説明

段違い合わせガラス窓

【課題】単板ガラス窓における破損時のガラス飛散を防止する。
【解決手段】矩形の主ガラス板とこれより小さい矩形の副ガラス板とが合わせ中間膜により接着された段違い合わせガラスをサッシに取り付けてなる段違い合わせガラス窓であって、前記段違い合わせガラスは、4辺において前記主ガラス板の周縁部は前記副ガラス板の外周縁から突出しており、かつサッシに単板ガラスを取り付けする際の強度上必要とされるガラス板の厚さをtmm、段違い合わせガラスの厚さをtmm(主ガラス板の厚さtmm+副ガラス板の厚さtmm)としたとき、
t≧(t+0.268)/0.866、かつt≧3mm
であり、前記段違い合わせガラスがサッシに前記主ガラス板の周縁部で取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段違い合わせガラス窓に係り、さらに詳しくはサッシに取り付けされる部分が単板ガラス構造になっている安全性の高い段違い合わせガラス窓に関する。
【背景技術】
【0002】
既存建物の窓ガラスの多くは単板ガラスであるため、例えば地震や物がぶつかって破損すると、ガラス板が落下し鋭利なガラス片が飛散し大変危険である。このようなガラス窓の安全対策として、既存の単板ガラスを安全性の優れる合わせガラスに嵌めかえることが行われている。
【0003】
上記のように既存の単板ガラスを合わせガラスに交換する場合、通常はガラス強度の関係から合わせガラスの方が単板ガラスより厚くなるため、サッシも溝幅の広いものに交換する必要がある。しかし、ガラスだけでなくサッシも同時に交換すると、改修費用が嵩むため、安全対策上は合わせガラスが好ましくても、費用面が大きな妨げとなって、実行が困難となっているのが現状である。
【0004】
一方、特許文献1には、自動車や鉄道車両などの走行体の窓用開口部に窓用ガラスを取り付ける場合、窓用ガラスの外面と車体側の外表面との面高を略一致させるために、窓用ガラスとして内板ガラスの外側に外板ガラスを内板ガラスの周縁部が外板ガラスの外周縁から突出させて合わせ中間膜で接合してなる段違い合わせガラスを用いることが開示されている。つまり、特許文献1の段違い合わせガラスは、もともと自動車等の窓用ガラスとして使用されている合わせガラスの外板ガラス周縁部を切り狭めて段違い合わせガラス構造にして、窓用ガラスの外面と車体側の外表面との面高差を外板ガラスによって調整し、前記面高差によって発生する風きり音を抑制することを目的とするものである。
【0005】
しかし、特許文献1では建物用の窓ガラスについての記載はなく、建物用の安全ガラスとして必要とされる強度および取り付けに関わる情報についての記載はされてない。
【0006】
【特許文献1】実開平3−111538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように安全対策上で優れている合わせガラスは、窓ガラスとして使用する場合、強度面から必要とされる厚さが単板ガラスに比べて厚くなる。例えば厚さが2〜6mmの単板ガラスを同等の強度を有する合わせガラスに換えようとすると、その厚さは単板ガラスに比べて約20〜30%増大し、単板ガラスの厚さが薄いほど増大の程度が大きくなる。このために、同一寸法の2枚のガラス板を中間膜で接着して得られる通常の合わせガラスでは、既存の単板ガラス用サッシに嵌合させることが実質的に困難であるため、このような合わせガラスを取り付けるには、サッシを広幅の嵌合溝を有するものに換えなければならないという問題があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は主ガラス板とこれより小さい副ガラス板とを中間膜で接着することによって周辺部が主ガラス板の周縁部だけからなる段違い合わせガラスを形成し、この主ガラス板の周縁部をサッシの嵌合溝に嵌合することによってサッシを広幅の嵌合溝のものに変えなくても段違い合わせガラスを取り付けできる段違い合わせガラス窓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記目的を達成するために、矩形の主ガラス板とこれより小さい矩形の副ガラス板とが合わせ中間膜により接着された段違い合わせガラスをサッシに取り付けてなる段違い合わせガラス窓であって、前記段違い合わせガラスは、4辺において主ガラス板の周縁部が副ガラス板の外周縁から突出しており、かつサッシに単板ガラスを取り付けする際の強度上必要とされるガラス板の厚さをtmm、段違い合わせガラスの厚さをtmm(主ガラス板の厚さtmm+副ガラス板の厚さtmm)としたとき、
