説明

樹脂製表皮の製造方法

【課題】 最表皮層形成用の第1パウダーと裏面側層形成用の第2パウダーとを混合して表皮製造型に投入し、この表皮製造型により最表皮層と裏面側層とを積層状に一括的に成形することができる、樹脂製表皮の製造方法を提供する。
【解決手段】 最表皮層形成用の第1パウダー14の溶融時粘度が裏面側層形成用の第2パウダー15の溶融時粘度よりも低く、且つ第1パウダー14の平均粒径が第2パウダー15の平均粒径よりも小さくなるように設定し、第1,第2パウダー14,15を混合して表皮製造型11に投入して加熱し、この表皮製造型11によりその型面12側に最表皮層5が位置するように最表皮層5と裏面側層6とを積層状に一括的に成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製の最表皮層と裏面側層とを積層した表皮を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のインストルメントパネル、ドアトリム、コンソールボックス等の樹脂製の内装部材の表皮を製造するために、表皮形成用のパウダーを表皮製造型に投入し、そのパウダーを表皮製造型の加熱された型面に接触溶融させて表皮を成形可能で、表皮表面にしぼ付き模様を形成するのに適した、所謂パウダースラッシュ成形方法(以下、PS成形方法という)が実用に供されている。このPS成形方法では、通常、容器に表皮形成用のパウダーを収容しておき、その容器と表皮製造型とを重ね合わせて一体的に回動、揺動させることにより、容器から表皮製造型内にパウダーを投入し、その所定量を表皮製造型の型面に一様に付着、溶融、冷却、硬化させて、表皮を成形する。
【0003】
ここで、特許文献1には、PS成形方法により、先ず、表皮製造型に最表皮層形成用のパウダーを投入し、その表皮製造型の型面で最表皮層を成形すると共に、続いて、同表皮製造型に裏面側層形成用のパウダーを投入し、前記最表皮層の裏面に裏面側層を密着状に成形して、最表皮層と裏面側層とを積層した表皮を製造する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2001−219433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最表皮層と裏面側層とを積層した表皮を製造する場合、特許文献1のように、PS成形方法により、共通の表皮成形型を用いて、最表皮層と裏面側層を成形することが可能であるが、最表皮層形成用のパウダーを表皮成形型に投入し、その型面に付着、溶融、冷却、硬化させる工程(表皮成形型と容器の重ね合わせ、回動、揺動等)と、この工程とは別に裏面側層形成用のパウダーを表皮成形型に投入し、最表皮層の裏面に付着、溶融、冷却、硬化させる前記同等の工程が必要になるため、表皮の製造工程が増え製造コストも大きくなり、また、最表皮層成形用の容器を有する装置と、この装置とは別に裏面側層成形用の容器を有する装置が必要になるため、設備コストが高価になる。
【0005】
本発明の目的は、最表皮層形成用の第1パウダーと裏面側層形成用の第2パウダーとを混合して表皮製造型に投入し、この表皮製造型により最表皮層と裏面側層とを積層状に一括的に成形することができる、樹脂製表皮の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の樹脂製表皮の製造方法は、樹脂製の最表皮層と裏面側層とを積層した表皮を製造する方法おいて、最表皮層形成用の第1パウダーの溶融時粘度が裏面側層形成用の第2パウダーの溶融時粘度よりも低く、且つ第1パウダーの平均粒径が第2パウダーの平均粒径よりも小さくなるように設定し、前記第1,第2パウダーを混合して表皮製造型に投入して加熱し、この表皮製造型によりその型面側に最表皮層が位置するように最表皮層と裏面側層とを積層状に一括的に成形することを特徴とする。
【0007】
第1パウダーの溶融時粘度が第2パウダーの溶融時粘度よりも低いので、第1パウダーの溶融樹脂は第2パウダーの溶融樹脂よりも流動し易い。また、第1パウダーの平均粒径が第2パウダーの平均粒径よりも小さいので、第1パウダーは第2パウダーよりも流動し易く、更に、第1パウダーは第2パウダーよりも溶融し易く、これにより、第2パウダーよりも早く溶融した第1パウダーは非常に流動し易くなる。従って、第1,第2パウダーを混合して表皮製造型に投入して加熱すると、第1パウダー、第1パウダーの溶融樹脂が表皮成形型の型面に一様に付着し、その裏面に、第2パウダー、第2パウダーの溶融樹脂が一様に付着し、夫々が溶融後、冷却、硬化し、表皮製造型の型面側に最表皮層が位置するように最表皮層と裏面側層とが積層状に一括的に成形される。
