説明

欠陥修正装置及び欠陥修正方法

【課題】回転工具を用いてワーク表面に存在する欠陥を補修する欠陥修正装置を提供する。
【解決手段】本発明による欠陥修正装置は、欠陥修正されるべきワーク(4)を保持するワーク保持ステージ(3)と、ワーク保持ステージと対向するXY面内で移動可能であると共にXY面と直交するZ軸方向に移動可能な3次元ステージと、3次元ステージに装着され、ワークの表面を光ビームにより走査し、ワーク表面に存在する欠陥を検出する欠陥検出ユニット(7)と、3次元ステージに装着され、検出された欠陥を回転研削装置により除去する研削ユニット(8)と、研削ユニットを制御する研削ユニット制御手段と(40)と、ワーク保持ステージに保持されたワークと研削ヘッドとの間の間隔を検出する間隔検出手段(10)とを具える。研削ヘッドのZ軸方向の位置は、ワーク表面と研削ヘッドとの間隔を基準として制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタのようなワークの表面に存在する微小な突起欠陥を回転研削装置により除去する欠陥修正装置及び欠陥修正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルタ基板や透明電極基板等の各種基板表面に存在する微小な突起欠陥を除去又は補修する装置として、研磨テープを走行させることにより微小な突起欠陥を研磨する突起欠陥補修装置が実用化されている(例えば、特許文献1参照)。この突起欠陥補修装置では、研磨テープを収納した収納リールと研磨テープを巻き取る巻取りリールとの間に研磨テープを走行させ、走行する研磨テープにより突起欠陥が研磨されている。この研磨テープを用いる突起欠陥補修装置では、研磨テープのコストが比較的高価であるため、ランニングコストが高価になる欠点がある。さらに、研磨テープの厚さにバラツキがあるため、突起欠陥の研磨量を高精度に制御することが困難であった。
【0003】
カラーフィルタの表面に存在する突起欠陥を除去する装置として、回転工具を用いて突起欠陥を研削することにより除去する異物修正装置が既知である(例えば、特許文献2参照)。この既知の異物修正装置では、固定台に圧電素子及び回転軸を介して加工工具が装着されている。そして、加工工具はエンドミルもしくは円柱状の砥石などにより構成され、これら円柱状の加工工具の下端面をカラーフィルタの表面と平行な方向に移動させ、その回転する下端面を加工面としてカラーフィルタの表面上に存在する突起欠陥が研削されている。
【0004】
また、加工工具とカラーフィルタ表面との間の間隔は、加工工具及び回転軸に設けた空気路を介して空間流が供給され、流路中に配置した流量計もしくは圧力計からの出力信号を用いて制御されている。すなわち、流量計から出力信号に基づいて固定台に取り付けた圧電素子への駆動電圧が制御され、圧電素子の伸縮により加工工具とカラーフィルタ表面との間のギャップが制御されている。
【0005】
【特許文献1】特許第3037849号公報
【特許文献2】特開平7−253507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した回転工具を用いてカラーフィルタの表面に存在する突起欠陥を除去する装置は、消耗品である研磨テープを用いないため、ランニングコストが安価になる利点がある。しかしながら、上述した既知の異物修正装置では、回転工具がエンドミルにより構成されているため、回転工具の回転軸に僅かな傾きが生ずると、エンドミルの側周端がカラーフィルタと当接し、カラーフィルタに損傷を与える危険性があった。さらに、突起欠陥を除去する際、エンドミルの先端をカラーフィルタ表面に対して1〜数μm程度間隔に近接させ、この状態でエンドミルをカラーフィルタ表面に平行に移動させる必要があり、エンドミルをカラーフィルタ表面に近づける際オーバーシュートし易く、除去対象物以外の部位のカラーフィルタに損傷を与えるおそれがあった。すなわち、従来の回転工具を用いた異物修正装置では、回転工具の取付け等に僅かな誤差が生じるだけでワーク表面に損傷を与える不具合が生じてしまう。
【0007】
本発明の目的は、回転工具を用いてワーク表面に存在する欠陥を高精度に除去する欠陥修正装置を提供することにある。
