標的化用化合物
本発明は、標的特異的部分およびエフェクター部分を含む化合物であって、標的特異的部分が、親モノクローナル抗体の癌胎児性フィブロネクチンに関する抗原結合特異性を保持する、癌胎児性フィブロネクチンに対する特異性を有するモノクローナル抗体、またはその断片もしくは変異体を含むか、それらからなり、かつエフェクター部分が、インターロイキン-12、またはその機能性断片もしくは変異体を含むか、それらからなり、癌胎児性フィブロネクチンに対する特異性を有するモノクローナル抗体が、ED-B領域以外の癌胎児性フィブロネクチンの領域と結合することを特徴とする化合物を提供する。本発明は、本発明の化合物をコードする核酸、および医学、例えば癌の治療におけるこのような化合物の使用をさらに提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の治療において使用するための化合物に関する。特に本発明は、インターロイキン-12と融合した腫瘍血管新生に特異的な抗原を対象とする抗体部分を含む、融合タンパク質を提供する。本発明の好ましい融合タンパク質は標的抗原と特に強く結合し、固形腫瘍を治療するのに有用である。
【背景技術】
【0002】
標的化融合タンパク質を用いた癌の治療は多大な有望を示しているが、多くの問題点が依然として存在する。例えば抗体標的化サイトカインは、動物モデルおよび幾つかのヒト試験における癌の治療において多大な有望を示しているが、抗体/抗原、サイトカイン、および抗体エフェクター機能の最適な選択肢は依然決定されていない。例えば、Gillies(米国特許第5,650,150号)は、完全抗体とのサイトカイン融合体の一般的有用性、および抗体-IL2融合タンパク質の特異的有用性を記載した。
【0003】
インターロイキン-12(IL-12)は標的化免疫療法に非常に魅力的なサイトカインである、何故ならIL-12は、腫瘍細胞を攻撃する際に最も有効であるTh1の免疫応答を刺激するからである。IL-12は全身に投与すると非常に毒性が強く、したがって腫瘍部位にその活性を向けることは非常に重要である。Gillies et al(WO99/29732)は、IL-12と抗体の融合体の有用性を記載し、IL-12は2サブユニットのサイトカインであり、そのサブユニットの1つはホモ二量体化する可能性があるという事実と関係がある、IL-12融合タンパク質を発現させるために必要とされる特定の技法をさらに記載した。Halin et al、2002、Nature Biotechnology 20 : 264〜269は、L19、腫瘍特異的血管新生部位と結合する抗体の可変ドメインを有する単鎖Fv(sFv)と融合した単鎖IL-12部分からなる融合タンパク質を記載した。この後者の分子は抗体のFc領域を欠き、したがって全てのエフェクター機能を欠く。
【0004】
IL-12が標的部分と融合するときでさえも、融合タンパク質が投与された後に、そのタンパク質薬剤が全身に循環する時間が存在する。この時間中、および薬剤が腫瘍中に蓄積し系の残り部分から消失する前に、第二のサイトカインが誘導され障害が生じる。
【0005】
したがって、患者内の腫瘍部位にIL-12を送達する改善された手段に関する必要性が存在する。
【特許文献1】米国特許第5,650,150号
【特許文献2】WO99/29732
【非特許文献1】Halin et al.、2002、Nature Biotechnology 20 : 264〜269
【非特許文献2】Carnemolla et al.、1989、J Cell.Biol.108 p1139〜1148
【非特許文献3】ffrench-Constant et al.、1989、J.Cell.Biol.109 p903〜914
【非特許文献4】Monoclonal Antibodies : A manual of techniques、H Zola(CRC Press、1988)
【非特許文献5】Monoclonal Hybridoma Antibodies : Techniques and Applications、J G R Hurrell(CRC Press、1982)
【非特許文献6】Antibody Engineering、A Practical Approach、McCafferty、J.et al、ed.(IRL Pres、1996)
【特許文献3】WO03/076469
【特許文献4】EP0344134B
【非特許文献7】Carnemolla et al.、1989、J.Cell Biol.109 : 1139〜1148
【非特許文献8】Carnemolla et al.、1992、J.Biol.Chem.267 : 24689〜24692
【非特許文献9】Mariani et al.、1997、Cancer80 : 2378〜2384
【非特許文献10】Jones et al.(1986) Nature321 : 522〜525
【非特許文献11】Riechmann et al.(1988) Nature332 : 323〜327
【非特許文献12】Verhoeyen et al.(1988) Science239 : 1534〜1536
【特許文献5】EP239400
【非特許文献13】Morrison et al. (1984) Proc.Natl.Acad.Sci.USA81、6851〜6855
【非特許文献14】Better et a.l (1988) Science240、1041
【非特許文献15】Skerra et al. (1988) Science240、1038
【非特許文献16】Young et al.、1995、FEBSLett.377 : 135〜139
【非特許文献17】Bird et al. (1988) Science242、423
【非特許文献18】Huston et al(1988) Proc.Natl.Acad.Sci.USA85、5879
【非特許文献19】Ward et al (1989) Nature341、544
【非特許文献20】Winter & Milstein (1991) Nature349、293〜299
【非特許文献21】O'Sullivan et al Anal.Biochem.(1979) 100、100〜108
【特許文献6】米国特許第4,440,859号
【特許文献7】米国特許第4,530,901号
【特許文献8】米国特許第4,582,800号
【特許文献9】米国特許第4,677,063号
【特許文献10】米国特許第4,678,751号
【特許文献11】米国特許第4,704,362号
【特許文献12】米国特許第4,710,463号
【特許文献13】米国特許第4,757,006号
【特許文献14】米国特許第4,766,075号
【特許文献15】米国特許第4,810,648号
【非特許文献22】Takahara et a1、1985、J.Biol.Chem.260(5) : 2670〜2674
【非特許文献23】Saiki et at (1988) Science239、487〜491
【特許文献16】EP251744
【特許文献17】EP258067
【特許文献18】WO90/01063
【特許文献19】EP-A-258067
【非特許文献24】Cohen et al、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、69 : 2110 (1972)
【非特許文献25】Sambrook et al、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、ニューヨーク(1989)
【非特許文献26】Sherman et al、Methods In Yeast Genetics、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor、ニューヨーク(1986)
【非特許文献27】Beggs、Nature、275 : 104〜109(1978)
【非特許文献28】Southern、J.Mol.Biol.、98 : 503 (1975)
【非特許文献29】Berent et al、Biotech、3 : 208 (1985)
【非特許文献30】Molecular Cloning:a Laboratory Manual : 3rd edition、Sambrook and Russell、2001、Cold Spring Harbor Laboratory Press
【非特許文献31】Kozak (1984) Nature 308 : 241
【非特許文献32】Lo et al.(1998) Protein Engineering11 : 495
【非特許文献33】Gillies et al.(2002) Clin.Cancer Res.8:210
【非特許文献34】Gllies et al.(1998) J.Immunol.160 : 6195
【非特許文献35】Boshart et al.(1985) Cell41 : 521〜530
【非特許文献36】www.biacore.com
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、標的特異的部分およびエフェクター部分を含む化合物であって、標的特異的部分が、親モノクローナル抗体の癌胎児性フィブロネクチンに対する結合特異性を保持する、癌胎児性フィブロネクチンに対する特異性を有するモノクローナル抗体、またはその断片もしくは変異体を含むか、それらからなり、かつエフェクター部分が、インターロイキン-12、またはその機能性断片もしくは変異体を含むか、それらからなる化合物を与える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の化合物の特性を表す特徴は、癌胎児性フィブロネクチンに対する特異性を有するモノクローナル抗体が、ドメインB外(ED-B)領域以外の癌胎児性フィブロネクチンの領域と結合することである。フィブロネクチンのED-B領域は、一次RNA転写産物の可変スプライシングによって、細胞外マトリクスのフィブロネクチン分子において存在するかあるいは削除されるドメインである(以下参照)。したがって、癌胎児性フィブロネクチンに対する特異性を有するモノクローナル抗体はED-B領域(ED-Bドメイン)とは結合しないが、ED-B領域などを含むフィブロネクチンのスプライシング変異体(「癌胎児性フィブロネクチン」と呼ぶ)とは結合する。
【0008】
「標的特異的」部分によって本発明者らは、癌胎児性フィブロネクチンを認識しそれと結合する1つまたは複数の結合部位を含む化合物の一部分を意味する。癌胎児性フィブロネクチンは、腫瘍細胞によって発現され腫瘍血管新生と関係があるタンパク質である。このタンパク質は胎児組織中でも発現されるが、子宮内膜再生および創傷治癒以外は正常成体組織中では全く発現されないようである(Carnemolla et al.、1989、J Cell.Biol.108 p1139〜1148)。
【0009】
癌胎児性フィブロネクチンは腫瘍細胞中での可変スプライシングによって生成され、それによって、(完全型II反復配列ED-B、他型III反復配列B[EIIIB]としても知られる)ED-Bドメインと呼ばれる他のドメインが、フィブロネクチンの反復配列7と8の間に挿入される。ED-Bは、今日まで研究されている哺乳動物において100パーセントの相同性を有する充分に保存されたドメインである(Carnemolla et al、1989上記、およびffrench-Constant et al、1989、J.Cell.Biol.109 p903〜914を参照)。
【0010】
したがって本発明は、癌胎児性フィブロネクチンを標的化することによりIL12、またはその機能性断片もしくは変異体を腫瘍細胞に送達するための化合物を与える。
【0011】
「癌胎児性フィブロネクチンに対する特異性」によって本発明者らは、標的特異的部分(すなわち、親モノクローナル抗体の癌胎児性フィブロネクチンに対する結合特異性を保持するモノクローナル抗体、またはその断片もしくは変異体)は癌胎児性フィブロネクチンと結合するが、正常成体組織によって発現されるフィブロネクチンとは実質的に結合しないことを意味する。
【0012】
抗原(この場合、癌胎児性フィブロネクチン)を標的化するのに適したモノクローナル抗体は、知られている技法、例えばMonoclonal Antibodies : A manual of techniques、H Zola(CRC Press、1988)中、ならびにMonoclonal Hybridoma Antibodies : Techniques and Applications、J G R Hurrell(CRC Press、1982)およびAntibody Engineering、A Practical Approach、McCafferty、J.et al、ed.(IRL Pres、1996)中に開示された技法によって作製することができる。
【0013】
本発明の化合物の標的特異的部分は、ED-B領域以外の癌胎児性フィブロネクチンの領域に対する特異性を有することによって特徴付けられる。しかしながら標的特異的部分は、(ED-Bドメインを含む)癌胎児性フィブロネクチン中で露出される/接触可能であるが、(ED-Bドメインを欠く)正常フィブロネクチン中では露出/接触不能である隠れたエピトープと結合する。結果として、標的特異的部分はED-Bドメインを含むフィブロネクチンのスプライシング変異体と結合するが、ED-Bドメイン自体とは結合しない。
【0014】
したがって、(例えば、WO03/076469の記載と同様の)L19抗体またはその抗原結合断片を含む標的化物質は本発明の範囲から除外する、何故ならL19抗体はED-Bドメインと結合するからである。
【0015】
標的特異的部分は、胎児組織と正常成体組織の両方で発現されるフィブロネクチン内に存在するアミノ酸配列と結合することが好ましい。標的特異的部分は、ED-Bドメインの側面に位置する、すなわちそれに隣接するフィブロネクチンのドメインと結合することがより好ましい。標的特異的部分は、フィブロネクチンの反復配列7ドメイン内のアミノ酸配列と結合することが最も好ましい(以下の実施例3を参照)。
【0016】
本発明の化合物が任意の種によって発現される癌胎児性フィブロネクチンを標的化することができることは、当業者によって理解されると思われる。有利なことに本発明の化合物は、これらの化合物が治療上使用される種由来の癌胎児性フィブロネクチンを標的化する。したがって好ましい実施形態では、標的特異的部分はヒト癌胎児性フィブロネクチンに特異的である。
【0017】
本発明の第1の態様の特に好ましい実施形態では、標的特異的部分は、親モノクローナル抗体の抗原結合特異性を保持するBC1抗体、またはBC1抗体と癌胎児性フィブロネクチンの結合に関して競合することができる抗体、またはその断片もしくは変異体を含むか、それらからなる。BC1抗体の産生はEP0344134B中に記載されており、それはEuropean Collection of Animal Cell Cultures、Porton Down、UKに寄託されたハイブリドーマ(受託番号88042101)から入手可能である。
【0018】
正常フィブロネクチン中では覆われているがED-Bドメインが存在するときは接触可能である、ED-Bドメインの外側の反復配列7上の部位を介して、BC1抗体は癌胎児性フィブロネクチンと特異的に結合する(Carnemolla et al、1989、J.Cell Biol.109 : 1139〜1148 ; Carnemolla et al、1992、J.Biol.Chem.267 : 24689〜24692 ; Mariani et al、1997、Cancer80 : 2378〜2384 ;以下の実施例1も参照)。
【0019】
競合ELISAなどの、試験抗体がBC1抗体と癌胎児性フィブロネクチンの結合に関して競合することができるかどうかを判定するための方法は、当分野でよく知られている。
【0020】
他の好ましい実施形態では、BC1抗体はヒトまたはヒト化抗体である。「ヒト化モノクローナル抗体」によって本発明者らは、骨格領域がヒト起源の第一の受容体モノクローナル抗体に主に由来し、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)が癌胎児性フィブロネクチンに対する特異性を有する第二のドナーモノクローナル抗体に由来する、少なくとも1本の鎖を有するモノクローナル抗体を含める。ドナーモノクローナル抗体はヒトまたは非ヒト起源であってよく、例えば、それはネズミモノクローナル抗体であってよい。
【0021】
ヒト化モノクローナル抗体の両方の鎖は、癌胎児性フィブロネクチンに対する特異性を有するドナーモノクローナル抗体から接合したCDRを含むことが好ましい。
【0022】
CDR接合(すなわちヒト化)鎖は、癌胎児性フィブロネクチンに対する特異性を有するドナー抗体に由来する2個または合計3個のCDRを含むことが有利である。
【0023】
ヒト化モノクローナル抗体は、ヒト骨格残基および癌胎児性フィブロネクチンに対する特異性を有するドナー抗体由来のCDRのみを含むことが好都合である。
【0024】
しかしながら、ヒト化抗体の特異性を維持および最適化するためには、骨格領域中の1つまたは複数の残基を改変して、それらがドナー抗体中の同等な残基に対応するようにすることが必要とされる可能性があることは、当業者によって理解されると思われる。
【0025】
ヒト化抗体の骨格領域は、ヒトIgGモノクローナル抗体に由来することが好ましい。
【0026】
ヒト化モノクローナル抗体を作製する方法は当分野でよく知られており、例えばJones et al.(1986) Nature321 : 522〜525、Riechmann et al.(1988) Nature332 : 323〜327、Verhoeyen et al.(1988) Science239 : 1534〜1536およびEP239400を参照のこと。
【0027】
他の好ましい実施形態では、本発明の第1の態様の化合物は、高い親和力で癌胎児性フィブロネクチンと結合する。「高い親和力」によって本発明者らは、標的特異的部分が、少なくともKd=10-6M、好ましくは少なくともKd=10-7M、適切にはKd=10-8M、より適切にはKd=10-9M、さらにより適切にはさらにKd=10-10M、およびより好ましくはKd=10-11M、あるいはさらにKd=10-12Mの結合定数で癌胎児性フィブロネクチンを認識することを意味する。
【0028】
本発明の第1の態様の化合物は、標的特異的部分を生成するために使用する親モノクローナル抗体、例えばBC1より強く癌胎児性フィブロネクチンと結合することが好ましい。化合物および親モノクローナル抗体が癌胎児性フィブロネクチンと結合する強度は、癌胎児性フィブロネクチンとの結合に関する解離定数を決定することによって測定することができる(実施例2および3を参照)。
【0029】
化合物は親モノクローナル抗体より少なくとも2倍強く、例えば少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20倍強く癌胎児性フィブロネクチンと結合することが有利である。化合物は親モノクローナル抗体が癌胎児性フィブロネクチンと結合するより少なくとも10倍強く、癌胎児性フィブロネクチンと結合することが好都合である。
【0030】
好ましい実施形態では、本発明の第1の態様の化合物は、完全(すなわち無傷)モノクローナル抗体、好ましくはBC1抗体を含むか、それからなる標的特異的部分を含む。したがって標的特異的部分は、ジスルフィド結合によって結合し得る2本の免疫グロブリン重鎖および2本の免疫グロブリン軽鎖を含むことができる。1つまたは複数の要素の鎖はエフェクター部分と結合、例えば融合させることができる。例えば2本の免疫グロブリン重鎖は、エフェクター部分と互いに融合させることができる。
【0031】
本発明の化合物の他の好ましい実施形態では、標的特異的部分は、癌胎児性フィブロネクチンに対する特異性を有するモノクローナル抗体(例えばBC1)の抗原結合断片を含むか、それからなる。
【0032】
抗体の可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)ドメインは抗原認識、初期のプロテアーゼ消化実験によって最初に認識された事実と関係がある。げっ歯類抗体のヒト化によって、他の確認事項が発見された。げっ歯類起源の可変ドメインは、生成する抗体がげっ歯類の親抗体の抗原特異性を有するように、ヒト起源の定常ドメインと融合させることができる(Morrison et al (1984) Proc.Natl.Acad.Sci.USA81、6851〜6855)。
【0033】
抗原特異性は可変ドメインによって与えられ定常ドメインとは無関係であることは、いずれも1つまたは複数の可変ドメインを含む抗体断片の細菌における発現に関する実験から知られている。これらの分子にはFab様分子(Better et al (1988) Science240、1041);Fv分子(Skerra et al (1988) Science240、1038);ジスルフィド結合Fv分子(Young et al、1995、FEBSLett.377 : 135〜139);VHおよびVLパートナードメインが柔軟性のあるオリゴペプチドによって連結した単鎖Fv(ScFv)分子(Bird et al (1988) Science242、423 ; Huston et al(1988) Proc.Natl.Acad.Sci.USA85、5879)、および単離Vドメインを含むシングルドメイン抗体(dAb)がある(Ward et al (1989) Nature341、544)。その特異的結合部位を有する抗体断片の合成に関する技法の一般的総説は、Winter & Milstein (1991) Nature349、293〜299中に見られる。
【0034】
完全抗体ではなく抗体断片を使用する利点は、数倍である可能性がある。より小さなサイズの断片は迅速な浄化を可能にし、改善された腫瘍と非腫瘍の比をもたらすことができる。Fab、Fv、ScFv、ジスルフィドFvおよびdAb抗体断片はいずれも、大腸菌などの細菌、または酵母菌または哺乳動物系などの真核生物発現系において発現され、そこから分泌される可能性があり、したがって多量の前記断片の容易な生成を可能にする。
【0035】
本発明の化合物の標的特異的部分は、FabおよびF(ab')2、Fv分子、ジスルフィド結合Fv分子、ScFv分子およびシングルドメイン抗体(dAb)などのFab様分子からなる群から選択されるヒト化抗体の抗原結合断片を含むことが好ましい。
【0036】
標的特異的部分はFab分子またはF(ab')2分子を含むことがより好ましい。
【0037】
好ましい実施形態では、本発明の第1の態様の化合物は、配列番号1のヒトBC1重鎖可変領域を含む標的特異的部分を含む。
【0038】
【化1】
[配列番号1]
【0039】
本発明の第1の態様の化合物は、配列番号2のヒトBC1軽鎖可変領域を含む標的特異的部分を含むことが有利である。
【0040】
【化2】
[配列番号2]
【0041】
本発明の第1の態様の化合物は、配列番号1のヒトBC1重鎖可変領域、および配列番号2のヒトBC1軽鎖可変領域を含む、標的特異的部分を含むことが好都合である。
【0042】
他の好ましい実施形態では、標的特異的部分はCH1、CH2およびCH3免疫グロブリン定常ドメインなどの1つまたは複数の抗体定常領域を含む。この1つまたは複数の定常領域は、標的部分の可変領域と同じまたは異なる抗体由来のものであってよい。同様に本発明の化合物は、そのそれぞれが定常領域(この定常領域は同じまたは異なる親抗体由来のものであってよい)を含む、免疫グロブリン重鎖および免疫グロブリン軽鎖を含むことができる。
【0043】
1つまたは複数の抗体定常領域は、CH1ドメインを含むか、それからなることが好ましい。
【0044】
他の好ましい実施形態では、本発明の化合物は免疫グロブリンFc部分をさらに含む。Fc部分はヒトIgG1抗体に由来することが有利である。
【0045】
「Fc部分」によって本発明者らは、IgG重鎖定常領域のCH2およびCH3ドメインを含む抗体断片、すなわちIgG分子のパパインによる切断によって生成可能な断片と構造上同等な断片、またはそれと機能上同等なポリペプチドを意味する。
【0046】
前に詳細に述べたように、本発明の第1の態様の化合物は、IL-12、またはその機能性断片もしくは変異体(すなわち「IL-12部分」)を含むか、それらからなるエフェクター部分を含む。「機能性」断片または変異体によって本発明者らは、哺乳動物宿主中のTh1免疫応答、すなわち非投薬T細胞由来のTh1細胞の分化を刺激することができる断片または変異体の意味を含める。
【0047】
したがってエフェクター部分は、IL-12活性を有するポリペプチドを含むか、それらからなる。
【0048】
エフェクター部分は、ヒトインターロイキン-12、またはその機能性断片もしくは変異体を含むか、それらからなることが好ましい。
【0049】
エフェクター部分は、単鎖インターロイキン-12を含むか、それらからなる、例えば、IL-12p35ドメインおよびIL-12p40ドメインを含むか、それらからなることが好都合である。IL-12p35ドメインはジスルフィド結合によってIL-12p40ドメインと結合していることが好ましい。
【0050】
エフェクター部分は、以下のアミノ酸配列のIL-12p35ドメインを含むことが好ましい:
【0051】
【化3】
[配列番号3]
【0052】
エフェクター部分は、以下のアミノ酸配列のIL-12p40ドメインを含むことが好ましい:
【0053】
【化4】
[配列番号4]
【0054】
本発明の第1の態様の特に好ましい実施形態では、化合物は融合化合物または融合タンパク質であるか、それを含む。「融合化合物」によって本発明者らは、組換えDNA技法によって生成される1本のポリペプチド鎖中に含まれる、1つまたは複数の機能的に異なる部分を含む化合物を含める。例えば化合物は、重鎖が単鎖IL-12と融合した完全抗体を含むことができる。あるいは化合物は、切断型重鎖(すなわちFd鎖)が単鎖IL-12と融合した抗体のFabまたはF(ab')2断片を含むことができる。
【0055】
融合化合物の標的特異的部分とエフェクター部分は、融合していることが好ましい。これらの部分は直接融合させることができるか、(例えば、それらの部分の大きな柔軟性を互いに対して与える)リンカー配列を介して融合させることができる。
【0056】
リンカーは、アミノ酸配列ATATPGAA[配列番号5]を含むか、それらからなる突然変異したリンカー配列であることが適切である。
【0057】
あるいは、本発明の化合物の標的特異的部分とエフェクター部分は、O'Sullivan et al Anal.Biochem.(1979) 100、100〜108中に一般的に記載された方法などの、架橋ポリペプチドの従来の方法のいずれかによって1つに結合した別個の部分である。例えば、抗体部分はチオール基を用いて増大させることができ、酵素部分はこれらのチオール基と反応することができる二官能性物質、例えばヨード酢酸のN-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHIA)またはN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)と反応させることができる。例えばm-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステルを用いて得たアミドおよびチオエーテル結合は、一般にジスルフィド結合よりもin vivoでは安定している。
【0058】
好ましい実施形態では、化合物は配列番号6のポリペプチドを含む。
