説明

横引き扉の非常時閉鎖システム

【課題】 扉の枠内に錘を配置し、簡単な構造で駆動系の設計自由度が高い横引き扉の非常時閉鎖システムを提供すること。
【解決手段】 横引き扉20,21は開閉装置10の駆動モータ12で左右が連動して開閉させられるように構成され、通常運転時は、扉20,21の開閉を駆動モータ12で行うとともに、駆動モータ12の運転時はブレーキ11を解除し、駆動モータ12の停止時はブレーキ11を制動するように構成され、非常時には独立してブレーキ11を解除するように構成された制御回路を備え、横引き扉20,21は、左右一方の扉に一端が固定され、他端が他方の扉の枠内に設けられた転向プーリを介して錘40吊下げたワイヤロープ56を有し、錘40は、ワイヤロープ46を介して自重で左右の扉20,21を閉鎖する方向に付勢するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の出入口等に設けられている横引き扉を非常時に閉鎖するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の出入口に設けられる扉に横引き扉(以下、単に「扉」ともいう)がある。この横引き扉は、中央を境にして左右横方向に開閉装置で開閉させるようになっている。例えば、このような横引き扉を備えた建物として、機械式駐車設備がある。以下、横引き扉を備えた建物として、この機械式駐車設備を例に説明する。
【0003】
機械式駐車設備に設けられる横引き扉としては、車両の乗入れ部に備えられている出入口の扉がある。この扉は、機械式駐車設備に設けられた開閉装置により、必要に応じて開閉させられる。この開閉装置は、通常運転で扉を開くときには、ブレーキ解除をして駆動源を回転させることで扉を開放し、開放した状態でブレーキ制動している。また、扉を閉じるときには、ブレーキ解除をして駆動源を回転させることで扉を閉め、閉めた状態でブレーキ制動をしている。
【0004】
一方、機械式駐車設備は、駐車塔の内部に設置された機械式駐車装置において火災が発生した場合に備えて消火装置が設けられている。この消火装置には、機械式駐車設備の大きさに応じた所定量の消火剤(例えば、二酸化炭素等の不活性ガス)が具備されている。
【0005】
そして、火災の発生に伴う消火作業時には、消火効果、効率向上のために駐車塔における通気開口を全て閉鎖した後、消火剤が噴射される。すなわち、通気開口の閉鎖によって消火剤で効率良く消火できるように、駐車塔の上部に設けられた換気ガラリや、開放している横引き扉等は消火剤の噴射前に全て閉じられ、噴射した消火剤が駐車塔の外部に逃げないようにしている。
【0006】
そのため、上記機械式駐車設備には、火災発生による制御ケーブルや制御盤の焼損で扉の開閉装置が制御不能になっても、開閉装置の駆動源のブレーキを解除することで扉を閉じる錘が設けられている。そして、扉の動作ストロークを錘の上昇端、下降端それぞれに設けられたリミットスイッチに錘が当接することで検出し、扉が開いているときには駆動源のブレーキを解除することで、錘の自重によって扉が閉じられるようになっている。
【0007】
なお、この種の先行技術として、例えば、開閉装置で左右横方向に開閉させる一方の扉に固定されたロープを他方の扉の側方まで延ばし、他方の扉の側方に配置した錘に固定し、通常時は錘を支持した状態とし、異常時には錘の支持を解くことでこの錘の自重によって扉が閉鎖するようにした扉閉鎖装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開昭57−52973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記したように扉を錘の自重によって閉じるようにする場合、横方向に移動する扉に対して錘は上下方向に移動するため、錘を扉の動作範囲から外れた側方に配置しなければ当接してしまう。そのため、機械式駐車設備の場合、扉の動作範囲側方における駐車塔内に錘を配置し、開閉機構による扉の開閉動作に連動して錘が昇降するようになっている。
【0010】
しかしながら、錘を扉の動作範囲外に配置して垂下させ、扉の開閉動作に連動して昇降するように配置するためには、扉の側方に比較的大きなスペースが必要であるとともに、錘の昇降を案内するためのガイド部材が必要になる。しかも、錘を昇降させる索状体(チェーン、ワイヤロープ等)を扉の開閉機構に接続し、扉の開閉と錘の昇降とを連動させなければならず、据付時に煩雑な調整作業が必要となる。その上、錘の連動が可能なように開閉機構を設計しなければならず、駆動系の設計が限られたものになってしまう。
