説明

水浄化装置及び水浄化方法

【課題】揮発性イオン源として二酸化炭素とアンモニアを用いた場合であっても、二酸化炭素の溶解効率が高く、短時間で浄水化処理が可能であると共に、揮発性アニオン及び揮発性カチオンが気化分離する際に塩が析出することがない水浄化装置及び水浄化方法の提供。
【解決手段】浄化対象水と、揮発性アニオン及び揮発性カチオンを含む揮発性イオン含有水溶液とを半透過膜を介して接触させ、該半透過膜により前記浄化対象水から分離された水で前記揮発性イオン含有水溶液を希釈する希釈手段と、希釈された揮発性イオン含有水溶液から、少なくとも前記揮発性アニオンと前記揮発性カチオンを個別に分離して、浄化水を得る個別分離手段と、分離された前記揮発性アニオン及び前記揮発性カチオンを、前記希釈された揮発性イオン含有水溶液に個別に戻し、溶解させる個別溶解手段とを有する水浄化装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性アニオン及び揮発性カチオンを含む揮発性イオン含有水溶液を用いる順浸透法を適用した水浄化装置及び水浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
浸透圧差のある2種の水溶液間で水を選択的に分離し移動させる方法として、外部圧力を用いた逆浸透(RO)法と、浸透圧を利用して低エネルギーで分離を行う順浸透(FO)法が知られている。
前記順浸透法の一つとして、揮発性アニオン及び揮発性カチオンを含む揮発性イオン含有水溶液を用いる方法がある。例えば特許文献1では、図1に示すように、浄化対象水を、揮発性アニオン及び揮発性カチオンを含む揮発性イオン含有水溶液と半透過膜1を介して接触させ、該半透過膜1により前記浄化対象水から分離された水で前記揮発性イオン含有水溶液を希釈する希釈手段11と、
希釈された揮発性イオン含有水溶液から、前記揮発性アニオン及び前記揮発性カチオンを揮発させて、浄化水を得る蒸留塔7を含む分離手段15と、
気化分離したアニオンガス及びカチオンガスを、前記希釈された揮発性イオン含有水溶液に戻し、溶解するガス吸収器6を含む溶解手段14と、を有する水浄化装置が提案されている。
【0003】
しかしながら、前記提案の図1に示す水浄化装置では、前記分離手段15を用いた分離工程において、二酸化炭素と水とアンモニアが接触して、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、アンモニウムカルバメート等の塩が蒸留カラム、蒸留カラム中の充填物、トレイ、配管などに析出して、浄水化処理の効率が低下したり、詰りが発生してしまうという問題がある。また、揮発性イオン源として二酸化炭素とアンモニアを用いており、二酸化炭素は溶解度が低く、溶解効率が悪いため、浄水化処理に長時間を要してしまうという問題があり、その改善が望まれているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開2005/0145568号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、揮発性イオン源として二酸化炭素とアンモニアを用いた場合であっても、二酸化炭素の溶解効率が高く、短時間で効率よく浄水化処理が可能であると共に、揮発性アニオン及び揮発性カチオンが気化分離する際に塩が析出することがない水浄化装置及び水浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 浄化対象水と、揮発性アニオン及び揮発性カチオンを含む揮発性イオン含有水溶液とを半透過膜を介して接触させ、該半透過膜により前記浄化対象水から分離された水で前記揮発性イオン含有水溶液を希釈する希釈手段と、
前記希釈手段により希釈された揮発性イオン含有水溶液から、少なくとも前記揮発性アニオン及び前記揮発性カチオンを個別に分離して、浄化水を得る個別分離手段と、
前記個別分離手段により分離された前記揮発性アニオン及び前記揮発性カチオンを、前記希釈された揮発性イオン含有水溶液に個別に戻し、溶解させる個別溶解手段と、
を有することを特徴とする水浄化装置である。
該<1>に記載の水浄化装置においては、希釈手段と、個別分離手段と、個別溶解手段とを有する。
前記希釈手段により浄化対象水と、揮発性アニオン及び揮発性カチオンを含む揮発性イオン含有水溶液とを半透過膜を介して接触させ、該半透過膜により前記浄化対象水から分離された水で前記揮発性イオン含有水溶液を希釈する。
次に、前記個別分離手段により、希釈された揮発性イオン含有水溶液から、少なくとも前記揮発性アニオンと前記揮発性カチオンを個別に分離して、浄化水を得る。
次に、前記個別溶解手段により、分離された前記揮発性アニオン及び前記揮発性カチオンを、前記希釈された揮発性イオン含有水溶液に個別に戻し、溶解させる。その結果、短時間で効率よく浄水化処理が可能であると共に、揮発性アニオン及び揮発性カチオンが気化分離する際に塩が析出することを防止できる。
<2> 個別分離手段が、
希釈された揮発性イオン含有水溶液から、少なくとも揮発性アニオンを分離する第1の分離手段、及び、少なくとも揮発性カチオンを分離する第2の分離手段の少なくともいずれかと、
前記第1の分離手段及び前記第2の分離手段の少なくともいずれかにより分離した分離物から浄化水を分離する第3の分離手段と、
を有する前記<1>に記載の水浄化装置である。
該<2>に記載の水浄化装置においては、個別分離手段が、第1の分離手段及び第2の分離手段の少なくともいずれかと、第3の分離手段とを有する。
