説明

気泡シート及びその製造方法

【課題】空気層を介することなくフィルムを密着させた密着部に識別表示が付されるので、凹凸がくっきりと形成されるだけでなく、シート両面から識別表示が視認可能な気泡シートを提供する。
【解決手段】二つのフィルム11,12の間に空気層Kを介在させた気泡部13と、空気層Kを介することなく二つのフィルム11,12を密着させた密着部14と、を有する気泡シート10であって、密着部14に、所定の識別表示11bを凹設形成した構成としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の識別表示を有する気泡シートとその製造方法に関し、特に、気泡以外の部分に識別表示を付した気泡シートとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中空状に膨出する複数の突起が形成されたキャップフィルムに、突起内に空気を封入するバックフィルムを積層することによって形成された、独立した複数の気泡を有する気泡シートが、包装用の緩衝材をはじめとする各種の用途に広く利用されている。
【0003】
このような気泡シートは、複数のキャビティ孔が形成された成形ロールの外周面に、溶融状態にある樹脂フィルムを接触させて、キャビティ孔においてキャビティ孔形状に対応する突起を真空成形により形成してキャップフィルムとした後に、突起の開口側にバックフィルムを熱融着することで製造することができる。
【0004】
このようにして製造される気泡シートにおいて、材質や商品名、製造元等を特定可能な識別表示を付したものがある。
例えば、突起を真空成形する際に、その頂面に所定に識別表示を吸引成形する気泡シートが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−330439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような突起頂面に吸引成形された識別表示は、気泡自体が常温・常圧時において十分に膨らんでいないことから、内圧を受けてその形が崩れて(潰れて)しまい、識別力に欠けていた。
また、気泡に高低差を設け、高さの低い気泡に識別表示を付したとしても、空気層が介在する限り、気泡シート裏面からは見え難かった。
【0007】
本発明は、上記の事情にかんがみなされたものであり、空気層を介しない二つのシートが密着する部分に識別表示を形成することで、識別表示の安定的な視認性を確保しながら、気泡シートのどちらの面からでも視認可能な気泡シート及びその気泡シートの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る気泡シートは、二つのフィルムの間に空気層を介在させた気泡部と、前記空気層を介することなく前記二つのフィルムを密着させた密着部と、を有する気泡シートであって、前記密着部に、所定の識別表示を凹設及び/又は凸設形成した構成としてある。
【0009】
また、本発明に係る気泡シートの製造方法は、外周面に複数のキャビティ孔が凹設された成形ロールに供給され、前記キャビティ孔においてキャビティ孔形状に対応する突起が真空成形されたキャップフィルムと、キャップフィルムに熱融着され、突起内の空気を封止するバックフィルムと、を備える気泡シートの製造方法であって、複数の前記キャビティ孔のうちの一部のキャビティ孔において、所定のプラグを埋め込み、前記成形ロール表面との凹凸をほぼなくすとともに、前記キャビティ孔を吸引することで、前記キャップフィルムが前記プラグ表面に刻印された所定の図形に押し付けられて、所定の識別表示が凹設及び/又は凸設形成される製造方法としてある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、空気層を介することなくフィルムを密着させた密着部に識別表示が付されるので、凹凸がくっきりと形成されるだけでなく、気泡シートのいずれの面からでも識別表示を視認できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る気泡シートの外観を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る気泡シートの製造装置の一例を示す説明図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るキャビティ孔の断面図であり、(a)は、キャップフィルムが吸着した状態を示し、(b)は突起の成形される様子を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るプラグの外観を示す概略斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るキャビティ孔の断面図であり、(a)は、プラグの配置を示し、(b)は、識別表示の成形される様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る気泡シートは、二つのフィルム11,12の間に空気層Kを介在させた気泡部13と、空気層Kを介することなく二つのフィルム11,12を密着させた密着部14と、を有し、密着部14に、所定の識別表示11bを凹設形成した気泡シート10である。
この気泡シート10は、それぞれ無色透明なキャップフィルム11とバックフィルム12とを積層させたもので、複数の突起11aが真空成形されたキャップフィルム11に、この突起11aの開口側においてバックフィルム12を熱融着して形成してある。
【0013】
気泡部13は、気泡シート10上において、所定の配列(例えば、等間隔)に従って配置された相互に干渉しない独立した複数の領域Rに一つずつ形成されている。
また、この複数の領域Rのうち一部の領域Rには、気泡部13に代わって、識別表示11bが形成され、本実施形態では、当該気泡シート10の材質を表す「>PE<」の文字と記号(これらを図形という)を反転した図形が凹設形成されている。
