説明

水溶性高分子組成物

【課題】
下水処理場における下水余剰汚泥や下水消化汚泥のように繊維分の少ない所謂難脱水汚泥に対し、脱水ケーキ含水率低下の要求を満足し、同時に架橋あるいは分岐した水溶性高分子の難点とされる薬剤添加量の増加にも対応でき、コスト増加を抑制可能な汚泥脱水剤を提供する。
【解決手段】
特定の組成と構造を有する水溶性カチオン性高分子(A)と、特定の組成を有する水溶性両性高分子(B)、(B)とは異なる組成比のカチオン性官能基およびアニオン性官能基を有する(C)からなる水溶性両性高分子、および酸性物質(D)からなる水溶性高分子組成物であって、該水溶性カチオン性高分子(A)が電荷内包率35%以上90%以下であるものを配合することで達成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性高分子組成物に関するものであり、詳しくは特定の構造を有する電荷内包率35%以上90%以下のカチオン性官能基を有する水溶性高分子(A)、カチオン性官能基およびアニオン性官能基を有する両性水溶性高分子(B)、(B)とは異なる組成比のイオン性官能基を有する両性水溶性高分子(C)および酸性物質(D)からなることを特徴とする水溶性高分子組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水、し尿等で生じる有機性汚泥の脱水に対しては、カチオン性高分子凝集剤が広く使用され、その後両性高分子凝集剤が提案されている(特許文献1)。近年では下水処理場が脱水ケーキの含水率低下を要求する傾向が強く、上記の単なるカチオン性あるいは両性高分子では対応ができない状況である。また下水余剰汚泥や下水消化汚泥のように繊維分の少ない所謂難脱水汚泥では、特別の性能を要する凝集剤が必要になり、二種以上配合凝集剤が提案される所以である。
【0003】
例えば特許文献2は、メタアクリル系カチオンポリマー(A)と(メタ)アクリル系両性ポリマーが、特許文献3ではカチオン性高分子(A)と、酸基の3〜30モル%がアルカリにより中和されてなるアニオン性単量体単位を含む両性高分子(B)の配合が、さらに特許文献4では、カチオン化度を規定し、カチオン性基とアニオン性基の比率を規定した両性高分子との配合をそれぞれ提案している。
【0004】
これらは上記謂難脱水汚泥の処理を意図したものであるが、下水処理場の脱水ケーキ含水率低下の要求には到底満足されるものではない。また上記謂難脱水汚泥には、架橋あるいは分岐した水溶性高分子が有効とされているが(特許文献5など)、薬剤添加量が増加し処理コストを押し上げるのが問題となっている。
【特許文献1】特開昭63−260928号公報
【特許文献2】特開平8−112504号公報
【特許文献3】特開2000−218297号公報
【特許文献4】特開平9−57299号公報
【特許文献5】特許3218578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、下水処理場における下水余剰汚泥や下水消化汚泥のように繊維分の少ない所謂難脱水汚泥に対し、脱水ケーキ含水率低下の性能を満足し、
同時に架橋あるいは分岐した水溶性高分子の難点とされる薬剤添加量の増加にも対応可能な汚泥脱水剤を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討をした結果、以下に述べる発明に到達した。
【0007】
すなわち請求項1の発明は、下記(定義1)あるいは(定義2)で表される電荷内包率35%以上90%以下のカチオン性官能基を有する水溶性高分子(A)、カチオン性官能基およびアニオン性官能基を有する水溶性高分子(B)、(B)とは異なる組成比のカチオン性官能基およびアニオン性官能基を有する水溶性高分子(C)および酸性物質(D)からなる水溶性高分子組成物である。
【0008】
(定義1)水溶性カチオン性高分子および両性でかつカチオン性単量体とアニオン性単量体共重合率の差が正である水溶性両性高分子の場合
電荷内包率[%]=(1−α/β)×100
αは酢酸にてpH4.0に調整した水溶性カチオン性高分子あるいは両性水溶性高分子水溶液をポリビニルスルホン酸カリウム水溶液にて滴定した滴定量。βは酢酸にてpH4.0に調整した水溶性カチオン性高分子あるいは両性水溶性高分子水溶液にポリビニルスルホン酸カリウム水溶液を前記水溶性カチオン性高分子あるいは両性水溶性高分子の電荷の中和を行うに十分な量加え、その後ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液にて滴定した滴定量をブランク値から差し引いた滴定量。ここでブランク値とは、水溶性カチオン性高分子あるいは両性水溶性高分子水溶液無添加時にポリビニルスルホン酸カリウム水溶液をポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液にて滴定した滴定量である。
【0009】
(定義2)両性でかつカチオン性単量体とアニオン性単量体の共重合率の差が負である水溶性高分子の場合
電荷内包率[%]=(1−α/β)×100
αはアンモニアにてpH10.0に調整した水溶性両性高分子水溶液をポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液にて滴定した滴定量。βはアンモニアにてpH10.0に調整した水溶性両性高分子水溶液にポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液を前記水溶性両性高分子の電荷の中和を行うに十分な量加え、その後ポリビニルスルホン酸カリウム水溶液にて滴定した滴定量をブランク値から差し引いた滴定量。ここでブランク値とは、水溶性両性高分子水溶液無添加時にジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液をポリビニルスルホン酸カリウム水溶液にて滴定した滴定量である。
