説明

樹脂成型品の製造方法および装置並びにターンテーブルの製造方法

【課題】樹脂成型品の製造方法においてゲート痕の突出による製品不良の防止。
【解決手段】ゲートを有する第1金型と、第2金型とを型締めしてキャビティを形成する工程と、前記ゲートから前記キャビティ内に樹脂を射出して、樹脂成型品を成型する工程と、前記第1金型と前記第2金型とを分離して、前記樹脂成型品のゲート痕635を露出させる工程と、前記第1金型と前記第2金型との間に保持具84を挿入する工程と、前記保持具を前記樹脂成型品の前記ゲート痕に当接させることにより、前記ゲート痕を押し潰す工程と、前記保持具にて前記樹脂成型品を保持する工程と、前記保持具と共に前記樹脂成型品を前記第1金型と前記第2金型との間から取り出す工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成型にて樹脂成型品を製造する方法に関し、特に、記録ディスク駆動用のモータに設けられるターンテーブルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
記録ディスクが交換可能な記録ディスク駆動装置では、記録ディスクをチャッキングするチャッキング装置が設けられる。チャッキング装置のターンテーブルは、樹脂の射出成型を利用して製造される。これにより、ターンテーブルの製造の低コスト化、形状精度の向上が図られる。特に、記録ディスクが載置されるディスク載置面の振れ精度、記録ディスクをディスク載置面へとガイドするガイド面の形状精度、記録ディスクの回転軸とモータの回転軸との同軸度を合わせる調芯精度等が求められる。
【0003】
一方、樹脂による射出成型では、金型から樹脂成型品を離型する際に、樹脂成型品にゲート痕が形成される。このようなゲート痕は、通常、樹脂成型品の重要な形状に影響を与えない部位に形成される。
【0004】
特開平2001−37141号公報および特開平2003−299302号公報では、ターンテーブルとモータのロータホルダとがインサート成型されたものが開示されている。一体成型により、樹脂製のターンテーブルの剛性が向上する。また、一体成型により、ロータホルダとターンテーブルとを組み合わせる工程を省略することが実現される。
【特許文献1】特開2001−37141号公報
【特許文献2】特開2003−299302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ターンテーブルまたはその一部を樹脂にて成型する場合、ゲート痕がターンテーブルの上側または下側に設けられる。ゲート痕が上方に突出すると、記録ディスクや記録ディスクのクランパと干渉する虞がある。ゲート痕が下方に突出すると、モータの静止部と干渉する虞がある。特に、インサート成型の場合、樹脂の肉厚が薄いため、ゲート痕の周囲に深い凹部を設けることができない。その結果、ゲート痕が樹脂の表面から突出しやすくなる。
【0006】
ゲート痕の突出による製品不良を防止するには、ターンテーブルの全数に対してゲート痕の突出を検査する必要がある。突出している場合は、ゲート痕を押し潰す作業が必要となる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、ゲート痕の突出を防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の側面に係る樹脂成型品の製造方法は、ゲートを有する第1金型と、第2金型とを型締めしてキャビティを形成する工程と、前記ゲートから前記キャビティ内に樹脂を射出して、樹脂成型品を成型する工程と、前記第1金型と前記第2金型とを分離して、前記樹脂成型品のゲート痕を露出させる工程と、前記第1金型と前記第2金型との間に保持具を挿入する工程と、前記保持具を前記樹脂成型品の前記ゲート痕に当接させることにより、前記ゲート痕を押し潰す工程と、前記保持具にて前記樹脂成型品を保持する工程と、前記保持具と共に前記樹脂成型品を前記第1金型と前記第2金型との間から取り出す工程と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ゲート痕の突出を防止することができる。これにより、ゲート痕の突出を検査する工程および突出したゲート痕を押し潰す工程が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、記録ディスク駆動装置の断面図である。
【図2】図2は、モータの縦断面図である。
【図3】図3は、ターンテーブルの平面図である。
【図4】図4は、ターンテーブルの平面図である。
【図5】図5は、ターンテーブルの断面図である。
【図6】図6は、ターンテーブルの製造の流れを示す図である。
【図7.A】図7.Aは、ターンテーブルの製造の様子を示す図である。
【図7.B】図7.Bは、ターンテーブルの製造の様子を示す図である。
