説明

構造健全性の監視を目的としたナノ粒子インクによる圧電センサの分散ネットワークのための方法及びシステム

【課題】構造物の表面に配置されたナノ粒子センサを利用した構造健全性監視の方法及びシステムを提供する。
【解決手段】構造物30の構造健全性172を監視するシステム170は、構造物30の上に沈着されるナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリの分散ネットワーク120を含む。各アセンブリは、ナノ粒子インクによる複数の圧電センサ110及び複数の導電性インク電源及び複数のセンサ110を相互接続する通信線アセンブリ140を有する。このシステムはさらに、構造物30の上にナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリの分散ネットワークを沈着させるインク沈着装置142を含む。このシステムはさらに、分散ネットワーク120に電力を供給する電源178を有する。このシステムはさらに、センサ110から一又は複数の信号を介して構造物の構造健全性データ174を読み出して処理するデータ通信ネットワーク179を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、構造健全性監視の方法及びシステムに関し、より詳しくは構造物の表面に配置されたナノ粒子センサを利用した構造健全性監視の方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロセンサなどの小型センサは、複合構造物又は金属構造物などの構造物を連続的に監視し、且つ構造物の性能、起こりうる損傷、及び現在の状態を評価するため、材料特性、応力、歪みのレベルの測定を行う構造健全性監視(SHM)システム及び方法含む各種のアプリケーションで使用することができる。既知のSHMシステム及び方法は、ポリイミド基板又は他の好適な基板に組み込まれた小型で固いセラミックディスクセンサを含むことがある。このような既知のセンサは典型的に、接着剤を用いて手作業で構造物に接着される。このような手作業による取り付けは作業及び設置の費用を増大させ、また、このような接着剤は時間とともに劣化し、構造物からセンサが剥離する結果となることがある。さらに、このような既知のセンサは、例えば、湾曲した又は非平面の基板表面での使用を制限する、固い平面材料及び/又は脆性材料で作られることがある。さらに、このようなセラミックディスクセンサは電力及び各センサをつなぐ最低2本の導線からなる通信配線を必要とする。このような配線は、導線の結合、ハンガー、ブラケット、又は配線の構成を維持する他のハードウェアを利用する接続及び管理を必要とすることがある。このような配線及び当該配線を管理、構成するハードウェアは、構造物を複雑化し、重くすることがある。
【0003】
これに加えて、微小電気機械システム(MEMS)などの既知のセンサシステム及び方法は、ナノ粒子を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)センサなどの基板圧電センサ上への沈着の利用を含むことがある。MEMSなどを製造する既知の方法は、直接描画インク用のPZT粉末の溶融塩合成を含みうる。しかしながら、このような既知の方法で製造されたPZTセンサのアプリケーションは、PZTセンサの物理的形状によって制限されることがある。このような物理的形状の制限によって、検出能力が不十分となること、又は作動応答が不十分となることがある。さらに、このような既知の方法によって製造されたPZTセンサは、その製造方法の結果として、その機能が重要となる領域には適用又は配置することができない場合がありうる。例えば、既知の溶融塩合成の方法は、ある種のアプリケーション基板が許容可能な温度以上で処理しなければならないことがある。
【0004】
さらに、このような既知のMEMSシステム及び方法はまた、結晶化しておらず、且つ結晶化したナノ粒子よりも効率の劣るナノ粒子を有するセンサの使用を含みうる。非結晶化構造は典型的に、歪み及び電圧に対する応答感度の低下をもたらす構造破壊が大きくなっているが、一方、結晶化構造は典型的に、歪みに対する応答感度を上昇させ、動作に必要となるエネルギーを低下させる内部構造が大きくなっている。加えて、センサのナノ粒子は、ジェット噴霧沈着(JAD)プロセスなど、一部の既知の沈着プロセス及びシステムに対しては大きすぎることがあり、又、このようなナノ粒子は、温度に敏感な基板又は構造物に損傷を与える恐れのある高温の焼結/結晶化プロセスが必要となることがある。
【0005】
したがって、構造物の構造健全性監視システム及び方法に使用されるナノ粒子圧電センサによる分散ネットワークに関しては、方法及びシステムを改善するための技術が必要であり、このような方法及びシステムの改善は既知の方法及びシステムに対する優位性をもたらす。
【発明の概要】
【0006】
構造物用の構造健全性監視システム及び方法に使用しうる、ナノ粒子圧電センサの分散ネットワークに対する方法及びシステムの改善のニーズは満たされている。以下の詳細な説明で議論されているように、本システム及び方法の実施形態は既存のシステム及び方法に対して有意な利点をもたらしうる。
【0007】
本発明の一実施形態では、構造物の構造健全性を監視するシステムが提供されている。このシステムは、構造健全性の監視対象となる構造物を含む。このシステムはさらに、構造物の上に沈着されるナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリの分散ネットワークを含む。各アセンブリは、ナノ粒子インクによる複数の圧電センサを含む。各アセンブリはさらに、複数の導電性インク電源及び複数のセンサを相互接続する通信線アセンブリを含む。このシステムはさらに、構造物の上にナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリの分散ネットワークを沈着させるインク沈着装置を含む。このシステムはさらに、分散ネットワークに電力を供給する電源を含む。このシステムはさらに、センサから一又は複数の信号を介して構造物の構造健全性データを読み出して処理するデータ通信ネットワークを含む。構造物は、非曲面(又は平面)、曲面(又は非平面)、あるいは非曲面(又は平面)と曲面(又は非平面)との組み合わせを含みうる。ナノ粒子インクによる圧電センサアセンブルは、構造物本体とセンサアセンブルとの間に一又は複数の絶縁層、被覆層、又は塗料層を有する構造物の表面上に沈着させることができる。
【0008】
