説明

樹脂組成物

【課題】エポキシシリカハイブリッド体の優れた耐熱性を維持しつつ、 さらに靱性に優れた組成物の提供。
【解決手段】エポキシ樹脂と、シラン縮合体と、靭性付与剤と、硬化剤とを含有する樹脂組成物。特に、シラン縮合体がアルコキシシランを加水分解縮合して得られる樹脂が好ましい。また、靱性付与剤は、ゴム、熱可塑性樹脂およびエンジニアリングプラスチックから選択される1種が好ましい、特にブタジエン・アクリロニトリルゴムが好ましく使用される。
【効果】上記組成物を硬化することにより硬化物の耐熱性および靭性に優れた樹脂 が得られた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。より詳細には、優れた耐熱性および靭性を有し、封止材、コーティング膜、接着剤、プリプレグ等に好適に用いられ得る樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エポキシ樹脂硬化物には、用途に応じて高度の性能が要求されるようになっている。例えば、プリント基板、半導体封止材等の電子部品や、強化繊維材料のプレプリグを配して作られるFRP、特に、航空機分野におけるFRPは、耐熱性の向上が望まれている。
耐熱性に優れるエポキシ樹脂組成物としては、エポキシシリカハイブリッド体が注目されている。例えば、特許文献1には、分子中に下記記載の構造およびアルコキシ基を有することを特徴とするエポキシ基含有ケイ素化合物が記載されている。
【0003】
【化6】

【0004】
(式中Rは、エポキシ基を有する置換基、炭素数10以下のアルキル基、アリール基又は不飽和脂肪族残基を示し、Rはそれぞれ互いに同一でも異なっていても良いが、少なくとも1つはエポキシ基を含む置換基である。)
【0005】
しかしながら、従来のエポキシシリカハイブリッド体は、優れた耐熱性を示すが、可撓性や靭性が低下するという問題を有していた(非特許文献1参照。)。
【0006】
一方、エポキシ樹脂の強靭化手法として、ゴムや熱可塑性樹脂を添加する技術が提案されている(例えば、特許文献2および3参照。)。しかしながら、ゴム等の成分の相溶に起因するガラス転移温度(T)の低下が起こり、耐熱性が低下するという問題があった(非特許文献2参照。)。
【0007】
【特許文献1】特開2004−43696号公報
【特許文献2】特開平10−182937号公報
【特許文献3】特開平10−60085号公報
【非特許文献1】高橋,越智,脇田,“エポキシ/シリカハイブリッドの相構造と熱的・力学的性質”,高分子論文集,2000年,第57巻,p.220−227
【非特許文献2】J.Kiefer et.al,“Synthesis of solvent−modified epoxies via chemically Induced Phase Separation:A new approach towards void toughening of epoxies”,Polymer Bulletin,1997年,第38巻,p.477−483
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、エポキシシリカハイブリッド体の優れた耐熱性を維持しつつ、更に靭性に優れた樹脂組成物は知られていなかった。
そこで、本発明は、硬化物の耐熱性および靭性に優れた樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討した結果、エポキシ樹脂、シラン縮合体、靭性付与剤および硬化剤を含有すると、硬化物の耐熱性および靭性に優れた樹脂組成物となることを知見し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(7)を提供する。
【0010】
(1)エポキシ樹脂と、
シラン縮合体と、
靭性付与剤と、
硬化剤と
を含有する樹脂組成物。
【0011】
(2)前記シラン縮合体が、下記式(1)で表されるアルコキシシランを加水分解縮合して得られる上記(1)に記載の樹脂組成物。
【0012】
【化7】

【0013】
(式中、R1は炭素数1〜3のアルキル基を表し、R2は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R3は窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含んでいてもよい有機基を表し、mは2または3を表す。)
【0014】
(3)前記シラン縮合体が、下記式(2)で表される上記(1)または(2)に記載の樹脂組成物。
【0015】
【化8】