【図7.C】図7.Cは、ターンテーブルの製造の様子を示す図である。
【図7.D】図7.Dは、ターンテーブルの製造の様子を示す図である。
【図7.E】図7.Eは、ターンテーブルの製造の様子を示す図である。
【図7.F】図7.Fは、ターンテーブルの製造の様子を示す図である。
【図8.A】図8.Aは、保持具の断面図である。
【図8.B】図8.Bは、保持具の正面図である。
【図9.A】図9.Aは、ターンテーブルおよび保持具を示す図である。
【図9.B】図9.Bは、ターンテーブルおよび保持具を示す図である。
【図10】図10は、保持具の他の例を示す図である。
【図11】図11は、ターンテーブルおよび保持具の他の例を示す断面図である。
【図12】図12は、ターンテーブルの他の例を示す図である。
【図13】図13は、ターンテーブルのさらに他の例を示す図である。
【図14】図14は、ターンテーブルのさらに他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書では、モータの中心軸方向における回転部側を単に「上側」と呼び、静止部側を単に「下側」と呼ぶ。なお、本発明の説明において、各部材の位置関係や方向を上下左右で説明するときは、原則として図面における位置関係や方向を示し、実際の機器に組み込まれたときの位置関係や方向を示すものではない。
【0012】
(記録ディスク駆動装置の構造)
図1は、本発明の一実施形態に係るモータを備える記録ディスク駆動装置10の中心軸を含む平面で切断した断面図である。記録ディスク駆動装置10は、モータ1と、アクセス部11と、これらを内部に収容する箱状のハウジング12と、を備える。図1では、ハウジング12、後述のクランパ122、クランプマグネット123および記録ディスク9を二点鎖線にて示している。モータ1はシャーシ121により保持される。アクセス部11は、ヘッド111と、ヘッド移動機構112と、を備える。ヘッド111は、記録ディスク9に対する情報の読み出しおよび/または書き込みを行う光ピックアップ機構である。記録ディスク9として、例えば、ブルーレイディスクが利用される。ヘッド移動機構112は、ヘッド111をモータ1および記録ディスク9に対して移動する。ヘッド111は、光出射部と、受光部と、を有する。光出射部は、記録ディスク9の下面に向けてレーザ光を出射する。受光部は、記録ディスク9からの反射光を受光する。
【0013】
ハウジング12には、図示省略の搬送機構が設けられる。搬送機構により、記録ディスク9のハウジング12への挿入や、ハウジング12からの取り出しが行われる。また、ハウジング12内には、クランプマグネット123を有するクランパ122が設けられる。
【0014】
記録ディスク9が挿入されると、記録ディスク9の中央のディスク中央孔91がモータ1のターンテーブル13の上方に配置される。そして、モータ1が上昇して、記録ディスク9がターンテーブル13に載置される。クランプマグネット123が、ターンテーブル13の金属のプレート部材を上方から吸着することにより、クランパ122により記録ディスク9がターンテーブル13上にクランプされる。
【0015】
記録ディスク駆動装置10では、モータ1により記録ディスク9が回転され、ヘッド移動機構112がヘッド111を所要の位置へと移動して、記録ディスク9に対する情報の読み出しおよび/または書き込みが行われる。記録ディスク9の取出時には、クランパ122が記録ディスク9から離され、モータ1が下降して記録ディスク9がターンテーブル13から外される。
【0016】
(モータの構造)
図2はモータ1の縦断面図である。モータ1は、回転組立体である回転部2と、固定組立体である静止部3と、ターンテーブル13と、軸受機構4と、を備える。回転部2は、軸受機構4により、静止部3に対しその上方にて回転可能に支持される。ターンテーブル13は、回転部2の上端に設けられる。
【0017】
回転部2は、有蓋略円筒状のロータホルダ21と、円環状のロータマグネット22と、を有する。ロータマグネット22は、ロータホルダ21の円筒部の内側面に取り付けられる。ロータホルダ21の中央には、円筒状のシャフト固定部23が設けられる。軸受機構4のシャフト41は、シャフト固定部23に挿入されてロータホルダ21に固定される。
【0018】
静止部3は、略板状のベース部31と、ステータ32と、回路基板33と、を備える。回路基板33は、ベース部31上に配置される。ベース部31は金属にて形成され、ベース部31の中央の孔311には、軸受機構4が取り付けられる。ステータ32は、ステータコア321と、ステータコア321上に形成された複数のコイル322と、を備える。ステータコア321は、積層鋼板にて形成される。ステータ32は、スリーブ保持部42の円筒部421の外側面に取り付けられる。ステータ32は、ロータマグネット22に対して中心軸J1に垂直な方向に対向する。モータ1の駆動時には、ロータマグネット22とステータ32との間にて磁気的作用が生じる。
