説明

樹脂組成物、樹脂成形物、ベルト張架装置、プロセスカートリッジ、および画像形成装置

【課題】成形不良を抑えた樹脂組成物を提供すること。また、成形不良が少ない画像形成装置用樹脂成形物を提供すること。更に、該画像形成装置用樹脂成形物を備える画像形成装置用プロセスカートリッジ、ベルト張架装置および画像形成装置を提供すること。
【解決手段】本発明の樹脂組成物は、酸により導電性を発現する導電剤と、熱酸発生剤と、ゴム材料を形成するためのモノマー又はゴム材料と、を含有する。また、本発明の画像形成装置用樹脂成形物は、前記樹脂組成物を熱処理して形成されてなる。更に、本発明の画像形成装置用プロセスカートリッジ、ベルト張架装置および画像形成装置は、前記画像形成装置用樹脂成形物を備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、樹脂成形物、ベルト張架装置、プロセスカートリッジ、および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
転写ベルト等の電子写真機器部材に用いる導電性組成物は、好適に使用するためには電気抵抗の制御が必須である。
従来、導電性組成物には、イオン導電剤、カーボンブラック等の導電剤を添加して抵抗の制御を行なってきた。しかし、イオン導電剤は水分の影響を受けやすく、高温高湿と低温低湿条件下では電気抵抗の変動が大きく画質が安定しない。一方、カーボンブラックを導電剤として用いた場合、水分の影響は受けないが、印加電圧が変動した場合や膜厚が変化した場合の抵抗変動が大きいという不具合がある。
【0003】
このような問題に対して、例えば、「界面活性剤構造を有する導電性ポリマー」を導電剤として導電性組成物に適用する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、「酸によって導電性を発現するポリアニリン」は、導電性ポリマーであり安定な物質である。したがって、ポリアニリンを導電材料として用いると、電圧を変化させた場合の抵抗変動が小さくなり、導電性組成物として好適である。
更に、ポリアニリンの取り扱い性を高めるため、ポリアニリンに対して反応性を有する基を含有するセグメント(A)と、ポリアルキレングリコール等の特定の構造を有するセグメント(B)とを分子中に有する共重合体を、ポリアニリンに分散混合する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2004−184512公報
【特許文献2】特開2002−265781公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ポリアニリンのような、酸によって導電性が発現する導電剤を用いた場合、導電化するための酸添加によってベース樹脂の分子量が低下し、その結果、成形不良が発生することが明らかとなった。
そこで、本発明は、前記従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
【0005】
すなわち、本発明の課題は、成形不良の発生を抑えた樹脂組成物を提供することである。
また、成形不良の少ない画像形成装置用樹脂成形物を提供することを目的とする。
更に、該画像形成装置用樹脂成形物を備える画像形成装置用プロセスカートリッジ、ベルト張架装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者らは、下記本発明により当該課題を解決できることを見出した。すなわち、
【0007】
請求項1に記載の発明は、酸により導電性を発現するポリアニリンと、熱酸発生剤と、ゴム材料を形成するためのモノマー又はゴム材料と、を含有する樹脂組成物である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記熱酸発生剤が、ヨードニウム塩型化合物及びスルホニウム塩型化合物の少なくとも1種のオニウム塩型化合物であり、該オニウム塩型化合物の対アニオンがCFSO、PFであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の樹脂組成物より形成されてなる画像形成装置用の樹脂成形物である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、形状がロール状であることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置用の樹脂成形物である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、形状がベルト状であることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置用の樹脂成形物である。
