説明

油脂組成物

【課題】 顕著な抗肥満効果と摂食抑制効果を有し、優れた保存性を有する油脂組成物を提供する。
【解決手段】 次の成分(A)及び(B):
(A)構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸含量が80質量%以上、共役リノール酸含量が2〜85質量%、かつω3系不飽和脂肪酸含量が15質量%未満であるジアシルグリセロールを15質量%以上含有し、モノアシルグリセロール含量が5質量%以下、遊離脂肪酸含量が5質量%以下である油脂 100質量部
(B)トコフェロール 0.001〜2質量部
を含有する油脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共役リノール酸を含むジアシルグリセロール含量の高い油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
世の中の健康指向を背景に、油脂の生理効果について、さまざまな研究がなされてきている。例えば、共役リノール酸には、抗肥満作用や抗腫瘍作用のほか、糖尿病やシンドロームXに対する治療効果が見出されている(特許文献1〜5、非特許文献1参照)。このような機能を有する共役リノール酸の食品への応用が報告されている(特許文献6参照)。
一方、ジアシルグリセロールにも、抗肥満作用等が見出されている(特許文献7、8参照)。更にω3系脂肪酸やリノール酸等、特定の脂肪酸含量の高いジアシルグリセロールを含む油脂が知られている(特許文献9〜11参照)。
このほか、ジアシルグリセロールと植物ステロールとを組合せた油脂組成物には血中コレステロール値改善効果等が見出されている(特許文献12参照)。
共役リノール酸は、遊離脂肪酸であることから、脂肪酸特有の異味により、そのまま摂取したり、食品に利用するには適していなかった。そこで、共役リノール酸をエステル体にすることで、応用範囲を広げる試みがなされている(特許文献13〜18、非特許文献2参照)。
【0003】
しかし、エステル体であっても上記化合物は共役リノール酸の含量が高くなると、風味、保存安定性の点で満足できるものではなかった。
【特許文献1】国際公開第96/06605号パンフレット
【特許文献2】国際公開第97/46230号パンフレット
【特許文献3】特開2003-171272号公報
【特許文献4】国際公開第02/009691号パンフレット
【特許文献5】国際公開第02/009693号パンフレット
【特許文献6】国際公開第00/21379号パンフレット
【特許文献7】特開平4-300826号公報
【特許文献8】特開平10-176181号公報
【特許文献9】国際公開第01/109899号パンフレット
【特許文献10】国際公開第02/11552号パンフレット
【特許文献11】欧州公開第0679712号明細書
【特許文献12】国際公開第99/48378号パンフレット
【特許文献13】国際公開第00/64854号パンフレット
【特許文献14】国際公開第04/96748号パンフレット
【特許文献15】特開2003-113396号公報
【特許文献16】米国特許第6432453号明細書
【特許文献17】米国特許第6608222号明細書
【特許文献18】欧州公開第1097708号明細書
【非特許文献1】"Lipids", 1997年、32巻、p.853-858
【非特許文献2】"Biotechnology Letters", 1998年、20巻、6号、p.617-621
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、顕著な抗肥満効果と優れた安定性を有する共役リノール酸を含むジアシルグリセロール含量の高い油脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが検討したところ、油脂組成物のジアシルグリセロール含量、ジアシルグリセロール中の共役リノール酸含量、トコフェロール含量等を特定範囲に調整することにより、上記課題を解決できることを見出した。更に、得られた油脂組成物が摂食抑制効果を有することを見出し、本発明に至った。
【0006】
すなわち、本発明は、次の成分(A)及び(B):
(A)構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸含量が80質量%以上で、共役リノール酸含量が2〜85質量%、かつω3系不飽和脂肪酸含量が15質量%未満であるジアシルグリセロールを15質量%以上含有し、モノアシルグリセロール含量が5質量%以下、遊離脂肪酸含量が5質量%以下である油脂 100質量部
(B)トコフェロール 0.001〜2質量部
を含有する油脂組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、特定組成の共役リノール酸を含むジアシルグリセロール含量の高い油脂及びトコフェロールを含有する油脂組成物とすることで、これを摂取した場合に顕著な抗肥満効果と摂食抑制効果を有し、更に、油脂組成物としての保存安定性を著しく改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の油脂組成物は、成分(A)の油脂を必須成分として含む。油脂(A)は、ジアシルグリセロール(DAG)を15質量%(以下、単に%で示す)以上含有するが、15〜95%含有するのが好ましく、より好ましくは20〜95%、更に35〜95%、特に60〜90%、殊更70〜85%含有するのが生理効果、油脂の工業的生産性、外観、食品等への応用の点で好ましい。