前記第1の分離手段及び第2の分離手段の少なくともいずれかにより、希釈された揮発性イオン含有水溶液から、少なくとも揮発性アニオン及び揮発性カチオンを分離する。
前記第3の分離手段により、前記第1の分離手段及び前記第2の分離手段の少なくともいずれかにより分離した分離物から浄化水を分離する。その結果、揮発性アニオンと水と揮発性カチオンがガス状態で接触する頻度が大幅に減少するので、塩の析出を防止できる。
<3> 第1の分離手段及び第2の分離手段が、それぞれイオン交換膜を用いた拡散透析、イオン交換膜を用いた電気透析、イオン選択的膜蒸留、及び揮発部材のいずれかである前記<2>に記載の水浄化装置である。
<4> 第3の分離手段が、揮発部材である前記<2>から<3>のいずれかに記載の水浄化装置である。
<5> 個別溶解手段が、
個別分離手段により分離された少なくとも揮発性カチオンを、希釈された揮発性イオン含有水溶液に戻し、溶解する第1の溶解手段と、
個別分離手段により分離された少なくとも揮発性アニオンを、前記第1の溶解手段による溶解後の希釈された揮発性イオン含有水溶液に戻し、溶解する第2の溶解手段と、
を有する前記<1>から<4>のいずれかに記載の水浄化装置である。
該<5>に記載の水浄化装置においては、個別溶解手段が、第1の溶解手段と、第2の溶解手段とを有する。
前記第1の溶解手段は、前記個別分離手段により分離された少なくとも揮発性カチオンを、希釈された揮発性イオン含有水溶液に戻し、溶解する。
前記第2の溶解手段は、前記個別分離手段により分離された少なくとも揮発性アニオンを、前記第1の溶解手段による溶解後の希釈された揮発性イオン含有水溶液に戻し、溶解する。その結果、揮発性アニオン又は揮発性カチオンのうち、溶解度の高い方を予め希釈された揮発性イオン含有水溶液に溶解させてからもう片方を溶解することができ、溶解度の低い成分の溶け残りや塩析出の問題を回避することができる。
<6> 第1の溶解手段及び第2の溶解手段が、いずれもガス吸収器である前記<5>に記載の水浄化装置である。
<7> 個別分離手段から第2の溶解手段までの経路における気圧が、個別分離手段から第1の溶解手段までの経路における気圧より高い前記<5>から<6>のいずれかに記載の水浄化装置である。
<8> 揮発性アニオン源が、二酸化炭素、二酸化硫黄のいずれかである前記<1>から<7>のいずれかに記載の水浄化装置である。
<9> 揮発性カチオン源が、アンモニアである前記<1>から<8>のいずれかに記載の水浄化装置である。
<10> 半透過膜が、水を選択的に透過する順浸透半透過膜である前記<1>から<9>のいずれかに記載の水浄化装置である。
<11> 浄化対象水が、海水である前記<1>から<10>のいずれかに記載の水浄化装置である。
<12> 浄化対象水と、揮発性アニオン及び揮発性カチオンを含む揮発性イオン含有水溶液とを半透過膜を介して接触させ、該半透過膜により前記浄化対象水から分離された水で前記揮発性イオン含有水溶液を希釈する希釈工程と、
前記希釈手段により希釈された揮発性イオン含有水溶液から、少なくとも前記揮発性アニオン及び前記揮発性カチオンを個別に分離して、浄化水を得る個別分離工程と、
前記個別分離手段により分離された前記揮発性アニオン及び前記揮発性カチオンを、前記希釈された揮発性イオン含有水溶液に個別に戻し、溶解させる個別溶解工程と、
を含むことを特徴とする水浄化方法である。
該<12>に記載の水浄化方法においては、希釈工程と、個別分離工程と、個別溶解工程とを含む。
前記希釈工程により浄化対象水と、揮発性アニオン及び揮発性カチオンを含む揮発性イオン含有水溶液とを半透過膜を介して接触させ、該半透過膜により前記浄化対象水から分離された水で前記揮発性イオン含有水溶液を希釈する。
次に、前記個別分離工程により、希釈された揮発性イオン含有水溶液から、少なくとも前記揮発性アニオンと前記揮発性カチオンを個別に分離して、浄化水を得る。
次に、前記個別溶解工程により、分離された前記揮発性アニオン及び前記揮発性カチオンを、前記希釈された揮発性イオン含有水溶液に個別に戻し、溶解させる。その結果、短時間で効率よく浄水化処理が可能であると共に、揮発性アニオン及び揮発性カチオンが気化分離する際に塩が析出することを防止できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来の前記諸問題を解決することができ、揮発性イオン源として二酸化炭素とアンモニアを用いた場合において、二酸化炭素の溶解効率が高く、短時間で効率よく浄水化処理が可能であると共に、揮発性アニオン及び揮発性カチオンが気化分離する際に塩が析出することがない水浄化装置及び水浄化方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、従来の水浄化装置の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明の水浄化装置の一例を示す概略図である。
【図3】図3は、個別分離手段としてのイオン交換膜を用いた拡散透析を示す概略図である。
【図4】図4は、個別分離手段としてのイオン交換膜を用いた電気透析を示す概略図である。
【図5】図5は、個別分離手段としてのイオン選択的膜蒸留を示す概略図である。
【図6】図6は、本発明の水浄化装置の他の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(水浄化装置及び水浄化方法)
本発明の水浄化装置は、希釈手段と、個別分離手段と、個別溶解手段とを有し、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。