さらに、本発明の目的は、回転工具に僅かな装着誤差等が生じても、ワークに対して損傷を与えない欠陥修正装置を実現することにある。
さらに、本発明の目的は、研磨中の研削ヘッドの移動量が予め規定され、研削ヘッドがオーバーシュートしにくい欠陥補修装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による欠陥修正装置は、欠陥修正されるべきワークを保持するワーク保持ステージと、
前記ワーク保持ステージと対向するXY面内で移動可能であると共にXY面と直交するZ軸方向に移動可能な3次元ステージと、
3次元ステージを駆動制御するステージ制御手段と、
前記3次元ステージに装着され、検出された欠陥を回転研削装置により除去する研削ユニットと、
研削ユニットを制御する研削ユニット制御手段と、
ワーク保持ステージに保持されたワークと研削ヘッドとの間の間隔を検出する間隔検出手段とを具えることを特徴とする。
【0009】
本発明では、ワーク表面に存在する欠陥を回転研削装置により除去する。そして、回転研削装置の研削ヘッドのZ軸方向の位置は、研削ヘッドとワークとの間の間隔を検出する間隔検出手段からの出力信号に基づいて制御する。このように構成すれば、研削ヘッドのZ軸方向の位置は、ワーク表面と研削ユニットの先端部分である研削ヘッドとの間隔情報により制御されるので、研削ヘッドがワーク表面に当接して損傷を与える不具合が解消される。
【0010】
本発明による欠陥修正装置においては、欠陥を除去するに際し、前記研削ユニット制御手段は、前記間隔検出手段により検出された間隔情報に基づき、研削ユニットを、ワーク表面からZ軸方向に予め定めた間隔だけ離間したスタート位置まで移動させ、当該スタート位置を研削開始の基準位置として設定する。そして、スタート位置から回転研削装置を駆動しながらZ軸方向に予め定めた距離だけワークに近づくように移動させ、その間に突起欠陥を研削し、その後ワークから離れるように移動させることを特徴とする。
【0011】
本発明では、研削に際し、研削ヘッドをワーク表面から相当な間隔だけ離間した研削開始の基準位置に移動させる。そして、基準位置から予め定めた距離だけワークに近く付くように移動させ、その間に突起欠陥を研削ないし研磨して除去する。従って、間隔検出手段により研削ヘッドの最降下点を検出する構成としていないので、オーバーシュトに起因する過剰研削が生ずる不具合が解消される。
【0012】
本発明による欠陥修正装置の好適実施例は、研削ユニットは、回転軸を有しワーク表面を研削する研削工具と、研削工具を回転させる回転駆動手段と、研削工具の先端部分を包囲するハウジングとを有し、当該研削工具の先端部分は前記ハウジングのほぼ中心に位置することを特徴とする。
【0013】
本発明による欠陥修正装置の好適実施例は、研削工具の回転軸線は、Z軸に対して傾斜するように設定されていることを特徴とする。さらに、研削工具の研削ヘッドの外形は、ワークに接触した際、ワーク表面と点接触するように湾曲面として形成する。研削工具の外形を、ワークと点接触するように湾曲面に形成することにより、研削工具の装着誤差が生じても、局部的に過剰研削が生ずる不具合が解消される。
【0014】
本発明による欠陥修正装置の好適実施例は、研削工具はロータリーカッタにより構成され、当該ロータリーカッタの研削ヘッドは、ワーク表面と接触した際、点接触するように構成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明による欠陥修正装置において、間隔検出手段は、前記研削ヘッドのハウジングにより形成される内部空間と連通する導管と、当該導管に接続され、前記ハウジングの内部空間に空気流を供給し又はハウジングの内部空間の空気を吸引するポンプと、前記導管内を流通する空気流の流量もしくは空気圧力を検出する検出手段とを有し、当該検出手段からの出力信号に基づいてワークと欠陥除去ユニットとの間の間隔を検出することを特徴とする。エァマイクロ方式の間隔検出手段は、研削ヘッドとワークとの間において、数mmにわたるダイナミックレンジが形成されるので、間隔検出手段により検出された間隔情報を用いて研削開始の基準位置を設定し、突起欠陥の高さにかかわらず、当該基準位置から予め定めた距離だけ研削ヘッドを降下させることにより突起欠陥を研削除去することが可能である。従って、ワーク表面にうねりが形成されている場合でも、ワーク表面に損傷を与えることなく突起欠陥を除去することができる。
