決定方法、インプリント装置及び物品の製造方法
【課題】インプリント装置により基板に形成されたパターンの残膜厚を計測する精度の点で有利な技術を提供する。
【解決手段】インプリント装置により透過膜を有する基板に形成されたレジストの凹凸パターンの凹部の厚さを計測する計測装置の計測感度の目標値を設定し、当該目標値を満たす透過膜の厚さを前記基板に形成すべき透過膜の厚さとして決定する決定ステップを有し、前記計測感度は、前記凹凸パターンの形状の変化に対する前記凹凸パターンからの反射光の強度の変化又は位相の変化で定義され、前記決定ステップでは、複数の厚さの透過膜のそれぞれについて、前記凹凸パターンの形状の変化に対する前記凹凸パターンからの反射光の強度の変化又は位相の変化に基づいて前記計測感度を示す情報を取得し、当該情報から前記目標値を満たす透過膜の厚さを特定することを特徴とする決定方法を提供する。
【解決手段】インプリント装置により透過膜を有する基板に形成されたレジストの凹凸パターンの凹部の厚さを計測する計測装置の計測感度の目標値を設定し、当該目標値を満たす透過膜の厚さを前記基板に形成すべき透過膜の厚さとして決定する決定ステップを有し、前記計測感度は、前記凹凸パターンの形状の変化に対する前記凹凸パターンからの反射光の強度の変化又は位相の変化で定義され、前記決定ステップでは、複数の厚さの透過膜のそれぞれについて、前記凹凸パターンの形状の変化に対する前記凹凸パターンからの反射光の強度の変化又は位相の変化に基づいて前記計測感度を示す情報を取得し、当該情報から前記目標値を満たす透過膜の厚さを特定することを特徴とする決定方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、決定方法、インプリント装置及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インプリント技術は、真空プロセスなどの大がかりな装置を必要とせず、半導体デバイスを低コストで大量生産することが可能であるため、従来の光リソグラフィに替わって微細パターンを形成する技術として期待されている。インプリント技術は、シリコンウエハやガラスプレートなどの基板上の樹脂に微細なパターンが形成されたモールド(原版)を押し付けた状態で、樹脂を硬化させて基板上に微細なパターンを転写する。
【0003】
インプリント技術が従来の光リソグラフィと異なる点の1つとして、パターンの転写後にパターンの底部分に薄い(数十nm程度)樹脂層(「残膜」と呼ばれる)が残ることが挙げられる。そこで、半導体プロセスにおいては、エッチングによって残膜を除去する工程が必要となる。残膜を除去する際には、縦方向(残膜を除去するための方向)だけではなく、横方向にもエッチングされてしまう。このため、残膜厚がばらつくと、パターンの線幅、側壁角度及び高さなどのレジストパターンの形状(寸法)もばらついてしまう。レジストパターンはエッチングマスクとして機能するため、レジストパターンの寸法が所望の寸法から変化すると最終的なデバイスパターンの寸法も変化し、その結果、半導体デバイスの特性がばらつき、動作不良の原因となることが問題視されている。従って、インプリント技術を用いたインプリント装置においては、残膜厚(RLT:Residual Layer Thickness)を高精度に計測することが不可欠となる。そして、RLTの計測結果に基づいてインプリント装置のプロセス条件を決定(最適化)し、RLTを制御(管理)することが重要である。
【0004】
RLTを計測する技術としては、例えば、レジストパターンが形成されたウエハを切断し、その断面を走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)で観察する方法がある。なお、SEMによる断面観察は、ウエハを切断することが必要となる(即ち、破壊計測である)ため、計測に用いたウエハを再利用することはできない。また、光学的な検査によってRLTを計測する技術や近接場光を用いて非破壊でRLTを計測する技術も提案されている(特許文献1及び2参照)。このような技術が提案される一方、近年では、エリプソメトリ法を用いて微細なパターンを計測する光計測が注目されている(特許文献3参照)。
【0005】
エリプソメトリ法を用いた光計測では、被計測物に光を照射し、その反射光におけるS偏光とP偏光との強度比や位相差を解析して被計測物の形状を求めている。従って、エリプソメトリ法を用いた光計測は、パターンの粗度(Line Width Roughness)や縮小度(Shrink)などの影響が含まれるSEMと比較して、パターンの形状を高精度、且つ、非破壊(非接触)で計測することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−30153号公報
【特許文献2】特開2007−298314号公報
【特許文献3】特表2002−506198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、エリプソメトリ法を用いた従来の光計測は、インプリント装置のプロセス条件の最適化に必要な精度でRLTを計測することができず、そのままではプロセス条件の最適化に適用することができない。
【0008】
本発明は、インプリント装置により基板に形成されたパターンの残膜厚を計測する精度の点で有利な技術を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての決定方法は、インプリント装置のプロセス条件を決定するために用いる基板に形成すべき透過膜の厚さを決定する決定方法であって、前記インプリント装置により前記透過膜を有する前記基板に形成されたレジストの凹凸パターンの凹部の厚さを計測する計測装置の計測感度の目標値を設定し、当該目標値を満たす透過膜の厚さを前記基板に形成すべき透過膜の厚さとして決定する決定ステップを有し、前記計測感度は、前記凹凸パターンの形状の変化に対する前記凹凸パターンからの反射光の強度の変化又は位相の変化で定義され、前記決定ステップでは、複数の厚さの透過膜のそれぞれについて、前記凹凸パターンの形状の変化に対する前記凹凸パターンからの反射光の強度の変化又は位相の変化に基づいて前記計測感度を示す情報を取得し、当該情報から前記目標値を満たす透過膜の厚さを特定することを特徴とする。
【0010】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、例えば、インプリント装置により基板に形成されたパターンの残膜厚を計測する精度の点で有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】残膜厚(RLT)の計測に用いる計測装置の構成を示す概略図である。
【図2】本発明の一側面としての決定方法を含む計測方法を説明するためのフローチャートである。
【図3】テスト基板の構成を示す概略断面図である。
【図4】図2(b)に示すS12及びS13を説明するための図である。
【図5】図2(b)に示すS14を説明するための図である。
【図6】図2(b)に示すS15を説明するための図である。
【図7】SiO2膜の最適化の詳細を説明するためのフローチャートである。
【図8】図7に示すS121及びS122を説明するための図である。
【図9】計測装置の計測感度を取得(予測)するためのアルゴリズムの概念を説明するための図である。
【図10】本発明の一側面としてのインプリント装置の構成を示す図である。
【図11】図10に示すインプリント装置におけるインプリント処理のプロセス条件の最適化を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
<第1の実施形態>
本発明の一側面としての決定方法を含む計測方法について説明する。かかる計測方法は、インプリント装置のプロセス条件を決定する際に用いるテスト基板に形成されたレジストの凹凸パターンの凹部の厚さ(RLT:残膜厚)を計測する計測方法である。
【0014】
図1を参照して、RLTの計測に用いる計測装置100について説明する。図1は、計測装置100の構成を示す概略図である。計測装置100は、エリプソメトリ法を用いた断面形状(凹凸パターンの線幅(CD:Critical Dimension)、側壁角度(SWA:Side Wall Angle)及び高さ(HT:Height))を計測する計測装置である。なお、エリプソメトリ法は、以下の2つの方法に大別される。第1の方法は、複数の波長の光を含むブロードバンド光を一定の入射角度でパターンに斜入射させ、複数の波長のそれぞれについてパターンからの反射光(の強度)を計測する方法である。第2の方法は、単一波長の光を複数の入射角度でパターンに斜入射させ、複数の入射角度のそれぞれについてパターンからの反射光(の強度)を計測する方法である。ここでは、エリプソメトリ法として第1の方法を用いるが、第2の方法を用いることもできる。
【0015】
図1を参照するに、光源102から射出された光Laは、回転可能なポラライザ104を通過して、偏光面(S偏光、P偏光)が調整され、凹凸パターン(周期パターン)PTに入射する。凹凸パターンPTで反射された光Lbは、回転可能なアナライザ106を通過して、偏光面が調整される。アナライザ106を通過した光Lcは、その波長に応じて分光光学系108を介して、空間的に波長分離される。空間的に波長分離された光Ldは、光電素子がアレー状に配列された検出部110で検出され、その情報が計算機112に送られる。計算機112は、検出部110からの情報に基づいて、波長ごとのS偏光とP偏光との強度比又は位相差を算出する。そして、計算機112は、かかる算出結果とライブラリ情報とを比較して凹凸パターンPTの形状(断面形状)を求め、その結果が計測対象物としての凹凸パターンPTの形状として計算機112から出力される。
【0016】
図2は、本発明の一側面としての決定方法を含む計測方法を説明するためのフローチャートである。また、図3は、テスト基板TSの構成を示す概略断面図である。テスト基板TSは、最終的には、図3(a)に示すように、基板302と、SiO2膜304と、残膜(凹部)306を含む凹凸パターン308とで構成される。ここで、SiO2膜を形成する理由は、SiO2膜などの透過膜を基板に形成し、かかる透過膜の厚さを最適化することで、RLTを計測する際の計測装置100の計測感度を向上させることができることを本発明者が見出したからである。基板に形成された透過膜において多重反射が発生し、計測装置100の計測感度が向上すると考えられる。なお、SiO2膜304は、後述する決定方法で決定された最適な厚さを有する。また、凹凸パターン308は、インプリント装置により最適な厚さのSiO2膜304の上に形成される。
【0017】
