説明

水中油型乳化皮膚外用剤

【課題】ウフェナマートを安定に配合し、かつ使用感(肌へのなじみ、ぬるつきがない)に優れる水中油型乳化皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】(a)ウフェナマートと、(b)動植物由来以外のワックス〔例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、セレシン、硬ロウ、炭化水素系化合物を化学合成した合成ワックス(ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックスなど)等〕と、(c)2価の水溶性アルコール(例えば、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール等)を少なくとも含む保湿剤と、(d)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有する水中油型乳化皮膚外用剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水中油型乳化皮膚外用剤に関する。さらに詳しくは、ウフェナマートを安定に配合し、かつ使用感(肌へのなじみ、ぬるつきがない)に優れる水中油型乳化皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
非ステロイド性消炎鎮痛剤であるウフェナマート(=フルフェナム酸ブチル)は、水難溶性薬剤であることから、一般に油性基剤に溶解させて皮膚外用剤に配合される。その皮膚外用剤の剤型としてはクリーム・乳液等の乳化型外用剤〔=水中油型(O/W型)若しくは油中水型(W/O型)エマルジョン製剤〕が主である。
【0003】
従来、ウフェナマート等の水難溶性薬剤を水中油型乳化製剤中に安定に配合し、かつ使用性を良好に保つ技術として、製剤を微細エマルジョン化する方法が知られている(例えば特許文献1〜2等)。すなわち特開2001−97859号公報(特許文献1)では、ウフェナマート、リドカインおよびHLB値8〜15の乳化剤を含む油相中に水を加えて乳化することで、エマルジョンの平均粒子径が0.5μm以下のウフェナマート含有O/W型乳化製剤を製造する方法が記載されている。そして実施例において、このO/W型乳化製剤が安定性、使用感、カラゲニン浮腫抑制効果が示されたことが記載されているが、どのような使用感について評価したのかについての具体的な記載はない。また実施例で用いた製剤は、そのほとんどが油溶性基剤として白色ワセリン、流動パラフィン、スクワラン等の流動性油分、半固形油分を主成分として用いたものである。また特開2002−193790号公報(特許文献2)には、水難溶性薬剤(ウフェナマート等)と、経皮吸収促進剤(脂肪酸、脂肪酸エステル、アミドなどの油性成分や、親油性界面活性剤等)と、乳化剤(ノニオン系乳化剤等)を油相として含み、油滴の平均粒子径が0.1μm以下である水難溶性薬剤含有水中油型エマルジョンが記載されている。そして実施例において、この水中油型エマルジョンの外観(半透明〜透明)、経皮吸収性の官能評価について確認したことが記載されているが、実施例で用いた製剤は、上記油相成分として液状油分等を用いており、ワックス等を配合したものは使用されていない。さらにこれら特許文献1〜2に記載の製剤を本発明者らが検討したところ、乳化粒子をただ微細化するだけでは、乳化粒子が皮膚上で壊れにくいために、上すべりし、肌上の後残り感が増し、使用性を十分満足できるものではなかった。その原因の1つとして、ウフェナマート自体が流動性のある油状物質であるために、水中油型乳化製剤に通常汎用される流動パラフィン、ワセリン等の流動性油分、半固形油分を配合しても、皮膚上に流動性のある油状成分がいつまでも残り、その結果、肌なじみが悪く使用性を大きく損ねたものと考えられる。
【0004】
一方、特開2002−205937号公報(特許文献3)には、コンドロイチンの多硫酸エステル化合物等の薬効成分を含有する乳化型製剤を塗布した後の白化を抑えるために、シリコーン油や誘電率が4.0以上の油分を配合した乳化組成物が記載され、薬効成分としてコンドロイチンの多硫酸エステル化合物の他にウフェナマート等が記載されている([0019])。しかし、これらシリコーン油、誘電率が4.0以上の油分も、非常に流動性の高い油分であり、上述したような、塗布後上すべりし、肌上の後残り感が増し、使用性を十分満足できるものでないという問題点を改善するには至らなかった。
【0005】
このように、従来は水中油型乳化製剤の安定性と使用性を、乳化粒子の大きさをコントロールすること等で解決していたが、油分組成による製剤安定性と使用性への影響について記載・考察した文献は、本発明者らが知る限りにおいてこれまで知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−97859号公報
【特許文献2】特開2002−193790号公報
【特許文献3】特開2002−205937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記従来の事情に鑑みてなされたもので、ウフェナマートを安定に配合し、かつ使用感(肌へのなじみ、ぬるつきがない)に優れる水中油型乳化皮膚外用剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、(a)ウフェナマートと、(b)動植物由来以外のワックスと、(c)2価の水溶性アルコールを少なくとも含む保湿剤と、(d)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有する水中油型乳化皮膚外用剤を提供する。