【0016】
本発明による欠陥修正装置は、欠陥修正されるべきワークを保持するワーク保持ステージと、
前記ワーク保持ステージと対向するXY面内で移動可能であると共にXY面と直交するZ軸方向に移動可能な3次元ステージと、
3次元ステージを駆動制御するステージ制御手段と、
3次元ステージに装着され、ワークの表面を光ビームにより走査し、ワーク表面を観察する光学ユニットと、
前記3次元ステージに装着され、検出された欠陥を回転研削装置により除去する研削ユニットと、
ワーク保持ステージに保持されたワークと研削ユニットの研削ヘッドとの間の間隔を検出する間隔検出手段と、
間隔検出手段からの出力信号に基づいて研削ユニットのZ軸方向の位置を制御する研削ユニット制御手段と、
前記光学ユニット及び研削ユニットを、ワーク表面の欠陥と対向する位置と待機位置との間で切り換える切り換え手段とを具え、
研削ユニットにより研削されたワークの部位を光学ユニットにより観察するように構成したことを特徴とする。
【0017】
3次元ステージに研削ユニットと共に光学ユニットを配置することにより、欠陥修正の前後のワーク表面の状態を確認することができる。特に、研削ユニットと光学ユニットとが同一のステージ上に装着されているので、同一のアドレス情報を用いて欠陥の部位が特定されるため、研削ユニットと光学ユニットとを同一軸上で動作させることができ、レビューの操作が一層正確になる。さらに、光学ユニットは、共焦点光学系により構成し、当該共焦点光学系によりワーク表面の2次元画像を撮像するだけでなく、突起欠陥の高さを計測することも可能である。
【0018】
本発明による欠陥修正方法は、研削ヘッドを有する回転研削装置によりワーク表面に存在する突起欠陥を除去する欠陥修正方法であって、
間隔検出手段によりワークの表面と研削ヘッドとの間の間隔を検出する工程と、
検出された間隔情報に基づき、研削ヘッドをワーク表面から予め定めた第1の距離だけ離間したス研削開始の基準位置まで移動させる工程と、
研削ヘッドを、回転研削装置を駆動させながら、基準位置から予め定めた第2の距離だけワークに近づくように移動させ、その間に突起欠陥を研削する工程と、
その後、研削ヘッドをワークから離れるように移動させる工程とを具えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、研削ユニットは、回転研削装置を用いて突起欠陥を除去するので、ランニングコストが安価になる。
さらに、研削工具の先端の研削部分の外形を湾曲面とし、ワーク表面と点接触するので、研削工具の装着誤差が生じてもワーク表面に損傷を与える不具合が解消される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は本発明による欠陥修正装置の全体構成を示す線図である。床面1上に架台2を設置し、架台2上にワーク保持ステージ3を配置する。ワーク保持ステージ3上にワーク4を配置し、例えば真空吸着によりワーク4を保持する。本例では、ワークとしてカラーフィルタを用い、カラーフィルタ基板の表面上に存在する突起欠陥を光学的に検出し、検出した突起欠陥を回転研削装置により除去する。架台2上には、ワーク保持ステージと対向するXY面内及びXY面と直交するZ軸方向に移動可能な3次元ステージを配置する。3次元ステージは、XY面内で移動可能なX−Yステージ5と、及びX−Yステージ5上に配置されZ軸方向に移動可能なZステージ6とを有する。Zステージ6には、ワーク4の表面に存在する突起欠陥を光学的に検出する光学ユニット7と、検出した突起欠陥を回転研削装置により除去する研削ユニット8とを設ける。これら光学ユニット7及び研削ユニット8は、Zステージ6に対してZ軸方向に移動可能に装着する。3次元ステージの駆動制御は、XYZステージ駆動回路9からの制御信号により行われ、光学ユニット7及び研削ユニット8は、3次元ステージを介してワーク4と対向するX−Y面内において移動可能であると共にX−Y面と直交するZ軸方向にも移動可能となる。
【0021】
