説明

樹脂製容器、及び樹脂製容器の製造装置

【課題】容器本体に部分的に形成される被覆層を、該被覆層が形成されない部位との境界部分において厚みを変化させることで、より一体感のある装飾デザインを施したりすることができる樹脂製容器、及び樹脂製容器の製造装置を提供する。
【解決手段】樹脂製容器1は、押出機から押し出されたパリソンをブロー成形することによって製造される樹脂製容器1であって、容器本体2と、前記容器本体2の全部又は一部を覆う被覆層とを少なくとも備え、前記被覆層3が、高さ方向に沿って、0.1〜1.5μm/mmの減少率で連続的に厚みを減じる肉厚減少部6を有し、前記被覆層3が、高さ方向に沿って厚みを減じながら消失する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体に部分的に形成される被覆層を、該被覆層が形成されない部位との境界部分において厚みを変化させることで、より一体感のある装飾デザインを施したりすることができる樹脂製容器、及び樹脂製容器の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、樹脂製容器の需要が増大している。例えば、飲料品等の食品類、ボディーソープやシャンプー等のサニタリー用品等、種々の商品が樹脂製の容器に収容され、店頭にて販売されている。このような状況下、商品の特性から、容器の形態が類似する傾向にある商品もあり、同じような商品が、似たような容器に収容されて販売されていることが多々ある。
【0003】
一方、一般の消費者は、購入を決定するに際して、商品の品質、価格等を考慮する。当然のことではあるが、商品の外観から得られる印象によっても、購入するか否かの判断が大きく分かれることがある。特に、品質、価格等に大きな差がない商品を比較する場合は、そのような傾向が強くなる。また、商品の外観そのものである容器は、商品イメージの形成に大きく関わってくる。一般に、良好な商品イメージが形成されれば、その商品の売り上げは伸びる傾向にあり、悪い商品イメージが形成されると、その商品の売り上げは伸び悩む傾向にあるといえる。このように、商品の外観、すなわち、容器のデザインが消費者に与える印象が、消費者に購入意欲を起こさせる上できわめて重要になってくる。
【0004】
ところで、上述したような商品を収容する樹脂製の容器としては、「ブロー成形」と称される成形方法によって製造されるものが一般に用いられている(例えば、特許文献1又は特許文献2等参照)。ブロー成形は、押出機から筒状に押し出された溶融物(パリソン)を金型で挟み、内部に空気を吹き込んで中空成形品を得るものである。特許文献1及び特許文献2は、二層構造のパリソンを押し出す際に、一方の層を形成する樹脂の押出量を調整することで、所望の機能的特長が備わった多層薄肉容器を開示する。
【0005】
このような樹脂製容器にあっては、形状的なデザインを施す一方、商品名等が印刷されたラベルシールを貼り付けたり、シュリンクラベルやストレッチラベル等のフィルム材を装着したりして商品の差別化を図っている。また、スクリーン印刷等の適宜印刷手段によって容器表面に直接印刷することや、容器を形成する材料樹脂に顔料等を添加して、容器全体を一様に着色することも適宜行われている。色彩や着色模様によるデザインを容器に施すには、これらの方法が一般に用いられる。
【0006】
しかし、シールを貼り付けたり、フィルム材を装着したりする方法では、容器との一体感が得られ難く、デザイン上の制約が大きい。その上、これらのものは廃棄時にラベルの分別が必要になることもあるため、消費者に敬遠されることも考えられる。また、容器表面に直接印刷を施す方法では、比較的平坦な面でなければ印刷が困難になる等、印刷上の制約もある。さらに、これらの方法は、二次的な工程を必要とするため、製造コストの点でも不利である。一方、材料樹脂に顔料等を添加して容器に着色を施すものは、成形と着色とが同時に行えるためコスト的な不利は比較的少ない。しかし、着色の状態は容器全体にわたって一様であり、色彩の変化は望めないという不利がある。
【0007】
このように、従来の方法は、色彩や着色模様によるデザインを容器に施す上で、種々の問題が指摘されていた。消費者に対してより訴求力のある容器が求められているにもかかわらず、効果的な代案は未だ提案されていない。上述した特許文献1及び特許文献2においても、このようなデザイン上の問題については一切検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−142662号公報(段落番号[0010]等)
【特許文献2】特開2000−238116号公報(段落番号[0012]等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上のような従来の技術が有する問題を解決するために提案されたものであり、容器そのものに高い自由度でより一体感のある装飾デザインを施すなどし、これによって高い付加価値を容器に与え、消費者に対してより訴求力のある新規な樹脂製容器、及び樹脂製容器の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る樹脂製容器は、押出機から押し出されたパリソンをブロー成形することによって製造される樹脂製容器であって、容器本体と、前記容器本体の全部又は一部を覆う被覆層とを少なくとも備え、前記被覆層が、高さ方向に沿って、0.1〜1.5μm/mmの減少率で連続的に厚みを減じる肉厚減少部を有し、前記被覆層が、高さ方向に沿って厚みを減じながら消失する構成としてある。
【0011】
このような構成とすることにより、優れた意匠的効果又は機能的効果によって、高い付加価値を容器に与え、消費者に対してより訴求力のある樹脂製容器とすることができる。
【0012】
また、本発明に係る樹脂製容器は、前記肉厚減少部が、容器胴部の高さ方向の長さの1/4以上を占める範囲にわたって形成されている構成とすることができる。
このような構成とすることにより、途切れのないグラデーション変化を広範囲に形成することができ、樹脂製容器の意匠性をより優れたものとすることができる。
【0013】
また、本発明に係る樹脂製容器は、前記被覆層が、厚みを減じながら消失するようにするが、このとき、少なくとも前記被覆層の消失部位からその直前の高さ方向30mmの範囲における前記被覆層の肉厚減少率が、0.1〜0.5μm/mmである構成とすることができる。
このような構成とすることにより、被覆層の厚み変化によって実現される意匠上又は機能上の変化に方向性を持たせることができる。特に、連続的なグラデーション変化を生じさせて意匠的効果を得る場合には、被覆層の消失部位からその直前の範囲における肉厚減少率を上記範囲とすることで、グラデーション変化が途中で途切れてしまうのを有効に回避することができ、被覆層の消失部位近傍での連続的で滑らかなグラデーション変化を達成することができる。
【0014】
また、本発明に係る樹脂製容器は、前記容器本体の外面側に色調調整層を備えるとともに、前記色調調整層の外面側に前記被覆層が形成されている構成とすることができる。
このような構成とすることにより、容器本体と被覆層との色調を調整するための色調調整層を形成することで、樹脂製容器の意匠性をより優れたものとすることができる。
【0015】
また、本発明に係る樹脂製容器は、前記肉厚減少部が形成される部位において、前記被覆層と前記色調調整層のそれぞれの高さ方向に沿った肉厚の変化が互いに逆方向の関係にある構成とすることができる。
このような構成とすることにより、容器本体、被覆層,色調調整層のそれぞれの色彩の組み合わせによる、連続的なグラデーション変化を生じさせることが可能となる。
【0016】
また、本発明に係る樹脂製容器は、上記のような色調調整層を備えるにあたり、樹脂製容器の表面に印刷を施す際の印刷適性を考慮すると、前記被覆層と前記色調調整層とが、同じ樹脂から形成されているのが好ましい。また、樹脂製容器にパール感を与えるために、前記被覆層と前記色調調整層とが、パール顔料を含有する構成とすることもできる。
【0017】
また、本発明に係る樹脂製容器は、容器最内面に内層を備えた構成としてもよく、容器最外面に外層を備えた構成としてもよい。また、本発明に係る樹脂製容器は、成形性を考慮して、前記容器本体を形成する基材樹脂、及び前記被覆層を形成する副材料のMIが、0.1〜30g/10minとするのが好ましい。
【0018】
