説明

機器の盗難防止装置

【課題】移動体などの機器を起動させることなく、電子キーの複製を行うことができると共に、機器を盗難から防止するようにした機器の盗難防止装置を提供する。
【解決手段】移動体などの機器(小型電動車)10の盗難防止装置26において、操作者に携行自在な、認証用のデータを記憶する電子キー30と、小型電動車10に設けられ、電子キーから認証用のデータが出力されるとき、予め記憶された照合用のデータを用いて電子キーが正規のキーか否か認証する認証ECU34と、小型電動車10から独立して設けられ、電子キーを複製する電子キー複製装置42とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は機器の盗難防止装置に関し、より詳しくは移動体または作業機からなる機器の盗難防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体などの機器(具体的には、小型電動車や四輪自動車など)を複数の操作者(ユーザ)で共用するシステムにおいて、その機器を盗難から防止する装置は種々提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1記載の技術にあっては、操作者固有の認証用のデータ(ID)を記憶する電子キーが、機器に設けられて照合用のデータを記憶する認証装置(読み取り機構)に挿入され、電子キーから出力される認証用のデータと照合用のデータが一致しない場合、機器の利用を許可しないように構成される。
【特許文献1】特開2001−43431号公報(段落0064〜0069、図7など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記の如く複数の操作者で機器を共用する場合、利便性を考慮すると、操作者がそれぞれ電子キーを所持することが望ましく、そのためには電子キーを操作者の数だけ複製(コピー)する必要がある。このとき、機器に設けられた認証装置を用いて電子キーを複製する、具体的には複製される電子キーに対応する照合用のデータを認証装置に記憶させるようにすることが考えられる。しかしながら、その場合、電子キーの複製を行う度に機器を起動させなければならず、作業が煩雑になるという不都合が生じる。
【0004】
従って、この発明の目的は上記した課題を解決し、移動体または作業機からなる機器を起動させることなく、電子キーの複製を行うことができると共に、機器を盗難から防止するようにした機器の盗難防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するために、請求項1にあっては、移動体または作業機からなる機器の盗難防止装置において、操作者に携行自在な、認証用のデータを記憶する電子キーと、前記機器に設けられ、前記電子キーから前記認証用のデータが出力されるとき、予め記憶された照合用のデータを用いて前記電子キーが正規のキーか否か認証する認証手段と、前記機器から独立して設けられ、前記電子キーを複製する電子キー複製手段とを備える如く構成した。
【0006】
請求項2に係る機器の盗難防止装置にあっては、前記電子キーは、前記電子キー複製手段において複製自在な第1の電子キーと、前記第1の電子キーから複製される第2の電子キーの少なくともいずれかからなると共に、前記電子キー複製手段は、前記第2の電子キーからの複製を禁止する如く構成した。
【0007】
請求項3に係る機器の盗難防止装置にあっては、前記機器は複数台の機器であると共に、前記電子キーは前記複数台の機器にそれぞれ対応する複数個の認証用のデータを記憶する如く構成した。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る機器の盗難防止装置あっては、電子キーと、機器に設けられ、電子キーから認証用のデータが出力されるとき、予め記憶された照合用のデータを用いて電子キーが正規のキーか否か認証する認証手段と、機器から独立して設けられ、電子キーを複製する電子キー複製手段とを備えるように構成したので、電子キー複製手段を機器から独立させることで機器自体を起動させることなく、電子キーの複製を行うことができると共に、電子キーとその認証手段を備えることで機器を盗難から防止することができる。
【0009】
