説明

標準画像パターン、それを用いた平版印刷版の現像液評価方法及び平版印刷版の品質管理方法

【課題】ダイレクト製版用の製版条件、特に現像液の活性状態を容易に判定する簡易な、製版工程を管理するための標準画像パターン及びそれを用いた平版印刷版の現像液評価方法、平版印刷版の品質管理方法を提供する。
【解決手段】AMスクリーン方式による面積率の異なる複数のAM網点画像と、前記複数のAM網点画像の各々に隣接して形成される所定の面積率を有するFMスクリーン方式によるFM網点画像とを備えることを特徴とする、印刷版の製版工程を管理するための標準画像パターンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷版の製版工程を管理するための標準画像パターン、該標準画像パターンを用いた平版印刷版の現像液評価方法及び品質管理方法に関し、より詳細には、コンピュータ等のディジタル信号から直接製版可能な、所謂ダイレクト製版用の赤外線レーザー用のポジ型平版印刷版に好適な、画像評価用標準画像パターン及びそれを用いて行う平版印刷版の品質管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷/製版業界では、印刷の生産管理に用いられる標準の画像をコントロールストリップと呼び、多くは、印刷物として必要な画像の端部の空いた部分に小さな標準画像としてコントロールストリップが焼き付けられている。このコントロールストリップを基準として、製版/印刷工程での仕上がり具合を目視や濃度測定などでチェックし、結果を前工程にフィードバックして品質管理を行っている。
一方、近年、コンピュータ等のディジタルデータから直接製版する際の露光光源として赤外線レーザーを使用することが多くなってきた。このような赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版では、一般に画像記録層の現像液の活性度に対するラチチュードが狭く、安定した画像を連続的に形成するためには、工程管理が重要となる。通常、感光性平版印刷版を現像する際には、現像液感度を極力一定に保つような補充機構を有する自動現像機を用い、現像液のpHが低下して現像性が低下することを防ぐため、高活性の補充液を加える方法がとられる(例えば、特許文献1参照)。しかし、赤外レーザー用ポジ型平版印刷版は、先に述べたようにラチチュードが狭いことから、現像液の活性度の変化により画像形成性が大きく変動し、高活性の補充液添加により現像性が向上しすぎ、画像部に欠陥を生じる、或いは、網点や細線の所望されない現像が起こるなど、平版印刷版の品質上の問題を引き起こし易い。
また、近年、より高精細な画像を得ることに対する要求が高まり、そのためには細部における網点形成の安定化が必要で、上述したような現像液の活性度変化による画像形成性の変動は、従前にもまして大きな問題となってきている。そこで、上記のような平版印刷版における網点の形成性を評価するのに適した標準画像パターン(コントロールストリップ)や、さらには、網点の形成性を一定に保つための品質管理方法が強く望まれている。
【特許文献1】特開平8−44076号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の第一の目的は、ダイレクト製版用の製版条件、特に現像液の活性状態を容易に判定する簡易な、製版工程を管理するための標準画像パターンを提供することにある。
本発明の第二の目的は、上記標準画像パターンを用いて得られた画像評価の結果により現像液の活性を正確に評価しうる現像液評価方法、さらに、その結果を露光もしくは現像工程にフィードバックすることで、平版印刷版の品質を一定に保ち、均一な画像を連続的に形成しうる、特に赤外線レーザ対応の画像記録層を有する平版印刷版に好適な、平版印刷版の品質管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、検討の結果、面積率を段階的に変化させた網点を有する標準画像パターンとして、互いに種類の異なる2種の網点を近接して配置し、その双方の網点を段階的に変化させたパターンを形成することで、正確な評価を行いうる標準画像パターンを得ることができること、及び、そのような画像パターンを用いて、特定条件で露光を行った平版印刷版を標準的な条件で製版した後、同様の平版印刷版について、評価対象となる条件で製版を行い、両者を比較することで、形成された画像の評価を簡単に行うことができること、及び、その評価結果をフィードバックすることで、平版印刷版の品質管理が容易に行えることを見出し、本発明を完成した。
【0005】
即ち、本発明の構成は以下の通りである。
<1> AMスクリーン方式による面積率の異なる複数のAM網点画像と、前記複数のAM網点画像の各々に隣接して形成される所定の面積率を有するFMスクリーン方式によるFM網点画像とを備えることを特徴とする、印刷版の製版工程を管理するための標準画像パターン。
<2> 前記AM網点画像の面積率が段階的に変化して形成されることを特徴とする<1>記載の標準画像パターン。
<3> 前記FM網点画像が直径10μm〜75μmの円形画像で構成される<1>又は<2>記載の標準画像パターン。
<4> 前記AMスクリーン方式の網点画像がスクリーン線数80線/インチから300線/インチの範囲にある網点画像であり、前記FMスクリーン方式の網点画像が面積率30%から70%の範囲にある網点画像であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1項記載の標準画像パターン。
【0006】
<5> (A)感光性平版印刷版に、<1>〜<4>のいずれか1項に記載の標準画像パターンを露光した後、標準現像液で現像して、標準版を作製する工程と、(B)評価しようとする現像液で現像する他は、前記(A)工程と同様の条件により対象現像液評価版を作製する工程と、(C)前記標準版と前記対象現像評価版との網点面積率を比較する工程と、を有することを特徴とする平版印刷版の現像液評価方法。
<6> (A)感光性平版印刷版に、<1>〜<4>のいずれか1項に記載の標準画像パターンを露光した後、標準現像液で現像して、標準版を作製する工程と、(B)評価しようとする現像液で現像する他は、前記(A)工程と同様の条件により対象現像液評価版を作製する工程と、(C)前記標準版と前記対象現像評価版との網点面積率を比較する工程と、(D)前記比較の結果、前記標準版と前記対象現像評価版との網点面積率の差が所定の値以上である場合に、露光条件もしくは現像条件を調整する工程と、を有することを特徴とする平版印刷版の品質管理方法。
