説明

次亜塩素酸又は亜塩素酸を含む殺菌水の生成方法、殺菌原料パッケージ及び殺菌水生成キット並びに空間殺菌方法及び装置

本発明の目的は、機械設備を必要とせず、いつでも、新鮮な殺菌水を現場で手軽に生成して、次亜塩素酸又は亜塩素酸による殺菌を実行できる殺菌水の生成方法を提供することである。
このために、本発明は、第1成分である次亜塩素酸塩を入れた第1容器と、第2成分である酸を入れた第2容器との組み合わせを、消費者自らの使用のために提供する。前記第1及び第2容器内の第1及び第2成分は、消費者が使用時に混合したときに、所定の有効塩素濃度で、且つ弱酸性領域又は中性領域のpHレベルを有する殺菌水を生成するように調整されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、広義には、次亜塩素酸又は亜塩素酸による殺菌に関し、より詳しくは、次亜塩素酸又は亜塩素酸を含む殺菌水の生成方法、殺菌原料パッケージ及び殺菌水生成キット並びに空間殺菌方法及び装置に関する。
【背景技術】
殺菌液を手軽に使用する一つの形態として、従来から、圧縮ガス又は液化ガスと共に携帯可能な缶容器に充填された、携帯用缶入りアルコール希釈殺菌液が市販されている。その缶は、一般的に噴霧ノズルを備え、この噴霧ノズルが押し下げられると内部の殺菌液を噴霧する。従って、この種の缶入り殺菌液は手軽な殺菌に便利であるが、食品の殺菌には使用できない。
他方で、消毒用アルコールで殺菌を行うための殺菌スプレーが、特に病院を含む医療現場で広く使用されている。しかし、消毒用アルコールは肌荒れの原因になるので、ユーザ、中でも女性のユーザに、余り歓迎されていない。また、消毒用アルコールによる殺菌は耐性菌の発生を招きかねない。
このような問題を解消する殺菌方法として、次亜塩素酸(HClO)又は亜塩素酸(HClO)による殺菌が知られている。この殺菌方法には、殺菌対象がウイルスから真菌や炭疽菌まで広範であること、これらに対して即効的な殺菌効果を発揮すること、耐性菌を生じさせないこと、といった種々の利点がある。特に次亜塩素酸又は亜塩素酸を含む殺菌水は、弱酸性領域に調整されていれば肌荒れやアレルギー反応を起こすことがないという優れた利点を有する。次亜塩素酸を含む殺菌水の人体に対する安全性は、次亜塩素酸が好中球(多形核白血球とも言う)によって人体内で生成され、体内の殺菌を担っていることからも明らかである。従って、次亜塩素酸による殺菌は、殺菌能力及び人体に対する無害性の観点から、現在知られている種々の殺菌方法の中で、最も望ましい方法であると考えられる。
しかしながら、次亜塩素酸又は亜塩素酸による殺菌には、幾つかの解決すべき問題があり、その一つの問題は、次亜塩素酸を含む殺菌水が経時的に殺菌能力を失うことである。もう一つの問題は、pHレベルによっては有毒ガスが発生することである。以下にこれらの問題をより詳しく述べる。
例えば、次亜塩素酸は、次亜塩素酸ナトリウムなど次亜塩素酸塩の適度にpH調整された水溶液としてのみ存在し得ることが知られている。一般的には、次亜塩素酸ナトリウムは、製造メーカから典型的には6%又は12%の濃度に調整された水溶液の状態で出荷される。この状態の次亜塩素酸ナトリウム水溶液はアルカリ性であり、水及び次亜塩素酸の構成要素であるNa、H、O及びClを、Na、H、OH、OClのイオンの状態で比較的安定的に含んでいる。この状態では、次亜塩素酸ナトリウム水溶液は殺菌水としての効果が弱い。中性又は弱酸性領域にpH調整されると、次亜塩素酸ナトリウム水溶液は次亜塩素酸(HOCl)を高比率で含むことができ、HOCl殺菌水としての効果を発揮する。図54は、書籍名「浄水の技術」(出版社:技報堂出版株式会社)の104頁に掲載されているグラフである。図54は、大腸菌群を99%殺菌するのに、次亜塩素酸イオンOClがHOCl(次亜塩素酸)よりも80倍の時間が必要であることを示している。換言すれば、図54は、次亜塩素酸の殺菌能力がOClイオンの80倍であることを示している。
従って、HOClリッチな殺菌水を得るためには、塩酸のような酸を加えることによって次亜塩素酸ナトリウム水溶液のpHレベルを調整することが非常に重要である。しかし、酸の添加量が過剰であると、次亜塩素酸ナトリウム水溶液は酸性になり、有害な塩素ガスを発生する。
更に、この水溶液は、一旦、十分な量の次亜塩素酸(HOCl)を含むように調整された場合であっても、そのpHレベルは、時間の経過とともに変化しやすく、次亜塩素酸(HOCl)は、長時間、その形を維持することができない。
すなわち、3種の化学種Cl、HOCl、OClの間には、次の構造式で示す平衡関係が存在する。
Cl+HO ⇔ HCl+HOCl (1)
HOCl ⇔ H+OCl (2)
ここで、左辺はpHレベルが低く、右辺はpHレベルが高い。
上述したように、各化学種の存在比率はpHによって支配される。構造式(1)から理解できるように、pHが低くなるほど、塩素ガス(Cl)の比率が高くなる。弱酸性領域及び中性領域では次亜塩素酸(HOCl)の比率が高くなり(構造式(1))、アルカリ領域では次亜塩素酸(HOCl)がHイオンとOClイオンに分解し、OClイオンの比率が高くなる(構造式(2))。
従って、効果的な殺菌のためには、正しくpH調整された新鮮でHOClリッチな殺菌水の使用が望ましいことは明らかであるが、ユーザが有害ガスを浴びることのないように、これを保証しなければならない。
ところで、強酸性領域で、次亜塩素酸ナトリウムは塩素ガス(Cl)を発生し、他方、亜塩素酸ナトリウムは二酸化塩素ガス(ClO)を発生する。塩素ガス及び二酸化塩素ガスは、いずれも有毒ガスである。特に、二酸化塩素ガスは、塩素ガスの10倍もの毒性を示す。
これまで、次亜塩素酸ナトリウムに酸を加えるユーザの操作は禁止すべきであるというのが常識だった。例えば、花王株式会社(日本国東京都中央区日本橋茅場町)は、「ハイター」(登録商標)の商品名で、一般消費者向けに台所用の漂白除菌液を製造販売している。この除菌液は、主成分として次亜塩素酸ナトリウムを含むが、その容器には、「まぜるな!危険」「酸性物質と一緒に使うと塩素ガスを発生して危険」と赤文字の注意書きを付して消費者に注意を促している。
JP特開2003−34375号公報は、上述した常識の範囲の携帯用殺菌容器を提案している。これは、次亜塩素酸ナトリウムに塩酸などの酸を加えることによってpH4〜8、残留塩素濃度10〜2,000ppmの範囲に調整済みの、そのまま使用できる殺菌水を、圧縮ガス又は液化ガスと一緒に充填した缶状容器である。この缶状容器は噴霧ノズルを含み、噴霧ノズルが押し下げられるとガス圧によって殺菌液を噴霧する。しかし、上述したように調整済みの殺菌水は時間の経過と共に殺菌力が落ちるので、この従来技術の缶入り殺菌水には、ユーザが必要なときに、十分な殺菌力を有する殺菌水を使用させることのできる保証が無い。
以上のことから、使用する現場に設置するための殺菌水生成装置が販売されている。図55は、この従来の殺菌水生成装置を示す。この殺菌水生成装置は、第1工程で、次亜塩素酸ナトリウムを水で希釈する一方、塩酸を水で希釈した後に、第2工程で両希釈液同士を混合することによって、弱酸性領域又は中性領域の且つ有効塩素濃度50〜200ppmの殺菌水を生成するようになっている。この種の殺菌水生成装置は、所望の殺菌水の新鮮な調合液を必要なときに得るために有用である。しかし、これらは、一般消費者が自らの使用のために購入するには余りにも高価である。この種の殺菌水生成装置は、現在のところ、大量の野菜や肉の洗浄殺菌を必要とする、あるいは、多くの機械、道具、器具の洗浄殺菌を必要とする、病院や工場などの限られた場所で使用されているにすぎない。
【発明の開示】
本発明は、有毒ガスの発生を抑えられるなら、ユーザに自ら各成分(以下、殺菌水を生成するために混合される物質を「成分」という)を混合させて殺菌水を生成させてもよいだろうという本発明者の発想から案出されたものである。この発想は、当業者のこれまでの常識からの大胆な飛躍である。
本発明の目的は、機械設備を必要とせず、何時でもどこでも、新鮮な殺菌水を現場で手軽に生成することができ、次亜塩素酸又は亜塩素酸による強力な殺菌を実行できることのできる、pHレベルを弱酸性領域又は中性領域に調整した殺菌水の生成方法、殺菌原料パッケージ及び殺菌水生成キットを提供することにある。
本発明の他の目的は、何時でもどこでも、新鮮な殺菌水を現場で手軽に生成して、次亜塩素酸又は亜塩素酸による強力な殺菌を実行するのに適した、携帯に都合のよい殺菌原料パッケージを提供することにある。
本発明の別の目的は、長期の保存に耐え、且つ、何時でもどこでも、新鮮な殺菌水を現場で手軽に生成して次亜塩素酸又は亜塩素酸による強力な殺菌を実行できる、殺菌原料パッケージ及び殺菌水生成キットを提供することにある。
本発明に適用可能な原料は、典型例として次亜塩素酸ナトリウムと亜塩素酸ナトリウムと次亜塩素酸カルシウムとを含む次亜塩素酸塩又は亜塩素酸塩である。例えば、次亜塩素酸ナトリウムは、結晶状態でも入手可能であるが、一般的には、これを製造するメーカから、典型的には、6%(60,000ppm)又は12%(120,000ppm)の水溶液の状態で提供されている。また、次亜塩素酸カルシウムは、これを製造するメーカから、典型的にはパウダの状態で提供されている。
本発明の説明では、製造メーカから液体状態で提供される次亜(亜)塩素酸塩については、製造メーカから提供されてそのままの溶液状態を「原液濃度」又は「原液」といい、その「原液」に更に水を加えて濃度を低下させたものを「希釈濃度」又は「希釈液」という。
また、本発明に適用可能な他の原料は、例えば塩酸などの酸である。適用可能な酸の他の例としては、硫酸、炭酸などの無機酸や酢酸などの有機酸を挙げることができる。以下の説明において、製造メーカから提供されるままの濃度の酸を「原液」といい、この「原液」に水を加えて濃度を低下させたものを「希釈濃度」という。例えば、塩酸は、工業用として36%濃度で、家庭用として10%以下の濃度で、製造メーカから提供される。したがって、この製造メーカから入手可能な濃度のままで利用するには、これを「原液」といい、更に水を加えて濃度を低下させたときには「希釈濃度」という。
本発明の第1の観点によれば、次亜(亜)塩素酸塩(以下、第1成分という)を入れた第1容器と、酸(以下、第2成分という)を入れた第2容器との組み合わせを、消費者自らの使用のために提供する。消費者が図1、図2に示すように第1、第2容器内の第1、第2成分を混合して生成した殺菌水が、弱酸性領域又は中性領域のpHレベルを有し、且つ、所定の有効塩素濃度を有するように、上記第1、第2の成分が調整されている。
一つの殺菌水生成方法では、原液又は固体(典型的にはパウダ)又は希釈濃度の第1成分を第1容器に収容し、希釈濃度の第2成分を第2容器に収容する(図1)。別の殺菌水生成方法では、希釈濃度の第1成分を第1容器に収容し、原液又は希釈濃度の第2成分を第2容器に収容する(図2)。