図2(a)を参照して、本発明の一側面としての決定方法を含む計測方法の全体的な処理を説明する。S1(決定ステップ)では、テスト基板TSのSiO2膜304の厚さを最適化(決定)する。具体的には、残膜306を計測する際の計測装置100の計測感度の目標値を設定し、かかる目標値を満たす透過膜の厚さをテスト基板TS(基板302)に形成すべきSiO2膜304の厚さとして決定する。この際、残膜306を計測する際の計測装置100の計測感度が最も高くなるSiO2膜の厚さをテスト基板TS(基板302)に形成すべきSiO2膜304の厚さとして決定するとよいことは言うまでもない。
【0018】
S2では、S1で決定された厚さのSiO2膜304を有するテスト基板TS’(図3(b)参照)を基本構造としてライブラリを作成する。具体的には、テスト基板TS’において、残膜306の厚さ及び凹凸パターン308の形状(CD、HT、SWA)を想定される範囲内で変化させ、各形状について凹凸パターン308からの反射光の情報(強度比や位相差の変化)をシミュレーションで求める。そして、残膜306の厚さ及び凹凸パターン308の各形状と反射光の情報とを対応付けた情報(即ち、残膜306の厚さ及び凹凸パターン308の各形状と反射光の情報との関係を示すライブラリ情報)を含むライブラリを作成する。
【0019】
S3では、テスト基板TSに形成された凹凸パターン308の残膜306の厚さを計測する。具体的には、まず、S1で決定された厚さのSiO2膜304を基板302の上に形成する(図3(b)参照)。次いで、インプリント装置によりSiO2膜304の上にレジストパターンを形成してテスト基板TSを作製する(図3(a)参照)。次に、テスト基板TSに形成された残膜306を含む凹凸パターン308を計測装置100で計測する。上述したように、計測装置100は、光源102からの光で凹凸パターン308を照射し、凹凸パターン308からの反射光を検出部110で検出する。ここで、S2で作成したライブラリのライブラリ情報から、検出部110で検出された反射光の情報と最も一致するライブラリ情報を特定し、かかるライブラリ情報に対応する形状を、残膜306を含む凹凸パターン308の形状として求める。
【0020】
このように、最適な厚さを有するSiO2膜304を有するテスト基板TSを用いて計測を行うことで、インプリント装置により形成されたレジストの凹凸パターン308の残膜306の厚さ(RLT)を高精度に計測することができる。
【0021】
図2(b)を参照して、SiO2膜304の最適化(S1)の詳細を説明する。図2(b)は、シミュレーションを用いたSiO2膜304の最適化を説明するためのフローチャートである。なお、シミュレータとしては、例えば、RCWA(Rigorous Coupled Wave Analysis)などを使用することができる。
【0022】
S11では、計算機112上でシミュレータに入力するシミュレーション条件を決定する。ここで、シミュレーション条件は、凹凸パターンの形状(CD、SWA、HT)及び凹部の厚さ(RLT)の設計値、それらを構成する材料の光学定数(屈折率、消衰係数)及び計測装置100の光学系条件などを含む。また、計測装置100の光学系条件は、凹凸パターンに入射させる光の入射角度、波長及び偏光方向や凹凸パターンからの反射光の偏光方向などを含む。なお、本実施形態では、凹凸パターンに入射させる光の入射角度を固定し、波長を変化させて凹凸パターンからの反射光を波長ごとに計測する。従って、凹凸パターンを構成する材料の波長ごとの光学定数を決定する必要がある。
【0023】
S12及びS13では、RLTを計測する際の計測装置100の計測感度を取得(予測)するためのアルゴリズムが用いられる。かかるアルゴリズムは、計測装置100の計測アルゴリズムと等価であるものとする。図4は、RLTを計測する際の計測装置100の計測感度を取得(予測)するためのアルゴリズムの概念を説明するための図である。
【0024】
S12では、アルゴリズムにおいて必要となる基準感度を求める。かかるアルゴリムでは、例えば、計測装置100を光リソグラフィに使用した場合の計測感度(例えば、CD計測感度)に基づいて、RLTを計測する際の計測装置100の基準感度を求める。
【0025】
ここでは、例えば、CD計測感度を0.2[nm]とする。これは、0.2[nm]のCD差を有する2つの凹凸パターンそれぞれからの分光反射強度に対して、計測装置100が十分な感度を有していることを意味する。まず、シミュレータ上では、光リソグラフィで形成される凹凸パターン(の構造)を定義し、かかる凹凸パターンを構成する材料の光学定数を入力する。次いで、図4(a)に示すように、CDがa[nm]である凹凸パターン及びCDがa+0.2[nm]である凹凸パターンの2種類の凹凸パターンについて、それぞれの反射光L1及びL2を算出する。そして、反射光L1及びL2から得られる情報を以下の式(1)に代入して計測装置100の計測感度を求める。
【0026】
【数1】
【0027】
式(1)は、凹凸パターンの形状の変化による分光反射強度の変化(敏感度)を定量化する式であって、本実施形態では、これをRS(Reflectivity Sensitivity)と称する。なお、I(λ)は、波長λにおける光強度である。RSは、反射光L1及びL2の波長ごとの差の絶対値を波長領域で積分した値を定義する。式(1)により、CDの変化による反射光の変化を定量化し、この値を計測装置100において計測可能な必要信号量(基準感度)とし、以下では、RSCDとする。
【0028】
S13では、LTを計測する際の計測装置100の計測感度を取得(予測)する。まず、シミュレータ上で、インプリント装置で形成される凹凸パターン(の構造)を定義し、かかる凹凸パターンを構成する材料の光学定数を入力する。次いで、図4(b)に示すように、RLTがb[nm]である凹凸パターン及びRLTがb+ΔRLT[nm]である凹凸パターンの2種類の凹凸パターンについて、それぞれの反射光L3及びL4を算出し、式(1)を用いて定量化する。この値をRSRLTとする。そして、計測装置100の基準感度RSCDと同じになるようなRSRLTのときのRLTの差(ΔRLT)を算出し、かかるRLTの差を計測感度として定義する。なお、計測装置100の計測感度は、計測装置100におけるRLTの計測分解能とも考えることができる。
【0029】
S14では、S13で取得した計測装置100の計測感度とS12で求めた計測装置100の基準感度とを比較して、計測装置100の計測感度が計測装置100の基準感度(即ち、計測感度の目標値)を満たしているかどうかを判定する。計測装置100の計測感度が計測装置100の基準感度を満たしている場合には、計測装置100の基準感度を満たす透過膜の厚さを特定して、処理を終了する。一方、計測装置100の計測感度が計測装置100の基準感度を満たしていない場合には、S16に移行する。
【0030】
ここで、凹凸パターンからの反射光の偏光方向が0度、45度、90度及び135度である場合の計測装置100の計測感度を図5に示す。図5を参照するに、例えば、計測装置100の基準感度を0.2nmとした場合、凹凸パターンからの反射光の偏光方向がいずれの偏光方向であっても基準感度を満たさない。これは、RLTを計測装置100で計測することができたとしても、計測精度が低下する可能性がある。
【0031】
S16では、計測装置100の計測感度を向上させるために、SiO2膜304の厚さを変更する。このように、SiO2膜304の厚さを変更し、S13で取得される計測装置100の計測感度が、S12で求めた計測装置100の基準感度を満たし、且つ、最も高くなるようなSiO2膜の厚さを求める。
【0032】
図6は、SiO2膜304の厚さをパラメータとして、凹凸パターンからの反射光の偏光方向が0度、45度、90度及び135度である場合の計測装置100の計測感度を示す図である。図6に示すように、SiO2膜304の厚さを変更することで、計測装置100の計測感度が変化する。なお、図6においては、SiO2膜304の厚さを50[nm]とし、凹凸パターンからの反射光の偏光方向を0度とした場合に、計測装置100の計測感度が最も高くなる。
【0033】
図2(c)を参照して、ライブラリの作成(S2)の詳細を説明する。S21では、S1で決定された厚さのSiO2膜304を有するテスト基板TS’(図3(b)参照)に形成される残膜306を含む凹凸パターン308の形状を計算機112上に定義する。
【0034】
S22では、計算機112上でシミュレータに入力する光学定数を決定する。ここで、光学定数とは、上述したように、残膜306を含む凹凸パターン308を構成する材料の屈折率や消衰係数などである。本実施形態では、凹凸パターンに入射させる光の入射角度を固定し、波長を変化させて凹凸パターンからの反射光を波長ごとに計測する。従って、残膜306を含む凹凸パターン308を構成する材料の波長ごとの光学定数を決定する。
【0035】
S23では、計算機112上でシミュレータに入力する計測装置100の光学系条件を決定する。ここで、計測装置100の光学系条件とは、上述したように、凹凸パターン308に入射させる光の入射角度、波長及び偏光方向や凹凸パターン308からの反射光の偏光方向などを含む。
【0036】
S24では、S21又はS27で定義した凹凸パターン308の形状、S22で決定した光学定数、及び、S23で決定した光学系条件に基づいて、凹凸パターン308からの反射光の情報(強度比や位相比の変化)を算出する。
【0037】
S25では、S24で算出した反射光の情報とS21で定義した凹凸パターン308の形状とを対応付けてライブラリ情報としてライブラリに保存する。なお、ライブラリとは、計測対象物である凹凸パターンの形状と、その凹凸パターン(の形状)からの反射光の情報とが関連付けられて蓄積されたデータベースであると言える。
【0038】
S26では、凹凸パターン308の全ての形状についてライブラリ情報を保存したかどうかを判定する。ここで、凹凸パターン308の全ての形状とは、インプリント装置で形成される(即ち、想定される範囲内の)凹凸パターン308の全ての形状を意味する。凹凸パターン308の全ての形状についてライブラリ情報を保存した場合には、処理を終了する。一方、凹凸パターン308の全ての形状についてライブラリ情報を保存していない場合には、S27に移行する。
【0039】
S27では、ライブラリ情報を保存していない凹凸パターン308の形状を新たな凹凸パターン308の形状として計算機112上に定義する。これにより、新たな凹凸パターン308からの反射光の情報が算出され(S24)、かかる反射光の情報と新たな凹凸パターン308の形状とを対応付けたライブラリ情報が保存される(S25)。
【0040】