請求項2に係る機器の盗難防止装置にあっては、電子キーは、電子キー複製手段において複製自在な第1の電子キーと、第1の電子キーから複製される第2の電子キーの少なくともいずれかからなると共に、電子キー複製手段は、第2の電子キーからの複製を禁止するように構成、即ち、第1の電子キーからのみ複製するように構成したので、上記した効果に加え、電子キーの複製を制限することができる、換言すれば、電子キーが不要に複製されるのを防止でき、よって電子キーの管理などを容易に行うことができる。
【0010】
請求項3に係る機器の盗難防止装置にあっては、機器は複数台の機器であると共に、電子キーは複数台の機器にそれぞれ対応する複数個の認証用のデータを記憶するように構成したので、上記した効果に加え、例えば1個の電子キーで複数台の機器を動作させることも可能となり、よって操作者は、機器が複数台ある場合であっても、電子キーを複数個所持する必要がなく、利便性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面に即してこの発明に係る機器の盗難防止装置を実施するための最良の形態について説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、この発明の実施例に係る機器の盗難防止装置を示し、小型電動車に搭載された状態を示す。図1はその小型電動車の斜視図である。
【0013】
図1において、符号10は小型電動車(機器)を示す。図示の如く、小型電動車10は複数台(例えば3台)あり、3台の小型電動車10を符号10a,10b,10cで示す。尚、以下において、小型電動車10を小型電動車10aを例にとって説明するが、小型電動車10b,10cも略同一の構成であるため、以下の説明は小型電動車10b,10cにも妥当する。
【0014】
小型電動車10は、4個の車輪12(図1において1個見えず)で支持された車体フレーム14と、車体フレーム14上に設けられ、操作者(ユーザ)Pが着座すべきシート16と、操作者Pに手動操作自在な操作部20とを備えた、一人乗りの比較的小型な電動車、より正確には電動車椅子であり、高齢者などの使用に適した、人が歩く速度と同じ程度の極めて低速で走行する移動体である。
【0015】
シート16の下部には、車輪(正確には後輪)12を駆動する電動モータ22と、電動モータ22などに動作電源を供給するバッテリ(具体的には鉛電池)24が格納される。尚、電動モータ22は、具体的にはDCブラシレスモータである。
【0016】
図2は、図1に示す小型電動車10の操作部20を示す正面図である。
【0017】
図2に示す如く、操作部20は、ダッシュボード20aから左右にループしつつ突出させられたハンドル20bと、同様に左右に突出させられた走行・停止指示用の走行レバー20cと、ダッシュボード20aに配置され、時速1km/hから6km/hの間で無段階に速度を設定可能な速度設定ノブ20dと、小型電動車10の進行方向指示(前進あるいは後進指示)を入力して進行方向を前後に切り換える前進・後進切り換えスイッチ20eと、ホーン(図示せず)を動作させるホーンスイッチ20fと、バッテリ24から電動モータ22への通電をオン・オフする電源スイッチキー20gなどを備える。
【0018】
走行レバー20cの近傍には、走行スイッチ20hが配置される。走行スイッチ20hは、走行レバー20cが操作者Pによって操作されて走行指示がなされたときにオン信号を出力し、停止指示のときにオン信号の出力を終了する。また、速度設定ノブ20dの付近には、操作者Pの操作によって速度設定ノブ20dで設定された速度に応じた信号(速度指示)を出力する速度設定ノブセンサ20iが配設される。
【0019】
尚、小型電動車10の詳細は、本出願人が先に提案した特開2007−112363号公報に記載されているので、これ以上の説明は省略する。
【0020】
図3は、上記した小型電動車10の盗難防止装置の構成を示すブロック図である。
【0021】
図3において、符号26は盗難防止装置を示す。盗難防止装置26は、認証用のデータ(ID。後述)を記憶する電子キー30と、小型電動車10に設けられて電動モータ22などの動作を制御する制御ECU(電子制御ユニット)32と、小型電動車10に設けられて電子キー30の認証を行う認証ECU(電子制御ユニット。認証手段)34とを備える。尚、制御ECU32と認証ECU34は共に、図2に良く示す如く、小型電動車10の適宜位置、具体的には、操作部20のダッシュボード20aの内部であって電源スイッチキー20gの近傍に配置される。