【0019】
軸受機構4は、シャフト41と、有底円筒状のスリーブ保持部42と、スリーブ43と、円環状の抜止部材44と、を備える。シャフト41の下部の先端には、円環状の溝411が形成される。スリーブ43は、含油性の多孔質金属体により形成される。スリーブ保持部42は、円筒部421と、環状の段差部422と、底部423と、を有する。段差部422では、円筒部421の下端から中心軸J1に向かって径が小さくなる。底部423は、段差部422の下側にて、スリーブ保持部42の下端を閉塞する。
【0020】
抜止部材44は、樹脂等の弾性体により形成され、段差部422上に載置される。抜止部材44の内側の端部は、シャフト41の溝411内に位置する。これにより、シャフト41が、スリーブ保持部42から抜け出ることが防止される。底部423の内側には、円板状のスラストプレート45が設けられる。モータ1の駆動時には、シャフト41の先端がスラストプレート45に当接することにより、シャフト41がスラスト方向に安定して支持される。さらに、シャフト41は、スリーブ43により、オイルを介してラジアル方向に支持される。
【0021】
ターンテーブル13は、円環状のプレート部材131と、環状の中央樹脂部132と、環状ラバー133と、を備える。図2では、プレート部材131の奥側の形状の一部を破線にて示している。プレート部材131は、軟質な強磁性材料からなり、プレス加工にて成型される。プレート部材131の厚さは0.8mm程度である。プレート部材131は、例えば、電気亜鉛めっき鋼板(SECC)である。
【0022】
プレート部材131は、プレート部材131の外周部であるプレート外周部51と、プレート部材131の中央部であるプレート中央部52と、プレート中央部52とプレート外周部51との間に位置する屈曲部53と、を備える。プレート外周部51は、中心軸J1に略垂直である。プレート中央部52は、中心軸J1に略垂直であり、プレート外周部51よりも上方に位置する。ターンテーブル13では、図1のクランプマグネット123とプレート外周部51との間にて、十分な磁気的作用を働かせることができる。このため、プレート部材131は、軟質な強磁性材料であればよく、安価な材料も選択可能である。これにより、ターンテーブル13が安価に製造される。
【0023】
中央樹脂部132は、プレート部材131の略中央に配置され、樹脂の射出成型により形成される。これにより、プレート部材131および中央樹脂部132は、1つの部品となる。中央樹脂部132は、プレート外周部51よりも上方に突出する。中央樹脂部132がプレート中央部52および屈曲部53のほぼ全体を覆っているため、プレート部材131が中央樹脂部132から分離することが防止される。中央樹脂部132は、例えば、ポリカーボネイト(PC)等の樹脂材料から形成されている。
【0024】
中央樹脂部132は、樹脂円筒部61と、傾斜面631と、略円形の上面632と、複数の爪633とを備える。これらの部位を含む中央樹脂部132全体が、一つながりの部材として形成される。樹脂円筒部61は、プレート部材131の略中央に設けられたプレート中央孔55の内側に位置し、プレート中央孔55を貫通する中央樹脂貫通孔611を有する。中央樹脂貫通孔611には、シャフト41の上部が固定される。
【0025】
傾斜面631は、中央樹脂部132の上部63の外周部であり、上面632の外縁から下方に向かうに従って中心軸J1から離れるように傾斜する。プレート部材131の屈曲部53は、傾斜面631の外周形状におよそ倣うように折り曲げられている。
【0026】
複数の爪633は、傾斜面631の複数箇所に設けられ、傾斜面631から下方に向かうに従って中心軸J1から離れる部位となっている。爪633は、下方に向かうに従って中心軸J1から離れる部位を有するのであれば、爪633全体が傾斜している必要はない。以下、中心軸J1を中心とする径方向を単に「径方向」といい、中心軸J1を中心とする周方向を単に「周方向」という。
【0027】
図1の記録ディスク9が、ターンテーブル13に取り付けられる際には、傾斜面631によりディスク中央孔91が爪633へとガイドされ、爪633がディスク中央孔91に接する。そして、記録ディスク9がプレート部材131上に配置される。正確には、記録ディスク9はプレート部材131上の環状ラバー133上に載置される。換言すれば、プレート部材131および環状ラバー133により、中央樹脂部132の周囲に、ディスク載置部134が構成される。ディスク載置部134は、プレート部材131のみであってもよく、逆に、環状ラバー133以外の部品が設けられてもよい。
【0028】
記録ディスク9がディスク載置部134に載置された状態にて、爪633は、上部63により支持されつつ、径方向内方に弾性変形している。爪633の弾性変形を利用することにより、記録ディスク9の中心を、中心軸J1上に正確に位置させることができる。このため、高い調芯性能が要求されるブルーレイディスク等の記録ディスクであっても、ターンテーブル13に高精度に取り付けられる。