【0007】
<7> 前記感光性平版印刷版が、支持体上にアルカリ水溶液可溶性樹脂と光を吸収して熱を発生する化合物とを含有してなる感光層を有する感光性平版印刷版であることを特徴とする<6>に記載の平版印刷版の品質管理方法。
<8> 前記(D)工程にて調整された条件で、前記(B)工程を行って対象現像液評価版を作製し、さらに前記(C)工程及び(D)工程を、この順に1回以上繰り返すことを特徴とする<6>に記載の平版印刷版の品質管理方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ダイレクト製版用の製版条件、特に現像液の活性状態を容易に判定する簡易な、製版工程を管理するための標準画像パターンを提供することができる。
さらに、本発明によれば、上記本発明の標準画像パターンを用いて得られた画像評価の結果により、現像液の活性を正確に評価しうる現像液評価方法、さらに、その結果を露光もしくは現像工程にフィードバックすることで、平版印刷版の品質を一定に保ち、均一な画像を連続的に形成しうる、特に赤外線レーザ対応の画像記録層を有する平版印刷版に好適な、平版印刷版の品質管理方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明をより詳細に説明する。
<標準画像パターン>
本発明の標準画像パターン(コントロールストリップ)は、AMスクリーン方式により形成されたAM網点画像を、面積率を段階的に変えながら連続的に複数並べたAMスクリーン画像チャートと、FMスクリーン方式により形成されたFM網点画像であって、所定の面積率、即ち、目的に応じて制御された一定の面積率で形成されたFMスクリーン画像とを、段階的に変化する面積率のAM網点画像それぞれに対して、前記FM網点画像を近接させて配したことを特徴とする。
【0010】
FMスクリーンとは、Freguency Modulation Screeningの略で、周波数変調技術を利用した網点パターンによる印刷方式で、点の密度で濃淡を表わしている。
このFMスクリーンは、規則性を持たない不定形ドットの集合密度によって記録画像の濃淡を表現するものであり、例えば、2×2の合計4ドット等、比較的少数で微小なドットで構成された画像を2次元平面状に分散させて階調表現を行うものである。
【0011】
他方、本発明の標準画像パターンにおいて使用される他の網点画像であるAMスクリーンでは、網形状、即ち、いわゆる極小の市松模様状の規則正しい形状の網点を用いるものである。
このAMスクリーンでは、最小単位の網点画像が、一例として14(水平方向ドット数)×14(垂直方向ドット数)の合計196ドット等、比較的多数で微小なドットで構成されており、この網点画像を2次元平面状に並べて記録することにより濃淡画像を形成し、階調表現を行うものである。
通常は、このようなAMスクリーン(AM網)やFMスクリーン(FM網)で中間調を表現するが、高精細な印刷物を印刷するためには、平板印刷版全面にわたって高精細で均一なAMスクリーン及びFMスクリーンの網点画像を形成しておく必要があり、これらの濃度管理は印刷物の品質管理上重要である。
【0012】
本発明の標準画像パターン(コントロールストリップ)は、AMスクリーン方式により形成された互いに異なる面積率を有するAM網点画像と、該AM網点画像の形成領域に隣接して、所定の面積率を有するFMスクリーン方式により形成されたFM網点画像とを見易い形で隣接して配したものである。すなわち、AM網点画像を、その面積率を段階的に変えて連続的に並べた画像チャートと、各々のAM網点画像に近接して一定の面積率のFM網点画像を配した画像の組合せからできている。
隣接して形成されるAM網点画像形成領域とFM網点画像の領域は任意に選択できる。
【0013】
以下に、本発明の標準画像パターンの網点画像形成領域を示す具体的な例を記載するが、本発明は下記具体例のみに限定されない。
図1(A)〜図1(C)は、本発明の標準画像パターン10において隣接して形成されるAM網点画像形成領域12、FM網点画像の形成領域14を示すモデル図である。図1(A)〜図1(C)では、AM網点画像の形成領域12を斜線、FM網点画像の形成領域14を網点で表示している。この図面ではNo.0〜No.30の31段階で段階的に変化させた態様を示しているが、段階的変化の数もまた、必要とする評価精度など、目的に応じて適宜決定することができる。
AM網点画像とFM網点画像との形成領域は、例えば、図1(A)に示すように、矩形の領域の中央近傍に円形の領域を形成し、周囲の矩形の領域にAM網点画像が形成され、中央の円形の領域内にFM網点画像が形成される態様、図1(B)に示すように、矩形の領域を直線で2分割し、一方の領域にAM網点画像が形成され、他方の領域にFM網点画像が形成される態様、図1(C)に示すように、矩形の領域の中央近傍に面積の異なる矩形の領域が形成され、周囲の矩形の領域にAM網点画像が形成され、中央の矩形の領域内にFM網点画像が形成される態様などが挙げられる。
図1(A)〜図1(C)に示すように、面積率の異なる網点領域のセットが複数形成され、本発明の標準画像パターンが構成される。
【0014】
なかでも、図1(A)に示すように、FM網点画像を中心部の円形領域内に形成し、周辺部をAM網点画像形成領域とすることが、見易さの観点から好ましい。
網点形成領域の大きさは、濃度計の最小測定面積を考慮すれば、矩形の場合、少なくとも一片が7mm以上、円形の場合、直径が7mm以上であることが好ましい。
【0015】
一定の面積率を有するFM網点画像としては、直径10〜75μm程度の円形画像をランダムに配置して形成された網点画像であることが好ましい。また所定の面積率で形成されるFM網点画像の面積率としては、面積率30%から70%程度に設定することが好ましい。
また、一定の面積率の前記FM網点画像に近接して形成されるAM網点画像は、スクリーン線数が80線/インチから300線/インチの範囲の特定の線数の網点であることが好ましい。面積率の変化としては、最小値を標準的には30%程度とし、最高値を標準的には60%程度とすることが好ましく、これらの面積率を段階的に評価させるに際しては、精度に応じて、0.5%〜5%ずつ、標準的には1%きざみなどで、段階的に変化させればよい。