【0022】
制御ECU32は、CPU32a、メモリ(具体的には不揮発性メモリからなるEEPROM)32bなどを備えたマイクロコンピュータからなる。制御ECU32には、前進・後進切り換えスイッチ20eを介して操作者Pからの進行方向指示が入力される。制御ECU32にはさらに、走行スイッチ20hを介して操作者Pからの走行指示が入力されると共に、速度設定ノブセンサ20iを介して速度指示が入力される。制御ECU32は、これらの指示に応じて電動モータ22などの動作を制御し、小型電動車10の走行を制御する。
【0023】
具体的には、操作者Pは、前進・後進切り換えスイッチ20eで進行方向を選択すると共に、速度設定ノブ20dで走行速度を選択する。そして、操作者Pがハンドル20bを把持しつつ、左右いずれか(あるいは双方)の走行レバー20cを握り込むことで小型電動車10の走行速度が決定されて走行する一方、離すと小型電動車10は停止する。
【0024】
認証ECU34は、制御ECU32と同様、CPU34a、照合用のデータ(後述)を予め記憶するメモリ(具体的には不揮発性メモリからなるEEPROM)34bなどを備えたマイクロコンピュータからなる。認証ECU34はさらに、電子キー30に記憶された認証用のデータの読み込みなどを行うリーダ/ライタ(読み込み/書き込み装置)34cと、ダッシュボード20aに設けられ、後述する電子キーの認証の結果(適否)を操作者Pに報知するLED(発光ダイオード。報知ランプ)34dを備える。
【0025】
上記の如く構成された認証ECU34は、制御ECU32にシリアル通信ライン36を介して通信自在に接続される。また、制御ECU32と認証ECU34には、前記したバッテリ24が電力線40を介して接続され、バッテリ24から動作電源が供給される。
【0026】
電子キー30は、CPU30aと、認証用のデータ(具体的には、電子キー30を携行している操作者Pを識別する識別情報(ユーザID)や小型電動車10の機種や製品番号などを識別する識別情報(製品ID))を記憶する不揮発性のメモリ30bと、認証用のデータなどを近距離無線通信(RFID(Radio Frequency Identification))でリーダ/ライタ34cなどと送受信(入出力)するアンテナ30cとを備えたICカードからなる。電子キー30であるICカードは、樹脂材から製作されてその内部に前記したCPU30aなどが内蔵されると共に、図2に示す如く、操作者Pに携行自在とされる。
【0027】
ここで、電子キー30と認証ECU34のリーダ/ライタ34cとの通信動作のうち、認証動作について詳説する。認証ECU34にバッテリ24から動作電源が供給されている状態において、電子キー30がリーダ/ライタ34cに操作者Pによって近接されると(かざされると)、リーダ/ライタ34cは電子キー30に向けて電磁波を出力(発信)する。
【0028】
リーダ/ライタ34cから電磁波が出力されると、電子キー30は、内蔵されたコイル(図示せず)の電磁誘導によって発電し、CPU30aなどが起動させられる。即ち、電子キー30は、内部に電池などの電源を備えず、リーダ/ライタ34cからの電磁波による電磁誘導によって動作電源が供給される。
【0029】
電子キー30は、動作電源が供給されると、メモリ30bに記憶された認証用のデータをCPU30a、アンテナ30cを介してリーダ/ライタ34cに出力する。認証ECU34は、電子キー30から認証用のデータが出力されるとき、メモリ34bに予め記憶された照合用のデータを用いて電子キー30が正規のキーか否かの認証を実行する。この照合用のデータは、前述した認証用のデータと同一のものであって、小型電動車10a,10b,10cごとに設定される、固有のデータ(具体的には、ユーザIDや製品ID)である。
【0030】
従って、認証ECU34における認証は、電子キー30の認証用のデータと照合用のデータとを比較することで行われる。具体的には、認証用のデータと照合用のデータを比較して一致するか否か判断し、一致するときはリーダ/ライタ34cにかざされた電子キー30が小型電動車10に対して正規のキーであると判断する一方、一致しないとき(不一致のとき)は電子キー30が正規の電子キーではないと判断する。