【0009】
本発明で使用される油脂(A)に含まれるジアシルグリセロールは、その構成脂肪酸の80〜100%が不飽和脂肪酸であるが、好ましくは85〜100%、更に90〜98%、特に93〜98%であるのが外観、生理効果、油脂の工業的生産性の点で好ましい。ここで、該不飽和脂肪酸の炭素数は14〜24、更に16〜22であるのが好ましい。
【0010】
油脂(A)に含まれるジアシルグリセロールを構成する脂肪酸のうち、共役リノール酸(CLA)の含有量は2〜85%、好ましくは5〜80%、更に15〜75%、特に35〜70%、殊更40〜55%であるのが体脂肪低下、摂食抑制、保存性、外観、脂肪酸の摂取バランスの点で望ましい。
【0011】
共役リノール酸としては、9,11−オクタデカジエン酸、10,12−オクタデカジエン酸、これらの位置及び幾何異性体、これらの混合物が挙げられる。具体的には、cis−9,trans−11−オクタデカジエン酸、trans−9,cis−11−オクタデカジエン酸、trans−10,cis−12−オクタデカジエン酸等である。共役リノール酸の製法としては、リノール酸や、高リノール酸含量の油脂を原料とし、反芻動物や微生物の酵素を用いた生化学的な共役化、アルカリ条件下での加熱による化学的な共役化等が挙げられる。
【0012】
ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸のうち、オレイン酸の含有量は1〜65%、好ましくは2〜50%、特に3〜30%、殊更4〜15%であるのが保存性、外観、脂肪酸の摂取バランスの点で望ましい。更に外観、生理効果の点から、ジアシルグリセロール中のジオレイルグリセロールの含有量は、45%未満、特に0〜40%が好ましい。
【0013】
ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸のうちω3系不飽和脂肪酸の含有量は15%未満であるが、好ましくは0〜10%であるのが安定性、外観、脂肪酸の摂取バランスの点で望ましい。ω3系不飽和脂肪酸としては、α−リノレン酸、イコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等が挙げられる。
【0014】
ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸のうち、飽和脂肪酸の含有量は20%未満であるが、0〜10%、更に0〜7%、特に2〜7%、殊更2〜6%であるのが、外観、生理効果、油脂の工業的生産性の点でよい。飽和脂肪酸としては、炭素数14〜24、特に16〜22のものが好ましく、パルミチン酸、ステアリン酸が最も好ましい。
【0015】
ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸のうち、共役リノール酸以外のトランス不飽和脂肪酸の含有量は、0〜3.5%、特に0.1〜3%であるのが風味、生理効果、外観、保存性、油脂の工業的生産性の点で好ましい。
【0016】
ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸中、炭素数12以下の脂肪酸の含有量は、風味の点で5%以下であるのが好ましく、更に0〜2%、特に0〜1%、実質的に含まないのが最も好ましい。残余の構成脂肪酸は炭素数14〜24、特に16〜22であるのが好ましい。
【0017】
また、生理効果、保存性、油脂の工業的生産性及び風味の点から、ジアシルグリセロール中の1,3−ジアシルグリセロールの割合が50%以上、更に52〜100%、更に54〜90%、特に56〜80%であるジアシルグリセロールを用いるのが好ましい。
【0018】
本発明の油脂組成物で使用される油脂(A)は、トリアシルグリセロール(TAG)を4.9〜84.9%、更に4.9〜64.9%、更に6.9〜39.9%、特に6.9〜29.9%、殊更9.8〜19.8%含有するのが生理効果、油脂の工業的生産性、外観の点で望ましい。
【0019】
本発明で使用される油脂(A)に含まれるトリアシルグリセロールの構成脂肪酸中、共役リノール酸の含有量は、50%以下であるのが好ましく、更に1〜35%、特に2〜20%、殊更5〜15%であることが、保存性、生理効果、油脂の工業的生産性の点で好ましい。
油脂(A)に含まれるジアシルグリセロールを構成する脂肪酸中の共役リノール酸の含有量と、トリアシルグリセロールを構成する脂肪酸中の共役リノール酸の含有量との質量比((1)式)が1〜10であるのが好ましく、更に2〜9、特に3〜8、殊更4〜7であるのが、保存性、生理効果の点で好ましい。
DG中のCLA含量/TG中のCLA含量 ・・・(1)式
【0020】
油脂(A)に含まれるトリアシルグリセロールの構成脂肪酸中、オレイン酸の含有量は、15〜70%であるのが好ましく、更に20〜65%、特に30〜60%、殊更45〜55%であることが、保存性、生理効果、油脂の工業的生産性の点で好ましい。
【0021】
油脂(A)に含まれるトリアシルグリセロールの構成脂肪酸は、70〜100%、更に80〜100%、更に90〜100%、特に93〜98%、殊更94〜98%が不飽和脂肪酸であるのが、生理効果、油脂の工業的生産性の点で好ましい。不飽和脂肪酸の炭素数は10〜24、更に16〜22であるのが生理効果、油脂の工業的生産性の点で好ましい。
【0022】