また、本発明に係る樹脂製容器は、前記被覆層に、前記容器本体に施した着色と同系色の異なる色調の着色を施したり、前記被覆層に、前記容器本体に施した着色と異なる色合いの着色を施したりしてもよい。このように構成することで、樹脂製容器そのものの色彩を変化させ、より一体感のある装飾デザインを施すことができる。このような意匠的効果を発揮させることで、高い付加価値を容器に与え、消費者に対してより訴求力のある樹脂製容器とすることができる。
【0019】
また、本発明に係る樹脂製容器は、前記被覆層に、抗菌剤を含有させた構成とすることもできる。
このように構成することで、抗菌作用や防かび作用を発揮する被覆層が部分的に形成されるので、コスト増を抑え、少量の抗菌剤でより効果的な抗菌作用や防かび作用を発揮させることができる。このような機能的効果を発揮させることによっても、高い付加価値を容器に与え、消費者に対してより訴求力のある樹脂製容器とすることができる。
【0020】
また、本発明に係る樹脂製容器の製造装置は、基材樹脂を供給する主押出機と、副材料を供給する副押出機とを備え、前記副押出機から供給される副材料を、ダイヘッド内に設けた吐出部から吐出させて前記主押出器から連続供給される基材樹脂に合流させた後に、前記ダイヘッドの先端側に開口するスリット部からパリソンを押し出し、前記パリソンをブロー成形することにより、前記基材樹脂により形成される容器本体の全部又は一部を覆う被覆層が前記副材料により形成された樹脂製容器を製造する装置であって、前記副材料の供給路の前記副押出機と前記ダイヘッドとの間に、前記副材料を前記吐出部から引き戻す第一のサックバック機構が設けられているとともに、前記副材料の供給路の前記ダイヘッド寄りの位置に、第二のサックバック機構が設けられており、前記ダイヘッドには、前記吐出部が前記スリット部の近傍に設けられている構成とすることができる。このような、本発明に係る樹脂製容器の製造装置は、前記ダイヘッドには、前記副材料が供給される側から離れるにつれて前記吐出部に相対的に近づくように形成された環状部と、前記環状部から前記吐出部に連続する錘状部とからなる前記副材料の流路が設けられている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、優れた意匠的効果又は機能的効果によって、高い付加価値を容器に与え、消費者に対してより訴求力のある樹脂製容器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第一実施形態に係る樹脂製容器の概略を示す一部切欠断面図である。
【図2】本発明の第一実施形態の第一変形例の概略を示す正面図及び要部断面図である。
【図3】本発明の第一実施形態の第二変形例の概略を示す一部切欠断面図である。
【図4】本発明の第一実施形態の第三変形例の概略を示す正面図及び要部断面図である。
【図5】本発明の第一実施形態の第四変形例の概略を示す一部切欠断面図である。
【図6】本発明の第一実施形態の第五変形例の概略を示す図1中鎖線で囲む部分に相当する部位の拡大断面図である。
【図7】本発明に係る樹脂製容器の製造装置の一実施形態を示す概略断面図である。
【図8】サックバック制御により副材料の供給路における樹脂圧が変化する一例を示すグラフである。
【図9】図8(a)〜(d)のグラフを重ねて示したグラフである。
【図10】本発明に係る樹脂製容器の製造装置の一実施形態におけるダイヘッドの変形例示す概略断面図である。
【図11】本発明に係る樹脂製容器の製造装置の一実施形態におけるダイヘッドの他の変形例示す概略断面図である。
【図12】図11のC−C線断面図である。
【図13】本発明に係る樹脂製容器の製造装置の一実施形態におけるブロー成形工程を示す概略断面図である。
【図14】本発明に係る樹脂製容器の製造装置の他の実施形態を示す概略断面図である。
【図15】本発明の参照実施形態に係る樹脂製容器の概略を示す一部切欠断面図である。
【図16】本発明の第二実施形態に係る樹脂製容器の概略を示す一部切欠断面図である。
【図17】被覆層の肉厚分布の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る樹脂製容器の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
[第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態に係る樹脂製容器の概略を示し、樹脂製容器1の一部を切り欠いた一部切欠断面図である。図示する樹脂製容器1は、シャンプー用容器に適用される例を示す。
樹脂製容器1には、容器本体2を部分的に覆う被覆層3が、容器本体2とは着色状態の異なる樹脂を用いて形成されている。容器本体2は、口部2a、胴部2b及び底部2cを備えるが、本実施形態では、胴部2bの高さ方向ほぼ中央から下側の部分及び底部2cが被覆層3で覆われている。
ここで、高さ方向とは、口部2aを上にして容器を水平面に置いたときに、水平面に直交する方向に沿った方向をいうものとする。
【0025】
樹脂製容器1は、被覆層3が形成されているか否かで、被覆層形成部位4と、被覆層非形成部位5の二つの領域に分けられる。被覆層3のこれらの部位4,5の境界側には、被覆層形成部位4から被覆層非形成部位5に向かって、被覆層3の厚みが連続的に減少していく肉厚減少部6が形成されている。
具体的には、被覆層3は、被覆層形成部位4から被覆層非形成部位5に向かって、0.1〜1.5μm/mmの減少率で連続的に徐々に厚みを減じながら消失していくとともに、少なくとも被覆層3が消失する部位からその直前の高さ方向の少なくとも30mm、好ましくは50mm、より好ましくは90mmの範囲における肉厚の減少率が、0.1〜0.5μm/mmとなるように形成されている。
なお、図中、被覆層3が消失する位置を破線で示す。
【0026】
容器本体2の表面を覆う被覆層3の厚みが薄くなっていくと、これにしたがって、容器本体2の表面がだんだんと透けて見えてくる。そして、容器本体2の表面を覆う被覆層3がなくなれば容器本体2が露出し、その表面を直に見ることができるようになる。
本実施形態は、被覆層3に形成された肉厚減少部6において、このような現象を発現させることで、色彩の変化(グラデーション変化)を生じさせ、容器そのものに高い自由度でより一体感のある装飾デザインを施すものである。特に、被覆層3の肉厚を上記した減少率で連続的に減少させることによって、連続的なグラデーション変化を可能とし、例えば、被覆層3が消失する直前の部位で一定の濃さの範囲が続いてしまったり、被覆層3の色彩の変化が容器本体2の色彩に連続せずに、被覆層形成部位4と被覆層非形成部位5との間でグラデーション変化の連続性が失われてしまったりするなどして、グラデーション変化が途中で途切れてしまうのを有効に回避することができる。
【0027】
ここで、このような肉厚減少部6は、被覆層形成部位4の全体にわたるように形成してもよい。すなわち、被覆層形成部位4の全体にわたって前記現象が発現するようにすることもできる。実際の製造の面からは、樹脂圧の説明において後述するように、被覆層3の全体にわたって被覆層3の厚さを変化させる方が製造しやすい。なお、この場合、被覆層3が一定厚さ以上の部分では、被覆層3の厚さが変化していても、色調の変化としては認識されない場合もある。
肉厚減少部6は、容器胴部の高さ方向の長さの1/4以上を占める範囲にわたって形成されているのが好ましく、これにより、途切れのないグラデーション変化を広範囲に形成することができ、樹脂製容器1の意匠性をより優れたものとすることができる
【0028】
なお、肉厚減少部6以外では、被覆層3の厚みはほぼ一定であっても、多少の厚み変化があってもよい。肉厚減少部6以外での被覆層3の厚み変化は、樹脂製容器1の外観に影響を及ぼさない。被覆層3の厚み変化が樹脂製容器1の外観に影響を及ぼす部分が、肉厚減少部6となる。
また、被覆層3の透明度が高い場合には、下層の容器本体2の見え方に変化がなく前記現象は発現し難い。しかし、前記現象を発現させることができれば、すなわち、被覆層3の厚み変化により、下層の容器本体2の見え方に変化を生じさせることができれば、被覆層3はある程度の透明性を備えていてもよい。
【0029】
ここで、シャンプー、コンディショナー用のポリプロピレン樹脂製多層ブローボトル(内容量600ml、高さ180mm、胴径70mm、胴部平均肉厚約1.0mm)を対象として、色調や、被覆層3の厚さ変化を異ならせた五種類の樹脂製容器1について、胴部2bの底部2c側からの高さ方向に沿って被覆層3の厚さを測定したときの被覆層3の肉厚分布の一例(測定例1〜5)を図17に示す。これらの樹脂製容器1はいずれも、周方向は一様な色調としつつ、胴部2bの底部2c側から上方(口部2a方向)に向かって、色調が濃い色から淡色にグラデーション変化している。