t≧(t+0.268)/0.866、かつt≧3mm
であり、前記段違い合わせガラスがサッシに前記主ガラス板の周縁部で取り付けられていることを特徴とする段違い合わせガラス窓を提供する。
【0010】
本発明の上記段違い合わせガラス窓において、前記主ガラス板の厚さtmmと前記副ガラス板の厚さtmmとは、t≧tであることが好ましい。
【0011】
また、本発明の好ましい段違い合わせガラス窓では、前記主ガラス板の厚さtmmは前記単板ガラスの厚さtmmに対しt≦tであり、また段違い合わせガラスの副ガラス板の外周縁とサッシの内周端部の間に前記副ガラス板面方向に距離D2〜15mmが設けられている。
【0012】
また、既設のサッシに取り付けできる前記段違い合わせガラスを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る段違い合わせガラス窓は、段違い合わせガラスの主ガラス板の周縁部が副ガラス板の外周縁から突出しており、段違い合わせガラスをサッシにこの主ガラス板の周縁部で取り付けるので、単板ガラスのサッシを広幅の嵌合溝のものに換えなくても単板ガラスより厚い合わせガラスを単板ガラスと同様に取り付けできる。その結果、既存の単板ガラス窓を低廉な改修費用で破損時の安全性が高く防犯対策上でも優れる段違い合わせガラス窓に換えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下添付図面に従って、本発明に係る段違い合わせガラス窓の好ましい実施の形態について詳説する。
【0015】
図1は、本発明に係る段違い合わせガラス窓の実施例のサッシ取付け部の断面図であり、図2は該段違い合わせガラスの正面図、図3は図2のA−A部の拡大断面図である。
【0016】
本発明において段違い合わせガラス窓は段違い合わせガラス1の主ガラス板2の周縁部5をサッシ(窓枠)7の嵌合溝に取り付けして構成される。該段違い合わせガラス1は、図2に示すように矩形の主ガラス板2とこれより小さい矩形の副ガラス板3とを合わせ中間膜4により接着して形成される。この場合、主ガラス板2の周縁部5は矩形の4辺において副ガラス板3の外周縁6から突出している。その結果、図3に示すように段違い合わせガラス1の主要部は主・副ガラス板2、3が合わせ中間膜4で接合されている合わせガラス構造になっているが、その周辺部は主ガラス板2の周縁部5のみからなる単板ガラス構造になっている。本発明における段違い合わせガラス1は、このように主ガラス板2にこれより小さい副ガラス板3を接合させることによって周辺部が単板ガラス構造になっている合わせガラスを意味する。
【0017】
上記段違い合わせガラス1において、副ガラス板3の外周縁6から突出させる主ガラス板2の周縁部5の幅B(図3参照)は、主ガラス板2の厚さや大きさ、および段違い合わせガラス1が取り付けされるサッシの嵌合溝の深さなどに基づいて適宜決められる。したがって、Bの大きさは限定されないが、主ガラス板2の厚さが例えば2〜10mmの場合、Bとしては5〜10mm程度が好ましい。段違い合わせガラス1の周辺部に単板ガラス部分をこの程度設けておくと、段違い合わせガラス1をサッシに水密性と強度が得られるように取り付けできる。
【0018】