図2(d)を参照して、残膜の厚さの計測(S3)の詳細を説明する。S31では、S1で決定された厚さのSiO2膜304を基板302の上に形成する。S32では、インプリント装置により、S31で形成されたSiO2膜304の上に凹凸パターン308を形成する。これにより、テスト基板TSが作製される。S33では、計測装置100において、光源102からの光をテスト基板TS(凹凸パターン308)に照射する。S34では、計測装置100において、凹凸パターン308からの反射光を検出部110で検出する。S35では、S34で検出された凹凸パターン308からの反射光の情報とライブラリのライブラリ情報とを比較して、S34で検出された反射光の情報と一致するライブラリ情報を特定(抽出)する。S36では、S35で特定したライブラリ情報に対応する凹凸パターンの形状を、残膜306を含む凹凸パターン308の形状として求める。
【0041】
本実施形態では、RLTを計測する際の計測装置100の計測感度を向上させるための透過膜としてSiO2膜を説明したが、これに限定されるものではない。成膜プロセスが容易であり、膜厚制御性に優れ、計測装置100が使用する光の波長帯域(例えば、200nm〜800nm)において透過性を有する材料の膜であれば、計測感度を向上させるための透過膜に用いることができる。例えば、計測感度を向上させるための透過膜として、CaF2膜、BaF2膜、MaF2膜、LiF膜、NaCl膜、KBr膜、KCl膜、SiC膜、SiN膜などを用いてもよい。
<第2の実施形態>
第2の実施形態では、第1の実施形態とは異なるSiO2膜の最適化(S1)について説明する。第1の実施形態では、シミュレーションを用いてSiO2膜を最適化したが、第2の実施形態では、凹凸パターンを実際に計測してSiO2膜を最適化する。
【0042】
図7(a)を参照して、第2の実施形態におけるSiO2膜の最適化の詳細を説明する。S121では、互いに異なる複数の厚さのSiO2膜をそれぞれ有する複数の基板を準備する。ここでは、図8に示すように、10nmの厚さのSiO2膜を有する基板と、20nmの厚さのSiO2膜を有する基板とを用いるが、SiO2膜の厚さはこれに限定されるものではない。
【0043】
S122では、インプリント装置により、S121で準備した複数の基板の各ショットに異なる厚さの残膜を含む凹凸パターンを形成する。例えば、図8に示す各基板のショットA乃至Dのそれぞれに、残膜の厚さ(RLT)が15nm、16nm、14nm及び17nnmとなるように凹凸パターンを形成する。これを繰り返して、各基板の全てのショット(16のショットA乃至P)に、RLTが15nm、16nm、14nm及び17nnmとなる凹凸パターンを形成する。
【0044】
S123では、計測装置100において、S121及びS122で作製した各基板の各ショット(凹凸パターン)に光を照射して各ショットの凹凸パターンからの反射光を検出する。S124では、S123で検出した反射光の情報と凹凸パターンの形状とを対応付けた情報を計算機112に保存する。
【0045】
S125では、S124で保存された反射光の情報から、式(1)を用いて残膜の厚さ(RLT)に対する反射光の変化を定量化し、計測装置100の計測感度を算出する。例えば、15nmの厚さの残膜を含む凹凸パターンからの反射光の情報(強度比や位相差)、及び、16nmの厚さの残膜を含む凹凸パターンからの反射光の情報から、式(1)に基づいて、計測装置100の計測感度を算出する。
【0046】
S126では、S125で算出した計測装置100の計測感度に基づいて、テスト基板に形成すべきSiO2膜の厚さを決定する。具体的には、125で算出した計測装置100の計測感度のうち、計測感度が最も高くなるSiO2膜の厚さをテスト基板に形成すべきSiO2膜の厚さとして決定(特定)する。
【0047】
このように、異なる厚さのSiO2膜が形成された基板に対して、インプリン装置により異なる厚さの残膜を含む凹凸パターンを形成して計測しても、テスト基板に形成すべきSiO2膜の厚さを決定することができる。
【0048】
図7(b)を参照して、第2の実施形態における別のSiO2膜の最適化の詳細を説明する。なお、S131及びS132は、上述したS121及びS122と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0049】
S133では、S131及びS132で作製された各基板を基本構造としてライブラリを作成する。具体的には、各基板において、残膜の厚さ及び凹凸パターンの形状を想定される範囲内で変化させ、各形状について凹凸パターンからの反射光の情報をシミュレーションで求める。そして、残膜の厚さ及び凹凸パターンの各形状と反射光との情報とを対応付けたライブラリ情報を含むライブラリを作成する。
【0050】
S134では、計測装置100において、S131及びS132で作製した各基板の各ショット(凹凸パターン)に光を照射して各ショットの凹凸パターンからの反射光を検出する。
【0051】
S135では、S134で検出された凹凸パターンからの反射光の情報に基づいて、S131及びS132で作製した各基板の各ショットの凹凸パターンの残膜の厚さを求める。具体的には、S134で検出された凹凸パターンからの反射光の情報とS133で作成したライブラリのライブラリ情報とを比較して、凹凸パターンからの反射光と一致するライブラリ情報を特定する。そして、特定したライブラリ情報に対応する凹凸パターンの形状から、かかる凹凸パターンに含まれる残膜の厚さを求める。
【0052】
S136では、各基板の各ショットについて、S135で求めた残膜の厚さとその設計値(S132で形成された凹凸パターンの残膜の設計値)とを比較する。なお、S135で求めた残膜の厚さは、計測装置100の装置誤差などによって設計値からばらつくことになるが、装置誤差は全てのショットに対して同様に生じると考えられるため、その影響を無視することが可能である。
【0053】
S137では、S136での比較結果に基づいて、テスト基板に形成すべきSiO2膜の厚さを決定する。具体的には、S135で求めた残膜の厚さとその設計値との差が許容範囲に収まっているSiO2膜の厚さをテスト基板に形成すべきSiO2膜の厚さとして決定する。この際、S135で求めた残膜の厚さとその設計値との差が最も小さくなるSiO2膜の厚さをテスト基板に形成すべきSiO2膜の厚さとして決定するとよいことは言うまでもない。
【0054】
なお、S122又はS132において、全ての基板(全てのショット)に一定の厚さの残膜を含む凹凸パターンを形成し、その後の工程において、かかる凹凸パターンの形状を計測して各基板における凹凸パターン(の形状)の再現性を評価してもよい。この場合、凹凸パターンの再現性が最もよい基板に形成されたSiO2膜の厚さをテスト基板に形成すべきSiO2膜の厚さとして決定する
<第3の実施形態>
第3の実施形態では、計測装置100がエリプソメトリ法として第2の方法を用いた場合について説明する。図9は、計測装置100がエリプソメトリ法として第2の方法を用いた場合において、RLTを計測する際の計測装置100の計測感度を取得(予測)するためのアルゴリズムの概念を説明するための図である。第3の実施形態では、第1の実施形態及び第2の実施形態に対して、計測装置100の光学系条件が異なる。第1の実施形態及び第2の実施形態では、計測装置100の光学系条件として、凹凸パターンに入射させる光の入射角度を固定し、凹凸パターンに入射させる光の波長を可変とした。一方、本実施形態では、計測装置100の光学系条件として、凹凸パターンに入射させる光の入射角度を可変とし、凹凸パターンに入射させる光の波長を単一波長とする。
【0055】
第1の実施形態及び第2の実施形態では、凹凸パターンの形状の変化に対する分光反射強度の変化(敏感度)を、式(1)を用いて定量化している。換言すれば、凹凸パターンの変化による反射光の変化を定量化する際に、波長ごとの差分の絶対値を波長領域で積分している。
【0056】
本実施形態では、凹凸パターンの形状の変化に対する分光反射強度の変化(敏感度)を、以下の式(2)を用いて定量化する。例えば、図9に示すように、RLTがc[nm]である凹凸パターン及びRLTがb+Δt[nm]である凹凸パターンの2種類のパターンについて、それぞれの反射光L5及びL6を算出し、式(2)を用いて定量化する。式(2)において、RSは、反射光L5及びL6の入射角度ごとの差分の絶対値を入射角度領域で積分した値である。
【0057】
【数2】
【0058】
このように、計測装置100がエリプソメトリ法として第2の方法を用いた場合には、凹凸パターンの形状の変化に対する分光反射強度の変化(敏感度)を、式(2)を用いて定量化すればよい。
<第4の実施形態>
第4の実施形態では、本発明の一側面としてのインプリント装置1について説明する。図10は、インプリント装置1の構成を示す図である。図10を参照するに、基板(ウエハ)11は、チャック12に保持されている。微動ステージ13は、基板11のZ軸回りの回転を補正する機能、基板11のZ軸方向の位置を補正する機能及び基板11の傾きを補正する機能を有する。微動ステージ13は、基板11をX軸方向及びY軸方向の所定の位置に位置決めするためのXYステージ14に配置されている。なお、微動ステージ13及びXYステージ14は、基板ステージを構成する。XYステージ14は、ベース定盤15に載置される。微動ステージ13には、微動ステージ13のX軸方向及びY軸方向の位置を計測するレーザ干渉計からの光を反射する参照ミラー(不図示)が取り付けられている。
【0059】
基板11に転写すべきパターンが表面に形成されたモールド(型)16は、モールドチャック17に固定される。また、モールドチャック17は、モールドステージ18に載置される。モールドステージ18は、モールド16のZ軸回りの傾きを補正する機能を有する。モールドチャック17のX軸方向及びY軸方向の位置は、アライメント棚19に支持されたレーザ干渉計によって計測される。
【0060】
モールドチャック17及びモールドステージ18のそれぞれは、UV光源20からコリメータレンズを介して照射されるUV光をモールド16へと通過させる開口(不図示)を有する。また、モールドチャック17(又はモールドステージ18)に配置されたロードセル(不図示)は、モールド16の押し付け力を検出する機能を有する。
【0061】
ガイドバープレート21は、その一端がモールドステージ18に固定され、天板22を貫通するガイドバー23の他端を固定する。モールド昇降用リニアアクチュエータ24は、エアシリンダ又はリニアモータで構成され、ガイドバー23をZ軸方向に駆動して、モールドチャック17に保持されたモールド16を基板11に押し付けたり、基板11から引き離したりする。アライメント棚19は、支柱25を介して天板22に懸架されている。アライメント棚19には、ガイドバー23が貫通している。
【0062】
ダイバイダイアライメント用のTTM(スルー・ザ・モールド)アライメントスコープ26は、基板11及びモールド16に設けられたアライメントマークを観察するための光学系と撮像系とを有する。TTMアライメントスコープ26は、基板11とモールド16とのX軸方向及びY軸方向の位置ずれを計測する。また、アライメント棚19には、例えば、斜入射像ずれ方式を用いて、チャック12に保持された基板11の高さ(平坦度)を計測するための高さ計測系(不図示)が配置されている。ディスペンサヘッド27は、基板11の表面に液状の光硬化樹脂(レジスト)を滴下するノズルを含み、基板11にレジストを塗布(供給)する機能を有する。