【0016】
(式中、R3は窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含んでいてもよい有機基を表し、nは2〜50の整数を表す。)
【0017】
(4)前記靭性付与剤が、ゴム、熱可塑性樹脂およびエンジニアリングプラスチックからなる群より選択される少なくとも1種である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0018】
(5)前記ゴムが、下記式(3)〜(5)のいずれかで表される重合体である請求項4に記載の樹脂組成物。
【0019】
【化9】

【0020】
(式(3)〜(5)中、xとyの比(x/y)は1〜20であり、zは10〜50であり、R4、R5およびR6はそれぞれ酸素原子、窒素原子または二重結合を含んでいてもよい炭素数1〜24の2価の有機基または単結合を表す。)
【0021】
(6)下記式(2)で表されるシラン縮合体からなる、ゴム、熱可塑性樹脂およびエンジニアリングプラスチックの分散補助剤。
【0022】
【化10】

【0023】
(式中、R3は窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含んでいてもよい有機基を表し、nは2〜50の整数を表す。)
【0024】
(7)下記式(2)で表されるシラン縮合体からなる、エポキシ樹脂の耐熱性付与剤。
【0025】
【化11】

【0026】
(式中、R3は窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含んでいてもよい有機基を表し、nは2〜50の整数を表す。)
【発明の効果】
【0027】
本発明の組成物は、低温から高温まで貯蔵弾性率(G′)の変化が小さく、硬化物の耐熱性に優れ、靭性にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物(以下、「本発明の組成物」ともいう。)は、エポキシ樹脂と、シラン縮合体と、靭性付与剤と、硬化剤とを含有するものである。
【0029】
<エポキシ樹脂>
本発明の組成物に用いられるエポキシ樹脂としては、特に限定されず、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ヘキサヒドロビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、ピロカテコール、レソルシノール、クレゾールノボラック、テトラブロモビスフェノールA、トリヒドロキシビフェニル、ビスレソルシノール、ビスフェノールヘキサフルオロアセトン、テトラメチルビスフェノールF、ビキシレノール等の多価フェノールとエピクロルヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテル型;グリセリン、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族多価アルコールとエピクロルヒドリンとの反応によって得られるポリグリシジルエーテル型;p−オキシ安息香酸、β−オキシナフトエ酸等のヒドロキシカルボン酸とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテルエステル型;フタル酸、メチルフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラハイドロフタル酸、ヘキサハイドロフタル酸、エンドメチレンテトラハイドロフタル酸、エンドメチレンヘキサハイドロフタル酸、トリメリット酸、重合脂肪酸等のポリカルボン酸から誘導されるポリグリシジルエステル型;アミノフェノール、アミノアルキルフェノール等から誘導されるグリシジルアミノグリシジルエーテル型;アミノ安息香酸から誘導されるグリシジルアミノグリシジルエステル型;アニリン、トルイジン、トリブロムアニリン、キシリレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、ビスアミノメチルシクロヘキサン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン等から誘導されるグリシジルアミン型;さらにエポキシ化ポリオレフィン、グリシジルヒダントイン、グリシジルアルキルヒダントイン、トリグリシジルシアヌレート等;ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アルキルフェニルグリシジルエーテル、安息香酸グリシジルエステル、スチレンオキサイド等のモノエポキシ化合物等が挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物を用いることができる。
【0030】
これらの中でも、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、グリシジルアミン型エポキシ樹脂が、入手の容易さおよび硬化物の性質(性能)のバランスが良好であることから好ましい。
また、上記エポキシ樹脂は、そのエポキシ当量が80〜1000であるのが低粘度に起因する良好な作業性と、硬化物の耐熱性が良好である点で好ましく、80〜700であるのがより好ましい。
上記エポキシ樹脂は市販品を用いてもよく製造してもよい。製造条件は特に限定されず、通常用いられる条件で行うことができる。
【0031】
<シラン縮合体>
本発明の組成物に用いられるシラン縮合体は、シロキサン骨格を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、下記式(1)で表されるアルコキシシランを加水分解縮合して得られたものが好適に挙げられる。
なお、本明細書において「加水分解縮合」とは、アルコキシシリル基を加水分解させ、生成したヒドロキシシリル基を他のアルコキシシリル基との脱アルコール反応により縮合させるか、ヒドロキシシリル基同士の脱水反応により縮合させることを意味する。
また、加水分解および縮合反応によるシロキサン結合の形成時にアルコールが生成するため、シラン縮合物の製造時には、該アルコールを減圧除去するのが好ましい。
【0032】
【化12】