【0009】
また本発明は、(b)成分が、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、セレシン、硬ロウ、炭化水素系化合物を化学合成した合成ワックスから選ばれる1種または2種以上である、上記水中油型乳化皮膚外用剤を提供する。
【0010】
また本発明は、(c)成分中における2価の水溶性アルコールの配合割合が、(c)成分に対し10質量%以上である、上記水中油型乳化皮膚外用剤を提供する。
【0011】
また本発明は(c)成分の配合量が10〜40質量%である、上記水中油型乳化皮膚外用剤を提供する。
【0012】
また本発明は、(d)成分の配合量が1.2〜5.0質量%である、上記水中油型乳化皮膚外用剤を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、ウフェナマートが安定に配合され、かつ使用感(肌へのなじみ、ぬるつきがない)に優れる水中油型乳化皮膚外用剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳述する。本発明において、性状(液体、固体等)は常温(25℃)、常圧での状態を表す。
【0015】
本発明に用いられる(a)成分としてのウフェナマートは、非ステロイド系抗炎症剤として知られ、化学式C18183NO2で示され、化学名はブチルO−[〔3−(トリフルオロメチル)フェニル〕アミノ]−ベンゾエートである。
【0016】
(a)成分の配合量は、特に限定されるものでなく、薬効発現に十分な量であればよく、さらに、治療目的、患者の年齢、体重、疾病の進行度などに応じて適宜増減されるが、通常、本発明皮膚外用剤全量中に概ね1〜10質量%配合するのが好ましく、より好ましくは1〜6質量%である。1質量%未満では(a)成分の薬効を十分発揮することが難しく、一方、10質量%を超えて配合すると資源の有効利用の観点や製剤安定性上もやや不安定となり、好ましくない。
【0017】
(b)成分である動植物由来以外のワックスは、通常医薬品等の皮膚外用剤に用いられるものを用いることができる。ワックスは常温で固形状態にあり、50℃〜160℃の融点を有するものが好ましい。(b)成分の具体例としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス(例えばモンタン酸ワックス、モンタン酸エステルワックスなど)、セレシン、硬ロウ、炭化水素系化合物を化学合成した合成ワックス(例えば、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリプロピレンワックス、コポリマーワックス等)が例示される。(b)成分は1種または2種以上を用いることができる。なお、通常医薬品等では使用性がよく滑らかになることからカルナバロウ、サラシミツロウ、綿ロウ、ヌカロウ、ベイベリーロウなど動植物由来ワックス類が用いられることがあるが、これらは天然の動植物由来原料であるがゆえに、原料そのものが変色・変臭しやすく、製剤として商品価値を大きく損ねる原因となるため、本発明では好ましくない。
【0018】
(b)成分の配合量は、本発明皮膚外用剤全量中、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.3〜8質量%である。(b)成分の配合量が少な過ぎると肌へのなじみが悪くなるおそれがあり、一方、配合量が多すぎると製剤中にワックスの結晶が析出するおそれがある。
【0019】
(c)成分としての保湿剤は、通常医薬品等の皮膚外用剤に用いられるものであれば特に限定されるものでないが、本発明では、2価の水溶性アルコールを必須成分として配合する。本発明では2価の水溶性アルコールが1種類以上配合されていないと安定性を保つことができない。2価の水溶性アルコールは、分子中に2個の水酸基を有する水溶性アルコールで保湿性を有するものであれば特に限定されず、例えば、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール(=ヘキシレングリコール)、ジプロピレングリコール等が挙げられる。これらは1種または2種以上を用いることができる。
【0020】
(c)成分中に含まれ得る他の保湿剤としては、通常医薬品等の皮膚外用剤に用いられるものであれば特に限定されるものでなく、例えば、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、トレハロース、エリスリトール、コンドロイチン硫酸およびその塩類、ヒアルロン酸およびその塩類、ムコイチン硫酸、カロニン酸、フィッシュコラーゲン、フィトステリル−12−ヒドロキシステアレート、乳酸ナトリウム、dl−ピロリドンカルボン酸塩、ジグリセリン(EO)PO付加物、イザヨイバラ抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物、メリロート抽出物、ポリエチレングリコール、グリセリン、ラクトース、ポリクオタニウム−51、水アメ等が挙げられる。ただしこれら例示に限定されるものでない。
【0021】
(c)成分中における上記2価の水溶性アルコールの配合割合は、(c)成分に対し10質量%以上とするのが好ましく、より好ましくは30質量%以上である。
【0022】
(c)成分の総配合量は、本発明皮膚外用剤全量中、10〜40質量%が好ましく、より好ましくは12〜30質量%である。配合量が10質量%未満では十分満足し得る程度の使用性、安定性を保つことが難しく、一方、40質量%を超えて配合すると使用性が低下する傾向がみられるため好ましくない。