【0031】
このように、電子キー30は、認証ECU34のリーダ/ライタ34cと接触させずにかざすだけで認証用のデータなどの入出力(通信)を行うことが可能な、非接触型(ワイヤレスタイプ)のICカードである。
【0032】
上記した如く、認証用のデータなどは非接触型のICカードからなる電子キー30とリーダ/ライタ34cとで送受信されるため、電子キーと認証ECUを有線の通信手段で接続して送受信するときに生じる不具合、具体的には通信用ケーブルの断線によってデータを送受信することができないなどの不具合を回避することができる。
【0033】
盗難防止装置26の説明を続けると、盗難防止装置26は、図3に示す如く、前記した認証ECU34などに加え、電子キー30を複製する電子キー複製装置(電子キー複製手段)42を備える。
【0034】
電子キー複製装置42は、複数台(3台)の小型電動車10a,10b,10cに対して1台設置されると共に、小型電動車10から独立して(小型電動車10とは別に)設けられる。電子キー複製装置42は、複製用の端末機器44と、端末機器44に接続されるリーダ/ライタ46とを備える。端末機器44は、具体的にはパーソナルコンピュータからなり、CPU44aと、メモリ44bと、操作者Pによって操作自在なキーボードやマウス(図示せず)などからなる入力部44cと、ディスプレイ(画面)からなる表示部44dなどを備える。また、端末機器44には図示しない電源(例えば商用電源)が接続され、動作電源が供給される。
【0035】
リーダ/ライタ46は、認証ECU34のリーダ/ライタ34cと同様、電子キー30が近接されるとき(かざされるとき)、電子キー30に向けて電磁波を出力して電子キー30に動作電源を供給すると共に、電子キー30から出力される認証用のデータを読み込む、あるいは新たな認証用のデータ(後述)を電子キー30に書き込む。
【0036】
次いで上記の如く構成された小型電動車(機器)の盗難防止装置26の動作について説明する。
【0037】
図4は、盗難防止装置26の動作、具体的には盗難防止装置26を構成する認証ECU34の動作を示すフロー・チャートである。尚、図示のプログラムは、小型電動車10を始動させるとき、1回だけ実行される。
【0038】
操作者Pによって電源スイッチキー20gが操作される、正確には、図2に示す如く、操作者Pによって電子キー30が認証ECU34のリーダ/ライタ34c付近にかざされつつ電源スイッチキー20gが操作される(オンされる)と、バッテリ24から認証ECU34に動作電源が供給される。認証ECU34に動作電源が供給されて起動させられると、先ずS10においてリーダ/ライタ34cから電子キー30に向けて電磁波を出力して電子キー30に動作電源を供給する。
【0039】
次いでS12に進み、電子キー30から出力される認証用のデータと照合用のデータを用いて電子キー30の認証を行う。S14に進み、S12の処理においてリーダ/ライタ34cにかざされた電子キー30が小型電動車10に対して正規のキーであったか否か判断し、肯定されるときはS16に進み、電動モータ22の動作を許可する信号を制御ECU32に出力してプログラムを終了する。これにより、制御ECU32は、走行スイッチ20hなどから入力される指示に応じて電動モータ22の動作を制御することとなり、小型電動車10の通常運転が行われる。
【0040】
他方、S14で否定されるときはS18に進み、報知ランプ34dを点灯させて正規のキーと認証されなかった旨を操作者Pに報知し、S20に進み、電動モータ22の動作を禁止する信号を制御ECU32に出力する。これにより、制御ECU32は、走行スイッチ20hなどから入力される指示に関わらず、電動モータ22の動作を停止、即ち、小型電動車10の運転を停止させる。このようにして盗難防止装置26は小型電動車10を盗難から防止する。
【0041】
