23 音波感度設定手段
24 濾波器
26 データ処理部
27 送受信インターフェース
28 送受信インターフェース
29 データ処理部
30 記憶手段
31 入力手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設内の入居者によって携帯され電波信号および音波信号を送信する携帯端末と、前記施設内の適所に分散配置され前記電波信号および前記音波信号を受信する複数の基地局と、前記基地局から送信される前記携帯端末の受信データをもとに、呼出した携帯端末の現在位置を取得できるようにした管理親機とで構成される構内無線呼出システムにおいて、
複数の前記基地局は、前記入居者からの呼出時に前記携帯端末から送信される電波信号を受信する電波受信部と、前記入居者からの呼出時に前記携帯端末から送信される音波信号を受信する音波受信部とを備え、
前記管理親機は、前記音波信号および前記電波信号の両方を受信した基地局の近傍を前記携帯端末の現在位置としたことを特徴とする構内無線呼出システム。
【請求項2】
入居者によって携帯され、電波信号および音波信号を送信できる携帯端末と、施設内の適所に分散配置され、前記電波信号および前記音波信号を受信できる複数の基地局と、前記基地局から送信される前記携帯端末の受信データをもとに、呼出した携帯端末の所在位置を表示できるようにした管理親機とで構成される構内無線呼出システムにおいて、
複数の前記基地局には、前記携帯端末から呼出時に送信される電波信号および音波信号を受信できる電波受信部および音波受信部と、前記電波信号および前記音波信号のそれぞれの受信可能領域に対応する電波ゾーンおよび音波ゾーンのカバーエリアを相互に独立して調節できる電波感度設定手段および音波感度設定手段とを設け、
前記管理親機は、前記携帯端末が特定の基地局の音波ゾーンおよび前記電波ゾーンの両方で検知されたとき、当該音波ゾーンを当該携帯端末の現在位置として表示することを特徴とする構内無線呼出システム。
【請求項3】
前記携帯端末から送信される電波信号に携帯識別信号を付加し、前記管理親機は、前記携帯端末の識別可能な情報を表示するようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の構内無線呼出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−35363(P2008−35363A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−208288(P2006−208288)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(591253593)株式会社ケアコム (493)
【Fターム(参考)】