説明

水冷式ブスバー及びその製造方法

【課題】長さ方向に互いに隣接する2個のブスバー構成部材間の電気抵抗が小さな水冷式ブスバーを提供する。
【解決手段】水冷式ブスバー30Aを構成する複数個のアルミニウム又はその合金製ブスバー構成部材のうち長さ方向に互いに隣接する2個のブスバー構成部材1、11の内部に、それぞれ冷却水通路5、15が長さ方向に延びて設けられている。両ブスバー構成部材1、11の長さ方向の端面2、12に、それぞれ冷却水通路の開口部5a、15aが形成されている。さらに、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12は、それぞれブスバー構成部材の構成材料とは異種の金属で置換されている。両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士が、互いに冷却水通路5、15同士を連通させた状態にして、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12間に配置された導電性接着剤層20により接着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給先に給電する給電路として使用される水冷式ブスバー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば国際熱核融合実験炉(いわゆるITER)に採用されたトカマク型の炉には、プラズマを閉じ込めるための磁場を発生させる超伝導コイルが設置されている。この超伝導コイルには磁場を発生させるために高電圧大電流の電力を供給する必要がある。
【0003】
このような高電圧大電流の電力を超伝導コイルに供給するための給電路として、近年、水冷式ブスバーを採用することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このブスバーは、軽量化を図るためにアルミニウム又はその合金で製作されている。
【0004】
このブスバーは、通電時に生じる発熱量が一般の工場で使用される低電圧大電流用や高電圧小電流用のものと比べて非常に大きい。そのため、ブスバーの内部には、ブスバーを冷却するための冷却水が流通する冷却水通路がブスバーの長さ方向(即ち通電方向)に延びて形成されている。さらに、このブスバーは、炉の小型化を図るためにトンネル状の狭い空間内を通して配置されるものであり、また、このような狭い空間内にブスバーが複数個、近接して配置されるものである。
【特許文献1】特開2004−193067号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、上述のような用途に用いられるブスバーのうち長尺なブスバーは、複数個の金属製ブスバー構成部材を長さ方向に順次連結することにより製造される。長さ方向に互いに隣接する2個のブスバー構成部材の連結方法として、図14及び図15に示す二つの方法が考えられる。各図に示した方法について以下に説明する。
【0006】
図14において、130はブスバーである。このブスバー130の2個のブスバー構成部材101、111の内部には、それぞれ冷却水通路105、115が長さ方向に延びて形成されている。さらに、各ブスバー構成部材101、111の長さ方向の端面102、112の中央部に、冷却水通路の開口部105a、115aが形成されている。そして、両ブスバー構成部材101、111の端面102、112同士が、互いに冷却水通路105、115同士を連通させた状態にして、その外周面側から溶接(例:TIG溶接、MIG溶接)によって全周に亘って接合されている。なお120は、両ブスバー構成部材101、111の端面102、112同士を接合した溶接部である。
【0007】
図14に示した方法によれば、両ブスバー構成部材101、111の端面102、112同士が溶接によって接合されるので、良好な通電性を得ることができる。しかしながら、溶接部120やその近傍に溶接割れやボイドが発生する虞があり、その結果、冷却水通路105、115内の冷却水が外部へ漏出するという難点があった。さらに、このブスバー130は、上述したように、狭い空間内に配置されたり、複数個近接して配置されたりするものであるため、ブスバー130の設置現場での溶接作業が非常に困難であるという難点があった。しかも、両ブスバー構成部材101、111の端面102、112同士はその外周面側から溶接されるため、同図に示すように両ブスバー構成部材101、111の端面102、112における冷却水通路105、115側にそれぞれ未溶接面部121、121が残存する虞があった。もし、このように未溶接面部121、121が残存すると、両端面102、112の両未溶接面部121、121間で隙間腐食が発生し、その結果、両ブスバー構成部材101、111間の電気抵抗が増大するという難点があった。
【0008】
図15では、両ブスバー構成部材101、111の端部には、それぞれ側方突出状のボルト締結用フランジ部101a、111aが一体形成されている。そして、両ブスバー構成部材101、111の端面102、112同士が、両フランジ部101a、111aに通した複数個の通しボルト125よって締結されている。なお、125aは通しボルト125と螺合したナットである。
【0009】
図15に示した方法によれば、各ブスバー構成部材101、111の端面102、112に存在する絶縁性の酸化層(例:自然酸化層、水和酸化層)によって両ブスバー構成部材101、111間の電気抵抗が大きいという難点があった。さらに、各端面102、112には微細な凹凸が存在しているため、端面102、112同士の接触面積が比較的小さく、そのためやはり電気抵抗が大きいという難点があった。さらに、両端面102、112間で隙間腐食が発生し、その結果、電気抵抗が増大するという難点があった。
【0010】
本発明は、上述した技術背景に鑑みてなされたもので、その目的は、複数個のブスバー構成部材が長さ方向に順次連結されて製造される水冷式ブスバーであって、複数個のブスバー構成部材のうち長さ方向に互いに隣接する2個のブスバー構成部材間の電気抵抗が小さな水冷式ブスバー及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は以下の手段を提供する。
【0012】
[1] 内部に冷却水通路が長さ方向に延びて設けられるとともに、長さ方向の端面に前記冷却水通路の開口部が形成された複数個のアルミニウム又はその合金製ブスバー構成部材を備え、
前記複数個のブスバー構成部材のうち長さ方向に互いに隣接して配置される2個のブスバー構成部材の端面が、それぞれブスバー構成部材の構成材料とは異種の金属で置換されており、
前記両ブスバー構成部材の端面同士が、互いに前記冷却水通路同士を連通させた状態にして、前記両ブスバー構成部材の端面間に配置された導電性接着剤層により接着されていることを特徴とする水冷式ブスバー。
【0013】
[2] 前記両ブスバー構成部材の端面には、それぞれブスバー構成部材の端面を異種金属で置換した異種金属置換層として、無電解メッキ層、電気メッキ層又ははんだメッキ層が形成されている前項1記載の水冷式ブスバー。
【0014】
[3] 前記導電性接着剤層は、導電性粒子として、金、銀、銅、カーボン、カーボンナノチューブ、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、スズ、鉛及びビスマスからなる群より選択された1つ又は2つ以上を含有している前項1又は2記載の水冷式ブスバー。
【0015】
[4] 前記導電性接着剤層の接着剤成分は、エポキシ樹脂系、ゴム系、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系及びビニル樹脂系からなる群より選択された1つ又は2つ以上の接着剤成分である前項1〜3のいずれかに記載の水冷式ブスバー。
【0016】
[5] 前記両ブスバー構成部材の端面間において、前記端面の外周縁部の位置と前記開口部の周縁部の位置とに外気及び水の浸入を防止する防気性・防水性接着剤層がそれぞれ配置されるとともに、前記端面の外周縁部と前記開口部の周縁部との間の位置に前記導電性接着剤層として導電性及び嫌気性を有する導電性・嫌気性接着剤層が配置されており、
前記両ブスバー構成部材の端面同士が、前記防気性・防水性接着剤層と前記導電性・嫌気性接着剤層とにより接着されている前項1〜4のいずれかに記載の水冷式ブスバー。
【0017】
[6] 前記両ブスバー構成部材同士は、両ブスバー構成部材の端面の少なくとも一部同士が密着した状態に締結部材によって締結されている前項1〜5のいずれかに記載の水冷式ブスバー。
【0018】
[7] 前記両ブスバー構成部材の端面は、厚さ方向及び幅方向のうち少なくとも一方向に互いに係合する形状に形成されている前項1〜6の水冷式ブスバー。
【0019】
