説明

標本スキャナ装置、該装置による標本位置検出方法

【課題】本発明では、透明標本及び褪色が危惧される蛍光標本に対して、褪色することなく、標本位置(カバーガラス)を自動判別する標本スキャナ装置を提供する。
【解決手段】スライドガラスに標本を載置し、該標本を保護する標本保護部材で該標本を覆った該スライドガラスをステージに載置して、該標本を観察する顕微鏡に用いられる標本スキャナ装置は、前記スライドガラスに対して所定のレーザー光を相対的に走査させる走査制御手段と、前記走査されたレーザー光の反射光の光強度を検出する光強度検出手段と、前記走査制御手段により走査された前記スライドガラス上の位置と、前記光強度検出手段により検出された該位置に対応する前記反射光の光強度と、に基づいて、前記スライドガラス上の前記標本保持部材の位置を認識する標本保持部材認識手段と、を備えることにより、上記課題の解決を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステージ上に載置されたスライドガラス上の所定の位置を検出することができる標本スキャナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、スライドガラスの全領域を低倍率対物レンズで撮影した各画像情報を高倍率対物レンズの実視野サイズに分割して、その分割領域の標本像の有無を検出し、標本像が存在すると判明した分割領域のみを高倍率対物レンズで撮影することにより、広視野かつ高精細の顕微鏡画像を効率良く撮影し、且つ画像記録容量を削減した顕微鏡画像撮影装置が開示されている。
【0003】
特許文献2では、特に病理診断学の教材に使用可能な必要最小限の領域かつ高精細な顕微鏡ディジタル画像撮影可能な顕微鏡画像撮影装置が開示されている。特許文献2では、現在観察している観察範囲を小区画に分割して、各小区画を現在の観察倍率よりも大きな観察倍率でそれぞれ入力することにより、高解像な顕微鏡画像が形成されている。
【特許文献1】特開2004−101871号公報
【特許文献2】特開2005−266718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1や特許文献2では、一度低倍でスライドガラス全面を撮像し、その撮像した画像に対してスクリーニング位置を判別・指定している。例えば、特許文献では撮像画像の輝度値から標本が存在するかしないかの自動判定をしている。また、特許文献2では、ユーザが画像から目的とする標本を指定している。
【0005】
そのため、特許文献1及び特許文献2では、透明標本のスクリーニング位置の指定が難しく、スライドガラス全面を一度撮像するために時間がかかる。その結果、特に蛍光標本では光毒性により標本が損傷する。
【0006】
上記の課題に鑑み、本発明では、透明標本及び褪色が危惧される蛍光標本に対して、褪色することなく、標本位置(カバーガラス)を自動判別する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる、スライドガラスに標本を載置し、該標本を保護する標本保護部材で該標本を覆った該スライドガラスをステージに載置して、該標本を観察する顕微鏡に用いられる標本スキャナ装置は、前記スライドガラスに対して所定のレーザー光を相対的に走査させる走査制御手段と、前記走査されたレーザー光の反射光の光強度を検出する光強度検出手段と、前記走査制御手段により走査された前記スライドガラス上の位置と、前記光強度検出手段により検出された該位置に対応する前記反射光の光強度と、に基づいて、前記スライドガラス上の前記標本保持部材の位置を認識する標本保持部材認識手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
前記標本スキャナ装置において、前記走査制御手段は、前記スライドガラスが載置されたステージを前記レーザー光の光軸に対して垂直方向に移動させることを特徴とする。
前記標本スキャナ装置において、前記走査制御手段は、前記ステージに載置された前記スライドガラスに対して前記レーザー光を相対的に1次元方向または2次元方向に走査させることを特徴とする。
【0009】
前記標本保持部材認識手段は、所定の閾値よりも大きい前記反射光の光強度を抽出し、該抽出した光強度に対応する前記スライドガラス上の位置に基づいて、前記スライドガラス上の前記標本保持部材の位置を認識することを特徴とする。
【0010】
前記標本スキャナ装置は、さらに、前記光強度検出手段による検出結果に基づいて、前記光軸方向における前記スライドガラスまたは前記標本保護部材の位置を検出するZ座標位置検出手段を備えることを特徴とする。
【0011】
前記標本スキャナ装置において、前記Z座標位置検出手段は、アクティブオートフォーカス機構であることを特徴とする。
前記標本スキャナ装置は、顕微鏡に搭載されることを特徴とする。
【0012】
本発明にかかる、スライドガラスに標本を載置し、該標本を保護する標本保護部材で該標本を覆った該スライドガラスをステージに載置して、該標本を観察する顕微鏡に用いられる標本スキャナ装置による標本位置検出方法は、前記スライドガラスに対して所定のレーザー光を相対的に走査させ、前記走査されたレーザー光の反射光の光強度を検出し、前記走査された前記スライドガラス上の位置と、該スライドガラス上の位置に対応する前記検出された反射光の光強度と、に基づいて、該スライドガラス上の前記標本保持部材の位置を認識する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明を用いることにより、スクリーニング時に透明標本でも標本位置(カバーガラス位置)を観察することができる。また、蛍光標本に対し褪色させることなく標本位置(カバーガラス位置)を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明にかかる標本スキャナ装置は、スライドガラスに標本を載置し、該標本を保護する標本保護部材で該標本を覆った該スライドガラスをステージに載置して、該標本を観察する顕微鏡に用いられるものである。