このような条件でFM網点画像及びAM網点画像を隣接して配置することでパターンを形成する場合、網点品質が現像条件等の影響を極めて敏感に反映することができ、現像液の状態が目視にて容易に検知できるため網点画像のパターンを前記条件とすることが効果の観点から好ましい。
【0016】
このように隣接して互いに異なる面積率で形成されたAM網点画像と隣接する位置に所定の面積率のFM網点画像の形成領域を設けることで、この標準画像パターンを使用する際に、隣接する網点画像が目視で同じ濃度と判断される領域を標準値とすることで、現像液の活性度を正確に判定することが可能となる。
【0017】
<平版印刷版の現像液評価方法及び平版印刷版の品質管理方法>
次に、本発明の平版印刷版の現像液評価方法について説明する。本発明の平版印刷版の現像液評価方法は、(A)感光性平版印刷版に前記コントロールストリップの画像パターンを露光した後、標準現像液で現像して、標準版を作製する工程と、(B)評価しようとする現像液で現像する他は、前記(A)工程と同様の条件により対象現像液評価版を作製する工程と、(C)前記標準版と前記対象現像評価版との網点面積率を比較する工程と、を有することを特徴とする。
【0018】
この現像液評価方法をフィードバックして現像液の活性を制御する本発明の平版印刷版の品質管理方法は、(A)感光性平版印刷版に、前記標準画像パターン(コントロールストリップ)の画像パターンを露光した後、標準現像液で現像して、標準版を作製する工程と、(B)評価しようとする現像液で現像する他は、前記(A)工程と同様の条件により対象現像液評価版を作製する工程と、(C)前記標準版と前記対象現像評価版との網点面積率を比較する工程と、(D)前記比較の結果、前記標準版と前記対象現像評価版との網点面積率の差が所定の値以上である場合に、露光条件もしくは現像条件を調整する工程と、を有することを特徴とする。
また、本発明の平版印刷版の品質管理方法としては、(E)工程として、前記(D)工程の終了後、調整された露光/現像条件下で平版印刷版を作製し、該平版印刷版を前記(B)工程における対象現像処理平版印刷版とする工程を更に有し、前記(E)(C)及び(D)工程を、この順に1回又は複数回実施することが好ましい。
【0019】
本発明の現像液評価方法は、以下の(A)乃至(C)工程を有することを特徴とする。
まず、(A)工程において、感光性平版印刷版に、前記本発明の標準画像パターンを露光した後、標準現像液で現像して、標準版を作製する。(以下、上記した所定条件の網点を、単に「網点」と称する場合がある。)
【0020】
(A)工程における網点の形成は、一枚の特定平版印刷版の表面積の一部分、例えば、20%程度を網点形成領域としてもよく、部分的に複数の部分に網点形成領域を形成したものであってもよい。
【0021】
作製された標準版は、ベースとなる現像条件の標準試料となるものであり、ここで用いた現像液の処方、処理時間、処理温度などが標準的な工程として採用される。なお、この評価基準となる標準版は、評価毎に作製する必要はなく、同一の製版処理を行う連続工程において、評価、管理を行なおうとする場合であれば、最初の段階で一枚だけ作製すればよい。
【0022】
次に、(B)工程において、対象現像液評価版を作製する。
本工程で作製される対象現像液評価版は、経時後の現像液の疲労の状況などを確認するためのものであり、評価を必要とする時点で、(A)工程において標準版の作製に用いられた特定平版印刷版と同様のものを処理することにより得られる。このとき、現像処理温度、処理時間などは、(A)工程において標準版を作製した場合と同一の条件が適用される。
【0023】
次に、(C)工程において、標準版及び対象現像液評価版における網点面積率(網点%)を比較する。このように、標準的な現像処理を行なった試料との比較により、露光/現像条件の変化が容易に検知できる。上記具体的に明示した画像パターンの場合は、円形内のFMスクリ−ンの濃度とその周囲のAMスクリーンの画像濃度が一致するNoを読み取ることにより、目視で簡易に評価できる。
【0024】
本発明においては、網点を形成する平版印刷版を単独で作製し、一般的な製版処理が行われている装置において、当該平版印刷版を製版される他の平版印刷版の間に所定の間隔で配置し、両者の製版状態を確認することにより、画像評価及び後述する平版印刷版の品質管理を行うことができる。また、製版される製品である平版印刷版の余白部分、即ち、平版印刷版の枠部などに網点を形成し、その製版状態を確認することにより、画像評価及び平版印刷版の品質管理を行ってもよい。
【0025】
本発明の品質管理方法は、前記画像評価方法〔(A)乃至(C)工程〕による評価の結果、標準版及び対象処理平版印刷版における網点%の差が、所定の値以上である場合に、露光/現像条件を調整する工程〔(D)工程〕)を有することを特徴とする。即ち、本発明の品質管理方法は、本発明の画像評価方法により得られた評価結果をフィードバックして露光工程/現像工程を調整することで、平版印刷版の品質管理を合理的に行うことができる方法である。
【0026】
(D)工程における所定の値(即ち、網点%の差)をフィードバックして露光/現像工程を調整する場合に、当該調整の判断基準となる網点%の差は、平版印刷版に対して所望される品質によって適宜決定すればよい。一般的には、標準版(標準試料)及び対象現像処理平版印刷版における網点%の差が2.0%以上になったときがフィードバックの目安となる。
【0027】
(D)工程における露光/現像条件の調整手段は以下の通りである。
評価した対象現像処理平版印刷版において現像性の低下が見られる場合、即ち、網点%が増加した場合には、露光条件を上げるか、現像条件を活性化させる手段を採ればよい。また、過剰に現像されている場合、即ち、網点%が低下した場合には、露光条件を下げるか、現像条件を緩和する手段を採ればよい。
【0028】
現像が過剰に行なわれたことに起因して、網点%の差が所定の値以上になった場合の対策手段としては以下の手段が挙げられる。
【0029】
<現像工程における調整に適用する手段>
(1)現像液に水を加える。
(2)現像液にドライアイスを入れる。
(3)COガスを吹き込む。
(4)補充液の希釈比を下げる。
(5)自動現像機の補充量の設定を少なくする。
(6)現像温度を下げる。
(7)現像時間を短くする(自動現像機の搬送速度を上げる)。
(8)自動現像機の現像ブラシの圧力を下げる。
(9)自動現像機の現像ブラシの数を減らす。