【0012】
請求項6に記載の発明は、帯電ロール、中間転写ベルト、記録媒体搬送ベルト、定着ベルト又は転写ロールに用いることを特徴とする請求項3〜請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置用の樹脂成形物である。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載のベルト状の樹脂成形物と、該ベルト状の樹脂成形物を内面側から回転可能に張架する複数の張架部材と、を備えることを特徴とする画像形成装置用のベルト張架装置である。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項3〜請求項6のいずれか1項に記載の樹脂成形物を備えることを特徴とする画像形成装置用のプロセスカートリッジである。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載のプロセスカートリッジを備える画像形成装置である。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項7に記載のベルト張架装置を備える画像形成装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、成形不良を抑えた樹脂組成物の提供、成形不良が少ない画像形成装置用樹脂成形物の提供、該画像形成装置用樹脂成形物を備える画像形成装置用プロセスカートリッジ、ベルト張架装置および画像形成装置の提供ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の樹脂組成物、画像形成装置用樹脂成形物、画像形成装置用プロセスカートリッジ、ベルト張架装置および画像形成装置について詳細に説明する。
【0019】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、酸により導電性を発現するポリアニリンと、熱酸発生剤と、ゴム材料を形成するためのモノマー又はゴム材料と、を含有する。
【0020】
[酸により導電性を発現するポリアニリン]
酸により導電性を発現するポリアニリンは、電子を受け取る働きのある物質を添加することで、分子内の電子が動ける状態となり導電性が発現する状態になるポリアニリンをいう。
なお、本発明において「導電性」とは、体積抵抗率が10〜1014Ω・cmの範囲内にあることをいう。
【0021】
(1)ポリアニリン
本発明におけるポリアニリンは、酸により導電性を発現するため、導電材料として用いられる。
ポリアニリンは、主鎖骨格はp位で結合した構造となっている。本発明で用いられるポリアニリンは、キノンジイミン構造単位及び/又はフェニレンジアミン構造単位を主たる繰り返し単位として有することが好ましい。
【0022】
ポリアニリンは、酸によるドープ状態、及び脱ドープ状態により著しく電気化学活性が変化することが知られている。
なお、本実施の形態では、導電状態にあるポリアニリンを、酸によりドープされた状態であることから「ドープされたポリアニリン」または「ドープ状態のポリアニリン」と称する。また、非導電状態にあるポリアニリンを、酸によるドープがなされていない状態であることから「脱ドープ状態のポリアニリン」と称して説明する。
【0023】
以下に示すように、ポリアニリンの主鎖中の構造単位は、酸化還元により、A:ロイコエメラルジン、B:エメラルジン、C:ペルニグラニリン、D:エメラルジン塩の4構造を取るとされている。
【0024】
【化1】

【0025】
この中でも、上記Bのエメラルジン構造を持つポリアニリンが、プロトン化、すなわち導電状態とすること(ドーピング)により、一番高い電気伝導度を持つ導電状態の(ドープ状態の)ポリアニリンとなり、空気の中で安定なので一番有用である。
すなわち、上記「非導電状態」、すなわち「脱ドープ状態のポリアニリン」とは、「B:エメラルジン」の状態に相当する。また、「ドープ状態のポリアニリン」とは、「Dのエメラルジン塩」の状態に相当する。このDの状態では、高い電気伝導度を有する。
なお、ポリアニリンは通常においては酸化されやすいため、導電性向上、安定化のためにはパーニグルアニリン構造がより少ないことが好ましく、より還元状態からドーピング処理することが好ましい。
【0026】
ポリアニリンの合成・構造については、特開平3−28229号公報に詳しく述べられている。本発明におけるポリアニリンは、アニリン又はアニリン誘導体から酸化重合法にて容易に製造できる。