【0015】
本発明にかかる標本スキャナ装置は、走査制御手段、光強度検出手段、及び標本保持部材認識手段を備える。
走査制御手段は、前記スライドガラスに対して所定のレーザー光を相対的に走査させる。前記走査制御手段は、例えば、前記スライドガラスが載置されたステージを前記レーザー光の光軸に対して垂直方向に移動させるようにしてもよい(例えば、本実施形態でいえば、ステージ制御部5に相当する。)。
【0016】
光強度検出手段は、前記走査されたレーザー光の反射光の光強度を検出する(例えば、本実施形態でいえば、光センサ36に相当する。)。
標本保持部材認識手段は、前記走査制御手段により走査された前記スライドガラス上の位置と、前記光強度検出手段により検出された該位置に対応する前記反射光の光強度と、に基づいて、前記スライドガラス上の前記標本保持部材の位置を認識する(例えば、本実施形態でいえば、コントロール部18に相当する)。
【0017】
このように構成することにより、スライドガラス上のカバーガラスの位置を検出することができる。
また、前記走査制御手段は、前記ステージに載置された前記スライドガラスに対して前記レーザー光を相対的に1次元方向または2次元方向に走査させることができる。
【0018】
このように構成することにより、スライドガラス上に任意に配列されたカバーガラスの位置を検出することができる。
また、前記標本保持部材認識手段は、所定の閾値よりも大きい前記反射光の光強度を抽出し、該抽出した光強度に対応する前記スライドガラス上の位置に基づいて、前記スライドガラス上の前記標本保持部材の位置を認識することができる。
【0019】
このように構成することにより、ノイズ成分を除去することができるので、スライドガラス3a上にあるカバーガラスの判別がより容易になる。
前記標本スキャナ装置は、さらに、Z座標位置検出手段を備えてもよい。Z座標位置検出手段は、前記光強度検出手段による検出結果に基づいて、前記光軸方向における前記スライドガラスまたは前記標本保護部材の位置を検出するものである。前記Z座標位置検出手段は、例えばアクティブオートフォーカス機構であってよい(例えば、本実施形態でいえば、アクティブオートフォーカス機能を実現させる赤外光半導体レーザー26、レーザー制御部27、集光レンズ群35受光センサ36等に相当する。)。
【0020】
このように構成することにより、AFを行うことができる。そのため、カバーガラスからの反射光の光強度とスライドガラスからの反射光の光強度との変化率がより大きくなるので、カバーガラスかスライドガラスかの判別がより容易になる。
【0021】
図1は、本発明にかかる標本スキャナ装置を適用した顕微鏡システムの構成例を示す。図1において、本発明にかかる顕微鏡システムの1例としての倒立顕微鏡システム1では、被検物である標本2がスライドガラス3aに載置されてカバーガラス3bで覆われている。
【0022】
さらに、標本2を載置したスライドガラス3aは、電動ステージ4に固定されている。電動ステージ4は、光軸に対して直交方向であるX−Y方向に電動制御が可能であり、その制御はステージ制御部5によって行われる。
【0023】
蛍光光源6は、標本2に対して蛍光照明を行うための光源である。蛍光光源6から出射された励起光はコレクタレンズ7で集光され、励起フィルタ8、ダイクロックミラー9、および対物レンズ10aを介して、電動ステージ4上に固定された標本2へ照射されることにより標本2を照明する。
【0024】
励起光に照明されたことによって標本2が発する蛍光は、ダイクロックミラー9および吸収フィルタ11を通過し、光路切換え部12によって接眼レンズ13またはCCDカメラユニット14へ導かれる。
【0025】
そして、CCDカメラユニット14によって撮像された標本2の画像は、ビデオキャプチャボード15によりホストPC16に取得される。ホストPC16は、取得した画像を図示しない画像メモリ上に保存する。この画像メモリは通常複数の画像を保存することが可能となっている。
【0026】
また、電動シャッタ17は、蛍光光源6から照射される励起光を遮光するためのシャッタで、コントロール部18によって励起光の遮光を制御できるものとなっている。
対物レンズ10(10a,10b)は、電動レボルバ19に装着されている。電動レボルバ19は、コントロール部18からの信号により任意の対物レンズ10aまたは対物レンズ10bを光路内に挿入する機能を有している。
【0027】
また、この電動レボルバ19はピエゾ素子21を介して焦準用モータ22よって駆動させる架台23に固定させており、コントロール部18からの制御されるモータ制御部24によって光軸方向(Z方向)に移動させることで、標本2と対物レンズ10aの距離を相対的に駆動することが可能になっている。
【0028】
一方、ピエゾ素子21は、電動レボルバ19と架台23との間に配置させており、コントロール部18から制御されるピエゾ駆動部25によって電気的にピエゾ素子21の光軸方向の厚みを変えることで、連動レボルバ19に装着された対物レンズ10aの位置を光軸方向に移動させる構造のもので、同じく標本2と対物レンズ10aとの距離を相対的に駆動することが可能になっている。ピエゾ素子21は、焦準用モータ22よりも駆動範囲は短くなっている反面、高速、高分解能という特徴を持っている素子である。
【0029】
コントロール部18はホストPC16に接続させており、倒立顕微鏡システム1の各種制御を行うものである。また、コントロール部18には電動レボルバ19の駆動をユーザが指示入力するためのジョグエンコーダ38、パルスカウンタ39、およびその他の各種指示を入力するための操作部40が接続されている。