(10)スプレーの吐出量を下げる。
(11)現像液を撹拌する。
(12)現像液を新液に交換する。
【0030】
<露光工程における調整に適用する手段>
(13)露光量を下げる。
(14)赤外レーザー用ポジ感光性平版印刷版を露光前に加熱する。
【0031】
一方、現像性が低下したことに起因して、網点%の差が所定の値以上になった場合の対策手段としては以下の手段が挙げられる
<現像工程における調整に適用する手段>
(1)補充液を加える。
(2)補充液の希釈比を上げる。
(3)自動現像機の補充量の設定を多くする。
(4)現像温度を上げる。
(5)現像時間を長くする(自動現像機の搬送速度を下げる)。
(6)自動現像機の現像ブラシの圧力を上げる。
(7)自動現像機の現像ブラシの数を増やす。
(8)スプレーの吐出量を上げる。
(9)現像液を新液に交換する。
<露光工程における調整に適用する手段>
(10)露光量を上げる。
【0032】
上記した調整手段において、露光量を制御する場合には、レーザー光の出力、ビーム径、走査速度、露光時間などの条件を適宜調整すればよい。
【0033】
さらに、本発明の品質管理方法においては、前記(A)乃至(D)工程の終了後、(E)工程として、調整された露光/現像条件下で平版印刷版を作製し、該平版印刷版を前記(B)工程における対象現像処理平版印刷版とする工程を更に有し、前記(E)(C)及び(D)工程を、この順に1回又は複数回実施することが好ましい。
このように、画像評価の結果を露光/現像条件にフィードバックすることを繰り返すことにより、平版印刷版の現像状態を、安定に且つ長期間に亘って保持することが可能になる。
【0034】
(感光性平版印刷版)
以下、本発明の画像評価方法及び品質管理方法に適用される感光性平版印刷版について詳細に説明する。
本発明において評価の対象とされる平版印刷版原版には特に制限はないが、前記したように赤外線レーザで記録可能な感光性ポジ型平版印刷版原版の製版処理の評価、管理に本発明の方法が特に有効であることから、そのような平版印刷版原版について説明する。
感光性ポジ型平版印刷版原版は、支持体上に、アルカリ水溶液可溶性樹脂と、光を吸収して熱を発生する化合物と、を含有してなる感光層を有するものであれば特に制限はない。この原版を露光、現像することで印刷に使用する平版印刷版を得る。
該感光層におけるアルカリ水溶液可溶性樹脂としては、一般にフェノール性基を有する高分子化合物、アルカリ可溶性基を有するアクリル樹脂等が用いられる。
フェノール性基を有する高分子化合物としては、ノボラック樹脂、レゾール樹脂が挙げられる。またフェノール基を側鎖に有するモノマーを重合させた高分子化合物、例えば、フェノール基を有するアクリルアミドやメタクリルアミドやアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルがあり、同様にヒドロキシスチレンを重合成分とした高分子化合物が挙げられる。
上記ノボラック樹脂としては、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、およびフェノール/クレゾール(m−、p−、o−、m−/p−混合、m−/o−混合およびo−/p−混合のいずれでもよい。)混合ホルムアルデヒド樹脂を挙げることができる。
【0035】
アルカリ可溶性基を有するアクリル樹脂としては、スルホンアミド基(−SONH−R)、置換スルホンアミド系酸基〔−SONHCOR、−SONHSOR、−CONHSOR〕、カルボン酸基などの酸性基を側鎖中に有するアクリル樹脂をあげることができる。
スルホンアミド基を有するアクリル樹脂としては、特に、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等の重合体を好適に使用することができる。
本発明において高分子化合物がノボラック樹脂である場合には、重量平均分子量が500〜20,000であり、数平均分子量が200〜10,000のものが好ましく、それ以外の高分子化合物の場合は、好ましくは、重量平均分子量が5,000〜300,000で、数平均分子量が800〜250,000である。
本発明においては、高分子化合物の添加量としては30〜99重量%、好ましくは50〜99重量%、特に好ましくは65〜99重量%の添加量で用いられる。
【0036】
〔赤外線吸収剤〕
赤外線吸収剤としては、公知の種々の顔料や染料等が好適に挙げられる。赤外光を吸収する染料としては、例えば特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料、特開昭59−216146号記載のシアニン色素等を挙げることができ、特に好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料が挙げられる。前記赤外線吸収剤の添加量としては、感光層全固形分に対し0.01〜50重量%が好ましく、0.1〜10重量%がより好ましい。前記染料の場合には、0.5〜10重量%が特に好ましく、顔料の場合には、3.1〜10重量%が特に好ましい。
【0037】
〔その他の成分〕
本発明に関する塗布層には、更に必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。
例えば、記録層の溶解性を調節するために、アルカリ水可溶性高分子の現像液への溶解阻止機能を向上させるいわゆる溶解抑止剤例えば、オニウム塩、o−キノンジアジド化合物、スルホン酸アルキルエステル等の物質を併用することが好ましく、好適なものとしては、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩等があげられる。これらのオニウム塩の中でも、ジアゾニウム塩、4級アンモニウム塩及びスルホニウム塩が特に好ましい。
また、感光性組成物には、感度を向上させる目的で、環状酸無水物類、フェノール類、有機酸類を併用することができ、また、界面活性剤、画像着色剤、および可塑剤も使用することができる。また、これら以外にも、エポキシ化合物、ビニルエーテル類、更には特開平8−276558号公報に記載のヒドロキシメチル基を有するフェノール化合物、アルコキシメチル基を有するフェノールを目的に応じて適宜添加することができる。
また、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤、画像着色剤としての染料や顔料、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤を加えることができる。