第1成分の次亜(亜)塩素酸塩と、第2成分の酸とを混合することにより、殺菌水はそのpHレベルが弱酸性領域又は中性領域となるように、第1、第2の成分が予め調整されているが、第2成分(酸)によるpH調整が余りにも敏感であると強酸性領域に入って塩素ガスが発生してしまう虞がある。また、生成した殺菌水が長期に亘って未使用であると、殺菌水のpHが低下して塩素ガスが発生して殺菌効果が低下し易い。このような問題を解消するのに、第2成分(酸)によるpH調整を緩和するために緩衝剤を入れるのが好ましい(図3〜図5)。例えば、重炭酸塩のような緩衝剤を、第1、第2の成分を混合する際に入れるのがよい(図3、図4)。また、他の例としては、第1成分を収容した第1の収容空間に予め重炭酸塩のような緩衝剤を混入させておいてもよい(図5)。重炭酸塩の例としては、典型的には炭酸水素ナトリウム(NaHCO)を挙げることができるが、他に、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素マグネシウムを挙げることができる。
炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどの緩衝剤を加えることにより、第2成分(酸)によるpH調整を緩和することができ、殺菌水のpHが強酸性領域に入るのを防止することができる。また、生成した殺菌水は緩衝剤を含むことから、生成した殺菌水を使い切るまでのpHの変動を抑えることができ、殺菌水を安定的に弱酸性又は中性領域を保持することができ、これにより次亜(亜)塩素酸による殺菌効果を維持することができる。
次亜(亜)塩素酸塩は、経時的にpHが低下する傾向にある。これに対して酸は安定である。このことから、第1成分と第2成分とを個々に独立した容器に収容してあっても、この容器を長期に亘って倉庫などで保管した場合には、第1成分(次亜(亜)塩素酸塩)の一部が経時的に分解してpHが低下してくる可能性があり、第1成分と第2成分とを混合して生成した殺菌水のpHが当初予定していたpHよりも低下してしまうことが考えられる。これに対して、炭酸水素ナトリウムなどの緩衝剤を入れた状態で第1、第2成分を混合させることで安定的に弱酸性又は中性領域の殺菌水を得ることができ、また、このことを消費者に保証することができる。このことは、第1、第2の成分を独立した空間に収容した容器を販売して消費者に混合作業を行わせる商品を販売する上で、極めて重要なことである。
また、緩衝剤入りの殺菌水は、これを希釈して使用するときにもpHの変動を抑えることができる。なお、希釈するために使用する水が中性から離れた、例えばpH9のアルカリ水であれば、希釈により殺菌水がアルカリ側に変化してしまう虞がある。これに対応するために、希釈する際に使用するための酸(例えばHCl)及び緩衝剤(例えば炭酸水素ナトリウム)を容器に入れてユーザに提供すると共に使用する量を記載したマニュアルをユーザに提供するのが好ましい。緩衝剤の代わりに炭酸ガスボンベをユーザに提供してもよい。希釈するときに酸と共に緩衝剤を入れるため、希釈に伴う殺菌水の大きなpHの変化を抑えて希釈後の殺菌水を中性及び弱酸性に維持することが容易になる。
本発明の第2の観点によれば、第1成分を入れた第1容器と、第2成分を入れた第2容器と、所定量の水を入れた第3容器との組み合わせを、消費者自らの使用のために提供する。消費者が図6に示すように第3容器の所定量の水の中に第1、第2の成分を入れて混合することによって生成した殺菌水が、弱酸性領域又は中性領域のpHレベルを有し、且つ、所定の有効塩素濃度を有するように、第1、第2の成分及び水の量が調整されている。
第2の観点の発明の変形例として、上記の第1容器及び第2の容器と一緒に、第3成分として炭酸水素ナトリウムのような緩衝剤を入れた追加の容器を消費者に提供し、消費者が、図7に示すように、水を入れた第3容器の中に、第1〜第3の成分を入れて混合するようにしてもよい。これによれば、前述したように、混合時に強酸性領域に入り込んでしまう虞を防止し、また、生成した殺菌水を希釈して使用するときに殺菌水のpHの変動を抑えることができる。
本発明の第3の観点によれば、第1成分を入れた第1容器と、第2成分を入れた第2容器と、混合時の注意点を記載したマニュアルとの組み合わせを消費者自らの使用のために提供する。消費者がマニュアルの指示に従って、指示量の水の中に第1、第2の成分を入れて混合することによって生成した殺菌水が、弱酸性領域又は中性領域のpHレベルを有し、且つ、所定の有効塩素濃度を有するように、第1、第2の成分が調整されている。
上記第2、第3の観点にあっては、原液、固体(典型的にはパウダ)又は希釈濃度の第1成分を収容した第1容器と、原液又は希釈濃度の第2成分を収容した第2容器との組み合わせが、消費者自らの使用のために提供される。
第3の観点による本発明にあっては、第3成分として重炭酸塩(典型的には炭酸水素ナトリウム)のような緩衝剤を収容した容器又は炭酸ガスボンベを追加して消費者に提供するようにしてもよい。消費者は、マニュアルの指示に従って、指示量の水の中に第1、第2の成分を入れる際に、第3成分である緩衝剤又は炭酸ガスを水の中に入れるようにしてもよい。加えるべき緩衝剤又は炭酸ガスの量はマニュアルに記載しておくのがよい。
アトピー患者の患部に直接に適用するときには、本発明に従って生成される殺菌水の有効塩素濃度が約30ppmとなるように、第1、第2成分を調整するのがよい。しかし、一般人の使用者を対象にする場合は、余裕代を見込んで、有効塩素濃度が約50〜300ppmとなるように、第1、第2成分を調整するのがよい。軍隊での使用を対象にする場合は、生成した殺菌水の有効塩素濃度が約50〜1000ppmとなるように、第1、第2成分を調整するのがよい。また、本発明に従って生成される殺菌水は、これを水で希釈して使用してもよい。この場合、空間殺菌を念頭に入れると、本発明に従って生成される殺菌水の有効塩素濃度が約50〜60,000ppm、好ましくは50〜10,000ppm、より好ましくは50〜2,000ppm、最も好ましくは50〜1,000ppmとなるように、第1、第2成分を調整するのがよい。ここに、有効塩素濃度とは、遊離塩素濃度と実質的に同義である。
第1成分を液体状態で消費者に提供する場合、具体的には、次亜塩素酸ナトリウムを2,000ppm以下の低濃度で消費者に提供するときには、これにアルカリ(例えばNaOH)を加えてpHレベルを10以上調整してから供給するとよい。次亜塩素酸ナトリウムはpH10以上のアルカリ領域では比較的安定であるので、アルカリ調整液でpH10以上に調整することによって、次亜塩素酸ナトリウムの経時的な殺菌力の低下を遅延させることができる。換言すれば、次亜塩素酸ナトリウムを例えば約10,000ppm(1%)の比較的高濃度の状態で消費者に提供するためには、通常は、この比較的高濃度の次亜塩素酸ナトリウムは既に水酸化ナトリウム(NaOH)を含む高アルカリ状態にあるので、これにアルカリを添加する必要は無い。しかし、高温雰囲気で長期に保管することが予想される、例えば軍隊での使用のためには、必要に応じてアルカリ調整液を加えてもよい。
また、例えば、手の殺菌に使用するユーザに対しては、生成した殺菌水が生理食塩水と同じ程度の濃度となるように、例えば第1成分又は第2成分に塩化ナトリウム(NaCl)を添加してもよい。同様に、殺菌及び洗浄に使用するユーザに対しては、生成した殺菌水が界面活性剤を含むように、第1成分、第2成分又は希釈用水に界面活性剤を添加してもよい。
本発明の典型的な実施態様では、内側容器を収容した、自立可能な又は柔軟な外側容器を用意し、これら内外の容器の中に、夫々、第1、第2の成分を入れた状態で消費者に提供される。これを入手した消費者は、意図的な操作を行って、内側容器中の第1成分又は第2成分を外側容器の中に混入させる。
内側容器に収容された成分を外側容器の中に混入させるための意図的な操作例は以下の通りである。
(1)一つの混合方法では、外側容器に収容されている成分の中に、内側容器を落下、開放させて、この内側容器内の成分を外側容器の中に混入させる。
(2)別の混合方法では、外側容器の中に収容された内側容器を外側容器に強制的に連通させて、内側容器内の成分を外側容器の中に混入させる。
(3)別の混合方法では、外側容器に強い力を加えて、その内部にある内側容器に孔などを作り、この孔を通じて内側容器内の成分を外側容器内の成分に混入させる。
本発明に従う殺菌水生成キットに含まれる容器又は殺菌原料パッケージは、これに装着可能な噴霧ノズルをアタッチメントとして一緒に消費者に提供してもよい。あるいは、殺菌水生成キットに含まれる容器又は殺菌原料パッケージは、その密閉キャップに予め組み込んだ噴霧ノズルを含んでいてもよい。
本発明による殺菌水生成キット又は殺菌原料パッケージを使って生成した殺菌水は、従来と同様に、大量の野菜や食肉などの食品の洗浄及び殺菌や、病院などの空間殺菌のために使用することができ、これにより、高価な殺菌水生成装置を設置する必要が無くなる。
また、本発明による殺菌水生成キット又は殺菌原料パッケージは、軍隊、病院、一般家庭などでストックしておいて、何時でも必要に応じて新鮮な殺菌水を生成するのに使用することができる。また、例えば女性がハンドバッグに入れて本発明の殺菌原料収容容器を携帯すれば、何時でもどこでも必要に応じて新鮮な殺菌水を生成して、次亜(亜)塩素酸による殺菌に使用することができる。
本発明の上記目的及び他の目的、作用効果は、以下の具体例の詳しい説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の基本的な概念に含まれる一例を説明するための図である。
図2は、本発明の基本的な概念に含まれる他の例を説明するための図である。
図3は、図1、図2に示す基本概念の変形例を説明するための図である。
図4は、図1、図2に示す基本概念の他の変形例を説明するための図である。
図5は、図1、図2に示す基本概念の別の変形例を説明するための図である。
図6は、本発明の基本的な概念に含まれる別の例を説明するための図である。
図7は、図6に示す基本概念の変形例を説明するための図である。
図8は、第1実施例の殺菌原料パッケージの部分断面図である。
図9は、図8に示す殺菌原料パッケージの要部を拡大した図である。
図10は、第1実施例の変形例の要部を拡大した図である。
図11は、第1実施例の他の変形例の要部を拡大した図である。
図12は、第1実施例の別の変形例の要部を拡大した図である。
図13は、第1実施例の更に他の変形例の要部を拡大した図であり、第1成分を収容した円筒体の円周溝がシールされた状態を示す。
図14は、図13に関連した図であり、第1成分を収容した円筒体の円周溝がボトルの内部空間に露出した状態を示す。
図15は、第1実施例の更に別の変形例の要部を拡大した図である。
図16は、第2実施例の殺菌原料パッケージを示し、これに含まれる切断補助具によって内側容器の上端部分を切断する過程を示す図である。
図17は、図16の殺菌原料パッケージの要部を示し、殺菌原料パッケージをストックするときには切断補助具の切断刃を上に向けた状態で殺菌原料パッケージ内に収容されていることを説明するための図である。
図18は、第2実施例の変形例を示す図である。
