説明

油圧式無段変速装置

【課題】第一プランジャ・第一斜板を有する油圧ポンプ部と、第二プランジャ・第二斜板を有する油圧モータ部を、入力軸に被嵌したシリンダブロックを挟んで入力軸の軸方向前後に配置し、第一プランジャと第二プランジャとの間に一対のメイン油路を設けた油圧式無段変速装置では、リリーフ弁の開弁・閉弁の際の動作が不安定であり、オーバーライド圧力も大きい、という問題があった。
【解決手段】メイン油路41・42のチャージ回路52に接続するリリーフ弁50では、スリーブ80内に一次圧室91と二次圧室92とを備え、一次圧室91を弁体部87との間で画成する第一摺動部88と、二次圧室92を弁体部87との間で画成する第二摺動部89とを備えた上で、第一摺動部88にダンパ室94を設ける一方、第二摺動部89には一次圧室91から二次圧室92に流入する作動油に対する受圧部99を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業機械や車両等に用いられ、各種の産業分野で広く利用可能な油圧式無段変速装置に関し、特に、該油圧式無段変速装置に適用されるリリーフ弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、第一プランジャと該第一プランジャが当接する第一斜板とを有する油圧ポンプ部と、第二プランジャと該第二プランジャが当接する第二斜板とを有する油圧モータ部を、入力軸に被嵌したシリンダブロックを挟んで入力軸の軸方向前後に配置し、該シリンダブロックには、前記第一プランジャと第二プランジャとの間を連通する一対のメイン油路を設けた油圧式無段変速装置において、該油圧式無段変速装置に使用するリリーフ弁に関する技術が公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
該技術では、リリーフ弁は前記第一斜板の傾斜角変更用のサーボ機構に接続され、該サーボ機構からリリーフ弁を介して排出される作動油を、前記第一斜板の冷却に使用するようにしており、該リリーフ弁は、弁体、バネ部材、及び係止部材を、油圧式無段変速装置のハウジングの貫通孔に順に収容して構成される。そして、このうちのバネ部材の一端が係止部材に固定される一方、バネ部材の他端には弁体が保持されており、該バネ部材の弾性力によって、前記弁体が貫通孔途中の段差部に付勢状態で当接されて貫通孔が閉塞され、これにより、リリーフ弁が閉弁されるようにしている。
【0004】
このようなリリーフ弁は、前記メイン油路のチャージ回路にも接続でき、サーボ機構に接続する場合と同様に、チャージ回路からリリーフ弁を介して排出される作動油を、前記第一斜板の冷却に使用することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−128469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記技術のような構造のリリーフ弁では、前述した閉弁の際や、一次側油路の作動油の圧力が上昇して弁体がバネ部材の弾性力に抗して段差部から離間して開弁する際に、一次側油路に油圧変動等の外乱が生じると、自励振動を起こして弁なりや異常脈動等の不安定な動作が発生し、リリーフ動作の信頼性が低下する、という問題があった。
【0007】
更に、前記リリーフ弁では、最小流量から最大流量までの間に増大する圧力、いわゆるオーバーライド圧力が小さく設定できずに、リリーフ弁の圧力損失が大きいため、油圧回路全体のシステム効率が悪い、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
すなわち、請求項1においては、第一プランジャと該第一プランジャが当接する第一斜板とを有する油圧ポンプ部と、第二プランジャと該第二プランジャが当接する第二斜板とを有する油圧モータ部を、入力軸に被嵌したシリンダブロックを挟んで入力軸の軸方向前後に配置し、該シリンダブロックには、前記第一プランジャと第二プランジャとの間を連通する一対のメイン油路を設けた油圧式無段変速装置において、該メイン油路はチャージ回路を備え、該チャージ回路にはリリーフ弁を接続し、該リリーフ弁のスリーブ内には、前記チャージ回路からの一次側油路に入口ポートを介して連通する一次圧室と、油溜まりへの二次側油路に排出ポートを介して連通する二次圧室とを備え、前記リリーフ弁の弁体には、前記スリーブの弁座部に接離して前記一次圧室と二次圧室との間を断接する弁体部と、弁体の一端側にあって前記一次圧室を弁体部との間に画成する第一摺動部と、弁体の他端側にあって前記二次圧室を弁体部との間に画成する第二摺動部とを備え、該第二摺動部と前記第一摺動部は、前記スリーブ内に摺動自在に嵌合すると共に、前記第一摺動部を挟んで一次圧室と反対側のスリーブ内には、一次側油路に細孔を介して連通するダンパ室を設ける一方、前記第二摺動部には、前記一次圧室から二次圧室に流入してきた作動油の圧力を受けるための受圧部を形成したものである。
請求項2においては、前記第二摺動部内に、前記弁体部が弁座部に着座する閉弁方向に弁体を付勢するためのバネ部材を収容するバネ室を形成し、該バネ室を、前記二次圧室から排出ポートまでの連絡油路の少なくとも一部に使用するものである。
請求項3においては、前記第一斜板を可動式に構成して可動斜板とし、該可動斜板を後面から支持する斜板ホルダ内に前記二次側油路を形成し、該二次側油路は、前記排出ポートからの作動油が流れ込む流入油穴と、該流入油穴から前記可動斜板の所定位置まで作動油を流下させるようにして導く分岐油路とから成るものである。
請求項4においては、前記第一斜板を可動式に構成して可動斜板とし、該可動斜板を後面から支持する斜板ホルダを、更に後面からハウジングで支持し、該ハウジングには、後方ほど小径となる前後二段の大径孔と小径孔とから成る貫通孔を穿孔する一方、前記スリーブには、前記二次圧室を内部に有する大径部と、該大径部よりも外径が小さくて前記一次圧室を内部に有する小径部とを前後に形成することにより、該小径部を先にして、前記リリーフ弁をハウジングの前面側から前記貫通孔内に挿嵌可能に構成するものである。
請求項5においては、前記一次側油路と二次側油路はリリーフ弁の同一軸心上に配置するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、請求項1により、ダンパ室内の作動油が、細孔を介して一次側油路に出入りすることにより、弁体の移動に対する抵抗として作用し、開弁時または閉弁時における弁体の急速移動を抑制することができ、自励振動による弁なりや異常脈動等の不安定な動作を抑制し、リリーフ動作の信頼性を向上できる。更に、開弁してから閉弁するまでの間、二次圧室に流入してきた作動油により、受圧部を介しても弁体に揚力を付与することができ、大流量域における弁体の開弁動作を容易にしてオーバーライド圧力を小さくし、リリーフ弁の圧力損失を小さくして油圧回路全体のシステム効率が向上できる。
請求項2により、二次圧室から排出ポートまでの連絡油路のための部品点数を減らすことができ、リリーフ弁のコンパクト化や部品コストの低減を図ることができる。
請求項3により、排出ポートからの作動油を、分岐油路を介して、可動斜板の複数の適正箇所に同時に供給することができると共に、排出ポートからの排出圧が低くても、作動油をその自重だけで供給することができ、可動斜板の冷却効率の大幅な向上が図れる。
請求項4により、ハウジング後面において、貫通孔からハウジングの外周面までの距離、つまりハウジングの外周角部の肉厚を厚くすることができ、該外周角部が外部からの負荷や衝撃等によって破損したり変形するのを防止して、部品寿命の向上が図れると共に、リリーフ弁のハウジングへの取り付け範囲が拡大して、油圧式無段変速装置の設計自由度を高めることができる。