本発明の水浄化方法は、希釈工程と、個別分離工程と、個別溶解工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0010】
本発明の水浄化方法は、本発明の水浄化装置により好適に実施することができ、前記希釈工程は前記希釈手段により行うことができ、前記個別分離工程は前記個別分離手段により行うことができ、前記個別溶解工程は前記個別溶解手段により行うことができ、前記その他の工程は前記その他の手段により行うことができる。
【0011】
<希釈手段及び希釈工程>
前記希釈工程は、浄化対象水と、揮発性アニオン及び揮発性カチオンを含む揮発性イオン含有水溶液とを半透過膜を介して接触させ、該半透過膜により前記浄化対象水から分離された水で前記揮発性イオン含有水溶液を希釈する工程であり、希釈手段により実施することができる。
【0012】
−浄化対象水−
前記浄化対象水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば海水、ブラキッシュウォーター、河川、湖、沼、池等の自然界から得られる水、工場や各種工業施設から排出される工業廃水、家庭や一般施設から排出される一般廃水などが挙げられる。これらの中でも、安定かつ大量に得られる入手容易性と、浄化の必要性の点で海水が特に好ましい。
本発明において、前記浄化水とは、塩等の不純物含有量が少ない水溶液を意味する。不純物含有量はその浄化水の使用する目的と不純物の種類によって適宜調整することができる。
【0013】
−揮発性イオン含有水溶液−
前記揮発性イオン含有水溶液とは、揮発性イオンを含む水溶液であり、該揮発性イオンとしては、揮発性アニオン、揮発性カチオンなどが挙げられ、揮発性イオン源が用いられる。
【0014】
前記揮発性イオン源としては、少なくとも特定の温度で水よりも揮発性が高い物質が選択される。
前記揮発性の指標としては、物質の各温度におけるヘンリー定数や飽和蒸気圧が水の飽和蒸気圧より大きいことが挙げられる。
前記ヘンリー定数とは、物質が大量の溶媒に溶けている溶液における、物質のモル分率と飽和蒸気分圧の関係を示す物性値であり、これが大きいほどその溶液中において揮発性が高いことを示し、書籍「化学便覧(丸善株式会社発行)」、書籍「増補 ガス吸収(化学工業株式会社発行)」などに記載されている。
前記揮発性アニオン源としては、例えば二酸化炭素(CO)、二酸化硫黄(SO)などが挙げられる。これらの中でも、揮発性の高さ、安定性、低反応性、入手容易性の点で二酸化炭素(CO)が特に好ましい。前記揮発性アニオン源は、水に溶解することによって水和し、引き続き、脱プロトン化することによって、アニオン(HCO、CO2−、HSO、SO2−)となる。
前記揮発性カチオン源としては、例えばアンモニアなどが好適に挙げられる。前記揮発性カチオン源は、水に溶解することによってプロトン化し、カチオン(NH)となる。
【0015】
前記揮発性イオン含有水溶液における揮発性アニオンの含有量(濃度)は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記浄化対象水から水を分離する速度を高める観点から高濃度であることが好ましい。
前記揮発性イオン含有水溶液における揮発性カチオンの含有量(濃度)は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記浄化対象水から水を分離する速度を高める観点から高濃度であることが好ましい。ただし、溶液中で塩が析出したり泡が発生したりしてしまうことを抑制するために、適宜濃度を下げてもよい。また、前記揮発性イオン含有水溶液が酸性やアルカリ性の場合には、前記半透過膜のような部材を劣化させてしまうため、前記揮発性アニオンと前記揮発性カチオンの比が、適宜調整されることが好ましい。
【0016】
−半透過膜−
前記半透過膜としては、その素材、形状、大きさ、構造などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水を選択的に透過する順浸透半透過膜であることが好ましい。
前記順浸透半透過膜としては、半透膜性を有すれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記素材として、例えば酢酸セルロース、芳香族ポリアミド、芳香族ポリスルホン、ポリベンゾイミダゾール、などが挙げられる。前記形状として、例えば、平膜、平膜を用いたスパイラル型モジュール、中空糸型モジュール、チューブラー型モジュール、などが挙げられる。
【0017】
<個別分離手段及び個別分離工程>
前記個別分離工程は、前記希釈手段により希釈された前記揮発性イオン含有水溶液から、少なくとも前記揮発性アニオンと前記揮発性カチオンを個別に分離して、浄化水を得る工程であり、個別分離手段により実施することができる。
【0018】
従来の水浄化装置は、図1に示すように、分離手段15を用いた分離工程において、二酸化炭素と水とアンモニアが接触すると、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、アンモニウムカルバメート等の塩が析出するという問題があった。特にカラム中の充填物、トレイ(棚段)、配管等の表面に、水やアンモニアがガス状態で接触すると、ある割合でそれが液化して吸着する。更にその吸着液に対して、二酸化炭素や水、アンモニアが更に吸着することによって、3者(二酸化炭素と水とアンモニア)が反応して塩が析出する。また、一度塩が析出するとそれを核として結晶成長が促進されるため、それが大きな問題となる。
