説明

樹脂膜形成方法、レリーフパターンの製造方法及び電子部品

【課題】半導体素子用基板に樹脂組成物を塗布する際の基板端部に付着する樹脂を良好に除去し、エッジリンス後の外観形状に優れた樹脂膜形成方法、レリーフパターンの製造方法及び電子部品を提供する。
【解決手段】樹脂膜形成方法は、回転する半導体素子基板の上面上に樹脂組成物を滴下してスピンコート工程を行った後、回転する前記基板の上面端部にリンス液を吐出して前記基板の上面外周上の前記樹脂組成物を除去するリンス液吐出工程、及び前記リンス液の吐出を停止し前記基板を回転するスピンドライ工程を含むエッジリンス工程を、2サイクル以上繰り返して行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子作製において、樹脂膜塗布工程時のエッジリンス工程後における膜外観に優れた樹脂膜形成方法、レリーフパターンの製造方法及びこのレリーフパターンを用いた電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子の表面保護、相関絶縁膜には、優れた耐熱性、電気特性、機械特性、及び膜形成性の点でポリイミド系樹脂が広く使用されている。
ポリイミドを表面保護膜又は層間絶縁膜として使用する場合、スルーホール等の形成工程は、主にポジ型のホトレジストを用いるエッチングプロセスによって行われている。
【0003】
しかしながら、製造工程にはホトレジストの塗布や剥離が含まれ、煩雑であるという問題がある。そこで、作業工程の合理化を目的に感光性を兼ね備えた耐熱性材料の検討がなされてきた。
【0004】
感光性ポリイミド組成物に関しては、(1)エステル結合により感光基を導入したポリイミド前駆体組成物(例えば、特許文献1参照)、(2)ポリアミド酸に化学線により2量化又は重合可能な炭素−炭素二重結合及びアミノ基と芳香族ビスアジドを含む化合物を添加した組成物(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【0005】
感光性ポリイミド組成物の使用に際しては、通常、溶液状態で基板上に塗布後乾燥し、マスクを介して活性光線を照射し、露光部を現像液で除去し、パターンを形成する。
しかし、上記(1)、(2)の組成物はネガ型であり、また現像に有機溶剤を使用する。そのため、ポジ型のホトレジストを用いるエッチングプロセスからネガ型の感光性ポリイミドに切り替えるためには、露光装置のマスクや現像設備の変更が必要になるという問題点がある。
【0006】
一方、ポジ型感光性ポリイミドに関しては、(3)o−ニトロベンジル基をエステル結合により導入したポリイミド前駆体(例えば、特許文献3参照)、(4)フェノール性水酸基を含むポリアミド酸エステルとo−キノンジアジド化合物を含む組成物(例えば、特許文献4参照)等が知られている。
【0007】
また、近年、半導体の高機能化、高性能化に伴い、さらに、電気特性、吸湿性で優れているポリベンゾオキサゾールに注目が集まり、半導体素子への適用が行われている。
【0008】
一般に、これらの耐熱性重合体組成物の塗布方法としては、シリコンウエハなどの半導体素子基板にスピナーを用いた回転塗布にて塗布され均一な膜が形成される。その後、余分な溶剤を揮発、乾燥させるためホットプレートに搬送される。
しかし、この回転塗布の際、樹脂組成物が基板端部に付着するため、塗布後の基板搬送支持体や、露光装置内の汚染、又は駆動エラーが発生する可能性がある。
【0009】
これを防ぐために、樹脂組成物の回転塗布直後に適当な溶剤にて基板端部の樹脂を除去するエッジリンス工程が行われる。エッジリンス工程は、基板を回転させながらリンス液を基板端部に吐出するリンス液吐出工程と、基板外周に残存するリンス液を除去するスピンドライ工程とからなる。
【0010】
【特許文献1】特公昭55−030207号公報
【特許文献2】特公平03−036861号公報
【特許文献3】特開昭60−037550号公報
【特許文献4】特開平04−204945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、使用する樹脂組成物とエッジリンス溶剤(液)との相性が大きく関与するため、これらの相性が悪いと、エッジリンス後に基板外周の樹脂が効率良く除去されない又は基板外周の膜の盛り上り幅が大きくなり、良品半導体チップの取れる面積が狭くなるため歩留まり低下につながる。また、リンス液吐出工程において、樹脂を除去できた場合でも、最後のスピンドライ工程で、基板を適切な回転速度及び回転時間により処理しないと、基板の回転による遠心力により再度基板外周に樹脂が広がってしまうという問題点があった。
【0012】
本発明は、以上のような従来の課題を解決するためになされたものであって、半導体素子用基板に樹脂組成物を塗布する際の基板端部に付着する樹脂組成物を良好に除去し、エッジリンス後の外観形状に優れた樹脂膜形成方法を提供するものである。