[8] 前記両ブスバー構成部材のうち一方のブスバー構成部材の端面の端部には、長さ方向に突出した突出部が一体形成されるとともに、他方のブスバー構成部材の端面の端部には、前記突出部に対応する切欠き部が形成されており、
前記突出部が前記切欠き部に嵌め込まれることにより、前記突出部と前記切欠き部の側壁部とが厚さ方向及び幅方向のうち少なくとも一方向に互いに係合しており、
前記突出部と前記切欠き部の側壁部とが互いに係合方向に締結部材によって緊結状態に締結されている1〜7のいずれかに記載の水冷式ブスバー。
【0020】
[9] 前記両ブスバー構成部材のうち一方のブスバー構成部材の端面には、長さ方向に突出した凸部が一体形成されるとともに、他方のブスバー構成部材の端面には、前記凸部が嵌合される凹部が形成されており、
前記凸部の先端部と前記凹部の底部とに、それぞれ前記開口部が配置されており、
前記凸部の断面は、先細り形状であり、
前記凹部の断面は、前記凸部の断面に対応した形状であり、
前記凸部が前記凹部に嵌合されることにより、前記凸部と前記凹部の周壁部とが厚さ方向及び幅方向のうち少なくとも一方向に互いに係合しており、
前記凸部と前記凹部の周壁部とが互いに係合方向に締結部材によって緊結状態に且つ前記凸条部が前記凹部に圧入された状態に締結されている前項1〜7のいずれかに記載の水冷式ブスバー。
【0021】
[10] 前記導電性接着剤層はペースト状の導電性接着剤で形成されている前項1〜9のいずれかに記載の水冷式ブスバー。
【0022】
[11] 前記ペースト状の導電性接着剤は、粘度が25℃で30〜1000Pa・sの範囲に設定されたものである前項10記載の水冷式ブスバー。
【0023】
[12] 前記導電性接着剤層はシート状の導電性接着剤で形成されている前項1〜9のいずれかに記載の水冷式ブスバー。
【0024】
[13] 前記導電性接着剤層が加熱されることにより、前記両ブスバー構成部材の端面同士が接着されている前項1〜12のいずれかに記載の水冷式ブスバー。
【0025】
[14] 前記両ブスバー構成部材の端面同士の接着部を迂回するように配置された迂回導電路用導電性部材を介して、前記両ブスバー構成部材同士が電気的に接続されている前項1〜13のいずれかに記載の水冷式ブスバー。
【0026】
[15] 内部に冷却水通路が長さ方向に延びて設けられるとともに、長さ方向の端面に前記冷却水通路の開口部が形成された複数個のアルミニウム又はその合金製ブスバー構成部材の各端面を、ブスバー構成部材の構成材料とは異種の金属で置換する異種金属置換工程と、
前記異種金属置換工程の後で、長さ方向に互いに隣接して配置される2個のブスバー構成部材の端面同士を、互いに前記冷却水通路同士を連通させた状態にして、前記両ブスバー構成部材の端面間に配置された導電性接着剤層により接着する接着工程と、
を含むことを特徴とする水冷式ブスバーの製造方法。
【0027】
[16] 前記接着工程において前記両ブスバー構成部材の端面同士を接着する際に又は接着した後で、前記両ブスバー構成部材同士を、両ブスバー構成部材の端面の少なくとも一部同士が密着する状態に締結部材によって締結する締結工程を含んでいる前項15記載の水冷式ブスバーの製造方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明は以下の効果を奏する。
【0029】
[1]の発明では、両ブスバー構成部材の端面が、それぞれブスバー構成部材の構成材料とは異種の金属で置換されることにより、各ブスバー構成部材の端面に絶縁性の酸化層(例:自然酸化層、水和酸化層)が形成されるのを防止することができる。これにより、各ブスバー構成部材の端面の導電性が向上する。さらに、両ブスバー構成部材の端面間に配置された導電性接着剤層によって両ブスバー構成部材の端面同士を接着することにより、もし仮にブスバー構成部材の端面に微細な凹凸が形成されていても、両ブスバー構成部材の端面同士の接触面積が増大する。このように、各ブスバー構成部材の端面の導電性が向上し且つ両ブスバー構成部材の端面同士の接触面積が増大することにより、両ブスバー構成部材間の電気抵抗を非常に小さくすることができる。
【0030】
しかも、両ブスバー構成部材の端面同士が、互いに冷却水通路同士を連通させた状態にして接着されているので、冷却水を一方のブスバー構成部材の冷却水通路から他方のブスバー構成部材の冷却水通路へと直接流通させることができる。これにより、両ブスバー構成部材の端面同士の接着部を冷却水で確実に冷却することができる。
【0031】
したがって、[1]の発明に係る水冷式ブスバーは、両ブスバー構成部材間の電気抵抗が非常に小さく且つ接着部が確実に冷却されるので、国際熱核融合実験炉に設置される超伝導コイル等のように、高電圧大電流の動作電力を必要とするデバイスへの給電用に特に好適に使用することができる。
【0032】
[2]の発明では、ブスバー構成部材の端面に異種金属置換層として無電解メッキ層を形成する場合には、異種金属置換層を容易に形成することができる。ブスバー構成部材の端面に異種金属置換層として電気メッキ層を形成する場合には、緻密な異種金属置換層を形成することができる。ブスバー構成部材の端面に異種金属置換層としてはんだメッキ層を形成する場合には、異種金属置換層をブスバーの設置現場で形成することができる。
【0033】
[3]の発明では、両ブスバー構成部材間の導電性を確実に向上させることができる。
【0034】
[4]の発明では、両ブスバー構成部材の端面間の隙間を確実に塞ぐことができ、もって両ブスバー構成部材の端面間の隙間腐食を確実に防止することができるし、更に、両ブスバー構成部材の端面同士を確実に且つ強固に接着することができる。
【0035】
[5]の発明では、両ブスバー構成部材の端面の外周縁部同士は、防気性・防水性接着剤層により接着される。これにより、外気及び水が両ブスバー構成部材の端面間にその外側から浸入するのを防止することができる。また、両ブスバー構成部材の端面における開口部の周縁部同士は、防気性・防水性接着剤層により接着される。これにより、外気及び水が両ブスバー構成部材の端面間に冷却水通路から浸入するのを防止することができ、もって両端面間の隙間腐食を確実に防止できる。さらに、両ブスバー構成部材の端面における外周縁部と冷却水通路開口部の周縁部との間の中間部同士は、両防気性・防水性接着剤層が硬化して外気が遮断されることで導電性・嫌気性接着剤層が硬化して接着される。この導電性・嫌気性接着剤層によって両ブスバー構成部材の端面間の導電性を確保することができる。
【0036】
[6]の発明では、両ブスバー構成部材同士は、両ブスバー構成部材の端面の少なくとも一部同士が密着した状態に締結部材によって締結されているので、両ブスバー構成部材間の電気抵抗を確実に小さくすることができるし、両ブスバー構成部材の端面同士が分離するのを強固に阻止することができる。
【0037】
[7]の発明では、両ブスバー構成部材の端面同士を、厚さ方向及び幅方向のうち少なくとも一方向に係合させた状態に接着することができる。これにより、地震等の外力が各ブスバー構成部材に加わった場合であっても、各端面の位置ずれを生じ難くすることができる。
【0038】
[8]の発明では、一方のブスバー構成部材の端面の突出部が他方のブスバー構成部材の端面の切欠き部に嵌め込まれることにより、突出部と切欠き部の側壁部とが厚さ方向及び幅方向のうち少なくとも一方向に互いに係合しているので、地震等の外力が各ブスバー構成部材に加わった場合であってても、各端面の位置ずれを生じ難くすることができる。
【0039】
しかも、突出部と切欠き部の側壁部とが互いに係合方向に締結部材によって緊結状態に締結されることにより、突出部と切欠き部の側壁部との相互対向面部同士が密着している。これにより、両ブスバー構成部材間の電気抵抗を確実に小さくすることができる。
【0040】
さらに、締結部材は、突出部と切欠き部の側壁部とを互いに係合方向に締結するものであるから、必ずしも各ブスバー構成部材に図15に示したような側方突出状のボルト締結用フランジ部(101a、111a)を設ける必要がない。これにより、ブスバーを狭い空間内に配置する際にフランジ部が他の部材と干渉するのを防止することができるし、また、複数個のブスバーを互いに近接して配置することができ、もってブスバーの設置スペースについて省スペース化を図ることができる。
【0041】
[9]の発明では、一方のブスバー構成部材の端面の凸部が他方のブスバー構成部材の端面の凹部に嵌合されることにより、凸部と凹部の周壁部とが厚さ方向及び幅方向のうち少なくとも一方向に互いに係合しているので、地震等の外力が各ブスバー構成部材に加わった場合であっても、各端面の位置ずれを生じ難くすることができる。
【0042】
しかも、凸部と凹部の周壁部とが互いに係合方向に緊結状態に締結されていることにより、凸部と凹部の周壁部との相互対向面部同士が密着している。そのため、両ブスバー構成部材間の電気抵抗を確実に小さくすることができる。
【0043】