本発明の別の実施形態では、構造物の構造健全性を監視する方法が提供されている。この方法は、構造健全性の監視対象となる構造物を提供するステップを含む。この方法はさらに、ナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリの分散ネットワークを形成するため、インク沈着プロセスを介して構造物の上に、ナノ粒子インクによる複数の圧電センサ、複数の導電性インク電源及び複数のセンサを相互接続する通信線アセンブリを沈着するステップを含む。この方法はさらに電源を介して、分散ネットワークに電力供給するステップを更に含む。この方法はさらに、センサから一又は複数の信号を介して構造物の構造健全性データを読み出して処理するデータ通信ネットワークを含む。
【0009】
本発明の別の実施形態では、構造健全性の監視対象となる構造物が提供されている。この構造物は本体を含む。この構造はさらに、インク沈着プロセスを介して、構造物の本体上に沈着されるナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリの分散ネットワークを含む。各アセンブリは、ナノ粒子インクによる複数の圧電センサを含む。各アセンブリは、複数のセンサを相互接続する複数の導電性インクアクチュエータアセンブリをさらに含む。分散ネットワーク内の信号経路は複数のナノ粒子を含み、構造物の構造健全性データは、信号経路を通ってセンサからデータ通信ネットワークまで流れる一又は複数の信号によって得られる。
【0010】
本発明の別の実施形態では、構造物の構造健全性を監視する方法が提供されている。この方法は、構造健全性の監視対象となる構造物を提供するステップを含む。この方法はさらに、構造物の構造健全性を検出、監視するため、ナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリの分散ネットワークを使用するステップを含む。この方法はさらに、電源を介して分散ネットワークに電力を供給するステップを含む。この方法はさらに、ナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリからの一又は複数の信号を介して、構造物の構造健全性データを読み出して処理するデータ通信ネットワークを使用するステップを含む。
【0011】
既に説明した特徴、機能及び利点は、本発明の様々な実施形態で独立に実現することが可能であるか、以下の説明及び図面を参照してさらなる詳細が理解されうる、さらに別の実施形態で組み合わせることが可能である。
【0012】
本発明は、好適且つ例示的な実施形態を示す添付図面と併せて、以下の詳細な説明を参照することでよりよく理解されるが、これらの図面は必ずしも正確な縮尺で描かれているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明のシステム及び方法の一実施形態が使用されうる、例示的な航空機の斜視図を示したものである。
【図2】図2は、沈着したナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリの一実施形態の断面図を示したものである。
【図3】図3は、沈着したナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリの別の実施形態の断面図を示したものである。
【図4】図4は、沈着したナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリの分散ネットワークの一実施形態の上面斜視図を示したものである。
【図5】図5は、本発明のナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリを有する構造物の一実施形態のブロック図を示したものである。
【図6A】図6Aは、本発明のナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリを製造するためのインク沈着プロセス及び装置の一実施形態の概略図を示したものである。
【図6B】図6Bは、基板表面上に沈着させた圧電なの粒子インクによるセンサの拡大図を示したものである。
【図7】図7は、本発明のナノ粒子インクの分散型ネットワークによる圧電センサアセンブリを使用した構造健全性監視システムの一実施形態の模式図を示したものである。
【図8】図8は、本発明の方法の一実施形態のフロー図を示したものである。
【図9】図9は、本明細書に記載されているシステム及び方法で使用されうるインク沈着プロセス及びインク沈着装置の実施形態のブロック図を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付図面を参照して本発明の実施形態についてさらに詳細に説明するが、添付図面にはすべての実施形態が示されているわけではない。実際には、幾つかの種々の実施形態が提供可能であり、本明細書で説明した実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、この開示が徹底的かつ完全であり、当業者に本発明の範囲が十分に伝わるように、これらの実施形態を提示する。以下の詳細な説明は、本発明を実行する際に現時点で想定される最良の態様である。この説明は限定的な意味で理解すべきものではなく、単に本発明の一般的な原理を説明することを目的として行ったものであり、本発明の範囲は添付の請求項によって最もよく定義される。
【0015】
ここで図を参照すると、図1は構造物30のナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリ120(図5を参照)の分散ネットワークの一実施形態が使用され、同じようにしてナノ粒子インクによる圧電センサ110(図2〜4を参照)を用いる構造健全性監視のためのシステム170(図7を参照)及び方法200(図8を参照)が使用されうる、例示的な先行技術の斜視図を示している。航空機10は、機体12、機首14、コクピット16、機体12に動作可能なように結合された翼18、一又は複数の推進ユニット20、尾部垂直安定板22、及び一又は複数の水平安定板24を含む。図1に示した航空機10は概して商用旅客機を代表するものであるが、本明細書で開示しているシステム170及び方法200はまた、他の形式の航空機でも使用可能である。より具体的には、本発明の実施形態の教示は、他の旅客機、貨物航空機、回転翼航空機、及び他の形式の航空機又は飛行体、並びに衛星、宇宙発射飛行体、ロケット、及び他の形式の航空宇宙飛行体などの航空宇宙飛行体にも適用しうる。また、本発明によるシステム、方法及び装置の実施形態が、ボート及び他の船舶、列車、自動車、トラック、バス、及び他の形式の車両など、他の輸送手段にも利用可能であることが理解されるであろう。また、本発明によるシステム、方法及び装置の実施形態が、建築物、タービンブレード、医療機器、電子作動機器、消費家電機器、振動装置、受動及び能動式緩衝器、又は他の好適な構造物にも利用可能であることが理解されるであろう。
