説明

油圧動作システムの制御方法

【課題】リリーフ弁の設定圧力を補正し、速度(流量)に影響することなく、油圧回路内の圧力を所定圧力以内に維持可能な、油圧動作システムの制御方法を提供する。
【解決手段】油圧駆動源5により、作動油を貯留する油圧タンク6から、作動油を吸入して配管を通じて方向切換弁3、油圧シリンダ2に送り込み、油圧タンク6に戻す回路構成とする。
油圧駆動源5は、油圧ポンプ8と回転数可変型ポンプモータ9とから構成される。
予め油圧シリンダ2の動作速度を、回転数可変型ポンプモータ9の回転数を制御することで、設定するようにし、リリーフ弁4の設定圧力を、対応した値に補正しておくことで、油圧シリンダ2を所定の圧力内で動作できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばダイカストマシンや射出成形機等に用いて好適な油圧動作システムの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に油圧動作システムにおける油圧回路は、リリーフ弁を付属しており、アクチュエータに発生する最大圧力をリリーフ弁の設定圧力で制御し、アクチュエータおよび管路の破損を防止している。
【0003】
例えば特許文献1では、トグル式型締装置の型締シリンダを精密に制御し、射出圧縮成形を行うことが可能な油圧回路が記載されている。
かかる特許文献1では、実質的には、図3で示すような油圧回路aを用いて型締動作を行っている。この油圧回路aは、定回転モータbを用いて、電磁比例式流量弁vにより、油圧シリンダcの動作速度を制御している。余った作動油はリリーフ弁rよりタンクtに戻すようにしている。そして、油圧シリンダcが前進限または後退限(シリンダエンド、又は外部装置による制限)に達すると、ポンプpから吐出された作動油は、全量、リリーフ弁rを通過してタンクtに戻る。よって、リリーフ弁rを通過する通過量は一定であるので、設定圧力は油圧シリンダcの動作速度によらず一定となる。
【0004】
【特許文献1】特開平6−285936号公報
【0005】
ところで、近年では、いわゆる省エネを目的とし、回転数可変型のモータにより油圧ポンプの回転数を制御して、必要流量の作動油を吐出するようにした装置が用いられてきている。
また、ダイカストマシンまたは射出成形機のアクチュエータの中で、押圧動作や中子・部分加圧動作は金型の条件により異なるので、速度調整や圧力調整をユーザーにて任意設定するようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような油圧回路aにおけるリリーフ弁rは、設定圧力が同じ場合、オーバーライド特性により、リリーフ弁rに流れる流量が増加すると、油圧回路aにおける圧力も上昇してしまう問題がある。
従って、かかる問題により、モータによって油圧ポンプの回転数を制御して速度を遅くした場合と早くした場合とで、各アクチュエータが負荷で停止したときまたは動作限において、押出力や中子入・戻力や部分加圧力が異なってしまい、作動不良・製品不良の要因となるおそれがある。
本発明は、以上のような背景から提案されたものであって、比例電磁式リリーフ弁を用い、回転数可変のポンプモータの回転数に応じて、リリーフ弁の設定圧力を補正し、速度(流量)に影響することなく、一定のリリーフ圧力が得られるようにした、油圧動作システムの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、アクチュエータ(2)と方向切換弁(3)と圧力設定可能なリリーフ弁(4)と油圧ポンプ(8)と回転数可変型ポンプモータ(9)とから構成される油圧動作システムの制御方法であって、アクチュエータ(2)の動作速度を、回転数可変型ポンプモータ(9)の回転速度を調整することにより制御すると共に、リリーフ弁(4)の設定圧力は回転数可変型ポンプモータ(9)の回転速度によって補正された値であることを特徴とする。
【0008】
これにより、常時、油圧回路(1)を所定圧力以内に抑えることができ、管路の設定値以上の高圧による破損防止に寄与することができ、作動不良、製品不良の発生を低減させることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、油圧動作システムは、ダイカストマシンまたは射出成形機に備えられたものであることを特徴とする。
【0010】