上記の如く構成された小型電動車10a,10b,10cを例えば複数の操作者(ユーザ)Pで共用する場合、利便性を考慮すると、複数の操作者Pがそれぞれ電子キー30を所持することが望ましく、そのためには電子キー30を操作者Pの数だけ複製(コピー)する必要がある。また、複製された電子キー30において、小型電動車10a,10b,10cの全てを動作できるように構成することで、利便性をさらに向上させることができる。以下、盗難防止装置26の電子キー複製装置42において行われる、電子キー30の複製について説明する。
【0042】
図5は、盗難防止装置26の動作の内、電子キー30を複製する作業を示すフロー・チャートである。図示のプログラムは、電子キー30が電子キー複製装置42のリーダ/ライタ46にかざされるとき、端末機器44において実行される。
【0043】
図5の説明に入る前に、先ず電子キー30について詳説する。前述したように、電子キー30のメモリ30bには認証用のデータ(ID)が記憶されるが、電子キー30はその記憶される認証用のデータの種類によって、第1の電子キー(マスター電子キー)301と第2の電子キー(コピー電子キー)302の2種類に大別される。
【0044】
図6は、第1、第2の電子キー301,302に記憶される認証用のデータを模式的に示す説明図である。尚、図6において、紙面左側に複製が行われる前の第1の電子キー301を示すと共に、紙面右側に複製された後の第1、第2の電子キー301,302を示す。
【0045】
第1の電子キー301は複数個(3個。正確には、小型電動車10の台数と同じ個数)あり、図6においてそれらを符号301a,301b,301cで示す。複製が行われる前の第1の電子キー301a,301b,301cにあってはそれぞれ対応する小型電動車10a,10b,10cの認証用のデータ(ID)が記憶される。尚、図6において、小型電動車10aに対応する(小型電動車10aを始動させることのできる)認証用のデータを「ID−a」で示す。同様に、小型電動車10bに対応する認証用のデータを「ID−b」、小型電動車10cに対応するそれを「ID−c」で示す。
【0046】
第1の電子キー301に記憶される認証用のデータ(ID)は、電子キー複製装置42において電子キーの複製を作成することが可能なID(以下、「マスターID」といい、図6において「Master」と括弧書きで示す)である。従って、第1の電子キー301は、電子キー複製装置42において複製自在な電子キーである。
【0047】
一方、第2の電子キー302は、電子キー複製装置42において第1の電子キー301から複製された電子キーであり、図6に示す如く、マスターIDからなる認証用のデータ(ID)は記憶されない。このように、電子キー30は記憶する認証用のデータの種類によって大別、具体的にはマスターIDからなる認証用のデータを備えるか否かによって第1の電子キー301と第2の電子キー302の2種類に大別される。尚、図6において、末尾に「Copy」と括弧書きで示された認証用のデータは、電子キー複製装置42でマスターIDから複製された認証用のデータであることを表し、以下それを「コピーID」という。
【0048】
図5の説明に戻ると、電子キー30が操作者Pによってリーダ/ライタ46にかざされ、電磁波によって電子キー30に動作電源が供給されて認証用のデータが出力されると、先ずS100において、電子キー30から出力される認証用のデータを読み込み、S102に進み、読み込んだ認証用のデータを表示部44dに表示させる。
【0049】
次いでS104に進み、キーIDの発行指示が操作者Pによってなされたか否か判断する。このキーIDは、電子キー30に割り当てるべきID(番号)を意味する。従って、S104は、具体的には、電子キー30の複製作業を進めるべく、操作者Pによって電子キー30に割り当てるべきID(例えばID−aなど)が入力部44cを介して入力されたか否か(発行指示がなされたか否か)判断する処理、換言すれば、操作者Pの電子キー30を複製する意思を確認するための処理である。
【0050】
S104で否定されるときはS104の処理を繰り返して操作者PからキーIDの発行指示がなされるまで待機する一方、肯定されるときはS106に進み、リーダ/ライタ46にかざされた電子キーが、第1の電子キー301であるか否か判断する。S106で否定、即ち、かざされた電子キーが第2の電子キー302あるいはそれ以外の電子キーのときはS108に進み、表示部44dに「複製不可」と表示して複製を作成することができない旨を操作者Pに報知してプログラムを終了する。このように、電子キー複製装置42にあっては、第1の電子キー301以外からの複製、具体的には第2の電子キー302からの複製を禁止する。