特に大きな問題としては、充填物等の表面に析出した塩が充填物の隙間の大きさを狭め、結果としてフラッディングを引き起こすことが挙げられる。前記フラッディングとは、上昇する蒸気の量と流下する液の量のバランスが崩れることによって、液が蒸気によって押し上げられることを意味する。それに伴って液があふれ出たり、押し上げられた液が一気に流れ落ちたりする現象である。前記フラッディングが生じると適切な分離が行えなくなるため、これを避けるように設計することは必須である。
【0019】
前記個別分離手段としては、第1の分離手段及び第2の分離手段の少なくともいずれかと、第3の分離手段とを有することが好ましい。なお、第1の分離手段と第2の分離手段は一体であっても別体であってもよく、別体の場合は、第1の分離手段と第2の分離手段が接続されている。また、第1の分離手段及び第2の分離手段の少なくともいずれかは第3の分離手段と一体であっても別体であってもよく、別体の場合は、第1の分離手段及び第2の分離手段の少なくともいずれかと第3の分離手段とが接続されている。
【0020】
−第1及び第2の分離手段−
前記第1の分離手段は、前記希釈手段により希釈された揮発性イオン含有水溶液から、少なくとも揮発性アニオンを分離する手段であり、揮発性アニオンを純度高く分離できるものが好ましいが、揮発性アニオンを7割〜8割の純度で分離できれば用いることができる。
前記第2の分離手段は、前記希釈手段により希釈された揮発性イオン含有水溶液から、少なくとも揮発性カチオンを分離する手段であり、揮発性カチオンを純度高く分離できるものが好ましいが、揮発性カチオンを7割〜8割の純度で分離できれば用いることができる。
前記第1の分離手段による分離後に前記第2の分離手段を有する場合には、前記第2の分離手段は、第1の分離後の希釈された揮発性イオン含有水溶液から、少なくとも揮発性カチオンを分離する。
【0021】
前記第1及び第2の分離手段としては、揮発性アニオンと揮発性カチオンが少なくとも部分的に分離できれば原理や構成などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオン交換膜を用いた拡散透析、イオン交換膜を用いた電気透析、イオン選択的膜蒸留、揮発部材、などが挙げられる。
【0022】
前記イオン交換膜を用いた拡散透析とは、図3に示すように、希釈された揮発性イオン含有水溶液を陰イオン交換膜に接触させ、裏側に純水を接触させることによって、揮発性アニオンの濃度勾配に従ってそれを選択的に膜透過させる方法である。この時、揮発性アニオンの対イオンとしては、プロトン(H)がそのサイズの小ささから選択的に膜を透過する。
このイオン交換膜を用いた拡散透析は、揮発性アニオンの透過が外力を必要とせずに達成されるため、エネルギー的に有利である。また、前記拡散透析は、その陰イオン交換膜に対して、プロトンと揮発性カチオンにおける高い選択性が求められる。
【0023】
前記イオン交換膜を用いた電気透析は、図4に示すように、希釈された揮発性イオン含有水溶液を陰イオン交換膜と陽イオン交換膜で挟み、陰イオン交換膜の外側に陽極、陽イオン交換膜の外側に陰極を配置し、両電極間に電圧をかける方法である。より好ましくは、陰イオン交換膜と陽極の間、陽イオン交換膜と陰極の間に、陰イオン交換膜と陽イオン交換膜の二層膜(以下、単に「二層膜」と称する)をそれぞれ配置する。
前記電気透析では、両電極間に電圧を印加することによって、陽極側(陰イオン交換膜側)に揮発性アニオンが、陰極側(陽イオン交換膜側)に揮発性カチオンが引き寄せられることにより、それぞれの膜を選択的に透過させ分離することができる。この時、揮発性アニオンの対イオンとしては、プロトンが二層膜の膜間界面から生じて引き寄せられ、揮発性カチオンの対イオンとしては、ヒドロキシイオン(OH)が同じく二層膜の膜間界面から生じて引き寄せられる。
前記電気透析は、前記拡散透析に比べるとエネルギー的な負荷は大きくなるが、拡散透析に比べると、求められる選択性は小さく、またその分離速度も充分に高めることができるので有利である。
【0024】
前記イオン選択的膜蒸留は、図5に示すように、前記拡散透析と同様に希釈された揮発性イオン含有水溶液を陰イオン交換膜に接触させる。この時、裏側には純水ではなく空気を接触させることによって、膜界面において揮発性アニオンを揮発させる。
なお、前記イオン選択的膜蒸留は、同様に陽イオン交換膜でも可能であるし、陰イオン交換膜と陽イオン交換膜の両方を用いることも可能である。
【0025】
前記揮発部材としての蒸留塔を直列に分割し、それぞれにおいて揮発性カチオン及び揮発性アニオンの片方をより多く揮発させる構成としてもよい(図6参照)。
前記揮発部材を直列に分割する方法では、揮発性カチオンと揮発性アニオンを、その揮発性の違いからそれぞれにおいて片方を優先的に揮発させることによって両者を分離することができる。
具体的には、希釈された揮発性イオン含有水溶液として、等モル濃度の二酸化炭素とアンモニアの水溶液を用いた場合、そのまま揮発させると初期の段階では、二酸化炭素の方が揮発性が高いため、二酸化炭素が優先的に揮発する。これは、それぞれの溶解成分のうちの非電離成分の濃度とヘンリー定数の関係からも示される。二酸化炭素のヘンリー定数はアンモニアの10,000倍程度又はそれ以上である。
