説明

水性コーティング組成物及びそれを用いた印刷物

【課題】主要印刷方式の平版印刷に於いて、紙媒体を主な基材としたオフセット印刷後にインラインで水性コーティング塗工をする際に問題となるブロッキング、圧胴へのコーティング被膜のとられを防止する水性コーティング組成物を提供し印刷物を得るための方法と印刷物を得ることを可能にする。
【解決手段】水溶性樹脂に架橋剤を含有させることによりオフセット印刷機用インライン水性コーティング組成物に求められる高速印刷適性下における乾燥性を著しく改善する。また、水溶性樹脂の酸価を適切にコントロールすることと、各種官能基を有する水溶性樹脂骨格と架橋剤を適切に選択し組み合わせることによりオフセットインキとの密着性にも優れ、更にワックス類やシリコーンを適切に配合することにより一層乾燥性に優れたコーティング組成物を得て制約の多いオフセットインライン塗工の乾燥条件の中で乾燥性に優れ、コーティング物性に優れた印刷物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット印刷機によって印刷された印刷物に美粧性、耐摩擦性などの付加価値を付与する水性コーティング組成物に関する。更にはオフセット印刷機で印刷物を得ると同時にインラインでコーティングを施すのに好適な水性コーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平版印刷をされた紙を基材とした印刷物に美粧性、耐摩擦性などを施す場合は、印刷後にグラビアやフレキソ方式のコーティング装置を備えたコーター機によるオフライン塗工や塩化ビニル、ポリプロピレンなどのフィルムを接着剤を使用してラミネート加工することが主流で行われている。
【0003】
近年環境問題の観点でフィルムラミネート加工は紙製の印刷物のリサイクルを阻害することから敬遠され、オフラインでのコーティングによりリサイクル適性を考慮した取り組みが行われている。しかし、これらに適合するコーティング組成物はは、有機溶剤による火災の危険性があり、また、大気を汚染するという問題点を有している。
【0004】
オフラインコーティング組成物の乾燥性を維持するために低沸点のアルコールやグリコールエーテル類を含有させ水性化する試みも数々提案されているが、何れにせよオフセット印刷後にオフラインで再度表面加工するという2工程での作業が必要となり経済性の点で普及が制約されている。
【0005】
近年オフセット印刷機にコーティング装置を組み込み、通常のオフセット印刷後にコーティングユニットで水性オーバープリントワニスを塗工しその後に熱風、赤外線によりコーティング剤を乾燥させることが提案されている。このプロセスによりこれまでオフラインでコーティングする工程がオフセット印刷の1工程で完了することで作業性が大幅に改善した。しかしながらオフセット印刷機によるインラインでの水性オーバープリントワニスの塗工は、これまでのオフライン塗工に比べて印刷物を構成するオフセットインキが乾燥していないことから、オフラインの水性コーティング組成物に比べて未乾燥のインキ上に均一にコーティング組成物をぬらす上での適性が求められる。また、オフセット印刷機はグラビアやフレキソ印刷機と比べて使用するインキが高沸点の石油系溶剤や植物油をベースとした構成であることから、印刷機が防爆構造を有していないことが一般的である。
【0006】
それ故にオフラインで使用されるコーティング組成物をそのままオフセット印刷機用のインライン水性コーティング組成物として使用しても、はじきやクラックといった塗工適性が不十分となる。また、オフセットインキが未乾燥な点を解決する手段として紫外線硬化型インキを使用する試みもなされているが、インキを硬化させるために乾燥装置として高圧水銀灯やメタルハライド灯による紫外線照射が必要不可欠であり、装置が高価で複雑化するという欠点を有していることから普及が進んでいない。
【0007】
また枚葉印刷機はコミック本等の墨単色などで両面印刷をする以外は基本的に片面印刷し乾燥した後に反対面を印刷する片面印刷機が多色印刷の場合基本であったが、近年多色両面印刷を同時に1回の工程で完了するための印刷機が普及しそれに適合する印刷インキが開発されてきている。この場合通常の油性インキを使用した場合は、印刷用紙の片側が印刷された後に反対側を印刷する際に、印刷機械の構造上最初に印刷された面のインキが十分乾燥する以前に印圧をかける圧胴にインキがとられることがさけられず、表裏での印刷の仕上がりに差異が生じたり、印刷物が積み重なるデリバリー部でのブロッキング対策に留意をする必要があり、印刷機械、印刷インキ面から技術開発を試みているものの現在でも十分解決されていない。
【0008】
この対応としてオフセット両面枚葉多色印刷機にもコーティングユニットを装備して前述の課題に対してコーティング組成物を塗工し、圧胴とられやデリバリーでのブロッキングを防止する提案が試み始められているが、実用には至っていない。
【0009】