請求項5により、作動油の流れ方向の変化を最小に抑制することができ、リリーフ弁の圧力損失を小さくして油圧回路全体のシステム効率が向上できる。更に、リリーフ弁を直状の外部配管の途中部にも収容することができ、リリーフ弁の取り付け位置の範囲が拡大して、油圧式無段変速装置の設計自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係わる油圧式無段変速装置の全体構成を示す前方斜視図である。
【図2】同じく側面一部断面図である。
【図3】同じく側面図である。
【図4】同じく後面図である。
【図5】リリーフ弁の側面断面図である。
【図6】斜板ホルダの後方斜視図である。
【図7】同じく正面図である。
【図8】チェックリリーフ弁の側面断面図である。
【図9】同じくチェックリリーフ弁の作動状況を示す側面断面図であって、図9(a)は逆止弁体の開弁状態を示す側面断面図、図9(b)はリリーフ弁体の開弁状態を示す側面断面図である。
【図10】傾倒アクチュエータの側面図である。
【図11】油圧式無段変速装置の油圧回路図である。
【図12】リリーフ弁の別形態の取り付け構成を示す図であって、図12(a)はリリーフ弁の取り付け部の側面断面図、図12(b)は同じく油圧回路図である。
【図13】傾倒アクチュエータの別形態を示す側面図である。
【図14】スプール弁の別形態を示す側面図である。
【図15】チェックリリーフ弁の代替構成を示す油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
なお、図中の矢印Fで示す方向を油圧式無段変速装置1の前方向とし、以下で述べる各部材の位置や方向等はこの前方向を基準とするものである。
【0012】
まず、本発明に関わる油圧式無段変速装置1の全体構成について、図1乃至図4により説明する。
該油圧式無段変速装置1は、図示せぬエンジンに連結される入力軸2上に配置されると共に、該入力軸2の前端側、すなわち入力軸2への入力側と同じ側には、図示せぬ出力軸に連結される出力ケース3が配置されている。そして、前記入力軸2上の前後略中央には、シリンダブロック4がスプラインにて相対回転不能に被嵌され、該シリンダブロック4を挟んで入力軸2の入力側には、油圧モータ部6が配置される一方、シリンダブロック4を挟んで入力側と反対側には、油圧ポンプ部5が配置されている。
【0013】
該油圧ポンプ部5には、前記入力軸2の後端に係合されるハウジング7と、該ハウジング7の前部にボルトによって締結固定される斜板ホルダ8と、該斜板ホルダ8の前端部の略半円状の凹部8aにメタル軸受9を介して支軸10cが摺動可能に支持される第一斜板10と、該第一斜板10に摺動自在に設けるシュー11と、該シュー11に球体自在継手により連結する第一プランジャ12と、該第一プランジャ12を前方のシリンダブロック4に後方から出入自在に配置する第一プランジャ孔13とが備えられる。
【0014】
そして、前記第一プランジャ12の後端側は、第一プランジャ孔13内に収容するバネ部材14の弾性力により、シリンダブロック4の後面から前記第一斜板10に向かって突出して当接されており、これにより、シリンダブロック4が回転すると、第一斜板10の斜板面10bから受ける押動力により、第一プランジャ12が往復動できるようにしている。
【0015】
更に、前記入力軸2と斜板ホルダ8との間には、入力軸2に被嵌するスリーブ16と、該スリーブ16外周のローラ軸受17と、ラジアル及びスラスト荷重用のコロ軸受18とが介設され、該コロ軸受18の抜け止め防止用のナット19が、入力軸2の後端に設けられている。そして、該入力軸2上の前記シリンダブロック4には、第一プランジャ12と同数の第一スプール弁20が設けられている。
【0016】
前記油圧モータ部6には、前記出力ケース3と、該出力ケース3にボルト21によって締結固定されて傾斜角が一定の第二斜板22と、該第二斜板22に摺動自在に設けるシュー23と、該シュー23に球体自在継手により連結する第二プランジャ24と、該第二プランジャ24を前記シリンダブロック4に前方から出入自在に配置する第二プランジャ孔25とが備えられる。
【0017】
そして、前記第二プランジャ24の前端側は、第二プランジャ孔25内に収容するバネ部材26の弾性力によって、シリンダブロック4の前面から前記第二斜板22に向かって突出して当接されており、これにより、第二プランジャ24の往復動によって、傾斜状態にある第二斜板22に対して回転力を付与できるようにしている。そして、該第二斜板22、該第二斜板22に締結固定した前記出力ケース3、及び図示せぬ出力軸とは、一体化した状態で、前記入力軸2上を回転自在に配置されている。
【0018】
更に、前記入力軸2と第二斜板22との間にも、ローラ軸受28と、ラジアル及びスラスト荷重用のコロ軸受29とが介設され、該コロ軸受29の抜け止め防止用のナット30が、入力軸2の前端に設けられている。そして、該入力軸2上の前記シリンダブロック4には、油圧ポンプ部5と同様に、第二プランジャ24と同数の第二スプール弁31が設けられている。
【0019】
前記シリンダブロック4には、前記第一プランジャ孔13と第二プランジャ孔25が、シリンダブロック4の回転中心の同一円周上に交互に形成されると共に、該シリンダブロック4で前記入力軸2が挿入される軸孔4aには、後から順に、輪溝形状の第一油路41と第二油路42が形成されている。
【0020】
更に、シリンダブロック4には、前記第一スプール弁20と第二スプール弁31をそれぞれ収容する第一弁孔32と第二弁孔33も、シリンダブロック4の回転中心の同一円周上で交互に形成されている。
【0021】
加えて、前記第一油路41と第二油路42のいずれも、第一スプール弁20の第一弁孔32を介して第一プランジャ孔13に連通されると共に、第二スプール弁31の第二弁孔33を介して第二プランジャ孔25に連通されている。
【0022】
一方、第一スプール弁20から後方に突出したガイド軸110の先部には、円盤状の係合部111が形成され、該円盤状の係合部111は、前記シリンダブロック4の後面から突出され、前記斜板ホルダ8の先端に連結固定したリング状の第一スプールカム34のカム溝34aに係合されている。
【0023】
これにより、前記シリンダブロック4が一回転すると、カム溝34aに沿って係合部111が移動し、第一スプール弁20が第一弁孔32内を往復摺動して第一油路41または第二油路42に対する開閉動作を行い、第一プランジャ孔13が第一油路41または第二油路42と交互に連通されるようにしている。
【0024】
同様に、第二スプール弁31から前方に突出したガイド軸112の先部には、円盤状の係合部113が形成され、該係合部113は、前記シリンダブロック4の前面から突出され、前記第二斜板22の後端に連結固定したリング状の第二スプールカム35のカム溝35aに係合されている。
【0025】
これにより、前記シリンダブロック4が一回転すると、カム溝35aに沿って係合部113が移動し、第二スプール弁31が第二弁孔33内を往復摺動して第一油路41または第二油路42に対する開閉動作を行い、第二プランジャ孔25が第一油路41または第二油路42と交互に連通されるようにしている。
【0026】
以上のような構成において、油圧式無段変速装置1では、スプールカム34・35に従って往復摺動するスプール弁20・31により、第一プランジャ孔13と第二プランジャ孔25が、第一油路41と第二油路42から成る閉回路を介して、所定の回転位置で流体接続されており、入力軸2の回転に伴い、第一斜板10の斜板面10bから受ける押動力によって第一プランジャ12が往復動すると、流体接続されている第二プランジャ24も往復動し、該第二プランジャ24から傾斜状態の第二斜板22に対して所定の回転力が付与されるのである。
