説明

油圧制御装置

【課題】3種のスプール弁の誤組付けを防ぐことのできる油圧制御装置を提供する。
【解決手段】3種のスプール弁αに、「3種のスプール弁α毎に異なるOリング装着部A、B、Cの径差」と「規制段差10に対する2つの挿入長L1、L2の挿入差」とを設けた。これにより、バルブボディ1の挿入穴βに対して、異なる種類のスプール弁αが誤組付けされた場合には、挿入穴βに対してスプール弁αが合致しないようにできる。この結果、スプール弁αが誤組付けされた場合には、挿入穴βに対してスプール弁αが合致しないため、3種のスプール弁αの誤組付けを確実に防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブボディに3種のスプール弁が組み付けられる油圧制御装置に関し、自動変速機の油圧制御装置に用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
〔従来技術〕
特許文献1には、スプール弁の外周壁(具体的には筒体を成すスリーブの外周壁)に、INポート(入力ポート)とOUTポート(出力ポート)を区画するための3つのOリングの付いた油圧制御用の電磁スプール弁が開示されている。
特許文献2には、バルブボディに複数(特許文献2の図面では5つ)の電磁スプール弁を組付けた油圧制御装置が開示されている。
【0003】
バルブボディに搭載される複数の電磁スプール弁は、電磁アクチュエータに対する配線の取り回しや、バルブボディ内における油路の取り回しの容易性から、一列に整列配置される。
一方、複数の電磁スプール弁は、変速機のクラッチの容量や、通電停止時の油圧の有無によって、通電状態に対する出力油圧の仕様が異なる。即ち、バルブボディには複数の種類の電磁スプール弁が搭載される。
【0004】
〔従来技術の問題点〕
共通のバルブボディに3種類のスプール弁を組付ける場合、誤組付けを防止する必要がある。
しかるに、油圧制御装置の小型化および軽量化の要求により、
(i)スプール弁が短く設けられるとともに、
(ii)バルブボディ内の油路(IN油路、OUT油路、ドレン油路)が、スプール弁の種類に関係なく同一ピッチで短く設けられる。
【0005】
このため、種類の異なるスプール弁であっても、外観上の差別化が困難となるため、誤組付けの可能性がある。
また、外観上の識別のために『印』を付けても、作業者がミスにより誤組付けをする懸念を完全に払拭することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−170603号公報
【特許文献2】特開2010−216552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、3種のスプール弁の誤組付けを確実に防ぐことのできる油圧制御装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〔請求項1の手段〕
3種のスプール弁の径差を変えただけでは、最小径のスプール弁が誤組付けされる可能性がある。
また、3種のスプール弁の挿入差を変えただけでは、最短のスプール弁が誤組付けされる可能性がある。
そこで、この請求項1では、3種のスプール弁に、
・3種のスプール弁毎に異なる「3つの外径部の径差」と、
・挿入穴に対する「2つの挿入長の挿入差」と、
を設けたことで、バルブボディの挿入穴に対して、異なる種類のスプール弁が誤組付けされた場合に、挿入穴に対してスプール弁が合致しないようにできる。
即ち、3種のスプール弁のいずれであっても誤組付けされた場合には、挿入穴に対してスプール弁が合致しないようにできる。
このように、バルブボディに対して、3種のスプール弁の誤組付けを確実に防ぐことができ、高い信頼性の油圧制御装置を提供できる。
【0009】
〔請求項2の手段〕
請求項2における「3つの外径部」は、Oリング装着部(シール用のOリングを装着するシール溝が形成される部分)であり、「3つの外径部の径差」は「3つのOリング装着部の径差」により設けられる。
【0010】
〔請求項3の手段〕
請求項3における「2つの挿入長」は、Oリングの装着位置(シール溝の位置)によって設定される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】バルブボディに装着されたスプール弁の要部断面図である。
