水処理システム
【課題】高い電解効率で以って処理を行うことができ、且つ電解処理後の処理水を再利用に適した水質とすることができる水処理システムを提供する。
【解決手段】被酸化物含有水10に還元剤11を添加して塩素を還元する還元装置1と、該還元後の被処理水の水質調整を行う膜前処理装置2と、前処理水12中の塩化物イオンを濃縮する濃縮装置3と、該濃縮により得られた濃縮水を電解して次亜塩素酸を生成し、該次亜塩素酸により被酸化物を酸化分解する電解装置4と、該電解後の電解処理液17を前記還元装置1に循環させる循環ラインと、を備えた構成とする。
【解決手段】被酸化物含有水10に還元剤11を添加して塩素を還元する還元装置1と、該還元後の被処理水の水質調整を行う膜前処理装置2と、前処理水12中の塩化物イオンを濃縮する濃縮装置3と、該濃縮により得られた濃縮水を電解して次亜塩素酸を生成し、該次亜塩素酸により被酸化物を酸化分解する電解装置4と、該電解後の電解処理液17を前記還元装置1に循環させる循環ラインと、を備えた構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解処理を用いて被酸化物を高効率除去する水処理技術に関し、特に、処理水を洗浄用水、親水用水等として再利用に適した水質とすることができる水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭、各種工場等から排出される各種廃水は、夫々の水質に応じた水処理が行われている。例えば、図10に示すように、し尿や台所排水、風呂排水等の生活廃水中にはN、P、COD、BOD、SSが含有されるため、浄化槽50にて生物処理を行った後に放流し、排出された浄化槽汚泥は汚泥処理設備等にて処理されていた。また、図11に示すように、上水を用いた洗車により発生した洗車廃水の場合は、砂、泥、DS、SSを含むため、加圧浮上装置51により砂、泥を分離され、凝集沈殿装置52にてPAC(ポリ塩化アルミニウム)や硫酸バンド等の凝集剤を添加されて凝集沈殿され、凝集分離液は放流され、砂、泥或いは凝集沈殿汚泥は汚泥処理設備等にて処理されていた。
このように、水処理技術においては、被処理水に含有される除去対象物に応じて処理が選択的に行われている。
【0003】
近年、河川や湖沼、海水の水質汚染が問題となっており、可能な限り廃水を再利用し放流する水を少なくするため、また水資源の有効利用としては、新たに大規模な水資源開発施設の整備を必要とせず、水需給ギャップを緩和することができるとともに、渇水時の影響をある程度緩和することができる方策として、水から汚濁物質を除去した後に再利用することが要望されている。
【0004】
水処理技術の一つとして電解法を用いた処理が提案、実用化されている。電解法による汚濁物質の処理は、電解反応により廃水中の塩素若しくは外部添加した塩素から次亜塩素酸を生成し、該次亜塩素酸の酸化力を利用して汚濁物質を分解するものである。このような電解法を用いた処理は、処理速度が速く、電気を通じるだけで容易に被酸化物を分解できるという利点から、近年注目されている技術である。
【0005】
特許文献1(特開2004−330182号公報)には、窒素化合物を含む廃水に対し電解処理を行い、その後段にて生物処理を行い窒素成分を除去する方法が開示されているが、本手法では効率的な電解を行うため、流量に応じた塩化物イオン源の添加が必要となり、処理コストが嵩むといった欠点がある。
特許文献2(特開2005−218983号公報)には、電解設備と濃縮装置を備えた、窒素化合物及び有機物の除去方法が示されているが、処理完了後に陽極側から陰極側へ移送する必要があり、機器点数が増えるといった欠点がある。また、電解槽内で窒素成分を除去可能なのは陽極域のみのため、装置規模に対し投入可能な量は少なく移送の回数が増えるため稼働時間が減少し、設備を大型化して対応しなければならないといった課題がある。
【0006】
【特許文献1】特開2004−330182号公報
【特許文献2】特開2005−218983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、高い電解効率で以って処理を行うことができ、且つ電解処理後の処理水を再利用に適した水質とすることができる水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、
被酸化物含有水に還元剤を添加して塩素を還元する還元装置と、該還元後の被処理水中の塩化物イオンを濃縮する濃縮装置と、該濃縮により得られた濃縮水を電解して次亜塩素酸を生成し、該次亜塩素酸により被酸化物を酸化分解する電解装置と、該電解後の電解処理液を前記還元装置に循環させる循環ラインと、を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明では、濃縮装置の後段に電解装置を設置することで、塩化物イオン濃度の高い濃縮液を電解処理することとなり、電解効率を高く維持することが可能で且つ電解の制御が容易となるため過剰な電圧をかける必要がない。また、電解装置の後流側に還元装置を設けることで、濃縮装置に悪影響を及ぼす残留塩素を処理することができ、濃縮装置の寿命を向上させることができる。また、電解装置と還元装置の間に被酸化物含有水を流入させることで、電解装置より排出される残留塩素を消費でき、還元剤の注入量を低減できるとともに、被酸化物含有水の窒素成分を分解することができる。さらには、貯留装置を設置し、一定の滞留時間を設けることで電解装置における残留塩素濃度の制御を簡素化することができる。
尚、本発明では除去対象物とされる被酸化物は、アルコール類、フェノール類、炭化水素類、アルデヒド類、ケトン類、脂肪酸類、エステル類、アミン類、窒素酸化物、アンモニア、色度成分、臭気成分に代表される物質である。
【0010】
また、前記還元装置から排出される被処理水に、凝集ろ過設備、砂ろ過設備、加圧浮上分離槽、MF膜又はUF膜、pH調整設備から選択される少なくとも一の処理を行う前処理装置を備え、該前処理後の被処理水を前記濃縮装置に導入することを特徴とする。
このように、膜前処理装置を備えることにより、濃縮装置における分離効率を向上させることが可能である。
【0011】
また、前記濃縮装置が、逆浸透膜装置が多段に配置され複数段階の濃度の濃縮水を得る装置であり、該濃縮装置で得られた高濃度の濃縮水の少なくとも一部を前記還元装置に返送することを特徴とする。尚、前記多段の配置構成は、クロスフリー方式を採用することが好ましい。
これにより、電解設備への流入水量を少なくできる。即ち、より高い濃度の濃縮水を得ることが可能となる。また、廃水性状に変動がある場合は、返送濃縮水の循環量を調整することで、常に一定水質の濃縮水を電解設備に供給でき、電解設備の安定運転が可能となる。
【0012】
また、前記還元装置から排出される被処理水の塩化物イオン濃度が8000mg/L以下となるように、前記前処理装置から汚泥を引き抜くことを特徴とする。
このように、電解処理サイクル内の塩化物イオンを8000mg/L以下とすることにより生物処理装置における生物処理に阻害を与えず処理が可能となるとともに、電解装置内で高濃度の塩化物イオンを外添することなく維持できるため、高効率処理が可能となる。
【0013】
また、前記濃縮装置にて得られた透過水を洗浄水として再利用する場合に、洗浄後の洗浄廃水とともに前記膜前処理装置から引き抜いた汚泥を凝集沈殿する凝集沈殿装置を備えたことを特徴とする。これにより、電解処理サイクルと、洗浄廃水処理系における凝集沈殿装置を一元化することができ、システム全体の小型化が図れる。
さらに、前記還元装置から排出される被処理水が導入される生物処理装置若しくはイオン交換膜処理装置を設け、硝酸態窒素が除去された被処理水を前記濃縮装置に導入することを特徴とする。このように、生物処理装置若しくはイオン交換膜処理装置を設けることにより、被酸化物含有水中の硝酸態窒素を除去でき、水質の向上が期待できる。
さらにまた、前記電解装置から発生する熱を前記濃縮装置の前段にて被処理水に供給する熱交換手段を備えたことを特徴とする。このように、熱交換手段により濃縮装置に流入させる水温を制御して一定の温度とすることで圧力を変化させることなく一定の透過水量を確保することができる。
【0014】
また、前記電解装置内に析出した硬度成分を重力沈降、酸添加による溶解、水洗のうち少なくとも一の手段により回収する手段を設け、該回収した硬度成分を前記濃縮装置にて得られる透過水に添加することを特徴とする。