その上、凸部と凹部の周壁部とが、凸部が凹部に圧入された状態に締結されていることにより、凸部と凹部の周壁部との相互対向面部同士が非常に強く密着している。そのため、両ブスバー構成部材間の電気抵抗を更に確実に小さくすることができる。
【0044】
さらに、締結部材は、凸部と凹部の周壁部とを互いに係合方向に締結するものであるから、必ずしも各ブスバー構成部材に図15に示したような側方突出状のボルト締結用フランジ部(101a、111a)を設ける必要がない。これにより、ブスバーを狭い空間内に配置する際にフランジ部が他の部材と干渉するのを防止することができるし、また、複数個のブスバーを互いに近接して配置することができ、もってブスバーの設置スペースについて省スペース化を図ることができる。
【0045】
[10]の発明では、導電性接着剤層がペースト状の導電性接着剤で形成されていることにより、両ブスバー構成部材の端面間の隙間を確実に塞ぐことができ、もって両端面間の隙間腐食を確実に防止することができる。
【0046】
[11]の発明では、ペースト状の導電性接着剤は、粘度が所定の範囲であることにより、両ブスバー構成部材の端面同士を接着する際に、両ブスバー構成部材のうち少なくとも一方のブスバー構成部材の端面に付着したペースト状の導電性接着剤が、該端面から垂れ流れるのを防止することができ、もって両ブスバー構成部材の端面同士を確実に接着することができる。
【0047】
[12]の発明では、導電性接着剤層がシート状の導電性接着剤で形成されている。したがって、両ブスバー構成部材の端面同士を接着する際に、例えば、導電性接着剤層を加熱することにより、導電性接着剤層が軟化する。これにより、両ブスバー構成部材の端面同士の接触面積を確実に増大することができるし、両ブスバー構成部材の端面間の隙間を確実に塞ぐことができる。その結果、両ブスバー構成部材間の電気抵抗を確実に小さくすることができるし、両端面間の隙間腐食を確実に防止することができる。
【0048】
[13]の発明では、両ブスバー構成部材の端面同士の接触面積を確実に増大することができるし、両ブスバー構成部材の端面間の隙間を確実に塞ぐことができる。その結果、両ブスバー構成部材間の電気抵抗を確実に小さくすることができるし、両端面間の隙間腐食を確実に防止することができる。
【0049】
[14]の発明では、両ブスバー構成部材間の導電性を確実に確保することができる。
【0050】
[15]及び[16]の発明では、本発明に係る水冷式ブスバーを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
次に、本発明の幾つかの実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0052】
図1〜3は、本発明の一実施形態に係る水冷式ブスバー及びその製造方法を説明する図である。
【0053】
本実施形態の水冷式ブスバー30Aは、国際熱核融合実験炉に設置される超伝導コイル等のように、高電圧大電流の動作電力を必要とするデバイス(図示せず)に給電するための給電路として用いられるものである。
【0054】
このブスバー30Aは、複数個のブスバー構成部材が長さ方向に順次連結されて製造されたものである。図1において、1及び11は、このブスバー30Aを構成する複数個のブスバー構成部材のうち長さ方向Lに互いに隣接して連結配置された2個のブスバー構成部材である。
【0055】
ここで、Lは、ブスバー構成部材1、11(即ちブスバー30A)の長さ方向を示している。ブスバー30Aの通電方向は、ブスバー構成部材1の長さ方向Lである。W及びHは、ブスバー構成部材1、11の長さ方向Lに対して互いに直交する二つの方向を示しており、本実施形態では、説明の便宜上、Hをブスバー構成部材1、11の厚さ方向、Wをブスバー構成部材1、11の幅方向として以下に説明する。ただし本発明では、ブスバー構成部材1、11の厚さ方向H及び幅方向Wは絶対的な方向ではなく互いに相対的な方向である。
【0056】
両ブスバー構成部材1、11は互いに同一形状及び同一材質である。各ブスバー構成部材1、11は、断面四角形状であり、一方向(即ち長さ方向L)に延びて形成されている。また、各ブスバー構成部材1、11はアルミニウム又はその合金製である。特に本発明では、ブスバー構成部材1、11の材質は、純アルミニウムか、あるいはAl−Mg−Si系のアルミニウム合金であることが望ましく、これにより、ブスバー構成部材1、11の導電性を高めることができるし、そのようなブスバー構成部材を容易に入手することができる。
【0057】
各ブスバー構成部材1、11の長さLは例えば2000〜6000mmに設定されており、その厚さHは例えば40〜100mmに設定されており、その幅Wは例えば50〜200mmに設定されている。
【0058】
各ブスバー構成部材1、11の内部には、通電時に各ブスバー構成部材1、11(即ちブスバー30A)を冷却する冷却水が流通する断面円形状の冷却水通路5、15が長さ方向Lに延びて形成されている。さらに、各ブスバー構成部材1、11の長さ方向Lの端面2、12の中央部には、冷却水通路5、15の開口部5a、15aが形成されている。各開口部5a、15aの断面形状は円形状である。冷却水としては、純水をはじめ、様々な種類の水が用いられる。
【0059】
各ブスバー構成部材1、11の端面2、12全体は、図3に示すように、各ブスバー構成部材1、11の構成材料(即ちアルミニウム又はその合金)とは異種の金属で置換されている。これにより、各端面2、12全体には、絶縁性の酸化層(例:自然酸化層、水和酸化層)ではなく、各ブスバー構成部材1、11の端面2、12が異種金属で置換されてなる導電性(詳述すると良導電性)の異種金属置換層3、13が形成されている。各異種金属置換層3、13の厚さは例えば0.1〜2μmに設定されている。
【0060】
本発明では、各ブスバー構成部材1、11の端面2、12に、異種金属置換層3、13として、無電解メッキ層、電気メッキ層又ははんだメッキ層が形成されるのが望ましい。
【0061】
そして、図2及び3に示すように、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士は、互いに冷却水通路5、15同士を連通させた状態にして、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12間に配置された導電性接着剤層20により接着されている。図1において、10は両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士の接着部である。なお、導電性接着剤層20の詳細な説明は後述する。
【0062】
さらに、両ブスバー構成部材1、11同士が締結部材としての締結ボルト24によって緊結状態に締結されている。これにより、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12の少なくとも一部同士が強く密着している。この締結状態において、図2に示すように、一方のブスバー構成部材1の端面2における冷却水通路開口部5aと他方のブスバー構成部材11の端面12における冷却水通路開口部15aとは、互いに合致している。また、両ブスバー構成部材1、11の外周面同士は互いに長さ方向Lに面一(つらいち)に連なっている。
【0063】
両ブスバー構成部材1、11の連結構造について詳述すると、次のとおりである。
【0064】
両ブスバー構成部材1、11の端面2、12は、厚さ方向Hに互いに係合する形状に形成されている。すなわち本実施形態では、両ブスバー構成部材1、11のうち一方のブスバー構成部材1の端面2の一端部(本実施形態では下端部)には、長さ方向Lに突出した係合用突出部2aが一体形成されるとともに、他方のブスバー構成部材11の端面12の一端部(本実施形態では下端部)には、該突出部2aに対応する切欠き部12aが外周面側(詳述すると下面側)に向けて切り欠かれて形成されている。また、他方のブスバー構成部材11の端面12の他端部(上端部)には、長さ方向Lに突出した係合用突出部12cが一体形成されるとともに、一方のブスバー構成部材1の端面2の他端部(上端部)には、該突出部12cに対応する切欠き部2cが外周面側(詳述すると上面側)に向けて切り欠かれて形成されている。また、一方のブスバー構成部材1の端面2の中間部2bは、長さ方向Lに対して垂直に形成されるとともに、この中間部2bに冷却水通路開口部5aが配置されている。これを同様に、他方のブスバー構成部材11の端面12の中間部12bは、長さ方向Lに対して垂直に形成されるとともに、この中間部12bに冷却水通路開口部15aが配置されている。
【0065】