具体的には、プロトン酸の存在下に溶剤中にてアニリンに温度を5℃以下、好ましくは0℃以下の温度を保持しつつ、酸化剤を作用させて酸化重合を行い、後述するプロトン酸を用いてドープされたアニリンの酸化重合体(以下、ドープされたポリアニリンという。)を生成させる。次いで、このドープされたポリアニリンを塩基性物質によって脱ドープすることによって得ることができる。
また、市販品としては、パニポール社製「Panipol PA」が挙げられる。
【0027】
なお、上述のようにポリアニリンは通常においては酸化されやすいため、導電性向上、安定化のためにはパーニグルアニリン構造がより少ないことが好ましく、より還元状態からドーピング処理することで効率よくドーピングすることができる。
本発明では、フェニルヒドラジン、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン等のヒドラジン化合物や、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素リチウム等の還元性水素化金属化合物等の還元剤を用いて還元処理し、溶媒中に溶解し、ドーピング処理を行なうことで、脱ドープ状態のポリアニリンを得る。
【0028】
上記還元剤としては、フニルヒドラジン、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン等のヒドラジン化合物、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素リチウム等の還元性水素化金属化合物等が好適に用いられる。
【0029】
また、脱ドープ状態のポリアニリンの数平均分子量は、機械的強度の確保と、導電性の付与の観点から、4000〜400000であることが好ましい。
【0030】
本発明の樹脂組成物中のポリアニリンの添加量(使用量)は、発現させる導電度によって適宜調整される。一般的には、本発明の樹脂組成物中の樹脂分100質量部に対して、添加されるポリアニリンは5〜40質量部が好ましく、より好ましくは10〜30質量部である。
ポリアニリンの添加量が上記範囲内にあると、電気導電性、及び得られる成型品のしなやかさの観点から好適である。例えば、本発明の樹脂組成物から無端ベルトを成型する場合、ベルトとして好適に機能が発揮される。
【0031】
[熱酸発生剤]
本発明における熱酸発生剤とは、20℃では酸を発生させず、100℃〜250℃の加熱によって酸を発生させる化合物をいう。具体的には、ヨードニウム塩型化合物、スルホニウム塩型化合物、ピリジウム塩化合物、ホスホニウム塩化合物があげることができる。そのオニウム塩型化合物の対アニオンとしてはSbF6-、BF-、AsF6-、CFSO、PFをあげることができる。そのうちヨードニウム塩型化合物と、スルホニウム塩型化合物が好適であり、そのオニウム塩型化合物の対アニオンとしてはCFSO、PFが好適にもちいることができる。
【0032】
以下に、一般式(1)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらの化合物に限定されない。
【0033】
【表1】

【0034】
【化2】

【0035】
熱酸発生剤の使用割合は、樹脂組成物の使用導電域にも関係するが、一般的には、、上記Bで表されるエメラルジンの繰り返し単位に対して、熱酸発生剤を0.5モル以上2モル以下で添加することが好ましく、望ましくは0.5モル以上1モル以下である。
【0036】
ポリアニリンと熱酸発生剤とを組み合わせる場合、特に好適な熱酸発生剤の構造としては、安全性、腐食性等の面より、ヨードニウム塩型化合物、スルホニウム塩型化合物が好ましい。また、そのオニウム塩型化合物の対アニオンが耐熱性ならびに導電性発現性の観点からCF3SO3-、PF6-が望ましい。
【0037】
[ゴム材料を形成するためのモノマー又はゴム材料]
本発明の樹脂組成物は、ゴム材料を形成するためのモノマー又はゴム材料を含有する。ゴム材料の種類は、特に限定されるものでなく、任意のエラストマーを用いることができる。その具体例としては、塩素化ポリイソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリン系ゴム、ノルボルネンゴム、フッ素系ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、EPDM、SBR、NBR、アクリルニトリルーブタジエンースチレンゴム等が挙げられる。
