説明

油圧駆動式の車両、およびその制御方法と制御装置

【課題】HST(静液圧トランスミッション)を有するパワートレインを備えた車両において、クリープ現象、アクセル操作に対する発進タイムラグ、走行中にアクセル操作量を急激に減らした時のエンジン・オーバーラン、及び走行中に負荷が急増した時のエンジン・ストールなどの問題を解決する。
【解決手段】パワートレイン10内のHSTコントローラ15が、アクセル操作量に応じてHSTポンプ23の最大吸収トルクを制御する。他方、車両の走行中にアクセル操作量が急激に減った時、または車両の走行中にエンジン回転数が急激に減った時には、エンジン回転速度に応じてHSTポンプ23の最大吸収トルクが制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧駆動式の車両(例えば、フォークリフト)及びその制御に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンと、そのエンジンにより駆動される油圧ポンプと、その油圧ポンプにより駆動される油圧モータと、その油圧モータにより駆動される負荷装置(例えば駆動輪)とを有する車両が知られている(例えば特許文献1)。その典型的例は、産業車両や農業機械や建設機械に見られる。その種の車両では、例えば、そのパワートレイン(走行用の動力伝達装置)において、静液圧トランスミッション(Hydrostatic Transmission)(以下、HSTという)が、エンジンからの動力を駆動輪に伝えるために使用される。一般的なこととして、HSTは、閉油圧回路を構成するように相互接続された、可変容量型の油圧ポンプ(以下、「HSTポンプ」という)と可変又は固定容量型の油圧モータ(以下、「HSTモータ」という)を有する。HSTは、その原理上、トルクコンバータに代表されるHDT(Hydrodynamic Transmission)に比べて、エネルギーのロスが非常に小さく、無段階に変速でき、また、制動機能も有するなどの利点がある。
【0003】
車両のパワートレインに組み込まれたHSTは、エンジンからの動力を、次のようにして車両の駆動輪へ伝達する。エンジンが駆動されると、エンジンに機械的に接続されたHSTポンプが駆動される。そのHSTポンプからHSTモータに作動油が供給されることにより、HSTモータが回転する。さらに、HSTモータが車両の駆動輪を駆動して回転させる。
【0004】
HSTを有する車両は、さらにコントロールシステムを有している。近年は電子式のコントロールシステムが好んで採用されている。そのコントロールシステムは、車両に備えられたアクセルペダル等のアクセル操作に応答して、エンジンへの燃料噴射量と、HSTポンプの容量とを制御する。それにより、HSTポンプの圧力と流量が制御され、車両の駆動輪のトルクや回転速度が制御される。
【0005】
特許文献1に開示されたコントロールシステムは、アクセル操作量に応答して、エンジンの回転速度の目標値を決定し、そして、そのエンジン回転速度の目標値とHSTの油圧ポンプの容量との関係が所定の関係になるようにHSTの油圧ポンプの容量を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9‐301016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
エンジンの回転速度又はアクセル操作量に応答して、HSTの油圧ポンプの吸収トルク(油圧ポンプの容量と有効出力圧との積)を制御する方法が知られている。しかし、エンジンの回転速度だけに応答してHSTの油圧ポンプの吸収トルクを制御する場合と、アクセル操作量だけに応答してHSTの油圧ポンプの吸収トルクを制御する場合のいずれにおいても、以下のような幾つかの問題が存在する。
【0008】
まず、エンジンの回転速度だけに応答してHSTの油圧ポンプの吸収トルクを制御する車両では、その車両を発進させる際、アクセルペダルの踏み込みが開始されてから、実際に車両が走り出すまでに、車両の操作応答性の点で無視できない長さのタイムラグが生じることがある、という問題がある。
【0009】
その問題の発生は、エンジンのローアイドル状態(アクセル操作量がゼロで低回転数でエンジンが稼働しているアイドル状態)におけるエンジンの回転速度(ローアイドル回転速度)のばらつきに起因する。例えば、定格のローアイドル回転速度が800rpmであっても、実際のローアイドル回転速度は、エンジンの個体差により、或る範囲内(例えば750rpm〜850rpmの範囲内)においてばらついてしまう。
【0010】
HSTは、その油圧ポンプの容量がゼロの時、エンジンからの動力を駆動輪へ伝達しない。発進時、アクセルペダルが踏み込まれて、アクセル操作量がゼロから増加を開始すると、エンジンの回転速度がローアイドル回転速度から上昇を開始し、それに応答してHSTの油圧ポンプの吸収トルクがゼロから増加を開始する。それにより、エンジンから駆動輪へ伝達される動力がゼロから増加し、車両が走行を開始する。
【0011】
この場合、クリープ現象(ローアイドル状態でブレーキをかけなければ車両が走り出す現象)を、製造される全ての車両において発生させないために、発進時にHSTの油圧ポンプの吸収トルクをゼロから増加させる起点を、上述したローアイドル回転速度のばらつき範囲(例えば750rpm〜850rpm)の中の最大値(例えば850rpm)に設定することが、考えられる。
【0012】
しかし、上記の最大値(設定値)より低い(例えば750rpmの)ローアイドル回転速度を特性としてもつ車両では、運転者がアクセルペダルを踏み始めた時点から、エンジンの回転速度が上記設定値(例えば850rpm)に到達するまでは、油圧ポンプの吸収トルクはゼロであり、車両は発進しない。その後、エンジンの回転速度が上記設定値(例えば850rpm)に達してから、車両が走行を開始することになる。つまり、発進の際、アクセルペダルの踏み込み開始から車両が走行を開始するまでに、不要なタイムラグが生じてしまう。このようなタイムラグがあると、運転者は車両のレスポンスが悪いという不満をもつ。
【0013】
他方、アクセル操作量だけに応答してHSTの油圧ポンプの吸収トルクを制御する車両では、上記のタイムラグの問題は解消される。しかし、運転者がアクセルペダルを深く踏み込んで車両を走らせている時に、次のような2種類の問題が発生する。
【0014】
その一つは、運転者がアクセルペダルの踏み込みを急に大きく緩めたとき、エンジンのオーバーラン(回転速度が許容値を超えてしまうこと)と過減速とが発生するという問題である。その原因は、アクセル操作量が急に減ったことに応答して、HSTの油圧ポンプの吸収トルクが急に大きく減少するため、走行を続けようとする車両の大きい慣性力が駆動輪からHSTを通じてエンジンに返還される(回生制動作用)からである。つまり、HSTの特徴である、(別に制動をかけなくても)HSTブレーキが過度にかかるという問題である。
【0015】
もう一つの問題は、車両の走行中に駆動輪に急に大きな負荷が加わった場合、例えば平坦路の走行から登坂走行に入った場合、エンジンがストールするという問題である。エンジンがストールする原因は、駆動輪に大きな負荷が加わったとき、アクセルペダルの操作量が依然として大きいため、その大きいアクセル操作量に応じてHSTの吸収トルクも依然として大きく保たれ、その結果、エンジンに過大な負荷がかかってしまうからである。
【0016】
以上に述べたような問題は、特にフォークリフトにおいては顕著である。フォークリフトの場合、その荷積み作業において頻繁に停止と発進を繰り返すことが多く、運転者はアクセルペダルを一気に最大まで踏み込んだり一気にゼロまで戻すという操作を頻繁に行う傾向があるからである。さらに、安全や積荷の損傷防止のため、フォークリフトがフォークで積んでいる荷物への余計な衝撃の負荷や荷崩れを防ぐ必要があるからでる。
【0017】