【0029】
図3および図4は、ターンテーブル13の平面図である。図4では、中央樹脂部132に平行斜線を付している。図5は、図3の矢印Aの位置におけるターンテーブル13の断面図である。図5では、プレート部材131の奥側の形状の一部を破線にて示している。以下の他の図についても同様である。図3および図5に示すように、上面632および傾斜面631には、これらの部位を跨いで下方に向かって窪む7つの凹部634が、周方向に等間隔に設けられる。後述するように、中央樹脂部132の射出成型時には、凹部634に対応する位置に設けられたゲートから金型内のキャビティへと樹脂が射出される。金型から成型品を分離する際には、ゲートにて樹脂が切断されるため、凹部634には、凸状のゲート痕635が形成される。凹部634は、上面632のみに設けられてもよく、傾斜面631のみに設けられてもよい。ゲート痕635は、径方向において複数の爪633よりも中心軸J1側に位置する。また、ゲート痕635、周方向において、複数の爪633の間に位置する。
【0030】
図5に示すように、中央樹脂部132のプレート部材131よりも下側の下部64には、中央樹脂貫通孔611の周囲にて上方に向かって窪む環状樹脂凹部641が設けられる。中央樹脂部132の射出成型時には、キャビティ内に複数種類のピンが配置されており、環状樹脂凹部641には、ピンの痕を示す複数の凹部671,672が形成されている。
【0031】
プレート部材131には、爪の下方に開口54が設けられており、中央樹脂部132の一部として、開口54のエッジ541上に樹脂層65が設けられる。これにより、金型とプレート部材131との干渉が防止される。樹脂層65の内側には、爪633と中心軸J1に平行な方向に重なる爪位置貫通孔66が形成される。爪633の先端は爪位置貫通孔66内に位置する。1つの爪633に1つの爪位置貫通孔66が対応する。
【0032】
(ターンテーブルの製造)
次に、ターンテーブル13を製造する流れ、および、製造装置の主要構成について、図6並びに図7.Aないし図7.Fを参照しつつ説明する。図7.Aないし図7.Fでは、平行斜線を付すことなく断面を示している。
【0033】
まず、搬送機構により、板状かつ円盤状の金属部材であるプレート部材131が吸着保持されて所定の収容部から取り出される。図7.Aに示すように、プレート部材131の中心軸J1が水平方向に向けられた状態にて、プレート部材131が磁気的作用やエアの吸引力等を利用して、可動金型82に取り付けられる(ステップS11)。実際には、プレート部材131を支持するための支持ピンが可動金型82に設けられる。図5の凹部671は支持ピンに対応する。
【0034】
可動金型82は、進退機構86により、固定金型81に対して進退可能である。可動金型82およびプレート部材131は、中心軸J1に沿って固定金型81に近づく。図7.Bに示すように、固定金型81および可動金型82によりプレート部材131が挟まれつつ、固定金型81および可動金型82が型締めされる。固定金型81と可動金型82との間には、キャビティ89が形成される(ステップS12)。
【0035】
固定金型81は、キャビティ89内に樹脂を送る流路812と、流路812のゲート811を備える。ゲート811の位置は、図5に示すゲート痕635の位置に対応する。ゲート811からキャビティ89内に、約300℃に加熱された樹脂が高圧にて射出される(ステップS13)。樹脂は、プレート部材131の上面側から下面側、すなわち、図7.Bにおける右側から左側へと広がり、キャビティ89全体に完全に充填される。金型の温度は、80〜90℃に制御されている。
【0036】
樹脂が固化してプレート部材131上の中央に中央樹脂部132が成型されると、図7.Cに示すように、可動金型82が固定金型81から離される(ステップS14)。このとき、ターンテーブル13は、可動金型82と共に固定金型81から離される。そして、図7.Dに示すように、11本の離型ピン821が、ターンテーブル13の11箇所を軽く押圧することにより、ターンテーブル13が可動金型82から分離される(ステップS15)。なお、図7.Dでは1つのみ示されるが、実際には、複数の離型ピン821が、中心軸J1を中心とする周方向に設けられる。
【0037】
図7.Eに示すように、搬送機構83のアーム831に取り付けられた保持具84は、固定金型81と可動金型82との間に挿入される。図7.Fに示すように、保持具84は、ターンテーブル13に向かって移動し、ターンテーブル13に押しつけられる(ステップS16)。同時に、保持具84はターンテーブル13を吸着保持する(ステップS17)。
【0038】
図8.Aは、保持具84の断面図である。図8.Bは、保持具84の正面図であり、図8.Aの左側から見た様子を示している。