【0038】
〔記録層の層構成〕
感光性平版印刷版の記録層は単層構造、相分離構造、及び重層構造のいずれでも用いることができる。
単層型記録層としては、例えば特開平7−285275号公報、国際公開97/39894号パンフレット記載の感光層、相分離型記録層としては、例えば特開平11−44956号公報記載の感光層、重層型記録層としては、例えば特開平11−218914号公報記載の感光層として用いることができる。
感光性平版印刷版は、前述の感光性組成物溶液を適当な支持体上に塗布することにより製造することができるが、目的に応じて、後述する保護層、樹脂中間層、バックコート層なども同様にして形成することができる。
塗布、乾燥後に得られる固形分塗布量は、単層の場合好ましくは0.5〜3.0g/mの範囲である。
【0039】
〔支持体〕
感光性平版印刷版に適用し得る支持体としては、寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフイルムでもよい。
アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組合せた方法も利用することができる。このうち、少なくとも塩酸電解液中で粗面化する工程を含むことが好ましい。
この様に粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理及び中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸あるいはそれらの混酸が用いられる。
陽極酸化処理を施された後、アルミニウム表面は必要により親水化処理が施される。本発明に使用される親水化処理としては、米国特許第3,902,734号に開示されているようなアルカリ金属シリケート(例えばケイ酸ナトリウム水溶液)法がある。さらに、必要に応じて支持体と感光層との間に下塗層を設けることができる。
【0040】
〔露光〕
本発明では赤外線レーザによる走査露光が用いられるが、波長700〜1200nmの赤外線を放射する半導体レーザ、YAGレーザ等の固体高出力赤外線レーザによる露光が好適である。
レーザの出力は100mW以上が好ましく、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザデバイスを用いることが好ましい。また、1画素あたりの露光時間は20μ秒以内であることが好ましく、記録材料に照射されるエネルギーは10〜500mJ/cmであることが好ましい。
【0041】
〔現像〕
本発明においては、露光された感光性平版印刷版は、実質的に有機溶剤を含まないpH12以上のアルカリ性水溶液で現像されることが好ましい。
現像液(以下、補充液も含めて現像液と呼ぶ)には、従来より知られているアルカリ水溶液が使用できる。アルカリ水溶液の内、本発明による効果が発揮される現像液は、一つは塩基としてケイ酸アルカリを含有した、又は塩基にケイ素化合物を混ぜてケイ酸アルカリとしたものを含有した、いわゆる「シリケート現像液」と呼ばれるpH12以上の水溶液で、もう一つのより好ましい現像液は、ケイ酸アルカリを含有せず、非還元糖(緩衝作用を有する有機化合物)と塩基とを含有したいわゆる「ノンシリケート現像液」である。
前記現像液及び補充液には、現像性の促進や抑制、現像カスの分散または、印刷版画像部の親インキ性を高める目的で、必要に応じて、種々の界面活性剤や有機溶剤を添加できる。前記界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系および両性界面活性剤が好ましい。
前記現像液及び補充液を用いて現像処理された画像形成材料は、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。前記画像形成材料を印刷版として使用する場合の後処理としては、これらの処理を種々組合せて用いることができる。
【0042】
更に自動現像機を用いて現像する場合には、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液(補充液)を現像液に加えることによって、長時間現像タンク中の現像液を交換する事なく、多量のPS版を処理できることが知られている。本発明においてもこの補充方式が好ましく適用される。上記現像液及び補充液を用いて現像処理された印刷版は水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。近年、製版・印刷業界では製版作業の合理化及び標準化のため、印刷版用の自動現像機が広く用いられている。この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷版を搬送する装置と各処理液槽及びスプレー装置からなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロールなどによって印刷版を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理することができる。
前記した感光性ポジ型平版印刷版原版は、その製版処理により形成される平版印刷版の画像などに大きな影響を与えることから、このような連続的な現像処理工程において、本発明の品質管理方法を適用することにより、優れた画像を形成しうる平版印刷版を長期間にわたり安定的に供給することができる。
以上のようにして得られた平版印刷版は、より一層の高耐刷力平版印刷版としたい場合には、所望によりバーニング処理が施される。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例に従って説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔支持体の作製〕
厚さ0.3mmのJIS−A−1050アルミニウム板を用いて、下記に示す工程を経て処理することで支持体を作製した。
