説明

油圧シリンダ

【課題】長期に渡って異物の進入を防止する。
【解決手段】ピストンロッド20の外周部に配設したダストシールハウジング40の内周面に圧入され、ピストンロッド20の外周面に摺接する内周ダストシール部材50A,50Bと、シリンダヘッド30及びダストシールハウジング40の間に介在した調芯ダストシール部材60とを備え、ダストシールハウジング40は、シリンダヘッド30に対して軸方向及び径方向に移動可能となる隙間a,bを確保した状態でシリンダヘッド30に収容させてあり、調芯ダストシール部材60は、シリンダヘッド30及びダストシールハウジング40のそれぞれに圧入した状態で装着され、これらシリンダヘッド30及びダストシールハウジング40の間を密封する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧シリンダに関するもので、特に、シリンダヘッドとピストンロッドとの間のダストシール構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧シリンダには、シリンダチューブの開口端部に取り付けられたシリンダヘッドと、シリンダヘッドの中心孔を介してシリンダチューブの内部に往復移動可能に挿入されたピストンロッドとの間にダストシール部材が設けられている。ダストシール部材は、環状を成すもので、外周面を介して中心孔の内周面に圧入され、かつ内周側に設けたリップを介してピストンロッドの外周面に当接されている。ダストシール部材が設けられる位置は、シリンダヘッドにおいてオイルシール部材よりも外側となる部位である。
【0003】
この油圧シリンダでは、ピストンロッドが軸方向に沿って移動する際にダストシール部材のリップがピストンロッドの外周面に摺接された状態となる。従って、建設現場等の土埃や塵埃が多い環境下において油圧シリンダを動作させた場合にも、土埃や塵埃等の異物がピストンロッドとシリンダヘッドとの隙間から内部に進入する事態を防止することができる。
【0004】
ところで、油圧シリンダを動作させた場合には、ピストンロッドに曲げ荷重が作用するため、ピストンロッドが撓んだ状態となることがある。特に、建設機械に適用される油圧シリンダにあっては、例えば地面や地山に押し付けた状態のままバケットを動作させるべく油の供給圧力がリリーフ圧まで上昇される等、ピストンロッドに大きな曲げ荷重が加えられるため、ピストンロッドが撓む機会も少なくない。ピストンロッドが撓んだ場合には、シリンダヘッドの中心孔に圧入されたダストシール部材とピストンロッドの外周面との間隔が不均一となるため、間隔が大きい部分においてダストシール部材のリップがピストンロッドの外周面から離隔し、ダストシール部材を通過して内部に異物が進入する恐れがある。
【0005】
こうした問題を解決するため従来では、シリンダヘッドに対してダストシール部材が移動可能となるように配設したものが提供されている。具体的には、シリンダヘッドとダストシール部材との間にOリングを介在させ、Oリングの押圧力によってダストシール部材をピストンロッドの外周面に当接させる構造となっている。
【0006】
この油圧シリンダによれば、ピストンロッドが撓んだ場合にも、ダストシール部材がシリンダヘッドに対して適宜移動してピストンロッドに追従するため、ダストシール部材とピストンロッドの外周面との間隔が全周で均一となるように維持され、ダストシール部材のリップがピストンロッドの外周面から離隔する事態を防止することができるようになる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公昭59−10445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された油圧シリンダにあっては、シリンダヘッドに対してダストシール部材が移動した場合、シリンダヘッドとダストシール部材との間に介在されたOリングが、これらシリンダヘッドとダストシール部材とに圧接された状態で相対移動することになるため、Oリングが早期に摩損し、シリンダヘッドとダストシール部材との隙間から内部に異物が進入する恐れがある。