説明

樹脂封止装置

【課題】種類の異なる金型を用いてマルチプレス型の樹脂封止装置を構築する場合においても、被成形品の誤搬送を防止する。
【解決手段】複数の金型106と、被成形品が収容される被成形品供給部102と、被成形品供給部102から供給される被成形品を金型106へと搬送するローダ130と、を備え、金型106にて被成形品をクランプした上で、被成形品を樹脂にて封止する樹脂封止装置100であって、被成形品供給部102が、複数種類の被成形品を収容し、金型106が、被成形品の種類毎に対応する複数の専用金型として用意され、被成形品供給部102から供給される被成形品の種類を識別した上で、当該種類に応じてローダ130を介して専用の金型106へ搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップが搭載されたリードフレームを樹脂にて封止する樹脂封止装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、樹脂封止装置に対する市場の要望は、多様化するとともにその程度も益々高いものとなっている。例えばその1つに、更なる「生産性向上」というものが存在する。生産性を向上させるには種々のアプローチが考えられ、例えば、金型そのものを大きくして一度に樹脂封止できる量を向上させたり、装置自体の動作を早くして単位時間当たりの生産量を向上させる等のアプローチがある。また、装置内に複数の金型を備えた所謂マルチプレス型の樹脂封止装置によって生産性を向上させるというアプローチもある。ここでいう「マルチプレス」とは、1つの装置内に複数の金型を備え、それ以外の材料供給機構や搬送機構などが共用されている樹脂封止装置のことを意味している。
【0003】
このマルチプレス型の樹脂封止装置として、例えば特許文献1に記載される樹脂封止装置が公知である。この樹脂封止装置では、金型がユニット単位で増設可能に構成されており、必要に応じて金型ユニットを増減させることが可能とされている。またこの樹脂封止装置は、樹脂封止前の被成形品(リードフレーム等)を金型へと搬送するローダ(搬送機構)を備え、このローダが被成形品を複数の金型へと順次搬送している。金型に搬送された被成形品は、金型によってクランプされ、樹脂にて封止される。
【0004】
一方で、半導体製品のライフサイクルの短縮化傾向の下、多品種対応への要求も樹脂封止装置に対しても高まりつつある。
【0005】
【特許文献1】特開2001−300975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多品種に対応するためには、樹脂封止装置自体を複数揃えることで対応できるが、これでは非常にコスト高になることは勿論、装置の据付け面積も広く確保する必要がある。更に、それぞれの品種が少量生産の場合は、一部の装置が全く稼動しない常況も発生し、資産としての装置を効率よく活用することができない。
【0007】
そこで発明者は、マルチプレス型の樹脂封止装置に備わる複数の金型をそれぞれの品種に対応した専用の金型で構成し、限られた据付面積を有効に活用しつつ、多品種対応、更には少量生産にも対応するという着想を得た。
【0008】
しかしながら、複数存在する金型のそれぞれを品種専用の金型で構成すると、被成形品を誤って他の金型へと搬送してしまうという問題が生じ得る。特に複数の金型に対して1つの搬送機構が共用されて被成形品を搬送している場合には、「誤搬送」の可能性が高くなってしまう。万が一このような「誤搬送」が生じれば、樹脂封止を正確に行えないことは勿論として、高価な被成形品や金型の損傷にも繋がってしまう。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するべくなされたものであって、それぞれ種類の異なる金型を用いて所謂「マルチプレス型」の樹脂封止装置を構築する場合においても、被成形品の誤搬送を防止することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、被成形品が収容される被成形品供給部と、該被成形品供給部から供給される前記被成形品を金型へと搬送する搬送機構と、を備え、前記金型にて前記被成形品をクランプした上で、当該被成形品を樹脂にて封止する樹脂封止装置であって、前記被成形品供給部が、複数種類の被成形品を収容し、前記金型が、前記被成形品の種類毎に対応する複数の専用金型として用意され、前記被成形品供給部から供給される前記被成形品の種類を識別した上で、当該種類に応じて前記搬送機構を介して前記専用金型へ搬送することにより上記課題を解決するものである。
【0011】
このように、被成形品供給部から供給される被成形品の種類を識別した上で、搬送機構によって適切な金型(専用金型)へと搬送することにより、「誤搬送」を防止している。更に、被成形品供給部から供給される被成形品を事後的に識別しているので、被成形品の種類を考慮せずにランダムに被成形品供給部に収容することも可能となり、被成形品供給部への被成形品の収容作業を簡易化することも可能となる。
【0012】
また、前記被成形品供給部が、前記被成形品が収容される1のマガジンで構成され、該マガジン内に、異なる種類の前記被成形品が収容されているような構成とすれば、被成形品の種類毎にマガジンを用意する必要がないため、装置の据付面積を小さくすることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明を適用することにより、被成形品の種類毎に適切な金型へと搬送することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態の一例である樹脂封止装置100の概略構成図である。図2は、図1における矢示II部周辺の拡大図である。図3は、被成形品の識別手法を例示した図である。