光学ユニット7及び研削ユニット8の位置は、切換手段(図示せず)により待機位置と動作位置との2つの位置の間で切り換えられる。欠陥を検出する検査工程において光学ユニット7はワークと対向する動作位置に位置し、研削ユニット8は待機位置に待機する。欠陥検査工程から欠陥研削工程に切り換わる際、光学ユニット7は動作位置から待機位置に切り換わり、研削ユニット8は待機位置からワークと対向する動作位置に切り換わる。X−Yステージ5及びZステージ6は、XYZステージ制御回路9から出力される制御信号により駆動制御される。X−Yステージ5には、位置検出装置10を設け、欠陥検査工程において検出された欠陥のXYアドレスを検出し、欠陥のアドレス情報を主制御回路に送出する。また、欠陥を修正する際、欠陥メモリに記憶されているアドレス情報を用いてX−Yステージ5を駆動し、研削ユニットを欠陥の上方に位置させ、研削ユニットを降下させながら研削ユニットを駆動して欠陥を除去する。このように、欠陥検出を行う光学ユニットと欠陥を除去する研削ユニットとを同一ステージ上に一体的に配置することにより、同一座標系を用いて欠陥検出と欠陥修正とが行われ、一層高い精度で欠陥修正を行うことができる。
【0022】
光学ユニット7は共焦点光学系により構成され、光ビームを発生するレーザ光源と、レーザ光源を例えばX方向に延在するライン状ビームに変換する光学系と、ライン状光ビームをY方向に偏向するビーム偏向装置と、光ビームをワーク表面に向けて投射する光学系と、ワーク表面からの反射光を受光するリニァイメージセンサとを有し、ワーク表面を2次元走査する。ワーク表面に突起欠陥が存在すると、光検出器に入射するワーク表面からの反射光や散乱光が変化するので、光検出器からの出力信号を欠陥検出回路に供給し、基準信号と比較することにより欠陥検出が行われる。同時に、位置検出回路10から出力されるアドレス信号も主制御回路に供給することにより、検出された欠陥のアドレスが検出され、検出された欠陥アドレスを欠陥メモリに記憶する。尚、欠陥検出を行う光学ユニットは一例であり、他の種々の方式の欠陥検出装置を用いることが可能である。また、光学ユニットは、欠陥検査に用いられるだけでなく撮像光学系として用いることも可能である。例えば、撮像光学系として利用する場合、研削処理した後ユニットの切り換えを行い、研削された部位のレビューにも利用することが可能である。
【0023】
光学ユニット7及び研削ユニット8は、Zステージ6に対してZ軸方向に移動可能に装着する。光学ユニット7及び研削ユニット8には、空気流の変化に基づいてワーク表面との間隔を検出する間隔検出手段11及び12(線図的に図示する)をそれぞれ設けると共に駆動モータ(図示せず)をそれぞれ設ける。光学ユニット7及び研削ユニット8とワーク表面との間の間隔は、間隔検出手段11及び12からの出力信号を用い、駆動モータを駆動することにより制御する。従って、欠陥検査工程において、光学ユニット7は、ワーク表面に対して焦点制御された状態でワーク表面を2次元走査する。
【0024】
図2は研削ユニットの一例を示す線図である。研削ユニット8は、ベース部材20を有し、ベース部材20により各種構成要素を支持する。ベース部材20には、研削モータ21を取付け、その回転軸にカップリング22を介して回転工具23を取り付ける。尚、継手はカップリングの他、ギァなどでもよく、且つ軸と工具とは本図では一体であるが、コレットとチャックでも良い。さらに、ベース部材20には、回転工具23の先端側の研削部を包囲するハウジング24を装着する。ハウジング24は、ワーク4と対向する開口部を有し、断面が円形の内部空間を形成し、その中心に回転工具23の研削ヘッドが位置するように構成する。ハウジング24と回転工具23の回転軸との間には、軸受25及びOリング26を介在させる。
【0025】
ハウジング24の開口部には、リング状のエァノズル27をZ軸方向に移動可能に装着する。回転工具23の先端の研削部はエァノズル27の開口面から例えば50μm程度突出させる。そして、エァノズル27の位置を調整することにより、回転工具の研削ヘッドの突出量が調整される。従って、研削ヘッドが磨耗した場合、エァノズルの位置を調整することによりエァノズルの開口面からの研削ヘッドの突出量を予め定めた所定に値に維持することができる。特に、多数回欠陥修正を行い、回転工具の研削ヘッドが磨耗した場合、エァノズルの開口部からの突出量を調整することにより、研削ヘッドの開口部からの突出量を常時一定の値に維持することができる。