【0051】
S106で肯定されるときはS110に進み、S100で読み込んだ認証用のデータ(ID)を複製してコピーIDとしてメモリ44bに一旦保存する。次いでS112に進み、認証用のデータの複製を保存する作業を別の第1の電子キー301を用いて継続して行う指示がなされているか否か判断し、肯定されるときはS100に戻って前述した処理を繰り返す。
【0052】
S112の処理について具体的に説明すると、例えばS110の処理において第1の電子キー301aの認証用のデータの複製(コピーID。ID−a(Copy))が保存された場合、引き続き第1の電子キー301b,301cの認証用のデータの複製(ID−b(Copy),ID−c(Copy))を保存する作業を行う必要がある。
【0053】
そのため、第1の電子キー301aの認証用のデータの複製(ID−a(Copy))が保存された後は操作者Pによって継続指示が入力されると共に、第1の電子キー301b(または第1の電子キー301c)がリーダ/ライタ46にかざされることとなる。即ち、S100からS112の処理が3回繰り返されることとなり、それによってメモリ44bには3個の認証用のデータ(ID−a(Copy),ID−b(Copy),ID−c(Copy))が保存される。
【0054】
上記したコピーIDの保存が終了してS112で否定されるときはS114に進み、S110で保存した3個のコピーIDを新しい電子キー、換言すれば、第2の電子キー302となるべき複製用の電子キーに書き込む。このとき、リーダ/ライタ46には、第2の電子キー302となるべき電子キーが操作者Pによって配置される(かざされている)ものとする。
【0055】
次いでS116に進み、表示部44dに「複製完了」と表示して第2の電子キー302が完成したことを操作者Pに報知する。このようにして、図6に示すような第2の電子キー302、具体的には複製された3個の認証用のデータ(コピーID)のみが記憶される第2の電子キー302が作成される。
【0056】
次いでS118に進み、操作者Pによって第2の電子キー302をさらに継続して作成する指示がなされているか否か判断する。S118で否定されるときはそのままプログラムを終了する一方、肯定されるときはS114,S116の処理を繰り返して第2の電子キー302をさらに作成する作業が行われる。
【0057】
上記の如く第1の電子キー301a,301b,301cから第2の電子キー302が複製された後、第2の電子キー302に記憶される3個の認証用のデータ(コピーID)と同一のものを第1の電子キー301に書き込む処理が実行される。即ち、第1の電子キー301にも3個の認証用のデータを記憶させることで、第1の電子キー301でも小型電動車10a,10b,10cの全てを動作(始動)できるようにする。
【0058】
図7は、その第1の電子キー301への書き込み作業を示すフロー・チャートである。図示のプログラムは、電子キー複製装置42の端末機器44において図5のプログラムの終了後、電子キー30がリーダ/ライタ46にかざされるときに実行される。
【0059】
電子キー30が操作者Pによってリーダ/ライタ46にかざされ、電磁波によって電子キー30に動作電源が供給されて認証用のデータが出力されると、S200において、電子キー30から出力される認証用のデータを読み込む。次いでS202に進み、読み込んだ認証用のデータを表示部44dに表示させる。
【0060】
次いでS204に進み、複製された認証用のデータ(コピーID)の書き込み指示が操作者Pよりなされているか否か判断する。S204で否定されるときはS204の処理を繰り返して操作者Pから書き込み指示がなされるまで待機する一方、肯定されるときはS206に進み、リーダ/ライタ46にかざされた電子キーが、第1の電子キー301であるか否か判断する。
【0061】
S206で肯定されるときはS208に進み、メモリ44bに保存される3個の認証用のデータ(コピーID。具体的には、ID−a(Copy),ID−b(Copy),ID−c(Copy))を第1の電子キー301に書き込む。これにより、図6の紙面右側に示すような第1の電子キー301、より具体的には1個のマスターIDと3個のコピーIDが記憶される第1の電子キー301が作成される。