【0011】
このように、従来の火災発生時等に扉を閉じる機構では、扉の側方に錘を配置するためのスペースが必要であるためスペース効率が悪く、しかも、扉の駆動系と連動させるため、構造が複雑で、据付時に煩雑な作業も必要となり作業性が悪い。
【0012】
なお、上記特許文献1の場合には、扉の側方に錘を配置するためのスペースが必要であるためスペース効率が悪いとともに、扉の開放位置によっては錘の支持を解いた時に扉が急激に閉まるおそれもあり、火災発生時等におけるスムーズな扉の閉鎖ができないおそれもある。
【0013】
そこで、本発明は、扉の枠内に錘を配置し、簡単な構造で駆動系の設計自由度が高い横引き扉の非常時閉鎖システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明は、出入口に横引き扉を備え、前記横引き扉は、中央を境にして左右に開閉する対になった扉で構成され、前記横引き扉は、開閉装置の駆動源で駆動する駆動機構によって左右の扉が連動して開閉させられるように構成された横引き扉の非常時閉鎖システムであって、前記開閉装置は、前記駆動源と一体または独立の制動装置を備え、通常運転時は、前記扉の開閉を前記駆動源で行うとともに、該駆動源運転時は前記制動装置を解除し、駆動源停止時は制動するように構成され、非常時には独立して前記制動装置を解除する制御回路を備え、前記横引き扉は、左右一方の扉に一端が固定され、他端が対向する他方の扉の枠内に設けられた転向部材を介して錘を吊下げた索状体を有し、前記錘は、前記制動装置を解除することで、前記索状体を介して自重で左右の扉を閉鎖する方向に付勢するように構成されている。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「索状体」は、「チェーン」、「ワイヤロープ」等の索をいう。また、左右が対になった扉は、各1枚または各複数枚で対になった扉をいう。この構成により、通常運転時は駆動源による駆動と制動装置の解除/制動とを連動させて扉を開閉し、火災発生時等の非常時には、制動装置を解除することで、駆動装置に直接接続していない索状体の一端に吊下げられた錘の自重によって左右の扉を閉鎖することができる。しかも、非常時に左右の扉を閉鎖する構成を左右の扉の枠内に設けているので、スペース効率の向上を図ることができる。
【0015】
また、前記錘は、前記他方の扉に設けられた動滑車に掛けられ、前記索状体は前記動滑車に掛けられて端部が扉の上部に固定されていてもよい。このように構成すれば、扉の高さに占める錘の移動範囲が小さくなり、天地方向に対して間口が広く、扉の横移動量が多いところに錘を容易に収めることができる。
【0016】
また、前記索状体はワイヤロープであり、前記転向部材は転向プーリで構成されていてもよい。このように構成すれば、一方の扉から他方の扉まで延びて錘を吊下げる索状体を、視界を遮っても影響の少ない細いワイヤロープとすることができるので、のぞき窓の配置自由度等を向上させることができる。その上、駆動系から分離した錘作動系の索状体が、扉の間の開口幅において垂下りや潤滑油の滴下を生じて汚損を招くおそれも抑止することができる。
【0017】
また、前記錘は、前記扉の内側において枠部を上下方向に連結するガイドレールに沿って昇降する案内部材を有し、前記ガイドレールは、扉の補強材を兼ねたガイドレール兼扉補強部材で構成されていてもよい。このように構成すれば、上下の枠とともに扉の特に面外荷重を負担する補強部材に、上記錘を上下方向に案内するガイドレールの機能を兼ね備えさせることができ、錘を案内するためだけに配置する構成(ガイドレール)を削減することができる。
【0018】
また、前記錘は、複数枚の錘板で構成され、前記複数枚の錘板は、前記ガイドレールに沿って昇降する案内部材と、前記索状体を掛ける転向部材または索状体を固定する索留め具とを備えた支持部材と連結されていてもよい。このように構成すれば、通常運転時に駆動系の負荷となる錘を、扉の案内レール部摩擦や各部品の仕上がり重量に応じて、設計時、据付時、経年使用時に扉の閉鎖力が必要最低限となるように微調整することができる。
【0019】