【0059】
ヒトIL-12p35と融合したBC1重鎖
【0060】
【化5】
[配列番号6]
【0061】
他の好ましい実施形態では、化合物は配列番号7のポリペプチドを含む。
【0062】
BC1軽鎖
【0063】
【化6】
[配列番号7]
【0064】
特に好ましい実施形態では、化合物は配列番号6のポリペプチドおよび配列番号7のポリペプチドを含む。
【0065】
化合物は、配列番号6のポリペプチドとジスルフィド結合によって結合した配列番号4のポリペプチドをさらに含むことが有利である。
【0066】
したがって本発明は、癌胎児性フィブロネクチンを対象とする抗体V領域、Fc部分、およびインターロイキンン-12部分を含む融合タンパク質を提供する。詳細には本発明は、インターロイキンン-12と融合した、癌胎児性フィブロネクチンと結合する抗体V領域を含む免疫グロブリン(Ig)融合タンパク質を提供する。本発明の好ましい実施形態では、抗体V領域はBC1抗体に由来する(Carnemolla et at.(1992)、J.Biol.Chem.267 : 24689〜24692 ; Mariani et al.(1997)、Cancer80 : 2378〜2384)。Fc部分はヒトIgG1に由来することが好ましい。
【0067】
好ましい実施形態では、融合タンパク質は配列番号6および7中に示すのと同様の抗体V領域、およびインターロイキンン-12部分を含む。IL-12部分は単鎖インターロイキンン-12であることが好ましい。
【0068】
本発明の予想外の特徴は、融合タンパク質が対応するBC1抗体単独よりはるかに強く、癌胎児性フィブロネクチンと結合することである。このような強い結合は癌を治療する際に有用である、何故なら強い結合は、癌胎児性フィブロネクチンに関するBC1抗体の親和性に基づいて予想されるより良いIL-12の腫瘍標的化をもたらすからである。強い結合は、細胞外マトリクスの要素などの、迅速に代謝回転しない抗原を標的化するのに非常に有利である。
【0069】
好ましい実施形態では、抗体定常領域、例えばCH1ドメインも使用する。図1は、抗体可変領域(ストライプ状の楕円形)、定常領域(白い楕円形)、IL-12p35サブユニット(小さな長方形)、IL-12p40サブユニット(大きな長方形)、抗体ヒンジ領域およびリンカー(太線)およびジスルフィド結合(細線)の幾つかの形状を示す。特に好ましい実施形態は、ジスルフィド結合によってp35と結合した重鎖およびp40のC末端と融合したp35を有する完全IgG型抗体(図1A)、リンカーによって結び付き、CH3ドメインに対するヒンジ領域、および重鎖のC末端と融合したp35、およびジスルフィド結合によってp35と結合したp40を介して結合した抗体V領域を有する「小体」(図1B)、ジスルフィド結合によって結合したV領域とp40と融合したp35を有するsFv(図1C)、およびジスルフィド結合によって結合したC領域とp40と融合したp35を有するFab(図1D)を含む。IL-12p35サブユニットも、V領域のN末端と結合することができる。IL-12p40サブユニットはジスルフィド結合を介して、あるいはリンカーを介してp35と結合することができ、いわゆる「単鎖IL-12」部分(scIL-12)を生成することができる。
【0070】
より好ましい実施形態では、ヒトIgG1の定常領域を有する完全BC1抗体を使用する。この分子の具体的な利点は、小体、Fab、およびsFv融合タンパク質において欠けている、ADCCなどのエフェクター機能をそれが有することである。
【0071】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様による化合物、あるいはその標的特異的部分、エフェクター部分あるいは1つまたは複数の要素ポリペプチド(例えば、BC1重鎖、BC1軽鎖、IL12p35およびp40サブユニットおよび/またはFc部分)をコードする核酸分子を提供する。「核酸分子」によって本発明者らは、DNA、cDNAおよびmRNA分子を含める。
【0072】
好ましい実施形態では、本発明の核酸分子は、配列番号8、9および10からなる群から選択される1つまたは複数のヌクレオチド配列を含む。
【0073】
huIL12p35サブユニットと融合したhuBC1重鎖(VHには下線を引き;p35配列は太字で示し;かつ大文字および小文字は、コードおよび非コード配列をそれぞれ表す):
【0074】
【化7】
[配列番号8]
【0075】
huBC1軽鎖(VLには下線を引き;大文字および小文字は、コードおよび非コード配列をそれぞれ表す)
【0076】
【化8】
[配列番号9]
【0077】
huIL12p40サブユニット(この構築体はp40mRNAのcDNAである。その原型シグナルペプチドをコードするDNAはイタリックで表し、これに成熟p40をコードするDNAが続く):
【0078】
【化9】
[配列番号10]
【0079】
あるいは核酸分子は、前に同定したヌクレオチド配列の縮重配列である(すなわち、それらは同じアミノ酸配列をコードする)ヌクレオチド配列を含む。
【0080】
核酸分子は、配列番号8のヌクレオチド配列を含むことが好ましい。
【0081】
核酸分子は、配列番号9のヌクレオチド配列を含むことが有利である。
【0082】
核酸分子は、配列番号8のヌクレオチド配列および配列番号9のヌクレオチド配列を含むことが好都合である。
【0083】
核酸分子は、配列番号10のヌクレオチド配列を含むことが適切である。
【0084】
本発明の他の態様は、本発明の第1の態様による化合物を作製する方法であって、前記方法が宿主細胞中で本発明の第2の態様に従い1つまたは複数の核酸分子を発現させること、およびそこから化合物を単離することを含む方法を提供する(実施例1参照)。
【0085】
本発明の化合物の2つの部分は、組換えDNA技法によって融合化合物として生成され、DNAの長さ部分は、互いに隣接しているかあるいは化合物の望ましい性質を害さないリンカーペプチドをコードする領域により隔てられた、本発明の化合物の2つの部分をコードするそれぞれの領域を含むことが好ましい。
【0086】
核酸を適切な宿主中で発現させて、本発明の化合物を含むポリペプチドを生成することができる。したがって、本発明の化合物またはその一部分をコードする核酸を知られている技法に従い使用し、本明細書に含まれる教示に鑑みて適切に改変して、発現ベクターを構築することができ、次いで発現ベクターを使用して、本発明の化合物の発現および生成に適した宿主細胞を形質転換させる。このような技法には、1984年4月3日にRutter et alに発行された米国特許第4,440,859号、1985年7月23日にWeissmanに発行された米国特許第4,530,901号、1986年4月15日にCrowlに発行された米国特許第4,582,800号、1987年6月30日にMark et alに発行された米国特許第4,677,063号、1987年7月7日にGoeddelに発行された米国特許第4,678,751号、1987年11月3日にItakura et alに発行された米国特許第4,704,362号、1987年12月1日にMurrayに発行された米国特許第4,710,463号、1988年7月12日にToole、Jr.et alに発行された米国特許第4,757,006号、1988年8月23日にGoeddel et alに発行された米国特許第4,766,075号、および1989年3月7日にStalkerに発行された米国特許第4,810,648号中に開示された技法があり、これらはいずれも参照により本明細書に組み込まれている。
【0087】
本発明の化合物が多量体である場合、その要素である鎖は1つの核酸分子または別々の核酸分子によってコードされ得る(共通の宿主細胞中あるいは異なる宿主細胞中で発現され、in vitroで構築される)。
【0088】
本発明の化合物またはその一部分をコードする核酸は、適切な宿主中に導入するために広くさまざまな他の核酸配列と接合させることができる。付随する核酸は宿主の性質、宿主中に核酸を導入する方法、およびエピソームの維持または組込みが望まれるかどうかに依存すると思われる。
【0089】
本発明の化合物の細胞毒性部分の発現が、それが発現される宿主細胞を殺傷することを防ぐためには、宿主細胞から発現される化合物(または一部分)の分泌を誘導することができるシグナル配列と本発明の第2の態様の核酸を連結させることが、必要とされる可能性があることは理解されよう。シグナル配列は、使用する宿主細胞の型に従い選択されると思われる。代表的なシグナル配列にはompAシグナル配列がある(例えばTakahara et a1、1985、J.Biol.Chem.260(5) : 2670〜2674を参照)。
【0090】
一般に核酸は、発現に関して適切な方向および正しい読み枠で、プラスミドなどの発現ベクター中に挿入される。必要な場合核酸は、所望の宿主により認識される適切な転写および翻訳制御調節ヌクレオチド配列と連結させることができるが、このような制御は発現ベクターにおいて一般に利用可能である。例えば、本発明の化合物をコードする核酸分子は、翻訳を増大させるためにKozakのコンセンサスリボソーム結合配列(GCCGCCACCなど)と連結させることができるか、これを含むことができる。
【0091】
次いでベクターは標準的技法によって宿主中に導入される。一般に、全ての宿主がベクターによって形質転換されるわけではない。したがって、形質転換された宿主細胞を選択することが必要であると思われる。1つの選択技法は、任意の必要な制御要素を有し、抗生物質耐性などの形質転換細胞において選択的な特性をコードする核酸配列を、発現ベクター中に取り込ませることを含む。あるいは、このような選択的な特性の遺伝子が他のベクター上に存在してよく、これを使用して所望の宿主細胞を同時形質転換する。
【0092】
本発明の組換え核酸によって形質転換させた宿主細胞は次いで、本明細書で開示する教示に鑑みて、充分な時間当業者に知られている適切な条件下において培養して、次いで回収することができるポリペプチドの発現を可能にする。
【0093】
細菌(例えば、大腸菌およびバシラスサチリス)、酵母菌(例えば、サッカロミセスセレビジエおよびピキアパストリス)、糸状菌(例えばアスペルギルス)、植物細胞、動物細胞(例えばCOS-1、COS-7、CHO、NIH3T3、NSOおよびBHK細胞)および昆虫細胞(例えば、ショウジョウバエ、SF9細胞)を含めた、多くの発現系が知られている。
【0094】
原核生物のレプリコンなどのレプリコンを含むベクターは、それらを用いて形質転換した大腸菌などの細菌宿主細胞中での遺伝子の発現(転写および翻訳)を誘導することができる原核生物のプロモーターなどの、適切なプロモーターも含むことができる。
【0095】
プロモーターは、RNAポリメラーゼの結合および転写の実施を可能にするDNA配列によって形成される発現制御要素である。代表的な細菌宿主と適合性があるプロモーター配列は典型的には、本発明のDNAセグメントを挿入するのに好都合な制限部位を含むプラスミドベクター中に与えられる。
【0096】
典型的な原核生物のベクタープラスミドはpUC18、pUC19、pBR322およびpBR329(Biorad Laboratories、Richmond、CA、USAから入手可能)、pTrc99AおよびpKK223-3(Pharmacia Piscataway、NJ、USAから入手可能)およびpET系(T7プロモーター、Novagen Ltd)である。
【0097】
典型的な哺乳動物細胞ベクタープラスミドは、Pharmacia、Piscataway、NJ、USAから入手可能なpSVLである。これらのベクターはSV40後期プロモーターを使用して、クローニングした遺伝子の発現を誘導し、最高レベルの発現はCOS-1細胞などのT抗原産生細胞中で見られる。
【0098】
誘導性哺乳動物発現ベクターの一例は、これもPharmaciaから入手可能なpMSGである。このベクターはマウス乳腺癌ウイルスの長い末端反復配列の糖質コルチコイド誘導性プロモーターを使用して、クローニングした遺伝子の発現を誘導する。
【0099】
有用な酵母菌プラスミドベクターはpRS403-406およびpRS413-416であり、これらは一般にStratagene Cloning Systems、La Jolla、CA92037、USAから入手可能である。プラスミドpRS403、pRS404、pRS405およびpRS406は酵母菌組込みプラスミド(YIp)であり、酵母菌の選択可能マーカーhis3、trp1、leu2およびura3を取り込む。プラスミドpRS413-416は酵母菌動原体プラスミド(YCp)である。
【0100】
ピキアなどの酵母菌細胞の形質転換用の他の有用なベクターには、2μのプラスミドpYX243(R and D Systems Limitedから入手可能)および組込みベクターpPICZシリーズ(Invitrogenから入手可能)がある。
【0101】
相補的粘着末端を介してDNAとベクターを動作可能に連結させるための、さまざまな方法が開発されてきている。例えば、相補的ホモポリマー部分(tract)を、ベクターDNAに挿入されるDNAセグメントに加えることができる。次いでベクターとDNAセグメントを相補的ホモポリマー尾部間の水素結合によって接合して、組換えDNA分子を形成する。
【0102】
1つまたは複数の制限部位を含む合成リンカーは、DNAセグメントとベクターを接合させる他の方法を与える。以前の記載と同様にエンドヌクレアーゼ制限酵素による消化によって生成したDNAセグメントを、その3'-5'-エキソヌクレアーゼ活性によって3'一本鎖末端を除去し、それらの重合活性によって窪んだ3'端を満たす酵素である、バクテリオファージT4DNAポリメラーゼまたは大腸菌DNAポリメラーゼIを用いて処理する。
【0103】
したがって、これらの活性の組合せによって平滑末端DNAセグメントが生じる。次いで平滑末端セグメントは、バクテリオファージT4DNAリガーゼなどの平滑末端DNA分子の連結を触媒することができる酵素の存在下で、多モル過剰のリンカー分子と共にインキュベートする。したがって、この反応の生成物は、その両端にポリマーリンカー配列を有するDNAセグメントである。次いでこれらのDNAセグメントは、適切な制限酵素を用いて切断し、DNAセグメントの末端と適合性がある末端を生成する酵素で切断された発現ベクターと連結させる。
【0104】
さまざまな制限エンドヌクレアーゼ部位を含む合成リンカーは、International Biotechnologies Inc、New Haven、CN、USAを含めた幾つかの供給源から市販されている。
【0105】
本発明の化合物またはその一部分をコードする核酸を改変するための望ましい方法は、Saiki et at (1988) Science239、487〜491による開示と同様のポリメラーゼ連鎖反応を使用することである。
【0106】
この方法では、酵素により増幅される核酸は、それ自体が増幅核酸に取り込まれた状態になる2つの特異的オリゴヌクレオチドプライマーの側面に位置する。前記特異的プライマーは、当分野で知られている方法を使用して発現ベクターにクローニングするために使用することができる、制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含むことができる。
【0107】
本発明を実施する際に有用であると企図される酵母菌の例示的な属は、Pichia、Saccharomyces、Kluyveromyces、Candida、Torulopsis、Hansenula、Schizosaccharomyces、Citeromyces、Pachysolen、Debaromyces、Metschunikowia、Rhodosporidium、Leucosporidium、Botryoascus、Sporidiobolus、Endomycopsisなどである。好ましい属は、Pichia、Saccharomyces、Kluyveromyces、YarrowiaおよびHansenulaからなる群から選択される属である。Saccharomycesの例はSaccharomyces cerevisiae、Saccharomyces italicusおよびSaccharomyces rouxiiである。Kluyveromycesの例はKluyveromyces fragilisおよびKluyveromyces lactisである。Hansenulaの例はHansenula polymorpha、Hansenula anomalaおよびHansenula capsulataである。Yarrowia lipolyticaは適切なYarrowia種の一例である。
【0108】
S.cerevisiaeを形質転換するための方法はEP251744、EP258067およびWO90/01063中で一般的に教示されており、これらはいずれも参照により本明細書に組み込まれている。
【0109】
S.cerevisiaeに適したプロモーターにはPGK1遺伝子、GAL1またはGAL10遺伝子、CYC1、PHO5、TRP1、ADH1、ADH2、グリセルアルデヒド-3リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、グルコキナーゼ、α-交配型因子フェロモン、a-交配型因子フェロモンの遺伝子と関係があるプロモーター、PRB1プロモーター、GUT2プロモーター、および5'制御領域の一部分と他のプロモーターの5'制御領域の一部分、または上流活性部位のハイブリッドを含むハイブリッドプロモーター(例えばEP-A-258067のプロモーター)がある。
【0110】
転写停止シグナルは、転写停止およびポリアデニル化に適したシグナルを含む、真核生物遺伝子の3'側面配列であることが好ましい。適切な3'側面配列は、例えば使用する発現制御配列と自然に連結した、すなわちプロモーターに対応し得る遺伝子の配列であってよい。あるいは、配列は異なるものであってよく、その場合S.cerevisiae AHD1遺伝子の停止シグナルが好ましい。
【0111】
本発明はさらに、本発明のポリヌクレオチドベクター構築体を用いて形質転換した宿主細胞に関する。宿主細胞は、原核生物または真核生物のいずれかであってよい。細菌細胞は好ましい原核生物宿主細胞であり、典型的には例えばBethesda Research Laboratories Inc.、Bethesda、MD、USAから入手可能な大腸菌菌株DH5、およびAmerican Type Culture Collection (ATCC) of Rockville、MD、USA(NoATCC31343)から入手可能なRR1などの大腸菌の菌株である。好ましい真核生物宿主細胞には、酵母菌および哺乳動物細胞、好ましくは脊椎動物細胞、例えばマウス、ラット、サルまたはヒト繊維芽細胞系由来の細胞などがある。好ましい真核生物宿主細胞には、NSO細胞、CCL61としてATCCから入手可能なチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、CRL1658としてATCCから入手可能なNIHスイスマウス胚細胞NIH/3T3、およびCRL1650またはWSO細胞としてATCCから入手可能なサル腎臓由来COS-1細胞がある。
【0112】
本発明の核酸構築体を用いた適切な宿主細胞の形質転換は、典型的には使用するベクターの型に依存する、よく知られている方法によって実施される。原核生物宿主細胞の形質転換に関しては、例えばCohen et al、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、69 : 2110 (1972) ;およびSambrook et al、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、ニューヨーク(1989)を参照のこと。酵母菌細胞の形質転換は、Sherman et al、Methods In Yeast Genetics、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor、ニューヨーク(1986)中に記載されている。Beggs、Nature、275 : 104〜109(1978)の方法も有用である。脊椎動物細胞に関しては、このような細胞をトランスフェクトする際に有用な試薬、例えばリン酸カルシウムおよびDEAE-デキストランまたはリポソーム配合物は、Stratagene Cloning Systems、またはLife Technologies Inc、Gaithersburg、MD20877、USAから入手可能である。
【0113】
首尾よく形質転換された細胞、すなわち本発明の核酸構築体を含む細胞は、よく知られている技法によって確認することができる。例えば、本発明の発現構築体の導入から生成した細胞を増殖させて、本発明のポリペプチドを生成することができる。Southern、J.Mol.Biol.、98 : 503 (1975)またはBerent et al、Biotech、3 : 208 (1985)によって記載された方法などの方法を使用して、細胞を採取し溶解させ、それらのDNA含有物をDNAの存在に関して調べることができる。あるいは上清中のタンパク質の存在を、以下に記載したのと同様に抗体を使用して検出することができる。
【0114】
組換え核酸の存在に関して直接アッセイすること以外に、組換え核酸がタンパク質の発現を誘導することができるときは、よく知られている免疫学的方法によって首尾よい形質転換を確認することができる。例えば、発現ベクターを用いて首尾よく形質転換された細胞は、適切な抗原性を示すタンパク質を生成する。形質転換されている疑いのある細胞のサンプルを採取し、適切な抗体を使用してタンパク質に関してアッセイする。
【0115】
したがって、形質転換された宿主細胞そのもの以外に、本発明は、栄養培地中のこれらの細胞の培養物、好ましくはモノクローナル(クローン的に均質な)培養物、またはモノクローナル培養物由来の培養物も企図する。培養物もタンパク質を含むことが好ましい。
【0116】
形質転換宿主細胞を培養するのに有用な栄養培地は当分野でよく知られており、幾つかの市販の供給源から得ることができる。
【0117】
本発明の第3の態様は、本発明の第2の態様による核酸を含むベクターを与える。
【0118】
本発明の第4の態様は、本発明の第3の態様によるベクターを含む宿主細胞を与える。
【0119】
宿主細胞は、NS/OまたはCHO細胞などの哺乳動物細胞であることが好ましい。
【0120】
本発明の化合物は、以下のステップ:Abx Mixed Resinカラムクロマトグラフィー、組換えタンパク質Aクロマトグラフィー、およびQ Sepharoseカラムクロマトグラフィー、次に配合緩衝液に緩衝液を交換するためのPellicon2クロスフローダイアフィルトレーションの幾つかまたは全てを順に使用して培養培地から精製することができる。ウイルス不活性化および除去ステップをこれらのステップに組み込むことができる。ウイルス不活性化および除去ステップは精製自体には必要とされないが、調節に関する考慮事項を満たすために使用される。
【0121】
本発明の化合物を生成するのに適した詳細な方法は、Gillies et al(参照により本明細書に組み込まれているWO99/29732)中に記載されている。他の適切な技法は、Molecular Cloning.:a Laboratory Manual : 3rd edition、Sambrook and Russell、2001、Cold Spring Harbor Laboratory Press中に記載されている。
【0122】
本発明の第5の態様は、本発明の第1の態様の化合物および薬剤として許容可能な担体を含む医薬組成物を与える。
【0123】
化合物、例えば融合タンパク質はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中、アルギニン、クエン酸、マンニトール、および/またはTween、あるいは他の標準的なタンパク質配合剤を含む緩衝液中に配合することができることが好ましい。
【0124】
組成物は、非経口投与に適していることが有利である。
【0125】
配合物は、活性化合物の一日用量または単位、一日用量未満またはその適切な分画を含む単位用量であることが好都合である。
【0126】
本発明の化合物は活性成分を含む薬剤配合物の形、場合によっては無毒の有機酸、または無機酸、または塩基、添加塩の形、薬剤として許容可能な剤形で通常は経口投与、あるいは任意の非経口経路によって投与する。治療する障害および患者、ならびに投与の経路に応じて、組成物はさまざまな用量で投与することができる。
【0127】
ヒトの療法では、本発明の化合物は単独で投与することができるが、一般には目的とする投与の経路および標準的薬剤実践に関して選択される適切な医薬賦形剤、希釈剤または担体と混合して投与する。
【0128】
例えば本発明の化合物は即効型、遅延型または徐放型用途の香味剤または着色剤を含むことができる、錠剤、カプセル、膣座剤、エリキシル剤、溶液または懸濁液の形で経口、頬側または舌下投与することができる。本発明の化合物は陰茎海綿体注射によって投与することもできる。
【0129】
このような錠剤は、微結晶性セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、第2リン酸カルシウムおよびグリシンなどの賦形剤、澱粉(好ましくはトウモロコシ、ジャガイモまたはタピオカ澱粉)、グリコールデンプンナトリウム、クロスカルメロースナトリウムおよび幾つかの複合シリケートなどの錠剤分解物質、ならびにポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシ-プロピルセルロース(HPC)、スクロース、ゼラチンおよびアカシアなどの粒状結合剤を含むことができる。さらに、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリルおよびタルクなどの潤滑剤を含むことができる。
【0130】
同様の型の固形組成物を、ゼラチンカプセル中の充填剤として使用することもできる。この点において好ましい賦形剤には、ラクトース、澱粉、セルロース、乳糖または高分子量ポリエチレングリコールがある。水性懸濁液および/またはエリキシル剤用に、本発明の化合物はさまざまな甘味剤または香味剤、着色物質または色素、乳化剤および/または懸濁剤、かつ水、エタノール、プロピレングリコールおよびグリセリン、およびこれらの組合せなどの希釈剤と組合せることができる。
【0131】
本発明の化合物は非経口的、例えば静脈内、動脈内、腹膜内、クモ膜下、心室内、基質内、頭蓋内、筋肉内または皮下に投与することもでき、あるいは本発明の化合物は注入技法によって投与することができる。本発明の化合物は、他の物質、例えば溶液を血液と等張にするのに充分な塩またはグルコースを含むことができる滅菌水溶液の形で使用するのが最良である。必要な場合、水溶液は適切に緩衝剤で処理しなければならない(好ましくは3〜9のpHに)。滅菌条件下での適切な非経口配合物の調製は、当業者によく知られている標準的な薬剤技法によって容易に行われる。
【0132】
非経口経投与に適した配合物には、配合物を目的のレシピエントの血液と等張にする抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤および溶質を含むことができる水性および非水性滅菌注射溶液;ならびに懸濁剤および増粘剤を含むことができる水性および非水性滅菌懸濁液がある。配合物は単位用量または多用量容器、例えば密封アンプルおよびバイアル中に存在することができ、使用の直前に滅菌液状担体、例えば注射水の添加のみを必要とする凍結-乾燥(凍結乾燥)状態で保存することができる。即席の注射溶液および懸濁液は、以前に記載された種類の滅菌粉末、顆粒および錠剤から調製することができる。