図19は、第2実施例の他の変形例を示し、これに含まれる細長い切断刃で内側容器の底を切断する過程を説明するための図である。
図20は、図19の要部を拡大した図であり、ユーザが図19の殺菌原料パッケージをストックしているときの状態を説明するための図である。
図21は、第3実施例の殺菌原料パッケージを示す図である。
図22は、第4実施例の殺菌原料パッケージを示す図である。
図23は、第4実施例の変形例を示す図である。
図24は、第5実施例の殺菌原料パッケージを示す図である。
図25は、第6実施例の殺菌原料パッケージを示す図である。
図26は、図25の矢印X26から見た第6実施例の殺菌原料パッケージの要部断面図である。
図27は、第7実施例の殺菌原料パッケージを示す図である。
図28は、図27の殺菌原料パッケージの要部拡大図である。
図29は、第8実施例として説明する殺菌水生成キットである。
図30は、第8実施例の変形例の殺菌水生成キットを示す図である。
図31は、第8実施例の他の変形例の殺菌水生成キットを示す図である。
図32は、第8実施例の別の変形例の殺菌水生成キットを示す図である。
図33は、実施例の殺菌原料パッケージを使って生成した殺菌水を、この殺菌原料パッケージに噴霧器を装着して、殺菌水を噴霧する使い方を例示した図である。
図34は、実施例の殺菌原料パッケージを使って生成した殺菌水を、この殺菌原料パッケージに別の形式の噴霧器を装着して、殺菌水を噴霧する使い方を例示した図である。
図35は、図34に例示した噴霧器の殺菌水吐出口に装着された混合促進部材の斜視図である。
図36は、図34に例示した噴霧器の殺菌水吐出口の拡大断面図である。
図37は、図34に例示した噴霧器付き殺菌原料パッケージで傷口を殺菌する一つの方法を説明するための図である。
図38は、実施例の殺菌原料パッケージ又は殺菌水生成キットを使って生成した殺菌水で空間殺菌するのに好都合な空間殺菌装置を示す図である。
図39は、図38の空間殺菌装置の変形例を示す図であり、カートリッジタンクから殺菌水を供給する形式で使用する形態を示す。
図40は、図38の空間殺菌装置の変形例を示す図であり、配管を通じて殺菌水を供給する形式で使用する形態を示す。
図41は、図38の空間殺菌装置の変形例として電気分解方式の空間殺菌装置を示す図である。
図42は、内側容器を備えたボトルの変形例を示す図である。
図43は、内側容器を備えた容器の変形例を示す図である。
図44は、内側容器を備えたボトルの他の変形例を示す図である。
図45は、内側容器を備えたボトルの更に別の変形例を示す図である。
図46は、図45のボトルの変形例を示す図である。
図47は、内側容器を備えた緩衝剤入りボトルを示す図である。
図48は、図47の緩衝剤入りボトル内で第1成分、第2成分、緩衝剤を混合させる状態を示す図である。
図49は、図47の緩衝剤入りボトルの要部を拡大した図である。
図50は、図49のX50−X50線に沿った断面図である。
図51は、緩衝剤入りボトルの変形例の要部を拡大した図である。
図52は、緩衝剤入りボトルの他の変形例の要部を拡大した図である。
図53は、緩衝剤入り次亜塩素酸ナトリウムに塩酸を加えたときの殺菌水のpH変化をプロットした図である。
図54は、次亜塩素酸による強力な殺菌能力を示す図である。
図55は、従来の殺菌水生成装置で殺菌水を生成する手順を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の好ましい実施例を詳しく説明するに先だって、これら実施例を包括的に説明すれば以下のとおりである。
好ましい実施の形態の殺菌原料パッケージは、図8〜図20、図22〜図23、図25〜図28に図示のように、
次亜塩素酸塩又は亜塩素酸塩を含む第1成分と、
酸を含む第2成分と、
前記第1成分と前記第2成分とが混じらないように隔壁で分離して収容した単一の容器と、
該容器の外部から人為的に力を加えることにより変位可能な変位部材とを有し、
該変位部材の変位により、前記第1成分と前記第2成分とが前記容器内で混合して殺菌水を生成することができ、
前記第1成分と前記第2成分とが、これらが混合したときに所定の有効塩素濃度の且つ弱酸性領域又は中性領域の殺菌水を生成することができるように調整されている。第1成分の次亜塩素酸塩又は亜塩素酸塩は、第3成分として炭酸水素ナトリウムのような緩衝剤を含んでいてもよい。
より具体的には、図8〜図15、図27に図示のように、実施例の殺菌原料パッケージは、
次亜塩素酸塩又は亜塩素酸塩を含む第1成分又は酸を含む第2成分のいずれか一方の成分を収容した外側容器と、
該外側容器の中に収容され、前記第1成分又は前記第2成分の他方の成分を収容した内側容器と、
該内側容器を密閉するシール部材と、
前記外側容器に関連して設けられ、該外側容器の外部からアクセス可能な操作部材とを有し、
該操作部材を操作することにより、前記内側容器が前記シール部材から解放されて、該内側容器の中の前記他方の成分が前記外側容器の中に流出して殺菌水を生成することができ、
前記第1成分と前記第2成分とが、これらが混合したときに所定の有効塩素濃度の且つ弱酸性領域又は中性領域の殺菌水を生成することができるように調整されている。第1成分の次亜塩素酸塩又は亜塩素酸塩は、第3成分として炭酸水素ナトリウムのような緩衝剤を含んでいてもよい。
上記操作部材は、例えば図8の例では、外側容器の密閉キャップであり、例えば変形例として図22、図23を参照して後述するように、外部に露出するプッシャであってもよい。また、上述した内側容器は、図27に例示するように、外側容器の口部に設けられていてもよい。
また、前記内側容器が前記シール部材から解放されたときに、内側容器が外側容器の中で落下するようにしてもよい。この目的を達成するために、内側容器に錘を付けてもよい。
また、本発明の殺菌原料パッケージの具体例では、図42、図43に図示するように、
次亜塩素酸塩又は亜塩素酸塩を含む第1成分又は酸を含む第2成分のいずれか一方の成分を収容した外側容器と、
該外側容器の中に収容され、前記第1成分又は前記第2成分の他方の成分を収容した内側容器と、
該内側容器に形成され且つ前記外側容器の内部空間と連通する開口に嵌装されたプラグと、
前記外側容器に関連して設けられ、該外側容器の外部からアクセス可能な操作部材とを有し、
該操作部材を意図的に操作することにより、該操作部材の動きに関連して前記プラグが前記内側容器の前記開口から抜け出し、これにより前記内側容器の中の前記他方の成分が前記外側容器の中に流出することにより殺菌水を生成することができ、
前記第1成分と前記第2成分とが、これらが混合したときに所定の有効塩素濃度の且つ弱酸性領域又は中性領域の殺菌水を生成することができるように調整されている。外側容器又は内側容器に、第1成分の次亜塩素酸塩又は亜塩素酸塩の他に炭酸水素ナトリウムのような緩衝剤を入れておいてもよい。
第1実施例(図8、図9)
殺菌原料パッケージ1は、ポータブルな且つ自立可能なボトル2を有し、このボトル2は耐薬品性のプラスチック材料から作られている。ボトル2は、好ましくは、遮光性材料から作られるのがよい。ボトル2は、片手で持てる程度の直径を有する円筒体形状を備え、内部容積は約100ccである。
特に図9を参照して、ボトル2の頂部には上方に向けて開放した断面円形のボトル口部3を有し、このボトル口部3の外周面にはネジ山4が形成され、このネジ山4を利用して密閉キャップ5が螺着される。密閉キャップ5はプラスチック材料から作られ、密閉キャップ5のスカート部分5aには、その下端に、ストッパリング6が一体成形されている。このストッパリング6は、ボトル口部3の全周に亘って延び、後の説明から分かるようにストッパ又はスペーサとして機能するものであり、密閉キャップ5のスカート部分5aとは別体であってもよい。
密閉キャップ5は、また、噴霧ノズル7を備え、矢印で示すように噴霧ノズル7のヘッド7aを押し下げることにより、ボトル2の中の液体を噴霧することができる。この種の噴霧ノズル7は従来から既知であるので、その詳しい説明は省略する。なお、噴霧ノズル7を備えた殺菌原料パッケージ1は、これを出荷するときに、図9に示すように、保護キャップCで噴霧ノズル7を覆う、又は、樹脂製のバンドD(図13)で保護キャップ付き噴霧ノズル7を覆うようにしてもよい。その場合、樹脂製のバンドDにストッパリング6を一体成形してもよい(図13)。
ボトル口部3に位置する噴霧ノズル本体7bの回りには円筒体8が嵌装され、この円筒体8の上端は、密閉キャップ5の帽部5bに当接している。円筒体8には、その周りの円周シール部材9の上端縁と係合可能な円周突起8aが形成されている。また、円筒体8は、その外周面にポケットつまり円周溝10を有し、この円周溝10は、ストッパリング6を取り去らない限り、シール部材9によって密閉された状態にある。すなわち、円周溝10は、シール部材9によって密閉された内部空間をボトル2の内部に形成する。
ボトル2には、第1成分又は第2成分のいずれか一方が収容可能であるが、この実施例では、希釈した濃度の塩酸(第2成分)が収容されている。他方、円筒体8の円周溝10には、この実施例では、原液又は希釈濃度の、第1成分である次亜塩素酸ナトリウムが収容され、好ましくは、炭酸水素ナトリウムが収容される。
第1実施例の殺菌原料パッケージ1の使用方法は、これを入手したユーザが、密閉キャップ5の下端からストッパリング6を取り除き、次いで、密閉キャップ5を締め込む方向に回転させると、この密閉キャップ5は、ストッパリング6を除去した分だけ下方に変位することができる。
密閉キャップ5を下方に変位させると、密閉キャップ5の帽部5bによって円筒体8が下方に押し下げられ、これにより円筒体8の円周突起8aがシール部材9の中に入り込むと共に円周溝10がシール部材9の下方まで変位してボトル2の内部空間に露出し、円周溝10に収容されている第1成分がボトル2内に流出する。
ユーザは、ボトル2を振って、ボトル2内の液体を混合させることにより100ccの殺菌水を生成することができる。生成した殺菌水は、弱酸性領域又は中性領域のpHを有し、また、有効塩素濃度は一般的には約50〜300ppmの任意の濃度である。例えば換言すれば、ボトル2の中に充填される第2成分及び円周溝10の中に充填される第1成分は、これらを混合したときに弱酸性領域又は中性領域のpH及び有効塩素濃度が約50〜300ppmの任意の濃度となるように調整される。なお、軍隊などでの使用を対象にするのであれば、有効塩素濃度が約800ppmとなるように第1、第2成分を調整してもよい。
第1実施例の殺菌原料パッケージ1は、例えば女性向けや家庭用に製造するのであれば、生成した殺菌水が生理食塩水と同等の濃度(約0.9%)となるように塩化ナトリウムを例えばボトル2の中に添加してもよい。殺菌原料パッケージ1を購入した女性は、例えばハンドバッグの中に殺菌原料パッケージ1を入れて携帯すれば、何時でも、どこでも次亜塩素酸による強力な殺菌を行うことができる。また、殺菌原料パッケージ1を家庭用に製造するのであれば、例えば、ボトル2の中に界面活性剤を添加しておくことで、食器の殺菌を行いつつ油分の除去が容易になる。
第1実施例の変形例(図10〜図15)