二酸化炭素が優先的に揮発すると希釈された揮発性イオン含有水溶液のpHは高くなっていくため、次第に、二酸化炭素の非イオン化成分の濃度が低くなり、逆にアンモニアの非イオン化成分の濃度が高くなる。この状態までとそれ以降で揮発部材を分割すると、それぞれ二酸化炭素を優先的に揮発させる揮発部材とアンモニア成分を優先的に揮発させる揮発部材という構成にすることが可能である。
【0026】
前記揮発部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば一般的な蒸留に用いられる蒸留塔、蒸留装置、膜プロセスユニット、マイクロリアクター等の微小流体の制御機構、などが挙げられる。これらの中でも、蒸留塔が特に好ましい。
前記蒸留塔としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば棚段塔、充填塔、などが挙げられる。
前記棚段塔としては、例えば、書籍「蒸留技術(化学工学協会編)」のp139〜p143、書籍「解説化学工学(培風館発行)」のp141〜p142に記載の構造体、具体的には泡鐘(バブルキャップ)トレイ、バルブトレイ、多孔板(シーブ)トレイ、などが挙げられる。
前記充填塔に詰める充填物としては、規則充填物でも不規則充填物でもよく、例えば書籍「解説化学工学(培風館発行)」のp155〜p157、書籍「増補 ガス吸収(化学工業株式会社発行)」のp221〜p242に記載されている充填物を任意に選択することができる。
前記膜プロセスユニットとしては、例えば学術論文「Journal of Membrane ScienceVol.124,Issue1,p1〜p25」などに記載の膜蒸留ユニットを用いることができる。
前記マイクロリアクターとしては、例えば書籍「マイクロ化学チップの技術と応用(丸善株式会社発行)」に記載のリアクターを用いることができる。
前記個別分離手段としては、これらの手段を単独で用いてもよく、複数組み合わせても構わない。
【0027】
−第3の分離手段−
前記第3の分離手段は、前記第1の分離手段及び前記第2の分離手段の少なくともいずれかにより分離した分離物から浄化水を分離する手段である。
前記第3の分離手段は、第1の分離手段及び/又は第2の分離手段と一体であっても別体であってもよく、別体の場合は、第1の分離手段及び/又は第2の分離手段と接続されている。また、第1の分離手段及び第2の分離手段を有する場合には、第1の分離手段と一体又は接続される第3の分離手段と、第2の分離手段と一体又は接続される第3の分離手段とを、それぞれ有する。
前記分離物としては、第1及び/又は第2の分離手段と第3の分離手段が別体の場合は揮発性カチオンを優先的に含有する水溶液及び/又は揮発性アニオンを優先的に含有する水溶液である。第1及び/又は第2の分離手段と第3の分離手段が別体の場合は、前記分離物の状態は実質的に経由しないため、本手段(第3の分離手段)は揮発性イオン含有水溶液から直接浄化水を得る手段となる。
【0028】
前記第3の分離手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば揮発部材、などが挙げられる。
前記揮発部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記第1の分離手段と同様のものを用いることができる。
【0029】
<個別溶解手段及び個別溶解工程>
前記個別溶解工程は、前記個別分離手段により分離された前記揮発性アニオン及び前記揮発性カチオンを、前記希釈された揮発性イオン含有水溶液に個別に戻し、溶解する工程であり、個別溶解手段により実施される。
【0030】
ここで、前記揮発性アニオンは、水に比べて揮発性が高いため、そのままでは比較的溶解度が低く、また揮発性カチオンの存在濃度によって溶解度が大きく変化することが知られている。例えば、米国出願公開2005/0145568号明細書のように揮発性アニオンのガスを揮発性カチオンのガスと同時に溶解する場合には、揮発性カチオンのガスの溶解が遅れるとそれに伴って揮発性アニオンのガスの溶解度が一時的に低下する。その結果、揮発性アニオンのガスが溶け切ることができずに全体のマテリアルバランスが崩れてしまう。場合によっては、同様に溶解バランスが崩れると、本来より低濃度領域において塩が析出する。このように塩が析出すると、溶解速度を遅くするだけでなく、順浸透(FO)膜や蒸留カラムなどに詰まり、透過水流量の低下やフラッディングの問題が生じる。
具体的には、揮発性アニオン源として二酸化炭素、揮発性カチオン源としてアンモニアを用いた場合、例えば25℃で1気圧において、二酸化炭素単独では30mM程度しか溶解することができず、それ以上の濃度領域においては、アンモニア濃度が一定濃度以上でないと、二酸化炭素ガスは溶解できない、又は炭酸水素アンモニウム塩などの析出が生じてしまうという問題がある。
【0031】
また、揮発性アニオンと揮発性カチオンを分離(少なくとも部分的に)することで、その非効率性によるマテリアルバランスの崩れや低濃度領域における塩析出の問題を回避することができる。なぜなら、揮発性アニオン又は揮発性カチオンのうち、溶解度の高い方を予め希釈された揮発性イオン含有水溶液に溶解させてからもう片方を溶解することができるからである。具体的には、二酸化炭素とアンモニアの場合には、アンモニアの溶解性は高いが二酸化炭素の溶解性は低い。この場合、アンモニア又はアンモニアを優先的に含むガスを最初に溶解させて、予めpHを充分に高めた状態にすることで、二酸化炭素の溶け残りや塩析出の問題を回避することができる。