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みて、長期に渡って異物の進入を防止することのできる油圧シリンダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る油圧シリンダは、中心孔を有し、シリンダチューブの開口端部に取り付けられたシリンダヘッドと、前記シリンダヘッドの中心孔を介して前記シリンダチューブの内部に往復移動可能に挿入されたピストンロッドと、前記ピストンロッドの外周部に配設したダストシールハウジングと、前記ダストシールハウジングの内周面に圧入され、前記ピストンロッドの外周面に摺接する第1のダストシール部材と、前記シリンダヘッド及び前記ダストシールハウジングの間に介在した第2のダストシール部材とを備え、前記ダストシールハウジングは、前記シリンダヘッドに対して軸方向及び径方向に移動可能となる隙間を確保した状態で前記シリンダヘッドに収容させてあり、前記第2のダストシール部材は、前記シリンダヘッド及び前記ダストシールハウジングのそれぞれに圧入した状態で装着され、これらシリンダヘッド及びダストシールハウジングの間を密封することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上述した油圧シリンダにおいて、前記第2のダストシール部材は、前記シリンダヘッドに圧入された第1の圧入部と、前記ダストシールハウジングに圧入された第2の圧入部と、これら第1の圧入部及び第2の圧入部の間を密封した状態で連結し、かつ弾性変形することによって前記シリンダヘッドに対する前記ダストシールハウジングの相対移動を許容する環状連結部とを有し、これら第1の圧入部、第2の圧入部及び環状連結部を一体に成形したことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上述した油圧シリンダにおいて、前記ダストシールハウジングは、基端部に外周フランジを有した円柱状を成し、前記シリンダヘッドは、前記外周フランジを収容するハウジング収容凹部を有したヘッド基部と、前記ヘッド基部との間に前記ダストシールハウジングの外周フランジを軸方向から挟むようにしたヘッド蓋部とを備え、前記第2のダストシール部材は、前記ダストシールハウジングの外周面と前記ヘッド蓋部の内周面との間に介在したことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上述した油圧シリンダにおいて、前記ヘッド基部には、前記ピストンロッドに摺接する内周オイルシール部材を配設したことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る油圧シリンダは、中心孔を有し、シリンダチューブの開口端部に取り付けられたシリンダヘッドと、前記シリンダヘッドの中心孔を介して前記シリンダチューブの内部に往復移動可能に挿入されたピストンロッドと、前記ピストンロッドの外周部に配設したダストシールハウジングと、前記ダストシールハウジングの内周面に圧入され、前記ピストンロッドの外周面に摺接する第1のダストシール部材と、前記シリンダヘッド及び前記ダストシールハウジングの間に介在した第2のダストシール部材とを備え、前記ダストシールハウジングは、基端部に外周フランジを有した円柱状を成し、前記シリンダヘッドに対して軸方向及び径方向に移動可能となる隙間を確保した状態で前記シリンダヘッドに収容させてあり、前記シリンダヘッドは、前記外周フランジを収容するハウジング収容凹部を有し、前記中心孔の内周面に前記ピストンロッドに摺接する内周オイルシール部材を備えたヘッド基部と、前記ヘッド基部との間に前記ダストシールハウジングの外周フランジを軸方向から挟むようにしたヘッド蓋部とを備え、前記第2のダストシール部材は、前記ヘッド蓋部の内周面に圧入された第1の圧入部と、前記ダストシールハウジングの外周面に圧入された第2の圧入部と、これら第1の圧入部及び第2の圧入部の間を密封した状態で連結し、かつ弾性変形することによって前記シリンダヘッドに対する前記ダストシールハウジングの相対移動を許容する環状連結部とを有し、これら第1の圧入部、第2の圧入部及び環状連結部を一体に成形したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、シリンダヘッドに対して軸方向及び径方向に移動可能となる隙間を確保した状態でダストシールハウジングをシリンダヘッドに収容させ、ピストンロッドの外周面に摺接する第1のダストシール部材をダストシールハウジングの内周面に圧入している。従って、ピストンロッドが撓んだ場合にも、第1のダストシール部材が圧入されたダストシールハウジングがシリンダヘッドに対して適宜移動してピストンロッドに追従するため、第1のダストシール部材とピストンロッドの外周面との間に隙間が生じる事態を防止することができるようになる。しかも、シリンダヘッドとダストシールハウジングとの間においては、それぞれに圧入した状態で第2のダストシール部材を介在させるようにしている。このため、シリンダヘッドに対してダストシールハウジングが移動した場合にも第2のダストシール部材がシリンダヘッドやダストシールハウジングに摺接されることがなく早期に摩損を来す恐れもないため、長期に渡って異物の進入を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の実施の形態である油圧シリンダの要部を示す断面側面図である。
