説明

水処理のためのシステム及び方法

水処理のための電気化学的装置及び方法が開示される。電気脱イオン化装置は、ホウ素選択性樹脂のようなイオン選択性媒体を収容する1つ以上の区画を、備えていてもよい。プロセス水を処理するために、現場での標的イオンの循環的吸着及び媒体の再生が利用されるが、これらは、電気化学的装置内の様々なpH条件の変化によって推進することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理のためのシステム及び方法に関するものであり、とりわけ、海水流から1つ以上の標的種を除去するのに有効な電子化学的システム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印加電界で水処理をして、水中の望ましくないイオン種を除去することが可能なシステムが知られている。これらの電気化学的装置は、これらに限られないが、脱イオン水のような浄化水の生成に従来用いられている電気透析及び電気脱イオン化装置を、含む。
【0003】
これらの装置内には、イオン選択膜によって分離された濃縮及び希釈区画が設けられている。電気脱イオン化装置には、通常、電気的活性な半透過性の陰イオン交換膜及び陽イオン交換膜が交互に含まれている。膜と膜との間の空間は、入口と出口とを備えた液流区画を画成するように構成されている。これらの区画には、典型的には、イオン移動を促進するために、イオン交換樹脂のような、吸着媒体が含まれている。電極を介して負荷される印加電界が、それぞれの対極に引き付けられた溶解イオンを、陰イオン及び陽イオン交換膜を通って移動させる。この結果、一般に、希釈区画の液体ではイオンが減少し、濃縮区画の液体では移動イオンが豊富になる。典型的には、希釈区画内の液体は望まれるが(「生成物」液)、濃縮区画内の液体は廃棄される(「廃棄」液)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の各側面は、一般に、水処理のための電気化学的装置及びシステム並びに方法に関するものである。
【0005】
1つ以上の側面に従って、海水の処理方法が開示される。この方法は、塩化物イオンとホウ素含有化合物とを含む海水を、少なくとも電動分離装置の第1の区画(ここで、この第1の区画は、樹脂床と出口とを具備する。)に導入し、電動分離装置の第1の区画から第2の区画への海水中の塩化物イオンの移動を促進し、第1の区画において海水中のホウ素含有化合物の少なくとも一部のイオン化を促進し、第1の区画の樹脂床上にイオン化ホウ素含有化合物の少なくとも一部を吸着し、第1の区画の出口で処理済水を回収することからなることができる。
【0006】
この方法は、更に、第2の区画中の第2の樹脂床に結合されたホウ素含有化合物の少なくとも一部を解放することを含んでいてもよい。いくつかの側面では、この方法は、更に、第2の区画の出口でホウ素含有流れを回収することを含んでいてもよい。処理済水のpHレベルを調整することもできる。この方法には、更に、電動分離装置に印加される電流の極性を反転することを含んでいてもよい。処理済水の中のホウ素の濃度を監視することができる。電動分離装置に印加される電流の極性を、処理済水における所定のレベルを超えるホウ素濃度の検出に応答して、反転させてもよい。いくつかの側面では、所定のレベルは約1ppmである。処理済水は、電動分離装置の第3の区画に送ることができる。いくつかの側面では、処理済水のpHレベルを監視し、所定のレベルを超える処理済水のpHレベルの検出に応答して、電動分離装置に印加される電流の極性を反転させることができる。
【0007】
1つ以上の側面に従って、電気脱イオン化装置を運転する方法が開示される。この方法は、樹脂床と出口とを具備する電気脱イオン化装置の第1の区画にホウ素含有化合物を含有してなるプロセス用水を導入し、第1の区画において塩基性pH状態を促進し、第1の区画に隣接した電気脱イオン化装置の第2の区画において酸性pH状態を促進し、第1の区画の樹脂床上にホウ酸塩イオンを吸着し、第1の区画の出口で処理済水を回収し、そして、第2の区画の出口でホウ素含有流れを回収することからなっていてもよい。
【0008】
この方法は、更に、処理済水中におけるホウ素の濃度を監視することを含んでいてもよい。電気脱イオン化装置に印加される電流の極性は、検出されたホウ素濃度に応答して、反転させることができる。いくつかの側面では、処理済水のpHレベルを調整することができる。ホウ素含有流れの回収は、第2の区画において樹脂からホウ素含有化合物を解放することを含んでいてもよい。
【0009】
1つ以上の側面に従って、ホウ素選択性樹脂床を有する第1の区画を具備した電動分離装置を含んでなる水処理システムが開示される。
【0010】
ホウ素選択性樹脂床は、シス−ジオール官能基を含有していてもよい。いくつかの側面では、電動分離装置は、海水中のホウ素濃度を約0.5〜1ppmのレベルまで低下させるように構成され配置されている。電動分離装置の第1の区画は、第1の陰イオン選択膜及び第1の陽イオン選択膜によって、少なくとも部分的に区分されていてもよい。電動分離装置は、更に、第1の陰イオン選択膜及び第2の陽イオン選択膜によって少なくとも部分的に区分された第2の区画を備えていてもよい。側面によっては、このシステムは、更に、ホウ素選択性樹脂床の下流に流体的に連通するように位置して、電動分離装置からの処理済水中のホウ素濃度を表わす測定信号を送り出すように構成されたセンサを、備えていてもよい。このシステムは、更に、センサと通じており、且つ、電動分離装置に結合された電源に対する制御信号を、少なくとも部分的に測定信号に基づいて、生じるように構成された制御装置を、備えていてもよい。側面によっては、第1の区画におけるホウ素選択性樹脂床の組成は、電動分離装置の第1の区画を通る流体流路に沿って、実質的に均一であってもよい。
【0011】
1つ以上の側面に従って、溶解種と少なくとも1つの標的種とを有する海水の処理方法が開示される。この方法は、海水源からの海水の第1の部分を、陰イオン透過膜と第1の陽イオン透過膜との間に配置された標的種吸着媒体を有する電動分離装置の減少区画に導入し、海水源からの海水の第2の部分を、陰イオン透過膜と第2の陽イオン透過膜との間に配置された標的種吸着媒体を有する電動分離装置の濃縮区画に導入し、溶解種の少なくとも一部の濃縮区画への輸送を促進し、その一方で少なくとも1つの標的種の少なくとも一部をより好ましいイオン状態に転換することからなることができる。
【0012】
いくつかの側面では、この方法は、更に、電動分離装置の中和区画(ここで、中和区画は、第2の陽イオン透過膜と第3の陽イオン透過膜によって少なくとも部分的に区分されている。)において減少区画からの水の少なくとも一部のpHを調整することを含むことができる。溶解種の少なくとも一部の濃縮区画への輸送は、減少区画及び濃縮区画に電流を印加することからなることができる。電流の印加により、電動分離装置の少なくとも1つの区画において水の分極が促進されてヒドロニウムイオンが生成され、減少区画からの水の少なくとも一部のpHの調整は、ヒドロニウムイオンの少なくとも一部の中和区画への輸送を促進することを含むことができる。側面によっては、電流の印加は、減少区画内の海水のpHを少なくとも9.2単位まで上昇させるのに十分な電流を通すことを含むことができる。中和区画には、電気活性媒体がなくてもよい。
【0013】
いくつかの側面では、電動分離装置が開示される。この装置は、第1の陽イオン選択膜と第1の陰イオン選択膜によって少なくとも部分的に区分された第1の区画、第1の陰イオン選択膜と第2の陽イオン選択膜によって少なくとも部分的に区分された第2の区画、並びに、第1及び第2の区画のうちの少なくとも一方に配置されたホウ素選択性電気活性媒体を備えることができる。
【0014】
他の側面では、電動分離装置は、更に、第2の陽イオン選択膜によって少なくとも部分的に区分された第3の区画を備えていてもよい。第3の区画は、双極膜によって少なくとも部分的に区分されていてもよい。第1の区画の出口は、第3の区画の入口に流体的に接続されていてもよい。電動分離装置の出口は、飲用水使用点に流体的に接続されていてもよい。いくつかの側面では、電気活性媒体がシス−ジオール官能基を含んでいてもよい。第3の区画に、電気活性媒体が実質的にない場合もある。少なくとも1つの側面では、電動分離装置の下流に流体的に接続されている逆浸透膜がない。少なくとももう1つの側面では、電動分離装置の下流に流体的に接続された樹脂床がない。
【0015】
更に他の側面では、電動分離装置は、更に、樹脂床の下流に流体的に連通するように位置して、電動分離装置からの処理済水中のホウ素濃度を表わす測定信号を送り出すように構成されたセンサを備えることもできる。測定信号は、検出pHレベルを含むことができる。電動分離装置は、更に、センサに通じており、且つ、少なくとも部分的に測定信号に基づいて、電動分離装置に結合された電源に対する制御信号を生じるように構成された制御装置を備えていてもよい。側面によっては、電気活性媒体は、N−メチルグルカミン官能基を含む。
【0016】
これらの典型的な側面及び実施形態の更に他の側面、実施形態、及び、利点については、詳細に後述することにする。更に、云うまでもないが、上述の情報及び下記の詳細説明の両方とも、ただ単に様々な側面及び実施形態の説明に役立つ例でしかなく、請求の範囲に記載の側面及び実施形態の性質及び特徴を理解するための概要又は骨子を示すことを意図したものである。添付の図面は、様々な側面及び実施形態を図解して、更に深い理解が得られるように取り入れられたものであり、本明細書に組み込まれて、その一部をなすものである。これらの図面は、明細書の残りの部分と共に、解説され、請求される側面及び実施形態の原理及び働きを説明するのに役立つ。
【0017】
下記では、添付の図に関連して少なくとも1つの実施形態の様々な側面について論考される。これらの図において、これらは一定の比率で描くことを意図したものではないが、それぞれの図に例示された同じか又はほぼ同じである各構成要素は、同様の参照番号で表示されている。見やすくするため、全ての図面において全ての構成要素を番号表示しているわけではない。これらの図は、例証及び説明のために示されており、本発明の範囲を定めることを意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】1つ以上の実施形態による装置の概略を例示した図である。
【図2】添付例で引用されている実験構成を示す図である。
【図3】添付例で引用されている実験構成を示す図である。
【図4】添付例で引用されている実験構成を示す図である。
【図5】1つ以上の実施形態による添付例において検討されたデータを表わす図である。
【図6】様々なpHレベルにおけるホウ素種間の平衡関係を表わした図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1つ以上の実施形態が、電動分離装置を含む電気化学的装置及び水処理方法に関連している。これらの装置及び方法は、一般的に、水流から1つ以上の標的種を除去するのに有効であると思われる。1つの非限定実施形態において、これらの装置及び方法は水からホウ素を有効に除去することができる。これらの装置及び方法は、少なくとも1つの実施形態において、脱塩に利用することもできる。本書で更に詳述するように、1つ以上の実施形態では、酸及び/又は塩基を生成して、水処理用の吸着媒体の循環的充填及び再生を促進する。この電気化学的処理への新規アプローチは、特定の標的種を除去するのに、膜透過イオン輸送に依存して電気化学的分離を行う従来の電気化学的技術に比べて、より有効である可能性がある。有利なことに、1つ以上の実施形態は、飲用、潅漑、及び、例えば半導体製作といった、工業用途等の、下流の使用点に送るのに十分な品質の生成物流れを提供することができる。生成物流れのpHレベルは、1つ以上の実施形態に従って、現場で中和又は調整することもできる。