以上のことからオフセット用インライン水性コーティング組成物にも従来にない要求性能が求められており、その一つに塗工被膜の乾燥性が最も重要な特性としてあげられる。従来乾燥性を向上させるには、コーティング組成物中の固形分を増やす、溶媒である水の離脱性を向上させるために水溶性樹脂の酸価を低くする、水溶性樹脂を溶液可溶タイプからエマルションタイプを多用し粒径コントロールを行うことが実施されてきている。しかしながら固形分を増やすにしてもコーティング組成物の粘度やレベリング適性を考慮すると限界があり、酸価を低下させると水可溶性が低下することからコーティング組成物の安定性が十分保てないという欠点を有する。エマルションタイプにすることにより乾燥性は向上するものの、印刷インキで被覆された上での浸透性は、単純な用紙面と比べて溶媒である水の離脱性がことなることから、乾燥性が十分ではなかったり、塗工被膜のタックアップにより逆に圧胴にコーティング組成物がとられ易くなったりブロッキングを起こしたりと必ずしも効果が発現せず、更にはインキ面への均一塗工斑が生じる欠点を有する。
【0010】
グラビア印刷やフレキソ印刷あるいは塗料用の水性コーティング組成物は乾燥工程がオフセット印刷に比べて十分であることから、架橋剤を用いて乾燥被膜を改質(耐水性、耐溶剤性など)する提案がなされている。特開2001−335670号公報には特定のヒドラジド化合物と水性樹脂を使用した組成物が開示されているが、目的とするところは完全乾燥した後の被膜の耐水性、耐溶剤性、耐薬品性、耐被膜強度性をアップするものであり、乾燥に要する積算エネルギーを考えると常温乾燥塗料用途では数十時間から数日を要し、焼き付けによる硬化被膜を得る場合は120℃以上で5分以上を要する。水性グラビア、フレキソでは溶媒に使用する低沸点アルコール系溶剤の制約がオフセット印刷に比べると少なく、低沸点溶剤の共沸もあいまって乾燥を促進させるが少なくても80℃以上の熱風などを数秒から数十秒基材に与えることができる。これに対してオフセット印刷機でのインラインコーティングに要する熱源は80℃〜200℃をかけることは可能であるが、常用速度が2〜3m/sであり、実際に基材が熱源に滞留する時間は1秒以下と極めて短い乾燥条件では強固な乾燥被膜物性を得ることができないことからオフセット印刷機用インライン水性コーティング組成物への架橋システム導入に関する技術開発は殆どなされてきていなかった。
【特許文献1】特開2001−335670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこれらの問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、主要印刷方式の平版印刷に於いて、紙媒体を主な基材としたオフセット印刷後にインラインで水性コーティング塗工をする際に問題となるブロッキング、圧胴へのコーティング被膜のとられを防止する水性コーティング組成物を提供し印刷物を得るための方法と印刷物を得ることを可能にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
即ち本発明は水溶性樹脂、架橋剤を含有することを特徴とするオフセット印刷機用インライン水性コーティング組成物に関する。
また、本発明は水溶性樹脂が、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アミド樹脂及びこれらの樹脂の共重合樹脂から単独又は複数選ばれることを特徴とする上記オフセット印刷機用インライン水性コーティング組成物に関する。
また、本発明は架橋剤が、ブロックイソシアネート化合物、及び又はカルボジイミド基を含有する化合物、及び又はオキサゾリン基を含有する化合物、及び又はヒドラジド基を含有する化合物、及び又はエポキシ化合物及び又は有機金属化合物から選ばれることを特徴とする上記オフセット印刷機用インライン水性コーティング組成物に関する。
また、本発明は酸価200(KOHmg/g)以上のアクリル樹脂、スチレンーアクリル樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂を1成分以上含有することを特徴とする上記オフセット印刷機用インライン水性コーティング組成物に関する。
また、本発明はアクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂が水酸基を含有することを特徴とする上記オフセット印刷機用インライン水性コーティング組成物に関する。
更に水溶性ワックス、水分散ワックス、水溶性シリコーン化合物、水分散シリコーン化合物から単独又は複数選ばれるものを含有することを特徴とする上記オフセット印刷機用インライン水性コーティング組成物に関する。
更に本発明は色材を含有することを特徴とする上記オフセット印刷機用インライン水性コーティング組成物に関する。
更に本発明は上記オフセット印刷機用インライン水性コーティング組成物を使用してなる印刷物に関する。
更に本発明は200℃以下の熱風と赤外線乾燥装置を具備する枚葉オフセット印刷機を用いて上記オフセット印刷機用インライン水性コーティング組成物を使用してなる印刷物を得る印刷方法及びその印刷物とそれに適合する水性インラインコーティング組成物に関する。
更に本発明はオフセット枚葉印刷機が両面印刷機であることを特徴とする上記印刷方法及び印刷物に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水溶性樹脂、架橋剤を含有することを特徴とするオフセット印刷機用インライン水性コーティング組成物を使用することにより、いかなるオフセット印刷機においても乾燥性に優れたコーティング印刷物を得ることが可能となり、品質と生産性に優れた付加価値印刷物をオフセット印刷の1工程で得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は水溶性樹脂に架橋剤を含有させることによりオフセット印刷機用インライン水性コーティング組成物に求められる高速印刷適性下における乾燥性を著しく改善することを見出し本発明に至った。更には水溶性樹脂の酸価を適切にコントロールすることと、各種官能基を有する水溶性樹脂骨格と架橋剤を適切に選択し組み合わせることによりオフセットインキとの密着性にも優れた効果を見いだし、ワックス類やシリコーンを適切に配合することにより一層乾燥性に優れたコーティング組成物を見いだし制約の多いオフセットインライン塗工の乾燥条件の中で乾燥性に優れ、コーティング物性に優れた印刷物を得ることを見いだし本発明に至った。