【0133】
医師は任意の個々の患者に最適であると思われる実際の用量を決定することができ、その用量は個々の患者の年齢、体重および応答と共に変わると思われる。実施例9中に記載する用量は、平均的な場合を例示するものである。当然ながら、これより高いかあるいは低い用量範囲に値する個々の場合が存在する可能性があり、それらは本発明の範囲内にある。
【0134】
本発明の第6の態様は、医薬品中に使用するための本発明の第1の態様による化合物を与える。
【0135】
本発明の第7の態様は、癌を有する患者を治療するための医薬品の調製における、本発明の第1の態様による化合物の使用を与える。
【0136】
本発明の第8の態様は、癌を有する患者を治療する方法であって、本発明の第1の態様による化合物を前記患者に投与することを含む方法を与える。
【0137】
原則として、本発明の化合物および組成物を使用して、イヌおよびネコなどのペットを含めた任意の哺乳動物、ならびにウシ、ウマ、ヒツジおよびブタなどの農業上重要な動物を治療することができる。
【0138】
しかしながら、患者はヒトであることが好ましい。
【0139】
本発明の化合物は、膠芽細胞腫などの固形腫瘍を治療するのに特に適している。他の好ましい徴候には卵巣、胃、結腸直腸および膵臓癌がある。
【0140】
ここで本発明を、以下の非制限的実施例を参照しながら詳細に記載する。
図面において、図2は構築体pdHL11-huBC1-M1-hup35を示す図である(実施例1参照)。以下の特徴を示す:
[表A]
図面において、図3は構築体pNeo-CMV-hup40を示す図である(実施例1参照)。以下の特徴を示す:
[表B]
【0141】
(実施例)
(実施例1-huBC1-huIL12融合タンパク質の生成)
I.huBC1-huIL12用の発現ベクターの構築
1.軽鎖の可変領域(VL)
ヒト化BC1抗体の軽鎖の可変領域(VL)をコードするDNAは、プラスミド、RKA.pMMR010の形で与えられた。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して、VLDNAを発現ベクターpdHL11に適合させた。正方向プライマーは配列5'-CTTAAGCGAAATTGTGTTGACGCAGTC-3'[配列番号11]を有し、この場合CTTAAGはAflII制限部位であり、GAAは成熟VLのN末端アミノ酸残基である。逆方向プライマーは配列5'-GGATCCACTTACGTTTGATCTCCAGCTTGG-3'[配列番号12]を有し、この場合、VLの3'端およびGGATCCとハイブリダイズした下線部分の配列が、VLスプライシングドナー部位の下流にBamHI制限部位を加える。
【0142】
マウス免疫グロブリン軽鎖遺伝子由来のゲノムのシグナルペプチド配列は、軽鎖と重鎖のhuBC1融合タンパク質の分泌用に使用した。Kozakのコンセンサス配列CCACCATGGは、ATGにおける翻訳開始に最適なリボソーム結合用に導入した[Kozak (1984) Nature 308 : 241]。これはコドンAAGからGAGへの翻訳開始後に最初のアミノ酸残基を突然変異させて、配列TCTAGACCACCATGGAG[配列番号13]を与えたことによって行い、この場合Kozakのコンセンサス配列は下線で示し、XbaI制限部位(TCTAGA)は5'端に位置する。
【0143】
シグナルペプチドの3'端において、-2アミノ酸残基(-1アミノ酸はシグナルペプチドのC末端残基である)をコードする遺伝子配列に、シグナルペプチドの端をコードするDNAがCTTAAGCであり、CTTAAGが作製されたAflII部位であるように、セリン残基からロイシン残基への(AGCからTTAへの)突然変異を起こさせた[Lo et al.(1998) Protein Engineering11 : 495]。したがって、シグナルペプチド配列は、開始コドン後の第一のアミノ酸残基における置換、および-2位置のアミノ酸残基における他の置換を含む。このシグナルペプチドは細胞内のシグナルペプチドの近くで切断され、分泌タンパク質中には出現しないので、これらの突然変異が抗体生成物の組成に影響を与えることはない。ゲノムのシグナルペプチド配列を含む450bpのXbaI-AflII断片は、VLをコードするAflII-BamHI断片と連結させてXbaI-BamHI断片を与え、次いでこれを、転写制御要素および免疫グロブリン定常領域配列を既に含むpdHL11発現ベクターに挿入した(以下参照)。
【0144】
2.重鎖の可変領域(VH)
ヒト化BC1抗体の重鎖の可変領域(VH)をコードするDNAは、プラスミドRHA.pGammalの形で得た。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して、VHDNAを発現ベクターpdHL11に適合させた。正方向プライマーは配列5'-CTTAAGCGAGGTGCAGCTGGTGCAGTC-3'[配列番号14]を有し、この場合CTTAAGはAflII制限部位であり、GAGは成熟VHのN末端アミノ酸残基である。逆方向プライマーは配列5'-AAGCTTACTTACCTGAGGAGACGGAGACC-3'[配列番号15]を有し、この場合、VHの3'端およびAAGCTTとハイブリダイズした下線部分の配列が、VHスプライシングドナー部位の下流にHindIII制限部位を加える。
【0145】
VHDNAとの連結前に、ゲノムのシグナルペプチド配列を含む450bpのXbaI-AflII断片のXbaI部位を、リンカーによる連結によりXhoI部位に転換して、CCTCGAGGがXhoIリンカーの配列であり、CTAGAがDNAポリメラーゼのKlenow断片を充填することによって平滑になったXbaI接着末端であり、かつCCACCATGGがKozakのコンセンサス配列である、配列CCTCGAGGCTAGACCACCATGGAG[配列番号16]を与えた。ゲノムリーダー配列を含むXhoI-AflII制限断片は、VH遺伝子を含むAflII-HindIII断片と連結させ、生成したXhoI-HindIII断片は、次いで転写制御要素および免疫グロブリン定常領域配列を既に含むpdHL11発現ベクターに挿入した(以下参照)。
【0146】
3.ヒト定常領域
軽鎖構築体はヒトkappa鎖遺伝子の定常領域を使用し、重鎖構築体はヒトガンマ-1鎖の定常領域を使用する。CH3ドメインをコードする野生型DNA配列中の翻訳停止コドンの280bp上流に位置する、SmaI制限部位が存在する。このSmaI部位は、サイレント突然変異(TCCからTCA)の導入によって破壊した。他のサイレント突然変異を停止コドンの10bp上流に導入して、新たなSmaI部位を含む配列CCCGGGTAAA(停止)[配列番号17]を作製した[Lo et al.(1998) Protein Engineering11 : 495]。ここでこのSmaI部位はpdHL11発現ベクター中に特有のものであり、抗体-サイトカイン融合タンパク質を作製するための融合接合部として使用する。
【0147】
4.ヒトIL-12のp35およびp40サブユニットをコードするcDNA
ヒトIL-12のp35およびp40サブユニットのcDNAを、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用してヒト末梢血単核球(PBMC)からクローニングした。第一鎖cDNAは、オリゴdTプライマーおよび逆転写酵素を使用して合成した。cDNA産物はPCR用の鋳型として使用した。p35サブユニット用に、センスプライマーは配列5'-CCAGAAAGCAAGAGACCAGAG-3'[配列番号18]を有し、アンチセンスプライマーは配列5'-GGAGGGACCTCGAGTTTTAGGAAGCATTCAG-3'[配列番号19]を有する。センスプライマーはXmaI部位のすぐ上流のp35メッセージの5'非翻訳領域中の配列に由来し、一方アンチセンスプライマーは翻訳停止コドン、その直後に定方向的クローニング用のXhoI部位をコードする。p40サブユニットcDNA用のプライマーは、センスプライマー用には5'-CTCCGTCCTGTCTAGAGCAAGATGTGTC-3'[配列番号20]、およびアンチセンスプライマー用には5'-GCTTCTCGAGAACCTAACTGCAGGGCACAG-3'[配列番号21]であった。センスプライマーは特有のXbaI部位を翻訳開始部位の上流に加え、一方アンチセンスプライマーはXhoI部位を翻訳停止コドンの下流に加える。
【0148】
5.huBC1-H鎖-ヒトp35DNAの構築
クローニングしたp35cDNAは、配列を確認した後に、以下のような融合タンパク質としての発現に適合させた。融合接合部において、CH3のC末端アミノ酸残基はリシンであり、成熟p35のN末端残基はアルギニンである。この2つの塩基性残基との融合接合部におけるタンパク質分解を最小にするために、この両方をアラニンに突然変異させ、これはIL2イムノサイトカインの場合、血清半減期を延長させることが示されてきている[Gillies et al.(2002) Clin.Cancer Res.8:210]。融合接合部を再構築するために、p35の成熟N末端のわずか11塩基対(bp)下流に好都合なBalI部位が存在する。したがって、センス鎖5'-CCGGGCGCCGCAAACCTCCCCGTGG-3'[配列番号22]およびアンチセンス鎖5'-CCACGGGGAGGTTTGCGGCGC-3'[配列番号23]からなり、GCCGCAが2つのアラニン置換基を示すXmaI-BalIオリゴヌクレオチドリンカーを合成し、p35サブユニットの残り部分をコードするBalI-XhoI制限断片と連結させた。生成したXmaI-XhoI断片は、次いでpdHL11発現ベクター中の特有のXmaI部位と連結させ、CH3-p35融合接合部を形成した。この接合部におけるペプチド配列、AAが2つのアラニン置換基であるLSLSPGAANLPV[SEQ[配列番号24]は、新規でおそらく免疫原性がある。実際それは、脱免疫処置と呼ばれるBiovationの技術に基づいてLSLS残基をATATに突然変異させることにより除去することができると思われる、考えられるTヘルパー細胞のエピトープを含んでいた。生成した脱免疫融合接合部の配列はM1と呼ぶ。したがってhuBC1-H鎖-M1-hup35DNAは、シグナルペプチド-VHをコードするXhoI-HindIII断片、脱免疫接合部を有するゲノムのヒトIgG1H鎖定常領域をコードするHindIII-XmaI断片、およびp35サブユニットをコードするXmaI-XhoI断片からなる。
【0149】
6.発現ベクターpdHL11-huBC1-hup35
発現ベクターpdHL11は、以前に記載されたpdHL7に由来する(Gllies et al.(1998) J.Immunol.160 : 6195)。pdHL7中と同様に、pdHL11中のL鎖とH鎖の2つの転写単位は、CMVエンハンサー-プロモーターを含む[Boshart et al.(1985) Cell41 : 521〜530]。CMVエンハンサー-プロモーターのDNAは、市販のpcDNAI(Invitrogen Corp、サンディエゴ、CA)のAflII-HindIII断片から得た。3'端では、L鎖はヒト免疫グロブリンkappa鎖遺伝子の3'非翻訳領域およびポリアデニル化シグナルを使用し、H鎖はSV40後期領域の3'非翻訳領域およびポリアデニル化シグナルを使用する。
【0150】
pdHL7とpdHL11の間の主な違いは、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)選択マーカーの転写単位にある。この転写単位のSV40エンハンサーは、以下のようにpdHL11において破壊した。SV40エンハンサー/プロモーター中には2つの72bpの反復配列が存在し、それぞれ72bp内にSphI制限部位が存在する。オリゴヌクレオチドリンカー-アダプターを介したエンハンサーのSalI部位5'と末端SphI部位の連結は、2つの72bpの反復配列から120bpの欠失をもたらした。このようなエンハンサー無しのプロモーターは、DHFR選択マーカーの一層低い発現レベルを与えるはずである。これは理論上、より少数の安定的にトランスフェクトされた細胞のクローンを生成するはずであり、これらのクローンは薬剤淘汰を生き延びるために、充分なDHFRがエンハンサー無しのプロモーターから発現されるように染色体の活性転写領域中に組み込まれた、プラスミドを有すると思われる。完全に機能的なエンハンサーおよびプロモーターによって働く当該の遺伝子は、この活性転写領域において一層高いレベルで発現されるはずである。さらに、この弱力化転写単位の方向は、L鎖のCMVエンハンサーがDHFRの発現用の末端SV40プロモーターに直接的な影響を与えることができないように、pdHL11中では逆になった。
【0151】
構築体pdHL11-huBC1-M1-hup35は、制限エンドヌクレアーゼによる消化によって広くマッピングした。LおよびH鎖全体のコード領域は完全に塩基配列決定した。その顕著な特徴は図2中に示す。
【0152】
7.hup40サブユニット用の発現ベクター
完全なオープンリーディングフレームを含むクローニングしたp40cDNAは、配列を確認した後に、XbaI-XhoI断片として別の発現ベクターに連結させた。この発現ベクターpNeo-CMV-hup40は、ネオマイシン類似体G418を使用するトランスフェクト細胞の選択用にネオマイシン耐性遺伝子を含む。p40の発現はCMVエンハンサー-プロモーターの制御下にあり、ネズミkappaポリアデニル化シグナルを利用する。
【0153】
構築体pNeo-CMV-hup40は、制限エンドヌクレアーゼによる消化によって広くマッピングした。その顕著な特徴は図3中に示す。
【0154】
II.huBC1-huIL12のDNAおよびタンパク質配列
1.huBC1-huIL12の軽鎖のペプチドおよびDNA配列
ヒト化BC1-huIL12の分泌軽鎖のペプチド配列は以下の通りである(VLには下線を引く):
【0155】
【化10】
[配列番号7]
【0156】
翻訳開始コドンATGから始まり停止コドンTAGまでの、軽鎖構築体のDNA配列を以下に与える(VLには下線を引き;大文字および小文字は、コードおよび非コード配列をそれぞれ表す):
【0157】
【化11】
[配列番号9]
【0158】
2.huBC1-huIL12の重鎖のペプチドおよびDNA配列
分泌重鎖huBC1-hup35のペプチド配列は以下の通りである(VHには下線を引き、脱免疫M1接合部はイタリックで表し、およびヒトp35は太字で表す):
【0159】
【化12】
[配列番号6]
【0160】
翻訳開始コドンATGから始まり停止コドンTAAまでの、重鎖huBC1-hup35構築体のDNA配列を以下に与える(VHには下線を引き;p35配列は太字で表し;大文字および小文字は、コードおよび非コード配列をそれぞれ表す):
【0161】
【化13】
[配列番号8]
【0162】
3.p40サブユニットのペプチドおよびDNA配列
分泌ヒトp40サブユニットのペプチド配列は以下の通りである:
【0163】
【化14】
[配列番号4]
【0164】
翻訳開始コドンATGから始まり停止コドンTAGまでの、p40構築体のDNA配列を以下に与える(この構築体はp40mRNAのcDNAである。その原型シグナルペプチドをコードするDNAはイタリックで表し、これに成熟p40をコードするDNAが続く):
【0165】
【化15】
[配列番号10]
【0166】
(実施例2-結合特性(試験I))
表面プラズモン共鳴および免疫染色実験を行って、本発明の例示的なBC1-IL12融合タンパク質と癌胎児性フィブロネクチンの結合を特徴付けた。
【0167】
BC1-IL12融合タンパク質とその標的抗原の結合の特徴付けの工程中、この融合タンパク質は、対応するBC1抗体自体よりもその標的と強く結合したことが分かった。例えば、BC1およびBC1-IL12とヒトフィブロネクチンドメイン7、ED-B、8、および9を含むポリペプチドの結合を、表面プラズモン共鳴法を使用して測定した。表1は2つの実験の結果を要約する。
【0168】
【表1】
【0169】
これらの結果は、huBC1-IL12とその標的抗原の結合は、対応するhuBC1抗体単独より少なくとも10倍強い、最も考えられるのは約16倍強いことを示す。
【0170】
表面プラズモン共鳴試験の結果を確認するために、標準的手順に従いU87MG皮下腫瘍を免疫無防備状態のSCIDCB17マウスにおいて生成させ、腫瘍切片はhuBC1抗体およびhuBC1-M12融合タンパク質を用いて免疫染色した。huBC1-IL12融合タンパク質を用いた染色の強度は、huBC1抗体を用いた強度よりはるかに大きかったことが分かった(データは示さず)。
【0171】
(実施例3-結合特性(試験II))
導入部
表面プラズモン共鳴(SPR)技術を使用して、抗原結合の特異性(すなわち、組換え癌胎児性フィブロネクチンFN7B89のみの認識)を実証し、ネズミおよびヒトBC1抗体およびBC1-IL12イムノサイトカインに関する動態速度定数/親和性値を測定/比較した。全ての測定試薬およびソフトウェアはBiocoreによって与えられた(試薬およびソフトウェアのリストに関する付録を参照のこと)。
【0172】
アッセイ
ED-B陰性(FN789)組換えフィブロネクチンとED-B陽性(FN7B89)組換えフィブロネクチン(以下の「配列情報」を参照)を、標準的なアミン結合プロトコルおよびBiacoreによって与えられた結合試薬を使用して、CM5センサーチップの2つの異なるフローセル上で結合させた。他の2つのフローセルは空の状態にして、陰性対照表面を使用した。抗原特異性を実証するために、さまざまなBC1抗体およびイムノサイトカインを、ランニングバッファー、HEPES緩衝生理食塩水(HBS-EP)中に500nMに希釈した。これらのサンプルはフィブロネクチン結合表面に5分間注入し、結合曲線を比較した。ランニングバッファー(HBS-EP)は陰性対照としてそれぞれの表面に注入して、基底シグナルを示した。チップ表面は、0.1MのHCl、pH1.5の1分間のパルス、次に0.1MのH3PO4の第2の1分間のパルスによって再生した。
【0173】
動態分析用に、ED-B陽性組換えフィブロネクチン(FN7B89)のみをチップに結合させた。3つの異なる濃度の物質を、3つの異なるフローセルと結合させた。第4のフローセルは非結合状態にし、陰性対照として使用した。4〜5つの濃度のそれぞれの分子を、1000nM〜125nM(muBC1)、200nM〜25nM(huBC1)および100nM〜6.25nM(ネズミおよびヒトBC1-IL12)の範囲の二重の連続希釈を実施することによって調製した。連続希釈は、ランニングバッファー(HBS-EP)中において三連で行った。それぞれの希釈液は5分間(会合)、次にランニングバッファーを5分間(解離)10TL/分の流速で注入した。フローセルは、前に記載した抗原特異性の実験で行ったのと同様に再生した。曲線の当てはめは、Biacoreによって与えられたソフトウェアを使用して行った。曲線の当てはめの具体的な詳細に関する付録を参照のこと。
【0174】
結果
さまざまなBC1分子が組換え癌胎児性フィブロネクチン、FN7B89と異なる強度で結合するが、組換え「正常」フィブロネクチン、FN789とは全く結合しない(図4参照)。これは試験した全てのBC1分子において、抗体とイムノサイトカインの両方が(原型muBC1と比較して)それらの抗原特異性を有していたことを示す。これらのデータは、抗原結合の動態は分子ごとに変わることも実証する。
【0175】
動態分析は、速度定数は分子間で著しく異なることを実証する(表2参照)。
【0176】
【表2】
【0177】
さらにBC1-IL12イムノサイトカインは、ネズミまたはヒト抗体よりはるかに高いFN7B89に関する親和性を有する。速度定数の違いにもかかわらず、huBC-1muIL12とhuBC1-huIL12はそれらの抗原に関してほぼ同じ結合親和性を有する。これらのデータは、BC1抗体のヒト化、およびその後のBC1-IL12イムノサイトカインの生成は、組換え癌胎児性フィブロネクチンに関して増大した親和性を有する分子をもたらしたことを示す。
【0178】
結論
全てのBC1分子が組換え癌胎児性フィブロネクチン、FN7B89と特異的に結合し、hyBC-huIL12イムノサイトカインの構築体は、抗原特異性の消失をもたらさなかったことが示される。BC1ネズミ抗体のヒト化は、増大した結合親和性を有する分子をもたらした。親和性のこの増大は、有意に速いオンレートによるものである。このヒト化抗体は、そのネズミ相当物より約34倍速くその抗原と結合する。しかしながら、ヒト化は負の影響も有する。huBC1のオフレートはmuBC1より約5倍速い。BC1-IL12イムノサイトカインを作製するために抗体にILI2を加えることは、これを相殺するのを手助けし、muBC1から見られたのと同様のオフレートをもたらす。In vitroにおいてhuBC1-hulL12は、in vivoで強力な腫瘍標的分子である可能性を有する高親和性イムノサイトカインである。
【0179】
配列情報
(a)フィブロネクチン789断片
遺伝子座 FN789.DNA、1126bpのmRNA、PRI 01-OCT-1999
定義 pQE12(pAS32)中のフィブロネクチンドメイン789のヒトmRNA(ED-B無し)
NID g31396およびpQE12(Qiagen)に由来。
バージョン X02761.1 GI:31396
キーワード 可変スプライシング;フィブロネクチン。
供給源 ヒト
生物 ホモサピエンス
真核生物;後生動物;脊索動物門;有頭動物;脊椎動物門;哺乳類;
真獣類;霊長類;狭鼻類;ヒト科;ホモ。
CDS <208..1068
/生成物="FnMRGS-789-HHHHHH"
/翻訳="
【0180】
【化16】
[配列番号25]
【0181】
注釈1:残基1〜207は、Qiagenプロモータープライマー(CCCGAAAAGTGCCACCTG)由来またはこれを含むpQE配列である。残基1069〜1126は、Qiagen逆方向プライマー配列(GTTCTGAGGTCATTACTGG)用のヘキサ-ヒスチジンタグの末端由来のpQE12配列である。フィブロネクチン由来配列(すなわちMRGS無し、かつヘキサ-ヒスチジンタグは小文字である)。
【0182】
注釈2:コード配列は突然変異、P8Qの変化をもたらすCC(230)A>CA(230)A、T27Aの変化をもたらすA(286)CA>G(286)CA、およびサイレントS150S変化をもたらすTCA(657)>TCG(657)を有することに留意されたい。
塩基数 319a 297c 226g 284t
起源
【0183】
【化17】
[配列番号26]
【0184】
(b)フィブロネクチン7B89断片
遺伝子座 FN7B89.DNA、1399bpのmRNA、PRI 01-OCT-1999
定義 pQE12(pAS33)中のフィブロネクチンドメイン7B89のヒトmRNA
NID g31396およびpQE12(Qiagen)に由来。
バージョン X02761.1 GI:31396
キーワード 可変スプライシング;フィブロネクチン。
供給源 ヒト
生物 ホモサピエンス
真核生物;後生動物;脊索動物門;有頭動物;脊椎動物門;哺乳類;
真獣類;霊長類;狭鼻類;ヒト科;ホモ。
CDS <208..1341
/生成物="FnMRGS-7B89-HHHHHH"
/翻訳="
【0185】
【化18】
[配列番号27]
【0186】
注釈1:残基1〜207は、Qiagenプロモータープライマー(CCCGAAAAGTGCCACCTG)由来またはこれを含むpQE配列である。残基1342〜1399は、Qiagen逆方向プライマー配列(GTTCTGAGGTCATTACTGG)用のヘキサ-ヒスチジンタグの末端由来のpQE12配列である。フィブロネクチン由来配列(すなわちMRGS無し、かつヘキサ-ヒスチジンタグは小文字である)。
【0187】
注釈2:コード配列は突然変異、P8Qの変化をもたらすCC(230)A>CA(230)A、T27Aの変化をもたらすA(286)CA>G(286)CA、およびサイレントS241S変化をもたらすTCA(930)>TCG(930)を有することに留意されたい。
塩基数 390a 368c 290g 351t
起源
【0188】
【化19】
[配列番号28]
【0189】
物質および方法
1.物質:Biacore AB、Uppsala
カタログ番号およびウェブサイト上で入手可能な接触情報:
www.biacore.com
Biacore2000
(機器を動かす)BIA制御ソフトウェア
BIA評価ソフトウェア(データ分析用)
SeniorチップCM5(保証等級)
HBS-EP
アミン結合用キット
【0190】
2.動態パラメータ:BIA評価において選択した適合パラメータ
曲線の当てはめ=二価(分析物は抗体である)
注入開始=0秒
会合=30〜270秒(4分)
注入停止=300秒
解離=330〜600(4.5分)
【0191】
(実施例4-In vitroでの癌療法の有効性の試験)
癌の治療におけるBCI-M12融合タンパク質の有用性を確認するために、標準的手順(実施例1および参照により本明細書に組み込まれているGillies et al、WO99/29732を参照)に従い、huBC1-muIL12融合タンパク質を構築し発現させた。ヒトIL-12はネズミIL-12受容体によって認識されないので、このタンパク質はネズミIL-12を使用した。
【0192】
約140立方ミリメートルの体積のU87MG膠芽細胞腫腫瘍を有するSCIDCB17マウスを、表3中に示すようにhuBC1またはhuBC1-IL12のいずれかで治療した。
【0193】
【表3】
【0194】
(実施例5-マウスの腫瘍モデルにおけるhuBC1-g1-muIL12の有効性)
1.導入部
目的は、マウスの異なる腫瘍モデルにおけるhuBC1-IL12の有効性を測定することである。huBC1(ヒト化BC1抗体)は、血管新生腫瘍の血管新生部分の内皮下細胞外マトリクス(ECM)中に存在するヒトフィブロネクチンイソ型、B-FNを標的化する。B-FNは優れた腫瘍マーカーである、何故ならそれは癌胎児性であり、血管形成と関係があり、かつ正常成体組織中で検出不能だからである。huBC-1はヒトB-FNのみを認識し、ネズミB-FNとは交差反応しないので、重症複合免疫不全(SCID)マウスおよびヌードマウスにおけるヒト腫瘍細胞と関係がある異種腫瘍モデルを、前臨床試験用に使用した。さらにIL12は種特異的なので、ヒト目的用のhuBC1-huIL12(ヒト化BC1抗体-ヒトIL12融合タンパク質)は、マウス中では働かない。したがって本発明者らは、ネズミモデルにおける評価用の代理薬剤候補としてhuBC1-ネズミIL12を生成した。
【0195】
2.物質および方法
2.1 マウス系統
SCIDCB17およびヌードマウスは、Taconic、Charles River、and Jackson Lab
から購入した。
【0196】
2.2 腫瘍細胞系
ヒト前立腺癌PC3mm2は、Scripps Research InstituteのDr.Ralph Reisfeldからの贈呈品であった。ヒト星状細胞種U-87MG、ヒト表皮癌A431およびヒト結腸癌HT29はAmerican Type Culture Collectionから得た。
【0197】
2.3 タンパク質
huBC1-g1-muIL12はhuBC1-g1-M1-muIL12と同じである。それは、ヒトg1定常領域を有するヒト化BC1抗体とネズミIL-12の融合タンパク質であり、M1は脱免疫融合接合部である(前の実施例1参照)。
【0198】
huBC1-g1-muIL12は、huBC1-huIL12と同じ方法で生成した(前の実施例1参照)、ただしmup40およびmup35は、それぞれhup40およびhup35に交換した。