本発明の油脂組成物で使用される油脂(A)は、モノアシルグリセロール(MAG)を0.1〜5%、更に0.1〜2%、更に0.1〜1.5%、特に0.1〜1.3%、殊更0.2〜1%含有するのが風味、外観、発煙、油脂の工業的生産性、食品等への応用の点で好ましい。
【0023】
本発明で使用される油脂(A)に含まれるモノアシルグリセロールの構成脂肪酸はジアシルグリセロールと同じ構成脂肪酸であることが、生理効果、油脂の工業的生産性の点で好ましい。
【0024】
また、本発明の油脂組成物で使用される油脂(A)に含まれる遊離脂肪酸/塩(FFA)含量は、5%以下に低減されるのが好ましく、更に0〜3.5%、更に0〜2%、特に0.01〜1%、殊更0.05〜0.5%とするのが風味、発煙、調理時の作業快適性、油脂の工業的生産性の点で好ましい。
【0025】
本発明で使用される油脂(A)を構成する全脂肪酸のうち、不飽和脂肪酸の含有量は80〜100%であるのが好ましく、更に85〜100%、特に90〜100%、殊更93〜98%であるのが、生理効果、油脂の工業的生産性の点で好ましい。
【0026】
本発明で使用される油脂(A)を構成する全脂肪酸のうち、炭素−炭素二重結合を4つ以上有する脂肪酸の含有量は、酸化安定性、調理時の作業快適性、生理効果、着色、風味等の点で0〜40%、更に0〜20%、更に0〜10%、特に0〜1%であるのが好ましく、実質的に含まないのが最も好ましい。
【0027】
油脂(A)を構成する全脂肪酸のうち、トランス不飽和脂肪酸の含有量は、0〜4%であり、更に0.1〜3.5%であるのが風味、生理効果、外観、油脂の工業的生産性の点で好ましい。
本発明においては、トランス不飽和脂肪酸の含有量は、AOCS法(American Oil Chem. Soc. Official Method:Ce1f-96、2002年)で測定した値のことである。
【0028】
油脂(A)を構成する全脂肪酸のうち、共役リノール酸の含有量は、2〜85%であるのが好ましく、更に5〜75%、特に15〜50%、殊更20〜30質量%であるのが生理効果、保存性、食品等への応用、油脂の工業的生産性の点で好ましい。
【0029】
油脂(A)を構成する全脂肪酸のうち、オレイン酸の含有量は、20〜65%であるのが好ましく、更に25〜60%、特に30〜55%、殊更35〜50質量%であるのが保存性、食品等への応用、油脂の工業的生産性の点で好ましい。
【0030】
油脂(A)を構成する全脂肪酸のうち、リノレン酸の含有量は、15%以下であるのが好ましく、更に0.1〜12%、特に1〜10%、殊更3〜8質量%であるのが保存性、食品等への応用、油脂の工業的生産性、生理効果の点で好ましい。
【0031】
本発明の油脂組成物で使用される油脂(A)の起源としては、植物性、動物性油脂のいずれでもよい。具体的な原料としては、菜種油、ひまわり油、とうもろこし油、大豆油、米油、紅花油、綿実油、牛脂等を挙げることができる。またこれらの油脂を分別、混合したもの、水素添加や、エステル交換反応などにより脂肪酸組成を調整したものも原料として利用できるが、水素添加していないものであることが、油脂組成物を構成する全脂肪酸中のトランス酸含量を低減させる点から好ましい。
更に、原料油脂としては、脱臭油の他、予め脱臭されていない未脱臭油脂を用いることができる。本発明においては、原料の一部又は全部に、未脱臭油脂を使用するのが、共役リノール酸以外のトランス不飽和脂肪酸を低減し、原料油脂由来の植物ステロール、植物ステロール脂肪酸エステル、トコフェロールを残存させることができるので好ましい。
【0032】
油脂(A)は、上述した共役リノール酸、油脂由来の脂肪酸とグリセリンとのエステル化反応、共役リノール酸を含有する油脂とグリセリンとのエステル交換反応等により得ることができる。反応により生成した過剰のモノアシルグリセロールは分子蒸留法又はクロマトグラフィー法により除去することができる。これらの反応はアルカリ触媒等を用いた化学反応でも行うことができるが、1,3−位選択的リパーゼ等を用いて酵素的に温和な条件で反応を行うのが風味等の点で優れており好ましい。特に共役リノール酸高含量のジアシルグリセロールの植物油脂による希釈、又は共役リノール酸高含量のジアシルグリセロールと植物油脂とのエステル交換反応を行うのが、風味、保存性の点で好ましい。
【0033】
本発明の油脂組成物には、成分(B)のトコフェロールを含有することが必要である。(B)トコフェロールの含有量は、風味、酸化安定性、着色等の点で油脂(A)100質量部に対して、0.001〜2質量部であるが、0.005〜1.5質量部であるのが好ましく、更に0.01〜1質量部、特に0.01〜0.5質量部、殊更0.02〜0.2質量部であるのが好ましい。
【0034】
(B)トコフェロールとしては、α、β、γ、δ−トコフェロール又はこれらの混合物を使用することができる。特に、酸化安定性の観点から、δ−トコフェロールが好ましい。また、本発明の油脂組成物が水と混合され、又は水を含む食品に使用された場合であって、長期保存又は明所保存される場合には、特にδ−トコフェロールを使用することが、風味劣化、異味発生を防止する点から好ましい。
【0035】
トコフェロールの市販品としては、イーミックスD、イーミックス80(エーザイ(株)製)、MDE−6000((株)八代製)、Eオイル−400(理研ビタミン(株)製)等が挙げられる。
【0036】
