説明

水溶性洗浄剤組成物

【課題】セリア、シリカ微粒子を容易に洗浄除去できる洗浄剤及び洗浄方法を提供する。
【解決手段】一般式(I)及び(II)
【化1】


(式中、Rは炭素数6〜16のアルキル基であり、R、Rは同一又は異なって炭素数1〜4のアルキル基もしくは、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基である。Rは炭素数1〜6のアルキル基、Rはエチレン基またはプロピレン基、nは1〜3の整数である。)で表される化合物群から選択される少なくとも1種の化合物、有機酸および水を含む洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水溶性洗浄剤組成物であって、シリコン、ガラス、サファイア等の脆性材料や鉄、アルミ、ニッケル、銅などの金属及び合金の表面に付着したセリア、シリカ等の汚染物を除去するのに適した洗浄剤組成物、並びに洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、シリコン、ガラス、サファイア等の脆性材料や鉄、アルミ、ニッケル、銅などの金属及び合金の表面洗浄は、製品の品質や歩留まり改善のため、製品表面に対する洗浄度の要求が厳しくなっている。特に、セリアやシリカ、シリコンカーバイド等の研磨材を含むスラリーや工具で加工する製品については、その表面に付着した研磨材や各種切り屑、及び作業環境由来の汚染物を除去することが要求されている。また、ガラスをセリアで研磨した場合、セリアとシリカの混合物が汚染物として付着し、これらを除くのは容易ではなかった。
【0003】
特許文献1では、ハードディスク製造工程において、シリカ粒子が凝集しにくい、非イオン界面活性剤と水溶性アミン化合物で洗浄する方法が開示されている。
【0004】
しかし、セリア、シリカ微粒子を共に、優れた洗浄性を有する洗浄剤組成物はいまだ見つかっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-84509
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、セリア、シリカ微粒子を容易に洗浄除去できる洗浄剤及び洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シリコン、ガラス、サファイア等の脆性材料や鉄、アルミ、ニッケル、銅などの金属及び合金の表面に付着したセリア、シリカ等の汚染物を除去するのに適した洗浄剤組成物及び該組成物を用いた洗浄方法を提供するものである。
項1. 一般式(I)及び(II)
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、Rは炭素数6〜16のアルキル基であり、R、Rは同一又は異なって炭素数1〜4のアルキル基もしくは、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基である。Rは炭素数1〜6のアルキル基、Rはエチレン基またはプロピレン基、nは1〜3の整数である。)
で表される化合物群から選択される少なくとも1種の化合物、有機酸および水を含む洗浄剤組成物。
項2. 有機酸は、メタンスルホン酸、ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、ニトリロトリスメチレンホスホン酸から選択される少なくとも1種の酸である、項1に記載の洗浄剤組成物。
項3. 一般式(I)及び(II) で表される化合物群から選択される少なくとも1種の化合物を0.01〜90.0重量%含む、項1又は2に記載の洗浄剤組成物。
項4. 前記化合物が一般式(I)で表される少なくとも1種の化合物であり、一般式(I)の化合物を0.01〜50.0重量%含む、項3に記載の洗浄剤組成物。
項5. 前記化合物が一般式(II)で表される少なくとも1種の化合物であり、一般式(II)の化合物を0.01〜90.0重量%含む、項3に記載の洗浄剤組成物。
項6. 有機酸を0.01〜50.0重量%を含む、項1〜5のいずれか1項に記載の洗浄剤組成物。
項7. セリア及び/又はシリカ除去用の項1〜6のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
項8. 項1〜6のいずれかに記載の洗浄剤組成物を用いて、セリア及び/又はシリカが付着した基材を洗浄することを特徴とする、セリア及び/又はシリカの洗浄方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
本発明は水溶性洗浄剤組成物であって、シリコン、ガラス、サファイア等の脆性材料や鉄、アルミ、ニッケル、銅などの金属及び合金の表面に付着したセリア、シリカ等の汚染物を除去するのに適した洗浄剤組成物に関する。具体的には、メタンスルホン酸もしくは、ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、ニトリロトリスメチレンホスホン酸からなる水溶液に式(I)で表せるアミンオキサイド及び/又は式(II)で表わせるエーテル系化合物を組み合わせる洗浄剤組成物である。
【0012】
本発明で用いられる式(I)
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、R、R、Rは前記に定義されるとおりである。)
で表されるアミンオキサイドの具体的な化合物として、ヘキシルジメチルアミンオキサイド、オクチルジメチルアミンオキサイド、デシルジメチルアミンオキサイド、ウンデシルジメチルアミンオキサイド、ラウリルジメチルアミンオキサイド、トリデシルジメチルアミンオキサイド、テトラデシルジメチルアミンオキサイド、ヘキサデシルジメチルアミンオキサイド、デシルビス(2−ヒドロキシエチル)アミンオキサイド、ドデシルビス(2−ヒドロキシエチル)アミンオキサイド、テトラデシルビス(2−ヒドロキシエチル)アミンオキサイド、ドデシルビス(2−ヒドロキシプロピル)アミンオキサイド等が挙げられる。中でも、デシルジメチルアミンオキサイド、ラウリルジメチルアミンオキサイドがシリカ、セリア除去性の観点から好ましい。
【0015】
式(II)
【0016】
【化3】