また、前記錘は、複数枚の錘板で構成され、前記複数枚の錘板は、前記ガイドレールに沿って昇降する案内部材と、前記索状体を掛ける転向部材または索状体を固定する索留め具とを備えたかご状の支持部材にはめ込まれていてもよい。このように構成しても、通常運転時に駆動系の負荷となる錘を、扉の案内レール部摩擦や各部品の仕上がり重量に応じて、設計時、据付時、経年使用時に扉の閉鎖力が必要最低限となるように微調整することができる。
【0020】
また、前記建物は機械式駐車設備であり、前記機械式駐車設備の車両出入口に備えられた横引き扉を非常時に閉鎖するように構成されていてもよい。このように構成すれば、非常時に扉を閉鎖するための構成を扉の枠内に設けて錘を配置するためのスペースを扉周辺に不要とすることができ、限られたスペースに設置される機械式駐車設備における扉周囲の内部空間を有効に利用してスペース効率の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、横引き扉の枠内に錘を配置して非常時に扉を閉鎖するシステムを構成することができるので、扉周辺のスペース効率の向上、部品点数の削減によるコストダウン、駆動系の設計自由度向上、据付時の作業容易性向上、等を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る非常時閉鎖システムを備えた横引き扉開閉装置の第1実施形態を示す正面図である。
【図2】図1に示すII−II矢視の拡大断面図である。
【図3】図1に示すIII−III矢視拡大断面図である。
【図4】図1に示す横引き扉開閉装置の開放した状態を示す正面図である。
【図5】本発明に係る非常時閉鎖システムを備えた横引き扉開閉装置の第2実施形態を示す正面図である。
【図6】図1に示す非常時閉鎖システムの正常運転時のフローチャートである。
【図7】図1に示す非常時閉鎖システムの火災発生時のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、機械式駐車設備の駐車塔出入口に設けられた2枚扉を、中央を境に横方向に開く横引き扉開閉装置10を例に説明する。また、駆動源として、電磁ブレーキ付ギヤモータを使用した例を説明する。なお、この明細書及び特許請求の範囲の書類中における前後左右方向の概念は、図1に示すように横引き扉開閉装置10に内方から向かった状態における前後左右方向の概念と一致するものとする(機械式駐車設備に外側から向かった状態と左右が逆)。
【0024】
図1に示すように、第1実施形態の横引き扉開閉装置10は、中央を境にして2枚の左扉20と右扉21を左右に開閉させる一対の横引き扉となっている。扉20,21の上部には、開閉方向の2箇所に各支持ローラ部22,23,24,25が備えられている。各支持ローラ部22,23,24,25は、1箇所に2個のローラ35がそれぞれ設けられている。これらの支持ローラ部22,23,24,25は、駐車塔1に設けられた支持レール2に沿って横方向に移動可能となっている。支持レール2の一方端部には、駆動モータ12が設けられている。この駆動モータ12は電磁ブレーキ付ギヤモータであり、制動装置であるブレーキ11(図2)が駆動源であるモータと一体化されたものである。この駆動モータ12は、電源OFFの状態でブレーキ(制動装置)が作動するOFFブレーキの仕様となっている。
【0025】
図2に示すように、上記支持レール2は、駐車塔1に設けられた保持部材3によって吊下げられている。保持部材3には、保持ボルト4が設けられ、この保持ボルト4に支持レール2が保持されている。そして、この支持レール2の上面に、上記支持ローラ部22,23,24,25のローラ35が支持されている。また、扉20,21の下部は、出入口床5に設けられたローラ6に沿ってスライドするようになっている。これにより扉20,21は、支持ローラ部22,23,24,25に吊下げられた状態で横方向に開閉させられるようになっている。
【0026】
一方、図1に示すように、上記駆動モータ12の駆動スプロケット13には、駆動チェーン14が掛けられている。この駆動チェーン14は、一端が上記右扉21の支持ローラ部22に連結され、他端が上記左扉20の支持ローラ部24に連結されている。
【0027】
また、上記支持レール2の他方端部には転向スプロケット15が設けられている。この転向スプロケット15には、連動チェーン16が掛けられている。この連動チェーン16は、一端が上記右扉21の支持ローラ部23に連結され、他端が上記左扉20の支持ローラ部25に連結されている。このような2枚扉20,21の場合、2枚の扉20,21が前後方向に1重で構成されるため、駆動チェーン14と連動チェーン16は、図の前後方向で同一面に配置されている。
