説明

歩行型作業機のボンネット構造

【課題】本発明は、ボンネットをエンジン側に簡単に取付けられる歩行型作業機におけるボンネットの取付け構造を提供することにある。
【解決手段】機体前部に搭載したエンジン4の上方に、上下に揺動開閉自在なボンネット10を配設するとともに、基端部22と、基端部22から延設されて互いに近接する方向、又は離間する方向に付勢された一対の遊端部24とからなる接続部材19を備え、ボンネット側とエンジン側のいずれか一方に被係合部16を設けて、他方に枢軸部21を設け、接続部材19の基端部22を枢軸部21に嵌合させるとともに遊端部24を被係合部16に係合させることにより、ボンネット10を接続部材19を介してエンジン側に回動自在に取り付けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歩行型耕耘機や歩行型管理機などの歩行型作業機のボンネット構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示されているように、ミッションケース2の下部に設けた駆動用出力軸を介して走行車輪1を備え、ミッションケース2の上部側にエンジン4と操縦ハンドル9の取付部を設け、エンジン4の上側を覆うボンネット10を前部支点Pで後部を昇降自在に構成してある歩行型作業機が知られている。
特許文献1のものでは、エンジン4の前部から燃料タンク8にかけてボンネット10が前端支点Pを中心に上下揺動開閉自在に設けられており、ボンネット10のプロテクター部材11の内面中央部に支点用のブラケット14が設けられ、エンジン4の前端面にボルト連結したステー15にヒンジ16を固設し、ヒンジ16をブラケット14にボルトナットを介して固定し、ボンネット10をヒンジ16を介してエンジン側に枢支連結されている。
【特許文献1】実開平3−2881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の構成では、ボンネットをエンジン側に取り付けるのに予めステーに固定したヒンジをボルトナットを介してボンネットに固定する必要があり、ヒンジを先行して取付けておく必要があるとともに、ボンネットの取付けにボルトナットやヒンジが必要であり、ボンネットの取付けに手間が掛る不都合などを招き易くなる。
【0004】
本発明は、ボンネットの取付け構造を簡単な改良でボンネットをエンジン側に枢支連結するようにするとともに、ボンネットをエンジン側に簡単に取付けられる取付け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔第1発明の構成〕
上記の目的を達成するため、本発明のうちの第1の発明では、機体前部に搭載したエンジンの上方に、上下に揺動開閉自在なボンネットを配設した歩行型作業機のボンネット構造であって、小空間を有する基端部と、この基端部から延設されて互いに近接する方向、又は離間する方向に付勢された一対の遊端部とからなる接続部材を備え、ボンネット側とエンジン側のいずれか一方に被係合部を設けて、他方に枢軸部を設け、接続部材の基端部を枢軸部に嵌合させるとともに遊端部を被係合部に係合させることにより、ボンネットを接続部材を介してエンジン側に回動自在に取り付けてあることを特徴とする。
【0006】
〔第1発明の作用〕
第1の発明によると、例えば図3,4,5に示すように、ボンネット10側に被係
合部16を備え、エンジン4側に枢軸部21を備えた場合、接続部材19の基端部
(小空間23)に枢軸部21を入り込ませるようにして、接続部材19の基端部を枢
軸部21に嵌合させ、接続部材19の遊端部24を被係合部16に係合させればよ
い。これにより、枢軸部21を支点として、ボンネット10が接続部材19を介して
回動自在(開閉自在)に取り付けられる。
【0007】
従来構造では、ボンネットに対してステーに取付けた蝶番をボルト締めをして取付けていたが、前述のように第1の発明によると、蝶番やボルトナットが不要で、エンジン側とボンネット側の一方に設けた枢軸部に連結部材の基端部を嵌合させるとともに、他方に形成した被係合部に連結部材の一対の遊端部を係合させることで、ボンネットをエンジン側に揺動開閉自在に連結することができた。
【0008】
〔第1発明の効果〕
第1の発明によれば、ボンネットをエンジン側に取付けるための部品点数を削減することができるとともに、連結部材をエンジン側部材とボンネット側部材とに渡って連結するだけでボンネットをエンジン側に着脱することができ、ボンネットの取付けも簡便に行うことができる利点がある。
【0009】
〔第2発明の構成〕
第2の発明は第1の発明の構成における接続部材を、板材をU字状に折り曲げた板バネで構成したものである。
【0010】
〔第2発明の作用効果〕