このように、電解設備内で硬度成分を析出させ塩酸にて溶解させることで回収する。回収した硬度成分を濃縮装置の透過水に添加し、親水用水として利用することにより、電解性能低下・電極寿命に悪影響を及ぼす硬度成分を回収し、透過水に添加することで、親水用水生成時に必要な硬度成分を内製化できる。
【0015】
さらに、前記電解装置が、塩素含有水を供給されて2000〜2500mg/Lの遊離塩素濃度まで電解を行う構成であり、前記還元装置の前段に反応槽を設け、該反応槽に前記電解装置からの電解処理液を導入し、前記濃縮装置にて得られる濃縮水の少なくとも一部を前記電解装置に返送することを特徴とする。
このように、遊離塩素濃度を2500mg/L以下とすることで、効率的な電解ができる。また、高濃度塩水を選択的に返送することで、塩素含有水の使用量を低減できる。さらに、電解装置の電極に悪影響を及ぼす有機物等が流入し難いため電解設備の長寿命化が図れる。
【0016】
さらにまた、前記被酸化物含有水を膜前処理装置にて膜前処理し、膜前処理水を濃縮装置にて濃縮した後に電解装置に流入させて電解処理することが好適である。
これにより、前段側で濃縮装置により分離処理を行うため、後段側の設備をコンパクト化できる。流量が減ることによって塩化物イオン源等の薬注量も低減できる。また、透過水を放流前段の希釈に用いることができる。さらに、処理対象物の濃度を増加させることができ、電解設備内での制御が容易になる。
【発明の効果】
【0017】
以上記載のごとく本発明によれば、電解装置の上流側に濃縮装置を設けることにより、電解効率を高く維持することができるため被酸化物の除去効率を向上させることができ、また電解反応の制御を容易化することが可能である。また、濃縮装置の前段に還元装置を設けることにより、濃縮装置に悪影響を及ぼす残留塩素を処理することができ、濃縮装置の寿命を向上させることができる。また、前処理装置を備えることにより、濃縮装置における分離効率を向上させることが可能である。さらに、逆浸透膜装置が多段に配置された濃縮装置とすることにより、電解設備への流入水量を少なくできる。
【0018】
また、電解処理サイクル内の塩化物イオンを8000mg/L以下とすることにより電解装置内で高濃度の塩化物イオンを外添することなく維持できるため、高効率処理が可能となる。また、電解処理サイクルと、洗浄廃水処理系における凝集沈殿装置を一元化することができ、システム全体の小型化が図れる。さらに、生物処理装置若しくはイオン交換膜処理装置を設けることにより、被酸化物含有水中の硝酸態窒素を除去でき、水質の向上が期待できる。さらにまた、熱交換手段により濃縮装置に流入させる水温を制御することにより、一定の温度とすることで圧力を変化させることなく一定の透過水量を確保することができる。
【0019】
また、電解設備内でミネラル成分を析出させ塩酸にて溶解させることで回収する。回収したミネラル成分を濃縮装置の透過水に添加し、親水用水等の硬度成分含有用水として再利用することにより、電解性能低下・電極寿命に悪影響を及ぼす硬度成分を回収し、透過水に添加することで、親水用水生成時に必要な硬度成分を内製化できる。また、還元装置後の遊離塩素濃度を2500mg/L以下とすることで、効率的な電解ができる。さらにまた、電解装置の前段側で濃縮装置により分離処理を行うことにより、後段側の設備をコンパクト化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明の実施例1に係る水処理フローを示す図、図2は実施例1の応用例を示す図、図3は本発明の実施例2に係る水処理フローを示す図、図6は本発明の実施例3に係る水処理フローを示す図、図7は本発明の実施例4に係る水処理フローを示す図、図8は本発明の実施例5に係る水処理フローを示す図、図9は本発明の実施例6に係る水処理フローを示す図である。
【0021】
尚、本実施例は、塩素含有水を電解することにより生成した次亜塩素酸の酸化力により、被酸化物含有水中の被酸化物を酸化分解する構成となっている。除去対象物とされる物質は、アルコール類、フェノール類、炭化水素類、アルデヒド類、ケトン類、脂肪酸類、エステル類、アミン類、窒素酸化物、アンモニア、色度成分、臭気成分に代表される被酸化物である。
【実施例1】
【0022】
図1及び図2に本実施例1に係る水処理フローを示す。本実施例1は、上記したような被酸化物を処理可能であるが、特に窒素化合物の除去に適している。被酸化物含有水は、含有される被酸化物の濃度が比較的高いものであり、数十ppm程度まで処理可能である。また、被酸化物含有水の処理量は数十m3/日程度まで処理可能である。
本実施例1は図1に示すように、被酸化物含有水10が流入する還元装置1と、還元後の還元処理水が流入する膜前処理装置2と、膜前処理した膜前処理水を膜分離により濃縮する濃縮装置3と、濃縮装置3により得られる濃縮水15を電解する電解装置4と、電解処理液17を還元装置1に循環させる循環ラインとから構成され、これらにより電解処理サイクルが形成されている。
【0023】
還元装置1は、チオ硫酸ナトリウム等の還元剤11の供給手段を有し、後述する電解装置4から流入する電解処理液17中の残留塩素を還元剤により還元する装置である。還元反応式は以下の通りである。
4HClO+2Na++S2O32−+6OH−→2Na++2SO42−+4Cl−+5H2O
Na2S2O3+4Cl2+5H2O→2NaCl+2H2SO4+6HCl
【0024】
膜前処理装置2は、濃縮装置3流入前の水質調整を行う装置であり、凝集ろ過設備、砂ろ過設備、加圧浮上分離槽、MF膜又はUF膜、pH調整設備から選択される少なくとも一の処理を行う。例として、(1)凝集ろ過設備+砂ろ過設備、(2)加圧浮上分離槽+砂ろ過設備、(3)凝集沈殿槽+砂ろ過設備、(4)MF膜またはUF膜、(5)pH調整設備等が挙げられる。
濃縮装置3は、逆浸透膜装置及び電気透析装置のうち少なくとも一つから構成され、膜前処理した膜前処理水12を、塩化物イオンが濃縮された濃縮水15と、透過水14とに分離する。該濃縮装置3では、塩化物イオンとともに被酸化物も濃縮される。
【0025】
電解装置4は、少なくとも一対の電極を有して電解により次亜塩素酸を生成し、該次亜塩素酸の酸化力により被酸化物を酸化分解する装置である。
被酸化物を電解する方法としては、図1に示すように塩化物イオンを高濃度で含有する濃縮水15を電解槽4内に直接流入させて電解により次亜塩素酸を生成し、電解装置4内で該次亜塩素酸と被酸化物を接触させて酸化分解する方式と、図2に示すように電解装置4と還元設備1の間に反応槽5を設け、電解装置4で電解生成した次亜塩素酸を含む電解処理液17を反応槽5に流入させ、被酸化物含有水10及び電解処理液17に含まれる被酸化物を酸化分解させる方式が存在する。反応槽5を設けた場合は電解装置4内で過剰に電解を行い、遊離塩素濃度が高い電解処理液として流入させても良い。
【0026】
図1を参照して水処理の流れにつき説明する。まず、被酸化物含有水10は還元設備1に流入し、該還元設備1では後流側の電解装置4から流入する電解処理液17に含有される残留塩素を還元する。このとき、還元装置1には被酸化物含有水10が流入しているため、電解処理液17に含まれる残留塩素を消費でき、還元剤11の注入量を低減できるとともに、被酸化物含有水10中の被酸化物を分解することができる。
還元装置1から排出される還元処理水は膜前処理装置2に流入し、ここで主として水質調整が行われる。膜前処理装置2から排出される膜前処理水12は濃縮装置3に流入し、逆浸透膜及び/又は電気透析により処理水中の塩化物イオンが濃縮される。このとき、同時に除去対象である被酸化物も濃縮される。濃縮装置3にて透過した透過水14は再利用に適した水質のものが得られる。
【0027】
一方、塩化物イオンが濃縮された濃縮水15の全量若しくは一部は電解装置4に流入し、該電解装置4にて電解により強酸化力を有する次亜塩素酸が生成される。次亜塩素酸を生成する電解反応では塩化物イオン濃度が高い方が高効率で反応が進行するが、本実施例では濃縮装置3にて塩化物イオンを濃縮した濃縮水15を電解するため、高効率で次亜塩素酸が生成することができる。また、次亜塩素酸により酸化分解される被酸化物も同様に濃縮されているため、分解効率も向上する。
また、膜前処理装置2から次亜塩素酸を含む電解液13を引き抜き、これを消毒用水等の目的で再利用するようにしてもよい。
【0028】
このように本実施例によれば、濃縮装置3の後段に電解装置4を設置することで、塩化物イオン濃度の高い濃縮水15を電解処理することとなり、電解効率を高く維持することが可能で且つ電解の制御が容易となるため過剰な電圧をかける必要がない。