なお、図17に示すグラフの横軸は、胴部2bにおける底部2c側からの高さ位置を表し、縦軸は、被覆層3の周方向での平均厚さを表している。
【0030】
図17に示す測定例のうち、測定例1,2,3については、樹脂製容器1の上部で被覆層3が完全に消失し、容器本体2が表面に露出している。一方、測定例4,5では、被覆層3は上方に行くにしたがって薄くなっているが、完全には消失していない。
また、測定例1〜5の樹脂製容器1は、いずれも色調のグラデーション変化が得られている。そして、色調変化は途中で色調がプッツリと切れてしまうようなことが無く連続的であった。但し、測定例1,2,3の樹脂製容器1と、測定例4,5の樹脂製容器1を比較すると、測定例4,5の樹脂製容器1では上方にも被覆層3が残っており、純粋な容器本体2の色調が現れないので、被覆層3と容器本体2の色の組み合わせによっては必ずしも所望の色調変化が得られない場合がある。これに対して、測定例1,2,3の樹脂製容器1では、被覆層3の消失部位からその直前の高さ方向に沿って、少なくとも30mm、好ましくは50mm、より好ましくは90mmの範囲において、被覆層3の肉厚減少率が0.1〜0.5μm/mmとなるようにすることで、容器本体2の色調に連続する被覆層3の連続的で、かつ、滑らかなグラデーション変化を、実現することができる。
【0031】
なお、図17中、減少率0.1μm/mmを表す傾きの直線を鎖線で、減少率0.5μm/mmを表す傾きの直線を一点破線で、減少率1.5μm/mmを表す傾きの直線を二点破線で、それぞれ示すが、これからもわかるように、測定例1〜5では、被覆層3の厚さは、樹脂製容器1の高さ方向に沿って0.1〜1.5μm/mmの減少率で減少しており、測定例1,2,3では、0.1〜0.5μm/mmの減少率で被覆層3の厚さが変化している。
【0032】
さらに、色調変化の程度を色差の測定(Lab系)をして確認したところ、何れの樹脂製容器1も色の濃い部分(被覆層3の厚さの最も厚い部分)と最も色の淡い部分(図17の右端のデータプロット部分)とでは色差は△E=15以上あった。△E=15の部分は図17の高さ方向位置で言えば、測定例1〜5の樹脂製容器1では、胴部2bの底部2c側から約90mm高さの位置であった。したがって、図17と色差の測定結果から、測定例1,2,3の樹脂製容器1の肉厚減少率の変化は、高さ方向に沿って被覆層3の消失部位を基準として色差が△E=15に変化する範囲で0.1〜0.5μm/mmであることがわかる。
【0033】
なお、同じ色調変化でも測定例1,2,3と、測定例4.5とでは被覆層3の厚さがかなり異なる。例えば、△E=15の変化があった90mm高さ部位で、前者は50μm以下の被覆層3の厚さのであるのに対し、後者では80〜140μm程度である。この違いは、被覆層3に含まれる顔料の含有量の違いによるものである。顔料の含有量が多ければ、被覆層3の厚さを薄くすることが出来る。
【0034】
本実施形態では、具体的には、次のようにして色彩を変化させることができる。すなわち、図1に示す例において、容器本体2を、任意に選択された顔料等の着色材を添加した基材樹脂にて形成する。これによって、容器本体2には、任意の着色が施される。
一方、被覆層3は、基材樹脂に添加したものとは異なる着色材、例えば、同系色の着色材であるが、より濃い色調の着色材を添加した副材料にて形成する。すなわち、容器本体2には、同系色の相対的に淡い色調の着色を施し、被覆層3には、同系色の相対的に濃い色調の着色を施す。
【0035】
上述したように、被覆層3には、被覆層非形成部位5に向かうにしたがって、その厚みが薄くなる肉厚減少部6が形成されている。被覆層3が薄くなると、被覆層3を透かして容器本体2の表面が見えるようになってくる。このため、被覆層3が薄くなるにつれて容器本体2の色調が強く現れ、その一方で、被覆層3の濃い色調は徐々に弱められる。そして、被覆層3が消失すると、その部位、すなわち、被覆層非形成部位5では、容器本体2そのものの色彩が樹脂製容器1の表面で観察される。これにより、樹脂製容器1を、高さ方向に沿って下から上に向かって見ていくと、被覆層3の濃い色調の色彩が、だんだんと淡い色調に変化していき、最後には容器本体2の淡い色調の色彩となるような、色彩の変化(濃淡変化)が肉厚減少部6で観察される。
【0036】
本実施形態では、色調の異なる同系色の着色材を用いる以外にも、色合いの異なる着色材を用いて色彩を変化させることもできる。
例えば、容器本体2を形成する基材樹脂に青色系の着色材を添加し、被覆層3を形成する副材料には赤色系の着色材を添加する。これによって、樹脂製容器1を、高さ方向に沿って下から上に向かって見ていくと、被覆層3の赤色系の色彩が、だんだんと弱められていく一方、青色系の色彩が強く現れ、最後には容器本体2の青色系の色彩となるような、色彩の変化(色合いの変化)が肉厚減少部6で観察される。
なお、本実施形態にあっては、基材樹脂には着色剤を添加せずに容器本体2を形成するようにしてもよい。
【0037】
このような本実施形態における色彩の変化は、樹脂製容器1そのものの色彩の変化として観察される。このため、より一体感のある装飾デザインを樹脂製容器1に施すことができる。
なお、基材樹脂に添加する着色材と、副材料に添加する着色剤とを入れ換えれば、上述したのと同様の方向に沿って、逆の色彩の変化が観察されるようにすることもできる。また、特に図示しないが、容器本体2の高さ方向ほぼ中央を残して、その下側部分と上側部分の両方を被覆層3で覆うようにしてもよい。このとき、上下の被覆層3は、同色に着色されていても、異なる着色が施されていてもよい。同色に着色すれば、上述したのと同様の方向に沿って、上下方向で対称的な色彩の変化を表現できる。
【0038】
ここで、図1に示す例では、肉厚減少部6が形成される部位を含めて容器自体の厚みをほぼ一定に維持しているが、肉厚減少部6が形成される部位の厚みを変化させるようにしてもよい。例えば、容器本体2の厚みを一定にしておき、これに被覆層3を形成するようにしてもよい。被覆層3が、被覆層非形成部位5に向かって徐々に厚みを減じながら消失していくように形成される限り、上述したような色彩の変化を生じさせることが可能である。
【0039】
肉厚減少部6が形成される部位の厚みを変化させる場合には、例えば、樹脂製容器1の表面において、容器本体2と被覆層3とをほぼ面一に形成するなど、樹脂製容器1と、樹脂製容器1に施す装飾デザインとの一体感が損なわれない程度のものとするのが好ましい。
【0040】
より一体感のある装飾デザインを容易に実現する上では、色彩の変化を生じさせる肉厚減少部6が形成される部位において、容器自体の厚みがほぼ一定に維持されているのが好ましい。より好ましくは、被覆層形成部位4であるか、被覆層非形成部位5であるかにかかわらず、少なくとも容器本体2の胴部2bの厚みをほぼ一定にする。これにより、通常用いられている同種の容器と、容器形状そのものは何ら変わらないものとすることができる。
【0041】
また、図1に示す例では、作図上、その断面において、容器本体2と被覆層3との境界を明確に表している。しかし、実際には、両者の境界が明確に形成されない場合もある。すなわち、容器本体2を形成する基材樹脂と、被覆層3を形成する副材料とが一部において混ざり合った状態になっていることもある。
【0042】
特に、後述するようなブロー成形で樹脂製容器1を製造する場合、基材樹脂と副材料とは、ダイヘッド内において溶融状態で合流する。このため、両者の相溶性や、パリソン形成のための諸条件(例えば、合流時における基材樹脂の表面固化の程度)等を調整することで、パリソン形成の際に、基材樹脂と副材料との接触界面において、基材樹脂と副材料とを混融状態とすることができる。基材樹脂と副材料とが、その接触界面で互いに混ざり合った状態にあるパリソンにブロー成形を施せば、容器本体2と被覆層3との境界が明確に形成されないようにすることができる。
このように、基材樹脂と副材料との混融状態を適宜調整して、容器本体2と被覆層3との境界が明確に形成されないようにすれば、被覆層3の単調な厚み変化によって色彩の変化を表現する場合に比べ、色彩の変化をより変化に富んだものとすることができる。
【0043】
また、本実施形態では、被覆層3が消失する位置を微視的に観察したときに、被覆層3が消失する位置はランダムに現れ、連続的に(例えば、直線状に)現れないようにするのが好ましい。すなわち、被覆層3が消失する直前の部分を直線的に辿って観察すると、一部では被覆層3が残存しているのが確認できるが、一部では被覆層3が既に消失しているというような状態が混在しているのが好ましい。これにより、色彩のより連続的な諧調変化を表現することができる。