【図2】図2は、図1に示した油圧シリンダの断面側面図である。
【図3】図3は、図1に示した油圧シリンダの要部分解斜視図である。
【図4】図4は、図1に示した油圧シリンダに適用する第2のダストシール部材を示す拡大半断面図である。
【図5】図5は、図1に示した油圧シリンダにおいてダストシールハウジングが移動した状態を示す要部拡大断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る油圧シリンダの好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
図1及び図2は、本発明の実施の形態である油圧シリンダを示したものである。ここで例示する油圧シリンダは、パワーショベルやホイールローダ等の建設機械においてアームやブームを動作させる際の油圧アクチュエータとして適用するもので、シリンダチューブ10を備えている。
【0019】
シリンダチューブ10は、図2に示すように、油圧シリンダの外殻を構成するもので、中心部にシリンダ孔11を有し、かつ開口端部を厚肉に形成した筒状を成している。シリンダ孔11は、横断面が円形の空所であり、シリンダチューブ10の基端部において閉塞する一方、シリンダチューブ10の先端部において開口している。シリンダ孔11の開口端部には、基端部よりもわずかに内径が大きな太孔部11aが設けてあり、シリンダ孔11と太孔部11aとの間に段部11bが形成してある。
【0020】
シリンダチューブ10のシリンダ孔11には、ピストンロッド20が配設してある。ピストンロッド20は、シリンダ孔11の内径よりも小さい外径を有した柱状部材であり、挿入側の端部にピストン21を備えている。ピストン21は、ピストンロッド20よりも太径、かつ軸方向長さの短い円柱状を成すもので、中心部に設けたロッド孔21aにピストンロッド20を装着した状態でピストンロッド20に固定してある。ピストン21の外周面には、シリンダチューブ10におけるシリンダ孔11の内周面に摺接するシールリング22が装着してあり、さらにシールリング22の両側となる部位にはバックアップリング23が配設してあり、シールリング22の内周にバックリング24が配設してある。尚、図中の符号25は、シールリング22の両側に配設したウエアリング、符号26はガードリングである。また、符号27は、ピストン21の内周面とピストンロッド20との間に介在させたOリング、符号28はOリング27の両側に配設したバックアップリングである。
【0021】
ピストンロッド20とシリンダチューブ10の開口端部との間には、シリンダヘッド30が配設してある。シリンダヘッド30は、シリンダチューブ10の開口端部に取り付けられ、中心孔311を介してピストンロッド20の往復移動を案内するものである。本実施の形態では、ヘッド基部310及びヘッド蓋部320を備えてシリンダヘッド30が構成してある。
【0022】
図1に示すように、ヘッド基部310は、中心部にピストンロッド20を挿通可能とする中心孔311を有し、基端部外周に取付フランジ312を有した円柱状部材である。このヘッド基部310には、基端面にハウジング収容凹部313が形成してある。ハウジング収容凹部313は、中心孔311の開口周縁部に設けた円柱状の凹所であり、中心孔311と同一の軸心上に形成してある。
【0023】
ヘッド蓋部320は、ヘッド基部310とほぼ同じ外径に形成した円板状部材である。このヘッド蓋部320には、ハウジング挿通孔321及びシール収容凹部322が設けてある。ハウジング挿通孔321は、ヘッド基部310の中心孔311よりも大きく、かつハウジング収容凹部313よりも小さい内径の孔である。シール収容凹部322は、ハウジング挿通孔321よりも大きい内径を有した円柱状の凹所であり、ハウジング挿通孔321と同一の軸心上に形成してある。
【0024】