ケイ砂と水との懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的な粗面化を行った。上記で得られたアルミニウム板に温度70℃、濃度26質量%のNaOH水溶液をスプレーしてエッチング処理を行い、アルミニウム板を6g/m溶解した。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行い、30℃の硝酸濃度1質量%水溶液で、スプレーによるデスマット処理を行った。さらに電気化学的粗面化処理として、60Hzの交流電圧を用いて温度50℃の硝酸10.5g/リットル水溶液中で連続的に電流密度はピーク値で30A/dm、電気量は陽極時の電気量の総和で220C/dmで粗面化処理を行った。さらにカセイソーダ濃度26質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.20g/m溶解し、温度30℃の硫酸濃度15質量%水溶液で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーで水洗した。
【0044】
次に陽極酸化処理として、温度43℃、濃度170g/リットル(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)の硫酸を用い、電流密度は約30A/dmで行い、最終的な酸化皮膜量は2.7g/mであった。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
陽極酸化処理により得られたアルミニウム支持体を温度30℃の1号ケイ酸ソーダの1質量%水溶液の処理層へ10秒間浸せきすることで、アルカリ金属ケイ酸塩処理(シリケート処理)を行った。その後、井水を用いたスプレーによる水洗を行った。シリケート付着量は5.5mg/mであった。
【0045】
その後、上記支持体に以下の下塗り層(塗布量0.02g/m)を形成し、その上に感光層を形成させた。
下塗り液
・下記化合物(重量平均分子量:28,000) 0.1g
・メタノール 100.0g
【0046】
【化1】

【0047】
[感光層の形成]
中間層を設けた支持体に、下記組成の塗布液Aを、ワイヤーバーで塗布したのち、150℃の乾燥オーブンで40秒間乾燥して塗布量を0.8g/mとなるようにし、下層を設けた。
また下層を設けた後、下記組成の塗布液Bをワイヤーバーで塗布した。塗布後150℃40秒間の乾燥を行い、下層と上層を合わせた塗布量を1.0g/mとなるように、塗布液Bの成分が上層となる感光性平版印刷版を得た。
【0048】
<塗布液A>
・N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド/メタクリル酸メチル/アクリロニトリル=35/35/30(モル比)の共重合体(重量平均分子量6.5万)
3.5g
・m,p−クレゾールノボラック(m/p比=6/4、重量平均分子量6000)
0.6g
・下記赤外線吸収剤(シアニン染料A) 0.25g
・エチルバイオレットの対アニオンを6−ヒドロキシ−β−ナフタレン
スルホン酸にした染料 0.15g
・ビスフェノールスルホン 0.3g
・テトラヒドロフタル酸 0.4g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−780、大日本インキ化学工業(株)製)
0.02g
・メチルエチルケトン 60g
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 20g
・γ−ブチロラクトン 20g
【0049】
【化2】

【0050】
<塗布液B>
・ノボラック樹脂(m−クレゾール/p−クレゾール/フェノール=3/2/5、
重量平均分子量8000) 1.7g
・上記赤外線吸収剤(シアニン染料A) 0.15g
・下記化合物Q 0.35g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−780、大日本インキ化学工業(株)製)
0.03g
・トリデカフルオロオクチルメタクリレート/2−アダマンチルアクリレート
/2−カルボキシエチルメタクリレート=30/50/20、
重量平均分子量3万の共重合体 0.1g
・アクリル樹脂(表1参照) 0.3g
・メチルエチルケトン 33.0g
・1−メトキシ−2−プロパノール 67.0g
【0051】
【化3】

【0052】
〔露光〕
得られた感光性平版印刷版(650mm×550mm×0.3mm厚)に対して、実用画像の周辺、即ち、印刷物が完成した後に切り落として廃棄される部分に、縦20mm×横250mmの大きさに下記本発明の標準画像パターン(コントロールストリップ)を作成する条件で、プレートセッターLuxcei Platesetter9000CTP(出力270mW、回転数1000rpm、解像度2438dpi、富士フィルム(株)製)を用いて露光を行った。
【0053】
(標準画像パターン)
この平版印刷版の現像液評価方法に用いる標準画像パターンは、以下の通りである。
図1(A)に示すように、AM網点画像形成領域を矩形、FM網点画像形成領域を直径10μmの円形とし、その領域を、FM網点画像のデジタル面積率が30%から60%となるようにNo.0からNo.30の31段階に面積率を変化させたものを作製した。周辺の矩形領域におけるAM網点画像は、AMスクリーン方式175線/インチ(2.5cm)の網点画像をデジタル面積率が30%から60%となるように1%刻みで段階的に変化させて形成した。
このような標準画像パターンを、評価しようとする印刷版原版の周辺部で画像形成後に切断され、除去される領域に焼き付けて用いた。
現像後の標準画像パターンを目視で観察し、中央部のFM網点画像と周辺部のAM網点画像の濃度が同じに見える領域を検知して、現像液の評価を行うものである。
【0054】
〔現像〕
露光後の平版印刷版に対して以下の現像を行った。
浸漬型現像槽を有する市販の自動現像機LP−940H(富士写真フィルム(株)製)の現像処理槽に、下記組成のアルカリ現像処理液A(pH約13)を20リットル仕込み、30℃に保温した。LP−940Hの第二浴目には、水道水を8リットル、第三浴目には、FP−2W(富士写真フィルム(株)製):水=1:1希釈したフィニッシングガム液を8リットル仕込んだ。
【0055】
<アルカリ現像処理液Aの組成>
・Dソルビット 2.5質量%
・水酸化ナトリウム 0.85質量%
・ジエチレントリアミンペンタ
(メチレンホスホン酸)5Na塩 0.05質量%
・水 96.6質量%
【0056】
現像処理は、露光後の感光性平版印刷版1に対して、自動現像機LP−940H内蔵の現像補充制御インピーダンス値を43.0ms/cmとして、下記組成の現像補充液Bを補充しながら行った。
【0057】
<現像補充液Bの組成>
