説明

機能性発泡体及びその製造方法

【課題】金属フタロシアニン化合物の酸化還元触媒機能による消臭性、アレルゲン分解性、NO、SO除去性のような特性を利用して、発泡体本来の性能を損なうことなく優れた消臭性能、アレルゲン分解性能、NO、SO除去性能を付与した発泡体、及びその発泡体を簡便に製造できる製造方法を提供する。
【解決手段】特定の構造式で示される金属フタロシアニン化合物、または/および該金属フタロシアニン化合物を天然繊維、合成繊維、半合成繊維、再生繊維から選ばれる繊維に担持して微細断した微細繊維、または/および該金属フタロシアニン化合物を無機物に担持した担持体無機物が、分散して含まれることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭性、アレルゲン分解性、窒素酸化物及び硫黄酸化物除去性を有する発泡体、及びその発泡体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンや天然ゴム,合成ゴムなどの発泡体は、緩衝性、圧縮反発性等に優れることから様々な用途に使用されている。例えば、ウレタン発泡体(ウレタンフォーム)は、ポリオールとポリイソシアネートとを主成分として発泡剤などと混合し、発泡させた化学製品である。また天然ゴム,合成ゴムなどのゴム発泡体(ゴムスポンジ)は、原料ゴムに発泡剤、加硫剤、補強剤、軟化剤などを混合して、加硫し発泡させた化学製品である。上記発泡体は、その硬さや形状を自在に変化させることができ、また比較的簡単に裁断できる上、優れたクッション性を有するため、家具や寝具、建材等幅広い分野で使用されている。
【0003】
しかし、例えば、ウレタン発泡体を使用した製品は洗濯が困難であるため、ダニ等の温床となりやすい。また、ウレタン発泡体を使用した製品は、連続気泡の発泡体であるため、臭いの原因となる成分を吸収しやすく、悪臭源となることがある。一方、ゴム発泡体は、上記ウレタン発泡体と同様にダニ等の温床となったりするだけでなく、ゴム発泡体独特のゴム臭があるため、工業製品など用途が限定されることがあった。特許文献1には、抗微生物性、消臭性、抗アレルギー性などの機能を有する有効成分をバインダー成分により含浸担持したウレタン発泡体が開示されている。しかし、特許文献1は、まずウレタン発泡体を作製して後から諸機能を付与するもので、製造に手間がかかる。また、バインダーにより有効成分を含浸担持させる際、担持が不均一になったり、ウレタン発泡体本来の性能を損なう恐れがある。
【0004】
ところで、屋外や屋内には、気道や表皮を刺激する物質が多く存在している。屋外では、大気汚染物質の二酸化窒素(NO)や二酸化硫黄(SO)等が挙げられる。特に近年では、運搬流通機構の変化に伴い、ディーゼルエンジンを搭載したトラックやバスという運搬手段が増加し、更に、ディーゼルエンジンを搭載したレクリエーション車も増加している。ディーゼルエンジンを搭載する車は、ガソリン車に比べて、窒素酸化物(NO)や硫黄酸化物(SO)の排出量が著しく多く、このため、現在も大都市部での大気汚染は一向に改善されていない。このようなNOやSOを含む排気ガスを浄化する方法として、特許文献2には、リン酸チタニウム系化合物を利用して排ガスを浄化する方法及び装置が記載されている。
【0005】
ウレタン発泡体は、原料のポリイソシアネートが禁水反応系であることから、発泡体製造時に種々の添加剤等を導入することが難しい。従ってウレタン発泡体自体に諸機能を付与することが困難であった。また、ゴム発泡体も自動車等の工業用途にも多く利用されており、発泡体のような日常の生活環境に置かれる材料に安全かつ高効率なNO、SO除去機能、消臭機能といった機能を付与することが、現在も求められている。
【0006】
一方、金属フタロシアニン化合物は酸化還元触媒機能を有することが知られており、特許文献3には金属フタロシアニン錯体を利用した消臭材が、非特許文献1にはフタロシアニン化合物をNOセンサ素子として利用できる旨が記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開2000−308678号公報
【特許文献2】特開2004−130239号公報
【特許文献3】特開2004−329270号公報
【非特許文献1】白井汪芳、小林長夫著「フタロシアニン −化学と機能−」、株式会社アイピーシー出版、平成9年2月28日発行、219頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の発明者らは、金属フタロシアニン化合物の触媒作用を永年に渡って研究し、その吸着性や、酸化還元触媒機能によってアレルゲン蛋白質が変性、分解することを見出した。本発明は、金属フタロシアニン化合物の酸化還元触媒機能による消臭性、アレルゲン分解性、NO、SO除去性のような特性を利用して、発泡体本来の性能を損なうことなく優れた消臭性能、アレルゲン分解性能、NO、SO除去性能を付与した発泡体、及びその発泡体を簡便に製造できる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載された発泡体は、下記化学式(I)
【化1】

【0010】
(式(I)中、MはFe、Co、Mn、Ti、V、Ni、Cu、Zn、Mo、W、Osから選択される金属)で示される金属フタロシアニン化合物、または/および該金属フタロシアニン化合物を天然繊維、合成繊維、半合成繊維、再生繊維から選ばれる繊維に担持して微細断した微細繊維、または/および該金属フタロシアニン化合物を無機物に担持した担持体無機物が、分散して含まれることを特徴とする。この金属フタロシアニン化合物は、前記式(I)の骨格が置換基で置換されていても、いなくてもよい。
【0011】
同じく請求項2に記載された発泡体は、ウレタン発泡体であることを特徴とする。ウレタン発泡体(ウレタンフォーム)とは、ポリオールとポリイソシアネートとを主成分として発泡剤などと混合し、発泡させたものをいう。
【0012】