上述した第1実施例では、円筒体8の円周溝10によって、ボトル2内に密閉された内部空間を形成するようにしたが、図10〜図12に示すように、円筒体8の下端に嵌合した別ピースの追加部材12を設け、この追加部材12と円筒体8の下端とで密閉された空間13を形成するようにしてもよい。これによれば、ユーザが、ストッパリング6を取り除いた後に、密閉キャップ5を締め込む方向に回転させると、密閉キャップ5の帽部5bによって円筒体8が下方に押し下げられる。そして、この円筒体8の下端部の肩部8bによって追加部材12が下方に押し下げられ、追加部材12がシール部材9から脱すると、追加部材12がボトル2の中に落下して、追加部材12の中に収容されている成分がボトル2内に流出する。ユーザは、ボトル2を揺することで、内容物の混合を促進させるのがよい。図11の下部の図は、落下語の追加部材12を示す。
なお、図10〜図12は、追加部材12の形状を除いて他の要素は実質的に同一であり、図10〜図12とを比較すると理解できるように、図11に図示の追加部材12の方が図10よりも内部空間13の容積が大きく、また、図12の追加部材12の方が図11よりも内部空間13の容積が大きい。このように大きな内部容積を作ることのできる追加部材12を採用したときには、この中に塩酸などの第2成分を充分に希釈した状態で充填し、ボトル2の中に第1成分を充填することも可能になる。なお、図12は、噴霧ノズル無しの密閉キャップ5で例示してあり、また、追加部材12はカップ状の内部空間13を有する。
図13、図14の変形例では、ボトル口部3に位置するシール部材9が下方に延長されている。そして、シール部材9は、その上下方向中間部分に開口16を備え、この開口16よりも下方部分9aによって円筒体8の円周溝10が密閉されている(図13)。第1成分と第2成分とを混合させるときには、ストッパリング6及び樹脂製バンドDを取り外して、密閉キャップ5を締め込むことにより、噴霧ノズル本体7bの段部に装着された円筒体8が下降移動して(図14)、円周溝10がシール部材9aの下端からボトル2の内部空間に露出し、円周溝10に収容されている第1成分がボトル2内に流出する。参照符号17は通気孔であり、18は密閉キャップ5側のシール材である。
図15は、図9と対比すると理解できるように、円筒体8の外周面に上下に離間して第1、第2の円周溝10、14を設け、また、密閉キャップ5の下端に第1、第2のストッパリング6、15を設けた例を示している。これによれば、第1のストッパリング6だけを除去して、第1円周溝10内の第1成分をボトル2の中に混入させた後、例えば長期に亘って使用しないでボトル2内の殺菌水の殺菌能力が低下したときには、第2の未開封保証ストリップ15を取り除いて、第2円周溝14内の追加の第1成分を更にボトル2の中に混入させることにより殺菌能力を初期の能力まで復活させることができる。
例えば図9、図13などに図示した第1の円周溝10の中に、第1成分として次亜塩素酸ナトリウムを充填した場合には、これに加えて、炭酸水素ナトリウムを更に充填するようにしてもよい。また、図9、図13などでは、単一の円周溝10であるが、図15の第2の円周溝14と同様の追加の円周溝を設け、この追加の円周溝の中に炭酸水素ナトリウムを収容し、第1、第2の成分を混合するときに炭酸水素ナトリウムを含めて混合するようにしてもよい。このことは、図15の例でも同じであり、第2の円周溝14に次亜塩素酸ナトリウムを入れる代わりに炭酸水素ナトリウムを充填して、第1の円周溝10の成分をボトル2の中に混入させるときに、これに加えて第2の円周溝14の炭酸水素ナトリウムを混入させるようにしてもよい。
第2実施例(図16、図17)
図16、図17を参照して、第2実施例の殺菌原料パッケージ20は、自立可能なボトル21を有する。このボトル21は、例えば1リットルや10リットル以上の持ち運び可能なタンクであってもよく、また、耐薬品性のプラスチック材料から成形されるのがコスト面で効果的である。
ボトル21の中には、内側容器23が密閉された状態で収容されており、この内側容器23の容積は、例えば、内側容器23の中にパウダ状態の第1成分を収容し、また、このパウダ状態の第1成分に加えてパウダ状態の炭酸水素ナトリウムを収容するのであれば比較的小さくてもよい。内側容器23は、典型的には、耐薬品性のプラスチック材料又はフィルム材料から作られる。すなわち、内側容器23はボトルであってもよく、或いは、袋であってもよい。
内側容器23は、その上端縁に、ボトル口部24の端面と係合する外方フランジ23aを有する。外方フランジ23aは、ボトル口部24の上端面と密閉キャップ5とで挟持されたシール部材25と係合し、これにより、内側容器23は、ボトル21内に独立した密閉空間を形成する。
密閉キャップ5の帽部5bの背面には、切断刃26aを備えた切断補助具26が脱着可能に取り付けられている。切断補助具26は、ボトル21を消費者に向けて出荷するときには、切断刃26aが上を向いた状態で密閉キャップ5に装着されており、この状態では、切断補助具26の本体26bで内側容器23の口を塞ぐキャップの機能を有する(図17)。ボトル21の中には第1又は第2成分が収容され、内側容器23の中には、他の成分が収容される。
第2実施例の殺菌原料パッケージ20を入手したユーザは、密閉キャップ5を外して、切断補助具26を反転させた状態つまり切断刃26aを下に向けた状態にして(図16)、再び、密閉キャップ5をボトル口部24に螺着する。これにより、切断補助具26は、密閉キャップ5の帽部5bで押し下げられ、切断刃26aが内側容器23の水平段部23bに食い込んで、これを切断する。これにより、内側容器23は、ボトル21の中に落下して、その中の成分がボトル21の中に流出する。内側容器23の落下を補助するために、内側容器23の例えば底部に錘27を設けるのがよい。ユーザは、ボトル21を上下左右に揺することでボトル21内の混合を促進させるのがよい。なお、切断補助具26の切断刃26aで内側容器23の水平段部23bを切断するのに代えて、水平段部23bに弱化線を設け、切断補助具26を押し下げることにより弱化線を切断するようにしてもよい。
第2実施例の殺菌原料パッケージ20は、比較的大量の原料をユーザに提供するのに都合がよい。上述した操作により、ボトル21内の成分を混合したときに、生成された殺菌水が例えば10,000ppmの有効塩素濃度を有するように第1、第2成分を調整してもよい。ユーザは、密閉キャップ5で密閉した状態のボトル21内で殺菌水を生成した後、これを小分けし、適当に水で希釈して使用することができる。このような使用態様は、大量に殺菌水を使用する例えば病院などでは好都合である。
希釈するために使用する水が例えばアルカリ性である環境であれば、希釈することによって殺菌水のpHが変動するのを抑えるために、容器に入れた酸をユーザに提供するのがよく、また、これに加えて炭酸水素ナトリウムのような緩衝剤を入れた容器をユーザに提供するのがよい。
第2実施例の変形例(図18〜図20)
上述した第2実施例の殺菌原料パッケージ20では、ユーザが殺菌水を生成するときに、密閉キャップ5を一度外して、切断補助具26を反転させる作業を必要としたが、図18に図示するように、密閉キャップ5の帽部5bに切断補助具26を固定すると共に、密閉キャップの5のスカート部分5aにストッパリング6を一体的に形成するようにしてもよい。ユーザは、ストッパリング6を取り除き、密閉キャップ5を締め込むことに伴う切断補助具26の下降動作によって内側容器23をボトル21内に落下させることができる。切断補助具26の刃26aの代わりに下方に延びる例えばロッドを設けると共に、内側容器23の底を開閉栓で構成し、密閉キャップ5で切断補助具26を押し下げることで、この切断補助具26から下方に延びるロッドで、内側容器23の底を構成する開閉栓を押し下げて、内側容器23を開放するようにしてもよい。
上述した第2実施例の殺菌原料パッケージ20の変形例として、図19、図20に図示のように、密閉キャップ5にハット状留め補助具28を収容して、このハット状留め補助具28を反転させることにより、細長い切断刃29を操作するようにしてもよい。具体的には、細長い切断刃29は、その上端に突起30を有し、この突起30をハット状留め補助具28の孔28aに脱着可能に嵌合させることにより、切断刃29はハット状留め補助具28に固定される。ユーザが殺菌水を生成するときには、密閉キャップ5を外し、図20に図示のように密閉キャップ5の帽部5bの凹所に嵌合されているハット状留め補助具28を密閉キャップ5から外す。次いで、切断刃29をハット状留め補助具28から外し、ハット状留め補助具28を反転させた後に切断刃29を再びハット状留め補助具28に装着した後に、切断刃29を内側容器23の中に挿入する。次いで、密閉キャップ5を再びボトル口部24に螺着すると(図19)、切断刃29はハット状留め補助具28によって押し下げられ、その先端の刃部29aが内側容器23の底に食い込んで、これを切断し、内側容器23の中の成分がボトル21の中に流出する。ここに切断とは、内側容器23の底に孔を開ける場合も含む。この図19、図20に図示の変形例では、内側容器23として、シート材料から作った袋を採用するのが好ましく、この場合には、切断刃29に縦リブを設けて、切断刃29に内側容器23がまとわりついて袋状の内側容器23が傷付かないようにするのが好ましい。
第3実施例(図21)
図21は、第3実施例の殺菌原料パッケージ30を示す。この実施例では、内側容器23の上端開口部分に例えば外方フランジ31を設け、この外方フランジ31を密閉キャップ5とボトル21の上端面との間にシール部材25を介して挟持させた状態で消費者に提供される。
第3実施例の殺菌原料パッケージ30を入手したユーザは、密閉キャップ5を外し、内側容器23の外方フランジ31を指でボトル21の中に押し込んだ後に密閉キャップ5を再びボトル21に螺着させた後に、ボトル21を良く振ることで内側容器23を落下させて、この内側容器23内の成分をボトル21の中に混入させる。この目的のために、内側容器23は、少なくともその上部分を撓み変形可能な軟質材料で作るのがよい。
第4実施例(図22)
第4実施例の殺菌原料パッケージ40は、外部からアクセス可能なプッシャ41を有し、このプッシャ41を押すことで、内側容器23を切断して、この内側容器23の中の成分をボトル21の中に流出させるようになっている。プッシャ41にレバーを加え、このレバーを押し下げることにより、「てこの原理」でプッシャ41を下方移動させるようにしてもよい。
図示の殺菌原料パッケージ40において、密閉キャップ5の帽部5bは、これを貫通するプッシャ41を備えている。プッシャ41にはストッパリング42が一体的に形成されている。プッシャ41には、また、切断補助具26が固定されており、ストッパリング42を取り除いた後に、プッシャ41を強く押し下げると、切断補助具26が下降移動し、切断刃26aが、内側容器23の水平段部23bに食い込んで、これを切断する。これにより、内側容器23はボトル21の中に落下して、その中の成分がボトル21の中に流出する。切断補助具26の刃26aの代わりに下方に延びる例えばロッドを設けると共に、内側容器23の底を開閉栓で構成し、密閉キャップ5で切断補助具26を押し下げることで、この切断補助具26から下方に延びるロッドで、内側容器23の底を構成する開閉栓を押し下げて、内側容器23を開放するようにしてもよい。