【0063】
制御部28は、CPUやメモリなどを含み、インプリント装置1の全体(動作)を制御する。例えば、制御部28は、計測装置100での計測結果(凹凸パターンの残膜(凹部)の厚さ)に基づいて、インプリント処理部(のプロセス条件)をフィードバック制御する。また、制御部28は、本実施形態では、計測装置100による計測の結果(テスト基板に形成されたレジストの凹凸パターンの残膜の厚さ)に基づいて、かかる残膜の厚さが目標の厚さとなるように、インプリント処理のプロセス条件を制御する。なお、インプリント処理部は、上述したインプリント装置1の各部を含む総称とする。インプリント処理部は、基板11に塗布された樹脂(未硬化レジスト)をモールド16により成形して硬化させ、硬化した樹脂からモールド16を剥離(離型)することで基板上にモールド16のパターンを転写するインプリント処理を行う。
【0064】
決定部29は、上述した決定方法によって、インプリント処理のプロセス条件を決定する際に用いるテスト基板に形成すべきSiO2膜(透過膜)の厚さを決定する。なお、決定部29の機能は、制御部28の機能の一部として備えられていてもよいし、計測装置100の計算機112の機能の一部として備えられていてもよい。
【0065】
計測装置100は、図1に示す構成を有し、テスト基板、或いは、実デバイス用の基板11に形成されたレジストの凹凸パターンの残膜の厚さ(RLT)を計測する計測部として機能する。
【0066】
以下、図11を参照して、半導体デバイスの量産に先立って行われるインプリント処理のプロセス条件の最適化について説明する。なお、ここでは、ディスペンサヘッド27によって基板11に滴下する光硬化樹脂の体積や分布密度(即ち、基板11に塗布する光硬化樹脂の量)をプロセス条件として説明する。
【0067】
S1102では、決定部29は、上述した決定方法に従って、計測装置100と協同して、シミュレーションを用いて又は凹凸パターンを実際に計測し、テスト基板に形成すべきSiO2膜の厚さを決定する。
【0068】
S1104では、インプリント処理部により、S1102で決定された厚さのSiO2膜を有する基板に凹凸パターンを形成し、テスト基板を作製する。この際、SiO2膜を有する基板の各ショットに対して、異なるプロセス条件(光硬化樹脂の体積や分布密度)で凹凸パターンを形成する。なお、SiO2膜を有する基板の各ショットに対するインプリント処理には、同一のモールドを使用し、プロセス条件の変化によって、凹凸パターンのRLTが異なるようにする。
【0069】
S1106では、計測装置100により、S1104で作製したテスト基板の各ショットに形成された凹凸パターンからの反射光を検出し、各ショットについて凹凸パターンの残膜の厚さを求める。
【0070】
S1108では、制御部28は、S1106で求められた各ショットにおける凹凸パターンの残膜の厚さを評価する。この際、ショット内での残膜の厚さのばらつきが所定の範囲内に収まり、且つ、最も小さいというような評価基準を設定する。
【0071】
S1110では、制御部28は、S1108での評価の結果に基づいて、インプリント処理のプロセス条件を決定する。上述したような評価基準を設定した場合には、ショット内での残膜の厚さのばらつきが所定の範囲内に収まり、且つ、最も小さいショットに対するプロセス条件を、実デバイス用の基板にインプリント処理を行う際のプロセス条件として決定する。このようにしてプロセス条件を決定することができる理由は、テスト基板には最適な厚さのSiO2膜が形成されているため、計測装置100の計測感度が向上し、凹凸パターンの残膜を高精度に計測することができるからである。
【0072】
S1112では、制御部28は、S1110で決定したプロセス条件をインプリント処理部(インプリント装置1)に設定し、実デバイス用の基板11にインプリント処理を行う。これにより、基板11に塗布する光硬化樹脂の体積や分布密度(プロセス条件)を最適な状態に制御することができ、基板11の各ショットにおけるパターンの残膜の厚さ(RLT)が一定となる。
【0073】
なお、プロセス条件として、モールド16を押し付ける際の押し付け力を制御してもよい。この場合、S1104において、SiO2膜を有する基板の各ショットに対して、異なる押し付け力でモールド16を押し付けて、凹凸パターンを形成する。なお、モールド16を押し付ける際の押し付け力は、モールド昇降用リニアアクチュエータ24や基板ステージを用いて調整することが可能である。また、基板11に塗布する光硬化樹脂の体積や分布密度及びモールド16を押し付ける際の押し付け力の両方を制御することも可能である。
【0074】
また、本実施形態では、インプリント装置1において、テスト基板に形成するSiO2膜の厚さを決定している(S1102)。但し、インプリント装置1の外部において、テスト基板に形成するSiO2膜の厚さを決定し、かかる厚さのSiO2膜が形成された基板をインプリント装置1に搬入して、S1104乃至S1112の処理を行ってもよい。
【0075】
物品としてのデバイス(半導体デバイス、液晶表示素子等)の製造方法は、インプリント装置1を用いて基板(ウエハ、ガラスプレート、フィルム状基板等)にパターンを転写(形成)するステップを含む。かかる製造方法は、パターンが転写された基板をエッチングするステップを更に含む。なお、かかる製造方法は、パターンドットメディア(記録媒体)や光学素子などの他の物品を製造する場合には、エッチングステップの代わりに、パターンが転写された基板を加工する他の加工ステップを含む。
【0076】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、決定方法、インプリント装置及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インプリント技術は、真空プロセスなどの大がかりな装置を必要とせず、半導体デバイスを低コストで大量生産することが可能であるため、従来の光リソグラフィに替わって微細パターンを形成する技術として期待されている。インプリント技術は、シリコンウエハやガラスプレートなどの基板上の樹脂に微細なパターンが形成されたモールド(原版)を押し付けた状態で、樹脂を硬化させて基板上に微細なパターンを転写する。
【0003】
インプリント技術が従来の光リソグラフィと異なる点の1つとして、パターンの転写後にパターンの底部分に薄い(数十nm程度)樹脂層(「残膜」と呼ばれる)が残ることが挙げられる。そこで、半導体プロセスにおいては、エッチングによって残膜を除去する工程が必要となる。残膜を除去する際には、縦方向(残膜を除去するための方向)だけではなく、横方向にもエッチングされてしまう。このため、残膜厚がばらつくと、パターンの線幅、側壁角度及び高さなどのレジストパターンの形状(寸法)もばらついてしまう。レジストパターンはエッチングマスクとして機能するため、レジストパターンの寸法が所望の寸法から変化すると最終的なデバイスパターンの寸法も変化し、その結果、半導体デバイスの特性がばらつき、動作不良の原因となることが問題視されている。従って、インプリント技術を用いたインプリント装置においては、残膜厚(RLT:Residual Layer Thickness)を高精度に計測することが不可欠となる。そして、RLTの計測結果に基づいてインプリント装置のプロセス条件を決定(最適化)し、RLTを制御(管理)することが重要である。
【0004】
RLTを計測する技術としては、例えば、レジストパターンが形成されたウエハを切断し、その断面を走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)で観察する方法がある。なお、SEMによる断面観察は、ウエハを切断することが必要となる(即ち、破壊計測である)ため、計測に用いたウエハを再利用することはできない。また、光学的な検査によってRLTを計測する技術や近接場光を用いて非破壊でRLTを計測する技術も提案されている(特許文献1及び2参照)。このような技術が提案される一方、近年では、エリプソメトリ法を用いて微細なパターンを計測する光計測が注目されている(特許文献3参照)。
【0005】
エリプソメトリ法を用いた光計測では、被計測物に光を照射し、その反射光におけるS偏光とP偏光との強度比や位相差を解析して被計測物の形状を求めている。従って、エリプソメトリ法を用いた光計測は、パターンの粗度(Line Width Roughness)や縮小度(Shrink)などの影響が含まれるSEMと比較して、パターンの形状を高精度、且つ、非破壊(非接触)で計測することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−30153号公報
【特許文献2】特開2007−298314号公報
【特許文献3】特表2002−506198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、エリプソメトリ法を用いた従来の光計測は、インプリント装置のプロセス条件の最適化に必要な精度でRLTを計測することができず、そのままではプロセス条件の最適化に適用することができない。
【0008】
本発明は、インプリント装置により基板に形成されたパターンの残膜厚を計測する精度の点で有利な技術を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての決定方法は、インプリント装置のプロセス条件を決定するために用いる基板に形成すべき透過膜の厚さを決定する決定方法であって、前記インプリント装置により前記透過膜を有する前記基板に形成されたレジストの凹凸パターンの凹部の厚さを計測する計測装置の計測感度の目標値を設定し、当該目標値を満たす透過膜の厚さを前記基板に形成すべき透過膜の厚さとして決定する決定ステップを有し、前記計測感度は、前記凹凸パターンの形状の変化に対する前記凹凸パターンからの反射光の強度の変化又は位相の変化で定義され、前記決定ステップでは、複数の厚さの透過膜のそれぞれについて、前記凹凸パターンの形状の変化に対する前記凹凸パターンからの反射光の強度の変化又は位相の変化に基づいて前記計測感度を示す情報を取得し、当該情報から前記目標値を満たす透過膜の厚さを特定することを特徴とする。
【0010】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、例えば、インプリント装置により基板に形成されたパターンの残膜厚を計測する精度の点で有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】残膜厚(RLT)の計測に用いる計測装置の構成を示す概略図である。