【0026】
本例では、回転工具23は、その回転軸線がZ軸に対して僅かな角度をなすように傾斜させ、回転工具の研削面がワーク表面に対して点接触するように設定する。回転工具として種々の形態の回転工具を用いることができ、本例では、研削ヘッドが球形の回転工具を用いる。回転工具の研削ヘッドの形状として、ワーク表面に対して回転した研削ヘッドが点接触する形態であれば、いかなる形状のものも使用できる。従って、研削ヘッドの外形が湾曲面をした種々の形状のものを用いることが可能であり、球形や半球形、放物形状等の形状の研削ヘッドを用いることができる。このように、回転工具の研削ヘッドの外形を湾曲面として形成し、回転工具の回転軸線をZ軸から僅かな角度だけ傾斜させ、研削ヘッドをハウジングの中心に位置させることにより、回転工具の軸線が所定の角度から変位したり或いは装着誤差等が生じてもワーク表面に損傷を与える不具合が解消される。
【0027】
さらに、回転工具として、ロータリーカッタを用いることが可能である。ロータリーカッタは、超硬合金で出来ているため、カラーフィルタ基板等のワークを研磨ないし研削する場合、多数回使用しても磨耗量が微小であるため耐久性に優れている利点がある。尚、回転工具としてロータリーカッタを用いる場合、ロータリーカッタの回転包落線がワーク表面に対して点接触する形状のもの用いるのが好ましい。
【0028】
研削ユニットの各種構成部材を保持するベース部材20は、Zステージ6に対してZ軸方向に移動可能に装着され、当該ベース部材20は、Zステージ6に固定した駆動モータ28に連結する。駆動モータ28は研削ユニットをZ軸方向に移動させる駆動手段として機能し、駆動モータ28が駆動することにより研削ユニット8はZ軸方向に沿って移動する。従って、回転工具の研削ヘッドは、ワーク4に近づく方向及びワーク4から離れる方向に移動する。
【0029】
次に、研削ユニット8とワーク4との間の間隔を検出する間隔検出手段について説明する。本例では、間隔検出手段として、エァマイクロ方式を利用する。エァマイクロァ方式の間隔検出手段は、数mmの範囲において微小距離の間隔を高精度に検出することができ、数10μmの突起欠陥を補修する際の研削ヘッドの位置制御に好適である。エァマイクロユニット30はエァポンプ31を有し、エァポンプ31に導管を接続する。当該導管は2本の分路に分岐され、第1の導管32aは研削ユニットのハウジング24の内部空間と連通し、第2の導管32bは調整バルブを介して大気中に開放する。第1の導管32aと第2の導管32bとの間に差圧を発生させる透明な流路33を形成し、当該流路33内に鉄片34を直立配置する。本例では、エァポンプ31は空気流を吸引するものとする。エァポンプ31により空気を吸引すると、2つの導管内に空気流の流量に対応した空気圧が発生し、第2の導管32bに生ずる空気圧は基準圧力として利用する。第1の導管32aの空気流の流量に対応した空気圧は、研削ユニット8とワーク4との間の間隔、すなわち、エァノズル24の開口部とワークとの間の間隔に対応して変化する。従って、第2の導管内の圧力と第1の導管内の圧力との差圧を検出することにより、研削ユニットとワークとの間の間隔が検出される。第1の導管と第2の導管との間に圧力差が発生すると、流路33内に配置した鉄片34が直立位置から変位するため、1次元イメージセンサやフォトセル等の光学装置35を用いて鉄片34の変位量を光学的に測定することにより2本の導管間の差圧が検出される。検出された差圧は、後述する主制御回路に供給し、研削ユニットとワークとの間の間隔を制御するために用いる。尚、本例では、エァポンプによりハウジングの内部空気内の空気を吸引する構成としたが、ハウジング24の内部空間に空気を吹き出す構成とすることも可能である。
【0030】
図3は本発明による欠陥修正装置の回路構成の一例を示す回路図である。本例では、主制御回路40を用い、主制御回路40により欠陥検査工程及び欠陥研削工程における各種駆動装置を制御する。主制御回路40にはXYZ制御回路9を接続し、XYZ制御回路9からの制御信号によりX−Yステージ5及びZステージ6を駆動制御する。欠陥検査工程において、光ビームによりワーク表面をX方向に偏向すると共にX−YステージをY方向に移動させてワーク表面を2次元走査する。さらに、主制御回路40には位置検出回路10を接続し、X−Yステージの位置情報を主制御回路40に供給する。光学ユニット7からの出力信号は欠陥検出回路41に供給され、欠陥検出回路において突起欠陥が検出され、欠陥検出情報が主制御回路に供給される。主制御回路では、入力した欠陥検出情報と位置検出回路10から供給されるアドレス情報とに基づいて検出された欠陥のアドレスを求め、得られた欠陥アドレスを欠陥メモリ42に記憶する。
