説明

標準的患者監視装置と統合するための自動除細動モジュール

【課題】情報および他の共通機能を共有できる方法で患者監視システムとインターフェースできる自動除細動モジュールを提供する。
【解決手段】心臓センサ34と、パルス発生器と、内因性心臓信号に応答するコマンドを当該パルス発生器の動作のために生成するコントローラとを含む除細動モジュール32を記載する。除細動モジュールは、相乗作用を有し、ある種の機能を共有できるように汎用患者監視装置12に結合され得るように配置される。たとえば、動作パラメータと、除細動モジュールの動作を示す他の信号とを、患者監視装置12によって臨床医に対して表示することができる。除細動モジュールと患者監視装置との間のデータは、標準または独自プロトコルのいずれかを用いて交換される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の背景]
A.発明の分野
本発明は、抗頻拍性不整脈治療を患者に提供するように配置および構成される体外式除細動モジュールに関する。特に、手動の介入なしでショックを送出する全自動モード、助言(advisory)モード、手動モード、およびペーサモードを含むいくつかの動作モードを有する自動体外式除細動モジュールを記載する。本発明はさらに、標準または独自プロトコルを用いてある種の機能および情報を共有する患者監視装置と統合するために配置および構成される除細動モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
B.従来技術の説明
除細動器は、異常に高い心拍を有する心臓病患者に電気治療を施すデバイスである。2種類の除細動器、すなわち、静脈を通って心室へ延びるリードとともに患者の皮下に埋め込まれる体内式除細動器と、患者に(通常は一時的に)取り付けられる体外式除細動器とが現在利用可能である。体外式除細動器はほとんどの場合に緊急時に、たとえば患者が心停止に陥っている場合か、心停止が切迫している場合に用いられる。したがって体外式除細動器は典型的に、医師または他の訓練を受けた職員が始動させねばならない手動デバイスである。体内式すなわち埋め込み型除細動器は、他の手段では十分に治療できない特定の明確な心臓欠陥を有する患者に対する恒久的な解決として埋め込まれる。これらは通常、自動モードで動作する。
【0003】
同一出願人による特許文献1は、体外式除細動器を開示する。参照により本明細書中に援用される、同一出願人による特許文献2および特許文献3は、体外式除細動器を開示する。
【0004】
【特許文献1】米国特許第5474574号明細書
【特許文献2】米国特許第4576170号明細書
【特許文献3】米国特許第5474574号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
臨床医または他の医療従事者が患者の様々な生理的パラメータを監視および表示できるいくつかの患者監視システムがモジュラー形式で現在利用可能である。これらのユニットは典型的に、患者からデータを取得し、データを電子的に格納し、患者の生理的状態についての情報を表示するために協働するいくつかのサブアセンブリモジュールを含む。システムは、一定の基準が満たされると可聴および/または視覚アラームを生成するようにも適合され得る。システムのなかには、たとえば病院の一部さらには全体をカバーする、様々な目的のためにデータが交換される通信ネットワークに統合され得るものもある。このタイプの監視システムは、GE Marquette Medical Systems(Milwaukee, Wisconsin)、Agilent Technologies(Andover, MA)、Spacelabs Medical(Redmond, Washington)、および多くの他の会社から入手できる。しかしながら、これらのシステムは典型的に、主な目的が監視、情報の収集、およびアラームの生成であるという点で受動的である。これらのシステムは治療を提供することができない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[発明の目的および概要]
本発明の目的は、患者の現在の心臓の状態を検出すること、および必要に応じて患者に適切な治療を提供することが可能な自動除細動モジュールを提供することである。
【0007】
さらなる目的は、情報および他の共通機能を共有できる方法で患者監視システムとインターフェースできる自動除細動モジュールを提供することである。
【0008】
さらに別の目的は、事前にプログラムされたショックパラメータに従って、係員(attendant)からの指示(prompting:プロンプティング)なしで随時にショックを加える自動モードと、ショックを与えるリズム(shockable rhythm)を係員に警告はするが、ショックの適用は係員が開始しなければならない助言モードと、ショックがいつどのように適用されるべきかは係員が決め、事前にプログラムされたショックパラメータは無視される手動モードと、ある種の心臓事象(cardiac event)をペーシングするペーサモードとを含むいくつかの動作モードを有する体外式除細動モジュールを提供することである。
【0009】
本発明の他の目的および利点は、以下の本発明の説明から明らかになるだろう。
【0010】
簡潔に言えば、本発明に従って構築される複合監視システムは、患者の生理的特性を感知するように配置されるセンサ、当該センサに結合されて、当該センサからの信号を処理するように適合される信号プロセッサ、および出力部材を含む患者監視装置と、当該患者監視装置に選択的に結合されるように適合される除細動モジュールであって、コマンドに応答して患者に対して治療パルスを送出するパルス発生器、および当該除細動モジュールの動作を示す表示信号を生成するように配置されるデータ発生器を含む除細動モジュールとを備え、上記患者監視装置および上記除細動モジュールは、結合されると協働して、上記表示信号を上記出力部材へ伝送し、それによって上記出力部材が、上記患者特性のうちの1つおよび上記表示信号に対応する出力信号を生成する。患者監視装置は、監視中の生理的特性または除細動モジュールの動作に関する情報のいずれかと関連する信号またはデータを表示するために用いることができるディスプレイを含み得る。患者監視装置はまた、可聴アラームと、視覚アラームと、プリンタと、データをリモート位置へ送ることができるネットワークへの接続とを含み得る。これらの構成要素はすべて、患者監視装置と除細動モジュールの間で共有され得る。除細動モジュールと患者監視装置の間のデータは、監視装置に標準化されたプロトコルまたは独自プロトコルのいずれかを用いて交換される。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上述の課題を解決する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[発明の詳細な説明]