請求項3に記載された発泡体は、ゴム発泡体であることを特徴とする。ゴム発泡体(ゴムスポンジ)とは、天然ゴム,合成ゴムなどの原料ゴムに発泡剤、加硫剤、補強剤、軟化剤などを混合して、加硫し発泡させたものをいう。
【0013】
請求項4に記載された発泡体は、前記ゴム発泡体が天然ゴム、または/およびスチレンブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム、ウレタンゴム、アクリルゴムから選ばれる少なくとも一種類のゴムであることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載された発泡体は、前記金属フタロシアニン化合物の含有量が0.01〜5質量%であることを特徴とする。前記金属フタロシアニン化合物の含有量が0.01質量%より少ないと、十分な機能を発揮することができない。また、その含有量が5質量%より多いと、前記金属フタロシアニン化合物が発泡体内に保持されず溶出してしまう。
【0015】
請求項6に記載された発泡体は、前記微細繊維の含有量が1〜30質量%であることを特徴とする。前記微細繊維の含有量が1質量%より少ないと、十分な機能を発揮することができない。また、その含有量が30質量%より多いと、発泡体への分散性が悪くなるので、著しく大きな気泡ができるなどして均一な発泡体を得ることができない。さらに、発泡性が不十分となって発泡体の気泡が潰れてしまい、発泡体を得ることができない場合もある。
【0016】
請求項7に記載された発泡体は、前記微細繊維が湾曲した形状であることを特徴とする。ここでいう湾曲とは、弓状、S字状、らせん状を含み、その曲がり方や湾曲の度合いは限定されない。
【0017】
請求項8に記載された発泡体は、前記担持体無機物の含有量が1〜50質量%であることを特徴とする。前記担持体無機物の含有量が1質量%より少ないと、十分な機能を発揮することができない。また、その含有量が50質量%より多いと、発泡体への分散性が悪くなり、均一な発泡体を得ることができない。
【0018】
請求項9に記載された発泡体は、前記無機物が、タルク、カオリン、珪藻土、マイカ、シリカ、クレー、ベントナイト、ゼオライト、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、及びそれらの焼成物から選ばれる無機物であることを特徴とする。
【0019】
また、前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項10に記載された発泡体の製造方法は、ポリオールに前記金属フタロシアニン化合物、または/および該金属フタロシアニン化合物を天然繊維、合成繊維、半合成繊維、再生繊維から選ばれる繊維に担持して微細断した微細繊維、または/および該金属フタロシアニン化合物を無機物に担持した担持体無機物を混合して溶解または分散させ、さらにポリイソシアネートと発泡剤とを加えて混合、発泡させてウレタン発泡体を形成させることを特徴とする。
【0020】
また、特許請求の範囲の請求項11に記載された発泡体の製造方法は、ゴムの練り工程において、原料ゴムに前記金属フタロシアニン化合物、または/および該金属フタロシアニン化合物を天然繊維、合成繊維、半合成繊維、再生繊維から選ばれる繊維に担持して微細断した微細繊維、または/および該金属フタロシアニン化合物を無機物に担持した担持体無機物、発泡剤、及び加硫剤を混合して溶解または分散させ、ゴムの加硫工程においてゴムを加硫及び発泡させてゴム発泡体を形成させることを特徴とする。
【0021】
同じく請求項12に記載された発明は、請求項10または11に記載された発泡体の製造方法で、前記微細繊維または/および前記担持体無機物が、金属フタロシアニン化合物を担持した後ポリアミンにより酸性を中和し、乾燥したものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の発泡体は、消臭性、アレルゲン分解性を有するので、その成形品は衛生的であり、それを使用する際他の消臭剤やアレルゲン除去剤を併用する必要がない。また、本発明の発泡体は、NO、SOの除去機能を有し、大がかりな装置を使用しなくても、その成形品を生活環境に置いているだけでNOやSOを安全かつ効率よく容易に除去することができる。
【0023】
本発明の発泡体は、金属フタロシアニン化合物の酸化還元触媒機能を利用して臭気物質、アレルゲン蛋白質、NOやSOを吸着、分解するので、その作用が永続的である。さらに前記金属フタロシアニン化合物、または/および前記微細繊維、または/および前記担持体無機物を発泡体内に分散して含んでいるため、どのように裁断しても優れた消臭効果、アレルゲン分解効果、NO、SO除去効果を発揮することができる。
【0024】
本発明の発泡体の製造方法を用いると、発泡体が本来有するクッション性等の特徴を損なうことなく、消臭性、アレルゲン分解性、NO、SO除去性のような機能を有するウレタン発泡体を容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の発泡体は、前記金属フタロシアニン化合物、または/および前記微細繊維、または/および前記担持体無機物を発泡体中に含有させることで、発泡体に消臭性能、アレルゲン分解性能、NO、SO除去性能を付与したものである。前記金属フタロシアニン化合物、前記微細繊維、前記担持体無機物は、それぞれ単独で用いてもよく、複数の種類を組み合わせて用いてもよい。その組み合わせは特に限定されない。それらの種類や混合量によって得られる発泡体の性質が異なるため、目的に合わせて組み合わせや種類、混合量を調整することができる。例えば、消臭機能を有する成分を含む微細繊維と、アレルゲン分解機能を有する成分を含む微細繊維とを同時に用いた場合、発泡体に消臭機能とアレルゲン分解機能とを付与することができる。
【0026】
本発明の発泡体において、前記金属フタロシアニン化合物は、下記化学式(II)で表されるのが好ましい。