第4実施例の変形例(図23)
上述した図22に例示の殺菌原料パッケージ40にあっては、切断補助具26を押し下げることで内側容器23を切断して、内側容器23内の成分をボトル21の中に流出させるようにしたが、変形例として図23に図示するように、プッシャ41に押下げ部材43を固定し、プッシャ41を強く押し下げて押下げ部材43を介して内側容器23の水平段部23bに押し下げ力を与え、これにより、内側容器23を強制的に落下させるようにしてもよい。この目的のために、内側容器23の少なくとも上部分を、指の力で容易に撓み変形可能な軟質材料で作るのがよい。
更なる変形例として、図23から内側容器23を省き、その代わりに、上述した押下げ部材43の外周面に図8などで例示した円周溝10を設け、この円周溝10の中に第1又は第2成分を収容するようにしてもよい。
第5実施例(図24)
図24に例示の殺菌原料パッケージ50にあっては、必ずしも必須ではないが、内側容器23の下端に摘み部分51が一体成形されており、この摘み部分51をもぎ取ることで、内側容器23の下端に連通孔52が形成される。連通孔53には、内側容器23内を上下に延びるシャフト52の先端が侵入しており、これにより連通孔53は閉鎖されている。すなわち、シャフト52の先端は可動弁体を構成している。また、シャフト52の上端には操作フランジ54が固定されている。内側容器23は、その内部に第1又は第2の成分を充填した後に嵌装されたピストン55によって閉鎖されており、上記のシャフト52はピストン55を貫通している。
殺菌原料パッケージ50を入手したユーザは、密閉キャップ5を取り外し、次いで、内側容器23をボトル口部24から取り出し、操作フランジ54を引っ張り上げてシャフト52を引き上げる。シャフト52の下端部分には、フランジ56が形成されており、シャフト52を引き上げると、このフランジ56がピストン55の内周溝55aと係合し、これによりシャフト52とピストン55とが一体化する。次いで、内側容器23の下端の摘み部分51を除去する。
ユーザは、操作フランジ54を押し下げてピストン55を下降させることで、内側容器23の中に充填されている第1又は第2成分をボトル21の中に注入することができる。この注入作業は、内側容器23をボトル口部24にセットした状態で行ってもよく、或いは、内側容器23の先端をボトル口部24に向けた状態で行ってもよい。
上記の注入作業が終わったら、密閉キャップ5でボトル21を密封した状態で、ボトル21を良く揺することによりボトル21内の成分を混合させるのがよい。これにより生成された殺菌水を使用するときに、ピストン55を備えた内側容器23はシリンジとして活用することができる。すなわち、操作フランジ54を引き上げてピストン55を上昇させることにより内側容器23の中に適量の殺菌水を導入した後、内側容器23を取り出して、例えば、消毒すべき患部に向けた状態で操作フランジ54を押すことで、内側容器23内の殺菌水を患部に向けて噴出させることができる。
殺菌原料パッケージ50の変形例として内側容器23を有底構造とし、ユーザは、密栓キャップ5を取り外した後に、内側容器23を取り出して、この内部容器23の中の成分をボトル21の中に入れるようにしてもよい。このやり方は、内側容器23の中にパウダ状態の第1成分を収容したときに好都合である。
第6実施例(図25、図26)
内外2重の容器を柔軟な耐薬品性材料のシートで作る場合に好都合な具体例を第6実施例として図25、図26に図示してある。図示の殺菌原料パッケージ60は、外側容器61と内側容器62とが偏平な袋で構成されており、この袋は耐薬品性のシート材料から作られている。このような袋は、例えばレトルト食品の容器として多用されているので、その詳しい説明は省略する。
内側袋62は、その一部が外側袋61の周縁部分に溶着されている。殺菌原料パッケージ60は、外側袋61の内部に連通する第1口部63と、内側袋62の内部に連通する第2口部64とを有し、第1、第2の口部63、64は、外側袋61の外周縁及び内側袋62の外周縁に液密に熱溶着されている。
外側袋61の内部には内側袋62を切断するための切断具65が内蔵されている。切断具65はバネ66によって付勢されたレバー67を有し、レバー67を押し下げると、レバー67に設けられた切断刃68によって内側袋62を切断することができる。
殺菌原料パッケージ60は、先ず、第1、第2の口部63、64から止水ピン69を抜き取った状態で、この第1、第2の口部63、64を通じて、外側袋61に第1の成分(好ましくは、これに加えて炭酸水素ナトリウムのような緩衝剤)又は第2の成分を充填し、また、内側袋62の中に他の成分を充填した後に、止水ピン69を第1、第2の口部63、64に挿入して閉鎖する。この状態で消費者に提供される。
殺菌原料パッケージ60を入手したユーザは、例えば、殺菌原料パッケージ60を床や大地の上に置き、次いで、外側袋61の上から足で切断具65を踏みつける。これにより、内側袋62は少なくともその一部が切断され、その内部の成分が外側袋61の中に流出し、外側袋61の中で第1、第2成分が混合することにより殺菌水が生成される。殺菌原料パッケージ60の中の殺菌水は、外側容器用の口部63の止水ピン69を抜き取ることにより取り出すことができる。
ユーザが足で殺菌原料パッケージ60を踏みつけたときに、レバー67等により外側袋61が傷つくのを防止するために、例えばバネ66を屈曲ピンで構成し、レバー67を踏みつけたときに、屈曲ピン66が外側に向けて変位することにより外側袋61を保護するようにするのがよい。
第7実施例(図27、図28)
第7実施例の殺菌原料パッケージ70は、外側袋61の口部63の内部を第2の密閉収容空間として利用するものである。すなわち、口部63は円筒形状を有し、この中に、有底円筒体形状の内側容器71が収容され、また、内側容器71の中に、切断刃72aを下に向けた状態の切断具72が収容されている。
殺菌原料パッケージ70を入手したユーザは、密閉キャップ5からストッパリング6を取り去った後に密閉キャップ5を締め込むことで切断具72を押し下げて、内側容器71の底を切断する。これにより、内側容器71内の第1又は第2の成分が外側袋61内に流出することができる。この流出を確かなものにするのに、切断具72に貫通孔73を設けるのがよい。
この第7実施例の殺菌原料パッケージ70の変形例として、柔軟な外側袋61に代えて、自立性の無い軽量プラスチック容器で置換してもよい。このような柔軟な外側袋61又はこれに代えて軽量プラスチック容器を使ったときには、殺菌原料パッケージ70を段ボール箱に収容した状態で消費者に提供するのが望ましい。
第8実施例(図29)
図29は、第8実施例として、本発明に従う殺菌水生成キットを示す。殺菌水生成キット80は、第1成分を収容した第1ボトル81と、第2成分を収容した第2ボトル82と、水を収容した第3ボトル83とを含み、他に、好ましくは、混合の際の注意点を記載したマニュアル84を含む。第1〜第3ボトル81〜83には目盛り85を付けるのが好ましい。少なくとも第1、第2ボトル81、82は耐薬品性及び遮光性を有するプラスチック材料から作られるのがよい。
マニュアル84には、例えば、水の量と、第1成分の量と、第2成分の量と、これらを混合することにより生成される殺菌水の量及び濃度と、の関係が一覧で記載され、ユーザがこれを見て、マニュアルの指示に従って、所定量の水を第3ボトル83の中に入れ、この第3ボトルの中に第1ボトル81、第2ボトル82から所定量の第1、第2の成分を入れることで殺菌水を生成することができる。
第3ボトル83は空の状態で消費者に提供してもよい。殺菌水生成キット80を入手したユーザは、マニュアルを見て、先ず、指示された所定の量の水を第3ボトル83の中に入れ、次いで、この第3ボトル83の中に第1、第2ボトル81、82の第1、第2成分を入れて殺菌水を生成するようにしてもよい。
殺菌水生成キット80は例えば段ボール86の中に入れた状態で消費者に提供するのが都合が良く、また、これを数多く入手したユーザが例えば倉庫に保管するのにも都合が良い。
第3ボトル83にpH調整液を入れるようにしてもよい。例えば、第3ボトル83に希釈塩酸又は希釈NaOHなどのpH調整液を入れておき、劣悪な環境下で殺菌水生成キット80をストックした後にユーザが殺菌水を作るときに、この殺菌水のpHの微調整を第3ボトル83のpH調整液で行うようにしてもよい。また、第1成分を収容した第1ボトル81に、炭酸水素ナトリウムのような緩衝剤を混入させておいてもよい。その代わりに、重炭酸塩(典型的には炭酸水素ナトリウム)を収容した第4のボトル又は炭酸ガスボンベを、上述した殺菌水生成キット80に加えて、ユーザが殺菌水を作るときに、第4のボトルから炭酸水素ナトリウムを入れて又は炭酸ガスボンベから炭酸ガスを入れて第1、第2成分に混合させるのがよい。
第8実施例の変形例(図30〜図32)
殺菌水生成キット80は、図30に例示したように、第1、第2成分を収容した第1、第2ボトル81、82と、マニュアル84とを組にして、例えば耐水性のバッグ87に入れて消費者に提供してもよい。これを入手したユーザは、マニュアル84の指示に従って、適当な容器に所定量の水を入れた後に、第1、第2容器81、82の成分を入れることで、所定濃度の弱酸性領域又は中性領域の殺菌水を生成することができる。第1成分に加えて炭酸水素ナトリウムを第1ボトル81に収容してもよい。その代わりに、炭酸水素ナトリウムのような緩衝剤を収容した第3ボトル(図示せず))又は炭酸ガスボンベをキット80に加えて、ユーザが殺菌水を生成するときに、第1、第2の成分と共に炭酸水素ナトリウム又は炭酸ガスを混合するようにしてもよい。
殺菌水生成キット80は、図31に例示したように、一つの容器の内部空間を3つに区分した容器で上述した第1〜第3ボトル81〜83を構成するようにしてもよく、これにマニュアル84を貼着する、又は、3区分容器にポケットを形成して、このポケットにマニュアル84を収容した状態で消費者に提供してもよい。また、殺菌水生成キット80は、図32に例示したように、一つの容器の内部空間を2つに区分した容器で上述した第1、第2ボトル81、82を構成してもよい。また、この2区分容器にマニュアル84を添付するようにしてもよい。
また、生成した殺菌水をユーザが希釈して使用する場合には、使用する水がアルカリ性や酸性であるときには、これを中和するために使用する酸やアルカリを入れた容器をユーザに提供するのがよく、これに加えて、炭酸水素ナトリウムのような緩衝剤を入れた容器又は炭酸ガスボンベをユーザに提供するのが好ましい。