【0039】
保持具84は、外側部材841と内側部材842とを備える。外側部材841は中心軸J2を中心とする有底略円筒状である。内側部材842は、略円筒状であり、外側部材841内に配置される。外側部材841および内側部材842は樹脂により形成される。外側部材841の上部には貫通孔851が設けられる。貫通孔851には図示しないチューブが接続される。内側部材842と外側部材841との間には環状の間隙852が設けられる。チューブから排気が行われることにより、間隙852から吸気が行われる。これにより、保持具84がターンテーブル13のプレート部材131を吸着保持する。
【0040】
内側部材842の中央には、ターンテーブル13の中央樹脂部132を収容する凹部853が設けられる。凹部853内には、中心軸J2を中心とする周方向の複数の位置に突起854が設けられる。
【0041】
図9.Aは、ターンテーブル13と保持具84とが対向する状態を示す図であり、図7.Eに対応する。金型が分離されてゲート痕635が露出すると、図9.Aに示すように、保持具84の複数の突起854は、中央樹脂部132の複数のゲート痕635にそれぞれ対向する。ゲート痕635は、中央樹脂部132の上面632よりも高く突出するとは限らないが、図9.Aでは上面632よりも突出した場合を描いている。
【0042】
図9.Bは、保持具84がターンテーブル13に向かって移動した状態を示す図であり、図7.Fに対応する。保持具84が移動すると、突起854がゲート痕635に当接することにより、ゲート痕635が押し潰される。これにより、ゲート痕635が中央樹脂部132の上面632よりも高く突出することが防止される。同時に、間隙852からの吸引により、ターンテーブル13が吸着保持される。
【0043】
吸引はゲート痕635の押し潰し前から開始されてもよく、ゲート痕635が押し潰されて保持具84の間隙852とターンテーブル13とが当接してから開始されてもよい。このように、ゲート痕635の押し潰しとターンテーブル13の保持とは実質的に同時に行われるのであれば、「同時」という用語は厳密に解釈される必要はない。
【0044】
ターンテーブル13は離型ピン821により離型されるのではなく、保持具84が可動金型82上のターンテーブル13を直接吸着保持してもよい。逆に、保持具84がターンテーブル13に向かって移動するのではなく、ターンテーブル13が離型ピン821に突き出されることにより、ターンテーブル13が保持具84に向かって押圧されて保持されてもよい。
【0045】
ターンテーブル13が保持具84に保持されると、搬送機構83が保持具84を移動することにより、保持具84と共にターンテーブル13が固定金型81および可動金型82の間から取り出され(ステップS18)、所定の容器に収容される。
【0046】
実際には、アーム831に、保持具84と共にプレート部材131を保持する他の保持具が設けられる。保持具84によりターンテーブル13が受け取られると、他の保持具がプレート部材131を可動金型82に装着する。そして、ターンテーブル13が所定の容器に収容されると、他の保持具が次のプレート部材131を保持する。これにより、効率よく、複数のターンテーブル13が順次製造される。なお、環状ラバー133は後の工程にてプレート部材131に貼付される。
【0047】
以上に説明したように、ターンテーブル13の製造では、保持具84にて金型からターンテーブル13を取り出す際に、保持具84によりゲート痕635が押し潰される。これにより、ゲート痕635の上面632からの突出が防止され、ゲート痕635とクランパ等の他の構成との干渉が防止される。その結果、ゲート痕635の突出を検査する工程および突出したゲート痕635を押し潰す2次加工が不要となる。ターンテーブル13の製造コストが削減される。外観不良も防止される。
【0048】
ゲート痕635の押し潰しと同時に、ターンテーブル13が保持具84に保持されるため、製造装置の金型および搬送機構83の動作が簡素化される。さらに、吸着により、ターンテーブル13が容易に保持具84に保持される。
【0049】
ゲート痕635の押し潰しは、突起854にて行われるため、ゲート痕635の周囲の部位と保持具84との干渉を容易に避けることができる。
【0050】
ゲート痕635の突出は、ゲート痕635の周囲に深い凹部を形成することができない場合に生じやすい。特に、金属部材に対してインサート成型またはアウトサート成型を行う場合に、樹脂の肉厚が薄くなり、ゲート痕の周囲に深い凹部を設けることが困難となる。したがって、上記ゲート痕の押し潰しは、このような樹脂成型品の製造に特に適している。
【0051】