【0033】
式(1)中、mは2または3を表す。このアルコキシシランとして、ジアルコキシシランとトリアルコキシシランを併用して用いることができるが、耐熱性や硬化性に優れる点から、トリアルコキシシランを50モル%以上含むことが好ましい。この特性により優れる点から、トリアルコキシシランを70モル%以上含むことがより好ましく、トリアルコキシシランのみを用いることが更に好ましい。
1は炭素数1〜3のアルキル基を表し、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基であるのが好ましく、メチル基、エチル基であるのがより好ましい。R1が複数ある場合は、複数のR1は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
2は炭素数1〜6のアルキル基を表し、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基であるのが好ましく、メチル基、エチル基であるのがより好ましい。R2が複数ある場合は、複数のR2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
3は窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含んでいてもよい有機基を表す。具体的には、エポキシ基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、スチリル基、イソシアネート基、フェニル基、アルキル基およびクロロプロピル基からなる群より選択される少なくとも1つが、酸素原子を含んでいてもよい炭素数3〜6の2価の非環状脂肪族基または炭素数6〜10の2価の環状脂肪族基を介してケイ素原子と結合する基が好適に挙げられる。この中でも、エポキシ基、アミノ基およびメルカプト基のうち少なくとも1つを有するものがより好ましい。
【0034】
上記式(1)で表されるアルコキシシランとしては、具体的には、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン;3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイドシラン;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルシラン;3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリロキシシラン;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のメタクリロキシシラン;1,4−スチリルトリメトキシシラン等のスチリルシラン;3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネートシラン;フェニルトリエトキシシラン等のフェニルシラン;メチルトリエトキシシラン等のアルキルシラン;3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロロプロピルシラン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、エポキシ樹脂との反応性、耐熱性という点から、エポキシシラン、アミノシランおよびメルカプトシランが好ましい。特に、エポキシ樹脂との相溶性に優れ、耐熱性により優れる点から、エポキシシランが好ましい。
【0035】
上記シラン縮合体は、上記式(1)で表されるアルコキシシランと、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシランまたはそれらの縮合体あるいはこれら以外のアルコキシシランを併用して縮合したものでもよい。テトラアルコキシシランを併用する場合、テトラアルコキシシランの含有量は50モル%以下であることが、靭性に優れる点から好ましい。この特性により優れる点から、テトラアルコキシシランの含有量は20モル%以下であることがより好ましい。
【0036】
ところで、上述したように特許文献1に記載のエポキシ基含有ケイ素化合物は、上記式で表され、完全に縮合しているため、シラノールを介したエポキシ樹脂マトリックスとの反応性に乏しく、耐熱性の向上に不利であった。
本発明者は、鋭意検討した結果、上記アルコキシシランの加水分解縮合を一定条件下で行うことによって、耐熱性を維持しつつ、低粘度で、貯蔵安定性に優れたシラン縮合体が得られることを知見した。
その反応条件は、上記式(1)で表されるアルコキシシランと、そのケイ素原子に対して1.5〜4.5倍モルの水とを反応することである。
また、溶剤中で加水分解縮合を行うことが好ましい。溶剤中で加水分解縮合を行うと、鎖状の骨格を有するシラン縮合体が得られやすく、更に、ゲル化を防ぐことができ貯蔵安定性に優れる。溶剤としては、使用するアルコキシシランを溶解する溶剤であれば特に限定されない。このような溶剤としては、具体的には、例えば、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトンおよびメタノール等のアルコール等の極性溶媒が挙げられる。
【0037】
上述した条件で加水分解縮合を行い、得られるシラン縮合体の縮合度を調整することにより、硬化物の耐熱性および靭性に優れ、低粘度で、貯蔵安定性にも優れるシラン縮合体が得られる。したがって、本発明の組成物は、硬化物の耐熱性および靭性に優れ、低粘度で、貯蔵安定性にも優れたものになる。上記式(1)で表されるアルコキシシランのケイ素原子に対して、反応させる水の量は、より好ましくは2.0〜4.2倍モル、更に好ましくは3.0〜4.0倍モルである。この範囲であれば、得られるシラン縮合体の粘度が低く、作業性に優れ、特に耐熱性に優れる。なお、上記式(1)で表されるアルコキシシランと、テトラアルコキシシランまたは他のアルコキシシランとを併用して加水分解縮合させる場合、これらのケイ素原子の合計に対して、上述した量の水を添加する。
加水分解縮合時の反応温度は、25〜120℃が好ましく、50〜100℃がより好ましい。
【0038】
上記加水分解縮合に使用する触媒としては、従来公知のアルコキシシラン類の縮合を促進する触媒を使用することができる。具体的には、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、ジルコニウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ゲルマニウム、錫、鉛、アンチモン、ヒ素、セリウム、ホウ素、カドミウム、マンガン等の金属および遷移金属や、これらの酸化物、有機酸塩、ハロゲン化物、アルコキシド等が挙げられる。これらの中でも、特に有機スズ、有機酸スズ、アルコキシジルコニウム、アルコキシチタンが好ましく、特にジブチルスズジラウレートが好ましい。触媒の添加量としては、加水分解縮合させるアルコキシシランの合計に対し、0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。
【0039】
上記シラン縮合体は、ラダー状やかご状のシロキサン骨格を有するものでもよいが、鎖状の骨格を有するものが好ましい。上記のようにして得られるシラン縮合体は、主に、下記式(2)で表される鎖状のシロキサン骨格を有するシラン縮合体である。下記式(2)で表されるシラン縮合体は、硬化物の耐熱性および靭性に優れ、更に、低粘度で、作業性、貯蔵安定性に優れる点から好ましい。また、このシラン縮合体は、アルコキシ基を実質的に有さずシラノール基になっているので、硬化時の脱アルコール反応に起因する発泡がないので、成形性に優れた組成物を得ることができる。更に、アルコキシ基が残っているシラン縮合体や、ラダー状またはカゴ状の骨格を有するシラン縮合体よりもシラノール基が多く存在することから、少量でエポキシ樹脂を高耐熱化できる。
これらの縮合物は、3−グリシドキシプロピルトリアルコキシシランを原料として製造することが、原料の入手し易さおよび反応性が高いことから好ましい。
【0040】
【化13】