ここで図1を参照すると、本発明に従って構築される複合システム10は、患者(図示せず)へと延びる1つまたは複数のセンサ14に接続される汎用患者監視装置12を含む。センサ14は、体温、圧力、心拍数、呼吸機能などの1つまたは複数の生理指標(physiological indicia)を患者から得るために用いられる。監視装置12は、データプロセッサ16と、ディスプレイ18と、電源20と、たとえば標準的なシリアルまたはパラレルポート、あるいは他の構成要素および/または通信ネットワーク(図示せず)と情報を交換するために用いることができる任意の他のデータインターフェースとすることができるデータインターフェース22とを含む。監視装置12はまた、可聴アラーム24と、視覚アラーム26と、プリンタ28とを含むことができる。
【0013】
監視装置12のデータプロセッサ16は、センサにより患者からの情報を収集し、この情報を処理し、プログラミングに基づいて、患者の状態に関するレポートを作成する。この状態はディスプレイ18に表示させることができ、また選択的に、レポートのハードコピーをプリンタ28によって提供することができる。状態情報はまた、インターフェース22および通信ネットワークを介してリモート位置へ伝送され得る。監視装置12はまた、患者の状態に関する情報を記録するメモリ30を含むことができる。データプロセッサ16はまた、患者の異常状態または危険状態を示すようになるよう選択されるある種の所定の範囲または閾値を生理的パラメータのいくつかが越えるかどうかを判定するように適合され得る。このような事象が検出されると、データプロセッサは可聴アラーム24および/または視覚アラーム26を作動させて、危険状態が検出されたことを示すことができる。
【0014】
図1に示すように、監視装置12に関連して、自動除細動モジュール(ADM)32が提供されている。このADMは、ケーブル36を介してADM自体のセンサまたは除細動パッド34の組に接続される。ADM32を独立ユニットではなくモジュールとして提供する目的は、監視装置12の機能および構成要素のいくつかをADM32が共有できるようにするためである。この目的のためにADM32は、データケーブル38を介して監視装置12に接続される。ADM32への電力は電源がケーブル40を介して提供することができるか、代替的に、ケーブル40を標準ライン電圧コンセント(outlet)(図示せず)に接続することができる。
【0015】
次に図2を参照すると、この構成のADM32は、3つのアセンブリ、すなわちバッテリーパック42と、AC電源および二相パルス発生器を含むアセンブリ44と、制御盤46とからなる。バッテリーパック42は、AC電源からのエネルギーを用いることにより再充電可能であってもよい1つまたは複数のバッテリーからなる。AC電源は、ケーブル40によって監視装置12または他のライン電圧源へ接続される。バッテリーパックは、アセンブリ44の二相パルス発生器に高エネルギーを提供するために用いられる。このエネルギーは、AC電源が故障した場合に補助電源として用いられる。除細動パルスは、ケーブル36によって患者へ伝送される。この目的のために、ケーブル36には、アセンブリ44のコネクタ50と結合するコネクタ48が設けられる。
【0016】
制御アセンブリ46は、ADM32の動作を制御するために必要な構成要素を備える。図2に示すように、アセンブリ46は、ディスプレイ54が形成された正面52を含む。また面52には、コントロールノブ56と、複数のパネルスイッチ58とが備えられる。スイッチ58の各々には、表示灯60が組み込まれる。これらの灯はオプションであり、省略してもよい。
【0017】
制御アセンブリ46には、2つのシリアルポート62、64がさらに設けられる。シリアルポート62は、ケーブル38を介して監視装置12に接続される。他方のポート64は、ADM32を他の構成要素に接続するために用いられ得る。
【0018】
アセンブリの数および機能的区分よりも各構成要素の総括的機能のほうが重要である。別の実施では、備えるアセンブリはより多くてもより少なくてもよい。
【0019】
図3はADM32のブロック図を示す。制御アセンブリ46は、マイクロプロセッサまたはコントローラ66と、フラッシュメモリ68と、たとえばFPGA設計を用いて作成することができるカスタム制御IC70とを含む。マイクロプロセッサ66は、シリアルポート62と、スイッチ58と、表示灯60と、フラッシュメモリ68と、カスタムIC70とに接続されて、ADM32の動作を制御できるようになっている。フラッシュメモリ68は、事前に設定されるか臨床医が選択することができるADM32の様々な動作パラメータを格納するために用いられる。これらのパラメータは、スイッチ60と併せてメニューコントロールノブ58により、あるいは患者監視装置を介して設定することができる。
【0020】
灯60はマイクロプロセッサ66またはカスタムIC70のいずれかによって作動される。上述のように、ADM32は、可聴表示信号ならびに視覚表示信号を生成することができる。可聴信号は、監視装置12および/または外部スピーカー72(図1および図2には図示せず)へ伝送され得る。これらの可聴信号は、マイクロプロセッサ66および/またはカスタムIC70によって生成され得る。
【0021】
構成要素50は、電源74と、充電器76と、アラーム電源ユニット78と、二相パルス発生器80と(すべて図3に示す)を含む。アラーム電源ユニット78は、スピーカ72(存在する場合)を駆動するために必要な電力を提供する。充電器76は、バッテリーパック42を充電するために用いられる。
【0022】
二相パルス発生器80は、電源74またはバッテリーパック42のいずれかからDC電力を受ける。パルス発生器80は、マイクロプロセッサ66からの命令に従って二相パルスを生成する。
【0023】
次に二相パルス発生器80の幾分好ましい実施を説明するが、この実施は本発明の一部を構成せず、他の実施も同様に用いられ得ることが理解される。
【0024】
本明細書中に記載するパルス発生器は、Shockleyダイオードの特性を有するデバイスまたは回路を用いる。このデバイスまたは回路を本明細書中では、上で定義したように非制御(uncontrolled)固体デバイス(USD)と呼ぶ。SCRやIGBTとは異なり、Shockleyダイオードは、高インピーダンス状態から低インピーダンス状態に惹起される(initiate)ためにゲート駆動信号を必要としない。図4bは、ドーピング濃度がそれぞれP1、N1、P2およびN2である4層シリコンデバイスとしてのShockleyダイオードの基板構成を示す。
【0025】
図4cは、Shockleyダイオードを表すために用いられる記号を示す。接続端子が2つしかないことに留意されたい。本質的にShockleyダイオードは、加えられる信号の極性がデバイスを順方向にバイアスする特定の方向にある場合にデフォルトの高インピーダンス状態からインピーダンス低下の状態にしか変化し得ないという点で単向性である(図4dを参照)。極性が反対の信号を加えても、電圧が逆方向ブレークダウン電圧(Vr)を越えない限り、デバイスの状態は変化しない。Shockleyダイオードの特性は、電圧をデバイス全体に順方向バイアス方向に加えると、この電圧が所定の閾値(Vth)を越える場合に、デバイスは低インピーダンス状態にのみ変化するということである。しかしながら、Shockleyダイオードは、容易に商業的に入手可能でなく、典型的に小さい電圧および電流にしか耐え得ないものである。しかしながら、この制限は、高い電圧および電流に対して等価の機能を果たす他の商業的に入手可能なデバイスを配置することによって克服することができる。