第2の発明によれば、接続部材を、板材をU字状に折り曲げ形成した板バネで構成してあるので、幅のある板面でボンネット又はエンジン側の被係合部に圧接係合させるだけでよく、簡便にボンネットをエンジン側に簡便に取付けることができる。又、接続部材を板バネで一体的に構成することが容易なので、接続部材の構造の簡素化の面でも有利である。
【0011】
〔第3発明の構成〕
第3の発明は第1又は第2の発明における被係合部を、一対の遊端部に外側から挟持される被挟持部で構成したものである。
【0012】
〔第3発明の作用効果〕
第3の発明によれば、被係合部を接続部材の一対の遊端部で挟み込んで挟持するだけで、ボンネットをエンジン側に簡便に取付けることができる。
【0013】
〔第4発明の構成〕
第4の発明は、第1〜第3の発明のうちのいずれかの発明の構成において、接続部材及び被係合部の一方に凸部を備え、接続部材及び被係合部の他方に凹部又は貫通孔を備えて、凸部が凹部又は貫通孔に入り込むことにより、接続部材の遊端部が被係合部に係合するように構成したものである。
【0014】
〔第4発明の作用効果〕
第4の発明によれば、接続部材及び被係合部の一方に形成した凸部を、接続部材及び被係合部の他方に生成した凹部又は貫通孔に入り込ませることにより、接続部材の遊端部が被係合部に係合するようにしてあるので、ボンネットが外れるようなことがなく、エンジン側に確実に取付けることができる。
【0015】
〔第5発明の構成〕
第5の発明は、第1〜第4の発明のうちのいずれかの発明の構成における枢軸部を、エンジン又はボンネットに設けた板状のステーに形成した接続部材の遊端部を挿通させる一対の孔と孔との間に形成された孔仕切り部で構成したものである。
【0016】
〔第5発明の作用効果〕
第5の発明によれば、エンジン又はボンネットに設けた取付け部材である板状のステーに一対の孔を形成して、両孔間の孔仕切り部を枢軸部としたので、取付け部材としてのステーという既存の部材を有効に利用することができて、部品点数を削減できるに至ったものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1に歩行型作業機が示されている。この歩行型作業機は、図示しない耕耘装置を連結する歩行型耕耘機であり、下部に走行車輪1を備えたミッションケース2の前部に、前フレーム3を介してエンジン4を搭載し、エンジン出力をベルト伝動装置5を介してミッションケース2に伝達するとともに、ミッションケース2の右側面に突設したPTO軸(図示せず)からミッションケース2の後部に連結したロータリ耕耘作業装置(図示せず)に動力伝達するよう構成され、かつ、ミッションケース2の上方に燃料タンク8を配設するとともに、ミッションケース2から後方に操縦ハンドル9を延出した構造となっている。
【0018】
エンジン4の前部から燃料タンク8にかけてボンネット10が前端支点Pを中心に上下揺動開閉自在に設けられている。ボンネット10は、図2及び図3に示すように、前方に向けて凸曲するプロテクターとしてのアーチ状部材11と、このアーチ状部材11の左右後端同志を連結する縦フレーム部材12と、ボンネット本体13とからなる。
アーチ状部材11は上方水平部材14と前面を形成するアーチ状の縦部材15とで構成し、上方水平部材14の内面の左右中央部に下方に向けて垂下させた状態のブラケット16がアーチ状部材11と一体形成されている。
【0019】
エンジン4の前端部にボルト17で連結した側面視逆L字状のステー18を備え、このステー18にはボンネット10を枢支連結するための接続部材19を嵌着させるために一対の孔20の間に形成した枢軸部21を形成してある。この枢軸部21が前記ボンネット10の前端支点Pとなる。
【0020】
接続部材19は、弾性を有する金属性の板バネで構成してあり、図2、図3に示すようにU字状の基端部22に枢軸部21に嵌合するための小空間23を形成してあり、一対の遊端部24の一方の板面にプレス加工により内向き凸部25を複数個形成し、一対の遊端部24,24が互いに近接する方向に板バネの弾性力で付勢するように曲げ成形されている。
【0021】
ボンネット10のブラケット16には、接続部材19の凸部25が嵌合する貫通孔26を形成してあり、接続部材19の両遊端部24,24をステー18の孔20,20に挿通してブラケット16の貫通孔26に遊端部24の凸部25を嵌合させた状態で両遊端部24,24によりブラケット16を挟持保持させてある。
【0022】
ボンネット本体13のアーチ状部材11、縦フレーム部材12及びボンネット本体13の前部によって囲まれた空間27に、前照灯装置28が上記部材から突出しないように組入れられている。
【0023】
〔別実施の形態〕
上記発明を実施するための最良の形態では、接続部材19の遊端部24を互いに近接する方向に付勢して被挟持部材を構成するブラケット16を両側から挟持するように構成してあるが、これに代えて、接続部材19の一対の遊端部24を互いに離間する方向に付勢して、薄筒状に形成された矩形筒内に一対の遊端部24,24を近接させた状態で筒内空間に差し込むことにより、一対の遊端部24,24が互いに離れる方向に付勢された付勢力により接続部材19を矩形筒の内面に圧接させることで取付けることもできる。