【0041】
式(2)中、R3は上記と同様であり、nは2〜50の整数を表し、2〜30の整数がより好ましく、2〜25の整数が更に好ましい。
【0042】
上記シラン縮合体の数平均分子量は、耐熱性に優れ、粘度が高くなり過ぎない点から500〜10000が好ましい。これらの特性により優れる点から、1000〜8000がより好ましく、1000〜6000が更に好ましい。
【0043】
本発明の組成物における上記シラン縮合体の含有量は、上記エポキシ樹脂とシラン縮合体の合計に対して、5〜50質量%であるのが好ましい。シラン縮合体の含有量がこの範囲であれば、耐熱性および靭性に優れる。これらの特性により優れる点から、より好ましくは10〜40質量%、更に好ましくは15〜30質量%のシラン縮合体を含有するのが好ましい。
【0044】
上記式(2)で表されるシラン縮合体は、上述したような優れた特性を有していることから、エポキシ樹脂の耐熱性付与剤としても用いることができる。
耐熱性を付与する対象であるエポキシ樹脂は、特に限定されず、例えば、上述したエポキシ樹脂等が挙げられる。
上記式(2)で表されるシラン縮合体の使用量は、要求される特性に応じて適宜調整でき、例えば、エポキシ樹脂に対して5〜50質量%配合するのが好ましい。
【0045】
また、上記式(2)で表されるシラン縮合体は、ゴム、熱可塑性樹脂およびエンジニアリングプラスチックの分散補助剤としても用いられる。例えば、靭性付与剤として後述する式(3)〜(5)のいずれかで表される重合体を用いたときには、これらの重合体の分散補助剤として働くため、これらの重合体の粒径が小さくなり均一に分散するので、より一層硬化物の靭性が向上し、かつ、硬化物の可視光透過率が向上する。即ち、硬化物の透明度が向上するので、着色性に優れた組成物を得ることができる。
【0046】
<靭性付与剤>
本発明に用いられる靭性付与剤は、本発明の組成物の硬化物の靭性を向上させる化合物であり、常温で液状であることが好ましく、エポキシ樹脂と相溶性があることがより好ましい。特に、エポキシ基と反応性を有するものは、上記シラン縮合体が分散補助剤として働くため、粒径が小さくなりエポキシ樹脂中に均一に分散するので、より一層硬化物の靭性が向上し、かつ、硬化物の可視光透過率が向上する点から好ましい。
上記靭性付与剤としては、具体的には、ゴム、熱可塑性樹脂、エンジニアリングプラスチック等が挙げられる。中でも、ゴム、熱可塑性樹脂およびエンジニアリングプラスチックからなる群より選択される少なくとも1種が好適に用いられる。
【0047】
上記ゴムとしては、具体的には、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ブタジエン−イソプレン共重合体、ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体またはこれらの部分水添物等が挙げられる。これらの重合体は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体が好ましく、特に、末端がアミン変性された下記式(3)若しくは下記式(4)で表される重合体(ATBN)または末端がカルボン酸変性された下記式(5)で表される重合体(CTBN)を用いた場合は、得られる組成物の硬化物が耐熱性および靭性に優れる点からより好ましい。
上記ゴムは、常温で液状であることが好ましく、エポキシ樹脂と相溶性があることがより好ましい。例えば、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体は、数平均分子量が2000〜6000程度であると、常温で液状で、靭性を付与する効果が大きく、硬化物の耐熱性にも優れる点から好ましい。これらの特性により優れる点から数平均分子量は、3000〜4000程度であるのがより好ましい。
【0048】
【化14】