【0044】
さらに、被覆層3が消失する位置が連続的であると、被覆層3の消失する位置に沿って(例えば、図1に示す破線のように)色彩の不連続的な変化がすじ状に観察されることもある。すなわち、肉厚減少部6では連続的に色彩が変化してきたものの、その変化が被覆層非形成部位5における容器本体2の色彩に連続しないような場合には、その不連続性がすじ状に観察されてしまう。上述の態様は、このようなすじが発生しないようにする上でも効果的である。このような態様のものは、後述するブロー成形においてパリソンを形成する際や、その延伸工程の際に条件を適宜設定することによって実現できる。
【0045】
本実施形態の樹脂製容器1は、押出機から押し出されたパリソンをブロー成形することにより製造することができるが、押出機から押し出されたパリソンを直ちに成形する溶融ブロー成形によるのが、熱経済性の観点から好ましい。
樹脂製容器1を製造するのに用いる樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等、又はこれらにエチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアミド、環状オレフィン、ポリエステル、変性ポリエチレン等を組み合わせたもの等、この種の樹脂製容器に通常用いられている熱可塑性樹脂を用いることができるが、本実施形態において、容器本体2を形成する基材樹脂や、被覆層3を形成する副材料は、成形性を考慮して、MIが、0.1〜30g/10minであるのが好ましい。特に、副材料のMIを上記範囲とすることにより、被覆層3の厚み変化の制御が容易になる。また、着色材としても、有機系、無機系又は光輝性の各種顔料や、各種染料等を利用することができる。
【0046】
本実施形態では、基材樹脂と副材料とに異なる着色材を添加することで、基材樹脂と副材料との性状を異ならせているが、併せて樹脂の種類やグレードを、基材樹脂と副材料とで適宜異ならせることもできる。例えば、容器本体2と被覆層3とで、機械的強度等の諸物性を異ならせることもできる。
なお、本発明では、被覆層3を形成する副材料として、基材樹脂とは性状が異なる樹脂を用いるが、このような副材料としては、基材樹脂とは同じ種類の樹脂で着色状態のみが異なるもの、基材樹脂とは異なる種類の樹脂で着色状態も異なるもの、基材樹脂とは組成、特性、物性、添加剤などが異なるものなど、被覆層3を形成する目的に応じて何らかの性状が基材樹脂と異なっていればよい。
【0047】
次に、本実施形態の変形例を図面に基づいて説明する。図2は第一変形例の概略を示し、図2(b)は、図2(a)のA−A線断面図である。図3は第二変形例の概略を示し、樹脂製容器1の一部を切り欠いた一部切欠断面図である。図4は第三変形例の概略を示し、図4(b)は、図4(a)のB−B線断面図である。図5は第四変形例の概略を示し、樹脂製容器1の一部を切り欠いた一部切欠断面図である。図6は第五変形例の概略を示し、図1中鎖線で囲む部分に相当する部位の拡大断面図である。
【0048】
図1に示す例では、胴部2bの高さ方向ほぼ中央から下側の部分及び底部2cに被覆層3を形成するが、被覆層3は、このような態様で形成されるものに限らない。例えば、図2に示す第一変形例のように、矩形状の被覆層3を樹脂性容器1の側面(胴部2b)の任意の位置に形成してもよい。特に図示しないが、被覆層3の形状は、これ以外にも三角形状等その他の多角形状、円形状、星形状、ストライプ状等の任意の形状とすることができる。樹脂製容器1に形成する位置、大きさ、範囲も、必要に応じて適宜選択することができる。被覆層非形成部位5が存在すれば、容器本体2のほぼ全面が被覆層3で覆われていてもよい。すなわち、前述した減少率で被覆層3が徐々に薄くなりながら消失していく肉厚減少部6が存在する限り、本実施形態の範囲内である。
【0049】
さらに、被覆層3は、肉厚減少部6において単調に厚みを減じる態様のものに限らない。例えば、図3に示す第二変形例のように、一旦厚みを減じた後に厚みが増し、再度厚みを減じるようにするなど、厚み変化を繰り返すようにしてもよい。これによって、色彩が繰り返し変化していく様子を表現できる。
【0050】
このような被覆層3は、一種類のみならず、形状、大きさ、色彩等の異なるものを複数形成し、これらの組み合わせにより色彩模様を構成することもできる。
【0051】
また、被覆層3は、樹脂製容器1の表面側に現れるように形成する場合に限らない。図4に示す第三変形例のように、樹脂性容器1の内面側に形成することもできる。この場合、被覆層3の厚みが薄く、相対的に容器本体2の方が厚くなる部分では、被覆層3は樹脂製容器1の外観に影響を及ぼさない。一方、被覆層3が厚く、相対的に容器本体2の方が薄くなる部位では、容器本体2を透かして被覆層3が見えてくる。よって、このような態様で被覆層3を形成すると、被覆層3が厚くなるにしたがって、被覆層3の色彩等が樹脂製容器1の表面にうっすらと観察されるようになってくる。
これにより、微妙な色彩の変化を表現することができる。また、このように形成された被覆層3を、樹脂製容器1の表面側に形成した被覆層3と適宜組み合わせることで、より自由度の高い色彩模様を構成することができる。この場合、容器本体2はある程度の透明性を備えていてもよいのは、樹脂製容器1の表面側に形成される被覆層3と同様である。
【0052】
上述したようにして構成された色彩模様は、必要に応じて、金型内面の凹凸形状の転写や、エンボス加工等の適当な凹凸賦形処理と組み合わせたり、スクリーン印刷等による印刷と組み合わせたりすることもできる。
さらに、図5に示す第四変形例のように、樹脂製容器1には、その表面にクリアー層等の外層7を適宜形成することができる。また、その内面にもガスバリヤー層等の内層8を必要に応じて形成することができる。
【0053】
また、図6に示す第五変形例のように、樹脂製容器1には、容器本体2の外面側に色調調整層9を備えるとともに、この色調調整層9の外面側に被覆層3を形成するようにしてもよい。この場合にも、図示ずるように、樹脂製容器1の最内面には内層8を備えることができる。
色調調整層9は、被覆層形成部位4では被覆層3に覆われているが、被覆層非形成部位5において外部に露出し、被覆層3とともに、樹脂製容器1の外観に現れる。このため、色調調整層9により容器本体2と被覆層3との色調を調整することができる。
【0054】
例えば、樹脂製容器1にパール感を与えたい場合には、被覆層3と色調調整層9にパール顔料を含有させることができる。また、光沢感を与えたい場合には、被覆層3と色調調整層9とを光沢感のある材料により形成することができる。また、成形不良となった樹脂製容器1やバリなどを粉砕して再利用した再生樹脂をバージン樹脂に混入したものを、容器本体2を形成する基材樹脂に用いた場合に、色調調整層9に含有させる顔料や、用いる材料を適宜選択して、容器本体2の色調を調整することもできる。
【0055】
また、色調調整層9を加えてグラデーション変化を生じさせる場合には、肉厚減少部6が形成される部位において、被覆層3と色調調整層9のそれぞれの高さ方向に沿った肉厚の変化が互いに逆方向の関係にあるのが好ましい。すなわち、高さ方向に沿って被覆層3の肉厚が相対的に減少していくのに対して、色調調整層9の肉厚が相対的に厚くなっていき、逆に、被覆層3の肉厚が相対的に増加していくのに対しては、色調調整層9の肉厚が相対的に薄くなっていくようにするのが好ましい。このようにすることで、容器本体2、被覆層3,中間層のそれぞれの色彩の組み合わせによる、連続的なグラデーション変化を生じさせることができる。
また、色調調整層9を形成する樹脂には特に制限はないが、樹脂製容器1の表面に印刷を施す際の印刷適性を考慮すると、色調調整層9は、被覆層3と同じ樹脂から形成するのが好ましい。
【0056】
以上説明したように、本実施形態では、容器本体2とともに一体に形成された被覆層3の厚み変化だけで、樹脂製容器1の表面に色彩の変化を表現することができる。
これにより、容器そのものに高い自由度で色彩や着色模様による装飾デザインを施すことができる。そればかりか、得られる装飾デザインは、容器本体2と一体形成される被覆層3により実現されるものであるため、より容器との一体感のある装飾デザインとなる。これによって高い付加価値を容器に与え、消費者に対してより訴求力のある樹脂製容器が得られる。