【図2】本発明の一側面としての決定方法を含む計測方法を説明するためのフローチャートである。
【図3】テスト基板の構成を示す概略断面図である。
【図4】図2(b)に示すS12及びS13を説明するための図である。
【図5】図2(b)に示すS14を説明するための図である。
【図6】図2(b)に示すS15を説明するための図である。
【図7】SiO2膜の最適化の詳細を説明するためのフローチャートである。
【図8】図7に示すS121及びS122を説明するための図である。
【図9】計測装置の計測感度を取得(予測)するためのアルゴリズムの概念を説明するための図である。
【図10】本発明の一側面としてのインプリント装置の構成を示す図である。
【図11】図10に示すインプリント装置におけるインプリント処理のプロセス条件の最適化を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
<第1の実施形態>
本発明の一側面としての決定方法を含む計測方法について説明する。かかる計測方法は、インプリント装置のプロセス条件を決定する際に用いるテスト基板に形成されたレジストの凹凸パターンの凹部の厚さ(RLT:残膜厚)を計測する計測方法である。
【0014】
図1を参照して、RLTの計測に用いる計測装置100について説明する。図1は、計測装置100の構成を示す概略図である。計測装置100は、エリプソメトリ法を用いた断面形状(凹凸パターンの線幅(CD:Critical Dimension)、側壁角度(SWA:Side Wall Angle)及び高さ(HT:Height))を計測する計測装置である。なお、エリプソメトリ法は、以下の2つの方法に大別される。第1の方法は、複数の波長の光を含むブロードバンド光を一定の入射角度でパターンに斜入射させ、複数の波長のそれぞれについてパターンからの反射光(の強度)を計測する方法である。第2の方法は、単一波長の光を複数の入射角度でパターンに斜入射させ、複数の入射角度のそれぞれについてパターンからの反射光(の強度)を計測する方法である。ここでは、エリプソメトリ法として第1の方法を用いるが、第2の方法を用いることもできる。
【0015】
図1を参照するに、光源102から射出された光Laは、回転可能なポラライザ104を通過して、偏光面(S偏光、P偏光)が調整され、凹凸パターン(周期パターン)PTに入射する。凹凸パターンPTで反射された光Lbは、回転可能なアナライザ106を通過して、偏光面が調整される。アナライザ106を通過した光Lcは、その波長に応じて分光光学系108を介して、空間的に波長分離される。空間的に波長分離された光Ldは、光電素子がアレー状に配列された検出部110で検出され、その情報が計算機112に送られる。計算機112は、検出部110からの情報に基づいて、波長ごとのS偏光とP偏光との強度比又は位相差を算出する。そして、計算機112は、かかる算出結果とライブラリ情報とを比較して凹凸パターンPTの形状(断面形状)を求め、その結果が計測対象物としての凹凸パターンPTの形状として計算機112から出力される。
【0016】
図2は、本発明の一側面としての決定方法を含む計測方法を説明するためのフローチャートである。また、図3は、テスト基板TSの構成を示す概略断面図である。テスト基板TSは、最終的には、図3(a)に示すように、基板302と、SiO2膜304と、残膜(凹部)306を含む凹凸パターン308とで構成される。ここで、SiO2膜を形成する理由は、SiO2膜などの透過膜を基板に形成し、かかる透過膜の厚さを最適化することで、RLTを計測する際の計測装置100の計測感度を向上させることができることを本発明者が見出したからである。基板に形成された透過膜において多重反射が発生し、計測装置100の計測感度が向上すると考えられる。なお、SiO2膜304は、後述する決定方法で決定された最適な厚さを有する。また、凹凸パターン308は、インプリント装置により最適な厚さのSiO2膜304の上に形成される。
【0017】
図2(a)を参照して、本発明の一側面としての決定方法を含む計測方法の全体的な処理を説明する。S1(決定ステップ)では、テスト基板TSのSiO2膜304の厚さを最適化(決定)する。具体的には、残膜306を計測する際の計測装置100の計測感度の目標値を設定し、かかる目標値を満たす透過膜の厚さをテスト基板TS(基板302)に形成すべきSiO2膜304の厚さとして決定する。この際、残膜306を計測する際の計測装置100の計測感度が最も高くなるSiO2膜の厚さをテスト基板TS(基板302)に形成すべきSiO2膜304の厚さとして決定するとよいことは言うまでもない。
【0018】
S2では、S1で決定された厚さのSiO2膜304を有するテスト基板TS’(図3(b)参照)を基本構造としてライブラリを作成する。具体的には、テスト基板TS’において、残膜306の厚さ及び凹凸パターン308の形状(CD、HT、SWA)を想定される範囲内で変化させ、各形状について凹凸パターン308からの反射光の情報(強度比や位相差の変化)をシミュレーションで求める。そして、残膜306の厚さ及び凹凸パターン308の各形状と反射光の情報とを対応付けた情報(即ち、残膜306の厚さ及び凹凸パターン308の各形状と反射光の情報との関係を示すライブラリ情報)を含むライブラリを作成する。
【0019】
S3では、テスト基板TSに形成された凹凸パターン308の残膜306の厚さを計測する。具体的には、まず、S1で決定された厚さのSiO2膜304を基板302の上に形成する(図3(b)参照)。次いで、インプリント装置によりSiO2膜304の上にレジストパターンを形成してテスト基板TSを作製する(図3(a)参照)。次に、テスト基板TSに形成された残膜306を含む凹凸パターン308を計測装置100で計測する。上述したように、計測装置100は、光源102からの光で凹凸パターン308を照射し、凹凸パターン308からの反射光を検出部110で検出する。ここで、S2で作成したライブラリのライブラリ情報から、検出部110で検出された反射光の情報と最も一致するライブラリ情報を特定し、かかるライブラリ情報に対応する形状を、残膜306を含む凹凸パターン308の形状として求める。
【0020】
このように、最適な厚さを有するSiO2膜304を有するテスト基板TSを用いて計測を行うことで、インプリント装置により形成されたレジストの凹凸パターン308の残膜306の厚さ(RLT)を高精度に計測することができる。
【0021】
図2(b)を参照して、SiO2膜304の最適化(S1)の詳細を説明する。図2(b)は、シミュレーションを用いたSiO2膜304の最適化を説明するためのフローチャートである。なお、シミュレータとしては、例えば、RCWA(Rigorous Coupled Wave Analysis)などを使用することができる。
【0022】
S11では、計算機112上でシミュレータに入力するシミュレーション条件を決定する。ここで、シミュレーション条件は、凹凸パターンの形状(CD、SWA、HT)及び凹部の厚さ(RLT)の設計値、それらを構成する材料の光学定数(屈折率、消衰係数)及び計測装置100の光学系条件などを含む。また、計測装置100の光学系条件は、凹凸パターンに入射させる光の入射角度、波長及び偏光方向や凹凸パターンからの反射光の偏光方向などを含む。なお、本実施形態では、凹凸パターンに入射させる光の入射角度を固定し、波長を変化させて凹凸パターンからの反射光を波長ごとに計測する。従って、凹凸パターンを構成する材料の波長ごとの光学定数を決定する必要がある。
【0023】
S12及びS13では、RLTを計測する際の計測装置100の計測感度を取得(予測)するためのアルゴリズムが用いられる。かかるアルゴリズムは、計測装置100の計測アルゴリズムと等価であるものとする。図4は、RLTを計測する際の計測装置100の計測感度を取得(予測)するためのアルゴリズムの概念を説明するための図である。
【0024】
S12では、アルゴリズムにおいて必要となる基準感度を求める。かかるアルゴリムでは、例えば、計測装置100を光リソグラフィに使用した場合の計測感度(例えば、CD計測感度)に基づいて、RLTを計測する際の計測装置100の基準感度を求める。
【0025】
ここでは、例えば、CD計測感度を0.2[nm]とする。これは、0.2[nm]のCD差を有する2つの凹凸パターンそれぞれからの分光反射強度に対して、計測装置100が十分な感度を有していることを意味する。まず、シミュレータ上では、光リソグラフィで形成される凹凸パターン(の構造)を定義し、かかる凹凸パターンを構成する材料の光学定数を入力する。次いで、図4(a)に示すように、CDがa[nm]である凹凸パターン及びCDがa+0.2[nm]である凹凸パターンの2種類の凹凸パターンについて、それぞれの反射光L1及びL2を算出する。そして、反射光L1及びL2から得られる情報を以下の式(1)に代入して計測装置100の計測感度を求める。
【0026】
【数1】
【0027】
式(1)は、凹凸パターンの形状の変化による分光反射強度の変化(敏感度)を定量化する式であって、本実施形態では、これをRS(Reflectivity Sensitivity)と称する。なお、I(λ)は、波長λにおける光強度である。RSは、反射光L1及びL2の波長ごとの差の絶対値を波長領域で積分した値を定義する。式(1)により、CDの変化による反射光の変化を定量化し、この値を計測装置100において計測可能な必要信号量(基準感度)とし、以下では、RSCDとする。
【0028】
S13では、LTを計測する際の計測装置100の計測感度を取得(予測)する。まず、シミュレータ上で、インプリント装置で形成される凹凸パターン(の構造)を定義し、かかる凹凸パターンを構成する材料の光学定数を入力する。次いで、図4(b)に示すように、RLTがb[nm]である凹凸パターン及びRLTがb+ΔRLT[nm]である凹凸パターンの2種類の凹凸パターンについて、それぞれの反射光L3及びL4を算出し、式(1)を用いて定量化する。この値をRSRLTとする。そして、計測装置100の基準感度RSCDと同じになるようなRSRLTのときのRLTの差(ΔRLT)を算出し、かかるRLTの差を計測感度として定義する。なお、計測装置100の計測感度は、計測装置100におけるRLTの計測分解能とも考えることができる。
【0029】
S14では、S13で取得した計測装置100の計測感度とS12で求めた計測装置100の基準感度とを比較して、計測装置100の計測感度が計測装置100の基準感度(即ち、計測感度の目標値)を満たしているかどうかを判定する。計測装置100の計測感度が計測装置100の基準感度を満たしている場合には、計測装置100の基準感度を満たす透過膜の厚さを特定して、処理を終了する。一方、計測装置100の計測感度が計測装置100の基準感度を満たしていない場合には、S16に移行する。