本発明の油脂組成物には、(B)トコフェロールの他に抗酸化剤を添加してもよい。抗酸化剤としては、通常、食品に使用されるものであれば何れでもよい。例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ターシャルブチルヒドロキノン(TBHQ)、カテキン、ビタミンC又はその誘導体、リン脂質、ローズマリー抽出物等が挙げられるが、これらのうちビタミンC又はその誘導体、カテキン、ローズマリー抽出物を使用するのが好ましく、特にこれらの1種以上の混合物を使用するのが好ましい。
【0037】
ビタミンC又はその誘導体としては、油脂(A)に溶解するものが好ましく、ビタミンCの高級脂肪酸エステル、例えばアシル基の炭素数が12〜22の脂肪酸エステルがより好ましく、L−アスコルビン酸パルミテート、L−アスコルビン酸ステアレートが特に好ましく、L−アスコルビン酸パルミテートが最も好ましい。
本発明において、ビタミンC又はその誘導体の含有量は、油脂(A)100質量部に対して、アスコルビン酸として0.004〜0.1質量部であるのが好ましく、更に0.006〜0.08質量部、特に0.008〜0.06質量部であるのが好ましい。
【0038】
また、本発明の油脂組成物が水と混合され、又は水を含む食品に使用された場合であって、長期保存又は明所保存される場合には、抗酸化剤としてL−アスコルビン酸脂肪酸エステルを実質的に含まないのが風味劣化、異味発生を防止する点から好ましい。
【0039】
本発明の油脂組成物には、成分(C)の植物ステロール類を含有するのが好ましい。本発明において、植物ステロール類は、その水酸基が脂肪酸とエステル結合せずに遊離状態(遊離体)であるものだけでなく、エステル体等その誘導体を含むものである。
本発明の油脂組成物において、成分(C)の含有量は、油脂(A)100質量部に対して、0.05〜30質量部であるのが好ましく、更に0.1〜15質量部、特に0.3〜8質量部、殊更0.5〜4.7質量部とするのが、コレステロール低下作用、風味、外観、油脂の工業的生産性の点で好ましい。
【0040】
本発明において、(C)植物ステロール類には、植物スタノールも含まれる。植物ステロール類としては、例えばブラシカステロール、イソフコステロール、スチグマステロール、7−スチグマステノール、α−シトステロール、β−シトステロール、カンペステロール、ブラシカスタノール、イソフコスタノール、スチグマスタノール、7−スチグマスタノール、α−シトスタノール、β−シトスタノール、カンペスタノール、シクロアルテノール、コレステロール、アベナステロール等の遊離体、及びこれらの脂肪酸エステル、フェルラ酸エステル、桂皮酸エステル等のエステル体が挙げられる。これら植物ステロール類のうち、ブラシカステロール、カンペステロール、スチグマステロール、β−シトステロールが、油脂の工業的生産性、風味の点で好ましい。
【0041】
(C)植物ステロール類中、ブラシカステロール、カンペステロール、スチグマステロール、β−シトステロールの合計含有量は90%以上であるのが好ましく、更に92〜100%、特に94〜99%であるのが、風味、外観、油脂の工業的生産性、結晶析出、低温での保存性、生理効果の点で好ましい。
【0042】
(C)植物ステロール類中の、ブラシカステロールの含有量は0.5〜8%であるのが好ましく、更に1〜7.5%、特に3〜7%であるのが、風味、外観、油脂の工業的生産性、結晶析出、低温での保存性、生理効果の点で好ましい。
植物ステロール類中の、カンペステロールの含有量は10〜40%であるのが好ましく、更に15〜35%、特に22〜30%であるのが、風味、外観、油脂の工業的生産性、結晶析出、低温での保存性、生理効果の点で好ましい。
(C)植物ステロール類中の、スチグマステロールの含有量は3〜30%であるのが好ましく、更に5〜25%、特に7〜15%であるのが、風味、外観、油脂の工業的生産性、結晶析出、低温での保存性、生理効果の点で好ましい。
(C)植物ステロール類中の、β−シトステロールの含有量は30〜60%であるのが好ましく、更に35〜58%、特に40〜56%であるのが、風味、外観、油脂の工業的生産性、結晶析出、低温での保存性、生理効果の点で好ましい。
【0043】
(C)植物ステロール類中の、コレステロールの含有量は1%以下であるのが好ましく、更に0.01〜0.8%、特に0.1〜0.7%、殊更0.2〜0.6%であるのが、血中コレステロール低下、油脂の工業的生産性の点で好ましい。
【0044】
成分(C)中に植物ステロール脂肪酸エステルが含まれる場合、その構成脂肪酸のうち、不飽和脂肪酸の含有量は、80%以上であるのが好ましく、更に85〜100%、特に86〜98%、殊更88〜93%であるのが、風味、外観、低温での保存性、結晶析出、油脂の工業的生産性、酸化安定性、生理効果の点で好ましい。
【0045】
本発明の油脂組成物においては、更に結晶抑制剤(D)を添加することが好ましい。本発明で使用する結晶抑制剤としては、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等のポリオール脂肪酸エステルが挙げられ、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルが好ましく、特にポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。またポリオール脂肪酸エステルのHLB価(Griffinの計算式、J. Soc. Cosmet. Chem., 1, 311(1949))は4以下、特に0.1〜3.5であるのが好ましい。
【0046】