【0020】
本書で論考されるシステム及び方法の実施形態は、応用に際して下記説明に記載の又は添付の図面に例示の構成要素の構成及び配置の細部に制限されるものではないことを認識すべきである。これらのシステム及び方法は、他の実施形態で実施することが可能であり、様々なやり方で実践又は実施することができる。具体的な実施例は、本書では例証のためだけに示されており、制限を意図するものではない。とりわけ、任意の1つ以上の実施形態に関連して論じられる作用、要素及び特徴は、任意の他の実施形態における同様の役割から除外されるように意図されたものではない。また、本書で用いられる表現及び用語は説明のためのものであって、制限とみなすべきではない。
【0021】
1つ以上の実施形態によれば、これらの装置及び方法には一般に水処理のための電気的分離技術を伴う可能性がある。電気脱イオン化装置のような電気化学的装置は、一般に、輸送に影響を及ぼし及び/又は誘発する電界を利用して、液体の1つ以上の成分、例えば、その中に溶解及び/又は懸濁しているイオンを分離することができ、或いは、液体中に溶解及び/又は懸濁している種に移動性を与えることによって、液体から種を少なくも部分的に分離又は除去することができる。こうした液体中の1つ以上の種は、特定の側面に関して、「標的」種とみなすことができる。
【0022】
1つ以上の実施形態によれば、本書で更に詳細に論じられるように、プロセス流は、電気化学的装置の少なくとも1つの区画に導入して、処理してもよい。プロセス流は、1つ以上の標的種又は標的イオンを含んでいてもよい。標的種の幾つかは、電気化学的装置内で生成される酸又は塩基の前駆物質であってもよい。従って、プロセス流は、酸又は塩基の前駆物質源であってもよい。前駆物質は、一般にプロセス流中に存在する1つ以上のイオンを含んでいてもよい。少なくともいくつかの実施形態では、プロセス流中でイオンを解離させることができる。プロセス流から1つ以上の標的種を除去するのが望ましいこともある。1つ以上の実施形態によれば、標的種のイオン状態を操作して、電気化学的装置によるその除去を促進することができる。例えば、標的種をその種の望ましいイオン状態に転換して、その除去を促進することができる。
【0023】
1つ以上の実施形態によれば、プロセス流は、一般に、処理のために電気化学的装置に供給可能な水流からなっていてもよい。いくつかの実施形態では、プロセス流には一般に塩溶液からなっていてもよい。塩溶液は、単一塩種、又は、例えば海水中に存在するような、塩種混合物を含有していてもよい。少なくとも1つの実施形態では、プロセス流は、非飲用水からなっていてもよい。飲用水の全溶解固形物(TDS)含有量は、典型的には、約1,000ppm未満である。実施形態によっては、飲用水のTDS含有量が約500ppm未満の場合もある。非飲用水の例としては、海水又は塩水、汽水、生活雑排水及びある種の工業用水が含まれる。プロセス流は、塩化物、硫酸塩、臭化物、珪酸塩、ヨウ化物、リン酸塩、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、硝酸塩、砒素、リチウム、ホウ素、ストロンチウム、モリブデン、マンガン、アルミニウム、カドミウム、クロム、コバルト、銅、鉄、鉛、ニッケル、セレン、銀及び亜鉛のような標的種を含んでいてもよい。1つ以上の実施形態によれば、本発明は、源水に溶質混合物が含まれる海水又は汽水の処理方法を対象とする。いくつかの実施形態では、二価又は他の多価イオンの濃度に比べて、一価イオンの濃度が高くてもよい。本書での海水への言及は、一般に他の形態の非飲用水にも当てはまる。
【0024】
用途によっては、水中におけるホウ素種の濃度を、農業用途及び/又は人間による消費に適すると考えられるレベルまで、低下させるのが重要又は望ましい場合がある。例えば、ホウ素種の所望の濃度は、約1ppm未満とするのが望ましい場合がある。場合によっては、ホウ素種の濃度は、政府及び/又は保健機関が提案するレベル近辺か又はそれ未満であることが望ましいこともある。例えば、ホウ素濃度は、世界保健機関が提案するレベル、約0.5ppm、近辺か又はそれ未満とすることができる。実際、用途によっては、処理済水中のホウ素濃度は、好ましくは、約0.4ppm未満である。海水は、高レベルのホウ素、例えば約1〜約4ppm、を含んでいる場合が多いので、この目標となるホウ素の推奨又は提案レベルは、従来の脱塩プロセスを利用したのでは、達成するのが困難である可能性がある。好都合なことには、本発明のシステム及び技術を利用すると、供給水中のホウ素種濃度を許容レベルまで低下させることが可能になる。実際のところ、本発明のいくつかの実施形態は、供給水流中のホウ素濃度を約4.6ppmから約0.5ppm未満に低下させるシステム及び技術を対象としている。
【0025】
本発明のいくつかの側面は、とりわけ電気脱塩システム又は他の電気化学的システムを利用した、海水及び他の非飲用水を浄化するための方法及び装置に関する。電気化学的装置は、本書で更に論じられる電気脱イオン化(「EDI」)を伴ってもよい。電気化学的技術は、連続脱イオン化、充填セル電気透析、イオン交換樹脂を用いた電気透析(electrodiaresis)及び電流反転電気透析といったプロセスを伴ってもよい。これらの技術は、圧力駆動膜システム及び/又は他の水処理システムと組み合わせることができる。本書で用いられる限りにおいて、「浄化」は、全溶解固形物含有量の減少に関し、場合により、浄化水が飲用可能となっており、これらに限らないが、人間及び動物の消費、潅漑及び工業用途のような真水用途に利用することが可能なレベルにまで、源水中の懸濁固体、コロイド分並びにイオン化及び非イオン化不純物の濃度を、低下させることに関する。脱塩は、海水から塩が除去されるタイプの浄化である。いくつかの側面において、本発明は海水の脱塩に関する。供給水又は処理すべき水は、約3,000ppm〜約40,000ppm又はそれ以上のTDS含有量を有する供給源を始めとする様々な供給源からのものであってよい。供給水は、例えば、海洋からの海水、汽水、生活雑排水、工業廃水及び油入り回収水であってよい。供給水は、高レベルの一価塩、二価及び多価塩並びに有機種を含有していてもよい。本発明の注目すべき側面には、海水から構成されるか又は実質的に海水から構成されるプロセス水又は供給水の処理又は脱塩方法が含まれる。
【0026】
電気化学的装置における供給水処理に先立って、様々な前処理手法を用いることができる。例えば、スケール生成又は膜汚れによるような任意の段階又は装置の妨げになるか又はその効率を低下させる可能性のある固形物又は他の物質を含んでいる可能性のある供給水に、前処理技術を利用することができる。随意の初期処理を施して、懸濁物質、コロイド物質及び/又は高分子量の溶質の少なくとも一部を除去することができる。前処理プロセスは、EDI装置の上流で実施することが可能であり、例えば、粒子濾過、砂濾過、炭素濾過、限外濾過、ナノ濾過、クロスフロー精密濾過のような精密濾過、それらの組合せ、及び、粒子の減少を対象とした他の分離方法を含むことができる。供給水のpH及び/又はアルカリ度に対する調整は、例えば、酸、塩基若しくは緩衝剤の添加又はエアレーションによって、実施することもできる。任意の前処理操作の後に電気化学的分離を続けて、所望の最終純度を備えた水を提供することができる。
【0027】
1つ以上の実施形態によれば、水処理システムは、1つ以上の電気化学的装置を含むことができる。電気分離装置又は電動分離装置の非限定例には、電気透析及び電気脱イオン化装置が含まれる。「電気脱イオン化」という用語には、当該技術において用いられているその通常の定義が与えられる。典型的には、これらの例示的な装置内には、陰イオン選択膜及び陽イオン選択膜のような選択的透過性を有する媒体によって分離された濃縮区画及び希釈区画が設けられている。これらの装置内では、印加された電場によって、イオン化可能種、溶解イオンが選択的透過性媒体、即ち、陰イオン選択膜及び陽イオン選択膜、を通って移動し、その結果、希釈区画内の液体ではイオンが減少し、濃縮区画内の液体では輸送された移動イオンが豊富になる。実施形態によっては、電気化学的装置は、1つ以上の電気脱イオン化ユニットを備えていてもよい。少なくとも1つの実施形態では、電気化学的装置は、実質的に、1つ以上の電気脱イオン化ユニットから構成することができる。
【0028】
電気脱イオン化は、イオン輸送に影響する電気的活性媒体及び電位を利用して、水から1つ以上のイオン化種又はイオン化可能種を、除去し又は少なくとも減少させるプロセスである。電気的活性媒体は、一般に、イオン種及び/又はイオン化可能種の収集及び放出を交互に行う働きをし、場合によっては、イオン又は電子置換メカニズムによって、連続的であってもよいイオン輸送を、促進する働きをする。EDI装置は、恒久的に又は一時的に荷電した電気化学的活性媒体を備えていてもよく、バッチ式に、間欠的に、連続的に、及び/又は、反転極性モードでも、運転することができる。EDI装置を操作して、特に性能を達成し又は向上させるように工夫された1つ以上の電気化学的反応を促進することができる。更に、こうした電気化学的装置は、半透過性、選択的透過性イオン交換膜又は双極膜のような、電気的活性膜を備えてもよい。連続的電気再生式脱イオン(CEDI)装置は、水の浄化を連続して進めることが可能であり、それと同時にイオン交換材料を連続して再装填するやり方で作動する、当業者には既知のEDI装置である。例えば、それぞれ、あらゆる目的で参考までに本書でそっくりそのまま援用されている米国特許第6,824,662号、米国特許第6,514,398号、米国特許第6,312,577号、米国特許第6,284,124号、米国特許第5,736、023号、米国特許第5,558,753号、及び、米国特許第5,308,466号を参照されたい。CEDI技術は、連続脱イオン化、充填セル電気透析又はイオン交換樹脂を用いた電気透析(electrodiaresis)のようなプロセスを含むことができる。制御された電圧及び塩分条件下において、CEDIシステムでは、水分子を分裂させて、装置内のイオン交換媒体を再生する水素又はヒドロニウムのイオン又は種、及び、水酸化物又はヒドロキシルのイオン又は種を生成し、従って、捕捉種のそこからの解放を促進することが可能になる。このようにして、イオン交換樹脂の化学的再充填を必要とせずに、処理すべき水流を連続浄化することが可能になる。
【0029】
電気透析(ED)装置は、ED装置が膜間に電気活性媒体を含んでいないという点を除いて、CEDIと同様の原理で動作する。電気活性媒体がないので、電気抵抗の増大のため、低塩度の供給水に対するEDの働きが妨げられる可能性がある。また、高塩度の供給水に対してEDが働く結果として電流消費が増大する可能性があるため、ED装置は、これまで少なくとも中塩度の供給水に対して、最も有効に利用されてきた。EDベースのシステムの場合、電気活性媒体がないので、水の分裂は非効率的であり、こうした方式での動作は一般に回避される。
【0030】