【0023】
(d)成分であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、親水性非イオン界面活性剤として公知の化合物である。通常医薬品等の皮膚外用剤に用いられるものが配合される。オキシエチレンの付加モル数は特に限定されるものでないが、20〜100モルが好ましく、特には40〜100モルが好ましい。付加モル数が小さすぎると十分な安定性を保つことができなくなるおそれがある。
【0024】
(d)成分の配合量は、本発明皮膚外用剤全量中、1.2〜5.0質量%が好ましく、より好ましくは1.5〜3.0質量%である。(d)成分の配合量が少な過ぎると十分な安定性を保つことができず、一方、配合量が多すぎると使用性が低下するおそれがある。
【0025】
本発明においては、薬剤としてウフェナマートとともに他の薬剤、例えばグリチルレチン酸・グリチルリチン酸およびその誘導体、トコフェロール酢酸エステル、アラントイン、パンテノール、リドカイン、ジフェンヒドラミンまたはその塩、クロタミトン、ビタミンA油、塩酸ピリドキシンなどのビタミン類、尿素、L−メントール、カンフル、塩化ベンゼトニウムなどの殺菌剤等を本発明の効果を損なわない範囲で併用して用いることができる。本発明においては、これらの薬剤が配合されることにより、薬効が相加的に発揮されるとともに、結晶性薬剤を配合する場合には、(d)成分が液状の油状成分であることから、該結晶性薬剤を(d)成分溶解させて配合することができるため、製品の使用性をあまり変化させることなく、効果的に添加薬剤を配合することができる。
【0026】
本発明では上記(a)〜(d)成分を組合せ配合することにより、従来のように乳化粒子径を0.5μm以下に制御したり、油滴粒子径を0.1μm以下に制御するというような手段を採ることなくウフェナマートを安定に配合することができ、しかも肌へのなじみがよく、ぬるつき感がないという極めて優れた使用性を有する。
【0027】
本発明の水中油型乳化皮膚外用剤には、上記成分の他に、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じてさらに他の成分を配合してもかまわない。例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ポリシロキサン;3次元網目構造を形成しているシリコーン樹脂、シリコーンゴム、各種変性ポリシロキサン(アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等)等のシリコーン油;流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、スクワレン等の液体、半固形の炭化水素油;ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、2−エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2−エチルヘキシル、クエン酸トリエチル等の合成エステル油;アボガド油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、グレープシード油、アーモンド油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油等の植物性油脂;タートル油、卵黄油、ミンク油等の動物性油脂;セチルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、ホホバアルコール等の高級アルコール;パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等の高級脂肪酸等;レシチン、ケファリン、スフィゴミエリン、プラスマロゲン等の天然リン脂質、ジミリストイルレシチン、ジパルミトイルレシチン、ジステアロイルレシチン等の合成リン脂質、天然由来のレシチンの不飽和炭素鎖を水素により飽和とした水添レシチン等の複合脂質等が挙げられる。
【0028】
また、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油以外の非イオン界面活性剤、例えばポリオキシエチレン2〜50モル付加オレイルエーテル(以下、ポリオキシエチレンをPOEと略し、その付加モル数をPOEの後にかっこを付けて記載する。)、POE(2〜40)ステアリルエーテル、POE(2〜50)ラウリルエーテル、POE(1〜50)アルキルフェニルエーテル、POE(5〜30)ベヘニルエーテル、POE(5〜25)2−デシルペンタデシルエーテル、POE(3〜20)2−デシルテトラデシルエーテル、POE(5〜25)2−オクチルドデシルエーテル等のエーテル型活性剤、POE(3〜60)ヒマシ油、POE(2〜150)脂肪酸モノエステル、POE(2〜150)脂肪酸ジエステル、POE(5〜20)ソルビタン脂肪酸エステル等のエステル型活性剤、さらに、POE(2〜60)グリセリルモノイソステアレート、POE(3〜60)グリセリルトリイソステアレート、POE(5〜60)硬化ヒマシ油トリイソステアレート等のエーテルエステル型活性剤等のエチレンオキシド付加型界面活性剤、およびデカグリセリルテトラオレート、ヘキサグリセリルトリイソステアレート、テトラグリセリルジイソステアレート、ジグリセリルジイソステアレート、デカグリセリルテトライソステアレート、デカグリセリルテトラステアレート、デカグリセリルヘプタオレート、デカグリセリルデカオレート、デカグリセリルデカイソステアレート等のポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリルモノステアレート、グリセリルモノイソステアレート、グリセリルモノオレート等のグリセリン脂肪酸エステル、等の多価アルコール脂肪酸エステル型界面活性剤;塩化ベンザルコニウム等のカチオン界面活性剤;パルミチン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル、リニアドデシルベンゼン硫酸、アシルメチルタウリン等のアニオン性界面活性剤;イミダゾリニウムベタイン、ラウリルアミンオキサイド、アミドアミン型両性界面活性剤;アルキルベタイン、スルホベタイン、アミドベタイン等の両性界面活性剤等の界面活性剤が挙げられる。
【0029】
さらに無機粉末(例えば、タルク、カオリン、雲母、セリサイト、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、パーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、弗素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、金属石鹸(例えば、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム)、窒化ホウ素等);有機粉末(例えば、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ポリスチレン粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、ポリ四弗化エチレン粉末、セルロース粉末等);無機白色顔料(例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛等);無機赤色系顔料(例えば、酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄等);無機褐色系顔料(例えば、γ−酸化鉄等);無機黄色系顔料(例えば、黄酸化鉄、黄土等);無機黒色系顔料(例えば、黒酸化鉄、低次酸化チタン等);無機紫色系顔料(例えば、マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等);無機緑色系顔料(例えば、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等);無機青色系顔料(例えば、群青、紺青等);パール顔料(例えば、酸化チタンコーテッドマイカ、酸化チタンコーテッドオキシ塩化ビスマス、酸化チタンコーテッドタルク、着色酸化チタンコーテッドマイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等);金属粉末顔料(例えば、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等);ジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料(例えば、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、及び青色404号などの有機顔料、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号および青色1号等);天然色素(例えば、クロロフィル、β−カロチン等)等の粉末成分が挙げられる。
【0030】
植物系高分子(例えば、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード、アルゲコロイド(カッソウエキス)、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ);微生物系高分子(例えば、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、ブルラン等)等の天然の水溶性高分子;デンプン系高分子(例えば、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等);セルロース系高分子(メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース末等);アルギン酸系高分子(例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等)等の半合成の水溶性高分子;ビニル系高分子(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等);ポリオキシエチレン系高分子(例えば、ポリエチレングリコール20,000、40,000、60,000、1000,000のポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体等);アクリル系高分子(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等);カチオンポリマー等の合成の水溶性高分子;アラビアガム、カラギーナン、カラヤガム、トラガカントガム、キャロブガム、クインスシード(マルメロ)、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、ペクチン酸ナトリウム、アラギン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、ローカストビーンガム、グアガム、タマリントガム、ジアルキルジメチルアンモニウム硫酸セルロース、キサンタンガム、ジェランガム等の増粘剤が挙げられる。