また、電解装置4の後流側に還元装置1を設けることで、濃縮装置3に悪影響を及ぼす残留塩素を処理することができ、濃縮装置3の寿命を向上させることができる。
また、電解装置4と還元装置1の間に被酸化物含有水10を流入させることで、電解装置4より排出される残留塩素を消費でき、還元剤11の注入量を低減できるとともに、被酸化物含有水10の窒素成分を分解することができる。
さらには、貯留装置5を設置し、一定の滞留時間を設けることで電解装置4における残留塩素濃度の制御を簡素化することができる。
【実施例2】
【0029】
図3に本実施例2に係る水処理フローを示す。本実施例2において、被酸化物含有水は、含有される被酸化物の濃度が比較的高いものであり、数十ppm〜数百ppm程度まで処理可能である。また、被酸化物含有水の処理量は100m3/日程度まで処理可能であり、さらに温度変動のある被酸化物含有水にも適している。
尚、以下の実施例2乃至実施例6において、上記した実施例1と同様に構成についてはその詳細な説明を省略する。
本実施例2は図3に示すように、被酸化物含有水10が流入する還元装置1と、還元後の還元処理水を生物処理する生物処理装置5と、生物処理液が流入する膜前処理装置2と、膜前処理した膜前処理水を膜分離により濃縮する濃縮装置3と、濃縮装置3により得られた濃縮水15を電解する電解装置4と、電解処理液17を還元装置1に循環させる循環ラインとから構成され、これらにより電解処理サイクルが形成されている。
また、本実施例では濃縮装置3から得られる透過水14を洗浄水として再利用する構成となっており、洗浄20に用いた洗浄廃水21から泥、砂24等を分離する加圧浮上装置22と、分離液23を凝集沈殿する凝集沈殿装置25を備えており、該凝集沈殿装置25では、膜前処理装置2等の電解処理サイクルからの液を併せて凝集分離する構成となっている。
【0030】
生物処理装置5は、生物学的脱窒素若しくは嫌気処理による生物処理を行う装置である。また、生物処理装置5の代わりに、硝酸性窒素を除去するイオン交換装置を設置するようにしてもよい。
本実施例2では、膜前処理装置2に汚泥引抜き手段を設け、生物処理装置5に流入する還元処理液の塩化物イオン濃度が8000mg/L以下となるように、還元装置1への被酸化物含有水10の流入量及び膜前処理装置2からの汚泥引き抜き量を調整する。
このように、電解処理サイクル内の塩化物イオンを8000mg/L以下とすることにより生物処理装置5における生物処理に阻害を与えず処理が可能となるとともに、電解装置4内で塩化物イオンを外添することなく維持できるため、高効率処理が可能となる。一般に電解処理において必要となる塩化物イオン濃度は少なくとも2000mg/L以上であり、望ましくは5000mg/L以上と高濃度であればあるほど処理の効率化を図ることが可能となるが、本構成では塩化物イオンを8000mg/L以下に低減させているものの、電解処理には十分な濃度の塩化物イオン濃度が循環系内(特に濃縮後の電解装置4内)に残留することとなり、塩化物イオンの外添を不要若しくは低減することが可能となるものである。
【0031】
また、本実施例2の特徴的な構成として、濃縮装置3で得られる透過水14を洗浄に用い、洗浄廃水21の処理系における凝集沈殿装置25にて、電解処理サイクルから排出される汚泥を併せて凝集処理する構成となっている。
洗浄廃水21の処理系は、透過水14に必要に応じて補給水を加えて、これを機器や車両等の洗浄用水として洗浄20に使用し、洗浄後の洗浄廃水21を処理するものであり、加圧浮上装置22と、凝集沈殿装置25から構成される。洗浄廃水21は加圧浮上装置22にて加圧浮上により砂、泥24等の固体が除去され、固体を分離除去された分離液23は、凝集沈殿装置25に導入される。さらに該凝集沈殿装置25には、電解処理サイクルの膜前処理装置2から引き抜いた汚泥が投入され、これらに凝集剤を添加して凝集沈殿処理する。凝集沈殿装置25で分離された汚泥27は排出され、分離液26は必要に応じて他の水処理を施された後に放流される。
このように、洗浄廃水21の処理系内に、電解処理サイクルから排出される汚泥を流入させることで設備を一元化でき、システム全体の小型化、ランニングコストの低減が可能となる。
【0032】
さらに本実施例2の特徴的な構成として、濃縮装置3が逆浸透膜装置である場合、逆浸透膜装置前段と電解装置4で熱交換を行う構成を備えている。
具体的には、電解装置4に冷却水を供給する冷却装置1と、濃縮装置3の前段で膜前処理水12を加温する熱交換器6とを備え、電解装置4から発生する熱を熱交換により濃縮装置3前段の膜前処理水12に与えるようになっている(※2)。一方、膜前処理水12と熱交換して冷却された水は冷却装置7に循環させ(※1)、電解装置4の冷却に用いられる。このとき、前記電解装置4を冷却する補給水が濃縮装置3からの透過水14であることが好ましい(※3)。
【0033】
濃縮装置3が備える逆浸透膜の適用温度は、例えばセルロース・アセテート膜(CA/CTA膜)の場合は0〜35℃、合成薄層フィルム膜(TFC膜)の場合は0〜45℃である。従って、熱交換器6ではこれらの適用温度を超えない値に設定することが望ましい。このように、熱交換器6により濃縮装置3に流入させる水温を制御して一定の温度とすることで、圧力を変化させることなく一定の透過水量を確保することができる。
【0034】
また逆浸透膜は、図4のRO膜における水温と透過水量の関係を示すグラフに示されるように、水温による透過水量変化が2〜3%/℃(同一運転圧力下)であり、被処理水の温度を上げるほど透過水量も大きくなる。一方、図5のRO膜における水温と阻止率の関係を示すグラフに示されるように、温度を上げると阻止率が下がる。本実施例の好適な条件としては、RO膜の適用温度内で、得られる透過水が目的とする水質となるような阻止率を確保し、且つ透過水量をできるだけ大きくして濃縮装置3の小型化を図ることが好ましい。再利用先が洗浄等のように高水質を求められない場合には、特に阻止率は問題となることがないため、適用温度内でできるだけ高温とするとよい。
尚、本構成は、冬季など濃縮装置3流入する液温の低下が起こる場合に流量の補正的な用途として用いることもできる。
【実施例3】
【0035】
図6に本実施例3に係る水処理フローを示す。本実施例3において、被酸化物含有水は、含有される被酸化物の濃度が数ppm〜数十ppm程度まで処理可能である。また、被酸化物含有水の処理量は数十m3/日程度まで処理可能である。
本実施例3は図6に示すように、実施例1の構成において、濃縮装置3を逆浸透膜装置が多段に配置された構成としている。図6には一例としてクロスフロー式でクリスマスツリー状に構成される逆浸透膜膜装置30a〜30c、31a〜31b、32aを示してある。
膜前処理装置2から排出される膜前処理水12は、一段目の逆浸透膜装置30a〜30cに流入し、夫々の装置から透過水14と濃縮水15が得られる。濃縮水15の少なくとも一部は二段目の逆浸透膜装置31a〜31bに流入し、同様に透過水14と濃縮水15が得られる。さらに二段目の逆浸透膜装置31a〜31bから排出した濃縮水15の少なくとも一部は三段目の逆浸透膜装置32aに流入する。
本実施例3では、膜前処理水12のイオン濃度が低い場合に、逆浸透膜装置内における中間濃縮水の一部を引き抜き、返送濃縮水15’として還元装置1に返送するようになっている。
これにより、電解設備4への流入水量を少なくできる。即ち、より高い濃度の濃縮水を得ることが可能となる。また、被酸化物含有水の性状に変動がある場合は、返送濃縮水15’の循環量を調整することで、常に一定水質の濃縮水15を電解設備4に供給でき、電解設備4の安定運転が可能となる。
【実施例4】
【0036】
図7に本実施例4に係る水処理フローを示す。本実施例4において、被酸化物含有水は、含有される被酸化物の濃度が数十ppm程度まで処理可能である。また、被酸化物含有水の処理量は数十m3/日程度まで処理可能である。
本実施例5は、透過水17を親水用水として再利用する場合に適しており、電解装置4内に析出した硬度成分を重力沈降、酸添加による溶解、水洗のうち少なくとも一つの手段により回収し、濃縮装置3からの透過水に添加する構成となっている。
具体的には、濃縮装置3で得られる透過水14のランゲリア係数を測定するランゲリア係数測定手段30を設け、透過水14のランゲリア係数に基づき、電解処理液17から分離した硬度成分含有水31を透過水14に供給する。