【0057】
次に、このような樹脂製容器を製造するのに好適な、本発明に係る樹脂製容器の製造装置について図面を参照しながら説明する。
【0058】
図7は、本発明に係る樹脂製容器の製造装置の一実施形態を示す概略断面図である。主押出機10は、容器本体2を形成する基材樹脂を加熱溶融して押し出し、成形サイクルに応じてダイヘッド20へ連続的に供給する。ダイヘッド20は、図示しない制御部からのパリソンコントロールプログラムに基づく指示にしたがって、シェル21とコア22の間隔を必要に応じて調整する。これにより、シェル21とコア22の間に開口するスリット部28から所定の厚みでパリソンが押し出される。
【0059】
シェル21には、被覆層3を形成する副材料をダイヘッド20内に供給する吐出部23が設けられている。吐出部23は、パリソンが押し出される直前で、主押出機10から供給されてきた基材樹脂に、副材料が合流するように、ダイヘッド20の先端側においてシェル21とコア22の間に開口するスリット部28の近傍に、好ましくはダイヘッド20の先端から5mm以内の範囲に設ける。これにより、パリソンに副材料が付加されたか否かにかかわらず、ほぼ一定の厚みでパリソンを押し出すことができる。さらに、副材料が吐出してから、すぐにスリットから押し出されるので、副材料のパリソンの周方向での乱れが少なく、意匠的、機能的に優れた樹脂製容器1を製造することができる。
【0060】
吐出部23は、コア22の全周にわたって開口させ、パリソンの全周に副材料を付加するようにしてもよい。これにより、図1に示す樹脂製容器1のような態様で被覆層3を形成できる。また、コア22を囲む全周のうち、一部(一箇所又は複数個所)から副材料を付加するようにしてもよい。具体的には、コア22の全周にわたって開口する吐出部23を、適当な閉塞部材で部分的に塞ぐなどすればよい。これにより、例えば、矩形状、又はストライプ状の被覆層3を形成することができる。
【0061】
さらに、図10に示すように、パリソンが押し出される方向に沿って二段に、吐出部23a,23bを設けることもできる。この場合、吐出部23a,23bからは、それぞれ性状の異なる二種類の副材料が供給されるようにしてもよく、同じ性状の副材料を供給するようにしてもよい。このような態様とする場合、後述する副押出機30を、吐出部23a,23bのそれぞれに対応させて個別に設けることができる。
また、吐出部23aからは、被覆層3を形成する副材料を供給するとともに、吐出部23bからは、前述したようなクリアー層7等を形成する材料を供給するようにしてもよい。特に図示しないが、パリソンの表面にクリアー層7等を形成する場合、パリソンが押し出された直後又はその後に、パリソンの表面にクリアー層7等を形成する材料が供給されるようにダイヘッド20を構成することもできる。
なお、複数の吐出部23に対応させて複数の副押出機30を設けることにより、より多くの種類の副材料を供給することができる。
【0062】
このように、基材樹脂と副材料とが、ダイヘッド20内で合流するように吐出部23が設けられている限り、ダイヘッド20の具体的な構造は特に限定されない。上述した以外にも、図11に示すような回転式ダイヘッド20とすることができる。これは、スリット状の吐出部23(スリット24)が、コア22を中心に回転するように構成したものである。
具体的には次のように構成される。固定ダイ部21aと回転ダイ部21bとによりダイヘッド20を構成し、両者の間隙により吐出部23を形成する。図12(図11のC−C断面図)に示すように、吐出部23の一部を閉塞部材21cで部分的に塞ぐ。閉塞部材21cは、回転ダイ部21bに一体に設けられている。これにより、スリット24が形成される。スリット24は、複数でもよい。図示しない駆動源により回転する歯車25によって、回転ダイ部21bは、コア22を中心に回転する。これにともなって、スリット24がコア22を中心に回転することになる。このような回転式ダイヘッド20を用いれば、その回転を制御することで、被覆層3をより複雑な形状で形成することができる。
【0063】
また、ダイヘッド20に供給された副材料は、コア22の全周を囲むように形成された環状部26と、この環状部26から吐出部23に連続する概ね円錐状に形成された間隙からなる錘状部27を経て、吐出部23に至る(図7参照)。より詳しくは、副材料は、環状部26を満たしながら錘状部27に流れ込み、吐出部23へと供給される。
このため、吐出部23をコア22の全周にわたって開口させた場合、副材料をダイヘッド20に供給する後述の連通路44に近い、図7においてコア22の右側に開口する部分と、連通路44から遠い同左側に開口する部分とで、副材料が吐出するタイミングにずれが生じることがある。すなわち、前記右側に開口する部分に比べて、前記左側に開口する部分からの副材料の吐出が遅れる。
【0064】
このようなタイミングのずれは、副材料が供給される側から離れるにつれて吐出部23に相対的に近づくように、環状部26を水平面に対し、図7において左下がりに傾けることによって、解消することができるが、これに代えて、又はこれに加えて、次のような手段により解消することもできる。すなわち、環状部26の径を大きくするなどして、副材料が環状部26を満たした後、環状部26の全周にわたって均等に錘状部27へと流れはじめるようにしたり、環状部26及び/又は錘状部27の適当な部位を狭めて、副材料の流速を狭められた部位ごとに調整したりすることもできる。このようにして副材料の吐出タイミングのずれを解消することで、被覆層形成部位4と被覆層非形成部位5との境界を周方向に沿って水平に保つことが可能となるが、このような副材料の吐出タイミングのずれを意図的に生じさせることで、被覆層3の形状により変化をもたせることもできる。
【0065】
図13に概略を示すように、ダイヘッド20から押し出され、所定の位置に被覆層3を形成する副材料3aが付加されたパリソン1aは、一対の金型60a,60b間に送られる。パリソン1aが金型60a,60b間に送られると、金型60a,60bが図中矢印方向に移動して、型締め動作が行われる。型締め動作完了後、金型内に加圧空気を吹き込んでブロー成形を行う。これにより、容器本体2の一部を覆う被覆層3が、容器本体2と一体に形成された中空状の樹脂製容器1が得られる。
なお、主押出機10からの基材樹脂の供給は、成形サイクルに応じて適宜制御されるが、パリソン押し出し直後にブロー成形を行う場合、主押出機10からの基材樹脂の供給は、成形のタイミングと同期するように制御される。
【0066】
図示する例では、パリソン1aが押し出される下流側が、容器の底部側となるように金型60a,60bをセットしている。樹脂製容器1に施す装飾デザインによっては、金型60a,60bの天地を逆にしてもよい。すなわち、特に図示しないが、パリソン1aが押し出される上流側が、容器の底部側となるように金型60a,60bをセットしてもよい。
例えば、図13に示す例は、高さ方向ほぼ中央から下側に被覆層3が形成された樹脂製容器1(図1参照)を製造する場合を想定しているが、金型60a,60bの天地を逆転させれば、高さ方向ほぼ中央から上側に被覆層3が形成されるようにすることができる。金型60a,60bの天地を逆転させるのは、ロットごとに行うこともできるが、同一ロットで任意に金型60a,60bの天地を逆転させることができる回転機構を備えてもよい。
【0067】
ところで、前述した樹脂製容器1の例において、基材樹脂に添加する着色材と、副材料に添加する着色剤とを入れ換えれば、逆の色彩の変化が観察されるようにすることができると説明した。しかし、被覆層3の厚み変化の方向は変わらないため、全く逆の色彩変化が得られるわけではない。
例えば、シャンプー用容器とリンス用容器とを同じ方向に沿って見ていくと、シャンプー用容器とリンス用容器とで対称的な全く逆の色彩の変化が観察されるようにして、両者の区別をつけるような場合には十分でない。金型60a,60bの天地を逆転させれば、被覆層3の厚みが変化する方向自体が逆向きになる。これにより、対称的な全く逆の色彩の変化を表現することができ、上述したような場合にも十分対応可能となる。
【0068】
本発明に係る樹脂製容器の製造装置では、被覆層3を形成する副材料の供給が1回の成形サイクルごとに行われる。具体的には、次のようにして供給される。
なお、1回の成形サイクルとは、1つの樹脂製容器1が成形された後、次の樹脂製容器1が成形されるまでをいうものとする。
【0069】