【0031】
主制御回路40には、エァポンプ駆動回路43を接続し、欠陥研削工程においてエァポンプ31を駆動する。さらに、主制御回路には、光学素子35を接続し、バイパス流路33に生ずる差圧情報を主制御回路に供給する。主制御回路では、入力した差圧情報に基づいて研削ヘッドとワークとの間の間隔を算出する。主制御回路には、エァモータ駆動回路44を接続し、ワークと研削ヘッドとの間の間隔情報に基づいてエァモータ駆動信号を発生し、エァモータ28を駆動させる。さらに、主制御回路40には、研削モータ駆動回路45を接続し、欠陥研削工程において研削モータ21を駆動する。
【0032】
次に、本発明による欠陥研削方法について説明する。本発明では、エァマイクロ方式の間隔検出手段により研削ヘッドとワークとの間の間隔を検出し、検出された間隔情報を用いて研削ヘッドのZ軸方向の位置制御を行い、研削ユニットによる研削量を制御する。すなわち、研削ヘッドのZ軸方向の位置を検出するのではなく、ワークとの間の間隔を検出し、検出された間隔を基準として研削ヘッドのZ軸方向の位置を制御する。本例では、研削ヘッドのZ軸方向の基準部位としてエァノズルの先端の位置を用い、回転工具の先端はエァノズルから突出させ、その突出量は一例として50μmに設定する。研削開始の基準間隔として、ワークと研削ヘッドとの間隔が例えば100μmの距離だけ離れた位置を基準間隔位置として規定する。そして、研削ヘッドとワークとの間の間隔が100μmの基準間隔位置(スタート位置)から回転研削装置を駆動して研削を開始し、検出された突起欠陥の高さにかかわらず、研削ユニットをZ軸方向に予め定めた距離50μmだけ降下させ研削を終了する。従って、研削を開始する基準間隔である100μmだけ離間した位置を基準とし、その位置から予め定めた距離だけ研削ヘッドを降下させることにより、回転工具の先端の位置はワーク表面と一致し、突起欠陥が研削ないし研磨されてほぼ完全に除去される。この時点において、研削ヘッドとワークとの間には50μmの間隔が形成されているので、この状態においても間隔検出手段は正常に動作することができる。このようにワークと研削ヘッドとの間の間隔を基準として研削ヘッドの位置を制御すれば、ワーク表面に波うち等形成されていても、ワーク表面に損傷を与える不具合が解消される。また、研削ヘッドは、基準間隔位置から予め定めた距離だけ移動するだけであるから、オーバーシュートの発生も防止される。
【0033】
図4は本発明による欠陥研削方法のアルゴリズムを示すフローチャートである。初めに、光学ユニットによる欠陥検査が終了した後、欠陥研削工程に移行する。初めに、光学ユニットを待機位置に切り換えると共に研削ユニットを動作位置に切り換える(ステップ1)。
【0034】
次に、欠陥メモリから欠陥のアドレスを読み出し(ステップ2)、X−Yステージを駆動して研削ユニットを欠陥の上方に位置させる(ステップ3)。
【0035】
次に、間隔検出手段であるエァマイクロシステムを駆動して研削ヘッドとワークとの間の間隔を検出する(ステップ4)。検出された間隔情報に基づき、研削ヘッドをワークから予め定めた間隔(100μm)だけ離間した基準間隔位置まで移動させる(ステップ5)。
【0036】
次に、回転研削装置を駆動させながら、予め定めた50μmの距離だけ研削ヘッドを降下させ、その間に突起欠陥を研削除去する(ステップ6)。
【0037】
研削終了後、研削ヘッドを50μmだけ上昇させ、研削ヘッドを基準間隔位置に戻し(ステップ7)、次の欠陥のアドレスを読み出す(ステップ8)。
【0038】