上述した複数の問題を解決した技術は、従来は知られていない。したがって、本発明の一つの目的は、エンジンからの動力を、HSTに代表されるような油圧式の動力伝達装置を通じて、負荷装置へ動力を伝達するように構成された油圧駆動式の車両において、エンジンへの駆動指令の変化やエンジンの駆動状態の変化に応じた動力伝達装置の制御を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一つの側面に従がって提供される車両は、エンジンと、前記エンジンにより駆動される可変容量型の油圧ポンプと、前記油圧ポンプにより駆動される油圧モータと、その油圧モータにより駆動される負荷装置とを有する車両であって、アクセル操作量に応答して、前記エンジンを制御するエンジン制御手段と、前記アクセル操作量および前記エンジン回転速度に応答して、前記油圧ポンプを制御するポンプ制御手段とを備える。前記ポンプ制御手段は、前記アクセル操作量に応答して、前記アクセル操作量が大きいほど、前記油圧ポンプの最大吸収トルクの第1目標値が大きくなるように、前記第1目標値を決定する第1吸収トルク制御手段と、前記エンジン回転速度に応答して、前記エンジン回転速度が大きいほど、前記油圧ポンプの最大吸収トルクの第2目標値が大きくなるように、前記第2目標値を決定する第2吸収トルク制御手段と、前記エンジン回転速度に応答して、前記エンジン回転速度が大きいほど、前記油圧ポンプの最大吸収トルクの第3目標値が大きくなるように、前記第3目標値を決定する第3吸収トルク制御手段と、前記第1と第2目標値の中から小さい方を選択する小選択手段と、前記小選択手段により選択された目標値と前記第3目標値の中から大きい方を選択する大選択手段と、前記油圧ポンプの最大吸収トルクが前記大選択手段により選択された目標値になるように、前記油圧ポンプを制御する吸収トルク制御手段とを備える。
【0019】
この車両によれば、第1,2,3の目標値を適切に設定することで、状況に応じて、アクセル操作量とエンジン回転速度のうちのいずれに基づいて油圧ポンプの最大吸収トルクを適切に選択して油圧ポンプを制御する。
【0020】
まず、運転者がアクセル操作量をゆっくりと増加させて車両を発進させる時には、第1の目標値が選択されて、油圧ポンプの最大吸収トルクがその第1の目標値になるように、制御が行われる。つまり、アクセル操作量に応じて油圧ポンプの最大吸収トルクが制御される。その結果、クリープ及び発進時の加速遅れ(タイムラグ)の問題が改善される。
【0021】
また、運転者がアクセル操作量を一気に増加させて車両を発進させる時には、第2の目標値が選択されて、油圧ポンプの最大吸収トルクがその第2の目標値になるように、制御が行われる。つまり、エンジン回転速度に応じて油圧ポンプの最大吸収トルクが制御される。その結果、エンジン・ストールが防止され、かつ、発進時の加速遅れ(タイムラグ)の問題も改善される。
【0022】
また、ある程度の高い速度で車両が走行していたところ、運転者がアクセル操作量を急激に減少させた場合には、第3目標値が選択されて、油圧ポンプの最大吸収トルクがその第3の目標値になるように、制御が行われる。つまり、エンジン回転速度に応じて油圧ポンプの最大吸収トルクが制御される。結果として、油圧ポンプの最大吸収トルクは比較的に大きい値に維持され、エンジン・オーバーランの問題が改善される。
【0023】
さらに、ある程度の高い速度で車両が平坦路を走行していたところ、登坂走行に入るなどにより駆動輪にかかる負荷が急に増えて、エンジン回転速度が大幅に低下した場合には、第2目標値が選択されて、エンジン回転速度に応じて油圧ポンプの最大吸収トルクが制御される。結果として、油圧ポンプの最大吸収トルクは比較的に小さい値にまで減少し、エンジン・ストールの問題が改善される。
【0024】
上記の車両において、上述したような作用を得るために、第1、2、3目標値を例えば次のように設定することができる。すなわち、前記アクセル操作量を、前記エンジン制御手段の制御特性に基づいて、前記エンジン回転速度に変換することで、前記第1目標値を前記エンジン回転速度に対してマッピングし、前記第2および第3目標値も前記エンジン回転速度に対してマッピングし、そして、マッピングされた前記第1、第2および第3目標値を比較したならば、
前記エンジン回転速度の可変範囲のすべてにわたって、
第2目標値≧第1目標値≧第3目標値
という関係が成立し、かつ、エンジン回転速度の所定値以下の低速領域で、
第2目標値>第1目標値>第3目標値
という関係が成立するように、前記第1、第2および第3目標値を設定することができる。
【0025】
これにより、エンジン回転速度が低速でアクセル操作量も小さいとき(例えば、発信時や、通常に低速走行しているとき)には、第1目標値61が選択されるので、アクセル操作で運転者の意図通りに車両の走行を制御することができる。
【0026】
また、本発明の一実施形態によれば、前記ポンプ制御手段は、前記車両の発進時には、前記アクセル操作量又はエンジン回転速度に応じて前記油圧ポンプの最大吸収トルクを制御し、所定の高速領域内の前記エンジン回転速度で前記エンジンが稼働中に、前記アクセル操作量が所定の大操作量領域から所定の小操作量領域へ減った時には、前記エンジン回転速度に応じて前記油圧ポンプの最大吸収トルクを制御し、前記高速領域内の前記エンジン回転速度で前記エンジンが稼働中に、前記エンジン回転速度が所定の低速領域に低下した時には、前記エンジン回転速度に応じて前記油圧ポンプの最大吸収トルクを制御する。
【0027】
本発明の別の側面に従って提供される車両は、エンジンと、前記エンジンにより駆動される可変容量型の油圧ポンプと、前記油圧ポンプにより駆動される油圧モータと、その油圧モータにより駆動される負荷装置とを有する車両であって、アクセル操作量に応答して、前記エンジンを制御するエンジン制御手段と、前記アクセル操作量および前記エンジン回転速度に応答して、前記油圧ポンプを制御するポンプ制御手段とを備える。前記ポンプ制御手段は、
(1)前記エンジン回転速度が、ローアイドル状態を含む所定の低速領域にある状態で、前記アクセル操作量が所定の小操作量領域内で一定又は変化するときには、前記アクセル操作量に応答して、前記アクセル操作量が大きいほど、前記油圧ポンプの最大吸収トルクが大きくなるように、前記油圧ポンプを制御し、
(2)前記エンジン回転速度が、前記低速領域より高い所定の高速領域にある状態で、前記アクセル操作量が、所定の大操作量領域から、前記大操作領域より小さくかつゼロを含む所定の小操作量領域へ減少したときには、前記エンジン回転速度に応答して、前記エンジン回転速度が大きいほど、前記油圧ポンプの最大吸収トルクが大きくなるように、前記油圧ポンプを制御し、
(3)前記アクセル操作量が、前記小操作量領域より大きい所定の大操作量領域にある状態で、前記エンジン回転速度が、前記高速領域から前記低速領域へ減少したときには、前記エンジン回転速度に応答して、前記エンジン回転速度が大きいほど、前記油圧ポンプの最大吸収トルクが大きくなるように、前記油圧ポンプを制御する。
【0028】
この車両によれば、次のような作用が得られる。
【0029】
(1) 運転者がゆっくりとアクセルペダルを踏みながら車両を発進させたときには、エンジン回転速度が低速領域にある状態で、アクセル操作量が所定の小操作量領域内で増加する。この場合には、アクセル操作量に応じて油圧ポンプの最大吸収トルクが制御される。これにより、クリープ現象が防止され、また、アクセル操作に対してタイムラグなしにスムーズに車両が発進する。
【0030】
(2) 車両がある程度の高速で走行している最中に、運転者がアクセルペダルから足を離したときには、エンジン回転速度が高速領域にある状態で、アクセル操作量が大操作量領域から小操作量領域へ減少する。この場合は、エンジン回転速度に応じて油圧ポンプの最大吸収トルクが制御される。その結果、油圧ポンプの最大吸収トルクは穏やかに減少するので、エンジンのオーバーランが防止される。
【0031】
(3) 車両がある程度の高速で平坦路を走行している状態から、登坂走行へ入ったときには、アクセル操作量が大操作量領域にある状態で、エンジン回転速度が高速領域から低速領域へと減少する。この場合、エンジン回転速度に応じて油圧ポンプの最大吸収トルクが制御される。その結果、油圧ポンプの最大吸収トルクは急激に減少するので、エンジンに過大なトルクがかかることが避けられ、エンジン・ストールが防止される。
【0032】
上記の車両において、ポンプ制御手段は、さらに、
(4)前記エンジン回転速度が前記低速領域にある状態で、前記アクセル操作量が前記小操作量領域から大操作領域に増加したときには、前記エンジン回転速度に応答して、前記エンジン回転速度が大きいほど、前記油圧ポンプの最大吸収トルクが大きくなるように、前記油圧ポンプを制御し、