また、前記樹脂膜形成方法により良好な塗布膜を形成して得られるレリーフパターンの製造方法を提供するものである。
さらに、前記レリーフパターンの製造方法により得られる信頼性の高い電子部品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明による樹脂膜形成方法は、回転する半導体素子基板の上面上に樹脂組成物を滴下して、前記樹脂組成物を前記半導体素子基板上に塗布するスピンコート工程と、回転する前記半導体素子基板の上面端部にリンス液を吐出して、前記半導体素子基板の上面外周上の前記樹脂組成物を除去するリンス液吐出工程と、及び、前記リンス液の吐出を停止し、前記半導体素子基板を回転するスピンドライ工程とを含む樹脂膜形成方法であって、前記リンス液吐出工程と前記スピンドライ工程とで1サイクルを構成するエッジリンス工程を、2サイクル以上繰り返して行うことを特徴とする。
【0014】
また、本発明による樹脂膜形成方法にあっては、前記リンス液吐出工程において、前記半導体素子基板の回転数が500〜4000回/分であり、前記リンス液の吐出時間が1〜60秒間であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明による樹脂膜形成方法にあっては、前記スピンドライ工程において、前記半導体素子基板の回転数が500〜4000回/分であり、前記半導体素子基板の回転時間が0.1〜20秒間であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明による樹脂膜形成方法にあっては、前記樹脂組成物は、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミド酸、ポリアミド酸エステル、ポリベンゾオキサゾール、及びポリベンゾオキサゾール前駆体からなる群から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする。
【0017】
また、本発明による樹脂膜形成方法にあっては、前記樹脂組成物は、ポジ型感光性樹脂組成物であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明によるレリーフパターンの製造方法にあっては、前記樹脂膜形成方法により樹脂組成物を半導体素子基板上に塗布し乾燥する工程と、前記樹脂組成物を塗布、乾燥した半導体素子基板を所定のパターンに露光する工程と、前記露光した半導体素子基板をアルカリ現像液を用いて現像する工程と、及び前記現像した半導体素子基板を加熱処理する工程とを含むことを特徴とする。
【0019】
また、本発明による電子部品にあっては、前記レリーフパターンの製造方法により得られるレリーフパターンを表面保護膜又は層間絶縁膜として有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、半導体素子作製における基板上に樹脂組成物膜を回転塗布する際に、エッジリンス後の外観及び塗布膜形状に優れた樹脂組成物膜及びレリーフパターンを形成することができ、歩留まり良く信頼性の高い電子部品を提供できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明による樹脂膜形成方法、レリーフパターンの製造方法及び電子部品の一実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0022】
[樹脂膜形成方法]
本発明による樹脂膜形成方法は、回転する半導体素子基板の上面上に樹脂組成物を滴下して、前記樹脂組成物を前記半導体素子基板上に塗布するスピンコート工程と、回転する前記半導体素子基板の上面端部にリンス液を吐出して、前記半導体素子基板の上面外周上の前記樹脂組成物を除去するリンス液吐出工程と、及び、前記リンス液の吐出を停止し、前記半導体素子基板を回転するスピンドライ工程とを含む。
【0023】
まず、スピンコート工程では、例えばスピンコーター(図示しない)を使用して、回転する半導体素子基板の上面上に樹脂組成物を滴下する。この時、滴下された樹脂組成物は、回転による遠心力で半導体素子基板の端縁部まで均一に広げられる。これにより、樹脂組成物を半導体素子基板上に均一に塗布することができる。
【0024】
次に、リンス液吐出工程では、例えばスピンコーターに付属のエッジリンスノズルから、任意のリンス液を所定の回転数で回転している半導体素子基板端部に所定時間吐出させて、半導体素子基板外周の樹脂組成物を除去する。
【0025】
続いて、リンス液の供給を停止し、半導体素子基板を所定の回転数及び回転時間でスピンドライを行うスピンドライ工程を実施する。これらのリンス液吐出工程及びスピンドライ工程によりエッジリンス工程の1サイクルが構成され、最初の1サイクルが第1サイクルとなり、複数のサイクル(nサイクル)によりエッジリンス工程における処理を行う。