【図2】バルブボディに形成された第1挿入穴に第1、第2、第3スプール弁を挿入した場合の説明図である。
【図3】バルブボディに形成された第2挿入穴に第1、第2、第3スプール弁を挿入した場合の説明図である。
【図4】バルブボディに形成された第3挿入穴に第1、第2、第3スプール弁を挿入した場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照して[発明を実施するための形態]を説明する。
油圧制御装置は、
・3種類のスプール弁α(それぞれ種類が異なる第1、第2、第3スプール弁α1、α2、α3)と、
・3種類のスプール弁α(それぞれ種類が異なる第1、第2、第3スプール弁α1、α2、α3)を独立挿入する3種類の挿入穴β(それぞれ種類の異なる第1、第2、第3挿入穴β1、β2、β3)が形成されたバルブボディ1とを具備する。
【0013】
第1、第2、第3スプール弁α1、α2、α3の各外周壁には、ドレンポート2、OUTポート3、INポート4を区画するための3つのOリングが装着される。
各Oリングは、第1、第2、第3スプール弁α1、α2、α3の各外周壁に設けられた外側、中間、奥側Oリング装着部A、B、C(外径部の一例)に装着される。
【0014】
外側、中間、奥側Oリング装着部A、B、Cは、それぞれの外径寸法が異なるものであり、外側Oリング装着部Aが大径、中間Oリング装着部Bが中径、奥側Oリング装着部Cが小径に設けられている。
【0015】
また、第1、第2、第3スプール弁α1、α2、α3には、Oリングを装着するシール溝5の軸方向の位置(具体的には、奥側Oリング装着部Cの先端位置)によって、第1、第2、第3挿入穴β1、β2、β3に対する「2つの挿入長L1、L2の挿入差」が設けられている。
そして、第1、第2、第3スプール弁α1、α2、α3に、「他種のスプール弁αとは異なる3つの外径部の径差(外側、中間、奥側Oリング装着部A、B、Cの径差)」と「挿入穴βに対する2つの挿入長L1、L2の挿入差」とを設けている。
これにより、挿入穴βに対してスプール弁αが誤組付けされた場合に、挿入穴βに対してスプール弁αが合致しなくなる。この結果、3種のスプール弁αの誤組付けを確実に防ぐことができる。
【実施例】
【0016】
以下において本発明を車両用自動変速機の油圧制御装置に適用した具体的な一例(実施例)を、図面を参照して説明する。以下の実施例は、具体的な一例を開示するものであって、本発明が実施例に限定されないことは言うまでもない。
なお、以下の実施例において、上記[発明を実施するための形態]と同一符号は、同一機能物を示すものである。
【0017】
自動変速機は、車両走行用の出力を発生するエンジンの出力回転比の変更、回転方向の変更、トルクコンバータのロックアップ、車種に応じて2輪と4輪の切替等を行うものであり、これらの切替を行うために複数の摩擦係合装置(油圧クラッチ、油圧ブレーキ等)を搭載するとともに、各摩擦係合装置の係脱を車両走行状態(乗員の運転状況を含む)に応じてコントロールする油圧制御装置を搭載する。
【0018】
各摩擦係合装置は、摩擦係合部(多板等)と、この摩擦係合部の係脱を行う油圧アクチュエータとから構成されるものであり、油圧制御装置は、各油圧アクチュエータの供給油圧を制御するために複数の電磁スプール弁を搭載する。
【0019】
電磁スプール弁は、
・出力油圧のコントロールを行うスプール弁αと、
・このスプール弁αを駆動する電磁アクチュエータ6(リニアソレノイド)と、
を軸方向に結合して構成される。
そして、スプール弁αをバルブボディ1に形成された挿入穴βに挿入し、バルブボディ1の外部に露出する電磁アクチュエータ6をバルブボディ1(油圧コントローラの本体)に締結することで、電磁スプール弁がバルブボディ1に搭載される。
【0020】
ここで、図1を参照してスプール弁αおよびバルブボディ1の要部を説明する。
スプール弁αは、バルブボディ1の挿入穴βに挿入される筒形状を成すスリーブ(スプール弁αにおいて外形形状を呈する部材)と、このスリーブ内において軸方向へ移動することで出力油圧を調整するスプール(図示しない)とで構成される。
【0021】
スプール弁αの外周壁(スリーブの外周壁)には、図1の左側から右側に向かって、
・オイルの排出を行うドレンポート2、
・調圧された油圧を出力するOUTポート3、
・油圧の供給を受けるINポート4、
が軸方向に隔てられて形成されている。
【0022】