【0010】
請求項2の発明は、前記水溶性高分子(A)が、下記一般式(1)および/または一般式(2)で表される単量体1mol%以上100mol%以下、下記一般式(3)で表される単量体0mol%以上50mol%以下および非イオン性単量体0mol%以上99mol%以下の範囲からなる単量体混合物の共重合物であることを特徴とした、請求項1に記載の水溶性高分子組成物である。
【化1】

一般式(1)
は水素又はメチル基、R、RおよびRは炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基であり、同種でも異種でも良い。Aは酸素またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基、Xは陰イオンをそれぞれ表わす。
【化2】

一般式(2)
、Rは水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、Xは陰イオンをそれぞれ表す。
【化3】

一般式(3)
は水素またはCHCOOY、R10は水素、メチル基またはCOOY、QはSO、CSO、CONHC(CHCHSO、CCOOあるいはCOOであり、Y、Yは水素または陽イオンをそれぞれ表す。
【0011】
請求項3の発明は、前記水溶性高分子(B)および(C)が、前記一般式(1)および/または一般式(2)で表される単量体1mol%以上99mol%以下、前記一般式(3)で表される単量体1mol%以上99mol%以下および、非イオン性単量体0mol%以上98mol%以下の範囲からなる単量体混合物の共重合物であることを特徴とする、請求項1および2に記載の水溶性高分子組成物である。
【0012】
請求項4の発明は、前記水溶性高分子(B)を構成するカチオン性構成単位(a)とアニオン性構成単位(b)のモル比が10≧(a)/(b)≧1であり、かつ水溶性高分子(C)を構成するカチオン性構成単位(c)とアニオン性構成単位(d)のモル比が1>(c)/(d)≧0.1であることを特徴とする、請求項1から3に記載の水溶性高分子組成物である。
【0013】
請求項5の発明は、前記水溶性高分子組成物の0.1重量%水溶液のpHが4.0以下であることを特徴とする、請求項1から4に記載の水溶性高分子組成物である。
【0014】
請求項6の発明は、前記水溶性高分子(A)、水溶性高分子(B)および水溶性高分子(C)の質量混合比が、(A):(B):(C)=40〜90:5〜55:5〜55の範囲であることを特徴とする、請求項1から5に記載の水溶性高分子組成物である。
【0015】
請求項7の発明は、粉末からなることを特徴とする、請求項1から6に記載の水溶性高分子組成物である。
【0016】
請求項8の発明は、前記水溶性高分子(A)が、界面活性剤により水に非混和性有機液体を連続相、カチオン性単量体および複数の不飽和二重結合を有する多官能性単量体を必須として含む単量体混合物水溶液を分散相となるよう乳化し、重合した後得られる油中水滴型エマルジョン状液体を乾燥し得られるものであることを特徴とする、請求項1から7に記載の水溶性高分子組成物である。
【0017】
請求項9の発明は、前記水溶性高分子組成物を汚泥脱水剤として使用することを特徴とする、請求項1から8に記載の水溶性高分子組成物の使用方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、(定義1)あるいは(定義2)で表示される電荷内包率35%以上90%以下のカチオン性官能基を有する水溶性高分子(A)、カチオン性官能基およびアニオン性官能基を有する両性水溶性高分子(B)、(B)とは異なる組成比のカチオン性官能基およびアニオン性官能基を有する両性水溶性高分子(C)および酸性物質(D)を組み合わせた水溶性高分子組成物からなることを特徴とする。
【0019】
本発明の水溶性高分子組成物は、下水処理場における下水余剰汚泥や下水消化汚泥のように繊維分の少ない所謂難脱水汚泥に対し、脱水ケーキ含水率低下の性能を満足し、同時に架橋あるいは分岐した水溶性高分子の難点とされる薬剤添加量の増加にも対応を可能とする。
【0020】
電荷内包率35%未満、5%以上のカチオン性官能基を有する水溶性高分子は、大部分の電荷が高分子表面に露出しているため懸濁粒子との接触サイトが多く、その結果見かけ上の電荷的飽和になりやすい。
【0021】
一般にカチオン性の水溶性高分子では、添加量の増大とともに脱水ケーキの含水率は低下するが、大部分の電荷が高分子表面に露出しているカチオン性水溶性高分子は、電荷的飽和しやすいがため過剰な水溶性高分子が未吸着となり、遊離した水溶性高分子が汚泥粘性の増加を引き起こし、さらには強いせん断をかけ分散させた後の再凝集の阻害を生じせしめるため、強固なフロックは生成し難い。
【0022】
一方で、電荷内包率35%以上90%以下のカチオン性官能基を有する水溶性高分子は、微細な粒子を形成しているため、粒子内部に電荷を封じ込めていると推察される。
【0023】
粒子状のカチオン性官能基を有する水溶性高分子が汚泥中に添加されると懸濁粒子に吸着し、粒子同士の接着剤として作用し結果として粒子の凝集が起こるが、この時「密度の詰まった」凝集状態を生じることで、より締った強度の高いフロックを形成し、脱水ケーキの含水率をより有効に低下せしめると推定される。
【0024】