【0026】
第1サイクルのリンス液吐出工程において、リンス液を半導体素子基板に吐出することにより、半導体素子基板の外周における樹脂組成物を除去することができ、残存する樹脂組成物の樹脂量が少なくなる。続いて、スピンドライを行うことで、半導体素子基板外周の樹脂組成物が乾燥し、若干固化する。そのため、第2サイクル以降のエッジリンス工程では、半導体素子基板の回転時における遠心力による樹脂溶解物の基板端部への広がりを抑えると同時に、スピンドライ工程では、前サイクル時に広がったわずかな残存樹脂をきれいに除去することができる。
【0027】
以上のようなエッジリンス工程のサイクルをn回繰り返すことにより、半導体素子基板の外周端部に付着する樹脂組成物を良好に除去することができると共に、エッジリンス工程後の外観形状に優れた半導体素子基板が得られる。また、使用する樹脂組成物とエッジリンス液との相性が良くない場合であっても、半導体素子基板の外周端部に付着する樹脂組成物を良好に除去することができる。
【0028】
ここで、エッジリンス工程の繰り返しサイクル数nは、2サイクル以上であるが、2〜10が好ましく、2〜3がより好ましい。サイクル数nが1では、半導体素子基板の外周端部に付着する樹脂組成物を良好に除去することができない。サイクル数nが10を超えても樹脂組成物を除去する効果は変わらないので、2〜10サイクルの範囲でエッジリンス工程の処理を行うことが好ましい。
【0029】
エッジリンス工程におけるリンス液吐出工程では、半導体素子基板の回転数は500〜4000回/分が好ましく、500〜2500回/分がより好ましい。半導体素子基板の回転数が500回/分未満であると、リンス液が十分に振り切られずに、半導体素子基板の内側方向の膜に浸透してしまい、塗膜不良を生じる場合がある。また、回転数が4000回/分を超えると、遠心力により半導体素子基板上の樹脂組成物が激しく振り切られるため、エッジリンスで十分に除去できなくなる。また、リンス液の吐出時間は1〜60秒間が好ましく、1〜15秒間がより好ましい。リンス液の吐出時間が1秒未満であると、十分にエッジ部の樹脂組成物が溶解除去できない。また、リンス液の吐出時間が60秒を超えると、リンス液が半導体素子基板内側方向の膜に浸透してしまい、塗膜不良を生じる場合がある。
【0030】
さらに、エッジリンス工程におけるスピンドライ工程では、半導体素子基板の回転数は500〜4000回/分が好ましく、500〜2500回/分がより好ましい。この時の半導体素子基板の回転数が500回/分未満であると、半導体素子基板の乾燥が不十分となり装置汚染に影響する。また、回転数が4000回/分を超えると、一度エッジリンスを完了したエッジ部に、再度樹脂組成物が広がってしまう。また、半導体素子基板の回転時間は0.1〜20秒間が好ましく、0.1〜5秒間がより好ましい。半導体素子基板の回転時間が0.1秒未満であると、半導体素子基板の乾燥が不十分となり装置汚染に影響する。また、回転時間が20秒を超えると、一度エッジリンスを完了したエッジ部に、再度樹脂組成物が広がってしまう。
【0031】
また、エッジリンス工程におけるリンス液吐出工程の際、吐出ノズルの半導体素子基板端部からの距離は、nサイクル全て一定であっても、変更してもよい。例えば、第1サイクル目のエッジリンス工程におけるリンス液吐出時は半導体素子基板端部から5mmの距離でリンス液を吐出し、樹脂組成物を除去した後、第2サイクル目のエッジリンス工程におけるリンス液吐出時は半導体素子基板端部から3mmの距離でリンス液を吐出することができる。さらに他のサイクルで吐出ノズルの半導体素子基板端部からの距離を変動させることも可能である。
【0032】
また、一般に半導体素子基板の直径が異なると、同一回転数での外周速度も異なるため(直径が大きくなると、外周速度は速くなる)、それに合わせて任意に回転数を調整することができる。すなわち、上述したエッジリンス工程における半導体素子基板の回転数の条件では、半導体素子基板の直径は概ね2インチから12インチまで適応可能であり、5インチから12インチがより好ましい。さらに、リンス液の流量は、上述したリンス液吐出工程におけるリンス液の吐出時間との関係から、5ml/分から100ml/分が好ましく、10ml/分から40ml/分がより好ましい。リンス液の流量が5ml/分未満であると、リンス液の吐出圧力が弱いため、エッジ部の樹脂組成物がきれいに除去できない。一方、リンス液の流量が100ml/分を超えると、吐出されたリンス液が半導体素子基板に激しくぶつかるため、除去した樹脂組成物が塗布膜にまで飛び散り、欠陥を生じさせる場合がある。
【0033】