そして、一方のブスバー構成部材1の端面2の突出部2aが他方のブスバー構成部材11の端面12の切欠き部12aに嵌め込まれており、他方のブスバー構成部材11の端面12の突出部12cが一方のブスバー構成部材1の端面2の切欠き部2cに嵌め込まれており、一方のブスバー構成部材1の端面2の中間部2bと他方のブスバー構成部材11の端面12の中間部12bとが互いに冷却水通路5、15同士を連通させた状態にして対向して配置されている。このように各突出部2a、12cが各切欠き部12a、2cに嵌め込まれることにより、各突出部2a、12cと各切欠き部12a、2cの側壁部12x、2xとが厚さ方向Hに互いに係合している。さらにこの状態で、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士が、両端面2、12間に配置された導電性接着剤層20により接着されている。導電性接着剤層20の厚さは例えば1〜5μmである。
【0066】
さらに、図2に示すように、各突出部2a、12cには、厚さ方向Hに貫通した複数個(本実施形態では2個)のボルト挿通孔22が設けられている。各切欠き部12a、2cの側壁部12x、2xには、複数個(本実施形態では2個)のねじ孔23が設けられている。そして、各ボルト挿通孔22、22に挿通された各締結ボルト24が各ねじ孔23に螺合されている。これにより、各突出部2a、12cと各切欠き部12a、2cの側壁部12x、2xとが、互いに厚さ方向H(即ち係合方向)に締結ボルト24によって緊結状態に締結されている。その結果、各突出部2a、12cと各切欠き部12a、2cの側壁部12x、2xとの相互対向面部2y、12y同士が強く密着している。
【0067】
次に、本実施形態のブスバー30Aの製造方法について以下に説明する。
【0068】
まず、ブスバー30Aを構成する複数個のアルミニウム又はその合金製ブスバー構成部材を準備する。この工程を「ブスバー構成部材準備工程」という。複数個のブスバー構成部材のうち長さ方向Lに互いに隣接して配置される2個のブスバー構成部材1、11の端面2、12は、上述したように厚さ方向Hに互いに係合する形状に形成されている。また、各ブスバー構成部材1、11の内部に冷却水通路5、15が長さ方向Lに延びて形成されている。また、各ブスバー構成部材1、11の端面2、12に冷却水通路5、15の開口部5a、15aが形成されている。
【0069】
次いで、各ブスバー構成部材1、11の端面2、12全体を、ブスバー構成部材の構成材料とは異種の金属で置換する。この工程を「異種金属置換工程」という。
【0070】
この異種金属置換工程では、各ブスバー構成部材1、11の端面2、12全体に異種金属置換層3、13として無電解メッキ層、電気メッキ層又ははんだメッキ層を形成し、これにより各ブスバー構成部材1、11の端面2、12全体を異種金属で置換する。
【0071】
ブスバー構成部材1、11の端面2、12に異種金属置換層3、13として無電解メッキ層を形成する場合には、異種金属置換層3、13を容易に形成することができる。無電解メッキ層の金属種(メッキ種)としては、亜鉛、銅、ニッケル等が好適に用いられる。
【0072】
ブスバー構成部材1、11の端面2、12に無電解メッキ層を形成する方法としては、公知の無電解メッキ方法が適用され、これを簡単に説明すると次のとおりである。
【0073】
すなわち、ブスバー構成部材1、11の端面2、12を、市販の脱脂液を用いて脱脂し、水洗いする。次いで、端面2、12を水酸化ナトリウム水溶液50g/Lを用いて50℃×1minの条件でエッチングすることにより、端面2、12の酸化層を除去し、水洗いする。次いで、端面2、12を硝酸水溶液100g/Lを用いて30秒間中和し、水洗いする。このような一連の処理を前処理という。次いで、端面2、12を、酸化亜鉛20g/L、水酸化ナトリウム120g/L、塩化第二鉄2g/L、ロッセル塩50g/L及び硝酸ナトリウム1g/Lのメッキ液を用いて常温×1minの条件で処理する。これにより、端面2、12に無電解メッキ層を形成する。
【0074】
ブスバー構成部材1、11の端面2、12に異種金属置換層3、13として電気メッキ層を形成する場合には、緻密な異種金属置換層3、13を形成することができる。電気メッキ層の金属種(メッキ種)としては、亜鉛、スズ、銅、ニッケル、銀等が好適に用いられる。
【0075】
ブスバー構成部材1、11の端面2、12に電気メッキ層を形成する方法としては、公知の電気メッキ方法が適用され、これを簡単に説明すると次のとおりである。
【0076】
すなわち、ブスバー構成部材1、11の端面2、12に対して、上述した前処理と同様に、脱脂、水洗い、エッチング、水洗い、中和、水洗いを順次行う。次いで、端面2、12を硫酸銅(CuSO4)200g/L及び硫酸(H2SO4)100g/Lのメッキ液を用いて温度30℃×通電電流(直流)1〜5A/dm2の条件で処理する。これにより、端面2、12に電気メッキ層を形成する。
【0077】
ブスバー構成部材1、11の端面2、12に異種金属置換層3、13としてはんだメッキ層を形成する場合には、異種金属置換層3、13をブスバー30Aの設置現場で形成することができる。はんだメッキ層の金属種(はんだ種)としては、Zn−Al系、Sn−Zn系、Cd−Zn系、Zn−Cd系等が好適に用いられる。
【0078】
ブスバー構成部材1、11の端面2、12にはんだメッキ層を形成する方法としては、公知のはんだメッキ方法が適用され、これを簡単に説明すると次のとおりである。
【0079】
すなわち、ブスバー構成部材1、11の端面2、12の酸化層を除去するために端面2、12に市販のフラックスを塗布し、Sn91Zn(Sn91%+Zn9%)のシート状はんだを載置する。次いで、フラックス及びシート状はんだを約200℃で加熱溶融する。これにより、端面2、12にはんだメッキ層を形成する。
【0080】
次いで、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士を、互いに冷却水通路5、15同士を連通させた状態にして、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12間に配置された導電性接着剤層20により接着する。この工程を「接着工程」という。
【0081】
この接着工程では、一方のブスバー構成部材1の端面2の突出部2a及び切欠き部2cをそれぞれ対応する他方のブスバー構成部材11の端面12の切欠き部12a及び突出部12cに嵌め込み、これにより、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士を厚さ方向Hに互いに係合させる。さらにこの状態で、両ブスバー構成部材1、11をそれぞれ突合せ方向に押すことにより、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士を導電性接着剤層20によって接着する。
【0082】
導電性接着剤層20は、導電性粒子として、金、銀、銅、カーボン、カーボンナノチューブ、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、スズ、鉛及びビスマスからなる群より選択された1つ又は2つ以上を含有するのが望ましい。こうすることにより、両ブスバー構成部材1、11間の導電性を確実に向上させることができる。また、導電性粒子の平均粒径は例えば1〜50μmの範囲に設定されるのが望ましい。導電性粒子は導電性接着剤層20中に均一に分散している。
【0083】
また、導電性接着剤層20の接着剤成分は、エポキシ樹脂系、ゴム系、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系及びビニル樹脂系からなる群より選択された1つ又は2つ以上の接着剤成分であるのが望ましい。こうすることにより、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12間の隙間を確実に塞ぐことができ、もって両端面2、12間の隙間腐食を確実に防止することができるし、更に、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士を確実に且つ強固に接着することができる。このような接着剤成分に導電性粒子が混合されている。
【0084】
導電性接着剤層20は、ペースト状の導電性接着剤で形成されるか、あるいはシート状の導電性接着剤で形成される。この導電性接着剤層20は両ブスバー構成部材1、11の端面2、12間に次のようにして配置される。
【0085】
