説明

油圧モータにおける冷却構造

【課題】 別途に冷却用装置を装備させずして減速機構周りを冷却する。
【解決手段】 油圧ポンプ1と油圧モータ2とを連通するメイン通路L1,L2中に作動油を補給するチャージポンプ3によってタンクT内の冷却された作動油を油圧モータ2における減速機構11周りに流入させる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、油圧モータにおける冷却構造の改良に関する。
【0002】
【従来技術とその課題】たとえば、ブルドーザにおいて、履帯を巻装させて走行用の駆動源とされる油圧モータにあっては、その発熱を阻止する必要があるとして、従来から、油圧モータにこの油圧モータを駆動するための油圧系統とは別に冷却用系統を接続して内部機構としての減速機構部分を冷却するとの提案がある。
【0003】しかしながら、この方策による場合には、多くの場合に油圧モータを駆動するための作動油とは別となる冷却用の油を貯溜するタンクの他に油圧ポンプやクーラなどを有するいわゆる冷却装置の別途の配備が必須になり、この油圧モータを車両に搭載するについて、スペース的に制約を受け易くする不利がある。
【0004】この発明は、上記した事情を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、冷却用系統を別途に接続させずして内部機構としての減速機構部分の冷却を可能にして、油圧モータの発熱を阻止するのに最適となる油圧モータにおける冷却構造を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成するために、この発明による油圧モータにおける冷却構造の構成を、基本的には、油圧ポンプと油圧モータとを連通するメイン通路中に作動油を補給するチャージポンプによってタンク内の冷却された作動油を油圧モータにおける減速機構周りに流入させて減速機構部分を冷却するとする。
【0006】そして、上記した基本的な構成において、より具体的には、チャージポンプの作動時に作動油が減速機構周りに常時流入されるように設定されてなるとし、あるいは、チャージポンプからの作動油が油圧モータの高速回転時に減速機構周りに流入されるように設定されてなるとする。
【0007】
【発明の実施の形態】以下に、図示した実施の形態に基づいて、この発明を説明するが、図1に示すように、この発明の一実施の形態による油圧モータの冷却構造は、油圧ポンプ1と油圧モータ2とを連通するメイン通路L1,L2中に作動油を補給するチャージポンプ3によってタンクT内の作動油を油圧モータ2を構成する減速機構11周りに常時流入させてこの減速機構11部分を冷却するとしている。
【0008】なお、チャージポンプ3は、油圧ポンプ1を駆動して油圧モータ2を回転させるときに、これに併せるように常時駆動するように設定されていて、このチャージポンプ3からの作動油は、タンクTに連通するドレン通路LdにあるクーラCで冷却されるとしている。
【0009】ところで、この図1に示す制御回路にあっては、油圧ポンプ1と油圧モータ2が二つのメイン通路L1,L2で連通されていわゆる閉回路を構成しており、メイン通路L1,L2に配在のメインバルブVが油圧ポンプ1の駆動に起因して相応の方向に切り換り油圧モータ2の回転方向を切り換えるとしている。
【0010】なお、メインバルブVと油圧モータ2の間におけるメイン通路L1,L2間にはそれぞれ相応して機能するリリーフバルブR1,R2が配在され、また、メインバルブVは、リリーフバルブRおよびドレン通路Ldを介してタンクTに連通している。
【0011】また、図示しないが、油圧ポンプ1および油圧モータ2は、それぞれドレン通路Ldに連通していて、いわゆる漏油をタンクTに回収し得るように設定されている。
【0012】つぎに、この制御回路にあっては、メイン通路L1,L2には切換バルブ4が接続されてなるとし、この切換バルブ4は、いわゆるオン作動時に油圧モータ2を構成する駆動機構12に連繋の斜板13の傾斜角を制御するように設定されている。
【0013】すなわち、切換バルブ4は、チャージポンプ3からの油圧が制御バルブV1のいわゆるオン作動で供給されるときに切り換ってオン作動状態になり、メイン通路L1,L2からの油を斜板13の傾斜角を制御する制御部13aに供給するように設定されている。
【0014】ちなみに、図示する実施の形態では、上記の制御部13aに油圧が供給されると、斜板13の傾斜角が緩くなり、駆動機構12が高速回転することになるように設定されている。