【0027】
更に、この油圧式無段変速装置1では、第一プランジャ12と該第一プランジャ12が当接する第一斜板10とを有する油圧ポンプ部5と、第二プランジャ24と該第二プランジャ24が当接する第二斜板22とを有する油圧モータ部6を、入力軸2に被嵌したシリンダブロック4を挟んで入力軸2の軸方向前後に配置し、該シリンダブロック4には、前記第一プランジャ12と第二プランジャ24との間を連通する一対のメイン油路である第一油路41と第二油路42を設けているので、油圧式無段変速装置1への入力軸2と図示せぬ出力軸を内外二重構造にする等して、油圧式無段変速装置1の軸方向長さを短縮することができ、油圧式無段変速装置1の小型化・軽量化が可能となっている。
【0028】
次に、以上のような全体構成から成る油圧式無段変速装置1の油圧回路構成について、図2乃至図4、図10、図11により説明する。
油圧回路には、チャージ回路52と斜板角制御機構53とが設けられる。
【0029】
このうちのチャージ回路52においては、前記入力軸2の軸中心部に、作動油のチャージ油路43が形成され、該チャージ油路43と前記第一油路41との間には、第一チェックリリーフ弁36が介設され、チャージ油路43と前記第二油路42との間には第二チェックリリーフ弁37が介設される。一方、このチャージ油路43は、外部配管40を介してチャージポンプ38の吐出側に連通される。これにより、チャージポンプ38からの作動油が、外部配管40、チャージ油路43を介して、前記チェックリリーフ弁36・37に供給される。
【0030】
そして、該チェックリリーフ弁36・37は、後で詳述するように、前記第一油路41・第二油路42の作動油が不足して圧力が低下すると、該第一油路41・第二油路42に前記チャージ油路43から作動油を補給するチェック弁として機能し、逆に、前記第一油路41・第二油路42の作動油の圧力が過剰に増加すると、該第一油路41・第二油路42からチャージ油路43に作動油を排出するリリーフ弁として機能する。
【0031】
更に、該チャージ油路43に連通する前記外部配管40の途中部には、外部配管86と内部油路48を介して、リリーフ弁50の一次側が接続されると共に、該リリーフ弁50の二次側は、後で詳述するリリーフ油路49を介して、前記第一斜板10の後面に形成された油溜まり51に連通されている。これにより、前記チャージポンプ38からチャージ油路43内に供給される作動油の圧力を、所定の設定圧に保持できるようにしている。
【0032】
加えて、前記チャージ油路43の半径方向には複数の潤滑油路44・45が分岐され、該潤滑油路44・45の外端は、油圧ポンプ部5の回転部分の油溜まり46と、油圧モータ部6の回転部分の油溜まり47に連通されている。これにより、チャージ油路43内の余分な作動油を、油圧式無段変速装置1の潤滑油として供給することができる。
【0033】
また、前記斜板角制御機構53について説明する。
前記第一斜板10の傾斜角は、傾倒アクチュエータ54によって変更することができる。該傾倒アクチュエータ54は、前記ハウジング7の下部に前後方向に形成されたシリンダ7a、該シリンダ7aの前部開口を閉塞するシリンダ蓋104、前記シリンダ7a内に前後摺動可能に内挿されるピストン55とから構成される。
【0034】
該ピストン55は、軸心上のロッド部55bと、該ロッド部55bの後端に形成される拡径部55aとから成り、このうちのロッド部55bは、前記シリンダ蓋104を摺動可能に貫通して前方に突出され、その前端部には、ピストンピン105により、係止フック56が固設される。
【0035】
該係止フック56には、前記第一斜板10の下部から前方に延出された係止部10aが係合されており、前記ピストン55の前後方向への往復摺動動作によって、第一斜板10が、図示せぬ傾転中心軸線を中心にして前後に傾倒されるようにしている。
【0036】
一方、前記拡径部55aの前端面とシリンダ7aとによって前側油室57が構成され、拡径部55aの後端面とシリンダ7aとによって後側油室58が構成されており、これらの油室57・58は、それぞれ油路59・60を介して、2ポート3位置式の傾倒切替弁61に接続される。
【0037】
該傾倒切替弁61には、往復摺動可能なスプール61aが備えられ、該スプール61aの一端側に設けた底部油室61bは、パイロット油路62を介してサーボ油路64に連通され、該サーボ油路64は、外部配管63を介してサーボポンプ39の吐出側に連通されている。そして、前記パイロット油路62の途中部には比例調整弁65が介設されており、底部油室61b内の作動油の圧力を調整可能としている。
【0038】
一方、前記スプール61aの他端側に設けたバネ部材66は、フィードバックリンク67を介して前記第一斜板10に連係されており、該第一斜板10の位置に応じてもスプール61aの位置が切り替わるようにしている。ここで、前記比例調整弁65のソレノイドは、ケーブル77を介してコントローラ75に接続され、該コントローラ75には、変速操作レバー76が接続されており、該変速操作レバー76を操作すると、操作量に応じてコントローラ75から前記ソレノイドに変速信号が送信される。
【0039】
更に、前記傾倒切替弁61には、パイロット油圧を供給するパイロットポート68とドレンポート69が形成され、このうちのパイロットポート68は前記サーボ油路64に連通される一方、ドレンポート69は油路70を介して油溜まり71に連通されている。
【0040】
従って、前記変速操作レバー76を操作して、変速信号をコントローラ75から比例調整弁65に送信し、前記傾倒切替弁61を位置72・74のいずれかに設定すると、前記油室57・58のうちの一方にはサーボ油路64から作動油が流入し、他方からは油溜まり71に作動油が排出され、これにより、前記油室57・58内の作動油に差圧が生じてピストン55が前後方向に往復摺動し、第一斜板10が前後に傾倒する。
【0041】
更に、前記傾倒切替弁61を位置73に設定すると、前記油室57・58のいずれも、サーボ油路64と油溜まり71との連通が遮断され、これにより、ピストン55の前後摺動が停止して第一斜板10が所定の傾斜角に保持される。つまり、第一斜板10の傾斜角を無段階で変更した上で、所定の傾斜角に設定することができる。
【0042】
以上のような構成において、前記比例調整弁65を介して傾倒アクチュエータ54を動作させ、第一斜板10の傾斜角を無段階で変化させると、第一プランジャ孔13内を往復動する第一プランジャ12の振幅量が変化し、該往復動に伴って給排される作動油量が変化する。
【0043】
すると、該第一プランジャ孔13と前記第一油路41または第二油路42を介して接続される第二プランジャ孔25に給排される作動油量も変化して、第二プランジャ24の振幅量も変化する。これにより、該第二プランジャ24に当接している第二斜板22の回転数と回転方向が可変となり、該第二斜板22と一体回転する図示せぬ出力軸より、無段の変速動力を出力することができる。
【0044】
次に、前記リリーフ弁50について、図3乃至図5、図11、図12により説明する。
図3乃至図5、図11に示すように、該リリーフ弁50は、リリーフ油路49に連通すると共に外周にスプラインを有するバネ保持部材79と、該バネ保持部材79の後端に連結されるスリーブ80と、該スリーブ80内に摺動可能に挿入される弁体81と、該弁体81と前記バネ保持部材79との間に介装されるバネ部材82とから構成される。
【0045】
そして、これらバネ保持部材79、スリーブ80、弁体81、及びバネ部材82は、同一軸心上に配置され、前記ハウジング7の上部に前後方向に穿孔された貫通孔78内に挿入される。
【0046】