一方、中央樹脂部132の射出成型では、ゲート811をプレート部材131の上方に位置させるため、爪を形成する空間に樹脂を早い時期に充填できる。そのため、ヒケを生ずることなく爪633を高精度に作製できる。また、ゲート痕635は、径方向において複数の爪633よりも中心軸J1側に配置される。これにより、キャビティ89の爪633に対応する部位に樹脂を容易に充填することができる。特に、周方向においてゲート痕635が、複数の爪633の間に位置するようにゲートが配置されるため、より容易に樹脂が充填される。傾斜面631にウェルドラインが位置することも防止される。
【0052】
爪633まで樹脂を充填することが可能であれば、ゲート痕は、中央樹脂部132の下面に設けられてもよい。後述の図12および図13においても同様である。
【0053】
ターンテーブル13の製造に係る上記作用効果は、以下の他の例においても同様である。
【0054】
(保持具の他の例)
図10は、保持具84の他の例を示す図である。保持具84は、外側部材841に代えてメカニカルチャック843およびチャック駆動部844を備える。メカニカルチャック843は中心軸J2の周囲に等間隔にて3以上配置される。メカニカルチャック843はチャック駆動部844により中心軸J2に対して進退する。
【0055】
保持具84によりターンテーブル13が保持される際には、保持具84がターンテーブル13に対して相対的に近づく。内側部材842の突起854がゲート痕635に当接してゲート痕635が押し潰される。内側部材842がターンテーブル13に当接すると、メカニカルチャック843が中心軸J2に向かって移動する。これにより、ターンテーブル13の外縁部が保持される。
【0056】
(ターンテーブルおよび保持具の他の例)
図11は、ターンテーブル13および保持具84の他の例を示す断面図である。ターンテーブル13は、プレート部材131を有さない。ディスク載置部134は、樹脂にて形成される。中央樹脂部132は、爪633を有さない。ゲート痕635は、ディスク載置部134の上面に形成される。
【0057】
保持具84は、図8.Aと同様に、外側部材841および内側部材842を備える。外側部材841と内側部材842との間の間隙852から吸引が行われる。これにより、ディスク載置部134が吸引されて、ターンテーブル13が保持される。内側部材842は、ゲート痕635に対応する位置に突起854を有する。図9.Bと同様に、突起854によるゲート痕635の押し潰しと同時に、ターンテーブル13が保持具84に保持される。
【0058】
ゲート痕635は、ディスク載置部134の下面に形成されるようにターンテーブル13の成型が行われてもよい。
【0059】
(ターンテーブルの他の例1)
図12は、ターンテーブル13の他の例を示す図である。図12では、モータ1のロータホルダ21の蓋部である円盤部211が、図2のプレート部材131の役割を果たす。ロータホルダ21は、板状の部材を有蓋略円筒状にプレス成型した金属部材である。中央樹脂部132の形状および他の構造は、図2と同様である。ターンテーブル13の製造方法は、プレート部材131に変えてロータホルダ21が金型に取り付けられ、円盤部211の中央に中央樹脂部132が成型されるという点を除いて、図6と同様である。
【0060】
(ターンテーブルの他の例2)
図13は、ターンテーブル13のさらに他の例を示す図である。図13のターンテーブル13は、図12のターンテーブル13と比較して、樹脂がロータホルダ21の円盤部211の外周部および円筒部212上まで形成される点で異なる。円筒部212上には樹脂は成型されなくてもよい。換言すれば、ロータホルダ21の中心軸に垂直な円盤部211を含む部位に樹脂が成型される。以下、円盤部211上の樹脂を「円盤状樹脂部130」と呼ぶ。
【0061】
ディスク載置部134は、円盤状樹脂部130の上面の外周部および環状ラバー133により構成される。ディスク載置部134は、円盤状樹脂部130の一部のみであってもよく、逆に、環状ラバー133以外の部品が設けられてもよい。中央樹脂部132の形状および他の構造は、図12と同様である。ターンテーブル13の製造方法は、ロータホルダ21が金型に取り付けられ、形成されるキャビティの形状が異なるという点を除いて、図6と同様である。
【0062】
ゲート痕は、中央樹脂部132の上面または下面に設けられるのみならず、ディスク載置部134の上面に設けられてもよい。ゲート痕が中央樹脂部132の下面に設けられる場合、ゲート痕の押し潰しにより、ゲート痕とモータ1のステータ32との干渉を防止することができる。図12や後述の図14においても同様である。
【0063】
(ターンテーブルの他の例3)
図14は、ターンテーブル13のさらに他の例を示す図である。図14のターンテーブル13は、図13のターンテーブル13と同様に、樹脂がロータホルダ21の円盤部211の外周部および円筒部212上まで形成される。以下、円盤部211上の樹脂を「円盤状樹脂部130」と呼ぶ。図13と同様に、円盤状樹脂部130の上面の外周部が、ディスク載置部134またはその一部となる。ディスク載置部134内にはバランス用の鋼球135が収容される。