電解処理液17からの硬度成分の分離には、電解装置4内で硬度成分を析出させ塩酸を添加することにより硬度成分を回収する方法が挙げられる。電解装置4の後段には、電解処理液17を導入して硬度成分と分離するミネラル沈殿槽8を設け、ここで沈降分離した硬度成分を含む硬度成分含有水31を透過水14に供給する。
このように、電解処理液17の硬度成分を回収することにより、電解処理サイクル内に硬度成分が析出することがなく、電極等に悪影響を与えることを防止できる。また、硬度成分を回収して透過水14に供給することにより、親水用水をはじめとして、ビオトープ形成、機器洗浄等に適した再利用を行うことが可能となる。
【0037】
また、他の硬度成分を安定化する方法として、電解装置4に十分な量の炭酸ガスを供給して再炭酸処理を施すことにより、炭酸カルシウムの析出を防止する方法がある。これは、炭酸ガスを供給して再炭酸化することにより水のpHは下がり炭酸カルシウムは炭酸水素カルシウムとなるが、さらに水中に十分な従属性遊離炭酸を残すようにすれば炭酸水素カルシウムは安定化し、炭酸カルシウムを析出することはなくなるため、電解処理サイクル内に硬度成分が析出することを防止できるものである。この構成において、電解処理液17の一部を硬度成分含有水として透過水14に供給することにより、親水用水等の硬度成分含有水が得られる。
【0038】
ここで、ランゲリア係数とは、水のpH、カルシウムイオン濃度、総アルカリ度及び溶解性物質(補正値計算に使う)から、次の式によって求められる。
ランゲリア係数(LI)=pH−pHs
=pH−8.313+log[Ca++]+log[A]−S
ここで、pH:水の実際のpH値、pHs:衡状態にあるときのpH値、log[Ca++]:カルシウムイオン濃度の対数、log[A]:総アルカリ度の対数、S:補正値であうる。
ランゲリア係数がプラスの値で 数値が大きい程、炭酸カルシウムの析出が起こり易く非腐食性であり、ゼロであれば炭酸カルシウムは析出も溶解もしない平衡状態にあり、マイナスの値では炭酸カルシウム皮膜は形成されにくく、その絶対値が大きくなるほど水の腐食傾向は強くなる。
従って、水のpH、カルシウムイオン濃度、総アルカリ度及び溶解性物質からランゲリア係数を求め、該ランゲリア係数に基づき透過水14に硬度成分含有水31を供給することにより、高品質の再利用水を提供することが可能となる。
【0039】
このように本実施例によれば、電解装置4内で硬度成分を析出させ塩酸にて溶解させることで回収する。回収した硬度成分を濃縮装置の透過水14に添加し、親水用水等として利用することにより、電解性能低下・電極寿命に悪影響を及ぼす硬度成分を回収し、透過水14に添加することで、親水用水等の再利用水生成時に必要な硬度成分を内製化できる。
【実施例5】
【0040】
図8に本実施例5に係る水処理フローを示す。本実施例5において、被酸化物含有水の処理量は数十m3/日〜数千m3/日程度まで処理可能である。
本実施例5は、図2に示した実施例1の応用例の構成に加えて、塩化物イオン含有水を2000〜2500mg/Lの遊離塩素濃度まで電解し、被酸化物含有水10に添加し、処理液の少なくとも一部を返送する構成となっている。
電解装置4では、塩素含有水18を電解により2000〜2500mg/Lの遊離塩素を生成し、電解液を反応槽5に供給して被酸化物含有水10と混合する。尚、塩素含有水18は有機物や窒素分が殆ど含まれない海水等の塩化物イオンを含有する水である。
さらに、塩素含有水18の濃度に応じ、濃縮装置3からの濃縮水を選択的に電解設備4に返送する。これは、実施例3に示した多段型の逆浸透膜装置を用い、前段側の逆浸透膜装置から得られる低濃度濃縮水15”は電解装置4に循環させず、後段側の逆浸透膜装置から得られる高濃度濃縮水15のみを電解装置4に循環させることより実施可能である。
【0041】
本実施例5によれば、遊離塩素濃度を2500mg/L以下とすることで、効率的な電解が可能となる。また、高濃度塩水を選択的に返送することで、塩素含有水18の使用量を低減できる。さらに、電解装置4の電極に悪影響を及ぼす有機物等が流入し難いため電解装置4の長寿命化が図れる。
【実施例6】
【0042】
図9に本実施例6に係る水処理フローを示す。本実施例6において被酸化物含有水は、含有される被酸化物の濃度が比較的高いものであり、数十ppm程度まで処理可能である。また、被酸化物含有水の処理量は数十m3/日程度まで処理可能である。
本実施例6は、被酸化物含有水10を膜前処理装置2にて膜前処理し、膜前処理水12を濃縮装置3にて濃縮した後に電解装置4に流入させて電解処理する構成となっている。このとき、濃縮装置3内での差圧確保のため、塩化物イオン源を濃縮装置3の前段に添加しても良い。
本実施例6によれば、前段側で濃縮装置3により分離処理を行うため、後段側の設備をコンパクト化できる。流量が減ることによって塩化物イオン源等の薬注量も低減できる。また、透過水14を放流前段の希釈に用いることができる。さらに、処理対象物の濃度を増加させることができ、電解設備4内での制御が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施例1に係る水処理フローを示す図である。
【図2】図1に示した実施例1の応用例を示す図である。
【図3】本発明の実施例2に係る水処理フローを示す図である。
【図4】RO膜における水温と透過水量の関係を示すグラフである。
【図5】RO膜における水温と阻止率の関係を示すグラフである。
【図6】本発明の実施例3に係る水処理フローを示す図である。
【図7】本発明の実施例4に係る水処理フローを示す図である。
【図8】本発明の実施例5に係る水処理フローを示す図である。
【図9】本発明の実施例6に係る水処理フローを示す図である。
【図10】従来の生活廃水の処理フローを示す図である。
【図11】従来の洗車廃水を処理フローを示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 還元装置
2 膜前処理装置
3 濃縮装置
4 電解装置
5 生物処理装置
6 熱交換器
7 冷却装置
8 ミネラル沈殿槽
13 電解液
14 透過水
15 濃縮水
17 電解処理液
18 塩素含有水
21 洗浄廃液
22 加圧浮上装置
30 ランゲリア係数測定手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解処理を用いて被酸化物を高効率除去する水処理技術に関し、特に、処理水を洗浄用水、親水用水等として再利用に適した水質とすることができる水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭、各種工場等から排出される各種廃水は、夫々の水質に応じた水処理が行われている。例えば、図10に示すように、し尿や台所排水、風呂排水等の生活廃水中にはN、P、COD、BOD、SSが含有されるため、浄化槽50にて生物処理を行った後に放流し、排出された浄化槽汚泥は汚泥処理設備等にて処理されていた。また、図11に示すように、上水を用いた洗車により発生した洗車廃水の場合は、砂、泥、DS、SSを含むため、加圧浮上装置51により砂、泥を分離され、凝集沈殿装置52にてPAC(ポリ塩化アルミニウム)や硫酸バンド等の凝集剤を添加されて凝集沈殿され、凝集分離液は放流され、砂、泥或いは凝集沈殿汚泥は汚泥処理設備等にて処理されていた。
このように、水処理技術においては、被処理水に含有される除去対象物に応じて処理が選択的に行われている。
【0003】
近年、河川や湖沼、海水の水質汚染が問題となっており、可能な限り廃水を再利用し放流する水を少なくするため、また水資源の有効利用としては、新たに大規模な水資源開発施設の整備を必要とせず、水需給ギャップを緩和することができるとともに、渇水時の影響をある程度緩和することができる方策として、水から汚濁物質を除去した後に再利用することが要望されている。
【0004】
水処理技術の一つとして電解法を用いた処理が提案、実用化されている。電解法による汚濁物質の処理は、電解反応により廃水中の塩素若しくは外部添加した塩素から次亜塩素酸を生成し、該次亜塩素酸の酸化力を利用して汚濁物質を分解するものである。このような電解法を用いた処理は、処理速度が速く、電気を通じるだけで容易に被酸化物を分解できるという利点から、近年注目されている技術である。
【0005】
特許文献1(特開2004−330182号公報)には、窒素化合物を含む廃水に対し電解処理を行い、その後段にて生物処理を行い窒素成分を除去する方法が開示されているが、本手法では効率的な電解を行うため、流量に応じた塩化物イオン源の添加が必要となり、処理コストが嵩むといった欠点がある。