【0027】
【化2】

式(II)中、MはFe、Co、CuおよびNiから選択される金属、R、R、RおよびRは同一または異なるCOOH基またはSOH基であり、n1、n2、n3およびn4は0〜4で1≦n1+n2+n3+n4≦8を満たす数である。好ましい例としては、鉄フタロシアニンテトラカルボン酸、鉄フタロシアニンオクタカルボン酸、鉄フタロシアニンモノスルホン酸、鉄フタロシアニンジスルホン酸などがある。
【0028】
前記金属フタロシアニン化合物は、市販品を購入してもよく、従来公知の方法により製造してもよい。例えば鉄フタロシアニンテトラカルボン酸は、ニトロベンゼンにトリメリット酸無水物と、尿素と、モリブデン酸アンモニウムと、塩化第二鉄無水物とを加えて攪拌し、加熱還流させて沈殿物を得、得られた沈殿物にアルカリを加えて加水分解し、次いで酸を加えて酸性にして得られる。
【0029】
繊維に担持させる金属フタロシアニン化合物の量は、繊維に対して0.1質量%以上10質量%以下であるとよいが、好ましくは0.3質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上3質量%以下である。この範囲内であると金属フタロシアニン化合物の酸化還元触媒機能に優れ、また低コストで容易に繊維に担持させることができる。
【0030】
本発明で使用される金属フタロシアニン化合物は、その中心金属に臭気原因物質やNO、SOを配位し、空気中の酸素酸化によって分解したり、中心金属にアレルゲンの蛋白質を配位し、空気中の酸素酸化によってペプチド結合を切断し、低分子化または分子構造を変化させたりすることで分解する。金属フタロシアニン化合物は、臭気原因物質、NO、SOやアレルゲン蛋白質を単に吸着するだけではなく、分解触媒として作用するので、その作用が永続的である。
【0031】
前記の金属フタロシアニン化合物を担持させる繊維としては、天然繊維、合成繊維、半合成繊維、再生繊維など、公知のあらゆる繊維を使用することができる。例えば、天然繊維としては、木綿、麻、パルプのようなセルロース系繊維、羊毛または絹のような蛋白質系繊維が挙げられる。合成繊維としては、ポリオレフィン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリウレタン系繊維が挙げられる。半合成繊維としては、アセテートレーヨンのようなセルロース系繊維が挙げられる。再生繊維としては、ビスコースレーヨン、溶剤紡糸レーヨン、銅アンモニアレーヨンで例示されるレーヨンのようなセルロース系繊維が挙げられる。中でもセルロース系繊維は金属フタロシアニン化合物の担持が容易にできるので、好ましい。これらの繊維は、単一繊維であってもよく、複合繊維であってもよい。
【0032】
前記金属フタロシアニン化合物を担持させた繊維は、市販のものを用いてもよく、金属フタロシアニン化合物溶液に前記繊維を浸漬して作製してもよい。金属フタロシアニン化合物を担持させた繊維は、十分に乾燥した後微細断して、微細繊維とする。
【0033】
前記微細繊維は、刃で裁断されたものでもよいが、グラインドミルなどですり潰すようにして裁断されたものであるとなお好ましい。刃で裁断した微細繊維は直線状であるが、すり潰して裁断した微細繊維は適度に湾曲しているため、発泡体作製時のポリオールに対する親和性や分散性が向上する。そのため、微細繊維が多少長くても、ウレタン発泡体の特性を損なうことがない。すり潰すようにして裁断された微細繊維は、任意のメッシュを有する篩にかけて分級したものを用いるとよい。
【0034】
前記微細繊維は、繊度8.8dtex以下、微細断長0.5mm以下であることが好ましく、繊度2.5dtex以下、微細断長0.3mm以下であるとなお好ましい。微細繊維がこれより大きいと、ウレタン発泡体の場合は発泡成形している間に沈澱してしまい、ウレタン発泡体への分散性が悪くなる。また、ウレタン発泡体が硬くなってしまう。一方、ゴム発泡体の場合は混合練り時の分散性が悪くなり、また発泡したときにピンホールとなって気泡が大きくなることがある。
【0035】
前記微細繊維をウレタン発泡体に含有させた場合、ウレタン発泡体に対する前記金属フタロシアニン化合物の含有量は、繊維に対する金属フタロシアニン化合物の担持量と、ウレタン発泡体中における微細繊維の含有量とから算出することができ、0.01〜1質量%となることがより好ましい。さらにより好ましくは、0.01〜0.5質量%である。例えば、繊維に対して3質量%の前記金属フタロシアニン化合物を担持したものの微細繊維が、ウレタン発泡体に対して3質量%含有されていると、ウレタン発泡体に対する金属フタロシアニン化合物の含有量は0.09質量%である。前記金属フタロシアニン化合物の含有量が0.01質量%より少ないと、十分な機能を発揮することができない。また、その含有量が0.5質量%より多いと、前記金属フタロシアニン化合物がウレタン発泡体内に保持されず溶出してしまう。
【0036】
前記微細繊維をウレタン発泡体に含有させた場合、前記微細繊維の含有量が1〜10質量%であることがより好ましい。ゴム発泡体に含有させた場合、前記微細繊維の含有量が1〜30質量%であることがより好ましい。前記微細繊維の含有量が1質量%より少ないと、十分な機能を発揮することができない。また、その含有量が多いと、発泡体への分散性が悪くなるので、著しく大きな気泡ができるなどして均一な発泡体を得ることができない。さらに、発泡性が不十分となってウレタン発泡体の気泡が潰れてしまい、ウレタン発泡体を得ることができない場合もある。
【0037】