本発明においては、ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸のうち、不飽和脂肪酸の含有量は50〜95%であるのが好ましく、更に51〜80%、特に52〜60%であるのが結晶抑制、油脂への溶解性、酸化安定性の点で好ましい。油脂へのポリグリセリン脂肪酸エステルの溶解を容易に行うためには、不飽和脂肪酸の含有量を50%以上とする必要がある。また、油脂の結晶化を抑制するためには、不飽和脂肪酸の含有量を95%以下とする必要がある。この不飽和脂肪酸の炭素数は10〜24、更に16〜22であるのが好ましい。具体的には、パルミトレイン酸、オレイン酸、ペトロセリン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ガトレン酸、エルカ酸等が挙げられ、オレイン酸、リノール酸、ガトレン酸が好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する不飽和脂肪酸中、オレイン酸の含有量は80%以上であるのが好ましく、特に90〜99.8%であるのが結晶抑制、油脂への溶解性、コスト、酸化安定性、風味の点で好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成不飽和脂肪酸中、リノール酸の含有量は10%以下であるのが好ましく、特に0.1〜5%であるのが結晶抑制、油脂への溶解性、コスト、酸化安定性、風味の点で好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成不飽和脂肪酸中、ガトレン酸の含有量は10%以下であるのが好ましく、特に0.1〜5%であるのが結晶抑制、油脂への溶解性、コスト、酸化安定性、風味の点で好ましい。
【0047】
本発明においては、ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸のうち、飽和脂肪酸の含有量は5〜50%であるのが好ましく、更に20〜49%、特に40〜48%であるのが結晶抑制、油脂への溶解性、酸化安定性の点で好ましい。この飽和脂肪酸の炭素数は10〜24、更に12〜22であるのが好ましい。具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等が挙げられ、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する飽和脂肪酸中、パルミチン酸の含有量は80%以上であるのが好ましく、特に90〜99.8%であるのが結晶抑制、油脂への溶解性、コスト、酸化安定性、風味の点で好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成飽和脂肪酸中、ミリスチン酸の含有量は10%以下であるのが好ましく、特に0.1〜5%であるのが結晶抑制、油脂への溶解性、コスト、酸化安定性、風味の点で好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成飽和脂肪酸中、ステアリン酸の含有量は10%以下であるのが好ましく、特に0.1〜5%であるのが結晶抑制、油脂への溶解性、コスト、酸化安定性、風味の点で好ましい。
【0048】
本発明において、結晶抑制剤(D)の含有量は、油脂(A)100質量部に対して0.01〜2質量部、更に0.02〜0.5質量部、特に0.05〜0.2質量部であるのが油脂への溶解性、コスト、風味、結晶抑制の点で好ましい。
【0049】
本発明の油脂組成物においては、更に炭素数2〜8の有機カルボン酸/塩を添加することが好ましい。炭素数2〜8の有機カルボン酸の含有量は、油脂(A)100質量部に対して、0.001〜0.01質量部であるのが好ましく、更に0.0012〜0.007質量部、特に0.0015〜0.0045質量部、殊更0.0025〜0.0034質量部であるのが風味、外観、酸化安定性の点で好ましい。有機カルボン酸としては、クエン酸が好ましい。
【0050】
本発明の油脂組成物は、前記組成の成分(A)が所定の割合となるよう原料油脂と製造方法を選択し、これに成分(B)を加え、更に必要に応じて成分(C)、成分(D)、抗酸化剤、有機カルボン酸/塩等を添加し、適宜加熱、撹拌することにより得ることができる。
【0051】
かくして得られた油脂組成物は、保存性、風味、食感、外観、調理時の作業快適性、生理効果等の点で優れているため、各種食品に応用することができる。
食品としては、該油脂組成物を食品の一部として含む油脂加工食品に用いることができる。かかる油脂加工食品としては、例えば特定の機能を発揮して健康増進を図る健康食品、機能性食品、特定保健用食品等が挙げられる。具体的な製品としては、パン、ケーキ、ビスケット、パイ、ピザクラスト、ベーカリーミックス等のベーカリー食品類、スープ、ソース、ドレッシング、マヨネーズ、コーヒーホワイトナー、アイスクリーム、ホイップクリーム等の水中油型乳化物、マーガリン、スプレッド、バタークリーム等の油中水型乳化物、ポテトチップス等のスナック菓子、チョコレート、キャラメル、キャンデー、デザート等の菓子、ハム、ソーセージ、ハンバーグ等の肉加工食品、牛乳、チーズ、ヨーグルト等の乳製品、ドウ、エンローバー油脂、フィリング油脂、麺、冷凍食品、レトルト食品、飲料、ルー等が挙げられる。上記油脂組成物の他に、油脂加工食品の種類に応じて一般に用いられる食品原料を添加し製造することができる。本発明の油脂組成物の食品への配合量は、食品の種類によっても異なるが、一般に0.1〜100%、特に1〜80%が好ましい。
【0052】