【0062】
一方、S206で否定されるときはS210に進み、表示部44dに「コピーID書込み不可」と表示してコピーIDの書き込みが行われない旨を操作者Pに報知してプログラムを終了する。このように、第2の電子キー作成後の電子キー複製装置42にあっては、第1の電子キー301以外の電子キーにコピーIDを書き込むのを禁止するように構成される。
【0063】
3個のコピーIDが上記した処理によって第1の電子キー301と第2の電子キー302の両方に書き込まれる(記憶される)ことで、小型電動車10の認証ECU34は、次回の始動時に第1、第2の電子キー301,302を正規の電子キーと認証することができる。
【0064】
これについて図8を参照しつつ説明すると、上記した電子キー30の複製によって、第1の電子キー301と第2の電子キー302には共に、複数台(3台)の小型電動車10a,10b,10cにそれぞれ対応する複数個(3個)の認証用のデータ(ID−a,ID−b,ID−c)が記憶されることとなる。従って、複数の操作者P1,P2,P3,P4がそれぞれ第1の電子キー301a,301b,301cあるいは第2の電子キー302を所持することができると共に、小型電動車10a,10b,10cの全てを動作(始動)させることが可能となる。
【0065】
尚、従来技術にあっては、図9に示すように、複製される電子キー30ごとに相違する認証用のデータ(ID−a,ID−b,ID−c)が記憶される。そのため、小型電動車10の認証ECU34に、複製される電子キー30に対応する照合用のデータ(照合用ID−a,照合用ID−b,照合用ID−c)を記憶させる必要があり、よって小型電動車10を1台1台起動させ、照合用のデータを書き換える作業が行われていた。しかしながら、この発明の実施例に係る機器の盗難防止装置26にあっては、小型電動車10から独立して設けられる電子キー複製装置42を備えるので、小型電動車10を起動させることなく、電子キー30の複製を行うことができる。また、電子キー30が3個の認証用のデータ(ID−a,ID−b,ID−c)を記憶するので、1個の電子キー30で3台の小型電動車10a,10b,10cを動作させることができる。
【0066】
以上の如く、この発明の実施例にあっては、移動体または作業機からなる機器(小型電動車)10の盗難防止装置26において、操作者Pに携行自在な、認証用のデータを記憶する電子キー30(第1の電子キー301、第2の電子キー302)と、前記機器に設けられ、前記電子キーから前記認証用のデータが出力されるとき、予め記憶された照合用のデータを用いて前記電子キーが正規のキーか否か認証する認証手段(認証ECU34。S12,S14)と、前記機器から独立して設けられ、前記電子キーを複製する電子キー複製手段(電子キー複製装置42。図5,7フロー・チャート)とを備える如く構成した。
【0067】
このように、電子キー複製装置42を小型電動車10から独立させることで小型電動車10自体を起動させることなく、電子キー30の複製を行うことができると共に、電子キー30と認証ECU34を備えることで小型電動車10を盗難から防止することができる。
【0068】
また、前記電子キー30は、前記電子キー複製手段(電子キー複製装置42)において複製自在な第1の電子キー301と、前記第1の電子キーから複製される第2の電子キー302の少なくともいずれかからなると共に、前記電子キー複製手段は、前記第2の電子キー302からの複製を禁止する(S108)ように構成した。このように、電子キー複製装置42は、第1の電子キー301からのみ複製するように構成したので、電子キー30の複製を制限することができる、換言すれば、電子キー30が不要に複製されるのを防止でき、よって電子キー30の管理などを容易に行うことができる。
【0069】
また、前記機器は複数台(3台)の機器(小型電動車)10a,10b,10cであると共に、前記電子キー30は前記複数台の機器にそれぞれ対応する複数個の認証用のデータ(ID−a(Copy),ID−b(Copy),ID−c(Copy))を記憶するように構成したので、例えば1個の電子キー30で複数台の機器を動作させることも可能となり、よって操作者Pは、機器が複数台ある場合であっても、電子キー30を複数個所持する必要がなく、利便性を向上させることができる。