【0008】
第1パウダーの溶融時粘度が第2パウダーの溶融時粘度よりも低くなるように設定する場合、第1,第2パウダーの溶融時粘度の差をMFR;20g/10min 以上に設定すること(請求項2)、この場合、前記第1パウダーの溶融時粘度をMFR;75g/10min 以上に設定すること(請求項3)が好ましい。尚、MFR(メトロフローレート)は、樹脂の溶融粘度の指標となるものであり、JISK7210(ASTMD1238)に準ずる円筒押出流10分間当たりのポリマー吐出量のグラム数である。本出願におけるMFRは、試験温度が230℃、試験荷重が21.19Nの条件下で計測されるものである。
【0009】
また、第1パウダーの平均粒径が第2パウダーの平均粒径よりも小さくなるように設定する場合、第1,第2パウダーの平均粒径の差を170μm以上に設定すること(請求項4)、この場合、第1パウダーの平均粒径を230μm以上に設定すること(請求項5)が好ましい。
【0010】
また、第1,第2パウダーは夫々ゴム成分を含有したものであり、第1パウダーのゴム成分含有率を第1パウダーの全体量の40wt%〜60wt%に設定し、第2パウダーのゴム成分含有率を第2パウダーの全体量の60wt%以上に設定すること(請求項6)、第1,第2パウダーの混合量に対する第1パウダーの配合量を60wt%〜80wt%に設定すること(請求項7)、第2パウダーは発泡剤を含有したものであり、前記表皮製造型による樹脂加熱時間(両パウダーが表皮製造型に接触してから最表皮層及び裏面側層の冷却工程に入るまでの時間)を10秒〜30秒に設定すること(請求項8)が好ましい。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の樹脂製表皮の製造方法によれば、最表皮層形成用の第1パウダーの溶融時粘度が裏面側層形成用の第2パウダーの溶融時粘度よりも低く、且つ第1パウダーの平均粒径が第2パウダーの平均粒径よりも小さくなるように設定したので、第1,第2パウダーを混合して表皮製造型に投入して加熱すると、先ず、第1パウダー、第1パウダーの溶融樹脂が表皮製造型の型面に一様に付着し、その裏面に、第2パウダー、第2パウダーの溶融樹脂が一様に付着し、夫々が溶融後、冷却、硬化して、この表皮製造型によりその型面側に最表皮層が位置するように最表皮層と裏面側層とを積層状に一括的に成形可能になる。最表皮層と裏面側層とを積層状に一括的に成形可能であるので、表皮の製造工程、製造コストを低減でき、また、共通の表皮製造型やパウダー容器を有する装置により、前記表皮を成形することができるので、設備コストを低減することができる。
【0012】
請求項2の樹脂製表皮の製造方法によれば、第1,第2パウダーの溶融時粘度の差をMFR;20g/10min 以上に設定したので、最表皮層と裏面側層とを積層状に確実に成形することと、転写性の良い最表皮層を成形すること、つまり表皮製造型の型面の模様を最表皮層に綺麗に転写することが可能になる。
【0013】
請求項3の樹脂製表皮の製造方法によれば、第1パウダーの溶融時粘度をMFR;75g/10min 以上に設定したので、転写性の良い最表皮層を確実に成形可能になる。
【0014】
請求項4の樹脂製表皮の製造方法によれば、第1,第2パウダーの平均粒径の差を170μm以上に設定したので、最表皮層と裏面側層とを積層状に確実に成形することと、転写性の良い最表皮層を成形すること、つまり表皮製造型の型面の模様を最表皮層に綺麗に転写することが可能になる。
【0015】
請求項5の樹脂製表皮の製造方法によれば、第1パウダーの平均粒径を230μm以上に設定したので、転写性の良い最表皮層を確実に成形可能になる。
【0016】
請求項6の樹脂製表皮によれば、第1,第2パウダーは夫々ゴム成分を含有したものであり、第1パウダーのゴム成分含有率を40wt%〜60wt%に設定し、第2パウダーのゴム成分含有率を60wt%以上に設定したので、そのゴム成分含有率を夫々調整して第1,第2パウダーの溶融時粘度を夫々簡単に調整できて、最表皮層と裏面側層とを積層状に一括的に確実に成形することが可能になる。
【0017】
請求項7の樹脂製表皮の製造方法によれば、第1,第2パウダーの混合量に対する第1パウダーの配合量を60%〜80%に設定したので、最表皮層と裏面側層とを積層状に綺麗に成形することと、最表皮層と裏面側層の高い密着性(接着強度)を確保できる。
【0018】