これにより、常時、アクチュエータ(2)を所定圧力以内で作動させることができ、ダイカストマシンまたは射出成形機を、好適に動作させることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明では、アクチュエータ(2)は、押出装置あるいは中子装置に備えられた油圧シリンダであることを特徴とする。
【0012】
これにより、押出装置や中子装置による押圧動作や中子・部分加圧動作のための油圧シリンダ(2)の速度調整をユーザーにて任意設定しても、油圧回路(1)を所定圧力以内に抑えることができる。
【0013】
上記の本発明の説明において、カッコ()内の記号又は数字は、以下に示す実施の形態との対応を示すために添付される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、油圧回路内、及びアクチュエータは、常に、所定圧力内に抑えることができ、管路の高圧化の回避により、管路の破損防止につながり、しかも、作動不良、製品不良の低減に貢献することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1に、本発明にかかる油圧動作システムの制御方法を実施するための、油圧回路1の一実施形態を示す。
油圧ユニットは、例えばダイカストマシン、射出成形機等に用いられる油圧動作システムにおけるアクチュエータである油圧シリンダ2と、方向切換弁3とリリーフ弁4と油圧駆動源5とを具備する油圧回路1と、図示は省略するが、油圧回路1に対し、種々の制御指令を出力したり、予め設定データを格納したり、動作プログラムを保持している制御装置とを備えている。なお、アクチュエータは油圧モータであってもよい。
【0016】
先ず、油圧回路1について説明すると、油圧回路1は、油圧駆動源5により、作動油を貯留する油圧タンク6から、作動油を吸入して配管を通じて方向切換弁3、油圧シリンダ2に送り込み、油圧タンク6に戻す回路構成としている。この際、油圧駆動源5から吐出される作動油の圧力は、リリーフ弁4により、所定の設定圧力を超えないように制御している。なお、符号7は圧力計を示す。
【0017】
方向切換弁3には、ここでは例えばシングルソレノイド形の4ポート2位置形電磁弁を用いることができる。
【0018】
リリーフ弁4は、油圧回路1に生じる最高圧力を所定の圧力以内に抑制するために用いられ、アクチュエータとしての油圧シリンダ2にかかる油圧を所定圧力以内に制限する機能を有している。ここでは、比例式電磁弁が用いられている。この場合、リリーフ弁4は、詳細は図示しないが、後述する油圧駆動源5を構成するポンプモータの回転数に対応する圧力を設定するようにしている。
【0019】
油圧駆動源5は、油圧ポンプ8と回転数可変型ポンプモータ9とから構成されている。油圧ポンプ8には一回転当たりの吐出量が一定のものが好適である。周知の構成のものでよい。回転数可変型ポンプモータ9は、図示は省略するが、ドライバ回路により、回転数を可変可能としたモータを使用する。
【0020】
以上のように構成される油圧回路1は、装置全体の制御装置からの操作指令により、油圧駆動源5を駆動し、作動油を貯留する油圧タンク6から、作動油を吸入して配管を通じて方向切換弁3、油圧シリンダ2に送り込み、油圧シリンダ2の直動動作を実行するようにしている。
【0021】
また、制御装置には、予めアクチュエータである油圧シリンダ2の動作速度を、回転数可変型ポンプモータ9の回転数を制御することで、設定するプログラムが組み込まれている。これにより、作業者自らが、種々の作業条件に対応した油圧シリンダ2の動作速度を設定できる。例えば、設定された動作速度を実現できるモータの回転数を油圧シリンダの内径とポンプ一回転当たりの吐出量より算出する。
さらに、制御装置には、回転数可変型ポンプモータ9の回転数が変わっても、リリーフ弁4のリリーフ圧力が所定圧力となるように、リリーフ弁4の設定圧力を補正するようにプログラムが組み込まれている。
【0022】
具体的には、回転数可変型ポンプモータ9の最小使用回転数のときに、油圧シリンダ2が正規圧力Pになるようにリリーフ弁4の開度を制御して圧力設定を行うようにしている。なお、ここでいう正規圧力Pとは、動作上、油圧回路1を構成する管路、構成要素が支障のない、許容圧力(最大圧力)を意味する。すなわち、正規圧力Pを基準に配管サイズや油圧ホースの型式が選定される。