【0199】
3.実験の設計、投与スケジュールおよび評価
3.1 SCIDCB17マウスにおけるU-87MG皮下モデル
02-23 SCIDCB17マウスにおける皮下モデルに対するヒトU-87MG星状細胞種細胞中のhuBC1-g1-M1-muIL12の影響
【0200】
マウス:
7週齢のSCIDCB17マウス、オス
【0201】
腫瘍注射:
プロトコルに従い、SCIDCB17マウスの皮下背部、近位の正中線に、0.1mlのPBS中に4×106個の生命力のあるU-87MG腫瘍細胞を注射する。
【0202】
群および治療:
腫瘍の大きさが約100mm3に達したとき、治療を開始する。マウスは、等しい平均値および範囲の腫瘍体積を有する5群(n=8)のマウスに選別する:
1.PBS 0.2ml、静脈内注射、第0〜8日
2.huBC1-g1-M1-MuIL12 20μg、静脈内注射、第0〜8日
3.huBC1-g1-M1-MuIL12 5μg、静脈内注射、第0〜8日
4.huBC1-g1-M1-MuIL12 20μg、静脈内注射、一日おき、合計12回投与
5.huBC1Ab 0.5mg、腹膜内注射、第0日および第4日(3匹のマウスのみ)
【0203】
治療評価:
腫瘍の大きさを1週間に2回測定する。
式、幅×長さ×高さ×0.5236を使用して、腫瘍体積を決定する。
5000mm3を超える腫瘍の大きさを有する、任意のマウスを殺傷する。
適切な時間地点でT/C比(治療した腫瘍体積と対照腫瘍体積の比)を計算する。
【0204】
3.2 SCIDCB17マウスにおけるA431皮下モデル
02-37 SCIDCB17マウスにおけるA431皮下モデルに対するBC1-g1-M1-muIL12の影響
【0205】
マウス:
8週齢のSCIDCB17マウス、オス
【0206】
腫瘍注射:
プロトコルに従い、SCIDCB17マウスの皮下背部、近位の正中線に、0.1mlのPBS中に1×106個の生命力のあるA431腫瘍細胞を注射する。
【0207】
群および治療:
腫瘍の大きさが〜100mm3に達したとき、治療を開始する。マウスは、等しい平均値および範囲の腫瘍体積を有する2群(n=8)のマウスに選別する:
1.PBS 0.2ml、静脈内注射、第0〜7日
2.huBC1-muIL12 20μg、静脈内注射、第0〜7日
【0208】
評価:
腫瘍の大きさを1週間に2回測定する。
式、幅×長さ×高さ×0.5236を使用して、腫瘍体積を決定する。
5000mm3を超える腫瘍の大きさを有する、任意のマウスを殺傷する。
適切な時間地点でT/C比(治療した腫瘍体積と対照腫瘍体積の比)を計算する。
【0209】
3.3 SCIDCB17マウスにおけるPC3mm2皮下モデル
02-44 SCIDCB17マウスにおけるPC3mm2皮下モデルに対するBC1-g1-M1-muIL12の影響
【0210】
マウス:
8週齢のSCIDCB17マウス、オス
【0211】
腫瘍注射:
プロトコルに従い、SCIDCB17マウスの皮下背部、近位の正中線に、0.1mlのPBS中に2×106個の生命力のあるPC3mm2細胞を注射する。
【0212】
群および治療:
腫瘍の大きさが約100mm3に達したとき、治療を開始する。マウスは、等しい平均値および範囲の腫瘍体積を有する2群(n=7)のマウスに選別する:
1.PBS 0.2ml、静脈内注射、第0〜6日
2.BC1-g1-muIL12 20μg、静脈内注射、第0〜6日
【0213】
評価:
腫瘍の大きさを1週間に2回測定する。
式、幅×長さ×高さ×0.5236を使用して、腫瘍体積を決定する。
5000mm3を超える腫瘍の大きさを有する、任意のマウスを殺傷する。
適切な時間地点でT/C比(治療した腫瘍体積と対照腫瘍体積の比)を計算する。
【0214】
3.4 ヌードマウスにおけるHT-29皮下モデル
02-70 ヌードマウスにおけるHT-29皮下モデルに対するhuBC1-g1-M1-muIL12の影響
【0215】
マウス:
6〜7週齢のヌードマウス(nu/nu)、オス
【0216】
腫瘍注射:
プロトコルに従い、ヌードマウスの皮下背部、近位の正中線に、0.1mlのPBS中に1×106個の生命力のあるHT-29腫瘍細胞を注射する。
【0217】
群および治療:
腫瘍の大きさが約100mm3に達したとき、治療を開始する。マウスは、等しい平均値および範囲の腫瘍体積を有する2群(n=5)のマウスに選別する:
1.PBS 0.2ml、静脈内注射、第0〜4日
2.huBC1-g1-muIL12 20μg、静脈内注射、第0〜4日
【0218】
評価:
腫瘍の大きさを1週間に2回測定する。
式、幅2×長さ×0.5236を使用して、腫瘍体積を決定する。
5000mm3を超える腫瘍の大きさを有する、任意のマウスを殺傷する。
適切な時間地点でT/C比(治療した腫瘍体積と対照腫瘍体積の比)を計算する。
【0219】
3.5 SCIDCB17マウスにおけるPC3mm2肺転移モデル
03-11 SCIDCB17マウスにおけるPC3mm2肺転移モデルに対するBC1-g1-M1-muIL12の影響
【0220】
マウス:
8週齢のSCIDCB17マウス、オス
【0221】
腫瘍注射:
0.3mlのPBS中に2×106個の生命力のあるPC3mm2の単細胞を、第0日にマウスに静脈内注射する。
【0222】
群(n=8)および治療:
1.PBS 0.2ml、静脈内注射、第11〜15日
2.BC1-g1-M1-muIL12 16μg、静脈内注射、第11〜15日
3.BC1-g1-M1-muIL12 8μg、静脈内注射、第11〜15日
【0223】
終了:
第28日に、あるいは対照マウスが疾患状態になったときに、マウスを殺傷する。
肺を除去し、それらをブアン溶液中に固定する。
肺重量および体重を測定する。
肺転移を記録する。
他の器官およびリンパ節における転移を調べ記録する。
【0224】
4.結果
4.1 免疫欠如SCIDCB17マウスにおけるU-87MG皮下モデル
最初に本発明者らは、この腫瘍細胞系での高レベルのB-FN発現のために選択したヒト星状細胞種U-87MGを使用して、皮下腫瘍モデルを確立しなければならなかった(Marian et al、1997、Cancer80 : 2378)。滴定を行って、最適な腫瘍増殖のために注射する細胞数を決定した。異なる数の生命力のある細胞(1〜6×106個)を、それぞれのマウスの背部に注射して皮膚腫瘍を形成させ、それらの増殖率を調べた(図5a)。興味深いことに、注射した細胞数とは無関係に、腫瘍の増殖率は約3週間一定状態であり、その後はいずれも急速に増大した。
【0225】
その後の実験用に、4×106個の生命力のある細胞をそれぞれのマウスの背部に注射した。6日後、平均的な腫瘍の大きさは約135mm3であり、このとき治療を開始した(第0日)。2群のマウスを、5または20μgのhuBC1-mulL12の8日連続の1日1回の静脈内投与で治療した。第3群には、合計12回1日おきに静脈内に20μgのhuBC1-mulL12を与えた。比較用に第4群のマウスには、第0日および第4日に腹膜内に0.5mgのhuBC1抗体を与えた。これら4つの治療群およびPBSを与えた対照群の結果は、図5b中に示す。PBS対照群中の腫瘍は第19日までに430mm3にゆっくりと増殖し、このときまでに腫瘍は指数関数的増殖に変わり、第35日までに5627mm3の平均的な大きさに達した。抗体による治療は、腫瘍の増殖に対して全く影響がなかった。huBC1-mulL12の異なる養生法による治療は、この免疫欠如マウスモデルにおいて約3週間有効であった。第23日までに、1000mm3を超えたPBS対照群と比較して、1日1回20μgの用量で8回治療した群の平均的な腫瘍の大きさは約446mm3であり、80μgの用量を与えた2群の平均的な腫瘍の大きさは約380mm3であった。しかしながら治療は、第23日から第35日までの間の約4日間までの指数関数的増殖期のみを遅らせ、3つの群全てにおける腫瘍は、PBS治療群と同様の増殖率で指数関数的に増殖した。
【0226】
表4は、異なる日数でのそれぞれの群の平均的な腫瘍体積(mm3単位)を示す。
【0227】
【表4】
【0228】
4.2 SCIDマウスにおけるA431皮下モデル
それぞれ20μgのhuBC1-mulL12を7日連続1日1回静脈内注射する1サイクル治療は、SCIDマウスにおけるヒトメラノーマA431皮下モデルで有効であり、第14日までに0.31のT/C比および第25日までに0.26のT/C比を得た(図6参照)。
【0229】
表5は、異なる日数でのそれぞれの群の平均的な腫瘍体積(mm3単位)を示す。
【0230】
【表5】
【0231】
4.3 SCIDマウスにおけるPC3mm2皮下モデル
それぞれ20μgのhuBC1-mulL12を7日連続1日1回静脈内注射する1サイクル治療は、SCIDマウスにおけるヒト前立腺癌PC3mm2皮下モデルで有効であり、第15日までに0.34のT/C比および第25日までに0.33のT/C比を得た(図7参照)。
【0232】
表6は、異なる日数でのそれぞれの群の平均的な腫瘍体積(mm3単位)を示す。
【0233】
【表6】
【0234】
4.4 ヌードマウスにおけるHT-29皮下モデル
それぞれ20μgのhuBC1-mulL12を5日連続1日1回静脈内注射する1サイクル治療は、SCIDマウスにおけるヒト前立腺癌PC3mm2皮下モデルで有効であり、第13日までに0.46のT/C比および第20日までに0.43のT/C比を得た(図8参照)。これはわずか1サイクルの治療であり、ヌードマウスは機能的T細胞を欠いていたので、20日後に治療群における腫瘍の増殖率が増大し始めたことは、それほど驚くべきことではなかった。この時点における第2の治療サイクルの利点を評価することは興味深いと思われる。
【0235】
表7は、異なる日数でのそれぞれの群の平均的な腫瘍体積(mm3単位)を示す。
【0236】
【表7】
【0237】
4.5 SCIDマウスにおけるPC3mm2肺転移モデル
この異種移植片モデルでは、ヒト前立腺癌PC3mm2細胞を、治療を始める11日前に重症複合免疫不全(SCID)マウスに注射して、転移が確定するのに充分な時間を与えた。SCIDマウスにおいて機能的T細胞およびB細胞が欠如していたにもかかわらず、16μgのhuBC1-mulL12を5日間1日1回静脈内注射することによって、全てのマウスにおいて確立した転移をほぼ完全に根絶し、転移腫(図9A)および腫瘍塊(図9B)によって覆われた肺表面により測定して、それらの過剰増殖を防いだ。8μgの用量でさえも非常に有効であり、PBS対照と比較して肺転移を約85%減少させた。
【0238】
表8は、マウス腫瘍モデルにおけるhuBC1-mulL12の有効性データの要約を示す。皮下(s.c.)腫瘍に関するT/Cは、治療群の平均腫瘍体積とPBS対照群のそれの比である。肺転移モデルに関しては、T/CはPBS対照群のそれに対する治療群の平均腫瘍塊である。
【0239】
【表8】
【0240】
5.考察
薬剤候補huBC1-huIL12は、ヒトIL-12が種特異的であるため、現在のネズミ腫瘍モデルにおいて評価することはできない。したがって、本発明者らはhuBC1ネズミIL12を生成し、表8中に要約したように、この代理分子がさまざまな異種移植片転移および皮下腫瘍モデルにおいて有効であったことを示した。SCIDマウスが機能的T細胞およびB細胞を欠いていたという事実にもかかわらず、7日間1日1回の注射による1サイクルの治療は、A431およびPC3モデルにおいてそれぞれ74%および67%腫瘍の増殖を阻害した。huBC1-hmIL12がhuBC1-huIL12と比較して、マウス中でα期において非常に速いクリアランス速度を有していたという事実を鑑みると特に、これらの結果は印象的である(図10および以下の付録を参照)。5日間1日1回の注射による1サイクルの治療も、ヌードマウスにおけるHT-29モデルで有効であり、57%の腫瘍増殖の阻害を示した。化学療法を受けているかあるいは受けた後の患者がSCIDマウスより機能的な免疫系を有する可能性がある臨床試験における、huBC1-huIL12を用いる多サイクルの治療によって有効性は向上するはずである。SCIDマウスにおけるPC3mm2実験肺転移モデルでは、16μgのhuBC1-mulL12を5日間1日1回静脈内注射することによって、治療を始める前に11日間確立することができた転移をほぼ完全に根絶した。
【0241】
6.付録:huBC1-muIL12およびhuBC1-huIL12の薬物動態
huBC1-muIL12およびhuBC1-huIL12の薬物動態を、BALE/cマウスにおいて測定した。huBC1-huIL12はマウス中、特にα期においてhuBC1-muIL12より長い血清半減期を有することが分かった(図10)。
【0242】
(実施例9-治療法)
本発明の化合物、例えば融合タンパク質は、以下のように使用することができる。
【0243】
膠芽細胞腫などの癌に罹患する患者を治療する。好ましい投与経路は静脈内または皮下注射であるが、筋肉内、腹膜内、皮内、または他の注射経路も考えられる。他の投与経路と同様に、吸入による投与、経口投与、または座薬による投与も考えられる。投与は1週間当たり3回、次いで次の3週間治療無しの4週間サイクルであることが好ましいが、所与の個体中のBC1-IL12タンパク質の薬物動態挙動に応じて高頻度または低頻度であってよい。約70キログラムの成人に関する投与用量は、用量当たり約1〜100ミリグラムの範囲であり、用量当たり約4〜20ミリグラムの範囲であることが好ましい。1ヶ月に1度治療する70キログラムの成人に関して、最も好ましい用量は約10ミリグラムである。標準的手順に従い、患者を応答性に関して調べる。
【図面の簡単な説明】
【0244】
【図1】抗体可変領域(ストライプ状の楕円形)、定常領域(白い楕円形)、IL-12p35サブユニット(小さな長方形)、IL-12p40サブユニット(大きな長方形)、抗体ヒンジ領域およびリンカー(太線)およびジスルフィド結合(細線)の好ましい形状の概略図である。特に好ましい実施形態は、ジスルフィド結合によってp35と結合した重鎖およびp40のC末端と融合したp35を有する完全IgG型抗体(図1A)、リンカーによって結び付き、CH3ドメインに対するヒンジ領域、および重鎖のC末端と融合したp35、およびジスルフィド結合によってp35と結合したp40を介して結合した抗体V領域を有する「小体」(図1B)、ジスルフィド結合によって結合したV領域とp40と融合したp35を有するsFv(図1C)、およびジスルフィド結合によって結合したC領域とp40と融合したp35を有するFabを含む(図1D)。IL-12p35サブユニットも、V領域のN末端と結合することができる。IL-12p40サブユニットはジスルフィド結合を介して、あるいはリンカーを介してp35と結合することができ、いわゆる「単鎖IL-12」部分(scIL-12)を生成することができる。
【図2】構築体pdHL11-huBC1-M1-hup35を示す図である(実施例1参照)。
【図3】構築体pNeo-CMV-hup40を示す図である(実施例1参照)。
【図4】4つの構築体(huBC1-muIL12、huBC1-huIL12、muBC1およびhuBC1)と組換え癌胎児性フィブロネクチン断片FN789およびFN7B89の結合を示す図である(実施例3参照)。
【図5A】注射したU-87MG細胞の数と皮下腫瘍の増殖率の滴定曲線を示す図である(実施例5参照)。
【図5B】SCIDマウスにおけるU-87MG皮下モデルのhuBC1-muIL12の抗腫瘍効果を示す図である。
【図6】SCIDマウスにおけるA431皮下モデルのhuBC1-muIL12の抗腫瘍効果を示す図である(実施例5参照)。
【図7】SCIDマウスにおけるPC3mm2皮下モデルのhuBC1-muIL12の抗腫瘍効果を示す図である(実施例5参照)。
【図8】SCIDマウスにおけるHT-29皮下モデルのhuBC1-muIL12の抗腫瘍効果を示す図である(実施例5参照)。
【図9A】転移腫によって覆われた肺表面に対するhuBC1-muIL12投与の影響を示す図である(実施例5参照)。
【図9B】重症複合免疫不全(SCID)マウスに前立腺癌PC3mm2細胞を注射した後のヒト肺重量に対する、huBC1-muIL12投与の影響を示す図である(実施例5参照)。
【図10】マウスにおけるhuBC1-muIL12およびhuBC1-huIL12の薬物動態分析を示す図である(実施例5参照)。BALB/cマウスに、25mgのhuBC1-IL12を尾部静脈に注射した。さまざまな時間地点において、少量の血液サンプルを眼窩後方出血によって採取した。抗ヒトIgGH&L抗血清を用いた捕捉、および抗ヒトまたは抗ネズミIL12抗体(R&D Systems)を用いた検出によって、血漿をアッセイした。注射直後に採取したそれぞれのマウスの血清中の最初の濃度に、結果を標準化した(t=0)。マウス中での循環半減期は、両方の分子に関して約19時間である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の治療において使用するための化合物に関する。特に本発明は、インターロイキン-12と融合した腫瘍血管新生に特異的な抗原を対象とする抗体部分を含む、融合タンパク質を提供する。本発明の好ましい融合タンパク質は標的抗原と特に強く結合し、固形腫瘍を治療するのに有用である。
【背景技術】
【0002】
標的化融合タンパク質を用いた癌の治療は多大な有望を示しているが、多くの問題点が依然として存在する。例えば抗体標的化サイトカインは、動物モデルおよび幾つかのヒト試験における癌の治療において多大な有望を示しているが、抗体/抗原、サイトカイン、および抗体エフェクター機能の最適な選択肢は依然決定されていない。例えば、Gillies(米国特許第5,650,150号)は、完全抗体とのサイトカイン融合体の一般的有用性、および抗体-IL2融合タンパク質の特異的有用性を記載した。
【0003】
インターロイキン-12(IL-12)は標的化免疫療法に非常に魅力的なサイトカインである、何故ならIL-12は、腫瘍細胞を攻撃する際に最も有効であるTh1の免疫応答を刺激するからである。IL-12は全身に投与すると非常に毒性が強く、したがって腫瘍部位にその活性を向けることは非常に重要である。Gillies et al(WO99/29732)は、IL-12と抗体の融合体の有用性を記載し、IL-12は2サブユニットのサイトカインであり、そのサブユニットの1つはホモ二量体化する可能性があるという事実と関係がある、IL-12融合タンパク質を発現させるために必要とされる特定の技法をさらに記載した。Halin et al、2002、Nature Biotechnology 20 : 264〜269は、L19、腫瘍特異的血管新生部位と結合する抗体の可変ドメインを有する単鎖Fv(sFv)と融合した単鎖IL-12部分からなる融合タンパク質を記載した。この後者の分子は抗体のFc領域を欠き、したがって全てのエフェクター機能を欠く。
【0004】
IL-12が標的部分と融合するときでさえも、融合タンパク質が投与された後に、そのタンパク質薬剤が全身に循環する時間が存在する。この時間中、および薬剤が腫瘍中に蓄積し系の残り部分から消失する前に、第二のサイトカインが誘導され障害が生じる。
【0005】
したがって、患者内の腫瘍部位にIL-12を送達する改善された手段に関する必要性が存在する。
【特許文献1】米国特許第5,650,150号
【特許文献2】WO99/29732
【非特許文献1】Halin et al.、2002、Nature Biotechnology 20 : 264〜269
【非特許文献2】Carnemolla et al.、1989、J Cell.Biol.108 p1139〜1148
【非特許文献3】ffrench-Constant et al.、1989、J.Cell.Biol.109 p903〜914
【非特許文献4】Monoclonal Antibodies : A manual of techniques、H Zola(CRC Press、1988)
【非特許文献5】Monoclonal Hybridoma Antibodies : Techniques and Applications、J G R Hurrell(CRC Press、1982)
【非特許文献6】Antibody Engineering、A Practical Approach、McCafferty、J.et al、ed.(IRL Pres、1996)
【特許文献3】WO03/076469
【特許文献4】EP0344134B
【非特許文献7】Carnemolla et al.、1989、J.Cell Biol.109 : 1139〜1148
【非特許文献8】Carnemolla et al.、1992、J.Biol.Chem.267 : 24689〜24692
【非特許文献9】Mariani et al.、1997、Cancer80 : 2378〜2384
【非特許文献10】Jones et al.(1986) Nature321 : 522〜525
【非特許文献11】Riechmann et al.(1988) Nature332 : 323〜327
【非特許文献12】Verhoeyen et al.(1988) Science239 : 1534〜1536
【特許文献5】EP239400
【非特許文献13】Morrison et al. (1984) Proc.Natl.Acad.Sci.USA81、6851〜6855
【非特許文献14】Better et a.l (1988) Science240、1041
【非特許文献15】Skerra et al. (1988) Science240、1038
【非特許文献16】Young et al.、1995、FEBSLett.377 : 135〜139
【非特許文献17】Bird et al. (1988) Science242、423
【非特許文献18】Huston et al(1988) Proc.Natl.Acad.Sci.USA85、5879
【非特許文献19】Ward et al (1989) Nature341、544
【非特許文献20】Winter & Milstein (1991) Nature349、293〜299
【非特許文献21】O'Sullivan et al Anal.Biochem.(1979) 100、100〜108
【特許文献6】米国特許第4,440,859号
【特許文献7】米国特許第4,530,901号
【特許文献8】米国特許第4,582,800号
【特許文献9】米国特許第4,677,063号
【特許文献10】米国特許第4,678,751号
【特許文献11】米国特許第4,704,362号
【特許文献12】米国特許第4,710,463号
【特許文献13】米国特許第4,757,006号
【特許文献14】米国特許第4,766,075号
【特許文献15】米国特許第4,810,648号
【非特許文献22】Takahara et a1、1985、J.Biol.Chem.260(5) : 2670〜2674
【非特許文献23】Saiki et at (1988) Science239、487〜491
【特許文献16】EP251744
【特許文献17】EP258067
【特許文献18】WO90/01063
【特許文献19】EP-A-258067
【非特許文献24】Cohen et al、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、69 : 2110 (1972)
【非特許文献25】Sambrook et al、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、ニューヨーク(1989)
【非特許文献26】Sherman et al、Methods In Yeast Genetics、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor、ニューヨーク(1986)
【非特許文献27】Beggs、Nature、275 : 104〜109(1978)
【非特許文献28】Southern、J.Mol.Biol.、98 : 503 (1975)
【非特許文献29】Berent et al、Biotech、3 : 208 (1985)
【非特許文献30】Molecular Cloning:a Laboratory Manual : 3rd edition、Sambrook and Russell、2001、Cold Spring Harbor Laboratory Press
【非特許文献31】Kozak (1984) Nature 308 : 241
【非特許文献32】Lo et al.(1998) Protein Engineering11 : 495
【非特許文献33】Gillies et al.(2002) Clin.Cancer Res.8:210
【非特許文献34】Gllies et al.(1998) J.Immunol.160 : 6195
【非特許文献35】Boshart et al.(1985) Cell41 : 521〜530
【非特許文献36】www.biacore.com
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、標的特異的部分およびエフェクター部分を含む化合物であって、標的特異的部分が、親モノクローナル抗体の癌胎児性フィブロネクチンに対する結合特異性を保持する、癌胎児性フィブロネクチンに対する特異性を有するモノクローナル抗体、またはその断片もしくは変異体を含むか、それらからなり、かつエフェクター部分が、インターロイキン-12、またはその機能性断片もしくは変異体を含むか、それらからなる化合物を与える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の化合物の特性を表す特徴は、癌胎児性フィブロネクチンに対する特異性を有するモノクローナル抗体が、ドメインB外(ED-B)領域以外の癌胎児性フィブロネクチンの領域と結合することである。フィブロネクチンのED-B領域は、一次RNA転写産物の可変スプライシングによって、細胞外マトリクスのフィブロネクチン分子において存在するかあるいは削除されるドメインである(以下参照)。したがって、癌胎児性フィブロネクチンに対する特異性を有するモノクローナル抗体はED-B領域(ED-Bドメイン)とは結合しないが、ED-B領域などを含むフィブロネクチンのスプライシング変異体(「癌胎児性フィブロネクチン」と呼ぶ)とは結合する。
【0008】
「標的特異的」部分によって本発明者らは、癌胎児性フィブロネクチンを認識しそれと結合する1つまたは複数の結合部位を含む化合物の一部分を意味する。癌胎児性フィブロネクチンは、腫瘍細胞によって発現され腫瘍血管新生と関係があるタンパク質である。このタンパク質は胎児組織中でも発現されるが、子宮内膜再生および創傷治癒以外は正常成体組織中では全く発現されないようである(Carnemolla et al.、1989、J Cell.Biol.108 p1139〜1148)。
【0009】
癌胎児性フィブロネクチンは腫瘍細胞中での可変スプライシングによって生成され、それによって、(完全型II反復配列ED-B、他型III反復配列B[EIIIB]としても知られる)ED-Bドメインと呼ばれる他のドメインが、フィブロネクチンの反復配列7と8の間に挿入される。ED-Bは、今日まで研究されている哺乳動物において100パーセントの相同性を有する充分に保存されたドメインである(Carnemolla et al、1989上記、およびffrench-Constant et al、1989、J.Cell.Biol.109 p903〜914を参照)。
【0010】