特許文献2(特開2005−218983号公報)には、電解設備と濃縮装置を備えた、窒素化合物及び有機物の除去方法が示されているが、処理完了後に陽極側から陰極側へ移送する必要があり、機器点数が増えるといった欠点がある。また、電解槽内で窒素成分を除去可能なのは陽極域のみのため、装置規模に対し投入可能な量は少なく移送の回数が増えるため稼働時間が減少し、設備を大型化して対応しなければならないといった課題がある。
【0006】
【特許文献1】特開2004−330182号公報
【特許文献2】特開2005−218983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、高い電解効率で以って処理を行うことができ、且つ電解処理後の処理水を再利用に適した水質とすることができる水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、
被酸化物含有水に還元剤を添加して塩素を還元する還元装置と、該還元後の被処理水中の塩化物イオンを濃縮する濃縮装置と、該濃縮により得られた濃縮水を電解して次亜塩素酸を生成し、該次亜塩素酸により被酸化物を酸化分解する電解装置と、該電解後の電解処理液を前記還元装置に循環させる循環ラインと、を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明では、濃縮装置の後段に電解装置を設置することで、塩化物イオン濃度の高い濃縮液を電解処理することとなり、電解効率を高く維持することが可能で且つ電解の制御が容易となるため過剰な電圧をかける必要がない。また、電解装置の後流側に還元装置を設けることで、濃縮装置に悪影響を及ぼす残留塩素を処理することができ、濃縮装置の寿命を向上させることができる。また、電解装置と還元装置の間に被酸化物含有水を流入させることで、電解装置より排出される残留塩素を消費でき、還元剤の注入量を低減できるとともに、被酸化物含有水の窒素成分を分解することができる。さらには、貯留装置を設置し、一定の滞留時間を設けることで電解装置における残留塩素濃度の制御を簡素化することができる。
尚、本発明では除去対象物とされる被酸化物は、アルコール類、フェノール類、炭化水素類、アルデヒド類、ケトン類、脂肪酸類、エステル類、アミン類、窒素酸化物、アンモニア、色度成分、臭気成分に代表される物質である。
【0010】
また、前記還元装置から排出される被処理水に、凝集ろ過設備、砂ろ過設備、加圧浮上分離槽、MF膜又はUF膜、pH調整設備から選択される少なくとも一の処理を行う前処理装置を備え、該前処理後の被処理水を前記濃縮装置に導入することを特徴とする。
このように、膜前処理装置を備えることにより、濃縮装置における分離効率を向上させることが可能である。
【0011】
また、前記濃縮装置が、逆浸透膜装置が多段に配置され複数段階の濃度の濃縮水を得る装置であり、該濃縮装置で得られた高濃度の濃縮水の少なくとも一部を前記還元装置に返送することを特徴とする。尚、前記多段の配置構成は、クロスフリー方式を採用することが好ましい。
これにより、電解設備への流入水量を少なくできる。即ち、より高い濃度の濃縮水を得ることが可能となる。また、廃水性状に変動がある場合は、返送濃縮水の循環量を調整することで、常に一定水質の濃縮水を電解設備に供給でき、電解設備の安定運転が可能となる。
【0012】
また、前記還元装置から排出される被処理水の塩化物イオン濃度が8000mg/L以下となるように、前記前処理装置から汚泥を引き抜くことを特徴とする。
このように、電解処理サイクル内の塩化物イオンを8000mg/L以下とすることにより生物処理装置における生物処理に阻害を与えず処理が可能となるとともに、電解装置内で高濃度の塩化物イオンを外添することなく維持できるため、高効率処理が可能となる。
【0013】
また、前記濃縮装置にて得られた透過水を洗浄水として再利用する場合に、洗浄後の洗浄廃水とともに前記膜前処理装置から引き抜いた汚泥を凝集沈殿する凝集沈殿装置を備えたことを特徴とする。これにより、電解処理サイクルと、洗浄廃水処理系における凝集沈殿装置を一元化することができ、システム全体の小型化が図れる。
さらに、前記還元装置から排出される被処理水が導入される生物処理装置若しくはイオン交換膜処理装置を設け、硝酸態窒素が除去された被処理水を前記濃縮装置に導入することを特徴とする。このように、生物処理装置若しくはイオン交換膜処理装置を設けることにより、被酸化物含有水中の硝酸態窒素を除去でき、水質の向上が期待できる。
さらにまた、前記電解装置から発生する熱を前記濃縮装置の前段にて被処理水に供給する熱交換手段を備えたことを特徴とする。このように、熱交換手段により濃縮装置に流入させる水温を制御して一定の温度とすることで圧力を変化させることなく一定の透過水量を確保することができる。
【0014】
また、前記電解装置内に析出した硬度成分を重力沈降、酸添加による溶解、水洗のうち少なくとも一の手段により回収する手段を設け、該回収した硬度成分を前記濃縮装置にて得られる透過水に添加することを特徴とする。
このように、電解設備内で硬度成分を析出させ塩酸にて溶解させることで回収する。回収した硬度成分を濃縮装置の透過水に添加し、親水用水として利用することにより、電解性能低下・電極寿命に悪影響を及ぼす硬度成分を回収し、透過水に添加することで、親水用水生成時に必要な硬度成分を内製化できる。
【0015】
さらに、前記電解装置が、塩素含有水を供給されて2000〜2500mg/Lの遊離塩素濃度まで電解を行う構成であり、前記還元装置の前段に反応槽を設け、該反応槽に前記電解装置からの電解処理液を導入し、前記濃縮装置にて得られる濃縮水の少なくとも一部を前記電解装置に返送することを特徴とする。
このように、遊離塩素濃度を2500mg/L以下とすることで、効率的な電解ができる。また、高濃度塩水を選択的に返送することで、塩素含有水の使用量を低減できる。さらに、電解装置の電極に悪影響を及ぼす有機物等が流入し難いため電解設備の長寿命化が図れる。
【0016】
さらにまた、前記被酸化物含有水を膜前処理装置にて膜前処理し、膜前処理水を濃縮装置にて濃縮した後に電解装置に流入させて電解処理することが好適である。
これにより、前段側で濃縮装置により分離処理を行うため、後段側の設備をコンパクト化できる。流量が減ることによって塩化物イオン源等の薬注量も低減できる。また、透過水を放流前段の希釈に用いることができる。さらに、処理対象物の濃度を増加させることができ、電解設備内での制御が容易になる。
【発明の効果】
【0017】
以上記載のごとく本発明によれば、電解装置の上流側に濃縮装置を設けることにより、電解効率を高く維持することができるため被酸化物の除去効率を向上させることができ、また電解反応の制御を容易化することが可能である。また、濃縮装置の前段に還元装置を設けることにより、濃縮装置に悪影響を及ぼす残留塩素を処理することができ、濃縮装置の寿命を向上させることができる。また、前処理装置を備えることにより、濃縮装置における分離効率を向上させることが可能である。さらに、逆浸透膜装置が多段に配置された濃縮装置とすることにより、電解設備への流入水量を少なくできる。
【0018】
また、電解処理サイクル内の塩化物イオンを8000mg/L以下とすることにより電解装置内で高濃度の塩化物イオンを外添することなく維持できるため、高効率処理が可能となる。また、電解処理サイクルと、洗浄廃水処理系における凝集沈殿装置を一元化することができ、システム全体の小型化が図れる。さらに、生物処理装置若しくはイオン交換膜処理装置を設けることにより、被酸化物含有水中の硝酸態窒素を除去でき、水質の向上が期待できる。さらにまた、熱交換手段により濃縮装置に流入させる水温を制御することにより、一定の温度とすることで圧力を変化させることなく一定の透過水量を確保することができる。
【0019】
また、電解設備内でミネラル成分を析出させ塩酸にて溶解させることで回収する。回収したミネラル成分を濃縮装置の透過水に添加し、親水用水等の硬度成分含有用水として再利用することにより、電解性能低下・電極寿命に悪影響を及ぼす硬度成分を回収し、透過水に添加することで、親水用水生成時に必要な硬度成分を内製化できる。また、還元装置後の遊離塩素濃度を2500mg/L以下とすることで、効率的な電解ができる。さらにまた、電解装置の前段側で濃縮装置により分離処理を行うことにより、後段側の設備をコンパクト化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明の実施例1に係る水処理フローを示す図、図2は実施例1の応用例を示す図、図3は本発明の実施例2に係る水処理フローを示す図、図6は本発明の実施例3に係る水処理フローを示す図、図7は本発明の実施例4に係る水処理フローを示す図、図8は本発明の実施例5に係る水処理フローを示す図、図9は本発明の実施例6に係る水処理フローを示す図である。