請求項8の樹脂製表皮の製造方法によれば、第2パウダーは発泡剤を含有したものであり、表皮製造型による樹脂加熱時間を10秒〜30秒に設定したので、転写性の良い最表皮層を成形すること、つまり表皮製造型の型面の模様を最表皮層に綺麗に転写することと、裏面側層の溶融状態を良好にすること、つまり裏面側層を破泡させずに綺麗に成形することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の樹脂製表皮の製造方法は、樹脂製の最表皮層と裏面側層とを積層した表皮を製造する方法であり、特に、最表皮層形成用の第1パウダーの溶融時粘度が裏面側層形成用の第2パウダーの溶融時粘度よりも低く、且つ第1パウダーの平均粒径が第2パウダーの平均粒径よりも小さくなるように設定し第1,第2パウダーを混合して表皮製造型に投入して加熱し、この表皮製造型によりその型面側に最表皮層が位置するように最表皮層と裏面側層とを積層状に一括的に成形するものである。
【実施例】
【0020】
図1は、自動車のインストルメントパネル、ドアトリム、コンソールボックス等の樹脂製の内装部材1の断面図を示している。この内装部材1は、基材2、接着層3、接着層3を介して基材2に接着された表皮4で構成されている。表皮4は、最表皮層5と裏面側層6とを積層したものであり、最表皮層5の表面には所定のしぼ付き模様(図示略)が形成されている。この表皮4を製造するのに、本発明の樹脂製表皮の製造方法を適用する。
【0021】
この内装部材1において、基材2はPP(ボリプロピレン)系の合成樹脂材で構成され、接着層3はPP系の接着剤である。表皮4の最表皮層5はゴム成分を含有したPP系の合成樹脂材で構成され、表皮4の裏面側層6はゴム成分を含有したPP系の発泡合成樹脂材で構成されている。このように、内装部材1は全てPP系の材料で構成されているため、内装部材1のマテリアルリサイクルとして、内装部材1を粉砕し、射出成形等により、種々の基材等の部品を製造することが可能になる。
【0022】
図2〜図4に示すように、表皮4を製造する表皮製造装置10は、内面に型面12が形成された表皮製造型11と、表皮製造型11を加熱するヒータ(図示略)と、表皮製造型11を冷却する冷却機(図示略)と、表皮4を形成する為の第1,第2パウダー14,15からなる混合パウダーを収容すると共に表皮製造型11と重ね合わさって内部に密閉空間16を形成可能な容器13と、表皮製造型11と容器13との重ね合わせ、回動、揺動、分離等を可能にする駆動機構(図示略)等を備えている。
【0023】
この表皮製造装置10を用いて行う樹脂製表皮の製造方法について説明する。
先ず、容器13に、最表皮層形成用のPP系合成樹脂とゴム成分を含む第1パウダー14と、裏面側層形成用のPP系合成樹脂とゴム成分と発泡剤を含む第2パウダー15とを混合して収容しておく。ここで、第1パウダー14の溶融時粘度が第2パウダー15の溶融時粘度よりも低く、第1パウダー14の平均粒径が第2パウダー15の平均粒径よりも小さくなるように設定してある。第1,第2パウダー14,15の夫々の溶融時粘度は、ゴム含有率によって定まるものである。
【0024】
さて、図2に示すように、容器13に第1,第2パウダー14,15を収容した状態で、また、表皮製造型11を第1,第2パウダー14,15の溶融温度以上(例えば、265℃)にヒータで加熱した状態で、上下に分離している表皮製造型11と容器13が重ね合わされ、図3に示すように、表皮製造型11と容器13が一体的に回動、揺動され、表皮成形型11が容器13の下側に位置すると、容器13から表皮製造型11内に第1,第2パウダー14,15が投入される。
【0025】
ここで、第1パウダー14の溶融時粘度が第2パウダー15の溶融時粘度よりも低いので、第1パウダー14の溶融樹脂は第2パウダー15の溶融樹脂よりも流動し易い。また、第1パウダー14の平均粒径が第2パウダー15の平均粒径よりも小さいので、第1パウダー14は第2パウダー15よりも流動し易く、更に、第1パウダー14は第2パウダー15よりも溶融し易く、これにより、第2パウダー15よりも早く溶融した第1パウダー14は非常に流動し易くなる。
【0026】
従って、第1,第2パウダー14,15を混合して加熱された表皮製造型11に投入すると、先ず、第1,第2パウダー14,15がその裏面に一様に付着する。そして、加熱された表皮製造型11の熱を受けて、付着した第1,第2パウダー14,15が溶融し、第1パウダー14の溶融樹脂が表皮成形型11の型面12側に、第2パウダー15の溶融樹脂がその裏面側に一様に付着する。
【0027】