図7において、ダイヘッド20内で基材樹脂に合流させる副材料は、副押出機30から供給される。副押出機30は、切換部41に接続されており、溶融した所定量の副材料を間欠的に押し出す。切換部41は、貯蔵部40の一部を構成し、切換バルブ45により副材料の貯蔵と供給の切換を行う。
副押出機30から押し出された副材料は、貯蔵部40にて一時的に貯蔵される。貯蔵部40は、二つのアキュームレータ42,43を備える。切換部41の切換バルブ45は、副押出機30とアキュームレータ42,43との間、及びアキュームレータ42,43と連通路44との間の接続、切断を交互に行う。連通路44は、貯蔵部40とダイヘッド20とを連結する。
貯蔵部40に蓄えられた副材料は、連通路44を通って、ダイヘッド20の吐出部23に供給される。この際、副材料の供給は、二つのアキュームレータ42,43から交互に間欠的に行われる。
【0070】
切換バルブ45とアキュームレータ42,43の動作も、図示しない制御部からのパリソンコントロールプログラムに基づく指示にしたがって行われる。
具体的には、副押出機30から溶融押し出しされた副材料を、切換バルブ45を介して一方のアキュームレータ42に充填する。そして、主押出機10から基材樹脂が押し出され、副材料を合流させたい部位がダイヘッド20の出口付近にさしかかると、制御部からの指令に基づいて切換バルブ45が切り換わる。これとともに、アキュームレータ42が作動する。次いで、アキュームレータ42に充填されていた副材料が、連通路44を介してダイヘッド20の吐出部23に供給される。これにより、ダイヘッド20内で副材料が基材樹脂に合流し、所定の部位に副材料が付加されたパリソンが押し出される。
【0071】
このとき、切換バルブ45は、一方のアキュームレータ42と、連通路44とを接続すると同時に、他方のアキュームレータ43と、副押出機30とを接続する(図7に示す状態)。これにより、副押出機30から押し出された副材料がアキュームレータ43に充填される。
このようにして、副押出機30から二つのアキュームレータ42,43に、交互に副材料が貯蔵され、かつ、アキュームレータ42,43から、交互にダイヘッド20の吐出部23に所定量の副材料が供給される。
ここで、切換バルブ45の切り換え動作は図示しないシリンダーで行い、二つのアキュームレータ42,43の動作は、それぞれのシリンダー42a,43a等で行う。
【0072】
このとき、アキュームレータ42,43の作動速度を調整することによって、副材料の供給速度、すなわち、パリソンへの副材料を付加する量を調整することができる。
これにより、被覆層3の厚みを変化させることができるが、被覆層3に、前述したような減少率で被覆層3の厚みを連続的に減少させる肉厚減少部6を形成する場合には、副材料の供給速度の微小な調整を要する。特に、被覆層3が厚みを減じながら消失していくような場合には、被覆層3を消失させる直前における副材料の供給速度の微小な調整が困難となり、吐出部23付近の副材料が基材樹脂の流れに引きずられて、副材料の供給量を減ずることができなくなってしまうことがある。このような場合には、被覆層3の厚みを意図した通りに減少させることができなかったり、被覆層3の厚みが減少せず、逆に厚くなってしまったりもする。また、吐出部23から吐出させるべき副材料が、吐出部23付近に滞留して、被覆層3の厚みが意図した以上に減少してしまうこともある。
【0073】
このため、被覆層3が消失する直前の部位で一定の濃さの範囲が続いてしまったり、被覆層3の色彩の変化が容器本体2の色彩に連続せずに、被覆層形成部位4と被覆層非形成部位5との間でグラデーション変化の連続性が失われてしまったりして、グラデーション変化が途中で途切れてしまうことがある。このような不具合は、生産効率の点から成形サイクルを速くしたときに、特に顕著となる。
このような不具合を解消するには、ダイヘッド20の吐出部23から副材料を吐出させて基材樹脂に合流させるに際して、任意のタイミングで、副押出機30からダイヘッド20へと供給される副材料の供給路、すなわち、連通路44内の樹脂圧を調整して、ダイヘッド20の吐出部23から副材料を引き戻すサックバック制御を行うのが有効である。
【0074】
このようなサックバック制御は、例えば、アキュームレータ42,43から副材料を供給した後に、それぞれのシリンダー42a,43aを逆に動作させることにより、連通路44内の副材料をアキュームレータ42,43内に引き戻すようにして、アキュームレータ42,43をサックバック機構として機能させるようにすればよい。
具体的には、図7に示す例において、アキュームレータ42から副材料を供給した後に、ピストン42bを図中矢印方向に動作させて、副材料をアキュームレータ42,43内に引き戻すようにすればよい。
【0075】
また、連通路44が長い場合などには、アキュームレータ42,43をサックバック機構として機能させても、副材料をダイヘッド20の吐出部23から引き戻すのにある程度の時間を要し、サックバック制御の効果が瞬時に得られ難いことが考えられる。このような場合には、図7に示すように、ダイヘッド20寄りの位置に、第二のサックバック機構60を設けることもできる。
この第二のサックバック機構60は、連通路44内の副材料を吸引して、連通路44内の樹脂圧を調整できるものであれば、その具体的な構成は制限されない。例えば、図示するように、シリンダー60aにより図中矢印方向にピストン60bを動作させて連通路44内の副材料を吸引するようにしたものとすることができる。
【0076】
第二のサックバック機構60は、ダイヘッド20の近くに設けるほど、サックバック制御が敏感に作用する。しかし、その分、連通路44内の樹脂圧の減少率が大きくなってしまい、これに伴って、ダイヘッド20の吐出部23から必要以上の副材料が引き戻されてしまうことがある。そして、このような場合には、被覆層3の肉厚の減少率が大きくなって、所望のグラデーション変化が得られなくなってしまうこともある。
このため、本実施形態では、サックバック制御は、アキュームレータ42,43と、第二のサックバック機構60とを併用して行うのが好ましい。すなわち、アキュームレータ42,43による鈍感なサックバック制御と、第二のサックバック機構60による敏感なサックバック制御とを組み合わせるのが好ましく、これにより、その適用範囲を格段に広げることができる。
【0077】
このようなサックバック制御は、得ようとするグラデーション変化などに応じて任意のタイミングで行うことができるが、連通路44内の樹脂圧が、副材料を基材樹脂に合流させる際の最高樹脂圧の70〜15%に減少するまでに、少なくとも1回以上のサックバック制御を行うのが好ましい。
樹脂圧が上記の範囲に減少する前にサックバック制御を行うと、必要以上の副材料を吐出部23から引き戻してしまう傾向がある。逆に、上記の範囲よりも樹脂圧が減少した後にサックバック制御を行ったのでは、サックバック制御の効果が得られ難くなってしまう。その結果、被覆層3の厚みを意図した通りに減少させることが困難となってしまい、連続的なグラデーション変化が得られ難くなってしまう傾向がある。
【0078】
また、副材料が吐出部23から吐出することにより、連通路44内の樹脂圧は徐々に減少し、その減少率も樹脂圧の減少に伴って小さくなっていく。サックバック制御は、このときの樹脂圧の単位時間当たりの減少率が、最大減少率の10%以下になるまでに行うのが好ましく、このタイミングを逃した場合にも、サックバック制御の効果が得られ難くなってしまう傾向がある。
【0079】
また、連通路44内の樹脂圧の減少率が必要以上に大きくなってしまうと、吐出部23から引き戻される副材料が多くなり過ぎてしまう傾向にある。そして、このような傾向は、第二のサックバック機構60によるサックバック制御のみを行ったときに顕著となる。これを防止するためには、サックバック制御後の連通路44内の樹脂圧の減少率は、サックバック制御前の樹脂圧の減少率の5倍以下であるのが好ましい。
したがって、本実施形態にあっては、アキュームレータ42,43と、第二のサックバック機構60とを併用してサックバック制御を行うとともに、併用する二つのサックバック機構のそれぞれが連通路44内の副材料を吸引する量(サックバック量)を適宜調整することにより、サックバック制御後の樹脂圧の変化率が大きくなり過ぎないようにするのが好ましい。
【0080】
具体的には、第二のサックバック機構60によるサックバック量を少なめに設定して、サックバック制御の初期の段階で、第二のサックバック機構60による敏感なサックバック制御を行い、次いで、アキュームレータ42,43によるサックバック制御を行うのが好ましい。これによって、連通路44内の樹脂圧の減少率が極端に大きくなってしまうのを避けながら、連通路44内の樹脂圧を任意に減少させることができ、副材料の供給速度の微小な調整が可能となる。