また、揚げ物あるいは炒め物に用いる調理油等の食品素材として用いることができる。特に、コロッケ、天ぷら、とんかつ、空揚げ、魚フライ、春巻き等の惣菜、ポテトチップス、トルティーヤチップス、ファブリケートポテト等のスナック菓子、揚げせんべい等の揚げ菓子、フライドポテト、フライドチキン、ドーナツ、即席麺等を調理するのに適している。
【0053】
なお、製剤調製の関係から、食品原料由来の油脂が含まれている場合は、食品原料由来の油脂と本発明の油脂組成物との質量比は、95:5〜1:99が好ましく、95:5〜5:95がより好ましく、更に85:15〜5:95が、特に40:60〜5:95が好ましい。
【0054】
本発明の油脂組成物を、水中油型乳化物に用いることができる。油相と水相の質量比は、油相/水相=1/99〜90/10、好ましくは10/90〜80/20、特に30/70〜75/25が好ましい。乳化剤を0.01〜5%、特に0.05〜3%含むことが好ましい。乳化剤としては、卵蛋白質、大豆蛋白質、乳蛋白質、これらの蛋白質より分離される蛋白質、これら蛋白質の(部分)分解物等の各種蛋白質類、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸モノエステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチンあるいはその酵素分解物が挙げられる。安定化剤は0〜5%、特に0.01〜2%含有することが好ましい。安定化剤としては、キサンタンガム、ジェランガム、グアーガム、カラギーナン、ペクチン、トラガントガム、コンニャクマンナン、等の増粘多糖類や澱粉等が挙げられる。また、食塩、糖、食酢、果汁、調味料等の呈味料、スパイス、フレーバー等の香料、着色料、保存料、抗酸化剤等を使用することができる。これらの原料を用いて、常法によりマヨネーズ、ドレッシング、コーヒーホワイトナー、アイスクリーム、ホイップクリーム、飲料等の水中油型油脂含有食品を調製することができる。
【0055】
本発明の油脂組成物を、油中水型乳化物に用いることができる。水相と油相の質量比は、水相/油相=85/15〜1/99、好ましくは80/20〜10/90、特に70/30〜35/65が好ましい。乳化剤を0.01〜5%、特に0.05〜3%含むことが好ましい。乳化剤としては、卵蛋白質、大豆蛋白質、乳蛋白質、これらの蛋白質より分離される蛋白質、これら蛋白質の(部分)分解物等の各種蛋白質類、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸モノエステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチンあるいはその酵素分解物が挙げられる。また、食塩、糖、食酢、果汁、調味料等の呈味料、スパイス、フレーバー等の香料、増粘多糖類や澱粉等の安定化剤、着色料、保存料、抗酸化剤等を使用することができる。これらの原料を用いて、常法によりマーガリン、スプレッド、バタークリーム等の油中水型油脂含有食品を調製することができる。
【0056】
本発明の油脂組成物は、体脂肪蓄積抑制作用、内臓脂肪蓄積抑制作用、体重増加抑制作用、血清トリグリセリド増加抑制作用、インスリン抵抗性改善作用、血糖値上昇抑制作用、HOMA指数改善作用、摂食抑制作用等の優れた生理活性を有する。かかる優れた特性を有するため、本発明の油脂組成物は、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、粉末剤、液剤、ゲル剤等の形態で、医薬品に利用することができる。医薬品としては、上記油脂組成物の他、形態に応じて一般に用いられる賦形剤、崩壊剤、結合剤、潤沢剤、界面活性剤、アルコール類、水、水溶性高分子、甘味料、矯味剤、酸味料等を添加し製造することができる。本発明の油脂組成物の医薬品への配合量は、医薬品の用途及び形態によっても異なるが、一般に0.1〜80%、更に0.2〜50%、特に0.5〜30%であるのが好ましい。また、投与量は、油脂組成物として、1日当たり0.2〜50gを、1〜数回に分けて投与することが好ましい。投与期間は、1ヶ月以上、2ヶ月以上、3ヶ月〜12ヶ月が好ましい。
【0057】
本発明の油脂組成物は、飼料に利用することができる。飼料としては、例えば牛、豚、鶏、羊、馬、山羊等に用いる家畜用飼料、ウサギ、ラット、マウス等に用いる小動物用飼料、ウナギ、タイ、ハマチ、エビ等に用いる魚介類用飼料、犬、猫、小鳥、リス等に用いるペットフード等が挙げられる。本発明の油脂組成物の飼料への配合量は、飼料の用途等によっても異なるが、一般に1〜30%、特に1〜20%が好ましい。本発明の油脂組成物は、飼料中の全部又は一部の油脂を置き換えることにより使用できる。
【0058】
飼料には、上記油脂組成物の他に、肉類、蛋白質、穀物類、ぬか類、粕類、糖類、野菜、ビタミン類、ミネラル類等一般に用いられる飼料原料とともに混合して製造される。
肉類としては、牛、豚、羊(マトン又はラム)、ウサギ、カンガルー等の畜肉、獣肉及びその副生物、加工品(ミートボール、ミートボーンミール、チキンミール等の上記原料のレンダリング物)、マグロ、カツオ、アジ、イワシ、ホタテ、サザエ、魚粉(フィッシュミール)等の魚介類等が例示される。蛋白質としては、カゼイン、ホエー等の乳蛋白質や卵蛋白質等の動物蛋白質、大豆蛋白質等の植物蛋白質が例示される。穀物類としては、小麦、大麦、ライ麦、マイロ、トウモロコシ等が挙げられる。ぬか類としては、米ぬか、ふすま等が挙げられる。粕類としては大豆粕等が例示される。飼料中の肉類、蛋白質、穀物類、ぬか類、粕類の合計量は5〜93.9%であるのが好ましい。