【0030】
一方、合焦を行うための測定光源には可視外波長領域である赤外光半導体レーザー26が対応している。赤外光半導体レーザー26は、コントロール部18に接続させたレーザー制御部27によって制御されている。
【0031】
半導体レーザー26から出射されたレーザー光は、平行光を保つ為のコリメートレンズ28を通り、光束径の半分を投光側ストッパ29によりカットされる。その後、PBS(偏光ビームスプリッタ:Polarization Beam Splitter)30でP偏光成分のみが反射され、標本2側に導かれる。
【0032】
そして、集光レンズ群31により一旦集光された光束は、色収差補正レンズ群32を通過する。色収差補正レンズ群32を通過した光は、λ/4板33で45°偏光され、ダイクロイックミラー34に入射する。ここで、ダイクロイックミラー34では、赤外域のみ反射される為、反射された光束は、対物レンズ10aによりスライドガラス3aまたはカバーガラス3bの表面にスポット形状の像を形成する。
【0033】
そして、スライドガラス3aまたはカバーガラス3bにより反射された光束は、今度は逆に対物レンズ10a、ダイクロイックミラー34を介し、λ/4板33にてさらに45°偏光され、S偏光成分に切り換わる。
【0034】
さらに、色収差補正レンズ群32および集光レンズ群31を戻り、PBS30へ入射される。すると、光束はS偏光成分になっているのでそのままPBS30を透過し、集光レンズ群35を通過した後に受光センサ36に結像される。
【0035】
受光センサ36は、光軸を中心に設置された2分割(A領域とB領域)のフォトダイオードとなっている。そして、標本2がピント位置にある場合は、図2(b)に示す様に受光センサ36に結像されたスポットが狭く強度の高い信号となっており、標本2がピント位置からZ方向の上側(後ピン位置)にある場合は、図2(c)に示す様にB領域の範囲に偏った信号強度分布となっており、標本2がピント位置からZ方向の下側(前ピン位置)にある場合は、図2(a)に示す様にA領域の範囲に偏った信号強度分布となっており、それぞれセンサ信号に変換される。
【0036】
そして、A領域とB領域の範囲に分割、変換された検出信号は合焦判別部37に出力される。合焦判別部37は、その入力された検出信号に基づいて、それぞれの範囲における強度の総和を算出する。すなわち、図3(a)に示す様に、横軸を電動レボルバ19のZ方向、縦軸をそれぞれの受光センサ36に入射する光強度とすると、ピント位置を挟んで左右対称なA範囲信号およびB範囲信号の2つのカーブが検出できる。
【0037】
次に、このA範囲信号およびB範囲信号から、図3(b)に示すようなA+Bの算出、および図3(c)に示すような(A−B)/(A+B)の算出を行う。特に図3(c)のような特性はS字カーブと呼ばれ、その値は評価関数値(以下、Ef値と略す)と呼ばれる。
【0038】
コントロール部18は合焦判別部37よりのEf値の符号により合焦位置方向を判定する。例えば、図3(c)中「1」の位置からAF(オートフォーカス)を開始した場合には、コントロール部18は、Ef値の符号が負のため電動レボルバ19を上昇させる制御を行う。また、例えば、図3(c)中「2」の位置からAFを開始した場合には、コントロール部18は、Ef値の符号が正のため電動レボルバ19を下降させる制御を行う。コントロール部18はこのような制御を行って、最終的にEf値が0となるように、モータ制御部24にて対物レンズ10aとスライドガラス3の表面の距離を光軸方向に相対的に駆動させて合焦動作を行う。なお、スライドガラス3のように表面と背面2つの反射面をもつ場合のものは、2つの座標位置関係から自動的にスライドガラス3の表面に合焦を合わせる機能も有している。
【0039】
このように、レーザー光が点灯制御され、観察試料に投影したレーザー光束の反射光を検出することで、アクティブ型のAF光学系が実現される。
図4は、コントロール部18の内部構成の一例を示す。ROM(リードオンリーメモリ)18bには、システムを制御するためのプログラムが格納されている。RAM(ランダムアクセスメモリ)18cは、制御に必要なデータが格納され揮発性メモリ等である。
【0040】
CPU(中央演算装置)18aは、ROM18bに記憶されている予め設定されたプログラムを読み出して各種制御を実行する。入出力(I/O)ポート18dは、顕微鏡1の各種駆動部や、各種制御部、判定部等とデータのやり取りを行うための入出力インターフェースである。また、外部インターフェース(I/F)18eは、操作部40やPC等の
外部の機器と通信可能にするための通信インターフェースである。
【0041】
図5は、本発明におけるスライドガラス3a上にあるカバーガラス3bの位置を検出する概要を示すフローである。図6は、電動ステージ4上に載置したスライドガラス3aを示す。以下では、図6を参照しながら、図5のフローを説明する。
【0042】
まず、スライドガラス3aに標本2を載置し、その標本2の上をカバーガラス3bで覆って、顕微鏡観察用のスライドガラス3aを作成する。そして、図6(a)に示すように、この作成したスライドガラス3aを電動ステージ4に置いて、クレンメル4aで押さえて、スライドガラス3aを電動ステージ4に固定する(ステップ1。以下、ステップを「S」と称する)。
【0043】
次に、電動ステージ4を1次元方向または2次元方向に移動させることにより、スライドガラス3aの所定の位置から一定方向に赤外光半導体レーザー26をスキャンする(S2)。例えば、図6(b)に示すように、電動ステージ4のZ位置(例えば、光強度の大きさが最も大きくなる位置(AFをかけた位置)など)及びY位置を所定の位置で固定した状態で、スライドガラス3aのX方向に対して、赤外光半導体レーザー26をスキャンする。スキャン時のアクティブAFの光強度値を、その光強度値が検出されたX座標と共にRAM18cに保持する。なお、対物レンズの倍率は固定しておく。