【0016】
なお説明の都合上、図1における左右方向をX方向、上下方向をY方向、これらX方向およびY方向のいずれにも直交する方向をZ方向(高さ方向)として説明する。
【0017】
<樹脂封止装置の構成>
樹脂封止装置100は、当該装置の基台となるベース部101上に、樹脂封止前のリードフレーム180(被成形品:図1において図示していない)が収容される被成形品供給部102と、樹脂封止後のリードフレーム180が収納される成形品収納部104と、これら被成形品供給部102および成形品収納部104との間に並んで配置される2つの金型106とが一列に配置されている。この2つの金型106はそれぞれが異なる製品を生産する。そのため図面上は必ずしも明らかでないが、キャビティの形状等がそれぞれ異なっている。被成形品供給部102は、リードフレーム180が複数収容されたマガジンが1つ配置された構成とされている。またこのマガジン内には種類の異なるリードフレーム180が混在して収容されている。
【0018】
被成形品供給部102の近傍には、被成形品供給部102から搬送ハンド190(図1においては図示していない:図2参照)によって取り出されたリードフレーム180を旋回させて向きを整える旋回テーブル103が配置されている。また、被成形品供給部102と旋廻テーブル103との間には、リードフレーム180の種類を識別するためのカメラ170が設置されている(図2参照)。また、旋回テーブル103によって向きが整えられた後に、リードフレーム180を所定の温度にまで加熱し保温するプレヒータ部105が配置されている。更にこれら旋廻テーブル103およびプレヒータ部105と並んで、封止材料としての樹脂タブレットが供給される樹脂タブレット供給部109が配置されている。
【0019】
一方、成形品収納部104の近傍には、樹脂封止後のリードフレーム180が冷却される冷却ステージ(冷却部)107、冷却ステージ107にて冷却されたリードフレーム180の不要部分(カル部)が取り出されるゲートブレーク部108が配置されている。
【0020】
また、ベース部101には被成形品供給部102、成形品収納部104、金型106の並びと平行して、X方向ガイド120が設置されている。このX方向ガイド120上には、ローダ130およびアンローダ140が当該ガイドに沿って自由に移動することが可能に配置されている。これらローダ130およびアンローダ140は、複数配置された金型106に対する搬送機構として機能する。即ち、ローダ130は、被成形品供給部102から供給されるリードフレームを所定のタイミングで金型106へと搬入する。一方、アンローダ140は、それぞれの金型106にて樹脂封止されたリードフレームを搬出し成形品収納部104へと収納する機能を有している。
【0021】
なお、本実施形態においては、前述したように金型106が2つ配置されているが、必ずしも2つに限定されるものではなく、複数である限り3つ以上の金型が配置されていてもよい。また、少なくとも2種類以上の金型(キャビティの形状が異なる金型)が含まれていればよく、マルチプレスを構成する複数の金型の全てが異なる種類のものである必要はない。
【0022】
更に、被成形品供給部102と成形品収納部104とが同じ側に配置されていたり、更にローダ130およびアンローダ140が単一の搬送機構によって実現されていても良い。
【0023】
なお、上記実施形態以外にも、例えば、複数のマガジンが全体として被成形品供給部として機能し、各々のマガジン内に複数種類のリードフレームが混在していてもよい。また、複数のマガジンが全体として被成形品供給部として機能し、各々のマガジンには単一種類のリードフレームが収容され且つ各マガジン間でのリードフレームの種類が異なっていてもよい。このような場合には、例えば、搬送ハンド190がシフト機構(図示していない)によってX方向に移動しつつ、リードフレームが取り出されることとなる。
【0024】
また、上記構成以外にも、例えば、樹脂タブレット供給部109やゲートブレーク部108、更には冷却ステージ107が複数系統で構成されていてもよい。
【0025】
<樹脂封止装置全体の作用>
続いて樹脂封止装置100の作用について説明する。
【0026】
最初に、被成形品供給部102から樹脂封止前の一枚のリードフレーム180が旋廻テーブル103へと搬送される。この搬送は搬送ハンド190によって行われる(図2参照)。旋廻テーブル103に一枚のリードフレーム180が搬送されると旋廻テーブル103が回転する。その後もう1枚のリードフレーム180が搬送ハンド190によって旋廻テーブル103へと搬送され、計2枚のリードフレーム180が旋廻テーブル103上に配置される。その後ローダ130によって2枚のリードフレーム180が同時にプレヒータ105部に搬送される。ここでリードフレーム180が所定の温度にまで加熱され保温される。プレヒータ105部は本実施形態では2つ設けられており、そのうちのいずれか(空いている側)に搬送される。一方、樹脂タブレット供給部109からは、封止材料としての樹脂タブレットが供給される。その後、プレヒータ部105にて保温されているリードフレーム180および樹脂タブレットが、ローダ130によって、金型106へと搬送される。
【0027】
金型106において樹脂封止(プレス作業)が完了すると、今後はアンローダ140によって樹脂封止後のリードフレーム180が冷却ステージ107へと搬送される。冷却ステージ107では、樹脂封止後のリードフレーム180が所定の温度にまで冷却される。その後再びアンローダ140によって、リードフレーム180が冷却ステージ107からゲートブレーク部108へと搬送される。ここではリードフレーム180の不要部分、即ち、カル部に相当する樹脂がゲートブレークされて取り除かれる。不要部分は破棄され、残ったリードフレーム180が製品収納部104へとアンローダ140によって搬送される。このような手順が繰り返されることによって樹脂封止が連続して行われる。