これらヘッド基部310及びヘッド蓋部320は、まず、ヘッド基部310が取付フランジ312をシリンダチューブ10の開口端面に当接させた状態でシリンダ孔11の太孔部11aに挿入した状態に配置される。この状態から、ハウジング挿通孔321がハウジング収容凹部313に対向する向きでヘッド蓋部320を取付フランジ312の端面に重ね合わせ、図3に示すように、ヘッド蓋部320及び取付フランジ312のボルト挿通孔314,323を介してシリンダチューブ10の開口端部に取付ボルトBを締結することにより、ヘッド基部310及びヘッド蓋部320がシリンダチューブ10に共締めしてある。
【0025】
図1及び図2に示すように、シリンダヘッド30のヘッド基部310には、外周面に外周オイルシール部材330が配設してあるとともに、中心孔311の内周面に内周オイルシール部材331、バッファリング332、軸受ブッシュ333が配設してある。外周オイルシール部材330は、シリンダチューブ10に設けた太孔部11aの内周面に圧接することによってシリンダチューブ10とヘッド基部310との隙間から油が漏れるのを防止するものである。内周オイルシール部材331は、ピストンロッド20の外周面に圧接することによってヘッド基部310とピストンロッド20との隙間から油が漏れるのを防止するものである。バッファリング332は、ピストンロッド20の外周面に摺接することによってシリンダチューブ10の内部の圧力を断ち、高い油圧が内周オイルシール部材331に作用するのを防止するためのものである。軸受ブッシュ333は、ピストンロッド20の外周面に摺接して滑り軸受を構成するものである。
【0026】
ヘッド基部310とヘッド蓋部320との間には、ダストシールハウジング40が配設してある。ダストシールハウジング40は、中心部にロッド挿通孔41を有し、かつ基端部に外周フランジ42を有した円柱状部材である。このダストシールハウジング40は、円柱状部分をハウジング挿通孔321に挿通させた状態で、ヘッド基部310に設けたハウジング収容凹部313においてヘッド蓋部320との間に外周フランジ42を軸方向から挟むようにすることにより、シリンダヘッド30に収容させてある。ダストシールハウジング40の外周フランジ42は、ハウジング収容凹部313の軸方向長さよりも小さい板厚に形成し、かつハウジング収容凹部313の内径よりも小さい外径に形成してある。ダストシールハウジング40のロッド挿通孔41は、ピストンロッド20の外径よりも大きな内径に形成してある。すなわち、ダストシールハウジング40は、図1及び図5に示すように、ハウジング収容凹部313に対して軸方向に沿った隙間aが確保してあるとともに、径方向に沿った隙間bが確保してあり、これらの隙間a,bを限度として、シリンダヘッド30に対してピストンロッド20の軸方向及び径方向にそれぞれ移動することが可能である。
【0027】
ダストシールハウジング40には、ヘッド基部310から離反した端部に一対の内周ダストシール部材(第1のダストシール部材)50A,50Bが配設してあるとともに、円柱状部分の外周部に調芯ダストシール部材(第2のダストシール部材)60が配設してある。
【0028】
内周ダストシール部材50A,50Bは、それぞれ金属製の圧入環51A,51Bを備えるとともに、圧入環51A,51Bの内周面に合成樹脂製のリップ部52A,52Bを接着保持した環状部材である。これらの内周ダストシール部材50A,50Bは、ダストシールハウジング40に形成したシール収容孔43の内周面に個々の圧入環51A,51Bを介して圧入してあり、個々のリップ部52A,52Bがピストンロッド20の外周面に圧接された状態にある。図1からも明らかなように、本実施の形態では、ダストシールハウジング40の先端部側に単一のリップを有した内周ダストシール部材50Aを適用し、基端部側に2つのリップを有した内周ダストシール部材50Bを適用している。
【0029】