【0016】
本発明の実施形態の図7に示すように、構造物30の構造健全性172を監視するための構造健全性監視システム170が提供されている。図7は、本発明のナノ粒子インクによる圧電センサ110を使用した構造健全性監視システム170の一実施形態のブロック図を示したものである。システム170は、構造健全性172の監視対象となる構造物30を含む。システム170は、構造物30の表面上に沈着されるナノ粒子インクの分散ネットワークによるセンサアセンブリ120をさらに含む。構造物30の本体32(図5を参照)とナノ粒子インクによる圧電センサアセンブル120の分散ネットワークとの間に一又は複数の絶縁層、被覆層、又は塗料層を有する構造物30の表面上に、ナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリ120の分散ネットワークを沈着させることができる。
【0017】
各センサアセンブリ120は、ナノ粒子インクによる複数の圧電センサ110を含む。各センサアセンブリ120はさらに、複数の導電性インク電源、及びアクチュエータアセンブリ141として動作し、ナノ粒子インクによる複数の圧電センサ110を相互接続する通信線アセンブリ140を有する。構造健全性監視システム170は好ましくは、沈着したナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリ115(図2及び3も参照)を含む。一実施形態では、沈着したナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリ115は、複合構造物102と共に使用される場合には、沈着したナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリ116(図2を参照)を含むことがあり、又、金属構造物132と共に使用される場合には、沈着したナノ粒子による圧電センサアセンブリ130(図3を参照)を含むことがある。図7に示すように、構造健全性監視システム170はさらに、構造物30の表面上にナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリ120の分散ネットワークを沈着させるインク沈着装置を含む。構造健全性監視システム170はさらに、複数のセンサ110のポーリング用の電圧供給源176を含む。電圧供給源176は、構造健全性監視システム170で使用する前に、ナノ粒子インクによる圧電センサ110のポーリング用に使用することもできる。本明細書で使用しているように、「ポーリング」という用語は、双極子又は領域の方向又は向きを揃えるため、通常高温で、材料全体に強電場を印加するプロセスを意味する。電圧供給源176は、圧電センサが他の圧電センサ110に問合せ信号を送信するアクチュエータ141となるように、一部の圧電センサ110を駆動することもできる。
【0018】
図7に示すように、構造健全性監視システム170はさらに、センサアセンブリ120に電力を供給する電源178を含む。電源178は、バッテリー、電圧、RFID(無線認証タグ)、磁気誘導送信、又は他の好適な電源を含みうる。電源178は無線であってもよい。図7に示すように、構造健全性監視システム170はさらに、センサ110からの一又は複数の信号92を介して、構造物30の構造健全性データ174を読み出して処理するためのデータ通信ネットワーク179を含む。データ通信ネットワーク179は無線であってもよい。データ通信ネットワーク179はデジタル又はアナログであってもよい。データ通信ネットワーク179は、受信機175(図7を参照)などにより、ナノ粒子インクによる圧電センサ110から受信したデータを読み出すことができ、又、コンピュータプロセッサ177(図7を参照)などにより、ナノ粒子インクによる圧電センサ110から受信したデータを処理することができる。データ通信ネットワーク179は無線であってもよい。
【0019】
基板101の表面上又は構造物30の表面上へのナノ粒子インクによる圧電センサ110の沈着により、構造健全性監視などのアプリケーション用にナノ粒子による圧電センサ110をそのままで導入することができる。ナノ粒子インクによる圧電センサ110は、高密度の構造健全性監視システム170を実現する重要な要因となりうる。2個以上のナノ粒子による圧電センサ110を使用することにより、構造健全性監視システム170を動作させて、複合構造物102(図1を参照)又は金属構造物132(図3を参照)などの構造物30、又は他の好適な構造物の構造健全性172を監視し、構造健全性データ174を提供することができる。構造健全性データ174は、接着剥離、弱接着、歪みレベル、水分浸入、材料変化、亀裂、空洞、層間剥離、空隙率、又は他の好適な構造健全性データ174、又は構造物30の性能に悪影響を及ぼす可能性のある電気機械的特性又は他の不規則性を含みうる。
【0020】
構造物30は好ましくは、複合材料、金属材料、又は複合材料と金属材料との組み合わせを含む材料を含む。構造物30は好ましくは、ナノ粒子による圧電センサアセンブリの分散ネットワークが沈着される曲面138を有する。ナノ粒子インクによる圧電センサ110を、カスタマイズされた形状164(図6Bを参照)の構造物30の上に沈着することもできる。図9に示すように、インク沈着装置142は、ジェット噴霧沈着装置146、インクジェット印刷装置147、エアロゾル印刷装置190、パルスレーザー蒸発法装置192、フレキソ印刷装置194、マイクロスプレー印刷装置196、フラットベッドシルクスクリーン印刷装置197、ロータリシルクスクリーン印刷装置198、グラビア印刷装置199、又は他の好適な直接描画印刷装置144を含む直接描画印刷装置144を含みうる。ナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリ120の分散ネットワークはさらに、構造物30の表面上に沈着された絶縁層134を含みうる。図2及び3に示すように、導電性インク電源及び通信線アセンブリ140は好ましくは、第1導電性電極114、第2導電性電極118、第1導電性トレース線112a、及び第2導電性トレース線112bを含む。構造健全性データ174は、接着剥離、弱接着、歪みレベル、水分浸入、材料変化、亀裂、空洞、層間剥離、空隙率、及び構造物30の性能に悪影響を及ぼす可能性のある不規則性を含みうる。ナノ粒子インクによる圧電センサ110は好ましくは、20ナノメートルから約1ミクロンまでの範囲の粒子サイズを有するナノ粒子を含む。構造物30は、好ましくは航空機の構造物10(図1を参照)を含む。