【0028】
一方、搬送ハンド190によって被成形品供給部102からリードフレーム180が旋廻テーブル103へと搬送される時点において、カメラ170によって、リードフレーム180の種類が識別されている。即ち、いずれの金型106に搬送すべきリードフレーム180かが識別される。この識別は、例えば図3(A)に示したように、リードフレーム180に搭載されているICチップ(半導体チップ)181の種類を画像処理によって識別したり、(B)に示したように、リードフレーム180の形状を画像処理によって識別している。勿論リードフレームの種類を識別できる限りにおいて、その他の手法を利用して識別してもよい。この識別の結果を利用して、適切な金型(識別されたリードフレーム180に対応する専用の金型)へと搬送が行われる。また、識別の結果、いずれの金型106にも対応しないリードフレーム180であった場合には、例えば、搬送ハンド190による搬送が停止する。勿論、旋廻テーブル103へと搬送した後にそれ以降の作業を停止させてもよい。これにより、「誤搬送」を未然に防止することが可能となる。更に、搬送ハンド190によって被成形品供給部102からリードフレーム180が取り出されている段階でリードフレーム180の種類を識別しているため、早期発見が可能となる。
【0029】
また、被成形品供給部102から供給されるリードフレーム180を事後的に識別しているので、リードフレーム180の種類を考慮せずにランダムに被成形品供給部102に収容することも可能となり、被成形品供給部102へのリードフレーム180の収容作業を簡易化することも可能となる。
【0030】
なお、上記以外にも例えばローダ130によってリードフレームが搬送されている時点で、識別を行なってもよい。このようにすれば、より金型106に近い位置にて識別できるため、所謂「最終チェック」としての意義を持たせることが可能となる。もちろんこれら両方の位置にて識別すればより確実な識別が可能となる。
【0031】
また本実施形態では、被成形品供給部102としてのマガジン内に、異なる種類のリードフレーム180を混在して収容することが可能であった。これにより、リードフレーム180の種類毎にマガジンを用意する必要がないため、装置の据付面積を小さくすることが可能となっている。
【0032】
また、識別手段としてのカメラ170は搬送されるリードフレーム180の下側に配置されていたが、必要により上側に配置してもよいし、両側に配置して識別させることも可能である。
【0033】
また、本実施形態では、複数の金型106に対して1つのローダ(搬送機構)130を共用としているが、このような構成に限定されるものではない。ローダ130の数が、所謂マルチプレスとして配置される金型106の数よりも少ない構成であれば、少なくとも部分的にローダ130が共用される状況が発生するため、本発明の効果を得ることが可能となる。
【0034】
また、上記では「トランスファ成形」を行う樹脂封止装置を例に説明しているが、これに限定される趣旨のものではない。その他にも「圧縮成形」など広く樹脂封止方式に関らず適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
特に、複数の金型を有する所謂「マルチプレス」タイプの樹脂封止装置に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態の一例である樹脂封止装置の概略構成図
【図2】図1における矢示II部周辺の拡大図
【図3】被成形品の識別手法を例示した図
【符号の説明】
【0037】
100…樹脂封止装置
101…ベース部
102…被成形品供給部
103…旋回テーブル
104…成形品収納部
105…プレヒータ
106…金型
107…冷却ステージ
108…ゲートブレーク
109…樹脂タブレット供給部
120…X方向ガイド
130…ローダ
140…アンローダ
180…リードフレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金型と、被成形品が収容される被成形品供給部と、該被成形品供給部から供給される前記被成形品を前記複数の金型へと搬送する搬送機構と、を備え、前記金型にて前記被成形品をクランプした上で、当該被成形品を樹脂にて封止する樹脂封止装置であって、
前記被成形品供給部が、複数種類の被成形品を収容し、
前記金型が、前記被成形品の種類毎に対応する複数の専用金型として用意され、
前記被成形品供給部から供給される前記被成形品の種類を識別した上で、当該種類に応じて前記搬送機構を介して前記専用金型へ搬送する
ことを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記搬送機構が1つである
ことを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記被成形品供給部が、前記被成形品が収容される1のマガジンで構成され、
該マガジン内に、異なる種類の前記被成形品が収容されている
ことを特徴とする樹脂封止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−105257(P2009−105257A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−276239(P2007−276239)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】