【0015】また、制御部13aに供給された油圧は、切換バルブ4のいわゆるオフ作動時に、同じく、ドレン通路Ldを介してタンクTに回収されるとしている。
【0016】なお、制御バルブV1は、図示しないが、駆動機構12を高速回転させるについて、操縦者が所定の操作をするであろうことに基づいて、いわゆるオン作動するように設定されている。
【0017】そして、この制御バルブV1がいわゆるオフ作動するときには、切換バルブ4に供給した油圧をドレン通路Ldに解放するとしている。
【0018】一方、この制御回路にあっては、チャージポンプ3からの油圧は、油圧モータ2を構成する減速機構11に供給されると共に、駆動機構12に連繋のブレーキ機構14にも供給されるとしている。
【0019】そして、この種の制御回路にあっては、チャージポンプ3は、言わば常時駆動しているであろうから、減速機構11には、このチャージポンプ3からのクーラCで冷却された作動油が常時供給されることになる。
【0020】また、ブレーキ機構14は、チャージポンプ3からの油圧の供給で、駆動機構12の駆動を規制しないいわゆるノンブレーキ状態に維持されるように設定されている。
【0021】ちなみに、チャージポンプ3から供給通路Lpを介して減速機構11に供給された作動油は、ドレン通路Ldを介してタンクTに回収され、また、図示しないが、ブレーキ機構14に供給された油圧も、ドレン通路Ldに解放されるように設定されている。
【0022】以上のように、この実施の形態にあっては、チャージポンプ3からの作動油が常時減速機構11周りに供給されるとしているが、具体的には、油圧モータ2において、以下のようにして、油の流入および流出を可能にしている。
【0023】すなわち、図2に示すように、油圧モータ2を構成する駆動機構12を軸芯部に有するモータケース15が冷却用の油の流入用ポート15aと流出用ポート15bとを有してなる。
【0024】流入用ポート15aは、一端が油圧モータ2を構成する出力体16の内周側に形成される内空部Aに開口し、他端がモータケース15に連設のバルブユニット部17に開穿されて前記した供給通路Lpに連通する流入路17aに連通してなるとしている。
【0025】そして、流出用ポート15bは、一端が上記の流入用ポート15aと同様に内空部Aに開口し、他端がバルブユニット部17に開穿されて前記したドレン通路Ldに連通する流出路17aに連通してなるとしている。
【0026】ちなみに、出力体16は、内周側の内空部Aに配在されている減速機構11たる遊星ギア機構を介して駆動機構12に連繋されながらベアリング18およびシール部材18aの配在下にモータケース15に支承されてなるとしている。
【0027】また、バルブユニット部17は、前記したメインバルブV,リリーフバルブR,R1,R2および切換バルブ4を一体に有している。
【0028】なお、前記した斜板13は、駆動機構12を構成しながら減速機構11に連繋する出力軸12aに介装されるように配在されており、また、前記したブレーキ機構14は、モータケース15に保持されて駆動機構12に連繋するように配在されている。
【0029】それゆえ、以上のように形成された油圧モータ2にあっては、これが油圧ポンプ1の駆動で切り換るメインバルブVの切換作動で正転方向あるいは逆転方向のいずれか一方の選択された方向に回転駆動されることになる。
【0030】その一方で、チャージポンプ3の同時の駆動でタンクTの冷却された作動油が供給通路Lp,流入路17aおよび流入用ポート15aを介して出力体16の内周側たる内空部Aに配在の減速機構11周りに流入されることになる。
【0031】そして、減速機構11周りに流入された作動油は、この減速機構11部分を冷却し、流出用ポート15b,流出路17bおよびドレン通路Ldを介し再度クーラCで冷却されてタンクTに戻されることになる。
【0032】ちなみに、図2中で流入路17aに配在されている絞りOは、チャージポンプ3からの作動油が急激に減速機構11周りに流入されることを阻止するように機能する。
【0033】なお、油圧モータ2は、操縦者による操作で制御バルブV1がオン状態にされることに起因する切換バルブ4のオン作動で、高圧状態にあるメイン通路L1(L2)からの油圧が制御部13aに供給され、斜板13の傾斜角が変更されることで、高速回転されることになる。
【0034】つぎに、図3に示す実施の形態では、チャージポンプ3からの作動油がブレーキ機構14に常時供給されるとする一方で、チャージポンプ3からの作動油が油圧モータ2の高速回転時に減速機構11周りに流入されるように設定されてなるとしている。