【0015】
本発明の水溶性樹は、アクリル樹脂、スチレンーアクリル樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アミド樹脂及びこれらの樹脂の共重合樹脂から単独又は複数選ばれたものが使用できる。
【0016】
アクリル樹脂としては一般式(a)CH=CR−CO−OR(Rは水素原子、もしくはメチル基、Rは水酸基もしくは炭素数1乃至20の置換基を有する炭化水素基を示す)で表されるアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、アクリル酸4ヒドロキシブチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2ヒドロキシエチル、メタクリル酸4ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、β-エチレン性不飽和カルボン酸等のモノマーの種々の水性または水に分散できるコポリマーなどの酸、ビニルモノマーを共重合したものが例示できる。更にはアクリルアミド、メタアクリルアミド、アクリルニトリル、メタアクリルニトリル、N−メチロールアクリルアミド、N−アルキロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、アクロレイン、メタアクロレイン、グリシジルメタクリレートなども反応性モノマーとして例示できる。常法に従いこれらの酸、ビニルモノマーを共重合させて所定のアクリル樹脂としたものが本発明で使用できる。
【0017】
使用できるアクリル樹脂の形態としては水溶性、コロイダルディスパージョン、エマルション等、何れの形態をとった樹脂も使用可能であり、固形樹脂をアンモニア、アミン類で中和した水溶性樹脂、溶剤下で合成したアクリル樹脂を強制的に水に分散或いは強制的に乳化分散剤を用いて分散させた分散樹脂、或いは乳化重合法により乳化剤として界面活性剤やソープフリーエマルション化させるためにビニル基を有する反応性界面活性剤を用いたエマルション、水溶性樹脂を保護コロイドとしたコアシェル型のエマルションとしても使用できる。
【0018】
スチレン−アクリル樹脂としては、上記アクリル樹脂に使用できる酸、ビニルモノマーに加えてスチレン、α−メチルスチレン、エチルスチレン、ビニルトルエン、ジメチルスチレン、ブチルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-ブロモスチレン、2,4-ジクロロスチレン、2,5-ジクロロスチレン、他のスチレン含有ポリマー、ビニルナフタレンなどを常法に従い共重合したものが例示できる。その形態としては、アクリル樹脂と同様に水溶性、コロイダルディスパージョン、エマルションの形態で本発明に使用できる。
【0019】
スチレン−マレイン酸樹脂としては、スチレン、α−メチルスチレンと無水マレイン酸、フマル酸を常法に従い反応させた樹脂が本発明に使用できる。
【0020】
ポリエステル樹脂を構成する酸としては、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、テトレヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、テトラクロル無水フタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物、無水ピロメリット酸、ε−カプロラクトン、脂肪酸が例示できる。
【0021】
ポリエステル樹脂を構成するアルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチエングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、3−メチルペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどが例示できる。
【0022】
酸とアルコールの反応により得られたポリエステル樹脂を必要に応じて変性させて水溶性化することも好ましい。親水化法としてはアクリル酸、メタクリル酸と共重合によるカルボキシル基の導入、スチレンスルホン酸ソーダ、アクリルスルホン酸ソーダにによるスルホン酸基導入などが例示できる。
【0023】
ウレタン樹脂としては、イソシアネート化合物とポリオール化合物との反応を自己乳化或いは強制乳化法により合成したものを使用することができる。イソシアネート化合物としてはTDI、MDI,IPDI,XDI、HDI、TMP変性ジイソシアネート、イソシアヌレート結合ジイソシアネート、ビューレット結合ジイソシアネート、ポリメリックジイソシアネートなどが例示できる。ポリオール化合物としては、アジペート、ポリカプロラクトン、ポリカーボネートなどのポリエステル系ポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキサイドヤプロピレンオキサイドを付加したポリエーテル系ポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエン系ポリオールなどのポリマーポリオールなどが使用できる。