図29〜図32の殺菌水生成キット80及びその変形例に、水酸化ナトリウムのようなアルカリ調整液(pH調整液)を収容した第4のボトルを追加してもよく、これに加えて、リトマス試験紙のようなpHを確認できる手段を追加してもよい。殺菌水生成キット80を長期にストックした場合や劣悪な環境でストックした結果、マニュアル84に記載の通りに混合したとしても、殺菌水が例えばpH5よりも酸性側になることが想定できるときには、第4ボトルのアルカリ調整液を予め水の中に入れ、pH確認手段でpHを確認しながら殺菌水を作って、この殺菌水のpHが約5.5となるようにユーザ側で調整できるようにするのがよい。
本発明は、上述した具体例で採用した様々な要素を任意に組み合わせてもよいことは言うまでもない。例えば、外側容器2、21、61や内側容器23又は第1〜第3ボトル81〜83を、自立しない薄肉プラスチック容器で構成してもよい。
上述した様々な具体例では、生成された殺菌水は中性領域又は弱酸性領域のpHとなることから、第1、第2成分の混合の際に塩素ガスなどの有毒ガスの発生を防止することができる。また、混合作業は、基本的には、密閉キャップ5を締めて気密状態の容器内で行うことから、ユーザが化学薬品(第1、第2成分)に手を触れる虞も無く安全である。
また、次亜塩素酸又は亜塩素酸による殺菌は、最近の報告によれば、例えばpH5.5且つ有効塩素濃度50ppmで、酵母菌、黄色ブドウ球菌、CNS、バチルス菌、ミクロコッカス、アシネトバクター、MRSAなどを効果的に殺菌できることが確認されている。したがって、本発明の具体例のように、何時でも、どこでも且つ手軽に、次亜塩素酸又は亜塩素酸による殺菌が可能であれば、例えば病院での院内感染などの社会問題に対しても、特別の装置を導入するまでもなく即座に対応することができる。
また、これまでは、中性又は弱酸性の次亜塩素酸又は亜塩素酸による殺菌を一般家庭で利用できなかったが、本発明の具体例は安価に消費者に提供できることから、一般消費者がこれを入手することで、一般家庭で手軽に次亜塩素酸又は亜塩素酸による殺菌を行うことができる。また、一般家庭でも、これを常時ストックしておくことで、SARSのように突発的に発生した病気の蔓延に対して各家庭毎に自衛することができる。次亜塩素酸による殺菌は、先に説明したように、人体内で好中球による殺菌メカニズムと共通することから、呼吸や食物を介して人体に取り込んでも無害である。よって家庭用加湿器(好ましくは超音波加湿器)を使って人が活動している部屋の中に殺菌水を散布して、空間殺菌を行うことができ、また、消臭効果も発揮することから、部屋の消臭も行うことができる。勿論、口の中に入れる食材や食器の洗浄及び殺菌にも使うことができる。
また、軍隊では、各キャンプ毎に、本発明の具体例をストックしておくことで、生物兵器テロや緊急医療行為に対する対応が可能になる。
本発明の具体例を使った殺菌において、例えば混合に使用したボトル21のボトル口部24に、図33に図示のように、噴霧器90を装着して、この噴霧器90を使って殺菌水を吐出させることができる。この噴霧器90は、ヘッド91を押し下げることにより、ボトル21内の殺菌水を噴霧させることができる。また、図34に図示のタイプの噴霧器93を使って殺菌水を吐出させることもできる。この図34に例示の噴霧器93はハンドル94を引くことで、ボトル21内の殺菌水を噴霧させることができる。なお、図33、図34には、図19に図示の具体例で使用したボトル21が図示されているが、これに制限されるものではない。
図33、図34で例示した噴霧器90、93は、その殺菌水吐出口に、図35に図示の混合促進部材95を設けると共に、図36に図示のようにキャップ96を使って霧化状態を制御できるようにするのが好ましい。
すなわち、混合促進部材95は、その先端面に旋回合流部95aを有し、ボトル21から汲み上げた殺菌水は混合促進部材95の先端面の2つの対向する切欠き95b、95bを通って旋回合流部95aに入り、この旋回合流部95aで混合された後に吐出される。また、キャップ96の締め込み量を調整することにより、吐出される殺菌水は直線状の噴射状態から霧化状態まで変化させることができる。
例えば、図34に図示の噴霧器93は、これに包囲カバー97を取り付けて治療に用いることができる(図37参照)。この治療の際に、傷口Uの状態に応じて、キャップ96の締め込み量を調整して殺菌水を直線状に噴射させることにより、傷口の殺菌及び膿を取り去ることができる。処理後の殺菌水は、受け皿98で受けるようにすれば衛生的である。
空間殺菌に関する実施例
例えば病院で病室内の空間殺菌を行う場合、無音で広範囲に殺菌水を散布するのが望ましい。図38は、これに適したポータブルな屋内空間殺菌装置100を例示するものである。空間殺菌装置100は、カセットタンク101内に収容した次亜塩素酸含有殺菌水を受けるトレー102を有する。カセットタンク101のキャップ103は可動ピン104を有し、この可動ピン104の動作によってキャップ103の流出口が開く。トレー102の水位がキャップ103の下面まで下がると、キャップ103を通じて空気がカセットタンク101内に取り込まれ、これによりトレー102の水位が一定に保たれる。トレー102は、装置本体105内に配設されており、トレー102内の殺菌水は超音波発生器106により微粒化される。空間殺菌装置100は、電動モータ107によって駆動される開放空間に配置されたメインファン108を有し、メインファン108及びモータ107は装置本体105の上方に配設され、軸109を中心にして、上下方向の向きを調整することができる。
超音波発生器106によって微粒化された殺菌水は、装置本体105から上方に延びる第1通路110を通ってメインファン108に隣接し且つその前方に運ばれる。これを促進するために、メインファン108の回転により生成された風の一部が第2通路111を通って装置本体105内に供給され、第2通路111から装置本体105内に供給される風を使って、超音波発生器106で微粒化された殺菌水の霧がメインファン108の近傍まで搬送される。
第1通路110の出口110aは、好ましくは、前方に向けて開放され、この出口110aはメインファン108の中心部分に隣接し且つその前方に配置されるのがよい。この出口110aの位置及び向きは、第1通路110の一部を構成する蛇腹110bによって調整することができる。メインファン108は、その回りをネット112などで囲んで安全対策を施すのがよい。
電動モータ107及び超音波発生器106は、装置本体105に収容された電源部及び制御部113によって制御される。
この空間殺菌装置100によれば、開放空間に設置されたメインファン108により送風音無しに広範囲に殺菌水を行き渡らせることが可能となり、これまで送風音が問題となっていた病室での空間殺菌にも適用可能である。空間殺菌装置100によって病室の空間殺菌を行ったときには、送風音に悩まされることなく、身体の弱った患者が生活する病室内の空間殺菌により院内感染の予防を行うことができ、更に優れた脱臭効果により病室の臭いの問題も解消することができる。本発明の殺菌原料パッケージ又は殺菌水生成キットを使うことで、カセットタンク101に補充するための殺菌水を容易に且つ装置100の近くで作ることができる。この場合、殺菌原料パッケージ又は殺菌水生成キットで生成した次亜塩素酸含有殺菌水をそのままカセットタンク101の中に入れて空間殺菌するようにしてもよいが、殺菌原料パッケージ又は殺菌水生成キットで生成した次亜塩素酸含有殺菌水を適当に希釈した後にカセットタンク101の中に入れるのが好ましい。また、殺菌水生成キットの場合には、目盛り85を使って、空間殺菌に都合の良い濃度の殺菌水を生成して空間殺菌装置100を使って室内に散布するようにしてもよい。なお、カセットタンク101の代わりに、前述したボトル21を流用するようにしてもよい。
また、空間殺菌装置100のメインファン108としてクロスフローファンを採用してもよい(図39、40)。このクロスフローファンは、既知のように、ガスの吸い込み方向と直角な方向に均一な平均流を吐出するものであり、送風音が小さいという特徴を有する。また、装置本体105内に比較的小型の第2の電動ファンを設け、この第2の電動ファンが生成する風を使って微粒化した殺菌水の霧をメインファン108の近傍まで搬送し、搬送された殺菌水の霧をメインファン108が生成する風に同伴させることにより、殺菌水を遠方まで散布するようにしてもよい。
また、室内の湿度が上昇し過ぎるのを防止するために、空間殺菌装置100に制御機構を設けて、例えば3分間殺菌水を噴霧し、次いで10分間動作を停止するように、殺菌水の噴霧を間欠的に行うようにしてもよい。この噴霧制御機構に、また、例えば室内湿度や温度を検出するセンサと組み合わせて、室内の湿度や温度に応じて噴霧時間及び動作停止時間を制御するようにしてもよい。また、予めプログラミングした制御パターンを組み込んでおき、この制御パターンにより、噴霧時間と動作停止時間を可変に制御するようにしてもよい。
空間殺菌装置100のカセットタンク101に収容する次亜塩素酸含有殺菌水は、特に限定するものではないが、有効塩素濃度が50〜200ppmが適当である。
上述した空間殺菌装置100は、ポータブルな装置を例示したが、例えば、配管によって殺菌水の供給を受ける定置式であってもよい。この場合、超音波発生器106に殺菌水を供給する形式として、配管による供給形式とカセットタンク101による供給形式とが任意に選択できるように設計するのが好ましい。
図39、図40は、アタッチメントを装着することにより、カセットタンクによる供給形式(図39)と、配管による供給形式(図40)とを選択することのできる空間殺菌装置120を示す。アウターケース121には、第1、第2のアタッチメント122、123を選択的に装着することができ、図39に図示のように第1のアタッチメント122を装着したときには、カバー122aを取り外すことによりカセットタンク101を取り出すことができる。他方、第2のアタッチメント123を装着したときには、配管124を通じて殺菌水の供給を受けることができる(図40)。図40に示す参照符号125は電磁式の開閉弁であり、126は水位センサである。水位センサ126及び電磁式の開閉弁125によって殺菌水の水位がほぼ一定に維持される。
図39、図40に図示の空間殺菌装置120には、メインファン108としてクロスフローファンが採用され、このメインファン108の送風口108aにはルーバ127が設けられている。ルーバ127の向きを調整することにより、メインファン108が生成する風の向きを変えることができる。メインファン108の送風口108aは開放空間に臨んでおり、送風ダクト無しである。アウターケース121にはエア取り込み口128を有し、このエア取り込み口128は、送風口108aの開口面積と等しいか、それよりも大きいのが望ましい。
図39、図40に図示の空間殺菌装置120には、第2の電動ファン130が設けられ、この第2の電動ファン130によって、微粒化した殺菌水の霧がメインファン108の近傍まで搬送される。