本発明は上述した実施例だけに限定されず種々の変形や変更が可能である。例えば、ワークと研削ヘッドとの間の間隔を検出する手段として、空気を吸引するエァマイクロ方式を利用したが、空気を吹き出す形態のエァマイクロシステムを用いることが可能である。また、上述した実施例では、研削ユニットのハウジングの内部空間に連通する導管と基準圧力を発生する導管との間の差圧を利用して研削ヘッドとワークとの間の間隔を検出したが、ポンプとハウジングの内部空間との間を連通させる導管内に流量計もしくは圧力計を配置し、導管内を流通する空気流の流量変化や圧力変化に基づいて研削ヘッドとワークとの間の間隔を検出する構成とすることも可能である。
【0039】
上述した実施例では、3次元ステージに欠陥を検出する光学ユニットと欠陥を研削する研削ユニットと装着し、光学ユニットにより検出された欠陥を研削ユニットにより除去する構成としたが、欠陥検査と欠陥研削とを異なる装置として構成し、欠陥検査装置により検出された欠陥のアドレス情報を用いてX−Yステージを駆動して欠陥の修正を行うことも可能である。
【0040】
光学ユニット7は、欠陥検査を行う光学系としてだけではなく、欠陥を観察する観察光学系として利用することが可能である。この場合、研削ユニットにより突起欠陥を研削した後、ユニットの切り換えを行い、光学ユニットを欠陥と対向する位置に切り換えて研削された欠陥を観察(レビュー)することも可能である。さらに、光学ユニットをその光軸方向に移動させながら1次元走査又は2次元走査し、最大輝度値を発生するZ軸方向の位置を計測することにより突起欠陥の高さを測定することも可能である。
【0041】
また、研削を開始するスタート位置の研削ヘッドとワークとの間の間隔や研削ヘッドの降下量は一例であり、適宜設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明による欠陥修正装置の全体構成を示す線図である。
【図2】本発明による研削ユニットの一例を示す図である。
【図3】本発明による欠陥修正装置の回路構成を示す回路図である。
【図4】本発明による欠陥修正方法のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
1 床面
2 架台
3 ワーク保持ステージ
4 ワーク
5 X−Yステージ
6 Zステージ
7 光学ユニット
8 研削ユニット
9 XYZステージ制御回路
10 位置検出回路
11,12 間隔検出手段
20 ベース部材
21 研削モータ
22 カップリング
23 回転工具
24 ハウジング
25 軸受
26 Oリング
27 エァノズル
28 エァモータ
30 エァマイクロユニット
31 エァポンプ
32a,32b 導管
33 流路
34 鉄片
35 光学素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
欠陥修正されるべきワークを保持するワーク保持ステージと、
前記ワーク保持ステージと対向するXY面内で移動可能であると共にXY面と直交するZ軸方向に移動可能な3次元ステージと、
3次元ステージを駆動制御するステージ制御手段と、
前記3次元ステージに装着され、ワーク表面に存在する欠陥を回転研削装置により除去する研削ユニットと、
研削ユニットを制御する研削ユニット制御手段と、
ワーク保持ステージに保持されたワークと研削ユニットの研削ヘッドとの間の間隔を検出する間隔検出手段とを具え、
前記研削ユニット制御手段は、間隔検出手段からの出力信号に基づいて研削ユニットのZ軸方向の位置を制御することを特徴とする欠陥修正装置。
【請求項2】
請求項1に記載の欠陥修正装置において、前記研削ユニットは、3次元ステージに対してZ軸方向に移動可能に装着され、
研削ユニット制御手段は、研削ユニットをZ軸方向に移動させる研削ユニット移動手段を有し、前記間隔検出手段からの出力信号に基づいて研削ヘッドとワークとの間の間隔を制御することを特徴とする欠陥修正装置。
【請求項3】
請求項2に記載の欠陥修正装置において、欠陥を除去するに際し、前記研削ユニット制御手段は、前記間隔検出手段により検出された間隔情報に基づき、研削ユニットを、ワーク表面からZ軸方向に予め定めた間隔だけ離間したスタート位置まで移動させ、その後、前記回転研削装置を駆動しながらスタート位置からZ軸方向に予め定めた距離だけワークに近づくように移動させ、その間に突起欠陥を研削し、その後ワークから離れるように移動させることを特徴とする欠陥修正装置。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載の欠陥修正装置において、前記研削ユニットは、回転軸を有しワーク表面を研削する回転工具と、回転工具を回転させる回転駆動手段と、回転工具の先端部分を包囲するハウジングとを有し、