したがって本発明は、癌胎児性フィブロネクチンを標的化することによりIL12、またはその機能性断片もしくは変異体を腫瘍細胞に送達するための化合物を与える。
【0011】
「癌胎児性フィブロネクチンに対する特異性」によって本発明者らは、標的特異的部分(すなわち、親モノクローナル抗体の癌胎児性フィブロネクチンに対する結合特異性を保持するモノクローナル抗体、またはその断片もしくは変異体)は癌胎児性フィブロネクチンと結合するが、正常成体組織によって発現されるフィブロネクチンとは実質的に結合しないことを意味する。
【0012】
抗原(この場合、癌胎児性フィブロネクチン)を標的化するのに適したモノクローナル抗体は、知られている技法、例えばMonoclonal Antibodies : A manual of techniques、H Zola(CRC Press、1988)中、ならびにMonoclonal Hybridoma Antibodies : Techniques and Applications、J G R Hurrell(CRC Press、1982)およびAntibody Engineering、A Practical Approach、McCafferty、J.et al、ed.(IRL Pres、1996)中に開示された技法によって作製することができる。
【0013】
本発明の化合物の標的特異的部分は、ED-B領域以外の癌胎児性フィブロネクチンの領域に対する特異性を有することによって特徴付けられる。しかしながら標的特異的部分は、(ED-Bドメインを含む)癌胎児性フィブロネクチン中で露出される/接触可能であるが、(ED-Bドメインを欠く)正常フィブロネクチン中では露出/接触不能である隠れたエピトープと結合する。結果として、標的特異的部分はED-Bドメインを含むフィブロネクチンのスプライシング変異体と結合するが、ED-Bドメイン自体とは結合しない。
【0014】
したがって、(例えば、WO03/076469の記載と同様の)L19抗体またはその抗原結合断片を含む標的化物質は本発明の範囲から除外する、何故ならL19抗体はED-Bドメインと結合するからである。
【0015】
標的特異的部分は、胎児組織と正常成体組織の両方で発現されるフィブロネクチン内に存在するアミノ酸配列と結合することが好ましい。標的特異的部分は、ED-Bドメインの側面に位置する、すなわちそれに隣接するフィブロネクチンのドメインと結合することがより好ましい。標的特異的部分は、フィブロネクチンの反復配列7ドメイン内のアミノ酸配列と結合することが最も好ましい(以下の実施例3を参照)。
【0016】
本発明の化合物が任意の種によって発現される癌胎児性フィブロネクチンを標的化することができることは、当業者によって理解されると思われる。有利なことに本発明の化合物は、これらの化合物が治療上使用される種由来の癌胎児性フィブロネクチンを標的化する。したがって好ましい実施形態では、標的特異的部分はヒト癌胎児性フィブロネクチンに特異的である。
【0017】
本発明の第1の態様の特に好ましい実施形態では、標的特異的部分は、親モノクローナル抗体の抗原結合特異性を保持するBC1抗体、またはBC1抗体と癌胎児性フィブロネクチンの結合に関して競合することができる抗体、またはその断片もしくは変異体を含むか、それらからなる。BC1抗体の産生はEP0344134B中に記載されており、それはEuropean Collection of Animal Cell Cultures、Porton Down、UKに寄託されたハイブリドーマ(受託番号88042101)から入手可能である。
【0018】
正常フィブロネクチン中では覆われているがED-Bドメインが存在するときは接触可能である、ED-Bドメインの外側の反復配列7上の部位を介して、BC1抗体は癌胎児性フィブロネクチンと特異的に結合する(Carnemolla et al、1989、J.Cell Biol.109 : 1139〜1148 ; Carnemolla et al、1992、J.Biol.Chem.267 : 24689〜24692 ; Mariani et al、1997、Cancer80 : 2378〜2384 ;以下の実施例1も参照)。
【0019】
競合ELISAなどの、試験抗体がBC1抗体と癌胎児性フィブロネクチンの結合に関して競合することができるかどうかを判定するための方法は、当分野でよく知られている。
【0020】
他の好ましい実施形態では、BC1抗体はヒトまたはヒト化抗体である。「ヒト化モノクローナル抗体」によって本発明者らは、骨格領域がヒト起源の第一の受容体モノクローナル抗体に主に由来し、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)が癌胎児性フィブロネクチンに対する特異性を有する第二のドナーモノクローナル抗体に由来する、少なくとも1本の鎖を有するモノクローナル抗体を含める。ドナーモノクローナル抗体はヒトまたは非ヒト起源であってよく、例えば、それはネズミモノクローナル抗体であってよい。
【0021】
ヒト化モノクローナル抗体の両方の鎖は、癌胎児性フィブロネクチンに対する特異性を有するドナーモノクローナル抗体から接合したCDRを含むことが好ましい。
【0022】
CDR接合(すなわちヒト化)鎖は、癌胎児性フィブロネクチンに対する特異性を有するドナー抗体に由来する2個または合計3個のCDRを含むことが有利である。
【0023】
ヒト化モノクローナル抗体は、ヒト骨格残基および癌胎児性フィブロネクチンに対する特異性を有するドナー抗体由来のCDRのみを含むことが好都合である。
【0024】
しかしながら、ヒト化抗体の特異性を維持および最適化するためには、骨格領域中の1つまたは複数の残基を改変して、それらがドナー抗体中の同等な残基に対応するようにすることが必要とされる可能性があることは、当業者によって理解されると思われる。
【0025】
ヒト化抗体の骨格領域は、ヒトIgGモノクローナル抗体に由来することが好ましい。
【0026】
ヒト化モノクローナル抗体を作製する方法は当分野でよく知られており、例えばJones et al.(1986) Nature321 : 522〜525、Riechmann et al.(1988) Nature332 : 323〜327、Verhoeyen et al.(1988) Science239 : 1534〜1536およびEP239400を参照のこと。
【0027】
他の好ましい実施形態では、本発明の第1の態様の化合物は、高い親和力で癌胎児性フィブロネクチンと結合する。「高い親和力」によって本発明者らは、標的特異的部分が、少なくともKd=10-6M、好ましくは少なくともKd=10-7M、適切にはKd=10-8M、より適切にはKd=10-9M、さらにより適切にはさらにKd=10-10M、およびより好ましくはKd=10-11M、あるいはさらにKd=10-12Mの結合定数で癌胎児性フィブロネクチンを認識することを意味する。
【0028】
本発明の第1の態様の化合物は、標的特異的部分を生成するために使用する親モノクローナル抗体、例えばBC1より強く癌胎児性フィブロネクチンと結合することが好ましい。化合物および親モノクローナル抗体が癌胎児性フィブロネクチンと結合する強度は、癌胎児性フィブロネクチンとの結合に関する解離定数を決定することによって測定することができる(実施例2および3を参照)。
【0029】
化合物は親モノクローナル抗体より少なくとも2倍強く、例えば少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20倍強く癌胎児性フィブロネクチンと結合することが有利である。化合物は親モノクローナル抗体が癌胎児性フィブロネクチンと結合するより少なくとも10倍強く、癌胎児性フィブロネクチンと結合することが好都合である。
【0030】
好ましい実施形態では、本発明の第1の態様の化合物は、完全(すなわち無傷)モノクローナル抗体、好ましくはBC1抗体を含むか、それからなる標的特異的部分を含む。したがって標的特異的部分は、ジスルフィド結合によって結合し得る2本の免疫グロブリン重鎖および2本の免疫グロブリン軽鎖を含むことができる。1つまたは複数の要素の鎖はエフェクター部分と結合、例えば融合させることができる。例えば2本の免疫グロブリン重鎖は、エフェクター部分と互いに融合させることができる。
【0031】
本発明の化合物の他の好ましい実施形態では、標的特異的部分は、癌胎児性フィブロネクチンに対する特異性を有するモノクローナル抗体(例えばBC1)の抗原結合断片を含むか、それからなる。
【0032】
抗体の可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)ドメインは抗原認識、初期のプロテアーゼ消化実験によって最初に認識された事実と関係がある。げっ歯類抗体のヒト化によって、他の確認事項が発見された。げっ歯類起源の可変ドメインは、生成する抗体がげっ歯類の親抗体の抗原特異性を有するように、ヒト起源の定常ドメインと融合させることができる(Morrison et al (1984) Proc.Natl.Acad.Sci.USA81、6851〜6855)。
【0033】
抗原特異性は可変ドメインによって与えられ定常ドメインとは無関係であることは、いずれも1つまたは複数の可変ドメインを含む抗体断片の細菌における発現に関する実験から知られている。これらの分子にはFab様分子(Better et al (1988) Science240、1041);Fv分子(Skerra et al (1988) Science240、1038);ジスルフィド結合Fv分子(Young et al、1995、FEBSLett.377 : 135〜139);VHおよびVLパートナードメインが柔軟性のあるオリゴペプチドによって連結した単鎖Fv(ScFv)分子(Bird et al (1988) Science242、423 ; Huston et al(1988) Proc.Natl.Acad.Sci.USA85、5879)、および単離Vドメインを含むシングルドメイン抗体(dAb)がある(Ward et al (1989) Nature341、544)。その特異的結合部位を有する抗体断片の合成に関する技法の一般的総説は、Winter & Milstein (1991) Nature349、293〜299中に見られる。
【0034】
完全抗体ではなく抗体断片を使用する利点は、数倍である可能性がある。より小さなサイズの断片は迅速な浄化を可能にし、改善された腫瘍と非腫瘍の比をもたらすことができる。Fab、Fv、ScFv、ジスルフィドFvおよびdAb抗体断片はいずれも、大腸菌などの細菌、または酵母菌または哺乳動物系などの真核生物発現系において発現され、そこから分泌される可能性があり、したがって多量の前記断片の容易な生成を可能にする。
【0035】
本発明の化合物の標的特異的部分は、FabおよびF(ab')2、Fv分子、ジスルフィド結合Fv分子、ScFv分子およびシングルドメイン抗体(dAb)などのFab様分子からなる群から選択されるヒト化抗体の抗原結合断片を含むことが好ましい。
【0036】
標的特異的部分はFab分子またはF(ab')2分子を含むことがより好ましい。
【0037】
好ましい実施形態では、本発明の第1の態様の化合物は、配列番号1のヒトBC1重鎖可変領域を含む標的特異的部分を含む。
【0038】
【化1】
[配列番号1]
【0039】
本発明の第1の態様の化合物は、配列番号2のヒトBC1軽鎖可変領域を含む標的特異的部分を含むことが有利である。
【0040】
【化2】
[配列番号2]
【0041】
本発明の第1の態様の化合物は、配列番号1のヒトBC1重鎖可変領域、および配列番号2のヒトBC1軽鎖可変領域を含む、標的特異的部分を含むことが好都合である。
【0042】
他の好ましい実施形態では、標的特異的部分はCH1、CH2およびCH3免疫グロブリン定常ドメインなどの1つまたは複数の抗体定常領域を含む。この1つまたは複数の定常領域は、標的部分の可変領域と同じまたは異なる抗体由来のものであってよい。同様に本発明の化合物は、そのそれぞれが定常領域(この定常領域は同じまたは異なる親抗体由来のものであってよい)を含む、免疫グロブリン重鎖および免疫グロブリン軽鎖を含むことができる。
【0043】
1つまたは複数の抗体定常領域は、CH1ドメインを含むか、それからなることが好ましい。
【0044】
他の好ましい実施形態では、本発明の化合物は免疫グロブリンFc部分をさらに含む。Fc部分はヒトIgG1抗体に由来することが有利である。
【0045】
「Fc部分」によって本発明者らは、IgG重鎖定常領域のCH2およびCH3ドメインを含む抗体断片、すなわちIgG分子のパパインによる切断によって生成可能な断片と構造上同等な断片、またはそれと機能上同等なポリペプチドを意味する。
【0046】
前に詳細に述べたように、本発明の第1の態様の化合物は、IL-12、またはその機能性断片もしくは変異体(すなわち「IL-12部分」)を含むか、それらからなるエフェクター部分を含む。「機能性」断片または変異体によって本発明者らは、哺乳動物宿主中のTh1免疫応答、すなわち非投薬T細胞由来のTh1細胞の分化を刺激することができる断片または変異体の意味を含める。
【0047】
したがってエフェクター部分は、IL-12活性を有するポリペプチドを含むか、それらからなる。
【0048】
エフェクター部分は、ヒトインターロイキン-12、またはその機能性断片もしくは変異体を含むか、それらからなることが好ましい。
【0049】
エフェクター部分は、単鎖インターロイキン-12を含むか、それらからなる、例えば、IL-12p35ドメインおよびIL-12p40ドメインを含むか、それらからなることが好都合である。IL-12p35ドメインはジスルフィド結合によってIL-12p40ドメインと結合していることが好ましい。
【0050】
エフェクター部分は、以下のアミノ酸配列のIL-12p35ドメインを含むことが好ましい:
【0051】
【化3】
[配列番号3]
【0052】
エフェクター部分は、以下のアミノ酸配列のIL-12p40ドメインを含むことが好ましい:
【0053】
【化4】
[配列番号4]
【0054】
本発明の第1の態様の特に好ましい実施形態では、化合物は融合化合物または融合タンパク質であるか、それを含む。「融合化合物」によって本発明者らは、組換えDNA技法によって生成される1本のポリペプチド鎖中に含まれる、1つまたは複数の機能的に異なる部分を含む化合物を含める。例えば化合物は、重鎖が単鎖IL-12と融合した完全抗体を含むことができる。あるいは化合物は、切断型重鎖(すなわちFd鎖)が単鎖IL-12と融合した抗体のFabまたはF(ab')2断片を含むことができる。
【0055】
融合化合物の標的特異的部分とエフェクター部分は、融合していることが好ましい。これらの部分は直接融合させることができるか、(例えば、それらの部分の大きな柔軟性を互いに対して与える)リンカー配列を介して融合させることができる。
【0056】
リンカーは、アミノ酸配列ATATPGAA[配列番号5]を含むか、それらからなる突然変異したリンカー配列であることが適切である。
【0057】
あるいは、本発明の化合物の標的特異的部分とエフェクター部分は、O'Sullivan et al Anal.Biochem.(1979) 100、100〜108中に一般的に記載された方法などの、架橋ポリペプチドの従来の方法のいずれかによって1つに結合した別個の部分である。例えば、抗体部分はチオール基を用いて増大させることができ、酵素部分はこれらのチオール基と反応することができる二官能性物質、例えばヨード酢酸のN-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHIA)またはN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)と反応させることができる。例えばm-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステルを用いて得たアミドおよびチオエーテル結合は、一般にジスルフィド結合よりもin vivoでは安定している。
【0058】
好ましい実施形態では、化合物は配列番号6のポリペプチドを含む。
【0059】
ヒトIL-12p35と融合したBC1重鎖
【0060】
【化5】
[配列番号6]
【0061】
他の好ましい実施形態では、化合物は配列番号7のポリペプチドを含む。
【0062】
BC1軽鎖
【0063】
【化6】
[配列番号7]
【0064】
特に好ましい実施形態では、化合物は配列番号6のポリペプチドおよび配列番号7のポリペプチドを含む。
【0065】
化合物は、配列番号6のポリペプチドとジスルフィド結合によって結合した配列番号4のポリペプチドをさらに含むことが有利である。
【0066】
したがって本発明は、癌胎児性フィブロネクチンを対象とする抗体V領域、Fc部分、およびインターロイキンン-12部分を含む融合タンパク質を提供する。詳細には本発明は、インターロイキンン-12と融合した、癌胎児性フィブロネクチンと結合する抗体V領域を含む免疫グロブリン(Ig)融合タンパク質を提供する。本発明の好ましい実施形態では、抗体V領域はBC1抗体に由来する(Carnemolla et at.(1992)、J.Biol.Chem.267 : 24689〜24692 ; Mariani et al.(1997)、Cancer80 : 2378〜2384)。Fc部分はヒトIgG1に由来することが好ましい。
【0067】
好ましい実施形態では、融合タンパク質は配列番号6および7中に示すのと同様の抗体V領域、およびインターロイキンン-12部分を含む。IL-12部分は単鎖インターロイキンン-12であることが好ましい。
【0068】
本発明の予想外の特徴は、融合タンパク質が対応するBC1抗体単独よりはるかに強く、癌胎児性フィブロネクチンと結合することである。このような強い結合は癌を治療する際に有用である、何故なら強い結合は、癌胎児性フィブロネクチンに関するBC1抗体の親和性に基づいて予想されるより良いIL-12の腫瘍標的化をもたらすからである。強い結合は、細胞外マトリクスの要素などの、迅速に代謝回転しない抗原を標的化するのに非常に有利である。
【0069】
好ましい実施形態では、抗体定常領域、例えばCH1ドメインも使用する。図1は、抗体可変領域(ストライプ状の楕円形)、定常領域(白い楕円形)、IL-12p35サブユニット(小さな長方形)、IL-12p40サブユニット(大きな長方形)、抗体ヒンジ領域およびリンカー(太線)およびジスルフィド結合(細線)の幾つかの形状を示す。特に好ましい実施形態は、ジスルフィド結合によってp35と結合した重鎖およびp40のC末端と融合したp35を有する完全IgG型抗体(図1A)、リンカーによって結び付き、CH3ドメインに対するヒンジ領域、および重鎖のC末端と融合したp35、およびジスルフィド結合によってp35と結合したp40を介して結合した抗体V領域を有する「小体」(図1B)、ジスルフィド結合によって結合したV領域とp40と融合したp35を有するsFv(図1C)、およびジスルフィド結合によって結合したC領域とp40と融合したp35を有するFab(図1D)を含む。IL-12p35サブユニットも、V領域のN末端と結合することができる。IL-12p40サブユニットはジスルフィド結合を介して、あるいはリンカーを介してp35と結合することができ、いわゆる「単鎖IL-12」部分(scIL-12)を生成することができる。
【0070】
より好ましい実施形態では、ヒトIgG1の定常領域を有する完全BC1抗体を使用する。この分子の具体的な利点は、小体、Fab、およびsFv融合タンパク質において欠けている、ADCCなどのエフェクター機能をそれが有することである。
【0071】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様による化合物、あるいはその標的特異的部分、エフェクター部分あるいは1つまたは複数の要素ポリペプチド(例えば、BC1重鎖、BC1軽鎖、IL12p35およびp40サブユニットおよび/またはFc部分)をコードする核酸分子を提供する。「核酸分子」によって本発明者らは、DNA、cDNAおよびmRNA分子を含める。
【0072】
好ましい実施形態では、本発明の核酸分子は、配列番号8、9および10からなる群から選択される1つまたは複数のヌクレオチド配列を含む。
【0073】
huIL12p35サブユニットと融合したhuBC1重鎖(VHには下線を引き;p35配列は太字で示し;かつ大文字および小文字は、コードおよび非コード配列をそれぞれ表す):
【0074】
【化7】
[配列番号8]
【0075】
huBC1軽鎖(VLには下線を引き;大文字および小文字は、コードおよび非コード配列をそれぞれ表す)
【0076】
【化8】
[配列番号9]
【0077】
huIL12p40サブユニット(この構築体はp40mRNAのcDNAである。その原型シグナルペプチドをコードするDNAはイタリックで表し、これに成熟p40をコードするDNAが続く):
【0078】
【化9】
[配列番号10]
【0079】
あるいは核酸分子は、前に同定したヌクレオチド配列の縮重配列である(すなわち、それらは同じアミノ酸配列をコードする)ヌクレオチド配列を含む。
【0080】
核酸分子は、配列番号8のヌクレオチド配列を含むことが好ましい。
【0081】
核酸分子は、配列番号9のヌクレオチド配列を含むことが有利である。
【0082】
核酸分子は、配列番号8のヌクレオチド配列および配列番号9のヌクレオチド配列を含むことが好都合である。
【0083】
核酸分子は、配列番号10のヌクレオチド配列を含むことが適切である。
【0084】
本発明の他の態様は、本発明の第1の態様による化合物を作製する方法であって、前記方法が宿主細胞中で本発明の第2の態様に従い1つまたは複数の核酸分子を発現させること、およびそこから化合物を単離することを含む方法を提供する(実施例1参照)。
【0085】
本発明の化合物の2つの部分は、組換えDNA技法によって融合化合物として生成され、DNAの長さ部分は、互いに隣接しているかあるいは化合物の望ましい性質を害さないリンカーペプチドをコードする領域により隔てられた、本発明の化合物の2つの部分をコードするそれぞれの領域を含むことが好ましい。
【0086】
核酸を適切な宿主中で発現させて、本発明の化合物を含むポリペプチドを生成することができる。したがって、本発明の化合物またはその一部分をコードする核酸を知られている技法に従い使用し、本明細書に含まれる教示に鑑みて適切に改変して、発現ベクターを構築することができ、次いで発現ベクターを使用して、本発明の化合物の発現および生成に適した宿主細胞を形質転換させる。このような技法には、1984年4月3日にRutter et alに発行された米国特許第4,440,859号、1985年7月23日にWeissmanに発行された米国特許第4,530,901号、1986年4月15日にCrowlに発行された米国特許第4,582,800号、1987年6月30日にMark et alに発行された米国特許第4,677,063号、1987年7月7日にGoeddelに発行された米国特許第4,678,751号、1987年11月3日にItakura et alに発行された米国特許第4,704,362号、1987年12月1日にMurrayに発行された米国特許第4,710,463号、1988年7月12日にToole、Jr.et alに発行された米国特許第4,757,006号、1988年8月23日にGoeddel et alに発行された米国特許第4,766,075号、および1989年3月7日にStalkerに発行された米国特許第4,810,648号中に開示された技法があり、これらはいずれも参照により本明細書に組み込まれている。
【0087】
本発明の化合物が多量体である場合、その要素である鎖は1つの核酸分子または別々の核酸分子によってコードされ得る(共通の宿主細胞中あるいは異なる宿主細胞中で発現され、in vitroで構築される)。
【0088】
本発明の化合物またはその一部分をコードする核酸は、適切な宿主中に導入するために広くさまざまな他の核酸配列と接合させることができる。付随する核酸は宿主の性質、宿主中に核酸を導入する方法、およびエピソームの維持または組込みが望まれるかどうかに依存すると思われる。
【0089】
本発明の化合物の細胞毒性部分の発現が、それが発現される宿主細胞を殺傷することを防ぐためには、宿主細胞から発現される化合物(または一部分)の分泌を誘導することができるシグナル配列と本発明の第2の態様の核酸を連結させることが、必要とされる可能性があることは理解されよう。シグナル配列は、使用する宿主細胞の型に従い選択されると思われる。代表的なシグナル配列にはompAシグナル配列がある(例えばTakahara et a1、1985、J.Biol.Chem.260(5) : 2670〜2674を参照)。
【0090】
一般に核酸は、発現に関して適切な方向および正しい読み枠で、プラスミドなどの発現ベクター中に挿入される。必要な場合核酸は、所望の宿主により認識される適切な転写および翻訳制御調節ヌクレオチド配列と連結させることができるが、このような制御は発現ベクターにおいて一般に利用可能である。例えば、本発明の化合物をコードする核酸分子は、翻訳を増大させるためにKozakのコンセンサスリボソーム結合配列(GCCGCCACCなど)と連結させることができるか、これを含むことができる。
【0091】
次いでベクターは標準的技法によって宿主中に導入される。一般に、全ての宿主がベクターによって形質転換されるわけではない。したがって、形質転換された宿主細胞を選択することが必要であると思われる。1つの選択技法は、任意の必要な制御要素を有し、抗生物質耐性などの形質転換細胞において選択的な特性をコードする核酸配列を、発現ベクター中に取り込ませることを含む。あるいは、このような選択的な特性の遺伝子が他のベクター上に存在してよく、これを使用して所望の宿主細胞を同時形質転換する。
【0092】
本発明の組換え核酸によって形質転換させた宿主細胞は次いで、本明細書で開示する教示に鑑みて、充分な時間当業者に知られている適切な条件下において培養して、次いで回収することができるポリペプチドの発現を可能にする。
【0093】
細菌(例えば、大腸菌およびバシラスサチリス)、酵母菌(例えば、サッカロミセスセレビジエおよびピキアパストリス)、糸状菌(例えばアスペルギルス)、植物細胞、動物細胞(例えばCOS-1、COS-7、CHO、NIH3T3、NSOおよびBHK細胞)および昆虫細胞(例えば、ショウジョウバエ、SF9細胞)を含めた、多くの発現系が知られている。
【0094】
原核生物のレプリコンなどのレプリコンを含むベクターは、それらを用いて形質転換した大腸菌などの細菌宿主細胞中での遺伝子の発現(転写および翻訳)を誘導することができる原核生物のプロモーターなどの、適切なプロモーターも含むことができる。
【0095】
プロモーターは、RNAポリメラーゼの結合および転写の実施を可能にするDNA配列によって形成される発現制御要素である。代表的な細菌宿主と適合性があるプロモーター配列は典型的には、本発明のDNAセグメントを挿入するのに好都合な制限部位を含むプラスミドベクター中に与えられる。
【0096】
典型的な原核生物のベクタープラスミドはpUC18、pUC19、pBR322およびpBR329(Biorad Laboratories、Richmond、CA、USAから入手可能)、pTrc99AおよびpKK223-3(Pharmacia Piscataway、NJ、USAから入手可能)およびpET系(T7プロモーター、Novagen Ltd)である。
【0097】
典型的な哺乳動物細胞ベクタープラスミドは、Pharmacia、Piscataway、NJ、USAから入手可能なpSVLである。これらのベクターはSV40後期プロモーターを使用して、クローニングした遺伝子の発現を誘導し、最高レベルの発現はCOS-1細胞などのT抗原産生細胞中で見られる。