該貫通孔78には、前後に、大径孔78aと、該大径孔78aよりも内径が小さい小径孔78bとが形成されると共に、該大径孔78aと小径孔78bとの間には、最も内径が小さいストッパ78cが形成される。
【0047】
そして、前記大径孔78aの前端部には、前記バネ保持部材79が内挿されてスプライン嵌合されている。該バネ保持部材79の軸心上には、排出孔83が設けられ、該排出孔83には、前後に、排出ポート83aと、該排出ポート83aよりも内径が大きいバネ受け孔83bとが形成される。
【0048】
また、前記スリーブ80には、前後に、大径部84と、該大径部84よりも外径が小さい小径部85とが形成される。このうちの大径部84は、前記貫通孔78の大径孔78aの中央部から後端部にかけて挿嵌されると共に、大径部84には、軸心孔84aが穿孔され、該軸心孔84aは、その前端が開口されて前記バネ保持部材79の排出孔83に接続されている。
【0049】
前記小径部85には、前記軸心孔84aよりも内径の小さい軸心孔85aが穿孔され、その後端は、閉塞されて軸心上に細孔93が形成される。そして、この軸心孔85aと前記軸心孔84aとの間の内側段付き部の角部には、閉弁時に前記弁体81が着座するための弁座部80aが設けられている。
【0050】
更に、小径部85の外径は、前記小径孔78bの内径よりも小さく設定されており、該小径部85と小径孔78bとの間の隙間空間に、一次側油路である前記内部油路48が形成されて、前記外部配管86と接続されている。そして、該内部油路48には、前記ストッパ78c近傍の小径部85で同一外周上に設けた複数の入口ポート85bが開口されている。
【0051】
また、前記弁体81には、前後略中央に、後方に閉じた円錐形状の弁体部87が、前記弁座部80aと接離可能に形成され、該弁体部87の後端側には、ステム部90を介して、前記スリーブ80の軸心孔85a内面に摺動可能に嵌合する第一摺動部88が形成される。
【0052】
該第一摺動部88により、スリーブ80の軸心孔85aの内部は、前記弁体部87との間の一次圧室91と、スリーブ80後端との間のダンパ室94とに画成される。そして、該一次圧室91とダンパ室94は、それぞれ、前記入口ポート85bと細孔93を介して、前記内部油路48に連通される。
【0053】
前記弁体部87の前端側には、前記弁体部87の前端と略一致する外径を有する連結部100を介して、前記スリーブ80の軸心孔84a内面に摺動可能に嵌合する第二摺動部89が形成される。そして、該第二摺動部89により、スリーブ80の軸心孔84aの内部には、前記弁体部87との間に二次圧室92が画成される。該二次圧室92の前壁は、前記第二摺動部89と連結部100との段差部にあるリング状の受圧部99によって構成されている。
【0054】
前記第二摺動部89の内部には、前記バネ保持部材79のバネ受け孔83bと内径が略一致するバネ室95が同一軸心上に形成され、該バネ室95と前記バネ受け孔83bとの間に、バネ部材82が圧縮状態で介装されており、該バネ部材82の弾性力により、前記弁体部87が弁座部80aに着座する閉弁方向、本実施例では後方に弁体81を常時付勢するようにしている。
【0055】
更に、このバネ室95の後端には、該バネ室95よりも内径の小さい縦孔96が同一軸心上に穿孔され、該縦孔96の後部から半径方向には、放射状に複数の横孔97が穿孔され、該横孔97は前記二次圧室92内に開口されている。
【0056】
これにより、該二次圧室92は、横孔97、縦孔96、バネ室95、及びバネ受け孔83b等から成る連絡油路98を介して、前記排出ポート83aに連通され、該排出ポート83aは、前述の如く、前記リリーフ油路49を介して油溜まり51に連通されている。そして、該リリーフ油路49と前記内部油路48とは、リリーフ弁50の同一軸心上に配置されている。
【0057】
以上のような構成において、チャージ油路43内の作動油は、前記外部配管40、外部配管86、及び内部油路48から入口ポート85bを介して一次圧室91に導かれるが、該一次圧室91内の作動油の圧力が、バネ部材82の弾性力に相当する設定圧よりも低ければ、弁体81は閉弁状態を維持し、弁体部87はスリーブ80の弁座部80aに着座している。
【0058】
そして、前記チャージ油路43内の作動油の圧力が増加し、前記一次圧室91内の作動油の圧力が前記設定圧よりも高くなると、図5に示すように、弁体81はバネ部材82の弾性力に抗して前方に移動し、弁体部87はスリーブ80の弁座部80aから離間して開弁状態となる。すると、一次圧室91内の作動油が二次圧室92へ流入し、前記連絡油路98を介して排出ポート83aへ排出される。
【0059】
この際、一次圧室91内から二次圧室92へ流入してきた作動油は、初めは軸心に略平行に前方へ流れるが、途中で前記受圧部99に衝突すると、向きを90度内側に変えて横孔97内に流入する。従って、開弁状態では、弁体部87だけでなく、受圧部99にも作動油の圧力を作用させることができ、弁体81には大きな揚力が付与されることとなる。
【0060】
更に、弁体81の開弁時または閉弁時の移動に伴い、ダンパ室94内に貯留された作動油を、細孔93を介して再び内部油路48に給排させることにより、弁体81の移動を抑制するダンパ機能を発揮できるようにしている。
【0061】
すなわち、第一プランジャ12と該第一プランジャ12が当接する第一斜板10とを有する油圧ポンプ部5と、第二プランジャ24と該第二プランジャ24が当接する第二斜板22とを有する油圧モータ部6を、入力軸2に被嵌したシリンダブロック4を挟んで入力軸2の軸方向前後に配置し、該シリンダブロック4には、前記第一プランジャ12と第二プランジャ24との間を連通する一対のメイン油路である第一油路41・第二油路42を設けた油圧式無段変速装置1において、該第一油路41・第二油路42はチャージ回路52を備え、該チャージ回路52にはリリーフ弁50を接続し、該リリーフ弁50のスリーブ80内には、前記チャージ回路52からの一次側油路である内部油路48に入口ポート85bを介して連通する一次圧室91と、油溜まり51への二次側油路であるリリーフ油路49に排出ポート83aを介して連通する二次圧室92とを備え、前記リリーフ弁50の弁体81には、前記スリーブ80の弁座部80aと接離して前記一次圧室91と二次圧室92との間を断接する弁体部87と、弁体81の一端側である後端側にあって前記一次圧室91を弁体部87との間に画成する第一摺動部88と、弁体81の他端側である前端側にあって前記二次圧室92を弁体部87との間に画成する第二摺動部89とを備え、該第二摺動部89と前記第一摺動部88は、前記スリーブ80内に摺動自在に嵌合すると共に、前記第一摺動部88を挟んで一次圧室91と反対側のスリーブ80内には、内部油路48に細孔93を介して連通するダンパ室94を設ける一方、前記第二摺動部89には、前記一次圧室91から二次圧室92に流入してきた作動油の圧力を受けるための受圧部99を形成したので、ダンパ室94内の作動油が、細孔93を介して内部油路48に出入りすることにより、弁体81の移動に対する抵抗として作用し、開弁時または閉弁時における弁体81の急速移動を抑制することができ、自励振動による弁なりや異常脈動等の不安定な動作を抑制し、リリーフ動作の信頼性を向上できる。更に、開弁してから閉弁するまでの間、二次圧室92に流入してきた作動油により、受圧部99を介しても弁体81に揚力を付与することができ、大流量域における弁体81の開弁動作を容易にしてオーバーライド圧力を小さくし、リリーフ弁50の圧力損失を小さくして油圧回路全体のシステム効率が向上できる。
【0062】