【0026】
図4eは、Shockleyダイオードと等価である、DIACおよびTRIACを用いる「ブレークオーバー」USDの高電圧、高電流の実施である。図3の回路全体は、2つの端子、すなわち陽極A'および陰極K'しか有さないことに留意されたい。TRIACは、ゲート端子gに適切な電圧が加えられると高電流を流す低インピーダンス状態へ変化することになる。抵抗器R1およびR2の組み合わせは、陰極K'を基準とする電圧Vbまで電圧VをトランジスタT1のベースにおいて分割する分圧器を形成する。ここで、Vb=V[R2/(R1+R2)]である。トランジスタT1のエミッタフォロワ構成により、点XにおいてDIACに加えられる電圧は、電圧Vbよりも約0.7ボルト下に維持される。
【0027】
DIACは、DIACの両端の電圧が閾値電圧Vdを越えない限り、デフォルトの高インピーダンス状態のままである。したがってUSDは、この電圧閾値が越えられない限り、A'とK'の間で高インピーダンスのままである。しかしながら、Xにおける電圧がDIACの閾値Vdを越える場合、DIACは折り返されて電圧がTRIACのゲートに生じ、次にTRIACが、A'とK'の間に高電流を流す低インピーダンス状態へ変化することになる。したがって、USDの状態が変化する全体の電圧は、分圧器R1/R2によって正確に設定され得る。USD全体の、すなわち端子A'およびK'間の電圧Vが一定の閾値Vthに達する場合にUSDを低インピーダンス状態へ変化させることを所望する場合、R1およびR2の値を、この電圧VthによりXにおける電圧がDIAC閾値電圧Vdと等しくなるように選択する。すなわちR1およびR2について等式Vd=[Vth(R2/(R1+R2))]−0.7を解く。抵抗器R3は、TRIACのゲート端子に流れ込む電流を制限して、端子A'およびK'間の比較的高い電圧によりゲートが損傷を受けることを防ぐ。R1とR2の比率によって決定されるデバイスの状態の変化と、T1の電流増幅率によりR3が行うDIACへの供給とにより、R1およびR2の両方の値が高く保たれ得ることに留意されたい。R1およびR2に高インピーダンス値を用いるということは、この高インピーダンス状態において、USDからの漏電電流が非常にわずかであることを意味する。ダイオードD1は、逆バイアス方向のあらゆる電流フローに対抗し、事実上、USDの逆方向ブレークダウン特性を決定する。
【0028】
最初の高インピーダンス状態から低インピーダンス状態にすることができるあらゆるデバイスを図4eのTRIACの代わりに用い得ることに留意されたい。USDはたとえば、IGBT、SCR、FET(電界効果トランジスタ)またはBJT(バイポーラ接合トランジスタ)の組み合わせを用いることもできる。当業者には、考え得る様々な実施が分かるであろう。
【0029】
図4fは、陽極A'および陰極K'間の瞬間電圧が、明確に定義された閾値V1は上回るものの、さらに高い電圧閾値Vhは上回らない場合に、デバイスが低インピーダンス状態へ変化するように構成された別のUSDを示す。換言すれば、図4fのデバイス全体に加えられる電圧Vが、V1からVhまでの明確に指定された範囲内にある場合に、デバイスは低インピーダンス状態に入るが、電圧Vがこの範囲外にある場合、デバイスはデフォルトの高インピーダンスモードに留まることになる。この特殊な特性により、このデバイスは「ブレークアンダー(breakunder)」USDと称される。図4gおよび図4hは、このデバイスの回路記号およびI−V特性をそれぞれ示す。
【0030】
図4fのブレークアンダーUSDの実施は図4eのブレークオーバーデバイスの実施と同様である。主な違いは、コンデンサC1および第2のトランジスタT2があることである。コンデンサC1は、R1全体の電圧の変化率を制限する。これにより、DIAC全体の電圧の変化率が制限される。DIAC全体の電圧の上昇は遅いため、DIAC電圧が閾値Vdに達するよりも前に、分圧器R4/R5によって決定されるT2のベースにおける電圧YがT2のベースエミッタ接合全体の順方向バイアス電圧よりも上に上昇する場合、トランジスタT2がオンになってTRIACのゲートをK'に短絡させ、よって、いかなる電流がTRIACのゲートに流れ込むことも抑制する。この配置を用いると、電圧上限Vhを分圧器R4/R5によって設定することができ、下限V1は上記のようにR1/R2によって設定することができる。
【0031】
任意のブレークアンダーデバイスをさらに配置して、その端子間に上限Vhを越えるのに十分大きな電圧がいったん加えられてデバイスを高インピーダンス状態に保つと、加えられた電圧の大きさが低下した場合にデバイスは高インピーダンス状態のままであるようにすることができる。このモードにおいて、低インピーダンス状態に変化させるためには、電流をほぼゼロに低減させてから再び加えねばならない。この後者のデバイスを、ヒステリシス付きブレークアンダーUSDと呼ぶ。
【0032】
図5aは、ヒステリシス付きブレークアンダーUSDの回路記号を示す。図5bは、図4に示すブレークアンダーデバイスに基づくデバイスの実施を示す。差異のみを説明する。ここでトランジスタT2は、第2のDIACであるDIAC2に供給を行う第2のエミッタフォロワを形成する。点Yにおける電圧は、A'、K'間の電圧Vが上限Vhに等しいときにDIAC2の閾値に等しい値を持つように設計される。図5bから、点Xにおける電圧と異なり、点Yにおける電圧は、即座にVに追随し、R4およびR5によって設定される比率に従うある割合のVとなることがわかる。電圧VによりYにおける電圧がDIAC2の電圧閾値を越えると、第2のTRIACであるTRIAC2は低インピーダンス状態に入ることになる。TRIAC2が低インピーダンス状態に入るとすぐに、T1のベースにおける電圧Vbはほぼゼロに低減されることになる。いったんTRIAC2が低インピーダンス状態に入ってしまうと、T1はDIAC1に、したがってTRIAC1のゲートに電流を供給することができない。図4のこの「フィードバック」の強化は、一定のヒステリシスを当該配置にもたらした。この場合にTRIAC1が低インピーダンス状態に入る唯一の方法は、A'、K'間の電圧がゼロに低減されてから、R1、R2およびDIAC1によって設定される下限と、R4、R5およびDIAC2によって設定される上限との間の値を持つ新たな電圧を加えることである。このデバイスは本質的に3つのモードを有し、このうちの2つが高インピーダンスモードであり、1つが低インピーダンスモードである。当該配置に加えられる瞬間電圧が下限V1よりも低い場合、R1、R2およびT1の組み合わせは、DIAC1が電流を通さず、TRIAC1が高インピーダンス状態のままであることを意味する。加えられる電圧が下限V1より大きく上限Vhよりは小さい場合、R4、R5およびT2の組み合わせは、DIAC2が電流を通さず、いったんC1全体の電圧が上昇する十分な時間が与えられると、今度はDIAC1がTRIAC1のゲートへ電流を通すため、TRIAC1は低インピーダンス状態に入ることを意味する。しかしながら、加えられる電圧が上限Vhよりも大きい場合、R4、R5およびT2の組み合わせは、DIAC2がTRIAC2のゲートへ電流を通すことにより、DIAC1を抑制してTRIAC1を高インピーダンス状態に維持することを意味する。