【0028】
従って、上記駆動モータ12を駆動し、駆動スプロケット13に掛けられた駆動チェーン14で右扉21を開放させると、その右扉21の動作に連動して連動チェーン16が転向スプロケット15を介して左扉20を開放する。逆に、駆動モータ12を逆方向に駆動し、駆動スプロケット13に掛けられた駆動チェーン14で左扉20を閉鎖すると、その左扉20の動作に連動して連動チェーン16が転向スプロケット15を介して右扉21を閉鎖するようになっている。このように左右の扉20,21を開閉する機構が、左右の扉20,21を連動させて開閉する駆動機構である。
【0029】
また、上記左扉20の上方には、左扉20の開閉位置を検知するためのリミットスイッチ(近接スイッチ、レバー式スイッチ)が設けられている。このリミットスイッチとしては、左扉20が閉鎖していることを確認する扉閉リミットスイッチ26(近接スイッチ)と左扉20が開放していることを確認する扉開リミットスイッチ27(近接スイッチ)、及び左扉20が火災時に閉鎖したことを確認する非常扉閉リミットスイッチ28(レバー式スイッチ)と左扉20が火災時に消火用ゾーンに位置しているかを確認する消火用ゾーンリミットスイッチ29(レバー式スイッチ)が、左扉20の位置を検知するように所定の位置に配置されている(図では一方が奥側のほぼ重なった位置に配置されている)。非常扉閉リミットスイッチ28と消火用ゾーンリミットスイッチ29は機械式のスイッチであり、左扉20の上面から上方に突出する突出部材36が当接することで検知するようになっている。これらのリミットスイッチ26〜29で左扉20の位置を検知することにより、この左扉20と連動する右扉21の位置も検知できるので、一方の扉にのみリミットスイッチ26〜29が設けられている。なお、扉閉リミットスイッチ26と扉開リミットスイッチ27も、レバー式スイッチで構成してもよい。
【0030】
そして、上記扉20,21に、非常時に扉20,21が開放しているときには閉鎖する錘40に関する構成が設けられている。扉20,21は、板材からなる扉板30の内面周囲に枠部31が設けられて矩形状に形成されており、この実施形態では、右扉21の内側(左扉の内側でもよい)に錘40が設けられている。右扉21には、矩形状の枠部31の中央部分を縦方向に連結するガイドレール兼扉補強部材32が2本設けられており、このガイドレール兼扉補強部材32に沿って錘40が昇降するようになっている。ガイドレール兼扉補強部材32は、後述するように錘40をガイドするようになっており、錘40は右扉21の扉板30と所定の隙間を保った状態で昇降するようになっている。
【0031】
また、錘40の上部には動滑車となっている吊りプーリ47が設けられ、右扉21の上部に設けられた転向プーリ(転向部材)34を介して索状体たるワイヤロープ46で吊下げられている。このワイヤロープ46は、一端が左扉20の上部に固定され、他端が上記転向プーリ34と吊りプーリ47を介して右扉21の上部に固定されている。従って、右扉21と左扉20とは、ワイヤロープ46を介して錘40の自重によって常に閉鎖する方向に付勢されている。
【0032】
このように扉20,21を錘40の自重で閉鎖する構成と、上記制動装置であるブレーキを備えた駆動モータ12を後述するように制御することによって、非常時閉鎖システムが構成されている。
【0033】
さらに、上記錘40を動滑車掛けしているため、扉20,21の開放距離に対して錘40の上昇距離を半分にできる。これにより、扉20,21の上下方向寸法を有効に使用できるようにしている。なお、所要の扉開口幅に対して扉高さが足りていれば、動滑車掛けにする必要はなく、支持部材43にワイヤロープ46を固定する留め具(図示略)が設けられてワイヤロープ46が固定される。
【0034】
このように、右扉21の枠内に錘40が配置されているので、扉20,21の動作範囲外に錘40を設けるスペースは必要無い。
【0035】
図3は上記錘40を上方から見た平面視の図面である。上記したように、扉板30の四辺に一体配置された枠部31の上下間を連結するように2本のガイドレール兼扉補強部材32が配置されている。これらの枠部31及びガイドレール兼扉補強部材32は、扉板30の内側に設けられている。つまり、このガイドレール兼扉補強部材32は、四辺の枠部31と一体的に扉板30の剛性を構成する部材として枠内に設けられ、扉板30の内面に適宜間隔または連続的にねじやリベット、スポット溶接、接着などで固定されている。これにより、扉板30の主に面外方向への動きや変形を抑えている。