更に、前記第二摺動部89内に、前記弁体部87が弁座部80aに着座する閉弁方向に弁体81を付勢するためのバネ部材82を収容するバネ室95を形成し、該バネ室95を、前記二次圧室92から排出ポート83aまでの連絡油路98の少なくとも一部に使用するので、該連絡油路98のための部品点数を減らすことができ、リリーフ弁50のコンパクト化や部品コストの低減を図ることができる。
【0063】
また、このような構造のリリーフ弁50の前記ハウジング7への取り付け構成について説明する。
図3乃至図5に示すように、ハウジング7の上部には、前述の如く、リリーフ弁50を挿入する貫通孔78が前後方向に穿孔され、該貫通孔78は、前から順に、大径孔78a、ストッパ78c、及び小径孔78bが形成される一方、リリーフ弁50の外形を規定するスリーブ80にも、前から順に、大径部84と小径部85が形成されている。
【0064】
そして、このうちの大径部84の外径は、大径孔78aの内径と略一致しており、大径部84を大径孔78aの内部に挿嵌可能に構成されている。更に、小径部85の外径については、ストッパ78cの内径と略一致すると共に、前述の如く、小径孔78bの内径よりも小さく設定されている。
【0065】
以上のような構成において、リリーフ弁50をハウジング7の上部に組み込む際は、小径部85を先にして、スリーブ80を貫通孔78内に挿入し、大径部84を大径孔78aに沿わせながら、スリーブ80を後方に摺動させ、スリーブ80の大径部84の後端外周角部を貫通孔78のストッパ78cに当接させる。
【0066】
その後、第一摺動部88を先にして、弁体81をスリーブ80の軸心孔84a・85aに挿入し、第二摺動体89を軸心孔84aに沿わせながら、弁体81を後方に摺動させ、弁体81の弁体部87をスリーブ80の弁座部80aに着座させる。
【0067】
続いて、バネ部材82を弁体81のバネ室95に挿入した後に、前方から、バネ保持部材79を、貫通孔78の大径孔78aに挿入してスプライン結合させ、その後、リング状の固定部材160により、バネ保持部材79とスリーブ80がストッパ78cとの間で挟持固定され、これにより、リリーフ弁50が貫通孔78に挿嵌されるようにしている。
【0068】
この際、貫通孔78の後部は、内径の小さい小径孔78bに形成されており、貫通孔78からハウジング7の外周面7bまでの距離161、つまりハウジング7の外周角部7cの肉厚を比較的大きく設定できるようにしている。
【0069】
すなわち、前記第一斜板10を可動式に構成して可動斜板とし、該第一斜板10を後面から支持する斜板ホルダ8を、更に後面からハウジング7で支持し、該ハウジング7には、後方ほど小径となる前後二段の大径孔78aと小径孔78bとから成る貫通孔78を穿孔する一方、前記スリーブ80には、前記二次圧室92を内部に有する大径部84と、該大径部84よりも外径が小さくて前記一次圧室91を内部に有する小径部85とを前後に形成することにより、該小径部85を先にして、前記リリーフ弁50をハウジング7の前面側から前記貫通孔78内に挿嵌可能に構成するので、ハウジング7後面において、貫通孔78からハウジング7の外周面7bまでの距離161、つまりハウジングの外周角部7cの肉厚を厚くすることができ、該外周角部7cが外部からの負荷や衝撃等によって破損したり変形するのを防止して、部品寿命の向上が図れると共に、リリーフ弁50のハウジング7への取り付け範囲が拡大して、油圧式無段変速装置1の設計自由度を高めることができるのである。
【0070】
また、前記リリーフ弁50の別形態の取り付け構成について説明する。
図12(b)に示す油圧式無段変速装置1Aは、図11に示す油圧式無段変速装置1において、前記チャージ回路52のリリーフ弁50を、油圧式無段変速装置1の内部ではなく、外部にある外部配管86の途中に設けたものである。
【0071】
この油圧式無段変速装置1Aのリリーフ弁50Aは、図12(a)に示すように、パイプ状の弁ケース101内に挿入され、該弁ケース101の内壁から内側に突出した突起状の複数の位置決め部材116に、スリーブ80の肩部80bが当接されるようにして、弁ケース101内に挿嵌・固定されている。更に、弁ケース101内では、リリーフ弁50Aの一次側には連結油路102が形成され、リリーフ弁50Aの二次側にはリリーフ油路103が形成されており、該リリーフ油路103と前記連結油路102とは、前記油圧式無段変速装置1におけるリリーフ油路49・内部油路48と同様に、リリーフ弁50Aの同一軸心上に配置されている。
【0072】
そして、前記リリーフ油路103と前記連結油路102には、外部配管86の端部が螺嵌され、リリーフ油路103側の外部配管86は、油溜まり51に連通されると共に、連結油路102側の外部配管86は、外部配管40を介して前記チャージ油路43に連通されており、前記チャージポンプ38からチャージ油路43内に供給される作動油の圧力を、リリーフ弁50Aによって所定の設定圧に保持するようにしている。
【0073】
すなわち、以上のように、一次側油路である内部油路48・連結油路102と、二次側油路であるリリーフ油路49・リリーフ油路103は、リリーフ弁50・50Aの同一軸心上に配置するので、油圧式無段変速装置1・1Aのいずれにおいても、作動油の流れ方向の変化を最小に抑制することができ、リリーフ弁50・50Aの圧力損失を小さくして油圧回路全体のシステム効率が向上できる。更に、油圧式無段変速装置1Aのように、リリーフ弁50Aを直状の外部配管86の途中部にも収容することができ、リリーフ弁50の取り付け位置の範囲が拡大して、油圧式無段変速装置1の設計自由度を高めることができる。
【0074】
次に、前記リリーフ弁50から排出する作動油による冷却構成について、図3乃至図7により説明する。
リリーフ弁50の二次側に接続される前記リリーフ油路49は、第一斜板10を前記凹部8aによって摺動可能に支持する斜板ホルダ8の後部に形成されている。
【0075】
該斜板ホルダ8において、リリーフ油路49は、前記リリーフ弁50の排出孔83の前端に接続されて排出ポート83aからの作動油が流れ込む前端閉塞の流入油穴49aと、該流入油穴49aで分岐して左右に延設される分岐油路49b・49cと、該分岐油路49b・49cの延出先端にそれぞれ形成される放出孔49d・49eとから構成される。
【0076】
このうちの分岐油路49b・49cは、斜板ホルダ8の後面8bに溝状に形成されており、該後面8bに前記ハウジング7の前面7dを当接して締結固定することにより、分岐油路49b・49cは、その後側が閉止されて密閉通路となる。これにより、リリーフ弁50からの作動油が、漏出することなく、流入油穴49aから分岐油路49b・49c内を流れていく。
【0077】
更に、分岐油路49b・49cは、流入油穴49aを頂点とし、斜板ホルダ8の軸心上の円形の軸孔8cに沿うようして緩やかに下降していき、それぞれ、前記放出孔49d・49eに連通される。これにより、リリーフ弁50からの作動油は、分岐油路49b・49c内を自重によって徐々に流下していき、前記放出孔49d・49eに到達する。
【0078】
該放出孔49d・49eは、前記斜板ホルダ8を前後方向に貫通して形成され、その先端は、前記第一斜板10の左右の支軸10cが斜板ホルダ8の凹部8aと摺動する部分に、開口されている。これにより、リリーフ弁50からの作動油は、摺動が激しくて発熱の大きな位置に優先的に導かれ、しかも、その発熱位置が複数箇所であっても、同時に導くことができる。
【0079】
すなわち、前記第一斜板10を可動式に構成して可動斜板とし、該可動斜板を後面から支持する斜板ホルダ8内に前記二次側油路であるリリーフ油路49を形成し、該リリーフ油路49は、前記排出ポート83aからの作動油が流れ込む流入油穴49aと、該流入油穴49aから前記可動斜板の所定位置、本実施例では支軸10cが凹部8aと摺動する位置まで作動油を流下させるようにして導く分岐油路49b・49cとから成るので、排出ポート83aからの作動油を、分岐油路49b・49cを介して、可動斜板の複数箇所に同時に供給することができると共に、排出ポートからの排出圧が低くても、作動油をその自重だけで供給することができ、可動斜板の冷却効率の大幅な向上が図れる。