【0021】
図5に示すように、本発明の別の実施形態では、構造健全性172の監視対象となっている構造物30が提供されている。図5は、本発明の構造物30の一実施形態のブロック図を示している。構造物30は本体32を含む。構造物30はさらに、インク沈着プロセス122を介して、構造物30の表面上に沈着されるナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリの分散ネットワークを含む。各センサアセンブリ120は、ナノ粒子インクによる複数の圧電センサ110を含む。各センサアセンブリ120はさらに、ナノ粒子インクによる複数の圧電センサ110を相互接続する複数の導電性インクアクチュエータアセンブリ141を含む。センサアセンブリ120内の信号経路90は複数のナノ粒子を含む。構造物30の構造健全性データ174(図7を参照)は、好ましくは、信号経路90を通って、ナノ粒子インクによる圧電センサ110からデータ通信ネットワーク179(図7を参照)まで流れる、一又は複数の信号92によって得られる。
【0022】
ナノ粒子インクによる圧電センサ110は、製剤化されたチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)インク、チタン酸バリウム(BaTiO )などのナノ粒子インク、又は他の好適なナノ粒子インクを含みうる。このインクは好ましくはナノスケールインクのナノ粒子を含む。好ましくは、ナノスケールインクのナノ粒子は結晶化前のものとする。ナノ粒子インクは、好ましくは、20ナノメートルから約1ミクロンまでの範囲のナノスケール粒子サイズを有する。ナノスケールインクの粒子サイズにより、広範囲に及びインク沈着プロセス、装置、及びシステムを利用してナノ粒子インクを沈着することが可能となり、特に、ジェット噴霧沈着プロセス126(図6A及び9を参照)及びジェット噴霧沈着装置146(図6A及び9を参照)を利用してナノ粒子インクを沈着することが可能になる。ナノ粒子インクによる圧電センサ110の各々は、約1 ミクロンから約500ミクロンまでの範囲の厚みを有することができる。ナノ粒子インクによる圧電センサ110の厚みは、ナノ粒子のナノ粒子サイズ係数並びに第1及び第2導電層114、118(図2を参照)の厚みの観点から測定することができる。また、ナノ粒子インクによる圧電センサ110の厚みは、適切なアスペクト比がナノ粒子インクによる圧電センサ110の感度を高めることがあるため、ナノ粒子インクによる圧電センサ110のサイズに依存することがある。
【0023】
ナノ粒子インク104はさらに、ゾル‐ゲルベースの接着促進剤、エポキシなどのポリマーベースの接着促進剤又は他の好適なポリマーベースの接着促進剤、又は基板101の表面へのナノ粒子インクの接着を促進する他の好適な接着促進剤を含みうる。一つの実施形態では、ナノスケールインクのナノ粒子はシリカのゾル‐ゲル中で懸濁していることがあり、直接描画印刷プロセス124(図9を参照)などのインク沈着プロセス122を利用して沈着される。ナノ粒子インク製剤中のシリカのゾル‐ゲルにより、ある種の既知の接着促進剤よりも多彩な基板にナノ粒子インクを接着することができる。ナノ粒子インクによる圧電センサ110は、好ましくは、超音波伝搬及び電気機械インピーダンスに基づくモダリティを有する。
【0024】
チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)ナノ粒子インクは、「METHODS FORFORMING LEAD ZIRCONATE TITANATE NANOPARTICLES」と題されて2011年8月17日に同時出願された、代理人識別番号UWOTL−1−37259によって識別される米国特許非仮出願第13/211,554号で開示されている方法によって処方可能であるが、その内容全体は本明細書に参照として組み入れられている。
【0025】
図5に示すように、基板101は、非曲面(又は平面)136、曲面(又は非平面)138、あるいは非曲面(又は平面)136と曲面(又は非平面)138との組み合わせを含みうる。図2に示すように、基板101は第1表面103a及び第2表面103bを含みうる。基板101は好ましくは、複合材料、金属材料、複合材料と金属材料の組合せ、又は他の好適な材料を含む。図2に示すように、基板101は複合構造物102を含みうる。複合構造物102は、ポリマー複合材料、繊維強化複合材料、繊維強化ポリマー、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、ガラス強化プラスチック(GRP)、熱可塑性複合材料、熱硬化性複合材料、エポキシ樹脂複合材料、形状記憶ポリマー複合材料、セラミックマトリックス複合材料などの複合材料、又は他の好適な複合材料を含みうる。図3 に示すように、基板101は金属構造物132を含みうる。金属構造物132は、アルミニウム、ステンレススチール、チタニウム、これらの合金などの金属材料、又は他の好適な金属又は金属合金を含みうる。基板101はまた、他の好適な金属を含みうる。
【0026】
図6Aは、本発明のナノ粒子インクによる圧電センサ110を製造するためのインク沈着プロセス122及びインク沈着装置142の一実施形態の概略図を示したものである。例示的な直接描画印刷プロセス124及び直接描画印刷装置144は、ジェット噴霧沈着プロセス126及びジェット噴霧沈着装置146を示す図6Aに表示されている。図6Aに示すように、ナノスケールインクのナノ粒子106は、吸気口148を経由して溶剤152を含む混合容器150の中に送り込まれる。ナノスケールインクのナノ粒子106は、好ましくは、混合容器の中で溶剤152と混合され、ナノ粒子インク懸濁液154が形成される。ナノ粒子インク懸濁液154は、霧状インクのナノ粒子156を形成するため、超音波機構158によって噴霧することができる。霧状インクのナノ粒子156はノズル本体160を経由して送出され、基板101上にナノ粒子インクによる圧電センサ110を沈着及び印刷するため、ノズル先端162を経由して基板101の表面に向けられる。
【0027】
図6Bは、基板101の表面上に沈着させた圧電ナノ粒子インクによるセンサ110の拡大図を示したものである。図6Bは、圧電ナノ粒子インクによるセンサ110を形成するため基板101上に沈着させた、ノズル本体160及びノズル先端162の霧状インクのナノ粒子156を示している。図6Bに示すように、ナノ粒子インクによる圧電センサ110は、文字、デザイン、ロゴ、又は記号などのカスタマイズされた形状164、あるいは円、正方形、長方形、三角形などの幾何学的形状、又はその他の幾何学的形状、又は他の所望のカスタマイズされた形状164で、基板101上に沈着させることができる。インク沈着プロセス122及びインク沈着装置142は、基板101上での結晶166の成長を必要としない。しかも、沈着されたナノスケールインクのナノ粒子106は、結晶を成長させるための後処理工程を必要としない結晶状粒子構造を含んでいる。