【0049】
式(3)〜(5)中、xとyの比(x/y)は1〜20が好ましく、1.5〜10がより好ましく、2〜5が更に好ましい。zは、10〜50が好ましく、15〜40がより好ましく、20〜30が更に好ましい。
4、R5およびR6はそれぞれ酸素原子、窒素原子または二重結合を含んでいてもよい炭素数1〜24の2価の有機基または単結合である。
上記式(3)〜(5)のいずれかで表される重合体は、ポリブタジエン部分とポリアクリロニトリル部分を有するブロック共重合体またはランダム共重合体である。
【0050】
上記熱可塑性樹脂とは、後述するエンジニアリングプラスチックを除く、加熱により成形できる程度の熱可塑性が得られる合成樹脂を意味する。具体的には、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ二塩化ビニル(PVDC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、PMMA、ABSまたはASが、靭性を付与する効果が大きく、硬化物の耐熱性にも優れる点から好ましい。
【0051】
上記エンジニアリングプラスチックとは、一般に、耐熱性が100℃以上あり、強度が49.0MPa以上、曲げ弾性率が2.4GPa以上であるプラスチックを意味する。具体的には、例えば、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、液晶ポリマー、フッ素樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリエーテルスルホン、ポリアミドおよびポリエーテルエーテルケトンが靭性を付与する効果が大きく、硬化物の耐熱性にも優れる点から好ましい。
【0052】
上記靭性付与剤の含有量は、上記エポキシ樹脂と上記シラン縮合体の合計100質量部に対して1〜50質量部が好ましい。この範囲であると、耐熱性を維持しつつ、靭性を向上できる点から好ましい。これらの特性により優れる点から、5〜25質量部がより好ましく、10〜20質量部が更に好ましい。
【0053】
<硬化剤>
本発明の組成物に用いられる硬化剤としては、例えば、アミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノール系化合物、チオール系化合物、イミダゾール、3フッ化ホウ素−アミン錯体、グアニジン誘導体等を使用することができ、アミン系化合物、酸無水物系化合物、チオール系化合物等が好ましい。
【0054】
アミン系化合物としては、具体的には、例えば、メタキシリレンジアミン(MXDA)、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(1,3−BAC)、ノルボルナンジアミン(NBDA)、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン(IPDA)、ジシアンジアミド、ジメチルベンジルアミン、ケチミン化合物等のアミン系化合物、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド骨格のポリアミン、下記式(6)で表される化合物等が挙げられる。中でも、メタキシリレンジアミン(MXDA)、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(1,3−BAC)、ノルボルナンジアミン(NBDA)、トリエチレンテトラミン等が室温で液状であり、作業性が良く、硬化性も高いという点から好ましい。また、下記式(6)で表される化合物は芳香核を骨格内に有しているため、耐熱性が高く、可使時間が長いため好適であり、例えば、プリプレグ用途等に特に好適に用いられる。
【0055】
【化15】