【0098】
誘導性哺乳動物発現ベクターの一例は、これもPharmaciaから入手可能なpMSGである。このベクターはマウス乳腺癌ウイルスの長い末端反復配列の糖質コルチコイド誘導性プロモーターを使用して、クローニングした遺伝子の発現を誘導する。
【0099】
有用な酵母菌プラスミドベクターはpRS403-406およびpRS413-416であり、これらは一般にStratagene Cloning Systems、La Jolla、CA92037、USAから入手可能である。プラスミドpRS403、pRS404、pRS405およびpRS406は酵母菌組込みプラスミド(YIp)であり、酵母菌の選択可能マーカーhis3、trp1、leu2およびura3を取り込む。プラスミドpRS413-416は酵母菌動原体プラスミド(YCp)である。
【0100】
ピキアなどの酵母菌細胞の形質転換用の他の有用なベクターには、2μのプラスミドpYX243(R and D Systems Limitedから入手可能)および組込みベクターpPICZシリーズ(Invitrogenから入手可能)がある。
【0101】
相補的粘着末端を介してDNAとベクターを動作可能に連結させるための、さまざまな方法が開発されてきている。例えば、相補的ホモポリマー部分(tract)を、ベクターDNAに挿入されるDNAセグメントに加えることができる。次いでベクターとDNAセグメントを相補的ホモポリマー尾部間の水素結合によって接合して、組換えDNA分子を形成する。
【0102】
1つまたは複数の制限部位を含む合成リンカーは、DNAセグメントとベクターを接合させる他の方法を与える。以前の記載と同様にエンドヌクレアーゼ制限酵素による消化によって生成したDNAセグメントを、その3'-5'-エキソヌクレアーゼ活性によって3'一本鎖末端を除去し、それらの重合活性によって窪んだ3'端を満たす酵素である、バクテリオファージT4DNAポリメラーゼまたは大腸菌DNAポリメラーゼIを用いて処理する。
【0103】
したがって、これらの活性の組合せによって平滑末端DNAセグメントが生じる。次いで平滑末端セグメントは、バクテリオファージT4DNAリガーゼなどの平滑末端DNA分子の連結を触媒することができる酵素の存在下で、多モル過剰のリンカー分子と共にインキュベートする。したがって、この反応の生成物は、その両端にポリマーリンカー配列を有するDNAセグメントである。次いでこれらのDNAセグメントは、適切な制限酵素を用いて切断し、DNAセグメントの末端と適合性がある末端を生成する酵素で切断された発現ベクターと連結させる。
【0104】
さまざまな制限エンドヌクレアーゼ部位を含む合成リンカーは、International Biotechnologies Inc、New Haven、CN、USAを含めた幾つかの供給源から市販されている。
【0105】
本発明の化合物またはその一部分をコードする核酸を改変するための望ましい方法は、Saiki et at (1988) Science239、487〜491による開示と同様のポリメラーゼ連鎖反応を使用することである。
【0106】
この方法では、酵素により増幅される核酸は、それ自体が増幅核酸に取り込まれた状態になる2つの特異的オリゴヌクレオチドプライマーの側面に位置する。前記特異的プライマーは、当分野で知られている方法を使用して発現ベクターにクローニングするために使用することができる、制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含むことができる。
【0107】
本発明を実施する際に有用であると企図される酵母菌の例示的な属は、Pichia、Saccharomyces、Kluyveromyces、Candida、Torulopsis、Hansenula、Schizosaccharomyces、Citeromyces、Pachysolen、Debaromyces、Metschunikowia、Rhodosporidium、Leucosporidium、Botryoascus、Sporidiobolus、Endomycopsisなどである。好ましい属は、Pichia、Saccharomyces、Kluyveromyces、YarrowiaおよびHansenulaからなる群から選択される属である。Saccharomycesの例はSaccharomyces cerevisiae、Saccharomyces italicusおよびSaccharomyces rouxiiである。Kluyveromycesの例はKluyveromyces fragilisおよびKluyveromyces lactisである。Hansenulaの例はHansenula polymorpha、Hansenula anomalaおよびHansenula capsulataである。Yarrowia lipolyticaは適切なYarrowia種の一例である。
【0108】
S.cerevisiaeを形質転換するための方法はEP251744、EP258067およびWO90/01063中で一般的に教示されており、これらはいずれも参照により本明細書に組み込まれている。
【0109】
S.cerevisiaeに適したプロモーターにはPGK1遺伝子、GAL1またはGAL10遺伝子、CYC1、PHO5、TRP1、ADH1、ADH2、グリセルアルデヒド-3リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、グルコキナーゼ、α-交配型因子フェロモン、a-交配型因子フェロモンの遺伝子と関係があるプロモーター、PRB1プロモーター、GUT2プロモーター、および5'制御領域の一部分と他のプロモーターの5'制御領域の一部分、または上流活性部位のハイブリッドを含むハイブリッドプロモーター(例えばEP-A-258067のプロモーター)がある。
【0110】
転写停止シグナルは、転写停止およびポリアデニル化に適したシグナルを含む、真核生物遺伝子の3'側面配列であることが好ましい。適切な3'側面配列は、例えば使用する発現制御配列と自然に連結した、すなわちプロモーターに対応し得る遺伝子の配列であってよい。あるいは、配列は異なるものであってよく、その場合S.cerevisiae AHD1遺伝子の停止シグナルが好ましい。
【0111】
本発明はさらに、本発明のポリヌクレオチドベクター構築体を用いて形質転換した宿主細胞に関する。宿主細胞は、原核生物または真核生物のいずれかであってよい。細菌細胞は好ましい原核生物宿主細胞であり、典型的には例えばBethesda Research Laboratories Inc.、Bethesda、MD、USAから入手可能な大腸菌菌株DH5、およびAmerican Type Culture Collection (ATCC) of Rockville、MD、USA(NoATCC31343)から入手可能なRR1などの大腸菌の菌株である。好ましい真核生物宿主細胞には、酵母菌および哺乳動物細胞、好ましくは脊椎動物細胞、例えばマウス、ラット、サルまたはヒト繊維芽細胞系由来の細胞などがある。好ましい真核生物宿主細胞には、NSO細胞、CCL61としてATCCから入手可能なチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、CRL1658としてATCCから入手可能なNIHスイスマウス胚細胞NIH/3T3、およびCRL1650またはWSO細胞としてATCCから入手可能なサル腎臓由来COS-1細胞がある。
【0112】
本発明の核酸構築体を用いた適切な宿主細胞の形質転換は、典型的には使用するベクターの型に依存する、よく知られている方法によって実施される。原核生物宿主細胞の形質転換に関しては、例えばCohen et al、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、69 : 2110 (1972) ;およびSambrook et al、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、ニューヨーク(1989)を参照のこと。酵母菌細胞の形質転換は、Sherman et al、Methods In Yeast Genetics、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor、ニューヨーク(1986)中に記載されている。Beggs、Nature、275 : 104〜109(1978)の方法も有用である。脊椎動物細胞に関しては、このような細胞をトランスフェクトする際に有用な試薬、例えばリン酸カルシウムおよびDEAE-デキストランまたはリポソーム配合物は、Stratagene Cloning Systems、またはLife Technologies Inc、Gaithersburg、MD20877、USAから入手可能である。
【0113】
首尾よく形質転換された細胞、すなわち本発明の核酸構築体を含む細胞は、よく知られている技法によって確認することができる。例えば、本発明の発現構築体の導入から生成した細胞を増殖させて、本発明のポリペプチドを生成することができる。Southern、J.Mol.Biol.、98 : 503 (1975)またはBerent et al、Biotech、3 : 208 (1985)によって記載された方法などの方法を使用して、細胞を採取し溶解させ、それらのDNA含有物をDNAの存在に関して調べることができる。あるいは上清中のタンパク質の存在を、以下に記載したのと同様に抗体を使用して検出することができる。
【0114】
組換え核酸の存在に関して直接アッセイすること以外に、組換え核酸がタンパク質の発現を誘導することができるときは、よく知られている免疫学的方法によって首尾よい形質転換を確認することができる。例えば、発現ベクターを用いて首尾よく形質転換された細胞は、適切な抗原性を示すタンパク質を生成する。形質転換されている疑いのある細胞のサンプルを採取し、適切な抗体を使用してタンパク質に関してアッセイする。
【0115】
したがって、形質転換された宿主細胞そのもの以外に、本発明は、栄養培地中のこれらの細胞の培養物、好ましくはモノクローナル(クローン的に均質な)培養物、またはモノクローナル培養物由来の培養物も企図する。培養物もタンパク質を含むことが好ましい。
【0116】
形質転換宿主細胞を培養するのに有用な栄養培地は当分野でよく知られており、幾つかの市販の供給源から得ることができる。
【0117】
本発明の第3の態様は、本発明の第2の態様による核酸を含むベクターを与える。
【0118】
本発明の第4の態様は、本発明の第3の態様によるベクターを含む宿主細胞を与える。
【0119】
宿主細胞は、NS/OまたはCHO細胞などの哺乳動物細胞であることが好ましい。
【0120】
本発明の化合物は、以下のステップ:Abx Mixed Resinカラムクロマトグラフィー、組換えタンパク質Aクロマトグラフィー、およびQ Sepharoseカラムクロマトグラフィー、次に配合緩衝液に緩衝液を交換するためのPellicon2クロスフローダイアフィルトレーションの幾つかまたは全てを順に使用して培養培地から精製することができる。ウイルス不活性化および除去ステップをこれらのステップに組み込むことができる。ウイルス不活性化および除去ステップは精製自体には必要とされないが、調節に関する考慮事項を満たすために使用される。
【0121】
本発明の化合物を生成するのに適した詳細な方法は、Gillies et al(参照により本明細書に組み込まれているWO99/29732)中に記載されている。他の適切な技法は、Molecular Cloning.:a Laboratory Manual : 3rd edition、Sambrook and Russell、2001、Cold Spring Harbor Laboratory Press中に記載されている。
【0122】
本発明の第5の態様は、本発明の第1の態様の化合物および薬剤として許容可能な担体を含む医薬組成物を与える。
【0123】
化合物、例えば融合タンパク質はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中、アルギニン、クエン酸、マンニトール、および/またはTween、あるいは他の標準的なタンパク質配合剤を含む緩衝液中に配合することができることが好ましい。
【0124】
組成物は、非経口投与に適していることが有利である。
【0125】
配合物は、活性化合物の一日用量または単位、一日用量未満またはその適切な分画を含む単位用量であることが好都合である。
【0126】
本発明の化合物は活性成分を含む薬剤配合物の形、場合によっては無毒の有機酸、または無機酸、または塩基、添加塩の形、薬剤として許容可能な剤形で通常は経口投与、あるいは任意の非経口経路によって投与する。治療する障害および患者、ならびに投与の経路に応じて、組成物はさまざまな用量で投与することができる。
【0127】
ヒトの療法では、本発明の化合物は単独で投与することができるが、一般には目的とする投与の経路および標準的薬剤実践に関して選択される適切な医薬賦形剤、希釈剤または担体と混合して投与する。
【0128】
例えば本発明の化合物は即効型、遅延型または徐放型用途の香味剤または着色剤を含むことができる、錠剤、カプセル、膣座剤、エリキシル剤、溶液または懸濁液の形で経口、頬側または舌下投与することができる。本発明の化合物は陰茎海綿体注射によって投与することもできる。
【0129】
このような錠剤は、微結晶性セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、第2リン酸カルシウムおよびグリシンなどの賦形剤、澱粉(好ましくはトウモロコシ、ジャガイモまたはタピオカ澱粉)、グリコールデンプンナトリウム、クロスカルメロースナトリウムおよび幾つかの複合シリケートなどの錠剤分解物質、ならびにポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシ-プロピルセルロース(HPC)、スクロース、ゼラチンおよびアカシアなどの粒状結合剤を含むことができる。さらに、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリルおよびタルクなどの潤滑剤を含むことができる。
【0130】
同様の型の固形組成物を、ゼラチンカプセル中の充填剤として使用することもできる。この点において好ましい賦形剤には、ラクトース、澱粉、セルロース、乳糖または高分子量ポリエチレングリコールがある。水性懸濁液および/またはエリキシル剤用に、本発明の化合物はさまざまな甘味剤または香味剤、着色物質または色素、乳化剤および/または懸濁剤、かつ水、エタノール、プロピレングリコールおよびグリセリン、およびこれらの組合せなどの希釈剤と組合せることができる。
【0131】
本発明の化合物は非経口的、例えば静脈内、動脈内、腹膜内、クモ膜下、心室内、基質内、頭蓋内、筋肉内または皮下に投与することもでき、あるいは本発明の化合物は注入技法によって投与することができる。本発明の化合物は、他の物質、例えば溶液を血液と等張にするのに充分な塩またはグルコースを含むことができる滅菌水溶液の形で使用するのが最良である。必要な場合、水溶液は適切に緩衝剤で処理しなければならない(好ましくは3〜9のpHに)。滅菌条件下での適切な非経口配合物の調製は、当業者によく知られている標準的な薬剤技法によって容易に行われる。
【0132】
非経口経投与に適した配合物には、配合物を目的のレシピエントの血液と等張にする抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤および溶質を含むことができる水性および非水性滅菌注射溶液;ならびに懸濁剤および増粘剤を含むことができる水性および非水性滅菌懸濁液がある。配合物は単位用量または多用量容器、例えば密封アンプルおよびバイアル中に存在することができ、使用の直前に滅菌液状担体、例えば注射水の添加のみを必要とする凍結-乾燥(凍結乾燥)状態で保存することができる。即席の注射溶液および懸濁液は、以前に記載された種類の滅菌粉末、顆粒および錠剤から調製することができる。
【0133】
医師は任意の個々の患者に最適であると思われる実際の用量を決定することができ、その用量は個々の患者の年齢、体重および応答と共に変わると思われる。実施例9中に記載する用量は、平均的な場合を例示するものである。当然ながら、これより高いかあるいは低い用量範囲に値する個々の場合が存在する可能性があり、それらは本発明の範囲内にある。
【0134】
本発明の第6の態様は、医薬品中に使用するための本発明の第1の態様による化合物を与える。
【0135】
本発明の第7の態様は、癌を有する患者を治療するための医薬品の調製における、本発明の第1の態様による化合物の使用を与える。
【0136】
本発明の第8の態様は、癌を有する患者を治療する方法であって、本発明の第1の態様による化合物を前記患者に投与することを含む方法を与える。
【0137】
原則として、本発明の化合物および組成物を使用して、イヌおよびネコなどのペットを含めた任意の哺乳動物、ならびにウシ、ウマ、ヒツジおよびブタなどの農業上重要な動物を治療することができる。
【0138】
しかしながら、患者はヒトであることが好ましい。
【0139】
本発明の化合物は、膠芽細胞腫などの固形腫瘍を治療するのに特に適している。他の好ましい徴候には卵巣、胃、結腸直腸および膵臓癌がある。
【0140】
ここで本発明を、以下の非制限的実施例を参照しながら詳細に記載する。
図面において、図2は構築体pdHL11-huBC1-M1-hup35を示す図である(実施例1参照)。以下の特徴を示す:
[表A]
図面において、図3は構築体pNeo-CMV-hup40を示す図である(実施例1参照)。以下の特徴を示す:
[表B]
【0141】
(実施例)
(実施例1-huBC1-huIL12融合タンパク質の生成)
I.huBC1-huIL12用の発現ベクターの構築
1.軽鎖の可変領域(VL)
ヒト化BC1抗体の軽鎖の可変領域(VL)をコードするDNAは、プラスミド、RKA.pMMR010の形で与えられた。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して、VLDNAを発現ベクターpdHL11に適合させた。正方向プライマーは配列5'-CTTAAGCGAAATTGTGTTGACGCAGTC-3'[配列番号11]を有し、この場合CTTAAGはAflII制限部位であり、GAAは成熟VLのN末端アミノ酸残基である。逆方向プライマーは配列5'-GGATCCACTTACGTTTGATCTCCAGCTTGG-3'[配列番号12]を有し、この場合、VLの3'端およびGGATCCとハイブリダイズした下線部分の配列が、VLスプライシングドナー部位の下流にBamHI制限部位を加える。
【0142】
マウス免疫グロブリン軽鎖遺伝子由来のゲノムのシグナルペプチド配列は、軽鎖と重鎖のhuBC1融合タンパク質の分泌用に使用した。Kozakのコンセンサス配列CCACCATGGは、ATGにおける翻訳開始に最適なリボソーム結合用に導入した[Kozak (1984) Nature 308 : 241]。これはコドンAAGからGAGへの翻訳開始後に最初のアミノ酸残基を突然変異させて、配列TCTAGACCACCATGGAG[配列番号13]を与えたことによって行い、この場合Kozakのコンセンサス配列は下線で示し、XbaI制限部位(TCTAGA)は5'端に位置する。
【0143】
シグナルペプチドの3'端において、-2アミノ酸残基(-1アミノ酸はシグナルペプチドのC末端残基である)をコードする遺伝子配列に、シグナルペプチドの端をコードするDNAがCTTAAGCであり、CTTAAGが作製されたAflII部位であるように、セリン残基からロイシン残基への(AGCからTTAへの)突然変異を起こさせた[Lo et al.(1998) Protein Engineering11 : 495]。したがって、シグナルペプチド配列は、開始コドン後の第一のアミノ酸残基における置換、および-2位置のアミノ酸残基における他の置換を含む。このシグナルペプチドは細胞内のシグナルペプチドの近くで切断され、分泌タンパク質中には出現しないので、これらの突然変異が抗体生成物の組成に影響を与えることはない。ゲノムのシグナルペプチド配列を含む450bpのXbaI-AflII断片は、VLをコードするAflII-BamHI断片と連結させてXbaI-BamHI断片を与え、次いでこれを、転写制御要素および免疫グロブリン定常領域配列を既に含むpdHL11発現ベクターに挿入した(以下参照)。
【0144】
2.重鎖の可変領域(VH)
ヒト化BC1抗体の重鎖の可変領域(VH)をコードするDNAは、プラスミドRHA.pGammalの形で得た。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して、VHDNAを発現ベクターpdHL11に適合させた。正方向プライマーは配列5'-CTTAAGCGAGGTGCAGCTGGTGCAGTC-3'[配列番号14]を有し、この場合CTTAAGはAflII制限部位であり、GAGは成熟VHのN末端アミノ酸残基である。逆方向プライマーは配列5'-AAGCTTACTTACCTGAGGAGACGGAGACC-3'[配列番号15]を有し、この場合、VHの3'端およびAAGCTTとハイブリダイズした下線部分の配列が、VHスプライシングドナー部位の下流にHindIII制限部位を加える。
【0145】
VHDNAとの連結前に、ゲノムのシグナルペプチド配列を含む450bpのXbaI-AflII断片のXbaI部位を、リンカーによる連結によりXhoI部位に転換して、CCTCGAGGがXhoIリンカーの配列であり、CTAGAがDNAポリメラーゼのKlenow断片を充填することによって平滑になったXbaI接着末端であり、かつCCACCATGGがKozakのコンセンサス配列である、配列CCTCGAGGCTAGACCACCATGGAG[配列番号16]を与えた。ゲノムリーダー配列を含むXhoI-AflII制限断片は、VH遺伝子を含むAflII-HindIII断片と連結させ、生成したXhoI-HindIII断片は、次いで転写制御要素および免疫グロブリン定常領域配列を既に含むpdHL11発現ベクターに挿入した(以下参照)。
【0146】
3.ヒト定常領域
軽鎖構築体はヒトkappa鎖遺伝子の定常領域を使用し、重鎖構築体はヒトガンマ-1鎖の定常領域を使用する。CH3ドメインをコードする野生型DNA配列中の翻訳停止コドンの280bp上流に位置する、SmaI制限部位が存在する。このSmaI部位は、サイレント突然変異(TCCからTCA)の導入によって破壊した。他のサイレント突然変異を停止コドンの10bp上流に導入して、新たなSmaI部位を含む配列CCCGGGTAAA(停止)[配列番号17]を作製した[Lo et al.(1998) Protein Engineering11 : 495]。ここでこのSmaI部位はpdHL11発現ベクター中に特有のものであり、抗体-サイトカイン融合タンパク質を作製するための融合接合部として使用する。
【0147】
4.ヒトIL-12のp35およびp40サブユニットをコードするcDNA
ヒトIL-12のp35およびp40サブユニットのcDNAを、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用してヒト末梢血単核球(PBMC)からクローニングした。第一鎖cDNAは、オリゴdTプライマーおよび逆転写酵素を使用して合成した。cDNA産物はPCR用の鋳型として使用した。p35サブユニット用に、センスプライマーは配列5'-CCAGAAAGCAAGAGACCAGAG-3'[配列番号18]を有し、アンチセンスプライマーは配列5'-GGAGGGACCTCGAGTTTTAGGAAGCATTCAG-3'[配列番号19]を有する。センスプライマーはXmaI部位のすぐ上流のp35メッセージの5'非翻訳領域中の配列に由来し、一方アンチセンスプライマーは翻訳停止コドン、その直後に定方向的クローニング用のXhoI部位をコードする。p40サブユニットcDNA用のプライマーは、センスプライマー用には5'-CTCCGTCCTGTCTAGAGCAAGATGTGTC-3'[配列番号20]、およびアンチセンスプライマー用には5'-GCTTCTCGAGAACCTAACTGCAGGGCACAG-3'[配列番号21]であった。センスプライマーは特有のXbaI部位を翻訳開始部位の上流に加え、一方アンチセンスプライマーはXhoI部位を翻訳停止コドンの下流に加える。
【0148】
5.huBC1-H鎖-ヒトp35DNAの構築
クローニングしたp35cDNAは、配列を確認した後に、以下のような融合タンパク質としての発現に適合させた。融合接合部において、CH3のC末端アミノ酸残基はリシンであり、成熟p35のN末端残基はアルギニンである。この2つの塩基性残基との融合接合部におけるタンパク質分解を最小にするために、この両方をアラニンに突然変異させ、これはIL2イムノサイトカインの場合、血清半減期を延長させることが示されてきている[Gillies et al.(2002) Clin.Cancer Res.8:210]。融合接合部を再構築するために、p35の成熟N末端のわずか11塩基対(bp)下流に好都合なBalI部位が存在する。したがって、センス鎖5'-CCGGGCGCCGCAAACCTCCCCGTGG-3'[配列番号22]およびアンチセンス鎖5'-CCACGGGGAGGTTTGCGGCGC-3'[配列番号23]からなり、GCCGCAが2つのアラニン置換基を示すXmaI-BalIオリゴヌクレオチドリンカーを合成し、p35サブユニットの残り部分をコードするBalI-XhoI制限断片と連結させた。生成したXmaI-XhoI断片は、次いでpdHL11発現ベクター中の特有のXmaI部位と連結させ、CH3-p35融合接合部を形成した。この接合部におけるペプチド配列、AAが2つのアラニン置換基であるLSLSPGAANLPV[SEQ[配列番号24]は、新規でおそらく免疫原性がある。実際それは、脱免疫処置と呼ばれるBiovationの技術に基づいてLSLS残基をATATに突然変異させることにより除去することができると思われる、考えられるTヘルパー細胞のエピトープを含んでいた。生成した脱免疫融合接合部の配列はM1と呼ぶ。したがってhuBC1-H鎖-M1-hup35DNAは、シグナルペプチド-VHをコードするXhoI-HindIII断片、脱免疫接合部を有するゲノムのヒトIgG1H鎖定常領域をコードするHindIII-XmaI断片、およびp35サブユニットをコードするXmaI-XhoI断片からなる。
【0149】
6.発現ベクターpdHL11-huBC1-hup35
発現ベクターpdHL11は、以前に記載されたpdHL7に由来する(Gllies et al.(1998) J.Immunol.160 : 6195)。pdHL7中と同様に、pdHL11中のL鎖とH鎖の2つの転写単位は、CMVエンハンサー-プロモーターを含む[Boshart et al.(1985) Cell41 : 521〜530]。CMVエンハンサー-プロモーターのDNAは、市販のpcDNAI(Invitrogen Corp、サンディエゴ、CA)のAflII-HindIII断片から得た。3'端では、L鎖はヒト免疫グロブリンkappa鎖遺伝子の3'非翻訳領域およびポリアデニル化シグナルを使用し、H鎖はSV40後期領域の3'非翻訳領域およびポリアデニル化シグナルを使用する。
【0150】