【0028】
図2及び3は、沈着されたナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリ115の実施形態を示している。図2は、複合構造102を含む基板101上に沈着されたナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリ116の一実施形態の断面図を示している。沈着されたナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリ116は、アクチュエータアセンブリ141(図4を参照)として動作する電源及び通信線アセンブリ140に結合されたナノ粒子インクによる圧力センサ110を含む。電源及び通信線アセンブリ140は好ましくは、インク沈着装置142を介して、且つインク沈着プロセス122を介して基板101上に沈着される導電性インク168(図4を参照)から形成される。アクチュエータアセンブリ141(図4を参照)として動作する電源及び通信線アセンブリ140は、第1導電性電極114、第2導電性電極118、第1導電性トレース線112a、及び第2導電性トレース線112bを含みうる。第1導電性電極114、第2導電性電極118、第1導電性トレース線112a、及び第2導電性トレース線112bは、ナノ粒子インクによる圧電センサ110に隣接していてもよい
【0029】
図3は、金属構造物132を含む基板101上に沈着されたナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリ130の別の実施形態の断面図を示している。沈着されたナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリ130は、アクチュエータアセンブリ141(図4を参照)として動作する電源及び通信線アセンブリ140に結合されたナノ粒子インクによる圧力センサ110を含む。電源及び通信線アセンブリ140は好ましくは、インク沈着装置142を介して、且つインク沈着プロセス122を介して基板101上に沈着される導電性インク168(図4を参照)から形成される。アクチュエータアセンブリ141として動作する電源及び通信線アセンブリ140は、第1導電性電極114、第2導電性電極118、第1導電性トレース線112a、及び第2導電性トレース線112bを含みうる。第1導電性電極114、第2導電性電極118、第1導電性トレース線112a、及び第2導電性トレース線112bは、ナノ粒子インクによる圧電センサ110に隣接していてもよい図3に示すように、沈着されたナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリ130はさらに、基板101の本体、金属構造物132を含む基板101の上に直接沈着された絶縁層134を含む。ナノ粒子インクによる圧電センサ110は、絶縁層134の上に沈着することができる。絶縁層134は、絶縁ポリマー被覆、誘電材料、セラミック材料、ポリマ材料、又は他の好適な絶縁材料を含みうる。ナノ粒子インクによる圧電センサ110は、好ましくは、電源及び通信線アセンブリ140に結合される。
【0030】
図4は、ナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリ120の分散ネットワークの上面斜視図を示したものである。図4は、複合構造物102などの構造物30上にすべて沈着されたアクチュエータアセンブリ141として動作する、導電性インク168による複数の電源及び通信線アセンブリ140に結合している、ナノ粒子インクによる複数の圧電センサ110を示している。同様に、金属構造物132に関しては、ナノ粒子インクによる複数の圧電センサ110は、金属構造物132上にすべて沈着された複数の電源及び通信線アセンブリ140に結合されていてもよい。
【0031】
本発明の別の実施形態では、構造物30の構造健全性を監視する方法200が提供されている。図8は、本発明の方法200の一実施形態のフロー図を示したものである。方法200は、構造健全性172の監視対象となる構造物30を提供するステップ202を含む(図7を参照)。方法200はさらに、ナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリ120の分散ネットワークを形成するため、インク沈着プロセス122を介して構造物30の上に、ナノ粒子インクによる複数の圧電センサ110、及び複数のセンサ110を相互接続する導電性インクによる複数の電源及び通信線アセンブリ140を沈着するステップ204を含む。
【0032】
図8に示すように、方法200はさらに、ナノ粒子インクによる圧電センサ110全体にわたって電場を生成するため、電圧供給源176(図7を参照)でナノ粒子インクによる圧電センサ110をポーリングする選択ステップ206を含む。方法200はさらに、電源178(図7を参照)を介して、ナノ粒子インクによる圧力センサアセンブリ120の分散ネットワークに電力を供給するステップ208を含む。方法200はさらに、一又は複数の信号92(図5を参照)を介して、ナノ粒子インクによる圧電センサ110から構造物30の構造健全性データ174(図7を参照)を取り出して処理するため、データ通信ネットワーク179(図7を参照)を使用するステップ210を含む。
【0033】
構造物30は、好ましくは航空機の構造物10(図1を参照)を含む。図9に示すように、インク沈着プロセス122は、ジェット噴霧沈着プロセス126、インクジェット印刷プロセス128、エアロゾル印刷プロセス180、パルスレーザー蒸発法プロセス182、フレキソ印刷プロセス184、マイクロスプレー印刷プロセス186、フラットベッドシルクスクリーン印刷プロセス187、ロータリシルクスクリーン印刷プロセス188、グラビア印刷プロセス189、又は他の好適な直接描画印刷プロセス124を含む直接描画印刷プロセス124を含みうる。データ通信ネットワーク179は、受信機175(図7を参照)により、ナノ粒子インクによる圧電センサ110から受信した構造健全性データ174を読み出すことができ、又、コンピュータプロセッサ177(図7を参照)により、ナノ粒子インクによる圧電センサ110から受信した構造健全性データ174を処理することができる。構造健全性データ174は、接着剥離、弱接着、歪みレベル、水分浸入、材料変化、亀裂、空洞、層間剥離、空隙率、及び構造物の性能に悪影響を及ぼす不規則性、又は他の好適な構造健全性データ174を含みうる。