【0021】
尚、本実施例は、塩素含有水を電解することにより生成した次亜塩素酸の酸化力により、被酸化物含有水中の被酸化物を酸化分解する構成となっている。除去対象物とされる物質は、アルコール類、フェノール類、炭化水素類、アルデヒド類、ケトン類、脂肪酸類、エステル類、アミン類、窒素酸化物、アンモニア、色度成分、臭気成分に代表される被酸化物である。
【実施例1】
【0022】
図1及び図2に本実施例1に係る水処理フローを示す。本実施例1は、上記したような被酸化物を処理可能であるが、特に窒素化合物の除去に適している。被酸化物含有水は、含有される被酸化物の濃度が比較的高いものであり、数十ppm程度まで処理可能である。また、被酸化物含有水の処理量は数十m3/日程度まで処理可能である。
本実施例1は図1に示すように、被酸化物含有水10が流入する還元装置1と、還元後の還元処理水が流入する膜前処理装置2と、膜前処理した膜前処理水を膜分離により濃縮する濃縮装置3と、濃縮装置3により得られる濃縮水15を電解する電解装置4と、電解処理液17を還元装置1に循環させる循環ラインとから構成され、これらにより電解処理サイクルが形成されている。
【0023】
還元装置1は、チオ硫酸ナトリウム等の還元剤11の供給手段を有し、後述する電解装置4から流入する電解処理液17中の残留塩素を還元剤により還元する装置である。還元反応式は以下の通りである。
4HClO+2Na++S2O32−+6OH−→2Na++2SO42−+4Cl−+5H2O
Na2S2O3+4Cl2+5H2O→2NaCl+2H2SO4+6HCl
【0024】
膜前処理装置2は、濃縮装置3流入前の水質調整を行う装置であり、凝集ろ過設備、砂ろ過設備、加圧浮上分離槽、MF膜又はUF膜、pH調整設備から選択される少なくとも一の処理を行う。例として、(1)凝集ろ過設備+砂ろ過設備、(2)加圧浮上分離槽+砂ろ過設備、(3)凝集沈殿槽+砂ろ過設備、(4)MF膜またはUF膜、(5)pH調整設備等が挙げられる。
濃縮装置3は、逆浸透膜装置及び電気透析装置のうち少なくとも一つから構成され、膜前処理した膜前処理水12を、塩化物イオンが濃縮された濃縮水15と、透過水14とに分離する。該濃縮装置3では、塩化物イオンとともに被酸化物も濃縮される。
【0025】
電解装置4は、少なくとも一対の電極を有して電解により次亜塩素酸を生成し、該次亜塩素酸の酸化力により被酸化物を酸化分解する装置である。
被酸化物を電解する方法としては、図1に示すように塩化物イオンを高濃度で含有する濃縮水15を電解槽4内に直接流入させて電解により次亜塩素酸を生成し、電解装置4内で該次亜塩素酸と被酸化物を接触させて酸化分解する方式と、図2に示すように電解装置4と還元設備1の間に反応槽5を設け、電解装置4で電解生成した次亜塩素酸を含む電解処理液17を反応槽5に流入させ、被酸化物含有水10及び電解処理液17に含まれる被酸化物を酸化分解させる方式が存在する。反応槽5を設けた場合は電解装置4内で過剰に電解を行い、遊離塩素濃度が高い電解処理液として流入させても良い。
【0026】
図1を参照して水処理の流れにつき説明する。まず、被酸化物含有水10は還元設備1に流入し、該還元設備1では後流側の電解装置4から流入する電解処理液17に含有される残留塩素を還元する。このとき、還元装置1には被酸化物含有水10が流入しているため、電解処理液17に含まれる残留塩素を消費でき、還元剤11の注入量を低減できるとともに、被酸化物含有水10中の被酸化物を分解することができる。
還元装置1から排出される還元処理水は膜前処理装置2に流入し、ここで主として水質調整が行われる。膜前処理装置2から排出される膜前処理水12は濃縮装置3に流入し、逆浸透膜及び/又は電気透析により処理水中の塩化物イオンが濃縮される。このとき、同時に除去対象である被酸化物も濃縮される。濃縮装置3にて透過した透過水14は再利用に適した水質のものが得られる。
【0027】
一方、塩化物イオンが濃縮された濃縮水15の全量若しくは一部は電解装置4に流入し、該電解装置4にて電解により強酸化力を有する次亜塩素酸が生成される。次亜塩素酸を生成する電解反応では塩化物イオン濃度が高い方が高効率で反応が進行するが、本実施例では濃縮装置3にて塩化物イオンを濃縮した濃縮水15を電解するため、高効率で次亜塩素酸が生成することができる。また、次亜塩素酸により酸化分解される被酸化物も同様に濃縮されているため、分解効率も向上する。
また、膜前処理装置2から次亜塩素酸を含む電解液13を引き抜き、これを消毒用水等の目的で再利用するようにしてもよい。
【0028】
このように本実施例によれば、濃縮装置3の後段に電解装置4を設置することで、塩化物イオン濃度の高い濃縮水15を電解処理することとなり、電解効率を高く維持することが可能で且つ電解の制御が容易となるため過剰な電圧をかける必要がない。
また、電解装置4の後流側に還元装置1を設けることで、濃縮装置3に悪影響を及ぼす残留塩素を処理することができ、濃縮装置3の寿命を向上させることができる。
また、電解装置4と還元装置1の間に被酸化物含有水10を流入させることで、電解装置4より排出される残留塩素を消費でき、還元剤11の注入量を低減できるとともに、被酸化物含有水10の窒素成分を分解することができる。
さらには、貯留装置5を設置し、一定の滞留時間を設けることで電解装置4における残留塩素濃度の制御を簡素化することができる。
【実施例2】
【0029】
図3に本実施例2に係る水処理フローを示す。本実施例2において、被酸化物含有水は、含有される被酸化物の濃度が比較的高いものであり、数十ppm〜数百ppm程度まで処理可能である。また、被酸化物含有水の処理量は100m3/日程度まで処理可能であり、さらに温度変動のある被酸化物含有水にも適している。
尚、以下の実施例2乃至実施例6において、上記した実施例1と同様に構成についてはその詳細な説明を省略する。
本実施例2は図3に示すように、被酸化物含有水10が流入する還元装置1と、還元後の還元処理水を生物処理する生物処理装置5と、生物処理液が流入する膜前処理装置2と、膜前処理した膜前処理水を膜分離により濃縮する濃縮装置3と、濃縮装置3により得られた濃縮水15を電解する電解装置4と、電解処理液17を還元装置1に循環させる循環ラインとから構成され、これらにより電解処理サイクルが形成されている。
また、本実施例では濃縮装置3から得られる透過水14を洗浄水として再利用する構成となっており、洗浄20に用いた洗浄廃水21から泥、砂24等を分離する加圧浮上装置22と、分離液23を凝集沈殿する凝集沈殿装置25を備えており、該凝集沈殿装置25では、膜前処理装置2等の電解処理サイクルからの液を併せて凝集分離する構成となっている。
【0030】
生物処理装置5は、生物学的脱窒素若しくは嫌気処理による生物処理を行う装置である。また、生物処理装置5の代わりに、硝酸性窒素を除去するイオン交換装置を設置するようにしてもよい。
本実施例2では、膜前処理装置2に汚泥引抜き手段を設け、生物処理装置5に流入する還元処理液の塩化物イオン濃度が8000mg/L以下となるように、還元装置1への被酸化物含有水10の流入量及び膜前処理装置2からの汚泥引き抜き量を調整する。
このように、電解処理サイクル内の塩化物イオンを8000mg/L以下とすることにより生物処理装置5における生物処理に阻害を与えず処理が可能となるとともに、電解装置4内で塩化物イオンを外添することなく維持できるため、高効率処理が可能となる。一般に電解処理において必要となる塩化物イオン濃度は少なくとも2000mg/L以上であり、望ましくは5000mg/L以上と高濃度であればあるほど処理の効率化を図ることが可能となるが、本構成では塩化物イオンを8000mg/L以下に低減させているものの、電解処理には十分な濃度の塩化物イオン濃度が循環系内(特に濃縮後の電解装置4内)に残留することとなり、塩化物イオンの外添を不要若しくは低減することが可能となるものである。
【0031】
また、本実施例2の特徴的な構成として、濃縮装置3で得られる透過水14を洗浄に用い、洗浄廃水21の処理系における凝集沈殿装置25にて、電解処理サイクルから排出される汚泥を併せて凝集処理する構成となっている。