【0044】
このとき、後述するように、カバーガラス3bの位置を検出する場合に、最初にスキャンした位置がスライドガラスかカバーガラスかを識別するために、予めスライドガラスの光強度を基準値Pstdとして取得しておく。取得方法としては、例えば、スライドガラス上の規定位置をスキャンしてもよいし、ユーザが任意にスライドガラス上の所定の位置を指定してもよい。
【0045】
次に、S2で取得した光強度値のうち、所定の閾値より大きい光強度値のデータを抽出する(S3)。これにより、スライドガラス3a上にあるカバーガラス3bの位置を認識することができる。なぜなら、図6(b)に示すように、カバーガラス3bの無い部分(光強度値P1)とカバーガラス3bのある部分(光強度値P2)とでは屈折率の相違により、それぞれで反射された反射光の光強度値が異なるからである。これについて、図7を用いて詳述する。
【0046】
図7は、本発明の原理を説明するための図である。図7(a)は、スライドガラス3aが載置された電動ステージ4をX方向に移動させることにより、赤外光半導体レーザー26から照射されたレーザー光が対物レンズ10からスライドガラス3aに照射されて、スライドガラス3aのX方向にスキャンしている様子を示す。角度θは、スライドガラスの傾斜角度を示す。角度θは任意であり、0°(傾斜していない)であってもよく、傾斜していてもよい。
【0047】
図7(b)は、図7(a)でスキャンされた走査線上のサンプリング点にある、a点、b点、c点、d点、e点、f点で検出された光強度値を示す。図7(b)中のa1〜f1はそれぞれ、図7(a)のa点〜f点におけるA+Bの算出結果を示す(A+Bについては、図3(b)で説明した。)。a2〜f2はそれぞれ、a点〜c点における(A−B)/(A+B)の算出結果を示す((A−B)/(A+B)については、図3(c)で説明した。)。
【0048】
図7では、スライドガラス3aは電動ステージ4の載置面に対して角度θ傾斜している場合を例に説明する。この場合、角度θ傾斜しているスライドガラス3aの表面に対応するZ位置をプロットした直線を破線Z1で表し、角度θ傾斜しているカバーガラス3bの表面に対応するZ位置をプロットした直線を破線Z2で表す。Wは、スキャン方向におけるカバーガラス3bの幅を示す。
【0049】
a1、b1では、所定のZ位置にピークP1が存在する。a2、b2においても、このピーク値P1のあるZ位置に対応する評価関数値Efをα、βとして確認できる。
c1、d1では、a1及びb1で着目していたZ位置にあったピークP1がピークP2に減少し、この着目していたZ位置とは異なるZ位置に新たにピークが生じている。C2では、その減少後のピーク値P2及び新たに生じたピーク値のあるZ位置に対応する評価関数値Efをそれぞれ、γ及ぶδとして確認できる。なお、d1の評価関数値Efは、c2とほぼ同様なので省略している。
【0050】
e1、f1では、c1、d1で生じたピークが消滅し、a1及びb1で着目していたZ位置にあったピークP2が増加して再びP1に回復している。なお、e1、f1の評価関数値Efは、a2、b2とほぼ同様なので省略している。
【0051】
このように、カバーガラス3bがセットされたスライドガラス3aに対してレーザー光を一定方向にスキャンして、スライドガラス3a部分及びカバーガラス3b部分に関するA+B、及び/又は(A−B)/(A+B)を算出することにより、光強度の差異及び/または変化点を検出することができる。よって、この検出された光強度の差異及び/または変化点に対応するスライドガラス3a上の位置を検出することにより、スライドガラス3a上にあるカバーガラス3bの位置を検出することができる。
【0052】
このようにスライドガラス3aとカバーガラス3bとの屈折率の相違により合焦位置が変わることを利用して、スライドガラス3a上のスライドガラス3aの位置を検出することができる。それでは、本発明の実施形態の詳細を説明する。
【0053】
<第1の実施形態>
本実施形態では、スライドガラスに対してレーザー光を相対的に1次元方向に走査する場合について説明する。
【0054】
図8は、本実施形態におけるスキャン方向を説明するためのスライドガラスの上面図である。同図において、スライドガラス3a上には、n個のカバーガラス3(3b−1,3b−2,・・・3b−n)がセットされている。スライドガラス3aの短手方向(Y方向)の幅の任意の位置のY座標をYcで表す。
【0055】
スライドガラス3aのY座標=Yc上にある各カバーガラス3bの端部は、3b−1についてはXS1(X11,Yc)、XS2(X12,Yc)で表され、3b−2についてはXS1(X21,Yc)、XS2(X22,Yc)で表され、・・・、3b−nについてはXS1(Xn1,Yc)、XS2(Xn2,Yc)で表される。
【0056】
図9は、本実施形態におけるスライドガラス上にあるカバーガラスの位置を認識するフローを示す。まず、ユーザは、所望の標本2をスライドガラス3aに載置して、その標本2をカバーガラス3bで覆う。これを繰り返して、図8のように、スライドガラス3a上に複数のカバーガラス3b(3b−1,3b−2,・・・3b−n)を載置する。
【0057】
それから、ユーザは、そのスライドガラス3aを電動ステージ4に置いてクレンメル4aで押さえる(S11)。なお、本実施形態では電動ステージ4に対してスライドガラス3aは傾斜角度θ=0°であるとする。
【0058】
次に、ユーザが操作部40にある「カバーガラス位置認識」ボタン(不図示)を押下すると、カバーガラス位置認識指示信号が発信する。コントロール部18は、そのカバーガラス位置認識指示信号を受信すると、スライドガラス3a上のYc位置についてX方向へ向かってレーザー光をスキャンさせる(S12)。コントロール部18は、スライドガラス3a上の所定のY位置(Yc位置)を予め内部に保持している。なお、本実施形態では、スキャン時は電動ステージのZ位置及びY位置は固定である。