電荷内包率35%未満、5%以上のカチオン性官能基を有する水溶性高分子では、電荷的飽和になりうる領域でも、電荷内包率35%以上90%以下のカチオン性官能基を有する水溶性高分子は、効率的に懸濁粒子への吸着し、そのため未吸着の水溶性高分子が少なく、汚泥中に遊離せず汚泥粘性の増加が発生しない。
【0025】
配合した両性水溶性高分子は、分子内にカチオン性基とアニオン性基を有するためにこの分子を吸着し凝集した凝集粒子同士の結合もあり、さらにカチオン性水溶性高分子によって生成した凝集粒子同士の結合役もあり、その分カチオン性水溶性高分子単独の場合よりも添加量が節約できると考えられる。
【0026】
両性水溶性高分子の主な役割は、分子同士あるいは凝集粒子同士の仲立ちと系内イオン性のバランスを保持することであり、特にカチオン性の多い両性水溶性高分子とアニオン性の多い両性水溶性高分子を組み合わせることで、凝集粒子同士の仲立ちを強化することが可能で、さらには複雑な組成の水溶性高分子を導入することでイオン的な緩衝状態を生成し、カチオン性過多を防止し凝集性能低下を防ぐことであると考えられる。
【0027】
酸性物質は、両性水溶性高分子の分子内イオンコンプレックスの形成による溶解不全を防止し、本組成物の水溶液中での加水分解反応を防止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
はじめに電荷内包率35%以上90%以下であるカチオン性水溶性高分子(A)に関して説明する。
【0029】
電荷内包率は、以下のように定義される。
(定義1)水溶性カチオン性高分子および両性でかつカチオン性単量体とアニオン性単量体共重合率の差が正である水溶性両性高分子の場合
電荷内包率[%]=(1−α/β)×100
αは酢酸にてpH4.0に調整した水溶性カチオン性高分子あるいは両性水溶性高分子水溶液をポリビニルスルホン酸カリウム水溶液にて滴定した滴定量。βは酢酸にてpH4.0に調整した水溶性カチオン性高分子あるいは両性水溶性高分子水溶液にポリビニルスルホン酸カリウム水溶液を前記水溶性カチオン性高分子あるいは両性水溶性高分子の電荷の中和を行うに十分な量加え、その後ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液にて滴定した滴定量をブランク値から差し引いた滴定量。ここでブランク値とは、水溶性カチオン性高分子あるいは両性水溶性高分子水溶液無添加時にポリビニルスルホン酸カリウム水溶液をポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液にて滴定した滴定量である。
【0030】
(定義2)両性でかつカチオン性単量体とアニオン性単量体の共重合率の差が負である水溶性高分子の場合
電荷内包率[%]=(1−α/β)×100
αはアンモニアにてpH10.0に調整した水溶性両性高分子水溶液をポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液にて滴定した滴定量。βはアンモニアにてpH10.0に調整した水溶性両性高分子水溶液にポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液を前記水溶性両性高分子の電荷の中和を行うに十分な量加え、その後ポリビニルスルホン酸カリウム水溶液にて滴定した滴定量をブランク値から差し引いた滴定量。ここでブランク値とは、水溶性両性高分子水溶液無添加時にジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液をポリビニルスルホン酸カリウム水溶液にて滴定した滴定量である。
【0031】
電荷内包率の高い水溶性高分子は、溶液中において粒子状の丸まった形状をしていて、粒子状の内部に存在するイオン性基は、外側には現われにくく、反対電荷との反応も緩慢に起こると考えられ、35%以上90%以下の電荷内包率を有する水溶性高分子は特に架橋が高まった場合を示す。
【0032】
すなわち、希薄溶液中において伸び切った状態の水溶性高分子は、表面のカチオン性電荷だけでなく、内部の電荷まで静電的な中和反応が行われると考えられ電荷内包率は小さくなり、架橋が高ければ、粒子内部の電荷中和が阻害されると考えられ、電荷内包率は大きくなる。
【0033】
本発明における、電荷内包率35%以上90%以下のカチオン性官能基を有する水溶性高分子(A)を製造するためには、一般式(1)および/または一般式(2)で表されるカチオン性単量体を必須とする。
【0034】
一般式(1)で表される単量体の例としては、(メタ)アクリロイルオキシアルキル4級アンモニウム塩、すなわち(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムブロマイドなど、あるいは(メタ)アクリロイルオキシアルキル3級アミン塩、すなわち(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルアミン硫酸塩、(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメチルアミン塩酸塩など、あるいは(メタ)アクリロイルアミノアルキル4級アンモニウム塩、すなわち(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムメチルサルフェートなど、さらには(メタ)アクリロイルアミノ(ヒドロキシ)アルキル3級アミン塩、すなわち、(メタ)アクリロイルアミノエチルジメチルアミン塩酸塩などがあげられる。
【0035】