CEDI及びED装置の場合、複数の隣接セル又は区画は、典型的には、正荷電種又は負荷電種の通過を許すが典型的には両方の通過は許さない選択的透過性膜によって、分離されている。こうした装置において、希釈又は減少区画の間には、典型的には、濃縮又は濃化区画が配置されている。水が減少区画を貫流すると、イオン種又は他の荷電種は、典型的には、直流(DC)電界のような電界に影響されて濃縮区画に引き込まれる。正の荷電種は、典型的には多重の減少及び濃縮区画の積み重なりの一方の端部に配置された陰極に、引き寄せられ、負の荷電種は、同様に、典型的には区画の積み重なりの反対側の端部に配置されたこうした装置の陽極に、引き寄せられる。電極は、典型的には、減少区画及び/又は濃縮区画との流体的連通から、通常、部分的に分離された電解液区画に収容されている。一旦、濃縮区画に入ると、典型的には、荷電種は、濃縮区画を少なくとも部分的に区分する選択的透過性膜の障壁によって、捕捉される。例えば、陰イオンは、典型的には、濃縮区画から更に陰極に向かって移動するのを、陽イオン選択膜によって阻止される。一旦、濃縮区画に捕獲されると、捕捉荷電種は、濃縮流中で除去することが可能になる。
【0031】
CEDI及びED装置において、DC電界は、典型的には、電極(陽極又は正極及び陰極又は負極)に加えられる電圧及び電流の供給源からセルに印加される。電圧及び電流供給源(「電源」と総称する。)は、それ自体が、AC電源又は、例えば太陽エネルギ、風力若しくは波力から得られる電源、のような様々な手段によって電力供給を受けることができる。電極/液体界面において、膜及び区画を通るイオン移動を開始し及び/又は促進する電気化学的半電池反応が生じる。電極/界面で発生する特定の電気化学的反応は、電極アセンブリを収容する特殊区画内の塩の濃度によって、ある程度、制御することができる。例えば、塩化ナトリウムの濃度が高い陽極電解液区画への供給流は、塩素ガス及び水素イオンを生成する傾向があり、その一方で、陰極電解液区画へのこうした供給流は、水素ガス及び水酸化物イオンを生成する傾向がある。一般に、陽極区画で生じた水素イオンは、塩化物イオンのようなフリー陰イオンと会合して、電荷の中和を保ち、塩酸溶液を生成することになり、同様に、陰極区画で生じた水酸化物イオンは、ナトリウムのようなフリー陽イオンと会合して、電荷の中和を保ち、水酸化ナトリウム溶液を生成することになる。本発明の更なる実施形態によれば、生成された塩素ガス及び水酸化ナトリウムのような電極区画の反応生成物は、消毒、膜洗浄及び膜汚れ除去のため、及び、pH調整のために、必要に応じて、プロセスにおいて利用することができる。
【0032】
1つ以上の実施形態によれば、電気化学的装置は、電極を通じて区画に電界を印加することによって運転することができる。装置の作動パラメータは、所望の特性をもたらすように変えることができる。例えば、印加された電界は、1つ以上の特徴又は条件に応じて変えることができる。従って、電界強度は、装置又はそのプロセス流の特性に応じて、一定に保ってもよく、変化させてもよい。実際のところ、例えば、イオン又は他の種のpH、抵抗率、濃度といった1つ以上のセンサ測定値に応じて、1つ以上の作動パラメータを変えることができる。電極を通じて加えられる電界は、イオンのような荷電種の、1つの区画からもう1つの区画へのイオン選択膜を介した移動を促進する。
【0033】
1つ以上の実施形態によれば、電動分離装置の典型的な構成には、少なくとも1つの電極対が含まれ、それを通じて印加される、電界のような、力が、1つ以上のイオン種又はイオン化可能種の輸送又は移動を促進する。この装置は、従って、少なくとも1つの陽極と少なくとも1つの陰極を備えることができる。これらの電極は、それぞれ独立に、装置内に電界を生じさせるのに適した任意の材料から、作ることができる。場合によっては、電極材料は、電極が、例えば、重大な腐食又は劣化を伴うことなく長期間に亘って用いられ得るように選択することができる。適合する電極材料及び構成は、当該技術において周知である。電気化学的装置の電極は、一般に、炭素、白金、ステンレス鋼又はチタンのような材料で作られたベース又はコアを備えることができる。電極は、例えば、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、白金族金属、白金族金属酸化物又はこれらの組合せ若しくは混合物のような、様々な材料で被覆することができる。電極は、典型的には、ヒドロニウムイオン及び水酸化物イオンの生成を促進する。これらのイオンは、各種供給流中のイオンと共に、電位によって、電気化学的装置を横切って輸送される。イオンの流れは、モジュールに適用される電流に関連する。
【0034】
いくつかの実施形態では、電界は装置内の液流に対して実質的に垂直に印加される。区画全域に実質的に均一に電界を印加して、その結果、区画全域に実質的に均一で実質的に一定の電界が生じ、或いは場合によっては、不均一に電界を印加して、その結果、区画全域に不均一な電界密度が生じる。本発明の実施形態の中には、運転中に電極の極性を反転して、装置内の電界の方向を反転するものもある。
【0035】
印加電界によって、水の水素イオン又はヒドロニウムイオン並びにヒドロキシルイオンへの解離を促進することができる。印加電界は、電気化学的装置内における1つ以上のイオンの移動を促進することもできる。存在する水素イオン、ヒドロキシルイオン及び/又は1つ以上の標的イオンが移動することができる。イオン移動は、電気化学的装置の1つ以上のイオン選択膜を通して行われてもよい。イオンは、例えばそれらの電荷又は性質に基づいて、1つ以上の区画において濃縮され、又は捕捉され得る。例えば、1つの区画では酸性生成物が濃縮され、もう1つの区画では塩基性生成物が濃縮され得る。電気化学的装置内の様々なイオン選択膜の配向及び性質が、電気化学的装置内におけるイオン移動、並びに、様々な区画内で形成され得る生成物の型に影響を及ぼし得る。発生した生成物の流れは、様々な区画に付随した出口、例えば、生成物溶液出口及び/又は廃棄物溶液出口、を通って電気化学的装置から流出することができる。
【0036】
1つ以上の実施形態によれば、電気化学的装置は、第1の区画及び第2の区画のような1つ以上の区画を含むことができる。電気化学的分離技術を対象とした側面に関する1つ以上の実施形態の場合、電動分離装置は、1つ以上の減少区画と1つ以上の濃縮区画を含むことができる。区画又はセルは、一般に、それに導入される流体のタイプ及び/又は組成に関して機能的に異なってよい。しかしながら、構造の相違によって各種区画を区別することもできる。実施形態によっては、装置は、1つ以上のタイプの減少区画及び1つ以上のタイプの濃縮区画を含むことができる。濃縮区画であるか減少区画であるかといった所与の区画の性質は、一般に、区画の境界をなす膜のタイプ並びに区画に供給される供給流のタイプによって知ることができる。隣接区画の性質は、互いに影響する可能性がある。実施形態によっては、区画は、電解区画であってよい。例えば、減少区画を電解区画と呼ぶことができる。実施形態によっては、濃縮区画を電解区画と呼ぶことが可能な場合もある。実施形態によっては、水の分裂が、一般に、電解区画で生じる。電解区画は、水分裂セルであってもよい。他のイオン相互作用が電解区画において生じる場合もある。
【0037】
典型的には、膜が隣接区画間の境界を形成する。実施形態によっては、膜は、イオン選択膜、イオン透過膜又は選択性透過膜であってよい。こうした膜は、一般に、特定タイプの電荷のイオンが膜を通過するのを許す一方、異なる、電荷又は価数又は電荷のタイプを有するイオンの通過は妨げ又は阻止することができる。従って、1つ以上の区画は、1つ以上のイオン選択膜によって少なくとも部分的に区分することができる。複数の区画は、典型的には、電気化学的装置内に積重体として配置することができる。減少区画は、一般に減少区画スペーサによって画成され、濃縮区画は、一般に濃縮区画スペーサによって画成される。組み立てられた積重体は、典型的には、各端部でエンドブロックによって境界が形成され、典型的には、ナットで固定可能なタイロッドを用いて組み立てられる。或る実施形態では、区画には、陽イオン選択膜及び陰イオン選択膜が含まれ、これらは、典型的には、スペーサの両側の周辺に対して周辺密封される。陽イオン選択膜及び陰イオン選択膜は、典型的には、イオン交換粉末、ポリエチレン粉末結合剤及びグリセリン潤滑剤を含んでいる。実施形態によっては、陽イオン及び陰イオン選択膜は不均質膜である。これらは、ポリオレフィンベースの膜又は他のタイプの膜であってよい。それらの膜は、典型的には、熱及び圧力を用いる熱可塑性プロセスによって押出し加工され、複合シートを形成する。実施形態によっては、日本の徳山曹達から市販されている均質膜を用いることができる。1つ以上の選択性透過膜は、任意のイオン選択膜、中性膜、サイズ排除膜であってよく、また、1つ以上の特定イオン又は1つ以上の特定クラスのイオンに対して特に不透過性の膜であってもよい。場合によっては、交番する一連の陽イオン選択膜及び陰イオン選択膜が、電動分離装置内で用いられることもある。イオン選択膜は、少なくとも1つのイオンをもう1つのイオンに対してよりも選択的に通過させる任意の適合する膜であってもよい。
【0038】
実施形態の1つでは、複数の区画について、1つ以上のイオン選択膜「c」及び「a」によって、境界を形成し、分離し、又は少なくとも部分的に区分することができる。実施形態によっては、イオン選択膜a及びcは、陰イオンに対して陽イオンを優先的に通過させる陽イオン選択膜(「c」として表示)と、陽イオンに対して陰イオンを優先的に通過させる陰イオン選択膜(「a」として表示)の交番する一連の膜として配置することができる。別の望ましい実施形態の場合、「c c a c」又は「a a c a」といった配列を用いることもできるが、これについては、更に詳細に後述する。隣接区画は、例えば隣接イオン選択膜を介して、その間がイオン的に通じているものとみなすことができる。遠位区画も、例えばそれらの間の付加区画を介してイオン的に通じているものとみなすことができる。
【0039】
電気脱イオン化装置は、装置内の1つ以上の区画に固形「媒体」(例えば、イオン交換媒体のような電気活性媒体又は吸着媒体)を含むことができる。電気活性媒体は、典型的には、イオン輸送のための経路を形成し及び/又は選択膜間における導電率の増したブリッジとして機能して、装置の区画内におけるイオンの移動を促進する。媒体は、一般に、例えば吸着/脱離メカニズムによって、イオン種及び/又は他の種の収集又は放出を行なうことができる。媒体は、永久及び/又は一時的電荷を有していてもよく、場合によっては、電気脱イオン化装置の性能、例えば、分離、化学吸着、物理吸着及び/又は分離効率、を実現し又は向上させるように工夫された電気化学的反応を促進する働きをすることもできる。場合によっては、媒体の少なくとも一部が、1つ以上の標的種と結合するペンダント官能基を有する。こうした官能基は、1つ以上の標的種の吸着を促進することが望ましい。より望ましい官能基には、電気活性媒体上での1つ以上の標的種の可逆性吸着及び脱離に適応する官能基が含まれる。更に望ましい実施形態には、少なくとも1つの条件又は状態下において1つ以上の標的種を吸着し、異なる条件又は状態下において前記1つ以上の標的種のうちの少なくとも1つを脱離する官能基が関与する。吸着は、イオン的に、共有結合的に又は化学吸着によって実施することができる。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態に従って利用できる媒体の例には、これらに限られないが、粒子、繊維及び膜の形態をなすイオン交換媒体、樹脂及びキレート化剤が含まれる。こうした材料は、当該技術において公知であり、市場で容易に入手できる。本発明の多様な実施形態のうちの任意の1つ以上において、上述の形態の任意の組合せを利用することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、用いられる媒体は、一般に、1つ以上のイオンの有効な良導体であってもよい。他の実施形態では、用いられる媒体は、一般に、1つ以上のイオンの不良導体であってもよい。少なくとも1つの実施形態では、良伝導性媒体と不良伝導性媒体との混合物といった、混合媒体を利用することができる。実施形態によっては、不活性成分を有する電気活性媒体床が関与する。