【0059】
具体的には、CPU18aは、ROM18bに格納されているY位置(Yc)を読み出して、ステージ制御部5に送信する。ステージ制御部5は、対物レンズ10の先端(光軸)がそのYcの垂線上に位置するように電動ステージ4を移動させる。なお、対物レンズの倍率は固定しておく。
【0060】
このとき、Ycに対応するX座標は任意であるが、通常はスライドガラス3aの端部付近となるように、予め設定されている(例えば、ROM18bにYcに対応するX座標が格納されていてもよい)。本実施形態では、図8に示すように、スライドガラス上の座標(X0,Yc)をスキャンの開始位置Qとする。
【0061】
ステージ制御部5の制御により、電動ステージ4上のスライドガラス3aのスキャン開始位置Qが対物レンズ10の先端から照射されるレーザー光の光軸上に到達する。そうすると、コントロール部18はレーザー駆動部27を駆動させて赤外光半導体レーザー26を照射させると共に、コントロール部18はステージ駆動部5を駆動させて電動ステージ4をX方向に移動させる。
【0062】
コントロール部18は、S12におけるX方向へのスキャンに伴い、各X座標X(X)毎のAF山位置(光強度のピーク値)の値PX(X)をRAM18cに保持する(S13)。
【0063】
具体的には、コントロール部18は、受光センサ36により検出した各X座標X(X)毎のレーザー反射光強度を合焦判定部37を介して取り込み、上述したようにA+Bを算出して、光強度値のピーク値PX(X)を取得する。
【0064】
なお、サンプリング頻度は可変であってよく、例えば、スライドガラス3a上のX方向の全座標についてピーク値PX(x)を保持してもよいし、座標を飛ばしてピーク値PX(X)を保持してもよい。
【0065】
なお、本実施形態では、カバーガラス3bからの反射光の光強度とスライドガラス3aからの反射光の光強度との相違(変化率)を検出するので、必ずしもAFを行う必要はない。しかしながら、AFを行うことにより、カバーガラス3bからの反射光の光強度とスライドガラス3aからの反射光の光強度との変化率がより大きくなるので、カバーガラス3bかスライドガラス3aかの判別がより容易になる。
【0066】
次に、コントロール部18は、S13で取得した各PX(X)値を比較し、カバーガラス3bの存在する位置座標(カバーガラス始点位置をXS1で表し、カバーガラス終点位置をXS2で表す。)を認識する(S14)。このS14の処理については図11で詳述する。
【0067】
図10は、本実施形態における、スキャン開始位置Qにカバーガラスが無い場合のスキャン方向に対する光強度値のグラフを示す。図10は、図9のS13で保持された各X座標X(X)毎のAF山位置(光強度のピーク値)の値PX(X)を概念的なグラフにしたものである。
【0068】
図10(a)は、カバーガラスが載置されたスライドガラスの上面図である。
図10(b)は、カバーガラスにフォーカスを合わせている場合のスキャン方向に対する光強度値のグラフを示す。カバーガラスにフォーカスを合わせているので、カバーガラスのあるXS1−XS2区間は、それ以外の区間に比べて、光強度が強くなっている。
【0069】
図10(c)は、スライドガラスにフォーカスを合わせている場合のスキャン方向に対する光強度値のグラフを示す。スライドガラスにフォーカスを合わせているので、スライドガラス表面が露出しているXS1−XS2区間及びXS2以降の区間(すなわち、カバーガラスで覆われていない区間)は、それ以外の区間に比べて、光強度が強くなっている。
【0070】
stdは、予め取得しているスライドガラス上の規定位置の光強度を示す。「WS」はスキャン方向時の、ノイズ成分を除去するための閾値であり、例えば、カバーガラスとして利用される最小の幅が設定されている。また、「WPt」はAF山位置の閾値であり、ノイズ成分を除去するための閾値である。また、「C」は、カバーガラス幅を計測するカウンタである。また、P(1)+WPtの値をWPで表すとする。
【0071】
スキャン開始位置QからXS1までは、光強度値Pstd(Pstdには、Pstd+σ(σ:誤差範囲)も含む。以下、同様である。)である。XS1からXS2までは、図10(b)の場合には光強度値P(N)<Pstd−WPt、図10(c)の場合にはP(N)>Pstd+WPtである(Nは、後述するように、スライドガラス上の位置を示す変数である。)。XS2以降は、再び光強度値Pstdである。
【0072】
図11は、本実施形態におけるスキャン結果に基づいて、スライドガラス3a上にあるカバーガラス3bの位置及び個数を認識するフロー(予めスライドガラスにフォーカスを合わせている場合)を示す。本フローは、コントロール部18により実行される図9のS14の詳細なフローである。図10で説明した変数を用いて本フローについて説明する。
【0073】
まず、変数の初期化が行われる(S21)。例えば、スライドガラス上の座標を計測するためのカウンタ変数(スライドガラス用座標カウンタ)NをN=1とし、カバーガラスの幅を計測するためのカウンタ変数(カバーガラス幅カウンタ)CをC=1とし、認識されたカバーガラスの数(カバーガラス認識数)nをn=0とする。
【0074】
次に、予め取得しているスライドガラス3a上の規定位置の光強度PstdがN=1での光強度P(N=1)以上か否かを判断する(S22)。スキャン開始位置Qで既にカバーガラスが存在している場合には、スライドガラス3a表面にフォーカスがあっていないため光強度P(1)は低下するので、P(1)がPstd以上となることはない。したがって、スキャン開始位置Qで既にカバーガラス3bが存在している場合には、「No」へ進む。一方、スキャン開始位置Qでカバーガラスが存在なく、スライドガラス3a表面が露出している場合には、P(1)は低下しないので、「Yes」へ進む。