【0017】
(式中、R4、R5、nは前記に定義されるとおりである。)
で表されるエーテル系化合物の具体例として、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘプチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘプチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘプチルエーテル、プロピレングリコールモノヘプチルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘプチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘプチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル等が好ましく例示され、中でもエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチエレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチエレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘプチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘプチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘプチルエーテル等が、シリカ、セリアの除去性の観点から好ましい。
【0018】
式(I)で表されるアミンオキサイド化合物の濃度は、接触角低下の観点から0.01〜50.0重量%が好ましい。
【0019】
式(II)で表されるエーテル系化合物の濃度は、接触角低下の観点から0.01〜90.0重量%が好ましい。
【0020】
式(I)の化合物と式(II)の化合物を併用する場合、合計の化合物の濃度は0.01〜90.0重量%であり、かつ、式(I)の化合物は0.01〜50.0重量%、式(II)の化合物は0.01〜90.0重量%の濃度範囲内にある。
【0021】
本発明で用いられる酸は、シリカ、セリアの除去の観点からメタンスルホン酸もしくは、ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、ニトリロトリスメチレンホスホン酸が望ましく、上記の酸から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0022】
また、上記酸は、シリカ、セリアの除去の観点から、0.01〜50.0重量%を含むことが望ましい。
【0023】
本発明の洗浄剤組成物は、(i) 式(I)と式(II)の少なくとも1種の化合物、(ii)特定の有機酸と水を含む。水は、(i)の化合物と(ii)の有機酸の残部であり、特に限定されないが、例えば10〜99.9重量%、好ましくは50〜99重量%である。
【0024】
本発明の洗浄剤組成物は、例えばセリア及び/又はシリカ微粒子を用いて研磨された基材に適用し、研磨材としてのセリア微粒子、シリカ微粒子を洗浄除去する方法に使用できる。具体例として、基材をセリア微粒子を研磨材として用いて粗く研磨し、次いでシリカ微粒子を用いて精密に研磨する方法が例示される。この場合、セリア微粒子は第1研磨の後にいったん除去され、その後シリカ微粒子を研磨材として用いた第2研磨工程に供されるが、セリア微粒子はシリカ微粒子とともに基材上、特に基材の端部などに残存することが多く、肉眼的にも観察することができる。そして、シリカ微粒子を用いた第2研磨の後にこれら微粒子を除去することになるが、通常の洗浄剤では基材上、特に基材の端部に残存することが多く、これらの微粒子を洗浄除去することは容易ではなかった。本発明の洗浄剤を使用すれば、セリア、シリカを容易に除去することができるため、好ましい。セリア、シリカなどの微粒子を用いて研磨する対象の基材としては、シリコン、ガラス、サファイア等の脆性材料や鉄、アルミ、ニッケル、銅などの金属及び合金を少なくとも表面(全体が同じ素材でもよい)に有する基材が挙げられる。基材の形状は、任意であり、平面、曲面を含む複雑な形状であってもよい。
【0025】
洗浄方法は、シリカ、セリアなどの微粒子が付着した基材を本発明の洗浄剤を含む薬液に浸漬し放置するか、薬液を撹拌してもよく、好ましくは超音波処理して微粒子を基材表面から除去する。超音波処理は、処理時間を短縮するために有効であるが、単純に浸漬しただけでもシリカ、セリアなどの微粒子を除去することができる。あるいは、基材が大きく浸漬が難しい場合などは、本発明の洗浄剤組成物を基材にシャワー、噴霧、塗布などにより1回もしくは複数回適用し、シリカ、セリアなどの微粒子を含む除去対象物質を除去してもよい。洗浄剤組成物の温度は、特に限定されないが、1〜60℃程度、好ましくは5〜50℃程度、特に10〜40℃程度であり、室温が最も好ましい。
【実施例】
【0026】
以下に本発明の実施例と比較例とを共に示し、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0027】
実施例1
以下の表1又は表2に示す組成の洗浄剤組成物について、以下に示す粒子及び有機汚染物の洗浄性試験を行った。
【0028】
表1は、式(I)で表せるアミンオキサイド化合物に関する結果を示し、表2は式(II)で表わせるエーテル系化合物に関する結果を示す。
【0029】
(粒子の洗浄性)
シリカまたはセリアの微粒子を含む溶液にガラス基板を浸漬し、引き上げたものを汚染基板とした。その後、3%に希釈した洗浄剤に上記基板を3分間浸漬し、その後イオン交換水でリンスを行い、清浄度の比較を行った。
○:肉眼的にシリカ又はセリア微粒子は観察できなかった。
△:肉眼的にシリカ又はセリア微粒子が残存していることを確認した。
×:肉眼的にシリカ又はセリア微粒子が多数残存していることを確認した。
【0030】
(有機汚染物の洗浄性)
有機物等で汚染されたガラス基板の接触角を洗浄剤ごと測定し、清浄度の比較を行った。
○:10°以下
△:10〜20°
×:20°以上
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
以上のように本発明の洗浄液は、シリコン、ガラス、サファイア等の脆性材料や鉄、アルミ、ニッケル、銅などの金属及び合金の表面に付着したセリア、シリカ等の汚染物を効果的に除去ができることが明らかになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)及び(II)
【化1】