金属フタロシアニン化合物を担持させる無機物としては、水分に対して親和性のある無機物であることが好ましい。水分に対して親和性のある無機物であると、前記金属フタロシアニン化合物は水溶液として得られるため、金属フタロシアニン化合物を容易に無機物に担持することができる。このような無機物としては、例えば、タルク、カオリン、珪藻土、マイカ、シリカ、クレー、ベントナイト、ゼオライト、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、及びこれらの焼成物を使用することができる。また、前記担持体無機物は、粒径0.5mm以下であることが好ましい。担持体無機物がこれより大きいと、ウレタン発泡体を発泡成形している間に沈澱してしまい、ウレタン発泡体への分散性が悪くなる。例えば、ゴム発泡体の場合、発泡体の均一性を考慮すると前記担持体無機物の粒径は、0.01〜100μmであることがより好ましい。
【0038】
前記無機物に対する前記金属フタロシアニン化合物の担持量は、0.1〜10質量%であることが好ましい。前記無機物に金属フタロシアニン化合物を担持する方法としては、例えば、金属フタロシアニン化合物を含有する液体中に無機物を浸漬することにより得ることができる。
【0039】
本発明の発泡体における前記担持体無機物の含有量は、1〜50質量%であることが好ましい。ウレタン発泡体の場合、担持体無機物の含有量は、発泡体の均一性を考慮すると1〜10質量%であることがより好ましい。ゴム発泡体の場合、担持体無機物の含有量は、発泡体の均一性、発泡構造、及び発泡倍率等を考慮すると1〜30質量%であることがより好ましい。
【0040】
本発明の発泡体として、ウレタン発泡体を用いる場合、ウレタン発泡体を形成するポリオールは、ポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールであることが好ましい。例えば、ポリオキシアルキレンエーテルグリコールのようなポリエーテルジオール、プロピレングリコールにプロピレンオキサイドを付加したポリエーテルジオール、ビスフェノールAにプロピレンオキサイドを付加したポリエーテルジオール、グリセリンにプロピレンオキサイドを付加したポリエーテルトリオール、エチレンジアミンの活性水素にプロピレンオキサイドを付加したポリエーテルテトラオール、ソルビトール系及びスクロース系にプロピレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオール、多塩基酸類と多価アルコール類とを原料としたポリエステルポリオールが挙げられる。これらのポリオールは、例えば1,4−ブタンジオールのような低分子アルコールとともに用いてもよい。
【0041】
前記ウレタン発泡体を形成するポリイソシアネートとしては、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)から誘導される変性MDI、ポリメリックMDIが挙げられる。
【0042】
前記発泡剤としては、水、代替フロンが用いられる。尚、前記発泡剤の他に、必要に応じて整泡剤などの添加剤を添加してもよい。
【0043】
前記ウレタン発泡体の製造方法を詳細に説明する。
【0044】
まず、前記ポリオールに前記金属フタロシアニン化合物、または/および前記微細繊維、または/および前記担持体無機物を入れて撹拌し、均一に分散させる。前記金属フタロシアニン化合物を入れた場合は前記ポリオールに溶解してもよい。分散が均一状態のうちに前記ポリイソシアネートと前記発泡剤とを混合してすばやく撹拌し、発泡用の型に流し入れて発泡させる。発泡は10〜20分程度で完了する。発泡が完了したら型から取り出し、任意の形状に裁断して前記ウレタン発泡体を得る。発泡時の温度は使用するポリオールやポリイソシアネートなどによって異なるが、室温〜50℃で行うことが好ましい。
【0045】
前記ウレタン発泡体において、前記微細繊維を発泡体中に分散させると、分散している繊維自体が補強材の役割を果たし、架橋が多くなって自由度が減少するため、前記金属フタロシアニン化合物のみを分散させたウレタン発泡体よりも硬いウレタン発泡体が得られる。
【0046】
本発明の発泡体としてゴム発泡体を用いる場合、原料ゴムとしては、天然ゴム、合成ゴム(例えば、スチレンブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム等が挙げられる。
【0047】
前記ゴム発泡体の気泡構造としては、独立気泡、連続気泡、及び独立気泡と連続気泡が混在した半連泡が挙げられる。特に、連続気泡または半連泡であると、接触面積が増加して消臭性能、アレルゲン分解性能、NO、SO除去性能が向上するので好ましい。このような気泡構造は、公知のゴム加硫方法により製造することができる。
【0048】
前記ゴム発泡体の製造方法の一例について説明する。まず、ゴムの練り工程(素練り〜混合練り〜熟成〜シーティング)において、原料ゴムに、前記金属フタロシアニン化合物、または/および前記微細繊維、または/および前記担持体無機物を所定量混合して溶解または分散させて、加硫前のゴム組成物が作製される。前記金属フタロシアニン化合物、または/および前記微細繊維、または/および前記担持体無機物は、素練り時、混合練り時、熟成前、及びシーティング前のいずれの時に混合してもよいが、工程上混合練り時に他の添加剤とともに投入し、混合するとよい。他の添加剤としては、硫黄などの加硫剤、チアゾール系などの加硫促進剤、亜鉛華などの加硫促進助剤、ステアリン酸などの滑剤、アゾジカルボンアミド,ジニトロソペンタメチレンテトラアミン,オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドなどの発泡剤、カーボンブラック,シリカなどの補強剤、炭酸カルシウム,カオリンクレーなどの充填剤、プロセスオイル等が挙げられる。次いで、ゴムの加硫工程において前記加硫前のゴム組成物(未加硫シート)を加硫及び発泡させて、金属フタロシアニン化合物を含有するゴム発泡体を得ることができる。
【0049】
前記微細繊維または/および前記担持体無機物は、ポリアミンのようなアルカリ成分で酸性を中和してから用いることが好ましい。例えば金属フタロシアニン化合物を担持させる担体として酸性の強い塩類を用いると、ウレタン発泡体の硬化速度が遅くなって発泡のガスを発泡体中に保持することができず、ウレタン発泡体を得ることができないが、酸性度を中和することで発泡性、安定性が高くなるため、ウレタン発泡体の生産性やその特性を向上させることができる。