(5)前記エンジン回転速度が前記高速領域にある状態で、前記アクセル操作量が前記大操作量領域内で一定又は変化するときには、前記アクセル操作量に応答して、前記アクセル操作量が大きいほど、前記油圧ポンプの最大吸収トルクが大きくなるように、前記油圧ポンプを制御する、
ように構成されてよい。
【0033】
このような構成によれば、次のような作用が得られる。
【0034】
(4) 運転者が一気に深くアクセルペダルを踏み込んで車両を発進させたときには、エンジン回転速度が低速領域にある状態で、かつアクセル操作量が小操作量領域から大操作領域に増加する。この場合、エンジン回転速度に応じて油圧ポンプの最大吸収トルクが制御される。その結果、エンジン・ストールを防止することができ、かつ、(アクセル操作量の急激な増大により、エンジン回転速度は瞬時にローアイドル状態Liの回転速度のばらつき範囲を超えるので)アクセル操作に対してタイムラグなしに車両を発進することができる。
【0035】
(5) 高速走行中でかつアクセル操作量も大きいときには、エンジン回転速度が高速領域にある状態で、アクセル操作量が大操作量領域内で一定又は変化する。この場合、アクセル操作量に応じて油圧ポンプの最大吸収トルクが制御される。その結果、アクセル操作に応じて車両の速度を制御することができる。
【0036】
また、本発明のまた別の側面に従って提供される車両は、エンジンと、前記エンジンにより駆動される可変容量型の油圧ポンプと、前記油圧ポンプにより駆動される油圧モータと、その油圧モータにより駆動される負荷装置とを有する車両であって、アクセル操作量に応答して、前記エンジンを制御するエンジン制御手段と、前記アクセル操作量および前記エンジン回転速度に応答して、前記油圧ポンプを制御するポンプ制御手段とを備える。前記ポンプ制御手段は、
(1)前記エンジン回転速度が、ローアイドル状態を含む所定の低速領域にあり、かつ前記アクセル操作量が、ゼロを含む所定の小操作量領域にあるときには、前記アクセル操作量に応答して、前記アクセル操作量が大きいほど、前記油圧ポンプの最大吸収トルクが大きくなるように、前記油圧ポンプを制御し、
(2)前記エンジン回転速度が前記低速領域より高い所定の高速領域にあり、かつ前記アクセル操作量が前記小操作量領域にあるときには、前記エンジン回転速度に応答して、前記エンジン回転速度が大きいほど、前記油圧ポンプの最大吸収トルクが大きくなるように、前記油圧ポンプを制御し、
(3)前記エンジン回転速度が前記低速領域にあり、かつ前記アクセル操作量が前記小操作量領域より大きい所定の大操作量領域にあるときは、前記エンジン回転速度に応答して、前記エンジン回転速度が大きいほど、前記油圧ポンプの最大吸収トルクが大きくなるように、前記油圧ポンプを制御する。
【0037】
この車両によれば、次のような作用が得られる。
【0038】
(1) 運転者がゆっくりとアクセルペダルを踏みながら車両を発進させたときには、エンジン回転速度が低速領域にあり、かつアクセル操作量が小操作量領域にある。この場合、アクセル操作量に応じて油圧ポンプの最大吸収トルクが制御される。その結果、クリープ現象が防止され、また、アクセル操作に対してタイムラグなしにスムーズに車両が発進する。低速走行中でアクセル操作量も小さいとき、アクセル操作に応じて車両の速度を制御できる。
【0039】
(2) 車両がある程度の高速で走行している最中に、運転者がアクセルペダルから足を離したときには、エンジン回転速度が高速領域にあり、かつアクセル操作量が小操作量領域に入ることになる。この場合、エンジン回転速度に応じて油圧ポンプの最大吸収トルクが制御される。その結果、ある程度の高速で走行中にアクセル操作量が急減少しても、油圧ポンプの最大吸収トルクは穏やかに減少するので、エンジン・オーバーランが防止される。
【0040】
(3) 車両がある程度の高速で平坦路を走行している状態から、登坂走行へ入ったとき、あるいは、運転者が一気に深くアクセルペダルを踏み込んで車両を発進させたときには、エンジン回転速度が低速領域にあり、かつアクセル操作量が大操作量領域にあることになる。この場合、エンジン回転速度に応じて、油圧ポンプの最大吸収トルクが制御される。その結果、車両がある程度の高速で走行中にエンジン回転速度が急に大幅に減少したときには、油圧ポンプの最大吸収トルクは急激に減少するので、エンジンに過大なトルクがかかることが避けられ、エンジン・ストールが防止される。また、運転者が一気に深くアクセルペダルを踏み込んで車両を発進させたときには、エンジン・ストールを防止することができ、かつ、(アクセル操作量の急激な増大により、エンジン回転速度は瞬時にローアイドル状態Liのエンジン回転速度のばらつき範囲を超えるので)アクセル操作に対してタイムラグなしに車両を発進させることができる。
【0041】
上記の車両において、前記ポンプ制御手段は、さらに、(4)前記エンジン回転速度が前記高速領域にあり、かつ前記アクセル操作量が前記大操作量領域にあるときには、前記アクセル操作量に応答して、前記アクセル操作量が大きいほど、前記油圧ポンプの最大吸収トルクが大きくなるように、前記油圧ポンプを制御する、ように構成されてよい。
【0042】
このような構成によれば、高速走行中でかつアクセル操作量も大きいときには、エンジン回転速度が高速領域にあり、かつアクセル操作量が大操作量領域にある。この場合、アクセル操作量に応じて油圧ポンプの最大吸収トルクが制御される。よって、高速走行中でアクセル操作量も大きいときには、アクセル操作に応じて車両の速度を制御することができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、エンジンからの動力を、HSTに代表されるような油圧式の動力伝達装置を通じて、負荷装置へ動力を伝達するように構成された油圧駆動式の車両において、エンジンへの駆動指令の変化やエンジンの駆動状態の変化に応じた動力伝達装置の制御を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態にかかる車両(例えばフォークリフト)の概略的な外観を示す側面図。
【図2】同実施形態に組み込まれたHSTを有するパワートレインの構成例を示すブロック線図(パワートレインに隣接する幾つかのシステムも一緒に示されている)。
【図3】同実施形態におけるエンジンとHSTポンプの回転速度−トルク特性を示すグラフ。
【図4】同実施形態のパワートレイン内のHSTコントローラの機能的な構成例を示すブロック線図。
【図5】同実施形態で採用されるエンジン回転速度−HSTポンプの最大吸収トルク特性の一例を示す図。
【図6】同実施形態で採用され得るエンジン回転速度−HSTポンプの最大吸収トルク特性の変形例を示す図。
【図7】同実施形態で採用され得るエンジン回転速度−HSTポンプの最大吸収トルク特性のまた別の変形例を示す図。
【図8】同実施形態のHSTコントローラにより行われる制御動作を示すフローチャート。
【図9】同実施形態において、発進時にどのようにHSTポンプの最大吸収トルクが決定されるかの一例を説明する図。
【図10】同実施形態において、ある程度高速で走行中にアクセル操作量が急に大幅に減少した時に、どのようにHSTポンプの最大吸収トルクが決定されるかの一例を説明する図。
【図11】同実施形態において、ある程度高速で走行中にエンジン回転速度が急に大幅に減少した時に、どのようにHSTポンプの最大吸収トルクが決定されるかの一例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の一実施形態について説明する。以下では、説明のための例示として、車両がフォークリフトである場合の本発明の一実施形態について説明するが、本発明がフォークリフト以外の種類の車両にも適用可能であることは、言うまでもない。
【0046】
図1は、本実施形態にかかる油圧駆動式の車両(例えばフォークリフト)の概略的な外観を示す。図1に示すように、フォークリフト1は、駆動輪3、アクセルペダル5(ペダルではなく、回転ダイヤル、レバーまたはスライドロッドなど他の操作装置であってもよい)、および前後進切替レバー7などを有する。
【0047】
図2は、本実施形態にかかる車両(例えばフォークリフト)に搭載された、油圧式の動力伝達装置、特にHST、を有するパワートレイン(走行用の動力伝達システム)の一構成例を示す(同図には、パワートレインだけでなく、これに関係する幾つかのシステムも示されている)。
【0048】