上記主ガラス板2と副ガラス板3としては、フロートガラス、強化板ガラス、型板ガラスなどの各種板ガラスを適宜使用することができる。通常は主ガラス板2と副ガラス板3として透明な2枚のフロートガラスが用いられるが、異なる種類の板ガラスを組み合わせてもよい。また、これらの板ガラスの表面に例えば熱線反射被膜や着色被膜などが形成されたものも使用できる。さらに副ガラス板3を主ガラス板2の室内側に設ける場合には、副ガラス板3として有機ガラスを使用してもよい。なお、段違い合わせガラス1の厚さは、サッシに単板ガラスを取り付けする際の強度上必要とされる厚さを基準にして、前記単板ガラスと同等またはそれより大きい強度が得られるように決められる。これについては後述する。
【0019】
本発明において主ガラス板2と副ガラス板3とを接着する合わせ中間膜4としては、破損しても主ガラス板2と副ガラス板3を飛散しないように保持できる接着性と強度を有するものであればよく、合わせガラス用の接着性中間膜または接着剤(以下、合わせ中間膜と総称する)として汎用もしくは知られている各種のものが使用できる。具体的には、ポリビニールブチラール樹脂、エチレン−酢酸ビニール共重合体樹脂、ポリウレンタン樹脂、シリコン樹脂、などが挙げられる。このような物性を有している合わせ中間膜4で接着された段違い合わせガラス1は、破損時におけるガラス破片の飛散防止効果が得られるほかに、窓ガラス自体が破損し難くくなることにより防犯用の安全ガラスとしても有効である。
【0020】
また、上記合わせ中間膜4で主ガラス板2と副ガラス板3を接着して段違い合わせガラス1を製造する方法は、大きさの異なる主ガラス板2と副ガラス板3とを主ガラス板2の周縁部5を副ガラス板3の外周縁6から突出させた状態で接合させる点を除いて、矩形の2枚の同一寸法のガラス板を合わせ中間膜4で接着する従来の合わせガラスの製造方法と実質同じである。したがって、基本的には従来の合わせガラス製造方法および製造装置によって適宜製造できる。すなわち、主ガラス板2の上に合わせ中間膜4を介在させて副ガラス板3を載置し、主ガラス板2の4辺の周縁部5が副ガラス板2の外周縁6から突出するように副ガラス板2を位置調整した後、必要に応じて合わせ中間膜部の脱気を行ないながら両者を例えば圧着または熱圧着する。なお、上記において合わせ中間膜4の部分に例えば不織布や模様紙などを挿入すると、模様入りの段違い合わせガラスを得ることができる。
【0021】
合わせ中間膜4の厚さは、合わせ中間膜4の材質や接合する主ガラス板2、副ガラス板3の厚さなどによって本発明の目的が達成できるように決められる。合わせ中間膜4が薄すぎると、所望の強度が得られなくなるので、段違い合わせガラス1が破損したときガラス板の飛散を充分に防止することができなくなるおそれが生じる。また、合わせ中間膜4が厚くなると、防犯対策上は有利となるが、所定の厚さ以上になってもガラス板の飛散防止効果はほとんど変わらずに合わせ中間膜4のコスト高を招くため好ましくない。合わせ中間膜4の厚さとしては通常15〜60mil(0.4〜2.3mm)程度である。
【0022】
次に、段違い合わせガラス1の厚さおよび段違い合わせガラス窓について図1に従って説明する。図1に示すように段違い合わせガラス1は、副ガラス板3の外周縁6から突出している主ガラス板2の周縁部5によってサッシ(窓枠)7の嵌合溝に取り付けされる。そのため段違い合わせガラス1を取り付けするためのサッシ7の嵌合溝は、主ガラス板2の周縁部5を取り付けできる溝幅を有していればよい。つまり主ガラス板2に相当する厚さの単板ガラスを取り付けできる溝幅を有しているサッシを使用できる。その結果、段違い合わせガラス1用のサッシを別途設計しなくても従来の単板ガラス用のサッシをそのまま使用でき、かつ段違い合わせガラス1を従来の単板ガラスと実質的に同じ方法によってサッシに取り付けできる。
【0023】
したがって、本発明のサッシ7としては、単板ガラスが取り付けされている既設サッシが使用可能となるので、既存の単板ガラスを段違い合わせガラス1に嵌め換えるだけで、単板ガラス窓を低廉な費用で安全性の高い段違い合わせガラス窓にすることができる。また、新築の場合にも、従来の単板ガラス用サッシをそのまま使用し、該サッシに段違い合わせガラス1を取り付けることによって同様に段違い合わせガラス窓を得てもよい。
【0024】