一般式(2)で表される単量体の例としては、ジ(メタ)アリルジメチルアンモニウムクロライド、ジ(メタ)アリルジメチルアンモニウムブロマイド、ジ(メタ)アリルジエチルアンモニウムクロライド、ジ(メタ)アリルジプロピルアンモニウムクロライドなどがあげられる。
【0036】
一般式(3)で表されるアニオン性単量体の例としては、ビニルスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸あるいは2−アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸あるいはp−カルボキシスチレンなどがあげられる。
【0037】
非イオン性単量体としては、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ジアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、アクリロイルモルホリンなどが例示できる。
【0038】
本発明では、電荷内包率35%以上90%以下であるカチオン性水溶性高分子(A)を製造するため重合時あるいは重合後、架橋性単量体を単量体総量に対し0.0005〜0.0050モル%、また好ましくは0.0008〜0.002モル%存在させる。
【0039】
架橋性単量体の例としては、N,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、トリアリルアミン、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール、ジメタクリル酸―1,3−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、N−ビニル(メタ)アクリルアミド、N−メチルアリルアクリルアミド、アクリル酸グリシジル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、アクロレイン、グリオキザール、ビニルトリメトキシシランなどがあるが、この場合の架橋剤としては、水溶性ポリビニル化合物がより好ましく、最も好ましいのはN,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミドである。
【0040】
ギ酸ナトリウム、イソプロピルアルコール等の連鎖移動剤を併用して使用することも架橋性を調節する手法として効果的である。
【0041】
水溶性高分子(A)を構成するカチオン性単量体の範囲としては特に制限はなく、1mol%以上100mol%以下の範囲であり、アニオン性単量体の範囲としては、0mol%以上50mol%以下好ましくは0mol%以上30mol%以下の範囲で、非イオン性単量体の範囲は0mol%以上99mol%以下好ましくは0mol%以上95mol%以下の範囲である。
【0042】
また水溶性高分子(A)の分子量は、重量平均分子量で500万〜2000万であり、好ましくは500万〜1200万であり、最も好ましくは700〜1000万の範囲である。
【0043】
水溶性高分子(A)の重合方法に特に制限はなく、単量体混合物の水溶液中での重合、塩水溶液中あるいは水に非混和性有機液体中での分散重合した分散液などどのような方法でも可能であるが、電荷内包率が高いものほど架橋が高いことから、ゲル状生成物を防ぐ観点から塩水溶液中あるいは水に非混和性有機液体中での分散重合であることが好ましく、塩や水など不純物の除去を考慮すると特に水に非混和性有機液体中での分散重合が特に好ましい。
【0044】
水溶性高分子(A)の性状は液体、固体などの形態をとることができるが、塩、水、水に非混和性有機液体などの不純物が少なく、水への溶解性が良好な粉末状固体が好ましい。
【0045】
粉末状の水溶性高分子(A)を得る方法に特に制限はなく、高濃度水溶液を重合開始剤存在下で溶液重合した後、ミートチョッパーなどでゲル状物をミンチ化し、それを乾燥後、粉砕し粉末とする方法、水に非混和性有機溶媒中で分散剤の存在下縣濁重合を行いビーズ状の粉末を得る方法、あるいは塩水溶液中あるいは水に非混和性有機液体中での分散重合後、乾燥造粒して粉末を得る方法などが挙げられるが、ゲル状生成物を防ぐ観点、あるいは塩や水など不純物の除去を考慮すると特に水に非混和性有機液体中で乳化剤存在下重合した油中水型エマルジョン重合物を乾燥して造粒し粉末を得る方法が特に好ましい。
【0046】
乾燥し造粒する方法に特に制限はなく、油中水型エマルジョン重合物を噴霧乾燥し造粒する方法、液状の分散重合物をシート状に乾燥した乾燥物を粉砕後造粒する方法などが挙げられる。
【0047】
油中水型エマルジョン重合物は、イオン性単量体、あるいはイオン性単量体と共重合可能な単量体及びこれら単量体に対し生成した重合体が水溶性を保つモル比で添加した架橋性単量体を含有する単量体混合物を水、少なくとも水と非混和性の炭化水素からなる油状物質、油中水型エマルジョンを形成するに有効な量とHLBを有する少なくとも一種類の界面活性剤を混合し、強攪拌し油中水型エマルジョンを形成させ重合することにより合成する。
【0048】
分散媒として使用する炭化水素からなる油状物質の例としては、パラフィン類あるいは灯油、軽油、中油などの鉱油、あるいはこれらと実質的に同じ範囲の沸点や粘度などの特性を有する炭化水素系合成油、あるいはこれらの混合物があげられる。含有量としては、油中水型エマルジョン全量に対して20質量%〜50質量%の範囲であり、好ましくは20質量%〜35質量%の範囲である。
【0049】