【0070】
尚、上記において、盗難防止装置26を備える機器として移動体である小型電動車10を例に挙げて説明したが、それに限られるものではなく、例えば四輪自動車や二輪自動車などの移動体、または芝刈り機や耕運機、発電機、除雪機、運搬機などの作業機であっても良く、その意味から、請求項1において「移動体または作業機からなる機器の盗難防止装置」と記載した。
【0071】
また、機器の例として小型電動車10を挙げ、バッテリ24から車輪12の駆動源である電動モータ22や認証ECU34などに動作電源を供給するように構成したが、例えば内燃機関(エンジン)を駆動源として備える機器(具体的には芝刈り機や耕運機など)の場合は、バッテリに代えて発電コイルやリコイルスタータなどを備えるように構成し、発電コイルから認証ECU34などに動作電源が供給される、即ち、バッテリレスとなるようにしても良い。
【0072】
また、電子キー30と認証ECU34のリーダ/ライタ34c(またはリーダ/ライタ46)において近距離無線通信を用いてデータの送受信を行うように構成したが、それに限られるものではなく、他の無線通信手段や有線の通信手段を介してデータの送受信を行うように構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】この発明の実施例に係る機器の盗難防止装置を示し、小型電動車に搭載された状態における小型電動車の斜視図である。
【図2】図1に示す小型電動車の操作部を示す正面図である。
【図3】図1に示す小型電動車の盗難防止装置の構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示す小型電動車の盗難防止装置の動作、具体的には盗難防止装置を構成する認証ECUの動作を示すフロー・チャートである。
【図5】図1に示す小型電動車の盗難防止装置の動作の内、電子キーを複製する作業を示すフロー・チャートである。
【図6】図3に示す電子キーに記憶される認証用のデータを模式的に示す説明図である。
【図7】図1に示す小型電動車の盗難防止装置の動作の内、第1の電子キーの書き込み作業を示すフロー・チャートである。
【図8】図3に示す電子キーと小型電動車との関係を示す説明図である。
【図9】従来技術に係る電子キーと小型電動車との関係を示す、図8と同様な説明図である。
【符号の説明】
【0074】
10 小型電動車(移動体。機器)、26 盗難防止装置、30 電子キー、301 第1の電子キー、302 第2の電子キー、34 認証ECU(認証手段)、42 電子キー複製装置(電子キー複製手段)、P 操作者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体または作業機からなる機器の盗難防止装置において、操作者に携行自在な、認証用のデータを記憶する電子キーと、前記機器に設けられ、前記電子キーから前記認証用のデータが出力されるとき、予め記憶された照合用のデータを用いて前記電子キーが正規のキーか否か認証する認証手段と、前記機器から独立して設けられ、前記電子キーを複製する電子キー複製手段とを備えることを特徴とする機器の盗難防止装置。
【請求項2】
前記電子キーは、前記電子キー複製手段において複製自在な第1の電子キーと、前記第1の電子キーから複製される第2の電子キーの少なくともいずれかからなると共に、前記電子キー複製手段は、前記第2の電子キーからの複製を禁止することを特徴とする請求項1記載の機器の盗難防止装置。
【請求項3】
前記機器は複数台の機器であると共に、前記電子キーは前記複数台の機器にそれぞれ対応する複数個の認証用のデータを記憶することを特徴とする請求項1または2記載の機器の盗難防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−19004(P2010−19004A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180557(P2008−180557)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】