【0042】
1つ以上の実施形態によれば、電気分離装置の1つ以上の区画には、吸着媒体、例えばイオン交換媒体、を充填することができる。一般に、媒体の少なくとも一部はイオン選択性であってもよい。実施形態によっては、イオン交換媒体には、陽イオン交換樹脂、陽イオンを選択的に吸着する樹脂、又は、陰イオン交換樹脂、陰イオンを選択的に吸着する樹脂、不活性樹脂、並びに、それらの混合物といった樹脂が含まれる。様々な構成を実施することもできる。例えば、1つ以上の区画に、1つのタイプの樹脂、例えば陽イオン樹脂又は陰イオン樹脂、だけを充填することも可能であり、他の場合には、区画に、2つ以上のタイプの樹脂、例えば、2つのタイプの陽イオン樹脂、2つのタイプのイオン樹脂、陽イオン樹脂及び陰イオン樹脂、を充填することもできる。本発明の1つ以上の実施形態に利用可能な市販媒体の非限定例には、The Dow Chemical Company(ミシガン州ミッドランド)から市販されている、強酸及びI型強塩基樹脂、II型強塩基陰イオン樹脂、並びに、弱酸又は弱塩基樹脂がある。媒体は、特定の陽イオン又は陰イオンのような、特定タイプのイオンについて選択性であってもよい。例えば、媒体は、1つ以上の実施形態に従って、ホウ素選択性、硝酸塩選択性又は砒素選択性であってもよい。既述のように、こうした標的選択性媒体は、可逆的吸着性であってもよい。本書で用いられる限りにおいて、選択性媒体は、特定条件下において、例えば吸着メカニズムによって、イオン種を始めとする種と結合することが可能なものである。好ましくは、本発明のいくつかの実施形態において使用可能な選択性媒体は、異なる条件下において吸着種を解放することができる。標的選択性媒体は、標的種又はそれと同様のタイプの種と、その標的種の特定の条件又は状態下において、選択的に結合し、結合された種又は同様のタイプの種の1つ以上をも解放する、例えば脱離する、ことができる。選択性媒体は、結合された種、例えば1つ以上の標的種、を解放するのに異なる条件を少なくとも必要とする点において、イオン交換媒体と異なっている。
【0043】
区画内で典型的に利用されるイオン交換又は選択性樹脂は、その表面領域に様々な官能基を有することができる。官能基の選択は、プロセス流中に存在するイオン種のタイプに基づくことができる。電気化学的装置によって除去される或る標的種が存在する場合、その標的種と選択的に結合することが可能な官能基を有する媒体を選択するのが望ましい。例えば、水からホウ素を除去することが求められる非限定実施形態の1つでは、媒体は少なくとも1つのシスジオール官能基を含んでいてもよい。より具体的には、シスジオール官能基は、1つ以上の実施形態に従ってN−メチルグルカミン官能基として具現化することができる。少なくとも1つの実施形態において、N−メチルグルカミン官能基は、以下のメカニズムに従ってホウ酸塩イオンと優先的に結合し得る。
【0044】
【化1】

【0045】
他の官能基としては、これに限られないが、第3アルキルアミノ基及びジメチルエタノールアミン基が含まれる。様々な媒体を、その表面領域にアンモニウム基のような他の官能基を有するイオン選択性樹脂材料と、組み合わせて用いることもできる。イオン交換樹脂材料として有用な他の変性材料及び同等材料は、日常的な実験しか行なわない当業者の裁量範囲内にあるものとみなされる。イオン交換樹脂の例としては、これらに限られないが、DOWEX(登録商標)MONOSPHERETM550A陰イオン樹脂、MONOSPHERETM650C陽イオン樹脂、MARATHONTMA陰イオン樹脂、及び、MARATHONTMC陽イオン樹脂、及び、DOWEX BSR−1TM樹脂が含まれ、全て、The Dow Chemical Company(ミシガン州ミッドランド)から入手可能である。
【0046】
上述のように、電気化学的装置の1つ以上の区画に混合媒体を備えるのが望ましい。非限定実施形態の1つでは、少なくとも1つの区画に、陰イオン交換樹脂及び、ホウ素選択性樹脂のような、標的イオン選択性樹脂の混合物又は床を収容することができる。いかなる特定の理論による束縛も望まないが、陰イオン樹脂は、一般に、塩化物のような、1つ以上の陰イオンを伝導することによって、従来の膜透過輸送による分離を促進することが可能であり、同時に、イオン選択性樹脂は、浄化水のために、ホウ素のような、標的種を吸着することができる。この点で、イオン選択性樹脂は一般に不良導体であってもよい。本発明の様々なシステム及び技術で利用可能な特定の構成には、樹脂のような、標的選択性媒体から実質的に構成される電気活性媒体を有するか;陰イオン交換媒体と標的選択性媒体とから実質的に構成される媒体混合床を有するか、陽イオン交換媒体と標的選択性媒体とから実質的に構成される媒体混合床を有するか、又は、陰イオン交換媒体、陽イオン交換媒体及び標的選択性媒体から実質的に構成される媒体混合床を有する1つ以上の区画を備える電気脱イオン化装置が関与しうる。
【0047】
1つ以上の実施形態によれば、各区画内において様々な媒体を様々な構成をなすように配置することができる。例えば、樹脂のような媒体を、様々な配置の多数の層が構築されるように、層状に配置することができる。例えば、減少、濃縮及び電極区画のいずれかにおける混合床イオン交換樹脂の利用、陰イオン交換樹脂層床と陽イオン交換樹脂層床との間における不活性樹脂の利用、並びに、様々なタイプの陰イオン樹脂及び陽イオン樹脂の利用を始めとする他の実施形態又は構成は、本発明の範囲内である。樹脂は、一般に1つ以上の区画における水の分裂の促進に効率的であり得る。樹脂は、同様に1つ以上の区画における導電率の上昇に効率的であり得る。樹脂は、同様に1つ以上の標的種の吸着に効率的であり得る。
【0048】
1つ以上の実施形態によれば、区画内の媒体の選択及び構成は、区画内における1つ以上の環境条件、区画内で処理すべきプロセス流の1つ以上の特性、又は、一般に区画内における意図された処理方式に拠ることができる。実施形態によっては、区画内における樹脂床の組成が、区画内の流路に沿って実質的に一様であってもよい。他の実施形態では、区画内の流路に沿った積重化又は層化が望ましい場合もある。実施形態によっては、プロセス流に、イオン選択性樹脂によって区画への導入直後に除去されるとは思えない標的種が含まれる場合がある。例えば、標的種を、除去にとって望ましい状態、例えば、イオン状態のような、吸着を促す状態、に転換することが必要な場合がある。これらの実施形態では、更に、区画内の流路に沿ってイオン選択性樹脂を戦略的に配置することができる。このように、標的種がイオン選択性樹脂と接触する場合、標的種は標的選択性媒体による除去又は吸着にとって望ましい状態にある。例えばプロセス流中に存在する他のイオン種を輸送するため、イオン選択性樹脂の上流に異なる媒体又は樹脂を配置することができる。いくつかの実施形態では、これによって、望ましい状態への標的種の転換が促進される。例えば、区画内における、pH状態のような、プロセス流の特性の調整により、標的種が望ましい状態に転換され、プロセス流からの除去が促進され得る。
【0049】
区画内に収容される媒体は、任意の適切な形状又は構成、例えば、実質的球形及び/又は別形状の個別粒子、粉末、繊維、マット、膜、押出スクリーン、クラスタで存在してもよく、及び/又は、予備成形された粒子、例えば樹脂粒子、の凝集体を結合剤と混合して、粒子クラスタを形成することができる。場合によっては、媒体は、多重の形状又は構造を含むこともある。媒体は、特定の用途に応じて、イオン、有機体及び/又は他の種を液体から吸着するのに適した任意の材料、例えばシリカ、ゼオライト及び/又は市販の多種多様な高分子イオン交換媒体の任意の1つ又は混合物、を備えることができる。区画内には、更に、例えば反応を触媒し又は処理される液体中の懸濁物質を濾過することが可能な他の材料及び/又は媒体が存在してもよい。
【0050】
更に、区画内には様々な構成又は配置が存在してもよい。従って、本発明の分離システムの1つ以上の区画には、これらに限られないが、場合によっては、イオン交換媒体の収容及び/又は液体流の制御に用いられ得るバッフル、網目スクリーン、板、リブ、ストラップ、スクリーン、パイプ、炭素粒子、炭素フィルタといった付加的な構成要素及び/又は構造が関与してもよい。これらの構成要素は、それぞれ、同じタイプ及び/若しくは多数の各種成分を含んでいてもよく、並びに/又は同じ構成を有していてもよく、或いは、異なる構成要素及び/又は構造/構成を有していてもよい。
【0051】
1つ以上の実施形態によれば、電気化学的装置の1つ以上の区画にプロセス流を供給することができる。上で議論したように、プロセス流は、1つ以上の標的種又は1つ以上のタイプの標的種を含んでいてもよい。標的種は、一般的に、プロセス流体、典型的には液体であるが、の中に溶解及び/又は懸濁している、典型的には電気分離装置を用いて第1の溶液から別の溶液に除去し又は移送するのが望ましい、任意の種であってよい。電気分離装置を用いて溶液間で除去し又は輸送するのが望ましい標的種の例には、装置内の運転環境に於ける或るイオン種、有機分子、弱イオン化物質及びイオン化可能物質が含まれる。本発明のいくつかの側面に従って除去し又は輸送するのが望ましい標的イオン種は、溶液から沈殿させることが可能な1つ以上のイオンであるか、溶液中の他の種及び/又はイオンと反応して溶液から沈殿させることができる塩及び/又は他の化合物を生成することができる1つ以上のイオンであるか、その両方であってよい。実施形態によっては、標的種は、電気化学的装置の運転中の条件下における非沈殿性種又は溶解性種であり、これらは、一般的には、溶液から容易には沈殿しないか又は溶液中の他の種及び/又はイオンと反応して沈殿する塩及び/又は他の化合物を容易には生成しないそのイオン成分とすることが可能な種をいう。
【0052】
1つ以上の標的イオンを含有するプロセス流は、1つ以上の実施形態による装置及び方法で処理することができる。本書で論考されるように、1つ以上の標的イオンの分離及び転換が望ましい。例えば、プロセス流中の標的種は、装置及び方法によって操作して、生成物流れを生成することができる。実施形態によっては、それらの装置及び方法は、標的イオンを分離し、これを利用して、標的化合物を形成し又は生成する。従って、プロセス流中に存在する標的イオンは、標的化合物の前駆体であってよい。実施形態によっては、標的化合物は、装置による除去にとって望ましい状態にある標的イオン又は種である。他の実施形態では、標的イオンは、酸又は塩基生成物の前駆体であり得る。少なくとも1つの実施形態では、プロセス流は、塩溶液のような水溶液であってよい。塩溶液又はそのイオンは、酸又は塩基生成物の前駆体であってよい。いくつかの実施形態では、標的イオンは、一般にプロセス流中で解離させることができる。1つ以上の実施形態によれば、プロセス流は、第1の陽イオン種及び第1の陰イオン種のような、イオン種の供給源を提供することができる。第1の陽イオン種及び/又は第1の陰イオン種は、任意の酸又は塩基の前駆体であってよい。