図2に示すように、パワートレイン10は、アクセルペダル5、前後進切替レバー7、エンジン13、エンジンコントローラ11、HST21、HSTコントローラ15、駆動輪システム(ディファレンシャル、車軸及び駆動輪)31などを有する。HST21は、可変容量型のHSTポンプ23(典型的には、斜板式可変容量型ポンプが用いられる)と、可変又は固定容量型(図示の例では可変容量型)のHSTモータ25を有し、両者23と25は作動油が流れる油圧配管22を介して相互接続されて閉油圧回路を構成している。HSTポンプ23はエンジン13の出力軸9に接続されており、エンジン13によって駆動されて回転する。HSTポンプ23から作動油がHSTモータ25に供給されることにより、HSTモータ25が駆動されて回転する。そして、HSTモータ25の出力軸に駆動輪システム31が接続されており、HSTモータ25が駆動輪3を駆動して回転させる。なお、エンジン13の出力軸9には、HSTポンプ23だけでなく、他の油圧ポンプ(例えば、フォークリフトの場合、フォークの昇降やチルトを行うための油圧ポンプ27や、ブレーキ装置を駆動するための油圧ポンプ29など)も接続され得る。ここで、エンジン13には、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンまたはLPGエンジンなど、種々の燃料で駆動されるものが採用され得る。
【0049】
運転者によるアクセルペダル5の操作量(実際のアクセル操作量)が、アクセルペダル5に設けられた図示しないセンサ(例えばポテンショメータ)により、電気信号として検出される。また、エンジン13の回転速度が、エンジン13の出力軸9に設けられた回転速度センサ14により、電気信号として検出される。エンジンコントローラ11には、アクセルペダル5からの実際のアクセル操作量の検出信号と、回転速度センサ14からのエンジン回転速度の検出信号とが入力される。エンジンコントローラ11は、検出されたアクセル操作量とエンジン回転速度に応答してエンジン13の電子制御スロットル(図示省略)のスロットル開度又はインジェクタ(図示省略)からの燃料噴射量を制御し、それにより、エンジン13の出力トルクを制御する。また、エンジンコントローラ11は、回転速度センサ14で検出されたエンジン回転速度の検出信号を、HSTコントローラ15に送信する。
【0050】
HSTコントローラ15は、回転速度センサ14からエンジンコントローラ11を通じて受信されたエンジン回転速度の検出信号およびアクセル操作量の検出信号に基づき、HSTポンプ23の最大吸収トルクを決定し、その最大吸収トルクを指示する最大吸収トルク指令を、電気信号の形でHSTポンプ用EPC(Electric Proportional Control:電子比例制御)バルブ17、18に出力する。ここで、一方のEPCバルブ17は、前後進切替レバー7により前進が選択されときに機能する前進用EPCバルブ17であり、もう一方のEPCバルブ18は、前後進切替レバー7により後進が選択されときに機能する後進用EPCバルブ18である。ポンプ用EPCバルブ17、18は、HSTコントローラ15から入力された最大吸収トルク指令を、電気信号として受けて動作し、HSTポンプ容量可変ユニット20を油圧駆動する。HSTポンプ容量可変ユニット20は、HSTポンプ23の吸収トルクが、上記最大吸収トルク指令によって指示された最大吸収トルクを上限とした範囲内で適切な値になるように、HSTポンプ23の容量(典型的には、斜板の角度)を制御する。
【0051】
なお、図示の例では、HSTモータ25の容量もHSTコントローラ15からの指令でモータ用EPCバルブ19及びHSTモータ容量可変ユニット24を通じて制御されるが、ここでは、その詳細の説明は省略する。
【0052】
図3は、図2に示されたエンジン13とHSTポンプ23の回転速度−トルク特性の典型例を示す。
【0053】
実線の特性ライン(最大出力トルク特性ライン)51は、エンジン13が有するその回転速度に応じた最大出力トルクの典型的な特性例を示す。ここで、エンジン13の最大出力トルクとは、アクセルペダルの操作量が最大であるフルスロットルの状態で、エンジン13が出力可能な最大のトルクを意味する。
【0054】
動作点Liは、ローアイドル点(すなわち、エンジン13が低回転速度で稼働し、アクセル操作量がゼロで、駆動輪3への伝達トルクもゼロのときの動作点)である。動作点Hiは、ハイアイドル点(すなわち、エンジンが高回転速度で稼働し、アクセル操作量が最大で、駆動輪3への伝達トルクがゼロのときの動作点)である。
【0055】
一点鎖線の特性ライン(最大吸収トルク特性ライン)53は、図2を参照して説明したようにHSTコントローラ15によって決定される、エンジン回転速度に応じたHSTポンプ23の最大吸収トルクの典型的特性例を示す。HSTコントローラ15は、最大吸収トルク特性ライン53上の現在のエンジン回転速度に対応したトルク値を、ポンプ用EPCバルブ17,18に最大吸収トルク指令として出力する。それにより、HSTポンプ23の吸収トルクが最大吸収トルク特性ライン53以下の範囲内で制御される。HSTポンプ23の時々の吸収トルクは、最大吸収トルク特性ライン53以下の範囲内で、駆動輪3にかかる負荷の大きさに応じて変わる。しかし、フォークリフトが発進する時には、駆動輪3にかかる負荷がかなり大きいので、HSTポンプ23の吸収トルクは、最大吸収トルク特性ライン53上の値か又はそれに近い値になることが多い。
【0056】
破線の特性ライン(出力トルク特性ライン)55は、実際のアクセル操作量が一定であるときの、エンジン13の回転速度に応じたエンジン13の出力トルクの典型的な特性例を示す。すなわち、図2を参照して説明したように、エンジンコントローラ11、特にそのオール・スピード・ガバナ(ASG)が、アクセル操作量とエンジン回転速度に応じて、エンジン13のスロットル開度又は燃料噴射量を制御する。それにより、エンジン出力トルクが、時々のアクセル操作量に対応した図中の1つの出力トルク特性ライン55に沿うように制御される。ASGの制御によって、アクセル操作量が大きくなると、出力トルク特性ライン55が図中の右の方へ移動していく。なお、フォークリフトや建設機械におけるASGの制御の一つの特徴として、出力トルク特性ライン55の勾配(トルク変化の回転速度変化に対する比率)が、図示のように急峻(高い比率)に設定される。これにより、外部からの負荷が急に大きく変動しても(トルクが大幅に急に変動しても)、エンジン回転速度の変動が小さく、よって、作業性が高い。このように、それぞれのアクセル操作量に対応する出力トルク特性ライン55が急峻な勾配をもつように設定されている結果として、アクセル操作量が決まるとほぼ一対一の関係でエンジン回転速度が決まり、アクセル操作量が大きいほどエンジン回転速度が大きくなる、と概略的に言うことができる。
【0057】
以下では、図2に示したパワートレイン10内のHSTコントローラ15が行う、HSTポンプ23の最大吸収トルクの制御動作について、より詳細に説明する。
【0058】
HSTコントローラ15は、次のような制御機能を備える。まず、フォークリフトの発進時には、HSTコントローラ15は、アクセル操作量に応じてHSTポンプ23の最大吸収トルクを制御する。また、所定速度以上のエンジン回転速度で走行中に、アクセル操作量が所定の減少幅以上に減った時には、HSTコントローラ15は、エンジン回転速度に応じてHSTポンプ23の最大吸収トルクを制御する。また、所定速度以上のエンジン回転速度で走行中に、エンジン回転速度が所定の低下幅以上に低下した時には、HSTコントローラ15は、エンジン回転速度に応じてHSTポンプ23の最大吸収トルクを制御する。
【0059】
図4は、上記機能を実現するためのHSTコントローラ15のより具体的な機能的な構成例を示している。また、図5は、このパワートレイン10で採用されるエンジン回転速度−HSTポンプの最大トルク特性の一例を示す。
【0060】
図4に示すように、HSTコントローラ15は、第1吸収トルク制御部15a、第2吸収トルク制御部15b、第3吸収トルク制御部15c、小選択部15d、及び大選択部15eを有している。
【0061】