【0031】
1−ヒドロキシエタン−1,1−ジフォスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジフォスホン酸四ナトリウム塩、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、コハク酸、エデト酸、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸3ナトリウム等の金属イオン封鎖剤等が挙げられる。
【0032】
中性アミノ酸(例えば、グリシン、スレオニン、システイン等);塩基性アミノ酸(例えば、ヒドロキシリジン、アルギニン等)等のアミノ酸、アミノ酸誘導体として、例えば、アシルサルコシンナトリウム(ラウロイルサルコシンナトリウム)、アシルグルタミン酸塩、アシルタウリン塩、アシルβ−アラニンナトリウム、グルタチオン、ピロリドンカルボン酸、トリメチルグリシン等のアミノ酸、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、トリイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等の有機アミン等が挙げられる。
【0033】
乳酸−乳酸ナトリウム、クエン酸−クエン酸ナトリウム、コハク酸−コハク酸ナトリウム等の緩衝剤等のpH調整剤が挙げられる。
【0034】
δ−トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸エステル類等が挙げられる。また、酸化防止助剤としては、例えば、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、ケファリン、ヘキサメタフォスフェイト、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸等の酸化防止剤が挙げられる。
【0035】
メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、フェノキシエタノール等の防腐剤等が挙げられる。
【0036】
本発明の水中油型乳化皮膚外用剤の製造方法は特に限定されるものでなく、常法により製造することができる。例えば、油相成分にウフェナマート、ワックス類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を加熱溶解したものと、水相成分に保湿剤を配合したものとで乳化機器処理下にて徐添加して、本発明の水中油型乳化皮膚外用剤を製造することができる。あるいは、特開昭51−55783号公報記載の製造方法に準じて、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の親水性非イオン界面活性剤を水溶性溶媒中に溶解し、これにウフェナマート、ワックス類などの油分を添加して乳化を行い、水溶性溶媒中油型エマルジョンをつくり、さらにここに水を添加して本発明の水中油型乳化皮膚外用剤を製造してもよい。
【0037】
本発明の水中油型乳化皮膚外用剤は、流動油分特有のぬるつき、肌なじみの悪さ等の不快な使用感が緩和された製剤であり、安定で、かつ基剤がもつ皮膚への保護効果が期待でき、安全性にも優れるものである。
【実施例】
【0038】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれによってなんら限定されるものではない。配合量は特記しない限りすべて質量%である。
[評価法]
【0039】
(1)使用感
専門パネル(5名)により試料を皮膚に実際に塗布した際の使用感を下記の評価基準に基づいて評価を行った。
[評価基準]
<肌へのなじみ>
○:5名中4名以上が肌へのなじみがよいと回答した。
△:5名中2〜3名が肌へのなじみがよいと回答した。
×:5名中0〜1名が肌へのなじみがよいと回答した。
<塗布中のぬるつき感>
○:5名中4名以上がぬるつき感がない・ほとんどないと回答した。
△:5名中2〜3名がぬるつき感がない・ほとんどないと回答した。
×:5名中0〜1名がぬるつき感がない・ほとんどないと回答した。
【0040】
(2)安定性
<外観>
室温(25℃)下での試料の安定性について、製造直後(表1)、製造直後〜翌日まで(表2)の外観変化を、下記の評価基準によって評価した。
[評価基準]
○:分離、離漿、沈殿、結晶析出等なんらの変化もみられなかった。
×:分離、離漿、沈殿、結晶析出等なんらかの変化がみられた。
<粒子径>
上記各試料につき、安定性の参考指標として、乳化粒子径を光学顕微鏡および専用スケールを用いて測定した。結果を表中に示す。なお表中、例えば「1〜3(10)」と記載されている場合、これは「おもな乳化粒子径は1〜3μm、10μm程度の大きな粒子も散見された。」ということを示す。
【0041】
(実施例1〜2および比較例1、実施例3および比較例2〜3)
下記表1、2に示す各成分、配合量の処方(配合量合計100質量%)の試料を以下の方法で調製した。調製した試料を用いて、上記評価方法に従い、表1の試料では安定性について、表2の試料では安定性に加えて使用感についても評価した。結果を表1、2に示す。
(調製法)