【0033】
図4eないし図5のUSDのいずれもが、単一の個別集積デバイスのドープシリコン層として実施され得ることに留意すべきである。デバイスはいずれも外部制御を必要とせず、2つの端子A'およびK'間の電圧が指定の閾値よりも上および/または下である場合に伝導するという特性を有する。別の特性は、いったん低インピーダンス状態になると、高インピーダンス状態に戻るのは、これらのデバイスを流れる電流がほぼゼロに低減される場合のみであることである。デバイスがドロップアウトする正確な電流は、用いられる特定のデバイスに依存する。
【0034】
図6は、一対の患者電極AおよびB間で単相出力電圧パルスを提供するように設計される、除細動器の基本的な実施を示す。この除細動器は、この例では充電回路162によって充電されるコンデンサであるエネルギー源160と、制御信号164が発生するとコンデンサ上の電圧を電極A、B間で接続する出力回路とを有する。この出力回路は、エネルギー源160の+ve側を電極Aに接続する第1の電流経路と、エネルギー源の−ve側を電極Bに接続する第2の電流経路とを備える。第1の電流経路はブレークオーバーUSDであるUSD1(bo)を含み、第2の電流経路はIGBTであるIGBT1を含む。ブレークオーバーUSD1(bo)は、エネルギー源160からの電流を、エネルギー源から加えられる電圧が閾値を上回るのに十分大きい場合に、出力電極AおよびB間で接続される負荷(患者)に流す。ブレークオーバーUSD1(bo)は、図4eに関連して説明したように構築され得る。
【0035】
最初、負荷の両側から見るとAおよびBが高インピーダンスである。ゲート駆動パルス164をIGBT1に加えると、IGBT1がオンになり、USD1(bo)全体のエネルギー源電圧全体が低下する。エネルギー源がUSD1(bo)の閾値よりも高い電圧まで充電されるならば、USD1(bo)は低インピーダンス状態に変化することになる。すると、エネルギー源が負荷へ放電し始める。所定時間後に駆動パルス164をIGBT1のゲートから取り除くと、IGBT1が高インピーダンス状態に戻り、回路内の電流がほぼゼロに低減される。電流フローがほぼゼロの状態で、デバイスUSD1(bo)は回復し、負荷は再び、AおよびBの両側で見ると高インピーダンスである。
【0036】
電極Aとエネルギー源の+ve端子との間でのUSDの使用は、絶縁制御回路接続が必要ないことを意味する。図6の回路における唯一の制御素子はIGBT1のゲートである。これは回路接地を基準とするため、絶縁バリアを必要としない。従来のダイオードD1は、充電が完了したときに電流が充電回路へ逆流することを防ぐために用いられる。図6の回路が生成する出力は、単純な単相切頭指数波形(truncated exponential waveform)である。
【0037】
図6は、USDを第1の電流経路に1つしか示さないが、高インピーダンス状態の出力回路が耐え得る電圧は、上述のように2つ以上のUSDを第1の電流経路においてトーテムポール接続する(totem-polling)ことにより増大され得ることが理解されるだろう。直列の2つ以上のUSDは実際に、個々のデバイスの閾値の和である閾値Vthを有する単一のUSDと同様に振舞う。
【0038】
図7は、患者電極AおよびB間で二相切頭指数出力電圧パルスを提供するように設計される除細動器の実施を示す。本質的に、図6の実施を変更して、破線で示す第3および第4の電流経路を追加した。第3の電流経路はエネルギー源160の+ve側を電極Bに接続し、第4の電流経路はエネルギー源の−ve側を電極Aに接続する。第3の電流経路は、2つの「トーテムポール」SCRであるSCR1およびSCR2を含み、第4の電流経路は、さらなるIGBTであるIGBT2を含む。第1および第2の電流経路は、第1の電流経路が2つのトーテムポールブレークオーバーUSDであるUSD1(bo)およびUSD2(bo)を有して示されることを除いて、上記と同様である。これらのUSDは、図3に示すものと同様であってよい。上述した理由のために、SCRは絶縁ゲート駆動部を有する。
【0039】
動作時に、エネルギー源160はまず、トーテムポールUSDの閾値Vthを上回る電圧まで充電される。次に、時間t0(図8を参照)において、デバイスIGBT1には、これを低インピーダンス状態にするゲートパルス64が加えられる。これにより、実質的にエネルギー源の電圧全体がトーテムポールUSD(上述のように、回路が耐え得る電圧を増加させるために2つのUSDが用いられる)間に加えられる。したがってUSDはオンとなり(デバイスSCR1、SCR2およびIGBT2は高インピーダンス状態のままである)、負荷を電極Aから電極Bまで電流が流れる。負荷がエネルギーをエネルギー源から取り除くと、エネルギー源が加える電圧は減衰する。後の時間t1において、IGBT1はゲート信号を取り除かれて高インピーダンス状態に戻る。これにより、回路内の電流がほぼゼロに低減され、デバイスUSD1(bo)およびUSD2(bo)が高インピーダンス状態に戻る。瞬間t1は、その時点でエネルギー源に残存する電圧が、トーテムポールデバイスUSD1(bo)およびUSD2(bo)の閾値Vthよりも低くなるように選択される。
【0040】
次に、t1の直後の時間t2において、デバイスIGBT2、SCR1およびSCR2に同時ゲート駆動パルス64'が加えられて、これらのデバイスを低インピーダンス状態にする。すると放電電流は、負荷を反対方向に、すなわち電極Bから電極Aへ流れる。さらなる所定時間が経過すると、t3においてデバイスIGBT2に対するゲート駆動が取り除かれて、回路内を流れる電流はほぼゼロに低減される。これにより、ここでもまた、2つのSCRも高インピーダンス状態に戻る。結果として得られる出力は、図8に示すとおりである。
【0041】
この回路において、SCRには絶縁ゲート駆動部が必要である。しかしながらこの場合には、このような絶縁ゲート駆動部は2つしか必要でない。従来技術で用いる方法では、少なくとも4つの絶縁ゲート駆動回路が必要であっただろう。同様に、制御しなければならないデバイスは、従来必要であった6つの制御線に対し、全部で4つしかない。
【0042】
図9は、パルス発生器の第3の実施を示す。これは、トーテムポールSCRであるSCR1およびSCR2を、ヒステリシス付きトーテムポールブレークアンダーUSDであるUSD3(bu)およびUSD4(bu)に置き換えたという点で図7の実施と異なる。
【0043】