【0036】
また、上記ガイドレール兼扉補強部材32は、扉板30から断面L字状で突出して扉板30と平行のガイドレール部33が形成されている。2本のガイドレール兼扉補強部材32は、平面視でガイドレール部33が互いに向合うように設けられている。
【0037】
そして、ガイドレール兼扉補強部材32のガイドレール部33の間に上記錘40が昇降自在に設けられている。錘40は、左右両端部に設けられた案内部材たるガイドシュー41が、上記ガイドレール兼扉補強部材32のガイドレール部33を挟み込むように設けられている。ガイドシュー41には、ガイドレール部33の板厚に対して適当な隙間(錘40の水平方向の動きは規制し、上下方向の動きは許容する隙間)を持って挟み込むスリット42が個々に備えられている。このガイドシュー41により、錘40の水平方向(前後左右)の動きが規制されている。このように錘40は、右扉21の内側でガイドレール兼扉補強部材32に沿って昇降するようになっており、扉の外面(外側)からは一切見えないようになっている。なお、ガイドシュー41の材質は、プラスチックや金属等、錘40の昇降をスムーズにガイドできるものであればよい。
【0038】
また、上記ガイドシュー41は、支持部材43の上部に設けられている。この支持部材43の下方には、板状の錘材45が上下方向に複数枚が積層されている。これら支持部材43と錘材45は、上下方向に貫通する貫通ボルト44で一体的に固定されている。これにより、ガイドシュー41と支持部材43と錘材45とが一体の錘40となっている。このように錘40を複数枚の錘板45で構成することにより、通常運転時に駆動系の負荷となる錘40を、扉20,21の支持レール2、ローラ6との摩擦や各部品の仕上がり重量に応じて、設計時、据付時、経年使用時等に、扉20,21の閉鎖力が必要最低限となるように微調整できるようにしている。
【0039】
さらに、錘40の幅方向中央部の上端には吊りプーリ47が設けられている。錘40を吊下げる索状体としてワイヤロープ(錘吊りワイヤ)46を使用することにより、扉20,21を開放した状態でも、駐車塔1の外部からは三方枠(扉20,21の上部、左右両側の三方に設けられた枠)の陰になって、利用者からは直接見えないようにできる。また、ワイヤロープ46は、索状体としてチェーンを使用した場合に比べ、自重による垂れ下がりが小さく、潤滑油が開口部を通過する車や人に掛かる心配もない。
【0040】
また、この実施形態の錘40は、複数枚の錘板45を貫通ボルト44で連結することで一体化した錘40を形成しているが、上記支持部材43を、ガイドシュー41が設けられたかご状の支持部材(容器状の部材:図示略)とし、その中に錘板45をはめ込むような構成としてもよい。
【0041】
一方、この実施形態では、上記左扉20に、運転中は扉閉鎖が原則である機械式駐車設備の内部運転状況を外部から観察できるようにのぞき窓50が設けられている。左扉20の内側に設けられた補強材51の一部に、のぞき窓50を設けるための四角穴52を設け、この四角穴52に網入ガラスの4辺を金具で押さえたのぞき窓50を設けている。こののぞき窓50の内側の上方には、熱で溶断するヒューズ部材53で吊下げられた鉄板54が設けられている。この鉄板54は、両側部が案内部材55に沿って下降し、のぞき窓50の内側位置で重なった状態で止まるようになっている。
【0042】
従って、のぞき窓50は、火災時における熱で上記ヒューズ部材53が溶断すると、鉄板54が案内部材55に案内されて下降し、のぞき窓50と重なる位置まで下降してのぞき窓50の内側を塞ぐようになっている。これにより、熱でのぞき窓50が破損しても、ガラス面から消火剤が漏れるのを防いでいる。
【0043】
図4は、上記横引き扉開閉装置10によって扉20,21を開放した状態を示す図である。上記駆動モータ12によって扉20,21を開駆動することにより、駆動チェーン14が巻かれ、右扉21の上部に設けられた支持ローラ部22が右扉21を右方に開放させる。この右扉21の開放に連動し、右扉21の支持ローラ部23に連結されて転向スプロケット15で転向させられた後に左扉20の支持ローラ部25に連結された連動チェーン16により左扉20が左方に開放させられる。このように、通常運転時における扉20,21の開放は、駆動モータ12の駆動力によって行われる。