pdHL7とpdHL11の間の主な違いは、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)選択マーカーの転写単位にある。この転写単位のSV40エンハンサーは、以下のようにpdHL11において破壊した。SV40エンハンサー/プロモーター中には2つの72bpの反復配列が存在し、それぞれ72bp内にSphI制限部位が存在する。オリゴヌクレオチドリンカー-アダプターを介したエンハンサーのSalI部位5'と末端SphI部位の連結は、2つの72bpの反復配列から120bpの欠失をもたらした。このようなエンハンサー無しのプロモーターは、DHFR選択マーカーの一層低い発現レベルを与えるはずである。これは理論上、より少数の安定的にトランスフェクトされた細胞のクローンを生成するはずであり、これらのクローンは薬剤淘汰を生き延びるために、充分なDHFRがエンハンサー無しのプロモーターから発現されるように染色体の活性転写領域中に組み込まれた、プラスミドを有すると思われる。完全に機能的なエンハンサーおよびプロモーターによって働く当該の遺伝子は、この活性転写領域において一層高いレベルで発現されるはずである。さらに、この弱力化転写単位の方向は、L鎖のCMVエンハンサーがDHFRの発現用の末端SV40プロモーターに直接的な影響を与えることができないように、pdHL11中では逆になった。
【0151】
構築体pdHL11-huBC1-M1-hup35は、制限エンドヌクレアーゼによる消化によって広くマッピングした。LおよびH鎖全体のコード領域は完全に塩基配列決定した。その顕著な特徴は図2中に示す。
【0152】
7.hup40サブユニット用の発現ベクター
完全なオープンリーディングフレームを含むクローニングしたp40cDNAは、配列を確認した後に、XbaI-XhoI断片として別の発現ベクターに連結させた。この発現ベクターpNeo-CMV-hup40は、ネオマイシン類似体G418を使用するトランスフェクト細胞の選択用にネオマイシン耐性遺伝子を含む。p40の発現はCMVエンハンサー-プロモーターの制御下にあり、ネズミkappaポリアデニル化シグナルを利用する。
【0153】
構築体pNeo-CMV-hup40は、制限エンドヌクレアーゼによる消化によって広くマッピングした。その顕著な特徴は図3中に示す。
【0154】
II.huBC1-huIL12のDNAおよびタンパク質配列
1.huBC1-huIL12の軽鎖のペプチドおよびDNA配列
ヒト化BC1-huIL12の分泌軽鎖のペプチド配列は以下の通りである(VLには下線を引く):
【0155】
【化10】
[配列番号7]
【0156】
翻訳開始コドンATGから始まり停止コドンTAGまでの、軽鎖構築体のDNA配列を以下に与える(VLには下線を引き;大文字および小文字は、コードおよび非コード配列をそれぞれ表す):
【0157】
【化11】
[配列番号9]
【0158】
2.huBC1-huIL12の重鎖のペプチドおよびDNA配列
分泌重鎖huBC1-hup35のペプチド配列は以下の通りである(VHには下線を引き、脱免疫M1接合部はイタリックで表し、およびヒトp35は太字で表す):
【0159】
【化12】
[配列番号6]
【0160】
翻訳開始コドンATGから始まり停止コドンTAAまでの、重鎖huBC1-hup35構築体のDNA配列を以下に与える(VHには下線を引き;p35配列は太字で表し;大文字および小文字は、コードおよび非コード配列をそれぞれ表す):
【0161】
【化13】
[配列番号8]
【0162】
3.p40サブユニットのペプチドおよびDNA配列
分泌ヒトp40サブユニットのペプチド配列は以下の通りである:
【0163】
【化14】
[配列番号4]
【0164】
翻訳開始コドンATGから始まり停止コドンTAGまでの、p40構築体のDNA配列を以下に与える(この構築体はp40mRNAのcDNAである。その原型シグナルペプチドをコードするDNAはイタリックで表し、これに成熟p40をコードするDNAが続く):
【0165】
【化15】
[配列番号10]
【0166】
(実施例2-結合特性(試験I))
表面プラズモン共鳴および免疫染色実験を行って、本発明の例示的なBC1-IL12融合タンパク質と癌胎児性フィブロネクチンの結合を特徴付けた。
【0167】
BC1-IL12融合タンパク質とその標的抗原の結合の特徴付けの工程中、この融合タンパク質は、対応するBC1抗体自体よりもその標的と強く結合したことが分かった。例えば、BC1およびBC1-IL12とヒトフィブロネクチンドメイン7、ED-B、8、および9を含むポリペプチドの結合を、表面プラズモン共鳴法を使用して測定した。表1は2つの実験の結果を要約する。
【0168】
【表1】
【0169】
これらの結果は、huBC1-IL12とその標的抗原の結合は、対応するhuBC1抗体単独より少なくとも10倍強い、最も考えられるのは約16倍強いことを示す。
【0170】
表面プラズモン共鳴試験の結果を確認するために、標準的手順に従いU87MG皮下腫瘍を免疫無防備状態のSCIDCB17マウスにおいて生成させ、腫瘍切片はhuBC1抗体およびhuBC1-M12融合タンパク質を用いて免疫染色した。huBC1-IL12融合タンパク質を用いた染色の強度は、huBC1抗体を用いた強度よりはるかに大きかったことが分かった(データは示さず)。
【0171】
(実施例3-結合特性(試験II))
導入部
表面プラズモン共鳴(SPR)技術を使用して、抗原結合の特異性(すなわち、組換え癌胎児性フィブロネクチンFN7B89のみの認識)を実証し、ネズミおよびヒトBC1抗体およびBC1-IL12イムノサイトカインに関する動態速度定数/親和性値を測定/比較した。全ての測定試薬およびソフトウェアはBiocoreによって与えられた(試薬およびソフトウェアのリストに関する付録を参照のこと)。
【0172】
アッセイ
ED-B陰性(FN789)組換えフィブロネクチンとED-B陽性(FN7B89)組換えフィブロネクチン(以下の「配列情報」を参照)を、標準的なアミン結合プロトコルおよびBiacoreによって与えられた結合試薬を使用して、CM5センサーチップの2つの異なるフローセル上で結合させた。他の2つのフローセルは空の状態にして、陰性対照表面を使用した。抗原特異性を実証するために、さまざまなBC1抗体およびイムノサイトカインを、ランニングバッファー、HEPES緩衝生理食塩水(HBS-EP)中に500nMに希釈した。これらのサンプルはフィブロネクチン結合表面に5分間注入し、結合曲線を比較した。ランニングバッファー(HBS-EP)は陰性対照としてそれぞれの表面に注入して、基底シグナルを示した。チップ表面は、0.1MのHCl、pH1.5の1分間のパルス、次に0.1MのH3PO4の第2の1分間のパルスによって再生した。
【0173】
動態分析用に、ED-B陽性組換えフィブロネクチン(FN7B89)のみをチップに結合させた。3つの異なる濃度の物質を、3つの異なるフローセルと結合させた。第4のフローセルは非結合状態にし、陰性対照として使用した。4〜5つの濃度のそれぞれの分子を、1000nM〜125nM(muBC1)、200nM〜25nM(huBC1)および100nM〜6.25nM(ネズミおよびヒトBC1-IL12)の範囲の二重の連続希釈を実施することによって調製した。連続希釈は、ランニングバッファー(HBS-EP)中において三連で行った。それぞれの希釈液は5分間(会合)、次にランニングバッファーを5分間(解離)10TL/分の流速で注入した。フローセルは、前に記載した抗原特異性の実験で行ったのと同様に再生した。曲線の当てはめは、Biacoreによって与えられたソフトウェアを使用して行った。曲線の当てはめの具体的な詳細に関する付録を参照のこと。
【0174】
結果
さまざまなBC1分子が組換え癌胎児性フィブロネクチン、FN7B89と異なる強度で結合するが、組換え「正常」フィブロネクチン、FN789とは全く結合しない(図4参照)。これは試験した全てのBC1分子において、抗体とイムノサイトカインの両方が(原型muBC1と比較して)それらの抗原特異性を有していたことを示す。これらのデータは、抗原結合の動態は分子ごとに変わることも実証する。
【0175】
動態分析は、速度定数は分子間で著しく異なることを実証する(表2参照)。
【0176】
【表2】
【0177】
さらにBC1-IL12イムノサイトカインは、ネズミまたはヒト抗体よりはるかに高いFN7B89に関する親和性を有する。速度定数の違いにもかかわらず、huBC-1muIL12とhuBC1-huIL12はそれらの抗原に関してほぼ同じ結合親和性を有する。これらのデータは、BC1抗体のヒト化、およびその後のBC1-IL12イムノサイトカインの生成は、組換え癌胎児性フィブロネクチンに関して増大した親和性を有する分子をもたらしたことを示す。
【0178】
結論
全てのBC1分子が組換え癌胎児性フィブロネクチン、FN7B89と特異的に結合し、hyBC-huIL12イムノサイトカインの構築体は、抗原特異性の消失をもたらさなかったことが示される。BC1ネズミ抗体のヒト化は、増大した結合親和性を有する分子をもたらした。親和性のこの増大は、有意に速いオンレートによるものである。このヒト化抗体は、そのネズミ相当物より約34倍速くその抗原と結合する。しかしながら、ヒト化は負の影響も有する。huBC1のオフレートはmuBC1より約5倍速い。BC1-IL12イムノサイトカインを作製するために抗体にILI2を加えることは、これを相殺するのを手助けし、muBC1から見られたのと同様のオフレートをもたらす。In vitroにおいてhuBC1-hulL12は、in vivoで強力な腫瘍標的分子である可能性を有する高親和性イムノサイトカインである。
【0179】
配列情報
(a)フィブロネクチン789断片
遺伝子座 FN789.DNA、1126bpのmRNA、PRI 01-OCT-1999
定義 pQE12(pAS32)中のフィブロネクチンドメイン789のヒトmRNA(ED-B無し)
NID g31396およびpQE12(Qiagen)に由来。
バージョン X02761.1 GI:31396
キーワード 可変スプライシング;フィブロネクチン。
供給源 ヒト
生物 ホモサピエンス
真核生物;後生動物;脊索動物門;有頭動物;脊椎動物門;哺乳類;
真獣類;霊長類;狭鼻類;ヒト科;ホモ。
CDS <208..1068
/生成物="FnMRGS-789-HHHHHH"
/翻訳="
【0180】
【化16】
[配列番号25]
【0181】
注釈1:残基1〜207は、Qiagenプロモータープライマー(CCCGAAAAGTGCCACCTG)由来またはこれを含むpQE配列である。残基1069〜1126は、Qiagen逆方向プライマー配列(GTTCTGAGGTCATTACTGG)用のヘキサ-ヒスチジンタグの末端由来のpQE12配列である。フィブロネクチン由来配列(すなわちMRGS無し、かつヘキサ-ヒスチジンタグは小文字である)。
【0182】
注釈2:コード配列は突然変異、P8Qの変化をもたらすCC(230)A>CA(230)A、T27Aの変化をもたらすA(286)CA>G(286)CA、およびサイレントS150S変化をもたらすTCA(657)>TCG(657)を有することに留意されたい。
塩基数 319a 297c 226g 284t
起源
【0183】
【化17】
[配列番号26]
【0184】
(b)フィブロネクチン7B89断片
遺伝子座 FN7B89.DNA、1399bpのmRNA、PRI 01-OCT-1999
定義 pQE12(pAS33)中のフィブロネクチンドメイン7B89のヒトmRNA
NID g31396およびpQE12(Qiagen)に由来。
バージョン X02761.1 GI:31396
キーワード 可変スプライシング;フィブロネクチン。
供給源 ヒト
生物 ホモサピエンス
真核生物;後生動物;脊索動物門;有頭動物;脊椎動物門;哺乳類;
真獣類;霊長類;狭鼻類;ヒト科;ホモ。
CDS <208..1341
/生成物="FnMRGS-7B89-HHHHHH"
/翻訳="
【0185】
【化18】
[配列番号27]
【0186】
注釈1:残基1〜207は、Qiagenプロモータープライマー(CCCGAAAAGTGCCACCTG)由来またはこれを含むpQE配列である。残基1342〜1399は、Qiagen逆方向プライマー配列(GTTCTGAGGTCATTACTGG)用のヘキサ-ヒスチジンタグの末端由来のpQE12配列である。フィブロネクチン由来配列(すなわちMRGS無し、かつヘキサ-ヒスチジンタグは小文字である)。
【0187】
注釈2:コード配列は突然変異、P8Qの変化をもたらすCC(230)A>CA(230)A、T27Aの変化をもたらすA(286)CA>G(286)CA、およびサイレントS241S変化をもたらすTCA(930)>TCG(930)を有することに留意されたい。
塩基数 390a 368c 290g 351t
起源
【0188】
【化19】
[配列番号28]
【0189】
物質および方法
1.物質:Biacore AB、Uppsala
カタログ番号およびウェブサイト上で入手可能な接触情報:
www.biacore.com
Biacore2000
(機器を動かす)BIA制御ソフトウェア
BIA評価ソフトウェア(データ分析用)
SeniorチップCM5(保証等級)
HBS-EP
アミン結合用キット
【0190】
2.動態パラメータ:BIA評価において選択した適合パラメータ
曲線の当てはめ=二価(分析物は抗体である)
注入開始=0秒
会合=30〜270秒(4分)
注入停止=300秒
解離=330〜600(4.5分)
【0191】
(実施例4-In vitroでの癌療法の有効性の試験)
癌の治療におけるBCI-M12融合タンパク質の有用性を確認するために、標準的手順(実施例1および参照により本明細書に組み込まれているGillies et al、WO99/29732を参照)に従い、huBC1-muIL12融合タンパク質を構築し発現させた。ヒトIL-12はネズミIL-12受容体によって認識されないので、このタンパク質はネズミIL-12を使用した。
【0192】
約140立方ミリメートルの体積のU87MG膠芽細胞腫腫瘍を有するSCIDCB17マウスを、表3中に示すようにhuBC1またはhuBC1-IL12のいずれかで治療した。
【0193】
【表3】
【0194】
(実施例5-マウスの腫瘍モデルにおけるhuBC1-g1-muIL12の有効性)
1.導入部
目的は、マウスの異なる腫瘍モデルにおけるhuBC1-IL12の有効性を測定することである。huBC1(ヒト化BC1抗体)は、血管新生腫瘍の血管新生部分の内皮下細胞外マトリクス(ECM)中に存在するヒトフィブロネクチンイソ型、B-FNを標的化する。B-FNは優れた腫瘍マーカーである、何故ならそれは癌胎児性であり、血管形成と関係があり、かつ正常成体組織中で検出不能だからである。huBC-1はヒトB-FNのみを認識し、ネズミB-FNとは交差反応しないので、重症複合免疫不全(SCID)マウスおよびヌードマウスにおけるヒト腫瘍細胞と関係がある異種腫瘍モデルを、前臨床試験用に使用した。さらにIL12は種特異的なので、ヒト目的用のhuBC1-huIL12(ヒト化BC1抗体-ヒトIL12融合タンパク質)は、マウス中では働かない。したがって本発明者らは、ネズミモデルにおける評価用の代理薬剤候補としてhuBC1-ネズミIL12を生成した。
【0195】
2.物質および方法
2.1 マウス系統
SCIDCB17およびヌードマウスは、Taconic、Charles River、and Jackson Lab
から購入した。
【0196】
2.2 腫瘍細胞系
ヒト前立腺癌PC3mm2は、Scripps Research InstituteのDr.Ralph Reisfeldからの贈呈品であった。ヒト星状細胞種U-87MG、ヒト表皮癌A431およびヒト結腸癌HT29はAmerican Type Culture Collectionから得た。
【0197】
2.3 タンパク質
huBC1-g1-muIL12はhuBC1-g1-M1-muIL12と同じである。それは、ヒトg1定常領域を有するヒト化BC1抗体とネズミIL-12の融合タンパク質であり、M1は脱免疫融合接合部である(前の実施例1参照)。
【0198】
huBC1-g1-muIL12は、huBC1-huIL12と同じ方法で生成した(前の実施例1参照)、ただしmup40およびmup35は、それぞれhup40およびhup35に交換した。
【0199】
3.実験の設計、投与スケジュールおよび評価
3.1 SCIDCB17マウスにおけるU-87MG皮下モデル
02-23 SCIDCB17マウスにおける皮下モデルに対するヒトU-87MG星状細胞種細胞中のhuBC1-g1-M1-muIL12の影響
【0200】
マウス:
7週齢のSCIDCB17マウス、オス
【0201】
腫瘍注射:
プロトコルに従い、SCIDCB17マウスの皮下背部、近位の正中線に、0.1mlのPBS中に4×106個の生命力のあるU-87MG腫瘍細胞を注射する。
【0202】
群および治療:
腫瘍の大きさが約100mm3に達したとき、治療を開始する。マウスは、等しい平均値および範囲の腫瘍体積を有する5群(n=8)のマウスに選別する:
1.PBS 0.2ml、静脈内注射、第0〜8日
2.huBC1-g1-M1-MuIL12 20μg、静脈内注射、第0〜8日
3.huBC1-g1-M1-MuIL12 5μg、静脈内注射、第0〜8日
4.huBC1-g1-M1-MuIL12 20μg、静脈内注射、一日おき、合計12回投与
5.huBC1Ab 0.5mg、腹膜内注射、第0日および第4日(3匹のマウスのみ)
【0203】
治療評価:
腫瘍の大きさを1週間に2回測定する。
式、幅×長さ×高さ×0.5236を使用して、腫瘍体積を決定する。
5000mm3を超える腫瘍の大きさを有する、任意のマウスを殺傷する。
適切な時間地点でT/C比(治療した腫瘍体積と対照腫瘍体積の比)を計算する。
【0204】
3.2 SCIDCB17マウスにおけるA431皮下モデル
02-37 SCIDCB17マウスにおけるA431皮下モデルに対するBC1-g1-M1-muIL12の影響
【0205】
マウス:
8週齢のSCIDCB17マウス、オス
【0206】
腫瘍注射:
プロトコルに従い、SCIDCB17マウスの皮下背部、近位の正中線に、0.1mlのPBS中に1×106個の生命力のあるA431腫瘍細胞を注射する。
【0207】
群および治療:
腫瘍の大きさが〜100mm3に達したとき、治療を開始する。マウスは、等しい平均値および範囲の腫瘍体積を有する2群(n=8)のマウスに選別する:
1.PBS 0.2ml、静脈内注射、第0〜7日
2.huBC1-muIL12 20μg、静脈内注射、第0〜7日
【0208】
評価:
腫瘍の大きさを1週間に2回測定する。
式、幅×長さ×高さ×0.5236を使用して、腫瘍体積を決定する。
5000mm3を超える腫瘍の大きさを有する、任意のマウスを殺傷する。
適切な時間地点でT/C比(治療した腫瘍体積と対照腫瘍体積の比)を計算する。
【0209】
3.3 SCIDCB17マウスにおけるPC3mm2皮下モデル
02-44 SCIDCB17マウスにおけるPC3mm2皮下モデルに対するBC1-g1-M1-muIL12の影響
【0210】
マウス:
8週齢のSCIDCB17マウス、オス
【0211】
腫瘍注射:
プロトコルに従い、SCIDCB17マウスの皮下背部、近位の正中線に、0.1mlのPBS中に2×106個の生命力のあるPC3mm2細胞を注射する。
【0212】
群および治療:
腫瘍の大きさが約100mm3に達したとき、治療を開始する。マウスは、等しい平均値および範囲の腫瘍体積を有する2群(n=7)のマウスに選別する:
1.PBS 0.2ml、静脈内注射、第0〜6日
2.BC1-g1-muIL12 20μg、静脈内注射、第0〜6日
【0213】
評価:
腫瘍の大きさを1週間に2回測定する。
式、幅×長さ×高さ×0.5236を使用して、腫瘍体積を決定する。
5000mm3を超える腫瘍の大きさを有する、任意のマウスを殺傷する。
適切な時間地点でT/C比(治療した腫瘍体積と対照腫瘍体積の比)を計算する。
【0214】
3.4 ヌードマウスにおけるHT-29皮下モデル
02-70 ヌードマウスにおけるHT-29皮下モデルに対するhuBC1-g1-M1-muIL12の影響
【0215】
マウス:
6〜7週齢のヌードマウス(nu/nu)、オス
【0216】
腫瘍注射:
プロトコルに従い、ヌードマウスの皮下背部、近位の正中線に、0.1mlのPBS中に1×106個の生命力のあるHT-29腫瘍細胞を注射する。
【0217】
群および治療:
腫瘍の大きさが約100mm3に達したとき、治療を開始する。マウスは、等しい平均値および範囲の腫瘍体積を有する2群(n=5)のマウスに選別する:
1.PBS 0.2ml、静脈内注射、第0〜4日
2.huBC1-g1-muIL12 20μg、静脈内注射、第0〜4日
【0218】
評価:
腫瘍の大きさを1週間に2回測定する。
式、幅2×長さ×0.5236を使用して、腫瘍体積を決定する。
5000mm3を超える腫瘍の大きさを有する、任意のマウスを殺傷する。
適切な時間地点でT/C比(治療した腫瘍体積と対照腫瘍体積の比)を計算する。
【0219】
3.5 SCIDCB17マウスにおけるPC3mm2肺転移モデル
03-11 SCIDCB17マウスにおけるPC3mm2肺転移モデルに対するBC1-g1-M1-muIL12の影響
【0220】
マウス:
8週齢のSCIDCB17マウス、オス
【0221】
腫瘍注射:
0.3mlのPBS中に2×106個の生命力のあるPC3mm2の単細胞を、第0日にマウスに静脈内注射する。
【0222】
群(n=8)および治療:
1.PBS 0.2ml、静脈内注射、第11〜15日
2.BC1-g1-M1-muIL12 16μg、静脈内注射、第11〜15日
3.BC1-g1-M1-muIL12 8μg、静脈内注射、第11〜15日
【0223】
終了:
第28日に、あるいは対照マウスが疾患状態になったときに、マウスを殺傷する。
肺を除去し、それらをブアン溶液中に固定する。
肺重量および体重を測定する。
肺転移を記録する。
他の器官およびリンパ節における転移を調べ記録する。
【0224】
4.結果
4.1 免疫欠如SCIDCB17マウスにおけるU-87MG皮下モデル
最初に本発明者らは、この腫瘍細胞系での高レベルのB-FN発現のために選択したヒト星状細胞種U-87MGを使用して、皮下腫瘍モデルを確立しなければならなかった(Marian et al、1997、Cancer80 : 2378)。滴定を行って、最適な腫瘍増殖のために注射する細胞数を決定した。異なる数の生命力のある細胞(1〜6×106個)を、それぞれのマウスの背部に注射して皮膚腫瘍を形成させ、それらの増殖率を調べた(図5a)。興味深いことに、注射した細胞数とは無関係に、腫瘍の増殖率は約3週間一定状態であり、その後はいずれも急速に増大した。
【0225】
その後の実験用に、4×106個の生命力のある細胞をそれぞれのマウスの背部に注射した。6日後、平均的な腫瘍の大きさは約135mm3であり、このとき治療を開始した(第0日)。2群のマウスを、5または20μgのhuBC1-mulL12の8日連続の1日1回の静脈内投与で治療した。第3群には、合計12回1日おきに静脈内に20μgのhuBC1-mulL12を与えた。比較用に第4群のマウスには、第0日および第4日に腹膜内に0.5mgのhuBC1抗体を与えた。これら4つの治療群およびPBSを与えた対照群の結果は、図5b中に示す。PBS対照群中の腫瘍は第19日までに430mm3にゆっくりと増殖し、このときまでに腫瘍は指数関数的増殖に変わり、第35日までに5627mm3の平均的な大きさに達した。抗体による治療は、腫瘍の増殖に対して全く影響がなかった。huBC1-mulL12の異なる養生法による治療は、この免疫欠如マウスモデルにおいて約3週間有効であった。第23日までに、1000mm3を超えたPBS対照群と比較して、1日1回20μgの用量で8回治療した群の平均的な腫瘍の大きさは約446mm3であり、80μgの用量を与えた2群の平均的な腫瘍の大きさは約380mm3であった。しかしながら治療は、第23日から第35日までの間の約4日間までの指数関数的増殖期のみを遅らせ、3つの群全てにおける腫瘍は、PBS治療群と同様の増殖率で指数関数的に増殖した。
【0226】
表4は、異なる日数でのそれぞれの群の平均的な腫瘍体積(mm3単位)を示す。
【0227】
【表4】
【0228】
4.2 SCIDマウスにおけるA431皮下モデル
それぞれ20μgのhuBC1-mulL12を7日連続1日1回静脈内注射する1サイクル治療は、SCIDマウスにおけるヒトメラノーマA431皮下モデルで有効であり、第14日までに0.31のT/C比および第25日までに0.26のT/C比を得た(図6参照)。
【0229】
表5は、異なる日数でのそれぞれの群の平均的な腫瘍体積(mm3単位)を示す。
【0230】
【表5】
【0231】
4.3 SCIDマウスにおけるPC3mm2皮下モデル
それぞれ20μgのhuBC1-mulL12を7日連続1日1回静脈内注射する1サイクル治療は、SCIDマウスにおけるヒト前立腺癌PC3mm2皮下モデルで有効であり、第15日までに0.34のT/C比および第25日までに0.33のT/C比を得た(図7参照)。
【0232】
表6は、異なる日数でのそれぞれの群の平均的な腫瘍体積(mm3単位)を示す。
【0233】
【表6】
【0234】
4.4 ヌードマウスにおけるHT-29皮下モデル
それぞれ20μgのhuBC1-mulL12を5日連続1日1回静脈内注射する1サイクル治療は、SCIDマウスにおけるヒト前立腺癌PC3mm2皮下モデルで有効であり、第13日までに0.46のT/C比および第20日までに0.43のT/C比を得た(図8参照)。これはわずか1サイクルの治療であり、ヌードマウスは機能的T細胞を欠いていたので、20日後に治療群における腫瘍の増殖率が増大し始めたことは、それほど驚くべきことではなかった。この時点における第2の治療サイクルの利点を評価することは興味深いと思われる。
【0235】
表7は、異なる日数でのそれぞれの群の平均的な腫瘍体積(mm3単位)を示す。
【0236】
【表7】
【0237】
4.5 SCIDマウスにおけるPC3mm2肺転移モデル
この異種移植片モデルでは、ヒト前立腺癌PC3mm2細胞を、治療を始める11日前に重症複合免疫不全(SCID)マウスに注射して、転移が確定するのに充分な時間を与えた。SCIDマウスにおいて機能的T細胞およびB細胞が欠如していたにもかかわらず、16μgのhuBC1-mulL12を5日間1日1回静脈内注射することによって、全てのマウスにおいて確立した転移をほぼ完全に根絶し、転移腫(図9A)および腫瘍塊(図9B)によって覆われた肺表面により測定して、それらの過剰増殖を防いだ。8μgの用量でさえも非常に有効であり、PBS対照と比較して肺転移を約85%減少させた。
【0238】
表8は、マウス腫瘍モデルにおけるhuBC1-mulL12の有効性データの要約を示す。皮下(s.c.)腫瘍に関するT/Cは、治療群の平均腫瘍体積とPBS対照群のそれの比である。肺転移モデルに関しては、T/CはPBS対照群のそれに対する治療群の平均腫瘍塊である。
【0239】
【表8】
【0240】
5.考察