動作時に、エネルギー源160はまず、トーテムポールブレークオーバーUSDの閾値Vthより高く、かつトーテムポールブレークアンダーUSDの電圧上限Vhより高い電圧まで充電される。次に、時間t0(この場合にも当てはまる図8を参照)において、デバイスIGBT1には、これを低インピーダンス状態にするゲートパルス164が加えられる。これにより、実質的にエネルギー源の電圧全体がトーテムポールブレークオーバーUSDであるUSD1(bo)およびUSD2(bo)間に加えられる。他のデバイスはすべて、高インピーダンス状態に留まる(電圧が上限Vhよりも高いためブレークアンダーUSD。これは、さもないとブレークアンダーUSDがオンになって負荷をバイパスしてしまうため、重要である)。したがって、ブレークオーバーUSDがオンになり、負荷を電極Aから電極Bまで電流が流れる。負荷がエネルギーをエネルギー源から取り除くと、エネルギー源が加える電圧は減衰する。後の時間t1において、IGBT1はゲート信号を取り除かれて高インピーダンス状態に戻る。これにより、回路内の電流がほぼゼロに低減され、デバイスUSD1(bo)およびUSD2(bo)が高インピーダンス状態に戻る。瞬間t1は、その時点でエネルギー源に残存する電圧が、トーテムポールデバイスUSD1(bo)およびUSD2(bo)の閾値Vthよりは低いが、トーテムポールデバイスUSD3(bu)およびUSD4(bu)の電圧上限Vhと電圧下限V1の間となるように選択される。
【0044】
次に、t1の直後の時間t2において、デバイスIGBT2にゲート駆動パルス64'が加えられて、このデバイスを低インピーダンス状態にする。すると、デバイスUSD3(bu)およびUSD4(bu)が、これらのデバイス間に加えられる電圧が電圧上限と電圧下限の間にあるためにオンになり、放電電流が、負荷を反対方向に、すなわち電極Bから電極Aに流れる。さらなる所定時間が経過すると、t3においてデバイスIGBT2に対するゲート駆動が取り除かれて、回路内を流れる電流はほぼゼロに低減される。これにより、ここでもまた、USD3(bu)およびUSD4(bu)は高インピーダンス状態に戻る。結果として得られる出力は、図8に示すとおりである。
【0045】
特に注目すべきは、この配置には、回路内のデバイスのいずれに対しても絶縁接続ゲート制御接続がないことである。また、2つのデバイス(IGBT1およびIGBT2)しか制御信号を必要とせず、これらはともに、回路接地を基準とする直接的な電気接続である。これは、サイズおよび構成要素のコストを有意に節約する。さらに、回路全体を制御するために、他の場合には5つ必要となる制御信号が2つしか必要でない。この場合、制御回路は単に、第1の位相の出力波形を生成するために1つのIGBT、すなわちIGBT1をパルス化し、第2の位相の出力を生成するために第2のIGBT、すなわちIGBT2をパルス化するだけでよい。
【0046】
図10は、パルス発生器の第4の実施を示す。これは、2つのIGBT、すなわちIGBT1およびIGBT2を、ブレークオーバーUSDであるUSD5(bo)およびブレークアンダーUSDであるUSD6(bu)にそれぞれ置き換えたという点で図9の実施と異なる。また、IGBT(IGBT3)が第2および第4の電流経路に共通して加えられている。単純化のために、当該回路は、第1および第3の電流経路において単一USD(それぞれUSD1(bo)およびUSD3(bu))を用いるが、上述のように、2つ以上のかかるデバイスを各経路においてトーテムポール接続して、より高い電圧に耐える回路の能力を増大することもできる。この構成では別の回路素子IGBT3を加えたが、出力回路は完全に自動的であり、AおよびB間で負荷に接続されるデバイスはすべて制御されない。必要とされる唯一の制御信号は、共通の大地帰路におけるIGBT3のゲートへの信号である。
【0047】
動作時に、ブレークオーバーデバイスUSD1(bo)およびUSD5(bo)の閾値よりも大きさが大きく、かつUSD3(bu)およびUSD6(bu)を低インピーダンス状態にする閾値範囲に入らないほど十分に高い電圧までエネルギー蓄積装置160を充電してしまうと、IGBT3に加えられるゲート駆動パルス64がUSD1(bo)およびUSD5(bo)をオンにして、負荷に電流をAからBの方向に流す。所定の時間後にIGBT3へのゲート駆動を取り除くことで、上述のように、回路内の電流がほぼゼロまで低減され、すべてのデバイスが高インピーダンス状態に戻ることになる。この場合にエネルギー蓄積装置全体の電圧がUSD1(bo)およびUSD5(bo)の閾値よりも低く、さらにこの電圧は、ブレークアンダーデバイスUSD3(bu)およびUSD6(bu)が低インピーダンス状態に入るのに必要とされる閾値内であるという条件で、第2のゲートパルス164をIGBT3に加えると、負荷を電流が反対方向にBからAへ流れるようになる。これにより、ここでもまた、図8の二相波形が生成される。
【0048】
回路全体を完全に動作させるために、デバイスのいずれにも絶縁接続が必要ないだけでなく、ゲート駆動信号を加えられる必要があるのは1つの単一デバイスのみであることに留意されたい。この配置は、USD1(bo)、USD5(bo)、USD3(bu)、USD6(bu)およびIGBT3を含む出力回路全体が単一集積固体構成要素として容易に実施され得ることを意味することが理解されるであろう。これは、出力段全体が、5つの接続しか必要としない単一封止集積モジュールとなることをさらに意味する。これらの接続は、共通接地接続と、エネルギー源からの入力と、電極AおよびBへの2つの出力接続と、当該モジュールを制御する共通接地を基準とする単一入力制御接続とであるだろう。図11は、このような集積回路66を含む回路のブロック図を示す。IGBTのゲート駆動回路でさえも、当該回路への制御端子が標準のTTLタイプの信号を必要とするままで、モジュールに含むことができることに留意されたい。これは、コスト、サイズおよび複雑性について膨大な節約を意味する。
【0049】
図10に示す実施の変形であり、単一集積回路部品としての出力回路とともに同様に形成され得るパルス発生器の第5の実施において、エネルギー源は、受動コンデンサではなく、プログラマブルな能動電源168である。図12aを参照すると、この場合にエネルギー源は、プログラムド定DC電圧を供給するように設計される。この電圧が、ブレークオーバーデバイスUSD1(bo)およびUSD5(bo)の伝導閾値Vthより高く、かつブレークアンダーデバイスUSD3(bu)およびUSD6(bu)の低インピーダンス閾値範囲より高いレベルに設定されることにより、電流が負荷をAからBへ再び流れる。次に、ゼロボルトの電圧を所定時間にわたって供給するようにプログラマブル電源を設定することにより、すべてのデバイスが高インピーダンス状態に戻る。USD1(bo)およびUSD5(bo)の閾値よりも低く、かつブレークアンダーデバイスUSD3(bu)およびUSD6(bu)が低インピーダンス状態に入るために必要な閾値範囲内である電圧を供給するようにプログラム電源をさらに設定することにより、電流が反対方向にBからAへ流れることになる。結果として得られる波形が、一例として図12bに見られる。回路配置内に追加のUSDを配置することによって、いくつかのエネルギー源を選択可能とすることも可能である。この場合、どのエネルギー源を用いて出力回路に供給を行うかは、必要なパルス波形を達成するのに望ましいときにいつでも選択することができる。
【0050】