【0034】
基板101は好ましくは、複合材料、金属材料、複合材料と金属材料の組合せ、又は他の好適な材料を含む。基板101は好ましくは、第1表面103a及び第2表面103bを含む(図2を参照)。基板101は、非曲面又は平面136(図5を参照)、曲面又は非平面138(図5を参照)、あるいは非曲面又は平面136(図5を参照)と曲面又は非平面138(図5を参照)との組み合わせを含みうる。ナノ粒子インクによる圧電センサ110を、カスタマイズされた形状164(図6Bを参照)の基板101上に沈着することもできる。
【0035】
ナノ粒子インクによる圧電センサ110は、構造健全性監視システム170で使用する前に、構造物30の構造健全性172の監視用に電圧供給源176(図7を参照)によるポーリング処理を行ってもよい。ナノ粒子インクによる圧電センサ110は、構造健全性システム170での使用に先立って、インク沈着プロセス122によって、基板101の上に沈着された導電性インク168によって形成される電源及び通信線アセンブリ140に結合されていてもよい。2個以上のナノ粒子インクによる圧電センサ110を使用して、構造健全性システム170を有効にすることができる。
【0036】
構造物30は、航空機10(図1を参照)、宇宙船、航空宇宙飛行体、宇宙発射飛行体、ロケット、回転翼航空機、船舶、ボート、列車、自動車、トラック、バス、建築物、タービンブレード、医療機器、電子作動機器、コンピュータ電子機器、振動装置、受動及び能動式緩衝器、又は他の好適な構造物を含みうる。システム170及び方法200は、例えば、風力発電(タービンブレードの健全性監視)、航空宇宙応用、軍事応用、医療応用、電子作動機器、消費家電製品、あるいは構造又は材料が監視を必要とする任意の応用を含む、多数の業界全体にわたって使用しうる。
【0037】
本発明の別の実施形態では、構造物30の構造健全性172を監視する方法が提供されている。この方法は、構造健全性172の監視対象となる構造物30を提供するステップを含む。この方法はさらに、構造物30の構造健全性172を検出、監視するため、ナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリ120の分散ネットワークを使用するステップを含む。この方法はさらに、電源178を介してセンサアセンブリ120の分散ネットワークに電力を供給するステップを含む。この方法はさらに、ナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリ120からの一又は複数の信号を介して、構造物30の構造健全性データ174を読み出して処理するデータ通信ネットワーク179を使用するステップを含む。
【0038】
本明細書で開示しているシステム170及び方法200の実施形態は、複合及び金属構造物の超音波損傷検出、亀裂伝搬検出センサ、圧力センサ、又は他の好適なセンサを含む様々な応用に使用しうる、構造健全性監視用のナノ粒子インクによる圧電センサ110を提供する。例えば、システム170及び方法200のナノ粒子インクによる圧電センサ110は、ドア周囲の損傷検出などの航空機の各種コンポーネントの製造開始から廃棄までの健全性監視、軍用機の亀裂成長検出などの軍事プラットフォーム、及び極低温タンクの健全性監視などの宇宙システムを提供することができる。ナノ粒子インクによる圧電センサ110は、新規の効率的な設計に影響を及ぼしうるが事前には入手することのできない構造健全性データを提供することが可能で、これによりコストを低減しうる。
【0039】
直接描画印刷プロセス124及び、例えば、ジェット噴霧沈着プロセス126は、処方されたナノ粒子インクを用いて、基板101の表面上、又は構造物30の表面上に、既知の圧電センサ沈着プロセスと比較して低コストで、ナノ粒子インクによる多数の圧電センサ110を沈着させることが可能である。本明細書で開示しているシステム170及び方法200の実施形態は、ナノ粒子インクによる圧電センサ110を構造物30の多数の領域に、大量に配置することを可能にする、ナノ粒子インクによる圧電センサ110を提供する。多数の領域への配置及び大量の配置はいずれも既知の圧電センサでは実現困難な可能性があった。しかも、本明細書で開示しているシステム170及び方法200の実施形態は、基板又は構造物に結合するための接着剤を必要としないため、既知のセンサよりも有利なナノ粒子インクによる圧電センサ110を提供し、これにより構造物30からナノ粒子インクによる圧電センサ110が接着剥離する可能性を低減する。さらに、本明細書で開示しているシステム170及び方法200の実施形態は、好ましい圧電特性を有し、接着剤を使用せずに所望の使用構成で、基板又は構造物上に沈着されるナノスケールインク粒子の有用性によって可能になる、ナノ粒子インクによる圧電センサ110を提供する。ナノ粒子インクによる圧電センサ110は、センサ110と基板又は構造物との間に接着剤を使用せずに、基板又は構造物上に沈着させることができるため、検査対象の構造物に結合する信号の改善を実現することができる。さらに、本明細書で開示しているシステム170及び方法200の実施形態は、基板又は構造物上への手動による配置又は導入を必要とせず、所要のすべての電源及び通信線アセンブリを用いて、基板又は構造物上に沈着又は印刷することが可能な、ナノ粒子インクによる圧電センサ110を提供し、これにより作業及び導入コストを低減し、同時に構造物の複雑度並びに重量を減少させる。これに加えて、ナノ粒子インクによる圧電センサ110は、ジェット噴霧沈着プロセス126を含む多数の直接描画印刷プロセスによって沈着可能であり;前駆結晶化されたナノ粒子サイズの粒子から製造可能で、結晶化していない既知のセンサよりも効率的であり;高温焼結/結晶化プロセスを必要とせず、結果として温度感受性の高い基板又は構造物を損傷する可能性を低減又は排除し;湾曲した又は非平面の基板又は構造物への沈着が可能で;物理的形状の制限を除去又は最小限に抑え、これにより検出能力が不十分又は作動応答が不十分となる可能性を低減する。さらに、本明細書で開示しているシステム170及び方法200の実施形態は、劣化又は脆弱化などが実際に進行する前に構造物30の劣化又は脆弱化の予測に使用することができる、ナノ粒子インクによる圧電センサ110を提供し、これにより構造物又は構造上のコンポーネント部品の信頼性を高め、構造物又は構造上のコンポーネント部品の寿命全体にわたって製造及び整備全体のコストを低減することができる。最後に、本明細書で開示しているシステム170及び方法200の実施形態は、構造物の分解又は取り外しを行うことなく、あるいは測定ツールを挿入するため構造物にドリル穿孔を行うことなく、構造物の完全性、健全性、及び適合性を予測、監視、及び診断する能力を有する。