次に、本発明で用いるエッジリンス液としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチルラクトン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ε−カプロラクトン、ε−カプロラクタム、N−アセチルモルホリン、N−アセチルピペリジン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−メチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、乳酸エチル、乳酸ブチル、蟻酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸−n−アミル、酢酸メチルセロソルブ、酢酸エチルセロソルブ、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、絡酸メチル、テトラヒドロフラン等が挙げられるが、これらに制限するものではない。これらは単独で使用してもよく、2種類以上混合して使用してもよい。
【0034】
また、特に好ましいものとしては、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトンが挙げられる。
【0035】
本発明で使用する樹脂組成物としては、フォノール樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミド酸、ポリアミド酸エステル、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体等が挙げられ、これらの少なくとも1種を使用することができる。しかし、特に樹脂組成物に制限はなく、半導体素子用基板に回転塗布する樹脂溶解組成物等も挙げられる。また、樹脂組成物は、特にポジ型感光性樹脂組成物であることが好ましい。
【0036】
[レリーフパターンの製造方法]
次に、本発明によるレリーフパターンの製造方法について説明する。本発明によるレリーフパターンの製造方法は、上述した樹脂膜形成方法により樹脂組成物を半導体素子基板上に塗布し乾燥する工程と、前記樹脂組成物を塗布、乾燥した半導体素子基板を所定のパターンに露光する工程と、前記露光した半導体素子基板をアルカリ現像液を用いて現像する工程と、及び前記現像した半導体素子基板を加熱処理する工程とを含む。
【0037】
まず、樹脂組成物を半導体素子基板上に塗布し乾燥する工程では、上述した樹脂膜形成方法により樹脂組成物を半導体素子基板上に塗布、乾燥する。すなわち、樹脂組成物をスピンコーター等によりスピンコートし、エッジリンス工程を経て余分な溶剤を揮発させ、半導体素子基板を乾燥させる。この時、エッジリンス工程により、基板端部に付着する樹脂組成物は良好に除去されている。
【0038】
次に、半導体素子基板上で被膜となった樹脂組成物にマスクを介して紫外線、可視光線、放射線などの活性光線を照射する。続いて、活性光線が露光した樹脂組成物の露光部を、現像液で除去することによりパターンが得られる。現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、水酸化テトラメチルアンモニウムなどのアルカリ現像液が好ましいものとして挙げられる。次いで、現像後得られたパターンを加熱処理することにより、樹脂組成物のパターンを製造することができる。
【0039】
[電子部品]
次に、本発明による電子部品について説明する。本発明による電子部品は、上述したレリーフパターンの製造方法により得られるレリーフパターンを表面保護膜又は層間絶縁膜として有する。ここで、電子部品としては、半導体装置や多層配線板、各種電子デバイス等を含む。また、上記パターンは、具体的には、半導体装置の表面保護膜や層間絶縁膜、多層配線板の層間絶縁膜等の形成に使用することができる。本発明による電子部品は、前記組成物を用いて形成される表面保護膜や層間絶縁膜を有すること以外は特に制限されず、様々な構造をとることができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
(感光性重合体組成物の調製)
[合成例1]
攪拌機、温度計を備えた0.3リットルのフラスコ中に、3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物17.37g(0.056モル)、n−ブチルアルコール8.30g(0.112モル)、トリエチルアミン0.28g(0.0028モル)及びN−メチルピロリドン(以下、NMPとする)47.7gを仕込み、室温で8時間で攪拌し反応させて、3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸ジn−ブチルエステルのNMP溶液(α)を得た。
【0042】
次いで、攪拌機、温度計を備えた0.3リットルのフラスコ中に、ピロメリット酸二無水物5.23g(0.024モル)、メチルアルコール1.54g(0.048モル)、トリエチルアミン0.12g(0.0012モル)及びNMP12.6gを仕込み、室温で4時間攪拌し反応させて、ピロメリット酸ジメチルエステルのNMP溶液(β)を得た。