上記のように、本発明の段違い合わせガラス窓の優れている点は、段違い合わせガラス1をサッシ7に従来の単板ガラスと同様に取り付けできることである。図1はその一例である。図1に示すように矩形の段違い合わせガラス1の下辺の周縁部5をサッシ7の底部に設置した例えば硬質のクロロプレンゴムからなるセッティングブロック9上に載置し、次いで下部のサッシ7の室内側にサッシ7の一部として押し縁8を係止して、段違い合わせガラス1の4辺を主ガラス板2の周縁部5がサッシ7の嵌合溝に挿入された状態に保持し、この状態で主ガラス板2の周縁部5の両側にバックアップ材10を装入した後、その上部にシーラント11を充填することによって段違い合わせガラス1をサッシ7に取り付けできる。この場合、段違い合わせガラス1の外周部は主ガラス板2だけの単板ガラス構造になっているため、段違い合わせガラス1をサッシ7に主ガラス板2を取り付けする場合と実質的に同じように取り付けできる。なお、前記バックアップ材10としては、軟質の弾性材料が適しており例えば発泡ポリエチレンゴムが好ましく使用できる。また、シーラント11としては、例えばシリコーンやポリサルファイドポリマー(チオコール)などが好ましく使用できる。
【0025】
上記段違い合わせガラス窓において、主ガラス板2の周縁部5とサッシ7との間には、段違い合わせガラス1の取付け部における止水性を確保するために一定幅以上の面クリアランスC1、C2が設けられる(図1参照)。この面クリアランスC1、C2は、サッシ7の嵌合溝に挿入された主ガラス板2の周縁部5の外側と内側にそれぞれ段違い合わせガラス1の全周に沿って設けられる。周縁部5の両側に設けられる面クリアランスC1、C2はほぼ同一の寸法幅であることが好ましい。この面クリアランスC1、C2はサッシ7に単板ガラスを取り付ける場合についてJASS17で取付け構法ごとに規定されている。例えば、弾性シーリング材構法では5mm以上が必要とされている。ガラス板が厚い場合(例えば12mm以上)、あるいは取付け部の水密性が特に厳しく要求される場合には6mm以上に設定される。グレイジングガスケット材構法では2mm以上に設定されている。
【0026】
本発明の段違い合わせガラス1の周辺部は前記したようにサッシ取付け部分が単板ガラス構造に形成されているので、上記JASS17の面クリアランスが好ましく適用できる。
【0027】
さらに、上記段違い合わせガラス窓において、副ガラス板3の外周縁6とサッシ7の内周端部との間、図1のように副ガラス板3の側に押し縁8が係止されている場合には該外周縁6と押し縁8の内周端面(図1では押し縁8の上面)との間には、副ガラス3の面内方向に間隔Dが設けられることが好ましい。本発明の段違い合わせガラス窓において、この間隔Dは副ガラス板3側の面クリアランスC2にシーラント11やグレイジングチャンネルなどを設けて副ガラス板3側の取付け部を所望の水密構造にするために極めて重要である。例えば、図1の場合、副ガラス板3側の面クリアランスC2にこの間隔Dからシーラントを充填し、さらにこの間隔Dにもシーラントを充填して所望の水密構造を得ることができる。この間隔Dは段違い合わせガラスの取付け構法や副ガラス板3の厚さなどを考慮して決められるが、大きさとしては2〜15mmが好ましく、より好ましくは5〜10mmである。2〜15mmの範囲で適切な間隔Dにすることにより、段違い合わせガラス1をサッシ7に良好に取り付けでき、かつその際の作業性も改善できる。
【0028】
本発明の段違い合わせガラス窓において、段違い合わせガラス1の厚さは次の条件を満たしている。これを図1を参照して説明する。すなわち、サッシ7に単板ガラスを取り付けする際の強度上必要とされるフロートガラスの単板ガラスの厚さをtmmとし、該サッシ7に取り付ける段違い合わせガラス1の厚さをtmm(主ガラス板2の厚さtmm+副ガラス板3の厚さtmm)としたとき、
t≧(t+0.268)/0.866 (1)
t≧3mm (2)
であることが必要である。
【0029】