【0030】
ここで、凹凸パターンからの反射光の偏光方向が0度、45度、90度及び135度である場合の計測装置100の計測感度を図5に示す。図5を参照するに、例えば、計測装置100の基準感度を0.2nmとした場合、凹凸パターンからの反射光の偏光方向がいずれの偏光方向であっても基準感度を満たさない。これは、RLTを計測装置100で計測することができたとしても、計測精度が低下する可能性がある。
【0031】
S16では、計測装置100の計測感度を向上させるために、SiO2膜304の厚さを変更する。このように、SiO2膜304の厚さを変更し、S13で取得される計測装置100の計測感度が、S12で求めた計測装置100の基準感度を満たし、且つ、最も高くなるようなSiO2膜の厚さを求める。
【0032】
図6は、SiO2膜304の厚さをパラメータとして、凹凸パターンからの反射光の偏光方向が0度、45度、90度及び135度である場合の計測装置100の計測感度を示す図である。図6に示すように、SiO2膜304の厚さを変更することで、計測装置100の計測感度が変化する。なお、図6においては、SiO2膜304の厚さを50[nm]とし、凹凸パターンからの反射光の偏光方向を0度とした場合に、計測装置100の計測感度が最も高くなる。
【0033】
図2(c)を参照して、ライブラリの作成(S2)の詳細を説明する。S21では、S1で決定された厚さのSiO2膜304を有するテスト基板TS’(図3(b)参照)に形成される残膜306を含む凹凸パターン308の形状を計算機112上に定義する。
【0034】
S22では、計算機112上でシミュレータに入力する光学定数を決定する。ここで、光学定数とは、上述したように、残膜306を含む凹凸パターン308を構成する材料の屈折率や消衰係数などである。本実施形態では、凹凸パターンに入射させる光の入射角度を固定し、波長を変化させて凹凸パターンからの反射光を波長ごとに計測する。従って、残膜306を含む凹凸パターン308を構成する材料の波長ごとの光学定数を決定する。
【0035】
S23では、計算機112上でシミュレータに入力する計測装置100の光学系条件を決定する。ここで、計測装置100の光学系条件とは、上述したように、凹凸パターン308に入射させる光の入射角度、波長及び偏光方向や凹凸パターン308からの反射光の偏光方向などを含む。
【0036】
S24では、S21又はS27で定義した凹凸パターン308の形状、S22で決定した光学定数、及び、S23で決定した光学系条件に基づいて、凹凸パターン308からの反射光の情報(強度比や位相比の変化)を算出する。
【0037】
S25では、S24で算出した反射光の情報とS21で定義した凹凸パターン308の形状とを対応付けてライブラリ情報としてライブラリに保存する。なお、ライブラリとは、計測対象物である凹凸パターンの形状と、その凹凸パターン(の形状)からの反射光の情報とが関連付けられて蓄積されたデータベースであると言える。
【0038】
S26では、凹凸パターン308の全ての形状についてライブラリ情報を保存したかどうかを判定する。ここで、凹凸パターン308の全ての形状とは、インプリント装置で形成される(即ち、想定される範囲内の)凹凸パターン308の全ての形状を意味する。凹凸パターン308の全ての形状についてライブラリ情報を保存した場合には、処理を終了する。一方、凹凸パターン308の全ての形状についてライブラリ情報を保存していない場合には、S27に移行する。
【0039】
S27では、ライブラリ情報を保存していない凹凸パターン308の形状を新たな凹凸パターン308の形状として計算機112上に定義する。これにより、新たな凹凸パターン308からの反射光の情報が算出され(S24)、かかる反射光の情報と新たな凹凸パターン308の形状とを対応付けたライブラリ情報が保存される(S25)。
【0040】
図2(d)を参照して、残膜の厚さの計測(S3)の詳細を説明する。S31では、S1で決定された厚さのSiO2膜304を基板302の上に形成する。S32では、インプリント装置により、S31で形成されたSiO2膜304の上に凹凸パターン308を形成する。これにより、テスト基板TSが作製される。S33では、計測装置100において、光源102からの光をテスト基板TS(凹凸パターン308)に照射する。S34では、計測装置100において、凹凸パターン308からの反射光を検出部110で検出する。S35では、S34で検出された凹凸パターン308からの反射光の情報とライブラリのライブラリ情報とを比較して、S34で検出された反射光の情報と一致するライブラリ情報を特定(抽出)する。S36では、S35で特定したライブラリ情報に対応する凹凸パターンの形状を、残膜306を含む凹凸パターン308の形状として求める。
【0041】
本実施形態では、RLTを計測する際の計測装置100の計測感度を向上させるための透過膜としてSiO2膜を説明したが、これに限定されるものではない。成膜プロセスが容易であり、膜厚制御性に優れ、計測装置100が使用する光の波長帯域(例えば、200nm〜800nm)において透過性を有する材料の膜であれば、計測感度を向上させるための透過膜に用いることができる。例えば、計測感度を向上させるための透過膜として、CaF2膜、BaF2膜、MaF2膜、LiF膜、NaCl膜、KBr膜、KCl膜、SiC膜、SiN膜などを用いてもよい。
<第2の実施形態>
第2の実施形態では、第1の実施形態とは異なるSiO2膜の最適化(S1)について説明する。第1の実施形態では、シミュレーションを用いてSiO2膜を最適化したが、第2の実施形態では、凹凸パターンを実際に計測してSiO2膜を最適化する。
【0042】
図7(a)を参照して、第2の実施形態におけるSiO2膜の最適化の詳細を説明する。S121では、互いに異なる複数の厚さのSiO2膜をそれぞれ有する複数の基板を準備する。ここでは、図8に示すように、10nmの厚さのSiO2膜を有する基板と、20nmの厚さのSiO2膜を有する基板とを用いるが、SiO2膜の厚さはこれに限定されるものではない。
【0043】
S122では、インプリント装置により、S121で準備した複数の基板の各ショットに異なる厚さの残膜を含む凹凸パターンを形成する。例えば、図8に示す各基板のショットA乃至Dのそれぞれに、残膜の厚さ(RLT)が15nm、16nm、14nm及び17nnmとなるように凹凸パターンを形成する。これを繰り返して、各基板の全てのショット(16のショットA乃至P)に、RLTが15nm、16nm、14nm及び17nnmとなる凹凸パターンを形成する。
【0044】
S123では、計測装置100において、S121及びS122で作製した各基板の各ショット(凹凸パターン)に光を照射して各ショットの凹凸パターンからの反射光を検出する。S124では、S123で検出した反射光の情報と凹凸パターンの形状とを対応付けた情報を計算機112に保存する。
【0045】
S125では、S124で保存された反射光の情報から、式(1)を用いて残膜の厚さ(RLT)に対する反射光の変化を定量化し、計測装置100の計測感度を算出する。例えば、15nmの厚さの残膜を含む凹凸パターンからの反射光の情報(強度比や位相差)、及び、16nmの厚さの残膜を含む凹凸パターンからの反射光の情報から、式(1)に基づいて、計測装置100の計測感度を算出する。
【0046】
S126では、S125で算出した計測装置100の計測感度に基づいて、テスト基板に形成すべきSiO2膜の厚さを決定する。具体的には、125で算出した計測装置100の計測感度のうち、計測感度が最も高くなるSiO2膜の厚さをテスト基板に形成すべきSiO2膜の厚さとして決定(特定)する。
【0047】
このように、異なる厚さのSiO2膜が形成された基板に対して、インプリン装置により異なる厚さの残膜を含む凹凸パターンを形成して計測しても、テスト基板に形成すべきSiO2膜の厚さを決定することができる。
【0048】
図7(b)を参照して、第2の実施形態における別のSiO2膜の最適化の詳細を説明する。なお、S131及びS132は、上述したS121及びS122と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0049】
S133では、S131及びS132で作製された各基板を基本構造としてライブラリを作成する。具体的には、各基板において、残膜の厚さ及び凹凸パターンの形状を想定される範囲内で変化させ、各形状について凹凸パターンからの反射光の情報をシミュレーションで求める。そして、残膜の厚さ及び凹凸パターンの各形状と反射光との情報とを対応付けたライブラリ情報を含むライブラリを作成する。
【0050】
S134では、計測装置100において、S131及びS132で作製した各基板の各ショット(凹凸パターン)に光を照射して各ショットの凹凸パターンからの反射光を検出する。
【0051】
S135では、S134で検出された凹凸パターンからの反射光の情報に基づいて、S131及びS132で作製した各基板の各ショットの凹凸パターンの残膜の厚さを求める。具体的には、S134で検出された凹凸パターンからの反射光の情報とS133で作成したライブラリのライブラリ情報とを比較して、凹凸パターンからの反射光と一致するライブラリ情報を特定する。そして、特定したライブラリ情報に対応する凹凸パターンの形状から、かかる凹凸パターンに含まれる残膜の厚さを求める。
【0052】
S136では、各基板の各ショットについて、S135で求めた残膜の厚さとその設計値(S132で形成された凹凸パターンの残膜の設計値)とを比較する。なお、S135で求めた残膜の厚さは、計測装置100の装置誤差などによって設計値からばらつくことになるが、装置誤差は全てのショットに対して同様に生じると考えられるため、その影響を無視することが可能である。
【0053】
S137では、S136での比較結果に基づいて、テスト基板に形成すべきSiO2膜の厚さを決定する。具体的には、S135で求めた残膜の厚さとその設計値との差が許容範囲に収まっているSiO2膜の厚さをテスト基板に形成すべきSiO2膜の厚さとして決定する。この際、S135で求めた残膜の厚さとその設計値との差が最も小さくなるSiO2膜の厚さをテスト基板に形成すべきSiO2膜の厚さとして決定するとよいことは言うまでもない。
【0054】
なお、S122又はS132において、全ての基板(全てのショット)に一定の厚さの残膜を含む凹凸パターンを形成し、その後の工程において、かかる凹凸パターンの形状を計測して各基板における凹凸パターン(の形状)の再現性を評価してもよい。この場合、凹凸パターンの再現性が最もよい基板に形成されたSiO2膜の厚さをテスト基板に形成すべきSiO2膜の厚さとして決定する
<第3の実施形態>