【0043】
次に、ピロメリット酸ジメチルエステルのNMP溶液(β)を3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸ジn−ブチルエステルのNMP溶液(α)に添加し、フラスコを0℃に冷却した後、塩化チオニル17.13g(0.144モル)を滴下して1時間反応させて、3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸ジn−ブチルエステルジクロリドとピロメリット酸ジメチルエステルジクロリドの混合溶液(γ)を得た。
【0044】
次いで、攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、N−メチルピロリドン105gを仕込み、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン26.37g(0.072モル)を添加し、攪拌溶解した後、ピリジン22.78g(0.288モル)を添加し、温度を0〜5℃に保ちながら、3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸ジn−ブチルエステルジクロリドの溶液とピロメリット酸ジメチルエステルジクロリドの混合溶液(γ)を20分間で滴下した後、温度を30℃にして1時間攪拌を続ける。この溶液を3リットルの水に投入し、析出物を回収、洗浄した後、減圧乾燥してポリアミド酸エステル(δ)を得た。
【0045】
ポリアミド酸エステル(δ)15.00g及びトリス(4−ヒドロキシフェニル)メタンとナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリドを、1/2.9のモル比で反応させたオルトキノンジアジド化合物2.25g、ビス(2−ヒドロキシ−3−メトキシメチル−5−メチルフェニル)メタン1.5g及びN−メチルピロリドン24.47gに攪拌溶解した。この溶液を3μm孔のポリフッ化エチレン系繊維フィルタを用いて加圧濾過して感光性重合体組成物を得た(以下、サンプルAとする)。
【0046】
[合成例2]
攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、N−メチルピロリドン48.8gを仕込み、3,5−ジアミノ−安息香酸5.84g(0.0384モル)、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン6.36g(0.0256g)を添加し、攪拌溶解した後、ピリジン22.78g(0.288モル)を添加し、温度を0〜5℃に保ちながら、合成例1と同様に作成した3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸ジn−ブチルエステルジクロリドの溶液とピロメリット酸ジメチルエステルジクロリドの混合溶液(γ')を20分間で滴下した後、温度を30℃にして1時間攪拌を続ける。この溶液を3リットルの水に投入し、析出物を回収、洗浄した後、減圧乾燥してポリアミド酸エステル(ε)を得た。
【0047】
ポリアミド酸エステル(ε)15.00g及びトリス(4−ヒドロキシフェニル)メタンとナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリドを、1/2.9のモル比で反応させたオルトキノンジアジド化合物2.25g、ビス(2−ヒドロキシ−3−メトキシメチル−5−メチルフェニル)メタン1.50g及びN−メチルピロリドン24.47gに攪拌溶解した。この溶液を3μm孔のポリフッ化エチレン系繊維フィルタを用いて加圧濾過して感光性重合体組成物を得た(以下、サンプルBとする)。
【0048】
[合成例3]
攪拌機及び温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、4,4'−ジカルボキシジフェニルエーテル21.7g(0.084モル)及びN−メチルピロリドン(NMP)125gを仕込み、フラスコを0℃に冷却し、塩化チオニル20.0g(0.168モル)を反応温度を10℃以下に保持しながら滴下し、滴下後10℃付近で30分間撹拌して、4,4'−ジカルボキシジフェニルエーテルジクロリドの溶液(ζ)を得た。
【0049】
次いで、攪拌機及び温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、N−メチルピロリドン100gを仕込み、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン23.4g(0.10モル)を添加し、攪拌溶解した後、ピリジン26.6gを添加した。この溶液を冷却し、温度を0〜10℃に保ちながら、4,4'−ジカルボキシジフェニルエーテルジクロリドの溶液(θ)を30分間かけて滴下した後、10℃付近で30分間撹拌した。反応液を4リットルの水に投入し、析出物を回収、洗浄した後、40℃で二日間減圧乾燥してポリヒドロキシアミドを得た。