【0064】
図13と異なり、中央樹脂部132は、円盤状樹脂部130とは別部材である。中央樹脂部132は、弾性部材であるバネ136により上方へと付勢される。中央樹脂部132には、爪は設けられず、第1傾斜面71と、第2傾斜面72とが設けられる。第1傾斜面71は傾斜が緩やかな円錐面である。第2傾斜面72は、第1傾斜面71の外縁から下方へと伸びる。第2傾斜面72は、第1傾斜面71よりも傾斜が大きい円錐面である。第1傾斜面71および第2傾斜面72により、記録ディスク9の中心孔をガイドするディスクガイド部が構成される。
【0065】
中央樹脂部132の内側には、ヨーク137およびクランプマグネット138が配置される。ヨーク137はシャフト41に固定される。クランプマグネット138はヨーク137に固定される。ディスク駆動装置内にてクランパが上方から下降すると、クランプマグネット138とクランパとが引き合うことにより、記録ディスク9がディスク載置部134上に固定される。このとき、中央樹脂部132が記録ディスク9を調芯しつつ僅かに下降する。
【0066】
図14の場合、図6に示す樹脂製品の射出成型では、中央樹脂部132を除くロータホルダ21上の樹脂部分が成型される。以下、この樹脂部分をロータ樹脂部73と呼ぶ。ロータホルダ21とロータ樹脂部73との一体物が製造されると、バネ136、中央樹脂部132、ヨーク137、クランプマグネット138等の組立が行われてターンテーブル13が製造される。
【0067】
ロータ樹脂部73には、好ましくは上面にゲート痕が設けられる。ただし、図14に例示するように、ロータホルダ21の円盤部211に設けられた開口を介して下側にも樹脂731が設けられる場合は、ロータ樹脂部73の下面にゲート痕が設けられてもよい。
【0068】
(変形例)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0069】
例えば、ゲート811は、可動金型82に設けられてもよい。ゲート811は、固定金型81および可動金型82の双方に設けられてもよい。ゲート痕は、ターンテーブル13の上側または下側の様々な位置に設けることが可能である。プレート部材131やロータホルダ21は、固定金型81に取り付けられてもよい。
【0070】
ゲート痕を押し潰す当接部は、突起854ではなく、平坦な部位であってもよい。ゲート痕の潰しと保持具84によるターンテーブル13の保持とは個別に行われてもよい。
【0071】
保持具によるゲート痕の押し潰しは、ターンテーブル13以外の様々な樹脂成型品の製造に利用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、射出成型による様々な樹脂製品の製造に利用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 モータ
9 記録ディスク
10 記録ディスク駆動装置
11 アクセス部
12 ハウジング
13 ターンテーブル
21 ロータホルダ
81 固定金型
82 可動金型
83 搬送機構
84 保持具
86 進退機構
89 キャビティ
91 ディスク中央孔
130 円盤状樹脂部
131 プレート部材
132 中央樹脂部
134 ディスク載置部
211 円盤部
631 傾斜面
632 上面
633 爪
634 凹部
635 ゲート痕
811 ゲート
854 突起
J1 中心軸
S11〜S18 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲートを有する第1金型と、第2金型とを型締めしてキャビティを形成する工程と、
前記ゲートから前記キャビティ内に樹脂を射出して、樹脂成型品を成型する工程と、
前記第1金型と前記第2金型とを分離して、前記樹脂成型品のゲート痕を露出させる工程と、
前記第1金型と前記第2金型との間に保持具を挿入する工程と、
前記保持具を前記樹脂成型品の前記ゲート痕に当接させることにより、前記ゲート痕を押し潰す工程と、
前記保持具にて前記樹脂成型品を保持する工程と、
前記保持具と共に前記樹脂成型品を前記第1金型と前記第2金型との間から取り出す工程と、
を備える、樹脂成型品の製造方法。
【請求項2】
前記ゲート痕を押し潰す工程と、前記樹脂成型品を保持する工程とが同時に行われる、請求項1に記載の樹脂成型品の製造方法。
【請求項3】
前記ゲート痕を押し潰す工程において、前記保持具が、前記樹脂成型品を吸着して保持する、請求項2に記載の樹脂成型品の製造方法。
【請求項4】
前記保持具が、前記ゲート痕を押し潰す突起を備える、請求項1ないし3のいずれかに記載の樹脂成型品の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の樹脂成型品の製造方法、を備え、
前記樹脂成型品が、記録ディスク駆動用のモータに設けられるターンテーブルであり、