【0053】
1つ以上の実施形態によれば、電気化学的装置内で酸性流及び/又は塩基性流を生成して、水処理を促進するのが望ましい。酸及び/又は塩基は、電気化学的装置及び方法の生成物であってよい。酸性及び/又は塩基性生成物流れは、電気化学的装置及び方法によって生成することができる。少なくとも1つの実施形態において、酸及び/又は塩基生成物は、電気化学的装置及び方法によって濃縮することができる。プロセス流中に存在する1つ以上のイオンから、任意の酸又は塩基を生成物流れとして生成することができる。いくつかの実施形態では、電気化学的装置に供給されるプロセス流中の標的イオンは、所望の生成物流れに基づいて選択することができる。電気化学的装置における酸性及び/又は塩基性流の生成は、その装置内における1つ以上のpH条件又はpH環境の促進又は確立に必要とされる可能性がある。様々なpH条件の促進によって、本書で開示の水処理が促進される可能性がある。少なくとも1つの実施形態では、第1のpH条件は、電気化学的装置の区画内における媒体による標的種の吸着を促進することができる。第2のpH条件は、その脱着を促進することができる。
【0054】
例えばpH条件の相違と共に温度を利用して、1つ以上の標的種又は1つ以上のタイプの標的種のうちの少なくとも一部の結合を促進し、更に、その結合された1つ以上の標的種又は1つ以上のタイプの標的種のうちの少なくとも一部の解放を促進することもできる。例えば、標的種を含んでいるプロセス流は、第1の温度で本発明の1つ以上の装置及びシステムに導入することが可能であり、結合された1つ以上の標的種又は1つ以上のタイプの標的種の解放又は脱着を促進するため、解放流の温度はそれより高くするか又は低くすることができる。
【0055】
1つ以上の実施形態によれば、処理すべき水溶液は供給源又は流入位置から電気脱イオン化装置に導入することができる。導管が、プロセス流の源を1つ以上の電気脱イオン化装置の1つ以上の区画に流体的に接続するマニホルドとして機能することができる。プロセス流の源は、典型的には、電気化学的装置の少なくとも1つの区画に流体的に接続されてよい。実施形態によっては、プロセス水は、電気化学的分離装置の第1の区画及び第2の区画に導入導入される。
【0056】
実施形態によっては、プロセス流の一部が水素又はヒドロニウムイオンとヒドロキシルイオンに解離する電気化学的装置による酸又は塩基の生成を促進する。実施形態によっては、電気脱イオン化装置における印加電界によって分極現象が生じ、それによって、典型的には、ヒドロニウムイオン及びヒドロキシルイオンへの水の分裂又は解離が促進される。1つ以上の実施形態によれば、この水の分裂は、第1の陰イオンの供給源及び第1の陽イオンの供給源を提供し得る。電気化学的装置は、イオンの移動を促進して、第1の陰イオン及び第1の陽イオンが、プロセス流からの第2の陽イオン及び第2の陰イオンと、それぞれ、会合して、本書で論じられている1つ以上の生成物流れを生成することができる。
【0057】
1つ以上の特定の側面によれば、本発明は、電気化学的装置の第1の区画から第2の区画への鉱物、塩、イオン及び有機物のようなイオン化種の成分の移動を、印加される力の影響下で、誘発するための方法、システム及び装置に関する。例えば、イオンが、供給されるプロセス流体へ/から移動して、1つ以上の生成物流れを生じることができる。いくつかの側面においては、第1の区画内の液体は、所望のもの、即ち生成物であってよく、一方、第2の区画内の液体は、廃棄液として廃棄することができる。
【0058】
いくつかの実施形態は、1つ以上の水溶液又はプロセス流を処理又は転換して、例えば1つ以上の生成物流れを生成することに関連する。生成物流れは、生成され、分離され、凝集され又は濃縮されることができる。水溶液の処理を対象とする1つ以上の実施形態は、水溶液を浄化して、そこから1つ以上の望ましくない種を除去することに関する。従って、生成物流れは浄化流であってよい。酸性流又は塩基性流のような生成物流れは、電気化学的装置によって、それに供給される1つ以上の前駆体から生成することができる。技術の1つ以上の実施形態には、それから1つ以上の種を除去するか又は移動させることによって処理される水溶液を供給することを含むことができる。除去されるか又は移動させられる1つ以上の種は、供給流中に存在する1つ以上の陽イオン及び/又は1つ以上の陰イオンであってよい。この技術は、更に、本書で論じられている電動装置の任意の構成要素の1つのような、電気分離装置の1つ以上の区画に、例えば第1の陽イオンとそれに付随する第1の陰イオンを含有してなる水溶液を導入することを含むことができる。水溶液から、単離又は分離装置の1つ以上の区画への、1つ以上の標的種の移動を誘発し又は促進することができる。水溶液から、単離又は分離装置の1つ以上の区画内の媒体への吸着を誘発又は促進することができる。
【0059】
運転において、典型的には陽イオン成分及び陰イオン成分を溶解しているプロセス流を、電気化学的装置の1つ以上の区画に導入することができる。電気脱イオン化装置を横切って印加された電界が、イオン種のそれぞれの吸引電極に向かう方向への移動を促進する。電界の影響下において、陽イオン成分及び陰イオン成分が1つの区画を離れて、もう1つの区画に移動する。1つ以上の区画に収容されている媒体又は樹脂が移動を促進し得る。1つ以上の区画に収容されている媒体又は樹脂の中には、プロセス流中に存在する、標的種のような、イオンを選択的に結合又は吸着することが可能なものもある。イオン選択膜は、陽イオン及び陰イオン種の隣接区画への移動を阻止することができる。従って、電気化学的装置内において、少なくとも部分的に、1つ以上のイオン種の解離によって生じる1つ以上の生成物は、その1つ以上の区画で濃縮され得る。生成物流れは、それぞれの区画に関連した出口を通って流出し得る。減少流も、また、区画の出口を通って流出し得る。
【0060】
隣接区画間における1つ以上の陽イオン種及び/又は陰イオン種の移動によって、それらの区画におけるpH環境が変わり得る。実施形態によっては、荷電種の移動によって分極化が促進され、その結果、より低いpH条件又はより高いpH条件をもたらすことになる。例えば、塩化物イオンのような陰イオン種の第1の区画から第2の区画への移動により、第1の区画におけるpH条件の上昇及び第2の区画におけるpH条件の低下が促進され得る。1つ以上の実施形態によれば、1つ以上の区画でプロセス水を電解して、水素種及び水酸化物種を生成することができる。十分な量のこうした種が提供され、そして、輸送又は移動されると、第1の区画は、それに収容されているか又はその中を流れる液体が約7pH単位を超えるpHを有するように、塩基性にされる。同様に、第2の区画は、それに収容されているか又はその中を流れる液体が約7pH単位未満のpHを有するように、酸性にされる。供給されるプロセス流からの標的イオンも、また、移動し得る。従って、実施形態によっては、酸性流の生成及び/又は塩基性流の生成が起こりうる。一方又は両方を、要望に応じて、廃棄、回収又はリサイクルしてもよい。
【0061】
1つ以上の実施形態によれば、pH条件の変化は、水処理用の電気化学的分離装置の機能に寄与し得る。実施形態によっては、プロセス流中に存在する1つ以上の標的種の、電気化学的除去にとって望ましいイオン状態への、転換がpH条件の上昇によって促進され得る。例えば、非限定実施形態の1つにおいては、ホウ素含有化合物が、高pH条件において、ホウ酸塩イオンに転換され得る。これらのホウ酸塩イオンは、電気化学的装置の区画内でホウ素選択性媒体上の官能基に結合され又は吸着され得る。同様に、ホウ素化合物を吸着したホウ素選択性媒体を収容している区画内でpH条件の低下を促進することにより、媒体の再生が促進され得る。例えば、ボロン選択性媒体が飽和すると、電気化学的装置に印加される電界の分極を反転して、媒体の再生を促進することができる。従って、このようにして、図1を参照して後述するように運転を循環式にすることができる。
【0062】
図1は、本発明の1つ以上の実施形態による電気化学的装置100を表している。装置100は、第1の区画110と第2の区画120を備えている。第1の区画110は、第1の陰イオン選択膜140と第1の陽イオン選択膜130とを、少なくとも部分的に、境界としている。第2の区画140は、第2の陽イオン選択膜150と第1の陰イオン選択膜130とを少なくとも部分的に境界としている。プロセス水の源160は、第1及び第2の区画110、120の少なくとも一方に流体的に接続されている。描かれている非限定実施形態の場合、プロセス水は海水からなる。印加電界の影響下において、塩化物イオン(CI)が、第1の陰イオン選択膜140を通って、第1の区画110から第2の区画120に移動するが、このとき、ナトリウムイオンが第1の区画110で捕獲される。好ましい運転条件下において、水は、少なくとも第1の陽イオン選択膜130で分裂される。その結果、状態の変化、例えば第1の区画110におけるpH条件の上昇、が生じる。第2の区画120内において、対応するpH条件の低下が、例えば、塩化物イオン及びヒドロニウムイオンの生成や場合によってはそれらの移動のために、生じ得る。第1及び第2の区画110、120の両方には、それぞれ、イオン選択性媒体床170、180が少なくとも部分的に収容されている。描かれている非限定実施形態の場合、媒体床170には、陰イオン交換樹脂とホウ素選択性樹脂との50/50混合物が含まれる。いくつかの非限定実施形態では、区画110内における高められたpH条件、例えば約9〜10の範囲のpH、において、ホウ素含有化合物等のプロセス水中の標的化合物の少なくとも一部は、望ましい状態又は条件、例えば望ましいイオン状態、即ちホウ酸塩イオン、に転換される。1つ以上の標的種の少なくとも一部、例えばホウ酸塩イオン、は、第1の区画110内にある媒体床170中の標的選択性媒体によって、選択的に結合され又は吸着される。
【0063】
第2の区画120におけるpH条件の低下は、その中の樹脂床180の再生を促進し得る。例えば、いくつかの非限定実施形態では、第2の区画120において約2〜4の範囲のpHレベルにおいて、ホウ素が放たれる。浄化水の生成物流れは、減少区画の働きをしてきた第1の区画110の出口で集められる。この生成物流れは、塩基性生成物流れであってよい。廃棄流は、濃縮区画の働きをしてきた第2の区画120の出口で集められる。床180は、陰イオン交換樹脂と標的選択性樹脂と50%/50%の体積比の混合物を含んでいてよい。
【0064】
印加電界の極性は、1つ以上の標的種の少なくとも一部、例えばホウ酸塩イオン、を第2の区画120における樹脂床180に吸着し、他方、第1の区画内110の樹脂床170を再生するため、いつでも反転させることができる。こうして、第2の区画120は、減少区画の働きをすることが可能になり、一方、第1の区画110は濃縮区画の働きをすることが可能になる。
【0065】