【0081】
ここで、図8に、図7に示す製造装置において、サックバック制御を行わなかった場合と、サックバック制御を行った場合とにおける連通路44内の樹脂圧の変化の一例を示す。
図8(a)のグラフは、サックバック制御を行わなかったときの連通路44内の樹脂圧の変化の一例を示している。なお、樹脂圧は、連通路44のダイ20近傍の部位で測定した。
図8(b)のグラフは、アキュームレータ42,43によるサックバック制御のみを行ったときのものであり、図8(c)のグラフは、第二のサックバック機構60によるサックバック制御のみを行ったときのものである。また、図8(d)のグラフは、アキュームレータ42,43によるサックバック制御と、第二のサックバック機構60によるサックバック制御とを併用したときのものである。
【0082】
なお、図示するグラフにおいて、縦軸は樹脂圧、横軸は時間であり、アキュームレータ42,43による副材料の供給開始時をta、アキュームレータ42,43によるサックバック制御開始時をtb、第二のサックバック機構60によるサックバック制御開始時をtcで示している。また、図8(a)〜(d)のグラフを重ねたものを図9に示す。
【0083】
サックバック制御を行わない場合には、連通路44内が常に陽圧状態になっているのに対し(図8(a)参照)、サックバック制御を行うことにより、副材料の供給が完了した後には、連通路44内の陽圧状態が解消される(図8(b)〜(d)参照)。
また、図8(b)のグラフと、図8(c)のグラフとを対比すると、第二のサックバック機構60によるサックバック制御を開始してからの樹脂圧の減少率が、アキュームレータ42,43によるサックバック制御のみを行ったときに比べて大きくなっているのがわかる。これに対して、図8(d)のグラフにおいて、第二のサックバック機構60によるサックバック量は、第二のサックバック機構のみによるサックバック制御を行ったときのサックバック量よりも少なくなるように設定しているが、第二のサックバック機構60によるサックバック制御に次いで、アキュームレータ42,43によるサックバック制御を行うことにより、その減少率が極端に大きくなることなく、連通路44内の樹脂圧を減少させることができるのがわかる。
【0084】
本実施形態の樹脂製容器の製造装置において、副押出機30としては、所定の操作にしたがって定量ずつ樹脂を押し出す押出機だけでなく、一定間隔で定量の樹脂を押し出す往復移動型のスクリューを備えた押出機を用いることもできる。この場合、副押出機30のスクリューの前進後退運動は、切換バルブ45の動作と、アキュームレータ42,43の動作と同期して制御される。さらに、副押出機30としては、樹脂を連続的に押し出す押出機を用いることもできる。
【0085】
上述した例では、一定量の副材料が間欠的にダイヘッド20に供給されるが、副材料の供給が1回の成形サイクルごとに行われる限り、副材料の供給は連続的であってもよい。例えば、図14に示すように、貯蔵部40をギヤポンプ50に置き換えて、副押出機30から押し出される副材料の流速を制御して、連続的な供給を可能とすることもできる。
【0086】
ギヤポンプ50は、ギヤケース51と二つの歯車52a,53aとを備える。歯車52a,53aは、図中矢印で示す方向にかみ合いながら回転する。流入部54において、二つの歯車52a,53aのかみ合いが離れると、副押出機30から供給された副材料が歯溝52b,53b内に入り込む。
歯溝52b,53b内に入り込んだ副材料は、ギヤケース51と歯溝52b,53bとの間に保持され、歯車52a,53aの回転により、その回転方向、すなわち、図中矢印で示す方向に沿って流出部55に運ばれる。流出部55において、歯車52a,53aの歯が再びかみ合うと、歯溝52b,53b内の副材料が押し出され、流出部55に順次供給される。
【0087】
このようなギヤポンプ50を用いれば、副押出機30からの副材料の押出量と、歯車52a,53aの回転速度を適宜調整することで、ダイヘッド20に供給する副材料の流速を制御しながら、連続的に供給することもできる。また、歯車52a,53aを逆転させることにより、サックバック制御も可能である。
本装置をこのように構成すれば、より高い自由度をもって被覆層3の厚みを変化させることができる。さらに、上述した回転式ダイヘッド20と組み合わせれば、被覆層3の形状をよりいっそう複雑なものとすることもできる。
【0088】
[参照実施形態]
次に、本発明の参照実施形態について説明する。図15は、本発明の参照実施形態に係る樹脂製容器の概略を示し、樹脂製容器1の一部を切り欠いた一部切欠断面図である。
【0089】
図示する樹脂製容器1は、第一実形態と同様にシャンプー用容器に適用される例を示す。樹脂製容器1には、容器本体2を覆う被覆層3が形成されているが、第一実施形態とは異なり、被覆層3が形成される位置は容器の全面である。
【0090】
被覆層3には、徐々に厚みを減じていく薄肉部分6aが設けられている。薄肉部分6aでは、被覆層3が徐々に薄くなるにしたがい、被覆層3を透かして容器本体2の表面が見えてくる。これによって、色彩の変化が発現されるのは、前述した第一実施形態の肉厚減少部6と同様である。すなわち、本実施形態の薄肉部分6aは、第一実施形態の肉厚減少部6と同様の機能を発揮する部分である。
ここで、薄肉部分6aは、前記現象が発現する部分であって、被覆層3の他の部分に比べて薄肉に形成された被覆層3の所定範囲をいうものとする。図中、薄肉部分6aと他の被覆層3との境界を破線で示す。
【0091】
本実施形態は、被覆層3が消失しないことでも第一実施形態と異なっている。薄肉部分6aでは、被覆層3が徐々に薄くなった後、そのままの厚みを維持するか、厚みが徐々に増加していく。厚みを増した後に再び薄くなるというように、厚み変化を繰り返してもよい。被覆層3が徐々に薄くなりながら消失し、被覆層非形成部位5が形成されるものは、たとえ被覆層3が容器本体2のほぼ全面を覆うものであっても、第一実施形態の範囲内であるのは前述した通りである。
【0092】
図15に示す例により、より具体的に説明する。樹脂製容器1には、容器本体1の全面を覆う被覆層3が形成されている。高さ方向ほぼ中央には、樹脂製容器1の周方向に沿って帯状の薄肉部分6aが形成されている。図中、断面に示すように、樹脂製容器1を高さ方向下から上に見ていくと、被覆層3は、徐々に厚みを減じた後に一定厚みを維持し、その後に厚みが徐々に増加している。これは、前述した第一実施形態の第三変形例において、容器本体2と被覆層3との位置関係を入れ換えたものにほぼ相当する。したがって、本実施形態では、前記第三変形例と同様の色彩の変化を、薄肉部分6aに表現することができる。
【0093】
また、前述の第一実施形態では、より一体感のある装飾デザインを容易に実現できることに加え、通常用いられている同種の容器と、容器形状そのものは何ら変わらないものとすることができることから、被覆層形成部位4であるか、被覆層非形成部位5であるかにかかわらず、容器自体の厚みをほぼ一定にするのが好ましいとしている。本実施形態においても、同様の理由から、薄肉部分6aであるか否かにかかわらず、少なくとも容器本体2の胴部2bの厚みをほぼ一定にするのが好ましい。
【0094】
本実施形態が、第一実施形態と大きく異なるのは、以上の点であり、それ以外はほぼ同様の構成を備えているため、他の構成についての詳細な説明は省略する。また、本実施形態の樹脂製容器1も、第一実施形態と同様に前述した製造装置により好適に製造することができる。
【0095】
以上説明した本実施形態においても、第一実施形態と同様に、容器本体2とともに一体に形成された被覆層3の厚み変化だけで、樹脂製容器1の表面に色彩の変化を表現することができる。これにより、容器そのものに高い自由度で色彩や着色模様による装飾デザインを施すことができる。そればかりか、得られる装飾デザインは、容器本体2と一体形成される被覆層3により実現されるものであるため、より容器との一体感のある装飾デザインとなる。これによって高い付加価値を容器に与え、消費者に対してより訴求力のある樹脂製容器が得られる。
【0096】
[第二実施形態]
以上説明してきた第一及び参照実施形態は、意匠的効果を発揮させることによって、樹脂製容器に高い付加価値を与えようとするものである。本発明に係る樹脂製容器は、機能的効果を発揮させることによっても高い付加価値を与えることができる。本発明に係る樹脂製容器の第二実施形態として、後者の例を以下に説明する。