・Dソルビット 5.6質量%
・水酸化ナトリウム 2.5質量%
・ジエチレントリアミンペンタ
(メチレンホスホン酸)5Na塩 0.2質量%
・水 91.7質量%
【0058】
露光/現像処理は、感光性平版印刷版を25%づつ処理し、一日当たり100版、3ヶ月間継続して実施した。
実施期間中は、毎日、本発明の画像評価方法を用いて画像評価を行い、得られた評価結果を露光工程にフィードバックして、露光条件を調整することにより品質管理を行った。
【0059】
本実施例における露光/現像条件の調整は、対象現像処理平版印刷版(対称試料)におけるNo.が標準現像処理兵版印刷版(標準試料)のNo.から2ポイント以上外れた場合に露光量を変更することにより行った。
標準試料としては、試験期間の第1日目に製版された版を用いた。
【0060】
その結果、No.19は、直径10μmのデジタル30%FMスクリーン方式の網点が版上で47%であり、175線/インチデジタル49%AMスクリーン方式の網点が版上で47%であったため、目視で同じ濃度に見えた。したがって、標準試料の本発明のコントロールストリップ表示をNo.19とした。
対象試料としては、試験期間中、毎日最初に上記標準試料と同様の条件で作成された版を用いた。
網点%は、GRETAG社製反射濃度計(D19Cタイプ)を用いて測定した。
【0061】
品質管理の詳細は以下のとおりである。
12日目にNo.17は、直径10μmのデジタル30%FMスクリーン方式の網点が版上で45%であり、175線/インチデジタル46%AMスクリーン方式の網点が版上で45%であったため、目視で同じ濃度に見えた。したがって、12日目の対象試料の本発明のコントロールストリップ表示をNo.17とした。
本発明の品質管理方法に基づいて評価結果をフィードバックし、露光量を240mWに変更したところ、標準試料と同じ本発明のコントロールストリップ表示がNo.19になった。
26日目にNo.21は、直径10μmのデジタル30%FMスクリーン方式の網点が版上で49%であり、175線/インチデジタル41%AMスクリーン方式の網点が版上で49%であったため、目視で同じ濃度に見えた。したがって、26日目の対象試料の本発明のコントロールストリップ表示をNo.21とした。
本発明の品質管理方法に基づいて評価結果をフィードバックし、露光量を300mWに変更したところ、標準試料と同じ本発明のコントロールストリップ表示をNo.19になった。
【0062】
以上の結果から、本発明の画像評価方法及び品質管理方法を用いなければ、自動現像機は、好ましい状態の平版印刷版を得られる条件では、15日間しか稼働できなかったことになる。このことから、本発明の画像評価方法法及び品質管理方法が有効であることがわかる。
【0063】
(実施例2)
〔露光〕
前記感光性平版印刷版(650mm×550mm)に対して、実用画像の周辺、即ち、印刷物が閑静した後に切り落として廃棄される部分に、縦20mm×横250mmの大きさに前記した本発明の標準画像パターン(コントロールストリップ)を作成する条件で、プレートセッターLuxcei Platesetter9000CTP(出力270mW、回転数1000rpm、解像度2438dpi、富士フィルム(株)製)を用いて露光を行った。
【0064】
〔現像〕
露光後の平版印刷版に対して以下の現像を行った。
浸漬型現像槽を有する市販の自動現像機LP−940H(富士写真フイルム(株)製)の現像処理槽に、下記組成のアルカリ現像処理液C(pH約13)を20リットル仕込み、30℃に保温した。LP−940Hの第二浴目には、水道水を8リットル、第三浴目には、FP−2W(富士写真フイルム(株)製):水=1:1希釈したフィニッシングガム液
を8リットル仕込んだ。
【0065】
<アルカリ現像処理液Cの組成>
・SiO・KO 4.0質量%
(KO/SiO=1.1(モル比))
・クエン酸 0.5質量%
・ポリエチレングリコール 0.5質量%
(重量平均分子量=1000)
・水 95.0質量%
【0066】
現像処理は、露光後の平版印刷版5(650mm×550mm×0.24mm厚)に対して、LP−940Hで、一版現像処理する毎に下記組成の現像補充液Dを35ccずつ補充しながら行った。
【0067】
<現像補充液Dの組成>
・SiO・KO 5.0質量%
(KO/SiO=1.1(モル比))
・クエン酸 0.6質量%
・ポリエチレングリコール(重量平均分子量=1000) 0.6質量%
・水 93.8質量%
【0068】
露光/現像処理は、一日当り50版、60日間継続して実施した。
実施期間中は、毎日、本発明の画像評価方法を用いて画像評価を行い、得られた評価結果を露光工程にフィードバックして、露光条件を調整することにより品質管理を行った。
標準試料としては、試験期間の第1日目に製版された版を用いた。
No.19は、直径10μmのデジタル30%FMスクリーン方式の網点が版上で47%であり、175線/インチデジタル49%AMスクリーン方式の網点が版上で47%であったため、目視で同じ濃度に見えた。したがって、標準試料の本発明のコントロールストリップ表示をNo.19とした。
対象試料としては、試験期間中、毎日最初に上記標準試料と同様の条件で作成された版を用いた。
網点%は、GRETAG社製反射濃度計(D19Cタイプ)を用いて測定した。
【0069】
品質管理の詳細は以下のとおりである。
26日目にNo.21は、直径10μmのデジタル30%FMスクリーン方式の網点が版上で49%であり、175線/インチデジタル51%AMスクリーン方式の網点が版上で49%であったため、目視で同じ濃度に見えた。したがって、26日目の対象試料のコントロールストリップ表示をNo.21とした。
本発明の品質管理方法に基づいて評価結果をフィードバックし、露光量を300mWに変更したところ、標準試料と同じコントロールストリップ表示がNO19になった。
46日目にNo.17は、直径10μmのデジタル30%FMスクリーン方式の網点が版上で45%であり、175線/インチデジタル47%AMスクリーン方式の網点が版上で45%であったため、目視で同じ濃度に見えた。したがって、12日目の対象試料のコントロールストリップ表示をNo.17とした。
本発明の品質管理方法に基づいて評価結果をフィードバックし、露光量を240mWに変更したところ、標準試料と同じコントロールストリップ表示がNo.19になった。
【0070】