例示したように、区画110から流出する生成物流れの少なくとも一部は、電気化学的装置の第3の区画190に送ることができる。区画110からの生成物流れは、区画190内でその少なくとも1つの性質又は特性を調整し又は修飾することにより、更に処理することができる。本発明の更に有利な側面では、区画190は、それに導入される流れの少なくとも1つの他の特性又は性質を修飾し又は調整することができる。例えば、生成物流れを処理して、それに残存している任意のイオン種を除去することができる。処理又は除去は、印加電界の影響下において実施することができる。従って、例示したように、生成物流れから区画120への陽イオン種の移動を誘発することができる。少なくともこの特定の実施形態において、区画190は少なくとも減少区画とみなすことができる。更に他の場合には、典型的には、印加された電流の結果として、区画190に導入された生成物流れの水の少なくとも一部を分極して、ヒドロニウムイオン及び水酸化物イオンを生成することができる。例示したように、生成されたヒドロニウムイオンは、流れ中に移動して、そのpHレベルを調整することができる。従って、少なくともこの側面では、区画190は、pH調整区画とみなすことが可能であり、それに導入される流れが、高い、例えば7単位を超える、pHレベルである場合には、区画190は、その入口におけるpH値よりも低いpHの流出流を送り出すpH中和区画とみなすことができる。
【0066】
区画190の構成には、移動種の輸送と共に水の分極を促進する構成要素を含んでいてもよい。例えば、区画190は、陽イオン選択膜150及び第3の陽イオン選択膜155によって区画することができる。場合によっては、膜155は、少なくとも部分的に、水の分極を少なくとも部分的に促進する双極膜であってもよい。更なる実施形態では、電気活性媒体(これは陰イオン交換樹脂及び陽イオン交換樹脂の混合床であってもよい)を備える区画190を含んでいてもよい。
【0067】
装置100は、複数の区画190を備えていてよい。こうした構成は、(装置100からの)生成物流れのpHを所望の値に調整するために複数のこうした区画が必要になる場合に、有利に利用することができる。上述のように、図1には、1つ以上の中和区画190を備えた装置100が典型例として示されている。しかしながら、区画110からの生成物流れのpH調整である中和は、本発明の更に顕著な構成及び側面によって実施することができる。例えば、区画190からの生成物流れの少なくとも1部のpHは、それを装置100の少なくとも1つの陰極区画に導入することによって低下させることができる。従って、例えば、区画110から移動し又は好ましくは陰極区画(図示せず)を少なくとも部分的に区分する双極膜において生成されるヒドロニウム種。他の事例では、装置100の外部のある位置で酸を添加することによって、目標レベルになるようにpH調整を実施することができる。中和に利用される酸性溶液は、装置100又は装置100に付属していないか若しくは装置100とは別個に操作可能な補助モジュール(図示せず)によって生成することができる。
【0068】
浄化水は、飲用水として利用又は貯蔵するために送ることができる。飲用水は、貯蔵し又は要望に応じて更に殺菌することが可能であり、農業及び半導体製作のような工業を始めとする様々な用途に使い道を見つけることができる。電気化学的装置によって生成される廃棄流又は濃縮流は、集めて放流して廃棄するか、システムを再循環させるか又は下流での単位操作に供給して、更なる処理を施すことができる。下流での利用、上流での利用又は廃棄処分の前に、生成物流れに更なる処理を施すことができる。例えば、生産酸性流又は生産塩基性流のpHレベルを調整することができる。実施形態によっては、1つ以上の生成流を、部分的に又は全体的に、混合するのが望ましい場合がある。1つ以上の追加単位操作を電気化学的装置の下流に流体的に結びつけることができる。例えば、1つ以上の単位操作は、例えば標的生成物流れを、例えば、それをユースポイントに送る前に、それを受け入れて処理するように構成することができる。使用又は放出に先立って、電気化学的装置の生成物流れ又は廃流に処理を施すために、化学的又は生物学的処理を伴うようなポリッシング装置が存在してもよい。本発明のシステムを対象とするいくつかの実施形態では、逆浸透単位操作は電気化学的分離装置の下流に配置されない。本発明のシステムを対象とする少なくとも1つの実施形態では、ホウ素選択性樹脂床のような,イオン選択性樹脂床は電気化学的分離装置の下流に配置されない。
【0069】
1つ以上の実施形態によれば、1つ以上のセンサを配置して、一般に装置100に関連する任意の流れ、構成要素又はサブシステムの1つ以上の特性、条件、性質又は状態を検出することができる。非限定実施形態のいくつかでは、1つ以上のセンサを、装置100に入り又はこれから出る流れにおける標的種の濃度を検出するように構成することができる。実施形態の1つでは、1つ以上のセンサを配置して、装置100の1つ以上の区画の入口及び/又は出口におけるホウ素濃度を検出することができる。もう1つの非限定実施形態では、1つ以上のセンサを配置して、装置100の1つ以上の区画の入口及び/又は出口におけるpHレベルを検出することができる。
【0070】
実施形態によっては、装置及び方法は、これに限らないが、作動弁及びポンプといった装置又はシステム構成要素の少なくとも1つの作動パラメータを調整し又は調節し、並びに、電動分離装置を通る電流又は印加電界の性質又は特性を調整するための制御装置を必要とする。制御装置は、システムの少なくとも1つの作動パラメータを検出するように構成された少なくとも1つのセンサと電子的に通じていてよい。制御装置は、一般に、センサによって発生された信号に応答して、1つ以上の作動パラメータを調整するための制御信号を発生するように構成することができる。例えば、制御装置は、装置100の又は装置100からの、任意の水流、構成要素又はサブシステムの条件、性質又は状態の表示を受信するように構成することができる。制御装置は、典型的には、それらの表示や設定値のような目標値又は所望の値の任意の1つ以上に基づく少なくとも1つの出力信号の発生を促進するアルゴリズムを、典型的には、備えている。本発明の1つ以上の特定の側面によれば、制御装置は、装置100からの任意の流れの測定性質の任意の1つの表示を受信して、装置100を始めとする処理システム構成要素の任意の1つに対する制御、駆動又は出力信号を発生し、測定性質の目標値からの逸脱を減少させるように構成することができる。
【0071】
1つ以上の実施形態によれば、制御装置は、装置100に流される電流の極性を反転するように構成することができる。制御装置は、装置100に関連する流れ、例えば、装置100の区画を出る生成物流れ、の中の標的種の濃度を表わす測定信号を送り出すように構成された1つ以上のセンサと通じていてもよい。実施形態によっては、pHレベル又は濃度測定値は、センサによって検出して、制御装置に伝達される。少なくとも1つの実施形態では、ホウ素濃度を表わす測定信号を制御装置に伝送することができる。制御装置は、所定のレベルより大きい又はそれを超える受信測定値に応答して、制御信号を発生するように構成することができる。制御信号は、装置100に印加される電流の極性を反転して、その区画内にある媒体を再生することができる。いくつかの実施形態では、測定値信号に少なくとも部分的に基づいて、装置100に付随した電源に制御信号を送ることができる。
【0072】
他の構成では、制御装置は、開ループ制御をして、本発明の処理システムの少なくとも1つの構成要素の1つ以上の作動条件を規定し又は変更することができる。例えば、制御装置は、典型的には所定のスケジュールに基づいて、印加電界の極性を、好ましくは装置100の流れ流路を、所定の配列から第2の所定の配列に、変更する出力又は駆動信号を、周期的に発生することができる。
【0073】
本発明のシステム及び方法で利用可能な1つ以上のセンサは、装置100に流入し、装置100から流出し若しくは装置100内における流れの性質若しくは特性又は装置100に流される電流の性質若しくは特性を表示することができる。例えば、1つ以上のセンサは、任意の区画110から流出する任意の流れのpH、区画120から流出する流れのpH、及び、区画190から流出する流れのpHのような、プロセス条件を測定して、例えば測定信号といった表示を行なうように構成することができる。1つ以上のセンサは、装置100に流入し、装置100から流出し又は装置100内における流れの任意の1つの測定導電率又は抵抗率の値を示すことができる。とりわけ有利な構成の場合、少なくとも1つのセンサを利用して、装置100からの又は区画110及び120の任意の1つからの生成物流れ中における少なくとも1つの標的種、例えばホウ素、の濃度を直接測定によって又は代理で表示することができる。ホウ素濃度の測定は、例えば、試料をバッチ式に循環的に回収し分析するか又は1つ以上の側流によって半継続的に分析する、比色技術又はフルオロフォレシス技術によって実施することができる。
【0074】
制御装置は、典型的には、プログラマブルロジック制御装置(PLC)又は分散型制御システムのような、装置又は装置が働いているシステムの構成要素から入力信号を受信し又はそれらに出力信号を送信するマイクロプロセッサに基づく装置である。通信ネットワークによって、任意のセンサ又は信号発生装置を、制御装置又は関連コンピュータシステムからかなり遠くに配置し、その一方で、なお、それらの間でデータを伝達することが可能になる。こうした通信機構は、無線プロトコルを利用した技術を始めとする、これらに限らないが、任意の適切な技術を利用することによって実現することができる。
【0075】
少なくとも1つの実施形態において、1つ以上の双極膜を組み込んで、1つ以上の区画を少なくとも部分的に区分することができる。双極膜は、一般に、片側にある陰イオン性膜と、その反対側にある陽イオン性膜である。双極膜は、一般に、水の分裂に効率的である。いくつかの実施形態では、水分裂セルの代わりに双極膜を用いることができる。実施形態によっては、1つ以上の双極膜を1つ以上の陰イオン及び/又は陽イオン選択膜と併用してもよい。1つ以上の実施形態によれば、電気化学的装置には、交番する一連の双極膜と陰イオン選択膜を備えていてもよい。同様に、1つ以上の実施形態によれば、電気化学的装置は、交番する一連の双極膜と陽イオン選択膜を備えていてもよい。当業者には明らかなように、本発明の或る側面によれば、選択膜について、他のタイプ及び/又は構成を利用することができる。少なくとも1つの実施形態では、電気化学的装置は、双極膜を備えていない。
【0076】
いくつかの実施形態によれば、処理システムの複数の段階を利用して、水を浄化し又は少なくともそれに溶解している固形物の濃度を低下させることができる。例えば、処理すべき水は、各段階で1つ以上のタイプの溶解固形物を選択的に除去するようにして複数段階で浄化することが可能であり、それによって、浄化水を、例えば脱塩水又は飲用水さえをも、生成することができる。実施形態によっては、単一電気化学的装置に多重処理段階が存在してもよい。他の実施形態においては、一連の電気化学的装置に様々な処理段階が存在してもよい。場合によっては、1つ以上の段階に、あるタイプの溶解種を選択的に保留しておく1つ以上の単位操作が含まれていてもよく、この溶解種は、1つ以上の後続又は下流段階で除去することができる。従って、本発明の浄化システムのいくつかの実施形態では、第1段階において、1つのタイプの溶解種を除去し又は少なくともその濃度を減少させることができる。他の実施形態では、第1段階において、1つのタイプの溶解種を除く全ての溶解種を除去し又は少なくともその濃度を減少させることができる。水から除去されず保持された化学種は、1つ以上の後続段階において除去し又はその濃度を減少させることができる。
【0077】