【0097】
図16は、本発明の第二実施形態に係る樹脂製容器の概略を示し、樹脂製容器1の一部を切り欠いた一部切欠断面図である。図示する樹脂製容器1は、第一実施形態と同様にシャンプー用容器に適用される例を示す。樹脂製容器1には、容器本体2を部分的に覆う被覆層3が形成されているが、第一実施形態とは異なり、被覆層3が形成される位置は、図示するように容器の底部2c及びその近傍である。
【0098】
本実施形態において、容器本体2を形成する基材樹脂には、特別な処理を施さない。通常、この種の樹脂製容器を製造するのに用いる樹脂をそのまま用いる。一方、被覆層3を形成する副材料は、基材樹脂と同じ樹脂に抗菌剤を添加することで、基材樹脂と性状を異ならせている。本実施形態が、第一実施形態と大きく異なるのは、以上の点であり、それ以外はほぼ同様の構成を備えているため、他の構成についての詳細な説明は省略する。また、本実施形態の樹脂製容器1も、第一実施形態と同様に前述した製造装置により好適に製造することができる。
【0099】
本実施形態として例示するシャンプー用容器は、風呂場等の高湿環境下で長期にわたって使用されるものであり、カビが生えてしまうことも多い。カビが生えた容器をそのまま放置したのでは不衛生であり、見た目も不快である。このようなカビの発生を抑えるには、容器を形成する樹脂に抗菌剤を添加することが考えられる。しかし、抗菌剤は高価であり、容器のコスト増が避けられない。本実施形態によれば、カビの生えやすい容器の底部及びその近傍に、抗菌剤を含む被覆層3を部分的に形成する。これにより、コスト増を抑え、少量の抗菌剤でより効果的な抗菌作用や防かび作用を発揮する付加価値の高い樹脂製容器1を提供することができる。
【0100】
また、カビが生えやすいのは容器の底部及びその近傍であるが、容器側面でも全くカビが生えないわけではない。万が一、容器側面にカビが生えてしまったとしても、本実施形態の樹脂製容器1は、カビが生える部分と、抗菌剤の防かび作用によりカビの発生が抑えられている部分とが明瞭に観察されてしまうようなことがない。すなわち、抗菌剤が添加された被覆層3は、肉厚減少部6においてその厚みが徐々に薄くなっていくため、これにともなって防かび作用もだんだんと弱まっていく。このような被覆層3の厚み変化がないと、防かび作用を発揮する部分と、発揮しない部分との境界が明確となり、カビが生えているか否かで明瞭な境界が現れ、非常に不快なものとなってしまう不具合が考えられる。
本実施形態では、このような不具合を有効に回避することができる。さらに、本実施形態では、基材樹脂と副材料とは、抗菌剤が添加されているか否かでしか相違しない。このため、外観上、被覆層形成部位4と被覆層非形成部位5との区別がつかず、通常の容器と何ら変わるものではない。これにより、消費者に意外性を与えることもできる。
【0101】
このように、本実施形態によれば、上述した機能的効果によって高い付加価値を容器に与え、消費者に対してより訴求力のある樹脂製容器が得られる。
【0102】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。例えば、シャンプー用容器の例を挙げて説明したが、食料品、飲料品等の食品類、ボディーソープ等の他のサニタリー用品、化粧品類、医薬品類等の容器にも適用できる。また、シャンプー用容器等の比較的剛性のある容器に限らず、柔軟性を備えた容器にも適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
以上説明したように、本発明は、優れた意匠的効果又は機能的効果によって、高い付加価値を容器に与え、消費者に対してより訴求力のある樹脂製容器、その製造方法及び製造装置を提供するものである。
【符号の説明】
【0104】
1 樹脂製容器
1a パリソン
2 容器本体
2b 胴部
3 被覆層
4 被覆層形成部位
5 被覆層非形成部位
6 肉厚減少部
10 主押出機
20 ダイヘッド
23 吐出部
30 副押出機
42,43 アキュームレータ
44 連通路
60 第二のサックバック機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機から押し出されたパリソンをブロー成形することによって製造される樹脂製容器であって、
容器本体と、前記容器本体の全部又は一部を覆う被覆層とを少なくとも備え、
前記被覆層が、高さ方向に沿って、0.1〜1.5μm/mmの減少率で連続的に厚みを減じる肉厚減少部を有し、
前記被覆層が、高さ方向に沿って厚みを減じながら消失することを特徴とする樹脂製容器。
【請求項2】
前記肉厚減少部が、容器胴部の高さ方向の長さの1/4以上を占める範囲にわたって形成されている請求項1に記載の樹脂製容器。
【請求項3】
少なくとも前記被覆層の消失部位からその直前の高さ方向30mmの範囲における前記被覆層の肉厚減少率が、0.1〜0.5μm/mmである請求項1〜2のいずれか1項に記載の樹脂製容器。
【請求項4】
前記容器本体の外面側に色調調整層を備えるとともに、前記色調調整層の外面側に前記被覆層が形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂製容器。
【請求項5】
前記肉厚減少部が形成される部位において、前記被覆層と前記色調調整層のそれぞれの高さ方向に沿った肉厚の変化が互いに逆方向の関係にある請求項4に記載の樹脂製容器。
【請求項6】
前記被覆層と前記色調調整層とが、同じ樹脂から形成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂製容器。
【請求項7】
前記被覆層と前記色調調整層とが、パール顔料を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂製容器。
【請求項8】
容器最内面に内層を備えた請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂製容器。
【請求項9】
容器最外面に外層を備えた請求項1〜8のいずれか1項に記載の樹脂製容器。
【請求項10】
前記容器本体を形成する基材樹脂、及び前記被覆層を形成する副材料のMIが、0.1〜30g/10minである請求項1〜9のいずれか1項に記載の樹脂製容器。
【請求項11】
前記被覆層に、前記容器本体に施した着色と同系色の異なる色調の着色を施した請求項1〜10のいずれか1項に記載の樹脂製容器。
【請求項12】
前記被覆層に、前記容器本体に施した着色と異なる色合いの着色を施した請求項1〜10のいずれか1項に記載の樹脂製容器。
【請求項13】
前記被覆層に、抗菌剤を含有させた請求項1〜12のいずれか1項に記載の樹脂製容器。
【請求項14】
基材樹脂を供給する主押出機と、副材料を供給する副押出機とを備え、前記副押出機から供給される副材料を、ダイヘッド内に設けた吐出部から吐出させて前記主押出器から連続供給される基材樹脂に合流させた後に、前記ダイヘッドの先端側に開口するスリット部からパリソンを押し出し、前記パリソンをブロー成形することにより、前記基材樹脂により形成される容器本体の全部又は一部を覆う被覆層が前記副材料により形成された樹脂製容器を製造する装置であって、
前記副材料の供給路の前記副押出機と前記ダイヘッドとの間に、前記副材料を前記吐出部から引き戻す第一のサックバック機構が設けられているとともに、前記副材料の供給路の前記ダイヘッド寄りの位置に、第二のサックバック機構が設けられており、
前記ダイヘッドには、前記吐出部が前記スリット部の近傍に設けられていることを特徴とする樹脂製容器の製造装置。
【請求項15】
前記ダイヘッドには、前記副材料が供給される側から離れるにつれて前記吐出部に相対的に近づくように形成された環状部と、前記環状部から前記吐出部に連続する錘状部とからなる前記副材料の流路が設けられていることを特徴とする請求項14に記載の樹脂製容器の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−35915(P2012−35915A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213121(P2011−213121)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【分割の表示】特願2006−527853(P2006−527853)の分割
【原出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】