【0024】
エポキシ樹脂、アミド樹脂に関しても常法にて水性化されたものを本発明で使用することができる。
【0025】
以上の水溶性樹脂から単独或いは複数の樹脂を選択したものを本発明で使用することができるが、好ましくはアクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂の混合物が水性コーティング組成物の保存安定性から好ましく使用できる。更にはウレタン樹脂、エポキシ樹脂をアクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂と共重合させたもの或いは混合したものを使用することも良好な乾燥皮膜を得るためには有効であり好ましい。
【0026】
使用される水溶性樹脂の形態は特に限定されるものではないが、エマルションとデイスパージョンと水溶性樹脂を単独で構成するよりは併用する方がコーティング組成物の保存安定性、乾燥性、被膜物性の柔軟性の点で好ましい。これらの水溶性樹脂の水性溶液を調製する場合は、溶媒として水だけでなく、水と水に可溶な有機溶媒との混合溶媒を用いることも好ましい。水に可溶な有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類やアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類やメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のグリコールエーテル類や酢酸メチル、酢酸エチルなどおエステル類、更にはテトラヒドロフラン、1,4ージオキサン等のエーテル類が挙げられる。
【0027】
コーティング組成物に占める水溶性樹脂の構成比率としては固形分換算で20〜60重量%が好ましく、より好ましくは30〜50重量%である。20重量%未満では得られる皮膜が不均一となり十分な諸耐性を得ることができない、また60重量%を超えると皮膜物性としては十分な適性が得られるもののコーティング組成物の粘度が高く、塗工適性上問題が生じる。
【0028】
これらの水溶性樹脂は(水性コーティング組成物の原料として使用するとき)、アルカリ水溶液を用いて可溶化し、水溶液として使用することが組成物製造の工程上、有利である。通常はアンモニア水が用いられる。また、下記に挙げるアミンを用いて可溶化したものを用いることも可能である。スチレン−アクリル酸樹脂水溶液は固形分の濃度は30〜50重量%であると粘度の点などから取り扱いがしやすく好ましい。
【0029】
本発明において、沸点120〜400℃の水溶性アミンを使用する。ただし、水溶性アミンは臭気の点、また接触刺激などの点から、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−(2−アミノエチル)エタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、モノエタノールアミン,ジエタノールアミン,トリエタノールアミンなどのアミノエタノール類が好ましく、入手のしやすさ、取り扱いの容易さ、沸点の高さなどから、N,N−ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミンが特に好ましい。
【0030】
水溶性アミンは、水性コーティング組成物全体に対して、0.5〜12重量部であることが好ましい。0.5重量部よりも少ないと発泡防止が充分ではなく、12重量部よりも多いと、乾燥が過度に遅く、また臭気も強くなるために好ましくない。特に2〜10重量部が適度な乾燥遅延を示し、好ましい。水溶性アミンは、水性コーティング組成物のその他の成分を配合した後、添加することが可能であり、また、上述したようにスチレン−アクリル酸樹脂の水溶液化のときに溶解用のアルカリ成分として添加することも可能である。これら二つの添加方法において、アミン類は同等に作用する。
【0031】
本発明に使用できる架橋剤としては、ブロックイソシアネート化合物、及び又はカルボジイミド基を含有する化合物、及び又はオキサゾリン基を含有する化合物、及び又はヒドラジド基を含有する化合物、及び又はエポキシ化合物及び又は有機金属化合物が好ましい。
【0032】
ブロックイソシアネート化合物としては分子内に少なくとも2個のイソシアナト基を有する化合物(ジ−またはポリ−イソシアネート類)としては例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアナトフェニル)チオホスフェート、フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸メチル(リジンジイソシアネートとも呼ばれる)、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、3−(2′−イソシアナトシクロヘキシル)プロピルイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネートなどをtert−ブチルアルコールのようなアルコール類、フェノール類、ジブチルアミンのようなアミン類、ヒドロキシルアミン類、ブタノンオキシムのようなオキシム類などと反応させて、イソシアネート基をマスクしたものが好ましく使用できる。