調芯ダストシール部材60は、図4に示すように、内周部に金属製の内部圧入環(第2の圧入部)61を備え、かつ外周部に金属製の外部圧入環(第1の圧入部)62を備えるとともに、これら内部圧入環61及び外部圧入環62の間に合成樹脂製の環状連結部63を有した環状部材である。内部圧入環61は、外部圧入環62に対して小径に形成してある。環状連結部63は、内部圧入環61と外部圧入環62との間に湾曲状の弾性変形部63aを構成した状態で内部圧入環61の外周面及び外部圧入環62の内周面にそれぞれ接着してある。より具体的に説明すると、環状連結部63は、内部圧入環61の一端部外周面から外周方向に向けてフランジ状に突出した後に内部圧入環61の他端部側に湾曲して内部圧入環61の外周部を覆い、さらに延在して外部圧入環62の内周面に至り、内部圧入環61と外部圧入環62との間に湾曲状の弾性変形部63aを構成している。環状連結部63によって連結した内部圧入環61及び外部圧入環62は、弾性変形部63aを変形させることで、相対的に変位することが可能である。この調芯ダストシール部材60は、図1に示すように、内部圧入環61をダストシールハウジング40の外周面に圧入し、かつ外部圧入環62をヘッド蓋部320に形成したシール収容凹部322の内周面に圧入した状態でダストシールハウジング40とヘッド蓋部320との間に介在している。
【0030】
上記のように構成した油圧シリンダでは、図2に示すように、シリンダチューブ10のシリンダ孔11がピストン21によってヘッド側圧力室11Hとボトム側圧力室11Bとに仕切られる。これらの圧力室11H,11Bに対して油を交互に供給すれば、シリンダチューブ10に対してピストンロッド20が往復移動し、例えば、建設機械においてバケットに所望の動作を実施させることができる。
【0031】
シリンダチューブ10に対してピストンロッド20が軸心に沿って往復移動している間においては、図5中の実線で示すように、ダストシールハウジング40に配設した一対の内周ダストシール部材50A,50Bのリップ部52A,52Bがそれぞれピストンロッド20の外周面に対して全周が摺接した状態に維持されるため、建設現場等の土埃や塵埃が多い環境下においても、これら土埃や塵埃等の異物がピストンロッド20とシリンダヘッド30との隙間から内部に進入する事態を防止することができる。
【0032】
一方、曲げ荷重が作用してピストンロッド20に撓みが発生した場合には、内周ダストシール部材50A,50Bのリップ部52A,52Bとピストンロッド20の外周面との間隔が不均一となる。しかしながら、上述の油圧シリンダによれば、内周ダストシール部材50A,50Bのリップ部52A,52Bとピストンロッド20の外周面との間隔が不均一になると、内周ダストシール部材50A,50Bのピストンロッド20に対する押圧力も不均一となり、図5中の二点鎖線で示すように、この不均一な押圧力が均一となるようにダストシールハウジング40がシリンダヘッド30に対して適宜移動する。これにより、ダストシールハウジング40のシール収容孔43に圧入させた一対の内周ダストシール部材50A,50Bがピストンロッド20の撓みに追従し、常にピストンロッド20の外周面に対してリップ部52A,52Bの全周が摺接した状態に維持されることになる。従って、土埃や塵埃等の異物がピストンロッド20とシリンダヘッド30との隙間から内部に進入する事態を防止することができる。
【0033】
しかも、シリンダヘッド30のヘッド蓋部320とダストシールハウジング40との間においては、調芯ダストシール部材60を介在させて密封しているため、ヘッド蓋部320とダストシールハウジング40との隙間から内部に異物が進入する恐れもない。さらに、調芯ダストシール部材60は、ヘッド蓋部320に対して外部圧入環62が圧入され、かつダストシールハウジング40に対して内部圧入環61が圧入された状態にあり、これら外部圧入環62と内部圧入環61との間において環状連結部63の弾性変形部63aが適宜変形することで、ヘッド蓋部320に対するダストシールハウジング40の相対移動を許容することができる。従って、ヘッド蓋部320に対するダストシールハウジング40の移動に伴っては、外部圧入環62及び内部圧入環61の圧入位置が変化することはなく、調芯ダストシール部材60に摩損を招来する恐れがないため、長期に渡って異物の進入を防止することが可能となる。
【0034】
尚、上述した実施の形態では、建設機械に適用される油圧シリンダを例示しているが、本発明は必ずしも建設機械に適用される油圧シリンダに限らない。また、上述した実施の形態では、ダストシールハウジング40に一対の内周ダストシール部材50A,50Bを配設しているが、内周ダストシール部材は必ずしも一対である必要はなく、唯一配設するようにしても良い。
【符号の説明】
【0035】
10 シリンダチューブ
11 シリンダ孔
20 ピストンロッド
21 ピストン
30 シリンダヘッド
310 ヘッド基部
311 中心孔
312 取付フランジ
313 ハウジング収容凹部
320 ヘッド蓋部
321 ハウジング挿通孔
322 シール収容凹部
330 外周オイルシール部材
331 内周オイルシール部材