このように、本来であれば、気泡部13が存在すべき一部の領域Rに、識別表示11bを形成することで、識別表示11bが際立つようになっている。
【0014】
さらに、この識別表示11bの形成されている領域Rは、空気層Kの介在しない密着部14となっている。
これにより、識別表示11bが空気層Kの影響を受けて崩れる(潰れる)ことがないため、識別表示11bがくっきりと視認されることになる。
また、空気層Kが介在しないため、気泡シート10のいずれの面からでも識別表示11bを視認することができる。
これにより、本実施形態では、識別表示11bは、キャップフィルム11から見ると、反転した図形として視認されるものの、バックフィルム12から見ると、「>PE<」と視認されるようになっている。
【0015】
以上のような識別表示11bは、気泡シート10を製造する工程において吸引成形されたもので、後述の印章部223cに凸設形成された立体図形の印影からなる。以下、この気泡シート10の製造方法について説明する。
【0016】
図2は、気泡シート10を製造する気泡シート製造装置100を模式的に示す説明図である。
この気泡シート製造装置100は、溶融状態にある樹脂フィルムを連続的に供給するダイ20、21と、外周面に複数のキャビティ孔220が形成された成形ロール22と、加圧ロール23と、剥離ロール24とを備えている。
【0017】
この気泡シート製造装置100では、例えば、最初に、成形ロール22の外周面に、ダイ20からの樹脂フィルムを接触させるとともに、キャビティ孔220において吸引を行い、キャビティ孔形状に対応した突起11aを真空成形してキャップフィルム11とした後に、成形された突起11aの開口側に、ダイ21から供給される樹脂フィルムをバックフィルム12として対向させるとともに、加圧ロール23によりバックフィルム12とキャップフィルム11に密着させて両者を互いに熱融着により積層させ、その後、剥離ロール24で剥離することで気泡シート10が製造されるようになっている。
このような気泡シート製造装置100において、識別表示11bは、突起11aと同様、キャビティ孔220において真空成形される。
ここで、キャビティ孔220における真空成形について以下に説明する。
【0018】
キャビティ孔220は、図2〜図5に示すように、成形ロール22の外周面に複数形成され、上方側は成形ロール表面22aとつながり、その底部において吸引孔221につながる、突起11aとほぼ同じ形状となる略円錐台形状のくぼみとして形成されている。
吸引孔221は、図示しない所定の真空ポンプに接続されるキャビティ孔220より小径の空気の管路であって、キャビティ孔220の底部に連通することで、キャビティ孔220内の空気を真空吸引するようになっている。
【0019】
プラグ222,233は、円盤形状を有し、空気の流路を確保しながら、吸引孔221を塞ぐように動作する。
このように構成されたキャビティ孔220において、プラグの種類及び取り付け位置を替えることで、突起11a又は識別表示11bを吸引成形することができるようになっている。
本実施形態では、突起プラグ222が突起成形用プラグ、刻印プラグ223が識別表示成形用プラグとして構成されている。
【0020】
突起11aは、図3に示すように、キャビティ孔220及びその底部に配置された突起プラグ222により真空成形される。
この突起プラグ222は、通気可能なスリットの形成された円盤形状をなすとともに、凹凸のない表面を有している。
また、突起プラグ222は、吸引孔221に嵌合(圧入)、又は突起プラグ222自体をネジとして形成することでネジ止めによって固定されている。
【0021】
このような突起プラグ222が配置されたキャビティ孔220において、図3(a)に示すように、キャップフィルム11が成形ロール表面22aに供給されると、キャビティ孔220における真空吸引により、キャップフィルム11が成形ロール22表面に吸着する。そして、さらに、真空吸引されることにより、図3(b)に示すように、キャップフィルム11がキャビティ孔220に引き込まれ、突起11aが形成されることになる。
【0022】
一方、識別表示11bは、キャビティ孔220の上部に配置された刻印プラグ223により真空成形される。
刻印プラグ223は、図4に示すように、通気可能なスリット223bの形成された円盤形状をなすとともに、反転した「PE」の文字と「><」の記号とが刻印(凸設)された印章部223cをその表面223aに有している。
【0023】
また、刻印プラグ223は、図5(a)に示すように、キャビティ孔220の上部に嵌合(圧入)、又は刻印プラグ223自体をネジとして形成することでネジ止めによって固定され、刻印プラグ表面223aが成形ロール表面22aと面一につながるとともに、印章部223cが成形ロール表面22aから突出するように配置されている。
すなわち、刻印プラグ223は、成形ロール表面22aとの凹凸をほぼなくすように、キャビティ孔220に埋め込まれている。
【0024】
このような刻印プラグ223が配置されたキャビティ孔220において、図5(b)に示すように、キャップフィルム11が成形ロール表面22aに供給されると、キャビティ孔220における真空吸引により、キャップフィルム11が成形ロール表面22aに吸着するとともに、キャップフィルム11がプラグ表面223aに刻印された印章部223aに押し付けられて、識別表示11bが凹設形成されることになる。
【0025】
このとき、成形ロール表面22aと刻印プラグ表面223aとが面一につながることから、キャビティ孔220上部に位置するキャップフィルム11は、平らな領域となっている。
さらに、このような平らな領域の裏面に、透明なバックフィルム12が熱融着により密着されることになる。
これにより、識別表示11bの形成される領域Rには、空気層Kは介在しないことから、識別表示11bの視認性が空気層Kにより妨げられることはない。
また、バックフィルム12は透明なので、バックフィルム12側からも識別表示11bを視認できる。