【0033】
カルボジイミド基を含有する化合物としては公知の方法、例えばジイソシアネート化合物および/またはトリイソシアネート化合物を非反応性の有機溶剤中で、適当な触媒、例えば3−メチル−フェニル−2−スルホレート−1−オキシドの存在下で加熱し、脱二酸化炭素を伴う縮合反応によりイソシアネートをカルボジイミド化する方法により得られる。なお、得られる化合物は、下記一般式(b)で示す化合物である。
−(R−N=C=N−)n
【0034】
カルボジイミド基有する化合物の原料となるジイソシアネート化合物は、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、あるいはこれらの混合物である。ジイソシアネート化合物としては、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4'- ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'- ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4'- ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン- 1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4- ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4- ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジメチルジイソシアネートなどが例示できる。
【0035】
オキサゾリン基を含有する化合物としては、2、2’−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、や、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニルー2ーオキサゾリン等の不飽和オキサゾリン化合物と他の不飽和化合物の重合により得られる重合体等公知の製法で合成された化合物を使用することができる。
【0036】
ヒドラジド基を含有する化合物としてはシュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどの2〜18個の炭素原子を有する飽和脂肪族カルボン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジドなどのモノオレフィン性不飽和ジカルボン酸ジヒドラジド、炭酸ジヒドラジド、カルボジヒドラジド、チオカルボジヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラノカルボエチル)−5−イソプロピルヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸ヒドラジド、ブタンテトラカルボヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジド、ポリ(メタ)アクリル酸変性ヒドラジドなど公知の製法で合成されたヒドラジド化合物を使用することができる。
【0037】
エポキシ化合物としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジβメチルグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラヒドロキシフェニルメタンテトラグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ブロム化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、クロル化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジグリシジルエーテル、エポキシウレタン樹脂等のグリシジルエーテル型;P−オキシ安息香酸グリシジルエーテル・エステル等のグリシジルエーテル・エステル型;フタル酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、アクリル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル等のグリシジルエステル型;グリシジルアニリン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルイソシアヌレート、トリグリシジルアミノフェノール等のグリシジルアミン型;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油等の線状脂肪族エポキシ樹脂;3,4エポキシ−6メチルシクロヘキシルメチル−3,4エポキシ−6メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシシクロヘキサン)カルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジエポキサイド、ジシクロペンタジエンオキサイド、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、リモネンジオキサイド等の脂環族エポキシ樹脂、ポリアミドエピクロルヒドリンなどが例示できる。