【0040】
上述の実施形態では、システムは、構造物30の構造健全性172を監視するステップに関して開示されており、該システムは構造健全性172の監視対象となっている構造物30;構造物30、ナノ粒子インクによる複数の圧電センサ110を含む各アセンブリ上に沈着されたナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリ120の分散ネットワーク;及び複数のセンサ110を相互接続する導電性インクによる複数の電源及び通信線アセンブリ140;構造物30上にナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリ120を沈着するインク沈着装置142;分散ネットワークに電力を供給する電源178;及び、センサ110からの一又は複数の信号を介して構造物30の構造健全性データ174を読み出して処理するデータ通信ネットワーク179を含む。
【0041】
一つの変形例では、システムは、ナノ粒子インクによる複数の圧電センサ110のポーリングを行う電圧供給源176を含む。別の変形例では、構造物30は、複合材料、金属材料、及び複合材料と金属材料との組み合わせを含むグループから選択された材料を含む。さらに別の変形例では、構造物30は、ナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリ120の分散ネットワークが沈着される曲面を有する。一つの代替的な実施例では、ナノ粒子インクによる圧電センサ110は、カスタマイズされた形状で構造物の上に沈着される。さらに別の代替的な実施例では、インク沈着装置142は、ジェット噴霧沈着装置、インクジェット印刷装置、エアロゾル印刷装置、パルスレーザー蒸発法装置、フレキソ印刷装置、マイクロスプレー印刷装置、フラットベッドシルクスクリーン印刷装置、ロータリシルクスクリーン印刷プロセス、及びグラビア印刷プロセスを含むグループから選択された直接描画印刷装置を含む。
【0042】
一つの変形例では、ナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリ120の分散ネットワークはさらに、構造物30の本体上に沈着された絶縁層を含む。一つの代替的な実施例では、導電性インクによる電源及び通信線アセンブリはそれぞれ、第1導電性電極114、第2導電性電極118、第1導電性トレース線、及び第2導電性トレース線を含む。一つの実施例では、構造健全性データ174は、接着剥離、弱接着、歪みレベル、水分浸入、材料変化、亀裂、空洞、層間剥離、空隙率、及び構造物30の性能に悪影響を及ぼす不規則性を含む。別の実施例では、ナノ粒子インクによる圧電センサ110は、約20ナノメートルから約1ミクロンまでの範囲の粒子サイズを有するナノ粒子を含む。一つの代替的な実施例では、構造物30は航空機構造物を含む。
【0043】
上述の実施形態では、方法は、構造物30の構造健全性172を監視するステップに関して開示されており、該方法は、構造健全性172の監視対象となっている構造物を提供するステップ;ナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリ120の分散ネットワークを形成するため、インク沈着プロセスによって構造物30の上に、ナノ粒子インクによる複数の圧電センサ110及び複数のセンサを相互接続する導電性インクによる複数の電源及び通信線アセンブリ140を沈着するステップ;電源178を介して分散ネットワークに電力を供給するステップ;及び、センサ110からの一又は複数の信号を介して構造物30の構造健全性データ174を読み出して処理するデータ通信ネットワーク179を使用するステップを含む。一つの変形例では、この方法はさらに、ナノ粒子インクによる複数の圧電センサ110の沈着後、ナノ粒子インクによる圧電センサ110全体にわたって電場を生成するため、電圧供給源176によってナノ粒子インクによる圧電センサ110をポーリングするステップを含む。
【0044】
一つの変形例では、インク沈着プロセスは、ジェット噴霧沈着プロセス、インクジェット印刷装置プロセス、エアロゾル印刷プロセス、パルスレーザー蒸発法プロセス、フレキソ印刷プロセス、マイクロスプレー印刷プロセス、フラットベッドシルクスクリーン印刷プロセス、ロータリシルクスクリーン印刷プロセス、及びグラビア印刷プロセスを含むグループから選択された直接描画印刷プロセスを含む。別の変形例では、データ通信ネットワーク179は、受信機によってナノ粒子インクによる圧電センサ110から受信したデータを読み出し、コンピュータプロセッサによってナノ粒子インクによる圧電センサ110から受信したデータを処理する。さらに一つの実施例では、構造健全性データ174は、接着剥離、弱接着、歪みレベル、水分浸入、材料変化、亀裂、空洞、層間剥離、空隙率、及び構造物の性能に悪影響を及ぼす不規則性を含む。
【0045】
上述の実施形態では、構造物30は構造健全性が監視されるように開示されており、該構造物は、本体;及びインク沈着プロセス、ナノ粒子インクによる圧電センサ110を含む各アセンブリによって、構造物30の本体上に沈着されたナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリ120の分散ネットワーク;及び複数のセンサ110を相互接続する導電性インクからなる複数のアクチュエータアセンブリ141を含み、前記分散ネットワーク内の信号経路は複数のナノ粒子を含み、且つ構造物30の構造健全性データ174は、ナノ粒子インクによる圧電センサ110から信号経路を経由してデータ通信ネットワーク179まで流れる一又は複数の信号から得られる。一つの変形例では、構造物30は、ナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリ120の分散ネットワークが沈着される曲面を有する。さらに別の変形例では、ナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリ120の分散ネットワークはさらに、本体上に沈着された絶縁層を含む。さらに別の変形例では、ナノ粒子インクによる圧電センサ110は、約20ナノメートルから約1ミクロンまでの範囲の粒子サイズを有するナノ粒子を含む。一つの代替的な実施例では、インク沈着プロセスは、ジェット噴霧沈着プロセス、インクジェット印刷装置プロセス、エアロゾル印刷プロセス、パルスレーザー蒸発法プロセス、フレキソ印刷プロセス、マイクロスプレー印刷プロセス、フラットベッドシルクスクリーン印刷プロセス、ロータリシルクスクリーン印刷プロセス、及びグラビア印刷プロセスを含むグループから選択された直接描画印刷プロセスを含む。さらに別の代替的な実施例では、構造物30は航空機構造物を含む。