また、アンモニアは溶解性が高いため、ガス吸収器の構成を工夫することでそのガスの溶解による体積収縮を利用して、減圧状態を維持することが可能である。このような減圧状態は揮発部において、アンモニアの揮発効率を向上させることができる。一方、二酸化炭素は比較的溶解性が低いため、逆に加圧状態にすることでその溶解速度を向上させることができる。この加圧状態は揮発部における揮発による体積膨張(気圧向上)を利用することができる。
また、これらの溶解においては、ガス溶解やカルバメート生成など、発熱反応、吸熱反応を伴うため、どの反応が支配的であるかの状況に応じてそれぞれの溶解温度を別々に制御することによって、総合的な溶解速度や効率を高めることも可能である。
【0032】
前記個別溶解手段としては、第1の溶解手段と、第2の溶解手段とを有することが好ましい。
前記第1の溶解手段は、前記個別分離手段により分離された少なくとも揮発性カチオンを、希釈された揮発性イオン含有水溶液に戻し、溶解する手段である。この場合、前記個別分離手段としては、第2の分離手段、第3の分離手段などが挙げられる。
前記第2の溶解手段は、前記個別分離手段により分離された少なくとも揮発性アニオンを、前記第1の溶解手段による溶解後の希釈された揮発性イオン含有水溶液に戻し、溶解する手段である。この場合、前記個別分離手段としては、第1の分離手段、第3の分離手段などが挙げられる。
【0033】
前記個別分離手段(例えば第1の分離手段、第3の分離手段)から前記第2の溶解手段までの経路における気圧が、前記個別分離手段(例えば第2の分離手段、第3の分離手段)から前記第1の溶解手段までの経路における気圧より高いことが、溶解性の低い該揮発性アニオンの溶解効率、速度を向上させる観点から好ましい。逆に、前記個別分離手段から第2の溶解手段までの経路における気圧が低いことは、揮発性の低い揮発性カチオンの揮発速度を向上させる観点から好ましい。この場合、前記個別分離手段から第2の溶解手段までの経路における気圧は、前記個別分離手段から第1の溶解手段までの経路における気圧よりも、2倍以上高いことが好ましい。
【0034】
前記第1の溶解手段及び前記第2の溶解手段としては、特に制限はなく、一般的なガス吸収に用いられている装置の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、書籍「増補 ガス吸収(化学工業株式会社発行)」のp49〜p54、p83〜p144に記載されている装置、部品、条件などを任意に選択することができ、具体的には、吸収器、充填塔、棚段塔、スプレー塔、流動充填塔を用いた方式、液膜十字流接触方式、高速旋回流方式、機械力利用方式、などが挙げられる。また、マイクロリアクター、メンブレンリアクター等の微小流体の制御機構を利用して薄層気液層を構築して吸収させてもよい。
前記充填塔に詰める充填物としては、規則充填物でも不規則充填物でもよく、例えば書籍「増補 ガス吸収(化学工業株式会社発行)」のp221〜p242に記載されている充填物を任意に選択することができる。
【0035】
前記充填物、塔、ディストリビューター、サポート等の構成部品材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばステンレス鋼、アルミキルド鋼等の鋼鉄系材料;チタン、アルミニウム等の非鉄材料;ガラス、アルミナ等のセラミックス;カーボン、合成ポリマー、ゴム等の素材、などが挙げられる。また、吸収器としては、前記揮発性アニオン用と前記揮発性カチオン用でそれぞれに適切なものを個別に選択してもよく、また同一のものを使用してもよい。更には、それぞれ複数種類のガス吸収器を利用してもよい。
【0036】
−その他の工程及びその他の手段−
前記その他の工程としては、例えば制御工程、駆動工程などが挙げられ、これらは制御手段、駆動手段により実施される。
前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0037】
<第1の実施形態>
図2は、本発明の水浄化装置の第1の実施形態を示す概略図である。この図2の水浄化装置は、順浸透半透過膜1を含む希釈手段11と、第2の分離手段が一体化された第1の分離手段5、及び第2の分離手段と接続されている第3の分離手段3を含む個別分離手段13と、第1の溶解手段4及び第2の溶解手段2を含む個別溶解手段12と、を有している。
この図2の水浄化装置においては、揮発性アニオン源として二酸化炭素、揮発性カチオン源としてアンモニアを用いている。また、順浸透半透過膜1として、Hydration Technology Inovations社製Expedition内蔵膜(以下、「HT膜」と称する)を用いている。
第1の分離手段5として、図3に示すイオン交換膜を用いた拡散透析、第2の分離手段が一体化された第1の分離手段5として、図4に示すイオン交換膜を用いた電気透析、又は第3の分離手段が一体化された第1の分離手段5として、図5に示すイオン選択的膜蒸留を用いることができる。
この図2の水浄化装置では、第2の分離手段が一体化された第1の分離手段5として、図4に示すイオン交換膜を用いた電気透析が用いられている。また、第2の分離手段と接続されている第3の分離手段3として、蒸留塔を用いている
図2の水浄化装置においては、第1の溶解手段4及び第2の溶解手段2として、ガス吸収器(アブソーバー)を用いている。
【0038】
図2に示す水浄化装置においては、浄化対象水と、揮発性アニオン及び揮発性カチオンを含む揮発性イオン含有水溶液とを半透過膜を介して接触させ、該半透過膜により前記浄化対象水から分離された水で前記揮発性イオン含有水溶液を希釈する。