導電性接着剤層20がペースト状の導電性接着剤で形成される場合には、両ブスバー構成部材1、11のうち少なくとも一方のブスバー構成部材の端面全体に、ペースト状の導電性接着剤を付着させ、これにより、該端面全体に導電性接着剤層20を形成する。次いで、一方のブスバー構成部材1の端面2の突出部2a及び切欠き部2cがそれぞれ対応する他方のブスバー構成部材11の端面12の切欠き部12a及び突出部12cに嵌め込まれるように、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士を突き合わせることにより、導電性接着剤層20が両ブスバー構成部材1、11の端面2、12間に配置される。そして、導電性接着剤層20が硬化することにより、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士が導電性接着剤層20によって接着される。なお本発明では、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士を突き合せた状態で、導電性接着剤層20(即ちペースト状の導電性接着剤)を加熱することにより、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士を導電性接着剤層20により接着しても良い。この導電性接着剤層20の加熱方法としては、特に限定されるものではなく、火炎バーナで加熱する方法や誘導加熱方法等が用いられる。
【0086】
このように、導電性接着剤層20がペースト状の導電性接着剤で形成されることにより、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12間の隙間を導電性接着剤層20で確実に塞ぐことができ、もって両端面2、12間の隙間腐食を確実に防止することができる。
【0087】
ペースト状の導電性接着剤は、粘度(詳述すると回転粘度)が25℃で30〜1000Pa・sの範囲に設定されるのが望ましい。こうすることにより、ブスバー構成部材の端面に付着したペースト状の導電性接着剤が、該端面から垂れ流れるのを防止することができ、もって両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士を確実に接着することができる。
【0088】
導電性接着剤層20がシート状の導電性接着剤で形成される場合には、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12間にシート状の導電性接着剤を挟んで両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士を突き合わせることにより、シート状導電性接着剤で形成された導電性接着剤層20が両ブスバー構成部材1、11の端面2、12間に配置される。そしてこの突合せ状態で、導電性接着剤層20(即ちシート状の導電性接着剤)を加熱して軟化させる。これにより、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士が導電性接着剤層20により接着される。この導電性接着剤層20の加熱方法としては、特に限定されるものではなく、火炎バーナで加熱する方法や誘導加熱方法等が用いられる。
【0089】
このように、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士を接着する際に導電性接着剤層20を加熱して軟化させることにより、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士の接触面積を確実に増大することができるし、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12間の隙間を確実に塞ぐことができる。その結果、両ブスバー構成部材1、11間の電気抵抗を確実に小さくすることができるし、両端面2、12間の隙間腐食を確実に防止することができ、更には接着時間を短縮することができる。
【0090】
そして、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士を接着する際に又は接着した後で、換言すると導電性接着剤層20が硬化する前に又は硬化した後で、両ブスバー構成部材1、11同士を、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12の少なくとも一部同士が密着する状態に複数個の締結ボルト24によって締結する。この工程を「締結工程」という。なお本発明では、締結ボルト24による両ブスバー構成部材1、11同士の締結は、導電性接着剤層20が硬化する前に行うことが望ましく、これにより、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士を強固に接着することができる。
【0091】
この締結工程では、上述したように、各締結ボルト24を各突出部2a、12cのボルト挿通孔22、22を挿通して対応する各ねじ孔23、23に螺合させることにより、突出部2a、12cと各切欠き部12a、2cの側壁部12x、2xとの相互対向面部2y、12y同士が密着した状態に両ブスバー構成部材1、11同士を締結する。なおこの締結状態では、締結ボルト24は、ブスバー構成部材の長さ方向Lではなく、ブスバー構成部材の厚さ方向Hに延びて配置されている。
【0092】
而して、本実施形態のブスバー30Aには次の利点がある。
【0093】
両ブスバー構成部材1、11の端面2、12が、それぞれブスバー構成部材の構成材料とは異種の金属で置換されることにより、各ブスバー構成部材1、11の端面2、12に絶縁性の酸化層(例:自然酸化層、水和酸化層)が形成されるのを防止することができる。これにより、各ブスバー構成部材1、11の端面2、12の導電性が向上する。さらに、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12間に配置された導電性接着剤層20によって両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士を接着することにより、もし仮に、図3に示すように各ブスバー構成部材1、11の端面2、12に微細な凹凸が形成されていても、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士の接触面積が増大する。このように、各ブスバー構成部材1、11の端面2、12の導電性が向上し且つ両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士の接触面積が増大することにより、両ブスバー構成部材1、11間の電気抵抗を非常に小さくすることができる。
【0094】
しかも、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士が、互いに冷却水通路5、15同士を連通させた状態にして接着されているので、冷却水を一方のブスバー構成部材1の冷却水通路5から他方のブスバー構成部材11の冷却水通路15へと直接流通させることができる。これにより、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士の接着部10を冷却水で確実に冷却することができる。
【0095】
したがって、このブスバー30Aは、両ブスバー構成部材1、11間の電気抵抗が非常に小さく且つ接着部10が確実に冷却されるので、国際熱核融合実験炉に設置される超伝導コイル等のように、高電圧大電流の動作電力を必要とするデバイスへの給電用に特に好適に使用することができる。
【0096】
さらに、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士が、厚さ方向Hに互いに係合した状態に接着されているので、地震等の外力が各ブスバー構成部材1、11に加わった場合であっても、各端面2、12の位置ずれを生じ難くすることができる。
【0097】
さらに、両ブスバー構成部材1、11同士は、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12の少なくとも一部同士が密着した状態に締結ボルト24によって締結されているので、両ブスバー構成部材1、11間の電気抵抗を確実に小さくすることができるし、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士が分離するのを強固に阻止することができる。
【0098】
しかも、各突出部2a、12cと各切欠き部12a、2cの側壁部12x、2xとが互いに厚さ方向H(即ち係合方向)に締結ボルト24によって緊結状態に締結されることにより、各突出部2a、12cと各切欠き部12a、2cの側壁部12x、2xとの相互対向面部2y、12y同士が密着している。これにより、両ブスバー構成部材1、11間の電気抵抗を確実に小さくすることができる。
【0099】
さらに、締結ボルト24は、各突出部2a、12cと各切欠き部12a、2cの側壁部12x、2xとを互いに厚さ方向H(即ち係合方向)に締結するものであるから、必ずしも各ブスバー構成部材1、11に図15に示したような側方突出状のボルト締結用フランジ部(101a、111a)を設ける必要がない。これにより、ブスバー30Aを狭い空間内に配置する際にフランジ部が他の部材と干渉するのを防止することができるし、また、複数個のブスバー30Aを互いに近接して配置することができ、もってブスバー30Aの設置スペースについて省スペース化を図ることができる。
【0100】