(式中、Rは炭素数6〜16のアルキル基であり、R、Rは同一又は異なって炭素数1〜4のアルキル基もしくは、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基である。Rは炭素数1〜6のアルキル基、Rはエチレン基またはプロピレン基、nは1〜3の整数である。)
で表される化合物群から選択される少なくとも1種の化合物、有機酸および水を含む洗浄剤組成物。
【請求項2】
有機酸は、メタンスルホン酸、ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、ニトリロトリスメチレンホスホン酸から選択される少なくとも1種の酸である、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
一般式(I)及び(II) で表される化合物群から選択される少なくとも1種の化合物を0.01〜90.0重量%含む、請求項1又は2に記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
前記化合物が一般式(I)で表される少なくとも1種の化合物であり、一般式(I)の化合物を0.01〜50.0重量%含む、請求項3に記載の洗浄剤組成物。
【請求項5】
前記化合物が一般式(II)で表される少なくとも1種の化合物であり、一般式(II)の化合物を0.01〜90.0重量%含む、請求項3に記載の洗浄剤組成物。
【請求項6】
有機酸を0.01〜50.0重量%を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の洗浄剤組成物。
【請求項7】
セリア及び/又はシリカ除去用の請求項1〜6のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の洗浄剤組成物を用いて、セリア及び/又はシリカが付着した基材を洗浄することを特徴とする、セリア及び/又はシリカの洗浄方法。

【公開番号】特開2012−17420(P2012−17420A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156067(P2010−156067)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000135265)株式会社ネオス (95)
【Fターム(参考)】