【0059】
糖類としては、ぶどう糖、オリゴ糖、砂糖、糖蜜、澱粉、液糖等が挙げられ、飼料中5〜80%含有するのが好ましい。野菜類としては、野菜エキス等が例示され、飼料中1〜30%含有するのが好ましい。ビタミン類としては、A、B1、B2、D、E、ナイアシン、パントテン酸、カロチン等が挙げられ、飼料中0.05〜10%含有するのが好ましい。ミネラル類としては、カルシウム、リン、ナトリウム、カリウム、鉄、マグネシウム、亜鉛等が挙げられ、飼料中0.05〜10%含有するのが好ましい。この他、一般的に飼料に使用されるゲル化剤、保型剤、pH調整剤、調味料、防腐剤、栄養補強剤等も必要に応じて含有することができる。
【実施例】
【0060】
実施例1 油脂の調製
(1)共役リノール酸(CLA)の調製
プロピレングリコール1050gと水酸化カリウム350gとを混合した後、攪拌しながら60℃まで昇温し、水酸化カリウムを完全に溶解した。その後、60℃で窒素バブリングを30分間行い、溶存酸素を除いた。次いで、これを130℃まで昇温し、リノール酸(東京化成製)700gを少量ずつ添加した。窒素雰囲気下、157℃まで昇温し、4時間攪拌して共役化反応を行った。これを室温まで冷却後、5N塩酸を1L加え、pHを3にした。反応物にヘキサンを加えて溶媒抽出を行い、エバポレーターで溶媒を留去して、CLA700gを得た。
【0061】
(2)油脂Aの製造
(1)で調製したCLA1100質量部と固定化リパーゼ110質量部とを混ぜ、窒素雰囲気下40℃に加温した。次いで、グリセリン180.5質量部を添加し、減圧下(2〜5torr)、40℃にて7時間エステル化反応を行った。ろ過を行って固定化酵素を除去した後、反応終了物(TG5.7%、DG73.2%、MG12.8%、FA8.3%)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Wako C−200、和光純薬製)に充填し、有機溶媒で溶出して精製を行った。すなわち、ヘキサン、へキサン−酢酸エチル(97:3、V/V)、へキサン−酢酸エチル(9:1、V/V)、へキサン−酢酸エチル(4:1、V/V)、へキサン−酢酸エチル(3:1、V/V)、へキサン−酢酸エチル(2.5:1、V/V)で順に溶出し、DG画分を得た。エバポレーターで溶媒を留去して得た油脂100質量部に対して、トコフェロール(ミックストコフェロールMDE−6000、八代製)を0.02質量部添加したものを油脂Aとした。そのグリセリド組成、脂肪酸組成を表1に示す。
【0062】
(3)油脂Bの製造
(1)で調製したCLA520質量部と固定化リパーゼ52質量部とを混ぜ、窒素雰囲気下40℃に加温した。次いで、グリセリン56.9質量部を添加し、減圧下(2〜5torr)、50℃にて20時間エステル化反応を行った。ろ過を行って固定化酵素を除去した後、反応終了物(TG41.8%、DG36.8%、MG1.2%、FA20.2%)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Wako C−200、和光純薬製)に充填し、有機溶媒(へキサン−酢酸エチル(97:3、V/V))で溶出し、DG画分とMG画分を除いた。これを更にフロリジルカラムクロマトグラフィーにかけ、精製を行った。すなわち、ヘキサン、へキサン−酢酸エチル(30:1、V/V)でTG画分を溶出した後、エバポレーターで溶媒を留去した。得られた油脂100質量部に対して、トコフェロール(ミックストコフェロールMDE−6000、八代製)を0.02質量部添加したものを油脂Bとした。そのグリセリド組成、脂肪酸組成を表1に示す。
【0063】
(4)油脂Cの調製
魚油(花王製)400質量部とグリセリン16質量部とを混合し、ナトリウムメチラート1.2質量部存在下、減圧下にて(0.133kPa)100℃4時間エステル交換反応を行った。得られた反応生成物を、(2)と同様にシリカゲルクロマトグラフィ−で精製し、エバポレーターで溶媒を留去した。次いで、得られた油脂100質量部に対して、トコフェロール(ミックストコフェロールMDE−6000、八代製)を0.02質量部添加して、油脂Cを得た。そのグリセリド組成、脂肪酸組成を表1に示す。
【0064】
(5)油脂Dの調製
中鎖脂肪酸トリグリセリド(ココナードMT、花王製)400質量部とグリセリン16質量部とを混合し、ナトリウムメチラート1.2質量部存在下、減圧下にて(0.133kPa)100℃4時間エステル交換反応を行った。得られた反応生成物を、(2)と同様にシリカゲルクロマトグラフィ−で精製し、エバポレーターで溶媒を留去した。次いで、得られた油脂100質量部に対して、トコフェロール(ミックストコフェロールMDE−6000、八代製)を0.02質量部添加して、油脂Dを得た。そのグリセリド組成、脂肪酸組成を表1に示す。
【0065】
(6)油脂Eの調製
プロピレングリコール225質量部に、水酸化カリウム75質量部を完全に溶解し、20分間窒素バブリングした後、窒素雰囲気下120℃まで昇温した。次いで、サフラワー油180質量部を滴下した後、170℃にて2.5時間反応を行った。得られた反応生成物300質量部と、グリセリン12質量部とを、ナトリウムメチラート0.8質量部存在下、減圧下にて(0.133kPa)100℃4時間エステル交換反応を行った。これを、(2)と同様にシリカゲルクロマトグラフィ−で分画し、エバポレーターで溶媒を留去した。次いで各画分を混合して得られた油脂100質量部に対して、トコフェロール(ミックストコフェロールMDE−6000、八代製)を0.02質量部添加することにより、油脂Eを得た。そのグリセリド組成、脂肪酸組成を表1に示す。