また、熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレンーブタジエンブロック共重合体、スチレンーエチレンーブチレンースチレンブロック共重合体等のスチレン系エラスマー、ウレタン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、フッ素系エラストマー、塩ビ系エラストマーが挙げられる。
【0038】
本発明のゴム材料のうち、ポリウレタンについて説明する。ゴム材料がポリウレタンの場合には、ゴム材料を形成するためのモノマーとしては、少なくとも、(1)ポリオール成分としてのモノマーと、(2)イソシアネート成分としてのモノマーと、が必要である。
【0039】
ポリウレタンのポリオール成分のポリエーテルポリオールモノマーとしては例えば、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシブチレングリコール、ポリオキシテトラメチレンギリコール等のポリオキシアルキレングリコール類、ポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレントリオール、ポリオキシブリレントリオール等のポリオキシアルキレントリオール類、エチレンジアミン、ペンタエリスルトール、ソルビトール、スクロース、スターチ等を開始剤としたポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンポリオール等のポリ(オキシアルキレン)ポリオール等が挙げられる。
またポリオール成分のポリエステルポリオール化合物モノマーとしては、ポリ炭酸エステルポリオール、ポリカプロラクトンエステルポリオール、又はエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,3−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等のグリコールの1種又2種以上の混合物と、アジピン酸等の炭素数2〜6のジカルボン酸とを反応させて得られるポリエステルポリオール等が挙げられるが、ポリオール成分としては上記のものに限定されない。
【0040】
またポリウレタンのイソシアネート成分としてはトリレンジイソソアネート(TDI)、メタキシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、プレポリマー変性イソシアネート、及びこれらのイソシアネート化合物をフェノール、芳香族2級アミン、3級アルコール、アミド、ラクタム、複素環化合物、亜硫酸塩等でブロックしたブロックイソシアネートをINDEX=0.80〜1.20に調整し、好ましくは0.98〜1.09に調整したものなどが挙げられる。
【0041】
発泡層のマトリックス(ゴム材料)としては特にウレタン発泡体を用いることが好ましく、ウレタン発泡体を用いることにより、安定した発泡状態を維持でき、その結果画像均一性が得られる。発泡剤としては水を用いる発泡方式、窒素、空気などの混合による機械発泡方式を用いることにより発熱を抑え破泡、連泡化を少なくし、また歪みも小さく、さらに低硬度化が得られる。
発泡硬度(アスカーC硬度)は3度〜60度、さらには5〜20度にすることが好ましい。またウレタンは永久歪みが少なく繰り返しの使用によってへこみ、歪み、変形等が少なく、寸法精度が安定であり、したがって中間転写体の交換頻度を少なくすることができる。
【0042】
ポリアニリンと熱酸発生剤とを組み合わせる場合、特に好適なゴム材料としては、ポリウレタン、塩素化ポリソプレンゴム、クロロプレンゴム、NBRであり、これらのゴム材料は導電剤との親和性が高く、分散性の観点から好適である。
【0043】
<画像形成装置用の樹脂成形物>
(製造方法)
本発明の画像形成装置用の樹脂成形物は、前記樹脂組成物を成形した後に、熱処理して製造される。本発明では、樹脂組成物を熱処理して、そのなかに含まれる熱酸発生剤から酸を発生させて導電性を発現させる。
熱酸発生剤から酸を発生させる際に用いる加熱装置は、特に限定されず、金型に成形した後、その金型をオーブン等に保持させる方法、または直接金型に熱源を保持させる方法などを用いることができる。
【0044】
前記熱処理の温度は、150℃〜300℃であることが好ましく、150℃〜250℃であることがより好ましく、150℃〜200℃であることが更に好ましい。また熱処理は、樹脂組成物を成形した後であれば、いかなる時期に行なってもよい。
【0045】
なお、ゴム材料を形成するために加熱が必要な場合には、その加熱を利用して、熱酸発生剤から酸を発生させてもよい。
例えば、ゴム材料がポリウレタンの場合、イソシアネート成分とポリオール成分との付加反応を経てウレタンプレポリマーを調製し、これに硬化剤を加えて、架橋硬化させる。この付加反応や架橋硬化反応に用いる加熱を、樹脂組成物の熱処理に利用することができる。