【0050】
ポリヒドロキシアミド15.00g及びトリス(4−ヒドロキシフェニル)メタンとナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリドを、1/2.9のモル比で反応させたオルトキノンジアジド化合物2.25g、ビス(2−ヒドロキシ−3−メトキシメチル−5−メチルフェニル)メタン1.50g及びN−メチルピロリドン23.00gに攪拌溶解した。この溶液を3μm孔のポリフッ化エチレン系繊維フィルタを用いて加圧濾過して感光性重合体組成物を得た(以下、サンプルCとする)。
【0051】
[合成例4]
攪拌機及び温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、4,4'−ジカルボキシビフェニル、20.3g(0.084モル)及びN−メチルピロリドン(NMP)125gを仕込み、フラスコを0℃に冷却し、塩化チオニル20.0g(0.168モル)を反応温度を10℃以下に保持しながら滴下し、滴下後10℃付近で30分間撹拌して、4,4'−ジカルボキシビフェニルジクロリドの溶液(ζ)を得た。
【0052】
次いで、攪拌機及び温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、N−メチルピロリドン100gを仕込み、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン23.4g(0.10モル)を添加し、攪拌溶解した後、ピリジン26.6gを添加した。この溶液を冷却し、温度を0〜10℃に保ちながら、4,4'−ジカルボキシビフェニルジクロリドの溶液(ζ)を30分間かけて滴下した後、10℃付近で30分間撹拌した。反応液を4リットルの水に投入し、析出物を回収、洗浄した後、40℃で二日間減圧乾燥してポリヒドロキシアミドを得た。
【0053】
ポリヒドロキシアミド15.00g及びトリス(4−ヒドロキシフェニル)メタンとナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリドを、1/2.9のモル比で反応させたオルトキノンジアジド化合物2.25g、ビス(2−ヒドロキシ−3−メトキシメチル−5−メチルフェニル)メタン1.50g及びN−メチルピロリドン23.00gに攪拌溶解した。この溶液を3μm孔のポリフッ化エチレン系繊維フィルタを用いて加圧濾過して感光性重合体組成物を得た(以下、サンプルDとする)。
【0054】
[実施例1〜5及び比較例1〜3]
上記で得られた感光性重合体組成物サンプルA〜DをSCW80Aコーター(大日本スクリーン製)を用い、半導体素子基板として直径6インチのSiウエハ(以下、ウエハ又は基板とする)上に、表1に示す条件でスピン塗布し、また、表2に示す条件でエッジリンスを行った。さらに、プリベーク後のウエハ端部の樹脂残り及び塗膜端の盛り上がり幅を調べ、その結果を表3に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
表1に示すように、スピン塗布は、各ステップに分けて段階的に行い、表1中、時間及び回転数はそれぞれ基板の回転時間及び回転数を示している。
【0057】
【表2】

【0058】
表2に示すように、エッジリンス工程を第1〜第3リンスサイクルで行い、各リンスサイクルでは、リンス液吐出工程及びスピンドライ工程を行った。表2中、リンス液吐出工程における実施例及び比較例の欄の単位は、[基板の回転数(回/分)/リンス液の吐出時間(秒)]であり、スピンドライ工程における実施例及び比較例の欄の単位は、[基板の回転数(回/分)/基板の回転時間(秒)]である。また、PGME:PGMEA=70:30重量%、リンス液のノズル位置は基板端部から1mm上方、ノズル内径は0.5mm、リンス液の流量は20ml/分である。
【0059】
【表3】

【0060】
表3中、サイクル(n)は、エッジリンス工程のサイクル数であり、PGME:PGMEA=70:30重量%である。
表3及び図1に示されるように、実施例1〜5においては、ウエハ端部Aの樹脂残りは見られず、塗布膜2を良好に除去できたことが判った。また、塗布膜2端部の盛上り幅は、1〜2mm程度であり、ウエハ端部の外観形状も良好であった。
【0061】
なお、図1及び後述する図2及び図3において、半導体素子基板1上に樹脂組成物の塗布膜2が形成されており、W1〜W3は塗布膜2端部の盛上り幅を示し、A〜Cはウエハ端部(外周部)、3はウエハ側部(端面)をそれぞれ示している。
【0062】