例えば、図2に示すように、回転数が300rpmを最小の使用回転数として、この回転数において圧力が正規圧力Pになるようにリリーフ弁4の開度を調整するようにしている。この場合、図示しているように、回転数可変型ポンプモータ9の回転数を2000rpmに上げると、リリーフ弁4のオーバーライド特性により、油圧シリンダ2にかかるリリーフ油圧が上昇(P+ΔP)するため、リリーフ油圧(P+ΔP)が正規圧力Pとなるように、上昇した分(ΔP)、リリーフ弁4に対し、対応した補正指令値(P−ΔP)を出し、リリーフ弁4の開度制御を行うようにしている。
【0023】
次に、以上のように構成される油圧ユニットについて、動作を説明する。
先ず、装置全体の制御装置に、使用される金型等の条件により、押出動作、中子・部分加圧動作は異なることから、それぞれの油圧シリンダ2の適切な速度で動作できるように速度調整する設定を行う。
かかる状態で、装置を稼動するべく、制御装置の主電源ONで、前進指令が出されると、油圧駆動源5における回転数可変型ポンプモータ9が駆動し油圧ポンプ8が作動する。
この際、方向切換弁3は、ノーマルポジションにあり、これにより作動油は、油圧ポンプ8により油圧タンク6から吸入して、配管を通じて方向切換弁3から、油圧シリンダ2に送り込まれる。
【0024】
油圧シリンダ2は、図1で示す位置から前進位置まで達すると、油圧回路1内の油圧が上昇する。かかる油圧がリリーフ弁4により設定された圧力に達すると、油圧が設定圧力を超えないように、作動油はリリーフ弁4を通じて油圧タンク6側に戻される。
【0025】
逆に、油圧シリンダ2に対し、後進指令が出されると、方向切換弁3は、ノーマルポジションからオフセットポジションに切換わり、油圧シリンダ2は、前進位置から後退位置まで移動する。後退位置まで達すると、油圧回路1内の油圧が上昇する。
油圧がリリーフ弁4により設定された圧力に達すると、油圧が設定圧力を超えないように、作動油はリリーフ弁4を通じて油圧タンク6側に戻される。
また、油圧シリンダ2がストローク途中で停止し外部機構を押す場合も、設定された圧力で押すことができる。
【0026】
ところで、以上の動作は、制御装置によって、回転数可変型ポンプモータ9の回転数を制御することにより、設定した油圧シリンダ2の動作速度でなされるため、回転数に応じて、油圧回路1の油圧がリリーフ弁4のオーバーライド特性により設定圧力から変動するが、リリーフ弁4に対し、対応した補正指令値を出し、リリーフ弁4の開度制御を行って、リリーフ弁4によるリリーフ圧力が、設定圧力となるように補正されるため、油圧シリンダ2の動作速度の増減にかかわらず、油圧回路1内、すなわち、油圧シリンダ2を設定圧力内で動作させることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る油圧動作システムの制御方法の実施するための油圧回路の一実施形態を示す系統図である。
【図2】回転数可変型ポンプモータの回転数と油圧回路における圧力との関係の一例を示すグラフである。
【図3】従来における油圧回路の一例を示す系統図である。
【符号の説明】
【0028】
1 油圧回路
2 油圧シリンダ(アクチュエータ)
3 方向切換弁
4 リリーフ弁
5 油圧駆動源
6 油圧タンク
7 圧力計
8 油圧ポンプ
9 回転数可変型ポンプモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータ(2)と方向切換弁(3)と圧力設定可能なリリーフ弁(4)と油圧ポンプ(8)と回転数可変型ポンプモータ(9)とから構成される油圧動作システムの制御方法であって、
前記アクチュエータ(2)の動作速度を、前記回転数可変型ポンプモータ(9)の回転速度を調整することにより制御すると共に、前記リリーフ弁(4)の設定圧力は前記回転数可変型ポンプモータ(9)の回転速度によって補正された値であることを特徴とする油圧動作システムの制御方法。
【請求項2】
油圧動作システムは、ダイカストマシンまたは射出成形機に備えられたものであることを特徴とする請求項1に記載の油圧動作システムの制御方法。
【請求項3】
前記アクチュエータ(2)は、押出装置あるいは中子装置に備えられた油圧シリンダであることを特徴とする請求項2に記載の油圧動作システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−101446(P2010−101446A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274464(P2008−274464)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【Fターム(参考)】