前記ゲート痕が、前記ターンテーブルの上側または下側に設けられる、ターンテーブルの製造方法。
【請求項6】
前記キャビティを形成する工程の前に、前記第1金型または前記第2金型に、板状または板状の部材をプレス成型した金属部材を取り付ける工程、をさらに備え、
前記樹脂成型品を成型する工程にて、前記金属部材上に樹脂が成型される、請求項5に記載のターンテーブルの製造方法。
【請求項7】
前記金属部材が、略円盤状または有蓋略円筒状であり、
前記樹脂成型品を成型する工程にて、前記金属部材の中央に中央樹脂部が成型され、
前記金属部材の前記中央樹脂部の周囲が、記録ディスクが載置されるディスク載置部またはその一部であり、
前記中央樹脂部が、略円形の上面と、前記上面の外縁から下方に向かうに従って中心軸から離れ、記録ディスクの中央孔をガイドする傾斜面と、を備える、請求項6に記載のターンテーブルの製造方法。
【請求項8】
前記金属部材が、略円盤状または有蓋略円筒状であり、
前記樹脂成型品を成型する工程にて、前記金属部材の中心軸におよそ垂直な円盤部を含む部位に円盤状樹脂部が成型され、
前記円盤状樹脂部の上面の外周部が、記録ディスクが載置されるディスク載置部またはその一部である、請求項6に記載のターンテーブルの製造方法。
【請求項9】
前記円盤状樹脂部の中央樹脂部が、略円形の上面と、前記上面の外縁から下方に向かうに従って中心軸から離れ、記録ディスクの中心孔をガイドする傾斜面と、を備える、請求項8に記載のターンテーブルの製造方法。
【請求項10】
前記中央樹脂部が、外周部において下方に向かうに従って前記中心軸から離れる部位を有する複数の爪、をさらに備え、
前記ゲート痕が、前記上面または前記傾斜面に設けられた凹部内に形成され、かつ、径方向において前記複数の爪よりも前記中心軸側に位置する、請求項7または9に記載のターンテーブルの製造方法。
【請求項11】
周方向において、前記ゲート痕が、前記複数の爪の間に位置する、請求項10に記載のターンテーブルの製造方法。
【請求項12】
請求項5ないし11のいずれかに記載の製造方法にて製造されたターンテーブルを備えるモータと、
前記ターンテーブル上に載置された記録ディスクに対して情報の読み出しおよび/または書き込みを行うアクセス部と、
前記モータおよび前記アクセス部を収容するハウジングと、
を備える、記録ディスク駆動装置。
【請求項13】
樹脂を射出するゲートを有する第1金型と、
第2金型と、
前記第2金型を前記第1金型に対して進退させる進退機構と、
前記第1金型と前記第2金型との間のキャビティ内にて成型された樹脂成型品を、前記第1金型と前記第2金型との分離後に保持する保持具と、
前記保持具を移動することにより、前記樹脂成型品を前記第1金型と前記第2金型との間から取り出す搬送機構と、
を備え、
前記保持具が、前記第1金型と前記第2金型との分離後に露出する前記樹脂成型品のゲート痕に当接することにより、前記ゲート痕を押し潰す当接部を備える、樹脂成型品の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7.A】
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【図7.B】
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【図7.C】
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【図7.D】
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【図7.E】
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【図7.F】
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【図8.A】
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【図8.B】
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【図9.A】
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【図9.B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−116063(P2011−116063A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276903(P2009−276903)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000232302)日本電産株式会社 (697)
【Fターム(参考)】