第1吸収トルク制御部15aには、アクセルペダル5で検出されたアクセル操作量が入力され、そのアクセル操作量に基づいて、HSTポンプ23の最大吸収トルクの第1目標値61が決定される(決定方法としては、演算または予め設定されたルックアップテーブルの参照などが採用できる)。アクセル操作量が大きいほど、第1目標値61が大きくなるように、第1目標値61が決定される。ここで、後に図5を参照して説明するように、アクセル操作量がある値(例えば約60%)以上の範囲にあるときは、第1目標値61は、HSTポンプ23の最大吸収トルクの可変範囲の上限値に達し、その上限値で一定になる。しかし、このことは、本明細書では、上記の「アクセル操作量が大きいほど、第1目標値61が大きくなる」の概念に含まれるものとする。
【0062】
第2吸収トルク制御部15bには、図4に示すように、回転速度センサ14により検出されたエンジン回転速度が入力され、そのエンジン回転速度に基づいて、HSTポンプ23の最大吸収トルクの第2目標値62が決定される(決定方法としては、演算または予め設定されたルックアップテーブルの参照などが採用できる)。エンジン回転速度が高いほど、第2目標値62が大きくなるように、第2目標値62が決定される。ここで、後に図5を参照して説明するように、エンジン回転速度がある値(例えば約1600rpm)以上の範囲にあるときは、第2目標値62は、HSTポンプ23の最大吸収トルクの可変範囲の上限値に達し、その上限値で一定になる。しかし、このことは、本明細書では上記の「エンジン回転速度が大きいほど、第2目標値62が大きくなる」の概念に含まれるものとする。
【0063】
第3吸収トルク制御部15cには、図4に示すように、回転速度センサ14により検出されたエンジン回転速度が入力され、そのエンジン回転速度に基づいて、HSTポンプ23の最大吸収トルクの第3目標値63が決定される(決定方法としは、演算または予め設定されたルックアップテーブルの参照などが採用できる)。エンジン回転速度が高いほど、第3目標値63が大きくなるように、第3目標値63が決定される。ここで、後に図5を参照して説明するように、エンジン回転速度がある値(例えば約1850rpm)以上の範囲にあるときは、第3目標値63は、HSTポンプ23の最大吸収トルクの可変範囲の上限値に達し、その上限値で一定になり、また、エンジン回転速度がある値(例えば約1050rpm)以下の範囲にあるときは、第3目標値63は、HSTポンプ23の最大吸収トルクの可変範囲の下限値(ゼロ)に達し、その下限値で一定になる。しかし、このことは、本明細書では上記の「エンジン回転速度が大きいほど、第3目標値63が大きくなる」の概念に含まれるものとする。
【0064】
上記のように、第2および第3目標値62と63はエンジン回転速度の関数として決定される。これに対し、第1目標値61はアクセル操作量の関数として決定される。
【0065】
ここで、アクセル操作量は、エンジンコントローラ11の制御特性(これは、図3及び図5に出力トルク特性ライン55で示される)に基づいて、エンジン回転速度に変換することができる。その変換の方法には複数通りの方法があり得るが、最も簡単な方法の一例は、例えば次のようなものである。例えば、図5において、0%から100%までの各アクセル操作量に対応する特性ライン55が、所定の出力トルク値に相当するライン(例えば、トルク「0」のライン、つまり図5中の横軸)と交わる点を求める。そして、その各アクセル操作量を、その各交点のエンジン回転速度に変換する。図5の例では、アクセル操作量0%、25%、50%、75%、100%はそれぞれ、エンジン回転速度800rpm、1150rpm、1500rpm、1850rpm、2200rpmに変換される。
【0066】
このようにアクセル操作量をエンジン回転速度に変換することで、第1目標値61をエンジン回転速度に対してマッピングすることができる(つまり、第1目標値を、アクセル操作量に対応したエンジン回転速度の関数として表現することができる)。このようにエンジン回転速度に対してマッピングされた第1目標値61の特性例を、図5に実線のライン61で示す。また、エンジン回転速度に対してマッピングされた第2目標値62の特性例を、図5に一点鎖線のライン62で示し、エンジン回転速度に対してマッピングされた第3目標値63の特性例を、図5に二点鎖線のライン63で示す。
【0067】
図5に示されるように、第1目標値61は、次のように設定されている。まず、アクセル操作量が0%(ローアイドル状態Liのエンジン回転速度)のときには、第1目標値61はゼロである。アクセル操作量が大きいほど(つまり、アクセル操作量から変換されたエンジン回転速度が大きいほど)、第1目標値61は大きくなる。アクセル操作量が所定の大きい値(例えば約60%)以上のとき、換言すると、アクセル操作量から変換されたエンジン回転速度が所定の高い値(例えば約1600rpm)以上のときには、第1目標値61は、最大吸収トルクの可変範囲の上限値に到達して、その上限値で一定である。
【0068】
第2目標値62は、次のように設定されている。まず、ローアイドル状態Liのエンジン回転速度から所定の値(例えば1300rpm)までの低速領域では、第1目標値61より大きい値を示す。エンジン回転速度が大きいほど、第2目標値62は大きくなる。そして、エンジン回転速度が上記所定値(例えば、約1300rpm)以上の中高速領域では、第2目標値62の特性ラインは第1目標値61の特性ラインと重なる。
【0069】
第3目標値63は、次のように設定されている。まず、エンジン回転速度がローアイドル状態Liから所定値(例えば、約1050rpm)の間にあるときには、最大吸収トルクの可変範囲の下限値、ゼロ、である。エンジン回転速度がその所定値以上のときには、エンジン回転速度が大きいほど、第3目標値63は大きくなる。そして、エンジン回転速度が所定の非常に高い値(例えば、約1850rpm)より低い低速から中速及びある程度高速の領域では、第1目標値より低く、上記非常に高い値(例えば、約1850rpm)以上の非常に高速の領域では、第3目標値63の特性ラインは第1目標値61の特性ラインと重なる。
【0070】
図5に示された第1、第2および第3目標値61、62および63の特性例は、一つの例示であり、他の特性例も用いることができる。例えば、図6又は図7に示された特性例になるように、それらの目標値61、62および63を設定することもできる。
【0071】
図6に示された特性例は、図5に示された特性例と比較して、第1目標値61と第2目標値62とが重なるエンジン回転速度の領域が、より高い方(例えば、約1600rpm以上の高速領域)へシフトしている。図7に示された特性例では、図5に示された特性例と比較して、第1、第2および第3目標値61、62および63が重なり合うエンジン回転速度の領域が、より低い方まで(例えば、約1300rpm以上の中高速範囲に)拡大している。
【0072】
図5、図6及び図7にそれぞれ示される特性例に共通することは、次のとおりである。すなわち、本実施形態では、エンジン回転速度の可変範囲にすべてにわたって、
第2目標値62≧第1目標値61≧第3目標値63
という関係が成立するように、第1、第2および第3目標値61、62および63が決定される。とりわけ、エンジン回転速度の所定値以下(図示の例では約1300rpm以下)の低速領域では、
第2目標値62>第1目標値61>第3目標値63
という関係が成立するようになっている。
【0073】
再び図4を参照する。HSTコントローラ15の小選択部15dは、第1吸収トルク制御部15aにより決定された第1目標値61と、第2吸収トルク制御部15bにより決定された第2目標値62とを比較し、両者61と62のうち小さい方の目標値αを選択する。
【0074】
大選択部15eは、小選択部15dにより選択された目標値αと、第3吸収トルク制御部15cにより決定された第3目標値63とを比較し、両者αと63のうちの大きい方の目標値βを選択する。
【0075】
大選択部15eにより選択された目標値βは、上述した最大吸収トルク指令として、HSTコントローラ15からEPCバルブ17、18に出力される。図2を参照して既に説明したように、EPCバルブ17、18、ポンプ容量可変ユニット20が動作する。それにより、HSTポンプ23の最大吸収トルクが、選択された目標値βになるように制御される。
【0076】
図8は、HSTコントローラ15により行われる制御動作のフローを示している。
【0077】