油中水型エマルジョンを形成するに有効な量とHLBを有する少なくとも一種類の界面活性剤の例としては、HLB1〜8のノニオン性界面活性剤であり、その具体例としては、ソルビタンモノオレ−ト、ソルビタンモノステアレ−ト、ソルビタンモノパルミテ−トなどがあげられる。これら界面活性剤の添加量としては、油中水型エマルジョン全量に対して0.5〜10質量%であり、好ましくは1〜5質量%の範囲である。
【0050】
この場合、高HLB界面活性剤により乳化させ油中水型エマルジョンを形成させ重合したエマルジョンは、このままで水となじむので転相剤を添加する必用がない。これら界面活性剤のHLBは、9〜20のもの、好ましくは11〜20のものを使用する。そのような界面活性剤の例としては、カチオン性界面活性剤やHLB9〜15のノニオン性界面活性剤であり、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエ−テル系、ポリオキシエチレンアルコールエ−テル系などである。
【0051】
低HLBの界面活性剤により乳化、重合した場合は重合後転相剤と呼ばれる親水性界面化成剤を添加して油の膜で被われたエマルジョン粒子が水になじみ易くし、中の水溶性高分子が溶解しやすくする処理を行い、水で希釈しそれぞれの用途に用いる。親水性界面活性剤の例としては、カチオン性界面活性剤やHLB9〜15のノニオン性界面活性剤であり、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエ−テル系、ポリオキシエチレンアルコールエ−テル系などである。
【0052】
水溶性高分子(B)および水溶性高分子(C)は、一般式(1)および/または一般式(2)で表される単量体と一般式(3)で表される単量体混合物の共重合物で、単量体混合物の組成は、一般式(1)および/または一般式(2)で表される単量体1mol%以上99mol%以下、前記一般式(3)で表される単量体1mol%以上99mol%以下および、非イオン性単量体0mol%以上98mol%以下の範囲である。
【0053】
水溶性高分子(B)における一般式(1)および/または一般式(2)で表されるカチオン性単量体と一般式(3)で表される単量体の組成のモル比は、水溶性高分子(B)を構成するカチオン性構成単位(a)とアニオン性構成単位(b)のモル比(a)/(b)に対応し、10≧(a)/(b)≧1であることが特に好ましい。この理由は、後に述べる水溶性高分子(C)と組み合わせた場合、水溶性高分子(B)が10≧(a)/(b)≧1の範囲であると(A)、(B)及び(c)を配合した本発明の水溶性高分子組成物が、全体として非常に顕著な効果を発揮するからである。10≦(a)/(b)であると両性の効果が発現せず実用的ではない。
【0054】
水溶性高分子(C)における一般式(1)および/または一般式(2)で表されるカチオン性単量体と一般式(3)で表される単量体の組成のモル比は、水溶性高分子(B)を構成するカチオン性構成単位(a)とアニオン性構成単位(b)のモル比(a)/(b)に対応し水溶性高分子(C)と異なれば特に制限はないが、1>(c)/(d)≧0.1であることが特に好ましい。この理由も上記に述べたように水溶性高分子(B)が10≧(a)/(b)≧1の範囲であると(A)、(B)及び(c)を配合した本発明の水溶性高分子組成物が、全体として非常に顕著な効果を発揮するからである。(c)/(d)≦0.1であるとアニオン性が高すぎて効果が低下し実用的ではない。
【0055】
水溶性高分子(B)および(C)の電荷内包率について特に制限はないが、電化内包率は35%未満、5%以上であることが望ましい。
【0056】
水溶性高分子(B)および(C)の分子量については特に制限はないが、重量平均分子量で200万以上2500万の範囲で、特に400万から1500万の範囲であることが好ましい。
【0057】
水溶性高分子(B)および(C)の製造方法について特に制限はなく、水溶性高分子(A)と同様な方法で得ることができるが、電荷内包率が35%未満、5%以上である場合、製造効率や不純物除去効率を考慮すると、単量体混合物の水溶液を重合開始剤存在下溶液重合し、乾燥粉砕し、造粒して粉末としてものであることが好ましい。
【0058】
一般に電荷内包率35%未満、5%以上のカチオン性官能基を有する水溶性高分子は、大部分の電荷が高分子表面に露出しているため懸濁粒子との接触サイトが多く、その結果見かけ上の電荷的飽和になりやすい。
【0059】
また、カチオン性の水溶性高分子では、添加量の増大とともに脱水ケーキの含水率は低下するが、大部分の電荷が高分子表面に露出しているカチオン性水溶性高分子は、電荷的飽和しやすいがため過剰な水溶性高分子が未吸着となり、遊離した水溶性高分子が汚泥粘性の増加を引き起こし、さらには強いせん断をかけ分散させた後の再凝集の阻害を生じせしめるため、強固なフロックは生成し難い。
【0060】
一方で、電荷内包率35%以上90%以下のカチオン性官能基を有する水溶性高分子は、微細な粒子を形成しているため、粒子内部に電荷を封じ込めていると推察される。
【0061】
粒子状のカチオン性官能基を有する水溶性高分子が汚泥中に添加されると懸濁粒子に吸着し、粒子同士の接着剤として作用し結果として粒子の凝集が起こるが、この時「密度の詰まった」凝集状態を生じることで、より締った強度の高いフロックを形成し、脱水ケーキの含水率をより有効に低下せしめると推定される。
【0062】
電荷内包率35%未満、5%以上のカチオン性官能基を有する水溶性高分子では、電荷的飽和になりうる領域でも、電荷内包率35%以上90%以下のカチオン性官能基を有する水溶性高分子は、効率的に懸濁粒子への吸着し、そのため未吸着の水溶性高分子が少なく、汚泥中に遊離せず汚泥粘性の増加が発生しない。
【0063】