USDまたは他の固体デバイスを含むさらなる電流経路を、上述の回路のいずれにおいてもエネルギー源と電極AおよびBとの間に追加することが可能であり、よって、第3、第4またはそれ以降の位相を所定の極性に加えることが可能であることが理解されるべきである。
【0051】
実際には回路の確かな動作のために、さらなる保護構成要素が必要となり得ることも理解されるべきである。一例として、インダクタをエネルギー源の出力と直列に設けて、回路内の電流の変化率を制限することができる。このような追加は、当業者には周知である。
【0052】
図1ないし図3において、コネクタ48において終端するケーブル36は、数本の電線(wires)を有し得る。図3には、このような電線が3本示される(48A、48Bおよび48C)。電線48Aおよび48Bは2つの目的を兼ねる。これらは、内因性心臓活動(intrinsic cardiac activity)すなわちECGを感知するために用いられる。感知された信号はカスタムIC70に送られて、このカスタムIC70が、これらの信号に対して信号処理を行ってマイクロプロセッサ66に送る。マイクロプロセッサはECGを用いて、患者の現在の状態を判断する。
【0053】
電線48A、48Bの第2の機能は、パルス発生器80からの除細動パルスを供給することである。
【0054】
インピーダンス検出回路82も設けられ得る。この回路は、電線48A、48B間に接続されて、除細動パルスを加えるために用いられるパッド(図示せず)のインピーダンスを検出するために用いられ得る。このインピーダンスは、カスタムIC70に供給されて、電線48A、48Bが開いておらず、パッドが患者に適切に取り付けられていることを確認するために用いられ得る。
【0055】
ケーブル36とその終端ブロック34Aは、メモリ84に格納されるIDコードによって一意に識別されることが好ましい。終端ブロック34は、患者(図示せず)に取り付けられる電極またはパッドに接続される。メモリ84に格納されるコードは、カスタムIC70が第3の電線48Cを用いて得ることができる。このコードは、あらゆるパルスが加えられる前にチェックされて、適切なケーブルがADM32とともに用いられていることを確実にする。
【0056】
ADM32は以下のように動作する。まず、ADM32は機械的および電気的に監視装置12に取り付けられて、この2つが単一集積複合システム10を形成できるようにする。機械的接続は、当業界で周知のブラケットまたは他の結合素子を用いて実施できるため、ここでは説明しない。電気的接続は、電源(用いられる場合)用のケーブル40と、シリアルケーブル38とを含む。
【0057】
ADM32は、いったん取り付けられると、患者に関して構成され得る。この目的のために、臨床医は、正面52上のキーを操作して、あるいは患者監視装置を介して構成モードに入る。このモードにおいて、臨床医は、患者に施す除細動治療に関連するパラメータを選択することができる。臨床医はまた、ADM32が全自動モード、助言モード、手動モード、またはペーサモードのいずれで動作するのかを設定することができる。典型的に、自動モードにおいてADM32は、患者の状態を監視し、細動が検出された場合には、二相パルス発生器からのパルスが自動的に患者に送出される。助言モードにおいて、ADM32は患者を監視して、患者の状態の音声および/または視覚表示(細動発作の表示を含む)を生成し、デバイスが除細動パルスを送出する準備をするが、除細動パルスは、臨床医が送出しない限り加えられない。手動モードにおいて、ADM32の動作は完全に臨床医の管理下にある。ペーサモードでは、臨床医が、ペーシングプロトコルを選択し、ペーシングパルスを患者に送出する。臨床医は、これらすべての動作に必要なパラメータを、ノブ56およびスイッチ58を介して、ディスプレイ54に表示されるプロンプトに応答して入力する。図面では、患者の内因性心臓活動の感知と、高電圧二相除細動パルスの送出との両方について同一の電線を示す。当然、適切な電極および/またはパッドで終端する別個の電線も同様に用いることができる。このように、ADM32は、当業界で周知のプロトコルのいずれかを用いて除細動(または他の種類の)治療を患者へ送出することができる。用いられ得るいくつかのプロトコルを説明する体外式除細動器が、同一出願人による、AUTOMATIC EXTERNAL CARDIOVERTER/ DEFIBRILLATOR WITH TACHYARRHYTHMIA DETECTOR USING A MODULATION (AMPLITUDE AND FREQUENCY) DOMAIN FUNCTIONと題する同時係属出願第09/452,507号(1999年12月1日提出、参照により本明細書中に援用される)に記載される。当然、他のプロトコルおよび動作モードも同様に用いることができる。
【0058】
重要なことには、ADM32は動作時に、シリアルケーブル38を介して監視装置12とデータを連続して交換する。たとえば、ADM32は、患者の状態を判断するためにECGのデジタル表現を生成する必要がある。このデジタルECGは、監視装置のディスプレイ18に伝送される。マイクロプロセッサ66の指示の下で、ADM32は、たとえば現在の動作モード(手動、助言、自動)を含む様々な他の情報を監視装置12へ送ることができる。ADM32はまた、動作の様々な段階を記述するデータ(患者の状態、二相パルス発生器のコンデンサの電圧、コンデンサを公称電圧まで充電するために必要な時間、次のパルスが加えられるまでの時間、最後のパルスから経過した時間、患者に加えられたパルス数、ADMがパルスを加える準備状況などを示すデータを含む)を送ることができる。ADM32はセルフテスト機能も含み得る。このセルフテストの結果も同様に監視装置へ送ることができる。監視装置10に送られる情報は、直ちにディスプレイ18に表示されても、ハードコピーのためにプリンタ28へ送られても、また、監視装置のメモリ(図示せず)に格納されてもよい。さらに、監視装置がネットワークに接続される場合、ADM32からのデータは他の位置に伝送されてもよい。
【0059】
監視装置10は、受信したデータの確認を含むデータをADM32に送ることもできる。典型的に監視装置12は、患者の、血圧、脈波型動脈血中酸素飽和度(SpO)2、二酸化炭素(CO2)、換気量、および心拍出量などの1つまたは複数の生理機能を監視することが可能であり得る。監視装置には、デジタルECG信号を生成できるものもあり得る。ADM32が電極により検出するECG信号はより確かであろうと思われるが、監視装置からの外部ECG信号を、ECG信号が局所的に検出できない場合のバックアップとして、またはADMによる局所ECG信号の妥当性を確認する手段として用いることができる。さらにADM32は、患者の状態および他の情報を患者の他の生理的パラメータに基づき同様に判断するように適合されてもよい。たとえば、ADM32は、監視装置12が導出する生理的パラメータのいずれかを用いて、ADM32が施すべき治療を要する心臓の状態を患者が有するかどうかを判断してもよい。これらの他の生理的パラメータもまた、監視装置12によってADM32に提供され得る。
【0060】