第3の実施形態では、計測装置100がエリプソメトリ法として第2の方法を用いた場合について説明する。図9は、計測装置100がエリプソメトリ法として第2の方法を用いた場合において、RLTを計測する際の計測装置100の計測感度を取得(予測)するためのアルゴリズムの概念を説明するための図である。第3の実施形態では、第1の実施形態及び第2の実施形態に対して、計測装置100の光学系条件が異なる。第1の実施形態及び第2の実施形態では、計測装置100の光学系条件として、凹凸パターンに入射させる光の入射角度を固定し、凹凸パターンに入射させる光の波長を可変とした。一方、本実施形態では、計測装置100の光学系条件として、凹凸パターンに入射させる光の入射角度を可変とし、凹凸パターンに入射させる光の波長を単一波長とする。
【0055】
第1の実施形態及び第2の実施形態では、凹凸パターンの形状の変化に対する分光反射強度の変化(敏感度)を、式(1)を用いて定量化している。換言すれば、凹凸パターンの変化による反射光の変化を定量化する際に、波長ごとの差分の絶対値を波長領域で積分している。
【0056】
本実施形態では、凹凸パターンの形状の変化に対する分光反射強度の変化(敏感度)を、以下の式(2)を用いて定量化する。例えば、図9に示すように、RLTがc[nm]である凹凸パターン及びRLTがb+Δt[nm]である凹凸パターンの2種類のパターンについて、それぞれの反射光L5及びL6を算出し、式(2)を用いて定量化する。式(2)において、RSは、反射光L5及びL6の入射角度ごとの差分の絶対値を入射角度領域で積分した値である。
【0057】
【数2】
【0058】
このように、計測装置100がエリプソメトリ法として第2の方法を用いた場合には、凹凸パターンの形状の変化に対する分光反射強度の変化(敏感度)を、式(2)を用いて定量化すればよい。
<第4の実施形態>
第4の実施形態では、本発明の一側面としてのインプリント装置1について説明する。図10は、インプリント装置1の構成を示す図である。図10を参照するに、基板(ウエハ)11は、チャック12に保持されている。微動ステージ13は、基板11のZ軸回りの回転を補正する機能、基板11のZ軸方向の位置を補正する機能及び基板11の傾きを補正する機能を有する。微動ステージ13は、基板11をX軸方向及びY軸方向の所定の位置に位置決めするためのXYステージ14に配置されている。なお、微動ステージ13及びXYステージ14は、基板ステージを構成する。XYステージ14は、ベース定盤15に載置される。微動ステージ13には、微動ステージ13のX軸方向及びY軸方向の位置を計測するレーザ干渉計からの光を反射する参照ミラー(不図示)が取り付けられている。
【0059】
基板11に転写すべきパターンが表面に形成されたモールド(型)16は、モールドチャック17に固定される。また、モールドチャック17は、モールドステージ18に載置される。モールドステージ18は、モールド16のZ軸回りの傾きを補正する機能を有する。モールドチャック17のX軸方向及びY軸方向の位置は、アライメント棚19に支持されたレーザ干渉計によって計測される。
【0060】
モールドチャック17及びモールドステージ18のそれぞれは、UV光源20からコリメータレンズを介して照射されるUV光をモールド16へと通過させる開口(不図示)を有する。また、モールドチャック17(又はモールドステージ18)に配置されたロードセル(不図示)は、モールド16の押し付け力を検出する機能を有する。
【0061】
ガイドバープレート21は、その一端がモールドステージ18に固定され、天板22を貫通するガイドバー23の他端を固定する。モールド昇降用リニアアクチュエータ24は、エアシリンダ又はリニアモータで構成され、ガイドバー23をZ軸方向に駆動して、モールドチャック17に保持されたモールド16を基板11に押し付けたり、基板11から引き離したりする。アライメント棚19は、支柱25を介して天板22に懸架されている。アライメント棚19には、ガイドバー23が貫通している。
【0062】
ダイバイダイアライメント用のTTM(スルー・ザ・モールド)アライメントスコープ26は、基板11及びモールド16に設けられたアライメントマークを観察するための光学系と撮像系とを有する。TTMアライメントスコープ26は、基板11とモールド16とのX軸方向及びY軸方向の位置ずれを計測する。また、アライメント棚19には、例えば、斜入射像ずれ方式を用いて、チャック12に保持された基板11の高さ(平坦度)を計測するための高さ計測系(不図示)が配置されている。ディスペンサヘッド27は、基板11の表面に液状の光硬化樹脂(レジスト)を滴下するノズルを含み、基板11にレジストを塗布(供給)する機能を有する。
【0063】
制御部28は、CPUやメモリなどを含み、インプリント装置1の全体(動作)を制御する。例えば、制御部28は、計測装置100での計測結果(凹凸パターンの残膜(凹部)の厚さ)に基づいて、インプリント処理部(のプロセス条件)をフィードバック制御する。また、制御部28は、本実施形態では、計測装置100による計測の結果(テスト基板に形成されたレジストの凹凸パターンの残膜の厚さ)に基づいて、かかる残膜の厚さが目標の厚さとなるように、インプリント処理のプロセス条件を制御する。なお、インプリント処理部は、上述したインプリント装置1の各部を含む総称とする。インプリント処理部は、基板11に塗布された樹脂(未硬化レジスト)をモールド16により成形して硬化させ、硬化した樹脂からモールド16を剥離(離型)することで基板上にモールド16のパターンを転写するインプリント処理を行う。
【0064】
決定部29は、上述した決定方法によって、インプリント処理のプロセス条件を決定する際に用いるテスト基板に形成すべきSiO2膜(透過膜)の厚さを決定する。なお、決定部29の機能は、制御部28の機能の一部として備えられていてもよいし、計測装置100の計算機112の機能の一部として備えられていてもよい。
【0065】
計測装置100は、図1に示す構成を有し、テスト基板、或いは、実デバイス用の基板11に形成されたレジストの凹凸パターンの残膜の厚さ(RLT)を計測する計測部として機能する。
【0066】
以下、図11を参照して、半導体デバイスの量産に先立って行われるインプリント処理のプロセス条件の最適化について説明する。なお、ここでは、ディスペンサヘッド27によって基板11に滴下する光硬化樹脂の体積や分布密度(即ち、基板11に塗布する光硬化樹脂の量)をプロセス条件として説明する。
【0067】
S1102では、決定部29は、上述した決定方法に従って、計測装置100と協同して、シミュレーションを用いて又は凹凸パターンを実際に計測し、テスト基板に形成すべきSiO2膜の厚さを決定する。
【0068】
S1104では、インプリント処理部により、S1102で決定された厚さのSiO2膜を有する基板に凹凸パターンを形成し、テスト基板を作製する。この際、SiO2膜を有する基板の各ショットに対して、異なるプロセス条件(光硬化樹脂の体積や分布密度)で凹凸パターンを形成する。なお、SiO2膜を有する基板の各ショットに対するインプリント処理には、同一のモールドを使用し、プロセス条件の変化によって、凹凸パターンのRLTが異なるようにする。
【0069】
S1106では、計測装置100により、S1104で作製したテスト基板の各ショットに形成された凹凸パターンからの反射光を検出し、各ショットについて凹凸パターンの残膜の厚さを求める。
【0070】
S1108では、制御部28は、S1106で求められた各ショットにおける凹凸パターンの残膜の厚さを評価する。この際、ショット内での残膜の厚さのばらつきが所定の範囲内に収まり、且つ、最も小さいというような評価基準を設定する。
【0071】
S1110では、制御部28は、S1108での評価の結果に基づいて、インプリント処理のプロセス条件を決定する。上述したような評価基準を設定した場合には、ショット内での残膜の厚さのばらつきが所定の範囲内に収まり、且つ、最も小さいショットに対するプロセス条件を、実デバイス用の基板にインプリント処理を行う際のプロセス条件として決定する。このようにしてプロセス条件を決定することができる理由は、テスト基板には最適な厚さのSiO2膜が形成されているため、計測装置100の計測感度が向上し、凹凸パターンの残膜を高精度に計測することができるからである。
【0072】
S1112では、制御部28は、S1110で決定したプロセス条件をインプリント処理部(インプリント装置1)に設定し、実デバイス用の基板11にインプリント処理を行う。これにより、基板11に塗布する光硬化樹脂の体積や分布密度(プロセス条件)を最適な状態に制御することができ、基板11の各ショットにおけるパターンの残膜の厚さ(RLT)が一定となる。
【0073】
なお、プロセス条件として、モールド16を押し付ける際の押し付け力を制御してもよい。この場合、S1104において、SiO2膜を有する基板の各ショットに対して、異なる押し付け力でモールド16を押し付けて、凹凸パターンを形成する。なお、モールド16を押し付ける際の押し付け力は、モールド昇降用リニアアクチュエータ24や基板ステージを用いて調整することが可能である。また、基板11に塗布する光硬化樹脂の体積や分布密度及びモールド16を押し付ける際の押し付け力の両方を制御することも可能である。
【0074】
また、本実施形態では、インプリント装置1において、テスト基板に形成するSiO2膜の厚さを決定している(S1102)。但し、インプリント装置1の外部において、テスト基板に形成するSiO2膜の厚さを決定し、かかる厚さのSiO2膜が形成された基板をインプリント装置1に搬入して、S1104乃至S1112の処理を行ってもよい。
【0075】
物品としてのデバイス(半導体デバイス、液晶表示素子等)の製造方法は、インプリント装置1を用いて基板(ウエハ、ガラスプレート、フィルム状基板等)にパターンを転写(形成)するステップを含む。かかる製造方法は、パターンが転写された基板をエッチングするステップを更に含む。なお、かかる製造方法は、パターンドットメディア(記録媒体)や光学素子などの他の物品を製造する場合には、エッチングステップの代わりに、パターンが転写された基板を加工する他の加工ステップを含む。
【0076】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インプリント装置のプロセス条件を決定するために用いる基板に形成すべき透過膜の厚さを決定する決定方法であって、
前記インプリント装置により前記透過膜を有する前記基板に形成されたレジストの凹凸パターンの凹部の厚さを計測する計測装置の計測感度の目標値を設定し、当該目標値を満たす透過膜の厚さを前記基板に形成すべき透過膜の厚さとして決定する決定ステップを有し、
前記計測感度は、前記凹凸パターンの形状の変化に対する前記凹凸パターンからの反射光の強度の変化又は位相の変化で定義され、