しかしながら、電荷内包率35%以上90%以下のカチオン性官能基を有する水溶性高分子は電荷を内包している分、電荷の中和という面からはカチオン性が不足しがちである。
【0064】
これらは、カチオン性の水溶性高分子を単独で用いた場合に生じる現象で、電荷内包率35%以上90%以下のカチオン性官能基を有する水溶性高分子に両性高分子を配合することで解決可能である。
【0065】
配合した両性水溶性高分子は、分子内にカチオン性基とアニオン性基を有するためにこの分子を吸着し凝集した凝集粒子同士の結合もあり、さらにカチオン性水溶性高分子によって生成した凝集粒子同士の結合役もあり、その分カチオン性水溶性高分子単独の場合よりも添加量が節約できると考えられる。
【0066】
両性水溶性高分子の主な役割は、分子同士あるいは凝集粒子同士の仲立ちと系内イオン性のバランスを保持することであり、特にカチオン性の多い両性水溶性高分子とアニオン性の多い両性水溶性高分子を組み合わせることで、凝集粒子同士の仲立ちを強化することが可能で、さらには複雑な組成の水溶性高分子を導入することでイオン的な緩衝状態を生成し、カチオン性過多を防止し凝集性能低下を防ぐことであると考えられる。
【0067】
したがって、水溶性高分子組成物は、水溶性高分子(A)、水溶性高分子(B)、水溶性高分子(C)および酸性物質(D)を組み合わせたものであり、水溶性高分子(A)、水溶性高分子(B)および水溶性高分子(C)の質量混合比が、(A):(B):(C)=40〜90:5〜55:5〜55の範囲であることが好ましい。
【0068】
水溶性高分子(A)の割合が40重量%以下では、汚泥脱水剤として用いた場合汚泥の含水率が上昇傾向にあり不適当で、90重量%以上では多量の添加が必要になる。
【0069】
水溶性高分子(B)および(C)の割合には特に制限はないが、重量混合比が近い方が好ましく(B):(C)=30〜70:70〜30の範囲であることが特に好ましい。
【0070】
本発明の水溶性高分子組成物は、処理対照に添加する場合の下限に近い溶液濃度0.1質量%濃度の水溶液とした時の水溶液pHが通常4.0以下、好ましくは3.0以下であり、水溶液pHが4.0を上回ると十分な性能が得られないため酸性物質を配合する。
【0071】
両性水溶性高分子を配合するため溶液pHが約5〜約9の範囲でイオンコンプレックスを形成し溶液が白濁するが、このイオンコンプレックスが生成した状態で汚泥など処理対照に添加すると、性能が低下すること、またpHが5付近より高い範囲では本発明で使用する(メタ)アクリル系水溶性高分子が加水分解を受け、劣化しやすくなることが原因である。
【0072】
このような酸性物質(D)としては、無機酸、有機酸いずれも可能であり、塩酸、硫酸、硝酸、スルファミン酸、コハク酸、クエン酸、アジピン酸などが例示でき、特にスルファミン酸、コハク酸、クエン酸、アジピン酸など単体で固体の酸性物質が好ましく、添加量として水溶性高分子の固形分換算として、5〜20質量%であり、好ましくは7〜15質量%の範囲であり、0.1質量%濃度に溶解してもpHが4以下を確保するよう添加量を調整することが好ましい。
【0073】
本発明の水溶性高分子組成物の形態に特に制限はなく、液状、粉末状固体いずれの形態も可能であるが、製造や輸送にかかる手間、コストなどを考慮すると粉末状固体であることが好ましい。
【0074】
水溶性高分子組成物を得る方法には特に制限はなく、液体として得られた水溶性高分子(A)、(B)および(C)に酸性物質(D)を混合して水溶性高分子組成物液体を得る方法、水溶液として得られた水溶性高分子(A)、(B)および(C)に酸性物質(D)を混合後、乾燥粉砕して造粒して得る方法、粉末状の水溶性高分子(A)、(B)および(C)に粉末状の酸性物質(D)を混合して得る方法などいずれの形態も可能であるが、粉末状の水溶性高分子(A)、(B)および(C)に粉末状の酸性物質(D)を混合して得る方法が好ましい。
【0075】
本発明の水溶性高分子組成物は、高分子凝集剤として用いることが可能であり、汚泥脱水剤、縣濁液中の縣濁物質の沈降、浮上剤、製紙原料の歩留向上剤、濾水性向上剤などに利用することが可能であるが、汚泥脱水剤として使用した場合、汚泥の含水率低下、強固なフロック形成、添加量の削減など良好な性能をしめす。
【0076】
本発明の水溶性高分子組成物を汚泥脱水剤として使用した場合の推奨の脱水機は、スクリュープレスや回転式圧縮濾過機など初期の濾過工程において圧搾、せん断などの作用をフロックが受ける脱水機であって、本発明の水溶性高分子組成物は被処理原水の迅速な濾過性、以後の圧搾、せん断への作用を効率よく行ない、フロックが破壊せず効率よく脱水を行うことに特に有効である。
【0077】
本発明の水溶性高分子組成物は、下水、し尿、産業排水の処理で生じる有機性汚泥(いわゆる生汚泥、余剰汚泥、混合生汚泥、消化汚泥、凝沈・浮上汚泥およびこれらの混合物)に通常0.1〜0.2%水溶液として添加される。本発明の水溶性高分子組成物が対象とする汚泥にはとくに限定ないが、繊維分の少ない汚泥、有機分含有量(VSS/SS)の高い汚泥、腐敗度の高い汚泥に対し特に有効であり好ましい。
【0078】
また、本発明の水溶性高分子組成物は、単独で汚泥脱水に使用しても良いが、脱水効果面からより好ましいのは、鉄塩、アルミ塩等の無機多価金属塩と併用する方法である。該無機多価金属塩としては、塩鉄、硫鉄、ポリ鉄、PAC、硫酸バンド、石灰などが挙げられる。汚泥に対する本発明の水溶性高分子組成物の添加量は、通常汚泥固形分に対し0.3〜2質量%、好ましくは0.7〜1.5質量%である。また、併用される無機多価金属塩の添加量は、通常汚泥固形分に対し0.2〜0.6質量%である。