【0038】
有機金属化合物としてはアルミニウムエチレート、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムジイソプロピレートモノセカンダリーブチレート、アルミニウムセカンダリーブチレート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムオキサイドイソプロポキサイドトリマー、 アルミニウムオキサイドオクチレートトリマー、アルミニウムオキサイドステアレートトリマーなどの有機アルミニウム化合物やジイソプロポキシビスアセチルアセトン・チタネート、ジn−ブトキシビストリエタノールアミンチタネート、ジヒドロキシブラクティクアシッドチタネート、テトラ−オクチレングリコールチタネート、ポリヒドロキシチタンステアレートなどの有機チタン化合物が好ましく使用される。
【0039】
これらの架橋剤が本発明の水性コーティング組成物に占める割合としては0.1〜15重量%が好ましい。0.1重量%未満では架橋効果が不十分で乾燥性と被膜強度の点で問題が生じ、15重量%を超えるとコーティング組成物の保存安定性に問題が生じ好ましくない。
【0040】
更には本発明に使用するアクリル樹脂、スチレンーアクリル樹脂、スチレン−マレイン酸樹の酸価が200(KOHmg/g)以上の水性樹脂を1成分以上含有させることで架橋剤の反応を効果的に進行させ瞬時に表面架橋によるブロッキング防止、圧胴とられ防止に繋がり好ましい。
【0041】
アクリル酸4ヒドロキシブチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2ヒドロキシエチルなど水酸基を含有するアクリルモノマーを水溶性樹脂と共重合することで効果的な架橋反応とオフセットインキとの濡れ、密着性を向上させることから好ましく使用できる。またコーティング組成物の保存安定性の点でも有効であり好ましく使用できる。
【0042】
更に本発明の水性コーティング組成物に水溶性ワックス、水分散ワックス、水溶性シリコーン、水分散シリコーン化合物から選ばれる化合物を含有させることで、コーティングされた印刷物のタックアップを抑制し印刷機圧胴へのとられを防止し、更には印刷物のブロッキングを防止する効能が更に向上することから好ましく使用できる。
ワックス、シリコーン化合物の添加量としては本発明の水性コーティング組成物に0.5〜10重量%添加することが好ましい。0.5重量%未満であるとコーティング被膜のタックアップ防止のこうかが不十分であり、10重量%を超えるとコーティング被膜の摩擦係数が大幅に低下してしまうことからコーティングの目的によっては好ましくない。ワックスとしては、天然ワックス及び合成ワックス 等が使用できる。天然ワックス としては、植物系天然ワックス (カルナバワックス 、キャンデリラワックス、シュガーワックス 、ライスワックス 、木ロウ、ベイベリーワックス、オーキュリーワックス 及びエスパルトワックス 等)、動物系ワックス (みつろう、昆虫ロウ、鯨ロウ、セラックロウ及びラノリンワックス 等)、石油系天然ワックス (パラフィンワックス 及びマイクロクリスタリンワックス 等)及び鉱物系天然ワックス (オゾケライトワックス 及びセレシン等)等が用いられる。これらのうち、植物系天然ワックス 、石油系天然ワックス 及び鉱物系天然ワックス が好ましく、さらに好ましくはカルナバワックス 、パラフィンワックス 、マイクロクリスタリンワックス 及びオゾケライトワックスである。
【0043】
合成ワックス としては、酸化天然ワックス 、アマイドワックス 、ポリエチレンワックス 、酸化ポリエチレンワックス 、酸変性ポリエチレンワックス 、ポリプロピレンワックス 、酸変性ポリプロピレンワックス 、酸変性ポリプロピレンワックス 、フィッシャートロプシュワックス 、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、PTFE等が含まれる。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。
【0044】
酸化天然ワックス としては、上記の天然ワックス を空気酸化及び/又はオゾン酸化等により酸化(カルボキシ基、水酸基及び/又はホルミル基を導入)したもの等が使用できる。これらのうち、ワックス乳化分散 体の乳化分散 のし易さ及び経時安定性の観点等から、石油系天然ワックス(パラフィンワックス 及びマイクロクリスタリンワックス 等)又は鉱物系天然ワックス (オゾケライトワックス 及びセレシン等)を酸化した酸化石油系天然ワックス 又は酸化鉱物油系天然ワックスが好ましく、さらに好ましくはパラフィンワックス 、マイクロクリスタリンワックス又はオゾケライトワックス の酸化物である。などが適用できる。これらのワックスを分散剤を用いて水に分散・可溶化させて本発明のコーティング組成物に添加することができる。分散ワックスの粒径としては粒度分布として0.01〜10μmが好ましく、平均粒径としては0.05〜5μmが好ましい。またシリコーン化合物としてはシロキサン単位を有した水溶性乃至水分散シリコーンを使用することができる。更にはアミノ変性、エポキシ変性、カルボキシ変性、カルビノール変性、アクリル変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性などの反応性シリコーンやポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、親水化特殊変性した非反応性シリコーンを使用する事ができる。