【0066】
(7)油脂Fの調製
油脂Eとナタネ油を質量比1:2で混合した油脂100質量部に対し、トコフェロール(ミックストコフェロールMDE−6000、八代製)を0.02質量部、植物ステロール脂肪酸エステル(CardioAid−S、ADM製)を4質量部添加し、油脂Fを得た。油脂Fのグリセリド組成、脂肪酸組成を表1に示す。
【0067】
〔分析方法〕
(i)グリセリド分布
ガラス製サンプル瓶に、サンプル10mgとトリメチルシリル化剤(「シリル化剤TH」、関東化学製)0.5mLとを加え、密栓した後、70℃で15分間加熱した。水1mL添加後、ヘキサン2mL加え、よく振とうした。静置後、ヘキサン相を抽出し、ガスクロマトグラフィー(GLC)に供して、分析を行った。
GLC条件
装置;Hewlett Packard製 6890型
カラム;DB-1HT(J&W Scientific製) 7m
カラム温度;initial=80℃、final=340℃
昇温速度=10℃/分、340℃にて20分間保持
検出器;FID、温度=350℃
注入部;スプリット比=50:1、温度=320℃
サンプル注入量;1μL
キャリアガス;ヘリウム、流量=1.0mL/分
【0068】
(ii)構成脂肪酸組成
サンプル約12mgに1/2N水酸化ナトリウム・メタノール溶液0.6mLを添加した。次いで、三ふっ化ほう素メタノール錯体メタノール溶液(和光純薬製)を0.6mL添加後、70℃にて30分間加熱した。飽和食塩水1mLを添加後、へキサン1mLを添加して、よく振とうした。へキサン相を抽出し、無水硫酸ナトリウムを加えて、脂肪酸メチルエステルを調製した。
メチルエステル化した脂肪酸をGLCに供して分析を行った。
GLC条件
装置;Hewlett Packard製 6890型
カラム;CP-Sil88 for Fame(ジーエルサイエンス製)
0.25mm×50m
カラム温度;initial=150℃、final=225℃
150℃にて5分間保持後、2℃/分で昇温し、225℃にて15分間保持
検出器;FID、温度=250℃
注入部;スプリット比=40:1、温度=250℃
サンプル注入量;1μL
キャリアガス;ヘリウム、流量=1.0mL/分
【0069】
【表1】

【0070】
実施例2 保存試験
油脂A、油脂Bを用いて、下記方法にて、保存試験を行った。ガラス製サンプル瓶(50mL容)に、油脂20g入れ、窒素シールした後、密栓した。これを−20℃の冷凍庫に保存した。5年後に、常温に静置して解凍し、開栓して、臭い、外観を下記基準で官能評価した。結果を表2に示す。
【0071】
臭い
a:劣化臭、ケミカル臭が殆んど感じられず、良好。
b:劣化臭はやや感じられるが、ケミカル臭はなく、やや良好。
c:劣化臭とケミカル臭があり、やや不良。
d:劣化臭とケミカル臭が強く、不良。
【0072】
外観
a:通常の油(サラダ油)と同じ液状で、良好。
b:通常の油よりもやや粘性が高く、やや良好。
c:ゲル状となっている部分があり、やや不良。
d:ゲル状部分が大半を占め、不良。
【0073】
【表2】

【0074】
本発明品は、比較品よりも、臭い、外観に優れ、保存性が良好であることが示された。
【0075】
実施例3 動物実験
表3に示す組成で、飼料を常法に従って製造した。6〜7週齢のZuckerラットを1群6匹ずつ4群に分けた。まず、飼料1で4日間予備飼育した(摂食量一定)。次いで、各飼料を用いてそれぞれ9日間飼育した。この時の摂食量は、毎日測定した。飼料投与最終日に解剖を行い、肝臓、腎周囲脂肪組織、副睾丸周囲脂肪組織を摘出し、その重量を測定した。また、肝臓中のトリグリセリド量を測定した。結果を表4に示す。
【0076】
【表3】

【0077】
【表4】

【0078】
本発明品を含む飼料(飼料2)を投与すると、比較品(飼料1、3、4)よりも、肝臓中のトリグリセリド量、腎周囲脂肪組織量、副睾丸周囲脂肪組織量が低下することが明らかとなった。また、総摂食量が著しく減少し、摂食抑制作用を有することが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び(B):
(A)構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸含量が80質量%以上、共役リノール酸含量が2〜85質量%、かつω3系不飽和脂肪酸含量が15質量%未満であるジアシルグリセロールを15質量%以上含有し、モノアシルグリセロール含量が5質量%以下、遊離脂肪酸含量が5質量%以下である油脂 100質量部
(B)トコフェロール 0.001〜2質量部
を含有する油脂組成物。
【請求項2】
更に(C)植物ステロール類 を0.05〜30質量部含有する請求項1記載の油脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の油脂組成物を含有する食品。
【請求項4】
請求項1又は2記載の油脂組成物を含有する飼料。
【請求項5】
請求項1又は2記載の油脂組成物を含有する医薬品。

【公開番号】特開2008−69184(P2008−69184A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−43941(P2005−43941)
【出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】