さらに、メモリ68は、データ記録目的に不十分である場合がある。したがって、ADM32は一部のデータを、監視装置12のメモリ30に格納するために送る場合がある。この場合、監視装置12はこのデータを、要求に応じてADM32に戻すことができる。
【0061】
上述のように、ADM32は、セルフテストを行うように、また患者の状態を監視するように適合される。ADM32が誤動作している可能性があることをセルフテストが示す場合、または臨床医の注意を喚起すべき患者の状態が検出された場合には、ADM32は、アラーム信号を生成するように適合される。このアラーム信号は、ADM32および/または監視装置12の可聴信号および視覚信号を作動させるために用いられ得る。さらに、これらの信号は、インターフェース22に接続される通信ネットワークを介してリモート位置へ伝送され得る。この通信ネットワークには、有線または無線ネットワークを用いることができる。したがって、本明細書中において「ネットワーク」という用語は、情報をシステム10から別の位置へ伝送可能なあらゆるアナログまたはデジタル通信ネットワーク(数例を挙げれば、ローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク、インターネット接続、ページング携帯電話、テレメトリ、および衛星通信を含む)を網羅すべく非常に広範に用いられる。
【0062】
現在利用可能な監視装置には、Spacelabs Universal Flexport Protocolなどの標準プロトコルを用いて、ADM12などの他の装置とインターフェースできるように設計されるものがある。このようなプロトコルが特定の監視装置に利用可能でない場合、ADM32は、監視装置12に特有の固有のプロトコルを用いて当該監視装置12と通信できるようにプログラムされ得る。
【0063】
要約すれば、様々な機能を共有できるように患者監視装置と統合できる自動除細動モジュールが記載される。より具体的には、ADM32は、患者の状態を分析し、必要であれば治療パルスを生成するために必要な構成要素を含む。デジタルECGおよびADM32の動作を示す他の信号を含むADM32からのデータは、表示、印刷、および/または格納のために監視装置12へ送られる。したがってADM32は、ADM自体のECGディスプレイ、プリンタまたはデータ記録メモリを有しても有さなくてもよい。監視装置とADMの組み合わせ全体は、空間をあまり要さず、費用効率がよく、同じADMを多くの異なる患者監視装置とともに用いることができることから非常にフレキシブルであることが期待される。
【0064】
上述の実施形態において、ADM32のプログラミング情報は、患者に特有の情報が監視装置12に表示または他の方法で提供されている間に、ADMの正面上の制御部を用いて入力される。当然ながら、他の配置も同様に行うことができる。たとえば、プログラミング情報を監視装置12から入力し、かつ/または、患者に特有の情報の一部をADM32により表示することができる。さらにADM32は、ADM32からの情報専用である、または監視装置12により共有され得るプリンタを組み込むこともできる。さらにADM32は、ECGのほかに他の生理的パラメータも感知し、これを監視装置12に伝送するようにも配置され得る。
【0065】
明らかに、本発明に対して、併記の請求項に定義される発明の範囲を逸脱することなく多数の変更を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】患者監視装置と自動除細動器を組み合わせたシステムのブロック図である。
【図2】図1のシステムのための自動除細動モジュールのいくぶん概略的な等角投影図である。
【図3】図1のシステムに組み込まれる自動除細動モジュールの制御アセンブリのブロック図である。
【図4a】2つのSCRを「トーテムポール接続」し、この2つのデバイスの組み合わせが単一デバイスよりも高い電圧に耐え得るようにした回路を示す図である。
【図4b】Shockleyダイオードの基板構成、回路記号、およびI=V特性をそれぞれ示す図である。
【図4c】Shockleyダイオードの基板構成、回路記号、およびI=V特性をそれぞれ示す図である。
【図4d】Shockleyダイオードの基板構成、回路記号、およびI=V特性をそれぞれ示す図である。
【図4e】ブレークオーバーUSDの回路図である。
【図4f】ブレークアンダーUSDの回路図、回路記号、およびI=V特性をそれぞれ示す図である。
【図4g】ブレークアンダーUSDの回路図、回路記号、およびI=V特性をそれぞれ示す図である。
【図4h】ブレークアンダーUSDの回路図、回路記号、およびI=V特性をそれぞれ示す図である。
【図5a】ヒステリシス付きブレークアンダーUSDの回路記号および回路図をそれぞれ示す図である。
【図5b】ヒステリシス付きブレークアンダーUSDの回路記号および回路図をそれぞれ示す図である。
【図6】パルス発生器の第1の実施を用いる除細動器の回路図である。
【図7】パルス発生器の第2の実施を用いる除細動器の回路図である。
【図8】図7の実施により生成することができる波形の一例を示す図である。
【図9】パルス発生器の第3の実施を示す除細動器の回路図である。
【図10】パルス発生器の第4の実施の回路図である。
【図11】出力回路を単一封止集積回路部品として実施するパルス発生器を示す図である。
【図12a】パルス発生器の第5の実施の回路図である。
【図12b】図12aの実施形態により生成することができる波形の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
12 監視装置(患者監視装置)、14 センサ(患者監視センサ)、16 データプロセッサ(信号プロセッサ)、28 プリンタ、32 除細動モジュール、80 パルス発生器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体外の複合監視システムであって、
前記患者の生理的特性を感知するように配置される患者監視センサ、該患者監視センサに結合されて、該患者監視センサからの信号を処理するように適合される信号プロセッサ、および出力部材を含む、外部患者監視装置と、
前記外部患者監視装置に選択的に、前記患者の体外の電気的手段または無線手段によって結合されるように適合される体外式除細動モジュールであって、コマンドに応答して患者に対して治療パルスを生成するパルス発生器、および該体外式除細動モジュールの動作を示す表示信号を生成するように配置されるデータ発生器を含む体外式除細動モジュールと
を備え、
前記外部患者監視装置および前記除細動モジュールは、結合されると協働して、前記表示信号を前記出力部材へ伝送し、それによって前記出力部材が、前記患者特性のうちの1つおよび前記表示信号に対応する出力信号を生成し、
前記出力部材は、ハードコピーを印刷するように適合されるプリンタを含み、
前記除細動器および患者監視装置は単一のユニットに収容される
患者の体外の複合監視システム。
【請求項2】