実施例1は、油相成分にウフェナマート、ワックス類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を加熱溶解したものと、水相成分に保湿剤を配合したものとで乳化機器処理下にて徐添加し、O/W型エマルジョン製剤を調製した。また、実施例1以外の実施例および比較例については、前記実施例1の方法に準じて調製した。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
表1の結果から明らかなように保湿剤として2価の水溶性アルコールを配合した実施例1〜2では、O/W型乳液が得られ、安定性(製造直後)に優れたが、保湿剤として2価の水溶性アルコールを全く含まず、それに代えて3価アルコールであるグリセリンのみを用いた比較例1では製造直後の安定性が得られず、W/O型乳液に転相してしまった。
【0045】
また表2の結果から明らかなように、本発明範囲内である実施例3の試料は安定性、使用感ともに優れた効果が得られた。これに対し、油分としてワックス類((b)成分)を配合せずに流動油分を配合した比較例2では、使用感(肌へのなじみ、塗布中のぬるつき感)が得られず、安定性(翌日)も得られなかった。また(d)成分を含まず、親水性非イオン界面活性剤として汎用されているPOE(20)ベヘニルエーテルを代替配合した比較例3では、使用感(肌へのなじみ、塗布中のぬるつき感)が得られなかった。
【0046】
また表1〜2の結果から明らかなように、従来技術の欄に挙げられた特許文献1〜2のように粒子径をハーフミクロン以下に制御する必要がなく、優れた安定性を得ることができた。
【0047】
以下、さらに本発明の水中油型乳化皮膚外用剤の実施例を示す。なお、製造は実施例1の方法に準じて行った。
【0048】
〔実施例4〕湿疹皮膚炎用治療クリーム
(配 合 成 分) (質量%)
ウフェナマート 5.0
アラントイン 0.2
パンテノール 0.3
スクワラン 10.0
パラフィンワックス 5.0
ホホバ油 2.5
セバシン酸ジエチル 11.5
POE(100)硬化ヒマシ油 2.5
POE(10)グリセリルトリイソステアレート 0.2
エチルパラベン 0.2
ブチルパラベン 0.1
グリセリン 10.0
プロピレングリコール 2.0
コラーゲン 0.5
ヒアルロン酸ナトリウム 0.1
水 残余
(合計)100.0
【0049】
〔実施例5〕かゆみ止めクリーム
(配 合 成 分) (質量%)
ウフェナマート 10.0
クロタミトン 10.0
dl−カンフル 8.0
スクワラン 28.0
トリイソオクタン酸グリセリン 2.0
ワセリン 1.0
モンタンワックス 2.0
硬ロウ 0.5
POE(20)硬化ヒマシ油 2.0
ステアリン酸ポリオキシル50 1.5
ドコサヘキサエン酸 0.5
デカグリセリルテトラオレート 0.05
クエン酸 0.05
クエン酸ナトリウム 0.5
ブチルパラベン 0.1
グリセリン 2.0
1,3ブチレングリコール 10.0
水 残余
(合計)100.0
【0050】
〔実施例6〕抗炎症乳液
(配 合 成 分) (質量%)
ウフェナマート 3.0
酸化亜鉛 10.0
L−メントール 7.0
スクワラン 10.0
アジピン酸ジイソプロピル 2.0
ワセリン 1.0
セレシン 2.0
ジメチルポリシロキサン(5cs) 30.0
水添レシチン 0.5
オレイン酸 1.0
POE・メチルポリシロキサン共重合体 2.5
(シリコーンSC9450N;信越化学工業(株)製)
POE(80)硬化ヒマシ油 3.0
エチルパラベン 0.2
ポリエチレングリコール1500 2.0
ポリエチレングリコール20000 0.5
マンニトール 1.5
水アメ 1.0
プロピレングリコール 5.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.0
水 残余
(合計)100.0
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明により、ウフェナマートが安定に配合され、かつ使用感(肌へのなじみ、ぬるつきがない)に優れる水中油型乳化皮膚外用剤が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ウフェナマートと、(b)動植物由来以外のワックスと、(c)2価の水溶性アルコールを少なくとも含む保湿剤と、(d)ポリエチレン硬化ヒマシ油を含有する水中油型乳化皮膚外用剤。
【請求項2】
(b)成分が、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、セレシン、硬ロウ、炭化水素系化合物を化学合成した合成ワックスから選ばれる1種または2種以上である、請求項1記載の水中油型乳化皮膚外用剤。
【請求項3】
(c)成分中における2価の水溶性アルコールの配合割合が、(c)成分に対し10質量%以上である、請求項1または2記載の水中油型乳化皮膚外用剤。
【請求項4】
(c)成分の配合量が10〜40質量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の水中油型乳化皮膚外用剤。
【請求項5】
(d)成分の配合量が1.2〜5.0質量%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の水中油型乳化皮膚外用剤。

【公開番号】特開2010−270029(P2010−270029A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121838(P2009−121838)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】