【0056】
酸無水物系化合物としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。中でも、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等が、室温で液状であり、作業性が良く、硬化性も高いという点から好ましい。
【0057】
フェノール系化合物としては、具体的には、例えば、ビスフェノール類、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)と各種アルデヒドとの重縮合物、フェノール類と各種ジエン化合物との重合物、フェノール類と芳香族ジメチロールとの重縮合物、またはビスメトキシメチルビフェニルとナフトール類もしくはフェノール類との縮合物等、ビフェノール類およびこれらの変性物等が挙げられる。
【0058】
チオール系硬化剤としては、具体的には、例えば、1,3−ブタンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,2−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、1,10−デカンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,9−ノナンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパジチオール、トルエン−3,4−ジチオール、3,6−ジクロロ−1,2−ベンゼンジチオール、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール(トリメルカプト−トリアジン)、1,5−ナフタレンジチオール、1,2−ベンゼンジメタンチオール、1,3−ベンゼンジメタンチオール、1,4−ベンゼンジメタンチオール、4,4’−チオビスベンゼンチオール、2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、1,5−ジメルカプト−3−チアペンタン、エポメートQX10(ジャパンエポキシレジン社製)、エポメートQX11(ジャパンエポキシレジン社製)等のジチオール;
チオコール(東レ・ファインケミカル社製)、カップキュア3−800(ジャパンエポキシレジン社製)、エピキュアQX40(ジャパンエポキシレジン社製)等のポリチオール等のチオール化合物が挙げられる。中でも、エポメートQX10、エポメートQX11、カップキュア3−800、エピキュアQX40等が、市販の速硬化性ポリチオールとして好適に用いられる。
【0059】
硬化剤の使用量は、組成物中のエポキシ基1当量に対して0.8〜1.1当量が好ましく、0.95〜1.05当量がより好ましい。
【0060】
本発明の組成物は、上記の各成分以外に、本発明の目的を損なわない範囲で、硬化触媒、充填剤、可塑剤、酸化防止剤、老化防止剤、顔料、チクソトロピー性付与剤、接着性付与剤、難燃剤、染料、帯電防止剤、分散剤、溶剤等の各種添加剤を含有することができる。
【0061】
硬化触媒としては、具体的には、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、下記式(7)で表される2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第三級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、オクチル酸スズ等の金属化合物、第四級ホスホニウム塩等が挙げられる。中でも触媒作用が強い点から、下記式(7)で表される化合物が好ましい。
【0062】
【化16】