【0045】
必要に応じて本発明のコーティング組成物に水分散性顔料・染料・蛍光顔料・パール顔料・金属粉などの色材を均一に分散し含有させることも可能である。
【0046】
本発明の水性コーティング組成物を使用してなる印刷物としては、紙、ポリオレフィンなどの合成紙、ポリオレフィンにコート層を塗工した合成紙、ポリエチレンテレフタレートなどのフィルムを主とした基材に凸版印刷、凹版印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷した印刷面にオフライン乃至インラインで本発明の水性コーティング組成物をロールコーター又はチャンバーコーターを用いて塗工し、熱風及び赤外線により乾燥し得ることができる。
【0047】
更には200℃以下の熱風と赤外線乾燥装置を具備する枚葉オフセット印刷機を用いてオフセット印刷された印刷面に対して本発明のオフセット印刷機用インライン水性コーティング組成物をロールコーター乃至チャンバーコーターを使用してインライン塗工し乾燥させることによりコーティングされた印刷物を得ることができる。
【0048】
前述印刷物を得るにあたり本発明の水性コーティング組成物を塗するのに好適な印刷機としては、オフセット枚葉印刷機の場合片面印刷機でだけではなく、両面多色印刷機により同時に両面コーティングすることも可能である。
【0049】
[実施例]
以下、実施例によって本発明のオフセット印刷用インラインコーティング組成物を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの記載実施例に限定されるものではない。尚、以下の記述において「部」は重量部「%」は重量%を示す。
【0050】
水溶性樹脂製造例 製造例1(スチレン−アクリル樹脂)
温度計、攪拌装置、還流冷却管を備えた四ッ口フラスコに、過硫酸アンモニウム(2.0部)、アニオン性反応性乳化剤(第一工業製薬製:アクアロンHS−10の25%水溶液)(8.0部)、28%アンモニア水(2.0部)、水(200.0部)を仕込んで窒素雰囲気下75℃で加熱する。ここに、アクリル酸−2−エチルヘキシル(60部)、スチレン(52.0部)、アクリル酸−n−ブチル(120部)、メタクリル酸メチル(130.0部)、ジアセトンアクリルアミド(30.0部)、アクリル酸(10.0部)、アニオン性反応性乳化剤(上記と同じもの)(32.0部)、ラウリルメルカプタン(1.0部)、及び水(170部)をホモミキサーで混合・乳化した乳化液を3時間かけて滴下する。乳化液の滴下が終了してから30分後に、28%アンモニア水(6.4部)を添加し、更に追加触媒として過硫酸アンモニウム(0.3部)を水(2部)に溶かした溶液を添加して、引き続き80℃で3時間反応させた。所定時間反応後、反応混合物を冷却して、固形分が50.8%の乳白色の水性分散液を得た。
【0051】
製造例2(アクリル樹脂)
温度計、攪拌装置、還流冷却管を備えた四ッ口フラスコにメタクリル酸90部、アクリル酸45部、n−ブチルメタアクリレート75部、n−ブチルアクレリレート90部、攪拌しながら窒素雰囲気下で80℃に加熱、アゾビスイソブチロニトリル12部を90分かけて滴下しながら仕込み、更に4時間反応させ酸価205の樹脂を得た。その後減圧蒸留により溶媒を除去しpH8.5、樹脂固形分が40%になるように25%アンモニア水及び水/メタノール(70/30)で調製した。
【0052】
製造例3(アクリル樹脂)
温度計、攪拌装置、還流冷却管を備えた四ッ口フラスコにメタクリル酸60部、アクリル酸40部、n−ブチルメタアクリレート80部、n−ブチルアクレリレート90部、攪拌しながら窒素雰囲気下で80℃に加熱、アゾビスイソブチロニトリル12部を90分かけて滴下しながら仕込み、更に4時間反応させ酸価130の樹脂を得た。その後減圧蒸留により溶媒を除去しpH8.5、樹脂固形分が40%になるように25%アンモニア水及び水/メタノール(70/30)で調製した。
【0053】
製造例4(アクリル樹脂)
温度計、攪拌装置、還流冷却管を備えた四ッ口フラスコにメタクリル酸70部、アクリル酸40部、メタクリル酸2ヒドロキシエチル100部、n−ブチルアクレリレート90部、攪拌しながら窒素雰囲気下で80℃に加熱、アゾビスイソブチロニトリル12部を90分かけて滴下しながら仕込み、更に4時間反応させ酸価140の樹脂を得た。その後減圧蒸留により溶媒を除去しpH8.5、樹脂固形分が40%になるように25%アンモニア水及び水/メタノール(70/30)で調製した。
【0054】
製造例5(ウレタン樹脂)
温度計、攪拌装置、還流冷却管を備えた四ッ口フラスコに、ポリブチレンアジペートグリコール78.5部、ポリエチレングリコール45.0部、メチルエチルケトン90部を仕込み、攪拌しながら窒素雰囲気下で80℃に加熱する。温度が安定したらイソホロンジイソシアネート20.6部を滴下した後、ジラウリン酸ジブチル錫 0.015部とメチルエチルケトン10部の溶解液を添加し、同温度で3時間反応させイソシアネート末端プレポリマー溶液を得た。さらに反応液の温度を30℃以下に冷却し、イソホロンジアミン 5.1部とジブチルアミン 0.8部、アセトン 200部の混合液を1時間かけて滴下し、その後50℃まで昇温して鎖延長反応を終了した。次に水 350部を滴下してポリウレタンの水性分散体を得た。得られた水性分散体を減圧下60℃にて脱溶剤を行うことにより、不揮発分30.3%の主鎖にポリオキシエチレン単位を30%有するポリウレタン水分散体(g) を得た。