上記式1は単板ガラスと合わせガラスとが同一強度となるときの板厚換算から導き出されたもので、厚さtの単板ガラスと同強度の合わせガラスの板厚をtとすると、tとtの関係はt=(t+0.268)/0.866であることに基づいている。この関係式から合わせガラスの厚さは同じ強度の単板ガラスの厚さに比べて増加し、その増加の割合は厚さによって変わることが分かる。例えば2〜6mmの単板ガラスと同等の強度を有する合わせガラスの厚さは、単板ガラスに比べて約20〜30%増大する。この場合、合わせガラスの強度は接合される2枚のガラス板の合計板厚で決まり、2枚のガラス板の厚さの相対的な大小には関係しない。したがって、本発明の段違い合わせガラス1においても段違い合わせガラス1の強度は、段違い合わせガラス1の厚さtによって決まり、主ガラス板2の厚さtおよび副ガラス板3の厚さtが同一であっても、不同一であっても同じであり、また不同一の場合にどちらが大きくても同じである。また、合わせ中間膜4の厚さは、tを算定する場合には実質的に無視しても差し支えない。
【0030】
本発明において、強度が厚さtの単板ガラスの強度と同じとなる段違い合わせガラス1の厚さtは、前記したようにt=(t+0.268)/0.866によって求めることができる。したがって、段違い合わせガラス1の強度が厚さtの単板ガラスの強度を満たすためには、厚さtを、(t+0.268)/0.866とするかそれより大きくする。すなわち、t≧(t+0.268)/0.866とする。
【0031】
例えば、サッシ7に取り付けられている既存の単板ガラスの厚さtが6mmの場合、これと同じ強度を確保するための段違い合わせガラス1の厚さtは7.3mmとなる。したがって、例えばt=5mm、t=3mmにして段違い合わせガラス1の厚さtを8mmとすることにより、tが6mmの単板ガラスの強度を上回る強度の段違い合わせガラス1を得ることができる。この例から分かるようにt=tとする必要はなく、t1<tでも既存の単板ガラスの強度を確保できる。この場合、tとtの組み合わせはそれぞれ5mmと3mmに限定されることなく、市場の単板ガラスの中から上記条件を満たす範囲で選択できる。
【0032】
さらに、本発明において段違い合わせガラス1の厚さtは式2に示すように3mm以上に設定される。その要因は実用されている窓用ガラス板が2mm以上であり、さらにサッシもこれに合わせて2mm以上のガラス板用に設計されていることによる。例えば、厚さ2mmの単板ガラス用サッシに、この単板と同強度の段違い合わせガラスを取り付けようとすると、該段違い合わせガラスの厚さtは、前記したように単板ガラスより厚くなるため、主ガラス板と副ガラス板の組み合わせを考慮すると実質的に3mm以上となるからである。式2はこのような実用面に着目して設定した条件である。
【0033】
本発明の段違い合わせガラス窓において、主ガラス板の厚さtと副ガラス板tとの関係はt≧tであることが好ましい。段違い合わせガラス1のサッシ取付け部の強度は、主に主ガラス板の厚さtに支配されるため、周縁部5がサッシ7に取り付けられる主ガラス板2の厚さtをこのように設定することにより、サッシ取付け部の強度を大きく確保できる。特に段違い合わせガラス1の取付け部の強度をできるだけ大きく確保したい場合、あるいは主ガラス板2の厚さtを既存の単板ガラスに近似させたい場合には、t>tであることが好ましい。
【0034】
したがって、上記式1から算定された段違い合わせガラス1の板厚tに基づいてtとtを決めるときには、t≧tを満足するように決めることが好ましい。t≧tにすることによって、サッシに取り付けられる部分の厚さを段違い合わせガラス1の厚さtの1/2以上にすることができるので、主ガラス板2の厚さtが上記したように単板ガラスの厚さtより小さくても段違い合わせガラス1の取付け部の強度を確保できる。しかしながら、段違い合わせガラス1のサッシ取付け部の強度が強くなくても問題が生じないときには、主ガラス板の厚さが副ガラス板の厚さより小さくてもよい。
【0035】
また、主ガラス板の厚さtmmは、単板ガラスの厚さtmmに対して、t≦tであることが好ましい。これは、既存のサッシに単板ガラスに換えて段違い複層ガラスを取り付ける際、t≦tであると前述の面クリアランスC1、C2を確実に確保できるからである。