次に、希釈された揮発性イオン含有水溶液から、少なくとも前記揮発性アニオンと前記揮発性カチオンを個別に分離して、浄化水が得られる。
次に、分離された前記揮発性アニオン及び前記揮発性カチオンを、前記希釈された揮発性イオン含有水溶液に個別に戻し、溶解させて、揮発性イオン含有水溶液が再生される。
【0039】
<第2の実施形態>
図6は、本発明の水浄化装置の第2の実施形態を示す概略図である。この図6の水浄化装置は、個別分離手段13における第1の分離手段と一体化された第3の分離手段23として蒸留塔と、個別分離手段13における第2の分離手段と一体化された第3の分離手段25として蒸留塔を用いたものである。このように揮発部材としての蒸留塔を直列に分割することにより、揮発性カチオンと揮発性アニオンを、その揮発性の違いからそれぞれにおいて片方を優先的に揮発させることによって両者を分離することができる。
なお、図6の水浄化装置において、図2の水浄化装置と同じものは同符号で示した。
【0040】
本発明の水浄化装置及び水浄化方法は、揮発性イオン源として二酸化炭素とアンモニアを用いた場合であっても、二酸化炭素の溶解効率が高く、短時間で浄水化処理が可能であると共に、揮発性アニオン及び揮発性カチオンが気化分離する際に塩が析出することがないので、各種水の浄化に用いることができ、特に海水の浄水化に好適に用いられる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)
以下に示す部材を使用して、図2に示す本発明の水浄化装置を組み立てた。
浄化対象水として、海水のモデルとして3.5質量%塩化ナトリウム水溶液を用いた。
揮発性アニオン源として、二酸化炭素を用いた。
揮発性カチオン源として、アンモニアを用いた。
揮発性イオン含有水溶液として、二酸化炭素を3mol/L含有し、アンモニアを4.2mol/L含有するものを用いた。
順浸透半透過膜1として、HT膜を使用した。
個別分離手段13における第2の分離手段が一体化された第1の分離手段5として、図4に示すイオン交換膜を用いた電気透析ユニットを使用した。
個別分離手段13における第2の分離手段と接続されている第3の分離手段3として、規則充填物(Sulzer Chemteck社製、Laboratory Packing EX;以下「ラボパック」と称する)を内蔵した蒸留塔を使用した。
個別溶解手段12における第1の溶解手段4として、ラボパックを内蔵した吸収塔を使用した。
個別溶解手段12における第2の溶解手段2として、ラボパックを内蔵した吸収塔を使用した。
【0043】
次に、図2の水浄化装置を用いて、以下のようにして、塩の析出、COの溶解効率、及び浄水化効率を評価した。結果を表1に示す。
【0044】
<塩の析出の評価方法>
希釈手段によって希釈されて二酸化炭素0.8mol/L、アンモニア1.12mol/Lになった揮発性イオン含有水溶液を、陽陰極間に電圧を印加した状態の電気透析ユニットに導入した。
陰イオン交換膜及び二層膜の2膜間から得られる水溶液を分離液(1)、陽イオン交換膜及び二層膜の2膜間から得られる水溶液を分離液(2)、陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜の2膜間から得られる水溶液を分離液(3)として回収した。この際、分離液(1)から発生する二酸化炭素ガスは上部から回収した。分離液(1)、及び分離液(2)をそれぞれ別の蒸留塔に導入し、それぞれ40℃、80℃で揮発分離し、上部からそれぞれ二酸化炭素、アンモニアを優先的に含むガスを回収すると共に、下部から浄化水を得た。また、分離液(3)についても純度を向上させるために、別の蒸留塔に導入し、80℃で同様にガスと浄化水を得た。
そして、12時間経過後の各蒸留塔上部に接続された配管内部を観察することで、発生ガスによる塩の析出の状態を観察して評価した。
【0045】
<COの溶解効率>
分離液(1)を導入した蒸留塔上部から得られたガスと、分離液(3)を導入した蒸留塔上部から得られたガスを、第1の溶解手段4の吸収塔に導入し、希釈された揮発性イオン含有水溶液と接触させることで、該ガスを該水溶液に吸収させた。
また、分離液(2)を導入した蒸留塔上部から得られたガスを、第2の溶解手段2の吸収塔に導入し、分離液(1)、及び(3)から得られたガスを吸収した揮発性イオン含有水溶液と接触させることで、分離液(2)から得られたガスを該水溶液に吸収させた。
上記操作を60分間実施した時点で操作を中断し、ガスを吸収した揮発性イオン含有水溶液に含まれる二酸化炭素溶解量とアンモニア溶解量をイオン電極によって測定した。イオン電極による測定は1,000倍に希釈した該水溶液に対して、東亜DKK社製の炭酸ガス電極を用いてメーカー推奨方法に従って実施した。分離液(2)、及び(3)から得られたガス量に対する、溶解した二酸化炭素のガス量の比を求めた。
【0046】
<浄化水効率>
全ての蒸留塔の下部から得られた浄化水を混合し、そこに含まれるアンモニア溶解量を測定した。
アンモニア溶解量の測定は、混合浄化水に対して、東亜DKK社製のアンモニア複合電極を用いてメーカー推奨方法に従って実施した。
【0047】
(実施例2)
以下に示す部材を用いた以外は、実施例1と同様にして、図6に示す本発明の水浄化装置を組み立てた。
個別分離手段13における第1の分離手段と一体化された第3の分離手段23として、ラボパックを内蔵した蒸留塔を使用した。
個別分離手段13における第2の分離手段と一体化された第3の分離手段25として、ラボパックを内蔵した蒸留塔を使用した。
【0048】