この後、表皮成形型11と容器13を元の姿勢に戻すと、未使用の第1,第2パウダー14,15が表皮製造型11から落下して容器13に再収容される。その後、図4に示すように、表皮製造型11と容器13とが分離される。そして、この後、表皮製造型11の前記両溶融樹脂が付着している型面12側を再度ヒータで加熱(例えば、200℃)し、発泡剤を含有した第2パウダー15の溶融樹脂の発泡を、図5に示す状態から図6に示す状態に促進させる。
【0028】
前記溶融樹脂の発泡が完了した後、冷却機で表紙製造型11を冷却し、表皮製造型11の型面12に付着している第1パウダー14及び第2パウダー15の溶融樹脂を冷却硬化して、図7に示すように、表皮製造型11の型面12側に位置する最表皮層5と、これの裏面側に位置する裏面側層6とが積層状の表皮4が一括的に形成される。そして、表皮製造型11から表皮4を剥ぎ取り表皮4が得られる。尚、前記発泡の倍率が低いような場合、前記ヒータでの後加熱を省略して、表皮製造型11からの熱でパウダーの溶融と発泡剤の発泡とを行わせるようにしてもよい。
【0029】
図8−1に示すように、基材2は射出成形装置20により製造され、その射出成形装置20は、射出成形型21,22と、PP系の合成樹脂の原料ペレット投入するホッパ24と、ホッパ24に投入された原料ペレットを溶融し、その溶融樹脂を型締めされた射出成形型21,22のキャビティ23に注入するスクリューコンベア25を備えている。
【0030】
図8−2は、製造された基材2と表皮4とを接着して内装部材1を製造する装置30を示しており、この装置30は、第1,第2金型31,32を備えている。この装置30では、第1,第2金型31,32を開いた状態で、第1金型31の型面に表皮4をセットすると共に、第2金型32の型面に基材2をセットし、接着剤供給器33により接着剤34を表皮4の裏面(図では上面)に略一様に付着させた状態で、第1,第2金型31,32を閉じると、基材2と表皮4の間に接着層3が形成され、その接着層3により基材2と表皮4が接着され、内装部材1が形成される。
【0031】
尚、前記のように、第1,第2金型31,32を閉じる前に接着剤34を供給する方法の代わりに、図9に示すように、基材2、表皮4をセットした第1,第2金型31,32を閉じた状態にして、基材2と表皮4の間に接着剤34を充填して接着層3を形成するようにしてもよい。この場合、第2金型32と基材2に予め小孔32a,2aが形成されており、その小孔32a,2aに接着剤ノズル35を貫通させ、その接着剤ノズル35から基材2と表皮4の間に接着剤34を注入する。
【0032】
ここで、前記樹脂製表皮の製造方法により、より確実に綺麗な表皮4を製造する適切な条件とするために、本願発明者が実施した表皮成形試験について説明する。
【0033】
先ず、図10に示すように、TPO(熱可塑性オレフィン樹脂)第1パウダー14と第2パウダー15に、夫々、粘度(MFR;g/10min )、平均粒径(μm)、ゴム成分含有率(wt%)を異ならせた3種類のパウダーサンプル(第1パウダー(1) 〜(3) 、第2パウダー(1) 〜(3) )を準備し、第1パウダー14と第2パウダー15の配合比を60:40にすると共に、表皮製造型11による加熱時間を20秒にして、第1パウダー14と第2パウダー15のパウダーサンプルの総組み合わせ;9組について、夫々、表皮4を成形してみた。
【0034】
図11がその結果を示す表であり、成形された各表皮4について、ピンホールが発生しない(裏面側層6が最表皮層5側に出ない)場合には「○」とし、発生した(裏面側層6が最表皮層5側に出た)場合には「×」とし、また、型転写性が良好(型面12から最表皮層5への模様の転写率;80%以上)の場合には「○」とし、良好でない場合には「×」とし、これら2項目の結果が何れも「○」の場合に、「判定」の欄で「○」とした。
【0035】
その結果、第1,第2パウダー(1)(1)の組み合わせ(溶融時の粘度差がMFR;20g/10min 、平均粒径の差が250μm)、第1,第2パウダー(1)(2)の組み合わせ(溶融時の粘度差がMFR;40g/10min 、平均粒径の差が200μm)、第1,第2パウダー(2)(2)の組み合わせ(溶融時の粘度差がMFR;20g/10min 、平均粒径の差が220μm)、第1,第2パウダー(2)(3)の組み合わせ(溶融時の粘度差がMFR;40g/10min 、平均粒径の差が170μm)、の4つの組み合わせについて望ましいということが判明した。
【0036】