以上の結果から、本発明の画像評価方法及び品質管理方法を用いなければ、自動現像機は、好ましい状態の平版印刷版を得られる条件では、22日間しか稼働できなかったことになる。このことから、本発明の画像評価方法法及び品質管理方法が有効であることがわかる。
【0071】
(実施例3)
実施例2と同様にして作製した平版印刷版、実施例2で用いたものと同様の自動現像機及び現像液を用いた。
【0072】
露光/現像処理は、一日当り40版、60日間継続して実施した。
実施期間中は、毎日、本発明の画像評価方法を用いて画像評価を行い、得られた評価結果を現像工程にフィードバックして、現像条件を調整することにより品質管理を行った。
【0073】
実施期間中は、毎日、本発明の画像評価方法を用いて画像評価を行い、得られた評価結果を現像工程にフィードバックして、現像条件を調整することにより品質管理を行った。
標準試料としては、試験期間の第1日目に製版された版を用いた。
No.19は、直径10μmのデジタル30%FMスクリーン方式の網点が版上で47%であり、175線/インチデジタル49%AMスクリーン方式の網点が版上で47%であったため、目視で同じ濃度に見えた。したがって、標準試料の本発明のコントロールストリップ表示をNo.19とした。
対象試料としては、試験期間中、毎日最初に上記標準試料と同様の条件で作成された版を用いた。
網点%は、GRETAG社製反射濃度計(D19Cタイプ)を用いて測定した。
【0074】
品質管理の詳細は以下のとおりである。
22日目にNo.21は、直径10μmのデジタル30%FMスクリーン方式の網点が版上で49%であり、175線/インチデジタル51%AMスクリーン方式の網点が版上で49%であったため、目視で同じ濃度に見えた。したがって、22日目の対象試料の本発明のコントロールストリップ表示をNo.21とした。
本発明の品質管理方法に基づいて評価結果をフィードバックし、本発明の品質管理方法に基づいて評価結果をフィードバックし、現像時間を12秒(初期設定値)から14秒に変更したところ、標準試料と同じコントロールストリップ表示がNo.19になった。
52日目にNo.17は、直径10μmのデジタル30%FMスクリーン方式の網点が版上で45%であり、175線/インチデジタル47%AMスクリーン方式の網点が版上で45%であったため、目視で同じ濃度に見えた。したがって、52日目の対象試料のコントロールストリップ表示をNo.17とした。
本発明の品質管理方法に基づいて評価結果をフィードバックし、現像温度を30℃(初期設定値)から28℃に変更したところ、標準試料と同じコントロールストリップ表示がNo.19になった。
【0075】
以上の結果から、本発明の画像評価方法及び品質管理方法を用いなければ、自動現像機は、好ましい状態の平版印刷版を得られる条件では、12日間しか稼働できなかったことになる。このことから、本発明の画像評価方法法及び品質管理方法が有効であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】(A)〜(C)本発明の標準画像パターンにおいて、隣接して形成されるAM網点画像形成領域、FM網点画像の形成領域を示すモデル図である。
【符号の説明】
【0077】
10 標準画像パターン
12 AM網点画像の形成領域
14 FM網点画像の形成領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
AMスクリーン方式による面積率の異なる複数のAM網点画像と、前記複数のAM網点画像の各々に隣接して形成される所定の面積率を有するFMスクリーン方式によるFM網点画像とを備えることを特徴とする、印刷版の製版工程を管理するための標準画像パターン。
【請求項2】
前記AM網点画像の面積率が段階的に変化して形成されることを特徴とする請求項1記載の標準画像パターン。
【請求項3】
前記FM網点画像が直径10μm〜75μmの円形画像により構成される請求項1又は請求項2記載の標準画像パターン。
【請求項4】
前記AM網点画像がスクリーン線数80線/インチから300線/インチの範囲にある網点画像であり、前記FM網点画像が面積率30%から70%の範囲にある網点画像であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の標準画像パターン。
【請求項5】
(A)感光性平版印刷版に、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の標準画像パターンを露光した後、標準現像液で現像して、標準版を作製する工程と、
(B)評価しようとする現像液で現像する他は、前記(A)工程と同様の条件により対象現像液評価版を作製する工程と、
(C)前記標準版と前記対象現像評価版との網点面積率を比較する工程と、
を有することを特徴とする平版印刷版の現像液評価方法。
【請求項6】
(A)感光性平版印刷版に、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の標準画像パターンを露光した後、標準現像液で現像して、標準版を作製する工程と、
(B)評価しようとする現像液で現像する他は、前記(A)工程と同様の条件により対象現像液評価版を作製する工程と、
(C)前記標準版と前記対象現像評価版との網点面積率を比較する工程と、
(D)前記比較の結果、前記標準版と前記対象現像評価版との網点面積率の差が所定の値以上である場合に、露光条件もしくは現像条件を調整する工程と、
を有することを特徴とする平版印刷版の品質管理方法。
【請求項7】
前記感光性平版印刷版が、支持体上にアルカリ水溶液可溶性樹脂と光を吸収して熱を発生する化合物とを含有してなる感光層を有する感光性平版印刷版であることを特徴とする請求項6に記載の平版印刷版の品質管理方法。
【請求項8】
前記(D)工程にて調整された条件で、前記(B)工程を行って対象現像液評価版を作製し、さらに前記(C)工程及び(D)工程を、この順に1回以上繰り返すことを特徴とする請求項6に記載の平版印刷版の品質管理方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−250103(P2008−250103A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92894(P2007−92894)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】