【0063】
硬化触媒の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して0.5〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。
【0064】
充填剤としては、各種形状の有機または無機の充填剤が挙げられる。具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;ケイソウ土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグレシウム;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;カーボンブラック;これらの脂肪酸処理物、樹脂酸処理物、ウレタン化合物処理物、脂肪酸エステル処理物が挙げられる。充填剤の含有量は、硬化物の物性の点で、全組成物中の90質量%以下であるのが好ましい。
【0065】
可塑剤としては、具体的には、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP);アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。可塑剤の含有量は、作業性の観点から、上記エポキシ樹脂と上記シラン縮合体の合計100質量部に対して、50質量部以下であるのが好ましい。
【0066】
酸化防止剤としては、具体的には、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等が挙げられる。
老化防止剤としては、具体的には、例えば、ヒンダードフェノール系等の化合物が挙げられる。
【0067】
顔料としては、具体的には、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩等の無機顔料;アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、キノナフタロン顔料、アントラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、イソインドリン顔料、カーボンブラック等の有機顔料等が挙げられる。
【0068】
チクソトロピー性付与剤としては、具体的には、例えば、エアロジル(日本エアロジル(株)製)、ディスパロン(楠本化成(株)製)等が挙げられる。
接着性付与剤としては、具体的には、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。
【0069】
難燃剤としては、具体的には、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテル等が挙げられる。
帯電防止剤としては、一般的に、第四級アンモニウム塩;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物等が挙げられる。
【0070】
本発明の組成物は、公知の方法により製造することができる。例えば、窒素雰囲気下で、上記エポキシ樹脂、上記シラン縮合体、上記靭性付与剤、上記硬化剤および所望により添加される添加剤を、撹拌機を用いて混合し分散させることにより得ることができる。
【0071】
本発明の組成物は、エポキシ樹脂およびシラン縮合体を含む主剤と、硬化剤とからなる2液型として用いることができる。靭性付与剤、所望により添加される添加剤は、主剤と硬化剤のどちらか一方または両方に含有することができる。なお、靭性付与剤は、マトリックス中に均一に分散させることが必要であることから予め主剤に含有させておくことが好ましい。また、必要に応じて、靭性付与剤とエポキシ樹脂とを予め反応させ、その後、シラン縮合体およびその他の添加剤を加えることもできる。
また、硬化剤としてケチミン等の潜在性硬化剤を用いる場合は、空気中の湿気等の水分または加熱することにより硬化させる1液型として用いることができる。
【0072】
このようにして得られる本発明の組成物は、低温から高温まで貯蔵弾性率(G′)の変化が小さく、硬化物の耐熱性に優れ、靭性にも優れる。
【0073】
本発明の組成物は、上述したような優れた特性を有することから、封止材、コーティング膜、接着剤、プリプレグ、塗料、防錆塗料、シーリング剤等の用途に好適に用いることができる。特に、優れた耐熱性が要求されるプリント基板、半導体封止剤、航空機用に代表されるFRP用マトリックス樹脂等の用途に好適に用いることができる。
【実施例】
【0074】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
<シラン縮合体の合成>
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(A187、日本ユニカー(株)製)40.84gに対して、水14.0g、ジブチルスズジラウレート0.4g、およびTHF80gを混合後、80℃で12時間撹拌した。その後、反応により生成したメタノールを減圧除去し、エポキシ当量(理論値)178g/eqで液状のシラン縮合体を得た。
得られたシラン縮合体の構造を1H−NMRで解析したところ、メトキシ基由来のピークが消失していることが確認された。得られたシラン縮合体は、主に、下記式で表される構造を有していると推定された。
【0075】
【化17】

【0076】
式中、nは2〜50の整数を表す。
【0077】
(実施例1〜3および比較例1〜3)
下記第1表に示す各成分を、第1表に示す組成(質量部)で、撹拌機を用いて混合し分散させ、第1表に示される各樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物について、以下のようにしてガラス転移温度(T)、貯蔵弾性率(G′)およびその保持率を測定することにより耐熱性を評価した。また、破壊靭性値(Kc)を測定した。結果を第1表に示す。
【0078】
<ガラス転移温度、貯蔵弾性率(G′)およびその保持率の測定法>
(1)試験体の作製
離型剤を塗ったスチール製の型に各樹脂組成物を流し込み、80℃で2時間養生後、更に180℃で4時間養生し硬化させた。得られた硬化物(縦50mm×横15mm×高さ2mm)を試験体とした。
(2)貯蔵弾性率の測定
(1)の試験体について、トーションモード、歪み0.01%、周波数1Hzの強制伸長加振時の温度25℃および230℃における貯蔵弾性率、それぞれG′(25℃)、G′(230℃)を測定し、下記式に従って、貯蔵弾性率(G′)の保持率(%)を求めた。
【0079】
G′保持率(%)={G′(230℃)/G′(25℃)}×100
【0080】
また、このとき25〜300℃の範囲で各樹脂組成物のガラス転移温度を測定した。
【0081】
<破壊靭性値(Kc)の測定方法>
各樹脂組成物を、80℃で2時間、180℃で4時間養生し、厚み4mmの樹脂板を作成した。この樹脂板を用いてASTM D5045−99に記載の方法に準拠して、コンパクトテンション試験によって破壊時の試験力を測定した。
ここで、比較例1の樹脂組成物の測定値を基準と定め、各測定値を比較例1の樹脂組成物の測定値で除した値を下記第1表に示した。
【0082】
【表1】