図4〜6は、上記実施形態のブスバー及びその製造方法における第1変形形態を説明する図である。本第1変形形態について上記実施形態とは異なる点を中心に以下に説明する。
【0101】
本第1変形形態のブスバー30Bでは、両ブスバー構成部材1、11のうち一方のブスバー構成部材1の端面2の中間部には、長さ方向Lに突出した凸部(詳述すると凸条部)2dが幅方向Wに延びて一体形成されている。他方のブスバー構成部材11の端面12の中間部には、凸部2dが嵌合される凹部(詳述すると凹条部)12dが幅方向Wに延びて形成されている。凸部2dの先端面部(先端部)2zの中央部には、一方の冷却水通路5の開口部5aが配置されている。凹部12dの底面部(底部)12zの中央部には、他方の冷却水通路15の開口部15aが配置されている。
【0102】
図5に示すように、凸部2dの断面は先細り形状である。詳述すると、凸部2dの周面部のうち凸部2dの厚さ方向両側の両側面部2y、2yが、それぞれ、凸部2dの突出方向に対して凸部2dの突出軸線に接近する方向に傾斜しており、これにより凸部2dの断面が先細り形状に形成されている。凹部12の断面は、凸部2dの断面に対応した形状である。詳述すると、凹部12dの互いに対向する一対の両側面部12y、12yが、凸部2dの両側面部2y、2yに対応して傾斜している。
【0103】
そして、凸部2dが凹部12dに嵌合されることにより、凸部2dと凹部12dの周壁部を構成する互いに対向する一対の両側壁部12x、12xとが厚さ方向Hに互いに係合している。この状態で、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士が、両端面2、12間に配置された導電性接着剤層20によって接着されている。
【0104】
さらに、図5に示すように、他方のブスバー構成部材11の端面12における凹部12dの両側壁部12x、12xには、それぞれ、厚さ方向Hに貫通して複数個(本変形形態では2個)のボルト挿通孔22、22が設けられている。一方のブスバー構成部材1の端面2における凸部2dには、各締結ボルト24と螺合するねじ孔23、23が設けられている。
【0105】
ここで、凸部2dのねじ孔23の位置は、ボルト挿通孔22に挿通された締結ボルト24をねじ孔23に螺合させることにより凸部2dが凹部12dに対して圧入方向に移動されるように、ボルト挿通孔22に対して凸部2dの基端側に僅かにずれている。そして、ボルト挿通孔22に挿通された締結ボルト24が凸部2dのねじ孔23に螺合されており、これにより、凸部2dと凹部12dの各側壁部12xとが互いに厚さ方向H(即ち係合方向)に締結ボルト24によって緊結状態に且つ凸部2dが凹部12dに圧入された状態に締結されている。この締結状態では、凸部2dと凹部12dの各側壁部12xとの相互対向面部同士、すなわち凸部2dの側面部2yと凹部12dの側面部2yとは強く密着しているとともに、更に凸部2dの先端面部2zと凹部12dの底面部12zとは強く密着している。
【0106】
次に、本第1変形形態のブスバー30Bの製造方法について上記実施形態とは異なる点を中心に以下に説明する。
【0107】
本第1変形形態では、上記実施形態と同様にブスバー構成部材準備工程と異種金属置換工程を順次行う。
【0108】
接着状態では、一方のブスバー構成部材1の端面2の凸部2dを他方のブスバー構成部材11の端面12の凹部12dに嵌合させ、これにより、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士を厚さ方向Hに互いに係合させる。そしてこの状態で、両ブスバー構成部材1、11をそれぞれ突合せ方向に押すことにより、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士を両端面2、12間に配置された導電性接着剤層20によって接着する。
【0109】
締結工程では、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士を導電性接着剤層20によって接着する際に又は接着した後で、換言すると導電性接着剤層20が硬化する前に又は硬化した後で、締結ボルト24を側壁部12xのボルト挿通孔22に挿通して凸部2dのねじ孔23に螺合させる。これにより、凸部2dと凹部12dの各側壁部12xとを互いに厚さ方向H(即ち係合方向)に締結ボルト24によって緊結状態に且つ凸部2dが凹部12dに圧入された状態に締結する。
【0110】
而して、本第1変形形態のブスバー30Bでは、一方のブスバー構成部材1の端面2の凸部2dが他方のブスバー構成部材11の端面12の凹部12dに嵌合されることにより、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士が厚さ方向Hに互いに係合しおり、すなわち凸部2dと凹部12dの各側壁部12xとが厚さ方向H互いに係合している。そのため、地震等の外力が各ブスバー構成部材1、11に加わった場合であっても、各端面2、12の位置ずれを生じ難くすることができる。
【0111】
しかも、凸部2dと凹部12dの各側壁部12xとが互いに厚さ方向H(即ち係合方向)に緊結状態に締結されていることにより、凸部2dと凹部12dの各側壁部12xとの相互対向面部2y、12y同士が密着している。そのため、両ブスバー構成部材1、11間の電気抵抗を確実に小さくすることができる。
【0112】
その上、凸部2dと凹部12dの各側壁部12xとが、凸部2dが凹部12dに圧入された状態に締結されていることにより、凸部2dと凹部12dの各側壁部112xとの相互対向面部2y、12y同士が非常に強く密着している。そのため、両ブスバー構成部材1、2間の電気抵抗を更に確実に小さくすることができる。
【0113】
さらに、凸部2dと凹部12dの各側壁部12xとが、凸部2dが凹部12dに圧入された状態に締結されていることにより、凸部2dの先端面部2zと凹部12dの底面部12zとが強く密着しているので、両ブスバー構成部材1、11間の電気抵抗をより確実に小さくすることができる。ここで、上述したように、凸部2dの先端面部2zと凹部12dの底面部12zとには、それぞれ冷却水通路開口部5a、15aが配置されている。したがって、凸部2dの先端面部2zと凹部12dの底面部12zとが強く密着することにより、凸部2dの先端面部2zと凹部12dの底面部12zとの間に冷却水が浸入するのを確実に防止することができ、もって両端面2、12間の隙間腐食を確実に防止することができる。
【0114】
さらに、締結ボルト24は、凸部2dと凹部12dの各側壁部12xとを互いに厚さ方向H(即ち係合方向)に締結するものであるから、必ずしも各ブスバー構成部材1、11に図15に示したような側方突出状のボルト締結用フランジ部(101a、111a)を設ける必要がない。これにより、ブスバー30Bを狭い空間内に配置する際にフランジ部が他の部材と干渉するのを防止することができるし、また、複数個のブスバー30Bを互いに近接して配置することができ、もってブスバー30Bの設置スペースについて省スペース化を図ることができる。
【0115】
図7は、上記実施形態のブスバー及びその製造方法における第2変形形態を説明する図である。
【0116】
本第2変形形態のブスバー30Cでは、図4〜6に示した上記第1変形形態のブスバー30Bにおいて、一方のブスバー構成部材1と他方のブスバー構成部材11とが、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士の接着部10だけではなく、複数個(本実施形態では2個)の迂回導電路用導電性部材25を介して互いに電気的に補助的に接続されている。導電性部材25は、多数の金属線(例:銅線)で形成されたフレキシブルな帯状部材からなる。そして、導電性部材25の一端部が一方のブスバー構成部材1の外周面に固定ボルト26で固定されるとともに、他端部が他方のブスバー構成部材11の外周面に固定ボルト26で固定されている。これにより、導電性部材25は、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士の接着部10をその外側から跨いた状態に配置されており、即ち接着部10を迂回するように配置されている。
【0117】
次に、本第2変形形態のブスバー30Cの製造方法について上記第1変形形態とは異なる点を中心に以下に説明する。
【0118】
本第2変形形態のブスバー30Cの製造方法は、上記第1変形形態のブスバー30Bの製造方法における全工程と、更に、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士の接着部10を迂回するように導電性部材25を配置することにより、両ブスバー構成部材1、11同士を導電性部材25を介して電気的に接続する導電性部材配置工程と、を含んでいる。
【0119】