【0075】
N=1でスライドガラス3aが露出している場合(S22で「Yes」へ進んだ場合)、光強度値WP<P(N−1)−P(N)であるか否かが判定される(S23)。WP<P(N−1)−P(N)の場合とは、スライドガラス3aからカバーガラス3b上にスキャン位置が移動した場合である。WP≦P(N−1)−P(N)の場合とは、スライドガラス表面をスキャンしている場合である。但し、S23の処理を行うのが最初である場合、すわなちN=1のときはS23で「No」へ進む。この例では、N=1であるからS23で「No」へ進む。
【0076】
次に、カバーガラス幅カウンタCが「1」でリセットされる(S35)。S35の処理後、スライドガラス用座標カウンタNがスキャン方向におけるスライドガラス3aの幅より小さいか否かが判定される(S33)。本実施形態では、スライドガラス3aの幅=750に設定しているがこれに限定されない。
【0077】
N<「750」なので(S33で「Yes」へ進む)、Nをインクリメントする(S34)。WP<P(N−1)−P(N)が成立するまで、S23→S35→S33→S34→S23→・・・が繰り返される。
【0078】
WP<P(N−1)−P(N)が成立(カバーガラス3bがある部分)すると(S23で「Yes」へ進む)、カバーガラス幅カウンタCが「1」であるか否かが判定される(S24)。当該カバーガラス3bについての最初の処理ならばC=1であるのでS25へ進むが、2回目以降の処理ならばC>1なのでS28に進む。
【0079】
カバーガラス幅カウンタCが「1」の場合(S24で「Yes」へ進む)、カバーガラス認識数nが「0」であるか否かが判定される(S25)。当該スライドガラス3aにおいて、当該カバーガラス3bが最初に認識されたものであるならばn=0であるのでS26の処理へ進むが、そうでないならばn>0なのでS27の処理へ進む。n=0の場合(S25で「Yes」へ進む)、n=1とし(S26)、S27の処理へ進む。
【0080】
次に、スライドガラス用座標カウンタNをカバーガラス始点位置XS1(n)に代入する(S27)。
次に、カバーガラス幅カウンタCが閾値WSより大きいか否かが判定される(S28)。カバーガラス幅カウンタC≦閾値WSの場合(S28で「No」へ進む)、カバーガラス幅カウンタCと閾値WSが等しいか否かが判定される(S29)。
【0081】
カバーガラス幅カウンタC<閾値WSの場合(S29で「No」へ進む)、カバーガラス幅カウンタCをインクリメントし(S32)、N<「750」なので(S33で「Yes」へ進む)、Nをインクリメントする(S34)。その後、カバーガラス幅カウンタC=閾値WS(S29)が成立するまで、S23〜S34→・・・が繰り返される。
【0082】
カバーガラス幅カウンタC=閾値WSが成立すると(S29で「Yes」へ進む)、カバーガラス認識数nをインクリメントし(S30)、スライドガラス用座標カウンタNをカバーガラス終点位置XS2(n−1)に代入する(S31)。
【0083】
その後、カバーガラス幅カウンタCをインクリメントし(S32)、N<「750」なので(S33で「Yes」へ進む)、Nをインクリメントする(S34)。
S23の処理において、WP<P(N−1)−P(N)の間(すなわち、当該カバーガラスについて処理されている間)、Cはインクリメントされ続けて(S32)、カバーガラス終点位置XS2(n−1)は更新され続ける(S31)。
【0084】
それから、カバーガラスが無くなると、WP≧P(N−1)−P(N)となるので(S23で「No」へ進む)、カバーガラス幅カウンタCが「1」でリセットされ(S35)、N<「750」の間S23〜S35が繰り返される。
【0085】
N=750なると、すなわちスライドガラス用座標カウンタNがスキャン方向におけるスライドガラス3aの幅と等しくなると(S33で「No」へ進む)、本フローは終了する。
【0086】
このようにして、スライドガラス3a上に存在するカバーガラス3bの数(カバーガラス認識数n)、及びその認識したそれぞれのカバーガラスの位置(XS1,XS2)を検出することができる。
【0087】
次に、スキャン開始位置Qに既にカバーガラスである場合のカバーガラスの検出について説明する。
図12は、本実施形態における、スキャン開始位置Qに既にカバーガラスがある場合のスキャン方向に対する光強度値のグラフを示す。図12は、図10のカバーガラスの開始位置XS1をスキャン開始位置Qに重ねた場合に相当する。
【0088】
図12(a)は、カバーガラスがスキャン開始位置に載置されたスライドガラスの上面図である。
図12(b)は、カバーガラスにフォーカスを合わせている場合のスキャン方向に対する光強度値のグラフを示す。カバーガラスにフォーカスを合わせているので、カバーガラスのあるQ(=XS1)−XS2区間は、それ以外の区間に比べて、光強度が強くなっている。
【0089】
図12(c)は、スライドガラスにフォーカスを合わせている場合のスキャン方向に対する光強度値のグラフを示す。スライドガラスにフォーカスを合わせているので、スライドガラス表面が露出しているQ(=XS1)−XS2区間及びXS2以降の区間(すなわち、カバーガラスで覆われていない区間)は、それ以外の区間に比べて、光強度が強くなっている。
【0090】
スキャン開始位置Q(=XS1)からXS2までは、カバーガラス上をスキャンしているので、図12(b)の場合には光強度値P(N)<Pstd−WPt、図12(c)の場合にはP(N)>Pstd+WPtである(Nは、後述するように、スライドガラス上の位置を示す変数である。)。XS2以降は、光強度値Pstdである。
【0091】