スリーブ内のスプールは、スリーブ内における軸方向位置に応じて、ドレンポート2とOUTポート3の連通度合と、OUTポート3とINポート4の連通度合とを調節して、OUTポート3に調圧した油圧を発生させる。
【0023】
一方、バルブボディ1の内部には、
・オイルパンの内部と連通するドレン油路7、
・油圧アクチュエータと連通するOUT油路8
・油圧発生部(オイルポンプの出力側など)と連通するIN油路9、
が設けられている。
【0024】
バルブボディ1内に形成されたドレン油路7、OUT油路8、IN油路9の端部は、挿入穴βの内側で開口する。
具体的に、ドレン油路7、OUT油路8、IN油路9における挿入穴β内の開口は、図1の左側から右側に向かって、ドレン油路7、OUT油路8、IN油路9の順で、軸方向に隔てられて設けられている。
【0025】
そして、挿入穴βにスプール弁αを挿入配置することで、図1に示すように、
・スプール弁αのドレンポート2とバルブボディ1のドレン油路7が連通し、
・スプール弁αのOUTポート3とバルブボディ1のOUT油路8が連通し、
・スプール弁αのINポート4とバルブボディ1のIN油路9が連通する。
なお、スリーブの外周壁には、ドレンポート2、OUTポート3、INポート4のそれぞれに連通する環状溝が形成されており、スプール弁αの各ポートと、バルブボディ1の各油路との連通状態を確実にしている。
【0026】
また、スプール弁αの外周壁には、OUTポート3とINポート4を区画するための3つのOリングが装着されている。即ち、OUTポート3の軸方向の両側にOリングが配置されるとともに、INポート4の軸方向の両側にOリングが配置されるものであり、中間に配置される1つのOリングが共通で用いられる。このため、スプール弁αには、3つのOリングが用いられる。
【0027】
Oリングは、リング形状を呈したゴム部材であり、
・ドレンポート2とOUTポート3の間の外側Oリング装着部Aと、
・OUTポート3とINポート4の間の中間Oリング装着部Bと、
・INポート4の図1の右側の奥側Oリング装着部Cとに、それぞれ装着される。
【0028】
各Oリング装着部A、B、Cは、それぞれの外径寸法が異なるものであり、外側Oリング装着部Aが最も大径で、奥側Oリング装着部Cが最も小径に設けられている。
そして、各Oリング装着部A、B、Cには、全周に亘るシール溝5が設けられており、各シール溝5にOリングが装着される。
【0029】
ここで、油圧制御装置は、上述したように、複数の電磁スプール弁を搭載するものである。複数の電磁スプール弁は、電磁アクチュエータ6に対する配線の取り回しや、バルブボディ1内における油路の取り回しの容易性から、バルブボディ1に対して一列に整列配置される。
一方、複数の電磁スプール弁は、全てが同じ種類ではなく、複数の異なった種類が用いられる。
以下では、具体的な一例として、
(i)第1タイプの電磁スプール弁(例えば、出力油圧の大きいノーマリハイタイプ)、(ii)第2タイプの電磁スプール弁(例えば、出力油圧の小さいノーマリハイタイプ)、
(iii)第3タイプの電磁スプール弁(例えば、出力油圧の大きいノーマリロータイプ)、の3種類をバルブボディ1に組付ける例を説明する。
【0030】
このように、共通のバルブボディ1に3種類の電磁スプール弁を組付ける場合、誤組付けを防止する必要がある。
そこで、この実施例では、3種のスプール弁αに、
・3種のスプール弁α毎に異なる「3つの外径部の径差(各Oリング装着部A、B、Cの径差)」と、
・挿入穴βに対する「2つの挿入長L1、L2の挿入差」と、
を設けることで、誤組付けされた場合に、挿入穴βに対してスプール弁αが合致しないように設けている。
【0031】
「3つの外径部の径差(各Oリング装着部A、B、Cの径差)」および「2つの挿入長L1、L2の挿入差」の具体例を以下において説明する。
なお、以下では、
(i)第1タイプのスプール弁αを、第1スプール弁α1と称し、
(ii)第2タイプのスプール弁αを、第2スプール弁α2と称し、
(iii)第3タイプのスプール弁αを、第3スプール弁α3と称して説明する。
【0032】
また、以下では、
(i)第1スプール弁α1に合致する挿入穴βを、第1挿入穴β1と称し、
(ii)第2スプール弁α2に合致する挿入穴βを、第2挿入穴β2と称し、
(iii)第3スプール弁α3に合致する挿入穴βを、第3挿入穴β3と称して説明する。
【0033】
油圧制御装置の小型化および軽量化の要求により、