図38〜図40に図示したメインファン又はクロスフローファン108を備えた空間殺菌装置100、120は、電気分解式の殺菌水生成機構を備えることができる。図41は、電気分解式の殺菌水生成機構を備えた空間殺菌装置135を例示するものである。この空間殺菌装置135は、脱着式のカセットタンク101の中に、水で希釈した塩酸(HCl)が収容されており、塩酸水は、無隔膜の電解部136を通過することにより次亜塩素酸(HClO)が生成される。電解部136は、径の異なる2つの円筒状の金属パイプ(例えばチタン材を白金メッキしたパイプ)で構成されたプラス極137とマイナス極138を有する。電解部136は、好ましくは、放熱又は冷却機構139を有するのがよく、この放熱又は冷却機構139によって、電解部136の発熱を抑えるのがよい。例えば、放熱又は冷却機構139として、電解部136内に侵入して配置され且つ伝熱性に優れた耐蝕性プレート(例えば、チタンプレート)139aとペルチェ素子139bとの組み合わせを採用すれば、無音で電解部136を冷却することができる。
この電気分解式の空間殺菌装置135によれば、散布する微粒化殺菌水に塩類が実質的に含まれていないため、病院内での空間殺菌に適している。なお、電解部136の冷却方法に関し、ペルチェ素子139bに限定されず、空冷式であってもよいし、水冷式であってもよい。
様々な変形例
以上、本発明の具体例を説明したが、本発明はこれらの具体例に限定されない。例えば、ボトル21内に設ける内側容器23を、図42に図示するように、ボトル口部24の上端縁に掛止したスリーブ140と、このスリーブ140に嵌装された上下2つのプラグ142、143とで、この2つのプラグ142、143間に密閉空間を作り、この密閉空間を内側容器23として利用するようにしてもよい。この内側容器23を開放するには、例えば2つのプラグ142、143を上下に延びる軸144で互いに連結し、この軸144を押し下げるために、例えば密閉キャップ5に、この密閉キャップ5から垂下するロッド145を設けるようにすればよい。このロッド145は、図42に図示のように密閉キャップ5と別体構造であってもよいし、密閉キャップ5と一体構造であってもよい。ストッパリング6を取り外し、密閉キャップ5を締め付けてロッド145を下降させると、プラグ142、143が押し下げられ、下方プラグ143がスリーブ140の下端から離脱することによりスリーブ140内の成分がボトル21内に流出する。
図42を参照して説明した離脱可能なプラグ142を用いて内側容器を形成するという構成は、図27、図28に示した外側袋61の口部63に配置された内側容器71に適用することができる。すなわち、図43に示すように、内側容器71の側壁を構成するスリーブの下端開口にプラグ142を嵌装し、密閉キャップ5に関連したロッド145でプラグ142を押し下げて内側容器71を開放するようにしてもよい。このプラグ142は、内側容器71の側壁を構成するスリーブの下端内周面及び/又は下端外周面と液密に嵌合するようにするのが好ましい。
図44は、意図せずにプラグ142が内側容器23から離脱するのを防止するための手段の一例を図示するものである。この図44の例示では、ロッド145がプラグ142に固定され、このロッド145と一体構造のアーム148の端がスリーブ140の段部149に係止されている。これにより、アーム142はロッド145の下降移動を規制するストッパとして機能し、意図しないロッド145の下降移動を防止することでプラグ142の脱落事故を回避することができる。なお、ストッパリング6を取り外し、密閉キャップ5を締め付けてロッド145を下降させるという正規の混合作業に支障を及ぼすことがないように、アーム142の一部に弱体部150(例えばアーム142とロッド145との連結部分)を作り、密閉キャップ5を締め付けたときに、アーム142の弱体部で破断又は折れ曲がるようにするのが好ましい。
図44は、また、内側容器23のキャップを実質的に構成する密閉キャップ5にリリーフバルブ152を設けることを開示している。内側容器23の内圧が上昇したときには、リリーフバルブ152が開くことにより内側容器23の圧力をほぼ一定に保つことができる。リリーフバルブ152のような圧力調整手段を内側容器23に設けることにより、例えば、次亜塩素酸ナトリウムから酸素ガスが発生して内側容器23の内圧が上昇したときに、この内圧によりプラグ142が押し下げられて、プラグ142が脱落してしまうのを防止することができる。
図44に開示の圧力開放手段は、ボールとバネとで構成されているが、これに代えて、気液分離膜を利用して内側容器23の内部のガスを気液分離膜を通じて大気に放出するようにしてもよく、或いは、クッション性を備えた柔軟なパッキン(例えば独立気泡の柔軟な樹脂から作られたパッキン)を密閉キャップ5のシール材として用い、パッキンの圧縮の程度を調整して、ガスは漏れ出すことができるものの液体の通過を遮断するようにしてもよい。
上述した図42に開示の変形例は、これを別の観点から見れば、内側容器23を2つの相対変位可能な部材(第1の部材140と第2の部材144、142、143)で構成し、一方の部材140を外側容器21に固定した状態で、他方の部材144、142、143を変位させることで内側容器23を開放して、内側容器23の中の成分を外側容器21内に流出させるようになっている。この観点に従う他の具体例を図45、図46に示す。
図45に図示の変形例は、外側容器つまりボトル21に固定されたスリーブ140(第1部材)と、上下に離間した2つのフランジ142、143を備えた第2部材150とを有し、この第2部材150をスリーブ140内に嵌装することによって内側容器23が形成されている。
ストッパリング6を取り外し、密閉キャップ5を締め付けてロッド145を下降させると、このロッド145によって第2部材150が押し下げられ、この結果、内側容器23の一部が開いて、内側容器23内の成分がボトル21内に流出する。図45に図示したように、第2部材150の本体152が円筒状であれば、参照符号152で示すように貫通孔を設けるのがよい。
図46に図示の変形例は、第2部材150がスリーブ140の外側に位置し、第2部材150の円筒状本体151の下端は底155によって閉じられ、この底155はスリーブ140と液密に密接している。そして円筒状本体151の上端は内側フランジ156を有し、内側フランジ156の内方端はスリーブ140と液密に密接し、これによりスリーブ140の外側に内側容器23が形成されている。
ストッパリング6を取り外し、密閉キャップ5を締め付けてロッド145を下降させると、このロッド145によって第2部材150が押し下げられ、この結果、第2部材150の底155がスリーブ140の下端から離れることにより、内側容器23の一部が開いて、内側容器23内の成分がボトル21内に流出する。
図16などの具体例に含まれる切断補助具26に関し、図47〜図50に例示するように、その頂部に凹所26bを設け、この凹所26bにパウダー状の炭酸水素ナトリウムを収容するようにしてもよい。ストッパリング42を取り外した後にプッシャ41を押し下げると切断補助具26が下方に強制移動して、内側容器23の水平段部23bを切断して内側容器23を落下させることができると共に切断補助具26も一緒にボトル21の中に落下する(図48)。これにより、内側容器23内に収容した成分に加えて、切断補助具26の凹所26bに収容した炭酸水素ナトリウムがボトル21内に流入し、ボトル内21内で炭酸水素ナトリウムを含む3つの成分が混合されて、緩衝剤として炭酸水素ナトリウムを含む殺菌水を生成することができる。
切断補助具26の下端に形成された切断刃26aは、図47から理解できるように傾斜した輪郭を有するのが好ましい。また、切断刃26aは、その最下端に下方に突出した鋭利な先端26cを備えているのがよい。切断刃26aを備えた切断補助具26は、プッシャ41により押し下げられると、最下端の鋭利な先端26cが内側容器23の水平段部23bに食い込んでその一部を突き抜け、次いで、傾斜した輪郭の切断刃26aによって水平段部23bが次々と切り込まれ、最終的には水平段部23bの全周が切断されることになる。これにより、切断刃26aによる内側容器23の切り落としを確実なものにすることができ、また、この切り落としに要する力を軽減することができる。
内側容器23の中に次亜塩素酸ナトリウムを収容したときに、ボトル21を保管中に、次亜塩素酸ナトリウムから発生するガスを外部に放出する必要があれば、図51に例示するように、切断補助具26の凹所26bの底部分に透孔160を設けると共に、凹所26bの蓋の役割をするプッシャ41にも第2の透孔161を設けて、これらの透孔160、161を通じてガスを外部に放出するようにしてもよい。図51に図示の参照符号163は第1の透孔160を覆う第1のガス透過膜を示し、164は第2の透孔161を覆う第2のガス透過膜を示す。
図51の変形例として、図52に示すように、プッシャ41の中心部分から切断補助具26の中心部分を貫通して下方に延びる筒状のガス放出通路166を設け、このガス放出通路166を通じて内側容器23内の次亜塩素酸ナトリウムが放出するガスを外部に放出するようにしてもよい。図52の参照符号167は逆止弁を示す。
緩衝作用
図53は、次亜塩素酸ナトリウムに塩酸を混合することによるpH値の変化を示すものである。■印は、次亜塩素酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムとを含む水溶液に塩酸を混入したときのpH値を示し、▲印は単に次亜塩素酸ナトリウムに塩酸を混入したときのpH値を示す。この実験に使用した各成分は次のとおりである。
(1) 水道水 250ml
(2) 次亜塩素酸ナトリウム(濃度12%) 0.4ml
(3) 塩酸(濃度7.2%)
(4) 炭酸水素ナトリウム 0.3g
■印のデータをサンプリングするときには、水道水に次亜塩素酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムを混合した水溶液に、塩酸を少しずつ投入して殺菌水のpHの変化を測定した。▲印のデータをサンプリングするときには、水道水に次亜塩素酸ナトリウムを混入した水溶液に、塩酸を少しずつ投入して殺菌水のpHの変化を測定した。
図53から理解できるように、炭酸水素ナトリウムを入れない実験では、殺菌水のpH値は塩酸の量の増加に敏感であり急激にpH値が低下して一気に強酸性領域まで低下することが分かる。特に、pH6から一気にpH3まで急激に低下している。これに対して、炭酸水素ナトリウムを入れた実験では、殺菌水のpH値の低下が抑えられ、特に、pH約5までの低下がなだらかであることが分かる。当業者であれば、この実験結果から容易に理解できるように、次亜塩素酸ナトリウムに塩酸を加えて殺菌水のpH値が中性領域又は弱酸性領域となるように調整するのに、炭酸水素ナトリウムを入れた方が容易であることが分かるであろう。また、生成した殺菌水のpH変動を抑えることができる。また、生成した殺菌水を水で希釈して使用するときにも、使用する水が例えばアルカリの井戸水であれば、炭酸水素ナトリウムなどの緩衝剤と共に塩酸などの酸を共に添加して炭酸を生成できるようにすれば、同じ緩衝効果を得ることができる。なお、生成した殺菌水に炭酸ガス又は高濃度の炭酸水を添加することにより緩衝効果を得るようにしてもよい。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】