【0046】
更に、本発明の樹脂成形物で形成された層と、他の層(例えば、ポリイミド層など)とを積層させる場合において、当該他の層を硬化させるために加熱が必要なときには、当該加熱を利用して、熱酸発生剤から酸を発生させてもよい。
例えば、前記他の層がポリイミド層の場合、ポリアミック酸組成物を塗布し形成された層を加熱して、イミド転化反応を十分に進行させる必要がある。このときのイミド転化反応のための加熱を、樹脂組成物の熱処理に利用することができる。
【0047】
(用途)
ロール状の画像形成装置用の樹脂成形物は、帯電ロール、転写ロール、などに適用することができる。
また、ベルト状の画像形成装置用樹脂成形物は、中間転写ベルト、記録媒体搬送ベルト、定着ベルト、などに適用することができる。当該ベルトを複数の回転可能な張架部材に張架させて、ベルト張架装置とすることができる。
【0048】
(構成)
これらの画像形成装置用の樹脂成形物には、前記樹脂組成物によって形成される層の他、その他樹脂層(例えば、ポリイミド層など)を設けてもよい。また、前記樹脂組成物によって形成される層は、単層でもよく、また前記樹脂組成物中の樹脂の種類や配合比率などを変えて、複数層を積層してもよい。積層体とする場合には、その積層の順は特に制限されない。
【0049】
−帯電ロール−
帯電ロールは、支持体、弾性体層を有することが好ましく、更に表面層を備えていてもよい。本発明の樹脂成形物を帯電ロールに適用する場合には、前記弾性体層および表面層の少なくとも1層を前記樹脂組成物で成形することが好ましい。
【0050】
−中間転写ベルト、記録媒体搬送ベルト、定着ベルト−
中間転写ベルト、記録媒体搬送ベルト及び定着ベルトは、表面層および基材を有することが好ましい。本発明の樹脂成形物を中間転写ベルト、記録媒体搬送ベルトまたは定着ベルトに適用する場合には、前記表面層を前記樹脂組成物で成形することが好ましい。
【0051】
<画像形成装置用プロセスカートリッジ、画像形成装置>
本発明の画像形成装置は、上記樹脂成形物を具備するものであれば如何なる構成であってもよい。具体的には、例えば、装置内に単色(通常は黒色)画像を形成するモノカラー電子写真装置や、感光体上に担持されたトナー像を中間転写ベルトに順次一次転写を繰り返すカラー電子写真装置や、色毎の現像器を備えた複数の感光体を中間転写ベルト上に直列に配列した、タンデム型カラー電子写真装置のいずれであってもよい。
上記部材を備えた画像形成装置用プロセスカートリッジおよび画像形成装置は、成形性が良好な上記部材を備えるため、優れた画像性能を発揮することができる。
【0052】
図1は、本発明の画像形成装置の好適な一実施形態を示す模式図である。図1に示す画像形成装置60は、画像形成装置本体(図示せず)に、上述した本実施態様の電子写真感光体10を備えるプロセスカートリッジ20と、露光装置(潜像形成装置)30と、転写装置40と、中間転写体50とを備える。なお、画像形成装置60において、露光装置30はプロセスカートリッジ20の開口部から電子写真感光体10に露光可能な位置に配置されており、転写装置40は中間転写体50を介して電子写真感光体10に対向する位置に配置されており、中間転写体50は電子写真感光体10に突き当たった状態で接触できるように配置されている。
【0053】
プロセスカートリッジ20は、ケース内に電子写真感光体10とともに、帯電装置21、現像装置25、クリーニング装置27及び繊維状部材(平ブラシ状)29を組み合わせて一体化し、画像形成装置本体に取り付けレールにより取り付けられるものである。なお、ケースには、露光のための開口部が設けられている。
【0054】
図1における帯電装置21に、上記本発明の画像形成装置用樹脂成形物を適用することができる。
また、現像装置25は、電子写真感光体10上の静電潜像を現像してトナー像を形成するものである。
【0055】
クリーニング装置27は、繊維状部材(ロール形状)27aやクリーニングブレード(ブレード部材)27bを備える。図1に示すクリーニング装置27では、繊維状部材27a及びクリーニングブレード27bが設けられているが、クリーニング装置としてはどちらか一方を備えるものでもよい。繊維状部材27aとしては、ロール形状の他に歯ブラシ状としてもよい。また、繊維状部材27aは、クリーニング装置本体に固定してもよく、回転可能に支持されていてもよく、さらに感光体軸方向に往復動作可能に支持されていてもよい。
【0056】
クリーニング装置27には、クリーニングブレード、クリーニングブラシで感光体表面の付着物(例えば、放電生成物)を除去することが求められ、繊維状部材27aに、金属石鹸、高級アルコール、ワックス、シリコーンオイルなどの潤滑性物質(潤滑成分)14を接触させ、電子写真感光体表面に潤滑成分を供給することが好適である。