図11のフローにおいて、スキャン開始位置に既にカバーガラス3bが存在すると、S22で「No」へ進む。それ以降は、上述したように、当該カバーガラスがなくなるまでS23〜S34を行い、当該カバーガラスが無くなると、WP≧P(N−1)−P(N)となるので(S23で「No」へ進む)、カバーガラス幅カウンタCが「1」でリセットされ(S35)、N<「750」の間S23〜S35が繰り返される。
【0092】
N=750なると、すなわちスライドガラス用座標カウンタNがスキャン方向におけるスライドガラス3aの幅と等しくなると(S33で「No」へ進む)、本フローは終了する。
【0093】
このようにして、スキャン開始位置Qに既にカバーガラスである場合でも、スライドガラス3a上に存在するカバーガラス3bの数(カバーガラス認識数n)、及びその認識したそれぞれのカバーガラスの位置(XS1,XS2)を検出することができる。
【0094】
本実施形態によれば、スライドガラス上の標本(カバーガラス)をスクリーニングする際に、スライドガラス全体ではなく所定の方向に1ラインまたは複数ラインのみスキャンするので、標本だけを短時間で効率よくスクリーニングすることができる。そのスクリーニング作業により、短時間で標本のあるスライドガラス上のカバーガラスの位置を検出することができる。また、カバーガラスの位置を検出することにより、スライドガラス上の標本の位置もおおよそ分かるため、効率よい顕微鏡観察を行うことができる。
【0095】
また、カバーガラスの検出に際し、撮像処理を行わないので、標本に照明光を照射する必要がなく、したがって標本に対する光毒性がない。また、標本の位置を認識する際に画像処理を用いる必要がないので、透明な標本についても適用することができる。
【0096】
なお、本実施形態では、図11を用いて、予めスライドガラスにフォーカスを合わせているケースについて説明したが、本実施形態は予めカバーガラスにフォーカスを合わせている場合についても同様に適用できる。
【0097】
<第2の実施形態>
本実施形態では、スライドガラスに対してレーザー光を相対的に2次元方向に走査する場合について説明する。本実施形態では、第1の実施形態の処理を行うことによりX方向についてのカバーガラス位置を認識した後、その認識した各カバーガラスについてY方向へのスキャンを実行し、Y方向の位置を認識する。
【0098】
図13は、本実施形態におけるスキャン方向を説明するためのスライドガラスの上面図である。図8で説明したように、第1の実施形態により各カバーガラスのX座標(カバーガラス始点位置XS1,カバーガラス終点位置XS2)が得られるので、XS1とXS2の中心座標XSCを算出して、その中心座標XSCからY方向へレーザーのスキャンを行う。
【0099】
図14は、本実施形態におけるスライドガラス上にあるカバーガラスの位置を認識するフローを示す。第1の実施形態と同様にS11〜S14を実行して、X方向についてのカバーガラス位置を認識する。
【0100】
次に、コントロール部18は、S14で認識された各カバーガラスについて、カバーガラスのある座標位置XS1−XS2の中心座標XSCを算出し、その中心座標XSCからY方向へスキャンを実行する(S41)。S41は、スキャン方向が異なる以外は、S12と同様である。
【0101】
次に、コントロール部18は、S41におけるY方向へのスキャンに伴い、各Y座標:Y(Y)毎のAF山位置(光強度のピーク値)の値PY(Y)をRAM18cに保持する(S42)。S42は、スキャン方向が異なる以外は、S13と同様である。
【0102】
次に、コントロール部18は、S42で取得した各PY(Y)値を比較し、Y方向におけるカバーガラス3bがある位置座標(カバーガラス始点位置をYS1で表し、カバーガラス終点位置をYS2で表す。)を認識する(S43)。S43は、スキャン方向が異なる以外は、S14(及び図11)と同様である。
【0103】
図15は、第1及び第2の実施形態の変形例の一例を示す。第1の実施形態では、Z位置及びY位置を固定してX方向に1回スキャンしたが、図15(a)に示すように、Y位置を変えてX方向に複数回スキャンしてもよい。さらに、図15(b)に示すように、各カバーガラスの位置座標(XS1−XS2)間を複数回Y方向にスキャンしてもよい。
【0104】
また、カバーガラスの形状は正方形に限定されず、長方形や多角形であってもよく、図15(c)に示すように円形状であってもよいし、楕円状でもよい。
また、スライドガラス上のカバーガラスは1次元状に配列されたものに限定されず、図15(d)に示すように2次元状に配列されていてもよいし、放射状や同心円状に配列されていてもよい。
【0105】
このように、スライドガラス上の標本(カバーガラス)をスクリーニングする際に、スライドガラス全体ではなく所定の方向(1次元方向または2次元方向)に1ラインまたは複数ラインのみスキャンするので、標本だけを短時間で自動的に効率よくスクリーニングすることができる。
【0106】
本実施形態によれば、第1の実施形態の効果に加えてさらに、2次元方向へのスキャンを行うことができるので、スライドガラス上にカバーガラスが2次元上に配列されていても、スライドガラス上の標本位置(カバーガラスの位置)を自動検出し、スクリーニング作業の省力化を図ることができる。
【0107】
なお、上記において、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上述した各実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良・変更が可能である。
【0108】
また、本発明の実施形態において、標本スキャナ装置は、顕微鏡と一体になったものを例に説明したが、これに限定されない。例えば本実施形態の標本スキャナ装置は、顕微鏡と別体、例えば、走査制御手段と、光強度検出手段と、標本保持部材認識手段とを構成要素とするものであってもよい。
【0109】