薬剤候補huBC1-huIL12は、ヒトIL-12が種特異的であるため、現在のネズミ腫瘍モデルにおいて評価することはできない。したがって、本発明者らはhuBC1ネズミIL12を生成し、表8中に要約したように、この代理分子がさまざまな異種移植片転移および皮下腫瘍モデルにおいて有効であったことを示した。SCIDマウスが機能的T細胞およびB細胞を欠いていたという事実にもかかわらず、7日間1日1回の注射による1サイクルの治療は、A431およびPC3モデルにおいてそれぞれ74%および67%腫瘍の増殖を阻害した。huBC1-hmIL12がhuBC1-huIL12と比較して、マウス中でα期において非常に速いクリアランス速度を有していたという事実を鑑みると特に、これらの結果は印象的である(図10および以下の付録を参照)。5日間1日1回の注射による1サイクルの治療も、ヌードマウスにおけるHT-29モデルで有効であり、57%の腫瘍増殖の阻害を示した。化学療法を受けているかあるいは受けた後の患者がSCIDマウスより機能的な免疫系を有する可能性がある臨床試験における、huBC1-huIL12を用いる多サイクルの治療によって有効性は向上するはずである。SCIDマウスにおけるPC3mm2実験肺転移モデルでは、16μgのhuBC1-mulL12を5日間1日1回静脈内注射することによって、治療を始める前に11日間確立することができた転移をほぼ完全に根絶した。
【0241】
6.付録:huBC1-muIL12およびhuBC1-huIL12の薬物動態
huBC1-muIL12およびhuBC1-huIL12の薬物動態を、BALE/cマウスにおいて測定した。huBC1-huIL12はマウス中、特にα期においてhuBC1-muIL12より長い血清半減期を有することが分かった(図10)。
【0242】
(実施例9-治療法)
本発明の化合物、例えば融合タンパク質は、以下のように使用することができる。
【0243】
膠芽細胞腫などの癌に罹患する患者を治療する。好ましい投与経路は静脈内または皮下注射であるが、筋肉内、腹膜内、皮内、または他の注射経路も考えられる。他の投与経路と同様に、吸入による投与、経口投与、または座薬による投与も考えられる。投与は1週間当たり3回、次いで次の3週間治療無しの4週間サイクルであることが好ましいが、所与の個体中のBC1-IL12タンパク質の薬物動態挙動に応じて高頻度または低頻度であってよい。約70キログラムの成人に関する投与用量は、用量当たり約1〜100ミリグラムの範囲であり、用量当たり約4〜20ミリグラムの範囲であることが好ましい。1ヶ月に1度治療する70キログラムの成人に関して、最も好ましい用量は約10ミリグラムである。標準的手順に従い、患者を応答性に関して調べる。
【図面の簡単な説明】
【0244】
【図1】抗体可変領域(ストライプ状の楕円形)、定常領域(白い楕円形)、IL-12p35サブユニット(小さな長方形)、IL-12p40サブユニット(大きな長方形)、抗体ヒンジ領域およびリンカー(太線)およびジスルフィド結合(細線)の好ましい形状の概略図である。特に好ましい実施形態は、ジスルフィド結合によってp35と結合した重鎖およびp40のC末端と融合したp35を有する完全IgG型抗体(図1A)、リンカーによって結び付き、CH3ドメインに対するヒンジ領域、および重鎖のC末端と融合したp35、およびジスルフィド結合によってp35と結合したp40を介して結合した抗体V領域を有する「小体」(図1B)、ジスルフィド結合によって結合したV領域とp40と融合したp35を有するsFv(図1C)、およびジスルフィド結合によって結合したC領域とp40と融合したp35を有するFabを含む(図1D)。IL-12p35サブユニットも、V領域のN末端と結合することができる。IL-12p40サブユニットはジスルフィド結合を介して、あるいはリンカーを介してp35と結合することができ、いわゆる「単鎖IL-12」部分(scIL-12)を生成することができる。
【図2】構築体pdHL11-huBC1-M1-hup35を示す図である(実施例1参照)。
【図3】構築体pNeo-CMV-hup40を示す図である(実施例1参照)。
【図4】4つの構築体(huBC1-muIL12、huBC1-huIL12、muBC1およびhuBC1)と組換え癌胎児性フィブロネクチン断片FN789およびFN7B89の結合を示す図である(実施例3参照)。
【図5A】注射したU-87MG細胞の数と皮下腫瘍の増殖率の滴定曲線を示す図である(実施例5参照)。
【図5B】SCIDマウスにおけるU-87MG皮下モデルのhuBC1-muIL12の抗腫瘍効果を示す図である。
【図6】SCIDマウスにおけるA431皮下モデルのhuBC1-muIL12の抗腫瘍効果を示す図である(実施例5参照)。
【図7】SCIDマウスにおけるPC3mm2皮下モデルのhuBC1-muIL12の抗腫瘍効果を示す図である(実施例5参照)。
【図8】SCIDマウスにおけるHT-29皮下モデルのhuBC1-muIL12の抗腫瘍効果を示す図である(実施例5参照)。
【図9A】転移腫によって覆われた肺表面に対するhuBC1-muIL12投与の影響を示す図である(実施例5参照)。
【図9B】重症複合免疫不全(SCID)マウスに前立腺癌PC3mm2細胞を注射した後のヒト肺重量に対する、huBC1-muIL12投与の影響を示す図である(実施例5参照)。
【図10】マウスにおけるhuBC1-muIL12およびhuBC1-huIL12の薬物動態分析を示す図である(実施例5参照)。BALB/cマウスに、25mgのhuBC1-IL12を尾部静脈に注射した。さまざまな時間地点において、少量の血液サンプルを眼窩後方出血によって採取した。抗ヒトIgGH&L抗血清を用いた捕捉、および抗ヒトまたは抗ネズミIL12抗体(R&D Systems)を用いた検出によって、血漿をアッセイした。注射直後に採取したそれぞれのマウスの血清中の最初の濃度に、結果を標準化した(t=0)。マウス中での循環半減期は、両方の分子に関して約19時間である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的特異的部分およびエフェクター部分を含む化合物であって、
(i)前記標的特異的部分が、親モノクローナル抗体の癌胎児性フィブロネクチンに対する結合特異性を保持する、癌胎児性フィブロネクチンに対する特異性を有するモノクローナル抗体、またはその断片もしくは変異体を含むか、それらからなり、かつ
(ii)前記エフェクター部分が、インターロイキン-12、またはその機能性断片もしくは変異体を含むか、それらからなり、
癌胎児性フィブロネクチンに対する特異性を有する前記モノクローナル抗体が、ED-B領域以外の癌胎児性フィブロネクチンの領域と結合することを特徴とする化合物。
【請求項2】
前記標的特異的部分が、胎児組織と正常成体組織の両方で発現されるフィブロネクチン内に存在するアミノ酸配列と結合することができる、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記標的特異的部分が、フィブロネクチンの反復配列7ドメイン内のアミノ酸配列と結合することができる、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
前記標的特異的部分がヒト癌胎児性フィブロネクチンに特異的である、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
癌胎児性フィブロネクチンに対する特異性を有する前記モノクローナル抗体がBC1抗体、またはBC1抗体と癌胎児性フィブロネクチンの結合に関して競合することができる抗体である、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
癌胎児性フィブロネクチンに対する特異性を有する前記モノクローナル抗体がBC1抗体である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
前記モノクローナル抗体がヒトまたはヒト化抗体である、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
前記化合物が前記親モノクローナル抗体より強く癌胎児性フィブロネクチンと結合する、請求項6または7に記載の化合物。
【請求項9】
前記化合物が前記親モノクローナル抗体より少なくとも2倍強く癌胎児性フィブロネクチンと結合する、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
前記化合物が癌胎児性フィブロネクチンと結合する前記親BC1抗体より少なくとも10倍強く癌胎児性フィブロネクチンと結合する、請求項8または9に記載の化合物。
【請求項11】
前記標的特異的部分が配列番号1のポリペプチドを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
前記標的特異的部分が配列番号2のポリペプチドを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
前記標的特異的部分が配列番号1のポリペプチドおよび配列番号2のポリペプチドを含む、請求項11または12に記載の化合物。
【請求項14】
前記標的特異的部分が、癌胎児性フィブロネクチンに対する特異性を有するモノクローナル抗体の抗原結合断片を含むか、それからなる、請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
前記標的特異的部分が、FabおよびF(ab')2、Fv分子、ジスルフィド結合Fv分子、ScFv分子およびシングルドメイン抗体(dAb)などのFab様分子からなる群から選択される抗原結合断片を含むか、それらからなる、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
前記標的特異的部分が1つまたは複数の抗体定常領域を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
前記1つまたは複数の抗体定常領域がCH1ドメインを含むか、それからなる、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
Fc部分をさらに含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項19】
前記Fc部分がヒトIgG1に由来する、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
前記標的特異的部分が完全BC1抗体を含むか、それからなる、請求項1から19のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項21】
前記エフェクター部分が、ヒトインターロイキン-12、またはその機能性断片もしくは変異体を含むか、それらからなる、請求項1から20のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項22】
前記エフェクター部分が、単鎖インターロイキン-12を含むか、それからなる、請求項1から21のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項23】
前記単鎖IL-12がIL-12p35ドメインおよびIL-12p40ドメインからなる、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
前記IL-12p35ドメインがジスルフィド結合によって前記IL-12p40ドメインと結合している、請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
前記化合物が融合タンパク質である、請求項1から24のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項26】
前記標的特異的部分が前記エフェクター部分と融合している、請求項1から25のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項27】
前記エフェクター部分と融合した免疫グロブリン重鎖を含む、請求項26に記載の化合物。
【請求項28】
前記免疫グロブリン重鎖と前記エフェクター部分が突然変異リンカー配列を介して結合している、請求項27に記載の化合物。
【請求項29】
前記リンカーがアミノ酸配列ATATPGAA(配列番号5)を含むか、それからなる、請求項28に記載の化合物。
【請求項30】
前記化合物が配列番号6のポリペプチドを含む、請求項1から29のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項31】
前記化合物が配列番号7のポリペプチドを含む、請求項1から30のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項32】
前記化合物が配列番号6のポリペプチドおよび配列番号7のポリペプチドを含む、請求項30または31に記載の化合物。
【請求項33】
前記配列番号6のポリペプチドとジスルフィド結合によって結合した配列番号4のポリペプチドをさらに含む、請求項30から32のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項34】
癌胎児性フィブロネクチンを対象とする抗体V領域、Fc部分、およびインターロイキンン-12部分を含む融合タンパク質。
【請求項35】
請求項1から34のいずれか一項に記載の化合物、あるいはその標的特異的部分、エフェクター部分または要素ポリペプチドをコードする核酸分子。
【請求項36】
前記分子が配列番号8〜10からなる群から選択される1つまたは複数のヌクレオチド配列を含む、請求項35に記載の核酸分子。
【請求項37】
前記分子が配列番号8のヌクレオチド配列を含む、請求項36に記載の核酸分子。
【請求項38】
前記分子が配列番号9のヌクレオチド配列を含む、請求項36または37に記載の核酸分子。
【請求項39】
前記分子が配列番号8のヌクレオチド配列および配列番号9のヌクレオチド配列を含む、請求項36から38のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項40】
請求項35から39のいずれか一項に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項41】
請求項35から39のいずれか一項に記載の核酸分子、または請求項40に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項42】
請求項1から34のいずれか一項に記載の化合物、あるいはその標的特異的部分、エフェクター部分または要素ポリペプチドを作製する方法であって、宿主細胞中で請求項35から39のいずれか一項に記載の核酸分子を発現させること、および前記化合物、その一部分または要素ポリペプチドを単離することを含む方法。
【請求項43】
請求項1から34のいずれか一項に記載の化合物、および薬剤として許容可能な担体を含む医薬組成物。
【請求項44】
前記組成物が非経口投与に適している、請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項45】
薬剤中に使用するための、請求項1から34のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項46】
癌を有する患者を治療するための医薬品の調製における、請求項1から34のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項47】
癌を有する患者を治療する方法であって、請求項1から34のいずれか一項に記載の化合物を前記患者に投与することを含む方法。
【請求項48】
哺乳動物がヒトである、請求項46に記載の使用または請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記患者が固形腫瘍を有する、請求項46に記載の使用または請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記癌が膠芽細胞腫である、請求項46に記載の使用または請求項47に記載の方法。
【請求項51】
記載および図面を参照しながら本明細書に記載したのと実質的に同じ化合物。
【請求項52】
記載および図面を参照しながら本明細書に記載したのと実質的に同じ医薬組成物。
【請求項1】
標的特異的部分およびエフェクター部分を含む化合物であって、
(i)前記標的特異的部分が、親モノクローナル抗体の癌胎児性フィブロネクチンに対する結合特異性を保持する、癌胎児性フィブロネクチンに対する特異性を有するモノクローナル抗体、またはその断片もしくは変異体を含むか、それらからなり、かつ
(ii)前記エフェクター部分が、インターロイキン-12、またはその機能性断片もしくは変異体を含むか、それらからなり、
癌胎児性フィブロネクチンに対する特異性を有する前記モノクローナル抗体が、ED-B領域以外の癌胎児性フィブロネクチンの領域と結合することを特徴とする化合物。
【請求項2】
前記標的特異的部分が、胎児組織と正常成体組織の両方で発現されるフィブロネクチン内に存在するアミノ酸配列と結合することができる、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記標的特異的部分が、フィブロネクチンの反復配列7ドメイン内のアミノ酸配列と結合することができる、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
前記標的特異的部分がヒト癌胎児性フィブロネクチンに特異的である、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
癌胎児性フィブロネクチンに対する特異性を有する前記モノクローナル抗体がBC1抗体、またはBC1抗体と癌胎児性フィブロネクチンの結合に関して競合することができる抗体である、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
癌胎児性フィブロネクチンに対する特異性を有する前記モノクローナル抗体がBC1抗体である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
前記モノクローナル抗体がヒトまたはヒト化抗体である、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
前記化合物が前記親モノクローナル抗体より強く癌胎児性フィブロネクチンと結合する、請求項6または7に記載の化合物。
【請求項9】
前記化合物が前記親モノクローナル抗体より少なくとも2倍強く癌胎児性フィブロネクチンと結合する、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
前記化合物が癌胎児性フィブロネクチンと結合する前記親BC1抗体より少なくとも10倍強く癌胎児性フィブロネクチンと結合する、請求項8または9に記載の化合物。
【請求項11】
前記標的特異的部分が配列番号1のポリペプチドを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
前記標的特異的部分が配列番号2のポリペプチドを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
前記標的特異的部分が配列番号1のポリペプチドおよび配列番号2のポリペプチドを含む、請求項11または12に記載の化合物。
【請求項14】
前記標的特異的部分が、癌胎児性フィブロネクチンに対する特異性を有するモノクローナル抗体の抗原結合断片を含むか、それからなる、請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
前記標的特異的部分が、FabおよびF(ab')2、Fv分子、ジスルフィド結合Fv分子、ScFv分子およびシングルドメイン抗体(dAb)などのFab様分子からなる群から選択される抗原結合断片を含むか、それらからなる、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
前記標的特異的部分が1つまたは複数の抗体定常領域を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
前記1つまたは複数の抗体定常領域がCH1ドメインを含むか、それからなる、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
Fc部分をさらに含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項19】
前記Fc部分がヒトIgG1に由来する、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
前記標的特異的部分が完全BC1抗体を含むか、それからなる、請求項1から19のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項21】
前記エフェクター部分が、ヒトインターロイキン-12、またはその機能性断片もしくは変異体を含むか、それらからなる、請求項1から20のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項22】
前記エフェクター部分が、単鎖インターロイキン-12を含むか、それからなる、請求項1から21のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項23】
前記単鎖IL-12がIL-12p35ドメインおよびIL-12p40ドメインからなる、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
前記IL-12p35ドメインがジスルフィド結合によって前記IL-12p40ドメインと結合している、請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
前記化合物が融合タンパク質である、請求項1から24のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項26】
前記標的特異的部分が前記エフェクター部分と融合している、請求項1から25のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項27】
前記エフェクター部分と融合した免疫グロブリン重鎖を含む、請求項26に記載の化合物。
【請求項28】
前記免疫グロブリン重鎖と前記エフェクター部分が突然変異リンカー配列を介して結合している、請求項27に記載の化合物。
【請求項29】
前記リンカーがアミノ酸配列ATATPGAA(配列番号5)を含むか、それからなる、請求項28に記載の化合物。
【請求項30】
前記化合物が配列番号6のポリペプチドを含む、請求項1から29のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項31】
前記化合物が配列番号7のポリペプチドを含む、請求項1から30のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項32】
前記化合物が配列番号6のポリペプチドおよび配列番号7のポリペプチドを含む、請求項30または31に記載の化合物。
【請求項33】
前記配列番号6のポリペプチドとジスルフィド結合によって結合した配列番号4のポリペプチドをさらに含む、請求項30から32のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項34】
癌胎児性フィブロネクチンを対象とする抗体V領域、Fc部分、およびインターロイキンン-12部分を含む融合タンパク質。
【請求項35】
請求項1から34のいずれか一項に記載の化合物、あるいはその標的特異的部分、エフェクター部分または要素ポリペプチドをコードする核酸分子。
【請求項36】
前記分子が配列番号8〜10からなる群から選択される1つまたは複数のヌクレオチド配列を含む、請求項35に記載の核酸分子。
【請求項37】
前記分子が配列番号8のヌクレオチド配列を含む、請求項36に記載の核酸分子。
【請求項38】
前記分子が配列番号9のヌクレオチド配列を含む、請求項36または37に記載の核酸分子。
【請求項39】
前記分子が配列番号8のヌクレオチド配列および配列番号9のヌクレオチド配列を含む、請求項36から38のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項40】
請求項35から39のいずれか一項に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項41】
請求項35から39のいずれか一項に記載の核酸分子、または請求項40に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項42】
請求項1から34のいずれか一項に記載の化合物、あるいはその標的特異的部分、エフェクター部分または要素ポリペプチドを作製する方法であって、宿主細胞中で請求項35から39のいずれか一項に記載の核酸分子を発現させること、および前記化合物、その一部分または要素ポリペプチドを単離することを含む方法。
【請求項43】
請求項1から34のいずれか一項に記載の化合物、および薬剤として許容可能な担体を含む医薬組成物。
【請求項44】
前記組成物が非経口投与に適している、請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項45】
薬剤中に使用するための、請求項1から34のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項46】
癌を有する患者を治療するための医薬品の調製における、請求項1から34のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項47】
癌を有する患者を治療する方法であって、請求項1から34のいずれか一項に記載の化合物を前記患者に投与することを含む方法。
【請求項48】
哺乳動物がヒトである、請求項46に記載の使用または請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記患者が固形腫瘍を有する、請求項46に記載の使用または請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記癌が膠芽細胞腫である、請求項46に記載の使用または請求項47に記載の方法。
【請求項51】
記載および図面を参照しながら本明細書に記載したのと実質的に同じ化合物。
【請求項52】
記載および図面を参照しながら本明細書に記載したのと実質的に同じ医薬組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【公表番号】特表2007−517506(P2007−517506A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546342(P2006−546342)
【出願日】平成17年1月5日(2005.1.5)
【国際出願番号】PCT/GB2005/000007
【国際公開番号】WO2005/066348
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(506229604)イーエムディー・レキシゲン・リサーチ・センター・コーポレーション (1)
【出願人】(504265846)アンティソーマ・ピーエルシー (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月5日(2005.1.5)
【国際出願番号】PCT/GB2005/000007
【国際公開番号】WO2005/066348
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(506229604)イーエムディー・レキシゲン・リサーチ・センター・コーポレーション (1)
【出願人】(504265846)アンティソーマ・ピーエルシー (5)
【Fターム(参考)】
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