【0044】
このような第1実施形態の横引き扉開閉装置10に備えられた非常時閉鎖システムによれば、火災発生時に後述するように制御盤電源がOFFになると、消火装置電源がONになり、扉20,21が開いていれば駆動モータ12のブレーキが解除されて錘40の自重によって扉20,21が閉鎖され、扉20,21が閉鎖したことを確認すれば消火剤を噴射するように制御することができる。詳細は、後述する。
【0045】
図5は、第2実施形態に係る横引き扉開閉装置の図面である。この第2実施形態は、第1実施形態において左扉20に設けられているのぞき窓50が右扉21に設けられている点が異なる。扉20,21に設けられるのぞき窓50の左右位置は、運転盤の位置等のレイアウトによって決められ、この第2実施形態では、右扉21の錘40が上下動する位置にのぞき窓50が設けられている。この図では、扉20,21を閉鎖した状態で示し、扉20,21を開放した時の錘40を二点鎖線で示している。上記第1実施形態と同一の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0046】
この第2実施形態の横引き扉は、右扉21の内部に上記錘40が設けられている構成は同一であるが、のぞき窓50が右扉21のガイドレール兼扉補強部材32の間に設けられている。このように、のぞき窓50を錘40が昇降するガイドレール兼扉補強部材32の間に設ける場合、扉板30側にのぞき窓50が設けられ、そののぞき窓50の内方(奥側)で錘40が昇降するように配置される。錘40に関する構成及び錘40を吊下げているワイヤロープ46に関する構成は上記第1実施形態と同一であるため、同一符号を付して、その説明は省略する。また、のぞき窓50に関する構成も上記第1実施形態と同一であるため、同一符号を付して、その説明は省略する。
【0047】
このように構成された第2実施形態の横引き扉開閉装置60によれば、扉20,21を開放したときに上昇する錘40が上昇端位置でのぞき窓50と重なるが(図示する二点鎖線)、このときの扉20,21は開いた位置にあるため、駐車塔1の三方枠と重なった位置となり、扉20,21の開動作中に錘40がのぞき窓50から見えることはない。
【0048】
なお、この実施形態では、錘40の下降端を第1実施形態の横引き扉開閉装置10に比べて低くしているが、のぞき窓50の高さや、扉20,21を開放する際にどの段階まで錘40が見えないようにするかによって錘40の下降端は任意に設定すればよい。また、この第2実施形態でも、索状体をチェーンより細いものが選べるワイヤロープ46とすることで、意匠を損ねにくいようにしている。
【0049】
このような第2実施形態の横引き扉開閉装置60に備えられた非常時閉鎖システムによっても、火災発生時に後述するように制御盤電源がOFFになると、消火装置電源がONになり、扉20,21が開いていれば駆動モータ12のブレーキ11が解除されて錘40の重量によって扉20,21が閉鎖され、扉20,21が閉鎖したことを確認すれば消火剤を噴射するように制御することができる。詳細は、後述する。
【0050】
しかも、上記横引き扉開閉装置10,60のいずれで構成しても、運転盤の位置(入出庫口の左右いずれか)に合わせてのぞき窓50が左扉20又は右扉21に配置されても、錘40を設ける扉21を一方に固定して標準化(共通化)を図ることで、錘40に関する構成部品を共通化して、据付作業の共通化などを図ることができる。
【0051】
次に、図6,7に基づいて、上記非常時閉鎖システムの動作について説明する。以下の説明では、上述した第1実施形態の横引き扉開閉装置10におけるリミットスイッチ26〜29を用いた動作制御について説明する。また、以下の説明でも、上述したように電源OFFの状態でブレーキが作動する電磁ブレーキ付の駆動モータ12を例に説明する。図6で<通常運転時>を説明し、図7で<火災発生時>を説明する。
【0052】
<通常運転時>(図6)
まず、通常運転時(扉開放時)には、駆動モータ12のブレーキ11が解除(ブレーキ電源ON)される(S1)。その後、駆動モータ12が回転させられ、左扉20は左行動作、右扉21は右行動作させられて開放される(S2)。この時、扉開リミットスイッチ27がONになったか否かがチェックされ、扉開リミットスイッチ27が扉の開放を確認するまでこのチェックが繰り返される(S3)。