電気化学的装置は、所望の生成物をもたらし及び/又は所望の処理を実施する任意の適合するやり方で操作することができる。例えば、本発明の様々な実施形態は、連続して、又は実質的に連続的に、又は継続的に、間欠的に、周期的に、又はオンデマンド式にさえ、操作することができる。マルチパスEDIシステムを用いることもでき、そこでは、供給流を、典型的には、装置に2回以上通し又は任意の第2の装置に通すことができる。電気分離装置は、1つ以上の他の装置、アセンブリ及び/又は構成要素と連係運転することができる。補助構成要素及び/又はサブシステムは、パイプ、ポンプ、タンク、センサ、制御システム並びにシステムの協働操作を可能にする電源及び配電系統を備えていてよい。
【0078】
当然明らかなように、本発明のシステム及び方法は、1つ以上の液体の処理が求められる多種多様なシステムに関連して利用することができる。従って、電気分離装置は、特定のプロセスの必要に応じて、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者によって変更することができる。
【0079】
これら及びその他の実施形態の機能及び利点については、下記の非限定例からより十分な理解が得られるであろう。その例は、性質上、例証を意図したものであって、本書で論じられている実施形態の範囲を制限するものとみなすべきではない。
【0080】

以下に示すように、海水からのホウ素除去への適用可能性についていくつかの処理技術が検討された。
【0081】
実験的に用いられたED及びEDIセルは、1.2×7.5インチの有効膜面積を有していた。一価選択性ED実験で使用された徳山曹達のACS及びCMS一価選択膜を除けば、全体を通じてIONPURE(登録商標)陰イオン及び陽イオン選択膜が用いられた。用いられた樹脂は、DOWEX(登録商標)MSA樹脂及び/又はDOWEX(登録商標)BSR−1ホウ素選択性樹脂であった。電極は、RuO2で被覆したチタンのエキスパンデッドメタルであり、同じ水が個別の流れで供給された。電極区画には、スクリーンフィラが収容された。特に指定のない限り、海水を模擬した供給流として、脱イオン水に溶解したINSTANT OCEAN(登録商標)塩が用いられた。いくつかの実験ではホウ酸が添加された。ホウ素濃度は、全体を通じてHachのアゾメンチン−H法10061を用いて測定された(ホウ素として0.02〜1.50ppm)。各測定値は3つの試料の平均である。
【0082】
図2に示す実験構成に従ってドナンの透析処理プロセスが実施された。ED(図示せず)によって脱塩された水が供給流として用いられ、EDによって濃縮された水は、受容溶液として用いられた。その結果を下表1に要約する。
【0083】
【表1】

【0084】
電気脱イオン化アプローチも試験された。これらの実験においては、セル対当り5Vの電圧が印加された。供給水は、セル当り10ml/分の流量で供給され、3.6ppmのホウ素濃度を有していた。第1の構成では、IONPURE(登録商標)イオン選択膜が、フィラとしてのDOWEX(登録商標)MSA陰イオン交換樹脂と共に、用いられた。第2の構成では、IONPURE(登録商標)イオン選択膜が、フィラとしてのBSR−1ホウ素選択性樹脂と共に、用いられた。7.5〜10.8のpH範囲の供給流についての結果を、下表2に要約した。
【0085】
【表2】

【0086】
もう1つの実験では、一価選択性陰イオン膜による電気透析が、pHレベル7.5の供給流で試験された。下表3に、様々な印加電流についてのデータを示す。
【0087】
【表3】

【0088】
図3に示す構成に従って、非選択性樹脂によるイオン交換カラムを利用した実験も実施された。2つの同一の樹脂床(Dow MSA)が、ED極性反転と同期させて循環的に使用された。EDによって脱塩された水は供給水として用いられ、EDで濃縮された水は再生水として用いられた。その結果を下表4に要約した。
【0089】
【表4】

【0090】
図4に描かれたホウ素選択性樹脂による酸/塩基生成EDIが、本発明の1つ以上の実施形態に従って試験された。IONPURE(登録商標)イオン選択膜が用いられ、樹脂は、50%BSR−1樹脂と50%Dow Marathon(登録商標)陰イオン交換樹脂から構成された。区画CA及びACには、模擬海水が供給された。区画CCには、AC区画の流出水が供給された。AC区画において、溶液は塩基性になり、BSR−1樹脂はホウ素を吸着した。CA区画において、溶液は酸性化され、その中でBSR−1樹脂は再生された。供給流を切換え、極性を反転することによって、循環動作が実施された。モジュールは4回にわたって循環させた。4回目のサイクルでは、5分間の操作後、全ての流出水が25分間に亘って集められ、ホウ素について分析された(生成物水と濃縮水の両方)。次の23分間に亘って、やはり全ての流出水が集められ、分析された。90分で第3の試料が得られた。表5に、48分間に亘る平均除去を示した。その結果が、下表5〜7に要約されている。表6に、サイクル4に関するホウ素データを示した。図5に、ホウ素選択性樹脂を含む酸/塩基生成EDIによるホウ素除去の時間座標図を示した。
【0091】
【表5】

【0092】
【表6】

【0093】
【表7】

【0094】
ドナン透析、ED及びCDIプロセスは、中性pHの海水からホウ素を除去するには、効率的ではなかった。高められたpHでは、ED及びEDIモジュールによって、ある程度のホウ素除去が実現した。これは、おそらく、約7.5のpHでは、ホウ素化合物はイオン化されず、従って、印加電界によって移動させることができないためである。高められたpHでは、ホウ酸は、ホウ酸塩イオンB(OH)4-に転換し、これが電界によって移動される。pH9〜10では、EDIによってある程度の除去が実現された。更に高いpH(〜11)では、除去率が低下した。これは、おそらくはイオン交換樹脂及び膜においてより移動しやすいOH-イオンとの競合のためである。ホウ素選択性樹脂上におけるイオン交換は、海水からのホウ素除去に関して効率的であった。ホウ素選択性樹脂は、比較的弱い酸(pH=2〜4)で、これを再生できることがわかった。
【0095】
ボロン選択性樹脂によるEDIは、非選択性樹脂によるEDIよりも、ホウ素除去に関する効率が低い。これは、ホウ素選択性樹脂がホウ酸塩イオンの良導体ではない可能性を示している。この樹脂によるホウ素吸着のメカニズムは、通常の陰イオン交換樹脂とは非常に異なる。ホウ素選択性樹脂は、EDI装置におけるホウ素除去に寄与せず、積重体が実質的にED装置の働きをしたと思われる。一価陰イオン及び陽イオンに対して選択的な膜による電気透析は、中性pHでのホウ素除去には効率的でなかった。膜周辺における二価イオンと一価イオンとの間の平衡の移動が十分ではなく、ホウ酸のイオン化のための局所的pH変化を起せなかったと思われる。海水は、天然の緩衝液であり、緩衝作用は、炭酸塩、硫酸塩及びホウ酸塩によって生じる。
【0096】
最良の結果は、本発明の1つ以上の実施形態に従って特別に構成されたEDI又はEDの酸性流出水又は酸性化流によって再生されたホウ素選択性樹脂によるイオン交換を伴うアプローチによって、得られた。このアプローチでは、図6に示すように、様々なpHレベルにおけるホウ素種間における平衡を利用して、優れたホウ素除去を実現し得る。従って、本発明のいくつかの側面には、電動分離装置で処理すべき水流のpH条件を、下記の関係に従って、少なくとも、約25℃におけるホウ酸/ホウ酸塩イオンのpKa、即ち、約9.2に変えることが関与する。
【0097】
【化2】

【0098】
好ましくは、処理すべき流れのpH条件は、少なくとも約9.5であり、より好ましくは、シスジオール結合ホウ酸塩種の生成を更に促進するために、pHを少なくとも約10まで高める。本発明の更なる側面では、分離装置における1つ以上の他の流れのpH条件を、ホウ酸/ホウ酸塩イオンのpKa未満、例えば約9未満のpH、に変えることが含まれる。ホウ素種の優勢な形態、例えばホウ酸又はホウ酸塩イオン、は、プロセス流のpHに依存し得る。ホウ素含有溶液と平衡しているホウ素選択性樹脂は、極めて弱い酸(pH2〜4)ですすぐと、ホウ素の解放を開始し得る。この酸性度は、酸/塩基生成CDIモジュールによって実現し得る。酸/塩基生成CDI実験における流量は極めて低かったが、処理済水の全量は26BVHであり、これは妥当な数値であり、流量は増すことができる。代わりに、CDI装置(又は同じ膜構成のED装置)を酸の生成だけに利用することも可能であり、しかも、この酸は、ホウ素選択性樹脂の樹脂床を再生するために供給することができる。CDI装置には、海水又は脱塩プロセスの生成物水を供給することができ、どちらであれ、酸及び塩基の生成に、より適していることが立証されている。塩基区画における流量を遥かに増して、酸/塩基生成装置を運転することができるはずである。この場合、塩基区画でのpH変化は取るに足りないものになる可能性があり、これにより、この流れを中和することなく下流プロセスのために利用することができる。同時に、樹脂再生に必要な濃度で酸を生成することが可能になる。この結果は、酸/塩基生成及びホウ素選択性樹脂を備えたEDIモジュールが、溶液中のホウ素濃度を成功裡に低下させたことを示している。処理を受ける溶液の保留時間をより長くすると、これは、例えば、床容積をより大きくすることで達成されるが、その結果、溶液中のホウ素濃度をより大幅に、少なくともいくつかの実施形態では例えば0.5ppm未満のレベルまで、低下させることになるであろう。
【0099】
さて本発明のいくつかの例証となる実施形態について説明してきたが、当業者には当然明らかなように、上記はただ単に説明目的のものであって、限定的なものではなく、単なる例証として提示されている。多くの変更及び他の実施形態は当業者の裁量範囲内であり、本発明の範囲内に含まれるとみなされる。即ち、本書に提示の例の多くには、方法のステップ又はシステム要素の特定の組合せが含まれるが、もちろん、それらのステップ及びそれらの要素を別様に組み合わせて、同じ目的を達成することができる。
【0100】
当業者には明らかなように、本書に記載のパラメータ及び構成は、例示的なものであり、実際のパラメータ及び/又は構成は、本発明のシステム及び技術が利用される特定の用途によって決まる。また、当業者であれば、決まりきった実験法しか利用しないで、本発明の特定の実施形態の等価物を認識又は確認するはずである。従って、本書に記載の実施形態は、単なる例証として提示されたものであり、付属の請求項及びその等価物の範囲内で、具体的記載とは別様に本発明を実施することができることを理解すべきである。
【0101】
更に、やはり当然明らかなように、本発明は本書に記載の各特徴、システム、サブシステム又は技術を対象としたものであり、本書に記載の2つ以上の特徴、システム、サブシステム又は技術の任意の組合せ、並びに、2つ以上の特徴、システム、サブシステム及び/又は方法の任意の組合せは、こうした特徴、システム、サブシステム及び技術が互いに矛盾しない場合、請求項で具体化された本発明の範囲内にあるものとみなされる。更に、1つの実施形態に関連してのみ論じられたステップ、要素及び特徴は、他の実施形態における同様の役割から除外されるように意図されたものではない。
【0102】
本書において用いられる限りにおいて、「複数の」という用語は、2つ以上の項目又は構成要素を表わしている。「含む」、「含有する」、「持っている」、「備える」「具備する」及び「伴う」といった用語は、明細書においてであろうと、請求項等においてであろうと、制限のない用語である、即ち、「〜を含むが、それに制限されない」ことを表わしている。従って、こうした用語の利用は、その後に列挙される項目及びその同等物更に追加項目も包含するように意図されている。「から構成される」及び「ほぼ〜から構成される」という移行句だけが、それぞれ請求項に関して限定又は半限定移行句である。請求要素を修飾する「第1の」、「第2の」、「第3の」等のような請求項における序数用語の使用は、それ自体、ある請求要素の別の請求要素に対する優先順位、序列若しくは順序又は方法のステップが実施される時間的順序を暗示するものではなく、請求要素を識別するために、ただ単にある特定の名前を持つ請求要素の1つを同じ名前を持つ(序数用語の使用を除けば)もう1つの請求要素から識別する標識として用いられているだけである。