【0057】
以上説明したプロセスカートリッジ20は、画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成するものである。
【0058】
露光装置30としては、帯電した電子写真感光体10を露光して静電潜像を形成させるものであればよい。また、露光装置30の光源としては、マルチビーム方式の面発光レーザーを用いることが好ましい。
【0059】
転写装置40としては、電子写真感光体10上のトナー像を被転写媒体(図1では被転写媒体として中間転写体50を示しているが、中間転写体50の代わりに記録媒体搬送ベルト(図示せず)を用い、その記録媒体搬送ベルトに保持された用紙や、中間転写体50を用いずに、直接転写するための用紙であってもよい。)に転写するものであればよく、例えば、ロール形状の通常使用されるものが使用される。
【0060】
中間転写体50としては、上記本発明の画像形成装置用樹脂成形物を適用することができる。中間転写体50の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものを用いることもできる。
また、中間転写体50の代わりに記録媒体搬送ベルトを用いた場合、この記録媒体搬送ベルトには、上記本発明の画像形成装置用樹脂成形物を適用することができる。
【0061】
本実施態様でいう被転写媒体とは、電子写真感光体10上に形成されたトナー像を転写する媒体であれば特に制限はない。例えば、電子写真感光体10から直接、紙等に転写する場合は紙等が被転写媒体であり、また、中間転写体50を用いる場合には中間転写体が被転写媒体になる。
【0062】
図2は、本発明に係る画像形成装置の他の実施形態を示す模式図である。図2に示す画像形成装置62は、電子写真感光体10が画像形成装置本体に固定され、帯電装置22、現像装置25及びクリーニング装置27がそれぞれカートリッジ化されており、それぞれ帯電カートリッジ、現像カートリッジ、クリーニングカートリッジとして独立して備えられている。なお、図2における帯電装置22は、コロナ放電方式により帯電させる帯電装置を備えているが、接触方式の帯電装置であってもよい。
【0063】
画像形成装置62においては、電子写真感光体10とそれ以外の各装置が分離されており、帯電装置22、現像装置25及びクリーニング装置27が画像形成装置本体に固定されることなく、例えば引き出し、押しこみによる操作にて脱着可能である。
【0064】
本実施態様の電子写真感光体では、カートリッジ化することが不要となる場合がある。したがって、帯電装置22、現像装置25又はクリーニング装置27をそれぞれ本体に固定されることなく、引き出し、押しこみによる操作にて脱着可能な構成とすることで、1プリント当りの部材コストを低減することができる。また、これらの装置のうち2つ以上を一体化したカートリッジとして着脱可能とすることもできる。
【0065】
なお、画像形成装置62は、帯電装置22、現像装置25及びクリーニング装置27がそれぞれカートリッジ化されている以外は、画像形成装置60と同様の構成を有している。
【0066】
図3は、本発明に係る画像形成装置の他の実施形態を示す模式図である。画像形成装置64は、プロセスカートリッジ20を4つ搭載したタンデム方式のフルカラー画像形成装置である。画像形成装置64では、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ20がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用できる構成となっている。なお、画像形成装置64は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置60と同様の構成を有している。
【実施例】
【0067】
以下、本発明に対応する複数の実施例およびこれらの実施例に対する比較例について述べる。なお、これらの実施例は全て例示であり、この記述によって本発明の適用範囲が限定されるものではない。なお、実施例中「部」は重量部を意味する。
【0068】
[実施例1]
下記に示すA液とB液を室温で攪拌混合し、その後、ポリアニリン(商品名:パニポールEB、パニポール社製、)15部、式1で示される前記熱酸発生剤(1)(Xのアニオン種:CFSO、R:C、R:C)17部、及びテトラブチルアンモニウム過塩素酸0.03部を加えて更に攪拌混合した。
【0069】
なお、酸発生剤とアニリンを含む溶液を20℃で1.0時間放置したがアニリン溶液は青色であり、酸が発生していないことが確認された。