【0053】
そして、上記(S3)で扉開リミットスイッチ27がONになると、駆動モータ12を停止させて、ブレーキ11の制動(ブレーキ電源OFF)が行われる(S4)。
【0054】
扉20,21を閉鎖する場合は、扉開リミットスイッチ27が扉閉リミットスイッチ26に置き換わり、同様に駆動モータ12のブレーキ解除と駆動モータ12の回転、及びブレーキ制動とが行われる。
【0055】
<火災発生時>(図7)
火災発生時には、制御盤による駆動モータ12の制御で扉20,21を閉鎖すればよいが、配線焼損などによって制御盤による正常な駆動モータ12の制御ができない場合がある。そこで、以下の説明では、火災発生によって配線が焼損したと想定し、制御盤の電源がOFFとなって扉が制御できないものとみなす(S10)。
【0056】
制御盤の電源がOFFになると、消火装置(消火盤)の電源がONになる(S11)。そして、非常扉閉リミットスイッチ28がONになったか否かがチェックされる(S12)。そして、非常扉閉リミットスイッチ28がONになるまで駆動モータ12のブレーキ電源をONにしてブレーキ11が解除される(S13)。上記したように、駆動モータ12は、電源OFFブレーキの構成であるため、電源ONにすることによってブレーキ11が解除され、駆動モータ12をフリーにすることによって上記錘40の自重によってワイヤロープ46が引かれて左扉20が閉められ、この左扉20と駆動チェーン14で連動するようになっている右扉21も閉められる。
【0057】
従って、上記駆動モータ12のブレーキ解除によって左扉20及び右扉21が閉じられ、所定時間後には、上記(S12)の非常扉閉リミットスイッチ28がONになったか否かのチェックでONになったことを確認すると、駆動モータ12のブレーキ電源をOFFにしてブレーキ11の制動が行われる(S14)。これにより、左右の扉20,21が閉じられて、駐車塔1の開口部分が閉鎖された状態となる。
【0058】
一方、上記制御盤の電源がOFFとなって扉が制御できないものとみなされると(S10)、上記扉の閉鎖確認と並行して、消火用ゾーンリミットスイッチ29がONになったか否かのチェックが繰り返される。この消火用ゾーンリミットスイッチ29は、扉20,21が所定の範囲まで閉じられるとONになる。そして、消火用ゾーンリミットスイッチ29がONになると、消火剤が噴射される(S16)。
【0059】
このように上記扉20(21)が錘40によって閉鎖されたことの確認と並行して、扉20(21)が所定の位置まで閉鎖されたことを確認して消火剤を噴射することにより、扉20(21)が閉鎖されるのとほぼ同時に消火剤を噴射して、効率良く消火できるようになっている。
【0060】
以上のように、上記非常時閉鎖システムによれば、火災発生時に扉20,21が開いていた場合に扉20,21を閉鎖する錘40が扉自体に設けられているため、非常時閉鎖システムを備えた横引き扉開閉装置10,60をスペース効率良く構成することができる。
【0061】
また、横引き扉20,21の一方に錘40を設ける構成で左右の扉20,21を同調させてスムーズに閉鎖することができるので、火災時に扉20,21を閉鎖する構成の部品点数削減によるコストダウン、駆動系の設計自由度向上、据付時の作業容易性等を図るとともに、安定した動作が可能な横引き扉20,21の非常時閉鎖システムを構成することができる。
【0062】
しかも、上記非常時閉鎖システムによれば、機械式駐車設備のように、扉20,21を開閉動作させる横引き扉開閉装置10から非常時に扉20,21を閉鎖する錘40を切り離しているので、駆動系の設計自由度向上、据付時の作業容易性向上などを図ることができる。
【0063】
なお、上記非常時閉鎖システムを採用する機械式駐車設備としては、例えば、タワー式(エレベータ式、垂直循環式など)、水平多層式(水平循環、箱形循環など)、平面往復式、スタッカクレーン式などがあるが、横引き扉を備えるものであれば、上記機械式駐車設備に限定されるものではない。また、機械式駐車設備以外の建物であっても、火災時等に扉20,21を閉鎖しなければならない建物であれば、同様に適用でき、機械式駐車設備に限定されるものではない。
【0064】
さらに、上記実施形態では2枚で対となった扉の例を説明したが、左右2枚で4枚の対となった扉であっても適用可能であり、扉の枚数は上記実施形態に限定されるものではない。