当該回転工具の先端部分は前記ハウジングのほぼ中心に位置すると共にハウジングの開口面から突出することを特徴とする欠陥修正装置。
【請求項5】
請求項4に記載の欠陥修正装置において、前記回転工具の回転軸線は、Z軸に対して傾斜するように設定されていることを特徴とする欠陥修正装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の欠陥修正装置において、前記回転工具の研削部の外形は、ワークに接触した際、ワーク表面と点接触するように湾曲面として形成されていることを特徴とする欠陥修正装置。
【請求項7】
請求項4又は5に記載の欠陥修正装置において、前記回転工具はロータリーカッタにより構成され、当該ロータリーカッタの研削面は、ワーク表面と接触した際、点接触するように構成されていることを特徴とする欠陥修正装置。
【請求項8】
請求項4から7までのいずれか1項に記載の欠陥修正装置において、前記回転工具は、その研削部の回転包絡面がほぼ球体を形成するように構成されていることを特徴とする欠陥修正装置。
【請求項9】
請求項4から8までのいずれか1項に記載の欠陥修正装置において、前記間隔検出手段は、前記研削ヘッドのハウジングにより形成される内部空間と連通する導管と、当該導管に接続され、前記ハウジングの内部空間に空気流を供給し又はハウジングの内部空間の空気を吸引するポンプと、前記導管内を流通する空気流の流量もしくは空気圧力を検出する検出手段とを有し、当該検出手段からの出力信号に基づいてワークと研削ヘッドとの間の間隔を検出することを特徴とする欠陥修正装置。
【請求項10】
請求項4から9までのいずれか1項に記載の欠陥修正装置において、前記研削ユニットのハウジングの先端に、リング状のエァノズルがZ軸方向に移動可能に装着され、当該エァノズルのZ軸方向の装着位置を調整することにより前記研削工具の研削ヘッドからの突出量が調整されることを特徴とする欠陥修正装置。
【請求項11】
欠陥修正されるべきワークを保持するワーク保持ステージと、
前記ワーク保持ステージと対向するXY面内で移動可能であると共にXY面と直交するZ軸方向に移動可能な3次元ステージと、
3次元ステージを駆動制御するステージ制御手段と、
3次元ステージに装着され、ワークの表面を光ビームにより走査し、ワーク表面を観察する光学ユニットと、
前記3次元ステージに装着され、検出された欠陥を回転研削装置により除去する研削ユニットと、
ワーク保持ステージに保持されたワークと研削ユニットの研削ヘッドとの間の間隔を検出する間隔検出手段と、
間隔検出手段からの出力信号に基づいて研削ユニットのZ軸方向の位置を制御する研削ユニット制御手段と、
前記光学ユニット及び研削ユニットを、ワーク表面の欠陥と対向する動作位置と待機位置との間で切り換える切り換え手段とを具え、
研削ユニットにより研削されたワークの部位を光学ユニットにより観察するように構成したことを特徴とする欠陥修正装置。
【請求項12】
研削ヘッドを有する回転研削装置によりワーク表面に存在する突起欠陥を除去する欠陥修正方法であって、
間隔検出手段によりワークの表面と研削ヘッドとの間の間隔を検出する工程と、
検出された間隔情報に基づき、研削ヘッドをワーク表面から予め定めた第1の距離だけ離間した研削開始の基準位置まで移動させる工程と、
研削ヘッドを、回転研削装置を駆動させながら、基準位置から予め定めた第2の距離だけワークに近づくように移動させ、その間に突起欠陥を研削する工程と、
その後、研削ヘッドをワークから離れるように移動させる工程とを具えることを特徴とする欠陥修正方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−161956(P2008−161956A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−351349(P2006−351349)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000115902)レーザーテック株式会社 (184)
【Fターム(参考)】