【0035】すなわち、操縦者による操作で制御バルブV1がオン状態にされ、これに起因して切換バルブ4がオン作動状態にされたときに、この切換バルブ4を介してチャージポンプ3からの作動油が油圧モータ2における減速機構11周りに流入されるとしている。
【0036】ちなみに、切換バルブ4のオン作動時には、斜板13の制御部13aに油圧が供給されて斜板13の傾斜角が変更され、油圧モータ2が高速回転することになるのはもちろんである。
【0037】また、図4に示すように、具体的には、油圧モータ2において、バルブユニット部17に形成の流入路17aに切換バルブ4および絞りOが配在されてなるとしている。
【0038】それゆえ、この実施の形態よる場合には、油圧モータ2が、すなわち、駆動機構12が高速回転して、その分、これに連繋する減速機構11が高速回転することで発現される減速機構11部分における発熱を効率良く阻止することが可能になる点で有利となる。
【0039】また、この実施の形態よる場合には、切換バルブ4の構成が変更されるのに加えて、この切換バルブ4を有するバルブユニット部17の構成が変更されることのみで、その実施化が可能になる利点がある。
【0040】
【発明の効果】以上のように、この発明にあっては、油圧モータを構成する減速機構部分をメイン通路に作動油を補給するためのチャージポンプから吐出される作動油を利用して冷却するから、油圧モータを駆動するための作動油とは別となる冷却用の油が不要になり、それゆえ、この冷却用の油を貯溜するタンクや油圧ポンプさらにはクーラなどを有するいわゆる冷却装置の別途の配備が不要になり、この油圧モータを車両に搭載するについて、スペース的に制約を受けなくなる点で有利となる。
【0041】また、この発明にあっては、油圧モータを構成するモータケースおよびこのモータケースに連設されるバルブユニット部に所要の通路などを形成することで足りるから、油圧モータの全体に亙るような大幅な設計変更を招来させずして、油圧モータのいたずらなコスト高を招来させない利点もある。
【0042】その結果、この発明によれば、冷却用系統を別途に接続させずして内部機構としての減速機構部分の冷却を可能にして、油圧モータの発熱を阻止し得る事になり、その汎用性の向上を期待するのに最適となる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施の形態による油圧モータの冷却構造を示す回路図である。
【図2】図1における油圧モータの具体例を示す断面図である。
【図3】他の実施の形態による油圧モータの冷却構造を図1と同様に示す図である。
【図4】図3における油圧モータのバルブユニット部分の具体例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
1 油圧ポンプ
2 油圧モータ
3 チャージポンプ
4 切換バルブ
11 減速機構
12 駆動機構
12a 駆動軸
13 斜板
13a 制御部
14 ブレーキ機構
15 モータケース
15a 流入用ポート
15b 流出用ポート
16 出力体
17 バルブユニット部
17a 流入路
17b 流出路
18 ベアリング
18a シール部材
A 内側空部
C クーラ
L1,L2 メイン通路
Ld ドレン通路
Lp 供給通路
R,R1,R2 リリーフバルブ
T タンク
V メインバルブ
v1 制御バルブ

【特許請求の範囲】
常時
【請求項1】 油圧ポンプと油圧モータとを連通するメイン通路中に作動油を補給するチャージポンプによってタンク内の冷却された作動油を油圧モータにおける減速機構周りに流入させて減速機構部分を冷却することを特徴とする油圧モータにおける冷却構造
【請求項2】 チャージポンプの作動時に作動油が減速機構周りに常時流入されるように設定されてなる請求項1に記載の油圧モータにおける冷却構造
【請求項3】 チャージポンプからの作動油が油圧モータの高速回転時に減速機構周りに流入されるように設定されてなる請求項1に記載の油圧モータにおける冷却構造

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2000−161195(P2000−161195A)
【公開日】平成12年6月13日(2000.6.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−334032
【出願日】平成10年11月25日(1998.11.25)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】