つまり、第1,第2パウダー14,15の溶融時粘度の差をMFR;20g/10min 以上に設定し、第1パウダー14の溶融時粘度をMFR;75g/10min 以上に設定することが望ましい。また、第1,第2パウダー14,15の平均粒径の差を170μm以上に設定し、第1パウダー14の平均粒径をMFR;230μm以上に設定することが望ましい。また、第1パウダー14のゴム成分含有率を第1パウダー14の全体量に対して40wt%〜60wt%に設定し、第2パウダー15のゴム成分含有率を第2パウダー15の全体量の60wt%以上に設定することが望ましい。
【0037】
このように条件を設定することにより、最表皮層5と裏面側層6とを積層状に確実に成形することと、転写性の良い最表皮層5を確実に成形すること、つまり表皮製造型11の型面12の模様を最表皮層5に綺麗に転写することが可能になる。ここで、第1,第2パウダー14,15は夫々ゴム成分を含有したものであり、そのゴム成分含有率を調整して第1,第2パウダー14,15の溶融時粘度を夫々簡単に調整することができる。
【0038】
次に、第1,第2パウダー14,15の混合量に対する第1パウダー14の配合量について検討した。尚、前記の表皮4の成形(図10)において、第1パウダー14の配合量は60wt%である。そこで、前記望ましい第1,第2パウダー14,15の4組の組み合わせ;(1)(1)、(1)(2)、(2)(2)、(2)(3)のうち、溶融時粘度の差が最小(MFR;20g/10min )で平均粒径の差が最大(250μm)となる組み合わせ(1)(1)と、溶融時粘度の差が最大(MFR;40g/10min )で平均粒径の差が最小(170μm)となる組み合わせ(2)(3)について、夫々、第1パウダー14の配合量を、100wt%、80wt%、60wt%、40wt%として、表皮4を成形してみた。
【0039】
図12がその結果を示す表であり、成形された各表皮4について、外観が良好である(発泡剤が最表皮層5の表面に出ない)場合には「○」とし、良好でない(発泡剤が最表皮層5の表面に出た)場合には「×」とし、また、最表皮層5と裏面側層6の密着性が良好(接着強度が10N/25cm超)である場合には「○」とし、良好でない場合には「×」とし、これら2項目の結果が何れも「○」の場合に、「判定」の欄で「○」とした。
【0040】
その結果、第1,第2パウダー(1)(1)の組み合わせの場合には、第1パウダー14の配合量を、80wt%、60wt%、50wt%に設定することが望ましく、また、第1,第2パウダー(2)(3)の組み合わせの場合には、第1パウダー14の配合量を、80wt%、60wt%に設定することが望ましいということが判明した。つまり、第1,第2パウダー14,15の混合量に対する第1パウダー14の配合量を60wt%〜80wt%に設定することが望ましく、これにより、最表皮層5と裏面側層6とを積層状に綺麗に成形することと、最表皮層5と裏面側層6の高い密着性(接着強度)を確保できる。
【0041】
次に、表皮製造型11による樹脂加熱時間について検討した。尚、前記の表皮4の成形(図10)において、樹脂加熱時間は20秒である。そこで、上記同様、前記望ましい第1,第2パウダー14,15の4組の組み合わせ;(1)(1)、(1)(2)、(2)(2)、(2)(3)のうち、溶融時粘度の差が最小で平均粒径の差が最大となる組み合わせ(1)(1)と、溶融時粘度の差が最大で平均粒径の差が最小となる組み合わせ(2)(3)について、夫々、樹脂加熱時間を、5秒、10秒、30秒、40秒、60秒として、表皮4を成形してみた。
【0042】
図13がその結果を示す表であり、成形された各表皮4について、型転写性が良好(最表皮層5への模様の転写率;80%以上)の場合には「○」とし、良好でない場合には「×」とし、また、裏面側層6の溶融状態が良好である場合には「○」とし、良好でない(裏面側層6が破泡した)場合には「×」とし、これら2項目の結果が何れも「○」の場合に、「判定」の欄で「○」とした。
【0043】
その結果、第1,第2パウダー(1)(1)の組み合わせの場合と、第1,第2パウダー(2)(3)の組み合わせの場合と、共に、樹脂加熱時間を10秒、30秒に設定することが望ましいということが判明した。つまり、表皮製造型11による樹脂加熱時間を10秒〜30秒に設定することが望ましく、これにより、転写性の良い最表皮層5を成形すること、つまり表皮製造型11の型面12の模様を最表皮層5に綺麗に転写することと、裏面側層6の溶融状態を良好にすること、つまり裏面側層6を破泡させずに綺麗に成形することが可能になる。
【0044】