また、同じ溶液を200℃、1.0時間放置したところ、アニリン溶液は濃緑色となり、酸の発生ならびにアニリンがドーピングされていることが確認された。
【0070】
−A液−
・ポリテトラメチレングリコール(平均分子量:3000、三洋化成工業(株)製、PTMG3000):100部
【0071】
−B液−
・ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI):23.8部(ポリオールOH価に対して1.03)
・トリエチレンジアミン:0.05部
【0072】
この混合物を内直径110mm径、長さ500mm、厚み5mmのアルミニウム製円筒状ドラム型に注型し、3000rpmで遠心成形した後、180℃×30分加熱硬化させ、ウレタンエラストマーをマトリックスとする膜厚300μmの導電層を得た。
得られた中間転写体のニップ抵抗値は1011log・ohmであった。
【0073】
[評価]
<塗工性能>
得られたウレタン無端ベルトを目視し、塗工性能を評価した。評価基準は以下の通りである。
−塗工性能の評価基準−
A:表面欠陥の存在が全く確認されない。
B:表面欠陥が存在し、実用上問題がある。
【0074】
また、得られたウレタン無端ベルトの塗工性能に加え、電気特性(体積抵抗率、電界依存)、電子写真装置へ搭載した場合の転写画像の品質(微小白抜け、ブラーおよびホロキャラクター)について、以下のように評価した。
【0075】
<電気特性の評価>
(体積抵抗率の測定)
中間転写ベルトの体積抵抗率の測定には、R8340A デジタル超高抵抗/微小電流計(株式会社 アドバンテスト社製)と、接続部をR8340A用に改造した二重リング電極構造のURプローブMCP-HTP12及びレジテーブUFL MCP-ST03(何れも、株式会社 ダイアインスツルメンツ社製)を用いた。
なお、測定の際の試験片は、実施例・比較例で製造したベルト片を用いた。
【0076】
レジテーブUFL MCP-ST03(金属面を下部電極として使用)上に、試験片を置き、上部電極としてURプローブMCP-HTP12の二重電極部を当てた。なお、URプローブMCP-HTP12の上部には19.6N±1Nの錘を取り付け、試験片に一様な荷重がかかるようにした。
【0077】
R8340A デジタル超高抵抗/微小電流計の測定条件は、チャージタイムを30秒、ディスチャージタイムを1秒、印加電圧を100Vとした。
このとき、試験片の体積抵抗率をρv、中間転写体の厚さt(μm)、R8340A デジタル超高抵抗/微小電流計の読み値をR、URプローブMCP-HTP12の体積抵抗率補正係数をRCF(V)とすると、三菱化学「抵抗率計シリーズ」カタログによれば、RCF(V)=2.011である。
【0078】
これらの値を下記式(2)に代入することで、体積抵抗率を求めることができる。
式(2):ρv[Ω・cm]=R×RCF(V)×(10000/t)=R×2.011×(10000/t)
【0079】
<電界依存>
印加電圧100Vの時の体積抵抗率と、印加電圧10Vの時の体積抵抗率をそれぞれ測定し、印加電圧100Vの時の体積抵抗率と、印加電圧10Vの時の体積抵抗率の差を求め、電界依存として評価した。
【0080】
<転写画像の品質の評価>
得られたウレタン無端ベルトを富士ゼロックス社製電子写真装置(DocuCentreColor400CP)に中間転写ベルトとして組み込み、初期(5枚目)の転写画像の画質の評価を行った。
転写画像の画質の評価項目として、微小白抜けの有無、ブラーの有無、およびホロキャラクターの有無を、目視にて確認した。評価基準は以下の通りである。
【0081】
−微小白抜けの評価基準−
A:微小白抜けの存在が全く確認されない。
B:微小白抜けの存在は確認された(1〜3個)が、実用上問題の無い範囲。
C:微小白抜けが多数存在(4個以上)し、実用上問題がある。
なお、微小白抜けとは、ハーフトーンパッチ画像中、数十〜100μmの白抜けをいう。
【0082】
−ブラーの有無−
A:ブラーの存在が全く確認されない。
B:ブラーの存在は確認された(1〜5箇所)が、実用上問題の無い範囲。
C:ブラーが多数存在(6箇所以上)し、実用上問題がある。
なお、ブラーとは、画像のエッジ部のトナーの飛散をいう。
【0083】
−ホロキャラクターの有無−
A:ホロキャラクターの存在が全く確認されない。
B:ホロキャラクターの存在は確認された(1〜5個)が、実用上問題の無い範囲。
C:ホロキャラクターが多数存在(6個以上)し、実用上問題がある。
なお、ホロキャラクターとは、ライン画像が中抜けする画質欠陥をいう。
【0084】
また、50,000枚通紙後、上記と同様の方法で、微小白抜け、ブラーおよびホロキャラクターのそれぞれの有無を確認した。