図8に示すように、現在のアクセル操作量に基づいて、第1吸収トルク制御部15aにより、第1目標値(A)61が決定される(S1)。また、現在のエンジン回転速度に基づいて、第2吸収トルク制御部15b及び第3吸収トルク制御部15cにより、第2目標値(B)62及び第3目標値(C)63がそれぞれ算出される(S2)。
【0078】
小選択部15dにより、第1目標値(A)61と第2目標値(B)62の大きさが比較され(S3)、小さいほうの目標値(A又はB)が中間的な目標値αとして求められる(S4又はS5)。
【0079】
その後に、大選択部15eにより、中間的な目標値αと第3目標値(C)63の大きさが比較され(S6)、大きいほうの目標値(α又はC)が、最終的な目標値βとして求められる(S7又はS8)。この最終的な目標値βが、HSTコントローラ15から最大吸収トルク指令として出力される(S9)。その結果、HSTポンプ23の最大吸収トルクが、最終的な目標値βになるように制御される。
【0080】
図9は、本実施形態において、フォークリフトの発進時にどのようにHSTポンプの最大吸収トルクが決定されるかの一つの例を示す。ここでは、図5に示される特性例を基に、HSTポンプ23の最大吸収トルクが決定される場合を例にとり、説明する。
【0081】
図9に示すように、発進時には、ローアイドル点Li(アクセル操作量0%)から、アクセル操作量が増加する。第1目標値61は、矢印61Aに示すように、ローアイドル点Liから増大する。これと並行して、アクセル操作量の増大に伴ってエンジン回転速度が上昇する。それにより、第2および第3目標値62及び63も、矢印62A及び63Aに示すように、増大していく。この場合、小選択部15dにより、第1目標値61と第2目標値62のうちの小さい方、つまり第1目標値61が選択される。そして、大選択部15eにより、第1目標値61と第3目標値63のうち大きい方、つまり第1目標値61が選択される。結果として、HSTポンプ23の最大吸収トルクは第1目標値61に制御される。すなわち、HSTポンプ23の最大吸収トルクは、アクセル操作量に応じて制御される。結果として、アクセル操作がなければ、HSTポンプ23は吸収トルクを発生しないので、クリープ現象が防止され、また、アクセル操作に対してタイムラグなしにスムーズに車両が発進する。
【0082】
図10は、本実施形態において、ある程度の高速で走行中にアクセル操作量が急に大幅に減少した時(例えば、運転者がアクセルペダル5から足を離した時)に、どのようにHSTポンプ23の最大吸収トルクが決定されるかの一つの例を示す。
【0083】
図10に示されるように、この場合には、アクセル操作量はかなり大きい値(図示の例では約50%)から、かなり小さい値(図示の例では約10%)へと急激に減少する。そのため、第1目標値61は、矢印61Bに示すように、アクセル操作量と同様に急激に減少する。しかし、車両の慣性力により、エンジン回転速度はもっと緩やかに減少し、依然として比較的高い値である。そのため、第2目標値62と第3目標値63は、矢印62Bと63Bにそれぞれ示すように、わずかしか減少せず、依然として比較的大きい値である。この場合、小選択部15dにより、第1目標値61と第2目標値62のうちの小さい方、つまり第1目標値61が選択されることになる。そして、大選択部15eにより、第1目標値61と第3目標値63のうち大きい方、つまり第3目標値63が選択されることになる。結果として、HSTポンプ23の最大吸収トルクは第3目標値63に制御される。すなわち、HSTポンプ23の最大吸収トルクは、エンジン回転速度に応じて制御される。結果として、アクセル操作量が急減少しても、HSTポンプ23の最大吸収トルクは穏やかに減少するので、エンジン13のオーバーランが防止され、エンジン13の損傷を防ぐことができる。
【0084】
図11は、本実施形態において、ある程度高速で走行中にエンジン回転速度が急に大幅に減少した時(例えば、フォークリフトが積荷を運んで登坂走行をする時)に、どのようにHSTポンプの最大吸収トルクが決定されるかの一つの例を示す。
【0085】
図11に示されるように、エンジン回転速度は、かなり高い値(図示の例では約1500rpm)から、かなり低い値(図示の例では約1000rpm)へと急激に低下する。そのため、第2目標値62と第3目標値63は、矢印62Cと63Cにそれぞれ示すように、急激に減少し、かなり小さい値になる。これに対し、運転者はアクセルペダルをかなり深く踏んだままなので、アクセル操作量は依然として、かなり高い値(図示の例では約50%)にある。そのため、第1目標値61は、アクセル操作量に応じて決定されるため、ドット61Cに示すように、依然としてかなり高い値である。この場合、小選択部15dにより、第1目標値61と第2目標値62のうちの小さい方、つまり第2目標値62が選択される。そして、大選択部15eにより、第2目標値62と第3目標値63のうち大きい方、つまり第2目標値62が選択される。結果として、HSTポンプ23の最大吸収トルクは第2目標値62に制御される。すなわち、HSTポンプ23の最大吸収トルクは、エンジン回転速度に応じて制御される。ゆえに、HSTポンプ23の最大吸収トルクは急激に減少するので、エンジン13に過大なトルクがかかることが避けられ、エンジン・ストールが防止される。
【0086】
以上、本発明の一実施形態について説明した。以下では、アクセル操作量又はエンジン回転速度がどのように変化した時に、HSTポンプの吸収トルクをどのように制御するのか、という観点から、本実施形態における制御を説明する。
【0087】
まず、図9、図10又は図11に示すように、アクセル操作量の可変範囲内に、0%を含んだ小操作量領域と、小操作量領域より大きい大操作量領域とを想定する。また、エンジン回転速度の可変範囲に、ローアイドル状態Liを含んだ低速領域と、低速領域より高い高速領域とを想定する。図示の具体例では、小操作量領域と低速領域は、ローアイドル状態Li(最低で約750rpm)から約1300rpmのエンジン回転速度の範囲に相当し、また、大操作量領域と高速領域は、1450rpmからハイアイドル状態Hi(約2200rpm)のエンジン回転速度の範囲に相当する(各領域を定義する具体的数値は、別の値であってもよく。また、小操作量領域と低速領域が部分的に異なっていても、大操作量領域と高速領域が部分的に異なっていてもよい)。
【0088】
HSTコントローラ15は、HSTポンプ23の最大吸収トルクを、次の(1)から(5)のように制御する。
【0089】
(1) エンジン回転速度が低速領域にある状態で、アクセル操作量が所定の小操作量領域内で一定又は変化するとき(例えば、運転者がゆっくりとアクセルペダルを踏みながらフォークリフトを発進させたとき)には、HSTコントローラ15は、そのアクセル操作量に応答して、アクセル操作量が大きいほど、HSTポンプ23の最大吸収トルクが大きくなるように、前記HSTポンプ23を制御する。これにより、クリープ現象が防止され、また、運転者がゆっくりとアクセルペダル踏みながらフォークリフトを発進させたとき、そのアクセル操作に対してタイムラグなしにスムーズに車両が発進する。
【0090】
(2) エンジン回転速度が、高速領域にある状態で、アクセル操作量が大操作量領域から小操作量領域へ減少したとき(例えば、フォークリフトがある程度の高速で走行している最中に、運転者がアクセルペダルから足を離したとき)には、HSTコントローラ15は、エンジン回転速度に応答して、エンジン回転速度が大きいほど、HSTポンプ23の最大吸収トルクが大きくなるように、HSTポンプ23を制御する。これにより、ある程度の高速で走行中にアクセル操作量が急減少しても、HSTポンプ23の最大吸収トルクは穏やかに減少するので、エンジン13のオーバーランが防止される。
【0091】
(3) アクセル操作量が大操作量領域にある状態で、エンジン回転速度が高速領域から低速領域へ減少したとき(例えば、フォークリフトがある程度の高速で平坦路を走行している状態から、上り坂の登坂走行へ入ったとき)には、HSTコントローラ15は、エンジン回転速度に応答して、エンジン回転速度が大きいほど、HSTポンプ23の最大吸収トルクが大きくなるように、HSTポンプ23を制御する。これにより、ある程度高速で走行中にエンジン回転速度が急に大幅に減少したとき、HSTポンプ23の最大吸収トルクは急激に減少するので、エンジン13に過大なトルクがかかることが避けられ、エンジン・ストールが防止される。
【0092】