【0055】
水性コーティング組成物の製造例
攪拌装置を備えた容器に表1の配合(重量部)に従い原料を投入し、1000回転/分で攪拌を行った。充分に混合した後、ザーンカップ#4を用いて、温度25℃で粘度を測定し、20〜23秒となるように水の残部を投入し、さらに攪拌を行い、均一とした。
【0056】
【表1】

ヒドラジド架橋剤:アジピン酸ジヒドラジド
オキサゾリン架橋剤:2、2’−エチレンビス(2−オキサゾリン)
カルボジイミド架橋剤:テトラメチルキシリレンカルボジイミド
ブロックイソシアネート架橋剤:エラストロンBN-4(第一工業製薬社製)
ワックス: ジョンワックス26(ポリエチレンワックス) ジョンソンポリマー株式会社製
微粒子ワックス: ケミパールW−401(ポリエチレンワックス) 三井石油化学株式会社製
シリコン :FM−0711(チッソ(株)製)
【0057】
各例で得られたコーティング組成物の特性及び評価結果を表2に示した。評価測定方法は、以下の通りである。
【0058】
(乾燥性)プリューフバウ展色機+熱風乾燥装置+クーリングロールの構成の展色機を用いて、特菱アート紙にインキ(TKハイユニティ藍M(東洋インキ製造(株)製)を展色後、各例の水性コーティング組成物を2m/sの速度で塗工した後熱風温度100℃で0.5s乾燥後、クロムメッキされたクーリングロールで印圧をかけた。テスト後のコーティング組成物の表面状態を観察し、コーティング被膜の状態を評価した。
評価基準 ◎:全く影響なし
○:わずかに被膜に傷つきあり
△:○と×の中間の状態
×:被膜が完全に傷ついている
【0059】
(ブロッキング)RIテスター展色機で特菱アートにインキ(TKハイユニティ藍M(東洋インキ製造(株)製)を展色後、バーコーターNo.3を用いて各例の水性コーティング組成物を塗工し、100℃オーブンで3秒乾燥したあと、コーティング展色物を面×面が重なるようにして80℃、50%RHの条件下で、24時間50Kpaの荷重をかけてあと、塗工面の状態を評価した。
評価基準 ◎:全く影響なし
○:わずかに被膜に傷つきあり
△:○と×の中間の状態
×:被膜が完全に傷ついている
【0060】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性樹脂、架橋剤を含有することを特徴とするオフセット印刷機用インライン水性コーティング組成物。
【請求項2】
水溶性樹脂が、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アミド樹脂及びこれらの樹脂の共重合樹脂から単独又は複数選ばれるものであることを特徴とする請求項1記載のオフセット印刷機用インライン水性コーティング組成物。
【請求項3】
架橋剤が、ブロックイソシアネート化合物、カルボジイミド基を含有する化合物、オキサゾリン基を含有する化合物、ヒドラジド基を含有する化合物、エポキシ化合物、有機金属化合物から単独又は複数選ばれるものであることを特徴とする請求項1または2記載のオフセット印刷機用インライン水性コーティング組成物。
【請求項4】
酸価200(KOHmg/g)以上のアクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂を1成分以上含有することを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載のオフセット印刷機用インライン水性コーティング組成物。
【請求項5】
アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂が水酸基を含有することを特徴とする請求項1乃至4いずれか記載のオフセット印刷機用インライン水性コーティング組成物。
【請求項6】
更に水溶性ワックス、水分散ワックス、水溶性シリコーン化合物、水分散シリコーン化合物から単独又は複数選ばれるものを含有することを特徴とする請求項1乃至5いずれか記載のオフセット印刷機用インライン水性コーティング組成物。
【請求項7】
更に色材を含有することを特徴とする請求項1乃至6いずれか記載のオフセット印刷機用インライン水性コーティング組成物。
【請求項8】
請求項1乃至7いずれか記載のオフセット印刷機用インライン水性コーティング組成物を使用してなる印刷物。
【請求項9】
200℃以下の熱風と赤外線乾燥装置を具備する枚葉オフセット印刷機を用いて請求項1乃至7いずれか記載のオフセット印刷機用インライン水性コーティング組成物を使用してなる印刷物を得る印刷方法及びその印刷物とそれに適合する水性インラインコーティング組成物。
【請求項10】
オフセット枚葉印刷機が両面印刷機であることを特徴とする請求項8または9記載の印刷方法及び印刷物。



【公開番号】特開2006−206802(P2006−206802A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22874(P2005−22874)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】