こうした試験の結果得られた望ましい設定とすることにより、第1,第2パウダー14,15を混合して表皮製造型11に投入して加熱すると、表皮製造型11の型面12側に最表皮層5が位置するように最表皮層5と裏面側層6とを積層状に一括的に成形して、表皮4を簡単に確実に綺麗に製造することができ、これにより、表皮4の製造工程、製造コストを低減でき、また、共通の表皮製造型11や容器13を有する表皮製造装置10で前記表皮4を成形することができるため、設備コストを低減することが可能になる。
【0045】
尚、前記開示事項以外に、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を付加して実施可能であり、本発明は種々のパウダースラッシュ成形方法に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施例に係る表皮の断面図である。
【図2】表皮製造工程(型閉じ前の状態)を示す図である。
【図3】表皮製造工程(型閉じ揺動の状態)を示す図である。
【図4】表皮製造工程(型開き後の状態)を示す図である。
【図5】表皮(発泡前)の断面図である。
【図6】表皮(発泡後)の断面図である。
【図7】表皮製造型と表皮の断面図である。
【図8−1】基材製造工程を示す図である。
【図8−2】内装部材組立工程を示す図である。
【図9】内装部材組立工程の変形例を示す図である。
【図10】表皮成形試験の結果を示す図表である。
【図11】表皮成形試験の結果を示す図表である。
【図12】表皮成形試験の結果を示す図表である。
【図13】表皮成形試験の結果を示す図表である。
【符号の説明】
【0047】
4 表皮
5 最表皮層
6 裏面側層
11 表皮製造型
12 型面
14 第1パウダー
15 第2パウダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の最表皮層と裏面側層とを積層した表皮を製造する方法おいて、
最表皮層形成用の第1パウダーの溶融時粘度が裏面側層形成用の第2パウダーの溶融時粘度よりも低く、且つ第1パウダーの平均粒径が第2パウダーの平均粒径よりも小さくなるように設定し、
前記第1,第2パウダーを混合して表皮製造型に投入して加熱し、この表皮製造型によりその型面側に最表皮層が位置するように最表皮層と裏面側層とを積層状に一括的に成形することを特徴とする樹脂製表皮の製造方法。
【請求項2】
前記第1,第2パウダーの溶融時粘度の差をMFR;20g/10min 以上に設定したことを特徴とする請求項1に記載の樹脂製表皮の製造方法。
【請求項3】
前記第1パウダーの溶融時粘度をMFR;75g/10min 以上に設定したことを特徴とする請求項2に記載の樹脂製表皮の製造方法。
【請求項4】
前記第1,第2パウダーの平均粒径の差を170μm以上に設定したことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の樹脂製表皮の製造方法。
【請求項5】
前記第1パウダーの平均粒径を230μm以上に設定したことを特徴とする請求項4に記載の樹脂製表皮の製造方法。
【請求項6】
前記第1,第2パウダーは夫々ゴム成分を含有したものであり、第1パウダーのゴム成分含有率を第1パウダーの全体量に対して40wt%〜60wt%に設定し、第2パウダーのゴム成分含有率を第2パウダーの全体量に対して60wt%以上に設定したことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の樹脂製表皮の製造方法。
【請求項7】
前記第1,第2パウダーの混合量に対する第1パウダーの配合量を60wt%〜80wt%に設定したことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の樹脂製表皮の製造方法。
【請求項8】
前記第2パウダーは発泡剤を含有したものであり、前記表皮製造型による樹脂加熱時間を10秒〜30秒に設定したことを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の樹脂製表皮の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−192790(P2006−192790A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−8174(P2005−8174)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【出願人】(390026538)西川化成株式会社 (492)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】