(4) エンジン回転速度が低速領域にある状態で、かつアクセル操作量が小操作量領域から大操作領域に増加したとき(例えば、運転者が一気に深くアクセルペダルを踏み込んでフォークリフトを発進させたとき)には、HSTコントローラ15は、エンジン回転速度に応答して、エンジン回転速度が大きいほど、HSTポンプ23の最大吸収トルクが大きくなるように、HSTポンプ23を制御する。具体的には、アクセルペダルを一気に踏込むことにより、アクセル操作量は大きな値として検出され、大操作領域となるが、エンジン回転数は即座に上がらないため、回転速度センサが検出するエンジン回転速度は低速領域にあるため、HSTコントローラ15は、図5の第2目標値62の特性例のライン62の立ち上がり付近(エンジン回転数はLi付近)の最大吸収トルクが選択されることになり、アクセルペダルを一気に踏込んでもある程度のポンプ吸収トルクでHSTポンプ23が動作することになる。これにより、エンジン・ストールを防止することができ、かつ、アクセル操作に対してタイムラグなしにフォークリフトを発進することができる。
【0093】
(5) エンジン回転速度が高速領域にある状態で、アクセル操作量が大操作量領域内で一定又は変化するとき(例えば、高速走行中でかつアクセル操作量も大きいとき)には、HSTコントローラ15は、アクセル操作量に応答して、アクセル操作量が大きいほど、HSTポンプ23の最大吸収トルクが大きくなるように、HSTポンプ23を制御する。これにより、高速走行中でかつアクセル操作量も大きいとき、アクセル操作に応じて車両の速度を制御することができる。
【0094】
さらに、以下では、アクセル操作量又はエンジン回転速度がどのような状態にある時に、HSTポンプの吸収トルクをどのように制御するのか、という観点から、本実施形態における制御を説明する。HSTコントローラ15は、HSTポンプ23の最大吸収トルクを、次の(11)から(14)ように制御する。
【0095】
(11) エンジン回転速度が低速領域にあり、かつアクセル操作量が小操作量領域にあるとき(例えば、運転者がゆっくりとアクセルペダルを踏みながらフォークリフトを発進させたとき)には、HSTコントローラ15は、アクセル操作量に応答して、アクセル操作量が大きいほど、HSTポンプ23の最大吸収トルクが大きくなるように、HSTポンプ23を制御する。これにより、クリープ現象が防止され、また、アクセル操作に対してタイムラグなしにスムーズに車両が発進する。低速走行中でアクセル操作量も小さいとき、アクセル操作に応じて車両の速度を制御できる。
【0096】
(12) エンジン回転速度が高速領域にあり、かつアクセル操作量が小操作量領域にあるとき(例えば、フォークリフトがある程度の高速で走行している最中に、運転者がアクセルペダルから足を離したとき)には、HSTコントローラ15は、エンジン回転速度に応答して、エンジン回転速度が大きいほど、HSTポンプ23の最大吸収トルクが大きくなるように、HSTポンプ23を制御する。これにより、ある程度の高速で走行中にアクセル操作量が急減少しても、HSTポンプ23の最大吸収トルクは穏やかに減少するので、エンジン13のオーバーランが防止される。
【0097】
(13) エンジン回転速度が低速領域にあり、かつアクセル操作量が大操作量領域にあるとき(例えば、フォークリフトがある程度の高速で平坦路を走行している状態から、上り坂の登坂走行へ入ったとき、あるいは、運転者が一気に深くアクセルペダルを踏み込んでフォークリフトを発進させたとき)は、HSTコントローラ15は、エンジン回転速度に応答して、エンジン回転速度が大きいほど、HSTポンプ23の最大吸収トルクが大きくなるように、HSTポンプを制御する。これにより、ある程度の高速で走行中にエンジン回転速度が急に大幅に減少したとき、HSTポンプ23の最大吸収トルクは急激に減少するので、エンジン13に過大なトルクがかかることが避けられ、エンジン・ストールが防止される。また、運転者が一気に深くアクセルペダルを踏み込んでフォークリフトを発進させたとき、エンジン・ストールを防止することができ、かつ、(アクセル操作量の急激な増大により、ある程度の量のポンプ吸収トルクでHSTポンプ23が制御されるので)アクセル操作に対してタイムラグなしにフォークリフトを発進することができる。
【0098】
(4) エンジン回転速度が高速領域にあり、かつアクセル操作量が大操作量領域にあるとき(例えば、高速走行中でかつアクセル操作量も大きいとき)には、HSTコントローラ15は、アクセル操作量に応答して、アクセル操作量が大きいほど、HSTポンプ23の最大吸収トルクが大きくなるように、HSTポンプ23を制御する。これにより、高速走行中でアクセル操作量も大きいときには、アクセル操作に応じて車両の速度を制御することができる。
【0099】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、これは本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態とは異なる種々の態様で実施することができる。コントローラ15によって行われてもよいし、あるいは、HSTコントローラ15のアクセル増加率制限部15aの機能が、エンジンコントローラ11によって行われてもよい。また、フォークリフトに限らず、ホイールローダやクレーン車等の荷役車両において、本発明を適用することにより、同様な課題を解決することができる。さらに、エンジンからの動力をHSTなどの油圧式動力伝達装置を通じて駆動輪に伝達するように構成された車両だけでなく、エンジンからの動力を油圧式動力伝達装置を通じて、何らかの回転駆動を必要とする他の種類の装置へ伝達するように構成された産業機械にも、本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0100】
1 フォークリフト
3 駆動輪
5 アクセルペダル
7 前後進切替レバー
9 出力軸
10 パワートレイン
11 エンジンコントローラ
13 エンジン
14 回転速度センサ
15 HSTコントローラ
15a 第1吸収トルク制御部
15b 第2吸収トルク制御部
15c 第3吸収トルク制御部
15d 小選択部
15e 大選択部
17、18 HSTポンプ用EPCバルブ
20 ポンプ容量可変ユニット
21 HST
23 HSTポンプ
25 HSTモータ
61 第1目標値
62 第2目標値
63 第3目標値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンにより駆動される可変容量型の油圧ポンプと、前記油圧ポンプにより駆動される油圧モータと、その油圧モータにより駆動される負荷装置とを有する車両において、
アクセル操作量に応答して、前記エンジンを制御するエンジン制御手段と、
前記アクセル操作量および前記エンジン回転速度に応答して、前記油圧ポンプを制御するポンプ制御手段と
を備え、
前記ポンプ制御手段は、
前記アクセル操作量に応答して、前記アクセル操作量が大きいほど、前記油圧ポンプの最大吸収トルクの第1目標値が大きくなるように、前記第1目標値を決定する第1吸収トルク制御手段と、
前記エンジン回転速度に応答して、前記エンジン回転速度が大きいほど、前記油圧ポンプの最大吸収トルクの第2目標値が大きくなるように、前記第2目標値を決定する第2吸収トルク制御手段と、
前記エンジン回転速度に応答して、前記エンジン回転速度が大きいほど、前記油圧ポンプの最大吸収トルクの第3目標値が大きくなるように、前記第3目標値を決定する第3吸収トルク制御手段と、
前記第1と第2目標値の中から小さい方を選択する小選択手段と、
前記小選択手段により選択された目標値と前記第3目標値の中から大きい方を選択する大選択手段と、
前記油圧ポンプの最大吸収トルクが前記大選択手段により選択された目標値になるように、前記油圧ポンプを制御する吸収トルク制御手段と
を備えた車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両において、
前記アクセル操作量を、前記エンジン制御手段の制御特性に基づいて、前記エンジン回転速度に変換することで、前記第1目標値を前記エンジン回転速度に対してマッピングし、前記第2および第3目標値も前記エンジン回転速度に対してマッピングし、そして、マッピングされた前記第1、第2および第3目標値を比較したならば、
前記エンジン回転速度の可変範囲のすべてにわたって、