(i)第1、第2、第3スプール弁α1、α2、α3の軸長は、いずれも短く設けられるとともに、
(ii)挿入穴βに開口するバルブボディ1内のIN油路9、OUT油路8、ドレン油路7は、種類に関係なく同配列で、且つ同一の短いピッチで設けられる。
【0034】
上記「3つの外径部の径差(各Oリング装着部A、B、Cの径差)」の具体例を説明する。
この実施例では、
(i)外側Oリング装着部Aを、異なる径別に、小径外側Oリング装着部A1、中径外側Oリング装着部A2、大径外側Oリング装着部A3に設け、
(ii)中間Oリング装着部Bを、異なる径別に、小径中間Oリング装着部B1、中径中間Oリング装着部B2、大径中間Oリング装着部B3に設け、
(iii)奥側Oリング装着部Cを、異なる径別に、小径奥側Oリング装着部C1、中径奥側Oリング装着部C2に設けている。
即ち、外側、中間、奥側Oリング装着部A、B、Cに付した符号の数字は、数字が大きい方が径も大きいものである。
【0035】
そして、この実施例では、
(i)第1スプール弁α1に、中径外側Oリング装着部A2、中径中間Oリング装着部B2、中径奥側Oリング装着部C2を設け、
(ii)第2スプール弁α2に、小径外側Oリング装着部A1、小径中間Oリング装着部B1、中径奥側Oリング装着部C2を設け、
(iii)第3スプール弁α3に、大径外側Oリング装着部A3、大径中間Oリング装着部B3、小径奥側Oリング装着部C1を設けるものである。
【0036】
一方、各挿入穴β1、β2、β3は、対応する各スプール弁α1、α2、α3のそれぞれに合致するように形成されるものであり、各挿入穴β1、β2、β3のそれぞれには、3つのOリングが当接する3つのOリング当接筒面(外側Oリング当接筒面X、中間Oリング当接筒面Y、奥側Oリング当接筒面Z)が設けられている。
【0037】
具体的に、第1挿入穴β1における3つのOリング当接筒面X、Y、Zは、第1スプール弁α1の中径外側Oリング装着部A2、中径中間Oリング装着部B2、中径奥側Oリング装着部C2に対して、所定クリアランス(Oリングによるシール隙間)を隔てて対向するものである。
即ち、第1挿入穴β1における3つのOリング当接筒面X、Y、Zの内径寸法は、ほぼ中径外側Oリング装着部A2、中径中間Oリング装着部B2、中径奥側Oリング装着部C2と同じ大きさに設けられている。
【0038】
同様に、第2挿入穴β2における3つのOリング当接筒面X、Y、Zは、第2スプール弁α2の小径外側Oリング装着部A1、小径中間Oリング装着部B1、中径奥側Oリング装着部C2に対して、所定クリアランス(Oリングによるシール隙間)を隔てて対向するものである。
即ち、第2挿入穴β2における3つのOリング当接筒面X、Y、Zの内径寸法は、ほぼ小径外側Oリング装着部A1、小径中間Oリング装着部B1、中径奥側Oリング装着部C2と同じ大きさに設けられている。
【0039】
さらに、第3挿入穴β3における3つのOリング当接筒面X、Y、Zは、第3スプール弁α3の大径外側Oリング装着部A3、大径中間Oリング装着部B3、小径奥側Oリング装着部C1に対して、所定クリアランス(Oリングによるシール隙間)を隔てて対向するものである。
即ち、第3挿入穴β3における3つのOリング当接筒面X、Y、Zの内径寸法は、ほぼ大径外側Oリング装着部A3、大径中間Oリング装着部B3、小径奥側Oリング装着部C1と同じ大きさに設けられている。
【0040】
なお、この実施例における各Oリング装着部A、B、Cの径寸法は、上記の如く8種類であり、3種のスプール弁αに対して8種類のOリングが用いられるものである。
ここで、外側Oリング装着部A、中間Oリング装着部B、奥側Oリング装着部Cのそれぞれの「最小径差」は、各Oリングを挿入穴βの内面に圧縮挿入するための「テーパ面(Oリングの圧縮案内面)」の「角度(テーパ角)と長さ」の関係により幾何学的に決定されるものである。
【0041】
次に、上記「2つの挿入長L1、L2の挿入差」を説明する。
第1挿入穴β1の奥部には、第1スプール弁α1の中径奥側Oリング装着部C2が挿入可能であるが、第2スプール弁α2を挿入すると、第2スプール弁α2の中径奥側Oリング装着部C2が途中でぶつかり、中径奥側Oリング装着部C2の完全挿入を不能にする規制段差10が設けられている。
【0042】
具体的に、
・第1スプール弁α1における電磁アクチュエータ6から中径奥側Oリング装着部C2の先端までの長さを第2挿入長L2、