洗浄廃水21の処理系は、透過水14に必要に応じて補給水を加えて、これを機器や車両等の洗浄用水として洗浄20に使用し、洗浄後の洗浄廃水21を処理するものであり、加圧浮上装置22と、凝集沈殿装置25から構成される。洗浄廃水21は加圧浮上装置22にて加圧浮上により砂、泥24等の固体が除去され、固体を分離除去された分離液23は、凝集沈殿装置25に導入される。さらに該凝集沈殿装置25には、電解処理サイクルの膜前処理装置2から引き抜いた汚泥が投入され、これらに凝集剤を添加して凝集沈殿処理する。凝集沈殿装置25で分離された汚泥27は排出され、分離液26は必要に応じて他の水処理を施された後に放流される。
このように、洗浄廃水21の処理系内に、電解処理サイクルから排出される汚泥を流入させることで設備を一元化でき、システム全体の小型化、ランニングコストの低減が可能となる。
【0032】
さらに本実施例2の特徴的な構成として、濃縮装置3が逆浸透膜装置である場合、逆浸透膜装置前段と電解装置4で熱交換を行う構成を備えている。
具体的には、電解装置4に冷却水を供給する冷却装置1と、濃縮装置3の前段で膜前処理水12を加温する熱交換器6とを備え、電解装置4から発生する熱を熱交換により濃縮装置3前段の膜前処理水12に与えるようになっている(※2)。一方、膜前処理水12と熱交換して冷却された水は冷却装置7に循環させ(※1)、電解装置4の冷却に用いられる。このとき、前記電解装置4を冷却する補給水が濃縮装置3からの透過水14であることが好ましい(※3)。
【0033】
濃縮装置3が備える逆浸透膜の適用温度は、例えばセルロース・アセテート膜(CA/CTA膜)の場合は0〜35℃、合成薄層フィルム膜(TFC膜)の場合は0〜45℃である。従って、熱交換器6ではこれらの適用温度を超えない値に設定することが望ましい。このように、熱交換器6により濃縮装置3に流入させる水温を制御して一定の温度とすることで、圧力を変化させることなく一定の透過水量を確保することができる。
【0034】
また逆浸透膜は、図4のRO膜における水温と透過水量の関係を示すグラフに示されるように、水温による透過水量変化が2〜3%/℃(同一運転圧力下)であり、被処理水の温度を上げるほど透過水量も大きくなる。一方、図5のRO膜における水温と阻止率の関係を示すグラフに示されるように、温度を上げると阻止率が下がる。本実施例の好適な条件としては、RO膜の適用温度内で、得られる透過水が目的とする水質となるような阻止率を確保し、且つ透過水量をできるだけ大きくして濃縮装置3の小型化を図ることが好ましい。再利用先が洗浄等のように高水質を求められない場合には、特に阻止率は問題となることがないため、適用温度内でできるだけ高温とするとよい。
尚、本構成は、冬季など濃縮装置3流入する液温の低下が起こる場合に流量の補正的な用途として用いることもできる。
【実施例3】
【0035】
図6に本実施例3に係る水処理フローを示す。本実施例3において、被酸化物含有水は、含有される被酸化物の濃度が数ppm〜数十ppm程度まで処理可能である。また、被酸化物含有水の処理量は数十m3/日程度まで処理可能である。
本実施例3は図6に示すように、実施例1の構成において、濃縮装置3を逆浸透膜装置が多段に配置された構成としている。図6には一例としてクロスフロー式でクリスマスツリー状に構成される逆浸透膜膜装置30a〜30c、31a〜31b、32aを示してある。
膜前処理装置2から排出される膜前処理水12は、一段目の逆浸透膜装置30a〜30cに流入し、夫々の装置から透過水14と濃縮水15が得られる。濃縮水15の少なくとも一部は二段目の逆浸透膜装置31a〜31bに流入し、同様に透過水14と濃縮水15が得られる。さらに二段目の逆浸透膜装置31a〜31bから排出した濃縮水15の少なくとも一部は三段目の逆浸透膜装置32aに流入する。
本実施例3では、膜前処理水12のイオン濃度が低い場合に、逆浸透膜装置内における中間濃縮水の一部を引き抜き、返送濃縮水15’として還元装置1に返送するようになっている。
これにより、電解設備4への流入水量を少なくできる。即ち、より高い濃度の濃縮水を得ることが可能となる。また、被酸化物含有水の性状に変動がある場合は、返送濃縮水15’の循環量を調整することで、常に一定水質の濃縮水15を電解設備4に供給でき、電解設備4の安定運転が可能となる。
【実施例4】
【0036】
図7に本実施例4に係る水処理フローを示す。本実施例4において、被酸化物含有水は、含有される被酸化物の濃度が数十ppm程度まで処理可能である。また、被酸化物含有水の処理量は数十m3/日程度まで処理可能である。
本実施例5は、透過水17を親水用水として再利用する場合に適しており、電解装置4内に析出した硬度成分を重力沈降、酸添加による溶解、水洗のうち少なくとも一つの手段により回収し、濃縮装置3からの透過水に添加する構成となっている。
具体的には、濃縮装置3で得られる透過水14のランゲリア係数を測定するランゲリア係数測定手段30を設け、透過水14のランゲリア係数に基づき、電解処理液17から分離した硬度成分含有水31を透過水14に供給する。
電解処理液17からの硬度成分の分離には、電解装置4内で硬度成分を析出させ塩酸を添加することにより硬度成分を回収する方法が挙げられる。電解装置4の後段には、電解処理液17を導入して硬度成分と分離するミネラル沈殿槽8を設け、ここで沈降分離した硬度成分を含む硬度成分含有水31を透過水14に供給する。
このように、電解処理液17の硬度成分を回収することにより、電解処理サイクル内に硬度成分が析出することがなく、電極等に悪影響を与えることを防止できる。また、硬度成分を回収して透過水14に供給することにより、親水用水をはじめとして、ビオトープ形成、機器洗浄等に適した再利用を行うことが可能となる。
【0037】
また、他の硬度成分を安定化する方法として、電解装置4に十分な量の炭酸ガスを供給して再炭酸処理を施すことにより、炭酸カルシウムの析出を防止する方法がある。これは、炭酸ガスを供給して再炭酸化することにより水のpHは下がり炭酸カルシウムは炭酸水素カルシウムとなるが、さらに水中に十分な従属性遊離炭酸を残すようにすれば炭酸水素カルシウムは安定化し、炭酸カルシウムを析出することはなくなるため、電解処理サイクル内に硬度成分が析出することを防止できるものである。この構成において、電解処理液17の一部を硬度成分含有水として透過水14に供給することにより、親水用水等の硬度成分含有水が得られる。
【0038】
ここで、ランゲリア係数とは、水のpH、カルシウムイオン濃度、総アルカリ度及び溶解性物質(補正値計算に使う)から、次の式によって求められる。
ランゲリア係数(LI)=pH−pHs
=pH−8.313+log[Ca++]+log[A]−S
ここで、pH:水の実際のpH値、pHs:衡状態にあるときのpH値、log[Ca++]:カルシウムイオン濃度の対数、log[A]:総アルカリ度の対数、S:補正値であうる。
ランゲリア係数がプラスの値で 数値が大きい程、炭酸カルシウムの析出が起こり易く非腐食性であり、ゼロであれば炭酸カルシウムは析出も溶解もしない平衡状態にあり、マイナスの値では炭酸カルシウム皮膜は形成されにくく、その絶対値が大きくなるほど水の腐食傾向は強くなる。
従って、水のpH、カルシウムイオン濃度、総アルカリ度及び溶解性物質からランゲリア係数を求め、該ランゲリア係数に基づき透過水14に硬度成分含有水31を供給することにより、高品質の再利用水を提供することが可能となる。
【0039】
このように本実施例によれば、電解装置4内で硬度成分を析出させ塩酸にて溶解させることで回収する。回収した硬度成分を濃縮装置の透過水14に添加し、親水用水等として利用することにより、電解性能低下・電極寿命に悪影響を及ぼす硬度成分を回収し、透過水14に添加することで、親水用水等の再利用水生成時に必要な硬度成分を内製化できる。
【実施例5】
【0040】
図8に本実施例5に係る水処理フローを示す。本実施例5において、被酸化物含有水の処理量は数十m3/日〜数千m3/日程度まで処理可能である。
本実施例5は、図2に示した実施例1の応用例の構成に加えて、塩化物イオン含有水を2000〜2500mg/Lの遊離塩素濃度まで電解し、被酸化物含有水10に添加し、処理液の少なくとも一部を返送する構成となっている。
電解装置4では、塩素含有水18を電解により2000〜2500mg/Lの遊離塩素を生成し、電解液を反応槽5に供給して被酸化物含有水10と混合する。尚、塩素含有水18は有機物や窒素分が殆ど含まれない海水等の塩化物イオンを含有する水である。