前記患者監視センサは、外部ECGを生成するように適合される心臓センサを含み、前記外部患者監視装置は、前記外部ECGを前記体外式除細動モジュールへ伝送するように適合される請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記患者監視センサは、血圧、脈波型動脈血中酸素飽和度(SpO)、二酸化炭素(CO)、換気量、および心拍出量からなる群から選択される生理的パラメータのうちの少なくとも1つを感知するように適合される請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記体外式除細動モジュールは、除細動器ディスプレイを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記体外式除細動モジュールは、該体外式除細動モジュールの動作モードを規定する、該体外式除細動モジュールに関する動作パラメータを操作者が生成できるように配置および構成されるセレクタを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記体外式除細動モジュールは、前記動作パラメータの選択に関連する情報を提供するように配置される除細動器ディスプレイを含む請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
患者の生理的特性を感知するように配置される患者監視センサ、該患者監視センサに結合されて、該患者監視センサからの信号を処理するように適合される信号プロセッサ、および出力部材を含む、外部患者監視装置とともに用いられる、体外式除細動モジュールであって、
患者の内因性心臓活動を感知して、該内因性心臓活動を示す除細動センサ信号を生成する除細動生理センサと、
前記除細動センサ信号を受信して、対応するコマンドを生成するように配置されるコントローラと、
前記コマンドに応答して患者に対して治療パルスを生成するように配置されるパルス発生器と、
除細動器の動作を示す、表示のために前記外部患者監視装置へ伝送されるように選択される出力信号を生成するように適合される、前記コントローラに関連付けられる出力部材と
を備え、
前記除細動器および患者監視装置は単一のユニットに収容される
体外式除細動モジュール。
【請求項8】
前記コントローラは、前記除細動センサ信号を受信して、治療を要する患者の心臓の状態を判断するように配置される不整脈検出器を含む請求項7に記載のモジュール。
【請求項9】
前記出力部材は、前記外部患者監視装置が検出した生理的パラメータを受信するように適合され、前記不整脈検出器は、前記生理的パラメータを受信して、該生理的パラメータに基づいて患者に治療を送出するための判断を下すように適合される請求項8に記載のモジュール。
【請求項10】
前記出力部材は、前記パルス発生器に結合され、該パルス発生器によるパルスの生成を指示する前記出力信号を前記外部患者監視装置に対して生成するように適合される請求項7に記載のモジュール。
【請求項11】
前記コントローラは、全自動モード、助言モード、手動モード、およびペーシングモードを含む複数の動作モードを規定するように配置される請求項7に記載のモジュール。
【請求項12】
患者状態およびモジュール状態のうちの少なくとも1つを示すアラーム信号を生成するように配置されるアラーム回路をさらに備える請求項7に記載のモジュール。
【請求項13】
前記モジュールは、有線ネットワーク、無線ネットワーク、ローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク、インターネット、ページングシステム、携帯電話システム、テレメトリシステム、および衛星システムからなる群から選択される通信ネットワークを介してリモート位置へアラーム信号を送るように適合される請求項12に記載のモジュール。
【請求項14】
前記除細動センサ信号を表示するように適合されるディスプレイをさらに備える請求項7に記載のモジュール。
【請求項15】
前記コントローラは、前記外部患者監視装置から患者の生理的情報を受信するとともに、これに応答して、対応するコマンドを生成するように適合される、請求項7に記載のモジュール。
【請求項16】
患者の生理的特性を感知するように配置される患者監視センサ、該患者監視センサに結合されて、該患者監視センサからの信号を処理するように適合される信号プロセッサ、および出力部材を含む、外部患者監視装置とともに用いられる、体外式除細動モジュールであって、
患者の内因性心臓活動を示すセンサ信号を受信して、対応するコマンドを生成するように配置されるコントローラと、
前記コマンドに応答して患者に対して治療パルスを生成するように配置されるパルス発生器と、
除細動器の動作を示す、前記外部患者監視装置へ伝送されるように選択される出力信号を生成するように適合される、前記コントローラに関連付けられる出力部材と
を備え、
前記除細動器および患者監視装置は単一のユニットに収容される
体外式除細動モジュール。
【請求項17】
前記センサ信号を感知するように適合される除細動センサをさらに備える請求項16に記載のモジュール。
【請求項18】
前記コントローラは、前記外部患者監視装置から前記センサ信号を受信するように適合される請求項16に記載のモジュール。
【請求項19】
生理的パラメータを検出する生理的パラメータ検出器をさらに備え、前記コントローラは、前記生理的パラメータを表示および処理のために前記外部患者監視装置へ伝送するように適合される請求項16に記載のモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4e】
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【図4f】
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【図4g】
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【図4h】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12a】
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【図12b】
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【公開番号】特開2007−209744(P2007−209744A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−340288(P2006−340288)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【分割の表示】特願2001−564832(P2001−564832)の分割
【原出願日】平成12年12月12日(2000.12.12)
【出願人】(507055084)カーディアック・サイエンス・コーポレイション (3)
【氏名又は名称原語表記】Cardiac Science Corporation
【住所又は居所原語表記】3303 Monte Villa Parkway, Bothell, Washington 98021, U.S.A.
【Fターム(参考)】