【0065】
また、上記実施形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係る横引き扉の非常時閉鎖システムは、左右に開閉される横引き扉が備えられ、火災発生時等の非常時に扉を閉鎖したい建物において利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 駐車塔
2 支持レール
10 横引き扉開閉装置
11 ブレーキ(制動装置)
12 駆動モータ(駆動源)
13 駆動スプロケット
14 駆動チェーン
15 転向スプロケット
16 連動チェーン
20 左扉(横引き扉)
21 右扉(横引き扉)
22 支持ローラ部
23 支持ローラ部
24 支持ローラ部
25 支持ローラ部
26 扉閉リミットスイッチ
27 扉開リミットスイッチ
28 非常時閉リミットスイッチ
29 消火用ゾーンリミットスイッチ
30 扉板
31 枠部
32 ガイドレール兼扉補強部材
33 ガイドレール部
34 転向プーリ
35 ローラ
40 錘
41 ガイドシュー(案内部材)
42 スリット
43 支持部材
44 貫通ボルト
45 錘材
46 ワイヤロープ(索状体)
47 吊りプーリ(動滑車)
50 のぞき窓
53 ヒューズ部材
54 鉄板
55 案内部材
60 扉開閉装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出入口に横引き扉を備え、前記横引き扉は、中央を境にして左右に開閉する対になった扉で構成され、前記横引き扉は、開閉装置の駆動源で駆動する駆動機構によって左右の扉が連動して開閉させられるように構成された横引き扉の非常時閉鎖システムであって、
前記開閉装置は、前記駆動源と一体または独立の制動装置を備え、通常運転時は、前記扉の開閉を前記駆動源で行うとともに、該駆動源運転時は前記制動装置を解除し、駆動源停止時は前記制動装置を制動するように構成され、非常時には独立して前記制動装置を解除するように構成された制御回路を備え、
前記横引き扉は、左右一方の扉に一端が固定され、他端が他方の扉の枠内に設けられた転向部材を介して錘を吊下げた索状体を有し、
前記錘は、前記索状体を介して自重で左右の扉を閉鎖する方向に付勢するように構成されていることを特徴とする横引き扉の非常時閉鎖システム。
【請求項2】
前記錘は、前記他方の扉に設けられた動滑車に掛けられ、前記索状体は前記動滑車に掛けられて端部が扉の上部に固定されている請求項1に記載の横引き扉の非常時閉鎖システム。
【請求項3】
前記索状体はワイヤロープであり、前記転向部材は転向プーリで構成されている請求項1又は2に記載の横引き扉の非常時閉鎖システム。
【請求項4】
前記錘は、前記扉の内側において枠部を上下方向に連結するガイドレールに沿って昇降する案内部材を有し、
前記ガイドレールは、扉の補強材を兼ねたガイドレール兼扉補強部材で構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の横引き扉の非常時閉鎖システム。
【請求項5】
前記錘は、複数枚の錘板で構成され、
前記複数枚の錘板は、前記ガイドレールに沿って昇降する案内部材と、前記索状体を掛ける転向部材または索状体を固定する索留め具とを備えた支持部材と連結されている請求項4に記載の横引き扉の非常時閉鎖システム。
【請求項6】
前記錘は、複数枚の錘板で構成され、
前記複数枚の錘板は、前記ガイドレールに沿って昇降する案内部材と、前記索状体を掛ける転向部材または索状体を固定する索留め具とを備えたかご状の支持部材にはめ込まれている請求項4に記載の横引き扉の非常時閉鎖システム。
【請求項7】
前記建物は機械式駐車設備であり、
前記機械式駐車設備の車両出入口に備えられた横引き扉を非常時に閉鎖するように構成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の横引き扉の非常時閉鎖システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−28458(P2013−28458A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167345(P2011−167345)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】