さらに、塩素含有水18の濃度に応じ、濃縮装置3からの濃縮水を選択的に電解設備4に返送する。これは、実施例3に示した多段型の逆浸透膜装置を用い、前段側の逆浸透膜装置から得られる低濃度濃縮水15”は電解装置4に循環させず、後段側の逆浸透膜装置から得られる高濃度濃縮水15のみを電解装置4に循環させることより実施可能である。
【0041】
本実施例5によれば、遊離塩素濃度を2500mg/L以下とすることで、効率的な電解が可能となる。また、高濃度塩水を選択的に返送することで、塩素含有水18の使用量を低減できる。さらに、電解装置4の電極に悪影響を及ぼす有機物等が流入し難いため電解装置4の長寿命化が図れる。
【実施例6】
【0042】
図9に本実施例6に係る水処理フローを示す。本実施例6において被酸化物含有水は、含有される被酸化物の濃度が比較的高いものであり、数十ppm程度まで処理可能である。また、被酸化物含有水の処理量は数十m3/日程度まで処理可能である。
本実施例6は、被酸化物含有水10を膜前処理装置2にて膜前処理し、膜前処理水12を濃縮装置3にて濃縮した後に電解装置4に流入させて電解処理する構成となっている。このとき、濃縮装置3内での差圧確保のため、塩化物イオン源を濃縮装置3の前段に添加しても良い。
本実施例6によれば、前段側で濃縮装置3により分離処理を行うため、後段側の設備をコンパクト化できる。流量が減ることによって塩化物イオン源等の薬注量も低減できる。また、透過水14を放流前段の希釈に用いることができる。さらに、処理対象物の濃度を増加させることができ、電解設備4内での制御が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施例1に係る水処理フローを示す図である。
【図2】図1に示した実施例1の応用例を示す図である。
【図3】本発明の実施例2に係る水処理フローを示す図である。
【図4】RO膜における水温と透過水量の関係を示すグラフである。
【図5】RO膜における水温と阻止率の関係を示すグラフである。
【図6】本発明の実施例3に係る水処理フローを示す図である。
【図7】本発明の実施例4に係る水処理フローを示す図である。
【図8】本発明の実施例5に係る水処理フローを示す図である。
【図9】本発明の実施例6に係る水処理フローを示す図である。
【図10】従来の生活廃水の処理フローを示す図である。
【図11】従来の洗車廃水を処理フローを示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 還元装置
2 膜前処理装置
3 濃縮装置
4 電解装置
5 生物処理装置
6 熱交換器
7 冷却装置
8 ミネラル沈殿槽
13 電解液
14 透過水
15 濃縮水
17 電解処理液
18 塩素含有水
21 洗浄廃液
22 加圧浮上装置
30 ランゲリア係数測定手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被酸化物含有水に還元剤を添加して塩素を還元する還元装置と、該還元後の被処理水中の塩化物イオンを濃縮する濃縮装置と、該濃縮により得られた濃縮水を電解して次亜塩素酸を生成し、該次亜塩素酸により被酸化物を酸化分解する電解装置と、該電解後の電解処理液を前記還元装置に循環させる循環ラインと、を備えたことを特徴とする水処理システム。
【請求項2】
前記還元装置から排出される被処理水に、凝集ろ過設備、砂ろ過設備、加圧浮上分離槽、MF膜又はUF膜、pH調整設備から選択される少なくとも一の処理を行う前処理装置を備え、該前処理後の被処理水を前記濃縮装置に導入することを特徴とする請求項1記載の水処理システム。
【請求項3】
前記濃縮装置が、逆浸透膜装置が多段に配置され複数段階の濃度の濃縮水を得る装置であり、該濃縮装置で得られた高濃度の濃縮水の少なくとも一部を前記還元装置に返送することを特徴とする請求項1記載の水処理システム。
【請求項4】
前記還元装置から排出される被処理水の塩化物イオン濃度が8000mg/L以下となるように、前記前処理装置から汚泥を引き抜くことを特徴とする請求項1記載の水処理システム。
【請求項5】
前記濃縮装置にて得られた透過水を洗浄水として再利用する場合に、洗浄後の洗浄廃水とともに前記膜前処理装置から引き抜いた汚泥を凝集沈殿する凝集沈殿装置を備えたことを特徴とする請求項4記載の水処理システム。
【請求項6】
前記還元装置から排出される被処理水が導入される生物処理装置若しくはイオン交換膜処理装置を設け、硝酸態窒素が除去された被処理水を前記濃縮装置に導入することを特徴とする請求項1若しくは4記載の水処理システム。
【請求項7】
前記電解装置から発生する熱を前記濃縮装置の前段にて被処理水に供給する熱交換手段を備えたことを特徴とする請求項1若しくは4記載の水処理システム。
【請求項8】
前記電解装置内に析出した硬度成分を重力沈降、酸添加による溶解、水洗のうち少なくとも一の手段により回収する手段を設け、該回収した硬度成分を前記濃縮装置にて得られる透過水に添加することを特徴とする請求項1記載の水処理システム。
【請求項9】
前記電解装置が、塩素含有水を供給されて2000〜2500mg/Lの遊離塩素濃度まで電解を行う構成であり、前記還元装置の前段に反応槽を設け、該反応槽に前記電解装置からの電解処理液を導入し、前記濃縮装置にて得られる濃縮水の少なくとも一部を前記電解装置に返送することを特徴とする請求項1記載の水処理システム。
【請求項1】
被酸化物含有水に還元剤を添加して塩素を還元する還元装置と、該還元後の被処理水中の塩化物イオンを濃縮する濃縮装置と、該濃縮により得られた濃縮水を電解して次亜塩素酸を生成し、該次亜塩素酸により被酸化物を酸化分解する電解装置と、該電解後の電解処理液を前記還元装置に循環させる循環ラインと、を備えたことを特徴とする水処理システム。
【請求項2】
前記還元装置から排出される被処理水に、凝集ろ過設備、砂ろ過設備、加圧浮上分離槽、MF膜又はUF膜、pH調整設備から選択される少なくとも一の処理を行う前処理装置を備え、該前処理後の被処理水を前記濃縮装置に導入することを特徴とする請求項1記載の水処理システム。
【請求項3】
前記濃縮装置が、逆浸透膜装置が多段に配置され複数段階の濃度の濃縮水を得る装置であり、該濃縮装置で得られた高濃度の濃縮水の少なくとも一部を前記還元装置に返送することを特徴とする請求項1記載の水処理システム。
【請求項4】
前記還元装置から排出される被処理水の塩化物イオン濃度が8000mg/L以下となるように、前記前処理装置から汚泥を引き抜くことを特徴とする請求項1記載の水処理システム。
【請求項5】
前記濃縮装置にて得られた透過水を洗浄水として再利用する場合に、洗浄後の洗浄廃水とともに前記膜前処理装置から引き抜いた汚泥を凝集沈殿する凝集沈殿装置を備えたことを特徴とする請求項4記載の水処理システム。
【請求項6】
前記還元装置から排出される被処理水が導入される生物処理装置若しくはイオン交換膜処理装置を設け、硝酸態窒素が除去された被処理水を前記濃縮装置に導入することを特徴とする請求項1若しくは4記載の水処理システム。
【請求項7】
前記電解装置から発生する熱を前記濃縮装置の前段にて被処理水に供給する熱交換手段を備えたことを特徴とする請求項1若しくは4記載の水処理システム。
【請求項8】
前記電解装置内に析出した硬度成分を重力沈降、酸添加による溶解、水洗のうち少なくとも一の手段により回収する手段を設け、該回収した硬度成分を前記濃縮装置にて得られる透過水に添加することを特徴とする請求項1記載の水処理システム。
【請求項9】
前記電解装置が、塩素含有水を供給されて2000〜2500mg/Lの遊離塩素濃度まで電解を行う構成であり、前記還元装置の前段に反応槽を設け、該反応槽に前記電解装置からの電解処理液を導入し、前記濃縮装置にて得られる濃縮水の少なくとも一部を前記電解装置に返送することを特徴とする請求項1記載の水処理システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−160230(P2007−160230A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−360395(P2005−360395)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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