以上、本発明によれば、透明標本を用いる場合でも、スクリーニング時に標本位置(カバーガラス位置)を特定し、観察することができる。また、蛍光標本に対し褪色させることなく標本位置(カバーガラス位置)を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明にかかる標本スキャナ装置を適用した顕微鏡システムの構成例を示す。
【図2】受光センサとピント位置との関係を説明するための図である。
【図3】デフォーカスと入射光強度との関係を説明するための図である。
【図4】コントロール部18の内部構成の一例を示す。
【図5】本発明におけるスライドガラス3a上にあるカバーガラス3bの位置を検出する概要を示すフローである。
【図6】電動ステージ4上に載置したスライドガラス3aを示す。
【図7】本発明の原理を説明するための図である。
【図8】第1の実施形態におけるスキャン方向を説明するためのスライドガラスの上面図である。
【図9】第1の実施形態におけるスライドガラス上にあるカバーガラスの位置を認識するフローを示す。
【図10】第1の実施形態における、スキャン開始位置Qにカバーガラスが無い場合のスキャン方向に対する光強度値のグラフを示す。
【図11】第1の実施形態におけるスキャン結果に基づいて、スライドガラス3a上にあるカバーガラス3bの位置及び個数を認識するフローを示す。
【図12】本実施形態における、スキャン開始位置Qに既にカバーガラスがある場合のスキャン方向に対する光強度値のグラフを示す。
【図13】第2の実施形態におけるスキャン方向を説明するためのスライドガラスの上面図である。
【図14】第2の実施形態におけるスライドガラス上にあるカバーガラスの位置を認識するフローを示す。
【図15】第1及び第2の実施形態の変形例の一例を示す。
【符号の説明】
【0111】
1 倒立顕微鏡システム
2 標本
3a スライドガラス
3b カバーガラス
4 電動ステージ
5 ステージ制御部
6 蛍光光源
7 コレクタレンズ
8 励起フィルタ
9 ダイクロックミラー
10(10a,10b) 対物レンズ
11 吸収フィルタ
12 光路切換え部
13 接眼レンズ
14 CCDカメラユニット
15 ビデオキャプチャボード
16 ホストPC
17 電動シャッタ
18 コントロール部
19 電動レボルバ
21 ピエゾ素子
22 準焦部モータ
23 架台
24 モータ制御部
25 ピエゾ制御部
26 赤外光半導体レーザー
27 レーザー制御部
28 コリメートレンズ
29 投光側ストッパ
30 PBS
31 集光レンズ群
32 色収差補正レンズ群
33 λ/4板
34 ダイクロイックミラー
35 集光レンズ群
36 受光センサ
37 合焦判別部
38 ジョグエンコーダ
39 パルスカウンタ
40 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドガラスに標本を載置し、該標本を保護する標本保護部材で該標本を覆った該スライドガラスをステージに載置して、該標本を観察する顕微鏡に用いられる標本スキャナ装置において、
前記スライドガラスに対して所定のレーザー光を相対的に走査させる走査制御手段と、
前記走査されたレーザー光の反射光の光強度を検出する光強度検出手段と、
前記走査制御手段により走査された前記スライドガラス上の位置と、前記光強度検出手段により検出された該位置に対応する前記反射光の光強度と、に基づいて、前記スライドガラス上の前記標本保持部材の位置を認識する標本保持部材認識手段と、
を備えることを特徴とする標本スキャナ装置。
【請求項2】
前記走査制御手段は、前記スライドガラスが載置されたステージを前記レーザー光の光軸に対して垂直方向に移動させる
ことを特徴とする請求項1に記載の標本スキャナ装置。
【請求項3】
前記走査制御手段は、前記ステージに載置された前記スライドガラスに対して前記レーザー光を相対的に1次元方向または2次元方向に走査させる
ことを特徴とする請求項1に記載の標本スキャナ装置。
【請求項4】
前記標本保持部材認識手段は、所定の閾値よりも大きい前記反射光の光強度を抽出し、該抽出した光強度に対応する前記スライドガラス上の位置に基づいて、前記スライドガラス上の前記標本保持部材の位置を認識する
ことを特徴とする請求項1に記載の標本スキャナ装置。
【請求項5】
前記標本スキャナ装置は、さらに、
前記光強度検出手段による検出結果に基づいて、前記光軸方向における前記スライドガラスまたは前記標本保護部材の位置を検出するZ座標位置検出手段
を備えることを特徴とする請求項1に記載の標本スキャナ装置。
【請求項6】
前記Z座標位置検出手段は、アクティブオートフォーカス機構である
ことを特徴とする請求項5に記載の標本スキャナ装置。
【請求項7】
請求項1〜6のうちいずれか1項に記載の標本スキャナ装置を備えた顕微鏡。
【請求項8】
スライドガラスに標本を載置し、該標本を保護する標本保護部材で該標本を覆った該スライドガラスをステージに載置して、該標本を観察する顕微鏡に用いられる標本スキャナ装置による標本位置検出方法において、
前記スライドガラスに対して所定のレーザー光を相対的に走査させ、
前記走査されたレーザー光の反射光の光強度を検出し、
前記走査された前記スライドガラス上の位置と、該スライドガラス上の位置に対応する前記検出された反射光の光強度と、に基づいて、該スライドガラス上の前記標本保持部材の位置を認識する、
ことを特徴とする標本位置検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−262100(P2008−262100A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−105943(P2007−105943)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】