このように、本実施形態の気泡シート10は、緩衝材としての機能を発揮しながら、識別表示11bにより、材質(商品名、製造元等を付すことも可)を明確に特定することができるようになっている。
【0026】
なお、気泡シート10の製造に用いる材料樹脂、すなわち、キャップフィルム11、バックフィルム12の材料樹脂としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂を単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンホモポリマー、又はプロピレンと他のオレフィンとの共重合体などが例示できる。プロピレンと共重合される他のオレフィンとしては、エチレン、ブテン−1、イソブチレン、ペンテン−1などのα−オレフィンが挙げられ、これらの他のオレフィンとの共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよい。
また、ポリエチレン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、直鎖状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが例示できる。
【0027】
以上説明したように、本実施形態に係る気泡シートとその製造方法によれば、空気層Kを介することなくフィルム11,12を密着させた密着部14に識別表示11bが付されるので、凹凸がくっきりと形成されるだけでなく、気泡シート10のいずれの面からでも識別表示11bを視認できる。
【0028】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。
【0029】
例えば、本実施形態では、識別表示11bを凹設形成したが、凸設形成することもできる。これは、印章部223cの刻印(文字、記号などの図形)を凹設形成することで実現できる。
また、印章部223cの刻印を凹凸形成することで、識別表示11bに凹凸を混在させることもできる。
【0030】
また、本実施形態では、キャップフィルム11に識別表示11bを付したが、バックフィルム12に識別表示11bを付することもできる。
この場合には、剥離ロール24に、真空吸引可能なキャビティ孔を形成するとともに、これに刻印プラグ223を配置することで実現できる。
また、キャップフィルム11とバックフィルム12とが熱融着した後、又は熱融着と同時に、識別表示11bを吸引成形することで、双方のフィルム11,12に識別表示11bを付することもできる。
【0031】
また、本実施形態に係る刻印プラグ223は、キャビティ孔220の上部に配置可能な厚みで薄肉形成したが、成形ロール表面22aからキャビティ孔220の底部までに達する厚みで厚肉形成することもできる。
【0032】
また、本実施形態では、キャップフィルム11とバックフィルム12とが積層した二層気泡シートとしたが、キャップフィルム11の頂面にライナーフィルムを熱融着した三層気泡シートとすることもできる。
このような三層気泡シートにしても、バックフィルム12側から識別表示11bを十分に視認できる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、包装用の緩衝材をはじめとする各種の用途に広く利用することができる独立した多数の気泡を有する気泡シートとその製造方法に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
10 気泡シート
11 キャップフィルム
12 バックフィルム
13 気泡部
14 密着部
22 成形ロール
220 キャビティ孔
221 吸引孔
222 突起プラグ
223 刻印プラグ
223c 印章部
24 剥離ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つのフィルムの間に空気層を介在させた気泡部と、前記空気層を介することなく前記二つのフィルムを密着させた密着部と、を有する気泡シートであって、
前記密着部に、所定の識別表示を凹設及び/又は凸設形成した
ことを特徴とする気泡シート。
【請求項2】
所定の配列に従って配置され、相互に干渉しない複数の独立領域を有し、
前記独立領域に、前記気泡部を一つずつ形成するとともに、
一部の前記独立領域に、前記気泡部を形成しない代わりに、前記識別表示を形成したことを特徴とする請求項1記載の気泡シート。
【請求項3】
前記気泡部は、凹設された所定のキャビティ孔において真空成形され、
前記識別表示は、所定のプラグが埋め込まれ、ほぼ凹凸のなくなった前記キャビティ孔において真空成形されるとともに、前記プラグ表面に刻印された所定の図形の印影からなる請求項1又は2記載の気泡シート。
【請求項4】
外周面に複数のキャビティ孔が凹設された成形ロールに供給され、前記キャビティ孔においてキャビティ孔形状に対応する突起が真空成形されたキャップフィルムと、キャップフィルムに熱融着され、突起内の空気を封止するバックフィルムと、を備える気泡シートの製造方法であって、
複数の前記キャビティ孔のうちの一部のキャビティ孔において、所定のプラグを埋め込み、前記成形ロール表面との凹凸をほぼなくすとともに、前記キャビティ孔を吸引することで、前記キャップフィルムが前記プラグ表面に刻印された所定の図形に押し付けられて、所定の識別表示が凹設及び/又は凸設形成される気泡シートの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−250421(P2012−250421A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124286(P2011−124286)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000199979)川上産業株式会社 (203)
【Fターム(参考)】