この導電性部材配置工程では、導電性部材25の一端部を一方のブスバー構成部材1の外周面に固定ボルト26で固定するとともに、他端部を他方のブスバー構成部材11の外周面に固定ボルト26で固定する。これにより、導電性部材25を、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士の接着部10をその外側から跨いで配置し、即ち接着部10を迂回するように配置する。
【0120】
而して、本第2変形形態のブスバー30Cでは、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士の接着部10を迂回するように配置された導電性部材25を介して、両ブスバー構成部材1、11同士が電気的に接続されているので、もし仮に両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士が不慮に分離した場合であっても、両ブスバー構成部材1、11間の導電性を導電性部材25によって確保することができる
図8〜11は、上記実施形態のブスバー及びその製造方法における第3変形形態を説明する図である。
【0121】
本第3変形形態のブスバー30Dでは、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12全体は、それぞれ、長さ方向Lに対して垂直に形成されている。そして、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士が、両端面2、12間に配置された所定の接着剤層20a、21により接着されている。このブスバー30Dの構成について詳述すると次のとおりである。
【0122】
両ブスバー構成部材1、11の端面2、12間には、各端面2、12の外周縁部の位置と冷却水通路開口部5a、15aの周縁部の位置とに、外気及び水の浸入を防止する防気性・防水性接着剤層(クロスハッチングで示す)21がそれぞれ配置されるとともに、各端面2、12の外周縁部と冷却水通路開口部5a、15aの周縁部との間の位置に、導電性接着剤層20として導電性及び嫌気性を有する導電性・嫌気性接着剤層(ドットハッチングで示す)20aが配置されている。そしてこの状態で、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士が両防気性・防水性接着剤層21、21と導電性・嫌気性接着剤層20aとによって接着されている。詳述すると、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12の外周縁部同士がその全周に亘って防気性・防水性接着剤層21によって接着されており、また両ブスバー構成部材1、11の端面2、12における冷却水通路開口部5a、15aの周縁部同士がその全周に亘って防気性・防水性接着剤層21によって接着されており、さらに、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12における外周縁部と冷却水通路開口部5a、15aの周縁部との間の中間部同士が導電性・嫌気性接着剤層20aによって接着されている。
【0123】
防気性・防水性接着剤層21を形成する防気性・防水性接着剤としては、例えば、市販されているペースト状の防水性接着剤(例:エポキシ樹脂系防水性接着剤、ゴム系防水性接着剤)を用いることができる。その理由は、市販されている防水性接着剤は硬化すると、一般に、水の浸入だけではなく外気(空気)の浸入も防止するように作用するからである。なお、この防気性・防水性接着剤21は導電性を有していない。
【0124】
導電性・嫌気性接着剤層20aを形成する導電性・嫌気性接着剤としては、例えば、市販されているペースト状の嫌気性接着剤に導電性粒子を混合含有させて嫌気性接着剤に導電性を付与したものを用いることができる。導電性粒子としては、金、銀、銅、カーボン、カーボンナノチューブ、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、スズ、鉛及びビスマスからなる群より選択された1つ又は2つ以上を用いることが望ましい。また、導電性粒子の平均粒径は例えば1〜50μmの範囲に設定されるのが望ましい。
【0125】
両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士を接着する工程(即ち接着工程)について説明すると、次のとおりである。
【0126】
図8に示すように、両ブスバー構成部材1、11のうち少なくとも一方のブスバー構成部材の端面の所定部位に所定の接着剤を付着させる。本実施形態では、所定の接着剤を両ブスバー構成部材1、11の端面2、12にそれぞれ付着させる。詳述すると、各ブスバー構成部材1、11の端面2、12の外周縁部にその全周に亘ってペースト状の防気性・防水性接着剤を付着させて防気性・防水性接着剤層21を形成する。また、各ブスバー構成部材1、11の端面2、12における冷却水通路開口部5a、15aの周縁部にその全周に亘ってペースト状の防気性・防水性接着剤を付着させて防気性・防水性接着剤層21を形成する。また、各ブスバー構成部材1、11の端面2、12における外周縁部と冷却水通路開口部5a、15aの周縁部との間の中間部にペースト状の導電性・嫌気性接着剤を付着させて導電性・嫌気性接着剤層20aを形成する。
【0127】
次いで、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士を互いに冷却水通路5、15同士が連通するように突き合わせることにより、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士を両防気性・防水性接着剤層21、21と導電性・嫌気性接着剤層20aによって接着する。詳述すると、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12の外周縁部同士をその全周に亘って防気性・防水性接着剤層21によって接着し、また両ブスバー構成部材1、11の端面2、12における冷却水通路開口部5a、15aの周縁部同士をその全周に亘って防気性・防水性接着剤層21によって接着し、さらに、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12における外周縁部と冷却水通路開口部5a、15aの周縁部との間の中間部同士を導電性・嫌気性接着剤層20aによって接着する。
【0128】
而して、本第3変形形態のブスバー30Dでは、上述したように、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12の外周縁部同士は、防気性・防水性接着剤層21により接着されている。これにより、外気及び水が両ブスバー構成部材1、11の端面2、12間にその外側から浸入するのを防止することができる。また、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12における冷却水通路開口部5a、15aの周縁部同士は、防気性・防水性接着剤層21により接着されている。これにより、外気及び水が両ブスバー構成部材1、11の端面2、12間に冷却水通路5、15から浸入するのを防止することができ、もって両端面2、12間の隙間腐食を確実に防止できる。さらに、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12における外周縁部と冷却水通路開口部5a、15aの周縁部との間の中間部同士は、両防気性・防水性接着剤層21、21が硬化して外気が遮断されることで導電性・嫌気性接着剤層21が硬化して接着されている。この導電性・嫌気性接着剤層21によって両ブスバー構成部材1、11の端面2、12間の導電性を確保することができる。
【0129】
図12及び13は、上記実施形態の水冷式ブスバーにおける第4変形形態を説明する図である。
【0130】
本第4変形形態のブスバー30Eでは、両ブスバー構成部材1、11のうち一方のブスバー構成部材1の端面2全体は、長さ方向Lに対して傾斜して形成されている。他方のブスバー構成部材11の端面12全体は、一方のブスバー構成部材1の端面2に対応して傾斜して形成されている。そして、両ブスバー構成部材1、11の端面2、12同士が、両端面2、12間に配置された導電性接着剤層20によって接着されている。
【0131】
以上で本発明の実施形態及び幾つかの変形形態について説明したが、本発明はこれらの形態に限定されるものではなく、様々に変更可能である。
【0132】
また本発明では、締結部材は締結ボルト24であることに限定されるものではなく、その他の締結手段であっても良い。
【0133】
また本発明では、両ブスバー構成部材の端面は、幅方向Wに互いに係合する形状に形成されていても良いし、厚さ方向H及び幅方向Wの両方向に互いに係合する形状に形成されていても良い。
【0134】