前記第2目標値≧前記第1目標値≧前記第3目標値
という関係が成立し、かつ、
前記エンジン回転速度の所定値以下の低速領域で、
第2目標値>第1目標値>第3目標値
という関係が成立するように、前記第1、第2および第3目標値が決定される、
車両。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか一項に記載の車両において、
前記ポンプ制御手段は、
前記車両の発進時には、前記アクセル操作量又は前記エンジン回転速度に応じて前記油圧ポンプの最大吸収トルクを制御し、
所定の高速領域内の前記エンジン回転速度で前記エンジンが稼働中に、前記アクセル操作量が所定の大操作量領域から所定の小操作量領域へ減った時には、前記エンジン回転速度に応じて前記油圧ポンプの最大吸収トルクを制御し、
前記高速領域内の前記エンジン回転速度で前記エンジンが稼働中に、前記エンジン回転速度が所定の低速領域に低下した時には、前記エンジン回転速度に応じて前記油圧ポンプの最大吸収トルクを制御する、
車両。
【請求項4】
エンジンと、前記エンジンにより駆動される可変容量型の油圧ポンプと、前記油圧ポンプにより駆動される油圧モータと、その油圧モータにより駆動される負荷装置とを有する車両において、
アクセル操作量に応答して、前記エンジンを制御するエンジン制御手段と、
前記アクセル操作量および前記エンジン回転速度に応答して、前記油圧ポンプを制御するポンプ制御手段と
を備え、
前記ポンプ制御手段は、
(1)前記エンジン回転速度が、ローアイドル状態を含む所定の低速領域にある状態で、前記アクセル操作量が所定の小操作量領域内で一定又は変化するときには、前記アクセル操作量に応答して、前記アクセル操作量が大きいほど、前記油圧ポンプの最大吸収トルクが大きくなるように、前記油圧ポンプを制御し、
(2)前記エンジン回転速度が、前記低速領域より高い所定の高速領域にある状態で、前記アクセル操作量が、所定の大操作量領域から、前記大操作領域より小さくかつゼロを含む所定の小操作量領域へ減少したときには、前記エンジン回転速度に応答して、前記エンジン回転速度が大きいほど、前記油圧ポンプの最大吸収トルクが大きくなるように、前記油圧ポンプを制御し、
(3)前記アクセル操作量が、前記小操作量領域より大きい所定の大操作量領域にある状態で、前記エンジン回転速度が、前記高速領域から前記低速領域へ減少したときには、前記エンジン回転速度に応答して、前記エンジン回転速度が大きいほど、前記油圧ポンプの最大吸収トルクが大きくなるように、前記油圧ポンプを制御する、
車両。
【請求項5】
請求項4に記載の車両において、前記ポンプ制御手段は、さらに、
(4)前記エンジン回転速度が前記低速領域にある状態で、前記アクセル操作量が前記小操作量領域から大操作領域に増加したときには、前記エンジン回転速度に応答して、前記エンジン回転速度が大きいほど、前記油圧ポンプの最大吸収トルクが大きくなるように、前記油圧ポンプを制御し、
(5)前記エンジン回転速度が前記高速領域にある状態で、前記アクセル操作量が前記大操作量領域内で一定又は変化するときには、前記アクセル操作量に応答して、前記アクセル操作量が大きいほど、前記油圧ポンプの最大吸収トルクが大きくなるように、前記油圧ポンプを制御する、
車両。
【請求項6】
エンジンと、前記エンジンにより駆動される可変容量型の油圧ポンプと、前記油圧ポンプにより駆動される油圧モータと、その油圧モータにより駆動される負荷装置とを有する車両において、
アクセル操作量に応答して、前記エンジンを制御するエンジン制御手段と、
前記アクセル操作量および前記エンジン回転速度に応答して、前記油圧ポンプを制御するポンプ制御手段と
を備え、
前記ポンプ制御手段は、
(1)前記エンジン回転速度が、ローアイドル状態を含む所定の低速領域にあり、かつ前記アクセル操作量が、ゼロを含む所定の小操作量領域にあるときには、前記アクセル操作量に応答して、前記アクセル操作量が大きいほど、前記油圧ポンプの最大吸収トルクが大きくなるように、前記油圧ポンプを制御し、
(2)前記エンジン回転速度が前記低速領域より高い所定の高速領域にあり、かつ前記アクセル操作量が前記小操作量領域にあるときには、前記エンジン回転速度に応答して、前記エンジン回転速度が大きいほど、前記油圧ポンプの最大吸収トルクが大きくなるように、前記油圧ポンプを制御し、
(3)前記エンジン回転速度が前記低速領域にあり、かつ前記アクセル操作量が前記小操作量領域より大きい所定の大操作量領域にあるときは、前記エンジン回転速度に応答して、前記エンジン回転速度が大きいほど、前記油圧ポンプの最大吸収トルクが大きくなるように、前記油圧ポンプを制御する、
車両。
【請求項7】
請求項6に記載の車両において、前記ポンプ制御手段は、さらに、(4)前記エンジン回転速度が前記高速領域にあり、かつ前記アクセル操作量が前記大操作量領域にあるときには、前記アクセル操作量に応答して、前記アクセル操作量が大きいほど、前記油圧ポンプの最大吸収トルクが大きくなるように、前記油圧ポンプを制御する、
車両。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の車両において、フォークリフトとして構成された車両。
【請求項9】
エンジンと、前記エンジンにより駆動される可変容量型の油圧ポンプと、前記油圧ポンプにより駆動される油圧モータと、その油圧モータにより駆動される負荷装置と、アクセル操作量に応答して前記エンジンを制御するエンジン制御手段とを有する車両のための、前記油圧ポンプを制御するポンプ制御装置において、
前記アクセル操作量に応答して、前記アクセル操作量が大きいほど、前記油圧ポンプの最大吸収トルクの第1目標値が大きくなるように、前記第1目標値を決定する第1吸収トルク制御手段と、
前記エンジン回転速度に応答して、前記エンジン回転速度が大きいほど、前記油圧ポンプの最大吸収トルクの第2目標値が大きくなるように、前記第2目標値を決定する第2吸収トルク制御手段と、
前記エンジン回転速度に応答して、前記エンジン回転速度が大きいほど、前記油圧ポンプの最大吸収トルクの第3目標値が大きくなるように、前記第3目標値を決定する第3吸収トルク制御手段と、
前記第1と第2目標値の中から小さい方を選択する小選択手段と、
前記小選択手段により選択された目標値と前記第3目標値の中から大きい方を選択する大選択手段と、
前記油圧ポンプの最大吸収トルクが前記大選択手段により選択された目標値になるように、前記油圧ポンプを制御する吸収トルク制御手段と
を備えたポンプ制御装置。
【請求項10】
エンジンと、前記エンジンにより駆動される可変容量型の油圧ポンプと、前記油圧ポンプにより駆動される油圧モータと、その油圧モータにより駆動される負荷装置と、アクセル操作量に応答して前記エンジンを制御するエンジン制御手段とを有する車両のための、前記油圧ポンプを制御する方法において、
前記アクセル操作量に応答して、前記アクセル操作量が大きいほど、前記油圧ポンプの最大吸収トルクの第1目標値が大きくなるように、前記第1目標値を決定する第1吸収トルク制御ステップと、
前記エンジン回転速度に応答して、前記エンジン回転速度が大きいほど、前記油圧ポンプの最大吸収トルクの第2目標値が大きくなるように、前記第2目標値を決定する第2吸収トルク制御ステップと、
前記エンジン回転速度に応答して、前記エンジン回転速度が大きいほど、前記油圧ポンプの最大吸収トルクの第3目標値が大きくなるように、前記第3目標値を決定する第3吸収トルク制御ステップと、
前記第1と第2目標値の中から小さい方を選択する小選択ステップと、
前記小選択手段により選択された目標値と前記第3目標値の中から大きい方を選択する大選択ステップと、
前記油圧ポンプの最大吸収トルクが前記大選択手段により選択された目標値になるように、前記油圧ポンプを制御する吸収トルク制御ステップと
を備えたポンプ制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−57664(P2012−57664A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199397(P2010−199397)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【出願人】(000184643)コマツユーティリティ株式会社 (106)
【Fターム(参考)】