【0036】
本発明の段違い合わせガラス窓において、副ガラス板2は施工性や外観性などの面から図1に示すごとく主ガラス板2の内側(室内側)であることが好ましい。しかし、副ガラス板2は主ガラス板2の外側(室外側)に設けることもできる。
【0037】
また、図1には段違い合わせガラス1をサッシ7にシーラント11でシールする弾性シーリング材構法について例示したが、段違い合わせガラス1のサッシ7への取り付け構法はこれに限定されない。各種形態のサッシが適宜使用できるとともに、サッシの形態に合わせて従来の単板ガラスの各種取り付け構法が適用できる。例えば、段違い合わせガラス1は施工性のよいグレイジングチャンネル、グレイジングビード、その他のガスケットなどによっても取り付けできる。図4は段違い合わせガラス1をサッシ7にグレイジングチャンネル12によって取り付けする例である。副ガラス板3の外周縁6とサッシ7の内周端部との間に副ガラス面方向の間隔Dを設けることにより、グレイジングチャンネル12を用いて効率よく取り付けできる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、段違い合わせガラスの周辺部が単板ガラス構造になっているので、既存の単板ガラス窓のサッシを換えることなく段違い合わせガラスに取り換えることができ、既存の単板ガラス窓を安全性の高い段違い合わせガラス窓に低費用で変換するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の好ましい実施形態に係る段違い合わせガラス窓の取付け部の断面図。
【図2】本発明の好ましい実施形態に係る段違い合わせガラスの正面図。
【図3】図2のA−A部矢視図。
【図4】本発明の他の実施形態に係る段違い合わせガラス窓の取付け部の断面図。
【符号の説明】
【0040】
1:段違い合わせガラス、
2:主ガラス板、
3:副ガラス板、
4:合わせ中間膜、
5:周縁部、
6:外周部、
7:サッシ、
8:押し縁、
9:セッティングブロック、
10:バックアップ材、
11:シーラント、
12:グレイジングチャンネル、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形の主ガラス板とこれより小さい矩形の副ガラス板とが合わせ中間膜により接着された段違い合わせガラスをサッシに取り付けてなる段違い合わせガラス窓であって、
前記段違い合わせガラスは、4辺において主ガラス板の周縁部が副ガラス板の外周縁から突出しており、かつサッシに単板ガラスを取り付けする際の強度上必要とされるガラス板の厚さをtmm、段違い合わせガラスの厚さをtmm(主ガラス板の厚さtmm+副ガラス板の厚さtmm)としたとき、
t≧(t+0.268)/0.866、かつt≧3mm
であり、
前記段違い合わせガラスがサッシに前記主ガラス板の周縁部で取り付けられていることを特徴とする段違い合わせガラス窓。
【請求項2】
前記主ガラス板の厚さtmmと前記副ガラス板の厚さtmmとが、t≧tである請求項1に記載の段違い合わせガラス窓。
【請求項3】
前記主ガラス板の厚さtmmと前記単板ガラスの厚さtmmとが、t≦tである請求項1または2に記載の段違い合わせガラス窓。
【請求項4】
前記副ガラス板の外周縁と前記サッシの内周端部との間に、前記副ガラス板面方向に間隔D2〜15mmが設けられている請求項1〜3のいずれかに記載の段違い合わせガラス窓。
【請求項5】
前記サッシが既設のサッシである請求項1〜4のいずれかに記載の段違い合わせガラス窓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−314370(P2007−314370A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−145100(P2006−145100)
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】