【0079】
使用する脱水機の種類は、デカンター、スクリュープレス、ベルトプレス、ロータリープレスなど通常の脱水機が可能である。
【0080】
(実施例)以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0081】
(水溶性高分子組成物の調整例)下記表1で示される形態、組成および物性を有する水溶性高分子(A)、水溶性の両性高分子(B)および(C)を表1で示される比率で配合し、さらに酸性物質(D)としてクエン酸を、表1で示される比率で配合し、水溶性高分子組成物を調整した。なお各水溶性高分子を構成する単量体組成は全単量体モル数に対するモル%で、酸性物質(D)の配合割合は、水溶性高分子組成物の総重量に対する重量%により表されている。また、配合する水溶性高分子(A)、水溶性の両性高分子(B)および(C)の性状が液体で、かつ水溶性高分子組成物の性状が粉末である場合は、配合する水溶性高分子(A)、水溶性の両性高分子(B)および(C)を50℃、50mmHgの条件下で3時間減圧乾燥を行い粉砕した後、配合した。
【0082】
(水溶性高分子組成物の比較調整例)水溶性高分子(A)からなる水溶性高分子組成物を比較試料1、水溶性高分子(A)、(B)および酸性物質(D)であるクエン酸からなる水溶性高分子組成物を比較試料2、水溶性高分子(A)、(B)および(C)からなる水溶性高分子組成物を比較試料3とし、下記表1で示される比率で配合し、水溶性高分子組成物を水溶性高分子組成物の調整例と同様に調整した。
【0083】
(表1)

EM:油中水型エマルジョン状、PW:粉末状、DP:塩水中分散液状、DAC:アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、DMC:メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、AC:アクリル酸、AM:アクリルアミド、MW:重量平均分子量、電荷内包率(単位:%)
【実施例2】
【0084】
(汚泥脱水試験1)下水オキシデーションデイッチ余剰汚泥(pH6.23、電気伝導度68mS/m、ss分重量濃度14,300ppm)を対象として、本発明の水溶性高分子組成物を用いて汚泥脱水試験を実施した。汚泥200mLをポリビ−カ−に採取し、表1の試料−1および試料−2をそれぞれ対汚泥SS分0.3%、0.4%および0.5%(懸濁粒子質量%)加え、スパチュラ攪拌40回行い生成したフロックの大きさを測定した。その後、T−1179Lの濾布(ナイロン製)により濾過し、10秒後の濾液量を測定した。60秒間濾過した汚泥をプレス圧3Kg/m2で1分間脱水し、濾布剥離性を目視によりチェックし、ケ−キ含水率(105℃で20hr乾燥)を測定した。結果を表2に示す。
【0085】
(比較試験1)水溶性高分子組成物の添加量を、0.4%、0.6%および0.8%としたこと以外は汚泥脱水試験1と同様な操作により、比較試料−1、比較試料−2および比較試料−3に関してそれぞれ試験を実施した。結果を表2に示す。
【0086】
比較試料−1、比較試料−2および比較試料−3は、試料−1および試料−2と比較し格段に添加量が多いにもかかわらず、汚泥の含水率が低下しない事が明白であり、また酸性物質(D)を配合していない比較試料−3は極度に凝集性能が低下していることがわかる。さらに製品性状が異なる試料−1と試料−2の汚泥脱水効果は差が無いことがわかる。すなわち、水溶性高分子(B)、水溶性高分子(D)および酸性物質(D)が必須であることを示している。
【0087】
(表2)

濾布剥離性:○は良好、○−は一部付着、△は接触面の半数に付着
【実施例3】
【0088】
(汚泥脱水試験2)下水消化汚泥(pH6.22、電気伝導度188mS/m、ss分重量濃度11,800ppm)を対象として、本発明の水溶性高分子組成物を用いて汚泥脱水試験を実施した。汚泥200mLをポリビ−カ−に採取し、表1の試料−2を対汚泥SS分0.9%、1.1%および1.3%(懸濁粒子質量%)加え、ビーカー移し変え攪拌20回行い生成したフロックの大きさを測定した。その後、T−1179Lの濾布(ナイロン製)により濾過し、10秒後の濾液量と濾液状態を測定した。60秒間濾過した汚泥をプレス圧3Kg/m2で1分間脱水し、ケ−キ含水率(105℃で20hr乾燥)を測定した。結果を表3に示す。
【0089】
(比較試験2)汚泥脱水試験2と同様な操作により、比較試料−4、比較試料−5および比較試料−6に関して試験を実施した。結果を表3に示す。
【0090】
比較試料−4は試料−2と比較し濾液状態が悪く脱水ケーキの含水率も高い。比較試料−5は比較試料−4と比較し、若干盧液状態が改善するが、試料−2には及ばず、脱水ケーキの含水率も高い。さらに比較試料−6は、濾液状態は試料−2と同程度となったが、脱水ケーキの含水率は試料−2ほど低下しないことが明白である。すなわち水溶性高分子(A)として電荷内包率が35%未満5%以上の水溶性高分子を用いても、薬剤添加量は低下できるが脱水ケーキの含水率低下が不十分であることを示している。
【0091】
(表3)

濾液状態:○は取りこぼし目視できず、○−はわずかに取りこぼしがある

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(定義1)あるいは(定義2)で表される電荷内包率35%以上90%以下のカチオン性官能基を有する水溶性高分子(A)、カチオン性官能基およびアニオン性官能基を有する水溶性高分子(B)、(B)とは異なる組成比のカチオン性官能基およびアニオン性官能基を有する水溶性高分子(C)および酸性物質(D)からなる水溶性高分子組成物。