【0050】
前記ウレタン発泡体は、軟質ウレタン発泡体として、マットレス、ウレタンシーツ、ベッドパット、枕などの寝具類、イス、ソファー、カーペットの基布材などの家具類、自動車や電車や飛行機のような乗り物の座席、マット、天井材、床材などの内装部材、エアコンや空気清浄機や電気掃除機のような家電製品のフィルター材などに使用され、ウレタン発泡体が吸収した臭いを消臭しつつ、発生するアレルゲンや進入するNO、SOを吸着、分解して、室内や車内、機内の空気を清浄化する。また、食品や化粧品などの原料から水溶性アレルゲン蛋白質を除去するための濾過用フィルターとしても使用できる。一方、硬質ウレタン発泡体として、エアダクト、防音材、断熱材、室内の間仕切り材や住宅建材などに使用され、ウレタン発泡体が吸収した臭いを消臭しつつ、発生するアレルゲンや進入するNO、SOを吸着、分解して、室内の空気を清浄化する。
【0051】
また、得られたゴム発泡体は、例えば、スポーツ・玩具分野において、ウエットスーツ素材、卓球ラケットゴム材、ゴルフマット材、靴材、レーシングカータイヤなどに使用され、また生活資材分野において、化粧用パフなどに使用され、また機械・電機分野において、航空機、自動車、空調設備、電機機器、通信機器の包装クッション材、パッキング材、内装材、シール材、衝撃吸収材、換気扇用等のフィルターなどに使用され、また建築分野において、床材、壁材パネルなどに使用され、また農業・土木分野において、トンネル、橋梁、道路、水路、護岸工事用目地材などに使用され、各種分野において吸音材、遮音材としても使用される。前記ゴム発泡体は、消臭性能、アレルゲン分解性能、NO、SO除去性能を発現することができ、自身から発生するゴム臭を抑制することもできる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
本発明を適用するウレタン発泡体を製造した例を実施例1〜5に、本発明を適用外のウレタン発泡体を製造した例を比較例1及び2に、それぞれ示す。
【0054】
(実施例1)
発泡剤を含むポリオール成分であるHYCEL F−271Cポリオール(東邦化学工業(株)社製の商品名)の290gに鉄フタロシアニンジスルホン酸0.2gを入れ、混合溶解した。そこにポリイソシアネート成分であるHYCEL 114Pポリイソシアネート(東邦化学工業(株)社製の商品名)の100gを加えて撹拌し、発泡用の型に流し込んで室温にて発泡させた。得られた発泡体を、縦50cm横50cm高さ10cmに裁断して、鉄フタロシアニンジスルホン酸を含有したウレタン発泡体Aを得た。このウレタン発泡体Aを水に浸しておいたところ、鉄フタロシアニンジスルホン酸が水に溶出することはなかった。
【0055】
(実施例2)
まず、コバルトフタロシアニン担持レーヨンEタイプ(アレルキャッチャー:大和紡績(株)社製の商品名、繊度2.2dtex)を、グラインドミルを用いて微細断し、80メッシュ篩にかけて、微細断長0.3mmの微細繊維とした。得られた微細繊維は不均一に湾曲した形状であった。次に、この微細繊維に対し2質量%のポリアリルアミン(PAA−HCL−3L:日東紡績(株)社製の商品名)を溶解した水溶液(浴比1:20)を用意し、そこに得られた微細繊維を入れた。50℃で30分間漬け込んだ後脱水、乾燥して、酸性中和済の微細繊維とした。酸性を中和する前後で、微細繊維に外観上の変化はなかった。
【0056】
発泡剤を含むポリオール成分である発泡体ライトNE−1450−A(BASFイノアックポリウレタン(株)社製の商品名)の100gに、上記で得られた酸性中和済の微細繊維8gを入れ、よく撹拌して均一に分散させた。そこにポリイソシアネート成分である発泡体ライトNE−1450−B(BASFイノアックポリウレタン(株)社製の商品名)66.5gを加えて撹拌し、発泡用の型に流し込んで室温にて発泡させた。得られた発泡体を、縦50cm横50cm高さ10cmに裁断して、微細繊維を含有したウレタン発泡体Bを得た。得られたウレタン発泡体Bは、軟質低密度タイプの発泡体であった。
【0057】
(実施例3)
まず、コバルトフタロシアニン担持レーヨンEタイプ(アレルキャッチャー:大和紡績(株)社製の商品名、繊度2.2dtex)を、グラインドミルを用いて微細断し、120メッシュ篩にかけて、微細断長0.2mmの微細繊維とした。得られた微細繊維は不均一に湾曲した形状であった。次に、この微細繊維に対し2質量%のポリアリルアミン(PAA−HCL−3L:日東紡績(株)社製の商品名)を溶解した水溶液(浴比1:20)を用意し、そこに得られた微細繊維を入れた。50℃で30分間漬け込んだ後脱水、乾燥して、酸性中和済の微細繊維とした。酸性を中和する前後で、微細繊維に外観上の変化はなかった。
【0058】
発泡剤を含むポリオール成分である低反発ウレタン用ポリオールH−9609A(第一工業製薬(株)社製の商品名)の100gに、上記で得られた酸性中和済の微細繊維4.8gを入れ、よく撹拌して均一に分散させた。そこにポリイソシアネート成分である低反発ウレタン用ポリイソシアネートH−9609B(第一工業製薬(株)社製の商品名)58.9gを加えて撹拌し、80℃に加熱した発泡用の金型に流し込み室温で発泡させた。得られた発泡体を、縦50cm横50cm高さ10cmに裁断して、微細繊維を含有したウレタン発泡体Cを得た。
【0059】
(実施例4)
まず、コバルトフタロシアニン担持レーヨンEタイプ(アレルキャッチャー:大和紡績(株)社製の商品名、繊度2.2dtex)と、銅イオン担持レーヨンDタイプ(デオメタフィ:大和紡績(株)社製の商品名、繊度2.2dtex)とを、グラインドミルを用いてそれぞれ微裁断し、120メッシュ篩にかけて、それぞれ微細断長0.2mmの微細繊維とした。得られた微細繊維は不均一に湾曲した形状であった。次に、それぞれの微細繊維に対し2質量%のポリアリルアミン(PAA−HCL−3L:日東紡績(株)社製の商品名)を溶解した水溶液(浴比1:20)を用意し、そこに得られた微細繊維を別々に入れた。それぞれ50℃で30分間漬け込んだ後脱水、乾燥して、酸性中和済の微細繊維とした。酸性を中和する前後で、微細繊維に外観上の変化はなかった。