【0080】
次に、前記チェックリリーフ弁36・37について、図2、図8、図9、図11、図15により説明する。なお、両チェックリリーフ弁36・37は略同一構造であるので、本実施例では一方のチェックリリーフ弁の第二チェックリリーフ弁37についてのみ説明し、第一チェックリリーフ弁36の説明は省略する。
【0081】
図2、図8、図11に示すように、第二チェックリリーフ弁37は、リング状の弁座121と、該弁座121に挿入される逆止弁体122・弁保持部材123・バネ保持部材124と、前記逆止弁体122内に挿入されるリリーフ弁体127と、第一バネ部材126・第二バネ部材128とから構成される。
【0082】
そして、これら弁座121、逆止弁体122、弁保持部材123、バネ保持部材124、リリーフ弁体127、第一バネ部材126、第二バネ部材128は、全て同一軸心上に配置され、前記入力軸2の直径方向に形成した弁穴129内に挿入される。
【0083】
該弁穴129では、下端を閉じて底面部129cが形成される一方、上端を開口して給排口129aが形成されている。そして、該給排口129aは、前記第二油路42に接続されると共に、給排口129aの直下近傍の弁穴129内には、前記弁座121が挿嵌固定される。
【0084】
該弁座121には、前記逆止弁体122の上部が内挿され、該上部には、下方に閉じた円錐形状の弁体部130が形成され、該弁体部130が、前記弁座121の内側段付き部の角部に設けた弁座部121aと接離可能に構成されている。
【0085】
前記逆止弁体122の下部は、前記弁保持部材123に内挿して連結され、更に、該弁保持部材123の下部は、前記バネ保持部材124に内挿して連結されており、これにより一体物(以下、「摺動体」とする)142が構成される。そして、該摺動体142の下部は、前記弁穴129内でチャージ油路43よりも下方のシリンダ部129b内に、上下摺動可能に内挿されている。
【0086】
更に、逆止弁体122の内部には、上下に、上孔136と、該上孔136よりも内径が大きい下孔137とが穿孔され、該下孔137の下端は、開口されて前記弁保持部材123に接続される。一方、前記上孔136の上端は、一段縮径された後、逆止弁体122上部で軸心上に穿孔された細孔131に接続され、該細孔131を介して、上孔136が前記給排口129aと連通される。
【0087】
前記弁保持部材123の内部には、上下方向に貫通孔138が穿孔され、該貫通孔138の上部は、拡径されて前記逆止弁体122の下部に外側から螺嵌されるようにして、前述の如く、弁保持部材123が前記逆止弁体122に連結される。そして、該逆止弁体122の下孔137から、弁保持部材123の貫通孔138下部にかけては、略同一内径の内バネ室134が形成されており、該内バネ室134内に、前記リリーフ弁体127と第二バネ部材128が収容される。
【0088】
更に、貫通孔138の側面には、前後方向に流通孔133・133が穿孔され、該流通孔133・133を介して、前記内バネ室134がチャージ油路43と連通されている。
【0089】
前記バネ保持部材124は、下に閉じた筒状であって、筒部124aと底部124bとから成り、このうちの筒部124aが前記弁保持部材123の下部に外嵌固定されるようにして、前述の如く、バネ保持部材124が前記弁保持部材123に連結される。
【0090】
このようにして、前記逆止弁体122を弁座121に対して開閉可能にすると共に、この逆止弁体122を備えた摺動体142が弁穴129内を上下摺動可能としている。
【0091】
更に、前記バネ保持部材124の底部124bを挟んで内バネ室134の反対側、すなわち、底部124bと、前記弁穴129の底面部129cとの間には、油室135が形成される。そして、該油室135と前記内バネ室134との間は、前記底部124bの軸心上に形成した細孔132を介して連通されている。
【0092】
前記第一バネ部材126は、前記逆止弁体122、弁保持部材123、弁座121、及び弁穴129に囲まれた外バネ室143内で、弁座121の下面と前記弁保持部材123の外周角部123aとの間に、圧縮状態で介装されている。そして、この第一バネ部材126の弾性力により、前記弁体部130が弁座部121aに着座する閉弁方向、本実施例では下方に、逆止弁体122を常時付勢するようにしている。
【0093】
更に、前記外バネ室143の下部も、前記流通孔133・133と同様に、前記チャージ油路43に連通されている。
【0094】
前記リリーフ弁体127は、前記逆止弁体122の内部にあって、同一軸心上に配置されており、これらリリーフ弁体127と逆止弁体122とから同軸二重構造が形成される。
【0095】
更に、リリーフ弁体127の上半部に、上方に閉じた円錐形状の弁体部139が形成され、該弁体部139が、前記逆止弁体122の弁座部141と接離可能に構成されている。ここで、該弁座部141は、前記逆止弁体122の上孔136と下孔137との間の段付き部の角部に設けられている。一方、リリーフ弁体127の下半部には、外径が前記弁体部139の下端よりも小さい棒状の係止部140が形成されており、該係止部140に、前記第二バネ部材128の上端が外嵌固定される。
【0096】
前記第二バネ部材128は、前記内バネ室134内で、前記リリーフ弁体127の係止部140と、バネ保持部材124の底部124bとの間に、圧縮状態で介装されている。そして、この第二バネ部材128の弾性力により、前記弁体部139が弁座部141に着座する閉弁方向、本実施例では上方に、リリーフ弁体127を常時付勢するようにしている。
【0097】
以上のような構成において、定常状態では、図8に示すように、第二バネ部材128により付勢されたリリーフ弁体127の弁体部139が、逆止弁体122の弁座部141に着座し、前記細孔131に通じる上孔136が閉止されている。
【0098】
これにより、前記内バネ室134は上孔136から遮断されて閉域となっており、該内バネ室134内に前記チャージ油路43内の作動油の圧力が流通孔133・133を介して作用し、前記摺動体142が摺動するようにしている。同時に、前記チャージ油路43から流通孔133・133を通って内バネ室134内に流れ込んだ作動油は、前記細孔132を通って油室135内にも流入できるようにしている。
【0099】
そして、図9(a)に示すように、第二油路42の作動油が漏洩等により不足して圧力が低下し、逆止弁体122の弁体部130がチャージ油路43側から受ける圧力が増加し、この圧力が前記第一バネ部材126の弾性力に相当する設定圧よりも高くなると、前記摺動体142は、第一バネ部材126の弾性力に抗して上方に移動し、弁体部130が、弁座121の弁座部121aから離間して開弁状態となる。
【0100】
すると、チャージ油路43内の作動油が、外バネ室143から、弁体部130と弁座部121aとの間の隙間を通って、給排口129aに流れ込み、第二油路42に作動油が供給される。
【0101】
この際、内バネ室134内に流れ込んだ作動油の一部は、細孔132を通って油室135内にも流入するため、該油室135内の作動油の油圧が上昇し、摺動体142の上方への移動が促進されて、第二油路42には更に大量の作動油の供給が可能となる。
【0102】
このようにして、前記第二チェックリリーフ弁37は、チャージ油路43と第二油路42との間の作動油の差圧に応じて、作動油をチャージ油路43から第二油路42側のみに流して補給することができる。この場合、逆止弁体122は、チェック弁におけるパイロット弁部・メイン弁部として作動している。