332 バッファリング
333 軸受ブッシュ
40 ダストシールハウジング
41 ロッド挿通孔
42 外周フランジ
43 シール収容孔
50A,50B 内周ダストシール部材
60 調芯ダストシール部材
61 内部圧入環
62 外部圧入環
63 環状連結部
63a 弾性変形部
a,b 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心孔を有し、シリンダチューブの開口端部に取り付けられたシリンダヘッドと、
前記シリンダヘッドの中心孔を介して前記シリンダチューブの内部に往復移動可能に挿入されたピストンロッドと、
前記ピストンロッドの外周部に配設したダストシールハウジングと、
前記ダストシールハウジングの内周面に圧入され、前記ピストンロッドの外周面に摺接する第1のダストシール部材と、
前記シリンダヘッド及び前記ダストシールハウジングの間に介在した第2のダストシール部材と
を備え、
前記ダストシールハウジングは、前記シリンダヘッドに対して軸方向及び径方向に移動可能となる隙間を確保した状態で前記シリンダヘッドに収容させてあり、
前記第2のダストシール部材は、前記シリンダヘッド及び前記ダストシールハウジングのそれぞれに圧入した状態で装着され、これらシリンダヘッド及びダストシールハウジングの間を密封することを特徴とする油圧シリンダ。
【請求項2】
前記第2のダストシール部材は、前記シリンダヘッドに圧入された第1の圧入部と、前記ダストシールハウジングに圧入された第2の圧入部と、これら第1の圧入部及び第2の圧入部の間を密封した状態で連結し、かつ弾性変形することによって前記シリンダヘッドに対する前記ダストシールハウジングの相対移動を許容する環状連結部とを有し、これら第1の圧入部、第2の圧入部及び環状連結部を一体に成形したことを特徴とする請求項1に記載の油圧シリンダ。
【請求項3】
前記ダストシールハウジングは、基端部に外周フランジを有した円柱状を成し、
前記シリンダヘッドは、前記外周フランジを収容するハウジング収容凹部を有したヘッド基部と、前記ヘッド基部との間に前記ダストシールハウジングの外周フランジを軸方向から挟むようにしたヘッド蓋部とを備え、
前記第2のダストシール部材は、前記ダストシールハウジングの外周面と前記ヘッド蓋部の内周面との間に介在したことを特徴とする請求項1に記載の油圧シリンダ。
【請求項4】
前記ヘッド基部には、前記ピストンロッドに摺接する内周オイルシール部材を配設したことを特徴とする請求項3に記載の油圧シリンダ。
【請求項5】
中心孔を有し、シリンダチューブの開口端部に取り付けられたシリンダヘッドと、
前記シリンダヘッドの中心孔を介して前記シリンダチューブの内部に往復移動可能に挿入されたピストンロッドと、
前記ピストンロッドの外周部に配設したダストシールハウジングと、
前記ダストシールハウジングの内周面に圧入され、前記ピストンロッドの外周面に摺接する第1のダストシール部材と、
前記シリンダヘッド及び前記ダストシールハウジングの間に介在した第2のダストシール部材と
を備え、
前記ダストシールハウジングは、基端部に外周フランジを有した円柱状を成し、前記シリンダヘッドに対して軸方向及び径方向に移動可能となる隙間を確保した状態で前記シリンダヘッドに収容させてあり、
前記シリンダヘッドは、前記外周フランジを収容するハウジング収容凹部を有し、前記中心孔の内周面に前記ピストンロッドに摺接する内周オイルシール部材を備えたヘッド基部と、前記ヘッド基部との間に前記ダストシールハウジングの外周フランジを軸方向から挟むようにしたヘッド蓋部とを備え、
前記第2のダストシール部材は、前記ヘッド蓋部の内周面に圧入された第1の圧入部と、前記ダストシールハウジングの外周面に圧入された第2の圧入部と、これら第1の圧入部及び第2の圧入部の間を密封した状態で連結し、かつ弾性変形することによって前記シリンダヘッドに対する前記ダストシールハウジングの相対移動を許容する環状連結部とを有し、これら第1の圧入部、第2の圧入部及び環状連結部を一体に成形したことを特徴とする油圧シリンダ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−24302(P2013−24302A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158426(P2011−158426)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】