【0060】
発泡剤を含むポリオール成分である低反発ウレタン用ポリオールH−9609A(第一工業製薬(株)社製の商品名)の100gに、上記コバルトフタロシアニン担持レーヨンEタイプの酸性中和済の微細繊維1.6gと、上記銅イオン担持レーヨンDタイプの酸性中和済の微細繊維3.2gとを入れ、よく撹拌して均一に分散させた。そこにポリイソシアネート成分である低反発ウレタン用ポリイソシアネートH−9609B(第一工業製薬(株)社製の商品名)58.9gを加えて撹拌し、80℃に加熱した発泡用の金型に流し込み室温で発泡させた。得られた発泡体を、縦50cm横50cm高さ10cmに裁断して、2種類の微細繊維を含有したウレタン発泡体Dを得た。得られたウレタン発泡体Dは、低反発性の発泡体であった。
【0061】
(実施例5)
まず、コバルトフタロシアニンを担持した焼成カオリン(かさ比重2.5)の粉末を60メッシュ篩にかけ、粒径0.4mmのカオリンの粉末とした。次に、このカオリンの粉末に対し2質量%のポリアリルアミン(PAA−HCL−3L:日東紡績(株)社製の商品名)を溶解した水溶液(浴比1:20)を用意し、そこに得られたカオリンの粉末を入れた。50℃で30分間漬け込んだ後脱水、乾燥して、酸性中和済のカオリンの粉末とした。酸性を中和する前後で、粉末に外観上の変化はなかった。
【0062】
発泡剤を含むポリオール成分である低反発ウレタン用ポリオールH−9609A(第一工業製薬(株)社製の商品名)の100gに、上記で得られた酸性中和済のカオリンの粉末4.8gを入れ、よく撹拌して均一に分散させた。そこにポリイソシアネート成分である低反発ウレタン用ポリイソシアネートH−9609B(第一工業製薬(株)社製の商品名)58.9gを加えて撹拌し、80℃に加熱した発泡用の金型に流し込み室温で発泡させた。得られた発泡体を、縦50cm横50cm高さ10cmに裁断して、担持体無機物を含有したウレタン発泡体Eを得た。
【0063】
(比較例1)
銅イオン担持レーヨンDタイプ(デオメタフィ:大和紡績(株)社製の商品名、繊度2.2dtex)を、グラインドミルを用いて粉砕し、微細断長0.2mmの微細繊維とした。
【0064】
発泡剤を含むポリオール成分であるHYCEL F−271ポリオール(東邦化学工業(株)社製の商品名)の290gに鉄フタロシアニンジスルホン酸0.2gを入れて混合溶解した後、上記で得られた微細繊維5gを入れ、よく撹拌して均一に分散させた。そこにポリイソシアネート成分であるHYCEL 114Pポリイソシアネート100gを加えて撹拌し、発泡用の型に流し込んで室温にて発泡させたところ、ウレタン発泡体の硬化反応が阻害され、ウレタン発泡体が得られなかった。
【0065】
(比較例2)
発泡剤を含むポリオール成分である低反発ウレタン用ポリオールH−9609A(第一工業製薬(株)社製の商品名)の100gと、ポリイソシアネート成分である低反発ウレタン用ポリイソシアネートH−9609B(第一工業製薬(株)社製の商品名)58.9gとを混合、撹拌し、80℃に加熱した発泡用の金型に流し込み室温で発泡させた。得られた発泡体を、縦50cm横50cm高さ10cmに裁断して、ウレタン発泡体を得た。
【0066】
(評価)
1.消臭性試験
実施例2、4、及び比較例2で得たウレタン発泡体を縦5cm横5cm高さ5cmに裁断して、悪臭の原因となるアンモニア、硫化水素及び酢酸の吸着力を測定した。
【0067】
容量が5リットルの公害分析用バッグ(商品名テドラーバッグ)に実施例2、4、及び比較例2で得られた各ウレタン発泡体を入れ、臭気発生物質としてアンモニアと、無臭空気とを混合して、アンモニアの初濃度が100ppm、容積が5リットルとなるように注入した。注入時点を開始時間とし、経時毎にガス検知管でバッグ内のアンモニア濃度を測定した。臭気発生物質として、硫化水素(初濃度が4ppm)、酢酸(初濃度が50ppm)を用いた場合も同様にして測定した。測定結果を表1に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
表1から明らかなとおり、本発明のウレタン発泡体は、アンモニア、硫化水素、酢酸に対して、それぞれ優れた消臭性能が確認された。
【0070】
2.酵素免疫測定法(ELISA法)によるダニアレルゲン吸着試験
実施例2〜4及び比較例2で得たウレタン発泡体を試料とし、ELISA法を用いてダニアレルゲンの吸着力を測定した。
【0071】
ダニアレルゲン抗原溶液(精製ダニアレルゲンDerfII:アサヒビール社製の商品名)(1μg/mL)の200μL中に、各試料2mgを入れ、25℃で1時間浸漬させた。試料の入った溶液を10000rpmで3分間遠心分離した後、上澄み液100μLをELISA法で測定した。
【0072】
ELISA法での測定方法は以下のとおりである。
【0073】
(2−1)抗原のコーティング
マイクロプレート(塩化ビニル製96ウエルプレート、Dynatech社製)に、前記上澄み液を100μL/ウエル注入し、25℃で2時間維持した。その後、前記上澄み液をウエルから除去した。PBS溶液で3回ウエルを洗浄した。
【0074】
(2−2)BSAによるブロッキング
BSA溶液(BOVINESERUMALBUMIN:VECTOR社製の商品名)(1%(w/v))を、前記マイクロプレートに100μL/ウエル注入し、25℃で1時間維持した。その後、前記上澄み液をウエルから除去した。0.05%Tween−PBS溶液で1回ウエルを洗浄した。
【0075】
(2−3)抗原への1次抗体の反応
前記マイクロプレートにダニアレルゲン抗体溶液(抗Derf2モノクローナル抗体:アサヒビール社製の商品名)(5μg/mL)を、100μL/ウエル注入し、25℃で2時間維持した。