【0103】
逆に、図9(b)に示すように、第二油路42の作動油の圧力が増加し、リリーフ弁体127の弁体部139が第二油路42側から受ける圧力が増加し、この圧力が前記第二バネ部材128の弾性力に相当する設定圧よりも高くなると、前記リリーフ弁体127は、第二バネ部材128の弾性力に抗して下方に移動し、その弁体部139は、逆止弁体122の弁座部141から離間して開弁状態となる。
【0104】
すると、第二油路42内の作動油が、給排口129aから、順に、細孔131、上孔136、弁体部139と弁座部141との間の隙間を通って、内バネ室134に流入し、更に、流通孔133・133を通ってチャージ油路43へと排出される。
【0105】
この際、内バネ室134内に流れ込んだ作動油が、細孔132を通って油室135内に流入して、該油室135内の作動油の油圧が上昇し、図9(a)に示すように、摺動体142が上方へ移動する。すると、逆止弁体122の弁体部130が弁座部121aから離間し、その間の隙間を通って、第二油路42内の作動油を更に大量にチャージ油路43へ排出することができる。
【0106】
このようにして、第二油路42内の作動油の圧力が所定の設定圧よりも大きくなると、作動油を第二油路42からチャージ油路43側のみに流して排出することができる。この場合、リリーフ弁体127は、リリーフ弁におけるパイロット弁部として作動し、逆止弁体122は、リリーフ弁におけるメイン弁部として作動している。
【0107】
すなわち、チェックリリーフ弁37・38は、同一軸心上でリリーフ弁体127と逆止弁体122を内外に配置した同軸二重構造としたので、作動油の逆流を防止するチェック弁としての機能と、メイン油路である第一油路41と第二油路42内の作動油の圧力を設定圧以下にするために作動油を排出するリリーフ弁としての機能を併せ持つチェックリリーフ弁37・38を、一体的に構成することができ、部品点数を減らして部品コストの更なる低減が図れる。
【0108】
更に、前記チェックリリーフ弁37・38では、前記リリーフ弁体127の開弁に連動して逆止弁体122が開弁し、該逆止弁体122を介して、第一油路41または第二油路42内の作動油をチャージ油路43へ排出可能なリリーフ構造を設けたので、チェックリリーフ弁37・38を、いわゆるパイロット式リリーフ弁として機能させることができ、大量の作動油をチャージ油路43へ排出可能として、リリーフ性能の向上を図ることができる。
【0109】
加えて、前記チェックリリーフ弁37・38では、前記摺動体142の一端側外方に油室135を設け、該油室135内の作動油の圧力によって摺動体142の移動を制御すると共に、該油室135内と、前記摺動体142内の油路途中に設けた油室である内バネ室134との間に細孔132を設けたので、内バネ室134内の作動油が、細孔132を介して油室135に出入りすることにより、摺動体142の移動に対する抵抗として作用し、開弁時または閉弁時における逆止弁体122の急速移動を抑制することができ、リリーフ流量増加時のチャタリング等の不安定な動作が防止できる。
【0110】
また、このようなチェックリリーフ弁36・37の代替構成について説明する。
図15に示す油圧式無段変速装置1Bは、図11に示す油圧式無段変速装置1において、前記チャージ回路52のチェックリリーフ弁36・37をチェック弁144・145に変更すると共に、前記斜板角制御機構53に、第一斜板10の傾斜角を制限する制限回路146を新たに設けたものである。なお、ここでは、前記油圧式無段変速装置1の油圧回路と異なる部品や構成を中心にして説明する。
【0111】
油圧式無段変速装置1Bのチャージ回路147では、前記入力軸2の軸中心部に形成された前記チャージ油路43と、前記第一油路41との間に、第一チェック弁144が介設され、チャージ油路43と前記第二油路42との間には、第二チェック弁145が介設されている。そして、該チェック弁144・145は、リリーフ弁としての機能は備えないため、前記チェックリリーフ弁36・37に比べてコンパクト化が図れる。
【0112】
前記油圧式無段変速装置1Bの斜板角制御機構148には、1ポート2位置式の圧力切換弁149が設けられ、該圧力切換弁149が、前記傾倒アクチュエータ54に接続されている。
【0113】
該圧力切換弁149には、往復摺動可能なスプール149aが備えられ、該スプール149aの一端側に設けたバネ部材159付きの油室149bは、パイロット油路150を介して、傾倒アクチュエータ54の前側油室57に連通される。一方、スプール149aの他端側に設けた油室149cは、パイロット油路151を介して、傾倒アクチュエータ54の後側油室58に連通される。
【0114】
更に、圧力切換弁149には、ポート153とポート154が形成され、このうちのポート153は、油路152を介して前記パイロット油路151の途中部に連通される一方、ポート154は、油路155を介して油溜まり156に連通されている。そして、圧力切換弁149は、通常は、前記バネ部材159によって、位置157に設定されている。
【0115】
以上のような構成において、前記ピストン55が前方に摺動するに伴い、油圧式無段変速装置1Bから出力される変速動力が高速となる変速制御の場合に、前記変速操作レバー76を操作して傾倒切替弁61を位置74に設定すると、前記後側油室58にサーボ油路64から作動油が流入する一方、前側油室57からは油溜まり71に作動油が排出され、両油室57・58内の作動油の差圧により、ピストン55が前方に摺動して第一斜板10が高速側に傾倒し、高速の変速動力が出力される。
【0116】
この際、高速の変速動力が走行輪等から高負荷を受け、前記第一油路41・第二油路42内の作動油の圧力が過剰に増加すると、前記ピストン55の前方摺動が制動されるため、後側油室58内の作動油の圧力が、サーボ油路64から流れ込む作動油によって過剰に上昇する。
【0117】
すると、この圧力が、パイロット油路151を介して前記油室149cに作用し、スプール149aが前記バネ部材159の弾性力に抗して前方に押動され、圧力切換弁149の設定が位置157から位置158に変更される。
【0118】
これにより、後側油室58内の作動油は、パイロット油路151から油路152を通ってポート153に流れ込み、圧力切換弁149を通ってポート154から流出した後、油路155から油溜まり156に排出される。
【0119】
このため、後側油室58内の作動油は、その圧力の過剰な上昇が抑えられ、ピストン55の前方への摺動が抑制されたり、逆に後方へ摺動されるようになり、第一油路41・第二油路42内の作動油の圧力がそれ以上増加しない。
【0120】
すなわち、油圧ポンプ部5の第一斜板10の傾斜角を変更する傾倒アクチュエータ54において、該傾倒アクチュエータ54のピストン55を高速側に摺動する際、第一油路41・第二油路42内の作動油の圧力増加に連動して高圧となる高圧側油室である後側油室58から作動油を排出可能な傾倒切替弁61を設けたので、メイン油路である第一油路41・第二油路42のリリーフ弁としての機能が不要となり、入力軸2に組み込む弁部品のコンパクト化を図ることができ、入力軸2への組み込みが容易になると共に入力軸2の耐久性が増し、油圧式無段変速装置1Bの組立性や装置寿命を向上させることができる。
【0121】
次に、前記傾倒アクチュエータ54とスプール弁20・31の別形態について、図13、図14により説明する。
図13に示すように、前記傾倒アクチュエータ54において、そのピストン55のロッド部55bと、第一斜板10の係止部10aとの間の連結に、自在継手106を使用してもよい。