ブラケット16で構成された被挟持部材、及び接続部材19の遊端部24を内部に差し込んで保持する上記矩形筒を被係合部材と総称する。
【0024】
上記発明を実施するための最良の形態では、接続部材19を一枚の板バネで形成したが、複数の丸棒或いは角材をU字状に折り曲げて形成して構成した接続部材19でもよい。
【0025】
上記発明を実施するための最良の形態では、接続部材19の基端部22をエンジン側に取付けたステー18の枢軸部21に嵌合するとともに、接続部材19の遊端部24をボンネット側のブラケット16に対して挟持するように構成してあるが、接続部材19を装着するための前記ブラケット16をエンジン側のステー18に、枢軸部21をボンネット側に形成して、これらに対して接続部材19を装着するようにしてもよい。
【0026】
上記発明を実施するための最良の形態では、枢軸部21を一対の孔20によって形成した例を示したが、例えば、ステー18の前端部に一つの孔20を形成し、この孔20とステー18の前端との間に枢軸部21が形成されるように構成してもよい。また、ステー18に枢軸部21を形成した例を示したが、ステー18とは別に枢軸部21を形成してもよい。具体的には、例えば、棒材(角棒又は丸棒)からなるロッドを後向きに開口したコ字状に形成し、このロッドの前後向き部分の後部をステー18の前端部に上面側又は下面側から溶接等により固定して、ロッドの左右向きの部分が枢軸部21として機能するように構成してもよい。
【0027】
上記発明を実施するための最良の形態では、ブラケット16に接続部材19の凸部25を係合するための貫通孔26を形成したが、これに代えて接続部材19の凸部25が嵌まり込む窪んだ凹部を形成してもよい。ブラケット16及びステー18等をエンジン4及びボンネット10の後部に配置して、ボンネット10を後部の支点周りに上下に揺動(開閉)自在に構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】歩行型作業機の側面図
【図2】ボンネットを閉じた状態の要部縦断側面図
【図3】ボンネットの開閉枢軸部の接続部材を示す正面図
【図4】接続部材の取付け構造を示す斜視図
【図5】接続部材の取付け構造の分解図を示す縦断側面図
【符号の説明】
【0029】
4 エンジン
10 ボンネット
16 被係合部(被挟持部)
18 ステー
19 接続部材
21 枢軸部(孔仕切り部)
22 基端部
23 小空間
24 遊端部
25 凸部
26 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体前部に搭載したエンジンの上方に、上下に揺動開閉自在なボンネットを配設した歩行型作業機のボンネット構造であって、
小空間を有する基端部と、この基端部から延設されて互いに近接する方向、又は離間する方向に付勢された一対の遊端部とからなる接続部材を備え、前記ボンネット側とエンジン側のいずれか一方に被係合部を設けて、他方に枢軸部を設け、前記接続部材の基端部を前記枢軸部に嵌合させるとともに遊端部を前記被係合部に係合させることにより、前記ボンネットを前記接続部材を介してエンジン側に回動自在に取り付けてあることを特徴とする歩行型作業機のボンネット構造。
【請求項2】
前記接続部材は、板材をU字状に折り曲げた板バネである請求項1記載の歩行型作業機のボンネット構造。
【請求項3】
前記被係合部は、前記一対の遊端部に外側から挟持される被挟持部である請求項1または2記載の歩行型作業機のボンネット構造。
【請求項4】
前記接続部材及び被係合部の一方に凸部を備え、前記接続部材及び被係合部の他方に凹部又は貫通孔を備えて、前記凸部が凹部又は貫通孔に入り込むことにより、前記接続部材の遊端部が前記被係合部に係合するように構成してある請求項1〜3のいずれか一項に記載の歩行型作業機のボンネット構造。
【請求項5】
前記枢軸部は、前記エンジン又はボンネットに設けた板状のステーに形成した接続部材の遊端部を挿通させる一対の孔と孔との間に形成された孔仕切り部で構成されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の歩行型作業機のボンネット構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−76564(P2010−76564A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246393(P2008−246393)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】