一方、比較例1及び2にはエッジリンスサイクルを1回だけ行ったものを示した(図2参照)。この場合は、ウエハ端部Bに樹脂残りがあり、樹脂の除去が不十分であった。また、塗布膜2端部の盛上り幅W2は、樹脂残りから測定して3〜4mm程度であり、実施例1〜5に比べてウエハの有効使用面積が狭くなった。
【0063】
また、比較例3のエッジリンス工程を行わなかった場合(図3参照)、ウエハ端部Cは樹脂で完全に覆われた状態であり、さらに、ウエハ側部3にも樹脂が回り込む状態であった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上のように、本発明にかかる樹脂膜形成方法、レリーフパターンの製造方法及び電子部品は、半導体素子作製における基板上に樹脂組成物膜を回転塗布する際に、エッジリンス後の外観及び塗布膜形状に優れた樹脂組成物膜及びレリーフパターンを形成することができる。従って、歩留まり良く信頼性の高い電子部品を提供するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施例1〜5におけるプリベーク後のウエハ端部における樹脂残り及び塗布膜端部の盛り上がり幅を示す概略断面図である。
【図2】比較例1及び2におけるプリベーク後のウエハ端部における樹脂残り及び塗布膜端部の盛り上がり幅を示す概略断面図である。
【図3】比較例3おけるプリベーク後のウエハ端部における樹脂残り及び塗布膜端部の盛り上がり幅を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 半導体素子基板
2 塗布膜
3 ウエハ側部
A〜C ウエハ端部
W1〜W3 塗布膜端部の盛上り幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する半導体素子基板の上面上に樹脂組成物を滴下して、前記樹脂組成物を前記半導体素子基板上に塗布するスピンコート工程と、
回転する前記半導体素子基板の上面端部にリンス液を吐出して、前記半導体素子基板の上面外周上の前記樹脂組成物を除去するリンス液吐出工程と、及び
前記リンス液の吐出を停止し、前記半導体素子基板を回転するスピンドライ工程とを含む樹脂膜形成方法であって、
前記リンス液吐出工程と前記スピンドライ工程とで1サイクルを構成するエッジリンス工程を、2サイクル以上繰り返して行うことを特徴とする樹脂膜形成方法。
【請求項2】
前記リンス液吐出工程において、前記半導体素子基板の回転数が500〜4000回/分であり、前記リンス液の吐出時間が1〜60秒間であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂膜形成方法。
【請求項3】
前記スピンドライ工程において、前記半導体素子基板の回転数が500〜4000回/分であり、前記半導体素子基板の回転時間が0.1〜20秒間であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の樹脂膜形成方法。
【請求項4】
前記樹脂組成物は、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミド酸、ポリアミド酸エステル、ポリベンゾオキサゾール、及びポリベンゾオキサゾール前駆体からなる群から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1から請求項3のうち、いずれか1項に記載の樹脂膜形成方法。
【請求項5】
前記樹脂組成物は、ポジ型感光性樹脂組成物であることを特徴とする請求項1から請求項4のうち、いずれか1項に記載の樹脂膜形成方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のうち、いずれか1項に記載の樹脂膜形成方法により樹脂組成物を半導体素子基板上に塗布し乾燥する工程と、
前記樹脂組成物を塗布、乾燥した半導体素子基板を所定のパターンに露光する工程と、
前記露光した半導体素子基板をアルカリ現像液を用いて現像する工程と、及び
前記現像した半導体素子基板を加熱処理する工程と
を含むことを特徴とするレリーフパターンの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載のレリーフパターンの製造方法により得られるレリーフパターンを表面保護膜又は層間絶縁膜として有することを特徴とする電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−103660(P2008−103660A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51779(P2007−51779)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(398008295)日立化成デュポンマイクロシステムズ株式会社 (81)
【Fターム(参考)】