・第2スプール弁α2における電磁アクチュエータ6から中径奥側Oリング装着部C2の先端までの長さを第1挿入長L1とした場合、
L1>L2
の関係に設けられている。
【0043】
上記「2つの挿入長L1、L2」は、Oリングの装着位置(即ち、シール溝5の軸方向の位置)によって設定される。
具体的には、第2スプール弁α2の中径奥側Oリング装着部C2に装着されるOリングの位置を、第1スプール弁α1の中径奥側Oリング装着部C2に装着されるOリングの位置に比較して、図1右側(奥方)にずらすことで、「2つの挿入長L1、L2」の設定を行っている。
なお、第1、第2挿入長L1、L2に付した符号の数字は、数字が小さい方が長いものである。
【0044】
(第1挿入穴β1に対する組付け例)
第1挿入穴β1に第1スプール弁α1を挿入する「第1組付け例」を、図2(a)を参照して説明する。
第1挿入穴β1に第1スプール弁α1を挿入する場合は、第1挿入穴β1に第1スプール弁α1を完全挿入でき、電磁アクチュエータ6をバルブボディ1に締結することができる。
【0045】
第1挿入穴β1に第2スプール弁α2を挿入する「第2組付け例」を、図2(b)を参照して説明する。
第1挿入穴β1に第2スプール弁α2を挿入する場合は、第2スプール弁α2の中径奥側Oリング装着部C2の先端が、バルブボディ1側に設けた規制段差10にぶつかり(図中、丸で囲った部位参照)、第1挿入穴β1に第2スプール弁α2を完全挿入できない。即ち、「挿入差」により完全挿入できない。このようにして、第1挿入穴β1に対して第2スプール弁α2を誤組付けできない。
【0046】
第1挿入穴β1に第3スプール弁α3を挿入する「第3組付け例」を、図2(c)を参照して説明する。
第1挿入穴β1に第3スプール弁α3を挿入する場合は、第3スプール弁α3の大径中間Oリング装着部B3の先端が、第1挿入穴β1の途中にぶつかり(図中、丸で囲った部位参照)、第1挿入穴β1に第3スプール弁α3を完全挿入できない。即ち、「径差」により完全挿入できない。このようにして、第1挿入穴β1に対して第3スプール弁α3を誤組付けできない。
【0047】
(第2挿入穴β2に対する組付け例)
第2挿入穴β2に第1スプール弁α1を挿入する「第4組付け例」を、図3(a)を参照して説明する。
第2挿入穴β2に第1スプール弁α1を挿入する場合は、第1スプール弁α1の中径中間Oリング装着部B2の先端が、第2挿入穴β2の途中にぶつかり(図中、丸で囲った部位参照)、第2挿入穴β2に第1スプール弁α1を完全挿入できない。即ち、「径差」により完全挿入できない。このようにして、第2挿入穴β2に対して第1スプール弁α1を誤組付けできない。
【0048】
第2挿入穴β2に第2スプール弁α2を挿入する「第5組付け例」を、図3(b)を参照して説明する。
第2挿入穴β2に第2スプール弁α2を挿入する場合は、第2挿入穴β2に第2スプール弁α2を完全挿入でき、電磁アクチュエータ6をバルブボディ1に締結することができる。
【0049】
第2挿入穴β2に第3スプール弁α3を挿入する「第6組付け例」を、図3(c)を参照して説明する。
第2挿入穴β2に第3スプール弁α3を挿入する場合は、第3スプール弁α3の大径中間Oリング装着部B3の先端が、第2挿入穴β2の途中にぶつかり(図中、丸で囲った部位参照)、第2挿入穴β2に第3スプール弁α3を完全挿入できない。即ち、「径差」により完全挿入できない。このようにして、第2挿入穴β2に対して第3スプール弁α3を誤組付けできない。
【0050】
(第3挿入穴β3に対する組付け例)
第3挿入穴β3に第1スプール弁α1を挿入する「第7組付け例」を、図4(a)を参照して説明する。
第3挿入穴β3に第1スプール弁α1を挿入する場合は、第1スプール弁α1の中径奥側Oリング装着部C2の先端が、第3挿入穴β3の途中にぶつかり(図中、丸で囲った部位参照)、第3挿入穴β3に第1スプール弁α1を完全挿入できない。即ち、「径差」により完全挿入できない。このようにして、第3挿入穴β3に対して第1スプール弁α1を誤組付けできない。
【0051】
第3挿入穴β3に第2スプール弁α2を挿入する「第8組付け例」を、図4(b)を参照して説明する。
第3挿入穴β3に第2スプール弁α2を挿入する場合は、第2スプール弁α2の中径奥側Oリング装着部C2の先端が、第3挿入穴β3の途中にぶつかり(図中、丸で囲った部位参照)、第3挿入穴β3に第2スプール弁α2を完全挿入できない。即ち、「径差」により完全挿入できない。このようにして、第3挿入穴β3に対して第2スプール弁α2を誤組付けできない。