【符号の説明】
【0103】
100 電気化学的装置
110 第1の区画
120 第2の区画
130 第1の陰イオン選択膜
140 第1の陽イオン選択膜
150 第2の陽イオン選択膜
155 第3の陽イオン選択膜
160 プロセス水源
170 イオン選択性媒体床
180 イオン選択性媒体床
190 第3の区画

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水を処理する方法であって、
塩化物イオン及びホウ素含有化合物を含有する海水を、電動分離装置の少なくとも第1の区画に導入し、ここで、前記第1の区画は、樹脂床と出口とを具備し;
前記電動分離装置の前記第1の区画から第2の区画への前記海水中の前記塩化物イオンの移動を促進し;
前記第1の区画において前記海水中の前記ホウ素含有化合物の少なくとも一部のイオン化を促進し;
前記第1の区画の前記樹脂床に前記イオン化ホウ素含有化合物の少なくとも一部を吸着し;そして、
前記第1の区画の前記出口で処理済水を回収する;ことを
含んでなる方法。
【請求項2】
前記第2の区画の第2の樹脂床に結合されたホウ素含有化合物の少なくとも一部を解放することを更に含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の区画の出口でホウ素含有流れを回収することを更に含んでなる請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記処理済水のpHレベルを調整することを更に含んでなる請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記電動分離装置に流される電流の極性を反転させることを更に含んでなる請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記処理済水中のホウ素濃度を監視することを更に含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記処理済水中の所定のレベルを超えるホウ酸濃度の検出に応答して前記電動分離装置に流される電流の極性を反転することを更に含んでなる請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記所定のレベルが約1ppmである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記電動分離装置の第3の区画に処理済水を送ることを更に含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記処理済水のpHレベルを監視し、前記処理済水の所定のレベルを超えるpHレベルの検出に応答して、前記電動分離装置に流される電流の極性を反転させることを更に含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項11】
電気脱イオン化装置を運転する方法であって、
前記電気脱イオン化装置の第1の区画にホウ素含有化合物を含有するプロセス水を導入し、ここで、前記第1の区画は、樹脂床と出口とを具備し;
前記第1の区画における塩基性pH条件を促進し、
前記第1の区画に隣接する前記電気脱イオン化装置の第2の区画における酸性pH条件を促進し;
前記第1の区画内の前記樹脂床にホウ酸塩イオンを吸着し;
前記第1の区画の前記出口で処理済水を回収し;そして、
前記第2の区画の出口でホウ素含有流を回収する;ことを含んでなる
方法。
【請求項12】
前記処理済水中のホウ素濃度を監視することを更に含んでなる請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記電気脱イオン化装置に流される電流の極性を、検出ホウ素濃度に応答して、反転させることを更に含んでなる請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記処理済水のpHレベルを調整することを更に含んでなる請求項11に記載の方法。
【請求項15】
ホウ素含有流を回収することが、前記第2の区画内の樹脂からホウ素含有化合物を解放することを含んでなる請求項11に記載の方法。
【請求項16】
ホウ素選択性樹脂床を収容した第1の区画を具備する電動分離装置を備えている水処理システム。
【請求項17】
前記ホウ素選択性樹脂床がシスジオール官能基を含有する請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記電動分離装置が、海水中のホウ素濃度を約0.5〜1ppmのレベルまで減少させるように、構成され配置されている、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記電動分離装置の前記第1の区画が、第1の陰イオン選択膜及び第1の陽イオン選択膜によって、少なくとも部分的に、区分されている、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記電動分離装置が、第1の陰イオン選択膜及び第2の陽イオン選択性によって、少なくとも部分的に、区分されている第2の区画を、更に備えてなる、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記ホウ素選択性樹脂床の下流に流体的に連通するように配置され前記電動分離装置からの前記処理済水中のホウ素濃度を表わす測定信号を送り出すように構成されたセンサを、更に備えてなる、請求項16に記載のシステム。
【請求項22】
前記センサと通じていて、前記測定信号に少なくとも部分的に基づいて、前記電動分離装置に付随した電源に対する制御信号を、生じるように構成された制御装置を更に備えてなる、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記第1の区画における前記ホウ素選択性樹脂床の組成が、前記電動分離装置の前記第1の区画を通る流体流路に沿って実質的に均一である、請求項16に記載のシステム。
【請求項24】
溶解種と少なくとも1つの標的種を有する海水を処理する方法であって、海水源から海水の第1の部分を電動分離装置の減少区画に導入し、ここで、減少区画は、陰イオン透過膜と第1の陽イオン透過膜との間に配置された標的種吸着媒体を有しており;
前記海水源から海水の第2の部分を前記電動分離装置の濃縮区画に導入し、ここで、前記濃縮区画は、前記陰イオン透過膜と第2の陽イオン透過膜の間に配置された標的種吸着媒体を有しており;
前記少なくとも1つの標的種の少なくとも一部をより好ましいイオン状態に転換しつつ、前記溶解種の少なくとも一部の前記濃縮区画への輸送を促進する;ことを含んでなる
方法。
【請求項25】
前記電動分離装置の中和区画において前記減少区画からの水の少なくとも一部のpHを調整し、ここで、前記中和区画は、前記第2の陽イオン透過膜及び前記第3の陽イオン透過膜によって少なくとも部分的に区分されている;
ことを更に含んでなる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記溶解種の少なくとも一部の前記濃縮区画への輸送を促進することが、前記減少区画及び濃縮区画に電流を流すことを含んでなる、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
電流を流すことによって前記電動分離装置の少なくとも1つの区画における水の分極が促進されてヒドロニウムイオンが生成され、前記減少区画からの水の少なくとも一部のpHを調整することが、前記ヒドロニウムイオンの少なくとも一部の前記中和区画への輸送を促進することを含んでなる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
電流を流すことが、前記減少区画内の海水のpHを少なくとも9.2単位まで上昇させるのに十分な電流を通すことを含んでなる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記中和区画が電気活性媒体を備えない、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
電動分離装置であって、
第1の陽イオン選択膜及び第1の陰イオン選択膜によって少なくとも部分的に区分された第1の区画;
前記第1の陰イオン選択膜及び第2の陽イオン選択膜によって少なくとも部分的に区分された第2の区画;並びに
前記第1及び第2の区画の少なくとも一方に配置されたホウ素選択性電気活性媒体;を備えてなる、
電動分離装置。
【請求項31】
前記第2の陽イオン選択膜によって少なくとも部分的に区分された第3の区画を更に備える、請求項30に記載の装置。
【請求項32】
前記第3の区画が少なくとも部分的に双極膜によって区分されている、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
前記第1の区画の出口が前記第3の区画の入口に流体的に接続されている、請求項31に記載の装置。
【請求項34】
前記電動分離装置の出口が飲用ユースポイントに流体的に接続されている、請求項30に記載の装置。
【請求項35】
前記電気活性媒体がシスジオール官能基を含有してなる、請求項30に記載の装置。
【請求項36】
前記第3の区画が、電気活性媒体を実質的に有しない、請求項31に記載の装置。
【請求項37】
前記電動分離装置の下流に、逆浸透膜が流体的に接続されていない、請求項30に記載の装置。
【請求項38】
前記電動分離装置の下流に樹脂床が流体的に接続されていない、請求項30に記載の装置。
【請求項39】
前記樹脂床の下流に流体的に連通して配置されて前記電動分離装置からの前記処理済水におけるホウ素濃度を表わす測定信号を送り出すように構成されたセンサを更に備える、請求項30に記載の装置。
【請求項40】
前記測定信号に検出pHレベルが含まれる、請求項39に記載の装置。
【請求項41】
前記センサに通じていて、前記測定信号に少なくとも部分的に基づいて、前記電動分離装置に付随した電源に対する制御信号を生じるように構成された制御装置を更に備える、請求項39に記載の装置。
【請求項42】
前記電気活性媒体がN−メチルグルカミン官能基を含有してなる、請求項35に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−505241(P2011−505241A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536021(P2010−536021)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【国際出願番号】PCT/US2008/013286
【国際公開番号】WO2009/073175
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(506355361)シーメンス ウォーター テクノロジース コーポレイション (18)
【Fターム(参考)】