【0085】
[実施例2]
実施例1では、ゴム材料としてウレタンエラストマーとしたところを、実施例2ではオレフィン系エラストマー(商品名:ミラストマー5030N、三井化学(株)社製)とした。具体的な製造方法は以下の通りである。
ミラストマー100部にパニポールEB15部、式1で示される前記熱酸発生剤(1)(Xのアニオン種:CFSO、R:C、R:C)15部を添加し、160℃で混練押し出しマスターバッチとした。得られた樹脂を再度200℃で混練押し出し、直径110mmの管状ダイ(ダイ温度210℃)にて押し出し管状フィルムを得た。
【0086】
[実施例3〜5、比較例1〜2]
表2に示すように、樹脂または熱酸発生剤の種類を変えたこと以外は、実施例3,5、比較例1,2は実施例1と同様に、実施例4は実施例2と同様にして無端ベルトを作製した。
【0087】
【表2】

【0088】
以上から明らかなように、本実施例の樹脂組成物は無端ベルトを製造する際の塗工性能に優れることが分かる。
また、本実施例の樹脂組成物を用いて得られた無端ベルトは、電気特性に優れることから、中間転写ベルト、定着ベルト、中間転写ベルト、搬送ベルトとして好適な特性を示していた。更に、これを中間転写ベルトとして電子写真装置に搭載した際の転写画像の画質は良好であった。
【0089】
一方、比較例の樹脂組成物を用いて得られた無端ベルトは、均一な塗工を行なうことができなかった。また、電子写真装置に搭載した際の転写画像の画質は、本発明よりも劣っていた。
【0090】
なお、実施例1〜5では無端ベルトを作製したが、形成形状をロールにした場合であっても同様の結果、つまり、均一な塗工が可能であり、優れた電気特性および優れた画質を示す。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の画像形成装置の好適な一実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明の画像形成装置の他の実施形態を示す模式図である。
【図3】本発明の画像形成装置の他の実施形態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0092】
10 電子写真感光体
20 プロセスカートリッジ
21、22 帯電装置
25 現像装置
27 クリーニング装置
30 露光装置
40 転写装置
50 中間転写体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸により導電性を発現するポリアニリンと、熱酸発生剤と、ゴム材料を形成するためのモノマー又はゴム材料と、を含有する樹脂組成物。
【請求項2】
前記熱酸発生剤が、ヨードニウム塩型化合物及びスルホニウム塩型化合物の少なくとも1種のオニウム塩型化合物であり、該オニウム塩型化合物の対アニオンがCFSO、PFであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の樹脂組成物より形成されてなる画像形成装置用の樹脂成形物。
【請求項4】
形状がロール状であることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置用の樹脂成形物。
【請求項5】
形状がベルト状であることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置用の樹脂成形物。
【請求項6】
帯電ロール、中間転写ベルト、記録媒体搬送ベルト、定着ベルト又は転写ロールに用いることを特徴とする請求項3〜請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置用の樹脂成形物。
【請求項7】
請求項5に記載のベルト状の樹脂成形物と、該ベルト状の樹脂成形物を内面側から回転可能に張架する複数の張架部材と、を備えることを特徴とする画像形成装置用のベルト張架装置。
【請求項8】
請求項3〜請求項6のいずれか1項に記載の樹脂成形物を備えることを特徴とする画像形成装置用のプロセスカートリッジ。
【請求項9】
請求項8に記載のプロセスカートリッジを備える画像形成装置。
【請求項10】
請求項7に記載のベルト張架装置を備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−103798(P2009−103798A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273728(P2007−273728)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】