【0122】
該自在継手106は、ボール式であって、前記ロッド部55bの前端に接続される第一継手部107と、該第一継手部107の受容体107a内に回転可能に受容される球状体108aを備える第二継手部108とから構成される。
【0123】
そして、該第二継手部108の前端には、係止リング108bが形成され、該係止リング108bに、前記係止部10aが連結されており、該係止部10aと前記ピストン55との相対姿勢が芯ずれ等により変化してロッド部55bに曲げ荷重が掛かっても、該荷重は前記自在継手106によって分散される。
【0124】
すなわち、前記傾倒アクチュエータ54におけるピストン55のロッド部55bと、第一斜板10からの係止部10aとの間の連結に、自在継手106を使用するので、芯ずれ等でロッド部55bに曲げ荷重が掛かるのを防止することができ、ロッド部55bの破損を防いで、部品寿命の向上が図れる。なお、ここでは自在継手106として、ボール式を例に説明したが、フック式であってもよく、その種類は特には限定されない。
【0125】
また、図14に示すように、前記スプール弁20・31と、前記スプールカム34・35のカム溝34a・35aとの間の連結に、揺動機構109を使用してもよい。該揺動機構109の構造は、スプール弁20・31で略同一であるため、ここでは第一スプール弁20について説明する。
【0126】
該揺動機構109も、前記自在継手106のようなボール式であって、第一スプール弁20から突出するガイド軸114と、該ガイド軸114の受容体114a内に回転可能に受容される球状体115aを備える揺動部材115とから構成される。
【0127】
そして、該揺動部材115の後端には、円盤状の係合部115bが形成され、該係合部115bが、前記第一スプールカム34のカム溝34aに係合されており、第一スプール弁20を収容するシリンダブロック4が回転しても、係合部115bが揺動しながらカム溝34a溝面に面接触するようにして、揺動部材115をカム溝34aに沿って移動させることができる。
【0128】
すなわち、前記スプール弁20・31と、該スプール弁20・31の往復動を制御するスプールカム34・35との間の連結に、揺動機構109を使用するので、スプール弁20・31の係合部115bを揺動させ、該係合部115bとスプールカム34・35のカム溝34aとを面接触させることができ、係合部115bへの面圧を低くして破損を防ぎ、部品寿命の向上が図れる。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明は、第一プランジャと該第一プランジャが当接する第一斜板とを有する油圧ポンプ部と、第二プランジャと該第二プランジャが当接する第二斜板とを有する油圧モータ部を、入力軸に被嵌したシリンダブロックを挟んで入力軸の軸方向前後に配置し、該シリンダブロックには、前記第一プランジャと第二プランジャとの間を連通する一対のメイン油路を設けた、全ての油圧式無段変速装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0130】
1 油圧式無段変速装置
2 入力軸
4 シリンダブロック
5 油圧ポンプ部
6 油圧モータ部
7 ハウジング
8 斜板ホルダ
10 第一斜板
10c 支軸
12 第一プランジャ
22 第二斜板
24 第二プランジャ
41 第一油路(メイン油路)
42 第二油路(メイン油路)
48 内部油路(一次側油路)
49 リリーフ油路(二次側油路)
49a 流入油穴
49b・49c 分岐油路
50・50A リリーフ弁
51 油溜まり
52 チャージ回路
78 貫通孔
78a 大径孔
78b 小径孔
80 スリーブ
80a 弁座部
81 弁体
82 バネ部材
83a 排出ポート
84 大径部
85 小径部
85b 入口ポート
87 弁体部
88 第一摺動部
89 第二摺動部
91 一次圧室
92 二次圧室
93 細孔
94 ダンパ室
95 バネ室
98 連絡油路
99 受圧部
102 連結油路(一次側油路)
103 リリーフ油路(二次側油路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一プランジャと該第一プランジャが当接する第一斜板とを有する油圧ポンプ部と、第二プランジャと該第二プランジャが当接する第二斜板とを有する油圧モータ部を、入力軸に被嵌したシリンダブロックを挟んで入力軸の軸方向前後に配置し、該シリンダブロックには、前記第一プランジャと第二プランジャとの間を連通する一対のメイン油路を設けた油圧式無段変速装置において、該メイン油路はチャージ回路を備え、該チャージ回路にはリリーフ弁を接続し、該リリーフ弁のスリーブ内には、前記チャージ回路からの一次側油路に入口ポートを介して連通する一次圧室と、油溜まりへの二次側油路に排出ポートを介して連通する二次圧室とを備え、前記リリーフ弁の弁体には、前記スリーブの弁座部に接離して前記一次圧室と二次圧室との間を断接する弁体部と、弁体の一端側にあって前記一次圧室を弁体部との間に画成する第一摺動部と、弁体の他端側にあって前記二次圧室を弁体部との間に画成する第二摺動部とを備え、該第二摺動部と前記第一摺動部は、前記スリーブ内に摺動自在に嵌合すると共に、前記第一摺動部を挟んで一次圧室と反対側のスリーブ内には、一次側油路に細孔を介して連通するダンパ室を設ける一方、前記第二摺動部には、前記一次圧室から二次圧室に流入してきた作動油の圧力を受けるための受圧部を形成したことを特徴とする油圧式無段変速装置。
【請求項2】
前記第二摺動部内に、前記弁体部が弁座部に着座する閉弁方向に弁体を付勢するためのバネ部材を収容するバネ室を形成し、該バネ室を、前記二次圧室から排出ポートまでの連絡油路の少なくとも一部に使用することを特徴とする請求項1に記載の油圧式無段変速装置。
【請求項3】
前記第一斜板を可動式に構成して可動斜板とし、該可動斜板を後面から支持する斜板ホルダ内に前記二次側油路を形成し、該二次側油路は、前記排出ポートからの作動油が流れ込む流入油穴と、該流入油穴から前記可動斜板の所定位置まで作動油を流下させるようにして導く分岐油路とから成ることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の油圧式無段変速装置。
【請求項4】
前記第一斜板を可動式に構成して可動斜板とし、該可動斜板を後面から支持する斜板ホルダを、更に後面からハウジングで支持し、該ハウジングには、後方ほど小径となる前後二段の大径孔と小径孔とから成る貫通孔を穿孔する一方、前記スリーブには、前記二次圧室を内部に有する大径部と、該大径部よりも外径が小さくて前記一次圧室を内部に有する小径部とを前後に形成することにより、該小径部を先にして、前記リリーフ弁をハウジングの前面側から前記貫通孔内に挿嵌可能に構成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の油圧式無段変速装置。
【請求項5】
前記一次側油路と二次側油路はリリーフ弁の同一軸心上に配置することを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか一項に記載の油圧式無段変速装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−7675(P2012−7675A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144269(P2010−144269)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000125853)株式会社 神崎高級工機製作所 (210)
【Fターム(参考)】