【0046】
上述の説明及び関連する図面に示した教示の利点を有するこのような発明に関連する当業者であれば、本明細書に記載した多数の変形例および他の実施形態が想起されよう。本明細書に記載した実施形態は、例示することを意図したものであって、限定的又は網羅的であることを意図していない。本明細書では特定の用語を使用しているが、単に一般的かつ説明のために使用したものであり、限定を目的とするものではない。
【符号の説明】
【0047】
10 航空機
12 機体
14 機首
16 コクピット
18 翼
20 推進ユニット
22 尾部垂直安定板
24 尾部水平安定板
30 構造物
32 本体
90 信号経路
92 信号
101 基板
102 複合構造物
103a 第1表面
103b 第2表面
106 ナノ粒子
110 圧電センサ
112a 第1導電性トレース線
112b 第2導電性トレース線
114 第1導電性電極
115 圧電センサアセンブリ
116 圧電センサアセンブリ
118 第2導電性電極
120 圧電センサアセンブリ
122 インク沈着プロセス
126 ジェット噴霧沈着プロセス
130 圧電センサアセンブリ
132 金属構造物
134 絶縁層
136 平面
138 非平面
140 電源及び通信線アセンブリ
141 アクチュエータ
142 インク沈着装置
146 ジェット噴霧沈着装置
148 吸気口
150 混合容器
152 溶剤
154 ナノ粒子インク懸濁液
156 霧状インクのナノ粒子
158 超音波機構
160 ノズル本体
162 ノズル先端
164 カスタマイズされた形状
166 結晶
168 導電性インク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物(30)の構造健全性(172)を監視するシステムであって、
構造健全性(172)の監視対象となっている構造物30と、
前記構造物(30)の上に沈着されたナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリ(120)の分散ネットワークであって、各アセンブリが、
ナノ粒子インクによる複数の圧電センサ(110)と、
前記複数のセンサ(110)を相互接続する導電性インクによる複数の電源及び通信線アセンブリ(140)と
を含む、ネットワークと、
前記構造物(30)上にナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリ(120)の前記分散ネットワークを沈着するインク沈着装置(142)と、
前記分散ネットワークに電力を供給する電源(178)、並びに
前記センサ(110)からの一又は複数の信号を介して前記構造物(30)の構造健全性データ(174)を読み出して処理するデータ通信ネットワーク(179)と
を含む、システム。
【請求項2】
前記ナノ粒子インクによる複数の圧電センサ(110)をポーリングする電圧供給源(176)をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記構造物(30)が、複合材料、金属材料、及び複合材料と金属材料との組み合わせを含むグループから選択された材料を含む、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記構造物(30)が、ナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリ(120)の前記分散ネットワークが沈着される曲面を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記ナノ粒子インクによる圧電センサ(110)が、カスタマイズされた形状で前記構造物の上に沈着される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
構造物(30)の構造健全性(172)を監視する方法で、
構造健全性(172)の監視対象となっている構造物を提供するステップと、
ナノ粒子インクによる圧電センサアセンブリ(120)の分散ネットワークを形成するため、インク沈着プロセスによって前記構造物(30)の上に、ナノ粒子インクによる複数の圧電センサ(110)及び前記複数のセンサを相互接続する導電性インクによる複数の電源及び通信線アセンブリ(140)を沈着するステップと、
電源(178)を介して前記分散ネットワークに電力を供給するステップと、
前記センサ(110)からの一又は複数の信号を介して前記構造物(30)の構造健全性データを読み出して処理するデータ通信ネットワーク(179)を使用するステップと
を含む、方法。
【請求項7】
前記ナノ粒子インクによる複数の圧電センサ(110)の沈着後、前記ナノ粒子インクによる圧電センサ(110)全体にわたって電場を生成するため、電圧供給源(176)によって前記ナノ粒子インクによる圧電センサ(110)をポーリングするステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記インク沈着プロセスが、ジェット噴霧沈着プロセス、インクジェット印刷装置プロセス、エアロゾル印刷プロセス、パルスレーザー蒸発法プロセス、フレキソ印刷プロセス、マイクロスプレー印刷プロセス、フラットベッドシルクスクリーン印刷プロセス、ロータリシルクスクリーン印刷プロセス、及びグラビア印刷プロセスを含むグループから選択された直接描画印刷プロセスを含む、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記データ通信ネットワーク(179)は、受信機によって前記ナノ粒子インクによる圧電センサ(110)から受信したデータを読み出し、コンピュータプロセッサによって前記ナノ粒子インクによる圧電センサ(110)から受信したデータを処理する、請求項6〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記構造健全性データ(174)は、接着剥離、弱接着、歪みレベル、水分浸入、材料変化、亀裂、空洞、層間剥離、空隙率、及び構造物の性能に悪影響を及ぼす不規則性を含む、請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−51413(P2013−51413A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−180371(P2012−180371)
【出願日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】