また本発明では、上述したように、ブスバー構成部材の厚さ方向H及び幅方向Wは絶対的な方向ではなく互いに相対的な方向である。したがって、本発明に係る水冷式ブスバー及びその製造方法は、上記の実施形態及び幾つかの変形形態で説明したブスバー構成部材の厚さ方向H及び幅方向Wをそれぞれ幅方向及び厚さ方向に読み替えて構成しても良い。
【0135】
また、本発明に係る水冷式ブスバー及びその製造方法は、上記の実施形態及び幾つかの変形形態に適用された技術思想のうち二つ以上を組み合わせて構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明は、供給先に給電する給電路として使用される水冷式ブスバー及びその製造方法に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る水冷式ブスバーの斜視図である。
【図2】図2は、同ブスバーの断面図である。
【図3】図3は、図2中のZ部分の拡大図である。
【図4】図4は、本発明の第1変形形態に係る水冷式ブスバーの斜視図である。
【図5】図5は、同ブスバーの断面図である。
【図6】図6は、図5中のZ部分の拡大図である。
【図7】図7は、本発明の第2変形形態に係る水冷式ブスバーの斜視図である。
【図8】図8は、本発明の第3変形形態に係る水冷式ブスバーにおける2個のブスバー構成部材を分離して示す斜視図である。
【図9】図9は、同ブスバーの断面図である。
【図10】図10は、図9中のZ1部分の拡大図である。
【図11】図11は、図9中のZ2部分の拡大図である。
【図12】図12は、本発明の第4変形形態に係る水冷式ブスバーの断面図である。
【図13】図13は、図12中のZ部分の拡大図である。
【図14】図14は、本発明の一関連技術に係る水冷式ブスバーの断面図である。
【図15】図15は、本発明のもう一つの関連技術に係る水冷式ブスバーの断面図である。
【符号の説明】
【0138】
1:一方のブスバー構成部材
2:端面
2a:突出部
2c:切欠き部
2d:凸部
2x:切欠き部の側壁部
2y:対向面部
2z:凸部の先端面部(凸部の先端部)
3:異種金属置換層
5:冷却水通路
5a:開口部
10:接着部
11:他方のブスバー構成部材
12:端面
12a:切欠き部
12c:突出部
12d:凹部
12x:切欠き部の側壁部、又は、凹部の側壁部(凹部の周壁部)
12y:対向面部
12z:凹部の底面部(凹部の底部)
13:異種金属置換層
15:冷却水通路
15a:開口部
20:導電性接着剤層
20a:導電性・嫌気性接着剤層
21・防気性・防水性接着剤層
22:ボルト挿通孔
23:ねじ孔
24:締結ボルト(締結部材)
25:迂回導電路用導電性部材
30A〜30E:ブスバー
L:ブスバー構成部材(ブスバー)の長さ方向
H:ブスバー構成部材(ブスバー)の厚さ方向
W:ブスバー構成部材(ブスバー)の幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に冷却水通路が長さ方向に延びて設けられるとともに、長さ方向の端面に前記冷却水通路の開口部が形成された複数個のアルミニウム又はその合金製ブスバー構成部材を備え、
前記複数個のブスバー構成部材のうち長さ方向に互いに隣接して配置される2個のブスバー構成部材の端面が、それぞれブスバー構成部材の構成材料とは異種の金属で置換されており、
前記両ブスバー構成部材の端面同士が、互いに前記冷却水通路同士を連通させた状態にして、前記両ブスバー構成部材の端面間に配置された導電性接着剤層により接着されていることを特徴とする水冷式ブスバー。
【請求項2】
前記両ブスバー構成部材の端面には、それぞれブスバー構成部材の端面を異種金属で置換した異種金属置換層として、無電解メッキ層、電気メッキ層又ははんだメッキ層が形成されている請求項1記載の水冷式ブスバー。
【請求項3】
前記導電性接着剤層は、導電性粒子として、金、銀、銅、カーボン、カーボンナノチューブ、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、スズ、鉛及びビスマスからなる群より選択された1つ又は2つ以上を含有している請求項1又は2記載の水冷式ブスバー。
【請求項4】
前記導電性接着剤層の接着剤成分は、エポキシ樹脂系、ゴム系、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系及びビニル樹脂系からなる群より選択された1つ又は2つ以上の接着剤成分である請求項1〜3のいずれかに記載の水冷式ブスバー。
【請求項5】
前記両ブスバー構成部材の端面間において、前記端面の外周縁部の位置と前記開口部の周縁部の位置とに外気及び水の浸入を防止する防気性・防水性接着剤層がそれぞれ配置されるとともに、前記端面の外周縁部と前記開口部の周縁部との間の位置に前記導電性接着剤層として導電性及び嫌気性を有する導電性・嫌気性接着剤層が配置されており、
前記両ブスバー構成部材の端面同士が、前記防気性・防水性接着剤層と前記導電性・嫌気性接着剤層とにより接着されている請求項1〜4のいずれかに記載の水冷式ブスバー。
【請求項6】
前記両ブスバー構成部材同士は、両ブスバー構成部材の端面の少なくとも一部同士が密着した状態に締結部材によって締結されている請求項1〜5のいずれかに記載の水冷式ブスバー。
【請求項7】
前記両ブスバー構成部材の端面は、厚さ方向及び幅方向のうち少なくとも一方向に互いに係合する形状に形成されている請求項1〜6の水冷式ブスバー。
【請求項8】
前記両ブスバー構成部材のうち一方のブスバー構成部材の端面の端部には、長さ方向に突出した突出部が一体形成されるとともに、他方のブスバー構成部材の端面の端部には、前記突出部に対応する切欠き部が形成されており、
前記突出部が前記切欠き部に嵌め込まれることにより、前記突出部と前記切欠き部の側壁部とが厚さ方向及び幅方向のうち少なくとも一方向に互いに係合しており、
前記突出部と前記切欠き部の側壁部とが互いに係合方向に締結部材によって緊結状態に締結されている1〜7のいずれかに記載の水冷式ブスバー。
【請求項9】
前記両ブスバー構成部材のうち一方のブスバー構成部材の端面には、長さ方向に突出した凸部が一体形成されるとともに、他方のブスバー構成部材の端面には、前記凸部が嵌合される凹部が形成されており、
前記凸部の先端部と前記凹部の底部とに、それぞれ前記開口部が配置されており、
前記凸部の断面は、先細り形状であり、
前記凹部の断面は、前記凸部の断面に対応した形状であり、
前記凸部が前記凹部に嵌合されることにより、前記凸部と前記凹部の周壁部とが厚さ方向及び幅方向のうち少なくとも一方向に互いに係合しており、
前記凸部と前記凹部の周壁部とが互いに係合方向に締結部材によって緊結状態に且つ前記凸部が前記凹部に圧入された状態に締結されている請求項1〜7のいずれかに記載の水冷式ブスバー。
【請求項10】
前記導電性接着剤層はペースト状の導電性接着剤で形成されている請求項1〜9のいずれかに記載の水冷式ブスバー。
【請求項11】
前記ペースト状の導電性接着剤は、粘度が25℃で30〜1000Pa・sの範囲に設定されたものである請求項10記載の水冷式ブスバー。
【請求項12】
前記導電性接着剤層はシート状の導電性接着剤で形成されている請求項1〜9のいずれかに記載の水冷式ブスバー。
【請求項13】
前記導電性接着剤層が加熱されることにより、前記両ブスバー構成部材の端面同士が接着されている請求項1〜12のいずれかに記載の水冷式ブスバー。
【請求項14】
前記両ブスバー構成部材の端面同士の接着部を迂回するように配置された迂回導電路用導電性部材を介して、前記両ブスバー構成部材同士が電気的に接続されている請求項1〜13のいずれかに記載の水冷式ブスバー。
【請求項15】
内部に冷却水通路が長さ方向に延びて設けられるとともに、長さ方向の端面に前記冷却水通路の開口部が形成された複数個のアルミニウム又はその合金製ブスバー構成部材の各端面を、ブスバー構成部材の構成材料とは異種の金属で置換する異種金属置換工程と、
前記異種金属置換工程の後で、長さ方向に互いに隣接して配置される2個のブスバー構成部材の端面同士を、互いに前記冷却水通路同士を連通させた状態にして、前記両ブスバー構成部材の端面間に配置された導電性接着剤層により接着する接着工程と、
を含むことを特徴とする水冷式ブスバーの製造方法。
【請求項16】
前記接着工程において前記両ブスバー構成部材の端面同士を接着する際に又は接着した後で、前記両ブスバー構成部材同士を、両ブスバー構成部材の端面の少なくとも一部同士が密着する状態に締結部材によって締結する締結工程を含んでいる請求項15記載の水冷式ブスバーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−295295(P2009−295295A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144741(P2008−144741)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】