【0052】
第3挿入穴β3に第3スプール弁α3を挿入する「第9組付け例」を、図4(c)を参照して説明する。
第3挿入穴β3に第3スプール弁α3を挿入する場合は、第3挿入穴β3に第3スプール弁α3を完全挿入でき、電磁アクチュエータ6をバルブボディ1に締結することができる。
【0053】
(実施例の効果)
上記の第1〜第9組付け例の関係を、次の表に示す。
【表1】

【0054】
上述したように、3種のスプール弁αに、
・3種のスプール弁α毎に異なる「3つの外径部の径差(各Oリング装着部A、B、Cの径差)」と、
・規制段差10に対する「2つの挿入長L1、L2の挿入差」と、
を設けたことで、
上記表1に示すように、誤組付けされた場合には挿入穴βに対してスプール弁αが合致しない。このため、バルブボディ1に対して、3種のスプール弁αの誤組付けを確実に防ぐことができ、高い信頼性の油圧制御装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
上記の実施例では、「3つの外径部の径差」のそれぞれを「Oリング装着部A、B、Cの径差」で設ける例を示したが、Oリングが装着されない外周径(例えば、ドレンポート2の電磁アクチュエータ6側の大径部)を用いて径差を設けても良い。
【0056】
上記の実施例では、「2つの挿入長L1、L2」を奥側Oリング装着部Cに設ける例を示したが、他の部位で「2つの挿入長L1、L2」を設定しても良い。即ち、上記の実施例では、奥側Oリング装着部Cと規制段差10のぶつかる部位で「挿入差」を設けたが、他の部位でぶつかるようにして「挿入差」を設けても良い。
【0057】
上記の実施例では、スプール弁αの駆動手段の一例として電磁アクチュエータ6(リニアソレノイド)を用いる例を示したが、他の電動アクチュエータ(ピエゾアクチュエータ等)によってスプール弁αをダイレクトに駆動するものであっても良いし、パイロット油圧(スプールの端部の油圧)等によりスプール弁αを間接的に駆動するものであっても良い。即ち、スプール弁αの駆動手段は限定されるものではなく、他の駆動手段を用いても良い。
【符号の説明】
【0058】
1 バルブボディ
5 シール溝(Oリングの装着位置)
α スプール弁
α1 第1スプール弁(3種のスプール弁の1種)
α2 第2スプール弁(3種のスプール弁の1種)
α3 第3スプール弁(3種のスプール弁の1種)
β 挿入穴
β1 第1スプール弁に適合する挿入穴
β2 第2スプール弁に適合する挿入穴
β3 第3スプール弁に適合する挿入穴
A 外側Oリング装着部(3つの外径部の1つ)
B 中間Oリング装着部(3つの外径部の1つ)
C 奥側Oリング装着部(3つの外径部の1つ)
L1 第1挿入長(2つの挿入長の一方)
L2 第2挿入長(2つの挿入長の他方)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3種のスプール弁(α)と、この3種のスプール弁(α)のそれぞれを挿入する3種の挿入穴(β)が形成されたバルブボディ(1)とを具備する油圧制御装置において、
前記3種のスプール弁(α)には、
前記3種のスプール弁(α)毎に異なる3つの外径部(A、B、C)の径差と、
前記挿入穴(β)に対する2つの挿入長(L1、L2)の挿入差と、
が設けられることを特徴とする油圧制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の油圧制御装置において、
前記3つの外径部(A、B、C)は、シール用のOリングが装着されるOリング装着部であることを特徴とする油圧制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の油圧制御装置において、
前記2つの挿入長(L1、L2)は、前記Oリングの装着位置によって設定されることを特徴とする油圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−189105(P2012−189105A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51601(P2011−51601)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】