【図26】

【図27】

【図28】

【図29】

【図30】

【図31】

【図32】

【図33】

【図34】

【図35】

【図36】

【図37】

【図38】

【図39】

【図40】

【図41】

【図42】

【図43】

【図44】

【図45】

【図46】

【図47】

【図48】

【図49】

【図50】

【図51】

【図52】

【図53】

【図54】

【図55】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次亜塩素酸塩又は亜塩素酸塩を含み且つ第1密閉空間に収容された第1成分と、
酸を含み且つ第2密閉空間に収容された第2成分と、を用意し、
前記第1成分と前記第2成分とを混合することにより殺菌水を生成し、
前記第1成分と前記第2成分とが、これらを混合したときに所定の有効塩素濃度の且つ弱酸性領域又は中性領域の殺菌水を生成することができるように調整されている、次亜塩素酸又は亜塩素酸による殺菌水の生成方法。
【請求項2】
重炭酸塩を有する緩衝剤が前記第1密閉空間に前記第1成分と共に収容されている、請求項1に記載の次亜塩素酸又は亜塩素酸による殺菌水の生成方法。
【請求項3】
重炭酸塩を有する緩衝剤を含み且つ第3密閉空間に収容された第3成分を更に準備し、
前記第1成分と第2成分とを混合するときに前記第3成分を含めて混合する、請求項1に記載の次亜塩素酸又は亜塩素酸による殺菌水の生成方法。
【請求項4】
前記第1成分と前記第2成分とが、前記第1密閉空間に収容された前記第1成分の全量と、前記第2密閉空間に収容された前記第2成分の全量とを混合したときに所定の有効塩素濃度の且つ弱酸性領域又は中性領域の殺菌水を生成することができるように調整されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の次亜塩素酸又は亜塩素酸による殺菌水の生成方法。
【請求項5】
前記第1密閉空間が第1容器により形成され、
前記第2密閉空間が第2容器により形成されている、請求項1に記載の次亜塩素酸又は亜塩素酸による殺菌水の生成方法。
【請求項6】
前記第1密閉空間と前記第2密閉空間とが単一の容器内に形成されている、請求項1に記載の次亜塩素酸又は亜塩素酸による殺菌水の生成方法。
【請求項7】
前記第1成分がpH10以上のアルカリ液である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の次亜塩素酸又は亜塩素酸による殺菌水の生成方法。
【請求項8】
次亜塩素酸塩又は亜塩素酸塩を含み且つ第1密閉空間に収容された第1成分と、
酸を含み且つ第2密閉空間に収容された第2成分と、を用意し、
前記第1成分と前記第2成分とを所定量の水と混合することにより殺菌水を生成し、
前記第1成分と前記第2成分とが、前記所定量の水と混合したときに所定の有効塩素濃度の且つ弱酸性領域又は中性領域の殺菌水を生成することができるように調整されている、次亜塩素酸又は亜塩素酸による殺菌水の生成方法。
【請求項9】
重炭酸塩を有する緩衝剤が前記第1密閉空間に前記第1成分と共に収容されている、請求項8に記載の次亜塩素酸又は亜塩素酸による殺菌水の生成方法。
【請求項10】
重炭酸塩を有する緩衝剤を含み且つ第3密閉空間に収容された第3成分を更に準備し、
前記第1成分と第2成分とを水と混合するときに前記第3成分を含めて混合する、請求項8に記載の次亜塩素酸又は亜塩素酸による殺菌水の生成方法。
【請求項11】
前記水の量を記載したマニュアルを更に用意し、
該マニュアルを見て、該マニュアルに記載の前記所定量の水の中に、前記第1成分と前記第2成分とを入れる、請求項8に記載の次亜塩素酸又は亜塩素酸による殺菌水の生成方法。
【請求項12】
次亜塩素酸塩又は亜塩素酸塩を含む第1成分と、
酸を含む第2成分と、
前記第1成分と前記第2成分とが混じらないように隔壁で分離して収容した単一の容器と、
該容器の外部から人為的に力を加えることにより変位可能な変位部材とを有し、
該変位部材の変位により、前記第1成分と前記第2成分とが前記容器内で混合して殺菌水を生成することができ、
前記第1成分と前記第2成分とが、これらが混合したときに所定の有効塩素濃度の且つ弱酸性領域又は中性領域の殺菌水を生成することができるように調整されている、殺菌原料パッケージ。
【請求項13】
重炭酸塩を有する緩衝剤を含む第3成分を更に有し、
前記単一の容器の中に前記第1成分、第2成分、第3成分が互いに混じり合わないように隔壁で分離され、前記変位部材に力を加えて該変位部材を変位させることにより、前記第1成分、前記第2成分、前記第3成分が前記容器内で混合して殺菌水を生成する、請求項12に記載の殺菌原料パッケージ。
【請求項14】
前記変位部材が刃物を有し、該刃物で前記隔壁を破ることにより前記第1成分と前記第2成分とを混合させることができる、請求項12に記載の殺菌原料パッケージ。
【請求項15】
次亜塩素酸塩又は亜塩素酸塩を含む第1成分又は酸を含む第2成分のいずれか一方の成分を収容した外側容器と、
該外側容器の中に収容され、前記第1成分又は前記第2成分の他方の成分を収容した内側容器と、
該内側容器を密閉するシール部材と、
前記外側容器に関連して設けられ、該外側容器の外部からアクセス可能な操作部材とを有し、
該操作部材を操作することにより、前記内側容器が前記シール部材から解放されて、該内側容器の中の前記他方の成分が前記外側容器の中に流出して殺菌水を生成することができ、
前記第1成分と前記第2成分とが、これらが混合したときに所定の有効塩素濃度の且つ弱酸性領域又は中性領域の殺菌水を生成することができるように調整されている、殺菌原料パッケージ。
【請求項16】
前記内側容器が互いに独立した第1、第2の空間を有し、
該第1の空間に、前記第1成分又は前記第2成分が収容され、
前記第2の空間に、重炭酸塩を有する緩衝剤が収容されている、請求項15に記載の殺菌原料パッケージ。
【請求項17】
前記操作部材が、前記外側容器の密閉キャップを含む、請求項15又は16に記載の殺菌原料パッケージ。
【請求項18】
前記操作部材が、前記外側容器に露出した部分を備えたプッシャを有する、請求項15又は16に記載の殺菌原料パッケージ。
【請求項19】
前記外側容器が口部を備え、
また、殺菌原料パッケージは、
該口部の内部に設けられた円周シール部材と、
該円周シール部材でシールされた円周溝を備えた可動部材と、
前記口部を閉塞する密閉キャップとを更に有し、
前記内側容器が、前記可動部材の円周溝で構成され、
前記密閉キャップを操作することにより前記可動部材が下降して、前記円周溝が前記シール部材から解放されて、該円周溝の中の前記他方の成分が前記外側容器の中に流出する、請求項15又は16のいずれか一項に記載の殺菌原料パッケージ。
【請求項20】
次亜塩素酸塩又は亜塩素酸塩を含む第1成分又は酸を含む第2成分のいずれか一方の成分を収容した外側容器と、
該外側容器の中に収容され、前記第1成分又は前記第2成分の他方の成分を収容した内側容器と、
該内側容器に形成され且つ前記外側容器の内部空間と連通する開口に嵌装されたプラグと、
前記外側容器の外部からアクセス可能な、前記プラグに関連した操作部材とを有し、
該操作部材を意図的に操作することにより、該操作部材の動きに関連して前記プラグを前記内側容器の前記開口から離脱させ、これにより前記内側容器の中の前記他方の成分が前記外側容器の中に流出することにより殺菌水を生成することができ、
前記第1成分と前記第2成分とが、これらが混合したときに所定の有効塩素濃度の且つ弱酸性領域又は中性領域の殺菌水を生成することができるように調整されている、殺菌原料パッケージ。
【請求項21】
前記操作部材が、前記外側容器の密閉キャップを含む、請求項21に記載の殺菌原料パッケージ。
【請求項22】
次亜塩素酸塩又は亜塩素酸塩を含む第1成分又は酸を含む第2成分のいずれか一方の成分を収容した外側容器と、
該外側容器の中に収容され、前記第1成分又は前記第2成分の他方の成分を収容した内側容器とを有する殺菌原料パッケージであって、
前記内側容器の内部空間は、前記外側容器に固定された第1部材と、該第1部材に対して相対移動可能な第2部材とで形成され、
また、前記外側容器の外部からアクセス可能な、前記第2部材に関連した操作部材を有し、
該操作部材を意図的に操作することにより、該操作部材の動きに関連して前記第2部材を移動させて前記内側容器の一部を開くことにより前記内側容器の中の前記他方の成分が前記外側容器の中に流出することにより殺菌水を生成することができ、
前記第1成分と前記第2成分とが、これらが混合したときに所定の有効塩素濃度の且つ弱酸性領域又は中性領域の殺菌水を生成することができるように調整されている、殺菌原料パッケージ。
【請求項23】
前記操作部材が、前記外側容器の密閉キャップを含む、請求項22に記載の殺菌原料パッケージ。
【請求項24】
外側容器用の口部を有し、次亜塩素酸塩又は亜塩素酸塩を含む第1成分又は酸を含む第2成分のいずれか一方の成分を収容した外側容器と、
上方に向けて開放した上端開口部を有し、該上端開口部が前記外側容器用口部と係合することのより前記外側容器の中に保持され、前記第1成分又は前記第2成分の他方の成分を収容した内側容器と、
前記外側容器用口部を閉鎖すると共に前記内側容器の上端開口部を閉鎖する密閉キャップとを有し、
該密閉キャップを外して、前記内側容器の前記上端開口部を押し下げることにより、該上端開口部と前記外側容器用口部との係合を解除させて前記内側容器を前記外側容器の中に落下させ、前記内側容器の中の前記他方の成分を前記外側容器の中に流出させることにより殺菌水を生成することができ、
前記第1成分と前記第2成分とが、これらが混合したときに所定の有効塩素濃度の且つ弱酸性領域又は中性領域の殺菌水を生成することができるように調整されている、殺菌原料パッケージ。
【請求項25】
前記内側容器は、少なくとも前記上端開口部が、指の力で容易に撓み変形可能な軟質材料で作られている、請求項24に記載の殺菌原料パッケージ。
【請求項26】
外側容器用の口部を有し、次亜塩素酸塩又は亜塩素酸塩を含む第1成分又は酸を含む第2成分のいずれか一方の成分を収容した外側容器と、
上方に向けて開放した上端開口部を有し、該上端開口部が前記外側容器用口部と係合することにより前記外側容器の中に保持され、前記第1成分又は前記第2成分の他方の成分を収容した内側容器と、
前記外側容器用口部を閉鎖すると共に前記内側容器の上端開口部を閉鎖する密閉キャップとを有し、
該密閉キャップを外して、前記内側容器を前記外側容器から取り出して、前記内側容器の中の前記他方の成分を前記外側容器の中に入れることにより殺菌水を生成することができ、
前記第1成分と前記第2成分とが、これらが混合したときに所定の有効塩素濃度の且つ弱酸性領域又は中性領域の殺菌水を生成することができるように調整されている、殺菌原料パッケージ。
【請求項27】
次亜塩素酸塩又は亜塩素酸塩を含む第1成分又は酸を含む第2成分のいずれか一方の成分を収容した第1容器と、
前記第1成分又は前記第2成分の他方の成分を収容した第2容器と、
前記第1成分の量と、前記第2成分の量と、前記第1、第2成分を混ぜる水の量とを記載したマニュアルとを有し、
該マニュアルの指示に従って、所定量の水の中に、前記第1、第2の成分を混ぜることにより殺菌水を生成することができ、
前記第1成分と前記第2成分とが、前記所定量の水と混合したときに所定の有効塩素濃度の且つ弱酸性領域又は中性領域の殺菌水を生成することができるように調整されている、殺菌水生成キット。
【請求項28】
空間殺菌に適した有効塩素濃度の且つ弱酸性領域又は中性領域の次亜塩素酸含有殺菌水を微粒化するための超音波発生器と、
開放空間に向けて送風する電動のメインファンと、
前記超音波発生器で生成した微粒化殺菌水の霧を前記メインファンの近傍まで搬送する第2電動ファンとを有し、
前記微粒化殺菌水の霧を前記メインファンが生成する風に乗せて散布する、空間殺菌装置。
【請求項29】
予め調整された濃度の次亜塩素酸塩を含み且つ第1密閉空間に収容された第1成分と、予め調整された濃度の酸を含み且つ第2密閉空間に収容された第2成分とをユーザが混合することにより生成した前記次亜塩素酸含有殺菌水を収容することのできるカセットタンクを更に有し、
該カセットタンクから供給される殺菌水を前記超音波発生器により微粒化する、請求項28に記載の空間殺菌装置。
【請求項30】
前記空間殺菌装置が、前記カセットタンクによる前記殺菌水の供給形式と、配管による供給形式とが選択可能である請求項29に記載の空間殺菌装置。
【請求項31】
予め調整された濃度の次亜塩素酸塩を含み且つ第1密閉空間に収容された第1成分と、予め調整された濃度の酸を含み且つ第2密閉空間に収容された第2成分とをユーザが混合することにより生成した、空間殺菌に適した有効塩素濃度の且つ弱酸性領域又は中性領域の殺菌水を収容することのできるカセットタンクと、
該カセットタンクから供給される殺菌水を微粒化するための超音波発生器と、
開放空間に向けて送風する電動のメインファンと、
前記超音波発生器で生成した微粒化殺菌水の霧を前記メインファンの近傍まで搬送する第2電動ファンとを有し、
前記微粒化殺菌水の霧を前記メインファンが生成する風に乗せて散布する、ポータブルな空間殺菌装置。
【請求項32】
前記第1成分と第2成分とを混合するとき又は前記第1成分と第2成分とを混合した後に水で希釈して空間殺菌に適した有効塩素濃度の殺菌水を生成する、請求項31に記載のポータブルな空間殺菌装置。
【請求項33】
前記メインファンと前記第2電動ファンとが共通の電動ファンからなる、請求項31又は32に記載のポータブルな空間殺菌装置。
【請求項34】
予め調整された濃度の次亜塩素酸塩を含み且つ第1密閉空間に収容された第1成分と、予め調整された濃度の酸を含み且つ第2密閉空間に収容された第2成分とをユーザが混合することにより、空間殺菌に適した有効塩素濃度の且つ弱酸性領域又は中性領域の殺菌水を生成する殺菌水生成工程と、
該殺菌水生成工程で生成した殺菌水をタンクに収容する殺菌水収容工程と、
前記タンクから供給された前記殺菌水を微粒化して殺菌水の霧の流れを生成する殺菌霧生成工程と、
前記殺菌水の霧の流れを、開放空間に向けて送風するメインファンの近傍まで案内する案内工程と、
前記電動ファンの近傍まで案内された殺菌水の霧の流れを、前記メインファンが生成する風に同伴させることにより、前記殺菌水を遠方に散布する殺菌水散布工程とを有する空間殺菌方法。
【請求項35】
前記第1成分と第2成分とを混合するとき又は前記第1成分と第2成分とを混合した後に、希釈するための水を混合する、請求項34に記載の空間殺菌方法。

【国際公開番号】WO2004/098657
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【発行日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506058(P2005−506058)
【国際出願番号】PCT/JP2004/006611
【国際出願日】平成16年5月11日(2004.5.11)
【出願人】(000122483)
【出願人】(500235386)ヴィータ株式会社 (29)
【Fターム(参考)】