前記決定ステップでは、複数の厚さの透過膜のそれぞれについて、前記凹凸パターンの形状の変化に対する前記凹凸パターンからの反射光の強度の変化又は位相の変化に基づいて前記計測感度を示す情報を取得し、当該情報から前記目標値を満たす透過膜の厚さを特定することを特徴とする決定方法。
【請求項2】
前記決定ステップでは、前記複数の厚さの透過膜のそれぞれについて、前記凹凸パターンの形状の変化に対する前記凹凸パターンからの反射光の強度の変化又は位相の変化を前記計測装置で計測することを特徴とする請求項1に記載の決定方法。
【請求項3】
前記決定ステップでは、前記複数の厚さの透過膜のそれぞれについて、前記凹凸パターンの形状の変化に対する前記凹凸パターンからの反射光の強度の変化又は位相の変化をシミュレーションで求めることを特徴とする請求項1に記載の決定方法。
【請求項4】
インプリント装置のプロセス条件を決定するために用いる基板に形成すべき透過膜の厚さを決定する決定方法であって、
複数の厚さの透過膜のそれぞれについて前記基板に形成されたレジストの凹凸パターンの凹部の厚さを計測装置で計測し、前記複数の厚さの透過膜のうち前記計測装置で計測した前記凹部の厚さと前記凹部の厚さの設計値との差が許容範囲に収まる透過膜の厚さを前記基板に形成すべき透過膜の厚さとして決定する決定ステップを有することを特徴とする決定方法。
【請求項5】
前記計測装置は、前記凹凸パターンに複数の波長の光を一定の入射角度で斜入射させ、前記複数の波長のそれぞれについて前記凹凸パターンからの反射光の強度を計測し、前記複数の波長のそれぞれについて計測した強度と前記凹凸パターンの形状との関係を示す情報と前記計測の結果とから前記凹凸パターンの凹部の厚さを計測することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の決定方法。
【請求項6】
前記計測装置は、前記凹凸パターンに単一波長の光を複数の入射角度で斜入射させ、前記複数の入射角度のそれぞれについて前記凹凸パターンからの反射光の強度を計測し、前記複数の入射角度のそれぞれについて計測した前記反射光の強度と前記凹凸パターンの形状との関係を示す情報と前記計測の結果とから前記凹凸パターンの凹部の厚さを計測することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の決定方法。
【請求項7】
基板上の未硬化レジストを型により成形して硬化させ、前記基板上にレジストの凹凸パターンを形成するインプリント処理を行うインプリント処理部と、
前記インプリント処理のプロセス条件を決定するために用いる基板に形成すべき透過膜の厚さを決定する決定部であって、透過膜を有する基板上に前記インプリント処理部により形成されたレジストの凹凸パターンの凹部の厚さを計測する計測装置の計測感度の目標値を満たす透過膜の厚さを決定する決定部と、
前記決定部で決定された厚さの透過膜を有する基板に前記インプリント処理部により形成されたレジストの凹凸パターンの凹部の厚さを計測する計測部と、
前記計測部で計測された前記凹凸パターンの凹部の厚さに基づいて、前記凹部の厚さが目標の厚さとなるように、前記インプリント処理のプロセス条件を制御する制御部と、
を有し、
前記計測感度は、前記凹凸パターンの形状の変化に対する前記凹凸パターンからの反射光の強度の変化又は位相の変化で定義され、
前記決定部は、複数の厚さの透過膜のそれぞれについて、前記凹凸パターンの形状の変化に対する前記凹凸パターンからの反射光の強度の変化又は位相の変化に基づいて前記計測感度を示す情報を取得し、当該情報から前記目標値を満たす透過膜の厚さを特定することを特徴とするインプリント装置。
【請求項8】
基板上の未硬化レジストを型により成形して硬化させ、前記基板上にレジストの凹凸パターンを形成するインプリント処理を行うインプリント処理部と、
請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載の決定方法によって決定された厚さの透過膜を有する基板上に前記インプリント処理部により形成されたレジストの凹凸パターンの凹部の厚さを計測する計測部と、
前記計測部で計測された前記凹凸パターンの凹部の厚さに基づいて、前記凹部の厚さが目標の厚さとなるように、前記インプリント処理のプロセス条件を制御する制御部と、
を有することを特徴とするインプリント装置。
【請求項9】
前記プロセス条件は、前記基板上に塗布する前記未硬化レジストの量及び前記未硬化レジストに前記型を押し付ける力の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項7又は8に記載のインプリント装置。
【請求項10】
請求項7乃至9のうちいずれか1項に記載のインプリント装置を用いてレジストの凹凸パターンを基板上に形成するステップと、
前記凹凸パターンを形成した基板を加工するステップと、
を有することを特徴とする物品の製造方法。
【請求項1】
インプリント装置のプロセス条件を決定するために用いる基板に形成すべき透過膜の厚さを決定する決定方法であって、
前記インプリント装置により前記透過膜を有する前記基板に形成されたレジストの凹凸パターンの凹部の厚さを計測する計測装置の計測感度の目標値を設定し、当該目標値を満たす透過膜の厚さを前記基板に形成すべき透過膜の厚さとして決定する決定ステップを有し、
前記計測感度は、前記凹凸パターンの形状の変化に対する前記凹凸パターンからの反射光の強度の変化又は位相の変化で定義され、
前記決定ステップでは、複数の厚さの透過膜のそれぞれについて、前記凹凸パターンの形状の変化に対する前記凹凸パターンからの反射光の強度の変化又は位相の変化に基づいて前記計測感度を示す情報を取得し、当該情報から前記目標値を満たす透過膜の厚さを特定することを特徴とする決定方法。
【請求項2】
前記決定ステップでは、前記複数の厚さの透過膜のそれぞれについて、前記凹凸パターンの形状の変化に対する前記凹凸パターンからの反射光の強度の変化又は位相の変化を前記計測装置で計測することを特徴とする請求項1に記載の決定方法。
【請求項3】
前記決定ステップでは、前記複数の厚さの透過膜のそれぞれについて、前記凹凸パターンの形状の変化に対する前記凹凸パターンからの反射光の強度の変化又は位相の変化をシミュレーションで求めることを特徴とする請求項1に記載の決定方法。
【請求項4】
インプリント装置のプロセス条件を決定するために用いる基板に形成すべき透過膜の厚さを決定する決定方法であって、
複数の厚さの透過膜のそれぞれについて前記基板に形成されたレジストの凹凸パターンの凹部の厚さを計測装置で計測し、前記複数の厚さの透過膜のうち前記計測装置で計測した前記凹部の厚さと前記凹部の厚さの設計値との差が許容範囲に収まる透過膜の厚さを前記基板に形成すべき透過膜の厚さとして決定する決定ステップを有することを特徴とする決定方法。
【請求項5】
前記計測装置は、前記凹凸パターンに複数の波長の光を一定の入射角度で斜入射させ、前記複数の波長のそれぞれについて前記凹凸パターンからの反射光の強度を計測し、前記複数の波長のそれぞれについて計測した強度と前記凹凸パターンの形状との関係を示す情報と前記計測の結果とから前記凹凸パターンの凹部の厚さを計測することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の決定方法。
【請求項6】
前記計測装置は、前記凹凸パターンに単一波長の光を複数の入射角度で斜入射させ、前記複数の入射角度のそれぞれについて前記凹凸パターンからの反射光の強度を計測し、前記複数の入射角度のそれぞれについて計測した前記反射光の強度と前記凹凸パターンの形状との関係を示す情報と前記計測の結果とから前記凹凸パターンの凹部の厚さを計測することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の決定方法。
【請求項7】
基板上の未硬化レジストを型により成形して硬化させ、前記基板上にレジストの凹凸パターンを形成するインプリント処理を行うインプリント処理部と、
前記インプリント処理のプロセス条件を決定するために用いる基板に形成すべき透過膜の厚さを決定する決定部であって、透過膜を有する基板上に前記インプリント処理部により形成されたレジストの凹凸パターンの凹部の厚さを計測する計測装置の計測感度の目標値を満たす透過膜の厚さを決定する決定部と、
前記決定部で決定された厚さの透過膜を有する基板に前記インプリント処理部により形成されたレジストの凹凸パターンの凹部の厚さを計測する計測部と、
前記計測部で計測された前記凹凸パターンの凹部の厚さに基づいて、前記凹部の厚さが目標の厚さとなるように、前記インプリント処理のプロセス条件を制御する制御部と、
を有し、
前記計測感度は、前記凹凸パターンの形状の変化に対する前記凹凸パターンからの反射光の強度の変化又は位相の変化で定義され、
前記決定部は、複数の厚さの透過膜のそれぞれについて、前記凹凸パターンの形状の変化に対する前記凹凸パターンからの反射光の強度の変化又は位相の変化に基づいて前記計測感度を示す情報を取得し、当該情報から前記目標値を満たす透過膜の厚さを特定することを特徴とするインプリント装置。
【請求項8】
基板上の未硬化レジストを型により成形して硬化させ、前記基板上にレジストの凹凸パターンを形成するインプリント処理を行うインプリント処理部と、
請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載の決定方法によって決定された厚さの透過膜を有する基板上に前記インプリント処理部により形成されたレジストの凹凸パターンの凹部の厚さを計測する計測部と、
前記計測部で計測された前記凹凸パターンの凹部の厚さに基づいて、前記凹部の厚さが目標の厚さとなるように、前記インプリント処理のプロセス条件を制御する制御部と、
を有することを特徴とするインプリント装置。
【請求項9】
前記プロセス条件は、前記基板上に塗布する前記未硬化レジストの量及び前記未硬化レジストに前記型を押し付ける力の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項7又は8に記載のインプリント装置。
【請求項10】
請求項7乃至9のうちいずれか1項に記載のインプリント装置を用いてレジストの凹凸パターンを基板上に形成するステップと、
前記凹凸パターンを形成した基板を加工するステップと、
を有することを特徴とする物品の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−129313(P2012−129313A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278398(P2010−278398)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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