次に、図6に示す水浄化装置を用い、実施例1と同様にして、塩の析出、COの溶解効率、及び浄水化効率を評価した。結果を表1に示す。
【0049】
(比較例1)
以下に示す部材を用いた以外は、実施例1と同様にして、図1に示す従来の水浄化装置を組み立てた。
分離手段15における蒸留塔7として、ラボパックを内蔵した蒸留塔を使用した。
溶解手段14におけるガス吸収器6として、ラボパックを内蔵した吸収塔を使用した。
【0050】
次に、図1に示す水浄化装置を用い、実施例1と同様にして、塩の析出、COの溶解効率、及び浄水化効率を評価した。結果を表1に示す。
【0051】
【表1】

表1の結果から、実施例1及び2は、比較例1に比べて、浄水化効率を維持しつつ、塩の析出がなく、二酸化炭素の溶解効率が高いことが分かった。
【0052】
以上、本発明の水浄化装置及び水浄化方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更しても差支えない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の水浄化装置及び水浄化方法は、揮発性イオン源として二酸化炭素とアンモニアを用いた場合であっても、二酸化炭素の溶解効率が高く、短時間で効率よく浄水化処理が可能であると共に、揮発性アニオン及び揮発性カチオンが気化分離する際に塩が析出することがないので、各種水の浄化に用いることができ、特に海水の浄水化に好適である。
【符号の説明】
【0054】
1 半透過膜
2 第2の溶解手段
3 第3の分離手段
4 第1の溶解手段
5 第1の分離手段
6 ガス吸収器
7 蒸留塔
11 希釈手段
12 個別溶解手段
13 個別分離手段
14 溶解手段
15 分離手段
23 第3の分離手段
25 第3の分離手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浄化対象水と、揮発性アニオン及び揮発性カチオンを含む揮発性イオン含有水溶液とを半透過膜を介して接触させ、該半透過膜により前記浄化対象水から分離された水で前記揮発性イオン含有水溶液を希釈する希釈手段と、
前記希釈手段により希釈された揮発性イオン含有水溶液から、少なくとも前記揮発性アニオン及び前記揮発性カチオンを個別に分離して、浄化水を得る個別分離手段と、
前記個別分離手段により分離された前記揮発性アニオン及び前記揮発性カチオンを、前記希釈された揮発性イオン含有水溶液に個別に戻し、溶解させる個別溶解手段と、
を有することを特徴とする水浄化装置。
【請求項2】
個別分離手段が、
希釈された揮発性イオン含有水溶液から、少なくとも揮発性アニオンを分離する第1の分離手段、及び、少なくとも揮発性カチオンを分離する第2の分離手段の少なくともいずれかと、
前記第1の分離手段及び前記第2の分離手段の少なくともいずれかにより分離した分離物から浄化水を分離する第3の分離手段と、
を有する請求項1に記載の水浄化装置。
【請求項3】
第1の分離手段及び第2の分離手段が、それぞれイオン交換膜を用いた拡散透析、イオン交換膜を用いた電気透析、イオン選択的膜蒸留、及び揮発部材のいずれかである請求項2に記載の水浄化装置。
【請求項4】
第3の分離手段が、揮発部材である請求項2から3のいずれかに記載の水浄化装置。
【請求項5】
個別溶解手段が、
個別分離手段により分離された少なくとも揮発性カチオンを、希釈された揮発性イオン含有水溶液に戻し、溶解する第1の溶解手段と、
個別分離手段により分離された少なくとも揮発性アニオンを、前記第1の溶解手段による溶解後の希釈された揮発性イオン含有水溶液に戻し、溶解する第2の溶解手段と、
を有する請求項1から4のいずれかに記載の水浄化装置。
【請求項6】
第1の溶解手段及び第2の溶解手段が、いずれもガス吸収器である請求項5に記載の水浄化装置。
【請求項7】
個別分離手段から第2の溶解手段までの経路における気圧が、個別分離手段から第1の溶解手段までの経路における気圧より高い請求項5から6のいずれかに記載の水浄化装置。
【請求項8】
揮発性アニオン源が、二酸化炭素及び二酸化硫黄のいずれかである請求項1から7のいずれかに記載の水浄化装置。
【請求項9】
揮発性カチオン源が、アンモニアである請求項1から8のいずれかに記載の水浄化装置。
【請求項10】
半透過膜が、水を選択的に透過する順浸透半透過膜である請求項1から9のいずれかに記載の水浄化装置。
【請求項11】
浄化対象水が、海水である請求項1から10のいずれかに記載の水浄化装置。
【請求項12】
浄化対象水と、揮発性アニオン及び揮発性カチオンを含む揮発性イオン含有水溶液とを半透過膜を介して接触させ、該半透過膜により前記浄化対象水から分離された水で前記揮発性イオン含有水溶液を希釈する希釈工程と、
前記希釈手段により希釈された揮発性イオン含有水溶液から、少なくとも前記揮発性アニオン及び前記揮発性カチオンを個別に分離して、浄化水を得る個別分離工程と、
前記個別分離手段により分離された前記揮発性アニオン及び前記揮発性カチオンを、前記希釈された揮発性イオン含有水溶液に個別に戻し、溶解させる個別溶解工程と、
を含むことを特徴とする水浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−83663(P2011−83663A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−236412(P2009−236412)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】