*1 動的粘弾性測定上、明確なガラス転移温度(T)が観察されなかった。
【0083】
第1表に示す各成分は以下の通りである。
・エポキシ樹脂(ビスフェノールA型):EP−4100E、旭電化工業(株)製
・硬化剤(上記式(5)に示す化合物):カヤボンドC−200S、日本化薬(株)製
・靭性付与剤(上記式(3)に示す化合物(ATBN)):Hycar1300×45、Noveon Co.,Ltd.製
【0084】
第1表に示す結果から明らかなように、エポキシ樹脂と、シラン縮合体と、硬化剤と、靭性付与剤(ATBN)とを含み、エポキシ樹脂とシラン縮合体の合計に対してシラン縮合体の含有量が25質量%である樹脂組成物(実施例2)は、Tレスで、耐熱性と靭性を高い次元で両立していた。
エポキシ樹脂とシラン縮合体の合計に対してシラン縮合体の含有量が5質量%である樹脂組成物(実施例1)は、靭性に優れていた。また、実施例2より耐熱性が低下するが、シラン縮合体を含まない樹脂組成物(比較例1および3)に比べると優れた耐熱性(G′保持率)を有していた。
エポキシ樹脂とシラン縮合体の合計に対してシラン縮合体の含有量が50質量%である樹脂組成物(実施例3)は、Tレスで、耐熱性に優れていた。また、実施例2より靭性が低下するが、比較例1の樹脂組成物と同等以上の靭性を有し、靭性付与剤を含まない樹脂組成物(比較例2)に比べると優れた靭性を有していた。即ち、耐熱性を向上させるためにシラン縮合体を添加しても靭性を維持することが可能であった。
また、実施例2および3の樹脂組成物の硬化物は半透明であった。これは、シラン縮合体が靭性付与剤(ATBN)の分散補助剤として機能し、ゴム粒径が小さくなり、可視光透過率が向上したことに起因すると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と、
シラン縮合体と、
靭性付与剤と、
硬化剤と
を含有する樹脂組成物。
【請求項2】
前記シラン縮合体が、下記式(1)で表されるアルコキシシランを加水分解縮合して得られる請求項1に記載の樹脂組成物。
【化1】


(式中、R1は炭素数1〜3のアルキル基を表し、R2は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R3は窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含んでいてもよい有機基を表し、mは2または3を表す。)
【請求項3】
前記シラン縮合体が、下記式(2)で表される請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【化2】


(式中、R3は窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含んでいてもよい有機基を表し、nは2〜50の整数を表す。)
【請求項4】
前記靭性付与剤が、ゴム、熱可塑性樹脂およびエンジニアリングプラスチックからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記ゴムが、下記式(3)〜(5)のいずれかで表される重合体である請求項4に記載の樹脂組成物。
【化3】


(式(3)〜(5)中、xとyの比(x/y)は1〜20であり、zは10〜50であり、R4、R5およびR6はそれぞれ酸素原子、窒素原子または二重結合を含んでいてもよい炭素数1〜24の2価の有機基または単結合を表す。)
【請求項6】
下記式(2)で表されるシラン縮合体からなる、ゴム、熱可塑性樹脂およびエンジニアリングプラスチックの分散補助剤。
【化4】


(式中、R3は窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含んでいてもよい有機基を表し、nは2〜50の整数を表す。)
【請求項7】
下記式(2)で表されるシラン縮合体からなる、エポキシ樹脂の耐熱性付与剤。
【化5】


(式中、R3は窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含んでいてもよい有機基を表し、nは2〜50の整数を表す。)

【公開番号】特開2006−57013(P2006−57013A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−241143(P2004−241143)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】