(定義1)水溶性カチオン性高分子および両性でかつカチオン性単量体とアニオン性単量体共重合率の差が正である水溶性両性高分子の場合
電荷内包率[%]=(1−α/β)×100
αは酢酸にてpH4.0に調整した水溶性カチオン性高分子あるいは両性水溶性高分子水溶液をポリビニルスルホン酸カリウム水溶液にて滴定した滴定量。βは酢酸にてpH4.0に調整した水溶性カチオン性高分子あるいは両性水溶性高分子水溶液にポリビニルスルホン酸カリウム水溶液を前記水溶性カチオン性高分子あるいは両性水溶性高分子の電荷の中和を行うに十分な量加え、その後ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液にて滴定した滴定量をブランク値から差し引いた滴定量。ここでブランク値とは、水溶性カチオン性高分子あるいは両性水溶性高分子水溶液無添加時にポリビニルスルホン酸カリウム水溶液をポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液にて滴定した滴定量である。
(定義2)両性でかつカチオン性単量体とアニオン性単量体の共重合率の差が負である水溶性高分子の場合
電荷内包率[%]=(1−α/β)×100
αはアンモニアにてpH10.0に調整した水溶性両性高分子水溶液をポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液にて滴定した滴定量。βはアンモニアにてpH10.0に調整した水溶性両性高分子水溶液にポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液を前記水溶性両性高分子の電荷の中和を行うに十分な量加え、その後ポリビニルスルホン酸カリウム水溶液にて滴定した滴定量をブランク値から差し引いた滴定量。ここでブランク値とは、水溶性両性高分子水溶液無添加時にジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液をポリビニルスルホン酸カリウム水溶液にて滴定した滴定量である。
【請求項2】
前記水溶性高分子(A)が、下記一般式(1)および/または一般式(2)で表される単量体1mol%以上100mol%以下、下記一般式(3)で表される単量体0mol%以上50mol%以下および非イオン性単量体0mol%以上99mol%以下の範囲からなる単量体混合物の共重合物であることを特徴とした、請求項1に記載の水溶性高分子組成物。
【化1】

一般式(1)
は水素又はメチル基、R、RおよびRは炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基であり、同種でも異種でも良い。Aは酸素またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基、Xは陰イオンをそれぞれ表わす。
【化2】

一般式(2)
、Rは水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、Xは陰イオンをそれぞれ表す。
【化3】

一般式(3)
は水素またはCHCOOY、R10は水素、メチル基またはCOOY、QはSO、CSO、CONHC(CHCHSO、CCOOあるいはCOOであり、Y、Yは水素または陽イオンをそれぞれ表す。
【請求項3】
前記水溶性高分子(B)および(C)が、前記一般式(1)および/または一般式(2)で表される単量体1mol%以上99mol%以下、前記一般式(3)で表される単量体1mol%以上99mol%以下および、非イオン性単量体0mol%以上98mol%以下の範囲からなる単量体混合物の共重合物であることを特徴とする、請求項1および2に記載の水溶性高分子組成物。
【請求項4】
前記水溶性高分子(B)を構成するカチオン性構成単位(a)とアニオン性構成単位(b)のモル比が10≧(a)/(b)≧1であり、かつ水溶性高分子(C)を構成するカチオン性構成単位(c)とアニオン性構成単位(d)のモル比が1>(c)/(d)≧0.1であることを特徴とする、請求項1から3に記載の水溶性高分子組成物。
【請求項5】
前記水溶性高分子組成物の0.1質量%水溶液のpHが4.0以下であることを特徴とする、請求項1から4に記載の水溶性高分子組成物。
【請求項6】
前記水溶性高分子(A)、水溶性高分子(B)および水溶性高分子(C)の質量混合比が、(A):(B):(C)=40〜90:5〜55:5〜55の範囲であることを特徴とする、請求項1から5に記載の水溶性高分子組成物。
【請求項7】
粉末からなることを特徴とする、請求項1から6に記載の水溶性高分子組成物。
【請求項8】
前記水溶性高分子(A)が、界面活性剤により水に非混和性有機液体を連続相、カチオン性単量体および複数の不飽和二重結合を有する多官能性単量体を必須として含む単量体混合物水溶液を分散相となるよう乳化し、重合した後得られる油中水滴型エマルジョン状液体を乾燥し得られるものであることを特徴とする、請求項1から7に記載の水溶性高分子組成物。
【請求項9】
前記水溶性高分子組成物を汚泥脱水剤として使用することを特徴とする、請求項1から8に記載の水溶性高分子組成物の使用方法。

【公開番号】特開2010−215867(P2010−215867A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67150(P2009−67150)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000142148)ハイモ株式会社 (151)
【Fターム(参考)】