【0076】
(2−4)酵素標識された2次抗体の反応
ビオチン(Biotin)標識された抗マウスIgG(H+L)抗体溶液(BIOTINYLATED ANTI−MOUSE IgG(H+L):VECTOR社製の商品名)(1μg/mL)を、前記マイクロプレートに100μL/ウエル注入し、25℃で2時間維持した。その後、前記抗体溶液をウエルから除去した。0.05%Tween−PBS溶液で1回ウエルを洗浄した。
【0077】
(2−5)アビジン(AVIDIN)による修飾
アビジン溶液(ALKALINE PHOSPHATASE AVIDIN D:VECTOR社製の商品名)(100unit)を、前記マイクロプレートに100μL/ウエル注入し、25℃で0.5時間維持した。その後、前記上澄み液をウエルから除去した。0.05%Tween−PBS溶液で3回ウエルを洗浄した。
【0078】
(2−6)発色基質との反応
PNPP溶液(P−NITROPHENYL PHOSPHATE:VECTOR社製の商品名)(500μg/mL)を、前記マイクロプレートに100μL/ウエル注入し、25℃で10分間維持した。その後、5N NaOH水溶液を100μL/ウエルに注入し、反応を停止させた。
【0079】
(2−7)測定
マイクロプレートリーダー(MICROPLATE READER Model 550:BIO−RAD社製の商品名)を用いて、405nmの吸光度を測定し、各試料に含まれるダニアレルゲンの濃度を定量した。
【0080】
各試料について、ダニアレルゲン抗原溶液への浸漬から測定までを3回繰り返して行った。測定結果を表2に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
表2から明らかなとおり、本発明のウレタン発泡体は、ダニアレルゲン吸着試験を3回繰り返しても吸着性能が劣ることなく、優れた吸着能を示した。
【0083】
比較例2は前記金属フタロシアニン化合物、微細繊維、担持体無機物を含まないウレタン発泡体であるが、ダニアレルゲンの吸着が見られたことから、一般的なウレタン発泡体がダニアレルゲンの温床になる可能性が示唆された。本発明のウレタン発泡体は、比較例2のウレタン発泡体に比べて優れたダニアレルゲンの吸着能を示した。
【0084】
3.NO及びSOの除去力試験
実施例2、4及び比較例2のウレタン発泡体を試料とし、NO及びSOの除去力を以下のようにして測定した。
【0085】
(3−1)二酸化窒素の吸着試験
金属銅2gに6N硝酸12ccを作用させ、生成したガスを下方置換で捕集したものを原ガス(NO)とした。容量が5リットルの公害分析用バッグ(商品名テドラーバッグ)に、各試料の1gを入れ、前記原ガス(NO)と無臭空気とを混合して、NOの初濃度が30ppm、容積が5リットルとなるように注入した。注入時点を開始時間とし、経時毎にガス検知管でバッグ内のNO濃度を測定した。測定結果を表3に示す。
【0086】
(3−2)二酸化硫黄の吸着試験
金属銅2gに6N硫酸3ccを作用させ、生成したガスを下方置換で捕集したものを原ガス(SO)とした。容量が5リットルの公害分析用バッグ(商品名テドラーバッグ)に、各試料の1gを入れ、前記原ガス(SO)と無臭空気とを混合して、SOの初濃度が30ppm、容積が5リットルとなるように注入した。注入時点を開始時間とし、経時毎にガス検知管でバッグ内のSO濃度を測定した。測定結果を表3に示す。
【0087】
【表3】

【0088】
表3から明らかなように、本発明のウレタン発泡体は、二酸化窒素、二酸化硫黄とも24時間後には55〜94%程度吸着し、比較例2のウレタン発泡体に比べて優れた吸着能を示した。
【0089】
以上の結果から、本発明のウレタン発泡体は優れた消臭性能、ダニアレルゲン吸着性能、NO、SO除去性能を有することが確認された。
【0090】
本発明を適用するゴム発泡体を製造した例を実施例6、7に、本発明を適用外のゴム発泡体を製造した例を比較例3に、それぞれ示す。
【0091】
(実施例6)
下記表4に示す各種原料を準備した。
【0092】
【表4】

【0093】
前記担持体無機物として、鉄フタロシアニンオクタカルボン酸を含有する液体に焼成カオリンの粉末を浸漬した後、粉砕して、粒径が50μmの鉄フタロシアニンオクタカルボン酸が7質量%担持したカオリン粉末とした。次に、このカオリンの粉末に対して実施例5と同様の方法でポリアリルアミンを付与したカオリン粉末を用いた。
【0094】
まず、ゴムの練り工程における素練り工程で、原料ゴム(エチレンプロピレンゴム)と粘着付与剤を混合し、ニーダーを用いて約15分素練りを行った。次いで、混合練り工程で、素練り生地に各種添加剤を加えて約50分混合練りを行った。混合練りした生地を約24時間熟成させた後、オープンロールで厚さ7mm、たて150mm、よこ150mmの未加硫シートを作製した。
【0095】
前記未加硫シートを150℃に加熱したオーブンの中に入れ、加圧せずに35分間で加硫し、発泡させて担持体無機物を含有するゴム発泡体を得た。
【0096】
(実施例7)
担持体無機物の添加量を136質量部に代えた以外は、実施例6と同様の方法で、担持体無機物を含有するゴム発泡体を得た。
【0097】
(比較例3)
担持体無機物に代えて、通常のカオリンを25質量部とした以外は、実施例6と同様の方法で、ゴム発泡体を得た。
【0098】
(ゴム臭の評価)
5名のモニターにゴム発泡体を嗅いでもらい、ゴム臭がほとんどしなくなったものを○、ゴム臭が残っているが、少なくなったものを△、変わらない、またはほとんど変わらないものを×として3段階で評価した。結果を表5に示す。
【0099】
【表5】

【0100】
実施例6は、比較例3に比べ若干発泡倍率が低下したが、安定して半連泡が形成されていた。実施例6、7のゴム発泡体は、独特のゴム臭が低減しており、特に実施例7はゴム臭がほとんどしなくなっていた。
【0101】
(SDS−PAGEによる評価)
SDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動)により、本発明のゴム発泡体のアレルゲン処理能を評価した。
【0102】
サンプルカップにダニ抗原(DerfII)溶液100μg/mL×50μLと、ゴム発泡体を1mm角に切断した試料を加えて、25℃、1000rpmで撹拌して、1時間後および48時間後に、前記溶液を各20μL採取し、それぞれ等量のBufferを加えて3分間ボイルしたものをサンプルとした。
【0103】
アクリルアミド濃度(%T)を12%に設定し、一般的な方法によりゲルを作製した後、15mA、120Vの条件で泳動した。泳動後のゲルをCBB(Coomasie Brilliant Blue)染色して、スキャナーでゲルをスキャンした。
【0104】
泳動結果を図1に示す。図1は、実施例6、7で得られたゴム発泡体とアレルゲン溶液とを1時間及び48時間撹拌して採取したサンプルのSDS−PAGEのスポットである。また、CTRはブランク、A、Bは実施例6のサンプル、C、Dは実施例7のサンプルのスポットである。スポットの濃淡は蛋白質の濃度が高いほど濃くなり、その濃度が低いほど薄くなる。図1から明らかなように、実施例6、7とも、反応時間48時間でスポットが消失した。これは、本発明のゴム発泡体がアレルゲン溶液中のアレルゲン蛋白質を吸着した、もしくはアレルゲン蛋白質を変性させたと推定される。したがって、本発明のゴム発泡体は、アレルゲン処理能を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0105】
消臭性能、アレルゲン分解性能を付与した本発明の発泡体は、スギ花粉などによる花粉症の緩和用マスク、災害現場で使用できる消臭・防疫マスクのような医療用マスクにも利用可能である。また、NOやSOの除去力を付与した本発明の発泡体は、屋外、屋内のNOやSOが存在する環境下において、それらが原因と考えられる疾患予防用のフィルター、マスクといった医療分野でも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】ゴム発泡体とアレルゲン溶液とを撹拌して採取したサンプルの泳動結果をに示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(I)
【化1】

(式(I)中、MはFe、Co、Mn、Ti、V、Ni、Cu、Zn、Mo、W、Osから選択される金属)で示される金属フタロシアニン化合物、または/および該金属フタロシアニン化合物を天然繊維、合成繊維、半合成繊維、再生繊維から選ばれる繊維に担持して微細断した微細繊維、または/および該金属フタロシアニン化合物を無機物に担持した担持体無機物が、分散して含まれることを特徴とする発泡体。
【請求項2】
前記発泡体が、ウレタン発泡体であることを特徴とする請求項1に記載の発泡体。
【請求項3】
前記発泡体が、ゴム発泡体であることを特徴とする請求項1に記載の発泡体。
【請求項4】
前記ゴム発泡体が天然ゴム、または/およびスチレンブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム、ウレタンゴム、アクリルゴムから選ばれる少なくとも一種類のゴムであることを特徴とする請求項3に記載の発泡体。
【請求項5】
前記金属フタロシアニン化合物の含有量が0.01〜5質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の発泡体。
【請求項6】
前記微細繊維の含有量が1〜30質量%であることを特徴とする請求項1に記載の発泡体。
【請求項7】
前記微細繊維が湾曲した形状であることを特徴とする請求項1または6に記載の発泡体。
【請求項8】
前記担持体無機物の含有量が1〜50質量%であることを特徴とする請求項1に記載の発泡体。
【請求項9】
前記無機物が、タルク、カオリン、珪藻土、マイカ、シリカ、クレー、ベントナイト、ゼオライト、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、及びそれらの焼成物から選ばれる無機物であることを特徴とする請求項1または8に記載の発泡体。
【請求項10】
ポリオールに前記金属フタロシアニン化合物、または/および該金属フタロシアニン化合物を天然繊維、合成繊維、半合成繊維、再生繊維から選ばれる繊維に担持して微細断した微細繊維、または/および該金属フタロシアニン化合物を無機物に担持した担持体無機物を混合して溶解または分散させ、さらにポリイソシアネートと発泡剤とを加えて混合、発泡させてウレタン発泡体を形成させることを特徴とする発泡体の製造方法。
【請求項11】
ゴムの練り工程において、原料ゴムに前記金属フタロシアニン化合物、または/および該金属フタロシアニン化合物を天然繊維、合成繊維、半合成繊維、再生繊維から選ばれる繊維に担持して微細断した微細繊維、または/および該金属フタロシアニン化合物を無機物に担持した担持体無機物、発泡剤、及び加硫剤を混合して溶解または分散させ、ゴムの加硫工程においてゴムを加硫及び発泡させてゴム発泡体を形成させることを特徴とする発泡体の製造方法。
【請求項12】
前記微細繊維または/および前記担持体無機物は、金属フタロシアニン化合物を担持した後ポリアミンにより酸性を中和し、乾燥したものであることを特徴とする請求項10または11に記載の発泡体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−265538(P2006−265538A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−45554(P2006−45554)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(804000015)株式会社信州TLO (30)
【出願人】(000002923)大和紡績株式会社 (173)
【Fターム(参考)】